説明

現像ロール

【課題】感光ドラムとの接触圧力を軸方向で均一にすることができる現像ロールを提供する。
【解決手段】弾性層2の軸方向中央部分に対応する軸体1が均一外径に形成され、その軸方向中央部分よりも軸方向外側部分の軸体1が、上記軸方向中央部分の軸体1の外径を基準にし、それぞれ弾性層2の左右両端縁に向かって徐々に縮径されており、上記弾性層2の外径が、上記軸方向中央部分では均一径に形成され、上記軸体1の縮径部分に対応する部分では上記軸方向中央部分での外径よりも15μm大きい値以下の径に形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機,プリンター等の電子写真機器類に用いられる現像ロールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機,プリンター等の電子写真機器では、感光ドラムに対峙して現像ロールが設けられている。この現像ロールは、軸体の外周面にゴム等からなる弾性層が形成されており、必要に応じて、その弾性層の表面に抵抗調整層や保護層等の薄い被覆層が1層または2層以上形成されている。
【0003】
上記現像ロールの形成は、通常、均一外径の軸体および均一内径の型面を有する円筒状金型を用いて成形される。すなわち、まず、軸体の外周面に接着剤を塗布し、これを円筒状金型の中空部に同軸的に設置し、左右両端部を蓋体で密封した後、弾性層の形成材料を注入して成形し、ついで、オーブン加硫等により加硫し、上記弾性層を形成する。その後、脱型し、上記弾性層の両端縁部を切断して形状寸法を調節する。そして、必要に応じて、ロールコーティング法,スプレーコーティング法,ディッピング法等により、抵抗調整層や保護層等の形成材料を塗布等した後、乾燥や加熱処理等を行い、抵抗調整層や保護層等を形成する。
【0004】
しかしながら、上記弾性層の形成において、脱型後は、残留応力(収縮応力)の作用により、弾性層が収縮する。この収縮は、弾性層の内周面部分は接着剤で接着されているため軸方向には収縮しないが、弾性層の外周面部分は拘束されていないため軸方向に収縮する。このような収縮により、図7に示すように、弾性層52の左右両端近傍では、跳ね上がったようになり、弾性層52の外径が左右両端縁に向かって徐々に大きくなった形状になる。上記形状寸法調節のための弾性層52左右両端縁部の切断除去は、上記弾性層52の収縮後に行われ、跳ね上がった部分の大部分は切断除去されるが、切断すると、残留応力(収縮応力)の作用により、切断除去後も弾性層52の左右両端近傍が少し跳ね上がる。ただし、図7では、変形量を誇張して表示している。なお、図7において、符号51は軸体である。
【0005】
このような現像ロールを、接触現像方式(感光ドラムと現像ロールとが接触して設けられている)に用いると、その左右両端近傍では、感光ドラムとの接触圧力が高くなり、摩擦力が大きくなる。このため、現像ロールの左右両端近傍部において最外層(上記抵抗調整層や保護層等)が摩耗してリーク等が発生し、画像が悪化する。また、現像ロールの左右両端近傍部が損傷して、その損傷箇所からトナー漏れが発生し、その漏れたトナーにより、画像が汚れる。さらに、上記左右両端近傍の摩擦力により、感光ドラムと現像ロールとはスムーズな摺動ができなくなり、回転速度が安定せず、その回転速度が変わる際に、画像むら(濃淡むら)が発生する。
【0006】
そこで、通常は、弾性層52の左右両端近傍の跳ね上がり部分を面取り加工することが行われている。また、上記面取り加工を不要にする方法としては、現像ロールではなく、帯電ロールに関して、感光ドラムに対する帯電むらを防止したものが提案されている(特許文献1参照)。このものは、芯金の外周部にゴムローラを接着形成したものであって、その芯金を中央部から両端部に向かって徐々に小径に形成したものとなっている。そして、感光ドラムに接触させると、芯金の中央部が感光ドラムから遠ざかる方向へ撓み、この撓みによる中央部と両端部との接触むらをゴムローラの変形で吸収している。これにより、感光ドラムに当接する側のゴムローラ部分の厚みを略一定にし、厚みの差による抵抗のむらを防止して、帯電ロールの軸方向の実質的な抵抗値を均一化し、感光ドラムに供給する電荷も均一にしている。
【特許文献1】特開平10−48915号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、上記特許文献1の帯電ロールを現像ロールに応用すると、芯金の外径が大きい中央部で、感光ドラムとの接触圧力が高くなり、摩擦力が大きくなる。このため、相変わらず軸方向で偏圧が生じることになり、スムーズな摺動ができずに、画像むらが発生する。しかも、画像領域である中央部では、上記高い接触圧力のためトナーストレスが大きくなり、それによってフィルミングが発生し、画像が悪化する。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みなされたもので、感光ドラムとの接触圧力を軸方向で略均一にし、画像への悪影響(リークやフィルミングによる画像の悪化,漏れたトナーによる画像の汚れ,画像むら等)を防止することができる現像ロールの提供をその目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の現像ロールは、軸体と、この軸体の外周面に金型成形により形成される弾性層とを備え、その弾性層の外周面が金型の型面の転写面になっている現像ロールであって、上記弾性層の軸方向中央部分に対応する軸体が均一外径に形成され、その軸方向中央部分よりも軸方向外側部分の軸体が、上記軸方向中央部分の軸体の外径を基準にし、それぞれ弾性層の左右両端縁に向かって徐々に縮径されており、上記弾性層の外径が、上記軸方向中央部分では均一径に形成され、上記軸体の縮径部分に対応する部分では上記軸方向中央部分での外径よりも15μm大きい値以下の径に形成されているという構成をとる。
【0010】
すなわち、本発明の現像ロールは、弾性層の形成において、脱型後や左右両端縁部の切断除去後、弾性層の軸方向両端近傍部が跳ね上がろうとするが、それを見越して、その跳ね上がろうとする部分に対応する軸体の部分の形状寸法が、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に縮径されている。すなわち、上記縮径部分では、弾性層の厚みが軸方向中央部分よりも厚いため、脱型後の径方向の収縮量が軸方向中央部分よりも大きくなる。これにより、上記跳ね上がろうとする部分の弾性層が拡径したとしても、その最大径を、軸方向中央部分における弾性層の外径よりも15μm大きい値以下に抑えている。そして、上記弾性層の外周面に抵抗調整層や保護層等の被覆層を形成する場合でも、その被覆層を均一厚みに形成することにより、上記跳ね上がろうとした部分の現像ロールの最大径は、軸方向中央部分の外径よりも15μm大きい値以下になる。このため、接触現像方式では、感光ドラムとの接触圧力を軸方向で略均一にすることができ、その両端近傍部の摩耗および損傷が防止されるとともに、スムーズな摺動が可能となる。
【0011】
なお、本発明において、「軸方向中央部分」とは、感光ドラム表面の静電潜像形成領域に対応する部分であり、「その軸方向中央部分よりも軸方向外側部分」とは、感光ドラム表面の静電潜像形成領域よりも軸方向外側に位置する静電潜像非形成領域に対応する部分である。
【発明の効果】
【0012】
本発明の現像ロールは、弾性層の両端近傍に対応する軸体の部分を弾性層の両端縁に向かって徐々に縮径させているため、弾性層の両端近傍の跳ね上がりによる拡径を小さく(15μm以下に)することができる。このため、接触現像方式に用いると、両端近傍部の摩耗および損傷が生じなくなり、その摩耗によるリークおよび損傷によるトナー漏れが防止される。また、感光ドラムとの間では、軸方向での偏圧も生じなくなり、それにより、スムーズな摺動が可能となり、画像むらの発生が防止される。さらに、そのスムーズな摺動により、現像ロールおよび感光ドラムの回転駆動に要するトルクが小さくなり、現像ロールを回転駆動する駆動モータおよび感光ドラムを回転駆動する駆動モータの負荷が軽減される。その結果、プリンター等の電子写真機器類の発熱を抑えたり、上記駆動モータを小形化する等して電子写真機器類を小形化したりすることができる。
【0013】
特に、上記軸体の各縮径部分の軸方向の長さが、弾性層の軸方向の長さの2〜15%の範囲内であり、上記弾性層の左右両端縁に対応する軸体の縮径部外径が、軸体の軸方向中央部分の基準外径の50〜97%の範囲内である場合には、弾性層の軸方向両端近傍部の跳ね上がりによる拡径を好適に小さくすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
つぎに、本発明の実施の形態を図面にもとづいて詳しく説明する。
【0015】
図1は、本発明の現像ロールの第1の実施の形態を示している。この現像ロールは、軸体1の外周面に、金型成形により弾性層2が形成されている。そして、軸体1の外径は、上記弾性層2の軸方向中央部分に対応する部分が均一外径D0 に形成され、その軸方向中央部分よりも軸方向外側部分が、上記軸方向中央部分の軸体1の外径D0 を基準にし、それぞれ弾性層2の左右両端縁に向かって徐々に縮径され、弾性層2の左右両端縁よりも軸方向外側部分が、それぞれ上記軸方向中央部分と同一の均一外径D0 に形成されている。上記軸体1の形状寸法に対応して、弾性層2の外径も、軸方向中央部分が均一外径に形成され、上記軸体1の縮径部分に対応する部分が、上記軸方向中央部分の外径を基準にし、それぞれ弾性層2の左右両端縁に向かって徐々に縮径されている。ここで、上記軸体1および弾性層2の左右両端側の縮径部分は、感光ドラム表面の軸方向両端部の静電潜像非形成領域に対応する部分であり、その縮径部分の間の軸方向中央部分が、感光ドラム表面の静電潜像形成領域に対応する部分となっている。また、上記弾性層2の外周面は、金型の型面の転写面になっており、上記脱型後は、上記弾性層2の外周面に面取り加工等が施されることなく上記形状寸法に形成される。さらに、この実施の形態では、上記弾性層2の外周面に中間層(第1被覆層)3が均一厚みに形成され、その中間層の外周面に表層(第2被覆層)4が均一厚みに形成されている。これにより、表層4の外径も、軸方向中央部分が均一外径に形成され、上記弾性層2の縮径部分に対応する部分が、上記軸方向中央部分の外径を基準にし、それぞれ弾性層2の左右両端縁に向かって徐々に縮径されている。
【0016】
このような現像ロールの製造は、軸体1として、上記縮径部分が形成されたものを用いる以外は、冒頭で述べた従来法と同様の方法で行うことができる。また、この場合、弾性層2は、図2に示すように、まず、軸体1の縮径部分よりも軸方向外側まで形成しておき、脱型後の形状寸法調節の際に、軸体1の縮径部分の外側端縁に対応する面(鎖線A)で切断し、それよりも軸方向外側の左右両端縁部を除去する。これにより、切断除去した左右両端縁部に形成されていた跳ね上がり部分も除去することができる。
【0017】
ここで、上記軸体1の縮径部分の形状寸法について、より詳しく説明する。この縮径部分の形状寸法は、弾性層2の収縮率を考慮して設定される。すなわち、冒頭の背景技術(図7参照)で述べたように、通常に、均一外径の軸体51および均一内径の型面を有する円筒状金型を用いて、その軸体51の外周面に弾性層52を金型成形により形成すると、脱型後や左右両端縁部の切断除去後、残留応力(収縮応力)の作用により、弾性層52は軸方向両端近傍が跳ね上がったようになり左右両端縁に向かって徐々に拡径した形状になる。そこで、本発明では、その拡径部分の形状寸法を予めデータとして得ておき、その拡径部分の形状寸法を見越して、図1に示すように、その拡径部分に対応する軸体1の部分を、弾性層2の両端縁に向かって徐々に縮径させた形状寸法にしている。すなわち、その縮径部分では、脱型直後の弾性層2の厚みが軸方向中央部分よりも厚くなっているため、脱型後の径方向の収縮量が軸方向中央部分よりも大きくなる。このことを利用して、弾性層2の軸方向両端近傍部が跳ね上がろうとしても、その跳ね上がろうとする部分の弾性層2の最大径が、弾性層2の軸方向中央部分の外径よりも小さくなるよう抑えられる。このように、上記軸体1の縮径部分の形状寸法は、弾性層2の収縮率、すなわち弾性層2の形成材料の種類や成形温度等によって異なるが、弾性層2の収縮率が同じ値の場合でも、画像に悪影響を及ぼさない範囲として、上記軸体1の各縮径部分の軸方向の長さL1 は、通常、弾性層2の軸方向の長さL0 の2〜15%の範囲内の値をとることができ、好ましくは6〜12%の範囲内の値をとることができる。同様に、上記弾性層2の左右両端縁に対応する軸体1の縮径部外径D1 も、通常、軸体1の軸方向中央部分の基準外径D0 の50〜97%の範囲内の値をとることができ、好ましくは80〜90%の範囲内の値をとることができる。
【0018】
そして、この実施の形態の現像ロールを接触現像方式の実機に組み付けると、図3に示すように、現像ロールの表層4の軸方向中央部分は、感光ドラム10の表面の静電潜像形成領域と均一な接触圧力で当接し、その軸方向外側では、現像ロールの表層4の左右両端側の縮径部分により、感光ドラム10の表面の静電潜像非形成領域との間に隙間が形成される。
【0019】
したがって、上記現像ロールを接触現像方式の実機に用いると、両端近傍部の摩耗および損傷が生じなくなり、その摩耗によるリークおよび損傷によるトナー漏れが防止される。また、感光ドラム10との間では、軸方向での偏圧も生じなくなり、それにより、スムーズな摺動が可能となり、画像むらの発生が防止される。さらに、そのスムーズな摺動により、現像ロールおよび感光ドラム10の回転駆動に要するトルクが小さくなり、現像ロールおよび感光ドラム10をそれぞれ回転駆動する各駆動モータの負荷が軽減される。その結果、プリンター等の電子写真機器類の発熱を抑えたり、上記駆動モータを小形化する等して電子写真機器類を小形化したりすることができる。
【0020】
つぎに、本発明の現像ロールを構成する軸体1,弾性層2,中間層(第1被覆層)3,表層(第2被覆層)4の形成材料等について説明する。
【0021】
上記軸体1は、特に限定されるものではなく、中実でも中空でもよい。また、上記軸体1の材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、鉄,鉄にめっきを施したもの,ステンレス,アルミニウム等があげられる。そして、上記軸体1の表面には、通常、接着剤やプライマー等が塗布される。さらに、上記接着剤やプライマー等は、必要に応じて、導電化してもよい。
【0022】
上記弾性層2の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではないが、例えば、ポリウレタン系エラストマー,エチレン−プロピレン−ジエンゴム(EPDM),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),シリコーンゴム,アクリロニトリル−ブタジエンゴム(NBR),水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(H−NBR),クロロプレンゴム(CR)等があげられる。なかでも、低硬度でへたりが少ないという点から、導電性シリコーンゴムを用いることが好ましい。また、必要に応じて、導電剤,シリコーンオイル,加硫剤,加硫促進剤,滑剤,助剤等を適宜に添加してもよい。そして、上記弾性層2の厚みは、特に限定されないが、通常、0.5〜5mm程度に設定される。
【0023】
上記中間層(第1被覆層)3の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、水素添加アクリロニトリル−ブタジエンゴム(水素化ニトリルゴム:H−NBR),アクリロニトリル−ブタジエンゴム(ニトリルゴム:NBR),ポリウレタン系エラストマー,クロロプレンゴム(CR),天然ゴム,ブタジエンゴム(BR),アクリルゴム(ACM),イソプレンゴム(IR),スチレン−ブタジエンゴム(SBR),ヒドリンゴム(ECO,CO),ウレタンゴム,フッ素ゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、接着性およびコーティング液の安定性の点から、H−NBRが特に好ましい。そして、上記中間層(第1被覆層)3の厚みは、特に限定されないが、通常、3〜50μm程度に設定される。
【0024】
上記表層(第2被覆層)4の形成材料としては、下記の主材料に導電剤が含有されているものが用いられる。すなわち、その主材料としては、特に限定されるものではなく、例えば、ウレタン樹脂,ポリアミド樹脂,アクリル樹脂、アクリルシリコーン樹脂、ブチラール樹脂(PVB),アルキッド樹脂,ポリエステル樹脂,フッ素ゴム,フッ素樹脂,フッ素ゴムとフッ素樹脂の混合物,シリコーン樹脂,シリコーングラフトアクリルポリマー,アクリルグラフトシリコーンポリマー,ニトリルゴム,ウレタンゴム等があげられる。これらは単独でもしくは2種以上併せて用いられる。なかでも、耐摩耗性の点で、ウレタン樹脂が好ましい。そして、上記表層(第2被覆層)4の厚みは、特に限定されないが、通常、3〜50μm程度に設定される。
【0025】
図4は、本発明の現像ロールの第2の実施の形態を示している。この実施の形態では、軸体1の縮径部分に対応する弾性層2の部分の外径が、弾性層2の軸方向中央部分の基準外径と同一の均一外径になっている。これは、弾性層2の収縮率に対応する等して、軸体1の縮径部分の形状寸法を適宜調節することにより達成することができる。そして、表層4の外径も、同様に、均一外径になっている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。なお、この第2の実施の形態の場合、現像ロールの表層4と感光ドラム10(図3参照)の表面の静電潜像非形成領域(左右両端側)との間には、隙間は形成されない。
【0026】
図5は、本発明の現像ロールの第3の実施の形態を示している。この実施の形態では、軸体1の縮径部分に対応する部分が、上記軸方向中央部分の外径を基準にし、それぞれ弾性層2の左右両端縁に向かって徐々に拡径されており、軸体1の縮径部分の外側端縁に対応する弾性層2の左右両端縁の外径d1 が、弾性層2の軸方向中央部分の基準外径d0 よりも15μm大きくなっている。これは、弾性層2の収縮率に対応する等して、軸体1の縮径部分の形状寸法を適宜調節することにより達成することができる。そして、表層4の外径も、同様に、左右両端縁の外径が軸方向中央部分の基準外径よりも15μm大きくなっている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様である。この第3の実施の形態の場合、左右両端側の拡径部分では、感光ドラム10(図3参照)との接触圧力が高くなるものの、拡径量が最大15μmと小さいため、接触圧力の上昇量は僅かであり、摩耗や損傷は殆ど発生せず、スムーズな摺動も殆ど妨げない。このため、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。
【0027】
図6は、本発明の現像ロールの第4の実施の形態を示している。この実施の形態では、上記第1の実施の形態(図1参照)において、弾性層2の両端縁よりも軸方向外側の軸体1の部分が、軸体1の縮径が軸体1の両端縁まで延設されるように縮径形状に形成されている。それ以外の部分は、上記第1の実施の形態と同様であり、上記第1の実施の形態と同様の作用・効果を奏する。ただし、弾性層2の両端縁よりも軸方向外側の軸体1の部分には、ベアリングが外嵌されるため、そのベアリングとして、上記縮径形状寸法に対応したベアリングが必要となる。
【0028】
なお、上記各実施の形態では、弾性層2の外周部に、中間層(第1被覆層)3および表層(第2被覆層)4の2層の被覆層を形成したが、被覆層は、1層でもよいし、3層以上でもよく、また、形成されなくてもよい。
【0029】
つぎに、実施例について比較例と併せて説明する。
【実施例】
【0030】
〔実施例1〕
〔軸体〕
外径(図1のD0 )8mm、長さ260mmの鉄製の中実円柱状の棒体を準備し、その棒体の両端縁からそれぞれ25.0mm内側の位置から軸方向外側に15.0mm〔図1のL1 に相当:下記L0 (250mm)の6%〕の部分を、一定の割合で縮径するように切削した。そして、縮径部分の外側端縁の最小外径(図1のD1 )を5.00mm〔上記D0 (8mm)の62.5%〕とした。このようにして得られたものを軸体とした。
【0031】
〔弾性層の形成材料〕
導電性シリコーンゴム(KE1357 A/B、信越化学工業社製)をニーダーを用いて混練することにより、弾性層の形成材料を調製した。
【0032】
〔中間層(第1被覆層)の形成材料〕
H−NBR(ゼットポール0020、日本ゼオン社製)100重量部に対して、ステアリン酸0.5重量部,亜鉛華(ZnO)5重量部,カーボンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)30重量部,加硫促進剤(BZ)1重量部,加硫促進剤(CZ)2重量部,硫黄1重量部をニーダーを用いて混練した後、MEK400重量部を加えて混合,攪拌することにより、中間層(第1被覆層)の形成材料を調製した。
【0033】
〔表層(第2被覆層)の形成材料〕
ウレタン樹脂(ニッポラン5199、日本ポリウレタン社製)100重量部に対して、カーボンブラック(デンカブラックHS−100、電気化学工業社製)10重量部をボールミルを用いて混練した後、MEK400重量部を加えて混合,攪拌することにより、表層(第2被覆層)の形成材料を調製した。
【0034】
〔円筒状金型〕
上記弾性層を形成するための円筒状金型として、型面の内径が18mm(軸方向に均一)、軸方向の長さが260mmのものを準備した。
【0035】
〔ロール体の作製〕
上記実施の形態と同様にして、上記軸体と円筒状金型を用いて成形(190℃×30分間)することにより、軸体の外周面に弾性層を形成した後、軸体の縮径部分の外側端縁に対応する面で切断し、それよりも軸方向外側の両端縁部を除去した。これにより、弾性層の軸方向長さを250mm(図1のL0 に相当)に調節したロール体を得た。このロール体の弾性層は、軸体の縮径部分に対応する部分が弾性層の左右両端縁に向かって徐々に縮径していた。
【0036】
〔被覆層の形成〕
上記ロール体の弾性層の外周面に、中間層(第1被覆層)の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥させ、厚み10μmで均一の中間層(第1被覆層)を形成した。その後、その中間層(第1被覆層)の外周面に、表層(第2被覆層)の形成材料をロールコーティング法により塗工した後、乾燥させ、厚み10μmで均一の表層(第2被覆層)を形成した。これにより、現像ロールを得た。この現像ロールの表層(第2被覆層)の外径も、軸体の縮径部分に対応する部分が、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に縮径していた(図1参照)。
【0037】
〔実施例2〕
上記実施例1において、軸体の縮径部分の外側端縁の最小外径(図1のD1 )を6.40mm(上記D0 の80%)とした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの外径は、軸体の縮径部分に対応する部分が、軸方向中央部分の基準外径と同一の均一外径になっていた(図4参照)。
【0038】
〔実施例3〕
上記実施例1において、軸体の各縮径部分の軸方向長さ(図1のL1 )を5.0mm(上記L0 の2%)、軸体の縮径部分の外側端縁の最小外径(図1のD1 )を4.00mm(上記D0 の50%)とした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの外径は、軸体の縮径部分に対応する部分が、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に縮径していた(図1参照)。
【0039】
〔実施例4〕
上記実施例1において、軸体の各縮径部分の軸方向長さ(図1のL1 )を5.0mm(上記L0 の2%)、軸体の縮径部分の外側端縁の最小外径(図1のD1 )を7.76mm(上記D0 の97%)とした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの外径は、軸体の縮径部分に対応する部分が、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に拡径していた(図5参照)。
【0040】
〔実施例5〕
上記実施例1において、軸体の各縮径部分の軸方向長さ(図1のL1 )を37.5mm(上記L0 の15%)、軸体の縮径部分の外側端縁の最小外径(図1のD1 )を4.00mm(上記D0 の50%)とした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの外径は、軸体の縮径部分に対応する部分が、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に縮径していた(図1参照)。
【0041】
〔実施例6〕
上記実施例1において、軸体の各縮径部分の軸方向長さ(図1のL1 )を37.5mm(上記L0 の15%)、軸体の縮径部分の外側端縁の最小外径(図1のD1 )を7.76mm(上記D0 の97%)とした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの外径は、軸体の縮径部分に対応する部分が、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に拡径していた(図5参照)。
【0042】
〔実施例7〕
上記実施例1において、軸体の各縮径部分の軸方向長さ(図1のL1 )を30.0mm(上記L0 の12%)、軸体の縮径部分の外側端縁の最小外径(図1のD1 )を7.20mm(上記D0 の90%)とした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの外径は、軸体の縮径部分に対応する部分が、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に拡径していた(図5参照)。
【0043】
〔実施例8〕
上記実施例1において、軸体の各縮径部分の軸方向長さ(図1のL1 )を30.0mm(上記L0 の12%)、軸体の縮径部分の外側端縁の最小外径(図1のD1 )を6.40mm(上記D0 の80%)とした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの外径は、軸体の縮径部分に対応する部分が、軸方向中央部分の基準外径と同一の均一外径になっていた(図4参照)。
【0044】
〔実施例9〕
上記実施例1において、軸体の各縮径部分の軸方向長さ(図1のL1 )を15.0mm(上記L0 の6%)、軸体の縮径部分の外側端縁の最小外径(図1のD1 )を7.20mm(上記D0 の90%)とした。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの外径は、軸体の縮径部分に対応する部分が、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に拡径していた(図5参照)。
【0045】
〔比較例1〕
上記実施例1において、軸体として、外径が8mmで軸方向全体に均一であるものを用いた。それ以外は、上記実施例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの両端近傍部は、跳ね上がるように、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に拡径していた。
【0046】
〔比較例2〕
上記比較例1において、弾性層の両端縁部を切断除去した後、中間層(第1被覆層)の形成に先立って、弾性層の左右両端の外周縁部を面取り(C1)した。それ以外は、上記比較例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの両端近傍部は、跳ね上がり、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に拡径していた。
【0047】
〔比較例3〕
上記比較例1において、弾性層の両端縁部を切断除去する際に、切断面(図2の鎖線A参照)と軸体の軸とのなす角度(弾性層が残る側の角度)が80°になるよう切断した。すなわち、上記切断面は、円錐台(軸体の直径を上面の直径とし、弾性層の直径を下面の直径とする円錐台)の側面のようになっている。それ以外は、上記比較例1と同様にした。そして、得られたロール体および現像ロールの両端近傍部は、跳ね上がり、弾性層の左右両端縁に向かって徐々に拡径していた。
【0048】
〔径差〕
このようにして得られた実施例1〜9および比較例1〜3の各現像ロールについて、表層の直径を軸方向に沿う異なる位置で測定した。すなわち、弾性層の両端縁から内側に1mmの位置での表層の直径をそれぞれD0,D6とし、大きい方をDmax とした。また、弾性層の両端縁から内側に10mmの位置での表層の直径をそれぞれD1,D5とし、弾性層の両端縁から内側に67mmの位置での表層の直径をそれぞれD2,D4とし、弾性層の軸方向中央の位置での表層の直径をD3とし、D1〜D5の平均値をDave とした。そして、Dmax −Dave の値を径差とし、下記の表1に併せて表記した。
【0049】
〔回転駆動に要するトルク〕
上記実施例1〜9および比較例1〜3の各現像ロールを、感光ドラムに9.8Nの荷重で当接させ、現像ロールの回転駆動に要するトルクを測定した。このトルクの測定は、トルク測定機(1.5BTG、東日製作所社製)を用いて行った。そして、その測定したトルクを下記の表1に併せて表記した。
【0050】
〔画像むらの有無〕
上記実施例1〜9および比較例1〜3の各現像ロールを、接触現像方式を採用するレーザープリンター(LBP−2510、キャノン社製)に組み込み、23℃,53%RHの環境下で、べた画像の画像出しを行った。そして、その画像について、画像むら(濃淡むら)の有無を目視により行った。その結果、画像に画像むらが全く無いものを○、画像に軽微な画像むらが有るものを△、画像に画像むらが明確に確認できるものを×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0051】
〔両端近傍部の損傷の有無〕
さらに、2000枚の画像出しを行った後、上記レーザープリンターから現像ロールを取り出し、両端近傍部の損傷状況を目視により確認した。その結果、欠損も表層剥がれも無いものを○、欠損または表層剥がれの前兆がみられるものを△、欠損または表層剥がれが確認できるものを×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0052】
〔トナー漏れの有無〕
上記2000枚の画像出しを行った後、目視により、トナーによる実機内の汚れを評価した。その結果、トナーによる実機内の汚れがないものはトナー漏れがなかったとして◎、トナーによる実機内の汚れが僅かであり画像を汚さない程度のものを○、トナーによる実機内の汚れが少し見られ画像を汚す可能性があるものを△、トナーによる実機内の汚れが目立つものはトナー漏れがあったとして×と評価し、下記の表1に併せて表記した。
【0053】
【表1】

【0054】
上記表1の結果から、実施例1〜9の現像ロールは、比較例1〜3の現像ロールと比較すると、径差が小さくなっており、両端近傍の跳ね上がりによる拡径が小さくなっていることがわかる。そして、その小さい径差により、回転駆動に要するトルクも小さくなっており、画像の画像むらも両端近傍部の損傷も無く、トナー漏れも充分に防止されている。特に、径差が0以上である実施例2,4,6〜9では、トナー漏れ防止に優れており、比較例1,2では、径差が大き過ぎるために、端部損傷が生じてトナー漏れ防止に劣っている。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の現像ロールの第1の実施の形態を示す断面図である。
【図2】上記現像ロールの弾性層の製造過程を示す断面図である。
【図3】上記現像ロールと感光ドラムとの当接状態を示す説明図である。
【図4】本発明の現像ロールの第2の実施の形態を示す断面図である。
【図5】本発明の現像ロールの第3の実施の形態を示す断面図である。
【図6】本発明の現像ロールの第4の実施の形態を示す断面図である。
【図7】従来の現像ロールの弾性層の状態を示す断面図である。
【符号の説明】
【0056】
1 軸体
2 弾性層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸体と、この軸体の外周面に金型成形により形成される弾性層とを備え、その弾性層の外周面が金型の型面の転写面になっている現像ロールであって、上記弾性層の軸方向中央部分に対応する軸体が均一外径に形成され、その軸方向中央部分よりも軸方向外側部分の軸体が、上記軸方向中央部分の軸体の外径を基準にし、それぞれ弾性層の左右両端縁に向かって徐々に縮径されており、上記弾性層の外径が、上記軸方向中央部分では均一径に形成され、上記軸体の縮径部分に対応する部分では上記軸方向中央部分での外径よりも15μm大きい値以下の径に形成されていることを特徴とする現像ロール。
【請求項2】
上記軸体の各縮径部分の軸方向の長さが、弾性層の軸方向の長さの2〜15%の範囲内であり、上記弾性層の左右両端縁に対応する軸体の縮径部外径が、軸体の軸方向中央部分の基準外径の50〜97%の範囲内である請求項1記載の現像ロール。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−126719(P2006−126719A)
【公開日】平成18年5月18日(2006.5.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−318127(P2004−318127)
【出願日】平成16年11月1日(2004.11.1)
【出願人】(000219602)東海ゴム工業株式会社 (1,983)
【Fターム(参考)】