説明

現像剤担持体、それを用いた現像装置

【課題】異なる環境条件下においても、使用初期から耐久後半まで、高品位の画像を安定して得られる現像剤担持体、および該現像剤担持体を用いた現像装置を提供すること。
【解決手段】基体と、該基体表面に形成された樹脂層を有する現像剤担持体において、該樹脂層が少なくとも以下の(A)乃至(E)を含む塗料組成物を熱硬化して得られることを特徴とする現像剤担持体。(A)結着樹脂としての熱硬化性樹脂(B)溶媒としての炭素数1乃至4のアルコール(C)下式(1)で示されるユニットを少なくとも含有する樹脂(D)X線回折で測定される黒鉛(002)面の面間隔が0.3370nm以上0.3450nm以下である黒鉛化カーボンブラック(E)pH5.0以下の酸性カーボンブラック

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像形成装置に用いられる現像剤担持体および現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
トナーの摩擦電荷量は現像剤担持体の表面状態に影響を受け易い。特許文献1では、現像剤担持体の表面に荷電制御剤を含有させた樹脂層を設けて、摩擦帯電量分布を制御している。また、特許文献2では、荷電制御剤として第4級アンモニウム塩基含有共重合体を樹脂層に含有してなる現像剤担持体が提案されている。この構成によると、第4級アンモニウム塩基の負極性カウンターイオンがイオン化することで、荷電制御剤がイオン導電性となり、樹脂層の体積抵抗はある程度小さくなる。それにより、ゴーストやかぶりのような画像不良が改善される。さらに、特許文献3では、正帯電性樹脂と特定のカーボンブラックを樹脂層に含有してなる現像剤担持体が提案されている。このような構成により、小粒径で潤滑性のあるカーボンブラックを用いることで、トナーに対して均一で高い摩擦帯電を付与することができる。また、トナー融着やトナー付着による現像剤担持体の表面の汚染を抑制できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平08−030088号公報
【特許文献2】特開2001−312136号公報
【特許文献3】特開2007−025593号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、電子写真画像の高画質化への要求に応えるために、球形化および小粒径化されたトナーが主流になってきている。一般に、高画質化のためには、静電潜像をより忠実に現像するために、現像剤担持体によるトナーの摩擦帯電量のより均一な制御が必要である。しかしながら、小粒径化・球形化したトナーに対しては、上記特許文献1〜3に記載の現像剤担持体は、この点について未だ改善の余地があるとの認識を本発明者らは得ている。すなわち、球形化、小粒径化したトナーに対する安定した摩擦電荷の付与性能と、当該性能が長期の使用によっても低下し難い耐久性と、トナーの耐汚染性とをより高いレベルで兼ね備えた現像剤担持体の提供が必要であることを本発明者等は認識した。そこで本発明の目的は、長期の使用によっても、トナーに対し十分高い摩擦帯電性を迅速に与えつつ均一な摩擦帯電量分布を与えることが可能であり、また、耐汚染性に優れた現像剤担持体およびそれを用いた現像装置の提供にある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係る現像剤担持体は、基体と、該基体表面に形成された樹脂層を有する現像剤担持体において、該樹脂層は以下の(A)乃至(E)を含む塗料組成物を熱硬化して得られるものであることを特徴とする:
(A)結着樹脂としての熱硬化性樹脂
(B)溶媒としての炭素数1乃至4のアルコール
(C)下記式(1)で示されるユニットを有する樹脂
(D)X線回折で測定される黒鉛(002)面の面間隔が0.3370nm以上0.3450nm以下である黒鉛化カーボンブラック
(E)pH5.0以下の酸性カーボンブラック
【0006】
【化1】

[式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。R、RおよびRから選ばれる一つまたは二つ以上は炭素数4乃至18のアルキル基を示し、残りの基は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。Xは−COO−、−CONH−または−C−である。Aはアニオンを示す。]。
【0007】
本発明に係る現像装置は、トナー粒子を有する現像剤と、該現像剤を収容している容器と、該容器に収容された該現像剤を担持し、搬送するための現像剤担持体とを有している現像装置であって、該現像剤担持体が上記の現像剤担持体であることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、長期の使用によっても、トナーに対し十分高い摩擦帯電性を迅速に与えつつ均一な摩擦帯電量分布を与えることが可能であり、また、耐汚染性に優れた現像剤担持体を得ることができる。また、ブロッチやゴーストの抑制された、高品位な電子写真画像の安定的な形成に資する現像装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明に係る現像装置の一例を示す断面図である。
【図2】本発明に係る現像装置の他の例を示す断面図である。
【図3】本発明に係る現像装置の他の例を示す断面図である。
【図4】本発明に係る現像装置の他の例を示す断面図である。
【図5】本発明に係る現像装置の更に他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、好ましい実施の形態を挙げて本発明について詳述する。
【0011】
本発明に係る現像剤担持体は、基体と、該基体表面に形成された樹脂層を有している。前記樹脂層は以下の(A)乃至(E)を含む塗料組成物を熱硬化して得られる。
(A)結着樹脂としての熱硬化性樹脂、
(B)溶媒としての炭素数1乃至4のアルコール、
(C)下記式(1)で示されるユニットを有する樹脂、
(D)X線回折で測定される黒鉛(002)面の面間隔が0.3370nm以上0.3450nm以下である黒鉛化カーボンブラック、
(E)pH5.0以下の酸性カーボンブラック。
【0012】
【化2】

式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。R、RおよびRから選ばれる一つまたは二つ以上は炭素数4乃至18のアルキル基を示し、残りの基は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。Xは−COO−、−CONH−または−C−のいずれかである。Aはアニオンを示す。
【0013】
<(A)成分>
本発明の現像剤担持体の基体表面に形成された樹脂層は結着樹脂として熱硬化性樹脂を含有している。熱硬化性樹脂を結着樹脂とすることで、樹脂層の耐久性・環境安定性が向上する。熱硬化性樹脂としては、特に、強靭性・耐久性の面から、フェノール樹脂、メラミン樹脂、尿素樹脂、ベンゾグアナミン樹脂が好ましい。中でも、樹脂層の耐摩耗性を向上させる点、環境安定性に優れる点、後述する(C)成分との相溶性に優れることからフェノール樹脂がより好ましい。また、これら熱硬化性樹脂の中でも、特にメタノール、エタノール、プロピルアルコール、ブタノールのような低級アルコールに可溶なものは、(C)成分との相溶性が特に良好なために好ましい。
【0014】
<(C)成分>
本発明の現像剤担持体の基体表面に形成された樹脂層は、前記式(1)で示されるユニットを少なくとも含有する樹脂を含む。式(1)で示されるユニットを含有する樹脂を含むことにより、当該樹脂層のトナーに対する摩擦帯電付与能を向上させることができる。また、式(1)で示されるユニットがイオン導電性を有しているため、従来の荷電制御剤に比べて樹脂層の導電性が向上し、トナーに対する過剰な摩擦帯電を抑制できる。
【0015】
前記式(1)で示される樹脂の中でも下記(a)乃至(d)の要件を満たす構造のものが特に好適に用いられる。
(a)Rがメチル基、Rがメチレン基またはエチレン基であり、
(b)R、RおよびRから選ばれる一つまたは二つ以上が、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基およびテトラデシル基からなる群から選ばれる何れかであり、
(c)R、RおよびRのうちでオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基およびテトラデシル基でない基は、メチル基、エチル基およびプロピル基から選ばれる何れかであり、かつ、
(d)Aが硫黄原子またはハロゲン原子を含むアニオンであるもの。
【0016】
炭素数4乃至18の長鎖アルキル基が、前記式(1)中のR、RおよびRから選ばれる一つまたは二つ以上に導入されることにより、帯電サイトであるユニットが結着樹脂中に均一に存在することとなる。その結果として、トナーに対して均一な摩擦帯電を付与できる現像剤担持体を得ることができる。特に、Rがオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基またはテトラデシル基であり、かつ、RおよびRが各々独立にメチル基、エチル基またはプロピル基であるユニットが好ましい。より均一な摩擦帯電を付与することのできる現像剤担持体を得られるためである。また、ユニット内に長鎖アルキル基が存在することにより、当該ユニットは樹脂層の基体側よりも表面側により多く存在する傾向を示す。式(1)で示されるユニットはカチオン性を有することから、結果的に樹脂層の表面側にカチオン性ユニットが増加し、トナーに対する負帯電付与能がより一層向上した現像剤担持体を得られる。
【0017】
は、ハロゲン類、塩酸、臭化水素酸、硫酸、リン酸、硝酸等の無機酸類、カルボン酸、スルホン酸のような有機酸類におけるアニオンである。好ましくは、硫黄原子もしくはハロゲン原子を含むアニオンであり、熱硬化性樹脂との相溶性が良いことからBr、Clのようなハロゲンであることがより好ましい。
【0018】
(C)成分としての樹脂は、第4級アンモニウム塩基を有するモノマーを重合して製造できる。第4級アンモニウム塩基を有するモノマーとしては、下記式(2)で示されるユニットであるモノマーが挙げられる。
【0019】
【化3】

式(2)中の、R乃至RXおよびAの定義は、前記式(1)のものと同じである。
【0020】
(C)成分として使用可能な樹脂の製造には、公知の重合方法を用いることができる。その方法としては、塊状重合法、溶液重合法、乳化重合法、懸濁重合法が挙げられるが、反応を容易に制御できる点から溶液重合法が好ましい。溶液重合法で使用する溶媒としては、メタノール、エタノール、n−ブタノール、イソプロピルアルコールのような低級アルコールである。その他、必要に応じてキシレン、トルエン、酢酸エチル、酢酸イソブチル、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、N,N−ジメチルホルムアミド、ジメチルホルムアミドのような溶媒を混合して使用しても構わないが、本発明で用いる熱硬化性結着樹脂との相溶性を向上する点において、主に低級アルコールを溶媒として使用することが好ましい。溶媒とモノマー成分の比は、溶媒100質量部に対してモノマー成分30質量部以上400質量部以下で行うのが、モノマーの反応速度の観点から好ましい。
【0021】
モノマーの重合は、例えば、不活性ガス雰囲気下において、モノマーを重合開始剤の存在下で温度50℃以上100℃以下に加熱して行うことができる。重合するために使用する重合開始剤の例としては、以下のものが挙げられる。t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、クミルパーピバレート、t−ブチルパーオキシラウレート、ベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)。重合開始剤は単独で、または2種以上のモノマーを組み合わせて用いることができる。通常は重合開始剤をモノマー溶液に添加して重合を開始するが、未反応モノマーを低減するために重合開始剤の一部を重合工程の途中に添加しても良い。また、紫外線や電子線の照射によって重合を促進させる方法も使用することが可能であり、これらの手法を組み合わせても構わない。
【0022】
重合開始剤の使用量は、モノマー成分100質量部に対し0.05質量部以上30質量部以下とすることが、未反応モノマーの低減や反応速度の適正化の観点から好ましく、より好ましくは0.1質量部以上15質量部以下である。重合反応の温度としては、使用する溶媒、重合開始剤、モノマー成分の組成に応じて設定することができるが、温度40℃以上150℃以下で行うのが、反応速度の適正化や溶媒の揮発を防ぐ点で好ましい。
【0023】
また、式(2)で示されるユニットであるモノマーは、下記式(3)で示されるユニットであるモノマーを4級化剤で4級化したものを用いることができる。
【0024】
【化4】

式(3)中の、R乃至R、Xの定義は前記式(1)のものと同じである。
【0025】
4級化剤の具体例を以下に挙げる。
・アルキルハライド(ブチルブロマイド、2−エチルヘキシルブロマイド、オクチルブロマイド、ラウリルブロマイド、ステアリルブロマイド、ブチルクロライド、2−エチルヘキシルクロライド、オクチルクロライド、ラウリルクロライド、ステアリルクロライド等)。
・有機酸化合物(p−トルエンスルホン酸メチル、ジメチル硫酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸メチル等)。
【0026】
4級化剤の使用量は、式(3)で示されるユニットである単量体1モルに対して、0.8モル以上1.0モル以下が好ましい。何故なら、未反応の4級化剤を無くし、多くのモノマーを4級化できるためである。かかるモノマーの4級化は、例えば、モノマーと4級化剤とを、溶媒中温度60℃以上90℃以下に加熱することにより行うことができる。
【0027】
また、上記式(3)で示されるユニットのモノマーを重合させた後に、前記4級化剤で4級化させることによって、所望の4級アンモニウム塩基含有重合体を得ることも可能である。その他に、例えば、式(3)で示されるユニットの単量体をメチルクロライドのようなアルキルハライドで4級化を行い重合させる。得られた第4級アンモニウム塩基含有重合体を、p−トルエンスルホン酸、ヒドロキシナフタレンスルホン酸のような酸で処理して対イオン交換を行い、目的のアニオン種とした第4級アンモニウム塩基含有重合体とすることも可能である。
【0028】
(C)成分としての樹脂は、式(1)で示されるユニット以外に一種または複数種の他のユニットを有しても良い。当該樹脂中に含有する他のユニットの含有率としては、当該樹脂を構成するユニット総数[mol]の50mol%以下であることが好ましい。他のユニットの含有率を50mol%以下とすることで、式(1)で示されるユニットの導入による効果を得やすい。(C)成分の配合量は、結着樹脂100質量部に対して1質量部以上40質量部以下であることが好ましい。(C)成分の配合量をこの範囲にすることで、熱硬化性樹脂に添加することによる摩擦帯電の制御効果を発揮することができ、かつ、結着樹脂中で均一に存在することができるため、均一なトナー摩擦帯電量分布が得られる。
【0029】
式(1)で示されるユニットと他のユニットとを含む樹脂の具体例として、例えば、式(1)で示されるユニットと下記式(4)で示されるユニットを含有した樹脂を挙げることができる。
【0030】
【化5】

式(4)中の、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数8乃至18のアルキル基を示す。
【0031】
式(4)で示されるユニットとしてより好ましい形態は、Rがメチル基であって、Rがデシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基、テトラデシル基の中から選ばれる長鎖アルキル基である。アルキル基が前述のような長鎖であることにより、(A)成分に対する(C)成分の相溶性が高まる。よって、(C)成分が結着樹脂中に均一に存在することとなり、トナーに対して均一な摩擦帯電を付与することが可能となる。また、樹脂中への導電性粒子等の顔料分散性も向上し易くなるため、抵抗分布も均一となり局所的なトナーのチャージアップが抑制される。
【0032】
を炭素数8〜18のアルキル基とすることにより、疎水性を相対的に高めることができるため、結着樹脂に対する(C)成分の相溶性が維持される。その結果、(C)成分を樹脂層中により均一に存在させることができる。(C)成分の分布が不均一である樹脂層にトナーが接触する場合、(C)成分の有無によって摩擦帯電に差が生じるため、トナーの摩擦帯電量の分布が不均一となりやすい。
【0033】
一方、Rを炭素数18以下の長鎖アルキル基とすることで、(C)成分の結晶性が高まることによる(C)成分と結着樹脂または溶媒との相溶性の低下を抑制できる。(C)成分の結晶性が高すぎる場合、結着樹脂と相分離し易いため、結着樹脂中の(C)成分の存在が不均一になりやすくなる。このような樹脂層と接したトナーには不均一な摩擦帯電量の分布を持ちやすい。
【0034】
(C)成分に係るイオン導電性の樹脂を含む樹脂層には、トナーに過剰に電荷が付与されたときに、当該過剰電荷を樹脂層に流すために、導電性を有する必要がある。そのために、当該樹脂層には導電性粒子を含有させる必要がある。ここで、(C)成分とともに樹脂層に導電性粒子を含有させる際に重要なことは、導電性粒子を樹脂層中で凝集させないことである。樹脂層中で導電性粒子の凝集物が不均一に存在すると、過剰に帯電したトナーの当該過剰電荷を樹脂層に円滑に流すことができず、電子写真画像に過剰に帯電したトナーに起因するゴーストやブロッチのような画像不良が発生する場合があった。つまり、トナーに均一に高い摩擦電荷を付与し得る樹脂層とするためには、樹脂層の表面潤滑性を向上させ、かつ、導電剤を樹脂層中に均一に存在させる必要があるのである。
【0035】
<(D)、(E)成分>
上記の課題は、導電剤として黒鉛化カーボンブラックと酸性カーボンブラックを併用することで解決し得ることを本発明者らは見出した。すなわち、黒鉛化カーボンブラックは黒鉛化過程で官能基が除去され、電気的に中性である。そのため、黒鉛化カーボンブラック同士は凝集しやすい傾向がある。しかし、樹脂層形成用の塗料を調製の際に、黒鉛化カーボンブラックを酸性カーボンブラックとともに分散させると、黒鉛化カーボンブラックの凝集物が徐々にほぐされ、黒鉛化カーボンブラックが均一に分散された塗料を得ることができる。また、かかる塗料を用いることで、黒鉛化カーボンブラックが均一に分散された樹脂層を備えた現像剤担持体を得ることができる。樹脂層形成用の塗料の調製の際に、黒鉛化カーボンブラックを酸性カーボンブラックとともに分散させると黒鉛化カーボンブラックが均一に分散された塗料を得られる理由は以下のように考えられる。一般に、pHが5.0以下の酸性カーボンブラック同士は、斥力が作用し、アルコール系樹脂溶液中への分散性が非常に良好であることが知られている。すなわち、塗料中には均一に分散している。また、酸性カーボンブラックは相対的に負に帯電されやすい。一方、黒鉛化カーボンブラックは、酸性カーボンブラックとの接触によって徐々に正帯電性を呈するようになる。その結果、均一分散している酸性カーボンブラックに電気的に引き付けられ、凝集がほぐされていくものと考えられる。
【0036】
かかる塗料を用いて形成された樹脂層は、潤滑性および摩擦帯電付与性に優れた黒鉛化カーボンブラックと酸性カーボンブラックが、現像剤担持体表面に均一に存在する。そのため、過帯電トナーの発生抑制やトナーの現像剤担持体表面への付着を抑制できる。その結果、ゴーストやブロッチのような画像不良が発生することなく、良好な画像濃度が得られる。
【0037】
(D)成分の黒鉛化カーボンブラックは、X線回折から得られる黒鉛(002)面の面間隔が0.3370nm〜0.3450nmである。炭素原子の六方網目平面が規則的に積み重なり、完全な黒鉛構造を有する黒鉛の(002)面の面間隔は0.3354nm(3.354オングストローム)であることが知られている。また、黒鉛ほどには結晶構造が発達していない炭素前駆体の面間隔が0.3470〜0.3600nm(3.47〜3.60オングストローム)であることが知られている。すなわち、黒鉛(002)面の面間隔の値は、グラファイト様の結晶化の発達の程度を示すパラメータである。従って、本発明に係る黒鉛化カーボンブラックは、芳香族網状平面が相当に高度に規則的に積み重なっているものの、その規則性は、黒鉛(グラファイト)が有する完全な層状構造を有するまでには至っていない。ここで、黒鉛(グラファイト)の六方網目平面同士はファン・デア・ワールス力で結ばれているだけであるため結合力が弱いため、黒鉛は自己潤滑性を有し、粉砕によって容易に薄片化される特性を有する。また、黒鉛の六方網目平面内には自由電子のように運動するπ電子が存在するため、高い導電性を示す。従って、本発明に係る黒鉛化カーボンブラックは、通常のカーボンブラックと比較すると、表面およびその近傍のグラファイト様の結晶構造により、高い潤滑性と導電性を有する。そのため、当該黒鉛化カーボンブラックは塗料中での分散性に関し、通常のカーボンブラックと比較して良好である。また、当該黒鉛化カーボンブラックを樹脂層に含有させた場合、当該黒鉛化カーボンブラックが有する優れた自己潤滑性により、現像剤担持体の表面へのトナーの付着を軽減させることができる。さらに、当該黒鉛化カーボンブラックを樹脂層に含有させた場合、当該黒鉛化カーボンブラックが有する優れた導電性により、樹脂層に高い導電性を付与でき、トナーの過剰帯電の抑制に資する現像剤担持体を得ることができる。かかる黒鉛化カーボンブラックは、通常のカーボンブラックを黒鉛坩堝に充填し、非酸化性雰囲気下で1700〜3200℃で焼成することにより得ることができる。ところで、本発明に係る黒鉛化カーボンブラックは、バルクメソフェーズピッチまたはメソカーボンを非酸化性雰囲気下で焼成することで製造される黒鉛化粒子とは全く異なるものである。バルクメソフェーズピッチはコールタールピッチから溶剤分別により抽出したβ−レジンを水素添加して得られる有機化合物である。また、メソカーボンマイクロビーズも、石炭系重質油または石油系重質油を重縮合させ、それを精製することで製造される有機化合物である。そして、バルクメソフェーズピッチ及びメソカーボンマイクロビーズは、易黒鉛化性炭素材料として知られているものである。易黒鉛化性炭素材料とは、2500℃以上の高温での加熱処理によって、三次元的な積層規則性を持つ黒鉛構造が生成し易い炭素材料であり、コークスなど結晶格子の相互配列が整っているものが、黒鉛構造に変化しやすい。従って、バルクメソフェーズピッチまたはメソカーボンを非酸化性雰囲気下で焼成して得られる黒鉛化粒子は、芯部分まで黒鉛化が進んでいる。
一方、(D)成分の原料であるカーボンブラックは無機化合物である。また、カーボンブラックは、難黒鉛化性炭素材料として知られているものである。難黒鉛化性炭素材料とは、不活性雰囲気中で加熱しても極めて黒鉛になりにくい炭素材料をいう。カーボンブラックは、炭素五員環と六員環で構成される曲面構造、又は炭素六員環が発達していない平面構造を有すると考えられている。かかる立体的制約から、カーボンブラックは、容易には黒鉛構造に変化し難いものと考えられる。また、カーボンブラックは、平均一次粒径が10〜100nmと極めて小さいことも、黒鉛構造を取りにくい理由の一つとして挙げられる。上記のとおり、カーボンブラックは、焼成しても炭素層面が配向しにくく、黒鉛化が進みにくいため、カーボンブラックから得られる(D)成分としての黒鉛化カーボンブラックは、その内部まではグラファイト化されておらず、表面とその近傍だけがグラファイト化されていると考えられる。この点において、本発明に係る黒鉛化カーボンブラックと、上記黒鉛化粒子とは全く異質なものと考えられるべきである。
【0038】
ところで、本発明に係る黒鉛化カーボンブラックは、表面に有機基を共有結合させて、その表面を改質処理してもよい。黒鉛化カーボンブラックの表面を改質処理する方法として、例えば、チタン、アルミニウム、ジルコニウム、ケイ素の中から選ばれる少なくとも一つ以上の元素を有する有機金属化合物によって行う方法、ラジカル重合開始剤の存在下、加熱する方法が挙げられる。
【0039】
(D)成分の配合量は、(A)成分100質量部に対して1質量部〜100質量部が好ましい。黒鉛化カーボンブラックの配合量をこの範囲とすることで樹脂層の強度を維持しつつ、所望の抵抗値や潤滑性をもった現像剤担持体を得ることができる。
【0040】
(E)成分の配合量は、(D)成分100質量部に対して5質量部〜50質量部が好ましい。酸性カーボンブラックの配合量をこの範囲とすることで樹脂層の強度を損なうことなく、導電剤が均一に存在した現像剤担持体を得ることができる。また、黒鉛化カーボンブラックの比率を大きくすることで、潤滑性を有する現像剤担持体が得られる。
【0041】
本発明に係る樹脂層中の、黒鉛化カーボンブラックおよび酸性カーボンブラックの存在は、透過型電子顕微鏡(TEM)やラマン分光法により確認することができる。また、樹脂層中には、黒鉛化カーボンブラックと酸性カーボンブラック以外の導電剤を樹脂層中に含有させてもよい。
【0042】
本発明における現像剤担持体の樹脂層の体積抵抗は、10−1Ω・cm以上10Ω・cm以下であることが好ましい。現像剤担持体の樹脂層の体積抵抗をこの値の範囲とすることで、チャージアップによるトナーの現像剤担持体上への固着や、トナーのチャージアップに伴って生じる現像剤担持体の表面からトナーへの摩擦帯電付与不良を防ぐことができる。特に現像剤担持体の樹脂層の体積抵抗値が10Ω・cmを超えるとトナーへの摩擦帯電付与不良が発生し易く、その結果、ブロッチ(斑点状、さざ波状もしくは絨毯状画像)や画像濃度低下が発生し易くなる。
【0043】
また、本発明においては、導電性樹脂被覆層中に表面粗さを均一にし、且つ適切な表面粗さを維持するために、凹凸形成の為の粗し粒子を添加することができる。粗し粒子として、特に限定するものではないが、具体的には以下のものが挙げられる。EPDM、NBR、SBR、CR、シリコーンゴムのようなゴム粒子;ポリスチレン、ポリオレフィン、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリエステル、ポリアミド系の熱可塑性エラストマー(TPE)のようなエラストマー粒子;PMMA、ウレタン樹脂、フッ素樹脂、シリコーン樹脂、フェノール樹脂、ナフタレン樹脂、フラン樹脂、キシレン樹脂、ジビニルベンゼン重合体、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、ポリアクリロニトリル樹脂のような樹脂粒子、アルミナ、酸化亜鉛、酸化チタン、酸化錫のような酸化物粒子;炭素化粒子、導電処理を施した樹脂粒子のような導電性粒子、その他、例えばイミダゾール化合物のような有機化合物を粒子状にして用いることも可能である。
【0044】
本発明に用いられる現像剤担持体の基体としては、円筒状部材、円柱状部材、ベルト状部材のような部材が挙げられる。かかる基体の材質としてはアルミニウム、ステンレス鋼、真鍮のような非磁性の金属または合金が好適に用いられる。また、感光ドラムに直接接触させる現像方法を用いる場合の基体としては、導電性軸体と導電性軸体の周囲に設けられた弾性層を有する円柱状部材が好ましく用いられる。導電性軸体としては、導電性を有するものが用いられ、例えばアルミニウムや鉄、ステンレス(SUS)を挙げることができる。弾性層としては、シリコーンゴム、EPDM若しくはウレタンのようなエラストマー、又はその他の樹脂成型体が用いられる。
【0045】
また、磁性トナーを用いる現像方法においては、トナーを現像剤担持体上に磁気的に吸引かつ保持するために、磁石が内設されているマグネットローラーを現像剤担持体内に配置する。その場合、基体を円筒状としその内部にマグネットローラーを配置すればよい。
【0046】
樹脂層の形成方法は、例えば、樹脂層用の各成分を低級アルコール中に分散混合して塗料化し、基体上に塗工し、乾燥固化あるいは硬化することにより形成可能である。各成分の塗料液中への分散混合には、サンドミル、ペイントシェーカー、ダイノミル、パールミルのようなビーズを利用した公知の分散装置が好適に利用可能である。また塗工方法としては、ディッピング法、スプレー法、ロールコート法のような公知の方法が適用可能である。
【0047】
現像剤担持体の表面粗さの目安としては、算術平均粗さRa(JIS B0601−2001)が0.4μm以上2.0μm以下である。また、導電性樹脂被覆層の厚さの目安としては、均一な膜厚を得やすい4μm以上20μm以下である。
【0048】
<現像装置>
次に、本発明に係る現像装置について説明する。図1は、本発明の現像剤担持体を有する一実施形態の現像装置の模式断面図を示す。図1において、公知のプロセスにより形成された静電潜像を保持する静電潜像担持体、例えば、電子写真感光ドラム501は、矢印B方向に回転される。現像剤担持体としての現像スリーブ508は、現像剤を収容している現像剤容器としてのホッパー503によって供給された、磁性トナーを有する一成分系現像剤504を担持して矢印A方向に回転する。それによって、現像スリーブ508と感光ドラム501とが対向している現像領域Dに現像剤504を搬送する。図1に示すように、現像スリーブ508内には、現像剤504を現像スリーブ508上に磁気的に吸引且つ保持するために、磁石が内接されているマグネットローラー505が配置されている。
【0049】
現像スリーブ508は、基体としての金属円筒管506上に被覆された導電性樹脂被覆層507を有する。ホッパー503中には、現像剤504を攪拌するための攪拌翼510が設けられている。513は、現像スリーブ508とマゲネットローラー505とが非接触状態にあることを示す間隙である。現像剤504は、現像剤を構成する磁性トナー相互間および現像スリーブ508上の導電性樹脂被覆層507との摩擦により、感光ドラム501上の静電潜像を現像することが可能な摩擦帯電電荷を得る。図1の例では、現像領域Dに搬送される現像剤504の層厚を規制するために、現像剤層厚規制部材として弾性規制ブレード511を使用している。この弾性規制ブレード511は、ウレタンゴム、シリコーンゴムのようなゴム弾性を有する材料、或いはリン青銅、ステンレス鋼のような金属弾性を有する材料からなる。この弾性規制ブレード511を現像スリーブ508の回転方向と逆方向の向きで圧接させている。これらの現像装置では、現像スリーブ508に対して、現像剤層を介して現像剤層厚規制部材を弾性的に圧接することによって、現像スリーブ上に現像剤の薄層を形成する。
【0050】
このようにして、現像スリーブ508上に形成される現像剤504の薄層の厚みは、現像領域Dにおける現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙よりも更に薄いものであることが好ましい。本発明の現像剤担持体は、以上のような現像剤の薄層により静電潜像を現像する方式の現像装置、即ち、非接触型現像装置に組み込むのが特に有効である。現像領域Dにおいて、現像剤層の厚みが現像スリーブ508と感光ドラム501との間の最小間隙以上の厚みである現像装置、即ち、接触型現像装置にも本発明の現像剤担持体を適用することができる。説明の煩雑を避けるため、以下の説明では、上記したような非接触型現像装置を例に採って行う。
【0051】
上記現像スリーブ508に担持された磁性トナーを有する一成分系現像剤504を飛翔させるため、上記現像スリーブ508には、バイアス手段としての現像バイアス電源509により現像バイアス電圧が印加される。この現像バイアス電圧として直流電圧を使用するときに、静電潜像の画像部(現像剤504が付着して可視化される領域)の電位と背景部の電位との間の値の電圧を現像スリーブ508に印加するのが好ましい。
【0052】
また、高電位部と低電位部を有する静電潜像の高電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、正規現像の場合には、静電潜像の極性と逆極性に帯電するトナーを使用する。高電位部と低電位部を有する静電潜像の低電位部にトナーを付着させて可視化する、所謂、反転現像の場合には、静電潜像の極性と同極性に帯電するトナーを使用する。ここで、高電位、低電位というのは、絶対値による表現である。これらいずれの場合にも、現像剤504は少なくとも現像スリーブ508との摩擦により帯電する。
【0053】
図2および図3は、磁性トナーを用いる現像装置を示す模式断面図である。図2の現像装置では、現像剤層厚規制部材として強磁性金属製の磁性規制ブレード502を使用している。現像スリーブ508の表面から約50〜500μmのギャップ幅を持って現像スリーブ508に臨むように、ブレード502をホッパー503から垂下している。マグネットローラー505の磁極N1からの磁力線が磁性規制ブレード502に集中することにより、現像スリーブ508上に現像剤504の薄層が形成される。この磁性規制ブレード502に代えて非磁性ブレードを使用することもできる。図3の現像装置では、弾性規制ブレード511を現像スリーブ508の回転方向と順方向の向きで圧接させており、更に剥ぎ取り部材512が設置されている。剥ぎ取り部材としては樹脂、ゴム、スポンジのようなローラー部材や更に、ベルト部材、およびブラシ部材が用いられる。図3においてローラー状の剥ぎ取り部材512は、現像スリーブ508とは反対方向に回転されている。感光体ドラム501に現像移行されなかった現像剤を剥ぎ取り部材512により一旦スリーブ表面から剥ぎ取り、スリーブ上の不動トナーの発生を防いだり、現像剤の帯電を均一化したりする働きを有する。
【0054】
図4は、トナー504として非磁性一成分現像剤を用いる場合の現像装置を表しており、トナーは非磁性であるため、現像スリーブ内の磁石は存在せず、スリーブとしては、中実の金属棒514が用いられている。非磁性トナーは層厚規制ブレード511、或いはスリーブコート層517との摩擦により摩擦帯電され、現像スリーブ508の表面上に担持され搬送される。図5においては、上記に加えて剥ぎ取り部材512が設置されている。また、図5に示した例では、現像スリーブ508に、金属の円筒管が用いられている。図2乃至5の現像装置における他の基本的構成は、図1に示した現像装置と同じであり、同符号のものは、基本的には同一の部材であることを示す。
【0055】
次に、本発明の現像剤担持体を組み込んだ現像装置に用いられるトナー粒子を有する現像剤について説明する。本発明のトナー粒子は、粉砕法、或いは重合法によって製造することができる。
【0056】
球形化度を高めたトナー粒子は、一般的に高帯電量であり使用状況によっては摩擦帯電量が高くなり過ぎてチャージアップを生じる場合がある。特に、本発明で用いられる現像剤担持体は、このような球形化度を高めたトナー粒子に対して、使用初期から耐久が進んだ場合でもチャージアップを生じる事無く適切な摩擦帯電付与能力を維持することができる。よって、このような高球形化度トナーとの組合せでは、本発明の現像剤担持体はさらに好適に用いることができる。また、本発明に使用できるトナーは、さらに高画質のため、より微小な潜像ドットを忠実に現像するためには、本発明のトナーの重量平均粒径は3μm以上10μm以下であることが好ましい。トナーには摩擦帯電特性を向上させる目的で、荷電制御剤をトナー粒子に包含させる(内添)、又はトナー粒子と混合して用いる(外添)ことができる。さらに、トナーには、環境安定性、摩擦帯電安定性、現像性、流動性、保存性向上およびクリーニング性向上のために、シリカ、酸化チタン、アルミナのような無機微粉体を外添すること、すなわちトナー表面近傍に存在させていることが好ましい。
【0057】
本発明で用いられる現像剤担持体は、黒鉛化カーボンブラックと酸性カーボンブラックを組み合わせることで、現像剤担持体表面に均一な潤滑性を付与している。そのため、融点の低いワックスを用いたトナーに対して、トナーによる現像剤担持体汚染などの弊害がなく、本発明の現像剤担持体は好適に用いることができる。
【実施例】
【0058】
以下、本発明を製造例および実施例により具体的に説明する。以下に現れる「部」は、特に明示の無い限り「質量部」を意味する。まず、本発明に関わる物性の測定方法について述べる。
【0059】
<現像剤担持体表面の算術平均粗さ(Ra)の測定>
現像剤担持体表面の算術平均粗さ(Ra)の測定は、JIS B0601(2001)の表面粗さに基づき、小坂研究所製サーフコーダーSE−3500を用い、測定条件としてはカットオフ0.8mm、評価長さ8mm、送り速度0.5mm/sにて実施した。測定位置は、現像剤担持体の中央位置と、その中央位置と塗工両端部との中間の位置の計3箇所、更に120°現像剤担持体を回転した後同様に3箇所、更に120°現像剤担持体を回転した後同様に3箇所、計9点について各々測定し、その平均値をとった。
【0060】
<添加樹脂の分析方法>
添加樹脂のポリマーの構造は、熱分解GC/MS装置「Voyager」(商品名、サーモエレクトロン社製)で分析して求めた。なお、本分析は、熱分解温度:600℃、カラム:HP−1(15m×0.25mm×0.25μm)、Inlet:300℃、Split:20.0、注入量:1.2ml/min、昇温:50℃(4min)−300℃(20℃/min)の条件で行った。
【0061】
<黒鉛化カーボンブラックのX線回折による黒鉛(002)面の面間隔の測定>
黒鉛化カーボンブラック粉末を測定試料とし、試料水平型強力X線回折装置「RINT/TTR−II」(商品名、リガク社製)を用い、X線回折スペクトルから求めた。 先ず測定試料を無反射試料板に充填し、モノクロメーターにより単色化したCuKα線を線源とし、X線回折チャートを得た。これより黒鉛(002)回折線のピーク位置を求め、ブラッグの公式(下記式(1))より面間隔を計算したものである。ここでCuKα線の波長λは、0.15418nmとした。
面間隔(002)=λ/2sinθ 式(1)
以下に主な測定条件を記す。
光学系 :平行ビーム光学系
ゴニオメータ :ローター水平型ゴニオメータ(TTR−2)
管電圧/電流 :50kV/300mA
測定法 :連続法
スキャン軸 :2θ/θ
測定角度 :10°〜50°
サンプリング間隔:0.02°
スキャン速度 :4°/min
発散スリット :開放
発散縦スリット :10mm
散乱スリット :開放
受光スリット :1.00mm
【0062】
<酸性カーボンブラックのpHの測定>
JIS K5101(1991)に準拠して、煮沸法により抽出した溶液を、pHメーターで測定した。用いたpHメーターは測定方式がガラス電極法の装置であり、pH測定範囲は0乃至14(分解能0.01)であり、測定温度は20℃乃至25℃とした。
【0063】
<トナー粒子の平均円形度の測定>
本発明における平均円形度は、粒子の形状を定量的に表現する簡便な方法として用いたものである。本発明では東亞医用電子製フロー式粒子像分析装置「FPIA−1000」を用いて測定を行い、3μm以上の円相当径の粒子群について測定された各粒子の円形度(Ci)を下式によりそれぞれ求めた。また、平均円形度は各粒子の円形度を相加平均した値とする。
円形度(Ci)=(粒子像と同じ投影面積を持つ円の周囲長)/(粒子の投影像の周囲長)
測定装置である「FPIA−1000」は、各粒子の円形度を算出後、平均円形度およびモード円形度の算出に当たり、次のような方法を用いている。粒子を得られた円形度によって、円形度0.40〜1.00を0.010間隔で61分割したクラスに分け、分割点の中心値と頻度を用いて平均円形度の算出を行う方法である。しかしながら、この算出法で算出される平均円形度の各値と、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式によって算出される平均円形度の各値との誤差は、非常に少なく、実質的には無視出来る程度のものである。よって、本発明においては、算出時間の短絡化や算出演算式の簡略化のようなデータの取り扱い上の理由で、上述した各粒子の円形度を直接用いる算出式の概念を利用し、一部変更したこのような算出法を用いている。本発明における平均円形度とは、粒子の凹凸度合いの指標であり、粒子が完全な球形の場合1.000を示し、トナーの表面形状が複雑になるほど平均円形度は小さな値となる。
【0064】
<添加樹脂溶液B−1の製造例>
撹拌機、冷却器、温度計、窒素導入管および滴下ロートを付した4つ口セパラブルフラスコ内で、以下の材料を混合し、系が均一になるまで攪拌した。
・ジメチルアミノエチルメタクリレート 36.5部
・ラウリルブロマイド(4級化剤) 63.5部
・エタノール 50部
撹拌を続けながら、70℃まで昇温した後5時間攪拌してモノマーの4級化を行い、4級アンモニウム塩基含有モノマーである、(2−メタクリロイロキシエチル)ラウリルジメチルアンモニウムブロマイドを得た。得られた反応溶液を冷却した後、溶媒としてエタノール50部、および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0部を滴下ロートに仕込み、系が均一になるまで撹拌した。撹拌を続けながら、反応系内の温度が70℃になるまで昇温し、滴下ロートに仕込んだ上記重合開始剤を含有するエタノール溶液を1時間かけて添加した。滴下終了後、窒素導入下還流状態で更に5時間反応させ、さらにAIBNを0.2部添加した後1時間反応させた。更に、この溶液をエタノールで希釈して固形分40%の添加樹脂溶液B-1を得た。得られた添加樹脂溶液B-1の構造を表2に示す。
【0065】
<添加樹脂溶液B−2〜B−15の製造例>
使用する成分を表1に示した成分にした以外は、添加樹脂溶液B−1の製造例と同様にして、添加樹脂溶液B−2〜B−15を得た。尚、添加樹脂溶液B−11に関しては、溶液生成後、イオン交換樹脂によりアニオンを臭素イオンからp-トルエンスルホン酸イオンへのイオン交換を行った。得られた添加樹脂溶液B-2〜B-15の構造を表2に示す。
【0066】
<添加樹脂溶液B−16の製造例>
撹拌機、冷却器、温度計、窒素導入管および滴下ロートを付した4つ口セパラブルフラスコ内で、以下の材料を混合し、系が均一になるまで攪拌した。
・ジメチルアミノエチルメタクリレート 36.5部
・ラウリルブロマイド(4級化剤) 63.5部
・エタノール 50部
撹拌を続けながら、70℃まで昇温した後5時間攪拌してモノマーの4級化を行い、4級アンモニウム塩基含有モノマーである、(2−メタクリロイロキシエチル)ラウリルジメチルアンモニウムブロマイドを得た。得られた反応溶液を冷却した後、共重合成分として、オクチルアクリレート5.2部、溶媒としてエタノール50部、および重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)1.0部を滴下ロートに仕込み、系が均一になるまで撹拌した。撹拌を続けながら、反応系内の温度が70℃になるまで昇温し、上記滴下ロートに仕込んだ溶液を1時間かけて添加した。滴下終了後、窒素導入下還流状態で更に5時間反応させ、さらにAIBNを0.2部添加した後1時間反応させた。更に、この溶液をエタノールで希釈して固形分40%の添加樹脂溶液B-16を得た。得られた添加樹脂溶液B-16の構造を表2に示す。
【0067】
<添加樹脂溶液B−17〜B−30の製造例>
使用する成分を表1に示した成分としたこと以外は、添加樹脂溶液B−1の製造例および添加樹脂溶液B−16の製造例と同様にして、添加樹脂溶液B-17〜B-30を得た。得られた添加樹脂溶液B-17〜B-30の構造を表2に示す。
【0068】
<添加樹脂溶液b−1〜b−5の製造例>
以下使用する成分を表1に示した成分としたこと以外は、添加樹脂溶液B−1の製造例と同様にして、添加樹脂溶液b-1〜b-5を得た。得られた添加樹脂溶液b−1〜b−5の構造を表2に示す。
【0069】
<結着樹脂(A成分)>
以下に実施例において使用した結着樹脂の具体例を示す。

【0070】
<黒鉛化カーボンブラック(D成分):G−1の製造例>
カーボンブラック(商品名:トーカブラック#5500、東海カーボン社製)を黒鉛坩堝に入れ、窒素ガス雰囲気中2500℃で熱処理して黒鉛化を行い、黒鉛化カーボンブラックG−1を得た。得られた黒鉛化カーボンブラックの物性値を表3に示す。
【0071】
<黒鉛化カーボンブラック(D成分):G−2〜G−7の製造例>
黒鉛化カーボンブラックG−1の製造例と同様の方法で、粒径の異なるカーボンブラックを黒鉛化処理して、本発明にて使用することのできる黒鉛化カーボンブラックG−2〜G−7を製造した。黒鉛化処理は、カーボンブラックを黒鉛坩堝に充填し、窒素ガス雰囲気中、1000℃〜3000℃で、熱処理することで黒鉛化処理をした。得られた黒鉛化カーボンブラックの物性値を表3に示す。
【0072】
<酸性カーボンブラック(E成分):A−1〜A−6および中性カーボンブラックa−1>
本実施例で用いた酸性カーボンブラックA−1〜A−6および中性カーボンブラックa−1を表4に示す。
【0073】
<トナー1の製造例>
スチレン73.5部、アクリル酸n−ブチル19部、マレイン酸モノブチル7部、ジビニルベンゼン0.5部、ベンゾイルパーオキサイド1部およびジ−t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート0.5部の混合物を用意した。この混合物に対し、ポリビニルアルコール部分ケン化物0.8部を溶解した水180部を加え、激しく攪拌させて懸濁分散液とした。この懸濁分散液を、水40部を入れて窒素置換した反応器に入れ、反応温度85℃にて10時間懸濁重合した。反応終了後、ろ過、水洗し、脱水、乾燥工程を経て、ビニル系樹脂を得た。
【0074】
次いで、以下の材料の混合物を用意した。
・上記のビニル系樹脂: 100部
・平均粒径が0.2μmの球状磁性体: 90部
・アゾ系鉄錯体化合物
(負帯電性荷電制御剤、保土谷化学工業社製、商品名:T−77):1部
・ステアリン酸ステアリルワックス(DSCのメインピーク60℃):5部
この混合物を130℃に加熱した2軸混練押し出し機にて混練した。得られた混練物を冷却した後、ハンマーミルで粗粉砕し得られた粗粉砕物を、機械式粉砕機ターボミル(ターボ工業社製)を用いて微粉砕を行なった後、熱球形化処理を行なった。熱球形化処理を行った微粉砕粉を、コアンダ効果を利用した多分割分級装置(エルボジェット分級機、日鉄鉱業社製)で、超微粉および粗粉を同時に分級除去して、重量平均粒径(D4)6.0μm、円形度が0.963であるトナー粒子を得た。このトナー粒子100部に疎水性コロイダルシリカ1.0部を添加し、ヘンシェルミキサーにて混合分散させることで、磁性一成分トナー1を得た。
【0075】
<トナー2の製造例>
温度60℃に加温したイオン交換水900部に、リン酸三カルシウム4部を添加し、これをTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)により10,000rpmにて撹拌し、水系媒体を作製した。 一方、下記の組成物をTK式ホモミキサー(特殊機化工業製)に投入し、温度60℃に加温した後、9,000rpmにて攪拌して溶解、分散した。
・スチレン 160部
・n−ブチルアクリレート 40部
・C.I.ピグメントレッド2 16部
・サリチル酸アルミニウム化合物(ボントロンE−88:オリエント化学社製) 2部
・ポリエステル樹脂(プロピレンオキサイド変性ビスフェノールAとイソフタル酸との重縮合物、Tg=65℃、Mw=10000、Mn=6000) 7部
・ステアリン酸ステアリルワックス(DSCのメインピーク60℃) 20部
・ジビニルベンゼン 0.2部
これに、重合開始剤t−ブチルパーオキシピバレート20部を溶解し、重合性単量体系組成物を調製した。調製した重合性単量体組成物を、前記水系媒体中に投入し、温度60℃,窒素雰囲気下において、TK式ホモミキサーを用いて9,000rpmで攪拌して懸濁させた。その後、プロペラ式攪拌装置に移して攪拌しつつ、3時間かけて温度70℃に昇温し、更に4時間後、昇温速度40℃/hrで温度80℃まで昇温し、温度80℃で5時間反応を行い、重合体粒子を製造した。重合反応終了後、該粒子を含むスラリーを冷却し、スラリーの10倍量の水で洗浄、ろ過の後、6.67×10−1kPaの圧力下、温度40℃で48時間乾燥し、更に分級して粒子径を調整したマゼンタトナー粒子を得た。
【0076】
上記マゼンタトナー粒子100部に、シリコーンオイルで処理された、トナー粒子と同極性(負極性)に帯電する疎水性シリカ微粉体1.5部を、ヘンシェルミキサー(三井三池社製)で5分間混合して非磁性一成分トナー2を得た。疎水性シリカ微粉体の1次粒子径は10nm、BET比表面積は170m2/gであった。また、得られた非磁性一成分トナーの重量平均粒径は6.6μm、平均円形度は0.984であった。
【0077】
[実施例1]
<塗料中間体の作製>
以下の材料を混合し、直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として用いたサンドミルにて2時間分散して塗料中間体を得た。
・結着樹脂1 固形分として20部
・黒鉛化カーボンブラックG-1 10部
・酸性カーボンブラックA-1 10部
・エタノール 50部
【0078】
<樹脂層用塗料の作製>
次に、塗料中間体に、以下の材料を混合し、直径1.5mmのガラスビーズをメディア粒子としたサンドミルにて40分分散して樹脂層用塗料を得た。
・結着樹脂1 固形分として 20部
・樹脂B−1 固形分として 4部
・ニカビーズICB−1020(商品名;日本カーボン社製) 2部
【0079】
<樹脂層の形成>
次いで、この樹脂層用塗料にエタノールを添加することで固形分濃度を35%に調整した。外径20mmφのアルミニウム製の円筒管を回転台に立てて回転させ、両端部にマスキングを施し、エアスプレーガンを一定速度で下降させながら、樹脂層用塗料を円筒管表面に塗工した。この工程により樹脂層を形成させた。なお、塗工条件は30℃/35%RHの環境下にて、樹脂層用塗料の温度は恒温槽で28℃に制御した状態で塗工を実施した。続いて熱風乾燥炉により150℃で30分間加熱して樹脂層を硬化させ、Ra=1.35μmである現像剤担持体S−1を作製した。表5に該現像剤担持体(現像スリーブ)S−1の樹脂層の処方を挙げた。
【0080】
<画像評価>
現像剤担持体S−1にマグネットローラを挿入した後フランジを取り付けて、デジタル複合機iR2030(商品名;キヤノン社製)の現像器に組み込み、現像装置とした。前記磁性一成分トナー1を用い、1枚/15秒の間欠モードで印字比率が1%の文字パターンにて15万枚の画像出力を行い、以下の項目(1)〜(4)について評価した。結果は表6に示したように、いずれの環境下でも終始良好な現像性を得ることができた。
【0081】
(1)画像濃度
温度30℃/湿度85%RH(以降、「H/H」環境ともいう)の環境下で画像出力試験を行い、初期にベタ画像を出力し、その濃度を測定した。また、摩擦帯電の立ち上がりを評価すべく、15万枚を通紙した後に10日間放置し、ベタ画像を出力し、その濃度を測定することにより評価した。画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(商品名、マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
【0082】
(2)ブロッチ
温度15℃、湿度10%RH(以降、「L/L」環境ともいう)の環境下で画像出力試験を行い、ハーフトーンとベタ黒画像を出力し、トナーの過剰帯電により発生しやすいブロッチ(斑点状、さざ波状もしくは絨毯状)の発生を下記基準にて評価した。
A:ハーフトーン画像にもスリーブ上にも確認できない。
B:スリーブ上には確認されるが、画像には影響が出ていない。
C:ハーフトーン画像の一部に確認されるものの、ベタ黒画像では確認できない。
D:ハーフトーン画像およびベタ黒画像上で確認できる。
【0083】
(3)ゴースト
L/L環境およびH/H環境の下で画像出力試験を行い、スリーブ周期のゴーストについて評価を行った。プリンタの出力画像において、画像先端の現像剤担持体一周分に相当する領域を白地にベタ黒の正方形(一辺20mm)画像を等間隔で配置し、それ以外の部分をハーフトーンとしたものを用いた。そして、ハーフトーン上に正方形画像のゴーストがどのように出現するかによりランク付けを行った。
A:見る角度によって観測できる程度で、濃淡差がほぼ確認できない。
B:濃淡差が観測できるが、画像上問題ないレベル。
C:ゴーストが目視で明確に確認されるが、実用できる下限のレベル。
D:ゴーストがはっきり濃淡として現れ、反射濃度計で濃度差が測定可能。
【0084】
(4)樹脂層の耐汚染性
H/H環境下で画像出力試験後の現像剤担持体の表面をレーザー顕微鏡(商品名:VK−8700、KEYENCE社製)を用いて、約1000倍で観察し、トナー汚染の程度を下記の基準にて評価した。
A:軽微な汚染しか観察されない。
B:やや汚染が観察される。
C:部分的に汚染が観察される。
D:著しい汚染が観察される。
【0085】
[実施例2〜61、比較例1〜13]
表5に挙げた処方にて実施例1と同様に、現像スリーブS−2〜S−74を作製し、評価を行った。樹脂層用塗料の固形分濃度は、適宜調節して作製した。結果を表6に記す。上記の結果から分かるように、樹脂層中に本発明の添加樹脂を加えることで、高温高湿下のような苛酷な環境においても、良好な画像濃度が得られた。画像濃度はトナーの摩擦帯電量に比例しており、4級アンモニウム塩基に長鎖アルキル基を導入することにより、良好な評価結果を得ることができた。すなわち、式(1)に示したR、R、Rのうち少なくとも一つを炭素数4以上にすることで、良好な画像濃度および他の画像評価においてCランク以上を達成できた。一方で、長鎖アルキル基の炭素数が18を超えた場合は、トナーへの摩擦帯電付与能は高くなるものの、熱硬化性樹脂との相溶性が相対的に低下し、L/Lでのゴーストやブロッチの評価が低かった。
【0086】
黒鉛化カーボンブラックに関しては、黒鉛(002)面の面間隔が小さくなればなるほど、トナーへの摩擦帯電付与能、潤滑性、溶媒への分散性が向上することがわかった。つまり、黒鉛(002)面の面間隔が小さくなればなるほど、H/H環境での画像濃度・耐汚染性・ゴースト、L/L環境でのブロッチやゴーストが向上した。酸性カーボンブラックに関しては、pHが小さくなればなるほど塗料中での分散性が向上した。また、負帯電性が強くなり、黒鉛化カーボンブラックの凝集もほぐしやすくなり、導電剤が均一に存在する現像剤担持体が得られた。その結果、H/H環境での画像濃度・耐汚染性・ゴーストやL/L環境でのブロッチやゴーストが向上した。
【0087】
実施例44〜58では、ユニット(1)とユニット(4)の共重合体に関しても評価を行った。ユニット(1)とユニット(4)の共重合体にすることで、溶媒中での分散性がさらに良くなった。しかし、ユニット(4)の存在量が多い場合、摩擦帯電付与能は小さくなり画像濃度は低くなる傾向にあった。ユニット(4)の構造としては、長鎖アルキル基の炭素数が8未満または18を超える場合は、溶媒中での添加樹脂や導電剤の分散性が悪化する傾向にあり、H/H環境での画像濃度・耐汚染性・ゴーストやL/L環境でのブロッチやゴーストの評価が相対的に低くなる傾向にあった。
【0088】
実施例52〜55から、ユニット(1)の長鎖アルキル基の炭素数を8以上14以下にすることで、溶媒中での添加樹脂や導電剤の分散性が良好であるため、より良好な画像が得られることがわかった。実施例40〜43および56〜57より、ユニット(1)のXが−CONH−や−C−の場合も良好な画像が得られることが確認できた。
【0089】
比較例3と比較例4では、黒鉛(002)面の面間隔が0.3450nmを超える黒鉛化カーボンブラックを用いた。比較例5では、pHが5.0を超えるカーボンブラックを用いた。比較例8では添加樹脂を、比較例9では黒鉛化カーボンブラックを、比較例10では酸性カーボンブラックを添加しない系で評価した。添加樹脂を添加しない比較例7では、現像剤に対する摩擦帯電付与能の不足が顕著に現れ、耐久後半では所望の画像濃度が得られなかった。一方、本発明の黒鉛化カーボンブラックを添加しない比較例3と比較例4では、現像剤担持体の潤滑性の不足が顕著に現れ、H/H環境での現像剤担持体汚染が確認された。また、本発明の酸性カーボンブラックを添加しない比較例5と比較例10では、黒鉛化カーボンブラックの分散性が不十分なため、トナーの摩擦帯電量分布が不均一になり、ゴーストやブロッチのような画像不良が現れた。
【0090】
結着樹脂をアクリル樹脂に変更した比較例7では、特に耐久後半での現像性が悪化し、溶媒をトルエンに変更した比較例6では、添加樹脂や導電剤の分散性が悪化し、それぞれ画像不良が現れた。
【0091】
[実施例62]
<塗料中間体の作製>
以下の材料を混合し、直径1mmのガラスビーズをメディア粒子として用いたサンドミルにて2時間分散して塗料中間体を得た。
・結着樹脂1 固形分として20質量部
・黒鉛化カーボンブラックG−1 8質量部
・酸性カーボンブラックA−1 8質量部
・エタノール 50質量部
【0092】
<樹脂層用塗料の作製>
次に、塗料中間体に、以下の材料を混合し、直径1.5mmのガラスビーズをメディア粒子としたサンドミルにて40分分散して樹脂層用塗料を得た。
・結着樹脂1 固形分として 20質量部
・樹脂B−1 固形分として 4質量部
【0093】
<樹脂層の形成>
次いで、この樹脂層用塗料にエタノールを添加することで固形分濃度を33%に調整した。外径12mmφ、算術平均粗さRa=0.2μmのアルミニウム製の円筒管を回転台に立てて回転させ、両端部にマスキングを施し、エアスプレーガンを一定速度で下降させながら、樹脂層用塗料を円筒管表面に塗工した。この工程により樹脂層を形成させた。なお、塗工条件は30℃/35%RHの環境下にて、樹脂層用塗料の温度は恒温槽で28℃に制御した状態で塗工を実施した。続いて熱風乾燥炉により150℃で30分間加熱して樹脂層を硬化させ、Ra=0.50μmである現像剤担持体S−75を作製した。表7に該現像剤担持体(現像スリーブ)S−75の樹脂層の処方を挙げた。
【0094】
<画像評価>
現像剤担持体S−75をレーザービームプリンタ(商品名:LaserJet5000、ヒューレット・パッカード社製)のマゼンタカートリッジに組み込んだ。前記非磁性一成分トナー2を用い、1枚/10秒の間欠モードで印字比率が1%の文字パターンにて6000枚の画像出力を行い、以下の項目(5)〜(8)について評価した。結果は表8に示したように、いずれの環境下でも終始良好な現像性を得ることができた。
【0095】
(5)初期ハーフトーン(HT)均一性
低温低湿度環境(温度15℃/湿度10%RH:L/L)にて、ベタ白画像を20枚連続で出力した後にハーフトーンを出力し、濃度ムラ(モヤ状の濃淡差や画像形成進行方向に走る帯状の濃淡差)の発生を目視によって観察した。
A:ハーフトーン画像に濃淡差が全く確認できない。
B:ハーフトーン画像上に濃淡差が僅かに確認される。
C:ハーフトーン画像上の一部に濃淡差がやや確認される。
D:ハーフトーン画像上に濃淡差がはっきりと確認される。
【0096】
(6)初期画像濃度
上記ハーフトーン評価後にベタ黒画像を出力し、その濃度を測定することにより評価した。画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
【0097】
(7)耐久画像濃度
温度32℃/湿度85%RHの環境下にて、6000枚印字後のベタ黒画像の濃度を測定することにより評価した。画像濃度は「マクベス反射濃度計 RD918」(マクベス社製)を用いて、原稿濃度が0.00の白地部分の画像に対する相対濃度を測定した。
【0098】
(8)耐久かぶり
「REFLECTMETER MODEL TC−6DS」(東京電色社製)により、プリントアウト画像の白地部分の白色度と転写紙の白色度を測定し、両者の白色度の差から、カブリ濃度(%)を算出した。フィルターはアンバーライトフィルターを用いた。
【0099】
[実施例63〜67、比較例14〜17]
表7に挙げた処方にて実施例62と同様に、現像スリーブS−76〜S−83を作製し、評価した。樹脂層用塗料の固形分濃度は適宜調節して作製した。結果を表8に記す。
【0100】
上記の結果から分かるように、実施例2〜33と同様に、化式(1)に示したR3、R4、R5のうち少なくとも一つを炭素数4以上にすることで、十分な画像濃度を得ることができ、また他の画像評価においてもCランク以上を達成できた。一方で、長鎖アルキル基の炭素数が18を超えた比較例15は、熱硬化性樹脂との相溶性が悪くなり、摩擦帯電量分布が不均一になった。その結果、L/Lでの初期ハーフトーン均一性や初期画像濃度が悪化した。
【0101】
黒鉛化カーボンブラックに関しては、黒鉛(002)面の面間隔が小さくなればなるほど、潤滑性、溶媒への分散性が向上することがわかった。黒鉛(002)面の面間隔が0.3460の黒鉛化カーボンブラックを使用した比較例16では、潤滑性や分散性が不十分であり、所望の初期ハーフトーン均一性や初期画像濃度が得られなかった。酸性カーボンブラックに関しては、pHが5.0以下で塗料中での導電剤の分散性が向上し、導電剤が均一に存在する現像剤担持体が得られた。pHが6.5のカーボンブラックを使用した比較例17では、導電剤の分散性が不十分であり、評価項目(5)〜(8)について、良好な結果を得られなかった。
【0102】
【表1】

【0103】
【表2】

【0104】
【表3】

【0105】
【表4】

【0106】
【表5−1】

【0107】
【表5−2】

【0108】
【表6−1】

【0109】
【表6−2】

【0110】
【表7】

【0111】
【表8】

【符号の説明】
【0112】
501 像担持体(感光ドラム)
502 トナー層厚規制部材(磁性ブレード)
503 ホッパー
504 トナー
505 マグネットローラー
506 金属製円筒管(基体)
507、517 樹脂層
508 現像剤担持体(現像スリーブ)
509 電源
510 攪拌翼
511 トナー層厚規制部材(弾性ブレード)
512 剥ぎ取り部材
513 現像スリーブとマグネットローラーの間隙
514 中実の金属棒

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基体と、該基体表面に形成された樹脂層を有する現像剤担持体において、該樹脂層は以下の(A)乃至(E)を含む塗料組成物を熱硬化して得られるものであることを特徴とする現像剤担持体:
(A)結着樹脂としての熱硬化性樹脂
(B)溶媒としての炭素数1乃至4のアルコール
(C)下記式(1)で示されるユニットを有する樹脂
(D)X線回折で測定される黒鉛(002)面の面間隔が0.3370nm以上0.3450nm以下である黒鉛化カーボンブラック
(E)pH5.0以下の酸性カーボンブラック
【化1】

式(1)中、Rは水素原子またはメチル基を示し、Rは炭素数1乃至4のアルキレン基を示す。R、RおよびRから選ばれる一つまたは二つ以上は炭素数4乃至18のアルキル基を示し、残りの基は炭素数1乃至3のアルキル基を示す。Xは−COO−、−CONH−または−C−のいずれかである。Aはアニオンを示す。
【請求項2】
がメチル基であり、Rがメチレン基またはエチレン基であり、R、RおよびRから選ばれる一つまたは二つ以上が、オクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基およびテトラデシル基からなる群から選ばれるいずれかであり、
、RおよびRのうちでオクチル基、ノニル基、デシル基、ウンデシル基、ドデシル基、トリデシル基およびテトラデシル基でない基は、メチル基、エチル基およびプロピル基から選ばれる何れかであり、
が硫黄原子またはハロゲン原子を含むアニオンである請求項1に記載の現像剤担持体。
【請求項3】
トナー粒子を有する現像剤と、該現像剤を収容している容器と、該容器に収容された該現像剤を担持し、搬送するための現像剤担持体とを有している現像装置であって、該現像剤担持体は請求項1に記載の現像剤担持体であることを特徴とする現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−242758(P2011−242758A)
【公開日】平成23年12月1日(2011.12.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−86273(P2011−86273)
【出願日】平成23年4月8日(2011.4.8)
【特許番号】特許第4818476号(P4818476)
【特許公報発行日】平成23年11月16日(2011.11.16)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】