説明

現像装置、プロセスカートリッジ及び画像形成装置

【課題】トナー担持体上に形成される電界によってトナーをクラウド状態にして現像を行う現像装置で、トナー規制ローラを用いてトナー担持体上のトナー量を規制し、安定したトナー量を現像領域に供給することが出来る現像装置、並びにこれを備えた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供する。
【解決手段】現像装置6は、互いに異なる交番電圧が印加される2種類の電極を備える現像剤担持体としてのトナー担持ローラ7を備え、このトナー担持ローラ7が担持するトナー量を規制するトナー規制部材として、ローラ状で導電性材料からなるトナー担持ローラ63を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トナー担持体の無端移動する表面上でホッピングさせたトナーによって潜像担持体上の潜像を現像する現像装置、並びにこれを用いるプロセスカートリッジ及び画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に搭載される現像装置として、現像ローラや磁性キャリアに吸着させたトナーを現像に用いるのではなく、トナー担持体の表面上でホッピングさせたトナーを現像に用いるものが知られている(特許文献1〜4)。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の現像装置は、周方向に所定のピッチで配設された複数の電極を具備する筒状のトナー担持体を有している。これら電極は、互いに隣り合う2つの電極からなる電極対が繰り返し配設されたものである。それぞれの電極対における2つの電極の間には交番電界が形成される。すると、電極対における一方の電極の上に位置していたトナーが浮上して他方の電極の上に着地したり、他方の電極の上から浮上して一方の電極の上に着地したりする。そして、トナーはこのようにしてホッピングを繰り返すことによって、トナー担持体上でクラウド状態となり、筒状のトナー担持体の回転駆動に伴う表面移動より、トナー担持体と潜像担持体との対向位置である現像領域まで搬送される。
【0004】
このような現像装置の現像領域では、クラウド状態となって潜像担持体上の潜像の近傍まで浮上したトナーが、トナー担持体の電極に向けて下降することなく、潜像による電界に引かれて潜像に付着する。かかる構成では、現像ローラや磁性キャリアなどに吸着しているトナーではなく、クラウド状態になってトナー担持体からの吸着力が発揮されていないトナーを現像に用いる。これにより、従来の一成分現像方式や二成分現像方式では実現が望めなかったほどの低電位現像を実現することができる。例えば、周囲の非画像部との電位差が100[V]以下である静電潜像にトナーを選択的に付着させることも可能である。
【0005】
上述した、トナーをクラウド状態とする現像装置では、帯電量によって各トナー粒子が交番電界によって受けるホッピングする力が異なるので、トナー粒子の帯電量にバラツキがあると、トナー担持体上でのトナーの挙動がばらつき、現像ムラの原因となる。このため、トナーをクラウド状態とする現像装置では、トナー担持体上のトナーの帯電量のバラツキを抑制することが求められる。
このような現像装置において、現像領域に向かうトナー担持体上のトナー量を規制するトナー規制部材として、トナー担持体の表面に接触するブレード部材であるトナー規制部レードを用いる構成やトナー担持体の表面に接触するローラ部材からなるトナー規制ローラを用いる構成が知られている。トナー規制部材としてトナー規制ブレードを用いると、当接圧が局所的に集中してトナーにストレスがかかり、トナーが劣化しやすい。トナーが劣化すると帯電性が変化し、トナーの帯電量のバラツキが生じ易くなる。一方、トナー規制ローラを用いると、トナー担持体との当接幅が増加し、当接圧が局所的に集中することを防止でき、トナー規制ブレードを用いる構成に比べて、トナーの劣化を防止することができる。このため、トナーの劣化に起因するトナーの帯電性のばらつきを抑制するためには、トナー規制部材としてトナー規制ローラを用いる構成の方がトナー規制ブレードを用いる構成よりも有利である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
トナー規制ローラを用いる現像装置では、トナー担持体上のトナーは交番電界の作用によってクラウド状態でトナー規制ローラとの対向部を通過し、その層厚を規制されて現像領域に到達する。トナー規制ローラとの対向部でトナー担持体上に形成される交番電界が現像領域と同様の交番電界であると、トナーの嵩密度が低い状態でトナー規制ローラとの対向部を通過するため、この対向部を通過して現像領域に到達するトナー量が不安定になり、濃度ムラを発生させるおそれがある。
【0007】
本発明は以上の問題点に鑑みなされたものであり、その目的は、トナー担持体上に形成される電界によってトナーをクラウド状態にして現像を行う現像装置で、トナー規制ローラを用いてトナー担持体上のトナー量を規制し、安定したトナー量を現像領域に供給することが出来る現像装置、並びにこれを備えた画像形成装置及びプロセスカートリッジを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極を備え、外周面に担持されたトナーを潜像担持体との対向部である現像領域へ搬送するためのトナー担持体と、該複数種類の電極に対して互いに異なる電圧を印加することにより、種類の異なる電極の間に電界を形成し、この電界によって該トナー担持体の外周面上でトナーを飛翔させる電界形成手段と、該トナー担持体の外周面上のトナーの層厚を規制するローラ状のトナー規制ローラとを備え、上記現像領域で上記トナー担持体の外周面上で飛翔するトナーを用いて上記潜像担持体上の静電潜像を現像する現像装置において、上記トナー規制ローラの材質が導電性材料であることを特徴とするものである。
また、請求項2の発明は、請求項1の現像装置において、上記トナー担持体は表面移動することにより担持したトナーを現像領域に搬送する構成であり、上記トナー規制ローラは該トナー担持体と対向する位置でトナーの表面移動方向に対してカウンタ方向に表面移動することを特徴とするものである。
また、請求項3の発明は、請求項1または2の現像装置において、上記トナー規制ローラの表面硬度は上記トナー担持体の表面硬度よりも小さいことを特徴とするものである。
また、請求項4の発明は、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置において、上記トナー担持体に担持され、所望の極性に帯電したトナーと同極性の電圧を上記トナー規制ローラに印加する規制ローラ電圧印加手段を備えることを特徴とするものである。
また、請求項5の発明は、潜像担持体上に形成された静電潜像に対して現像手段によってトナーを供給することにより該静電潜像を現像して得られる画像を、最終的に記録材上に転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、上記現像手段として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
また、請求項6の発明は、潜像担持体と、該潜像担持体上に形成される静電潜像をトナーで現像する現像手段とを、1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能に構成したプロセスカートリッジにおいて、上記現像手段として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするものである。
【0009】
本発明においては、トナー規制ローラの材質が導電性材料であるため、トナー規制ローラとトナー担持体との対向部ではトナー規制ローラとトナー担持体上の電極との間で電界が形成され、種類の異なる電極の間の電界を他の位置よりも弱めることが出来る。これにより、電界によってトナーをホッピングさせる作用を抑制し、トナー規制ローラとの対向部を通過するトナーの嵩密度を高めることが出来る。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、トナー規制ローラとの対向部を通過するトナーの嵩密度を高めることで、この対向部を通過するトナー量を従来よりも安定させることができ、安定したトナー量を現像領域に供給することができるという優れた効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】実施形態に係るプリンタを示す概略構成図。
【図2】プロセスユニットを着脱している最中の同プリンタを示す概略構成図。
【図3】プリンタにおけるプロセスユニットの説明図。
【図4】プロセスユニットのトナー担持ローラを示す斜視図。
【図5】トナー担持ローラの電極構成を示す平面模式図。
【図6】トナー担持ローラを示す拡大横断面図。
【図7】トナー担持ローラの電極に印加されるパルス電圧の特性を示す波形図。
【図8】トナー担持ローラの変形例を示す模式図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を適用した画像形成装置として、電子写真方式のプリンタ(以下、プリンタ100と呼ぶ)の一実施形態について説明する。
図1は本実施形態に係るプリンタ100を示す概略構成図である。プリンタ100は、ブラック、マゼンタ、シアン、イエロー(以下、K,M,C,Yと記す)のトナー像を重ね合わせてフルカラー画像を形成することができる。またプリンタ100は、ベルトユニット1、4つのプロセスカートリッジであるプロセスユニット60(K,M,C,Y)、4つの光書込ユニット4(K,M,C,Y)、レジストローラ対53、及び、二次転写ローラ12を備える。さらに、記録用紙等の転写材を格納し、また画像形成時に転写材を搬送開始させる給紙装置である給紙カセット50、転写材上に形成された未定着のトナー像を転写材に定着させる定着装置3などを備えている。
【0013】
ベルトユニット1は、潜像担持体たる有機感光体を無端ベルト形状に構成した感光体ベルト11を備え、感光体ベルト11を水平方向よりも鉛直方向にスペースをとる縦長の姿勢で張架しながら図中反時計回り方向(図1中の矢印A方向)に無端移動せしめる。より詳しくは、感光体ベルト11を、駆動ローラ11b、テンションローラ11c、二次転写バックアップローラ11a、及び4つの現像対向ローラ10(K,M,C,Y)によって裏面側から支えながら張架している。そして、図示しない駆動手段によって図中反時計回り方向に回転駆動せしめられる駆動ローラ11bの回転によって感光体ベルト11を無端移動せしめる。この感光体ベルト11における図中左側の張架面(以下、左側張架面という)は、ほぼ鉛直方向に延在する姿勢になっている。
【0014】
感光体ベルト11の左側張架面の図中左側方には、K,M,C,Y用のプロセスユニット60(K,M,C,Y)が鉛直方向に並ぶように配設されており、それぞれ感光体ベルト11の左側張架面に対向している。これら4つのプロセスユニット60(K,M,C,Y)は、それぞれ、現像装置6(K,M,C,Y)と、感光体ベルト11を一様帯電せしめる帯電装置2(K,M,C,Y)とを1つのユニットとして図示しない共通の保持体に保持している。そして、図2に示すように、プリンタ100の筺体に対して現像装置6及び帯電装置2が一体的にプロセスユニット60として着脱可能に構成され、プロセスユニット60は、感光体ベルト11を含むベルトユニット1が退避することで開放された空間から、ユーザーによる交換が可能となっている。
【0015】
先に示した図1において、4つの現像装置6(K,M,C,Y)のうち、鉛直方向の最も上側に位置するK用の現像装置6Kの上方には、K用の帯電装置2Kが感光体ベルト11の左側張架面に対向するように配設されている。また、鉛直方向において、K用の現像装置6Kと、M用の現像装置6Mとの間には、M用の帯電装置2Mが感光体ベルト11の左側張架面に対向するように配設されている。また、M用の現像装置6Mと、C用の現像装置6Cとの間には、C用の帯電装置2Cが感光体ベルト11の左側張架面に対向するように配設されている。更に、C用の現像装置6Cと、Y用の現像装置6Yの間には、Y用の帯電装置2Yが感光体ベルト11の左側張架面に対向するように配設されている。
【0016】
鉛直方向に並ぶ4つの現像装置6(K,M,C,Y)の図中左側方には、4つの光書込ユニット4(K,M,C,Y)が鉛直方向に並ぶように配設されている。これら4つの光書込ユニット4(K,M,C,Y)は、画像情報に従って帯電後の感光体ベルト11にそれぞれブラック、マゼンタ、シアン、イエロー色に対応した潜像を書き込むための装置である。光書込ユニット4(K,M,C,Y)は、外部の図示しないパーソナルコンピュータやスキャナから送られてくる画像情報に基づいて、図示しない4つの半導体レーザーを駆動してK,M,C,Y用の書込光Lk,Lm,Lc,Lyを出射する。そして、これらを図示しないポリゴンミラーによって偏向せしめながら、図示しない反射ミラーで反射させたり光学レンズに通したりすることで感光体ベルト11に対する光走査を行う。光書込ユニット4としては、このようなポリゴンを用いた光走査装置に代えて、LEDアレイによって光走査を行うもの等、種々のものを使用することができる。なお、光走査は暗中にて行われる。
【0017】
感光体ベルト11は、自らを張架している複数の張架ローラのうち、最も下方に位置する駆動ローラ11bと、最も上方に位置するテンションローラ11cとの間では、鉛直方向上方から下方に向けてほぼ真っ直ぐに移動する。この過程において、まず、K用の帯電装置2Kとの対向位置を通過する際に、例えば負極性に一様帯電せしめられる。そして、K用の書込光Lkによる光走査によってK用の静電潜像を担持した後、K用の現像装置6Kとの対向位置を通過する。この際、感光体ベルト11に書き込まれたK用の静電潜像がK用の現像装置6Kによって現像されてKトナー像になる。
【0018】
Kトナー像が形成された感光体ベルト11は、鉛直方向上方から下方に向けての移動に伴って、M用の帯電装置2Mによって再び一様帯電せしめられた後、M用の書込光Lmによる光走査によってM用の静電潜像を担持する。このM用の静電潜像は、M用の現像装置6Mによって現像されてMトナー像となる。このとき、Mトナー像の全領域又は一部領域は、既に感光体ベルト11上に形成されているKトナー像の上に重ね合わせた状態で現像される。
【0019】
Mトナー像が形成された感光体ベルト11は、鉛直方向上方から下方に向けての移動に伴って、C用の帯電装置2Cによって再び一様帯電せしめられた後、C用の書込光Lcによる光走査によってC用の静電潜像を担持する。このC用の静電潜像は、C用の現像装置6Cによって現像されてCトナー像となる。このとき、Cトナー像の全領域又は一部領域は、既に感光体ベルト11上に形成されているKトナー像及びMトナー像の上に重ね合わせた状態で現像される。
【0020】
Cトナー像が形成された感光体ベルト11は、鉛直方向上方から下方に向けての移動に伴って、Y用の帯電装置2Yによって再び一様帯電せしめられた後、Y用の書込光Lyによる光走査によってY用の静電潜像を担持する。このY用の静電潜像は、Y用の現像装置6Yによって現像されてYトナー像となる。このとき、Yトナー像の全領域又は一部領域は、既に感光体ベルト11上に形成されているKトナー像、Mトナー像、及びCトナー像の上に重ね合わせた状態で現像される。
【0021】
以上のようなK,M,C,Yトナー像の重ね合わせ現像により、感光体ベルト11のおもて面(ループ外面)には、4色重ね合わせトナー像が形成される。なお、K,M,C,Y用の帯電装置2(K,M,C,Y)としては、それぞれコロナ放電によって感光体ベルト11を一様帯電せしめるものが用いられている。かかる構成の帯電装置2(K,M,C,Y)によれば、感光体ベルト11に対して非接触で一様帯電処理を施すことが可能なので、ベルト上に既に形成されているトナー像との接触によるトナー像の乱れを回避することができる。
【0022】
Y用の現像装置6Yとの対向位置であるY用の現像領域を通過した感光体ベルト11は、駆動ローラ11bに対する掛け回し箇所を通過すると、今度は相対的に鉛直方向下方から上方に向けて移動するようになる。そして、二次転写バックアップローラ11aに対する掛け回し箇所に進入する。この掛け回し箇所の一部に対しては、二次転写ローラ12がおもて面側から当接して転写ニップを形成している。二次転写バックアップローラ11aは接地されているのに対し、導電性の二次転写ローラ12には図示しないバイアス印加手段によって転写バイアスが印加されている。これにより、転写ニップを間に挟んでいる二次転写バックアップローラ11aと二次転写ローラ12との間には、感光体ベルト11上のトナー像を二次転写バックアップローラ11a側から二次転写ローラ12側に静電移動させる転写電界が形成されている。
【0023】
一方、給紙カセット50は、所定のタイミングで給紙コロ51を回転駆動させることで、カセット内に収容している記録紙Pを給紙路52に向けて送り出す。送り出された記録紙Pは、転写ニップの図中下方に配設されたレジストローラ対53のローラ間に挟み込まれる。レジストローラ対53は、記録紙Pの先端部を挟み込むとすぐに回転駆動を一時停止する。そして、記録紙Pを感光体ベルト11上の4色重ね合わせトナー像と同期させ得るタイミングで回転駆動を再開して、記録紙Pを転写ニップに送り出す。
【0024】
転写ニップで記録紙Pに密着せしめられた4色重ね合わせトナー像は、ニップ圧や転写電界の作用によって感光体ベルト11から記録紙Pに一括転写され、記録紙Pの白色と相まってフルカラー画像となる。
【0025】
このようにしてフルカラー画像が形成された記録紙Pは、転写ニップから定着装置3に送り込まれる。定着装置3は、ハロゲンランプ等の発熱源を内包する定着ローラ3bと、これに圧接せしめられている加圧ローラ3aとの当接によって定着ニップを形成しており、送り込まれてきた記録紙Pをこの定着ニップ内に挟み込む。そして、定着ローラ3bによる加熱やニップ圧の作用によってフルカラー画像を記録紙Pに定着せさせる。
【0026】
定着装置3内でフルカラー画像の定着処理が施され、表面上に可視像が形成された記録紙Pは、図示しない排紙ローラ対を経由した後、機外へと排出される。
【0027】
図1に示すように、プリンタ100においては、転写ニップを通過した後の感光体ベルト11の表面に付着している転写残トナーをクリーニングするためのクリーニング手段を設けていない。感光体ベルト11は、転写残トナーを付着させたままの状態で次工程のK,M,C,Y用の現像領域に進入することになるが、4つの帯電装置2(K,M,C,Y)によって転写残トナーが確実に正規極性に帯電せしめられることで、再び転写ニップに進入した際には、記録紙Pに転写される。転写残トナーが記録紙Pに転写されても、僅かの量であれば、視認される程度の画質劣化は生じない。
【0028】
なお、転写残トナーの量が比較的多くなる場合には、転写ニップを通過した後、K用の帯電装置2Kとの対向位置に進入する前の感光体ベルト11の表面から転写残トナーを除去するクリーニング手段を設けてもよい。この場合、クリーニング手段と、現像装置とを一体的に構成してプロセスユニットとすることも可能である。
【0029】
図3は、4つのプロセスユニット60(K,M,C,Y)のうちの一つのプロセスユニット60の説明図である。各プロセスユニット60は、使用するトナーの色が互いに異なっているが、その他の構成についてはほぼ同様である。よって、以下の説明では、K,M,C,Yの色分け記号を省略して説明する。
図3に示すように、現像装置6は、感光体ベルト11に供給するトナーTを収容するトナー収容部66を形成するケーシング61と、ケーシング61の開口部で感光体ベルト11と対向するトナー担持体であるトナー担持ローラ7とを備える。また、現像装置6は、トナー収容部66内のトナーをトナー担持ローラ7に供給するトナー供給手段である供給ローラ62とを備える。さらに、供給ローラ62を挟んでトナー担持ローラ7の反対側の領域には、トナー収容部66内のトナーを攪拌しながら供給ローラ62へトナーを汲み上げるパドル64とを備える。トナー担持ローラ7、供給ローラ62及びパドル64は不図示の回転駆動機構によって回転されるようになっている。
【0030】
トナーTはトナー収容部66に収容されており、トナー供給ローラ62によってトナーはトナー供給ローラ62と摩擦帯電をおこない、トナー担持ローラ7上に供給される。トナー供給ローラ62には、供給電圧印加手段である供給ローラ電源67によって供給バイアスが印加されている。図3に示す現像装置6では、供給バイアスとして直流電圧を印加する構成となっているが、この供給バイアスは、直流電圧でも交流電圧でもよい。また直流電圧に交流電圧を重畳させたバイアスでもよい。
この供給バイアスによってトナー担持ローラ7とトナー供給ローラ62との間に電界が形成される。その電界からの静電気力を受け、トナーはトナー供給ローラ62から解離し、トナー担持ローラ7表面に移動する。
【0031】
トナー担持ローラ7は、その表面に詳細は後述する複数の電極を備え、電極間に形成される電界によってトナーをクラウド状態にして担持し、回転駆動による表面移動によってトナーを感光体ベルト11との対向部である現像領域に搬送する。また、現像領域に対してトナー担持ローラ7のトナー搬送方向上流側には、トナー担持ローラ7上のトナー量を規制するローラ状のトナー規制部材であるトナー規制ローラ63が設置されている。トナー規制ローラ63はトナー担持ローラ7に当接されており、トナー規制ローラ63とトナー担持ローラ7との当接部を通過するときに、トナー担持ローラ7やトナー規制ローラ63とトナーとの摩擦によってトナーは帯電される。
【0032】
現像装置6のトナー収容部66内には不図示のトナーが収容されている。本実施形態の現像装置6で収容するトナーは、次のものを用いる。バインダー樹脂として、スチレン系またはアクリル系の重合性単量体を重合開始剤と共に水中に分散させた状態でラジカル重合させたものや、あるいはポリエステル系樹脂を水中に分散させ重付加反応により高分子化させる。これに着色剤、帯電制御剤などを加えて造粒することにより得られた、重量平均粒径約5[μm]の非磁性トナー粒子である。
【0033】
次に、トナー担持ローラ7について説明する。
トナー担持ローラ7は、粉体であるトナー粒子を搬送、現像、回収する電界を発生するために、内部に複数の電極を有するローラ状のトナー担持体である。トナー担持ローラ7は、画像形成時には、感光体ベルト11に対して50〜1000[μm]、好ましくは150〜400[μm]の間隙をあけて非接触に対向している。
【0034】
図4は、トナー担持ローラ7を示す斜視図である。このトナー担持ローラ7は、ローラ部の周面上において、ローラ軸線方向に延在しつつローラ周方向に所定のピッチで並ぶ複数の電極を有している。より詳しく説明すると、これら複数の電極は、図5に示すように、A相電極20aと、B相電極20bとがローラ周方向に交互に並べられた櫛歯状の電極配置となっている。
【0035】
図4及び図5に示すように、トナー担持ローラ7のローラ部における軸線方向の一端部には、A相共通電極21aがローラ部の全周に渡って延在するように設けられており、これには複数のA相電極20aの一端部がそれぞれ接続されている。また、ローラ部における軸線方向の他端部には、B相共通電極21bがローラ部の全周に渡って延在するように設けられており、これには複数のB相電極20bの他端部がそれぞれ接続されている。
【0036】
便宜上、図4や図5には示していないが、複数のA相電極20aやB相電極20bの上には、図6に示すように、非導電性の材料からなる表面層22が被覆されており、この表面層22によってそれら電極とトナーとの接触が回避される。但し、図4や図5に示したA相共通電極21aやB相共通電極21bの上には表面層22が設けられておらず、それら共通電極は剥き出しの状態になっている。
【0037】
トナー担持ローラ7の回転に伴ってその回転軌道上を無端移動するA相共通電極21aには、ケーシング61に固定された不図示のA相ブラシ接点部材が摺擦する。そして、図4や図6に示される電源24から出力されるA相パルス電圧が、このA相ブラシ接点部材とA相共通電極21aとを介して、各A相電極20aに印加される。また、トナー担持ローラ7の回転に伴ってその回転軌道上を無端移動するB相共通電極21bには、ケーシングに固定された図示しないB相ブラシ接点部材が摺擦する。そして、電源24から出力されるB相パルス電圧が、このB相ブラシ接点部材とB相共通電極21bとを介して、各B相電極20bに印加される。
【0038】
なお、以下、A相パルス電圧が印加される複数のA相電極20aの集合をA相電極群という。また、B相パルス電圧が印加される複数のB相電極20bの集合をB相電極群という。A相電極20aとB相電極20bとは交互に配設されているため、複数のA相電極20aはローラ周方向における所定位置からの並び順が何れも、奇数番目又は偶数番目となる。また、複数のB相電極20bの並び順は、A相電極20aの並び順が奇数番目である場合には偶数番目、A相電極20aの並び順が偶数番目である場合には偶数番目となる。
【0039】
A相電極群には、例えば図7に示すような所定周期で立ち上がりと立ち下がりとを繰り返す矩形波状のA相パルス電圧Vaが印加される。これに対し、B相電極群には、例えば図7に示すような、立ち上がりや立ち下がりの位相がA相パルス電圧Vbと逆位相になる矩形波状のB相パルス電圧Vbが印加される。それぞれのパルス電圧の周期T、周波数f(f=1/T)、ピーク・ツウ・ピーク電圧Vpp、及び振幅中心電位Vcは同じである。このようなパルス電圧が印加されると、トナー担持ローラ7上のトナーは、A相電極20aの真上から浮上して放物線を描くようにして隣のB相電極20bの真上に着地したり、B相電極20bの真上から浮上して放物線を描くようにして隣のA相電極20a上に逆戻りしたりするという、ホッピングによる往復移動を繰り返す。
このように、電源24は、複数の電極(A相電極20a、B相電極20b)間の電界が時間的に変化するように電圧を供給する電圧供給手段である。
【0040】
このようにしてホッピングによる往復移動を繰り返しているトナーは、上述したように、トナー担持ローラ7の回転駆動によって現像領域まで搬送される。そして、現像領域にて、その放物線状のホッピング軌跡の頂点付近で感光体ベルト11の静電潜像の近傍に至ったトナーは、静電潜像の静電気力によって引かれながらホッピング軌跡から外れて、静電潜像に付着する。これに対し、放物線状のホッピング軌跡の頂点付近で感光体ベルト11の地肌部(一様帯電部)の近傍に至ったトナーは、ホッピング軌跡から外れることなく下降して、トナー担持ローラ7の表面に着地する。
【0041】
かかる構成においては、ホッピングによってトナー担持ローラ7との吸着力が解かれた状態のトナーを現像に用いることで、従来の一成分現像方式や二成分現像方式では実現が望めなかったほどの低電位現像を実現することができる。なお、以下、本実施形態のプリンタ100のようにトナー担持体の電極間でトナーをホッピングによって往復移動させながら、トナー担持体の表面移動によって現像領域まで搬送して現像を行う方式をフレア(Flare)現像方式という。
【0042】
A相パルス電圧VaやB相パルス電圧Vbとしては、ピーク・ツウ・ピーク電圧Vppが200〜1000[V]であり、周波数fが0.5〜5[kHz]であり、且つ、振幅中心電位Vcが感光体ベルト11上の潜像電位と地肌部電位との間であるものを例示することができる。なお、振幅中心電位Vcは、潜像電位と地肌部電位との間で条件によって変動させる。A相、B相の位相は互いに1/2周期(位相π)だけずれている。この位相差によって、パルス電圧の印加中においては、A相電極20aと、B相電極20bとの間に常にVppと等しい値の電位差が生じている。この電位差によって電極間に電界が発生し、この電界に応じてトナーが電極間をホッピングする。
【0043】
A相電極群やB相電極群に印加する2つのパルス電圧の組合せとしては、図7に示した組合せの他、矩形波からなるA相パルス電圧Vaと、これの振幅の中心値である振幅中心電位VcからなるDC電圧Vbとの組合せを採用してもよい。また、この組合せにおけるA相、B相の関係を逆にして採用してもよい。また、パルス電圧の波形としては、矩形波の場合電圧の切り替わりが瞬時に起き、トナーのホッピングには適しているが、矩形波以外のもの、例えばサイン波、時定数を持った三角波、時定数に相当する正弦波などを採用してもよい。
【0044】
図6に示すように、トナー担持ローラ7の支持基板23の表面上には、複数の電極(20a、20b)がトナー搬送方向に沿って所定の間隔で配置されている。そして、これら電極の上や、支持基板23の非電極形成面の上には、搬送面形成部材であり、電極(20a、20b)の表面を覆う保護膜となる、無機又は有機の絶縁性材料から形成した表面層22が被覆されている。
【0045】
支持基板23としては、ガラス基材、樹脂基材、セラミックス基材等の絶縁性材料からなる基材を例示することができる。また、ステンレスなどの導電性材料からなる基板にSiO等の絶縁膜を成膜したもの、ポリイミドフィルムなどのフレキシブルに変形可能な材料からなる基材などを用いてもよい。
【0046】
A相電極20aやB相電極20bについては、例えば次のようにして形成する。すなわち、支持基板23の表面上にAl、Ni−Cr等の導電性材料からなる厚み0.1〜10[μm]、好ましくは0.5〜2.0[μm]の膜を形成する。そして、この膜をフォトリソグラフィー法などによって所要の電極形状にパターン化して形成する。そして、各電極を形成した後、その上に表面層22を形成する。各電極(20a、20b)の幅(短手方向の長さ)については、トナー粒子の平均粒径の1倍以上、20倍以下とすることが望ましい。
【0047】
表面層22としては、例えばSiO、TiO、TiO、SiON、BN、TiN、Taなどの材料を、厚さ0.5〜10[μm]、好ましくは0.5〜3[μm]に成膜したものを例示することができる。
【0048】
図5に示すように、A相共通電極21aやB相共通電極21bについては、A相電極20aやB相電極20bと同様の方法によって形成することができる。また、A相電極20aやB相電極20bとは別に、次のようにして形成することも可能である。即ち、図8に示すように、金属からなるフランジ部材25を、トナー担持ローラ7のA相電極やB相電極が形成されたローラ部に対し、軸線方向の端部から圧入して、フランジ部材25をローラ部上のA相電極又はB相電極の端部に接続する。そして、このフランジ部材25の金属表面を共通電極として使用する。フランジ部材25としては、図示のように、トナー担持ローラ7の回転軸部材と一体形成したものを用いることが望ましい。
【0049】
ところで、従来、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に用いられる現像装置には、二成分現像方式や一成分現像方式などがある。二成分現像方式は、高速現像に非常に適しており、現在の中速や高速の画像形成装置の主流方式である。この二成分現像方式では、高画質を狙うためには、潜像担持体上の静電潜像との接触部における現像剤の状態を非常に緻密にする必要がある。そのために、現在はキャリア粒子の小径化が進んでおり、商用レベルでは30[μm]程度のキャリアも使われ始めている。
【0050】
一成分現像方式は、機構が小型軽量になることから、現在の低速の画像形成装置の主流方式である。この一成分現像方式では、現像ローラ等の現像剤担持体の表面に担持したトナーをホッピングさせずに現像に用いる。具体的には、現像ローラ上にトナー薄層を形成するために、ブレードやローラなどのトナー規制部材を現像ローラ上のトナーに当接させ、そのときに現像ローラやトナー規制部材とトナーとの摩擦によってトナーは帯電される。現像ローラ上に薄層に形成された帯電トナー層は、現像部に運ばれて潜像担持体上の静電潜像を現像する。ここでの一成分現像方式には大きく分けて接触型と非接触型があり、前者は現像ローラと潜像担持体とが接触するものであり、後者は現像ローラと潜像担持体とが非接触であるものである。
【0051】
上記二成分現像方式と一成分現像方式との欠点を補い合うべく、特許文献5に記載のものなどのように二成分現像方式と一成分現像方式とをハイブリッド化したハイブリッド化方式も幾つか提案されている。
【0052】
高解像度の微小均一ドットを現像する方法としては、例えば特許文献6に記載の方式がある。この方式は、上記ハイブリッド化方式に対して、現像部に高周波バイアスを印加したワイヤを設置することにより、現像部でのトナークラウド化を行い、高解像度のドット現像性を実現するものである。
【0053】
また、特許文献1には、最も効率良く、且つ安定なトナークラウドを形成するために、回転ローラ上に電界カーテンを形成する方法が提案されている。
【0054】
従来の二成分現像方式では、高画質化に対する要求が益々高まっており、必要とされる画素のドットサイズ自身が現状のキャリア粒子径と同等もしくはそれよりも小さい必要があるために、孤立ドットの再現性という意味では更にキャリア粒子を小さくする必要がある。しかし、キャリア径を小さくしていくと、キャリア粒子の透磁率が低下するために、現像ローラからのキャリア離脱が生じやすくなり、離脱したキャリア粒子が潜像担持体に付着した場合には、キャリア付着そのものによる画像欠陥が生じるだけでなく、それを起点として潜像担持体に傷をつけてしまうなどいろいろな副作用が生じる。
【0055】
このキャリア離脱を防止するために、材料面からキャリア粒子の透磁率を上げる試みや、現像ローラに内包されるマグネットの磁力を強くする試みが進められているが、低コスト化及び高画質化との兼ね合いの中で開発は困難を極めている。また、小型化の煽りを受けて、現像ローラは益々小径化の一途をたどっていることからも、キャリア離脱を完全に抑止できるような強力な磁場構成を有した現像ローラ設計が困難となっている。
【0056】
そもそも二成分現像方式は、磁気ブラシと呼ばれる二成分現像剤の穂を静電潜像に対して擦り付けるようにしてトナー像を形成するプロセスであるために、どうしても穂の不均一性によって、孤立ドットの現像性にムラが生じやすい。現像ローラと潜像担持体との間に交番電界を形成することで画質の向上は可能であるが、現像剤の穂のムラといった根本的な画像ムラを完全に消滅させることは困難である。
【0057】
また、潜像担持体上の現像されたトナー像を転写する工程や、転写後に潜像担持体上に残存するトナーをクリーニングする工程において、転写効率やクリーニング効率を向上させるためには、潜像担持体とトナーとの非静電的付着力を極力下げる必要がある。潜像担持体とトナーとの非静電的付着力を下げる方法としては、潜像担持体表面の摩擦係数を下げることが効果的であることが知られているが、この場合、二成分現像剤の穂が滑らかに現像部をすり抜けてしまうために現像効率やドット再現性が非常に悪くなってしまう。
【0058】
一成分現像方式では、トナー規制部材により薄層化された現像ローラ上のトナー層は、現像ローラ上に十分に圧接されてしまっているために、現像部での電場に対するトナー応答性が非常に悪い。よって、通常は高画質を得るために、現像ローラと潜像担持体との間に強力な交番電場を形成するのが主流であるが、この交番電場の形成をもってしても静電潜像に対して一定量のトナーを安定して現像することは困難であり、高解像度の微小ドットを均一に現像することは難しい。また、この一成分現像方式は、現像ローラへのトナー薄層形成時にトナーに対して非常に大きなストレスをかけてしまうため、現像装置内を循環するトナーの劣化が非常に早い。トナーの劣化に連れて、現像ローラへのトナー薄層形成の工程でもムラなどが生じやすくなり、一成分現像方式は一般には高速や高耐久の画像形成装置としては向かない。
【0059】
ハイブリッド化方式(特許文献5)では、現像装置そのものの大きさや部品点数は増えてしまうものの、幾つかの課題は克服される。しかし、現像部においてはやはり一成分現像方式と同様の問題があり、つまり高解像度の微小均一ドットを現像することには難が残る。
【0060】
特許文献6に記載の方式は、高安定且つ高画質な現像が実現できるものと考えられるが、現像装置の構成が複雑になる。
【0061】
また、特許文献1に記載の方法は、小型且つ高画質の現像を得るには非常に優れたものと解釈できるが、本発明者らが鋭意研究した結果、理想的な高画質を得るためには、形成する電界カーテンや現像などの条件を限定しなくてはならないことが発見された。すなわち、適正な条件から外れた条件で作像を行ってしまうと、全く効果が得られないばかりか、返って粗悪な画質を提供してしまうことになる。また、この方式はトナー担持体上でホッピングするトナーをトナー担持体の表面移動によって現像領域まで搬送するものであるが、トナー担持体を表面移動させずに、ホッピングよる移動のみによってトナーを現像領域まで搬送する特許文献2に記載の方式でも、同様のことが言える。
【0062】
また、潜像担持体に第一のトナー像が形成され、その上に順次に第二のトナー像、第三のトナー像を形成していくような作像プロセスにおいては、先に潜像担持体上に形成されているトナー像を乱さないような現像方式でなくてはいけない。非接触一成分現像方式や、特許文献6に記載のトナークラウド現像方式を用いることで、潜像担持体上に順次に各色トナーを形成していくことは可能であるが、いずれの方式も、潜像担持体と現像ローラとの間には交番電界が形成されてしまうために、潜像担持体上に先に形成されたトナー像からトナーの一部が引き剥がされて現像装置に入り込んでしまう。これによって、潜像担持体上の画像が乱されてしまうばかりでなく、現像装置内のトナーが混色するという問題も生じてしまう。これらは高画質画像を得るには致命的であり、この問題を解決する方法としては潜像担持体と現像ローラとの間には交番電場を形成しない方法で、クラウド現像を実現する必要がある。
【0063】
このようなフレア(クラウド)現像を実現できる方法としては、先に挙げた特許文献1や特許文献2に記載の方式が有効と考えられるが、これらに関しては先にも述べた通り、適当な条件の元で利用しないと全く効果が無い。
【0064】
また、特許文献2に記載の方式などの様に、トナー担持体の機械的な駆動を無くし、3相以上の交互電場によってトナーを静電的に搬送し現像する方法も有効であると考えられる。しかしながら、同公報に記載の方法によれば、何かのきっかけで静電搬送できなくなったトナーを起点として、搬送基板上にトナーが堆積してしまい、結果として機能しなくなる問題を抱えてしまう。このような問題を解決すべく、例えば特許文献3に記載の方式のように固定搬送基板とその表面を移動するトナー担持体の組合せのような構造も提案されているが、機構が非常に複雑になってしまう。これに対し、本実施形態のプリンタ100のように、トナーをホッピングによって電極間で往復移動させながら、トナー担持体の表面移動によって現像領域に搬送する方式では、前述のようなトナーの堆積や機構の複雑化を回避することができる。
【0065】
また、本実施形態の現像装置6のような、トナーを電極間の電界によりトナー担持体表面から引き離し、フレア(クラウド)を形成させるタイプの現像装置では、トナーがトナー担持体表面をホッピングして移動するため、トナーとトナー担持体表面とが大部分の時間、非接触である。したがって、トナーがトナー担持体表面に静電的に付着する力は弱い。そのため、現像電界を弱く設定しても(例えば、現像ポテンシャルが100[V]以下でも)現像能力を容易に確保することができる利点がある。また、トナーとトナー担持体表面とが静電的に付着する力が弱いので、トナー担持体表面から容易にトナーを引き剥がすことができ、トナーの劣化が抑えられるため高耐久化にできる利点がある。
【0066】
しかし、現像電界を弱く設定すると、僅かなトナー帯電のばらつきでも現像ムラを発生させてしまう。したがって現像ポテンシャル100[V]以下の低電位プロセスでは特に、均一にトナー粒子を現像するのは難しい。そして、トナー担持体表面に供給されたトナー粒子に帯電のばらつきが生じると、現像性能に悪影響を与える。このように、トナーを電極間の電界によりトナー担持体表面から引き離しクラウドを形成させるタイプの現像装置では、トナー担持体表面へ正常な帯電のトナー供給が重要となる。
ここで、トナー粒子に帯電のばらつきが生じる原因として、トナー薄層形成時のストレスによりトナー劣化が生じて、正常なトナー帯電ができなくなり帯電不良のトナー粒子が生じてトナー帯電ムラが生じてしまうケースが挙げられる。このような帯電不良のトナーが規制部を通過すると地汚れやトナー飛散など画像に悪影響を与える。
【0067】
以上のように、トナーを電極間の電界によりトナー担持体表面から引き離しクラウドを形成させるタイプの現像装置を実際の製品に搭載しようとすると、帯電不良のトナーを規制部より通過させない工夫が必要となる。ここで、帯電不良のトナーを規制部の当接圧を大きくして規制部で抑えることが考えられるが、当接圧を大きくするとトナーにストレスを掛け、経時でトナーが溶融し、規制部材表面に固着する場合がある。
特に電界によりクラウドを形成させる現像装置では、トナー担持体表面に電界を発生させるために電極層上にはごく薄い絶縁層しか形成することができない。そのためトナー担持体表面は弾性がなくトナーにストレスを与え易い。また、トナーが固着しないような材料をコーティングすると表層の厚さが増し電界形成に影響を与えてしまう。
局所的にトナーが規制部材に融着すると、トナー規制量が不均一になるためスリーブ上にスジ状のトナーコートムラが発生する。またトナーが融着すると、規制部材によるトナーへの本来の電荷付与が阻害されるため、トナー帯電量が不安定になり、さまざまな画像劣化が発生してしまう。
【0068】
このような問題に対して、本実施形態の現像装置6は、図3に示すように、トナー規制部材として、ローラ状のトナー規制ローラ63を備えている。トナー規制部材をローラ状とすることにより、ブレード方式と比較し、トナー担持ローラ7とのニップ面積が増加するため規制圧を弱くできるので、トナー規制部材であるトナー規制ローラ63へのトナー融着及び帯電不良トナーの規制部材からの擦り抜けを防止でき、現像装置6の長寿命化を達成できる。また、トナー担持ローラ7上によって帯電不良トナーが搬送されることに起因する地汚れを防止し、高画質な画像を提供できる。
【0069】
以下、現像装置6について、より詳しく説明する。
トナー規制ローラ63は、金属バネのバネ圧によってトナー担持ローラ7に当接配置される。トナーはパドル64、および供給ローラ62を介してトナー担持ローラ7の表面に供給される。トナー担持ローラ7上に供給されたトナーは、さらに、トナー規制ローラ63の当接圧によって所定量に薄層化され、トナー担持ローラ7を回転させることによって感光体ベルト11との対向部である現像領域に搬送される。
トナー規制ローラ63は、現像動作時には静止した状態でトナー担持ローラ7に当接しているが、非現像時に所定のタイミングで、その当接位置において、トナー担持ローラ7の表面移動方向に対して逆方向に表面移動するように図中の矢印方向に回転するようになっている。
【0070】
トナー担持ローラ7の表面移動方向に対してカウンタ方向に表面移動するに回転することで、トナー担持ローラ7とトナー規制ローラ63の間のくさび部分に入りこんだトナーが堆積せずに、トナー担持ローラ7の表面移動方向上流側へ押し戻される。トナー担持ローラ7は表層に電極を配した実質的に剛体の部材なので、トナー規制ローラ63は弾性体ローラとする。ローラ構成としては、芯金上に、弾性層として、ニトリルゴム、エピクロルヒドリンゴム、熱可塑 性エラストマー等を被覆したものを使用し、弾性層の外周には離型層としての表面層を設けている。
ここで、トナー規制ローラ63の弾性体層の硬度は、トナー薄層の均一化による画像濃度の均一化のために、トナー担持ローラ7の表層硬度よりも低硬度である。弾性層としては、NBR(ニトリルゴム)を使用し、ゴムローラと芯金とは接着している。弾性層の低硬度化のため、ナフテン系オイルを添加し、ローラ硬度としてはJIS−A硬度で45とする。
【0071】
次にトナー規制ローラ63の構成および製造方法に関する実施例を示す。
トナー規制ローラ63は、中央部の外径φ14[mm]としたが、両端部はφ13.75[mm]とし、外径差で250[μm]のクラウンを付与した。トナー規制ローラ63をストレート形状とした場合、トナー規制ローラ63の両端部をバネで押すことによる撓みが発生し、トナー規制ローラ63の両端部が約4万枚で摩耗し、ゴムが露出することが確認された。クラウンを付与することでトナー規制ローラ63の軸方向の偏摩耗を防ぐことができた。クラウンの付与はトナー規制ローラ63単独の寿命上の問題だけでなく、トナー担持ローラ7との圧力分布の均一化を意味し、トナー担持ローラ7に対するトナー規制ローラ63の連れ回り性の信頼性を向上させるためのものである。クラウン付与した場合、トナー担持ローラ7の回転量に対するトナー規制ローラ63の移動量が100[%]と安定性を示したのに対し、ストレート形状の場合75〜80[%]しか移動することができなかった。
クラウン形状については、輪郭形状を台形形状としたり、多角形形状とした場合は、変極点部分でトナー担持ローラ7上に帯状のトナー層ムラが発生し、画像濃度が不均一となるため、円弧形状と二次曲線形状といった連続波形形状とした。
【0072】
また、トナー規制ローラ63は導電材料で構成されている。抵抗調整のためにカーボンブラックや金属酸化物等の導電性物質を分散したゴム材や、またこれらを発泡させたものを用いる。トナー規制ローラ63を導電性にすることで、トナー担持ローラ7上の電極間に形成される電界(フレア電界)を遮る電界シールドの作用が生じる。これによって、トナー規制ローラ63とトナー担持ローラ7とが対向する規制部におけるフレア電界を抑制し、トナー担持ローラ7上の他の位置に比べて電界を弱まるため、トナーのフレア状態が納まり(他の位置よりも嵩が小さくなり)、トナー規制ローラ63によって安定してトナー層厚を規制することができる。
また、トナー規制部材がブレード部材ではなく、ローラ部材を用いることで、ローラ表面とトナー担持ローラ7との間で形成されるニップ部がくさび形状となり、上記電界シールド効果が序々に得られるため、トナーの嵩を徐々に小さくしていき、より確実に、トナーのフレア状態を納めることができ、安定してトナー層厚を規制することが出来る。
【0073】
トナー供給部における供給ローラ62とトナー担持ローラ7との間での摩擦帯電により正常に帯電されなかった弱帯電や無帯電のトナー粒子は、正常に帯電されたトナー粒子よりもトナー担持ローラ7に対する静電的付着力が小さい。現像装置6では、トナー規制ローラ63に正常帯電トナー粒子と同極性(逆帯電トナーとは逆極性)にバイアス電圧を印加する規制ローラ電圧印加電源68を備えている。トナー供給部において摩擦帯電により正常帯電されず逆極性に帯電されたトナー粒子は、バイアス電圧を印加したトナー規制ローラ63に静電的に吸着されトナー担持ローラ7から分離され、正常帯電トナーは静電的に反発するのでトナー規制ローラ63を通過する。本実施形態の現像装置6では、トナー規制ローラ63に対して、0[V]から−100[V]の範囲でバイアス電圧を印加している。トナー規制ローラ63に吸着したトナー粒子は、トナー規制ローラ63に当接した回収ブレード65によりトナー収容部66へ回収される。
【0074】
図1を用いて説明したように、本実施形態のプリンタ100では、1つの感光体ベルト11に対して4つの現像装置6(K、M,C,Y)が対向し、感光体ベルト11上に形成された4色重ね合わせトナー像を記録紙Pに転写する構成について説明した。本発明を適用可能な画像形成装置としては、図1に示す構成に限るものではなく、トナーをクラウド状態として現像領域まで搬送するトナー担持体を備えた現像装置を有するものであればよい。例えば、複数の現像装置それぞれに対応した潜像担持体を備えた構成や、潜像担持体上に形成されたトナー像を中間転写ベルト、中間転写ドラムに一次転写し、さらに、記録媒体に二次転写するカラー画像形成装置や4色重ね合わせトナー像が形成される潜像担持体がドラム状であるカラー画像形成装置、または、モノクロ画像形成装置などにも適用可能である事はいうまでもない。
【0075】
以上、本実施形態の現像装置6は、互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極(A相電極20a、B相電極20b)を備え、外周面に担持されたトナーを潜像担持体である感光体ベルト11との対向部である現像領域へ搬送するためのトナー担持体であるトナー担持ローラ7と、A相電極20a及びB相電極20bに対して互いに異なる電圧を印加することにより、A相電極20aとB相電極20bとの間に電界を形成し、この電界によってトナー担持ローラ7の外周面上でトナーを飛翔させる電界形成手段である電源24と、トナー担持ローラ7の外周面上のトナーの層厚を規制するローラ状のトナー規制ローラ63とを備え、現像領域でトナー担持ローラ7の外周面上で飛翔するトナーを用いて感光体ベルト11上の静電潜像を現像する現像装置である。また、現像装置6は、トナー担持ローラ7の電界発生部材面である外周面へトナー粒子を供給するためのトナー供給手段である供給ローラ62と、現像に使用するためのトナー粒子を格納するためのトナー格納部であるトナー収容部66と、トナー収容部66のトナー粒子を攪拌するトナー攪拌手段であるパドル64とを備える。トナー規制部材がローラ状のトナー規制ローラ63であるため、トナー規制部材としてブレードを用いた構成と比較し、トナー担持ローラ7とのニップ面積が増加するため規制圧を弱くできる。このため、トナー規制部でのトナーへのストレスを軽減でき、トナー規制部材へのトナー融着及び帯電不良トナーの規制部材からの擦り抜けを防止でき、現像装置の長寿命化を達成できる。また、トナー担持ローラ7上によって帯電不良トナーが搬送されることに起因する地汚れを防止し、高画質な画像を提供できる。
さらに、現像装置6が備えるトナー規制ローラ63の材質が導電性材料であるため、規制部におけるフレア電界を抑制するころができるため規制部でクラウド状態を抑えてトナーの薄層を均一にできる。
【0076】
また、現像装置6のトナー担持ローラ7は表面移動することにより担持したトナーを現像領域に搬送する構成であり、トナー規制ローラ63はトナー担持ローラ7と対向する位置でトナーの表面移動方向に対してカウンタ方向に表面移動する。これにより、画像形成時に、トナー規制ローラ63とトナー担持ローラ7との当接部によって規制されたトナーが、トナー担持ローラ7とトナー規制ローラ63との間のくさび部分で堆積することを防止し、トナー規制部材へのトナー融着を防止することができる。
【0077】
また、現像装置6では、トナー規制ローラ63の表面硬度と、トナー担持ローラ7の表面硬度とは、
トナー規制ローラ63の表面硬度≦トナー担持ローラ7の表面硬度
の関係を満たす。
これにより、トナー薄層の均一化が実現でき、現像領域に到達するトナー量のバラツキを抑制することができるため画像濃度の均一化ができる。
【0078】
また、現像装置6では、トナー担持ローラ7に担持され、所望の極性に帯電したトナーと同極性の電圧をトナー規制ローラ63に印加する規制ローラ電圧印加手段である規制ローラ電圧印加電源68を備えることにより、トナー担持ローラ7の表面上から静電的に逆極性トナー粒子を分離除去することができる。これにより、トナー担持ローラ7上のトナー帯電量のバラツキを抑制することができ、現像ムラを防止することができる。
【0079】
また、潜像を担持する潜像担持体である感光体ベルト11と、感光体ベルト11上の潜像を現像する現像手段とを有する画像形成装置であるプリンタ100において、現像手段として現像装置6を用いることにより、現像ムラを防止することができ、良好な画像形成を行うことができる。
【符号の説明】
【0080】
1 ベルトユニット
2 帯電装置
3 定着装置
3a 加圧ローラ
3b 定着ローラ
4 光書込ユニット
6 現像装置
7 トナー担持ローラ
8 入口部
9 出口部
10 現像対向ローラ
11 感光体ベルト
11a 二次転写バックアップローラ
11b 駆動ローラ
11c テンションローラ
12 二次転写ローラ
20a A相電極
20b B相電極
21a A相共通電極
21b B相共通電極
22 表面層
23 支持基板
24 電源
25 フランジ部材
50 給紙カセット
51 給紙コロ
52 給紙路
53 レジストローラ対
60 プロセスユニット
61 ケーシング
62 供給ローラ
63 トナー規制ローラ
64 パドル
65 回収ブレード
66 トナー収容部
67 供給ローラ電源
68 規制ローラ電圧印加電源
100 プリンタ
【先行技術文献】
【特許文献】
【0081】
【特許文献1】特開平3−21967号公報
【特許文献2】特開2002−341656号公報
【特許文献3】特許第4139714号公報
【特許文献4】特開2009−109863号公報
【特許文献5】特開平3−100575号公報
【特許文献6】特開平3−113474号公報

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに異なる電圧が印加される複数種類の電極を備え、外周面に担持されたトナーを潜像担持体との対向部である現像領域へ搬送するためのトナー担持体と、
該複数種類の電極に対して互いに異なる電圧を印加することにより、種類の異なる電極の間に電界を形成し、この電界によって該トナー担持体の外周面上でトナーを飛翔させる電界形成手段と、
該トナー担持体の外周面上のトナーの層厚を規制するローラ状のトナー規制ローラとを備え、
上記現像領域で上記トナー担持体の外周面上で飛翔するトナーを用いて上記潜像担持体上の静電潜像を現像する現像装置において、
上記トナー規制ローラの材質が導電性材料であることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1の現像装置において、
上記トナー担持体は表面移動することにより担持したトナーを現像領域に搬送する構成であり、上記トナー規制ローラは該トナー担持体と対向する位置でトナーの表面移動方向に対してカウンタ方向に表面移動することを特徴とすることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1または2の現像装置において、
上記トナー規制ローラの表面硬度は上記トナー担持体の表面硬度よりも小さいことを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の現像装置において、
上記トナー担持体に担持され、所望の極性に帯電したトナーと同極性の電圧を上記トナー規制ローラに印加する規制ローラ電圧印加手段を備えることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
潜像担持体上に形成された静電潜像に対して現像手段によってトナーを供給することにより該静電潜像を現像して得られる画像を、最終的に記録材上に転移させて、該記録材上に画像を形成する画像形成装置において、
上記現像手段として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
潜像担持体と、該潜像担持体上に形成される静電潜像をトナーで現像する現像手段とを、1つのユニットとして共通の保持体に保持させて画像形成装置本体に対して一体的に着脱可能に構成したプロセスカートリッジにおいて、
上記現像手段として、請求項1乃至4のいずれか1項に記載の現像装置を用いたことを特徴とするプロセスカートリッジ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−64785(P2011−64785A)
【公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−213307(P2009−213307)
【出願日】平成21年9月15日(2009.9.15)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】