説明

現像装置およびそれを備えた画像形成装置

【課題】現像ゴースト等の画像不良を抑制しつつ、現像装置の小型化、ひいては現像装置を用いる画像形成装置の小型化が可能な現像装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置3は、トナーおよびキャリアを含む現像剤を貯留する現像剤貯留部41と、内部に磁石60〜64を有しており、現像剤貯留部41から供給された現像剤を担持する磁気ローラ56と、磁気ローラ56に対向して配置されており、磁気ローラ56から現像剤のトナーを受け取って、周面47にトナー層が形成される現像ローラ42とを含む。現像ローラ42は、少なくとも周面47が軟質磁性材料から構成され、磁気ローラ56の磁石60との間で磁界を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリンタ等の画像形成装置に用いられる現像装置に関し、特に、キャリアおよびトナーを含む2成分現像剤により現像ローラ上にトナー層を形成し、現像ローラ上のトナーを感光体に現像するタッチダウン現像方式の現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
プリンタ等の画像形成装置に用いられる現像装置として、キャリアおよびトナーを含む2成分現像剤を用いるものが知られている。タッチダウン現像方式の現像装置は、一般的に、現像剤を貯留する現像剤貯留部と、現像剤貯留部から現像剤を磁気的に汲み上げて該現像剤を担持する磁気ローラと、磁気ローラから現像剤のトナーのみを受け取って周面にトナー層が形成される現像ローラとを含む。現像ローラの周面上のトナー層によって、画像形成装置の感光体ドラム上に形成された静電潜像を現像する。これにより、感光体ドラム上にトナー像が形成される。
【0003】
上記構成の現像装置では、感光体ドラム上の静電潜像を現像する際、現像ローラの周面上のトナーの一部が消費されずに周面上に残留する場合がある。残留トナーが除去(回収)されずに次の現像処理が行われると、画像不良、例えば現像ゴーストが発生する。
【0004】
この現像ゴーストを抑制する技術として、例えば、特許文献1のものが知られている。特許文献1の現像装置では、磁気ローラ上に形成される磁気ブラシによるトナー回収力を高めることにより現像ゴーストを抑制している。具体的には、図4に示すように、磁気ローラ80の内部に配置された磁極体81とは反対の磁極を有する磁極体83を、磁気ローラ80の磁極体81と対向するように現像ローラ82の内部に配置して、現像ローラ82の磁極体83と磁気ローラ80の磁極体81との間に磁界を形成することにより、磁気ローラ80上の磁気ブラシのトナー回収力を高め、現像ローラ82上の残留トナーを磁気ローラ80上に回収している。
【特許文献1】特開2005−274924号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、上記構成のような現像装置が内蔵される画像形成装置の小型化が要求されている。しかしながら、特許文献1の現像装置では、磁気ローラ80との間に磁界を形成するために現像ローラ82の内部に磁極体83を配置しているので、磁極体83を配置した分、現像ローラ82が大径化し、ひいては現像装置が大型化してしまう。その結果、画像形成装置の小型化の要求に応えることは困難である。
【0006】
また、現像ローラ82の両端部82a,82aには、該現像ローラ82の回転軸84の支持に用いられるフランジ部85が嵌入されている。そのため、現像ローラ82は、両端部82a,82aに、磁気ローラ80の磁極体81と対向させた磁極体を配置することができない。したがって、両端部82a,82aに磁気ローラ80上の磁気ブラシを強固に当接させることができず、両端部82a,82aにトナーが付着した場合、磁気ローラ80側にトナーを回収することが困難になる。その結果、画像不良が発生する虞がある。
【0007】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、現像ゴースト等の画像不良を抑制しつつ、現像装置の小型化、ひいては現像装置を用いる画像形成装置の小型化が可能な現像装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明に係る現像装置は、トナーおよびキャリアを含む現像剤を貯留する現像剤貯留部と、内部に磁石を有しており、前記現像剤貯留部から供給された前記現像剤を担持する磁気ローラと、前記磁気ローラに対向して配置されており、前記磁気ローラから前記現像剤のトナーを受け取って、周面にトナー層が形成される現像ローラとを含む。前記現像ローラは、少なくとも前記周面が軟質磁性材料から構成され、前記磁気ローラの前記磁石との間で磁界を形成する。
【0009】
本発明に係る現像装置によれば、現像ローラの少なくとも周面を軟質磁性材料から構成しているので、現像ローラの内部に磁極体を配置する従来の構成と比較して現像ローラの小径化、ひいては現像装置の小型化を図ることができる。しかも、軟質磁性材料は磁気ローラの磁石によって磁化されて、軟質磁性材料からなる周面と磁気ローラの磁石との間で磁界が形成されるので、磁気ローラ上に良好な磁気ブラシを形成することができる。この磁気ブラシのトナー回収力により、現像ゴーストや画像むら等の画像不良を抑制することができる。
【0010】
本発明の好ましい実施形態では、軟質磁性材料の比透磁率が10〜10000である。
【0011】
この構成によれば、現像ゴーストや画像むら等の画像不良を抑制可能な程度のトナー回収力を有する磁気ブラシを確保することができる。
【0012】
本発明の他の好ましい実施形態では、軟質磁性材料は、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、鉄およびニッケルからなる一群から選択され、現像ローラ全体が軟質磁性材料から構成されている。
【0013】
この構成によれば、現像ローラを小径化しても、所定の回転数に耐え得る機械的強度を現像ローラに付与することができる。
【0014】
本発明のさらに他の好ましい実施形態では、現像ローラの周面には、樹脂コーティングが施されている。
【0015】
この構成によれば、樹脂コーティングにより、トナーの現像ローラの周面に対する付着力を低下させることができ、その結果、良好な画像濃度を確保できる。
【0016】
また、本発明に係る画像形成装置は、外部から入力された画像データに基づき静電潜像が形成される感光体ドラムと、前記静電潜像にトナーを供給して該静電潜像を現像する上記構成の現像装置とを含み、前記現像装置の現像ローラの周面上に形成されたトナー層によって、前記静電潜像が現像される。
【発明の効果】
【0017】
本発明に係る現像装置およびそれを備えた画像形成装置によれば、現像ゴースト等の画像不良を抑制しつつ、現像装置の小型化、ひいては現像装置を用いる画像形成装置の小型化が可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0019】
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例であるプリンタの内部構成を概略的に示す正面図である。図1に示すように、プリンタ1は、マゼンタ(M),シアン(C),イエロー(Y),ブラック(Bk)の各色別の画像形成部2(2M,2C,2Y,2Bk)を含むタンデム式のカラープリンタである。各画像形成部2M,2C,2Y,2Bkは、現像装置3、感光体ドラム4、帯電器5、露光器(LEDプリントヘッドユニット等)6、トナー供給部7、クリーナー21および1次転写ローラ9を含む。
【0020】
トナー供給部7は、マゼンタ,シアン,イエロー,ブラックの各色の現像剤を貯蔵する。現像装置3は、トナー供給部7から供給される現像剤を感光体ドラム4に供給して、感光体ドラム4の周面上に形成された静電潜像を現像する。この現像処理により、感光体ドラム4の周面上にトナー像が形成される。
【0021】
感光体ドラム4は、後述する転写ベルト8の下方に位置し、転写ベルト8の外表面に接触した状態で配設されている。感光体ドラム4は、転写ベルト8の回転方向Bの上流側からマゼンタ、シアン、イエロー、及びブラックの順番で並設されている。また、感光体ドラム4は、a−Si(アモルファスシリコン)等から構成され、図1における時計回りの方向(図示のA方向)に回転する。
【0022】
感光体ドラム4の対向する位置には、1次転写ローラ9が転写ベルト8の内表面に接触した状態で転写ベルト8を介して配置されている。1次転写ローラ9は、転写ベルト8の回転により従動回転するローラであり、感光体ドラム4とで転写ベルト8をニップして、感光体ドラム4に形成された各色のトナー像を転写ベルト8に1次転写させる1次転写部Tを構成する。ここで、転写ベルト8は、各色のトナー像が多重転写されるように1次転写される。これにより、転写ベルト8にはカラーのトナー像が形成される。
【0023】
帯電器5は、感光体ドラム4の周面を一様に帯電する。露光器6は、外部PC(パーソナルコンピュータ)等から入力された原稿画像データに基づくレーザ光を感光体ドラム4の周面に導くポリゴンミラー6aを有している。ポリゴンミラー6aは、図略の駆動源によって回転しつつ、各感光体ドラム4の周面上にレーザ光を走査して、各周面に静電潜像を形成する。
【0024】
クリーナー21は、各感光体ドラム4の周面上に配置され、1次転写後に該周面上に残留する残留トナー等を除去する。
【0025】
転写ベルト8は、感光体ドラム4の列の上方に配置されると共に、外表面が感光体ドラム4の周面に接触した状態となるように、従動ローラ10と駆動ローラ11との間に張設されている。また、転写ベルト8は、アイドルローラ19によって上方に付勢されている。駆動ローラ11は、図略の駆動源による駆動力を受けて回転して、転写ベルト8を回転駆動させる。従動ローラ10は、転写ベルト8の回転によって従動回転する。これにより、転写ベルト8はB方向(反時計回りの方向)に回転する。
【0026】
また、転写ベルト8は、駆動ローラ11に巻回されている部位が屈曲した状態となっており、この屈曲部位は、転写ベルト8に1次転写されたトナー像が用紙Pに2次転写される2次転写位置P1として設定されている。この2次転写位置P1には、転写ベルト8を介して駆動ローラ11に対向する2次転写ローラ18が設けられている。2次転写ローラ18は、駆動ローラ11との間でニップを形成して、該ニップを通過する用紙Pに、転写ベルト8の外表面上のトナー像を2次転写する。
【0027】
2次転写位置P1の下方には、一対のローラから構成されるレジストローラ17が配設されている。このレジストローラ17は、用紙Pを2次転写位置P1に向けて搬送すると共に、用紙Pの斜め送りを修正する。
【0028】
2次転写位置P1の上方には、2次転写位置P1でトナー像の2次転写が施された用紙Pに対して定着処理を施す定着装置14が設けられている。定着装置14は、一対の定着ローラ141を含み、用紙Pを加熱しつつ、定着ローラ141間でニップすることで、2次転写されたトナー像を用紙P上に定着させる。
【0029】
プリンタ1の下部における、露光器6の下方位置には、用紙束を収納する給紙カセット12が配置されている。そして、給紙カセット12と2次転写位置P1との間には、用紙Pを給紙カセット12から2次転写位置P1まで用紙Pを案内する用紙搬送路13が設けられている。用紙搬送路13には、上述のレジストローラ17が配設されている。また、用紙搬送路13には、レジストローラ17の他に、用紙Pを案内するための複数のローラ対が適所に配設されている。
【0030】
プリンタ1の上面には、定着装置14によって定着処理が施された用紙Pが排出される排出部16が形成されており、この排出部16と定着装置14との間には、用紙Pを案内するための用紙排出路15が設けられている。この用紙排出路15にも、用紙Pを搬送するためのローラ対が適所に配設されている。
【0031】
以下、本実施形態に係る現像装置3について説明する。現像装置3は、キャリアおよびトナーを含有する現像剤を用いるタッチダウン現像方式の現像装置である。本明細書において、「トナー」とは、着色剤、電荷制御剤、ワックス等の添加剤をバインダー樹脂中に分散させた微粉体のことであり、また、「磁性キャリア」とは、Fe等の磁性粒子であって、トナーを帯電させるためのものである。さらに、「トナー」は、トナーカートリッジから現像装置3に適宜補給される消耗品であるのに対し、「磁性キャリア」は、予め所定量が現像装置3内に装填されており、消耗することなく循環使用されるため、通常、補給されることはない。
【0032】
図2は、本実施形態に係る現像装置の内部構造を示す断面図である。現像装置3は、該現像装置3の内部空間を画定し、画像形成装置1の前後方向に延びる現像容器(壁部)45を含む。現像装置3は、現像容器45内に、現像剤を貯留すると共に、現像剤を攪拌しつつ搬送することが可能とされた現像剤貯留部41と、現像剤貯留部41の上方に配置された磁気ローラ56と、磁気ローラ56の斜め上方位置で磁気ローラ56に対向配置された現像ローラ42と、先端が磁気ローラ56に対向するように配置された現像剤規制ブレード55とを含む。
【0033】
現像剤貯留部41は、現像装置3の長手方向に延びる2つの隣り合う現像剤貯留室41a,41bから構成されており、現像剤貯留室41a,41bは、現像容器45の一部である仕切り板50によって長手方向において互いに仕切られているが、長手方向における両隅部において互いに連通されている。また、各現像剤貯留室41a,41bには、回転により現像剤を攪拌するスクリューフィーダ43,44が回転可能に装着されている。スクリューフィーダ43,44は、回転方向が互いに逆方向に設定されているので、現像剤は、現像剤貯留室41aおよび現像剤貯留室41b間を攪拌されつつ搬送される。この攪拌により、トナーとキャリアとが混合され、トナーが帯電される。
【0034】
磁気ローラ56は、図略の駆動源によって回転される回転軸58と、この回転軸58と矢印で示す方向に一体に回転するように構成された回転スリーブ57とを有する。回転軸58は、現像装置3の長手方向(画像形成装置1の前後方向)に延びるように配設されており、回転スリーブ57は、例えばアルミ等の非磁性材料から構成され、軸心が回転軸58と一致する円筒状の形状を有している。回転スリーブ57の内部には、現像装置3の長手方向に延びる複数の磁石60〜64が配置されている。これらの磁石60〜64は、矢印で示す磁気ローラ56の回転方向に沿って、汲上極62、規制極61、主極60、搬送極64、剥離極63とされている。これらの磁石60〜64は、回転スリーブ57内で固定されており、回転軸58の回転に伴って一体に回転しない。
【0035】
回転軸58の回転に伴って回転スリーブ57が回転すると、汲上極62によって現像剤貯留部41から現像剤が磁気的に汲み上げられ、磁気ローラ56の周面59に現像剤の層が形成される。そして、現像剤の磁性キャリアによって周面59上に磁気ブラシが形成される。
【0036】
磁気ローラ56の周面59(つまり、回転スリーブ57の周面)に磁気的に付着した現像剤の層厚は、現像剤規制ブレード55によって規制される。現像剤規制ブレード55は、回転スリーブ57の長手方向に沿って延び、その先端が周面59との間で所定の隙間を形成するように配設された板部材である。回転スリーブ57が回転すると、現像剤規制ブレード55の前記先端によって、磁気ローラ56の周面59上の現像剤の穂切りが行われる。この穂切りによって、現像剤の層厚が規制され、磁気ローラ56の周面59上に、所定厚みの現像剤層、つまり磁気ブラシ層が均一に形成される。
【0037】
現像ローラ42は、図略の駆動源によって回転される軸部48と、この軸部48と矢印で示す方向に一体に回転するように構成された回転スリーブ49とを有するシャフト状の部材である。軸部48は、現像装置3の長手方向(画像形成装置1の前後方向)に延びるように配設されており、回転スリーブ49は、軸心が軸部48と一致する円筒状の形状を有している。現像ローラ42は、その周面47(つまり、回転スリーブ49の周面)が、磁気ローラ56の周面59との間で所定の隙間を形成するように、かつ磁気ローラ56の主極60と周面59を介して対向するように配設されている。また、現像ローラ42は、現像容器45に形成された所定の開口を通して感光体ドラム4に臨むように配設されており、その周面47と感光体ドラム4の周面との間には所定の隙間が形成されている。また、図3に示すように、回転スリーブ49の両端部49a,49aには、軸部48の支持に用いられるフランジ部65が嵌入されている。
【0038】
現像ローラ42の回転スリーブ49は、軟質磁性材料から構成されている。軟質磁性材料としては、例えば、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、鉄、ニッケルが挙げられる。これらの軟質磁性材料の比透磁率は、好ましくは10〜10000である。回転スリーブ49は、このように軟質磁性材料から構成されているので、磁気ローラ56の主極60によって磁化され、主極60との間で磁界を形成する。特に、回転スリーブ49を軟質磁性材料から構成することで、回転スリーブ49の両端部49a,49aを主極60によって磁化させることができ、両端部49a,49aと主極60との間で磁界を形成することができる。この磁界により、現像ローラ42と磁気ローラ56の主極60との間で良好な磁気ブラシが形成される。現像ローラ42の回転スリーブ49は、その全体を軟質磁性材料から構成してもよく、周面47のみを軟質磁性材料から構成してもよい。また、現像ローラ42の周面47には、例えばシリコン変性ウレタンからなる樹脂コーティングが施されている。
【0039】
また、現像ローラ42の回転スリーブ49は、図3に示すように、回転スリーブ49の長手方向の寸法(幅寸法)が、磁気ローラ56内の主極60の長手方向の寸法(幅寸法)と等しく、またはそれよりも小さい寸法に設定された状態で主極60と長手方向において対向するように配置されることが好ましい。回転スリーブ49の長手方向寸法を主極60の長手方向寸法よりも大きく設定すると、回転スリーブ49の両端部49a,49aが磁気ローラ56上の磁気ブラシと対向しなくなる。そのため、両端部にトナーが付着した場合、トナーを磁気ローラ56側に回収することが困難になる。
【0040】
現像ローラ42は、矢印の方向に回転されると、周面47が磁気ローラ56上の磁気ブラシ層と接触する。このとき、現像ローラ42と磁気ローラ56との間にバイアスを印加すると、電位差によって磁気ブラシ層からトナーのみが現像ローラ42の周面47に移動し、周面47上にトナー層が形成される。そして、周面47上のトナー層が、現像ローラ42と感光体ドラム4との間の電位差によって感光体ドラム4の周面に移動すると、感光体ドラム4の周面に形成されている静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0041】
上述した構成の現像装置3によれば、現像ローラ42を軟質磁性材料から構成しているので、現像ローラの内部に磁石を配置して磁気ローラとの間で磁界を形成する従来の構成と比較して現像ローラ42の小径化を図ることができる。これにより、現像装置3の小型化、ひいては画像形成装置1の小型化を実現できる。
【0042】
しかも、軟質磁性材料から構成される現像ローラ42の回転スリーブ49は、磁気ローラ56の主極60によって磁化されて、回転スリーブ49と磁気ローラ56の主極60との間で磁界が形成されるので、磁気ローラ56の周面59上に良好な磁気ブラシを形成することができる。特に、本実施形態では、現像ローラの両端部が磁化されない従来の構成と異なり、回転スリーブ49(現像ローラ42)の両端部49a,49aは主極60によって磁化されるので、回転スリーブ49の周面47全体と主極60との間で磁界を形成することができる。感光体ドラム4上の静電潜像を現像する際に現像ローラ42の周面47上のトナーの一部が消費されずに周面47上に残留すると、現像ゴーストや画像むら等の画像不良が発生する場合があるが、上述のように形成された磁気ブラシのトナー回収力により、そのような画像不良を抑制することができる。
【0043】
さらに、比透磁率が10〜10000である軟質磁性材料から現像ローラ42の回転スリーブ49を構成することで、所望のトナー回収力を有する磁気ブラシを容易に形成することができる。比透磁率が10未満であると、磁気ローラ56と現像ローラ42の間の磁束密度が上がらないため、所望のトナー回収力を有する磁気ブラシを形成することは難しい。一方、比透磁率が10000を越えると現像ローラ42上にキャリアが現像されやすくなるため、感光体ドラム4上にキャリア現像するなどの不具合が生じる。
【0044】
さらに、現像ローラ42全体を軟質磁性材料から構成した場合、現像ローラ42を小径化しても、所定の回転数に耐え得る機械的強度を現像ローラ42に付与することができる。
【0045】
また、現像ローラ42の周面47に形成された樹脂コーティングにより、トナーの現像ローラ42の周面47に対する付着力を低下させることができ、その結果、良好な画像濃度を確保できる。
【0046】
以下、上述の作用を有する現像装置3を用いて行った画像評価の試験について説明する。画像評価試験は、現像ゴースト、画像むら(濃度追随性)および画像濃度について行った。試験では、現像ローラ42として、軟質磁性材料がSUS430であり、周面に樹脂コーティングが施されていないシャフト部材(実施例1)、軟質磁性材料がSUS430であり、周面に樹脂コーティングが施されたシャフト部材(実施例2)を用い、比較例として、非磁性材料であるアルミニウムから構成されたシャフト部材を用いた。実施例2の樹脂コーティングは、シリコン変性ウレタンからなる。また、SUS430の比透磁率は74、飽和磁束密度は1.6[T]であり、実施例1,2および比較例のシャフト部材は、径が12mmのものを用いた。
【0047】
実験条件は以下の通りである。
・磁気ローラ56:径16mm
・磁気ローラ56の磁力:主極60 85[mT]、規制極61 60[mT]、
汲上極62 60[mT]、剥離極63 35[mT]
搬送極64 65[mT]
・システム速度:169mm/s
・現像ローラ42のローラ周速:270mm/s
・磁気ローラ56のローラ周速:406mm/s
・現像ローラ42および感光体ドラム4間の隙間:120μm
・現像ローラ42および磁気ローラ56間の隙間:300μm
・現像剤規制ブレード55および磁気ローラ56間の隙間:350μm
そして、現像ローラ42に、周波数3KHz、Vpp1.3KV、Vdc75V、デューティサイクル35%、磁気ローラ56に、逆位相で、Vpp1.1KV、Vdc300Vのバイアスを印加した。なお、主極60の磁力は80〜100mTであり、好ましくは85mT以上である。主極60の磁力が85mT未満の場合は、現像ロール42と磁気ローラ56との間に発生する磁界が不十分となり、現像ローラ42から磁気ローラ56へトナーを十分に引き戻せない場合がある。
【0048】
上記の実験条件で得られた画像評価を次の表1に示す。
【0049】
【表1】

【0050】
表1では、現像ゴーストについては、○は現像ゴーストがない、×は現像ゴーストが明らかにある、を示す。また、画像むらについては、○は、画像むら評価係数が0.13以上、×は、画像むら評価係数が0.165以上を示す。また、画像濃度については、○は、濃度IDが1.30以上、△は、濃度IDが1.30未満1.28以上、×は濃度IDが1.28未満を示す。なお、画像濃度IDは、ベタ画像をポータブル反射濃度計RD−19(サカタインクスエンジニアリング社製)で測定した反射濃度を示している。
【0051】
表1に示すように、実施例1は、画像濃度の評価が△であるものの、現像ゴーストおよび画像むらの評価が○であった。実施例2は、実施例1とは異なり現像ローラ42の周面47に樹脂コーティングが施されているため、画像濃度の評価が○であった。実施例2は、現像ゴーストおよび画像むらの評価も○であった。これに対し、比較例は、現像ゴースト、画像むらおよび画像濃度の全ての評価が×であった。この結果は、比較例では、現像ローラ42が非磁性材料から構成されているため、磁気ローラ56の主極60との間で磁界を形成することができず、磁気ローラ56の周面59上に所望のトナー回収力を有する磁気ブラシを形成することができなかったことに起因する。
【0052】
上述の実験結果から明らかなように、本実施形態に係る現像装置3によれば、現像ローラ42の小径化による現像装置3の小型化を達成しつつ、現像ゴースト、画像むら等の画像不良を抑制すること、適正なレベルの画像濃度を確保することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0053】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の一例であるプリンタの内部構成を概略的に示す正面図である。
【図2】本実施形態に係る現像装置の内部構造を示す断面図である。
【図3】現像装置の磁気ローラおよび現像ローラを概略的に示す正面図である。
【図4】従来の現像装置の磁気ローラおよび現像ローラを概略的に示す正面図である。
【符号の説明】
【0054】
1 画像形成装置
2 画像形成部
3 現像装置
4 感光体ドラム
41 現像剤貯留部
45 現像容器
42 現像ローラ
43,44 スクリューフィーダ
47 周面
55 現像剤規制ブレード
56 磁気ローラ
57 回転スリーブ
58 回転軸
59 周面
60〜64 磁石


【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーおよびキャリアを含む現像剤を貯留する現像剤貯留部と、
内部に磁石を有しており、前記現像剤貯留部から供給された前記現像剤を担持する磁気ローラと、
前記磁気ローラに対向して配置されており、前記磁気ローラから前記現像剤のトナーを受け取って、周面にトナー層が形成される現像ローラと、
を備え、
前記現像ローラは、少なくとも前記周面が軟質磁性材料から構成され、前記磁気ローラの前記磁石との間で磁界を形成する現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置において、前記軟質磁性材料の比透磁率が10〜10000である現像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像装置において、前記軟質磁性材料は、フェライト系ステンレス、マルテンサイト系ステンレス、鉄およびニッケルからなる一群から選択され、前記現像ローラ全体が前記軟質磁性材料から構成されている現像装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の現像装置において、前記現像ローラの前記周面には、樹脂コーティングが施されている現像装置。
【請求項5】
画像形成装置であって、
外部から入力された画像データに基づき静電潜像が形成される感光体ドラムと、
前記静電潜像にトナーを供給して該静電潜像を現像する、請求項1〜4のいずれか一項に記載の現像装置と、
を備え、
前記現像装置の現像ローラの周面上に形成されたトナー層によって、前記静電潜像が現像される画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−54845(P2010−54845A)
【公開日】平成22年3月11日(2010.3.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−220164(P2008−220164)
【出願日】平成20年8月28日(2008.8.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】