説明

現像装置およびそれを備えた画像形成装置

【課題】現像剤の規制ギャップへの搬送量を安定化させて、像担持体上に良好なトナー像を形成することが可能な現像装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像装置122は、現像剤を貯留する現像剤貯留部41と、所定の方向に回転しつつ、現像剤貯留部41から現像剤を受け取り、該現像剤を所定の像担持体121に供給する現像剤担持体56と、現像剤担持体56との間で所定の規制ギャップGが形成されるように現像剤担持体56に対向配置されて該現像剤担持体56との間で磁路を形成すると共に、現像剤担持体56上の現像剤の層厚を磁気的に規制する磁性材料からなる現像剤規制部材55と、現像剤担持体56の回転方向から見た現像剤規制部材55の上流面を覆うように現像剤規制部材55に取り付けられた弾性部材60とを含み、弾性部材60の弾性率は、5〜20MPaに設定されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子写真方式の画像形成に用いられる現像装置、およびそれを備えた、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を利用した、複写機、プリンタ、ファクシミリ等の画像形成装置は、像担持体(例えば、感光体ドラムや転写ベルト)に現像剤を供給して該像担持体上にトナー像を形成する現像装置を含む。
【0003】
現像装置は、基本的な構成要素として、現像剤を貯留する現像剤貯留部と、現像剤貯留部から現像剤を受け取って該現像剤を像担持体に供給することにより、該像担持体上にトナー像を形成する現像ローラと、現像ローラに対向配置されて現像ローラとの間で磁路を形成すると共に、現像ローラの周面上の現像剤の層厚を磁気的に規制する磁性材料からなる現像剤規制部材とを含む。
【0004】
現像剤規制部材が磁性材料からなる場合、現像剤は現像剤規制部材と現像ローラとの間に形成された規制ギャップにおいて磁力によって束縛されるので、現像剤規制部材を非磁性材料から構成した場合と比較して、規制ギャップに進入する現像剤の量を小さくすることができる。そのため、規制ギャップを大きく設定することができるようになり、規制ギャップにおいて異物等の目詰まりを抑制することができる。
【0005】
現像剤規制部材を磁性材料から構成した場合、上記のような利点を得ることができるものの、次のような欠点が知られている。すなわち、現像剤規制部材は磁気的に現像剤を束縛しているので、現像剤規制部材における現像ローラの回転方向から見た上流面に現像剤が滞留し易い。現像剤の滞留量によっては、現像剤の規制ギャップへの搬送量が変動してしまう。現像剤の搬送量が変動すると、現像ローラの周面上に均一な層厚の現像剤層を形成することが困難になるので、像担持体上に形成されるトナー像の画質が低下する。
【0006】
上記のような問題を克服するための技術として、例えば特許文献1のものが知られている。特許文献1の現像装置では、現像剤規制部材の上流面に弾性部材を配設している。この弾性部材により、前記上流面に現像剤が滞留することを防止している。これにより、現像剤の規制ギャップへの搬送量の安定化を図っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2007−147915号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1の現像装置は、現像剤規制部材の上流面に弾性部材を単に配設しているだけであって、現像剤の規制ギャップへの搬送量を安定化させるための十分な対策が講じられているとは言い難い。
【0009】
そこで、本発明は、上記事情に鑑み、現像剤の規制ギャップへの搬送量を安定化させて、像担持体上に良好なトナー像を形成することが可能な現像装置、およびそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明に係る現像装置は、現像剤を貯留する現像剤貯留部と、所定の方向に回転しつつ、前記現像剤貯留部から前記現像剤を受け取り、該現像剤を所定の像担持体に供給する現像剤担持体と、前記現像剤担持体との間で所定の規制ギャップが形成されるように前記現像剤担持体に対向配置されて該現像剤担持体との間で磁路を形成すると共に、前記現像剤担持体上の前記現像剤の層厚を磁気的に規制する磁性材料からなる現像剤規制部材と、前記現像剤担持体の回転方向から見た前記現像剤規制部材の上流面を覆うように前記現像剤規制部材に取り付けられた弾性部材とを含み、前記弾性部材の弾性率は、5〜20MPaに設定されている。
【0011】
本発明に係る現像装置によれば、弾性部材を、現像剤規制部材の上流面を覆うように取り付けて、前記上流面に現像剤が滞留することを防止しているうえに、弾性部材の弾性率を5〜20MPaに設定することで、現像剤の規制ギャップへの搬送量を安定化させている。
【0012】
具体的には、弾性率が20MPaを超えると、つまり、弾性部材が軟らかくなり過ぎると、弾性部材に衝突した現像剤が現像剤担持体の回転方向上流側に跳ね返りやすくなり、跳ね返った現像剤は、前記回転方向上流側から搬送されてくる(つまり、後から搬送されてくる)現像剤と衝突する。そのため、規制ギャップに向かう現像剤の量が変動するため、現像剤の搬送量が安定しない。
【0013】
一方、弾性部材の弾性率が5MPa未満であると、つまり、弾性部材が硬くなりすぎると、弾性部材に衝突した現像剤は、前記回転方向上流側に跳ね返らず、弾性部材に衝突した際の衝撃によって該弾性部材に付着してしまう。そのため、規制ギャップに向かう現像剤の量が変動するため、現像剤の搬送量が安定しない。
【0014】
しかしながら、弾性率を5〜20MPaに設定すると、弾性部材から跳ね返る現像剤の量および弾性部材に付着する現像剤の量を抑制することができる。したがって、現像剤の規制ギャップへの搬送量は安定する。その結果、現像剤担持体上の現像剤層は適切に規制される。
【0015】
本発明の好ましい実施形態において、前記現像剤担持体は、前記現像剤規制部材との間で前記磁路を形成するための磁石を有しており、前記弾性部材は、前記現像剤規制部材の前記上流面側において前記磁石の磁力が及ぶ範囲を越えて延在するように前記上流面に取り付けられている。
【0016】
この構成によれば、弾性部材に衝突した現像剤が弾性部材に磁気的に付着することが抑制されるので、これにより、現像剤が弾性部材周辺に滞留することが抑制される。
【0017】
本発明の他の好ましい実施形態において、前記現像剤は、磁性体からなるキャリアと、非磁性体であるトナーとを含み、前記現像剤貯留部は、前記キャリアと前記トナーとを攪拌することで前記トナーを帯電させ、前記弾性部材は、前記トナーの帯電極性と同一の極性を有する材料から形成されている。
【0018】
この構成によれば、弾性部材はトナーの帯電極性と同一の極性を有する材料から形成されているので、トナーが弾性部材に付着し難い。これにより、トナーが弾性部材周辺に滞留することが抑制される。
【0019】
本発明のさらに他の好ましい実施形態において、前記現像剤規制部材は、前記現像剤担持体に対向して前記現像剤の層厚を規制する規制面を有し、前記弾性部材は、前記現像剤担持体に対向する対向面を有し、前記規制面と前記対向面とは略面一に設定されている。
【0020】
この構成によれば、現像剤規制部材の規制面と弾性部材の対向面とは略面一に設定されているので、規制面と対向面との間には、現像剤が滞留してしまうような隙間が形成されない。これにより、現像剤の規制ギャップへの搬送量を一層安定化させることができる。
【0021】
本発明のさらに他の好ましい実施形態において、前記現像剤規制部材は、非磁性材料から形成された第1部分と、磁性材料から形成され、前記回転方向から見て前記第1部分よりも上流側に位置する第2部分とを一体に有し、前記規制面は、前記第1部分における前記現像剤担持体に対向する第1規制面と、前記第2部分における前記現像剤担持体に対向する第2規制面とからなる。
【0022】
この構成によれば、第2部分と現像剤担持体との間で磁路が形成される一方で、第1部分と現像剤担持体との間には磁路が形成されない。これにより、現像剤が現像剤規制部材の規制面の上流側に集中して強固に付着する。その結果、規制面による規制力が上がって、現像剤担持体上に均一な層厚の現像剤層を形成することができる。
【0023】
本発明に係る画像形成装置によれば、トナー像が形成される像担持体と、前記像担持体に現像剤を供給して該像担持体上に前記トナー像を形成する現像装置と、前記トナー像をシート上に転写させる転写部材と、前記シート上の前記トナー像を該シート上に定着させる定着部とを含み、前記現像装置として、上記構成の現像装置が採用されている。
【発明の効果】
【0024】
本発明に係る現像装置および画像形成装置によれば、現像剤の規制ギャップへの搬送量を安定化させて、像担持体上に良好なトナー像を形成することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明の実施形態に係る画像形成装置の内部構造を概略的に示す。
【図2】現像装置の内部構造を概略的に示す断面図である。
【図3】現像装置の一部拡大図であり、現像剤の規制状態を示す。
【図4】弾性部材の弾性率と現像剤搬送量との関係を表す図である。
【図5】現像剤規制ブレードの他の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明に係る実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0027】
図1は、本実施形態に係る画像形成装置の内部構造を概略的に示す。画像形成装置10は、例えばタンデム式のカラープリンタであり、箱形を呈する装置本体11を含む。装置本体11は、内部に、コンピュータ等の外部機器から伝送された画像情報に基づき画像を形成する画像形成部12と、画像形成部12によって形成され、用紙Pに転写された画像に定着処理を施す定着部13と、転写用の用紙Pを貯留する用紙貯留部14とを含む。装置本体11の上部には、定着処理後の用紙Pが排出される用紙排出部15が設けられている。
【0028】
画像形成部12は、用紙貯留部14から給紙された用紙Pにトナー画像を形成するものであって、本実施形態では、上流側(図1の紙面の右方)から下流側へ向けて順次配設された、マゼンタ色のトナー(現像剤)を用いるマゼンタ用ユニット12Mと、シアン色のトナーを用いるシアン用ユニット12Cと、イエロー色のトナーを用いるイエロー用ユニット12Yと、ブラック色のトナーを用いるブラック用ユニット12Kとを含む。
【0029】
各ユニット12M,12C,12Y,12Kは、感光体ドラム121および現像装置122を含む。感光体ドラム121は、周面に静電潜像およびこの静電潜像に沿ったトナー像(可視像)を形成するものであって、図1において反時計方向に回転しつつ対応する現像装置122からトナーの供給を受ける。各現像装置122は、装置本体11の前面側(図1の紙面の表側)に配設された図略のトナーカートリッジからトナーの補給を受ける。
【0030】
各感光体ドラム121の直下位置には、帯電装置123が設けられているとともに、各帯電装置123の下方位置には露光装置124が設けられている。各感光体ドラム121は、帯電装置123によって周面が一様に帯電され、コンピュータ等から入力された画像データに基づく各色に対応したレーザー光が露光装置124から帯電後の感光体ドラム121の周面に照射される。これにより、各感光体ドラム121の周面に静電潜像が形成される。そして、静電潜像に現像装置122からトナーが供給されると、感光体ドラム121の周面にトナー像が形成される。
【0031】
感光体ドラム121の上方には、駆動ローラ125aと従動ローラ125bとの間に張設された転写ベルト125が配設されている。転写ベルト125は、各感光体ドラム121に対応して設けられた転写ローラ126によって感光体ドラム121の周面に押し付けられた状態で、各感光体ドラム121と同期しながら駆動ローラ125aと従動ローラ125bとの間を周回する。
【0032】
駆動ローラ125aと従動ローラ125bとの間であって、従動ローラ125b側へ寄った位置にテンションローラ125cが設けられている。テンションローラ125cは、転写ベルト125に張力を与えるものであり、図略の付勢部材の付勢力で上方に付勢されている。
【0033】
転写ベルト125の周回と共に、転写ベルト125の表面(像担持面)に対して、まず、マゼンタ用ユニット12Mの感光体ドラム121によるマゼンタのトナー像の一次転写が行なわれる。ついで、転写ベルト125におけるマゼンタトナー像の転写位置に、シアン用ユニット12Cの感光体ドラム121によるシアンのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれる。以下同様にして、イエロー用ユニット12Yによるイエローのトナー像の転写、およびブラック用ユニット12Kによるブラックのトナー像の転写が重ね塗り状態で行なわれる。これにより、転写ベルト125の表面にカラーのトナー像が形成される。
【0034】
各感光体ドラム121の図1における左方位置には、感光体ドラム121の周面上の残留トナーを除去して清浄化するドラムクリーニング装置127が設けられている。ドラムクリーニング装置127によって清浄化処理された感光体ドラム121の周面は、新たな帯電処理のために帯電装置123へ向かう。ドラムクリーニング装置127で感光体ドラム121の周面から取り除かれた廃トナーは、所定の経路を通って図略のトナー回収ボトルに回収される。
【0035】
画像形成部12の図1における左方位置には、上下方向に延びる用紙搬送路111が形成されている。用紙搬送路111には、適所に搬送ローラ対112が設けられており、用紙貯留部14からの用紙Pは、搬送ローラ対112の駆動で転写ベルト125へ向けて搬送される。また、用紙搬送路111には、駆動ローラ125aと対向した位置で転写ベルト125の表面(像担持面)と当接した二次転写ローラ113が設けられている。二次転写ローラ113は転写ベルト125の像担持面との間で転写ニップ部を形成する。用紙Pは、転写ニップ部において転写ベルト125と二次転写ローラ113とに押圧挟持され、これにより、転写ベルト125上のトナー像が用紙Pに二次転写される。
【0036】
用紙貯留部14は、装置本体11の図1における右側壁に開閉自在に設けられた手差しトレイ141と、装置本体11内における露光装置124より下方位置に挿脱可能に装着された用紙トレイ142とを含む。用紙トレイ142には複数枚の用紙Pが積層されてなる用紙束P1が貯留される。用紙トレイ142は、上方に開口した箱体で構成され、用紙束P1が貯留可能になっている。用紙トレイ142に貯留された用紙束P1の最上位の用紙Pは、ピックアップローラ143の駆動で用紙搬送路111へ向けて1枚ずつ繰り出される。用紙トレイ142から繰り出された用紙Pは、搬送ローラ対112の駆動で用紙搬送路111を通って前記転写ニップ部へ向けて搬送される。
【0037】
定着部13は、二次転写された用紙P上のトナー像に対して定着処理を施す。定着部13は、内部に加熱源である通電発熱体を有する加熱ローラ131と、加熱ローラ131と対向配置された定着ローラ132と、定着ローラ132および加熱ローラ131間に張設された定着ベルト133と、定着ベルト133を介して定着ローラ40と対向配置された加圧ローラ134とを含む。定着部13へ供給された用紙Pは、加圧ローラ134と高温の定着ベルト133との間を通過しながら定着ベルト133からの熱を得て定着処理が施される。定着処理の完了したカラー印刷済みの用紙Pは、定着部13の上部から延設された排紙搬送路114を通って用紙排出部15の排紙トレイ151へ向けて排出される。
【0038】
図2は、現像装置122の内部構造を概略的に示す断面図である。現像装置122は、該現像装置122の内部空間を画定する現像容器45を含む。現像装置122は、現像容器45内に、現像剤を貯留すると共に、現像剤を攪拌しつつ搬送することが可能とされた現像剤貯留部41と、現像剤貯留部41の上方に配置されたマグネットローラ56(現像剤担持体)と、マグネットローラ56の斜め上方位置でマグネットローラ56に対向配置された現像ローラ42と、マグネットローラ56に対向配置された現像剤規制ブレード55(現像剤規制部材)とを含む。
【0039】
現像剤貯留部41は、現像装置122の長手方向に延びる2つの隣り合う現像剤貯留室41a,41bから構成されており、現像剤貯留室41a,41bは、現像容器45に一体に形成された仕切り板50によって長手方向において互いに仕切られているが、長手方向における両隅部において互いに連通されている。また、各現像剤貯留室41a,41bには、回転により現像剤を攪拌するスクリューフィーダ43,44が回転可能に装着されている。スクリューフィーダ43,44は、回転方向が互いに逆方向に設定されているので、現像剤は、現像剤貯留室41aおよび現像剤貯留室41b間を攪拌されつつ搬送される。この攪拌により、磁性体からなるトナーと非磁性体からなるキャリアとが混合され、トナーが例えばプラスに帯電される。
【0040】
マグネットローラ56は、現像装置122の長手方向に延びるように配設されており、図2では時計回りに回転可能である。マグネットローラ56は、現像剤貯留部41から現像剤を該マグネットローラ56の周面59上に磁気的に汲み上げるための磁石である汲上極57を内部に有している。汲み上げられた現像剤は、マグネットローラ56の周面59上に磁気的に保持され、マグネットローラ56の回転に伴って現像剤規制ブレード55に向けて搬送される。
【0041】
現像剤規制ブレード55は、マグネットローラ56の周面59に磁気的に付着した現像剤の層厚を規制するものである。現像剤規制ブレード55は、マグネットローラ56の長手方向に沿って延びる磁性材料からなる板部材であり、現像容器45の適所に固定された所定の支持部材52によって支持されている。また、現像剤規制ブレード55は、マグネットローラ56の周面59との間で所定の規制ギャップGを形成する規制面51(つまり現像剤規制ブレード55の先端面)を有する。
【0042】
マグネットローラ56は、汲上極57に加え、現像剤規制ブレード55の規制面51に対向配置された磁石である規制極58を内部に有する。したがって、磁性材料から形成された現像剤規制ブレード55は、マグネットローラ56の規制極58によって磁化されて、現像剤規制ブレード55の規制面51と規制極58との間に、つまり規制ギャップGにおいて磁路が形成される。なお、汲上極57および規制極58は、マグネットローラ56の内部において固定されており、マグネットローラ56と共に回転するものではない。また、汲上極57および規制極58はマグネットローラ56と略同一の長手方向寸法を有する。
【0043】
汲上極57によってマグネットローラ56の周面59上に付着した現像剤がマグネットローラ56の回転に伴って規制ギャップG内に搬送されると、現像剤の層厚は規制ギャップGにおいて磁気的に規制されて、周面59上に、所定厚さの均一な現像剤層、つまり均一な磁気ブラシ層が形成される。
【0044】
現像ローラ42は、現像装置122の長手方向に延びるように配設されたシャフト状の部材である。現像ローラ42の周面47は、マグネットローラ56の周面59との間で所定の隙間を形成するように配設されている。また、現像ローラ42は、現像容器45に形成された所定の開口48を通して感光体ドラム121に臨むように配設されており、周面47と感光体ドラム121のドラム表面との間にも所定の隙間が形成されている。
【0045】
現像ローラ42が図2では時計回りに回転されると、その周面47がマグネットローラ56の周面59上の磁気ブラシ層と接触する。このとき、現像ローラ42とマグネットローラ56との間にバイアスを印加すると、電位差によって磁気ブラシ層からトナーのみが現像ローラ42の周面47に移動し、周面47上にトナー層が形成される。そして、周面47上のトナー層が、現像ローラ42と感光体ドラム121との間の電位差によって感光体ドラム121のドラム表面に移動すると、感光体ドラム121のドラム表面に形成されている静電潜像が現像され、トナー像が形成される。
【0046】
ところで、本実施形態では、規制ギャップGに搬送される現像剤の量を安定させるために、現像剤規制ブレード55に弾性部材60を取り付けている。具体的には、弾性部材60は、断面が矩形のブロック状部材であって、図3に示すように、マグネットローラ56の回転方向から見て上流側に面する上流面61と、上流面61とは反対側の下流面63と、マグネットローラ56の周面59に対向する対向面62とを有する。また、弾性部材60は、現像剤規制ブレード55と略同一の長手方向寸法を有する。
【0047】
弾性部材60は、下流面63と現像剤規制ブレード55のブレード上流面53とが密着状態で接合されることにより現像剤規制ブレード55に取り付けられている。そのため、現像剤規制ブレード55のブレード上流面53は、弾性部材60によってほぼ全体が覆われている。言い換えれば、現像剤規制ブレード55の上流側空間は弾性部材60によって占められている。これにより、規制ギャップGに向けて搬送されてくる現像剤は、その一部が弾性部材60によって遮られるので、現像剤層を規制ギャップGにおいて規制する際にブレード上流面53に現像剤が滞留することを防止できる。
【0048】
また、弾性部材60が前記上流側空間を占める占有範囲は、次のようにして定められている。すなわち、弾性部材60は、現像剤規制ブレード55との間で磁路を形成する規制極58の磁力が及ぶ範囲を越えて延在するように前記上流側空間を占めている。そのため、弾性部材60の上流面61には、規制極58の磁力が作用しない。本実施形態では、上流面61と下流面63との間の距離で規定される弾性部材60の厚さを、1mm〜5mmの範囲におけるいずれかの値に設定している。弾性部材60の厚さを上記範囲で設定することにより、少なくとも上流面61には、規制極58の磁力を作用させなくすることができる。これにより、搬送されてくる現像剤が最初に衝突する上流面61に現像剤が付着することが抑制される。その結果、現像剤が上流面61付近に滞留することが抑制される。
【0049】
また、弾性部材60の対向面62と現像剤規制ブレード55の規制面51とは略面一に設定されている。これにより、対向面62と規制面51との間には、規制ギャップGに向けて搬送されてくる現像剤が滞留してしまうような隙間が形成されない。
【0050】
弾性部材60は、例えばスポンジ部材であり、その材料として、例えばナイロン、ウレタン、高分子PE、アクリルが挙げられる。また、弾性部材60の材料は、トナーの帯電極性と同一の極性を有する材料から形成することが望ましい。例えば、トナーがキャリアによってプラスに帯電する場合、弾性部材60は現像剤との接触摩擦によってプラスに帯電する材料から形成される。このように弾性部材60の材料を選択することで、現像剤が弾性部材60に付着し難くなる。これにより、トナーが弾性体周辺に滞留することが抑制される。
【0051】
また、本実施形態では、弾性部材60の弾性率を、5MPa〜20MPaの範囲におけるいずれかの値に設定している。以下、弾性率を上記範囲に設定した理由について説明する。
【0052】
すなわち、弾性率が20MPaを超えると、つまり、弾性部材60が軟らかくなり過ぎると、マグネットローラ56の周面59上の現像剤層D1において、弾性部材60の上流面61に衝突した現像剤BDが、図3に示すようにマグネットローラ56の回転方向上流側に跳ね返りやすくなり、跳ね返った現像剤BDは、前記回転方向上流側から搬送されてくる(つまり、後から搬送されてくる)現像剤RDと衝突する。そのため、規制ギャップGに向かう現像剤の量が変動するため、現像剤の搬送量が安定しない。
【0053】
一方、弾性部材60の弾性率が5MPa未満であると、つまり、弾性部材60が硬くなりすぎると、マグネットローラ56の周面59上の現像剤層D1において、弾性部材60の上流面61に衝突した現像剤ADは、図3に示すように前記回転方向上流側に跳ね返らず、上流面61に衝突した際の衝撃によって該上流面61に付着する。そのため、規制ギャップGに向かう現像剤の量が変動するため、現像剤の搬送量が安定しない。
【0054】
しかしながら、弾性率を5〜20MPaの範囲におけるいずれかの値に設定すると、弾性部材60の上流面61から跳ね返る現像剤RDの量および弾性部材60の上流面61に付着する現像剤ADの量を抑制することができる。したがって、現像剤の規制ギャップGへの搬送量は安定する。これにより、マグネットローラ56の周面59上の現像剤層D1は適切に規制されて、所定厚さの磁気ブラシ層D2が形成される。その結果、感光体ドラム121のドラム表面に良好なトナー像を形成することができる。
【0055】
また、上述したように、弾性部材60の厚さを1mm〜5mmの範囲におけるいずれかの値に設定することにより、および弾性部材60を、トナーの帯電極性と同一の極性を有する材料から形成することにより、現像剤が弾性体周辺に滞留することを抑制できる。これにより、現像剤の規制ギャップGへの搬送量をさらに安定化させることができる。
【0056】
次に、弾性部材60の弾性率と現像剤搬送量との関係を調べるために行った実験について説明する。実験では、弾性率が5MPaに設定された弾性部材60を実施例1とし、弾性率が20MPaに設定された弾性部材60を実施例2とし、弾性部材60を用いなかったものを比較例1とし、弾性率が1MPaに設定された弾性部材60を比較例2とし、弾性率が30MPaに設定された弾性部材60を比較例3とした。また、規制極58は全ての実施例1,2および比較例1〜3において55mTに設定された。そして、規制ギャップGの大きさを0.25mm〜0.40mmの範囲で調整し、マグネットローラ56を1分間回転させた後、マグネットローラ56上の現像剤量を測定し、単位面積当たりの重量(mg/cm)を算出した。その結果を図4に示す。
【0057】
図4に示すように、実施例1および実施例2では、規制ギャップGを0.25mm〜0.40mmの間で変化させても、現像剤搬送量はその変化に応じてなだらかに増加した。これに対し、比較例1〜3では、現像剤搬送量はなだらかに増加せず、急激な変化が見られた。比較例1では、規制ギャップGを約0.3mmから約0.35mmに変えたときに現像剤搬送量が急激に増加した。また、比較例2および3では、規制ギャップGを約0.25mmから約0.3mmに変えたときに現像剤搬送量が急激に増加した。
【0058】
比較例2では、弾性部材60が硬すぎたため、現像剤が弾性部材60の上流面61に押し付けられて該上流面61に付着してしまった結果、現像剤の搬送量が安定しなかったと考えられる。また、比較例3では、弾性部材60が軟らかすぎたため、弾性部材60の上流面61に衝突した現像剤がマグネットローラ56の回転方向上流側に跳ね返って、後から搬送されてくる現像剤と衝突した結果、現像剤の搬送量が安定しなかったと考えられる。
【0059】
図5は、現像剤規制ブレード55の他の形態を示す図である。図5では、現像剤規制ブレード55は、非磁性材料から形成された第1ブレード部分73と、磁性材料から形成された第2ブレード部分74とを有する。
【0060】
第1ブレード部分73は、マグネットローラ56の長手方向に沿って延びる板状の部材であって、マグネットローラ56の周面59に対向する第1規制面73を有する。第2ブレード部分74は、第1ブレード部分73と同様にマグネットローラ56の長手方向に沿って延びる板状の部材であって、マグネットローラ56の周面59に対向する第2規制面74を有する。第2ブレード部分74は、マグネットローラ56の回転方向から見て第1ブレード部分73よりも上流側に位置するように第1ブレード部分73に接合されている。第1ブレード部分73の第1規制面73と第2ブレード部分74の第2規制面74とで規制面51が構成されている。第1規制面73と第2規制面74とは、互いに面一であることが好ましい。
【0061】
上記構成によれば、現像剤規制ブレード55は、非磁性材料からなる第1ブレード部分73と、磁性材料からなる第2ブレード部分74とを有するので、規制極58と第2ブレード部分74との間で磁路が形成される一方で、規制極58と第1ブレード部分73との間には磁路が形成されない。これにより、現像剤が現像剤規制ブレード55の規制面51の上流側に集中して強固に付着する。その結果、規制面51による規制力が上がって、均一な層厚の現像剤層の形成に寄与することができる。なお、上記の実験は、図5の現像剤規制ブレード55を用いて行った。
【符号の説明】
【0062】
10 画像形成装置
41 現像剤貯留部
42 現像ローラ
45 現像容器
51 規制面
55 現像剤規制ブレード
56 マグネットローラ
57 汲上極
58 規制極
60 弾性部材
62 対向面
122 現像装置
G 規制ギャップ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を貯留する現像剤貯留部と、
所定の方向に回転しつつ、前記現像剤貯留部から前記現像剤を受け取り、該現像剤を所定の像担持体に供給する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体との間で所定の規制ギャップが形成されるように前記現像剤担持体に対向配置されて該現像剤担持体との間で磁路を形成すると共に、前記現像剤担持体上の前記現像剤の層厚を磁気的に規制する磁性材料からなる現像剤規制部材と、
前記現像剤担持体の回転方向から見た前記現像剤規制部材の上流面を覆うように前記現像剤規制部材に取り付けられた弾性部材と、
を備え、
前記弾性部材の弾性率は、5〜20MPaに設定されている現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置において、前記現像剤担持体は、前記現像剤規制部材との間で前記磁路を形成するための磁石を有しており、
前記弾性部材は、前記現像剤規制部材の前記上流面側において前記磁石の磁力が及ぶ範囲を越えて延在するように前記上流面に取り付けられている現像装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の現像装置において、前記現像剤は、磁性体からなるキャリアと、非磁性体であるトナーとを含み、
前記現像剤貯留部は、前記キャリアと前記トナーとを攪拌することで前記トナーを帯電させ、
前記弾性部材は、前記トナーの帯電極性と同一の極性を有する材料から形成されている現像装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載の現像装置において、前記現像剤規制部材は、前記現像剤担持体に対向して前記現像剤の層厚を規制する規制面を有し、
前記弾性部材は、前記現像剤担持体に対向する対向面を有し、
前記規制面と前記対向面とは略面一に設定されている現像装置。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか一項に記載の現像装置において、前記現像剤規制部材は、非磁性材料から形成された第1部分と、磁性材料から形成され、前記回転方向から見て前記第1部分よりも上流側に位置する第2部分とを一体に有し、
前記規制面は、前記第1部分における前記現像剤担持体に対向する第1規制面と、前記第2部分における前記現像剤担持体に対向する第2規制面とからなる現像装置。
【請求項6】
トナー像が形成される像担持体と、
前記像担持体に現像剤を供給して該像担持体上に前記トナー像を形成する現像装置と、
前記トナー像をシート上に転写させる転写部材と、
前記シート上の前記トナー像を該シート上に定着させる定着部と、
を備え、
前記現像装置として、請求項1〜5のいずれか一項に記載の現像装置が採用されている画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−112756(P2011−112756A)
【公開日】平成23年6月9日(2011.6.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−267240(P2009−267240)
【出願日】平成21年11月25日(2009.11.25)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】