説明

現像装置および画像形成装置

【課題】トナー入れ替わり性能を確保し、トナーに過剰なストレスを与えることなく、全画像域において長期間にわたりトナー性能を維持して安定した画像を形成できる現像装置および画像形成装置を提供する。
【解決手段】トナーコンテナ30は、トナー供給ローラ24にトナーTを常時補給すると同時にトナーTを撹拌するパドル28を有している。パドル28の先端には、柔軟性を有する羽根29が取り付けられている。仕切壁32は現像室27とトナーコンテナ30との間に配設され、複数の開口34が形成されている。仕切壁32に形成された複数の開口34のうち、両端部に位置する開口34は、開口34のそれぞれの両サイドの上部に突起36が設けられ、中央部に位置する開口34は、開口34のそれぞれの両サイドの下部に突起36が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機やプリンタ、ファクシミリなどの現像装置および画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の現像装置として、現像ローラを有した現像室と、トナー撹拌部材を有し前記現像室に補給するトナーを貯留しているトナーコンテナと、前記現像室と前記トナーコンテナとの間に配設された仕切壁とを備えたものが知られている(特許文献1参照)。図9は従来の現像装置50を模式的に示した構成図である。
【0003】
現像装置50は、現像室57とトナーコンテナ60と仕切壁62とを備えている。現像室57は、感光体ドラム上の静電潜像を現像する現像ローラ52と、この現像ローラ52に現像用のトナーTを供給するトナー供給ローラ54とを有している。トナーコンテナ60は、トナー供給ローラ54にトナーTを常時補給すると同時にトナーTを撹拌するパドル(トナー撹拌部材)58を有している。パドル58の先端には、柔軟性を有する羽根59が取り付けられている。仕切壁62は現像室57とトナーコンテナ60との間に配設され、複数の開口64が形成されている。
【0004】
図10に示すように、仕切壁62に形成された複数の開口64のうち、両端の二つの開口64aは他の開口64bより下側に大きく開口されている。これにより、トナーコンテナ60のトナーTが中央部の開口64bから現像室57へ供給され始めると、両端の開口64aの下側開口部分からトナーTが現像室57からトナーコンテナ60へ戻るので、現像室57内のトナーの圧力が過剰に上昇することを防止する。
【0005】
【特許文献1】特開平10−123836号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、従来の現像装置50の場合、先ず、両端の二つの開口64aの下側に大きく開口した部分から、トナーコンテナ60のトナーTが現像室57へ供給され始める。その後、中央部の開口64bも含めてパドル58の回転軸方向全体に渡ってトナー供給が行われると、現像室57内のトナー圧力が急激に高くなり、先に両端の開口64aから現像室57内に供給されたトナーTの大部分がそのままトナーコンテナ60へ戻っていく。特に、両端の開口64aは開口面積が大きく、トナーTが移動しやすいので、開口64aの上部からトナーTが現像室57へ供給されるときには、開口64aの下部から新しいトナーTがそのままトナーコンテナ60へ戻ることになる。その結果、回転軸方向の両端部における新旧のトナーTの入れ替わり性能が悪化してくる。
【0007】
ところで、回転軸方向の両端部におけるトナー消費は中央部に比べて一般的に少ないことから、現像室57では両端部において新旧トナーTが入れ替わりにくく、積極的に両端部の新旧トナーTを入れ替える必要がある。ところが、前述したように、従来の現像装置50は、両端部におけるトナーTが入れ替わりにくいため、粒径の偏りや長時間ストレスを受けることによる荷電不良や凝集などトナー品質の劣化が進み、画像かぶりや黒点など画像不良が生じることがある。
【0008】
それゆえに、本発明の主たる目的は、トナー入れ替わり性能を確保し、トナーに過剰なストレスを与えることなく、全画像域において長期間にわたりトナー性能を維持して安定した画像を形成できる現像装置および画像形成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、現像ローラを有した現像室と、トナー撹拌部材を有し現像室に補給するトナーを貯留しているトナーコンテナと、現像室とトナーコンテナとの間に配設され複数の開口が設けられた仕切壁とを備えた現像装置であって、トナー撹拌部材に対向する仕切壁の開口近傍の表面に凹凸を設けたことを特徴とする、現像装置である。
【0010】
請求項1の発明では、トナー撹拌部材に対向する仕切壁の開口近傍の表面に設けた凹凸によって、トナー撹拌部材と開口との間に隙間が形成される状態や、トナー撹拌部材と開口が当接する状態が出現することになる。従って、トナー撹拌部材が開口に当接し始めるとき、両端部に位置する開口はトナー撹拌部材と当接し、かつ、中央部に位置する開口はトナー撹拌部材との間に隙間が形成されるように凹凸を設けることにより、両端部に位置する開口から優先的にトナーが現像室へ供給される。従って、両端部におけるトナーは入れ替わりやすくなる。
【0011】
さらに、トナー撹拌部材の移動に従って、両端部に位置する開口はトナー撹拌部材との間に隙間が形成され、中央部に位置する開口はトナー撹拌部材と当接するように凹凸を設ける。これにより、開口からの現像室へのトナー供給は、トナー撹拌部材の回転軸方向で時間差が生じ、トナーが回転軸方向全体に渡って同時に現像室内に供給される現象がなくなる。そして、過剰なトナーは、トナー撹拌部材と開口との間に発生する隙間からトナーコンテナに戻されるので、現像室のトナー圧力の瞬時の上昇が抑えられる。
【0012】
請求項2に係る発明は、請求項1に係る発明に従属する発明であって、仕切壁に設けられた複数の開口のうち、両端部に位置する開口は両サイドの上部に突起が設けられ、中央部に位置する開口は両サイドの下部に突起が設けられていることを特徴とする、現像装置である。
【0013】
請求項2の発明では、トナー撹拌部材が開口の下部に当接し始めるとき、両端部に位置する開口は、図5(B)に示すように、トナー撹拌部材と当接する状態となる。一方、中央部に位置する開口は、図5(A)に示すように、突起のためトナー撹拌部材との間に隙間が形成される状態となる。これにより、中央部に位置する開口近傍のトナーは、開口とトナー撹拌部材との間に形成された隙間からトナーコンテナ側に戻されるため、中央部に位置する開口からの現像室へのトナー供給は抑えられる。従って、両端部に位置する開口から優先的にトナーが現像室へ供給され、両端部におけるトナーは入れ替わりやすくなる。
【0014】
さらに、トナー撹拌部材の回転に従って、両端部に位置する開口は、図6(B)に示すように、突起のためにトナー撹拌部材との間に隙間が形成される状態となる。一方、中央部に位置する開口は、図6(A)に示すように、トナー撹拌部材と当接する状態となる。これにより、両端部に位置する開口近傍のトナーは、開口とトナー撹拌部材との間に形成された隙間からトナーコンテナ側に戻される。従って、開口からの現像室へのトナー供給は、トナー撹拌部材の回転軸方向で時間差が生じ、トナーが回転軸方向全体に渡って同時に現像室内に供給される現象がなくなる。
【0015】
請求項3に係る発明は、請求項1または請求項2に記載の現像装置を備えていることを特徴とする、画像形成装置である。
【0016】
請求項3の発明では、トナー入れ替わり性能を確保し、トナーに過剰なストレスを与えることなく、全画像域において長期間にわたりトナー性能を維持して安定した画像を形成できる画像形成装置が得られる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、トナー撹拌部材に対向する仕切壁の開口近傍の表面に凹凸を設けることによって、現像室内のトナー圧上昇を抑制することができ、トナーにかかるストレスや摩擦による発熱を軽減することができる。これにより、トナー表面処理剤の離脱や埋め込みが低減し、またトナーのキャリアのコート剤剥がれやトナースペント化が低減する。従って長期的に現像剤の性能を維持し、安定した画像を出力することができる。
【0018】
本発明の上述の目的、その他の目的、特徴および利点は、図面を参照して行う以下の発明を実施するための最良の形態の説明から一層明らかとなろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
(画像形成装置)
図1は本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。画像形成装置は、画像形成装置本体1と、この画像形成装置本体1の上部に取り付けられた画像読取装置2とを備えている。
【0020】
画像形成装置本体1の中央部に配設されている感光体ドラム3は、駆動手段によって図示矢印の反時計回り方向に所定速度で駆動される。感光体ドラム3の外周近傍には、帯電器5、現像装置4、中間転写ローラ8、クリーニング部材7が設けられている。感光体ドラム3は帯電器5にて表面が帯電される。感光体ドラム3の回転方向における帯電器5の下流側には、レーザースキャニングユニット6が配置されている。レーザースキャニングユニット6から放射されたレーザ光Lは、感光体ドラム3上に照射され、静電潜像が形成される。
【0021】
レーザースキャニングユニット6の下流側には、現像装置4が配置されている。現像装置4は、ブラックのトナーを感光体ドラム3に付与するためのものである。現像装置4の下流側には、中間転写ローラ8が配置されている。さらに、中間転写ローラ8の下流側には、感光体ドラム3に残ったトナーを除去するためのクリーニング部材7が配置されている。
【0022】
一方、給紙ローラ14はブラックトナー像と同期して、給紙カセット12から被記録媒体としての用紙Pを引き出して給紙する。用紙Pは、搬送ローラ15によって二次転写ローラ10に送り込まれる。感光体ドラム3上に形成されたトナー画像は中間転写ローラ8上に一次転写され、さらに中間転写ローラ8上のトナー画像は用紙P上に二次転写される。トナー画像を転写された用紙Pは、定着装置16に搬送され、そこで定着され、印刷物として排出ローラ17によって機外に排出されて排紙トレイ18上に積載される。
【0023】
(現像装置)
図2は本発明に係る現像装置の一例を示す概略構成図である。この現像装置4は、現像室27とトナーコンテナ30と仕切壁32とを備えている。現像室27は、感光体ドラム上の静電潜像を現像する現像ローラ22と、この現像ローラ22に現像用のトナーTを供給するトナー供給ローラ24と、現像ローラ22上のトナー層の厚さを適度の厚さに設定するトナーブレード26とを有している。トナーコンテナ30は、トナー供給ローラ24にトナーTを常時補給すると同時にトナーTを撹拌するパドル(トナー撹拌部材)28を有している。パドル28の先端には、柔軟性を有する羽根29が取り付けられている。パドル28は時計方向回りに所定の速度で回転している。仕切壁32は現像室27とトナーコンテナ30との間に配設され、複数の開口34が形成されている。
【0024】
図3に示すように、仕切壁32に形成された複数の開口34のうち、両端部に位置する開口34は、開口34のそれぞれの両サイドの上部に突起36bが設けられ、中央部に位置する開口34は、開口34のそれぞれの両サイドの下部に突起36aが設けられている。また、図4に示すように、パドル28の羽根29は、突起36a,36bに合わせて中央部29aと両端部29bに3分割されている。
【0025】
以上の構成からなる現像装置4は、図5(A)に示すように、パドル28の羽根29が開口34の下部に当接し始めるとき、中央部に位置する開口34は、突起36aのため羽根29との間に隙間Sが形成される状態となる。これにより、中央部に位置する開口34近傍のトナーTは、開口34と羽根29との間に形成された隙間Sからトナーコンテナ30側に戻されるため、中央部に位置する開口34からの現像室27へのトナー供給は抑えられる。一方、図5(B)に示すように、両端部に位置する開口34は、羽根29と当接する状態となる。これにより、両端部に位置する開口34近傍のトナーTは、トナーコンテナ30側に戻されることなく、優先的に両端部に位置する開口34から現像室27へ供給され、両端部における新旧トナーTは入れ替わりやすくなる。
【0026】
さらに、パドル28の回転に従って、図6(A)に示すように、中央部に位置する開口34は、羽根29と当接する状態となる。これにより、中央部に位置する開口34近傍のトナーTは、トナーコンテナ30側に戻されることなく、中央部に位置する開口34から現像室27へ供給されようになる。一方、図6(B)に示すように、両端部に位置する開口34は、突起36bのため羽根29との間に隙間Sが形成される状態となる。これにより、両端部に位置する開口34近傍のトナーは、開口34と羽根29との間に形成された隙間Sからトナーコンテナ30側に戻されるため、両端部に位置する開口34からの現像室27へのトナー供給は抑えられる。
【0027】
従って、開口34からの現像室27へのトナー供給は、パドル28の回転軸方向の両端部と中央部とで時間差が生じ、トナーTが回転軸方向全体に渡って同時に現像室27内に供給される現象がなくなる。しかも、過剰なトナーTは、パドル28の羽根29と開口34との間に発生する隙間Sからトナーコンテナ30側に戻されるので、現像室27のトナー圧力の瞬時の上昇を抑えることができる。この結果、トナーTにかかるストレスや摩擦による発熱を軽減することができ、トナー表面処理剤の離脱や埋め込みを低減したり、トナーのキャリアのコート剤剥がれやトナースペント化を低減したりすることができる。従って、長期的に現像剤の性能を維持し、安定した画像を出力することができる。
【0028】
なお、本発明は前記実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変形される。例えば、図7に示すように、仕切壁32に形成された複数の開口34のうち、両端の二つの開口34aを他の開口34bより下側に大きく開口してもよい。また、画像室とトナーコンテナを一体化した現像装置だけでなく、図8に示すように、トナーコンテナをカートリジ方式で着脱可能なトナー容器とした構成であってもよい。また、突起を設ける替わりに、突起を設ける部分を残してその他の部分を凹ませても、同様の作用効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明に係る画像形成装置の一例を示す概略構成図である。
【図2】本発明に係る現像装置の一例を示す概略構成図である。
【図3】仕切壁の開口と突起の位置関係を示す概略構成図である。
【図4】パドルと羽根を示す概略平面図である。
【図5】現像装置の動作を示す説明図である。
【図6】図5に続く現像装置の動作を示す説明図である。
【図7】仕切壁の開口の他の実施の形態を示す概略構成図である。
【図8】現像装置の他の実施の形態を示す概略構成図である。
【図9】従来の現像装置を示す概略構成図である。
【図10】従来の仕切壁の開口部分を示す概略構成図である。
【符号の説明】
【0030】
1 画像形成装置本体
3 感光体ドラム
4 現像装置
22 現像ローラ
27 現像室
28 パドル
29 羽根
30 トナーコンテナ
32 仕切壁
34,34a,34b 開口
36,36a,36b 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像ローラを有した現像室と、トナー撹拌部材を有し前記現像室に補給するトナーを貯留しているトナーコンテナと、前記現像室と前記トナーコンテナとの間に配設され複数の開口が設けられた仕切壁とを備えた現像装置であって、
前記トナー撹拌部材に対向する前記仕切壁の開口近傍の表面に凹凸を設けたことを特徴とする、現像装置。
【請求項2】
前記仕切壁に設けられた複数の開口のうち、両端部に位置する開口は両サイドの上部に突起が設けられ、中央部に位置する開口は両サイドの下部に突起が設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の現像装置を備えたことを特徴とする、画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−134051(P2009−134051A)
【公開日】平成21年6月18日(2009.6.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−309814(P2007−309814)
【出願日】平成19年11月30日(2007.11.30)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】