現像装置および画像形成装置
【課題】現像剤の劣化を抑制して、画像ノイズが生じるのを抑制することができる現像装置および当該現像装置を用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】
ハウジング51内に、現像ローラー52と、現像ローラー52との間でニップ部Nを形成し、回転により現像ローラー52に現像剤を供給する供給ローラー53とを収納してなる現像器5であって、トナーが供給ローラー53の回転に伴いニップ部Nに向けて流れる往路D1と、現像ローラー52に付着しなかったトナーがニップ部Nから遠ざかる方向に流れる復路D2との間に整流板60を介在させた。
【解決手段】
ハウジング51内に、現像ローラー52と、現像ローラー52との間でニップ部Nを形成し、回転により現像ローラー52に現像剤を供給する供給ローラー53とを収納してなる現像器5であって、トナーが供給ローラー53の回転に伴いニップ部Nに向けて流れる往路D1と、現像ローラー52に付着しなかったトナーがニップ部Nから遠ざかる方向に流れる復路D2との間に整流板60を介在させた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置およびこれを用いた画像形成装置に関し、特に、現像装置内における現像剤の劣化を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プリンター、複写機等の画像形成装置は、感光体ドラム上に形成された静電潜像に、現像剤(トナー)を供給して顕像化する現像装置を備えている(例えば、特許文献1)。
このような現像装置として、例えば、ハウジング内に、現像ローラーと、現像ローラーとの間でニップ部を形成し、回転により現像ローラーにトナーを供給する供給ローラーとを備え、現像ローラーの周面に供給されたトナーによる層が形成されて、そのトナー層により感光体ドラム上の静電潜像を現像するように構成されたものがある。
【0003】
図12は、かかる現像装置の要部の概略図であり、現像ローラーおよび供給ローラー付近の断面、および現像ローラーに供給されるトナーの流れが模式的に示されている。
同図に示すように、供給ローラー953は、金属製の芯金953aに円筒状の発泡性弾性部材953bを装着してなり、現像ローラー952との間でニップ部Nを形成している。ハウジング951内で、供給ローラー953の周囲に存在するトナー970が供給ローラー953の回転に伴い搬送され、ニップ部Nに向かうトナー970の流れF1(往路)が生じる。この流れF1によりニップ部Nに流れ込んだトナー970の一部が、現像ローラー952の周面に付着し、感光体ドラム(不図示)と近接した現像位置に搬送される。
【0004】
一方、現像ローラー952に付着しなかったトナー970の一部は、ニップ部Nに向かって流れ込むトナー(流れF1)の圧力により、ニップ部N付近の領域980から押し出されて、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻されようとする(流れF2:復路)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−209758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の現像装置では、互いに逆向きのトナーの流れF1,F2の一部がぶつかり、そのため、図示するようにトナーが同じ領域内で渦状に流れて滞流する現象が生じてしまう。
このように滞流状態に陥ったトナーは、同じ場所を渦状に流れるだけで、なかなかその領域から脱することができず、現像に供されないで攪拌される時間が長くなる。そのため、後にこれらのトナーが現像に供されたときには、すでにトナーの劣化の程度がひどく、背景へのかぶりやトナーこぼれ等が生じ、再生画像に画像ノイズが生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたものであって、現像剤の劣化を抑制して、画像ノイズが生じるのを抑制することができる現像装置および当該現像装置を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る現像装置は、ハウジング内に、現像ローラーと、当該現像ローラーとの間でニップ部を形成し、回転により現像ローラーに現像剤を供給する供給ローラーとを収納してなり、現像剤が供給ローラーの回転に伴いニップ部に向けて流れる往路と、現像ローラーに付着しなかった現像剤がニップ部から遠ざかる方向に流れる復路との間に整流板を介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の現像装置によれば、整流板を上記位置に設けることにより、現像剤の流れが整理され、往路を通ってニップ部に向けて流れる現像剤と、復路を通ってニップ部から遠ざかる方向に戻っていく現像剤が、相互に衝突することなく円滑に流れるようになる。
これにより、従来の現像装置に見られるような渦状の滞流が生じにくくなって、長時間現像に供されずに劣化するトナーの割合を低減することができるので、画像ノイズの発生を抑制することができる。
【0010】
ここでの整流板は長尺状であって、供給ローラーの回転軸に平行に配置されると共に、整流板の長手方向の長さが供給ローラーのローラー幅と等しいのが望ましい。
整流板の幅は、供給ローラーの直径の20[%]〜50[%]の範囲内であるのが望ましい。そして、整流板と供給ローラー周面との間隙の最短距離が、0.3[mm]〜1.0[mm]の範囲内であるのが望ましい。
【0011】
また、整流板の復路側の面には、その長手方向に対して傾斜したガイド面を有するガイド部材が1以上設けられているのが望ましい。
ここでのガイド部材は、整流板の長手方向に沿って複数形成されており、少なくとも長手方向両端部に形成されたガイド部材は、そのガイド面が、ニップ部から遠ざかるに連れて復路の長手方向両端部にある現像剤を回転軸の内側に案内するように傾斜していることが望ましい。
【0012】
ガイド面の傾きは、整流板の長手方向に対して、5[°]〜45[°]の範囲内となっているのが望ましい。
また、本願の発明は、上記構成の現像装置を備えた画像形成装置であってもよく、これにより上記構成の現像装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンターの構成を示す概略図である。
【図2】上記プリンターにおける現像器の斜視図である。
【図3】現像器が有する整流板および支持部材を示す斜視図である。
【図4】供給室内を拡大して示す断面図である。
【図5】整流板による整流効果を説明するため、供給室内でのトナーの流れを模式的に示した図である。
【図6】整流板と、供給ローラー、現像ローラーおよび規制ブレードとの位置関係を説明するための模式図である。
【図7】(a)は、第2の実施の形態の整流板および支持部材を示す斜視図であり、(b)は、(a)のM−M線で切断したときの整流板および支持部材の断面図である。
【図8】トナーの流れを説明するための模式図である。
【図9】整流板による整流効果を説明するため、供給室内でのトナーの流れを模式的に示した図である。
【図10】実施例および従来例における小粒子率の測定結果を示す図である。
【図11】変形例に係る現像器が有する整流板を示す図である。
【図12】従来例に係る現像装置の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る画像形成装置の第1の実施の形態について、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という)を例にして図面に基づき説明する。
<プリンターの全体構成>
図1は、プリンター1の構成を示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、プリンター1は、画像プロセス部11、給紙部12、定着部13、制御部14および電源部15を備えており、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるカラー画像形成を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表す。
【0016】
画像プロセス部11は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部2Y,2M,2C,2K、光学部8、中間転写ベルト9、ホッパ10Y,10M,10C,10Kなどを備えている。
作像部2Yは、感光体ドラム3、その周囲に配設された帯電器4、現像器5、一次転写ローラー6、感光体ドラム3を清掃するためのクリーナー7などを備えており、感光体ドラム3上にY色のトナー像を作像する。このことは、他の作像部2M〜2Kについて同じである。図1では、符号を省略している。
【0017】
光学部8は、レーザーダイオードなどの発光素子を備え、各色用の感光体ドラム3を露光するためのレーザー光Lを出射する。
中間転写ベルト9は、無端状のベルトであり、駆動ローラー91と従動ローラー92に張架されて矢印A方向に回転駆動される。
ホッパ10Y〜10Kは、Y〜K色の補充用のトナーを収容し、必要に応じて各色用の現像器5にトナーを供給する。
【0018】
給紙部12は、記録シートSを収容する給紙カセット121と、給紙カセット121内の記録シートSを搬送路123上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー122と、繰り出された記録シートSを二次転写位置128に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラー対124と、二次転写ローラー125などを備えている。
制御部14は、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、光学部8の発光素子を駆動させるための駆動信号を生成する。光学部8は、制御部14からの駆動信号によりレーザー光Lを出射し、各色用の感光体ドラム3を露光走査させる。
【0019】
この露光走査の前に、作像部2Y〜2K毎に、感光体ドラム3は、帯電器4により所定の極性(例えば、負)の所定の電位(例えば、DC−450V)で一様に帯電される。レーザー光Lによる露光走査により、感光体ドラム3上に静電潜像が形成される。
各静電潜像は、各色用の現像器5により現像される。本実施の形態では、負を正規帯電極性とするトナーが用いられ、いわゆる反転現像により各色用の感光体ドラム3上にY〜K色のトナー像が作像される。
【0020】
各色のトナー像は、一次転写ローラー6と感光体ドラム3間に作用する静電力により中間転写ベルト9上に順次一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト9上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト9上に重ね合わされた各色トナー像は、中間転写ベルト9の回転により二次転写位置128に移動する。
【0021】
上記作像動作のタイミングに合わせて、給紙部12から、タイミングローラー対124を介して記録シートSが給紙され、回転する中間転写ベルト9と二次転写ローラー125の間に挟まれて搬送される。そして、二次転写ローラー125と駆動ローラー91間に作用する静電力により、中間転写ベルト9上のトナー像が一括して記録シートS上に二次転写される。
【0022】
二次転写位置128を通過した記録シートSは、定着部13に搬送され、ここでトナー像が加熱、加圧されて記録シートSに定着された後、排出ローラー126を介して排出され、収容トレイ127に収容される。
電源部15は、制御部14からの指示により、作像部2Y〜2Kの各現像器5に電力を供給する。
【0023】
<現像器の構成>
図2は、現像器5の斜視図であり、現像器5の内部構成が理解しやすいように、筐体の、紙面手前側の側壁を取外した状態で示されている。
図2に示すように、現像器5は、筐体であるハウジング51内に、現像ローラー52と、供給ローラー53と、攪拌ローラー54,55と、規制ブレード56と、除電シート57と、整流板60とを備える。このハウジング51内には、現像剤としてのトナー(不図示)が充填されている。
【0024】
現像ローラー52、供給ローラー53および攪拌ローラー54,55のそれぞれは、平行であってハウジング51に回転自在に保持されており、図示しない駆動機構による駆動力を受けて同図の矢印方向に回転する。
現像ローラー52は、感光体ドラム3に対向する位置に配設され、供給ローラー53からトナーの供給を受けてその周面52aにトナー層を形成し、感光体ドラム3に形成された静電潜像を現像する。現像ローラー52としては、例えば金属製芯金上に薄膜状の樹脂層を配したものを用いることができる。現像ローラー52の直径は、10〜25[mm]程度であり、ここでは16[mm]に設定されている。また、現像ローラー52の回転軸方向両端の軸部52bを除いた長さは、ここでは225[mm]に設定されている。
【0025】
供給ローラー53は、金属製の芯金53aと、芯金53a表面に被着した発泡性弾性部材53bとからなり、現像ローラー52と対向配置され、現像ローラー52の周面52aに当接してニップ部Nを形成している。また、供給ローラー53は、現像ローラー52に対しカウンター方向に回転し、それによって、ハウジング51内のトナーをニップ部Nに向けて搬送するとともに、ニップ部Nにおいて現像ローラー52の周面52aにトナーを擦り付けるようにして供給する。
【0026】
供給ローラー53の直径は、自然状態で10〜20[mm]程度であり、ここでは12[mm]に設定されている。供給ローラー53の回転軸方向両端の軸部53cを除いた長さは、現像ローラー52の長さに対応させ、225[mm]に設定されている。
攪拌ローラー54、55は、ハウジング51に設けられたトナーの補給口(不図示)から補給されるトナーを、攪拌しながら、ハウジング51内の供給ローラー53の配された供給室51aに搬送する。現像によりトナーが消費されると、対応するホッパ(10Y〜10Kの何れか(図1参照))からトナーが補給される。
【0027】
規制ブレード56は、その先端部近傍が現像ローラー52周面に圧接して配置され、現像ローラー52周面との間を通過するトナー量を規制して、現像ローラー52上にトナーによる均一な薄層を形成するとともに、トナーを摩擦帯電する。
除電シート57は、現像ローラー52上の現像後の残留トナーを除電するものであり、除電によりトナーの静電的付着力を低下させて、供給ローラー53によるトナー回収が容易になるようにしている。また、除電シート57は、トナーがハウジング51の外部に噴出することを防止する噴煙防止部材としても機能する。
【0028】
整流板60は、供給室51a内のニップ部前の領域におけるトナーの流れを整流するためのものであり、支持部材61を介してハウジング51に支持され、供給ローラー53の周面53dに対向するように配置されている。
図3は、整流板60および支持部材61を示す斜視図である。
図3に示すように、整流板60は長尺状の平板からなり、この長手方向が供給ローラー53の回転軸に略平行となるように配置される。整流板60の面60aが、供給ローラー53の周面53dに対向する面である。
【0029】
整流板60の長さL1は、供給ローラー53のローラー幅に等しい225[mm]に設定されている。また、幅W1は、供給ローラー53の直径に対し20〜50[%]の大きさが望ましい。
整流板60の幅W1が、供給ローラー53の直径の50[%]を超えると、整流板60の下面(面60aの反対側の面)に沿ってニップ部Nから遠ざかる方向に戻されるトナーが、整流板60を通り過ぎた後に、再び、供給ローラー53の回転によりニップ部Nに向かうトナーの流れに取り込まれ難くなって、却って、トナーの円滑な循環が損なわれるおそれがある。また、幅W1が、供給ローラー53の直径の20[%]未満と小さくなると、供給ローラー53の回転に伴いニップ部Nに向けて流れるトナーと、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻されるトナーの進路を十分分岐することができず、必要な整流効果が得られなくなるおそれがあるからである。
【0030】
本実施の形態では、整流板60の幅W1が、供給ローラー53の直径の25[%]の大きさ3[mm]に設定されている。整流板60の厚さは、0.2〜0.6[mm]程度である。
支持部材61は、長尺状の平板からなる取付部61aと、取付部61aの長手方向の両端部および中央部から延出され、整流板60を支持する3つの支持部61bとからなる。取付部61aは、ハウジング51の内壁に例えば、ねじで固定されている。また、長手方向おける支持部61bと支持部61bとの間は、開口(符号62で示す部分)されている。これは、支持部材61によりトナーの流れが塞き止められないようにするためである。
【0031】
このような整流板60および支持部材61は、例えばSUSの一枚板から、プレス加工により一体形成することができる。
図4は、供給室51a内を拡大して示す断面図である。
図4に示すように、整流板60は、供給ローラー53の周面53dにおける、ニップ部Nの回転方向(矢印C方向)上流側に隣接する周面領域Srと、ハウジング51の内壁面51bとで挟まれた領域Krに設けられ、周面領域Srとの間に所定の間隙gを開けて対向配置されている。これにより、整流板60と供給ローラー53の周面領域Srとの間が、ニップ部Nに向けて搬送されるトナー70の流路(以下、往路D1という)をなし、その一方で、整流板60とハウジング51の内壁面51bとの間が、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻っていくトナー70の流路(以下、復路D2という)をなすように構成されている。ここでの周面領域Srは、供給ローラー53の周面53dの周方向における、ニップ部Nの回転方向上流側の端部の位置から、上流側に向かってZ軸方向の最下点Pの位置に至る領域である。
【0032】
また、ここでのトナー70は、非磁性一成分トナーであり、帯電安定性や流動性を得るため、外添剤が添加されてなるものである。また、トナー70の直径は、特に限定するものではないが、未使用時において例えば、6〜7[μm]程度のものが用いられている。
<整流板による整流効果>
図5は、整流板60による整流効果を説明するため、供給室51a内でのトナー70の流れを模式的に示した図である。
【0033】
図5に示すように、供給室51a内では、供給ローラー53の周囲に存在するトナー70が、供給ローラー53の回転に伴い搬送されるトナーの流れF1が生じる。このトナーの流れF1は、往路D1を通って、ニップ部N近傍の領域80(破線で囲まれた領域)に流れ込む。この領域80に流れ込んだトナー70の一部が、ニップ部Nに入り込み、現像ローラー52の周面52aに擦り付けられて付着し、トナー層が形成される。
【0034】
一方、現像ローラー52に付着しなかった残りのトナー70は、往路D1から領域80に流れ込むトナーの圧力により、当該領域80から押し出さ、圧力の弱い復路D2側に流れ、支持部材61の開口部62を通過し、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻っていく。図5に示すF2はこの戻りトナーの流れを示す。また、規制ブレード56により現像ローラー52の周面52aから掻き落とされたトナー70も、復路D2から開口部62を通って流れていく。
【0035】
復路D2側を流れるトナー70と、往路D1側を流れるトナー70との間には整流板60が介在して、トナー70の流れが整理されているため、往路と復路のトナー同士が衝突する割合が減少し、渦状の滞流が発生しにくい状態になる。
<整流板、供給ローラー、現像ローラーおよび規制ブレードの位置関係について>
図6は、整流板60と、供給ローラー53、現像ローラー52および規制ブレード56との位置関係を説明するための模式図である。
【0036】
先ず、整流板60と供給ローラー53の周面53dとの最短の間隙gは、0.3〜1.0[mm]の範囲内に設定されるのが望ましい。
間隙gの上限を1.0mmに設定することにより、往路D1を流れるトナー量が、ニップ部Nにおける現像ローラー53へのトナー供給に必要な量に制限され、往路D1からニップ部N近傍に流れ込む際における範囲および圧力が、必要以上に大きくならないようにすることができる。これによりニップ部N近傍の領域80(図5)に存するトナーが、復路D2を介して戻りやすくなり、従来のように長時間滞流するトナーが減少する。
【0037】
一方、間隙gが0.3mmよりも小さくなると、現像ローラー53にトナー供給を十分できなくなると共に、当該往路D1でトナーが詰まるおそれもあるからである。
また、整流板60は、往路D1を通過するトナーが効率的にニップ部に向けて供給されるようにするため、その姿勢が次のように設定されることが望ましい。
すなわち、図6に示すように、現像ローラー52の回転中心E1を通って供給ローラー53の周面53dの輪郭に接する接線のうち、整流板60に近い方を接線65とし、この接線65に対する、整流板60の往路側の面60aの傾斜角をθ1とした場合、このθ1は、−0.5〜+0.5[°]の範囲内に設定されるのが望ましい。
【0038】
また、往路と復路の流れを仕切りつつ、ニップ部で現像ローラー52に付着されなかったトナーが復路D2に戻りやすくするため、整流板60の現像ローラー52側の縁部60bと現像ローラー52との間の最短距離K1は、2.0〜3.0[mm]の範囲内に設定されるのが望ましい。
整流板60の縁部60bの垂直方向(Z軸方向)における位置が、規制ブレード56の先端56aよりも、ニップ部Nに近い位置に配されている。これにより、規制ブレード56により掻き落とされたトナーを確実に復路D2(図5参照)側に導きやすくできる。
【0039】
また、本実施の形態においては、整流板60の縁部60bと、規制ブレード56の先端56aとの間の距離K2は、2.5〜3.5[mm]の範囲内に設定されている。
以上のように本実施の形態によれば、整流板60と供給ローラー53の周面53dとの間隙が、供給ローラー53の回転に伴いニップ部Nに向けてトナーが流れる往路D1となり、ハウジング51の内壁と整流板60との間隙が、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻っていくトナーの復路D2となるように構成されており、トナーの流れが整流板60により整えられて、往路D1を流れるトナーと復路D2を流れるトナーが、互い衝突せずに円滑に流れるようにすることができ、従来の現像装置に見られるような部分的なトナーの滞流が生じにくくなる。これにより、長時間の滞流に起因するトナーの劣化が生じなくなり、その結果、画像ノイズが生じるのを抑制することができる。
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態と、第1の実施の形態とは、現像器が有する整流板の形状が異なる。
【0040】
具体的には、第2の実施の形態の整流板は、その復路D2側の面に、長手方向両端部のトナーを中央側に向けて導くガイド部を有している点で、第1の実施の形態の整流板60とは異なっている。
その他の構成については基本的に第1の実施の形態と同様である。したがって、以下では上記の相違点についてのみ説明し、その他の構成についての説明は省略する。また、第1の実施の形態の現像器5と同じ構成要素については、同じ符号を用いる。
【0041】
図7(a)は、第2の実施の形態の整流板160および支持部材163を示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のM−M線で切断したときの整流板160および支持部材163の断面図である。
図7(a)に示すように、整流板160は、長尺状の平板部分161と、ガイド部162a,162bとで構成されている。
【0042】
整流板160の平板部分161の長手方向両端部には幅広部161a,161bが設けられている。それらの開口部164側の縁部は、それぞれ整流板160の長手方向中央に行くほどニップ部から遠ざかる斜めの折り線165a、165bに沿って下側(復路D2側)に向けて折り曲げられ、整流板160の下側の面から突出する。当該突出した部分が、復路D2の特に回転軸方向の両端部にあるトナーを回転軸方向中央部に向けて流れるように案内するガイド部162a、162bとして機能する。
【0043】
ガイド部162aにより形成されガイド面Gaの整流板161の裏面161cからの高さW4は(図7(a)におけるM−M線矢視断面を示す図7(b)参照)、1.0〜 [mm]の範囲内となることが望ましい。このガイド面Gaは、整流板161の裏面161cに直交する方向に対し、−0.5〜+0.5[°]の範囲内で傾いている。ガイド部162bの高さも同様である。
【0044】
また、ガイド部162a,162bは、本実施の形態では左右対称となっており、それぞれのガイド面の長手方向に対する傾きをθ2とすると(図7(a)参照)、5[°]≦θ2≦45[°]の範囲内で設定されるのが望ましい。この傾きθ2の上限を45[°]に設定することにより、傾き過ぎて、トナーの流れに対しガイド面が開いてしまうために回転軸方向中央側にトナーを導く効果が低下するのを抑制することができる。一方、傾きθ2が5[°]未満では、トナーの流れを塞き止めてしまうおそれがあるからである。
【0045】
これらガイド面の高さW4、傾きθ2は、使用するトナーおよび現像器5の仕様に応じて適宜選択される。
本実施の形態では、ガイド面の高さW4が1.0[mm]、傾きθ2が、10[°]に設定されている。
また、整流板160において、ガイド部162a,162bが設けられた部分の最大幅W2、およびガイド部162a,162bが設けられていない部分の幅W3は、第1の実施の形態と同様、供給ローラー53の直径に対し20〜50[%]の大きさの範囲内で設定されるのが望ましい。
【0046】
このようなガイド部162a,162bを設けて、供給ローラー53の回転軸J方向の両端付近を流れるトナーの一部を中央側に導く理由について、次に説明する。
現像器のハウジング内では、ハウジングの内側壁に近いトナーほど、内側壁から摩擦抗力を受けて流動速度が低下するため、回転軸方向中央部に比較して滞流が発生しやすくなる。したがって、供給ローラー53の回転軸J方向の両端付近は、ハウジング51の内壁の2面(1面は図4で示す内壁面51b、もう1面は図示しない側面)に近接しているため、特にトナーが滞流し易い。
【0047】
本実施の形態では、整流板本体の整流作用に加えて、供給ローラー53の回転軸方向の両端付近を流れるトナーを中央側、つまりハウジングの内壁から離れる方向に、積極的に導くガイド部材を設けて、特に、当該両端付近におけるトナーの滞流を抑制するようにしている。
図8は、整流板160のガイド部162a,162bにより導かれるトナーの流れを説明するための模式図である。なお、図8には、復路D2側のトナーの流れF2を示すため、現像ローラー52、供給ローラー53および整流板160が下側から(Z軸方向の復路D2側から)見た状態が示されている。
【0048】
図8に示すように、整流板160のガイド部162aが設けられた部分では、トナーの流れF2の一部F2aが、ガイド部162aのガイド面Gaにぶつかり、ガイド面Gaに沿って、供給ローラー53の回転軸J方向の中央側へと導かれる。なお、ここでは図示していないが、ガイド面Gaに案内されずに、そのまま回転軸J方向と直交する方向に進むトナーの流れも存在する。
【0049】
ガイド部162bが設けられた部分でも、同様に、トナーの流れF2の一部F2bが、ガイド部162bのガイド面Gbにぶつかり、ガイド面Gaに沿って供給ローラー53の回転軸J方向の中央側へと導かれる。一方、ガイド部162a,162bが設けられていない部分では、トナーの流れF2の残りF2cが、回転軸J方向と直交する方向に沿ってそのまま流れる。
【0050】
このように、整流板160にガイド部162a,162bを設けることで、供給ローラー53の回転軸方向の両端付近を流れるトナーの一部を中央側へと導くことができるので、第1の実施の形態に比べて両端付近におけるトナーについてより滞流を抑制することができるようになる。
図9は、整流板160による整流効果を説明するため、供給室51a内でのトナーの流れを模式的に示した図である。この図9には、図8のN−N線で切断したときの整流板160、供給ローラー53および現像ローラー52の断面が示されていて、ガイド部162aのガイド面Gaに沿って流れるトナーの流れF2aが描かれている。
【0051】
図9に示すように、本実施の形態においても、往路D1側を流れるトナー70と、復路D2側を流れるトナー70との間には、整流板160が介在し、互いにぶつからずに流れるようになるので、従来の現像装置に見られるような、渦状の滞流が生じるのを抑制することができる。したがって、第1の実施の形態と同様、滞流によるトナーの劣化を抑制することができ、画像ノイズが生じるのを抑制することができる。
<整流効果の検証>
次に、上記ガイド部を設けた整流板による整流効果を検証するため、本実施の形態の現像器(実施例)と従来の現像装置(従来例)との間で、トナーの粒径分布、具体的には小粒子が含まれる比率(小粒子率)を測定し比較した結果について説明する。
【0052】
上述のようにトナーが長時間同じ箇所で滞流すると、トナー同士の衝突回数も多くなり、表面の外添剤等が剥離して劣化する。そして、さらに外添剤の剥離したトナー同士が衝突してトナーが砕けて小粒子化してしまう。トナーが小粒子化すると、それらの粒子間隔が密になって、流動性が低下してますます滞流しやすくなる。
したがって、ある箇所のトナーの小粒子率を測定することによりトナーの滞流状態を推測することができる。言い換えれば、整流効果によりトナーの滞流を抑制することができるので、小粒子率が低いほど整流効果が高いと判断できる。
【0053】
図10は、実施例および従来例における小粒子率の測定結果を示す図である。
図10において、縦軸はトナーの小粒子率[%]、横軸は、供給ローラーの回転軸方向で見た場合の、測定した位置を示している。ここでは、回転軸方向の両端と中央の3箇所(図8に示す破線で囲まれた位置T1,T2,T3)で測定している。また、各測定箇所は、図9に示すように、高さ方向(Z軸方向)で見ると、整流板160とハウジング51の内壁との間に位置している(T1参照)。
【0054】
従来例に用いた現像装置は、整流板を有していない点を除けば、本実施の形態の現像器と基本的に同じ構成となっている。測定位置も同じである。
なお、ここでの小粒子とは、流動性の低下が顕著となる直径1[μm]以下の粒子を示している。
図10に示すように、従来の定着装置における小粒子率は、中央T2で約9[%]、端T1で約約16[%]、端T3で約20[%]にも達している。このように両端T1,T3の小粒子率は、中央T2の1.6〜2倍と高いことから、両端T1,T3では、中央T2に比べてトナーの滞流が顕著になっていることが分かる。
【0055】
これに対して、実施例の小粒子率は、中央T2で約6[%]、両端T1,T3で約7[%]と、中央T2と両端T1,T3との間に小粒子率の差がほとんどなく、また、両端T1,T3の小粒子率は、従来例の1/3〜1/2と低い。よって、実施例では、両端T1,T3でのトナーの滞流を、従来例よりも抑制できていることが分かる。また、中央T2においても、小粒子率が従来例の約2/3と低くなっているので、全体的にトナーの滞流が抑制されているといえる。こうした結果により、実施例では、高い整流効果が得られることが確認できた。
[変形例]
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0056】
(1)第2の実施の形態では、整流板160の長手方向両端部に、それぞれ1つのガイド部が設けられた構成を示したが、整流板の有するガイド部の構成は、これに限定されるものではなく、現像器の仕様に応じて、その形状、数、配置(傾斜角含む)等適宜選択することができる。
例えば、図11(a)〜(c)に示すガイド部を設けた構成とすることもできる。各図には、整流板におけるガイド部が設けられた側の面が示されている。また、ガイド部により導かれるトナーの流れが矢印で示されている。
【0057】
図11(a)の整流板260は、長手方向両端部のガイド部260a,260bに加えて、長手方向中央寄りの部分に設けられたガイド部261a,261bを有している。
ガイド部261a、261bは、それぞれ供給ローラーの回転軸方向の中央付近を流れるトナーの一部を外側方向に案内するように作用し、ガイド部260a、260bにより回転軸方向の両端付近から中央側に導かれてくるトナーと合流し、その後拡散させるように構成されている。このようにしてトナーを回転軸方向に移動させることにより当該回転軸方向におけるトナーの偏在をより解消でき、特定箇所に滞流が生じにくくすることができる。
【0058】
図11(b)の整流板360では、長手方向両端側のそれぞれに、トナーを中央側に導く2つのガイド部(360a,360aと360b,360b)が設けられている。この場合、トナーを中央側に導くガイド部がそれぞれ1つの場合と比べて、より多くのトナーを中央側に導くことができるので、長手方向両端におけるトナーの滞流をより抑制することができる。
【0059】
図11(c)の整流板460は、6つのガイド部材460a〜460fを有し、図11(a)に示すようなトナーを導いて合流し、拡散するポイントを3箇所(461a〜461c)設けている。このようなトナーを合流・拡散のポイントが多いほど、当該回転軸方向におけるトナーの偏在をより解消でき、特定箇所に滞流が生じにくくすることができる。
【0060】
なお、上記変形例および第2の実施の形態では、整流板の長手方向の中心線に対して、ガイド部が左右対称に配置された構成を示したが、左右非対称であっても構わない。
(2)上記実施の形態では、整流板と支持部材とがプレス加工により一体形成されたものを用いて説明したが、これに限定するものではない。例えば、整流板と支持部材とを、それぞれ別体で形成した後、溶接などで接合してもよい。
【0061】
また、整流板を支持するのに、図3および図7に示すような支持部材61,163を用いなくても、整流板の長手方向両端部を延長して、延長した部分をハウジングの内壁に取付けた構成としてもよい。整流板をハウジング内に取り付ける方法は、現像器の仕様に応じて適宜選択することができる。
(3)上記実施の形態では、整流板が平板からなる構成を示したが、これに限定するものではなく、例えば、供給ローラーの周面に沿うように円弧状からなる構成としてもよい。
【0062】
(4)また、整流板の構成材料としては、SUS以外の金属材料や、樹脂材料を用いることができる。なお、樹脂材料を用いる場合、現像器内におけるトナーの帯電極性と同極性に帯電し易い樹脂を用いる。例えば、トナーがマイナス帯電するときには、マイナスに帯電し易い樹脂、PS(Polystyren)、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、POM(Polyacetal Polyoxmethylene)などを用いることができる。
【0063】
(5)上記実施の形態では、非磁性一成分現像剤方式の現像器で実施したが、供給ローラーと現像ローラーとの間でニップ部を形成する現像器であれば、現像剤の種類は特に問わない。
(6)上記実施の形態では、画像形成装置として、タンデム型カラープリンターを用いて説明したが、本発明の適用範囲は、これに限らず、抵抗発熱体を用いた定着部を有する複写機、ファクシミリ装置、プリンターなどに適用することができる。
【0064】
また、上記実施の形態及び変形例の内容は、可能な限り組み合わせても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、現像装置内におけるトナーの劣化を抑制する技術として好適である。
【符号の説明】
【0066】
1 プリンター
2 作像部
2 復路D
3 感光体ドラム
4 帯電器
5 現像器
8 光学部
9 中間転写ベルト
10 ホッパ
11 画像プロセス部
12 給紙部
13 定着部
51 ハウジング
51a 供給室
51b 内壁面
52 現像ローラー
53 供給ローラー
53d 周面(供給ローラー)
54,55 攪拌ローラー
56 規制ブレード
56a 先端(規制ブレード)
60 整流板
60a 面
60b 縁部
61 支持部材
65 接線
70 トナー
160 整流板
161 平板部分
161c 整流板の裏面(復路側の面)
162a,162b ガイド部
D1 往路
D2 復路
E1 現像ローラーの回転中心
F1 トナーの流れ(ニップ部に向う方向)
F2 トナーの流れ(ニップ部から遠ざかる方向)
g 間隙(供給ローラーの周面と整流板との間隙)
Ga,Gb ガイド面
K1 最短距離(整流板と現像ローラーの周面との最短距離)
K2 距離(整流板のニップ部側端部と、規制ブレードの先端との間の距離)
L1 整流板の長さ
W1 整流板の幅
W2 整流板の最大幅
W4 ガイド面の高さ(ガイド面のガイド幅)
θ1,θ2 傾き
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置およびこれを用いた画像形成装置に関し、特に、現像装置内における現像剤の劣化を抑制する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、プリンター、複写機等の画像形成装置は、感光体ドラム上に形成された静電潜像に、現像剤(トナー)を供給して顕像化する現像装置を備えている(例えば、特許文献1)。
このような現像装置として、例えば、ハウジング内に、現像ローラーと、現像ローラーとの間でニップ部を形成し、回転により現像ローラーにトナーを供給する供給ローラーとを備え、現像ローラーの周面に供給されたトナーによる層が形成されて、そのトナー層により感光体ドラム上の静電潜像を現像するように構成されたものがある。
【0003】
図12は、かかる現像装置の要部の概略図であり、現像ローラーおよび供給ローラー付近の断面、および現像ローラーに供給されるトナーの流れが模式的に示されている。
同図に示すように、供給ローラー953は、金属製の芯金953aに円筒状の発泡性弾性部材953bを装着してなり、現像ローラー952との間でニップ部Nを形成している。ハウジング951内で、供給ローラー953の周囲に存在するトナー970が供給ローラー953の回転に伴い搬送され、ニップ部Nに向かうトナー970の流れF1(往路)が生じる。この流れF1によりニップ部Nに流れ込んだトナー970の一部が、現像ローラー952の周面に付着し、感光体ドラム(不図示)と近接した現像位置に搬送される。
【0004】
一方、現像ローラー952に付着しなかったトナー970の一部は、ニップ部Nに向かって流れ込むトナー(流れF1)の圧力により、ニップ部N付近の領域980から押し出されて、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻されようとする(流れF2:復路)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2008−209758号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来の現像装置では、互いに逆向きのトナーの流れF1,F2の一部がぶつかり、そのため、図示するようにトナーが同じ領域内で渦状に流れて滞流する現象が生じてしまう。
このように滞流状態に陥ったトナーは、同じ場所を渦状に流れるだけで、なかなかその領域から脱することができず、現像に供されないで攪拌される時間が長くなる。そのため、後にこれらのトナーが現像に供されたときには、すでにトナーの劣化の程度がひどく、背景へのかぶりやトナーこぼれ等が生じ、再生画像に画像ノイズが生じるという問題がある。
【0007】
本発明は、上述のような問題に鑑みてなされたものであって、現像剤の劣化を抑制して、画像ノイズが生じるのを抑制することができる現像装置および当該現像装置を用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る現像装置は、ハウジング内に、現像ローラーと、当該現像ローラーとの間でニップ部を形成し、回転により現像ローラーに現像剤を供給する供給ローラーとを収納してなり、現像剤が供給ローラーの回転に伴いニップ部に向けて流れる往路と、現像ローラーに付着しなかった現像剤がニップ部から遠ざかる方向に流れる復路との間に整流板を介在させたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記構成の現像装置によれば、整流板を上記位置に設けることにより、現像剤の流れが整理され、往路を通ってニップ部に向けて流れる現像剤と、復路を通ってニップ部から遠ざかる方向に戻っていく現像剤が、相互に衝突することなく円滑に流れるようになる。
これにより、従来の現像装置に見られるような渦状の滞流が生じにくくなって、長時間現像に供されずに劣化するトナーの割合を低減することができるので、画像ノイズの発生を抑制することができる。
【0010】
ここでの整流板は長尺状であって、供給ローラーの回転軸に平行に配置されると共に、整流板の長手方向の長さが供給ローラーのローラー幅と等しいのが望ましい。
整流板の幅は、供給ローラーの直径の20[%]〜50[%]の範囲内であるのが望ましい。そして、整流板と供給ローラー周面との間隙の最短距離が、0.3[mm]〜1.0[mm]の範囲内であるのが望ましい。
【0011】
また、整流板の復路側の面には、その長手方向に対して傾斜したガイド面を有するガイド部材が1以上設けられているのが望ましい。
ここでのガイド部材は、整流板の長手方向に沿って複数形成されており、少なくとも長手方向両端部に形成されたガイド部材は、そのガイド面が、ニップ部から遠ざかるに連れて復路の長手方向両端部にある現像剤を回転軸の内側に案内するように傾斜していることが望ましい。
【0012】
ガイド面の傾きは、整流板の長手方向に対して、5[°]〜45[°]の範囲内となっているのが望ましい。
また、本願の発明は、上記構成の現像装置を備えた画像形成装置であってもよく、これにより上記構成の現像装置と同様の効果を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の実施の形態に係るプリンターの構成を示す概略図である。
【図2】上記プリンターにおける現像器の斜視図である。
【図3】現像器が有する整流板および支持部材を示す斜視図である。
【図4】供給室内を拡大して示す断面図である。
【図5】整流板による整流効果を説明するため、供給室内でのトナーの流れを模式的に示した図である。
【図6】整流板と、供給ローラー、現像ローラーおよび規制ブレードとの位置関係を説明するための模式図である。
【図7】(a)は、第2の実施の形態の整流板および支持部材を示す斜視図であり、(b)は、(a)のM−M線で切断したときの整流板および支持部材の断面図である。
【図8】トナーの流れを説明するための模式図である。
【図9】整流板による整流効果を説明するため、供給室内でのトナーの流れを模式的に示した図である。
【図10】実施例および従来例における小粒子率の測定結果を示す図である。
【図11】変形例に係る現像器が有する整流板を示す図である。
【図12】従来例に係る現像装置の部分概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<第1の実施の形態>
以下、本発明に係る画像形成装置の第1の実施の形態について、タンデム型カラープリンター(以下、単に「プリンター」という)を例にして図面に基づき説明する。
<プリンターの全体構成>
図1は、プリンター1の構成を示す概略図である。
【0015】
図1に示すように、プリンター1は、画像プロセス部11、給紙部12、定着部13、制御部14および電源部15を備えており、ネットワーク(例えばLAN)に接続されて、外部の端末装置(不図示)からの印刷(プリント)ジョブの実行指示を受け付けると、その指示に基づいてイエロー、マゼンタ、シアンおよびブラック色からなるカラー画像形成を実行する。以下、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの各再現色をY、M、C、Kと表す。
【0016】
画像プロセス部11は、Y〜K色のそれぞれに対応する作像部2Y,2M,2C,2K、光学部8、中間転写ベルト9、ホッパ10Y,10M,10C,10Kなどを備えている。
作像部2Yは、感光体ドラム3、その周囲に配設された帯電器4、現像器5、一次転写ローラー6、感光体ドラム3を清掃するためのクリーナー7などを備えており、感光体ドラム3上にY色のトナー像を作像する。このことは、他の作像部2M〜2Kについて同じである。図1では、符号を省略している。
【0017】
光学部8は、レーザーダイオードなどの発光素子を備え、各色用の感光体ドラム3を露光するためのレーザー光Lを出射する。
中間転写ベルト9は、無端状のベルトであり、駆動ローラー91と従動ローラー92に張架されて矢印A方向に回転駆動される。
ホッパ10Y〜10Kは、Y〜K色の補充用のトナーを収容し、必要に応じて各色用の現像器5にトナーを供給する。
【0018】
給紙部12は、記録シートSを収容する給紙カセット121と、給紙カセット121内の記録シートSを搬送路123上に1枚ずつ繰り出す繰り出しローラー122と、繰り出された記録シートSを二次転写位置128に送り出すタイミングをとるためのタイミングローラー対124と、二次転写ローラー125などを備えている。
制御部14は、外部の端末装置からの画像信号をY〜K色用のデジタル信号に変換し、光学部8の発光素子を駆動させるための駆動信号を生成する。光学部8は、制御部14からの駆動信号によりレーザー光Lを出射し、各色用の感光体ドラム3を露光走査させる。
【0019】
この露光走査の前に、作像部2Y〜2K毎に、感光体ドラム3は、帯電器4により所定の極性(例えば、負)の所定の電位(例えば、DC−450V)で一様に帯電される。レーザー光Lによる露光走査により、感光体ドラム3上に静電潜像が形成される。
各静電潜像は、各色用の現像器5により現像される。本実施の形態では、負を正規帯電極性とするトナーが用いられ、いわゆる反転現像により各色用の感光体ドラム3上にY〜K色のトナー像が作像される。
【0020】
各色のトナー像は、一次転写ローラー6と感光体ドラム3間に作用する静電力により中間転写ベルト9上に順次一次転写される。この際、各色の作像動作は、そのトナー像が中間転写ベルト9上の同じ位置に重ね合わせて転写されるようにタイミングをずらして実行される。中間転写ベルト9上に重ね合わされた各色トナー像は、中間転写ベルト9の回転により二次転写位置128に移動する。
【0021】
上記作像動作のタイミングに合わせて、給紙部12から、タイミングローラー対124を介して記録シートSが給紙され、回転する中間転写ベルト9と二次転写ローラー125の間に挟まれて搬送される。そして、二次転写ローラー125と駆動ローラー91間に作用する静電力により、中間転写ベルト9上のトナー像が一括して記録シートS上に二次転写される。
【0022】
二次転写位置128を通過した記録シートSは、定着部13に搬送され、ここでトナー像が加熱、加圧されて記録シートSに定着された後、排出ローラー126を介して排出され、収容トレイ127に収容される。
電源部15は、制御部14からの指示により、作像部2Y〜2Kの各現像器5に電力を供給する。
【0023】
<現像器の構成>
図2は、現像器5の斜視図であり、現像器5の内部構成が理解しやすいように、筐体の、紙面手前側の側壁を取外した状態で示されている。
図2に示すように、現像器5は、筐体であるハウジング51内に、現像ローラー52と、供給ローラー53と、攪拌ローラー54,55と、規制ブレード56と、除電シート57と、整流板60とを備える。このハウジング51内には、現像剤としてのトナー(不図示)が充填されている。
【0024】
現像ローラー52、供給ローラー53および攪拌ローラー54,55のそれぞれは、平行であってハウジング51に回転自在に保持されており、図示しない駆動機構による駆動力を受けて同図の矢印方向に回転する。
現像ローラー52は、感光体ドラム3に対向する位置に配設され、供給ローラー53からトナーの供給を受けてその周面52aにトナー層を形成し、感光体ドラム3に形成された静電潜像を現像する。現像ローラー52としては、例えば金属製芯金上に薄膜状の樹脂層を配したものを用いることができる。現像ローラー52の直径は、10〜25[mm]程度であり、ここでは16[mm]に設定されている。また、現像ローラー52の回転軸方向両端の軸部52bを除いた長さは、ここでは225[mm]に設定されている。
【0025】
供給ローラー53は、金属製の芯金53aと、芯金53a表面に被着した発泡性弾性部材53bとからなり、現像ローラー52と対向配置され、現像ローラー52の周面52aに当接してニップ部Nを形成している。また、供給ローラー53は、現像ローラー52に対しカウンター方向に回転し、それによって、ハウジング51内のトナーをニップ部Nに向けて搬送するとともに、ニップ部Nにおいて現像ローラー52の周面52aにトナーを擦り付けるようにして供給する。
【0026】
供給ローラー53の直径は、自然状態で10〜20[mm]程度であり、ここでは12[mm]に設定されている。供給ローラー53の回転軸方向両端の軸部53cを除いた長さは、現像ローラー52の長さに対応させ、225[mm]に設定されている。
攪拌ローラー54、55は、ハウジング51に設けられたトナーの補給口(不図示)から補給されるトナーを、攪拌しながら、ハウジング51内の供給ローラー53の配された供給室51aに搬送する。現像によりトナーが消費されると、対応するホッパ(10Y〜10Kの何れか(図1参照))からトナーが補給される。
【0027】
規制ブレード56は、その先端部近傍が現像ローラー52周面に圧接して配置され、現像ローラー52周面との間を通過するトナー量を規制して、現像ローラー52上にトナーによる均一な薄層を形成するとともに、トナーを摩擦帯電する。
除電シート57は、現像ローラー52上の現像後の残留トナーを除電するものであり、除電によりトナーの静電的付着力を低下させて、供給ローラー53によるトナー回収が容易になるようにしている。また、除電シート57は、トナーがハウジング51の外部に噴出することを防止する噴煙防止部材としても機能する。
【0028】
整流板60は、供給室51a内のニップ部前の領域におけるトナーの流れを整流するためのものであり、支持部材61を介してハウジング51に支持され、供給ローラー53の周面53dに対向するように配置されている。
図3は、整流板60および支持部材61を示す斜視図である。
図3に示すように、整流板60は長尺状の平板からなり、この長手方向が供給ローラー53の回転軸に略平行となるように配置される。整流板60の面60aが、供給ローラー53の周面53dに対向する面である。
【0029】
整流板60の長さL1は、供給ローラー53のローラー幅に等しい225[mm]に設定されている。また、幅W1は、供給ローラー53の直径に対し20〜50[%]の大きさが望ましい。
整流板60の幅W1が、供給ローラー53の直径の50[%]を超えると、整流板60の下面(面60aの反対側の面)に沿ってニップ部Nから遠ざかる方向に戻されるトナーが、整流板60を通り過ぎた後に、再び、供給ローラー53の回転によりニップ部Nに向かうトナーの流れに取り込まれ難くなって、却って、トナーの円滑な循環が損なわれるおそれがある。また、幅W1が、供給ローラー53の直径の20[%]未満と小さくなると、供給ローラー53の回転に伴いニップ部Nに向けて流れるトナーと、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻されるトナーの進路を十分分岐することができず、必要な整流効果が得られなくなるおそれがあるからである。
【0030】
本実施の形態では、整流板60の幅W1が、供給ローラー53の直径の25[%]の大きさ3[mm]に設定されている。整流板60の厚さは、0.2〜0.6[mm]程度である。
支持部材61は、長尺状の平板からなる取付部61aと、取付部61aの長手方向の両端部および中央部から延出され、整流板60を支持する3つの支持部61bとからなる。取付部61aは、ハウジング51の内壁に例えば、ねじで固定されている。また、長手方向おける支持部61bと支持部61bとの間は、開口(符号62で示す部分)されている。これは、支持部材61によりトナーの流れが塞き止められないようにするためである。
【0031】
このような整流板60および支持部材61は、例えばSUSの一枚板から、プレス加工により一体形成することができる。
図4は、供給室51a内を拡大して示す断面図である。
図4に示すように、整流板60は、供給ローラー53の周面53dにおける、ニップ部Nの回転方向(矢印C方向)上流側に隣接する周面領域Srと、ハウジング51の内壁面51bとで挟まれた領域Krに設けられ、周面領域Srとの間に所定の間隙gを開けて対向配置されている。これにより、整流板60と供給ローラー53の周面領域Srとの間が、ニップ部Nに向けて搬送されるトナー70の流路(以下、往路D1という)をなし、その一方で、整流板60とハウジング51の内壁面51bとの間が、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻っていくトナー70の流路(以下、復路D2という)をなすように構成されている。ここでの周面領域Srは、供給ローラー53の周面53dの周方向における、ニップ部Nの回転方向上流側の端部の位置から、上流側に向かってZ軸方向の最下点Pの位置に至る領域である。
【0032】
また、ここでのトナー70は、非磁性一成分トナーであり、帯電安定性や流動性を得るため、外添剤が添加されてなるものである。また、トナー70の直径は、特に限定するものではないが、未使用時において例えば、6〜7[μm]程度のものが用いられている。
<整流板による整流効果>
図5は、整流板60による整流効果を説明するため、供給室51a内でのトナー70の流れを模式的に示した図である。
【0033】
図5に示すように、供給室51a内では、供給ローラー53の周囲に存在するトナー70が、供給ローラー53の回転に伴い搬送されるトナーの流れF1が生じる。このトナーの流れF1は、往路D1を通って、ニップ部N近傍の領域80(破線で囲まれた領域)に流れ込む。この領域80に流れ込んだトナー70の一部が、ニップ部Nに入り込み、現像ローラー52の周面52aに擦り付けられて付着し、トナー層が形成される。
【0034】
一方、現像ローラー52に付着しなかった残りのトナー70は、往路D1から領域80に流れ込むトナーの圧力により、当該領域80から押し出さ、圧力の弱い復路D2側に流れ、支持部材61の開口部62を通過し、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻っていく。図5に示すF2はこの戻りトナーの流れを示す。また、規制ブレード56により現像ローラー52の周面52aから掻き落とされたトナー70も、復路D2から開口部62を通って流れていく。
【0035】
復路D2側を流れるトナー70と、往路D1側を流れるトナー70との間には整流板60が介在して、トナー70の流れが整理されているため、往路と復路のトナー同士が衝突する割合が減少し、渦状の滞流が発生しにくい状態になる。
<整流板、供給ローラー、現像ローラーおよび規制ブレードの位置関係について>
図6は、整流板60と、供給ローラー53、現像ローラー52および規制ブレード56との位置関係を説明するための模式図である。
【0036】
先ず、整流板60と供給ローラー53の周面53dとの最短の間隙gは、0.3〜1.0[mm]の範囲内に設定されるのが望ましい。
間隙gの上限を1.0mmに設定することにより、往路D1を流れるトナー量が、ニップ部Nにおける現像ローラー53へのトナー供給に必要な量に制限され、往路D1からニップ部N近傍に流れ込む際における範囲および圧力が、必要以上に大きくならないようにすることができる。これによりニップ部N近傍の領域80(図5)に存するトナーが、復路D2を介して戻りやすくなり、従来のように長時間滞流するトナーが減少する。
【0037】
一方、間隙gが0.3mmよりも小さくなると、現像ローラー53にトナー供給を十分できなくなると共に、当該往路D1でトナーが詰まるおそれもあるからである。
また、整流板60は、往路D1を通過するトナーが効率的にニップ部に向けて供給されるようにするため、その姿勢が次のように設定されることが望ましい。
すなわち、図6に示すように、現像ローラー52の回転中心E1を通って供給ローラー53の周面53dの輪郭に接する接線のうち、整流板60に近い方を接線65とし、この接線65に対する、整流板60の往路側の面60aの傾斜角をθ1とした場合、このθ1は、−0.5〜+0.5[°]の範囲内に設定されるのが望ましい。
【0038】
また、往路と復路の流れを仕切りつつ、ニップ部で現像ローラー52に付着されなかったトナーが復路D2に戻りやすくするため、整流板60の現像ローラー52側の縁部60bと現像ローラー52との間の最短距離K1は、2.0〜3.0[mm]の範囲内に設定されるのが望ましい。
整流板60の縁部60bの垂直方向(Z軸方向)における位置が、規制ブレード56の先端56aよりも、ニップ部Nに近い位置に配されている。これにより、規制ブレード56により掻き落とされたトナーを確実に復路D2(図5参照)側に導きやすくできる。
【0039】
また、本実施の形態においては、整流板60の縁部60bと、規制ブレード56の先端56aとの間の距離K2は、2.5〜3.5[mm]の範囲内に設定されている。
以上のように本実施の形態によれば、整流板60と供給ローラー53の周面53dとの間隙が、供給ローラー53の回転に伴いニップ部Nに向けてトナーが流れる往路D1となり、ハウジング51の内壁と整流板60との間隙が、ニップ部Nから遠ざかる方向に戻っていくトナーの復路D2となるように構成されており、トナーの流れが整流板60により整えられて、往路D1を流れるトナーと復路D2を流れるトナーが、互い衝突せずに円滑に流れるようにすることができ、従来の現像装置に見られるような部分的なトナーの滞流が生じにくくなる。これにより、長時間の滞流に起因するトナーの劣化が生じなくなり、その結果、画像ノイズが生じるのを抑制することができる。
<第2の実施の形態>
第2の実施の形態と、第1の実施の形態とは、現像器が有する整流板の形状が異なる。
【0040】
具体的には、第2の実施の形態の整流板は、その復路D2側の面に、長手方向両端部のトナーを中央側に向けて導くガイド部を有している点で、第1の実施の形態の整流板60とは異なっている。
その他の構成については基本的に第1の実施の形態と同様である。したがって、以下では上記の相違点についてのみ説明し、その他の構成についての説明は省略する。また、第1の実施の形態の現像器5と同じ構成要素については、同じ符号を用いる。
【0041】
図7(a)は、第2の実施の形態の整流板160および支持部材163を示す斜視図であり、図7(b)は、図7(a)のM−M線で切断したときの整流板160および支持部材163の断面図である。
図7(a)に示すように、整流板160は、長尺状の平板部分161と、ガイド部162a,162bとで構成されている。
【0042】
整流板160の平板部分161の長手方向両端部には幅広部161a,161bが設けられている。それらの開口部164側の縁部は、それぞれ整流板160の長手方向中央に行くほどニップ部から遠ざかる斜めの折り線165a、165bに沿って下側(復路D2側)に向けて折り曲げられ、整流板160の下側の面から突出する。当該突出した部分が、復路D2の特に回転軸方向の両端部にあるトナーを回転軸方向中央部に向けて流れるように案内するガイド部162a、162bとして機能する。
【0043】
ガイド部162aにより形成されガイド面Gaの整流板161の裏面161cからの高さW4は(図7(a)におけるM−M線矢視断面を示す図7(b)参照)、1.0〜 [mm]の範囲内となることが望ましい。このガイド面Gaは、整流板161の裏面161cに直交する方向に対し、−0.5〜+0.5[°]の範囲内で傾いている。ガイド部162bの高さも同様である。
【0044】
また、ガイド部162a,162bは、本実施の形態では左右対称となっており、それぞれのガイド面の長手方向に対する傾きをθ2とすると(図7(a)参照)、5[°]≦θ2≦45[°]の範囲内で設定されるのが望ましい。この傾きθ2の上限を45[°]に設定することにより、傾き過ぎて、トナーの流れに対しガイド面が開いてしまうために回転軸方向中央側にトナーを導く効果が低下するのを抑制することができる。一方、傾きθ2が5[°]未満では、トナーの流れを塞き止めてしまうおそれがあるからである。
【0045】
これらガイド面の高さW4、傾きθ2は、使用するトナーおよび現像器5の仕様に応じて適宜選択される。
本実施の形態では、ガイド面の高さW4が1.0[mm]、傾きθ2が、10[°]に設定されている。
また、整流板160において、ガイド部162a,162bが設けられた部分の最大幅W2、およびガイド部162a,162bが設けられていない部分の幅W3は、第1の実施の形態と同様、供給ローラー53の直径に対し20〜50[%]の大きさの範囲内で設定されるのが望ましい。
【0046】
このようなガイド部162a,162bを設けて、供給ローラー53の回転軸J方向の両端付近を流れるトナーの一部を中央側に導く理由について、次に説明する。
現像器のハウジング内では、ハウジングの内側壁に近いトナーほど、内側壁から摩擦抗力を受けて流動速度が低下するため、回転軸方向中央部に比較して滞流が発生しやすくなる。したがって、供給ローラー53の回転軸J方向の両端付近は、ハウジング51の内壁の2面(1面は図4で示す内壁面51b、もう1面は図示しない側面)に近接しているため、特にトナーが滞流し易い。
【0047】
本実施の形態では、整流板本体の整流作用に加えて、供給ローラー53の回転軸方向の両端付近を流れるトナーを中央側、つまりハウジングの内壁から離れる方向に、積極的に導くガイド部材を設けて、特に、当該両端付近におけるトナーの滞流を抑制するようにしている。
図8は、整流板160のガイド部162a,162bにより導かれるトナーの流れを説明するための模式図である。なお、図8には、復路D2側のトナーの流れF2を示すため、現像ローラー52、供給ローラー53および整流板160が下側から(Z軸方向の復路D2側から)見た状態が示されている。
【0048】
図8に示すように、整流板160のガイド部162aが設けられた部分では、トナーの流れF2の一部F2aが、ガイド部162aのガイド面Gaにぶつかり、ガイド面Gaに沿って、供給ローラー53の回転軸J方向の中央側へと導かれる。なお、ここでは図示していないが、ガイド面Gaに案内されずに、そのまま回転軸J方向と直交する方向に進むトナーの流れも存在する。
【0049】
ガイド部162bが設けられた部分でも、同様に、トナーの流れF2の一部F2bが、ガイド部162bのガイド面Gbにぶつかり、ガイド面Gaに沿って供給ローラー53の回転軸J方向の中央側へと導かれる。一方、ガイド部162a,162bが設けられていない部分では、トナーの流れF2の残りF2cが、回転軸J方向と直交する方向に沿ってそのまま流れる。
【0050】
このように、整流板160にガイド部162a,162bを設けることで、供給ローラー53の回転軸方向の両端付近を流れるトナーの一部を中央側へと導くことができるので、第1の実施の形態に比べて両端付近におけるトナーについてより滞流を抑制することができるようになる。
図9は、整流板160による整流効果を説明するため、供給室51a内でのトナーの流れを模式的に示した図である。この図9には、図8のN−N線で切断したときの整流板160、供給ローラー53および現像ローラー52の断面が示されていて、ガイド部162aのガイド面Gaに沿って流れるトナーの流れF2aが描かれている。
【0051】
図9に示すように、本実施の形態においても、往路D1側を流れるトナー70と、復路D2側を流れるトナー70との間には、整流板160が介在し、互いにぶつからずに流れるようになるので、従来の現像装置に見られるような、渦状の滞流が生じるのを抑制することができる。したがって、第1の実施の形態と同様、滞流によるトナーの劣化を抑制することができ、画像ノイズが生じるのを抑制することができる。
<整流効果の検証>
次に、上記ガイド部を設けた整流板による整流効果を検証するため、本実施の形態の現像器(実施例)と従来の現像装置(従来例)との間で、トナーの粒径分布、具体的には小粒子が含まれる比率(小粒子率)を測定し比較した結果について説明する。
【0052】
上述のようにトナーが長時間同じ箇所で滞流すると、トナー同士の衝突回数も多くなり、表面の外添剤等が剥離して劣化する。そして、さらに外添剤の剥離したトナー同士が衝突してトナーが砕けて小粒子化してしまう。トナーが小粒子化すると、それらの粒子間隔が密になって、流動性が低下してますます滞流しやすくなる。
したがって、ある箇所のトナーの小粒子率を測定することによりトナーの滞流状態を推測することができる。言い換えれば、整流効果によりトナーの滞流を抑制することができるので、小粒子率が低いほど整流効果が高いと判断できる。
【0053】
図10は、実施例および従来例における小粒子率の測定結果を示す図である。
図10において、縦軸はトナーの小粒子率[%]、横軸は、供給ローラーの回転軸方向で見た場合の、測定した位置を示している。ここでは、回転軸方向の両端と中央の3箇所(図8に示す破線で囲まれた位置T1,T2,T3)で測定している。また、各測定箇所は、図9に示すように、高さ方向(Z軸方向)で見ると、整流板160とハウジング51の内壁との間に位置している(T1参照)。
【0054】
従来例に用いた現像装置は、整流板を有していない点を除けば、本実施の形態の現像器と基本的に同じ構成となっている。測定位置も同じである。
なお、ここでの小粒子とは、流動性の低下が顕著となる直径1[μm]以下の粒子を示している。
図10に示すように、従来の定着装置における小粒子率は、中央T2で約9[%]、端T1で約約16[%]、端T3で約20[%]にも達している。このように両端T1,T3の小粒子率は、中央T2の1.6〜2倍と高いことから、両端T1,T3では、中央T2に比べてトナーの滞流が顕著になっていることが分かる。
【0055】
これに対して、実施例の小粒子率は、中央T2で約6[%]、両端T1,T3で約7[%]と、中央T2と両端T1,T3との間に小粒子率の差がほとんどなく、また、両端T1,T3の小粒子率は、従来例の1/3〜1/2と低い。よって、実施例では、両端T1,T3でのトナーの滞流を、従来例よりも抑制できていることが分かる。また、中央T2においても、小粒子率が従来例の約2/3と低くなっているので、全体的にトナーの滞流が抑制されているといえる。こうした結果により、実施例では、高い整流効果が得られることが確認できた。
[変形例]
以上、本発明を実施の形態に基づいて説明してきたが、本発明が上述の実施の形態に限定されないのは勿論であり、以下のような変形例を実施することができる。
【0056】
(1)第2の実施の形態では、整流板160の長手方向両端部に、それぞれ1つのガイド部が設けられた構成を示したが、整流板の有するガイド部の構成は、これに限定されるものではなく、現像器の仕様に応じて、その形状、数、配置(傾斜角含む)等適宜選択することができる。
例えば、図11(a)〜(c)に示すガイド部を設けた構成とすることもできる。各図には、整流板におけるガイド部が設けられた側の面が示されている。また、ガイド部により導かれるトナーの流れが矢印で示されている。
【0057】
図11(a)の整流板260は、長手方向両端部のガイド部260a,260bに加えて、長手方向中央寄りの部分に設けられたガイド部261a,261bを有している。
ガイド部261a、261bは、それぞれ供給ローラーの回転軸方向の中央付近を流れるトナーの一部を外側方向に案内するように作用し、ガイド部260a、260bにより回転軸方向の両端付近から中央側に導かれてくるトナーと合流し、その後拡散させるように構成されている。このようにしてトナーを回転軸方向に移動させることにより当該回転軸方向におけるトナーの偏在をより解消でき、特定箇所に滞流が生じにくくすることができる。
【0058】
図11(b)の整流板360では、長手方向両端側のそれぞれに、トナーを中央側に導く2つのガイド部(360a,360aと360b,360b)が設けられている。この場合、トナーを中央側に導くガイド部がそれぞれ1つの場合と比べて、より多くのトナーを中央側に導くことができるので、長手方向両端におけるトナーの滞流をより抑制することができる。
【0059】
図11(c)の整流板460は、6つのガイド部材460a〜460fを有し、図11(a)に示すようなトナーを導いて合流し、拡散するポイントを3箇所(461a〜461c)設けている。このようなトナーを合流・拡散のポイントが多いほど、当該回転軸方向におけるトナーの偏在をより解消でき、特定箇所に滞流が生じにくくすることができる。
【0060】
なお、上記変形例および第2の実施の形態では、整流板の長手方向の中心線に対して、ガイド部が左右対称に配置された構成を示したが、左右非対称であっても構わない。
(2)上記実施の形態では、整流板と支持部材とがプレス加工により一体形成されたものを用いて説明したが、これに限定するものではない。例えば、整流板と支持部材とを、それぞれ別体で形成した後、溶接などで接合してもよい。
【0061】
また、整流板を支持するのに、図3および図7に示すような支持部材61,163を用いなくても、整流板の長手方向両端部を延長して、延長した部分をハウジングの内壁に取付けた構成としてもよい。整流板をハウジング内に取り付ける方法は、現像器の仕様に応じて適宜選択することができる。
(3)上記実施の形態では、整流板が平板からなる構成を示したが、これに限定するものではなく、例えば、供給ローラーの周面に沿うように円弧状からなる構成としてもよい。
【0062】
(4)また、整流板の構成材料としては、SUS以外の金属材料や、樹脂材料を用いることができる。なお、樹脂材料を用いる場合、現像器内におけるトナーの帯電極性と同極性に帯電し易い樹脂を用いる。例えば、トナーがマイナス帯電するときには、マイナスに帯電し易い樹脂、PS(Polystyren)、ABS(Acrylonitrile Butadiene Styrene)、POM(Polyacetal Polyoxmethylene)などを用いることができる。
【0063】
(5)上記実施の形態では、非磁性一成分現像剤方式の現像器で実施したが、供給ローラーと現像ローラーとの間でニップ部を形成する現像器であれば、現像剤の種類は特に問わない。
(6)上記実施の形態では、画像形成装置として、タンデム型カラープリンターを用いて説明したが、本発明の適用範囲は、これに限らず、抵抗発熱体を用いた定着部を有する複写機、ファクシミリ装置、プリンターなどに適用することができる。
【0064】
また、上記実施の形態及び変形例の内容は、可能な限り組み合わせても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明は、現像装置内におけるトナーの劣化を抑制する技術として好適である。
【符号の説明】
【0066】
1 プリンター
2 作像部
2 復路D
3 感光体ドラム
4 帯電器
5 現像器
8 光学部
9 中間転写ベルト
10 ホッパ
11 画像プロセス部
12 給紙部
13 定着部
51 ハウジング
51a 供給室
51b 内壁面
52 現像ローラー
53 供給ローラー
53d 周面(供給ローラー)
54,55 攪拌ローラー
56 規制ブレード
56a 先端(規制ブレード)
60 整流板
60a 面
60b 縁部
61 支持部材
65 接線
70 トナー
160 整流板
161 平板部分
161c 整流板の裏面(復路側の面)
162a,162b ガイド部
D1 往路
D2 復路
E1 現像ローラーの回転中心
F1 トナーの流れ(ニップ部に向う方向)
F2 トナーの流れ(ニップ部から遠ざかる方向)
g 間隙(供給ローラーの周面と整流板との間隙)
Ga,Gb ガイド面
K1 最短距離(整流板と現像ローラーの周面との最短距離)
K2 距離(整流板のニップ部側端部と、規制ブレードの先端との間の距離)
L1 整流板の長さ
W1 整流板の幅
W2 整流板の最大幅
W4 ガイド面の高さ(ガイド面のガイド幅)
θ1,θ2 傾き
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジング内に、現像ローラーと、当該現像ローラーとの間でニップ部を形成し、回転により現像ローラーに現像剤を供給する供給ローラーとを収納してなる現像装置であって、
現像剤が供給ローラーの回転に伴いニップ部に向けて流れる往路と、現像ローラーに付着しなかった現像剤がニップ部から遠ざかる方向に流れる復路との間に整流板を介在させた
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記整流板は長尺状であって、前記供給ローラーの回転軸に平行に配置されると共に、整流板の長手方向の長さが供給ローラーのローラー幅と等しい
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記整流板の幅が、前記供給ローラーの直径の20[%]〜50[%]の範囲内である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記整流板と前記供給ローラー周面との間隙の最短距離が、0.3[mm]〜1.0[mm]の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記整流板の前記復路側の面には、その長手方向に対して傾斜したガイド面を有するガイド部材が1以上設けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、整流板の長手方向に沿って複数形成されており、
少なくとも長手方向両端部に形成されたガイド部材は、そのガイド面が、ニップ部から遠ざかるに連れて復路の長手方向両端部にある現像剤を回転軸の内側に案内するように傾斜していること
を特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記ガイド面の傾きが、前記整流板の長手方向に対して、5[°]〜45[°]の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項5または6に記載の現像装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【請求項1】
ハウジング内に、現像ローラーと、当該現像ローラーとの間でニップ部を形成し、回転により現像ローラーに現像剤を供給する供給ローラーとを収納してなる現像装置であって、
現像剤が供給ローラーの回転に伴いニップ部に向けて流れる往路と、現像ローラーに付着しなかった現像剤がニップ部から遠ざかる方向に流れる復路との間に整流板を介在させた
ことを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記整流板は長尺状であって、前記供給ローラーの回転軸に平行に配置されると共に、整流板の長手方向の長さが供給ローラーのローラー幅と等しい
ことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記整流板の幅が、前記供給ローラーの直径の20[%]〜50[%]の範囲内である
ことを特徴とする請求項1または2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記整流板と前記供給ローラー周面との間隙の最短距離が、0.3[mm]〜1.0[mm]の範囲内である
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記整流板の前記復路側の面には、その長手方向に対して傾斜したガイド面を有するガイド部材が1以上設けられている
ことを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、整流板の長手方向に沿って複数形成されており、
少なくとも長手方向両端部に形成されたガイド部材は、そのガイド面が、ニップ部から遠ざかるに連れて復路の長手方向両端部にある現像剤を回転軸の内側に案内するように傾斜していること
を特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記ガイド面の傾きが、前記整流板の長手方向に対して、5[°]〜45[°]の範囲内となっている
ことを特徴とする請求項5または6に記載の現像装置。
【請求項8】
請求項1から7のいずれかに記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2012−252208(P2012−252208A)
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−125390(P2011−125390)
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年12月20日(2012.12.20)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年6月3日(2011.6.3)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】
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