説明

現像装置および画像形成装置

【課題】回転速度にかかわらずシール性に優れ,潤滑剤を塗布しなくてもシールが高寿命であり,発熱が抑えられている軸封装置を現像剤容器とスクリューの回転軸との間に設けた現像装置および画像形成装置を提供すること。
【解決手段】現像部14は,現像剤を収容するハウジング21と,回転駆動を受けてハウジング21内部の現像剤を攪拌するスクリューと,ハウジング21に形成された貫通穴23を貫通して配置されスクリューを回転駆動する回転軸22とを有し,貫通穴23と回転軸22との間に設けられ,回転軸22の回転駆動時に,回転軸22の回転角速度より遅い角速度で,回転軸22と同じ向きに回転する中間回転部材31と,中間回転部材31と回転軸22の外周面との間を全周にわたってシールする内周側シール部材34と,中間回転部材31と貫通穴23の内周面との間を全周にわたってシールする外周側シール部材33とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は,電子写真方式の画像形成装置と,それに用いる現像装置に関する。さらに詳細には,現像剤を収納する現像剤容器とその内部で回転するスクリューの回転軸との間に,軸封装置を有する現像装置および画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より,画像形成装置の現像装置には,現像剤容器の内部の現像剤を攪拌または搬送するために,現像剤容器の内部で回転するスクリューを有するものがある。このスクリューの回転軸と現像剤容器との間には,相対的な回転を許容しつつ,現像剤の漏れを防止するための軸封装置が設けられている。
【0003】
このような軸封装置は,様々な分野で使用されており,例えば,高性能で高価なメカニカルシール,ゴム製のシールを回転軸に接触させるオイルシール,非接触型のラビリンスシールなどがある。それらのうちでも比較的安価で,油漏れ防止等に広く使用されているオイルシールは,ゴム製の内環部に金属製の補強環が設けられたものである。内環部には,回転軸の外面に摺接するシールリップ部が形成されている。シールリップ部には,通常,グリス等の潤滑剤が塗布される。一方,シールの材質に工夫することにより,シールリップ部に潤滑剤を塗布しないで用いることのできる軸封部材も提案されている(例えば,特許文献1参照。)。
【0004】
また,ラビリンスシールは,回転軸と固定部との間に隙間を隔てて凹凸状のラビリンス構造を形成したものである(例えば,特許文献2参照。)。このラビリンスシールは,高速回転時には高いシール性を示すが,静止時や低速回転時のシール性は低い。また,メカニカルシールは,シール性に優れているものの大型で高価なものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特公平2−38832号公報
【特許文献2】特開2002−323144号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
前記した各種の軸封装置のうちで,画像形成装置の現像装置において,現像剤容器とスクリュー軸との間に設けるものとしては,潤滑剤を用いているものは好ましくない。この潤滑剤が現像剤に混入すると,現像剤の変質の原因となるからである。また,ラビリンスシールは静止時のシール性に難があり,メカニカルシールはサイズや価格の点で不適当である。従って,現像装置には,潤滑剤を塗布しないオイルシールが最も適している。しかし,潤滑剤を塗布しないためシールが摩耗しやすく,シールの寿命が短いという問題点があった。
【0007】
特に近年,画像形成装置において,高生産領域の分野へ製品が投入されており,高速化・長寿命化の傾向にある。画像形成装置の高速化に伴い,現像装置では,現像領域へ単時間当たりに供給するトナーの必要量が増加しているため,現像剤をより速く循環させなければならない。スクリューなどの回転体を用いて現像剤を循環させる現像装置では,回転体の回転速度を上げることになる。その場合には,回転軸と軸封装置との間の摩擦も大きくなるため軸封装置の劣化が加速され,現像剤の漏れが問題となる。
【0008】
また,回転速度を上げればそれだけシールの接触箇所が発熱する。そのため,その熱が現像剤に伝わると現像剤が凝着する原因となるおそれがあるという問題点もあった。つまり,軸封装置の発熱によって,トナーがキャリアへ融着するなどの現像剤の劣化が起きれば,画像品質の低下が懸念される。
【0009】
本発明は,前記した従来の現像装置が有する問題点を解決するためになされたものである。すなわちその課題とするところは,回転速度にかかわらずシール性に優れ,潤滑剤を塗布しなくてもシールが高寿命であり,発熱が抑えられている軸封装置を現像剤容器とスクリューの回転軸との間に設けた現像装置および画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この課題の解決を目的としてなされた本発明の現像装置は,現像剤を収容するハウジングと,回転駆動を受けてハウジング内部の現像剤を攪拌するスクリューと,ハウジングに形成された貫通穴を貫通して配置されスクリューを回転駆動する回転軸とを有し,貫通穴と回転軸との間に設けられ,回転軸の回転駆動時に,回転軸の回転角速度より遅い角速度で,回転軸と同じ向きに回転する中間回転部材と,中間回転部材と回転軸の外周面との間を全周にわたってシールする内周側シール部材と,中間回転部材と貫通穴の内周面との間を全周にわたってシールする外周側シール部材とを有するものである。
【0011】
本発明の現像装置によれば,ハウジング内部の現像剤はスクリューの回転によって,攪拌・搬送される。そのスクリューの回転軸の回転駆動時には,中間回転部材も,回転軸より遅い角速度で,回転軸と同じ向きに回転される。つまり,停止しているハウジングの貫通穴と回転軸との中間の速度で回転する。そして,内周側シール部材は中間回転部材と回転軸の外周面との間をシールし,外周側シール部材は中間回転部材と貫通穴の内周面との間をシールする。従って,いずれのシール部材の摺動箇所においても,角速度の差は,ハウジングと回転軸との角速度の差より小さい。従って,潤滑剤を塗布しなくてもシールの摩耗や発熱は抑えられている。これにより,回転速度にかかわらずシール性に優れ,潤滑剤を塗布しなくてもシールが高寿命であり,発熱が抑えられている軸封装置を有する現像装置となっている。
【0012】
さらに本発明では,内周側シール部材は,中間回転部材に固定して設けられ,回転軸の外周面に摺動するものであることが望ましい。
このようなものであれば,内周側シール部材によって,中間回転部材と回転軸の外周面との間を確実にシールすることができるとともに,内周側シール部材の摩耗は抑えられている。
【0013】
さらに本発明では,外周側シール部材は,中間回転部材に固定して設けられ,貫通穴の内壁に摺動するものであることが望ましい。
このようなものであれば,外周側シール部材によって,中間回転部材と貫通穴の内壁との間を確実にシールすることができるとともに,外周側シール部材の摩耗は抑えられている。
【0014】
さらに本発明では,貫通穴の内壁には段差が形成されており,貫通穴は,段差より内側は大径で,段差より外側は小径となっており,外周側シール部材は,貫通穴の内壁のうち大径の箇所に接触していることが望ましい。
このようになっていれば,製造が容易である。
【0015】
さらに本発明では,外周側シール部材は,ハウジングに固定して設けられ,中間回転部材に摺動するものであることが望ましい。
このようなものであっても,外周側シール部材によって,中間回転部材と貫通穴の内壁との間を確実にシールすることができるとともに,外周側シール部材の摩耗は抑えられている。
【0016】
さらに本発明では,回転駆動力を回転軸および中間回転部材に伝達する回転伝達部材を有し,回転伝達部材は,回転軸に回転を伝達する第1回転伝達部と,中間回転部材に回転を伝達する第2回転伝達部とを有するものであることが望ましい。
このようなものであれば,中間回転部材を回転駆動するために新たに駆動部材を設ける必要はなく,回転軸の回転のために従来より設けられている駆動部材を併用することができる。
【0017】
さらに本発明は,上記のいずれか1つに記載の現像装置と,現像装置により供給される現像剤で形成されるトナー像を担持する像担持体とを有する画像形成装置にも及ぶ。
【発明の効果】
【0018】
本発明の現像装置および画像形成装置によれば,回転速度にかかわらずシール性に優れ,潤滑剤を塗布しなくてもシールが高寿命であり,発熱が抑えられている軸封装置が現像剤容器とスクリューの回転軸との間に設けられている。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本形態の画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】本形態の軸封装置を示す断面図である。
【図3】図2のA−A断面図である。
【図4】比較例の軸封装置を示す断面図である。
【図5】図4のB−B断面図である。
【図6】軸封装置の他の例を示す断面図である。
【図7】軸封装置の他の例を示す断面図である。
【図8】軸封装置の他の例を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下,本発明を具体化した最良の形態について,添付図面を参照しつつ詳細に説明する。本形態は,電子写真方式の画像形成装置に本発明を適用したものである。
【0021】
本形態の画像形成装置1は,図1に示すように,感光体11を中心に,帯電部12,露光部13,現像部14,転写部15,クリーナー17を有している。さらに,図中下部には用紙トレイ19が,図中右上には定着部20がそれぞれ設けられている。用紙トレイ19には用紙が収納されている。
【0022】
画像形成時には,感光体11は,図1中に矢印で示すように回転される。感光体11の表面は,帯電部12によって一様に帯電され,露光部13によって画像データに基づいて,画像の露光が施される。これにより,感光体11の表面に静電潜像が形成される。この静電潜像が,現像部14によって現像され,トナー像が形成される。トナー像は,転写部15において,用紙トレイ19から搬送されてきた用紙に転写される。トナー像を担持した用紙は,定着部20へと搬送される。また,転写部15を通り過ぎた後も感光体11上に残留しているトナー等は,クリーナー17によって除去される。
【0023】
本形態の現像部14は,図1に示すように,その内部にトナーを含む現像剤を収容するハウジング21を有している。そして,この収容されている現像剤を攪拌および搬送するために,複数のスクリュー14a,14b,14cが設けられている。これらのスクリュー14a,14b,14cはそれぞれ,ハウジング21の内部で回転するスクリュー羽根を有するものである。そして,各スクリュー14a,14b,14cの回転軸の端部は,ハウジング21から外部に突出して,ハウジング21の外部で回転駆動力を受けるようになっている。スクリュー14a,14b,14cは,ほぼ同様の構成であるので,以下では,スクリュー14aについて代表して説明する。
【0024】
本形態のハウジング21とスクリュー14aの回転軸22との間には,図2に示すように,軸封装置30が設けられている。この軸封装置30は,ハウジング21に対する回転軸22の回転を許容しつつ,ハウジング21と回転軸22との間からの現像剤の漏洩を防止するためのものである。ハウジング21は,機内に固定して取り付けられている。なお以下では,ハウジング21の内部側を単に内側,ハウジング21の外部側を単に外側という。
【0025】
本形態のハウジング21には,図2に示すように,回転軸22を貫通させる貫通穴23が形成されている。回転軸22は,貫通穴23を貫通して配置されており,その位置で軸回りに回転する。以下ではまず,ハウジング21の内側に当たる部分,すなわち,図中で,この貫通穴23を含んでそれより左側の部分について説明する。ハウジング21の外側については後述する。
【0026】
本形態の貫通穴23には途中に段差が形成されており,段差より外側が内側より小径の穴となっている。以下では,段差より外側の部分の内壁を外側内壁23a,段差より内側の部分の内壁を内側内壁23bと呼ぶ。そして,本形態の軸封装置30は,貫通穴23の内壁(特に内側内壁23b)と回転軸22の外周面22aとの間に形成される円環状の空間において,現像剤を通過させないように封止するものである。
【0027】
本形態の軸封装置30は,図2に示すように,中間回転部材31,外周側シール部材33,内周側シール部材34を有している。中間回転部材31は,回転軸22の外周面22aと貫通穴23との間に配置される略円筒状の部材である。中間回転部材31は,回転軸22または貫通穴23に接触していても良いが,その接触箇所においてシール性を有するほどではない。本形態では,中間回転部材31は,回転軸22の外周面22aに部分的に接触している。
【0028】
さらに,本形態の中間回転部材31には,図2に示すように,貫通穴23に対向する範囲内において外周側シール部材33と内周側シール部材34とがそれぞれ取り付けられている。外周側シール部材33と内周側シール部材34とはいずれも,単体では平板リング状のシール部材である。外周側シール部材33は,リング状の内周側の辺縁が全周にわたって中間回転部材31に固定され,外周側が内側内壁23bに押し当てられているものである。これにより,中間回転部材31より外周側,すなわち,中間回転部材31と貫通穴23との間は,外周側シール部材33によってシールされている。
【0029】
内周側シール部材34は,リング状の外周側の辺縁が全周にわたって中間回転部材31に固定され,内周側が回転軸22の外周面22aに押し当てられているものである。これにより,中間回転部材31より内周側,すなわち,中間回転部材31と回転軸22の外周面22aとの間は,内周側シール部材34によってシールされている。従って,図3に示すように,貫通穴23の内側内壁23bと回転軸22との間は,外周側シール部材33と中間回転部材31と内周側シール部材34によってシールされている。
【0030】
そして,後述するように,中間回転部材31は,回転軸22が回転駆動されるときには,回転軸22と同じ回転方向に,回転軸22の回転角速度より遅い角速度で回転するように回転駆動される。なお,この遅い角速度は,後述する理由により,回転軸22の回転速度に対して予め決められた割合で遅い速度となる。そして,外周側シール部材33と内周側シール部材34とはいずれも中間回転部材31に固定されているので,図3に示すように,中間回転部材31と同じ角速度で一体的に回転する。
【0031】
中間回転部材31がなく,シール部材のみで回転軸22とハウジング21との間をシールしようとすると,そのシール部材は回転軸22とハウジング21との回転角速度の差を摺動箇所においてそのまま受けることになる。その場合には,摺動箇所における周速差が大きいため,シール部材の摩耗は大きいものとなってしまう。従って,シール部材の寿命は短いものとなる。
【0032】
これに対して,本形態の外周側シール部材33と内周側シール部材34とは,回転軸22の回転時には,中間回転部材31とともに回転軸22より遅い角速度で回転する。すなわち,外周側シール部材33は,回転軸22の回転角速度より遅い角速度で回転し,停止している内側内壁23bに対して摺動する。内周側シール部材34は,回転軸22の回転角速度より遅い角速度で回転し,回転軸22の外周面22aに対して摺動する。つまり,いずれの摺動箇所においても,角速度の差は,回転軸22の角速度よりは小さく,当然周速差も小さいので,外周側シール部材33や内周側シール部材34の摺動による発熱や摩耗は小さい。なお,本形態の外周側シール部材33および内周側シール部材34には,潤滑剤は塗布されていない。
【0033】
次に,中間回転部材31を回転駆動する構成について説明する。本形態の中間回転部材31には,図2中の右側に示したように,回転軸22の角速度より遅い角速度の回転を伝達するためのアイドル歯車41が設けられている。アイドル歯車41は,ネジ結合部41aによって中間回転部材31と結合されて,ハウジング21の外側に取り付けられている。そして,ネジ結合部41aの外周は,貫通穴23の外側内壁23aに接触して摺動する。ネジ結合部41aと貫通穴23との間は滑りがよいが,シールされているわけではない。
【0034】
さらに本形態では,図2に示すように,ハウジング21の外側には,回転軸22を回転させるための固定歯車42とアイドル歯車43が設けられている。固定歯車42は,ピン44によって回転軸22に対して固定されている。回転軸22は,固定歯車42を介して回転駆動される。
【0035】
そして,固定歯車42に回転駆動力を伝達するのが,アイドル歯車43である。アイドル歯車43は,支軸45に対して回転可能に取り付けられている。アイドル歯車43には,大径の歯車43aと小径の歯車43bとが同軸に形成されている。図2に示すように,アイドル歯車43の歯車43aと固定歯車42とが噛み合っているとともに,アイドル歯車43の歯車43bとアイドル歯車41とが噛み合っている。従って,図中に白抜きの矢印で示すように,アイドル歯車43は,機内の駆動装置から駆動力を受け,歯車41と42とを回転させる。
【0036】
このとき,各歯車の径や歯数を適切に設定することにより,歯車41の角速度と歯車42の角速度とを異なるものとすることができる。本形態では,歯車41の角速度は,歯車42の角速度の半分程度となるように設定されている。これにより,中間回転部材31の角速度を,回転軸22の角速度の半分程度とすることができる。またこのようにすれば,スクリュー14aを回転するためにもともと有している駆動装置によって,中間回転部材31を回転することができる。中間回転部材31を回転するために新たな駆動装置を加える必要はない。
【0037】
なお,摺動箇所における発熱や摩耗は,周速差によるものであり,角速度の差だけに対応するものではない。摺動箇所の径が大きいほど,角速度が同じでも周速差は大きくなるからである。本形態では中間回転部材31の角速度を,回転軸22の角速度の半分程度とする代わりに,例えば,外周側シール部材33の摺動箇所における周速差と内周側シール部材34の摺動箇所における周速差とがほぼ等しくなるように,中間回転部材31の回転角速度を調整することもできる。そうすれば,外周側シール部材33と内周側シール部材34の発熱や摩耗の程度をほぼ同じとすることができる。
【0038】
本発明者らは,本発明の効果を実験によって確かめた。本形態の構成でシールの種類と中間回転部材31の角速度を変えて,6種類の実施例(実施例1〜6)を用意した。シールの種類として,実施例1,3,5では厚手のシールAを,実施例2,4,6では薄手のシールBを用いた。各実施例において,外周側シール部材33と内周側シール部材34とは同じ種類のものとした。なお,シールAは,耐久性に優れるがやや発熱しやすいものである。シールBは,発熱は良く抑制するが,耐久性がシールAよりやや劣るものである。
【0039】
また,この実験ではスクリュー14aの回転角速度を1000rpmとした。この速度は,従来,一般の画像形成装置において用いられているものよりやや速い。そして,中間回転部材31の角速度は,実施例1,2では500rpm,実施例3,4では600rpm,実施例5,6では400rpmとした。なお,外周側シール部材33と内周側シール部材34とでは,摺動箇所の軸心からの距離が異なるので,角速度の差が同じであっても摺動距離は異なる。
【0040】
さらに,発明者らは,比較のために,中間回転部材31が設けられておらず,回転しないシール51を用いた比較例をも用意した。これは例えば,図4,図5に示すように,シールを1枚のみ備える軸封装置である。シール51はハウジング21に固定されており,回転しない。そして,回転軸22の回転によって,回転軸22とシール51とが摺動する。シール51の種類が上記のシールAであるものを比較例1,シールBであるものを比較例2とした。
【0041】
本実験では,各実施例や比較例によって,新品のシールを用いて500k枚プリントすることを100例について行い,シールの耐久性と発熱による現像剤の劣化程度とを調べた。シールの耐久性の基準は,シールの摩耗による現像剤の漏れの発生数により,以下の通りとした。
100例のうち,1個も漏れがないものを◎
100例のうち,1〜3個で漏れが発生したものを○
100例のうち,4〜9個で漏れが発生したものを△
100例のうち,10個以上で漏れが発生したものを×
【0042】
発熱による現像剤劣化は,500k枚目の画像上の白地部のカブリ程度を目視で調べた。シールが発熱すると,その熱によってハウジング21内の現像剤が悪影響を受ける。例えば,トナーが溶ける,劣化しやすくなる,キャリアへトナーがスペントする等により,現像剤の帯電性能が低下し,カブリが発生するのである。発熱の判断基準は,以下の通りとした。
100例のうち,目視で分かるカブリが1個もないものを◎
100例のうち,1〜3個でカブリが発生したものを○
100例のうち,4〜9個でカブリが発生したものを△
100例のうち,10個以上でカブリが発生したものを×
【0043】
さらに,総合評価として,シールの耐久性とシールの発熱性とのいずれにおいても×のなかったものを良好なものとし,○とした。いずれかにでも×のあるものを不良とし,×とした。
【0044】
【表1】


【0045】
本実験の結果は,上の表1の通りであった。実施例1〜6では,シールを中間の速度で回転させることにより,シールの摩耗や発熱を抑えることができることが確認できた。シールの耐久性については,外周側シール部材33とハウジング21との角速度差の小さい実施例5〜6が他のものより優れていた。これは,同じ角速度差では,外周側の方が周速差が大きいからである。一方,発熱性については,内周側で発生した熱が回転軸22を伝わって現像剤の温度を上げやすい。そのため,内周側の角速度差が小さい実施例3〜4が良好であった。この場合には,シールAを採用した実施例3の方がさらに良好な結果であった。
【0046】
比較例1〜2は,回転軸22の回転角速度が大きいため,シールと回転軸22との間の周速差が大きく,シールの耐久性とシールの発熱性とのどちらも良好とは言えなかった。従って,本発明の有効性が確認できた。
【0047】
以上詳細に説明したように,本形態の軸封装置30によれば,回転軸22の回転より遅い角速度で回転する中間回転部材31を有しているので,シールと回転軸22との周速の差が小さい。従って,回転軸22の回転を従来のものより速くしたとしても,シールの耐久性とシールの発熱性とのいずれをも確保することができる。従って,回転速度にかかわらずシール性に優れ,潤滑剤を塗布しなくてもシールが高寿命であり,発熱が抑えられている軸封装置となっている。
【0048】
なお,本形態は単なる例示にすぎず,本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に,その要旨を逸脱しない範囲内で種々の改良,変形が可能である。
例えば,上記の形態では,歯車41によって中間回転部材31を回転させるとしたが,ベルト駆動としても良い。あるいは,中間回転部材31を回転駆動することなく,回転軸22からの連れ回りとしても良い。または,回転軸22と中間回転部材とにそれぞれ別々の動力源を設けるものとしても良い。どのようにしても,中間回転部材を回転軸22より遅い回転速度で回転させることができればよい。
【0049】
またあるいは,図6に示すように,金属軸受け61を設けて,摺動性を向上させることもできる。また,軸心の振れ防止のために,軸受けにベアリングをさらに設けても良い。またあるいは,外周側シール部材を設ける位置を,図7や図8に示すように変えても良い。図7に示したのは,軸受け63(またはハウジングでもよい)にシール部材64の外周側を固定し,シール部材64の内周側を中間回転部材65に摺動させることによってシールしたものである。また,図8に示したのは,単体で円筒状のシール部材67を用い,その一端側を軸受け68に固定して,他端側を中間回転部材69に摺動させることによって,円周方向に向けてシールしたものである。
【符号の説明】
【0050】
14 現像部
14a,14b,14c スクリュー
21 ハウジング
22 回転軸
23 貫通穴
23b 内側内壁
31 中間回転部材
33 外周側シール部材
34 内周側シール部材
43 アイドル歯車
43a,43b 歯車

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を収容するハウジングと,回転駆動を受けて前記ハウジング内部の現像剤を攪拌するスクリューと,前記ハウジングに形成された貫通穴を貫通して配置され前記スクリューを回転駆動する回転軸とを有し,
前記貫通穴と前記回転軸との間に設けられ,前記回転軸の回転駆動時に,前記回転軸の回転角速度より遅い角速度で,回転軸と同じ向きに回転する中間回転部材と,
前記中間回転部材と前記回転軸の外周面との間を全周にわたってシールする内周側シール部材と,
前記中間回転部材と前記貫通穴の内周面との間を全周にわたってシールする外周側シール部材とを有することを特徴とする現像装置。
【請求項2】
請求項1に記載の現像装置において,
前記内周側シール部材は,前記中間回転部材に固定して設けられ,前記回転軸の外周面に摺動するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項3】
請求項1または請求項2に記載の現像装置において,
前記外周側シール部材は,前記中間回転部材に固定して設けられ,前記貫通穴の内壁に摺動するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項4】
請求項3に記載の現像装置において,
前記貫通穴の内壁には段差が形成されており,
前記貫通穴は,前記段差より内側は大径で,前記段差より外側は小径となっており,
前記外周側シール部材は,前記貫通穴の内壁のうち前記大径の箇所に接触していることを特徴とする現像装置。
【請求項5】
請求項1または請求項2に記載の現像装置において,
前記外周側シール部材は,前記ハウジングに固定して設けられ,前記中間回転部材に摺動するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項6】
請求項1から請求項5までのいずれか1つに記載の現像装置において,
回転駆動力を前記回転軸および前記中間回転部材に伝達する回転伝達部材を有し,
前記回転伝達部材は,前記回転軸に回転を伝達する第1回転伝達部と,前記中間回転部材に回転を伝達する第2回転伝達部とを有するものであることを特徴とする現像装置。
【請求項7】
請求項1から請求項6までのいずれか1つに記載の現像装置と,前記現像装置により供給される現像剤で形成されるトナー像を担持する像担持体とを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−54159(P2013−54159A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−191402(P2011−191402)
【出願日】平成23年9月2日(2011.9.2)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】