説明

現像装置及びこれを備えた画像形成装置

【課題】適切に磁気ブラシを形成することにより、現像剤の滞留を防止しつつ、現像履歴現象の生じない現像装置及び画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像ローラ20及び磁気ローラ21のローラ軸20a、21bにそれぞれ磁石部材Mが設けられ、それぞれの磁石部材MSと磁石部材MN1は、互いに極性が異なるように対向して配置され、周方向に回転不能に支持される。現像ローラ20の磁石部材MSは、磁気ローラ21の磁石部材MN1と対向する面において、軸線と平行な方向に所定の幅で一定領域のみ着磁されるようにする。これにより、磁力が集中して合成され、画像形成を止める必要もなく、現像履歴現象が防止され、又、現像剤の滞留の発生も防止される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ、ファクシミリ機等の画像形成装置に用いられる現像装置及びこれを備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、電子写真方式では、主としてキャリアとトナーからなる2成分現像剤を使用して現像を行う画像形成装置が存在する。この方式では、現像装置は、磁石部材を内包した磁気ローラを備える。磁気ローラは、現像剤を保持するとともに、キャリアによる磁気ブラシを形成する。そして、磁気ブラシを像担持体にあてることにより、トナーは像担持体に供給される。
【0003】
更に、2成分現像剤を用いた現像の他の方式として、現像装置に磁気ローラと現像ローラの2本のローラを備えるものが存在する。この方式では、まず、磁石部材を内包した磁気ローラは、2成分現像剤を保持するとともに、キャリアによる磁気ブラシを磁気ローラ上に形成する。この磁気ブラシを現像ローラにあてることにより、トナーのみの薄層が現像ローラに形成される。そして、トナーが現像ローラから像担持体に飛翔され、静電潜像が現像される。この方式は磁気ローラの磁気ブラシを直接像担持体に当てるものではないから、2成分現像の特徴である安定性、高速性等を維持しつつも画像品質の向上を図ることができるという利点がある(特許文献1、2参照)。尚、この方式では、現像ローラに磁石部材を内包し、かつ、この磁石部材と磁気ローラの磁石部材は、異極が対向するように配置される場合もある。
【0004】
このような現像装置では、現像ローラと磁気ローラは、一定の隙間を設けられながら対向するように配置される。そして、トナーを現像ローラに供給するため磁気ローラ及び現像ローラ間に形成される磁気ブラシは、形成される画像の品質に大きな影響を与える。
【0005】
具体的にいうと、静電潜像の現像が行われると現像ローラ上では、トナーが像担持体に飛翔されトナーがなくなった領域(部分)と消費されずに残った領域(部分)とが、形成される。このままトナー薄層の形成を続けると、現像ローラ上のトナー薄層の厚さの差が大きくなる。又、トナーの電荷量にもばらつきが生ずる。そうすると、トナーの飛翔に差が生じ、形成される画像にトナーの濃淡があらわれ、前に形成された画像の履歴が現れてしまう(現像履歴現象)。
【0006】
そこで、通常、静電潜像の現像後の現像ローラ上の残トナーは、一旦、磁気ブラシにより剥がされる。その後、再度現像ローラ上にトナー薄層が形成されるようにする。しかし、磁気ブラシの拘束力が弱ければ、現像ローラ上の残トナーは、完全に引き剥がされず、現像履歴現象の原因となる。
【0007】
一方で、形成される磁気ブラシの形状によっては、磁気ローラの回転方向上流側における磁気ブラシ部分、即ち、トナーを現像ローラに供給する部分(領域)では、現像剤の滞留が生じやすくなる(図9参照)。そして、現像剤が滞留すれば、キャリアとトナーが併せて現像ローラ上を搬送されてしまうという問題が生ずる。更に、現像剤の滞留が進み現像剤が溜まりすぎると、現像装置の形状・構成にもよるが、現像剤が、現像装置から溢れ出したりこぼれ落ちたりして、画像形成装置内を汚してしまうという問題がある。これらは、形成される画像を乱す原因となる。
【特許文献1】特開平06−130797号(請求項1、図4、要約)
【特許文献2】特開平06−130819号(請求項1、図4)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
このように、磁気ローラと現像ローラ間の隙間に形成される磁気ブラシは、形成される画像の品質に大きな影響を与える。具体的には、磁気ブラシの拘束力が強く、かつ、現像剤の滞留が生ずることのないものが、理想的である。
【0009】
ここで、特許文献1記載の発明は、像担持体に対向配置されトナー層を保持する現像ロールと、表面にキャリアとトナーからなる2成分現像剤を表面に保持し現像ロールに対向配置される磁気ロールを備えた現像装置において、現像ロールの表面に形成されるトナー層を磁気ロール側に剥離させるよう電界を形成する電圧印加手段を備えている。これは、磁気ブラシにより残トナーを引き剥がすのではなく、現像を一旦中止し現像ロール上のトナーを電界により剥離させる(請求項1、図4、要約参照)。
【0010】
しかし、特許文献1記載の発明は、現像ロール上のトナーを剥離する際に、画像形成を停止しなければならず、画像形成に時間を要するという問題がある。又、電界により飛翔されたトナーは、必ずしも磁気ロール側に回収されるとは限らず、像担持体方向に飛散したり、画像形成装置内を汚したりするということも考えられる。更に、現像ロール上に強固に静電的に付着(固着)したトナーまで剥離できない場合があるという問題もある。
【0011】
又、特許文献2記載の発明は、像担持体に対向配置されトナー層を保持する現像ロールと、表面にキャリアとトナーからなる2成分現像剤を表面に保持し現像ロールに対向配置される磁気ロールを備えた現像装置において、現像ロールと磁気ロールの対向位置における磁気ロール内部の磁極は、磁極中央部における磁力落ち込み量を、その両側のピーク値が反発磁極にならないように設定している(請求項1、図4参照)。
【0012】
しかし、特許文献2記載の発明では、形成されるトナーの薄層厚は一定とすることができても、残トナーを引き剥がすという点では弱い。この発明では、連続して画像形成すると、残トナーが完全に引き剥がされないことにより、現像ロール上のトナーの電荷量がばらつき、現像時にトナー飛翔の差が生じ、結果として現像履歴現象の防止はできないという問題がある。又、磁気ブラシは、磁気ロールから現像ロールに向けて放射状に形成されるから(特許文献2の図4参照)、磁気ブラシは、磁気ロールの現像剤搬送方向(磁気ロール回転方向)において斜めに立ち塞がる様に形成され現像剤の滞留が生ずる。そうすると、キャリアとトナーが併せて現像ローラ上を搬送されてしまい、更に、現像剤の滞留が進み、現像剤が、大量に現像装置からこぼれ落ちたりして、画像形成装置内を汚してしまうという問題がある。
【0013】
更に、現像ローラに磁石部材を内包し、かつ、この磁石部材と磁気ローラの磁石部材とを異極が対向するように支持する方式では、確かに、磁力の合成により磁気ブラシの拘束力は、強くなる場合がある。しかし、現像ローラの磁石部材の周方向における端部において、磁気ローラ側の磁極と同極の磁気領域が存在する場合もある等、単に磁石部材同士を正対させても、良好な磁気ブラシが形成されるものではない。
【0014】
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑みてなされたものであり、良好な磁気ブラシを形成することにより、画像形成を止めることなく、現像剤の滞留によりキャリアが現像ローラに搬送されることや、画像形成装置内を汚すことを防止しつつ、現像ローラ上のトナーを確実に引き剥がし、現像履歴現象の生じない現像装置を提供することを課題とする。更に、この現像装置を用いることにより、形成される画像品質が良好かつ安定し高速な画像形成装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に係る発明は、像担持体に対向して配置され、前記像担持体にトナーを供給する現像ローラと、前記現像ローラに対向して配置され、前記現像ローラにトナーを供給する磁気ローラとを備える現像装置において、前記現像ローラ及び前記磁気ローラのスリーブは、周方向において同一の方向に回転駆動され、磁石部材が、前記現像ローラ及び前記磁気ローラの前記スリーブ内のローラ軸にそれぞれ設けられており、それぞれの前記磁石部材は、互いに極性が異なるように対向して配置され、周方向に回転不能に支持されており、前記現像ローラの前記磁石部材は、前記磁気ローラの前記磁石部材と対向する面において、軸線と平行な方向に所定の幅で一定領域のみ着磁されていることとした。
【0016】
又、請求項2に係る発明は、前記現像ローラの前記磁石部材を、前記現像ローラのローラ軸と前記磁気ローラのローラ軸の中心を結ぶ直線よりも、前記現像ローラのスリーブの回転方向上流側に磁力のピークがくるように支持し、及び/又は、前記磁気ローラの前記磁石部材を、前記現像ローラのローラ軸と前記磁気ローラのローラ軸の中心を結ぶ直線よりも、前記磁気ローラのスリーブの回転方向下流側に磁力のピークがくるように支持することとした。
【0017】
又、請求項3に係る画像形成装置は、請求項1又は2に記載の現像装置を備えることとした。
【発明の効果】
【0018】
請求項1記載の発明によれば、前記現像ローラの前記磁石部材は、前記磁気ローラの前記磁石部材と対向する面において、軸線と平行な方向に所定の幅で一定領域のみ着磁されているので、現像ローラの磁石部材付近で磁力が集中されることから、磁気ブラシの拘束力が強くなり、現像ローラ上のトナーが確実に引き剥がされ、現像履歴現象が防止される。そして、画像形成を止める必要もない。
【0019】
又、磁気ローラ側の磁石部材の磁力が吸引されることで磁気ローラの回転方向下流側に傾いて磁気ブラシが形成されるから、現像剤が、トナーを現像ローラに供給する領域で磁気ローラの回転方向下流側に搬送されやすくなり、現像剤の滞留の発生を防止できる。更に、磁気ローラの磁石部材と同極の磁気領域の発生が、現像ローラの磁石部材の周方向における両端で発生することが軽減される。
【0020】
又、請求項2に係る発明よれば、現像ローラの磁石部材を、現像ローラのローラ軸と磁気ローラのローラ軸の中心を結ぶ直線よりも、現像ローラのスリーブの回転方向上流側に磁力のピークがくるように支持し、及び/又は、磁気ローラの磁石部材を、現像ローラのローラ軸と磁気ローラのローラ軸の中心を結ぶ直線よりも、磁気ローラのスリーブの回転方向下流側に磁力のピークがくるように支持したので、磁力を集中させることができ、現像履歴現象が防止できる。又、傾いて磁気ブラシが形成されるから、現像剤の滞留の発生を防止できる。
【0021】
請求項3記載の発明によれば、請求項1又は2に記載の現像装置を備える画像形成装置であるから、画像形成を止める必要がなく、又、現像履歴現象が生じず、更に、キャリアとトナーが併せて現像ローラ上を搬送されてしまったり、現像剤が現像装置からこぼれ落ちて画像形成装置内を汚してしまったりすることがない。従って、形成される画像の品質が高く、安定し、かつ高速な画像形成装置を提供できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0022】
以下、本発明の第1の実施形態について図1〜6を参照しつつ説明する。本実施形態では、電子写真方式でタンデム型のフルカラーの画像形成装置1について説明する。但し、本実施の形態に記載されている構成、配置等の各要素は、発明の範囲を限定するものではなく単なる説明例にすぎない。
【0023】
まず、図1及び図2を用いて、本発明の第1の実施形態における現像装置2を備えた画像形成装置1の概略を説明する。
【0024】
図1は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置1の概略構成を示す正面から見た断面図である。図2は、本発明の第1の実施形態に係る画像形成部10a、10b、10c、10dの拡大断面図である。
【0025】
図1に示すように、この画像形成装置1は、ブラックの画像を形成する画像形成部10aと、イエローの画像を形成する画像形成部10bと、シアンの画像を形成する画像形成部10cと、マゼンタの画像を形成する画像形成部10dを備えている。これらの4つの画像形成部10a〜10dは一定の間隔をおいて一列に配置されている。
【0026】
この各画像形成部10a〜10dは、各感光体ドラム11a〜11d、各帯電ローラ12a〜12d、各ドラムクリーニングローラ13a〜13d、各クリーニング部材14a〜14dと現像装置2a〜2dを備えているが、各画像形成部10a〜10dの詳細は後述する。
【0027】
露光手段としての光学ユニット15は、ホストコンピュータ(不図示)からそれぞれ入力される画像情報の時系列電気デジタル画素信号に対応して変調されたレーザ光15a、15b、15c、15dがレーザ出力部(不図示)から出力され、各感光体ドラム11a〜11d表面を走査露光することにより、各帯電ローラ12a〜12dで帯電された各感光体ドラム11a〜11d表面に画像情報に応じた各色の静電潜像が形成される。
【0028】
転写手段としての転写ローラ16a、16b、16c、16dは、各一次転写ニップ部にて無端ベルト状の中間転写ベルト30を介して各感光体ドラム11a〜11dにそれぞれ当接している。中間転写ベルト30は、テンションローラ31、駆動ローラ32、従動ローラ33間に張架されており、駆動ローラ32の駆動によって正面視時計方向に回転(移動)される。中間転写ベルト30は、ポリカーボネート、ポリエチレンテレフタレート樹脂フィルム、ポリフッ化ビニリデン樹脂フィルム等のような誘電体樹脂によって構成されている。
【0029】
駆動ローラ32は、中間転写ベルト30を介して二次転写ローラ34と当接して、二次転写部を形成している。二次転写ローラ34は、中間転写ベルト30に接離自在に設置されている。また、二次転写部の転写材搬送方向の下流側には、定着ローラ40aと加圧ローラ40bを有する定着装置40が設置されている。
【0030】
次に、図2に基づき、各画像形成部10a〜10dについて詳述する。
【0031】
図2に示すように、各画像形成部10a〜10dは、それぞれ像担持体としての感光体ドラム11a、11b、11c、11dと、各感光体ドラム11a〜11dを帯電させるための帯電ローラ12a、12b、12c、12dと、ドラムクリーニングローラ13a、13b、13c、13dと、クリーニング部材14a、14b、14c、14d及び現像装置2a〜2dがそれぞれ設置されている。尚、各現像装置2a〜2dの構成の詳細は、後述する。
【0032】
この画像形成部10a〜10dのうち、前記各感光体ドラム11a〜11dは、例えばアルミニウム製のドラムの外周面上に正帯電のOPCやアモルファスシリコンの感光層を有しており、駆動装置(不図示)によって所定のプロセススピードで正面視反時計方向に回転駆動されている。
【0033】
帯電手段としての前記各帯電ローラ12a〜12dは、帯電バイアス電源(不図示)から印加される帯電バイアスによって各感光体ドラム11a〜11d表面を所定電位に均一に帯電させるものであり、所定のプロセススピードで正面視時計方向に回転駆動されている。
【0034】
前記各ドラムクリーニングローラ13a〜13dは、例えば、回転軸の外周にEPDMのような弾性を有する素材を円筒状に設けたものであり、各感光体ドラム11a〜11dの表面にそれぞれ残った転写残トナーを除去して回収するものであり、所定のプロセススピードで正面視反時計方向に回転駆動されている。
【0035】
前記各クリーニング部材14a〜14dは、所定の方向に回転し、各帯電ローラ12a〜12dの表面に付着したトナー等の異物(帯電生成物)を除去する。このため、クリーニング部材14a〜14dは、棒状の支持部材に樹脂製等のブラシを巻き付けたローラ状のものである。
【0036】
次に、上記した画像形成装置による画像形成動作について説明する。
【0037】
画像形成開始信号が発せられると、所定のプロセススピードで回転駆動される各感光体ドラム11a〜11dは、各帯電ローラ12a〜12dによって一様に正極性に帯電される。そして、各光学ユニット15は、入力されるカラー色分解された画像信号をレーザ出力部(不図示)にて光信号にそれぞれ変換し、変換された光信号であるレーザ光15a〜15dを帯電された各感光体ドラム11a〜11d上でそれぞれ走査露光して静電潜像を形成する。
【0038】
そして、先ず感光体ドラム11d上に形成された静電潜像に、感光体ドラム11dの帯電極性(正極性)と同極性の現像バイアスが印加された現像装置2dによりマゼンタのトナーを付着させて、トナー像として可視像化する。その後、マゼンタのトナー像は、感光体ドラム11dと転写ローラ16d間の一次転写部にて一次転写バイアス(トナーと逆極性(負極性))が印加された転写ローラ16dにより、回転(移動)している中間転写ベルト30上に一次転写される。
【0039】
マゼンタのトナー像が転写された中間転写ベルト30は画像形成部10c側に回転(移動)される。そして、画像形成部10cにおいても、前記同様にして感光体ドラム11cに形成されたシアンのトナー像が、中間転写ベルト30上のマゼンタのトナー像上に重ね合わせて、一次転写部にて転写される。
【0040】
以下、同様にして中間転写ベルト30上に重畳転写されたマゼンタ、シアンのトナー像上に、画像形成部10b、10aの感光体ドラム11b、11aで形成されたイエロー、ブラックのトナー像を各一次転写部にて順次重ね合わせて、フルカラーのトナー像を中間転写ベルト30上に形成する。中間転写ベルト30上で重ね合わせられたトナー像は二次転写部で搬送されてきた転写材に二次転写され、転写材は定着装置40に搬送されてトナー像が溶融定着された後、排出部44より排出される(図1参照)。
【0041】
上記した一次転写時において、各感光体ドラム11a〜11d上に残留している一次転写残トナーは、各ドラムクリーニングローラ13a〜13dによってそれぞれ除去されて回収される。また、二次転写後に中間転写ベルト30上に残った二次転写残トナー等は、ベルトクリーニングローラ35で除去されて回収される(図1参照)。
【0042】
また、単色画像(例えばモノクロ画像)を得る場合は、特定の画像形成部(例えば画像形成部10a)より中間転写ベルト30上に単色(例モノクロ画像)の可視画像が一次転写され、以下上記したフルカラー画像を形成する場合と同様のプロセスを経て、単色画像を得ることができる。
【0043】
尚、ここで図1中に示す矢印は用紙等の転写材の搬送方向である。給紙装置41又は手差しトレイ42から転写材が搬送路43に送り込まれ、二次転写部で転写後、定着装置40でトナー像が定着され、転写材は排出部44より排出される(図1参照)。
【0044】
次に、図3に基づき、本発明の第1の実施形態における各現像装置2a〜2dの構造について述べる。
【0045】
図3は、本発明の第1の実施形態に係る現像装置2の概略構成を示す断面図である。尚、各現像装置2a〜2dの構成は、同様であるので、図3では、主として現像装置2aを例にして説明する。従って、他の現像装置2b〜2dも同様に説明できるものであり、以下、特に説明がない限り現像装置2aについての説明は、現像装置2b〜2dにもあてはまる。
【0046】
まず、画像形成装置1の本体には、ブラックのトナーとキァリアからなる現像剤を収納しブラックを現像する現像装置2aと、イエローのトナーとキァリアからなる現像剤を収納しイエローの画像を現像する現像装置2bと、シアンのトナーとキァリアからなる現像剤を収納しシアンの画像を現像する現像装置2cと、マゼンタのトナーとキァリアからなる現像剤を収納しマゼンタの画像を現像する現像装置2dと4つの現像装置(現像ユニット)を備えている。これらの4つの現像装置2は、各画像形成部10a〜10dの一部を構成している(図1参照)。
【0047】
ここで、各現像装置2a〜2dは、それぞれ各感光体ドラム11a〜11d上に形成される各静電潜像に各色のトナーを付着させてトナー像として現像(可視像化)する。各現像装置2a〜2dによる現像方法としては、例えばトナー粒子に対して磁性キャリアを混合したものを現像剤とする2成分現像法を用いることができる。
【0048】
図3に示すように、現像装置2aは、主として現像ローラ20、磁気ローラ21、枠体22、搬送部材23a、23b、穂切りブレード24等により構成されている。
【0049】
図3に示すように、感光体ドラム11aに対向し、一定の隙間を設けて現像ローラ20が配される。そして図3における右斜め下方に現像ローラ20に対向し、一定の隙間を設けて磁気ローラ21が配される。そして、搬送部材23a、23bは、磁気ローラ21の下方に設けられる。又、穂切りブレード24は、図3における磁気ローラ21の左方に設けられる。そして、これらの現像ローラ20、磁気ローラ21、搬送部材23a、23b、穂切りブレード24は、枠体22に保持される。
【0050】
磁気ローラ21は、現像ローラ20にトナーの供給を行うものであるため、磁気ローラ20の外周面上に、搬送部材23により撹拌された主として磁性体のキャリアとトナーからなる現像剤を保持する。具体的には、搬送部材23aの上方の位置で磁気ローラ21に現像剤が供給される。そして、磁気ローラ21は、磁気ブラシを形成し、現像ローラ20にトナーを供給し、現像ローラ20でトナーの薄層が形成される。この点は、後に詳述する。
【0051】
前記搬送部材23は、現像装置2aに2本備え付けられており、軸に対しスクリューが螺旋状に設けられて構成されている。この搬送部材23aと23bにより現像剤は、現像槽23c内を循環するように搬送・撹拌され、所定のレベルに帯電される。これによりトナーは、キャリアに保持される。又、前記穂きりブレード24は、磁気ローラ21上に形成される磁気ブラシの層規制を行うためのものであり、磁気ブラシを所定の高さに調節する。
【0052】
次に、図4に基づき、本発明の第1の実施形態における現像ローラ20及び磁気ローラ21の具体的な構成について述べる。
【0053】
図4は、本発明の第1の実施形態に係る現像ローラ20及び磁気ローラ21の構成を示す分解斜視図である。図4(a)が現像ローラ20を、図4(b)が、磁気ローラ21を示す。尚、磁石部材Mの詳細な構成については、後述するので、図4では、磁石部材Mを簡略化して示す。
【0054】
図4(a)に示すように、前記現像ローラ20は、ローラ軸20a、スリーブ20b、キャップ20cと、軸線方向に長く、周方向の断面が扇形状に形成された磁石部材Mとで構成されている。磁石部材Mは、接着等によりローラ軸20aに固着される。又、ローラ軸20aは、スリーブ20b内に挿通される。スリーブ20bの両端に、それぞれ円形のキャップ20cが嵌入され、ローラ軸20aは、そのキャップ20cから突出する。そして、このように組み立てられた際、磁石部材Mとスリーブ20bの間には所定の隙間が設けられる。
【0055】
現像ローラ20のローラ軸20aが、枠体22に支持された場合、ローラ軸20aは、支持手段(不図示)により回転不能に支持され、併せて、磁石部材Mは周方向の所定の角度で回転不能に支持される。一方、スリーブ20bとキャップ20cは、一体で回転可能となっており、図示しない駆動機構により回転駆動される。ローラ軸20a、スリーブ20b、キャップ20cは、例えばアルミニウム製のものを本実施形態で用いることができる。そして、これらの部材からなる現像ローラ20は、感光体ドラム11aに対向するように配置され、現像ローラ20と感光体ドラム11aの間に、所定のギャップが設けられる(図3参照)。
【0056】
一方、図4(b)に示すように、前記磁気ローラ21は、ローラ軸21a、スリーブ21b、キャップ21cと、周方向の断面が扇形状に形成された磁石部材Mとで構成されている。
【0057】
ローラ軸21aは、スリーブ21b内に挿通されるとともに、そのローラ軸21aには磁石部材Mが接着等により固着される。又、スリーブ21bの両端に、それぞれ円形のキャップ21cが嵌入され、ローラ軸21aは、そのキャップ21cから突出する。そして、このように組み立てられた際、磁石部材Mとスリーブ21bの間には所定の隙間が設けられる。
【0058】
磁気ローラ21のローラ軸21aが枠体22に支持された場合、ローラ軸21aは、支持部材(不図示)により回転不能に支持され、磁石部材Mは、周方向の所定の角度で回転不能に支持される。一方、スリーブ21bとキャップ21cは、一体で回転可能となっており、駆動機構(不図示)により回転駆動される。ローラ軸21a、スリーブ21b、キャップ21cは、例えばアルミ製のものを本実施形態で用いることができる。そして、これらの部材からなる磁気ローラ21は、現像ローラ20に対向するように配置され、現像ローラ20と磁気ローラ21の間に、所定のギャップが設けられる(図3参照)。
【0059】
次に、図5に基づき、本発明の第1の実施形態における磁石部材Mの配置等の具体例について述べる。図5は、本発明の第1の実施形態に係る磁石部材Mの配置を説明するための断面図である。尚、図5では、磁石部材MS及びMN1の磁力のピークの方向を破線により示す。また、各ローラの回転方向を矢印にて示す。
【0060】
本実施形態にあっては、現像ローラ20内の磁石部材MSと磁気ローラ21の磁石部材MN1は互いに対向するように配置されている。これらの磁石部材Mは、その対向する位置で極性が異なるように配置される。具体的に本実施形態では、対向する位置において、磁石部材MSはS極となるようにし、磁石部材MN1はN極となるようにして、磁石部材MSと磁石部材MN1は、支持される。尚、磁石部材MSをN極とし、磁石部材MN1をS極として対向させることも可能である。
【0061】
この様に現像ローラ20と磁気ローラ21の対向位置で、磁石部材MS及びMN1は、異極が向かい合うようにすれば、N極から出る磁力線がS極に吸引され磁力が合成されるから、磁気ブラシが形成されやすくなる。尚、磁石部材MSとMN1は、その対向位置で同極を向かい合わせるようにすると(例えばS極とS極)反発力が生じるから、磁極をそのように設定することはできない。
【0062】
図5に示すように、本実施形態で、現像ローラ20内に1つ設けられる磁石部材MSは、例えば、周方向の断面が扇形状の磁石を用いることができる。断面が略長方形状の磁石でもよい。又、半径方向の長さは3.5mm以下である。扇形状の磁石部材MSにおける扇形の角度は40°程度であり、具体的には、本実施形態では38°としている。尚、磁石部材MSは、磁石であればよいが、例えばラバーマグネットのような加工しやすいものを用いると、安価であり、又、製造が容易になる。
【0063】
そして、図5に示すように、磁石部材MSは、2点鎖線で囲まれた着磁領域Fのみが着磁されている。着磁領域Fは、軸線と平行に所定の幅で帯状に設けられる。本実施形態での着磁領域Fにおける所定の幅は、磁石部材MSの扇形の周方向における角度が38°であるのに対し、30°程度の弧の長さに相当する。言い換えると、ローラ軸20aと21aを結ぶ直線上における現像ローラ20と磁気ローラ21の最近接部分に、磁石部材MSの磁力のピークを持ってくるとすれば、磁石部材MSのピークのラインを中心として、両方に15°程度ずつの弧の長さに相当する幅が、着磁される。
【0064】
尚、着磁領域Fの所定の幅は、例えば、本実施形態における磁石部材MSの半径方向の長さを大きくしてゆき、上記30°程度の弧の長さを維持しようとして、広くしてゆくことも可能である。即ち、良好な磁気ブラシが形成されるよう、着磁領域Fの所定の幅は状況に合わせて適宜設定することが可能である。
【0065】
そして、磁石部材MSの着磁は、治具等により行われ得る。そして、治具等により着磁する前に、磁石部材MSは、熱脱磁法や、交流脱磁法等により一旦脱磁されるようにすることが好ましい。そして、磁石部材MS全体を脱磁させた後に、着磁領域Fのみが着磁される。このような手段をとることで、着磁領域Fや磁石部材MSに対向して配置される磁石部材MN1の磁界中にあっても、磁石部材MSの非着磁部分が磁力を帯びることを抑え磁気ブラシの形成に影響が出ないようにすることができる。
【0066】
ここで、磁力を合成し集中できるように、磁石部材MSの一部のみを着磁するのではなく、磁石部材MSの周方向の厚さを薄くすれば同様の効果は得られる。本実施形態でいえば、磁石部材MSの扇形の角度を例えば、38°以下のようにすることが考えられる。しかし、例えば、ラバーマグネットを用いる場合、38°以下に成形しようとすると、金型による射出成形が困難となる場合がある。又、磁石部材MSはローラ軸20aに沿って固着させるため、磁石部材MSは、細長く形成されるが、周方向の厚さを薄くしすぎると磁石部材MS自体が非常に脆く、或いは、折れ曲がりやすくなる。更に、ローラ軸20aに固着し難くなり(接着面の減少、位置固定困難等)組立や製造が困難となる。これらの事情は、プラスチックマグネットやフェライト焼結磁石など全ての磁石部材において同様といえる。従って、磁石部材MSの周方向の厚さを薄くすると、磁石部材MS自体や現像ローラ20の製造が困難となる。製造可能であっても、余計な手間、設備、道具、コスト、組立時間を要し生産性で明らかに劣る。
【0067】
そこで、本実施形態では、磁石部材MSは、扇形の一定の角度を維持しつつ、一部の領域のみが着磁される。これにより、現像ローラ20と磁気ローラ21間の磁力を集中させることができる磁石部材MSは、容易に成形され、現像ローラ20は、容易に組立、製造される。
【0068】
一方、図5に示すように、現像ローラ20に対向する磁気ローラ21の内部に設けられる磁石部材Mは、本実施形態では、7つである。そして、これら7つの磁石部材Mは、本実施形態では、周方向の断面が全て扇形状である。尚、断面が略長方形状の磁石を用いることも可能である。そして、これらの磁石部材Mは、磁石であればよいが、例えばラバーマグネットのような加工しやすいものを用いると、安価であり、製造が容易になる。
【0069】
その配置については、磁石部材MSに対向するように磁石部材MN1が設けられる。更に、図5を正面視時計回りの方向にみて、磁石部材MN1の隣に磁石部材MS1が、その隣に磁石部材MN2が、更にその隣に磁石部材MS2が設けられる。
【0070】
そして、一定の間隔を開けて磁石部材MS3が、その隣に磁石部材MN3、その隣に磁石部材MS4が設けられる。各磁石部材Mのスリーブ21b方向側における磁極は、磁石部材MN1、MN2、MN3がN極、磁石部材MS1、MS2、MS3、MS4がS極となっていて、磁石部材Mは、原則磁極が交互になるように支持される(図3参照)。
【0071】
ここで、本実施形態における各磁石部材Mのスリーブ20b、21bに対向する位置での表面磁束密度の目安(ピーク値)は、磁石部材MSは40mT、磁石部材MN1は80〜90mT、磁石部材MS1は60mT、磁石部材MN2は60mT、磁石部材MS2は60mT、磁石部材MS3は40mT、磁石部材MN3は40mT、磁石部材MS4は60mTとなっている。又、現像ローラ20と磁気ローラ21の対向位置における隙間部分(磁石部材MSと磁石部材MN1)で合成される表面磁束密度は、110mT程度となっている。尚、各磁石部材Mにおける表面磁束密度は適宜設定可能である。
【0072】
更に、磁気ローラ21側の磁石部材MN1〜3及びMS1〜4の半径方向の長さは3.5mmである。尚、現像ローラ20側の磁石部材MSの高さはこれより小さくできる。又、本実施形態にあっては、磁気ローラ21側の磁石部材MN1〜3及びMS1〜4の扇形における角度はおよそ40°程度が好ましく、本実施形態では、38°のものを使用している。
【0073】
ここで、現像ローラ20に、トナーのみの薄層を形成し、静電潜像を現像する方法の具体的な例を述べる。
【0074】
まず、現像剤に含まれるキャリアは、106Ωcm〜1013Ωcmの体積固有抵抗を有するようにする。又、キャリアは、強固に静電的に付着したトナーを磁気ブラシで引き剥がし、現像に必要なトナーを供給するからトナーと接する表面積が多い方がよく、50μm以下の小径のキャリアを用いられる。そこで、本実施形態では、使用する現像剤は、キャリアとして、体積固有抵抗が1010Ωcm、飽和磁化が65emu/g、平均粒径45μmのコーティングフェライトキャリアを本実施形態では用いる。
【0075】
一方、現像剤中のトナーは、例えば、ポリエステル樹脂ベースであって、帯電制御剤やシリカ等の添加剤を含み、平均粒径8μmのものを用いることができる。又、現像剤中にトナーは、5重量パーセント程度含まれている。尚、上記は実施形態として一例にすぎず、公知の現像剤を用いても構わない。
【0076】
まず、搬送部材23が現像剤を撹拌することで、トナーは、所定のレベルに帯電される。磁気ローラ21は、このトナーを磁性体であるキャリアに保持させるとともに、このキャリアによる磁気ブラシを、磁石部材Mにより発生させる。尚、磁気ブラシは、穂きりブレード24により高さが一定に規制される(図3参照)。
【0077】
ここで、現像ローラ20及び磁気ローラ21は、電源(不図示)により直流の電圧をかけられている。現像ローラ20と磁気ローラ21にかける電圧は異なっており、この電位差により、トナーのみの薄層が現像ローラ20に形成される。本実施形態における画像形成装置1は、カラー対応であるから、各色のトナーの帯電特性等により、現像ローラ20及び磁気ローラ21にかける電圧の大きさは異なるが、この電位差が大きいと現像ローラ20上のトナーの薄層は厚くなり、小さくすると薄くなる。本実施形態では、両ローラの電位差は100V〜350V程度が好ましい。
【0078】
現像ローラ20上に薄層に形成、保持されたトナーは、現像ローラ20に更に交流電圧を印加することで感光体ドラム11aに飛翔される。尚、トナーの飛散を防ぐために、交流電圧は現像の直前に印加する。又、現像後の残トナーは、掻き取りブレードなどの特別な装置を設けることなく、現像ローラ20と磁気ローラ21間に形成された磁気ブラシにより引き剥がされる。各ローラの周速差によるブラシ効果と磁気ブラシにより回収された現像剤を搬送部材23で攪拌することで、現像剤は入れ替えられる。
【0079】
現像剤の入れ替えを促進するための方法は、磁気ローラ21のスリーブ21bの回転速度を現像ローラ20のスリーブ20bの回転速度に対し、1.0〜2.0倍に設定する。そして、現像ローラ20上のトナーを回収すると共に適切なトナー濃度に設定された現像剤を現像ローラ20に供給することで均一なトナー層を形成することが可能になる。また、均一な画像濃度を維持するためには、現像タイミング以外の時間において現像ローラ20と磁気ローラ21間の電位差をなくすことで、トナーに負担をかけず現像ローラ20上のトナーを磁気ローラ21に回収することも好ましい。
【0080】
このようにして、現像ローラ20の外周表面上にトナーのみの薄層を形成し、このトナーを感光体ドラム11aに飛翔させることで、感光体ドラム11a上の静電潜像が現像される。この場合、磁気ブラシを直接感光体ドラム11aに当てるものではないから、いわゆる磁気ブラシによるはけめもなくなり、形成される画像の品質が向上する。
【0081】
次に、図6及び9に基づき、磁気ブラシの形成及び現像剤の搬送について、本発明の第1の実施形態と従来例との差について具体的に述べる。
【0082】
図6は、本発明の第1の実施形態に係る磁気ブラシの形成及び現像剤の搬送を説明するための模式図である。図9は、従来例における磁気ブラシの形成及び現像剤の搬送を説明するための模式図である。
【0083】
尚、従来例としては、現像ローラ20側に磁石部材Mを設けない例も考えられるが(特許文献1)、差異明確化のため、現像ローラ20と磁気ローラ21のローラ軸20a及び21aの中心を結ぶ線上に、磁極が異なるように磁石部材Mの磁力のピークを正対させ、かつ、磁石部材MSは、磁石部材MN1と対向する面全体がS極に着磁されている場合を挙げる。又、図6、図8及び図9では、○がキャリアを示し、●はトナーを示す。
【0084】
図6に示すように、本発明では現像ローラ20側の磁石部材MSと磁気ローラ21側の磁石部材MN1は対向するように支持される。上述のように、磁石部材MSは、磁気ローラ21の磁石部材MN1と対向する面において、一点鎖線で囲まれた着磁領域Fのみ着磁される。また、図6において矢印で示すように、現像ローラ20のスリーブ20bと、磁気ローラ21のスリーブ21bは、周方向において同じ方向に回転駆動される。即ち、スリーブ20bとスリーブ21bは対向位置において、反対方向に回転駆動される。
【0085】
図6に示すように、磁石部材MSは、その着磁領域Fのみ着磁され、磁石部材MN1とS極が対向するように配置されているから、磁力は合成され、集中される。そうすると、本実施形態では、キャリアによる磁気ブラシは、磁気ローラ21のスリーブ21bを下方として、上に凸な曲線状に形成される。言い換えると、山形のように形成される。このようにトナー供給領域A1(二点鎖線で図示)において、磁気ブラシは磁力のピークの方向に傾いて形成されるから、現像ローラ20への現像剤が、現像ローラ20と磁気ローラ21の隙間に引き込まれやすくなる。これにより、現像ローラ20へのトナー供給領域A1(二点鎖線で図示)に現像剤が滞留することがなくなり、現像ローラ20にキャリアを含んだ現像剤が搬送されることがなくなる。更に、現像剤の滞留が進み現像剤が溜まりすぎることによって、現像剤が、現像装置2から溢れ出したりこぼれ落ちたりして、画像形成装置内1を汚してしまうこともなくなる(図3参照)。具体的に本実施形態では、現像剤が、穂きりブレード24方向に落下してしまうようなこともなくなる(図3参照)。従って、形成される画像の品質が乱れない。
【0086】
一方、現像ローラの回転方向上流から搬送される現像後のトナーを回収するトナー回収領域A2(二点鎖線で図示)においても、磁石部材MS側に吸引される磁力線が集中されているから、この部分において磁気ブラシの拘束力が強くなっている。従って、現像ローラ20の回転方向上流から搬送される現像後のトナー回収領域A2において、トナーは、確実に引き剥がされる。このように、強固に静電的に現像ローラ20に付着したトナーが引き剥がされ、現像履歴現象の発生が防止される。
【0087】
又、磁石部材MSと磁石部材MN1を対向させた場合、磁気ローラ20の磁石部材MN1の影響により磁石部材MSの両端部Eに、磁気ローラ20の磁石部材MN1と同極の磁気領域が存在することがある。しかし、本実施形態では、磁石部材MSの両端部Eは、脱磁されているから、磁石部材MN1と同極の磁気領域の発生が、極力抑えられ良好な磁気ブラシが形成される。尚、磁石部材MN1と同極の磁気領域の発生が認められない程度にまで、着磁領域Fの周方向における幅を狭くしてもよい。即ち、本実施形態でいうと、30°に相当する弧の長さを、30°以下にする。しかし、着磁領域Fの周方向における幅を狭くするとしても、形成される磁気ブラシの周方向の厚さが薄くなりすぎないように注意する。
【0088】
尚、本実施形態では、磁気ローラ21側の磁石部材Mは、扇型状であって磁極が交互になるように配されているから、磁石部材MN1の周方向における両端では、磁石部材MS1及びMS4(スリーブ側がS極)により、磁石部材MS方向に向かう磁力は、小さくなる。これはトナー供給領域A1において、磁気ブラシが、磁気ローラ21の回転方向下流側に傾いて形成されやすくなる要因となる。
【0089】
従って、本実施形態では、図6の白抜矢印で示すようにトナーは、磁気ローラ21のスリーブ21b表面、トナー供給領域A1、現像ローラ20のスリーブ20b表面と搬送され、キャリアが混入することがない。そして、現像後のスリーブ20b表面上の残トナーは、磁気ブラシによりトナー回収領域A2において引き剥がされ、磁気ローラ21のスリーブ21bにより搬送されていく。このように、トナー搬送は理想的に行われる。
【0090】
一方、図9に示す従来例のように、磁石部材MS、MN1を正対させ、かつ、現像ローラ20の磁石部材MSは、磁石部材MN1と対向する面全体が着磁されている場合、キャリアによる磁気ブラシは、磁気ローラ21のスリーブ21bの回転面に対しほぼ垂直に形成される。従って、磁気ブラシは、トナー供給領域A3(二点鎖線で図示)において壁のような役割を果たし得るものとなり、スリーブ21b上を搬送されてきた現像剤は現像ローラ20と磁気ローラ21の間の隙間に引き込まれ難く、トナー供給領域A3において現像剤が滞留しやすくなる。
【0091】
又、現像ローラ20と磁気ローラ21の隙間は、現像ローラ20と磁気ローラ21の最近接部分となっており、隙間が最も狭くなっている。磁気ローラ21は、現像剤を搬送する役割を果たすところ、この最近接部分から磁気ローラ21の回転方向上流側に(トナー供給領域A3方向)に一旦現像剤が滞留すると、溜まった現像剤により磁気ローラ21の搬送能力は下がる。従って、現像剤は、余計に現像ローラ20と磁気ローラ21の間の隙間に引き込まれ難くなり、現像剤の滞留は加速度的に大きくなり得る。
【0092】
これにより、トナー供給領域A3から、キャリアも併せて現像ローラ20に搬送されてしまい、形成される画像を乱す。現像剤がトナー供給領域A3に更に滞留すれば、現像剤が、現像装置2から溢れ出したりこぼれ落ちたりして、画像形成装置1内を汚し、形成される画像を乱す要因となる。具体的に本実施形態では、穂きりブレード24上に落下してしまう(図3参照)。
【0093】
一方、現像後のトナー回収領域A4(二点鎖線で図示)をみると、磁石部材MSの端部Eでは、本発明の実施形態に比べ磁力線は集中していない。又、磁気ローラ20の磁石部材MSの両端部Eに、磁気ローラ20の磁石部材と同極の磁気領域が存在することがある。これらの理由から、磁気ブラシの拘束力は弱められ、良好な磁気ブラシは、本発明に比べ形成されにくい。そうすると、強固に静電的に現像ローラ20に付着したトナーは、完全に引き剥がされない場合がある。そして、そのままトナー供給領域A3でトナーの供給を受けると、トナーの層厚が増し、又はトナー電荷量の差で、現像履歴現象が発生してしまう。
【0094】
以上、図6及び9で示したように、現像剤及びトナーの搬送は、従来例比べ本発明における実施形態のほうが、理想的になされる。
【0095】
このようにして、現像ローラ20及び磁気ローラ21のスリーブ20b、21bは、周方向において同一の方向に回転駆動され、磁石部材Mが、現像ローラ20及び磁気ローラ21のスリーブ20b、21b内のローラ軸20a、21bにそれぞれ設けられ、それぞれの磁石部材MS、MN1は、互いに極性が異なるように対向して配置され、周方向に回転不能に支持されており、現像ローラ20の磁石部材MSは、磁気ローラ21の磁石部材MN1と対向する面において、軸線と平行な方向に所定の幅で一定領域のみ着磁されるようにすれば、磁石部材MSでは磁力が集中され磁気ブラシの拘束力が強くなり、画像形成を止める必要がなく、現像ローラ20上のトナーが確実に引き剥がされ、現像履歴現象を防止できる。又、磁気ローラ21側の磁石部材MN1の磁力が吸引されることで磁気ローラ21の回転方向下流側に傾いて磁気ブラシが形成されるから、現像剤が、トナー供給領域A1で磁気ローラ21の回転方向下流側に搬送されやすくなり、現像剤の滞留の発生を防止できる。更に、磁石部材MN1と同極の磁気領域の発生が、磁石部材MSの周方向における両端部Eで発生することが軽減される。
【0096】
又、画像形成装置1において、上記の現像装置2を備えるようにすれば、現像履歴現象がなく、現像剤の滞留もないから、キャリアとトナーが併せて現像ローラ20上を搬送されることや、現像剤が、現像装置2から溢れ出したりこぼれ落ちたりして、画像形成装置1内を汚してしまうこともなくなり、形成される画像の品質が高くかつ安定した優れた画像形成装置1を提供できる。
【0097】
次に、本発明における第2の実施形態について、図7、図8に基づいて説明する。第2の実施形態は、磁石部材MSと、磁石部材MN1を正対させるのではなく、磁石部材Mを傾けて支持している点で差異を設けたものである。図7は、本発明の第2の実施形態に係る磁石部材Mの配置を説明するための断面図である。図8は、本発明の第2の実施形態に係る磁気ブラシの形成及び現像剤の搬送を説明するための模式図である。
【0098】
尚、第2の実施形態の基本的な構成は、図1〜6を用いて説明した上記の第1の実施形態と同じであるから、上記の実施形態と共通する構成については、図面の記載及び説明を省略する。即ち、磁石部材Mを傾けて支持している点を除き、図1〜6を用いて説明した実施形態と同様にすればよい。
【0099】
図7に示すように、第2の実施形態では、磁石部材MSは、ローラ軸20aと21aの中心を結ぶ直線上よりもスリーブ20bの周方向の回転方向上流側に磁力のピークを傾けて配置することが可能である。言い換えると、磁石部材MSは、少なくとも、ローラ軸20aと21aを結ぶ直線上における現像ローラ20と磁気ローラ21の最近接部分から、現像ローラ20のスリーブ20bの回転方向上流側に磁力のピークがくるように支持される。
【0100】
尚、傾けるべき好適な角度は、磁石部材MSの形状、種類、磁力のピーク位置や、後述の磁気ローラ21側に設けられる磁石部材Mの個数や配置、ピーク位置、表面磁束密度等の要素により変動する。従って、適宜設定することが可能であるが、磁石部材MSは、現像ローラ20のスリーブ20bの回転方向上流側に傾けられるという点では同じである。例えば、本実施形態では、磁力のピークは、1〜10°程度、好ましくは3〜7°程度、より好ましくは5°程度ずらされて支持され得る。
【0101】
そして、磁石部材MN1は、ローラ軸20aと21aの中心を結ぶ直線上よりも磁気ローラ21のスリーブ21bの回転方向下流側に磁力のピークを傾けて支持されるようにすることが可能である。言い換えると、磁石部材MN1は、少なくとも、ローラ軸20aと21aを結ぶ直線上における現像ローラ20と磁気ローラ21の最近接部分から、磁気ローラ21のスリーブ21bの回転方向下流側に磁力のピークがくるように支持される。
【0102】
傾けるべき好適な角度は、磁石部材MN1の形状、種類や、各磁石部材Mの磁力、配置等により磁石部材MN1の磁力のピーク位置が変動するから、磁石部材MSと同様、適宜設定することが可能であるが、磁石部材MN1は、磁気ローラ21のスリーブ21bの回転方向下流側に傾けられるという点では同じである。例えば、本実施形態では、磁力のピークは、6〜22°程度の角度、好ましくは10〜18°程度の角度、より好ましくは14°程度ずらされて支持され得る。
【0103】
ここで、磁石部材MS及び磁石部材MN1の傾けるべき好適な角度は、上述の通り形成される磁気ブラシや、磁石部材Mの形状、設けられる磁石部材Mの数、配置、種類、磁力
等の要因を考慮しなければならないが、磁石部材MSと磁石部材MN1が対向する関係である必要がある。例えば、磁石部材MSにおける磁力のピークを傾けすぎると、磁石部材MN1との合成磁力が弱くなり、良好な磁気ブラシが形成されない。又、磁石部材MN1を傾けすぎれば、磁石部材MN1に隣接する磁石部材MS4が、磁石部材MSと対向することになり、反発力が生じ、磁気ブラシの形成自体がなされなくなる。従って、磁石部材MN1からの磁力線が、磁石部材MSに吸引されるよう対向し、かつ、磁気ブラシが形成される範囲内で傾けることが可能である。
【0104】
このように、現像ローラ20の磁石部材MSを、ローラ軸20aとローラ軸aの中心を結ぶ直線よりも、スリーブ20bの回転方向上流側に磁力のピークがくるように支持し、及び/又は、磁気ローラ21の磁石部材MN1は、ローラ軸20aとローラ軸21aの中心を結ぶ直線よりも、磁気ローラ21bのスリーブの回転方向下流側に磁力のピークがくるように支持し、磁石部材MN1、磁石部材MSのいずれか一方若しくは両方を傾けて支持することで、合成される磁力が集中する。図8に示すように、現像ローラ20と磁気ローラ21間に形成される磁気ブラシは、トナー供給領域A1(二点鎖線で図示)では、磁気ローラ21の周方向の回転方向下流側に傾けられる。これにより、磁気ローラ21の回転方向上流側から搬送されてきた現像剤が現像ローラ20と磁気ローラ21の隙間部分に導入されやすくなる。従って、現像ローラ20にトナーを供給する領域において、現像剤の滞留がなくなる。
【0105】
一方で、合成される磁力が集中するから、形成される磁気ブラシの拘束力が強くなり、トナー回収領域A2(二点鎖線で図示)で、トナーは、確実に引き剥がされる。従って、強固に静電的に現像ローラ20に付着したトナーが引き剥がされるから、現像履歴現象の発生が防止される。
【0106】
以上、本発明の実施形態につき説明したが、本発明の範囲はこれに限定されるものではなく、発明の主旨を逸脱しない範囲で種々の変更を加えて実施することができる。
【0107】
例えば、上記実施形態では、磁気ローラ21側の磁石部材Mを7つ設けたがこれに限られるものではない。又、扇形における角度を38°としたがこれに限られない。扇形の角度を大きくすれば、設けられる磁石部材Mの数は、少なくなるようにすればよい。尚、扇形の角度が大きくなれば、磁石部材MSの着磁領域Fは、異なるようにしてもよい。この場合、現像ローラ20と磁気ローラ21の径や磁石部材Mの配置や磁力のピークを考慮して磁気ブラシが良好に形成されるよう、適宜設定すればよい。
【0108】
又、磁石部材Mの半径方向の長さも上記実施形態に限られるものではない。この場合にあっても、扇形の弧の長さは変わるから、磁石部材MSの着磁領域Fの角度は、異なるものとなる。この場合も、磁気ブラシが良好に形成されるように適宜設定すればよい。
【産業上の利用可能性】
【0109】
本発明は、画像形成装置における現像装置及びこれを用いた画像形成装置において利用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0110】
【図1】本発明の第1の実施形態に係る画像形成装置の概略構成を示す正面から見た断面図である。
【図2】本発明の第1の実施の形態に係る画像形成部の拡大断面図である。
【図3】本発明の第1の実施形態に係る現像装置の概略構成を示す断面図である。
【図4】本発明の第1の実施形態に係る現像ローラ及び磁気ローラの構成を示す分解斜視図である。
【図5】本発明の第1の実施形態に係る磁石部材の配置を説明するための断面図である。
【図6】本発明の第1の実施形態に係る磁気ブラシの形成及び現像剤の搬送を説明するための模式図である。
【図7】本発明の第2の実施形態に係る磁石部材の配置を説明するための断面図である。
【図8】本発明の第2の実施形態に係る磁気ブラシの形成及び現像剤の搬送を説明するための模式図である。
【図9】従来例における磁気ブラシの形成及び現像剤の搬送を説明するための模式図である。
【符号の説明】
【0111】
1 画像形成装置
2(2a、2b、2c、2d) 現像装置
20 現像ローラ
20a ローラ軸
20b スリーブ
21 磁気ローラ
21a ローラ軸
21b スリーブ
MS 磁石部材(磁石部材M)
MN1 磁石部材(磁石部材M)
A1 トナー供給領域
A2 トナー回収領域
A3 トナー供給領域
A4 トナー回収領域
F 着磁領域

【特許請求の範囲】
【請求項1】
像担持体に対向して配置され、前記像担持体にトナーを供給する現像ローラと、前記現像ローラに対向して配置され、前記現像ローラにトナーを供給する磁気ローラとを備える現像装置において、
前記現像ローラ及び前記磁気ローラのスリーブは、周方向において同一の方向に回転駆動され、
磁石部材が、前記現像ローラ及び前記磁気ローラの前記スリーブ内のローラ軸にそれぞれ設けられており、
それぞれの前記磁石部材は、互いに極性が異なるように対向して配置され、周方向に回転不能に支持されており、
前記現像ローラの前記磁石部材は、前記磁気ローラの前記磁石部材と対向する面において、軸線と平行な方向に所定の幅で一定領域のみ着磁されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記現像ローラの前記磁石部材を、前記現像ローラのローラ軸と前記磁気ローラのローラ軸の中心を結ぶ直線よりも、前記現像ローラのスリーブの回転方向上流側に磁力のピークがくるように支持し、及び/又は、前記磁気ローラの前記磁石部材を、前記現像ローラのローラ軸と前記磁気ローラのローラ軸の中心を結ぶ直線よりも、前記磁気ローラのスリーブの回転方向下流側に磁力のピークがくるように支持していることを特徴とする請求項1記載の現像装置。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2008−58700(P2008−58700A)
【公開日】平成20年3月13日(2008.3.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−236435(P2006−236435)
【出願日】平成18年8月31日(2006.8.31)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】