説明

現像装置及びそれを備えた画像形成装置

【課題】画像処理速度が高速化した場合でも内部の圧力が上昇せず、さらに振動や衝撃による現像装置内からの現像剤の漏出も抑制可能な二成分現像方式の現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】剥離極38から見て回転スリーブ22aの回転方向上流側には、磁気ローラ22の長手方向全域に亘ってシート状の逆流防止部材40が設けられている。逆流防止部材40の基端部は現像容器20の内側に固定されており、先端部を回転スリーブ22aの回転方向下流側に向けて配置されている。逆流防止シート40aの先端部41には切り欠き部50が形成されており、逆流防止部材40と磁気ローラ22との間に通気路51を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、ファクシミリ、プリンタ等の画像形成装置に搭載される現像装置及びそれを備えた画像形成装置に関し、特に、磁性キャリアとトナーとから成る二成分現像剤を使用する現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、電子写真プロセスを用いた画像形成装置における乾式トナーを用いた現像方式としては、キャリアを用いない一成分現像方式と、磁性キャリア(以下、単にキャリアともいう)を用いて非磁性のトナーを帯電させる二成分現像剤を使用し、現像ローラ上に形成されたトナー及びキャリアから成る磁気ブラシにより感光体上の静電潜像を現像する二成分現像方式とが知られている。
【0003】
二成分現像方式を用いた画像形成装置では、環境に対する負荷を考慮して梱包材や緩衝材を極力減少させるために、現像剤が充填された現像装置を画像形成装置本体内に装着した状態で工場から出荷することも多い。そこで、搬送時の転倒、落下等の衝撃により現像剤が漏出しないように現像装置の密閉性を高める設計がなされている。
【0004】
一方、近年の画像処理速度の高速化に伴い現像装置の駆動速度が速くなった結果、現像装置内部の現像剤の移動速度も上昇している。現像剤の漏出を防止するために現像装置の密閉性を高めた場合、現像装置内部の圧力も上昇するため、補給装置から現像装置内に落下したトナーが空気圧により現像装置の現像剤面より上の空間に滞留してしまい、トナー補給が不安定になるという不具合が発生することがあった。特に、耐用期間の末期に近く、キャリアの帯電能力が低下している状態では、滞留したトナーが一度に落下することなどに起因して一時的にトナーの帯電不良が起こり、カブリが発生する。
【0005】
そこで、現像装置内部の圧力上昇を緩和する方法が提案されており、例えば特許文献1及び2には、現像装置のハウジング上部に圧抜き穴を設け、さらに圧抜き穴をフィルタで覆うことで、圧力の上昇と現像剤の漏れを抑制する現像装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平2−139587号公報
【特許文献2】特開2006−250973号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1、2の方法では、耐用期間の長い現像装置の場合、フィルタの目詰まりによって圧力低減効果が低下してしまう。また、現像剤が充填された現像装置を画像形成装置本体内に装着した状態で出荷した場合、フィルタを介して現像剤が現像装置の外部に漏出し、画像形成装置内部を汚染するおそれがあった。
【0008】
本発明は、上記問題点に鑑み、画像処理速度が高速化した場合でも内部の圧力が上昇せず、さらに転倒や落下の衝撃による現像装置内からの現像剤の漏出も抑制可能な二成分現像方式の現像装置及びそれを備えた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するために本発明は、トナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤を収容する現像容器と、該現像容器内に収容された現像剤を攪拌搬送する攪拌搬送部材と、該攪拌搬送部材の上方に回転自在に設けられ、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、該現像剤担持体の内部に固定され、前記現像剤担持体表面から現像剤を剥離する剥離極を含む複数の磁極を有する固定マグネット体と、前記剥離極から見て前記現像剤担持体の回転方向下流側において前記現像剤担持体に対向配置される穂切りブレードと、を有する現像装置において、前記剥離極から見て該現像剤担持体の回転方向上流側には、前記現像剤担持体の長手方向全域に亘ってシート状の逆流防止部材が、基端部を前記現像容器の内面に固定され、先端部を前記現像剤担持体の回転方向下流側に向けて接触若しくは近接するように配置され、前記逆流防止部材の先端部には切り欠き部が形成されることを特徴としている。
【0010】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記逆流防止部材は、材質の異なる複数のシート材を重ね合わせて構成されることを特徴としている。
【0011】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記逆流防止部材は、基端部が前記現像容器に固定され、先端部が前記現像剤担持体に接触若しくは近接するように配置される第1シート材と、該第1シート材の基端部側に重なり前記第1シート材よりも弾性率の大きい第2シート材とで構成されることを特徴としている。
【0012】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記切り欠き部の深さが1mm以上2mm以下であることを特徴としている。
【0013】
また本発明は、上記構成の現像装置において、前記切り欠き部は、前記逆流防止部材の長手方向の略中央部に形成されることを特徴としている。
【0014】
また本発明は、上記構成の現像装置が搭載された画像形成装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明の第1の構成によれば、シート状の逆流防止部材を、基端部を現像容器の内面に固定し、先端部を現像剤担持体の回転方向下流側に向けて現像剤担持体に接触若しくは近接するように配置するとともに、逆流防止部材の先端部に切り欠き部を形成することにより、切り欠き部によって形成される通気路により現像容器内の圧力上昇が抑制され、トナー補給が安定化されるため、トナーの帯電不良によるカブリの発生を低減することができる。また、逆流防止部材が現像容器内の現像剤に押されたときは通気路が狭くなるため、現像容器からの現像剤の漏出を抑制することができる。
【0016】
また、本発明の第2の構成によれば、上記第1の構成の現像装置において、材質の異なる複数のシート材を重ね合わせて構成された逆流防止部材を用いることにより、逆流防止部材の弾性や復元力を簡単に調整することができる。
【0017】
また、本発明の第3の構成によれば、上記第2の構成の現像装置において、逆流防止部材を、基端部が前記現像容器に固定され、先端部が前記現像剤担持体に接触するように配置される第1シート材と、第1シートの基端部側に重なり第1シート材よりも弾性率の大きい第2シート材とで構成することにより、第2シート材の復元力により逆流防止部材と現像剤担持体との接触または近接状態を確実に維持することができる。
【0018】
また、本発明の第4の構成によれば、上記第1乃至第3のいずれかの構成の現像装置において、切り欠き部の深さを1mm以上2mm以下とすることにより、現像容器内の圧力上昇を確実に抑制してトナーの補給を安定化するとともに、現像装置に衝撃が加えられた場合の現像剤の漏出を効果的に抑制することができる。
【0019】
また、本発明の第5の構成によれば、上記第1乃至第4のいずれかの構成の現像装置において、切り欠き部を逆流防止部材の長手方向の略中央部に形成することにより、画像形成装置の転倒時や落下時に特に発生し易い現像装置の長手方向の両端部からの現像剤の漏出を抑制することができる。
【0020】
また、本発明の第6の構成によれば、上記第1乃至第5のいずれかの構成の現像装置を搭載することにより、画像処理速度が高速化した場合でも現像装置内の圧力が上昇せず安定したトナー補給が行われるため、トナーの帯電不良やカブリが抑制され、さらに輸送時における現像剤の漏出も抑制可能な画像形成装置となる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の現像装置が搭載された画像形成装置の全体構成を示す概略図
【図2】本発明の現像装置の一構成例を示す側面断面図
【図3】現像ローラ及び磁気ローラに印加されるバイアス波形の一例を示す図
【図4】本発明の現像装置に装着される逆流防止部材の側面図
【図5】逆流防止部材を補助シート側から見た平面図
【図6】現像装置の駆動時における逆流防止部材の側面拡大図
【図7】逆流防止部材が内部の現像剤に押された状態を示す側面拡大図
【図8】逆流防止部材を磁気ローラに接触させた構成を示す側面図
【図9】本発明の現像装置の他の構成例を示す側面断面図
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、図面を参照しながら本発明の実施形態について説明する。図1は、本発明の現像装置が搭載された画像形成装置の概略断面図であり、ここではタンデム方式のカラー画像形成装置について示している。カラー画像形成装置100本体内には4つの画像形成部Pa、Pb、Pc及びPdが、図1では右側から順に配設されている。これらの画像形成部Pa〜Pdは、異なる4色(シアン、マゼンタ、イエロー及びブラック)の画像に対応して設けられており、それぞれ帯電、露光、現像及び転写の各工程によりシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像を順次形成する。
【0023】
この画像形成部Pa〜Pdには、各色の可視像(トナー像)を担持する感光体ドラム1a、1b、1c及び1dが配設されており、さらに駆動手段(図示せず)により図1において時計回りに回転する中間転写ベルト8が各画像形成部Pa〜Pdに隣接して設けられている。これらの感光体ドラム1a〜1d上に形成されたトナー像が、各感光体ドラム1a〜1dに当接しながら移動する中間転写ベルト8上に順次転写されて重畳された後、二次転写ローラ9の作用によって記録媒体の一例としての転写紙P上に転写され、さらに、定着部7において転写紙P上に定着された後、装置本体より排出される。感光体ドラム1a〜1dを図1において反時計回りに回転させながら、各感光体ドラム1a〜1dに対する画像形成プロセスが実行される。
【0024】
トナー像が転写される転写紙Pは、装置下部の用紙カセット16内に収容されており、給紙ローラ12a及びレジストローラ対12bを介して二次転写ローラ9と後述する中間転写ベルト8の駆動ローラ11との間のニップへと搬送される。中間転写ベルト8には誘電体樹脂製のシートが用いられ、その両端部を互いに重ね合わせて接合しエンドレス形状にしたベルトや、継ぎ目を有しない(シームレス)ベルトが用いられる。また、二次転写ローラ9から見て中間転写ベルト8の移動方向の下流側には中間転写ベルト8表面に残存するトナーを除去するためのブレード状のベルトクリーナ19が配置されている。
【0025】
次に、画像形成部Pa〜Pdについて説明する。回転自在に配設された感光体ドラム1a〜1dの周囲及び下方には、感光体ドラム1a〜1dを帯電させる帯電装置2a、2b、2c及び2dと、各感光体ドラム1a〜1dに画像情報を露光する露光ユニット4と、感光体ドラム1a〜1d上にトナー像を形成する現像装置3a、3b、3c及び3dと、感光体ドラム1a〜1d上に残留した現像剤(トナー)を除去するクリーニング装置5a、5b、5c及び5dが設けられている。
【0026】
パソコン等の上位装置から画像データが入力されると、先ず、帯電装置2a〜2dによって感光体ドラム1a〜1dの表面を一様に帯電させ、次いで露光ユニット4によって画像データに応じて光照射し、各感光体ドラム1a〜1d上に画像データに応じた静電潜像を形成する。現像装置3a〜3dには、それぞれシアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの各色のトナーを含む二成分現像剤が所定量充填されている。なお、後述のトナー像の形成によって各現像装置3a〜3d内に充填された二成分現像剤中のトナーの割合が規定値を下回った場合には不図示のトナー補給装置から各現像装置3a〜3dにトナーが補給される。この現像剤中のトナーは、現像装置3a〜3dにより感光体ドラム1a〜1d上に供給され、静電的に付着することにより、露光ユニット4からの露光により形成された静電潜像に応じたトナー像が形成される。
【0027】
そして、一次転写ローラ6a〜6dにより一次転写ローラ6a〜6dと感光体ドラム1a〜1dとの間に所定の転写電圧で電界が付与され、感光体ドラム1a〜1d上のイエロー、シアン、マゼンタ及びブラックのトナー像が中間転写ベルト8上に一次転写される。これらの4色の画像は、所定のフルカラー画像形成のために予め定められた所定の位置関係をもって形成される。その後、引き続き行われる新たな静電潜像の形成に備え、感光体ドラム1a〜1dの表面に残留したトナーがクリーニング装置5a〜5dにより除去される。
【0028】
中間転写ベルト8は、上流側の搬送ローラ10と、下流側の駆動ローラ11とに掛け渡されており、駆動モータ(図示せず)による駆動ローラ11の回転に伴い中間転写ベルト8が時計回りに回転を開始すると、転写紙Pがレジストローラ対12bから所定のタイミングで中間転写ベルト8に隣接して設けられた二次転写ローラ9へ搬送され、フルカラー画像が転写される。トナー像が転写された転写紙Pは定着部7へと搬送される。
【0029】
定着部7に搬送された転写紙Pは、定着ローラ対13により加熱及び加圧されてトナー像が転写紙Pの表面に定着され、所定のフルカラー画像が形成される。フルカラー画像が形成された転写紙Pは、複数方向に分岐した分岐部14によって搬送方向が振り分けられる。転写紙Pの片面のみに画像を形成する場合は、そのまま排出ローラ対15によって排出トレイ17に排出される。
【0030】
一方、転写紙Pの両面に画像を形成する場合は、定着部7を通過した転写紙Pの一部を一旦排出ローラ対15から装置外部にまで突出させる。その後、転写紙Pは排出ローラ対15を逆回転させることにより分岐部14で用紙搬送路18に振り分けられ、画像面を反転させた状態でレジストローラ対12bに再搬送される。そして、中間転写ベルト8上に形成された次の画像が二次転写ローラ9により転写紙Pの画像が形成されていない面に転写され、定着部7に搬送されてトナー像が定着された後、排出ローラ対15から排出トレイ17に排出される。
【0031】
図2は、本発明の現像装置の構成を示す側面断面図である。以下、図1の画像形成部Paに配置される現像装置3aについて説明するが、画像形成部Pb〜Pdに配置される現像装置3b〜3dの構成についても基本的に同様であるため説明を省略する。
【0032】
図2に示すように、現像装置3aは、二成分現像剤(以下、単に現像剤ともいう)が収納される現像容器20を備えており、現像容器20は仕切壁20aによって第1及び第2攪拌室20b、20cに区画され、第1及び第2攪拌室20b、20cには図示しないトナーコンテナから供給されるトナー(正帯電トナー)をキャリアと混合して撹拌し、帯電させるための第1攪拌スクリュー21a及び第2攪拌スクリュー21bが回転可能に配設されている。
【0033】
そして、第1攪拌スクリュー21a及び第2攪拌スクリュー21bによって現像剤が攪拌されつつ軸方向に搬送され、仕切壁20aに形成された現像剤通過路(図示せず)を介して第1及び第2攪拌室20b、20c間を循環する。図示の例では、現像容器20は左斜め上方に延在しており、現像容器20内において第2攪拌スクリュー21bの上方には磁気ローラ22が配置され、磁気ローラ22の左斜め上方には現像ローラ23が対向配置されている。そして、現像ローラ23は現像容器20の開口側(図2の左側)において感光体ドラム1aに対向しており、磁気ローラ22及び現像ローラ23はそれぞれの回転軸周りに関して図中時計回りに回転する。
【0034】
なお、現像容器20には、第1攪拌スクリュー21aと対面してトナー濃度センサ(図示せず)が配置されており、トナー濃度センサで検知されるトナー濃度に応じて補給装置(図示せず)からトナー補給口20dを介して現像容器20内にトナーが補給される。
【0035】
磁気ローラ22は、非磁性の回転スリーブ22aと、回転スリーブに内包される複数の磁極を有する固定マグネット体22bで構成されている。本実施形態では、固定マグネット体22bの磁極は、主極35、規制極(穂切り用磁極)36、搬送極37、剥離極38、及び汲上極39の5極構成である。
【0036】
また、現像容器20には穂切りブレード25が磁気ローラ22の長手方向(図2の紙面表裏方向)に沿って取り付けられており、穂切りブレード25は、磁気ローラ22の回転方向(図中時計回り)において、現像ローラ23と磁気ローラ22との対向位置よりも上流側に位置付けられている。そして、穂切りブレード25の先端部と磁気ローラ22表面との間には僅かな隙間(ギャップ)が形成されている。
【0037】
現像ローラ23は、円筒状の現像スリーブ23aと、現像スリーブ23a内に固定された現像ローラ側磁極23bで構成されており、磁気ローラ22と現像ローラ23とはその対面位置(対向位置)において所定のギャップをもって対向している。現像ローラ側磁極23bは、固定マグネット体22bの対向する磁極(主極)35と異極性である。
【0038】
現像ローラ23には、直流電圧(以下、Vslv(DC)という)及び交流電圧(以下、Vslv(AC)という)を印加する第1バイアス回路30が接続されており、磁気ローラ22には、直流電圧(以下、Vmag(DC)という)及び交流電圧(以下、Vmag(AC)という)を印加する第2バイアス回路31が接続されている。また、第1バイアス回路30及び第2バイアス回路31は共通のグランドに接地されている。
【0039】
第1バイアス回路30及び第2バイアス回路31には電圧可変装置33が接続されており、現像ローラ23に印加されるVslv(DC)、Vslv(AC)及び磁気ローラ22に印加されるVmag(DC)、Vmag(AC)を可変できるようになっている。
【0040】
前述のように、第1攪拌スクリュー21a及び第2攪拌スクリュー21bによって、現像剤が攪拌されつつ現像容器20内を循環してトナーを帯電させ、第2攪拌スクリュー21bによって現像剤が磁気ローラ22に搬送される。穂切りブレード25には固定マグネット体22bの規制極36が対向するため、穂切りブレード25として非磁性体或いは規制極36と異なる極性の磁性体を用いることにより、穂切りブレード25の先端と回転スリーブ22aとの隙間に引き合う方向の磁界が発生する。
【0041】
この磁界により、穂切りブレード25と回転スリーブ22aとの間に磁気ブラシが形成される。そして、磁気ローラ22上の磁気ブラシは穂切りブレード25によって層厚規制された後、回転スリーブ22aの回転に伴い現像ローラ23に対向する位置に移動すると、固定マグネット体22bの主極35及び現像ローラ側磁極23bにより引き合う磁界が付与されるため、磁気ブラシは現像ローラ23表面に接触する。そして、磁気ローラ22に印加されるVmag(DC)と現像ローラ23に印加されるVslv(DC)との電位差ΔV、及び磁界によって現像ローラ23上にトナー薄層を形成する。
【0042】
現像ローラ23上のトナー層厚は現像剤の抵抗や磁気ローラ22と現像ローラ23との回転速度差等によっても変化するが、ΔVによって制御することができる。ΔVを大きくすると現像ローラ23上のトナー層は厚くなり、ΔVを小さくすると薄くなる。現像時におけるΔVの範囲は一般的に100V〜350V程度が適切である。
【0043】
図3は、現像ローラ23及び磁気ローラ22に印加されるバイアス波形の一例を示す図である。図3(a)に示すように、現像ローラ23には、Vslv(DC)にピークツーピーク値がVpp1である矩形波のVslv(AC)を重畳した合成波形Vslv(実線)が第1バイアス回路30から印加される。また、磁気ローラ22には、Vmag(DC)にピークツーピーク値がVpp2であり、且つVslv(AC)と位相が異なる矩形波のVmag(AC)を重畳した合成波形Vmag(破線)が第2バイアス回路31から印加される。
【0044】
従って、磁気ローラ22及び現像ローラ23間(以下、MS間という)に印加される電圧は、図3(b)に示すようなVpp(max)とVpp(min)を有する合成波形Vmag−Vslvとなる。なお、Vmag(AC)はVslv(AC)よりもDuty比が大きくなるように設定される。実際には図3で示すような完全な矩形波ではなく、一部が歪んだ形状の交流電圧が印加される。
【0045】
磁気ブラシによって現像ローラ23上に形成されたトナー薄層は、現像ローラ23の回転によって感光体ドラム1aと現像ローラ23との対向部分に搬送される。現像ローラ23にはVslv(DC)及びVslv(AC)が印加されているため、感光体ドラム1aとの間の電位差によってトナーが飛翔し、感光体ドラム1a上の静電潜像が現像される。
【0046】
さらに回転スリーブ22aが時計回りに回転すると、今度は主極35に隣接する異極性の搬送極37により発生する水平方向(ローラ周方向)の磁界により磁気ブラシは現像ローラ23表面から引き離され、現像に用いられずに残ったトナーが現像ローラ23から回転スリーブ22a上に回収される。さらに回転スリーブ22aが回転すると、磁気ローラ側磁極22bの剥離極38(現像剤分離部)及びこれと同極性の汲上極39により反発する磁界が付与されるため、現像剤は現像容器20内で回転スリーブ22aから離脱する。そして、第2攪拌スクリュー21bにより攪拌、搬送された後、再び適正なトナー濃度で均一に帯電された二成分現像剤として汲上極39により再び回転スリーブ22a上に磁気ブラシを形成し、穂切りブレード25へ搬送される。
【0047】
また、剥離極38から見て回転スリーブ22aの回転方向上流側には、磁気ローラ22の長手方向(図2の紙面方向)全域に亘ってシート状の逆流防止部材40が設けられている。逆流防止部材40の基端部は現像容器20の内側に固定されており、先端部を回転スリーブ22aの回転方向下流側に向けて配置されている。
【0048】
図4は、逆流防止部材と磁気ローラとの関係を示す側面拡大図である。逆流防止部材40は、第2攪拌室20c内の現像剤の逆流を防止する逆流防止シート(第1シート材)40aと、逆流防止シート40aの基端部41側に重ね合わされた補強用の補助シート(第2シート材)40bから構成されている。ここでは厚さ0.2mmのウレタンシート製の逆流防止シート40aに、補助シート40bとして厚さ0.1mmのPETフィルムを重ね合わせている。また、逆流防止シート40a及び補助シート40bの基端部41を延長することにより、現像容器20の内側に固定される貼り付け部42が形成されている。
【0049】
磁気ローラ22の下方に位置する第1及び第2攪拌室20b、20cが穂切りブレード25及び逆流防止シート40aによって閉空間に近い状態になると、駆動時に圧力が上昇してトナー補給が不安定となるおそれがある。そのため、逆流防止シート40aと回転スリーブ22aとの間に通気路を設けておく必要がある。
【0050】
一方、画像形成装置100が転倒や落下するなどして現像装置3aに衝撃が加えられた場合、逆流防止シート40aが第2攪拌室20c内の現像剤に押され、磁気ローラ22側に押し付けられるような状態となる。このとき、逆流防止シート40aと回転スリーブ22aとの間に通気路が存在すると現像剤が現像容器20の開口部(現像ローラ23周辺)から漏出するおそれがある。
【0051】
図5は、逆流防止部材40を補助シート40b側から見た平面図である。本発明では、逆流防止部材40と回転スリーブ22aとの間に隙間Aを設けるとともに、逆流防止シート40aの先端部43に矩形状の切り欠き部50を形成している。
【0052】
この構成とすることにより、図6に示すように、現像装置3aの駆動時には第1及び第2攪拌室20b、20c内の圧縮された空気が隙間A及び切り欠き部50により形成された通気路51を通過して外部に抜けるため、第1及び第2攪拌室20b、20c内の圧力上昇を抑制することができる。なお、図6では図示していないが、現像装置3aの駆動時には回転スリーブ22a上に現像剤層(磁気ブラシ層)が形成される。
【0053】
また、図7に示すように、画像形成装置100の搬送時の衝撃により逆流防止シート40aが第2攪拌室20c内の現像剤に押された場合は、逆流防止シート40aの先端部43が回転スリーブ22aに密着して隙間Aは閉鎖されるが、切り欠き部50は上端の一部(斜線領域)が閉鎖されずに残る。
【0054】
ここで、画像形成装置100の転倒や落下により現像剤が現像装置3aの長手方向の両端部に偏ったときに、現像容器20と磁気ローラ22との隙間から現像剤の漏出が生じ易い。そのため、図5に示したように、逆流防止シート40aの長手方向の略中央部に切り欠き部50を設けておけば、図7に示すように切り欠き部50が完全に閉鎖されなくても長手方向の両端部からの現像剤の漏出を抑制することができる。
【0055】
切り欠き部50の深さBが小さくなるにつれて現像剤の漏出防止効果が向上する反面、第1及び第2攪拌室20b、20c内の圧力低減効果が低くなり、トナー補給が不安定となってカブリが発生するおそれがある。一方、深さBが大きくなるにつれて第1及び第2攪拌室20b、20c内の圧力低減効果が向上する反面、現像装置3aに衝撃が加えられた場合に現像剤の漏出が発生し易くなる。そのため、切り欠き部50の深さBは1mm以上2mm以下に設定することが好ましい。
【0056】
また、最近接点Nからの逆流防止シート40aの先端部43の突出量は特に制限はないが、突出量が少なすぎると現像装置3aに衝撃が加えられた場合に逆流防止シート40aの先端部43が磁気ローラ22に十分に密着せず、画像形成装置100が転倒や落下するなどして現像装置3aに衝撃が加えられた場合に現像剤が漏出するおそれがある。そのため、突出量は0.5mm以上が好ましい。
【0057】
なお、隙間Aを設けずに、逆流防止シート40aの先端部43を磁気ローラ22に接触させる構成としても良い。この場合、図8に示すように、切り欠き部50によって逆流防止シート40aと回転スリーブ22aとの間に通気路51を形成し、現像装置3aの駆動時には第1及び第2攪拌室20b、20c内の圧縮された空気が通気路51を通って外部に抜ける。一方、逆流防止シート40aが第2攪拌室20c内の現像剤に押された場合は、図7と同様に切り欠き部50は上端の一部(斜線領域)を残して閉鎖され、現像剤の漏出が抑制される。逆流防止シート40aが接触する部分は主極35から見て回転スリーブ22aの回転方向下流側であるため、現像ローラ23上へのトナー薄層の形成に影響を及ぼすおそれはない。
【0058】
さらに、補助シート40bを用いず、逆流防止シート40aのみで逆流防止部材40を構成することもできる。しかし、本実施形態のように逆流防止シート40aの基端部に逆流防止シート40aよりも弾性率の大きい補助シート40bを重ね合わせることによって逆流防止部材40の復元力(コシ)が強くなり、現像剤の押圧力による逆流防止シート40aの変形が生じ難くなって現像剤の漏出防止効果が向上するため好ましい。
【0059】
一方、図8のように逆流防止シート40aを回転スリーブ22aに接触させる場合は、逆流防止シート40aの剛性が大きいと、回転スリーブ22a表面に傷を付けるおそれがあるため、逆流防止シート40aにはウレタン等の低弾性率の材質を用いることが好ましい。
【0060】
なお、ここでいう弾性率(elastic modulus)とは、変形のしにくさを表す物性値であり、弾性変形内での応力と歪みの間の比例定数である。つまり、弾性率の大きい材料ほど変形しにくく、復元性に優れている。
【0061】
その他本発明は、上記実施形態に限定されず、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。例えば、上記実施形態で示した逆流防止部材40の材質や寸法については一例に過ぎず、現像装置の仕様に応じて適宜設計することができる。また、逆流防止部材40を、材質の異なる3枚以上のシート材で構成しても良い。
【0062】
また、本発明は図2に示したような磁気ローラ22と現像ローラ23を備えた現像装置に限定されるものではなく、図9に示すように、内部に固定マグネット体22bを備えた磁気ローラ22上にトナー成分と磁性キャリアとから成る磁気ブラシを形成し、この磁気ブラシを感光体ドラム1に接触させることで感光体ドラム1上の静電潜像を現像する現像装置3の現像剤漏れ防止機構としても全く同様に適用可能である。
【0063】
また、本発明は図1に示したタンデム式のカラープリンタに限らず、デジタル或いはアナログ方式のモノクロ複写機、モノクロプリンタ及びロータリー現像式のカラープリンタ及びカラー複写機、ファクシミリ等、二成分現像装置を備えた種々の画像形成装置に適用可能である。以下、実施例により本発明の効果を更に詳細に説明する。
【実施例】
【0064】
図2に示した本発明の現像装置が搭載された図1に示すような試験機において、逆流防止部材40に形成された切り欠き部50の寸法と、カブリ及び現像剤漏れの発生との関係について調査した。なお、試験は感光体ドラム1a及び現像装置3aを含むシアンの画像形成部Paにおいて行った。
【0065】
試験機の条件としては、システム速度を35枚/分、感光体ドラム周速を240mm/秒とし、ドラム表面電位は白地部電位(V0)を300V、画像部電位(VL)を20Vとした。また、現像ローラ及び磁気ローラの直径は20mmとし、現像ローラの周速比を感光体ドラムに対し1.5(感光体との対向面において順回転)、磁気ローラの周速比を現像ローラに対し1.5(現像ローラとの対向面においてカウンタ回転)とした。また、感光体ドラム−現像ローラ間ギャップを0.15mm、磁気ローラ−現像ローラ間ギャップを0.3mmとした。さらに、磁気ローラ内には磁気ローラと現像ローラとの最近接部から下流側に10°の位置に主極が配置されるように固定マグネット体を固定し、主極の磁力を70mTとした。
【0066】
現像剤としては、平均粒径6.8μm、比重1.2の正帯電トナーと、平均粒径35μm、比重4.5のコーティングフェライトキャリアとから成る二成分現像剤を用い、キャリアに対するトナーの混合比率(T/C)を9重量%とした。
【0067】
現像ローラへの電圧印加条件は、Vslv(DC)=50V、Vslv(AC)のVppを1.5kV、周波数を3kHz、Duty=35%とした。また、磁気ローラへの電圧印加条件は、Vmag(DC)=250V、Vmag(AC)のVppを1.4kV、周波数を3kHz、Duty=65%とした。
【0068】
評価方法としては、図4に示したような、長さL1が10.5mmの逆流防止シート40aの基端部41側に、長さL2が7mmの補助シート40bを重ね合わせ、最近接点Nから補助シート40bの先端までの距離Dが3.5mmとなるようにした逆流防止部材40を用い、逆流防止部材40と回転スリーブ22aとの隙間A、及び図5に示した切り欠き部50の深さB、幅Cを変化させたときの、白紙(白ベタ)画像25万枚印字後におけるカブリの発生を目視により観察し、カブリが確認できない場合を○、ややカブリがあるが実用上問題のない場合を△、カブリがあり、実用上問題のある場合を×とした。
【0069】
現像剤漏れについては、現像装置を搭載した試験機を60cmの高さから角部(1箇所)、稜線(角部を中心とする縦、横、高さ方向の3箇所)、上面、側面(4箇所)、底面が着地点となるように、各1回ずつ計10回落下させる落下試験を行った。その後、試験機から現像装置を取り外して現像剤の漏出を目視により観察し、現像剤の漏出がない場合を○、やや現像剤の漏出があるが実用上問題のない場合を△、現像剤の漏出があり、実用上問題のある場合×とした。評価結果を隙間A、深さB、幅Cの値と合わせて表1に示す。また、補助シート40bを用いず逆流防止シート40aのみで構成された逆流防止部材40を用いた場合の結果を表2に示す。
【0070】
【表1】

【0071】
【表2】

【0072】
表1及び表2から明らかなように、逆流防止部材40に切り欠き部50を設けた本発明1〜10では、カブリが確認できないか、カブリが発生しても実用上問題のない範囲であった。特に、切り欠き部50の深さBを2mmとした本発明2、3、5、7、8、10ではカブリの抑制効果が高かった。また、落下試験後の現像剤の漏出については、切り欠き部50の深さBを1mm及び2mmとした本発明1〜10では現像剤の漏出がないか、現像剤の漏出があっても実用上問題のない範囲であった。
【0073】
さらに、本発明1〜5と本発明6〜10の比較から、補助シート40bを用いた方が落下試験時の現像剤の漏出が抑制された。これは、補助シート40bの復元力が大きいため、現像剤の圧力によって逆流防止部材40が変形しにくく、回転スリーブ22aとの間に隙間が生じにくいためであると考えられる。
【0074】
これに対し、逆流防止部材40に切り欠き部50を設けなかった比較例1〜4では、現像剤の漏出は認められないか、実用上問題のない範囲であったが、カブリが顕著に発生した。なお、ここではシアンの画像形成部Paを用いて試験を行ったが、マゼンタ、イエロー及びブラックの画像形成部Pb〜Pdにおいても同様の結果が得られることが確認されている。
【0075】
なお、上記実施例は本発明の一構成例にすぎず、ドラム表面電位や現像ローラ及び磁気ローラへの電圧印加条件等は装置の仕様や使用環境に応じて適宜設定することができる。
【産業上の利用可能性】
【0076】
本発明は、内部に固定マグネット体を備えた現像剤担持体を用いる二成分現像方式の現像装置に利用可能であり、基端部を現像容器の内面に固定されたシート状の逆流防止部材を、先端部が現像剤担持体の回転方向下流側に向かうように現像剤担持体に接触若しくは近接するように配置するとともに、逆流防止部材の先端部に切り欠き部を設けたものである。
【0077】
これにより、切り欠き部によって形成される通気路が現像装置の駆動時における現像容器内の圧力上昇を防止してトナー補給を安定化し、現像装置に衝撃が加えられた場合は、逆流防止部材が現像容器内の現像剤に押され、切り欠き部が現像剤担持体に押し付けられて通気路の少なくとも一部が閉じられるため、カブリの発生と現像剤の漏出を効果的に抑制できる現像装置となる。
【符号の説明】
【0078】
1a〜1d 感光体ドラム
3a〜3d 現像装置
20 現像容器
21a 第1攪拌スクリュー(攪拌搬送部材)
21b 第2攪拌スクリュー(攪拌搬送部材)
22 磁気ローラ(現像剤担持体)
22a 回転スリーブ
22b 固定マグネット体
23 現像ローラ
23a 現像スリーブ
23b 現像ローラ側磁極
25 穂切りブレード
35 主極
36 規制極
37 搬送極
38 剥離極
40 逆流防止部材
40a 逆流防止シート(第1シート材)
40b 補助シート(第2シート材)
41 基端部
43 先端部
50 切り欠き部
51 通気路
100 画像形成装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーと磁性キャリアとを含む二成分現像剤を収容する現像容器と、
該現像容器内に収容された現像剤を攪拌搬送する攪拌搬送部材と、
該攪拌搬送部材の上方に回転自在に設けられ、現像剤を担持して搬送する現像剤担持体と、
該現像剤担持体の内部に固定され、前記現像剤担持体表面から現像剤を剥離する剥離極を含む複数の磁極を有する固定マグネット体と、
前記剥離極から見て前記現像剤担持体の回転方向下流側において前記現像剤担持体に対向配置される穂切りブレードと、
を有する現像装置において、
前記剥離極から見て該現像剤担持体の回転方向上流側には、前記現像剤担持体の長手方向全域に亘ってシート状の逆流防止部材が、基端部を前記現像容器の内面に固定され、先端部を前記現像剤担持体の回転方向下流側に向けて接触若しくは近接するように配置され、前記逆流防止部材の先端部には切り欠き部が形成されることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記逆流防止部材は、材質の異なる複数のシート材を重ね合わせて構成されることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記逆流防止部材は、基端部が前記現像容器に固定され、先端部が前記現像剤担持体に接触若しくは近接するように配置される第1シート材と、該第1シート材の基端部側に重なり前記第1シート材よりも弾性率の大きい第2シート材とで構成されることを特徴とする請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記切り欠き部の深さが1mm以上2mm以下であることを特徴とする請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の現像装置。
【請求項5】
前記切り欠き部は、前記逆流防止部材の長手方向の略中央部に形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の現像装置が搭載された画像形成装置。

【図1】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図2】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−48036(P2011−48036A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−194978(P2009−194978)
【出願日】平成21年8月26日(2009.8.26)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】