説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】べた画像の再現性と画像メモリの解消が同時に達成できる画像形成装置及び現像装置を提供する。
【解決手段】画像形成装置10の現像装置16は、感光体12に対向する現像ローラ42と、現像ローラに対向する供給回収ローラ50を有する。現像ローラと供給回収ローラの間に、現像ローラと供給回収ローラが同一又はほぼ同一の電位となる電圧と、現像ローラから供給回収ローラに向けてトナーを電気的に付勢する電圧を交互に印加する電源70を有する。また、現像装置は、供給回収ローラに接触して供給回収ローラにトナーを供給する接触供給部材52を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粉体現像剤を用いた画像形成装置に関する。画像形成装置は、複写機、プリンタ、ファクシミリ、またはそれらの機能を複合的に備えた複合機のいずれであってもよい。また、本発明は、画像形成装置に使用される現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式の画像形成装置に利用される現像装置として、静電潜像担持体である感光体に対向する現像ローラと、現像ローラに現像剤であるトナーを供給する供給ローラを有するものが提案されている。この現像装置にあっては、供給ローラから現像ローラに対するトナーの供給効率を上げるために、例えば、現像ローラと供給ローラの間に、供給ローラから現像ローラに向けてトナーを電気的に付勢する供給バイアス電圧が印加される。
【0003】
この供給バイアス電圧は、供給ローラから現像ローラへの現像剤供給性能を向上するためには有効である。しかし、供給バイアス電圧は、感光体に供給されることなく現像ローラに残存するトナーを再び供給ローラに戻すことで現像ローラ上のトナーを入れ替えて現像ローラをリフレッシュする機能を阻害する要因ともなり得る。その結果、現像ローラに付着した異物(紙粉など)が除去されず、また、長期間に亘って同一のトナーが現像ローラに保持されることで現像性が低下し、作成された画像にノイズや濃度傾斜が表れるという問題を生じる。
【0004】
この問題を解消するために、特許文献1には、現像ローラと供給ローラとの間に、現像ローラから現像ローラに向けてトナーを電気的に付勢する電圧を印加する技術が提案されている。この特許文献1の技術によれば、確かに、現像ローラから供給ローラへのトナー回収効率が向上し、画像ノイズや濃度傾斜の無い画像が得られる。
【特許文献1】特開2005−189767号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1に開示された技術では、供給ローラから現像ローラに供給されるトナーの量が減少し、例えばべた画像(面積画像)の画像再現性が悪くなるという問題があった。
【0006】
そこで、本発明は、供給ローラから現像ローラへのトナーの供給性と現像ローラから供給ローラへのトナーの回収性を適正に確保できる現像装置、及びその現像装置を備えた画像形成装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的を達成するため、感光体に対向する第1のローラと、上記第1のローラに対向する第2のローラを有し、上記第2のローラから上記第1のローラに現像剤を供給する現像装置、及びその現像装置を備えた画像形成装置は、上記第1のローラと第2のローラの間に、上記第1のローラと第2のローラが同一の電位となる第1の電圧と上記第1のローラから上記第2のローラに向けて上記現像剤を電気的に付勢する第2の電圧を交互に印加する電源と、上記第2のローラに接触して上記第2のローラに現像剤を供給する接触供給部材を備えている。
【発明の効果】
【0008】
この現像装置及び画像形成装置によれば、接触供給部材によって第2のローラから第1のローラへのトナーの供給性が適正に保たれ、電源の作用によって第1のローラから第2のローラへのトナーの回収性が適正に保たれる。その結果、画像ノイズや濃度傾斜の無い高品質の画像が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、添付図面を参照して本発明の好適な実施形態を説明する。
【0010】
図1は、本発明に係る画像形成装置10の概略構成を示す。画像形成装置は、プリンタ、複写機、ファクシミリ、または、それらの機能を複合的に備えた複合機のいずれであってもよい。
【画像形成装置の構成と動作】
【0011】
画像形成装置10の構成をその画像形成動作と共に説明する。画像形成時、周知の電子写真法に基づき、図上時計周り方向に回転する感光体(静電潜像担持体)12の外周面にトナー像が形成される。具体的には、感光体12の外周面が帯電装置14で所定電位に帯電される。帯電された感光体12の外周面には、露光装置16から出射された画像光(例えばレーザ光)が露光されて静電潜像が形成される。静電潜像は、現像装置18から供給されるトナーによってトナー像として可視像化される。トナー像は、感光体12とこれに対向する転写装置20との対向領域で、図示しない給紙部から点線矢印22に沿って供給されたシート(例えば、用紙)に転写される。シートに転写されたトナー像は定着装置24でシートに固定され、図示しない排紙部に排出される。シートに転写されることなく感光体12に残存するトナーは、クリーニング装置26で回収される。
【現像装置】
【0012】
現像装置18は、トナーを主成分とする一成分現像剤を使用する現像装置である。現像装置18のハウジング30は、感光体12に対向する開口部32と、開口部32に隣接する前室34と、開口部32から離れた後室36を有する。実施形態では、前室34と後室36は、連絡口38を有する隔壁40によって区画されている。開口部32には、感光体12に対向する現像ローラ(第1のローラ)42が反時計周り方向に回転自在に配置されている。実施形態では、現像ローラ42は、金属の円筒体が使用されている。現像ローラ42の回転方向に関して、感光体12と現像ローラ42が対向する現像領域44の上流側と下流側にはそれぞれ荷電部材46と除電部材48が設けてある。実施形態では、荷電部材46と除電部材48は共に、開口部32に隣接してハウジング30に固定されている。
【0013】
前室34には、現像ローラ42に対向して供給回収ローラ(第2のローラ)50が反時計周り方向に回転自在に設けてある。実施形態では、供給回収ローラ50はその外周部が弾性材料(弾性発泡部材:例えば、ウレタン発泡体)で被覆されており、この外周被覆層が現像ローラ42の外周面に接触している。前室34の底部には、弾性材料からなる接触供給部材52が供給回収ローラ50の外周面に圧接して固定されている。後室36には、攪拌部材54が反時計周り方向に回転自在に配置されている。
【0014】
現像ローラ42、供給回収ローラ50、攪拌部材54は、図示しないモータに駆動連結されており、画像形成時、モータの駆動に基づいてそれぞれ所定の方向に回転する。その結果、後室36に収容されているトナー56は、攪拌部材54の回転に基づき、連絡口38を介して後室36から前室34に送り込まれる。前室34のトナー56は、供給回収ローラ50の回転に基づいて、供給回収ローラ50と接触供給部材52の接触領域である供給領域58に搬送される。供給領域58に進入したトナー56は、接触供給部材52との接触により所定の極性に帯電される。実施形態では、トナー56は負極性に帯電される。なお、供給回収ローラ50の外周面を構成する材料とこれに接触する接触供給部材52の材料は、目的の極性にトナー56を帯電する材料が選択される。帯電したトナー56は、供給回収ローラ50と接触供給部材52との接触圧により供給回収ローラ50の外周面に保持される。
【0015】
供給回収ローラ50に保持されたトナー56は、供給回収ローラ50と現像ローラ42が接触する供給回収領域60に搬送され、そこで現像ローラ42の外周面に供給される。現像ローラ42に保持されたトナー56は、現像ローラ42と荷電部材46が接触する規制帯電領域62に搬送され、そこで搬送量が規制されると共に再び目的の極性(実施形態では負極性)に帯電される。規制帯電領域62を通過したトナー56は、現像ローラ42と感光体12が対向する現像領域44に搬送され、そこで感光体12の静電潜像(静電潜像画像部)に付着する。
【0016】
現像領域44を通過した後の現像ローラ42の外周面に保持されているトナー56は、現像ローラ42と除電部材48が接触する除電領域64を通過する際に除電される。除電されたトナー56は再び供給回収領域60に搬送され、供給回収ローラ50に回収される。
【供給性と回収性】
【0017】
供給回収領域60におけるトナー56の供給性と回収性は、現像ローラ42と供給回収ローラ50の電位状態に依存する。そのため、現像ローラ42と供給回収ローラ50は電源装置70に接続されており、電源装置70から現像ローラ42に現像バイアス電圧Vが印加されると共に電源装置70から供給回収ローラ50に供給回収バイアス電圧Vが印加されるようにしてある。図示するように、接触供給部材52も電源装置70に接続し、電源装置70から接触供給部材52に供給バイアス電圧Vを印加してもよい。
【0018】
図2、3は、現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧の相対的な関係の一例を示す。図示する実施形態では、供給回収ローラ50には、現像ローラ42に印加される電圧Vに対して、矩形パルス波からなる電位差(V−V)を示す供給回収バイアス電圧Vが印加される。すなわち、電位差(V−V)は、現像バイアス電圧Vと供給回収バイアス電圧Vが同一又はほぼ同一となる低電位部Vと、負極性のトナー56を現像ローラ42から供給回収ローラ50に向けて電気的に付勢する高電位部Vを、周期的に交互に繰り返す矩形パルス波である。上述のように、電位差(V−V)は、現像バイアス電圧Vと供給回収バイアス電圧Vの電位差であるため、実際の現像バイアス電圧Vも低電位部と高電位部を周期的に交互に繰り返す矩形パルス波とすることができる。
【0019】
このように、低電位部Vにおいて、現像バイアス電圧Vと供給バイアス電圧Vは同一又はほぼ同一である。したがって、低電位部Vが印加されている時間t1は、現像ローラ42と供給回収ローラ50との接触圧に基づいて、供給回収ローラ50から現像ローラ42にトナー56が供給される。このとき供給回収ローラ50から現像ローラ42に供給されるトナー56の量は、供給回収領域60に供給されるトナー56の量に依存する。また、供給回収領域60に供給されるトナー56の量は、供給領域58において供給回収ローラ50の外周面に保持されるトナー56の量に依存する。そして、供給回収ローラ50の外周面に保持されるトナー56の量は、接触供給部材52と供給回収ローラ50との接触によって十分に確保されているため、上述のように、第1の時間t1において現像ローラ42と供給回収ローラ50が同電位又はほぼ同電位であっても、画像形成に必要な量のトナーが現像ローラ42に供給される。その結果、べた画像を忠実に再現できる。また、図示するように、接触供給部材52に供給バイアスVを印加することで、接触供給部材52と供給回収ローラ50との間に、接触供給部材52から供給回収ローラ50に向けてトナー56を電気的に付勢する電界を形成することで、供給回収ローラ50に対するトナー供給性が更に向上することが予想できる。
【0020】
他方、高電位部Vが印加されている時間t2は、現像ローラ42と供給回収ローラ50との間には現像ローラ42から供給回収ローラ50に向かってトナー56を電気的に付勢する電界が形成されるため、現像領域44を通過した後の現像ローラ42の外周面に残存するトナー56が供給回収領域60で効率的に供給回収ローラ50に回収される。その結果、現像領域44を通過した後の現像ローラ50に保持されているトナー56は供給回収領域60で供給回収され、それに代わって新しいトナー56が供給回収ローラ50から現像ローラ50に供給される。したがって、画像メモリの発生が無くなる。
【バイアス電圧】
【0021】
現像バイアス電圧と供給バイアス電圧を種々の値に設定して、べた画像の再現性(追随性)と画像メモリの発生を観察した。
【0022】
実験の条件を以下の表1に示す。表中、電圧の単位は「ボルト」である。添字(P−P)は「ピークツーピーク電圧」、添字(OFFSET)は「オフセット電圧」を示す。また、評価欄における記号○は「良好」、記号△は「可」、記号×「不良」を意味する。
【表1】

【0023】
図4(a)は実験1における現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧、図4(b)は実験1における現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧の相対的関係(V−V)を示す。図5(a)は実験2,3,5における現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧、図5(b)は実験2,3,5における現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧の相対的関係(V−V)を示す。図6(a)は実験4における現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧、図6(b)は実験4における現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧の相対的関係(V−V)を示す。
【0024】
表1を参照すると、実験1と実験2〜5の結果を対比すれば明らかなように、現像ローラと供給回収ローラにそれらが同一又はほぼ同一となる電位となる電圧を現像ローラから供給回収ローラに向けてトナーを電気的に付勢する電圧を交互に印加する(第1の条件)ことで、画像メモリが無くなることが分かる。また、実験2と3の結果より、接触供給部材を有する現像装置によれば、接触供給部材を設ける(第2の条件)ことによってべた画像の再現性が良くなることが分かる。つまり、第1の条件と第2の条件を満足することによって、べた画像の再現性と画像メモリの解消が同時に達成できる。
【0025】
なお、以上の説明では、供給回収ローラ50の外周部と接触供給部材52を共に弾性部材で形成したが、これらの2つの部材のうちの一方は弾性部材、他方は弾性部材であってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】画像形成装置の概略構成を示す断面図。
【図2】現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧と電位差を示すグラフ。
【図3】現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧と電位差を示すグラフ。
【図4】実験1における現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧を示すグラフ。
【図5】実験2,3,5における現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧を示すグラフ。
【図6】実験4における現像バイアス電圧と供給回収バイアス電圧を示すグラフ。
【符号の説明】
【0027】
10:画像形成装置、12:感光体(静電潜像担持体)、16:現像装置、30:ハウジング、42:現像ローラ、50:供給回収ローラ、52:接触供給部材、56:トナー、58:供給領域、60:供給回収領域、70:電源装置。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
感光体に対向する第1のローラと、上記第1のローラに対向する第2のローラを有し、上記第2のローラから上記第1のローラに現像剤を供給する現像装置において、
上記第1のローラと第2のローラの間に、上記第1のローラと第2のローラが同一またはほぼ同一の電位となる第1の電圧と上記第1のローラから上記第2のローラに向けて上記現像剤を電気的に付勢する第2の電圧を交互に印加する電源と、
上記第2のローラに接触して上記第2のローラに現像剤を供給する接触供給部材を備えていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
上記請求項1の現像装置を備えた画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2008−224705(P2008−224705A)
【公開日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−58337(P2007−58337)
【出願日】平成19年3月8日(2007.3.8)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】