説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】現像ローラのスペーサが放電生成物にて生成された硝酸により劣化することを抑制・防止して、長期に亘って良好な画像を得ることができる現像装置、及びそれを備えた画像形成装置を提供する。
【解決手段】現像ローラ20の両端部に設けられたスペーサ21・21における少なくとも感光体3と接する外周面21a、好ましくはスペーサ21の全表面に、放電に伴い発生する放電生成物を吸着除去するゼオライト層等の吸着層27を形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像装置及び画像形成装置に関し、より詳細には、感光体などの像担持体表面に形成された静電潜像にトナーを付与して顕像化する現像装置及び現像装置を備えた画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置においては、感光体などの表面を、帯電装置を用いて帯電させ、帯電した感光体表面を露光することで静電潜像を形成する。そして、この静電潜像を現像装置を用いてトナーを付与して顕像化してトナー像とし、これを転写装置を用いて記録紙等に転写する。
【0003】
上記現像装置には、表面にトナーを担持して感光体表面へと供する現像ローラが備えられている。現像ローラの長手方向両端部には、現像ローラと感光体との間隔を一定に保持するスペーサが設けられており、このスペーサが感光体表面に圧接されることで、現像ローラと感光体との間に、所定寸法の現像ギャップが形成される。
【0004】
現像ギャップは一定に保持する必要があり、一定に保持できなくなると、画像濃度ムラ(画像濃度や地肌かぶりの高い箇所)や、現像ローラのピッチムラが発生し、画像欠陥が生じる。
【0005】
現像ギャップを一定に保持するための先行技術として、例えば特許文献1には、現像スリーブ(現像ローラに相当)の両端に設けたスペーサコロ表面に付着するトナーをスクレーパーで掻き取ってクリーニングすることが開示されている。また、特許文献2には、現像ローラの両端に設けたシート状のスペーサの外周面にシールを設け、感光体3に現像ローラが圧接されることに起因する撓みを抑制することが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−144803号公報
【特許文献2】特開2006−106260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ところで、現像装置の周辺に配されている上記帯電装置においては、窒素酸化物(NOx)などの放電生成物が生成される。具体的には、帯電装置から放出される電子の放電に伴うエネルギーによって、大気中に存在する窒素分子(N)が窒素原子(N)に解離し、それが酸素分子(O)と結合することで窒素酸化物(二酸化窒素:NO)が生成される。さらに、この窒素酸化物が帯電ローラの雰囲気中のHO(水分)と反応して硝酸HNOを生成する。
【0008】
より具体的には、窒素酸化物NOxが一酸化窒素NOの場合には、
2NO + O→ 2NO
また、二酸化窒素NOの場合は、
3NO+ HO → 2HNO + NO、(但し、NOは再び最初の反応に戻る)
といった反応が起こる。
【0009】
このような反応で生成された硝酸HNOが感光体に付着すると、異常画像を引き起こす。特に、感光体として有機感光体(OPC)が用いられた場合、上記のような放電生成物によって、白抜けや潜像流れなどの画像欠陥が生じやすい。
【0010】
そして、硝酸は、感光体だけでなく、感光体の周囲に配置された上記現像装置に対しても悪影響を及ぼし、画像濃度ムラや、現像ローラのピッチムラを発生させることがわかった。これは、現像ローラのスペーサが硝酸にて劣化されてしまい、適切な現像ギャップを維持できなくなるためである。
【0011】
つまり、スペーサに硝酸が付着すると、スペーサの表面に、軟化やたわみ、膨張等による変形が生じる。このような変形が生じると、現像ギャップを長期に亘り一定に維持し続けることができなくなる。その結果、画像濃度ムラや、現像ローラのピッチムラが発生してしまい、画像欠陥が生じる。硝酸によるスペーサの劣化は、スペーサの材質として使用される、POM、ポリエチレン、ウレタンゴム、或いはNBRゴムの何れにおいても生じることがわかっている。なお、スペーサの材質として、不純物成分を取り除いた超高純度(Ultra High Purity: UHP)の合金である、無粒界腐食型ステンレス鋼、高クロム-タングステン-シリコン系ニッケル基合金、ニオブ系合金などを使用した場合には、硝酸によるスペーサの劣化は発生しないと考えられるが、これらの材料は非常に高価であるため、採用することは困難である。
【0012】
このような帯電装置より放出される放電生成物(NOx)を起因とする現像ローラのスペーサの劣化は、小型の画像形成装置でも、大型の画像形成装置でも同様に起こる。つまり、小型の画像形成装置であれば、放電生成物を放出する帯電装置と現像ローラとの距離が近いため、生成された硝酸がスペーサに付着しやすい。また、大型の画像形成装置であれば、放電生成物を放出する帯電装置と現像ローラとの距離は遠くなるが、大型である分、帯電装置から放出される放電生成物の量が多くなり、結局は、生成された硝酸がスペーサに付着しやすい。
【0013】
そして、上述した特許文献1,2の従来技術では、放電生成物(NOx)を起因とする現像ローラのスペーサの劣化を抑制することはできない。
【0014】
つまり、特許文献1に記載された技術は、現像ギャップを形成するためのスペーサの表面に付着したトナーが原因となる現像ギャップの問題には有効であるが、スペーサに付着した硝酸を除去することはできない。
【0015】
同様に、特許文献2に記載された技術は、感光体にスペーサを押圧する力が原因で現像ローラが撓むことによる現像ギャップの問題には有効であるが、スペーサに付着した硝酸による撓みを防止できるものではない。
【0016】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであって、その目的は、現像ローラのスペーサの硝酸による劣化を防止して、長期に亘って良好な画像を得ることができる現像装置、及びそれを備えた画像形成装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の現像装置は、上記課題を解決するために、現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体表面の長手方向端部に設けられた、現像剤担持体から現像剤が供給される像担持体と前記現像剤担持体との間隔を一定に保持するスペーサとを有する現像装置において、前記スペーサの表面であって、少なくとも前記像担持体と接する外周面に、放電に伴い発生する放電生成物を吸着除去する吸着層が形成されていることを特徴としている。
【0018】
上記構成によれば、現像剤担持体のスペーサの少なくとも像担持体と接する外周面に、放電により発生した放電生成物を吸着除去する吸着層が形成されているので、放電生成物を効果的に吸着することができ、放電生成物によるスペーサの劣化を抑制できる。
【0019】
これにより、長期に亘って適切な現像ギャップを維持し、濃度ムラ及び現像剤担持体の回転周期に依存したピッチムラのない高品位な画像を提供することができる。
【0020】
本発明の現像装置は、さらに、前記スペーサにおける全表面に前記吸着層が形成されていることが好ましい。スペーサの外周面は像担持体と接触するため、スペーサの外周面の劣化は、特に現像ギャップに影響を与え易い。したがって、少なくともスペーサの外周面に吸着層を設ける構成で、効果は得られるが、より充分な効果を得るためには、スペーサの全表面に吸着層を形成することである。これにより、スペーサ全体の劣化を防止することができる。
【0021】
前記吸着層は、ゼオライトで形成されていることが好ましく、また、その場合の吸着層の厚みとしては、40μm以上100μm以下であることが好ましい。40μm未満であると、現像剤担持体の回転に伴ってスペーサ表面のゼオライト層が研磨され、長期に渡って放電生成物の吸着効果が得られない。また、100μm超であると、長期に渡って吸着効果は持続するものの、コストアップとなり、近年の小型化、低コストの画像形成装置には向かない。
【0022】
また、本発明の画像形成装置は、上記現像装置を備えたことを特徴としている。上述したように、本発明の現像装置は、長期に亘って現像ギャップを維持できるので、このような現像装置を搭載してなる画像形成装置は、長期に亘って高品位な画像を提供することができる。
【発明の効果】
【0023】
以上のように、本発明の現像装置、或いは画像形成装置によれば、長期に亘って現像ギャップを維持できるので、長期に亘って高品位な画像を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】本発明の実施の一形態である画像形成装置の構成を示す図である。
【図2】現像装置を含むプロセスカートリッジの断面図である。
【図3】現像装置が備える現像ローラを感光体と共に示した概観図である。
【図4】現像ローラにおけるスリーブに取り付けられたスペーサの要部を示す図である。
【図5】比較例の現像ローラのスペーサの図である。
【図6】窒素酸化物に起因する濃度ムラによる画像欠陥、及び現像ローラのピッチムラによる画像欠陥の評価の結果を示す図である。
【図7】窒素酸化物に起因する濃度ムラによる画像欠陥を示すサンプル図である。
【図8】窒素酸化物に起因する現像ローラのピッチムラによる画像欠陥を示すサンプル図である。
【図9】窒素酸化物に起因する濃度ムラによる画像欠陥、及び現像ローラのピッチムラによる画像欠陥が現れていない正常な画像のサンプル図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、添付図面を参照しながら、本発明の現像装置及び該現像装置を備えた画像形成装置に係る好適な実施の形態について説明する。
【0026】
図1は、本発明の実施の一形態である画像形成装置の構成を示す図で、図中、100は画像形成装置を示す。画像形成装置100は、外部から伝達された画像データまたは原稿読み取りにより得られた画像データに基づいて、記録媒体である記録用紙に対して多色または単色の画像を形成する装置であり、装置本体110と、自動原稿処理装置120とを含んで構成されている。
【0027】
装置本体110は、露光ユニット1と、4つの画像形成部Pと、中間転写ベルト61を含む中間転写ユニット6と、定着ユニット7と、内部給紙ユニット81と、手差し給紙ユニット82と、排紙ユニット91とを含む。装置本体110の上部には、原稿が載置される透明ガラスからなる原稿載置台92が設けられ、原稿載置台92の上側には自動原稿処理装置120が取り付けられている。自動原稿処理装置120は、原稿載置台92上に自動で原稿を搬送する。また自動原稿処理装置120は矢印M方向に回動自在に構成され、原稿載置台92の上を開放することにより原稿を手置きで置くことができるようになっている。
【0028】
画像形成装置100は、ブラック(K)、ならびにカラー画像を色分解して得られる減法混色の3原色であるシアン(C)、マゼンタ(M)およびイエロー(Y)の4色の各色相に対応した画像データを用いて、画像形成部Pにおいて画像形成を行う。4つの画像形成部Pは、中間転写ベルト61の移動方向(回転方向)に一列に配置されている。
【0029】
4つの画像形成部Pは、それぞれ同様の構成であり、帯電装置5、感光体3、クリーナユニット4、および本発明に係る現像装置2を有している。感光体3は像担持体であり、この周囲に、現像装置2、クリーナユニット4および帯電装置5が配置される。また、4つの画像形成部Pの各現像装置2には、イエロー(Y)、マゼンタ(M)、シアン(C)、ブラック(K)の各色トナー(現像剤)が収容されている。本実施形態では、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤を用いた二成分現像方式を例示する。なお、一成分現像方式であってもよい。
感光体3は、円筒状のドラム形状を呈し、図示しない駆動手段によって軸線まわりに回転駆動される。感光体3は、円筒状の導電性基体、および、導電性基体の表面に設けられる感光層を有する。
【0030】
帯電装置5は、例えばスコロトロン型の放電器を備え、該放電器が感光体3の軸線方向に沿って感光体3に近接して配置される。そして、放電器より感光体3の表面を所定の電位に均一に帯電させる。なお、図1では非接触式の帯電装置5を例示したが、帯電ローラを備えた接触式の帯電装置であってもよい。
【0031】
露光ユニット1は、レーザ出射部および反射ミラーなどを備えたレーザスキャニングユニット(LSU)である。露光ユニット1は、自動原稿処理装置120または外部から伝達された画像データに応じて変調されるレーザ光を出射するレーザ出射部と、レーザ出射部から出射されるレーザ光を主走査方向に偏向させるポリゴンミラーと、ポリゴンミラーにより主走査方向に偏向されるレーザ光を感光体3の表面に結像するように収束する収束レンズと、収束レンズにより収束されるレーザ光を反射する反射ミラーとを含んで構成される。
【0032】
レーザ出射部から出射されるレーザ光は、ポリゴンミラーにより偏向され、さらに収束レンズにより収束され、反射ミラーによって反射されて、所定の電位および極性に帯電する感光体3の表面に照射され、画像データに応じた静電潜像が感光体3に形成される。なお、露光ユニット1としては、レーザスキャニングユニット(LSU)の他、EL(Electro Luminescence)やLED(Light Emitting Diode)などの発光素子をアレイ状に並べた書込み装置(例えば、書込みヘッド)を使用することもできる。
【0033】
現像装置2は、感光体3に対向しかつ後述する現像ローラのスペーサが感光体3に圧接するように設けられ、感光体3の表面に形成される静電潜像に現像剤であるトナーを供給して、静電潜像を顕像化させるものである。
【0034】
クリーナユニット4は、現像・画像転写後における感光体3の表面に残留したトナーを、除去・回収する。中間転写ユニット6は、感光体3の上方に配置され、中間転写ベルト61、中間転写ベルト駆動ローラ62、中間転写ベルト従動ローラ63、一次転写ローラ64、および中間転写ベルトクリーニングユニット65を備えている。
【0035】
中間転写ベルト61は、中間転写ベルト駆動ローラ62と中間転写ベルト従動ローラ63との間に張架されてループ状の移動経路を形成している無端状のベルト部材であり、その厚みは100μm〜150μm程度である。この中間転写ベルト61を挟んで感光体3に対向する位置に、一次転写ローラ64が配置されている。中間転写ベルト61が感光体3に対向する位置が一次転写位置である。
【0036】
一次転写ローラ64には、感光体3の表面に担持されたトナー像を中間転写ベルト61上に転写するために、トナーの帯電極性と逆極性の一次転写バイアスが定電圧制御によって印加される。これによって、感光体3に形成された各色相のトナー像は中間転写ベルト61の外周面に順次重ねて転写され、中間転写ベルト61の外周面にフルカラーのトナー像が形成される。但し、イエロー、マゼンタ、シアンおよびブラックの色相の一部のみの画像データが入力された場合には、4つの画像形成部Pの各感光体3のうち、入力された画像データの色相に対応する一部のみにおいて静電潜像およびトナー像の形成が行われる。
【0037】
例えば、モノクロ画像形成時には、ブラックの色相に対応した感光体3のみにおいて静電潜像の形成およびトナー像の形成が行われ、中間転写ベルト61の外周面にはブラックのトナー像のみが転写される。一次転写ローラ64は、直径8〜10mmの金属(例えば、ステンレス)を素材とする軸の表面を導電性の弾性材(例えば、EPDM:エチレンプロピレン共重合ゴム、発泡ウレタンなど)により被覆して構成されており、導電性の弾性材によって中間転写ベルト61に均一に高電圧を印加する。
【0038】
一次転写ローラ64によって中間転写ベルト61の外周面に転写されたトナー像は、中間転写ベルト61の回転によって、二次転写ローラ10との対向位置である二次転写位置に搬送される。
【0039】
二次転写ローラ10は、画像形成時において、内周面が中間転写ベルト駆動ローラ62の周面に接触する中間転写ベルト61の外周面に所定のニップ圧で圧接されている。内部給紙ユニット81または手差し給紙ユニット82から給紙された記録用紙が二次転写ローラ10と中間転写ベルト61との間を通過する際に、二次転写ローラ10にトナーの帯電極性とは逆極性の高電圧が印加される。これによって、中間転写ベルト61の外周面から記録用紙の表面にトナー像が転写される。
【0040】
感光体3の一部または全部から中間転写ベルト61に付着したトナーのうち記録用紙上に転写されずに中間転写ベルト61上に残存したトナーは、次工程での混色を防止するために、中間転写ベルトクリーニングユニット65によって除去・回収される。中間転写ベルトクリーニングユニット65には、中間転写ベルト61に当接してトナーを除去するクリーニングブレードが備えられている。
【0041】
定着ユニット7は、ヒートローラ71および加圧ローラ72を有する。トナー像が転写された記録用紙は、定着ユニット7へ導かれ、ヒートローラ71と加圧ローラ72との間を通過することで加熱および加圧される。これによって、トナー像が、記録用紙の表面に堅牢に定着する。なお、定着ユニット7においてヒートローラ71には、外部からヒートローラ71を加熱する外部定着ベルト73が接触して設けられ、図示しない温度検出器によって検出される温度データに基づいて、ヒートローラ71が所定の定着温度となるように制御される。トナー像が定着した記録用紙は、搬送ローラ12bによって排紙ユニット91上へ排出される。
【0042】
画像形成装置100には、内部給紙ユニット81および手差し給紙ユニット82に収容されている記録用紙を二次転写ローラ10と中間転写ベルト61との間および定着ユニット7を経由して排紙ユニット91へ送るための略垂直方向に延びる用紙搬送路Sが設けられている。用紙搬送路Sの近傍には、ピックアップローラ11a,11b、複数の搬送ローラ12a〜12d、レジストローラ13が配置されている。
【0043】
画像形成装置100において、内部給紙ユニット81および手差し給紙ユニット82から搬送される記録用紙は、用紙搬送路Sの搬送ローラ12aによってレジストローラ13まで搬送され、レジストローラ13によって所定のタイミングで二次転写ローラ10に搬送されて、二次転写ローラ10と中間転写ベルト61との間を通過したときにトナー像が転写される。トナー像が転写された記録用紙は、定着ユニット7を通過することによってトナー像が熱で溶融・固着され、搬送ローラ12bを経て排紙ユニット91上に排出される。
【0044】
また、画像形成装置100において、記録用紙の両面に画像を形成する両面印字の場合には、片面印字が終了し、定着ユニット7を通過した記録用紙は、その後端が搬送ローラ12bで把持されたときに、搬送ローラ12bが逆回転することによって記録用紙を搬送ローラ12c,12dに導く。搬送ローラ12c、12dに導かれた記録用紙は、レジストローラ13、二次転写ローラ10および定着ユニット7を通過し、裏面の印字が行われて、排紙ユニット91に排出される。
【0045】
図2は、現像装置2を含むプロセスカートリッジ50の断面図である。
【0046】
画像形成部Pを構成するプロセスカートリッジ50は、現像装置2、帯電装置5、感光体3、及びクリーナユニット4を含んでいる。現像装置2は、感光体3に対向して配され、感光体3表面の静電潜像にトナーを供給するマグネットローラよりなる現像ローラ(現像剤担持体)20と、現像装置2内部のトナーを撹拌する撹拌部材25・25とが配設されている。また、現像ローラ20の外周部であって、現像ローラ20と感光体3とが対向する位置よりも現像ローラ20の回転方向上流には、現像ローラ20表面に担持されて感光体3との対向位置へと搬送されるトナー層(磁気ブラシ)の厚さを規制するするドクターブレード23が配設されている。
【0047】
帯電装置5は、現像装置2に対して、感光体3の回転方向に上流側に配され、さらにその上流側に、クリーナユニット4が配設されている。クリーナユニット4は、感光体3の表面に先端が当接され、感光体3表面に付着した残留トナーを掻き取るクリーニングブレード40を備えている。
【0048】
図3は、現像装置2が備える現像ローラ20を感光体3と共に示した概観図である。前述したように、現像装置2は、感光体3表面の静電潜像にトナーを供給する現像ローラ20を備えており、この現像ローラ20が、図示しない軸受部にて、感光体3の軸線方向に沿って感光体3の表面に圧接配置されている。
【0049】
本実施形態の現像ローラ20は、上述したように、マグネットローラであるので、非磁性体からなる円筒状のスリーブ20Aと、スリーブ20Aの内側に配設された、図示しない磁界発生手段(磁極)とを備える。現像ローラ20の両端部には、現像ローラ軸22・22が設けられており、これら現像ローラ軸22・22が上記軸受部に受けられている。
【0050】
現像ローラ軸22・22のうち、スリーブ20Aと一体に動く方の現像ローラ軸22に、図示しないモーターやギア等からなる駆動手段が接続されている。また、もう一方の現像ローラ軸22は、スリーブ20Aの内部にまで伸びており、この現像ローラ20の周囲に磁界発生手段が取り付けられ、固定されている。これにより、現像ローラ20は、磁界発生手段は回転せず、その周囲のスリーブ20Aのみが、表面に磁気ブラシを形成した状態で、図2に示した矢印方向に回転駆動される。
【0051】
上記スリーブ20Aの材質は特に限定されるものではないが、例えば、非磁性のステンレス(SUS)、アルミニウム等の金属材料などを用いることができる。また、スリーブ20Aの表面(外周面)に導電性ゴム弾性材料からなるゴム層を設けてもよい。現像ローラ軸22・22の材質も特に限定されるものではないが、例えばステンレス(SUS)などの金属が用いられる。
【0052】
そして、スリーブ20Aの外周面であって、長手方向両端部には、スリーブ20A(現像ローラ)と感光体3との間隔を一定に保持するスペーサ21・21が配設されている。スペーサ21を介して現像ローラ20が感光体3に圧接されることで、感光体3とスリーブ20A(現像ローラ20)との間に、所定寸法の現像ギャップが形成される。なお、スペーサ21・21は、感光体3の画像領域外に圧接される。スペーサ21・21は、スリーブ20Aの外周面に固定されており、スリーブ20Aの回転駆動によりスリーブ20Aと一体的に回転駆動される。このとき、スペーサ21・21は、スペーサ21・21の外周面が感光体3表面を擦るように回転する。そして、スペーサ21・21が設けられることで、スリーブ20Aの外周面が感光体3表面に接触することはなく、スリーブ20Aと感光体3との間には、スペーサ21・21の肉厚(径方向の厚み)に応じた所定の寸法よりなる現像ギャップが確保される。
【0053】
上記スペーサ21の材質としては、例えば、POM(ポリアセタール)、ポリエチレン、ウレタンゴム、或いはNBRゴム(ニトリルゴム)が好ましい。プロセス速度が360mm/sec以上の高速機では、スペーサ21の耐磨耗性が重要となるので、POMやポリエチレンが良好な耐久性を持つ材質が好ましい。また、プロセス速度が200mm/sec未満の低速機では、POMやポリエチレン以外に、ウレタンゴム、NBRゴムを用いることができる。なお、材質はこれらに限定されるものではなく、その他のものを使用してもよい。
【0054】
図4は、現像ローラ20におけるスリーブ20Aに取り付けられた上記スペーサ21・21の要部を示す図である。
【0055】
本発明の主たる特徴部分は、現像ギャップを長期に亘って一定寸法に維持し、現像ローラの回転を円滑にし、画像濃度ムラや、現像ローラのピッチムラのない高品位な画像を提供することにある。このための構成として、現像装置2は、現像ローラ20のスペーサ21・21の少なくとも感光体3表面を摺動する外周面21aに、帯電装置5が感光体3を帯電させるときに発生する放電生成物を吸着除去する吸着層27を形成しており、本実施形態の現像装置2では、現像ローラ20のスペーサ21・21の全表面に、吸着層27(図中、ハッチング部分)を形成している。
【0056】
スペーサ21・21の外周面21aは、感光体3表面を摺動する面であるので、この面の劣化が、現像ギャップに最も影響する。そのため、少なくとも、外周面21aに吸着層27を形成してこの面を保護することで、現像ギャップを効果的に維持できる。
【0057】
なお、最も好ましくは、スペーサ21・21の全表面に被覆するように吸着層27を形成することであるが、スリーブ20Aに接着に影響が有る場合は、スペーサ21・21の内周面を除く、露出されている面全体に吸着層27を設けるようにしてもよい。
【0058】
上記の吸着層27としては、例えば、ゼオライト、シリカアルミナ系吸着剤、シリカゲル、アルミナゲル、活性アルミナなどを挙げることができるが、特に吸着性能に優れたゼオライトを用いることが望ましい。このゼオライトは、TO四面体(T=Si,Al)が頂点の酸素(O)原子を共有した三次元ネットワークの構造を持ち、構造を壊さずに脱着が可能なゼオライト水と交換可能な陽イオンとを含むアルミノケイ酸塩質の結晶材料であり、結晶中に微細な細孔を有する。
【0059】
上記のようにして、現像ローラ20のスペーサ21・21の少なくとも外周面21a、好ましくは露出した面全面に、より好ましくは全表面に、ゼオライト等の吸着層を設けることにより、現像装置2における放電により発生し、感光体近傍の空気中に浮遊する窒素酸化物(NOx)を効果的に吸着除去することができる。また、窒素酸化物(NOx)が除去されることで、硝酸の生成を抑えることができるため、スペーサ21・21の露出している表面への硝酸の付着を減少させることができる。これにより、スペーサ21・21の外周面と感光体3との摺動性を良好に維持し、画像濃度ムラや、現像ローラのピッチムラのない高品位な画像を提供することにある。
【0060】
なお、ゼオライトからなる吸着層27を、スペーサ21・21の表面に形成する方法としては、例えば、トリエチレングリコール(TEG)中にゼオライト粒子が分散されたペースト状の分散液を用いて塗布により形成する方法が知られている(例えば、「古島 健,清水 康嗣,伊東 章、Journal of Japan Petroleum Institute Vol.47,Vol.6 2004 ゼオライト混入トリエチレングリコール液体膜の除湿性能」を参照)。
【0061】
ここで、スペーサ21の全表面に、酸化アルミ微粒子(アルミナ:Al)層をスパッタリングにより形成した後に、この多孔質基材となるAl層上に、ゼオライトからなる吸着層27を形成する。このゼオライト層の形成に関しては、例えば、ゼオライト種結晶分散液(スラリー)をAl(多孔質基材)層上にコーティング(塗布)し、水熱合成などで成長させることで行うことができる。
【0062】
より具体的には、例えば、ZSM−5型のゼオライト粉末を水等の分散媒に分散して得られた種結晶スラリーを、ゼオライト膜を成膜しようとする多孔質基材の表面に塗布する。塗布の方法は特に限定するものではないが、例えば、種結晶スラリー中に多孔質基材を浸漬するディップコート法などを好適に用いることができる。
【0063】
また、ゼオライトの水熱合成は、具体的には、種結晶を付着させた多孔質基材を、少なくとも構造規定剤、水、及び珪素源を含有するゼオライト合成用原料溶液中に浸漬した状態で加熱処理することにより行う。
【0064】
種結晶を水熱合成により成長させ成膜されてなるゼオライト膜は、通常、酸素含有雰囲気下で熱処理が施されてから各種用途に使用される。この熱処理によって、合成されたゼオライト膜中に残存する構造規定剤を焼失させることができる。熱処理の条件は、構造規定剤の種類等により異なるが、例えば、構造規定剤が1-アダマンタンアミンである場合
、すなわち、合成すべきゼオライトがDDR型ゼオライトである場合、大気雰囲気下、650〜900℃の温度で、1〜10時間、加熱することによって、合成されたゼオライト中に残存する1-アダマンタンアミンを焼失させることができる。
【0065】
上記構成では、現像ローラ20としてマグネットローラを例示したが、磁界発生手段を備えない現像ローラであってもよい。また、本発明が範疇とする現像装置としては、トナーとキャリアとからなる二成分現像剤に対応した二成分現像方式のものでも、非磁性或いは磁性トナーの一成分現像剤に対応した一成分現像方式のものでもよい。
【0066】
ここで、ゼオライトからなる吸着層27の厚みは、40μm以上100μm以下とすることが望ましい。これについて、以下の図6に示す評価結果に基づいて説明する。
<画像欠陥の評価>
本実施例では、吸着層を設けない構成を含め、吸着層の膜厚が異なる10種類(8つの実施例と2つの比較例)のスペーサを備えた現像装置2を作製し、各現像装置2を画像形成装置100に搭載した。
【0067】
現像装置2の構成は、図3に示した通りであり、ゼオライトからなる吸着層(ゼオライト層)を、現像ローラ20のスペーサ21・21の全表面に形成した。スペーサ21・21の肉厚は0.5mm(現像ギャップ)に設定した。また、スペーサ21・21の材質はPOMとした。
【0068】
画像形成装置100としては、シャープ製 MX−2301FNを改造して二成分現像剤を用いた。ここで、現像ローラ20はφ20mmでローレット(溝)スリーブ、スペーサ21の直径はφ21mm、感光体3の直径はφ30mmとした。
【0069】
このような画像形成装置100における記録用紙に対する画像形成動作を、硝酸が生成され易い温度35℃、湿度85%の高温高湿環境条件下で、10万枚の耐久試験を行った。
【0070】
10万枚連続通紙後に得られる記録用紙を用いて、コピー画像における画像濃度ムラと、現像ローラの回転周期に同期したピッチムラの発生状態を目視評価した。
【0071】
画像濃度ムラは、現像ローラ両端の各スペーサの劣化状態が均一ではないため、現像ローラ軸方向の画像濃度が均一ではなくなる。図7に、画像濃度ムラの発生した画像サンプルを示す。現像ローラのスペーサがたわんで変形することにより、現像ギャップが小さくなる。現像ギャップが小さくなった部分では、現像電界強度が大きくなり、画像濃度及び地肌カブリが増加する。また、劣化状態によって、1つのスペーサ内の外径も均一ではなくなるため、現像ローラの回転周期に同期してピッチムラが発生する。図8に、ピッチムラの発生した画像サンプルを示す。また、図9に、画像濃度ムラもピッチムラも発生していない正常な画像サンプルを示す。
【0072】
図6の評価結果における、画像濃度ムラの◎、○、△、×の意味は次の通りである。
◎:画像濃度ムラによる画像欠陥の発生なし。
○:淡い縦黒スジ(幅10mm程度)が1〜2本発生。
△:濃い縦黒スジ(幅20mm程度)が発生。
×:図7のような顕著な高濃度部及び地肌かぶりが発生。
【0073】
図6の評価結果におけるピッチムラの◎、○、△、×の意味は次の通りである。
◎:ピッチムラによる画像欠陥の発生なし。
○:淡い横白スジ(幅3mm程度が1〜2本発生)。
△:明らかに横白スジ(幅5mm程度)が発生。
×:図8のような顕著な横白スジが発生。
【0074】
図6において、比較例1(30μm)のようにゼオライト層の厚さが40μm未満であると、窒素酸化物(NOx)の吸着効果はある程度あるものの、現像ローラ20の回転に伴って、ゼオライト層が研磨され、10万枚通紙後は吸着効果を維持することはできないものと考えられる。また、図5に、比較例2(0μm)の現像ローラのスペーサ201の状態を示す。スペーサ201が劣化して外周面が波打つように劣化していた。また、実施例8(150μm)のようにゼオライト層の厚みが100μmを超えると、長期に渡って吸着効果を持続させることができると考えられるが、ゼオライトの使用量が増大するため、コストアップとなる。
【0075】
これらの評価結果から、大きなコストをかけることなく、10万枚以上の長期に渡って吸着効果を持続可能とするためには、ゼオライト層の厚みを、40μm以上100μm以下とすることが望ましく、より望ましい範囲は、50μm以上100μm以下であると言える。
【0076】
本発明は上述した各実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能であり、異なる実施形態にそれぞれ開示された技術的手段を適宜組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【符号の説明】
【0077】
2 現像装置
3 感光体(像担持体)
4 クリーナユニット
5 帯電装置
20 現像ローラ(現像剤担持体)
20A スリーブ
21 スペーサ
21a 外周面
22 現像ローラ軸
27 吸着層
100 画像形成装置
110 装置本体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体表面の長手方向端部に設けられた、現像剤担持体から現像剤が供給される像担持体と前記現像剤担持体との間隔を一定に保持するスペーサとを有する現像装置において、
前記スペーサの表面であって、少なくとも前記像担持体と接する外周面に、放電に伴い発生する放電生成物を吸着除去する吸着層が形成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記スペーサにおける全表面に前記吸着層が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記吸着層は、ゼオライトで形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記吸着層の厚みは、40μm以上100μm以下であることを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記スペーサの材質が、POM、ポリエチレン、ウレタンゴム、或いはNBRゴムの何れかであることを特徴とする請求項1〜4の何れか1項に記載の現像装置。
【請求項6】
請求項1〜5に記載の現像装置を備えたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2011−232456(P2011−232456A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−101232(P2010−101232)
【出願日】平成22年4月26日(2010.4.26)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】