説明

現像装置及び画像形成装置

【課題】トナーとキャリアを含む現像剤を循環搬送する場合においても、現像剤の温度を低く維持すること。
【解決手段】トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、現像剤を担持する現像剤担持体と現像剤を撹拌搬送する回転可能な第一撹拌部材と、を備えた、前記現像容器に形成される現像室と、前記現像室との間で現像剤を循環させる経路が略水平に構成され現像剤を撹拌搬送する回転可能な第二撹拌部材を備えた、前記現像容器に形成される撹拌室と、少なくともなーを含む現像剤を補給するため、前記現像容器に形成される現像剤補給口と、冷却風の吸気口及び排気口を設け、前記第一撹拌部材及び前記第二撹拌部材の軸方向に延設され、前記現像容器に当接配置される風路と、を有する現像装置において、前記吸気口と、前記現像剤補給口とが、前記現像剤担持体の軸方向において、それぞれ反対側に配置されていることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、レーザービームプリンタや複写機等の電子写真画像形成装置等に使用される現像装置及び画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像装置においては、撹拌等によって現像剤の温度が上昇すると該現像剤の帯電性が劣化し、画像濃度が低下する等の画像不良が発生する。特に、現像剤がその融点以上に昇温すると、現像剤が溶融して現像ローラや現像ブレードに融着し、現像ローラ上の現像剤コート量が不均一となって濃度ムラや画像スジ等の画像不良が発生するとともに、現像ローラ等の回転負荷が増大するという問題が発生する。
【0003】
そこで、従来から現像装置の近傍に冷却風の流れを形成し、この冷却風によって現像装置全体を冷却する方法が採用されている(特許文献1)。
【0004】
また、従来の電子写真方式の画像形成装置、その中でも特に有彩色の画像形成を行う多色画像形成装置において、非磁性トナーと磁性キャリアを混合して現像剤として使用する二成分現像方式が広く利用されている。二成分現像方式は現在提案されている他の現像方式と比較して、画質の安定性、装置の耐久性などの長所を備えている一方、長期の耐久による現像剤の劣化、特にキャリアの劣化が不可避であった。このため、多色画像形成装置の長期使用に伴い現像剤交換という作業が必要となり、そのため、サービスコストやランニングコストの増大をもたらしていた。
【0005】
このような問題を解決する方法が従来より提案されている。例えば、現像装置に付属させて、回動型現像体に交換可能な現像剤補給カートリッジを装填し、トナーとキャリアを含む現像剤の補給と現像剤の排出を行う方法がある(特許文献2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2008−129562
【特許文献2】特開平6−308829
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
トナーとキャリアを含む現像剤を現像装置の現像容器内で循環させると、現像剤が摩擦等により自己昇温する。このため、従来の冷却方法では、冷却性能が不足するという問題があった。
【0008】
本発明の目的は、トナーとキャリアを含む現像剤を循環搬送する場合においても、現像剤の温度を低く維持することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するための本発明の代表的な特徴は、トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、現像剤を担持する現像剤担持体と現像剤を撹拌搬送する回転可能な第一撹拌部材と、を備えた、前記現像容器に形成される現像室と、前記現像室との間で現像剤を循環させる経路が略水平に構成され現像剤を撹拌搬送する回転可能な第二撹拌部材を備えた、前記現像容器に形成される撹拌室と、少なくともトナーを含む現像剤を補給するため、前記現像容器に形成される現像剤補給口と、冷却風の吸気口及び排気口を設け、前記第一撹拌部材及び前記第二撹拌部材の軸方向に延設され、前記現像容器に当接配置される風路と、を有する現像装置において、前記吸気口と、前記現像剤補給口とが、前記現像剤担持体の軸方向において、それぞれ反対側に配置されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0010】
上記構成により、トナーとキャリアを含む現像剤を循環搬送する場合においても、現像剤の温度を低く維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】画像形成装置の説明図。
【図2】現像装置の断面図。
【図3】現像装置の水平断面図。
【図4】現像装置の上方右前方からの斜視図。
【図5】現像装置の下方右後方からの斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は画像形成装置の説明図であり、シートの搬送方向に沿った断面図である。本実施形態の画像形成装置は、その一例としてカラー電子写真プリンタとする。本実施形態では、カラー電子写真プリンタを単に「プリンタ」という。
【0013】
(画像形成装置)
図1に示すプリンタ1には、4つの画像形成ステーションである画像形成部10(10a、10b、10c、10d)が並設される。各画像ステーションの構成は同一である。このため、以降の説明においては、適宜、図面又は明細書の記載において、a〜dの添え字を省略して説明する。
【0014】
また、プリンタ1には、給送ユニット20、中間転写ユニット30、定着ユニット40及び制御ユニット(不図示)から構成される。次に、個々のユニットについて詳しく説明する。
【0015】
画像形成部10は、像担持体としての感光体ドラム11(11a、11b、11c、11d)がその中心で軸支され、回転駆動される。各画像形成部10には、光学系13(13a、13b、13c、13d)により、記録画像信号に応じて変調した光線を、感光体ドラム11上に露光させる。光線としては、例えば、レーザービームが用いられる。これによって、記録画像信号に応じた静電潜像が感光体ドラム11上に形成される。
【0016】
さらに、イエロー、シアン、マゼンタ、ブラックといった4色の現像剤をそれぞれ収納した現像装置14(14a〜14d)によって、上記静電潜像を顕像化する。顕像化された可視画像を一次転写領域T(Ta、Tb、Tc、Td)において、中間転写ベルト31(中間転写体)に転写する。
【0017】
現像装置14a〜14dに現像剤を与えるため、現像装置14と連結したトナーカートリッジ16(16a、16b、16c、16d)が配設される。図においては、画像形成部10と独立しているように描かれているが、トナーカートリッジ16と現像装置14とは連結されており、不図示の搬送路を通じてトナーカートリッジ16から現像装置14へトナーが供給される。
【0018】
感光体ドラム11において、画像形成部10の一次転写領域Tよりも下流側には、クリーニング装置15(15a、15b、15c、15d)が配設される。クリーニング装置15によって、転写材に転写されずに感光体ドラム11上に残されたトナーを掻き落とし、ドラム表面の清掃を行う。
【0019】
以上に示したプロセスにより、各トナーによる画像形成が順次行われる。
【0020】
次に、画像形成動作に即して説明を加える。
【0021】
画像形成動作開始信号が発せられると、まず、記録画像の大きさに適合した転写材Pが収納されているカセット21が選択される。そして、カセット21に収納される最上面の転写材Pに当接するピックアップローラ22により、カセット21から転写材Pが一枚ずつ送り出される。
【0022】
給送ローラ対23によって転写材Pが給送ガイド24の間を案内されてレジストローラ対25まで搬送される。その時のレジストローラ対25は停止されており、紙先端はレジストローラ対25のニップ部Nに突き当たる。
【0023】
その後、画像形成部10が画像の形成を開始するタイミングに合わせて、レジストローラ対25は回転を始める。レジストローラ対25の回転開始時期は、転写材Pと、画像形成部10より中間転写ベルト31上に一次転写されたトナー画像とが、二次転写領域Teにおいてちょうど一致するようにそのタイミングが設定されている。
【0024】
一方、画像形成部10では、画像形成動作開始信号が発せられると、前述したプロセスにより中間転写ベルト31の回転方向において一番上流にある感光体ドラム11(11a)上に形成されたトナー画像が、中間転写ベルト31に一次転写される。この一次転写される位置を一次転写領域T(Ta)という。
【0025】
一次転写されたトナー像は次の一次転写領域T(Tb)まで搬送される。そこでは各画像形成部間をトナー像が搬送される時間だけ遅延して画像形成が行われており、前画像の上にレジストを合わせて次のトナー像が転写される事になる。以下も同様の工程が繰り返され、結局4色のトナー像が中間転写ベルト31上において一次転写される。
【0026】
その後、転写材Pが二次転写領域Teに進入して中間転写ベルト31に接触すると、転写材Pの通過タイミングに合わせて、二次転写ローラ36に高電圧を印加させる。そして前述したプロセスにより中間転写ベルト31上に形成された4色のトナー画像が転写材Pの表面に転写される。
【0027】
その後、転写材Pは搬送ガイド43によって定着ローラ対41のニップ部まで正確に案内される。そして定着ローラ対41の熱及びニップの圧力によってトナー画像が転写材P表面に定着される。その後、排出ローラ44及び排出ローラ45により搬送され、転写材Pはプリンタ1の機外に排出される。尚、排出搬送ガイド46を切り替えることで、上方にある排出トレイ47に転写材Pを排出することも可能である。
【0028】
また単色画像を得る場合は、特定の画像形成部10(例えば10d)より中間転写ベルト31上に単色の可視画像が一次転写され、以下フルカラー画像を形成する場合と同様のプロセスを経て、単色画像を得る。
【0029】
(現像装置)
次に、現像装置14について図2乃至図5を用いて説明する。図2は現像装置の断面図である。図3は現像装置の水平断面図である。図4は現像装置の上方右前方からの斜視図である。図5は現像装置の下方右後方からの斜視図である。
【0030】
図2に示すように、現像装置14は、内部に現像剤を収容する現像容器100と、感光体ドラム11に対向する開口部に現像剤担持体101を有する。これにより、現像容器100に収容された現像剤を、現像剤担持体101によって感光体ドラム11に供給する。
【0031】
現像容器100は、その内部が隔壁106によって現像室103と撹拌室105とに隔てられる。現像室103と撹拌室105とは、互いに略水平に経路が形成される。現像室103と撹拌室105には1本ずつ、現像剤を搬送するためのスクリューがあり、それらは互いに略水平に配置される。現像室103内のスクリューは、現像剤を撹拌搬送する回転可能な現像スクリュー102(第一撹拌部材)と、撹拌室105内のスクリューを撹拌スクリュー104(第二撹拌部材)と呼ぶ。この構成により、現像剤を現像容器100内で循環させる。
【0032】
図3に示すように現像容器100内を隔壁106で仕切られた現像室103と撹拌室105は、現像装置14の長手方向の奥側にある第一連通部108Aと、現像装置手前側にある第二連通部108Bとによって連通されている。
【0033】
現像スクリュー102は、現像室103内の現像剤を搬送し、現像剤担持体101に現像剤を供給・回収する。撹拌スクリュー104は、撹拌室105内において、図4に示す現像剤補給口107から供給される現像剤と、現像室103から回収された現像剤とを撹拌しながら搬送する。このような現像スクリュー102と撹拌スクリュー104の働きにより、現像剤のトナー濃度が均一化され、第一連通部108Aから現像室103に現像剤が搬送される。また、現像スクリュー102により現像剤担持体101に現像剤が供給される。
【0034】
図4に示すように、現像剤補給口107は撹拌スクリュー104の上流側に配置される。ここで、現像剤補給口107に対して補給される現像剤(補給現像剤)は、トナーとキャリアとを有し、トナーが現像剤に対して5%重量比で含まれる。一方、現像容器100内の現像剤は、キャリアが現像剤に対して約92%重量比となっている。尚、現像剤の重量比はこれに限定されるものではない。
【0035】
現像容器100内の現像剤量が増加した場合、余剰の現像剤を現像容器100の外部に少量ずつ排出するため、現像剤排出口109が配設される。現像剤排出口109は、現像スクリュー102の下流側に配置される。現像剤補給口107と現像剤排出口109とは、図4に示すように、共に現像装置手前側に配置される。
【0036】
上述の構成によって現像剤自身が現像容器100内で循環すると、現像剤が自己昇温する。これが現像剤の発熱の主な要因となる。
【0037】
この発熱を防止するため、図5に示すように、本実施形態では現像容器100に当接配置され、現像スクリュー102及び撹拌スクリュー104の軸方向に延設される風路110を形成する。そして、矢印で示すように風路110に冷却風Wを流す。これによって、現像剤の冷却を行う。
【0038】
具体的には、第一連通部108A側に、風路110において冷却風Wが吸気される吸気口112を設ける。吸気口112からは、図示しない冷却ファン(送風部材)によって、機外の空気を吸引する。冷却風Wの吸気口112は、現像剤補給口107や現像剤排出口109が配設される現像装置手前側とは反対側の現像装置奥側に設けられる。一方、第二連通部108B側に風路110の排気口113が設けられる。
【0039】
現像容器100の冷却風路面には、冷却効果を高めるため、図2に示す、ヒートシンク114が備えられる。ヒートシンク114は熱伝導率が高くなるほど冷却効果が高くなる。このため、本実施形態では、熱伝導率が高いアルミ材を採用している。
【0040】
以上のように構成された現像剤の作用効果を詳細に説明する。
【0041】
前述の通り、現像剤の発熱源は現像剤自身が循環することにより生じる自己昇温が主な要因である。ここで、本実施形態の現像装置14は、現像容器100内の現像剤密度がほぼ一定である。このため、冷却風による冷却を行わない場合、現像容器100内の現像剤温度は、現像容器内のどの位置においてもほぼ一定となる。
【0042】
一般に、伝熱量は冷やす側と冷やされる側の温度差が大きいほど熱交換量が多くなる。本実施形態では、現像剤の搬送方向(2本のスクリューの軸方向)に冷却風Wを流すことで冷却を行う。ここで、上述のように、現像容器100内のどの位置においても現像剤は同じ温度であるが、冷却風Wは熱交換によって徐々に昇温するため、冷却風Wと現像剤の温度差は徐々に小さくなる。すると、冷却風Wの下流側の熱交換量は、上流側の熱交換量に比べて少なくなる。この結果、冷却風下流側の現像剤温度は、上流側に比べて高くなる。
【0043】
本実施形態のように、現像剤の補給や排出を行う構成の現像容器である場合、現像容器100内の現像剤の温度を極力低く保つためには、現像剤の排出に関しては、現像剤排出口109から排出するのは、比較的高温の現像剤である方が好ましい。一方、現像剤の補給に関しては、温度が比較的高い現像剤に対して、比較的温度の低い補給現像剤を補給する方が好ましい。上述のように、熱交換量は温度差が多いほど多くなるからである。
【0044】
よって、本実施形態では、まず、現像容器内の現像剤搬送方向(搬送スクリュー軸方向)に冷却風Wを流すことで現像容器及び現像剤を冷却する構成と、現像装置に現像剤の補給や排出する構成とを備える。そして、冷却風Wの下流側に、現像剤補給口107及び現像剤排出口109を設ける。これにより、上述のように効率的に現像剤の熱交換が行われ、現像容器100内の現像剤の温度を低く保つことができる。
【0045】
本実施形態では、現像剤排出口を有する現像装置について説明したが、排出口がない現像装置においても、補給口を冷却風Wの下流側に設けることで、現像剤の温度を低く保つことができる。但し、この場合、補給される現像剤は100%トナーの現像剤となる。
【符号の説明】
【0046】
1 …プリンタ
10 …画像形成部
14 …現像装置
100 …現像容器
101 …現像剤担持体
102 …現像スクリュー
103 …現像室
104 …撹拌スクリュー
105 …撹拌室
106 …隔壁
107 …現像剤補給口
109 …現像剤排出口
110 …風路
112 …吸気口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
トナーとキャリアを含む現像剤を収容する現像容器と、
現像剤を担持する現像剤担持体と現像剤を撹拌搬送する回転可能な第一撹拌部材と、を備えた、前記現像容器に形成される現像室と、
前記現像室との間で現像剤を循環させる経路が略水平に構成され現像剤を撹拌搬送する回転可能な第二撹拌部材を備えた、前記現像容器に形成される撹拌室と、
少なくともトナーを含む現像剤を補給するため、前記現像容器に形成される現像剤補給口と、
冷却風の吸気口及び排気口を設け、前記第一撹拌部材及び前記第二撹拌部材の軸方向に延設され、前記現像容器に当接配置される風路と、
を有する現像装置において、
前記吸気口と、前記現像剤補給口とが、前記現像剤担持体の軸方向において、それぞれ反対側に配置されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記撹拌室には、余剰の現像剤を排出するための現像剤排出口が形成され、
前記吸気口と前記現像剤排出口とが、前記現像剤担持体の軸方向において、それぞれ反対側に配置されていることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記風路にヒートシンクを配設することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
像担持体と、
前記像担持体に現像剤を供給する請求項1乃至請求項3のいずれか1項の現像装置とを有することを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−54086(P2013−54086A)
【公開日】平成25年3月21日(2013.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−190348(P2011−190348)
【出願日】平成23年9月1日(2011.9.1)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】