説明

現像装置

【課題】本発明は、トナー漏れを抑制できる現像装置を提供することを目的とする。
【解決手段】現像装置(現像カートリッジ28)は、現像剤担持体に現像剤を供給する供給口52を有する現像器筐体50と、現像剤担持体上の現像剤の厚さを規制する層厚規制ブレード32と、現像剤担持体の両端部と現像器筐体50との間に設けられ、現像剤担持体と摺接可能なサイドシール部材60と、現像剤担持体の軸方向に沿って延びて現像剤担持体と摺接し、かつ、両端部がサイドシール部材60と重なるシート状の長尺シール部材(ロアフィルム63)とを備えている。そして、サイドシール部材60は、現像剤担持体の回転方向下流側に向かうにつれて供給口52に向かう斜め方向に現像剤を送るように構成され、長尺シール部材の両端縁63Aは、現像剤担持体の回転方向下流側に向かうにつれて供給口52に向かう斜め方向に沿って形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、現像ローラの両端部と現像器筐体との間をシールするサイドシール部材を備えた現像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、トナーを担持する回転可能な現像ローラと、現像ローラにトナーを供給する供給口を有する現像器筐体と、現像ローラの両端部と現像器筐体(供給口に隣接する部位)との間に設けられて現像ローラと摺接可能なサイドシール部材とを備えた現像装置が知られている。このような現像装置のサイドシール部材としては、従来、上流側基材と、上流側基材の下流側(現像ローラの回転方向下流側)に設けられる下流側基材と、これらの上面に接着されて現像ローラと摺接するフェルト部材とによって構成されるものが知られている(特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開2001−22179号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、前述した技術では、フェルト部材の表面にトナーが侵入した場合、フェルトの繊維の方向が一定ではないため、現像ローラとの摺接に伴ってトナーが供給口から離れる方向に移動して、トナー漏れが発生するおそれがあった。
【0005】
そこで、本発明は、トナー(現像剤)漏れを抑制することができる現像装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するため、本発明に係る現像装置は、現像剤を担持する現像剤担持体と、前記現像剤担持体を回転可能に支持するとともに、前記現像剤担持体に前記現像剤を供給する供給口を有する現像器筐体と、前記現像器筐体に設けられ、前記現像剤担持体と摺接して前記現像剤担持体上の現像剤の厚さを規制する層厚規制ブレードと、前記現像剤担持体の両端部と前記現像器筐体における前記供給口に隣接する部位との間に設けられ、前記現像剤担持体と摺接可能なサイドシール部材と、前記現像剤担持体の軸方向に沿って延びて前記現像剤担持体と摺接し、かつ、両端部が前記サイドシール部材と重なるシート状の長尺シール部材と、を備え、前記サイドシール部材は、前記現像剤担持体の回転方向下流側に向かうにつれて前記供給口に向かう斜め方向に前記現像剤を送るように構成され、前記長尺シール部材の両端縁は、前記現像剤担持体の回転方向下流側に向かうにつれて前記供給口に向かう斜め方向に沿って形成されていることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、サイドシール部材の表面に現像剤が侵入した場合には、サイドシール部材上の現像剤は、現像剤担持体の回転に伴って、回転方向下流側に向かうにつれて供給口側に向かう斜め方向に移動して供給口に戻されるため、現像剤の漏れが抑制される。さらに、サイドシール部材と重なる長尺シール部材の両端縁が、現像剤担持体の回転方向下流側に向かうにつれて供給口に向かう斜め方向に沿って形成されることで、サイドシール部材によって斜めに送られる現像剤が長尺シール部材の両端縁に溜まり難くなり、両端縁に沿って移動する。そのため、長尺シール部材の両端縁に現像剤が溜まることに起因した現像剤の漏れや現像剤担持体の損傷を抑えることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、サイドシール部材の表面に現像剤が侵入した場合であっても、現像剤を斜めに送るサイドシール部材によって現像剤を供給口に戻すことができるので、現像剤の漏れを抑制することができる。さらに、長尺シール部材の両端縁に現像剤が溜まり難いので、長尺シール部材の両端縁に現像剤が溜まることに起因した現像剤の漏れや現像剤担持体の損傷を抑えることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
次に、本発明の一実施形態について、適宜図面を参照しながら詳細に説明する。参照する図面において、図1は本発明の一実施形態に係る現像カートリッジを備えたレーザプリンタを示す側断面図であり、図2は現像カートリッジを示す側断面図である。なお、以下の説明においては、まず、レーザプリンタの全体構成を簡単に説明した後、本発明の特徴部分の詳細を説明することとする。
【0010】
また、以下の説明においては、レーザプリンタ1の使用時におけるユーザを基準にした方向で説明することとする。すなわち、図1においては、右側を「手前側(前側)」と称し、左側を「奥側(後側)」と称し、紙面垂直方向のうち奥側を「右側」と称し、紙面垂直方向のうち手前側を「左側」と称する。なお、上下方向については、図示方向とユーザ使用時の方向が一致するので、そのまま「上下方向」と称することとする。
【0011】
<レーザプリンタの全体構成>
図1に示すように、レーザプリンタ1は、本体ケーシング2内に用紙3を給紙するためのフィーダ部4や、用紙3に画像を形成するための画像形成部5などを備えている。
【0012】
<フィーダ部の構成>
フィーダ部4は、本体ケーシング2内の底部に着脱可能に装着される給紙トレイ6と、給紙トレイ6内に設けられた用紙押圧板7を備えている。また、フィーダ部4は、用紙3の搬送や紙粉取りを行う各種ローラ11を備えている。そして、フィーダ部4では、給紙トレイ6内の用紙3が、用紙押圧板7によって上方に寄せられ、各種ローラ11によって画像形成部5に搬送される。
【0013】
<画像形成部の構成>
画像形成部5は、スキャナユニット16、プロセスカートリッジ17、定着部18などを備えている。
【0014】
<スキャナユニットの構成>
スキャナユニット16は、本体ケーシング2内の上部に設けられ、レーザ発光部(図示せず。)、回転駆動されるポリゴンミラー19、レンズ20,21、反射鏡22,23,24などを備えている。このスキャナユニット16では、レーザビームが図の鎖線で示す経路を通って、感光ドラム27の表面上に高速走査にて照射される。
【0015】
<プロセスカートリッジの構成>
プロセスカートリッジ17は、本体ケーシング2の手前側に設けられたフロントカバー2aを適宜開放することで、本体ケーシング2に対して着脱自在に装着される構造となっている。そして、このプロセスカートリッジ17は、現像装置の一例としての現像カートリッジ28と、ドラムユニット39とで主に構成されている。
【0016】
現像カートリッジ28は、ドラムユニット39に装着された状態で、本体ケーシング2に対して着脱自在となっている。なお、現像カートリッジ28は、本体ケーシング2に固定されたドラムユニット39に対して着脱自在に構成されていてもよい。現像カートリッジ28は、図2に示すように、現像剤担持体の一例としての現像ローラ31、層厚規制ブレード32、供給ローラ33およびトナー収容室34を主に備えている。
【0017】
この現像カートリッジ28では、トナー収容室34内の現像剤の一例としてのトナーが、アジテータ34Aで攪拌された後、供給ローラ33により現像ローラ31に供給され、このとき、供給ローラ33と現像ローラ31との間で正に摩擦帯電される。現像ローラ31上に供給されたトナーは、現像ローラ31の回転に伴って、層厚規制ブレード32と現像ローラ31との間に進入し、さらに摩擦帯電されつつ、一定厚さの薄層として現像ローラ31上に担持される。なお、現像カートリッジ28の詳細については、後で詳述することとする。
【0018】
ドラムユニット39は、感光ドラム27、スコロトロン型帯電器29および転写ローラ30を主に備えている。そして、このドラムユニット39内において、感光ドラム27の表面は、スコロトロン型帯電器29により一様に正帯電された後、スキャナユニット16からのレーザビームの高速走査により露光される。これにより、露光された部分の電位が下がって、画像データに基づく静電潜像が形成される。
【0019】
次いで、現像ローラ31の回転により、現像ローラ31上に担持されているトナーが、感光ドラム27の表面上に形成される静電潜像に供給されて、感光ドラム27の表面上にトナー像が形成される。その後、感光ドラム27と転写ローラ30の間で用紙3が搬送されることで、感光ドラム27の表面に担持されているトナー像が用紙3上に転写される。
【0020】
<定着部の構成>
図1に示すように、定着部18は、加熱ローラ41と、加熱ローラ41と対向して配置され加熱ローラ41を加圧する加圧ローラ42とを備えている。そして、このように構成される定着部18では、用紙3上に転写されたトナーを、用紙3が加熱ローラ41と加圧ローラ42との間を通過する間に熱定着させている。なお、定着部18で熱定着された用紙3は、定着部18の下流側に配設される排紙ローラ45に搬送され、この排紙ローラ45から排紙トレイ46上に送り出される。
【0021】
<現像カートリッジの詳細構造>
次に、本発明の一実施形態に係る現像カートリッジ28の詳細構造について説明する。参照する図面において、図3はサイドシール部材の周囲の構造を示す拡大斜視図(a)と、サイドシール部材の詳細を示す断面図(b)と、図3(a)のX部分の拡大斜視図(c)と、図3(a)のY部分の拡大斜視図(d)であり、図4は上流側シールおよび下流側シールによってトナーが送られる方向とロアフィルムの両端縁の角度を示す正面図である。なお、現像カートリッジ28は左右対称の構造であるため、図3および図4では左側の部位のみを示し、右側の部位は省略することとする。また、図3および図4では、現像ローラ31や供給ローラ33を外した状態を示している。
【0022】
図3(a)に示すように、現像カートリッジ28は、前述した現像ローラ31等を備える他、現像ローラ31を回転可能に支持する現像器筐体50と、現像ローラ31の両端部と摺接するサイドシール部材60と、長尺シール部材の一例としてのロアフィルム63とを備えている。
【0023】
現像器筐体50は、現像ローラ31を回転可能に支持する軸受部51と、内部のトナー収容室34から現像ローラ31にトナーを供給するための供給口52と、供給口52の左右両側に形成される側面視円弧状の取付面53とを主に有している。供給口52は、現像ローラ31の軸方向に沿った矩形の長孔状に形成されている。そして、供給口52の下部には、ロアフィルム63を支持するための支持部54が取付面53よりも現像ローラ31側に突出するように形成され、供給口52の上部には、層厚規制ブレード32が固定されている。
【0024】
層厚規制ブレード32は、現像器筐体50に上端部が固定される金属板32Aと、金属板32Aの下端縁(先端縁)に固定される押圧部の一例としてのゴム製の押圧部材32Bとを主に備えて構成されている。金属板32Aは、供給口52の左右両側の端縁よりも左右方向外側に突出する長さで形成されており、その両端部の上側角部がねじSによって現像器筐体50に固定されている。押圧部材32Bは、供給口52の左右両側の端縁よりも左右方向外側に突出するとともに、金属板32Aの左右両側の端縁よりも左右方向内側に両端縁が位置する長さで形成されている(図4参照)。そして、押圧部材32Bは金属板32Aから付勢力を受けつつ、現像ローラ31の外周面に摺接するようになっている。
【0025】
サイドシール部材60は、現像ローラ31の両端部と現像器筐体50における供給口52の左右両側に隣接する取付面53との間に設けられており、主に、上流側シール61と下流側シール62とを備えて構成されている。
【0026】
上流側シール61は、図3(b)に示すように、弾性を有する基材61Aと、この基材61Aの現像ローラ31側の面に設けられる表面部材61Bとを備えて構成されている。基材61Aは、ウレタンスポンジなどの弾性体で形成されており、両面テープTによって現像器筐体50の取付面53に直接貼り付けられている。
【0027】
表面部材61Bは、図3(c)に示すように、ベースシートBSに複数の毛Cを植毛することにより構成されており、両面テープTによって基材61Aに貼り付けられている。具体的に、表面部材61Bは、複数の毛Cを束ねて構成される毛束CBが所定間隔を空けて複数配列されて構成されており、各毛束CBは、現像ローラ31の回転方向(図の太線で示す矢印)の下流側に向かうにつれて供給口52側に向かう斜め方向に向けて倒された状態に構成されている。より詳しくは、複数の毛束CBを前述した斜め方向に沿って間隔を空けて並べて構成される列を複数設け、各列を互いに間隔が空くように配列した構成となっている。これにより、表面部材61Bには、前述した斜め方向にトナーを送る第1案内通路G1が各毛束CB間に形成されるようになっている。そして、このように構成される上流側シール61は、図4に示すように、下流側シール62よりも供給口52側に延出するように、下流側シール62の左右幅よりも大きな幅で形成されている。
【0028】
なお、表面部材61Bは、1枚のシート素材に複数の毛束CBを植毛した後、各毛束CBを所定の方向に所定時間倒し続けることにより癖をつけ、その後シート素材を複数枚のベースシートBSに縦横に切断することによって形成される。そのため、前記したシート素材を複数枚のベースシートBSに切断した後に各毛束CBに癖をつけるような方法に比べ、毛先をベースシートBSからはみ出さないように形成することができる。そして、このように毛先がベースシートBSからはみ出さないと、ベースシートBSから供給口52内にはみ出す毛先によって現像ローラ31上のトナーが掻き取られることがないので、現像ローラ31上の画像形成範囲に良好にトナーを担持させることができる。
【0029】
なお、図3および図4では、説明の便宜上、植毛された毛Cの長さや各毛束CBの間隔を大きく示している。そのため、例えば、毛Cの長さを図よりも短く、かつ、各毛束CBを全面に間隔を詰めて配置してもよい。
【0030】
下流側シール62は、上流側シール61に対して現像ローラ31の回転方向下流側に設けられており、図3(b)に示すように、弾性を有する基材62Aと、この基材62Aの現像ローラ31側の面に設けられる表面部材62Bとを備えて構成されている。基材62Aは、ウレタンスポンジなどの弾性体で形成されており、層厚規制ブレード32の金属板32Aの上流側にはみ出すように、両面テープTによって金属板32Aに貼り付けられている。
【0031】
表面部材62Bは、図3(d)に示すように、上流側シール61の表面部材61Bと同様の複数の毛束CBおよびベースシートBSを備えて構成されており、各毛束CBが上流側シール61の表面部材61Bとは異なる方向に倒されて構成されている。すなわち、表面部材62Bは、現像ローラ31の回転方向に沿って間隔を空けて並ぶ複数の毛束CBで構成される列を、現像ローラ31の軸方向に間隔を空けて複数有し、その各毛束CBが現像ローラ31の回転方向に沿って下流側へ倒された状態に構成されている。これにより、表面部材62Bには、回転方向に沿って下流側へトナーを送る第2案内通路G2が各毛束CB間に形成されるようになっている。
【0032】
また、図3(b)に示すように、表面部材62Bは、基材62Aよりも回転方向上流側へ延出するように、基材62Aよりも回転方向において長く形成されている。そして、表面部材62Bのうち基材62Aよりも回転方向上流側へはみ出した部分は、上流側シール61の基材61Aと表面部材61Bとの間に配置されている。これにより、下流側シール62の表面部材62Bの上に、上流側シール61の表面部材61Bが重なった状態となっている。
【0033】
そして、このように構成される下流側シール62(基材62Aおよび表面部材62B)は、図4に示すように、層厚規制ブレード32の押圧部材32Bの左右両端縁BEに密着するように層厚規制ブレード32上に配設されている。なお、図3(b)に示すように、層厚規制ブレード32(金属板32A)と現像器筐体50の取付面53との間には、サイドシール部材60とは別のシール材SMが設けられている。
【0034】
以上のように構成されるサイドシール部材60は、層厚規制ブレード32を現像器筐体50に取り付ける前に、層厚規制ブレード32(金属板32A)にぶら下げられた状態で貼り付けられている。そのため、層厚規制ブレード32を現像器筐体50にねじSで固定するとともに、上流側シール61の基材61Aを現像器筐体50の取付面53に貼り付けるだけで、層厚規制ブレード32およびサイドシール部材60を簡単に現像器筐体50に取り付けることが可能となっている。
【0035】
図3(a)に示すように、ロアフィルム63は、ポリエチレンテレフタレートなどの樹脂からなるシート状の部材であり、現像ローラ31の軸方向に沿って延びて現像ローラ31の略全体に摺接している。ロアフィルム63は、支持部54よりも左右方向に長く形成されており、支持部54に貼り付けられた状態において、その両端部が、支持部54からはみ出して、上流側シール61(サイドシール部材60)と重なっている。
【0036】
そして、この上流側シール61と重なるロアフィルム63の両端部の各端縁63A(以下、「両端縁63A」ともいう。)は、図4に示すように、現像ローラ31の回転方向下流側に向かうにつれて供給口52に向かう斜め方向に沿って形成されている。より具体的には、図の矢印RD(現像ローラ31の回転方向)に対するロアフィルム63の両端縁63Aの角度βは、矢印RDに対する上流側シール61によるトナーの送り方向の角度α(毛束CBの角度)よりも大きくなっている。これにより、上流側シール61上を移動するトナーがロアフィルム63の両端縁63Aに溜まることなく、供給口52に戻されるようになっている。なお、図4では、ロアフィルム63の両端縁63Aの角度βと毛束CBの角度αとの比較が分かり易いように、ロアフィルム63の形状や毛束CBの向きなどを簡易的に図示している。
【0037】
また、図3(a)に示すように、上流側シール61の後側(現像ローラ31の回転方向上流側)には、上方のみに開口する凹状の現像剤受け部70が形成されている。具体的に、この現像剤受け部70は、取付面53と、支持部54と、取付面53の左右方向外側に位置する外壁部73と、上流側シール61と、現像器筐体50の後端部に倣って貼り付けられる可撓性シート部材75とによって構成されている。これにより、仮に下流側シール62上のトナーが現像ローラ31によって捕捉されて上流側シール61に向けて搬送された際に、上流側シール61のエッジで削られて落とされた場合であっても、現像剤受け部70にてトナーを受けることができるので、現像カートリッジ28からのトナー漏れを抑制することができる。
【0038】
次に、本実施形態に係るサイドシール部材60の作用について説明する。
図3(a)に示すように、現像ローラ31が回転している際において、上流側シール61にトナーが侵入した場合には、上流側シール61上のトナーは、図4に示すように、回転する現像ローラ31に押されて、斜めに倒された各毛束CB間の第1案内通路G1(または毛束CBを構成する複数の毛Cの間)に沿って移動する。この際、トナーは、ロアフィルム63の両端縁63Aで邪魔されることなく、スムーズに供給口52に向かって移動して、供給口52内に戻される。
【0039】
また、下流側シール62にトナーが侵入した場合には、下流側シール62上のトナーは、回転する現像ローラ31に押されて、回転方向に沿って下流側へ倒された各毛束CB間の第2案内通路G2(または毛束CBを構成する複数の毛Cの間)に沿って下流側に移動する。これにより、トナーが下流側シール62上を回転方向に沿って下流側に移動する間に現像ローラ31で担持されて、トナーが上流側シール61に戻される。その後は、前述したようにトナーが上流側シール61上で斜めに進んで供給口52に戻される。
【0040】
以上によれば、本実施形態において以下のような効果を得ることができる。
上流側シール61の表面にトナーが侵入した場合であっても、トナーを斜めに送る上流側シール61によってトナーを供給口52に戻すことができるので、トナーの漏れを抑制することができる。さらに、ロアフィルム63の両端縁63Aにトナーが溜まることがないので、ロアフィルム63の両端縁63Aにトナーが溜まることに起因したトナー漏れや現像ローラ31の損傷を抑えることができる。
【0041】
ロアフィルム63の両端縁63Aの回転方向(矢印RD)に対する角度βが、上流側シール61によるトナーの送り方向の回転方向に対する角度αよりも大きいので、ロアフィルム63の両端縁63Aにトナーが溜まることをより確実に抑制することができる。
【0042】
下流側シール62にトナーが侵入した場合であっても、トナーが下流側シール62上を回転方向に沿って下流側に移動する間に現像ローラ31で担持されて、トナーが上流側シール61に戻されるので、上流側シール61によってトナーを供給口52に戻すことができ、トナー漏れを抑制することができる。
【0043】
下流側シール62の表面部材62Bの上に、上流側シール61の表面部材61Bが重なるように配設されているので、現像ローラ31の回転によって下流側シール62がめくられることを防止することができる。
【0044】
層厚規制ブレード32の押圧部材32Bの左右両端縁BEに下流側シール62を密着させたので、これらの間からのトナー漏れを抑制することができる。
【0045】
上流側シール61が下流側シール62よりも供給口52側に延出しているので、供給口52から押圧部材32Bの左右両端縁BEと下流側シール62との間にトナーが流れるのを、上流側シール61の延出した部分で抑えることができる。
【0046】
上流側シール61の上流側に凹状の現像剤受け部70が形成されているので、仮に下流側シール62上から現像ローラ31によって搬送されてきたトナーが上流側シール61のエッジで削られて落とされた場合であっても、現像剤受け部70にてトナーを受けることができるので、現像カートリッジ28からのトナー漏れを抑制することができる。
【0047】
所定方向に倒された各毛束CB間で比較的幅広の案内通路G1,G2を形成することができるので、トナーを所定方向にスムーズに送ることができる。なお、各毛束CBは、その毛先が隣接する毛束CBの根元部分に当接するような長さに形成されているのが望ましい。これによれば、1つの案内通路から隣接する案内通路にトナーが流れ出るのを抑制できるので、トナーの流れをスムーズにして、より良好にトナーを供給口52に戻すことができる。
【0048】
下流側シール62の基材62Aが層厚規制ブレード32の金属板32Aの上流側にはみ出すように貼り付けられているので、上流側シール61の基材61Aと下流側シール62の表面部材62Bとの間からのトナー漏れを抑制することができる。
【0049】
なお、本発明は前記実施形態に限定されることなく、以下に例示するように様々な形態で利用できる。
前記実施形態では、毛束CBを所定方向に倒すことでトナーを所定方向に送るように構成したが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、ベースシートに対して垂直に立てられた複数の毛束を所定方向(前述した斜め方向または回転方向に沿った下流側に向かう方向)に近接した状態で並べた列を複数設けることでトナーを所定方向に送るように構成してもよい。また、織布における現像ローラ31側に露出する糸が、所定方向(前述した斜め方向または回転方向に沿った下流側に向かう方向)に並ぶように織られることで、トナーを所定方向に送るように構成してもよい。
【0050】
前記実施形態では、下流側シール62の表面部材62Bを基材62Aから上流側へはみ出すように形成したが、本発明はこれに限定されず、上流側シール61の表面部材61Bを基材61Aから下流側へはみ出すように形成してもよい。この場合であっても、上流側シール61の表面部材61Bを下流側シール62の表面部材62Bの上に重ねることができるので、現像ローラ31の回転によって下流側シール62がめくられることを防止することができる。
【0051】
前記実施形態では、下流側シール62を層厚規制ブレード32の金属板32Aに貼り付けたが、本発明はこれに限定されるものではない。例えば、層厚規制ブレード32の金属板32Aが押圧部材32Bと左右方向で同じ寸法で形成されている場合には、下流側シール62を直接現像器筐体50に貼り付けてもよい。
【0052】
前記実施形態では、現像装置としてトナー収容室34を一体に有する現像カートリッジ28を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばトナー収容室を有するトナーカートリッジが着脱されるカートリッジを現像装置として採用してもよい。
前記実施形態では、所定方向に倒した複数の毛束CBの間で形成される案内通路G1,G2でトナーを送るように構成したが、本発明はこれに限定されず、ベースシート全面に密集した複数の毛を所定方向に倒すことで各毛に沿ってトナーを送るように構成してもよい。
【0053】
前記実施形態では、長尺シール部材として樹脂製のロアフィルム63を採用したが、本発明はこれに限定されず、例えばシート状のウレタンスポンジなどであってもよい。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の一実施形態に係る現像カートリッジを備えたレーザプリンタを示す側断面図である。
【図2】現像カートリッジを示す側断面図である。
【図3】サイドシール部材の周囲の構造を示す拡大斜視図(a)と、サイドシール部材の詳細を示す断面図(b)と、図3(a)のX部分の拡大斜視図(c)と、図3(a)のY部分の拡大斜視図(d)である。
【図4】上流側シールおよび下流側シールによってトナーが送られる方向とロアフィルムの両端縁の角度を示す正面図である。
【符号の説明】
【0055】
28 現像カートリッジ
31 現像ローラ
32 層厚規制ブレード
50 現像器筐体
52 供給口
60 サイドシール部材
61 上流側シール
61A 基材
61B 表面部材
62 下流側シール
62A 基材
62B 表面部材
63 ロアフィルム
63A 両端縁
70 現像剤受け部
BS ベースシート
C 毛
CB 毛束
G1 第1案内通路
G2 第2案内通路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像剤を担持する現像剤担持体と、
前記現像剤担持体を回転可能に支持するとともに、前記現像剤担持体に前記現像剤を供給する供給口を有する現像器筐体と、
前記現像器筐体に設けられ、前記現像剤担持体と摺接して前記現像剤担持体上の現像剤の厚さを規制する層厚規制ブレードと、
前記現像剤担持体の両端部と前記現像器筐体における前記供給口に隣接する部位との間に設けられ、前記現像剤担持体と摺接可能なサイドシール部材と、
前記現像剤担持体の軸方向に沿って延びて前記現像剤担持体と摺接し、かつ、両端部が前記サイドシール部材と重なるシート状の長尺シール部材と、を備え、
前記サイドシール部材は、前記現像剤担持体の回転方向下流側に向かうにつれて前記供給口に向かう斜め方向に前記現像剤を送るように構成され、
前記長尺シール部材の両端縁は、前記現像剤担持体の回転方向下流側に向かうにつれて前記供給口に向かう斜め方向に沿って形成されていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
前記長尺シール部材の両端縁の前記回転方向に対する角度が、前記サイドシール部材による前記現像剤の送り方向の前記回転方向に対する角度よりも大きいことを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
前記サイドシール部材は、前記長尺シール部材と重なる上流側シールと、前記上流側シールに対して回転方向下流側に設けられる下流側シールとを有し、
前記上流側シールが、
前記回転方向下流側に向かうにつれて前記供給口側に向かう斜め方向に前記現像剤を送るように構成され、
前記下流側シールが、
前記回転方向に沿って下流側へ前記現像剤を送るように構成されていることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の現像装置。
【請求項4】
前記サイドシール部材は、
弾性を有する基材と、この基材の前記現像剤担持体側の面に設けられる表面部材とを有し、
前記下流側シールの表面部材の上に、前記上流側シールの表面部材が重なるように配設されていることを特徴とする請求項3に記載の現像装置。
【請求項5】
前記層厚規制ブレードのうち前記現像剤担持体に押圧される部分である押圧部の両端縁に、前記下流側シールが密着していることを特徴とする請求項3または請求項4に記載の現像装置。
【請求項6】
前記上流側シールは、前記下流側シールよりも前記供給口側に延出していることを特徴とする請求項5に記載の現像装置。
【請求項7】
前記上流側シールの前記現像剤担持体との摺接部は、植毛された複数の毛で構成されていることを特徴とする請求項3〜請求項6のいずれか1項に記載の現像装置。
【請求項8】
前記毛が、前記斜め方向に向けて倒されていることを特徴とする請求項7に記載の現像装置。
【請求項9】
前記上流側シールの前記下流側シールとは反対側には、凹状の現像剤受け部が形成されていることを特徴とする請求項3〜請求項8のいずれか1項に記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2010−91958(P2010−91958A)
【公開日】平成22年4月22日(2010.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−264176(P2008−264176)
【出願日】平成20年10月10日(2008.10.10)
【出願人】(000005267)ブラザー工業株式会社 (13,856)
【Fターム(参考)】