説明

現像装置

【課題】2本の現像ローラを備えたハイブリッド現像装置において、現像ローラのトナー搬送量の変化に起因する画像濃度のムラを防止することを可能にする手段を提供する。
【解決手段】現像装置2は、トナー供給ローラ23と現像ローラ21a、21bと第1〜第3電界形成手段4、5a、5bとを備えている。トナー供給ローラ23は現像剤25をその周面に保持する。第1〜第3電界形成手段4、5a、5bは、トナー供給ローラ23から両現像ローラ21a、21bへトナーを転移させる方向の交番電位差を形成し、また両現像ローラ21a、21b上に転移したトナーを静電潜像担持体1上に転移させて潜像部を現像するための電界を形成する。現像装置2は、トナー供給ローラ23の上又は近傍に配置され、トナー供給ローラ23上の現像剤25の流れを部分的にせき止め、現像剤25をトナー供給ローラ23の表面から一時的に引き離す障害部材10を備えている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機、プリンタ等の画像形成装置において、静電潜像担持体上に形成された静電潜像をトナーにより現像して可視化する現像装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
複写機、プリンタ等の画像形成装置には、静電潜像担持体上に形成された静電潜像を荷電されたトナーにより現像して可視化する現像装置が設けられるが、かかる現像装置としては、近年ハイブリッド現像方式の現像装置が広く用いられている(例えば、特許文献1〜3参照)。ハイブリッド現像方式の現像装置では、一般に、トナーと磁性粒子とを含む現像剤を混合してトナーを荷電させた後、現像剤を担持して搬送するトナー供給ローラと現像ローラとの間に分離電界を形成し、この分離電界の作用によりトナーを磁性粒子から分離して現像ローラ上に転移させるようにしている。
【0003】
さらに、印刷を高速化するために、現像剤を担持して搬送するトナー供給ローラと静電潜像担持体との間に2本の現像ローラを設け、電界が作用する領域を拡大して、目標とする画像濃度に対応する現像トナー量を確保するようにしたハイブリッド現像方式の現像装置も知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−265118号公報
【特許文献2】特開平6−348137号公報
【特許文献3】特開平5−165339号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、2本の現像ローラを備えたハイブリッド現像方式の現像装置では、トナー供給ローラの回転方向、すなわちトナー供給ローラ上における現像剤の移動方向に関して、下流側(以下「現像剤下流側」という。)に位置する現像ローラへのトナー供給量が、上流側(以下「現像剤上流側」という。)に位置する現像ローラへのトナー供給量の変化に応じて変化する。このため、現像剤下流側の現像ローラにおけるトナー搬送量が経時的に変化し、画像濃度にムラが生じるといった問題がある。
【0006】
本発明は、上記従来の問題を解決するためになされたものであって、2本の現像ローラを備えたハイブリッド現像方式の現像装置において、現像剤下流側の現像ローラのトナー搬送量の経時的な変化を抑制又は防止することを可能にし、画像濃度にムラが生じるのを防止又は抑制することを可能にする手段を提供することを解決すべき課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本願発明者の知見によれば、現像剤下流側の現像ローラへのトナー供給量の変化は、主として、現像剤上流側の現像ローラとの対向位置を通過した後におけるトナー供給ローラ上の現像剤中のトナーと磁性粒子の比率の不均一化が原因であるものと考察される。また、このようなトナーと磁性粒子の比率の不均一化は、両現像ローラ間においてトナー供給ローラ上の現像剤の上層部と下層部との間での現像剤の入れ替わりが効率的に行われないことが原因であると考察される。本発明は、本願発明者の上記考察に基づき、上記課題を解決するためになされたものである。
【0008】
本発明に係る現像装置は、トナー供給ローラと、2本の現像ローラと、電位差形成手段と、電界形成手段とを備えている。ここで、トナー供給ローラは、磁石を内包するともに、トナーと磁性粒子とを含む現像剤をその周面に保持する。両現像ローラは、トナー供給ローラに対向して配置されている。電位差形成手段は、トナー供給ローラから両現像ローラへトナーを転移させる方向の交番電位差を形成する。電界形成手段は、両現像ローラ上に転移したトナーを、両現像ローラに対向して配置された静電潜像担持体上に転移させて静電潜像担持体上の潜像部を現像するための電界を形成する。さらに、この現像装置は、両現像ローラ間においてトナー供給ローラの上又は近傍に配置され、トナー供給ローラ上の現像剤の流れを部分的にせき止め、現像剤をトナー供給ローラの表面から一時的に引き離す障害部材を備えている。
【0009】
本発明に係る現像装置においては、障害部材とトナー供給ローラとの間の最近接距離をAとし、障害部材とトナー供給ローラとが対向する位置におけるトナー供給ローラ上の現像剤の平均高さをBとすれば、AとBの関係が、
A≦B×0.5
であるのが好ましい。
【0010】
本発明に係る現像装置においては、トナー供給ローラの軸径方向に関する障害部材の厚さをCとし、障害部材とトナー供給ローラとが対向する位置におけるトナー供給ローラ上の現像剤の平均高さをBとすれば、CとBの関係が、
C≧B×0.25
であるのが好ましい。
【0011】
本発明に係る現像装置は、障害部材を振動させる振動発生器又は振動発生部材を備えているのが好ましい。また、本発明に係る現像装置においては、障害部材が複数(例えば、2つ、3つ・・・)設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、両現像ローラ間においてトナー供給ローラの上又は近傍に配置された障害部材が、トナー供給ローラ上の現像剤の流れを部分的にせき止め、現像剤をトナー供給ローラの表面から一時的に引き離す。このため、トナー供給ローラ上の現像剤は、現像剤上流側(トナー供給ローラの回転方向に関して上流側)の現像ローラとの対向位置を通過した後において現像剤下流側(トナー供給ローラの回転方向に関して下流側)の現像ローラに到達する前に、障害部材によって十分に攪拌され、トナー供給ローラ上の現像剤の上層部と下層部とで現像剤の入れ替わりが効率的に行われる。これにより、現像剤上流側の現像ローラとの対向位置を通過した後におけるトナー供給ローラ上の現像剤中のトナーと磁性粒子の比率の不均一化又は変動を抑制又は防止することができる。その結果、現像剤下流側の現像ローラのトナー搬送量の経時的な変化を抑制又は防止することができ、画像濃度にムラが生じるのを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明に係る現像装置を備えた画像形成装置の模式的な断面図である。
【図2】図1に示す画像形成装置に設けられた障害部材及び障害部材取付け部の斜視図である。
【図3】図1に示す画像形成装置に設けられた障害部材及び障害部材取付け部の側面断面図である。
【図4】振動発生器を備えた障害部材及び障害部材取付け部の斜視図である。
【図5】画像形成装置を評価するための評価画像パターンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付の図面を参照しつつ、本発明の実施形態を具体的に説明する。
(画像形成装置に関する説明)
図1は、本発明の実施形態に係る画像形成装置の主要部の概略構成を模式的に示している。この画像形成装置は、電子写真方式により静電潜像担持体1(感光体)に形成されたトナー像を、用紙等の転写媒体Pに転写して画像形成を行うものである。
【0015】
画像形成装置は、静電潜像を担持するための静電潜像担持体1を有している。この静電潜像担持体1の周辺には、静電潜像担持体1を帯電させるための帯電手段6と、静電潜像担持体1上に露光を行って静電潜像を形成するための露光手段7と、静電潜像を現像する現像装置2と、静電潜像担持体1上に現像されたトナー像を転写するための転写手段8と、静電潜像担持体1上の残留トナーを除去するための清掃手段9とが、静電潜像担持体1の回転方向に沿って順に配置されている。ここで、静電潜像担持体1、帯電手段6、露光手段7、転写手段8、清掃手段9等については、周知の電子写真方式の技術を任意に使用することができる。例えば、図1中には、帯電手段6として帯電ローラが示されているが、帯電手段6は静電潜像担持体1と非接触の帯電装置であってもよい。
【0016】
(現像装置に関する説明)
本実施形態に係る現像装置2は、現像剤25を収容する現像剤槽28と、該現像剤槽28から供給された現像剤25を表面に担持して搬送するトナー供給ローラ23と、該トナー供給ローラ23上の現像剤25からトナーを分離する第1、第2現像ローラ21a、21bとを備えている。ここで、第1現像ローラ21aは現像剤上流側に配置され、第2現像ローラ21bは現像剤下流側に配置されている。さらに、現像装置2には、両現像ローラ21a、21b間においてトナー供給ローラ13の周面上又は近傍に、トナー供給ローラ23上の現像剤25の流れを部分的にせき止める障害部材10(せき止め部材)が設けられている。なお、障害部材10の具体的な構成及び機能は後で詳しく説明する。
【0017】
現像剤槽28内の現像剤25は、混合攪拌手段26の回転により混合攪拌され、摩擦帯電した後、トナー供給ローラ23の表面のスリーブローラ23aに供給される。この現像剤25は、トナー供給ローラ23の内部の磁石ローラ23bの磁力によりスリーブローラ23aの表面側に保持され、スリーブローラ23aと共に回転移動する。そして、この現像剤25は、トナー供給ローラ23に対向して設けられた規制部材24で通過量を規制された後、第1現像ローラ21aとの対向部に送られる。
【0018】
トナー供給ローラ23と第1現像ローラ21aの対向部には、第1電界形成手段4により、現像剤25中のトナーを電気的に第1現像ローラ21aの表面に分離・担持させる電界が形成されている。第1現像ローラ21a上に担持されたトナー層22aは、第1現像ローラ21aによって静電潜像担持体1との対向部に搬送され、第2電界形成手段5aにより形成される現像電界の下で、静電潜像担持体1上の静電潜像を現像する。
【0019】
現像後、第1現像ローラ21a上に残存するトナーは、トナー供給ローラ23との対向部において、トナー供給ローラ23上に形成された現像剤25の磁気ブラシによって摺擦・攪乱され、現像剤25中に回収され、第2現像ローラ21bとの対向部に送られる。この現像装置2では、トナー供給ローラ23と第1、第2現像ローラ21a、21bの対向部において、トナー供給ローラ23上の現像剤25の移動方向と第1、第2現像ローラ21a、21b上のトナーの移動方向とを逆にしているので摺擦・攪乱効果が向上する。
【0020】
トナー供給ローラ23と第2現像ローラ21bの対向部には、第1電界形成手段4により、現像剤25中のトナーを電気的に第2現像ローラ21bの表面に分離・担持させる電界が形成されている。第2現像ローラ21b上に担持されたトナー層22bは、第2現像ローラ21bによって静電潜像担持体1との対向位置に搬送され、第2電界形成手段5bにより形成される現像電界の下で、静電潜像担持体1上の静電潜像を現像する。
【0021】
上記の2つの現像部における現像方式は、反転現像方式であってもよく、また正規現像方式であってもよい。現像後、第2現像ローラ21b上に残存するトナーは、トナー供給ローラ23との対向部において、トナー供給ローラ23上に形成された現像剤25の磁気ブラシによって摺擦・攪乱され、現像剤25中に回収される。そして、残存トナーを回収したトナー供給ローラ23上の現像剤25は、現像剤槽28との対向位置において、トナー供給ローラ23から剥離されて現像剤槽28に戻され、混合攪拌される。
【0022】
以下、現像装置2を構成する各構成要素について詳しく説明する。トナー供給ローラ23は、固定配置された磁石ローラ23bと、該磁石ローラ23bを内包する回転自在なスリーブローラ23aとで構成されている。磁石ローラ23bは、スリーブローラ23aの回転方向に沿って7つの磁極N1、S1、N2、S2、S3、N3、S4を有する。これらの7つの磁極のうち、主磁極である磁極N1、S1は、それぞれ、第1、第2現像ローラ21a、21bと対向する位置に配置されている。また、スリーブローラ23a上の現像剤25を剥離させるための反発磁界を発生させる同極の磁極N2、N3は、現像剤槽28内部において対向した位置に配置されている。トナー供給ローラ23のスリーブローラ23aの回転方向は、第1、第2現像ローラ21a、21bの回転方向と同一である。したがって、トナー供給ローラ23と第1、第2現像ローラ21a、21bの対向部においては、対向する周面が互いに反対方向に移動する。ただし、第1、第2現像ローラ21a、21bの回転方向は、このような形態に限定されるものではない。
【0023】
現像剤槽28は、ケーシング29により形成されている。現像剤槽28は、通常は現像剤25を混合攪拌しつつ搬送してトナー供給ローラ23に送るための攪拌搬送手段26を収納している。なお、攪拌搬送手段26の近傍に、現像剤25中のトナーの比率(重量比)を検出するための透磁率センサ(図示せず)を配置するのが好ましい。
【0024】
現像装置2は、通常、静電潜像担持体1の静電潜像の現像のために消費されたトナーを現像剤槽28内に補給するための補給部と、トナー供給ローラ23上の現像剤量を規制するための現像剤薄層化用の規制部材24とを有している。補給部は、補給トナーを収納しているトナーボトル3と、現像剤槽28内へのトナー補給量を制御するためのトナー補給ローラ27とで構成されている。
【0025】
第1、第2現像ローラ21a、21bに用いることができる材料としては、例えば表面処理を施したアルミローラなどが挙げられる。このほか、アルミニウム等の導電性基体上に、例えばポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、ポリイミド樹脂、ポリスルホン樹脂、ポリエーテルケトン樹脂、塩化ビニル樹脂、酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、フッ素樹脂等の樹脂コートを施したもの、あるいはシリコーンゴム、ウレタンゴム、ニトリルゴム、天然ゴム、イソプレンゴム等のゴムコーティングを施したものなどを用いてもよい。なお、コーティング材料は、上記の各材料に限定されるわけではない。
【0026】
さらに、上記コーティングの全体(バルク)又は表面に導電剤が添加されていてもよい。導電剤の具体例としては、例えば電子導電剤又はイオン導電剤などが挙げられる。電子導電剤の具体例としては、これらに限定されるわけではないが、ケッチェンブラック、アセチレンブラック、ファーネスブラック等のカーボンブラックや、金属粉、金属酸化物の微粒子などが挙げられる。イオン導電剤の具体例としては、これらに限定されるわけではないが、4級アンモニウム塩等のカチオン性化合物や、両性化合物、その他イオン性高分子材料などが挙げられる。また、第1、第2現像ローラ21a、21bは、アルミニウム等の金属材料からなる導電性ローラであってもよい。
【0027】
(現像剤に関する説明)
本実施形態において、現像剤25は、トナーと、該トナーを帯電させるためのキャリアとを含むものである。使用することができるトナーはとくには限定されず、一般に使用されている公知のものを使用することができる。また、バインダー樹脂中に着色剤を含有させ、また必要に応じて荷電制御材や離型材等を含有させ、外添材を処理したものも使用することができる。トナーの粒径は、これに限定されるわけではないが、3〜15μm程度であるのが望ましい。このようなトナーは、一般に使用されている公知の方法で製造することができ、例えば粉砕法、乳化重合法、懸濁重合法等を用いて製造することができる。
【0028】
トナーに使用することができるバインダー樹脂の具体例としては、これらに限定されるわけではないが、例えばスチレン系樹脂(スチレン又はスチレン置換体を含む単重合体又は共重合体)、ポリエステル樹脂、エポキシ系樹脂、塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリウレタン樹脂、シリコーン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂の単体又は複合体により、軟化温度が80〜160°Cの範囲のものを用いるのが好ましく、またガラス転移点が50〜75°Cの範囲のものを用いるのが好ましい。
【0029】
着色剤としては、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、カーボンブラック、アニリンブラック、活性炭、マグネタイト、ベンジンイエロー、パーマネントイエロー、ナフトールイエロー、フタロシアニンブルー、ファーストスカイブルー、ウルトラマリンブルー、ローズベンガル、レーキーレッドなどを用いることができる。着色剤は、一般に、上記のバインダー樹脂100重量部に対して2〜20重量部の割合で用いるのが好ましい。
【0030】
荷電制御材としては、公知のものを用いることができる。正帯電性トナー用の荷電制御材としては、例えばニグロシン系染料、4級アンモニウム塩系化合物、トリフェニルメタン系化合物、イミダゾール系化合物、ポリアミン樹脂などを用いることができる。負帯電性トナー用荷電制御材としては、Cr、Co、Al、Fe等の金属含有アゾ系染料、サリチル酸金属化合物、アルキルサリチル酸金属化合物、カーリックスアレン化合物などを用いることができる。荷電制御材は、一般に、バインダー樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部の割合で用いるのが好ましい。
【0031】
離型材としては、一般に使用されている公知のものを用いることができ、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、カルナバワックス、サゾールワックス等を単独で又は2種類以上組合せて使用することができ、一般に上記のバインダー樹脂100重量部に対して0.1〜10重量部の割合で用いるのが好ましい。
【0032】
トナーに外添する粒子としては、一般に使用されている公知のものを使用することができる。流動性を改善するため、例えば、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウム等を使用することができる。この場合、とくにシランカップリング剤やチタンカップリング剤やシリコンオイル等で撥水化したものを用いるのが好ましい。そして、このような流動化剤をトナー100重量部に対して0.1〜5重量部の割合で添加して用いるのが好ましい。外添剤の個数平均一次粒径は10〜100nmであるのが好ましい。
【0033】
キャリアとしては、とくには限定されず、一般に使用されている公知のキャリアを使用することができ、例えばバインダー型キャリアやコート型キャリアなどを使用することができる。キャリア粒径は、これに限定されるわけではないが、15〜100μmであるのが好ましい。
【0034】
バインダー型キャリアは、磁性体微粒子をバインダー樹脂中に分散させたものであり、キャリアの表面に正帯電性又は負帯電性の帯電性微粒子を固着させたり、表面コーティング層を設けたりすることができる。バインダー型キャリアの極性等の帯電特性は、バインダー樹脂の材質、帯電性微粒子、表面コーティング層の種類等によって制御することができる。
【0035】
バインダー型キャリアに用いられるバインダー樹脂の具体例としては、ポリスチレン系樹脂に代表されるビニル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ナイロン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂などの熱可塑性樹脂、フェノール樹脂等の熱硬化性樹脂などが挙げられる。
【0036】
バインダー型キャリアの磁性体微粒子としては、マグネタイト、ガンマ酸化鉄等のスピネルフェライト、鉄以外の金属(Mn、Ni、Mg、Cu等)を1種又は2種以上含有するスピネルフェライト、バリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライト、表面に酸化鉄を有する鉄や合金の粒子などを用いることができる。その形状は、粒状、球状、針状のいずれであってもよい。とくに高磁化を必要とする場合は、鉄系の強磁性微粒子を用いるのが好ましい。また、化学的な安定性を考慮すると、マグネタイト、ガンマ酸化鉄を含むスピネルフェライトやバリウムフェライト等のマグネトプランバイト型フェライトの強磁性微粒子を用いるのが好ましい。強磁性微粒子の種類及び含有量を適宜選択することにより、所望の磁化を有する磁性樹脂キャリアを得ることができる。磁性体微粒子は磁性樹脂キャリア中に50〜90重量%の量で添加するのが好ましい。
【0037】
バインダー型キャリアの表面コート材としては、シリコーン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂等が用いることができる。これらの樹脂を表面にコートし硬化させてコート層を形成することにより、帯電付与能力を向上させることができる。
【0038】
バインダー型キャリア表面への帯電性微粒子又は導電性微粒子の固着は、例えば、磁性樹脂キャリアと微粒子とを均一混合し、磁性樹脂キャリアの表面にこれらの微粒子を付着させた後、機械的・熱的な衝撃力を与え、微粒子を磁性樹脂キャリア中に打ち込むようにして固定することにより行うことができる。この場合、微粒子は、磁性樹脂キャリア中に完全に埋設されるのではなく、その一部が磁性樹脂キャリア表面から突出するように固定される。帯電性微粒子としては、有機系又は無機系の絶縁性材料を用いることができる。
【0039】
具体的には、有機系の絶縁性材料としては、ポリスチレン、スチレン系共重合物、アクリル樹脂、各種アクリル共重合物、ナイロン、ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素樹脂及びこれらの架橋物などの有機絶縁性微粒子を用いることができる。ここで、帯電レベル及び極性については、素材、重合触媒、表面処理等により、希望するレベルの帯電及び極性を得ることができる。また、無機系の絶縁性材料としては、シリカ、二酸化チタン等の負帯電性の無機微粒子や、チタン酸ストロンチウム、アルミナ等の正帯電性の無機微粒子などが用いられる。
【0040】
一方、コート型キャリアは磁性体からなるキャリアコア粒子に樹脂コートがなされてなるキャリアであり、コート型キャリアにおいてもバインダー型キャリアと同様に、キャリア表面に正帯電性又は負帯電性の帯電性微粒子を固着させることができる。コート型キャリアの極性等の帯電特性は、表面コーティング層の種類や帯電性微粒子により制御することができる。また、コート型キャリアの材料としては、バインダー型キャリアと同様の材料を用いることができる。とくにコート樹脂には、バインダー型キャリアのバインダー樹脂と同様の樹脂を用いることができる。
【0041】
逆極性粒子、トナー及びキャリアの組合せによるトナー及び逆極性粒子の帯電極性は、それぞれを混合攪拌して現像剤とした後、現像剤からトナー又は逆極性粒子を分離するための電界の方向から容易に知ることができる。トナーとキャリアの混合比は、所望のトナー帯電量が得られるよう調整すればよく、トナーの比率は、トナーとキャリアの合計量に対して3〜50重量%、好ましくは6〜30重量%とするのが好ましい。
【0042】
(障害部材に関する説明)
以下、図2及び図3を参照しつつ、障害部材10及び該障害部材10を取り付けるための障害部材取付け部を具体的に説明する。障害部材10はタングステンワイヤーからなり、例えば直径100μm〜1000μm程度、望ましくは250μm〜700μm程度のものを用いることができる。この障害部材10は、両現像ローラ21a、21b間においてトナー供給ローラ23の周面上又は近傍に配置され、トナー供給ローラ23上の現像剤25の流れを部分的にせき止め、現像剤25をトナー供給ローラ23の表面から一時的に引き離す。なお、以下では便宜上、トナー供給ローラ23の直径方向に関して、トナー供給ローラ23の中心と障害部材10の中心とを通る方向を「軸径方向」という。したがって、障害部材10は、トナー供給ローラ23の周面の上、又はこの周面から軸径方向外向きに若干離間して配置されている。
【0043】
このため、トナー供給ローラ23上の現像剤25は、第1現像ローラ21aとの対向位置を通過した後において第2現像ローラ21bに到達する前に、障害部材10によって十分に攪拌され、トナー供給ローラ23上の現像剤25の上層部と下層部とで現像剤23の入れ替わりが効率的に行われる。これにより、第1現像ローラ21aとの対向位置を通過した後におけるトナー供給ローラ23上の現像剤25中のトナーと磁性粒子の比率が不均一となりあるいは変動するのを有効に抑制又は防止することができる。その結果、第2現像ローラ21bのトナー搬送量の経時的な変化を抑制又は防止することができ、画像濃度にムラが生じるのを防止することができる。
【0044】
本発明に係る現像装置2においては、トナー供給ローラ23の長手方向の両端部近傍に、それぞれ、トナー供給ローラ23と障害部材10との間の軸径方向の距離を規定する合成樹脂製の間隔設定部材11が設けられている(図2、図3では、一方の端部のみ図示している。)。間隔設定部材11は、支持部材12を介して、現像装置2のハウジングに固定されている。また、間隔設定部材11は、トナー供給ローラ23の両端の軸部17が該間隔設定部材11を貫通するように形成・配置されている。また、間隔設定部材11とトナー供給ローラ23との間には、固定された間隔設定部材11に対して、トナー供給ローラ23ないしは軸部17が円滑に回転することを可能にするためにベアリング13が介設されている。
【0045】
タングステンワイヤーからなる障害部材10は、両間隔設定部材11間の距離よりやや長い適切な長さを有するように作成され、その両端部にはそれぞれリング状のリング部18が設けられている。なお、リング部18は、障害部材10の両端部をそれぞれリング状に形成し、又は、障害部材10の両端部にそれぞれリング状の部材を溶接等により固着することにより設けることができる。そして、障害部材10の支持部材12への取り付けは、以下のような手法で行われる。すなわち、障害部材10に適正な引っ張り荷重(例えば500g/1本程度)がかかるように該障害部材10を張設した状態で、両リング部18をそれぞれビス14により両支持部材12上に固定する。
【0046】
前記のとおり、障害部材10に適正な引っ張り荷重がかかっているので、トナー供給ローラ23の長手方向に関して、トナー供給ローラ23と障害部材10との間の軸径方向の距離は一定に保たれる。ここで、障害部材10の一方又は両方の端部近傍部をばね状に形成し、障害部材10により安定した引っ張り荷重ないしは張力が生じるようにしてもよい。また、障害部材11を位置決めないしは保持するために、各間隔設定部材11に障害部材10と係合する溝部等(図示せず)を形成してもよい。なお、障害部材10の構成、間隔設定部材等は、上記の実施例に限定されるわけではない。
【0047】
また、図4に示すように、現像装置2に、タングステンワイヤーからなる障害部材10を振動させる振動発生器16を設けてもよい。この場合、振動発生器16と支持部材12との間に、振動の伝播を抑制する振動抑制部材(図示せず)を配置するのが好ましい。なお、振動発生器16としては、例えばミネベアモータ社製のLVM8等を用いることができる。また、振動抑制部材は、例えばウレタンフォーム等で形成することができる。このように振動発生器16を設ける場合は、障害部材10の振動により、トナー供給ローラ23上の現像剤25を、第1現像ローラ21aとの対向位置を通過した後において第2現像ローラ21bに到達する前に、より効果的に攪拌することができる。
【0048】
(本発明に係る現像装置の評価)
図1に示す現像装置2を備えた画像形成装置を実際に製作した上で、下記のように障害部材10の態様を種々変えて、あるいは振動発生器16を設け又は取り外して、図5に示す評価用の画像パターンを用いて実際に印刷の実験を行い、本発明の有効性を評価した(画出し評価)。なお、この実験・評価用の画像形成装置は、コニカミノルタ社製のC6500を改造することにより製作した。現像剤は、C6500の初期現像剤を使用した。
【0049】
障害部材10とトナー供給ローラ23との間の軸径方向の最短距離(以下「障害部材ローラ間隔」という。)を、0μm(接触)〜800μmの範囲で種々変えて実験・評価を行った。また、障害部材10としては、下記の7種のものを用いて実験・評価を行った。
(1)タイプ1:直径100μmのタングステンワイヤー
(2)タイプ2:直径200μmのタングステンワイヤー
(3)タイプ3:直径450μmのタングステンワイヤー
(4)タイプ4:直径700μmのタングステンワイヤー
(5)タイプ5:直径1000μmのタングステンワイヤー
(6)タイプ6:直径250μmのタングステンワイヤー(2本)
(7)タイプ7:直径450μmのSUSワイヤー
【0050】
下記の表1及び表2に実験・評価の結果を示す。なお、表1及び表2において、評価ランクは、下記のとおりである。
(1)評価×:濃度差が明確に認められ、品質上問題となる。
(2)評価△:濃度差は認められる、品質上問題はない。
(3)評価○:かすかに濃度差が認められる。
(4)評価◎:濃度差は全く認められない。














【0051】
[表1]
表1 実験結果1(トナー供給ローラ搬送量250g/m、現像剤平均高さ500μm)

【0052】
[表2]
表2 実験結果2(トナー供給ローラ搬送量600g/m、現像剤平均高さ800μm)

【0053】
表1及び表2に示す実験結果によれば、とくに実施例と比較例の比較によれば、本発明に係る障害部材10を備えた現像装置2を用いれば、画像濃度にムラが生じるのを有効に防止ないしは抑制することができるということが分かる。これは、前記のとおり、本発明に係る現像装置2によれば、第1現像ローラ21aとの対向位置を通過した後におけるトナー供給ローラ23上の現像剤25を障害部材10により十分に攪拌することができ、これにより現像剤25中のトナーと磁性粒子の比率の不均一化又は変動を抑制又は防止することができ、その結果第2現像ローラ21bのトナー搬送量の経時的な変化を抑制又は防止することができるからである。また、表1の実験結果と表2の実験結果とを全体的に比較すれば、トナー供給ローラ23上の現像剤25の搬送量を変えても、ほぼ同様の効果を奏するということが分かる。
【0054】
表1及び表2に示す実験結果からは、とくに下記の事項を指摘することができる。
まず、実施例(1−4)、(1−5)、(1−9)、(2−4)、(2−5)、(2−9)と実施例(1−13)、(1−14)、(2−13)、(2−14)とを比較すれば、障害部材ローラ間隔、すなわち障害部材10とトナー供給ローラ23との間の軸径方向の距離と、トナー供給ローラ23上の現像剤25の量とを適切な関係とすることにより、本発明の効果を向上させることができることが分かる。なお、これらの実施例では、タイプ4又はタイプ5の障害部材10(タングステンワイヤー)を用いている。
【0055】
具体的には、トナー供給ローラ搬送量が250g/mの場合(表1)は、障害部材ローラ間隔が280μmのときは評価がいずれも「△」であるが、280μm未満(0μm、100μm)のときは評価が「◎」又は「○」である。他方、トナー供給ローラ搬送量が600g/mの場合(表2)は、障害部材ローラ間隔が360μmのときは評価がいずれも「△」であるが、360μm未満(0μm、100μm)のときは評価が「◎」又は「○」である。したがって、障害部材ローラ間隔をあまり大きくすると評価が悪くなることが分かる。よって、障害部材ローラ間隔は、トナー供給ローラ搬送量に応じた所定の上限値より小さくするのが好ましい。
【0056】
また、実施例(1−1)、(2−1)と実施例(1−2)〜(1−5)、(2−2)〜(2−5)とを比較すれば、障害部材10(ワイヤー)の外径をトナー供給ローラ23上の現像剤の高さ又は厚さに対して所定値以上とすることにより、本発明の効果を向上させることができることが分かる。なお、これらの実施例では、障害部材ローラ間隔はすべて0(接触)である。
【0057】
具体的には、トナー供給ローラ搬送量が250g/mの場合(表1)及び600g/mの場合(表2)のいずれにおいても、タングステンワイヤーからなる障害部材10の直径が100μmのときは評価が「△」であるが(タイプ1)、100μを超えているとは評価が「◎」又は「○」である(タイプ2〜5)。したがって、タングステンワイヤーの直径、すなわち障害部材10の軸径方向の寸法をあまり小さくすると評価が悪くなることが分かる。よって、障害部材10の軸径方向の寸法は所定の下限値より大きくするのが好ましい。
【0058】
実施例(1−15)〜(1−17)、(2−15)〜(2−17)と実施例(1−1)、(1−2)、(1−10)、(2−1)、(2−2)、(2−10)とを比較すれば、振動発生器16を設けて障害部材10に振動を与えることにより、本発明の効果を向上させることができることが分かる。なお、これらの実施例では、タイプ1又はタイプ2の障害部材10(タングステンワイヤー)を用いている。
【0059】
具体的には、障害部材10がタイプ1であり振動発生器16を用いない実施例(1−1)、(2−1)では評価が「△」であるが、障害部材10がタイプ1であり振動発生器16を用いた実施例(1−15)、(2−15)では評価が「○」である。また、障害部材10がタイプ2であり振動発生器16を用いない実施例(1−2)、(1−10)、(2−1)、(2−10)では評価が「○」であるが、障害部材10がタイプ2であり振動発生器16を用いた実施例(1−16)、(1−17)、(2−16)、(2−17)では評価が「◎」である。したがって、振動発生器16を用いることにより、画像濃度のムラの発生をより有効に抑制又は防止することができることが分かる。
【0060】
実施例(1−2)、(2−2)と実施例(1−6)、(2−6)とを比較すれば、障害部材10を複数設けることにより、本発明の効果を向上させることができることが分かる。具体的には、障害部材10が1本のタングステンワイヤーである実施例(1−2)、(2−2)では評価が「○」であるが、障害部材10が2本のタングステンワイヤーである実施例(1−6)、(2−6)では評価が「◎」である。したがって、障害部材10を複数設けることにより、画像濃度のムラの発生をより有効に抑制又は防止することができることが分かる。
【産業上の利用可能性】
【0061】
以上のように、本発明に係る現像装置は、電子写真方式の画像形成装置の現像装置として有用であり、とくに複写機、プリンタ、ファクシミリなどの現像装置として用いるのに適している。
【符号の説明】
【0062】
1 静電潜像担持体(感光体)、2 現像装置、3 トナーボトル、4 第1電界形成手段、5a 第2電界形成手段、5b 第3電界形成手段、6 帯電手段、7 露光手段、8 転写手段、9 清掃手段、10 障害部材(ワイヤー)、11 間隔設定部材、12 支持部材、13 ベアリング、14 ビス、16 振動発生器、17 軸部、18 リング部、21a 第1現像ローラ、21b 第2現像ローラ、22a トナー層、22b トナー層、23 トナー供給ローラ、23a スリーブローラ、23b 磁石ローラ、24 規制部材、25 現像剤、26 攪拌搬送手段、27 トナー補給ローラ、28 現像剤槽、29 ケーシング、P 転写媒体。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁石を内包するともに、トナーと磁性粒子とを含む現像剤を周面に保持するトナー供給ローラと、
上記トナー供給ローラに対向して配置された2本の現像ローラと、
上記トナー供給ローラから上記両現像ローラへトナーを転移させる方向の交番電位差を形成する電位差形成手段と、
上記両現像ローラ上に転移したトナーを、上記両現像ローラに対向して配置された静電潜像担持体上に転移させて静電潜像担持体上の潜像部を現像するための電界を形成する電界形成手段とを備えている現像装置であって、
上記両現像ローラ間において上記トナー供給ローラの上又は近傍に配置され、上記トナー供給ローラ上の現像剤の流れを部分的にせき止め、現像剤を上記トナー供給ローラの表面から一時的に引き離す障害部材を備えていることを特徴とする現像装置。
【請求項2】
上記障害部材と上記トナー供給ローラとの間の最近接距離をAとし、上記障害部材と上記トナー供給ローラとが対向する位置における上記トナー供給ローラ上の現像剤の平均高さをBとすれば、AとBの関係が、
A≦B×0.5
であることを特徴とする請求項1に記載の現像装置。
【請求項3】
上記トナー供給ローラの軸径方向に関する上記障害部材の厚さをCとし、上記障害部材と上記トナー供給ローラとが対向する位置における上記トナー供給ローラ上の現像剤の平均高さをBとすれば、CとBの関係が、
C≧B×0.25
であることを特徴とする請求項1又は2に記載の現像装置。
【請求項4】
上記障害部材を振動させる振動発生器を備えていることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1つに記載の現像装置。
【請求項5】
上記障害部材が複数設けられていることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1つに記載の現像装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−186050(P2011−186050A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49241(P2010−49241)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(303000372)コニカミノルタビジネステクノロジーズ株式会社 (12,802)
【Fターム(参考)】