球形タンク脚部の補強構造
【課題】 球形タンクを支持する支柱の外周に、環状枠材と傾斜材と水平梁材を組合せた構造体を火気を使用することなく安全作業で作業能率良く構築して、地震や強風などによる振動や揺れによる変位を抑えて耐久性と耐震性をより向上させた球形タンク脚部の補強構造を提供する。【解決手段】 球形タンクを垂直に支承する支柱に対して、該支柱の基礎の近傍に隔離して設けた環状の支持枠と、該支持枠から上記支柱にわたって設けた傾斜材と、該傾斜材と上記支柱とを連結する水平梁材とで一体剛構造に形成する球形タンク脚部の補強構造であって、上記支柱と傾斜材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合し、また上記支柱と水平梁材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合して一体架構の剛構造とし、現地で火気を使用することなく組立て施工する接合構造にて形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮ガス、液化ガス等を貯蔵する球形タンクの脚部の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
球形タンクを支持する脚部の構造について、図5に基づいて説明する。 図5に示すように、球形タンク21は、地面の基版22上の隔離した複数の基礎23から地上に高く垂直に設けた複数本の円筒状の支柱25によって支持され、この隔離し独立した支柱25の相互間には傾斜し交差させて設けた斜材のブレーシング28が設けられている。この円筒状の支柱25の上端部26は、球形タンク21の球殻外壁面24の赤道部近傍の固着部27の位置に、溶接によって一体に固着されている。
【0003】
球形タンクの耐震性を向上させた従来発明として、例えば、特開平9−156688号公報「球形タンクの支持構造」に開示されている。この発明は、球形タンク1を複数の支持脚2で支持し、この複数の支持脚2に接する環状の帯板10を配置しかつ固定して耐震性を向上するようにしたものである。
【0004】
また、球形貯槽1の支承部の耐震性を向上させた発明としては、本出願人に係る特開2001−180797号公報「貯槽の支持構造」の発明がある。この発明は、一体架構の剛構造の支持枠体4の上に、球形貯槽1の湾曲した底部外壁面3を固着することなく、摺動可能に接触させた状態で支承するようにした支持構造である。
【0005】
さらにまた、球形タンクの耐震性を向上させた補強に関わる発明としては、本出願人に係る特願2004−365378号「球形タンク脚部の補強構造と補強方法」の発明がある。この発明は、球形タンクの支柱の基礎近傍に環状の支持枠を配置し、傾斜材と水平補強材にて一体剛構造に補強したものである。
【0006】
【特許文献1】特開平9−156688号
【特許文献2】特開2001−180797号
【特許文献3】特願2004−365378号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5のような球形タンク21の支柱25の上端部26は、地面の基版22上の基礎23から高い位置の固着部27で、球形タンク21の赤道部近傍に至る湾曲した球殻外壁面24に溶接で固着する構造である。そのため、垂直方向の自重は十分支持することができるが、地震などによる基版22の振動は、各基礎23に個別に伝わり、また強風や地震などによる球形タンク21の揺れは、固着部27から支柱25上端部26を介して基礎23に個別に伝わるため、この振動と揺れの荷重集中によって、一部の支柱25の基礎23に変形や損傷を生じる場合があった。このように複数の隔離した基礎23上に、長い円筒状の支柱25が独立して設けられているために、地震や強風などによる大きな振動や揺れに対して、各支柱25の応答挙動がバラバラとなり、荷重に偏りと集中が生じ易くなって、一部の支柱25の基礎23に大きな変形や損傷などの被害を受けることがあった。 この大きく変形し損傷した球形タンク21の支柱25及び基礎23を、後から大幅に補強することは大変であった。
【0008】
また、球形タンクの耐震性を向上させた特開平9−156688号公報に開示された従来発明の「球形タンクの支持構造」は、球形タンク1を複数の支持脚2で支持し、この複数の支持脚2に接する環状の帯板10を配置しかつ固定したもので、球形タンク1の水平方向の揺れを減衰する制震性能には優れている。しかしながら、長周期の振動や大きな横揺れなどは各支柱25及び基礎23へ伝わって変形や損傷を生じる心配があった。
【0009】
さらに、本出願人に係る発明、特開2001−180797号公報「貯槽の支持構造」に開示された発明の支持構造は、一体架構の剛構造の支持枠体4の上に、球形貯槽1の湾曲した底部外壁面3を固着することなく摺動可能に接触させた状態で支承するようにした支持構造である。しかしながら、このような支承する支持構造は、隔離し独立した支柱を補強する構造とは本質的に異なるもので、独立した支柱よりなる脚部の補強構造としては充分ではなかった。
【0010】
さらにまた、本出願人に係る発明、特願2004−365378号「球形タンク脚部の補強構造と補強方法」の発明は、球形タンクの支柱の基礎近傍に環状の支持枠を配置し、傾斜材と水平補強材にて一体剛構造に補強するものであるが、現地で溶接など火気を使用して組立て固着するため、供用中の球形タンク及び稼働中のガス設備などがある場合には、原則的に工事ができない状況であった。また、設備を休止して設置工事を行う場合であっても、溶接時の安全対策や養生などの配慮が大変で組立ての作業性も良くなかった。
【0011】
この発明の目的は、上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、球形タンクを支持する支柱下部の基礎の外周に、環状枠材と傾斜材と水平梁材を組合せた構造体を、火気を使用することなく安全作業で作業能率良く構築し、基礎近傍に荷重が集中することなく損傷を生じないように補強支持して、地震や強風などによる振動や揺れによる変位を抑えて、耐久性と耐震性をより向上させた球形タンク脚部の補強構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係る球形タンク脚部の補強構造は、基版の基礎から垂直に設置し球形タンクの外周下部を垂直に支承する支柱に対して、該支柱の基礎の近傍に隔離して設けた環状の支持枠と、該支持枠から上記支柱にわたって設けた傾斜材と、該傾斜材と上記支柱とを連結する水平梁材とで一体剛構造に形成する球形タンク脚部の補強構造であって、上記支柱と傾斜材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合し、また上記支柱と水平梁材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合して一体架構の剛構造とし、現地で火気を使用することなく組立て施工する接合構造にて形成したものである。
【0013】
請求項2の発明に係る球形タンク脚部の補強構造は、上記請求項1の環状の支持枠の適所に基版と一体化するアンカーを設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係る球形タンク脚部の補強構造は、基版の基礎から垂直に設置し球形タンクの外周下部を垂直に支承する支柱に対して、該支柱の基礎の近傍に隔離して設けた環状の支持枠と、該支持枠から上記支柱にわたって設けた傾斜材と、該傾斜材と上記支柱とを連結する水平梁材とで一体剛構造に形成する球形タンク脚部の補強構造であって、上記支柱と傾斜材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合し、また上記支柱と水平梁材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合して一体架構の剛構造とし、現地で火気を使用することなく組立て施工する接合構造にて形成したので、既設の球形タンクの脚部の補強に簡便に対応することができ、殊に供用中で火気を使用することが困難な場合の既設の球形タンク脚部の補強、並びに脚部が損傷した場合の補修及び補強に適用し、安全作業で作業能率良く施工することができる。また、地震や強風などによる振動や揺れに対して、一体に組立てた補強構造体が支えるため、支柱下部の基礎に荷重が集中することなく、かつ補強構造体により変位や振動などを吸収緩和するので、局部的に基礎が損傷し破損する心配がなく、垂直荷重及び水平荷重に対して、耐久性及び耐震性に優れた脚部の補強構造となる。
【0015】
請求項2の発明に係る球形タンク脚部の補強構造は、上記請求項1の環状の支持枠の適所に基版と一体化するアンカーを設けたので、支持枠と基版との結合が一体化され既設の基礎への荷重負担が軽減されるため、一層の安定性を確保することができる。また、支持枠を設置する際に、基準となる位置が安定するため作業がし易い。環状の支持枠は剛性を持ちアンカーによって基版へ一体結合されているため、位置ずれした支柱に対して安定した支持枠を介してジャッキ等の治具で大きな力を与えて移動し復元することができるため、作業が簡単容易で、短時間に、簡単な機材で支柱及び基礎の修正を行うことが出来る。このように、支持枠などの補強材の設置の際に、基版上でアンカーによる位置決め固定と支柱への取付け作業が容易で、組立て作業などに手間を要することなく、短時間で作業能率良く脚部の補強と基礎の補修を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明に係る球形タンク脚部の補強構造を、図1乃至図4に基づいて説明する。 図1は、球形タンクの脚部の補強構造の実施形態例で全体の斜視説明図を示す。図2は、図1の支柱の一箇所要部を拡大して示す側面図である。
【0017】
球形タンク1は、地面の基版2上に隔離して設けた複数の基礎3から地上に垂直に設置した複数本の支柱5によって球殻4の外周を支えられている。図1に示す事例は6本の支柱5を設けた場合の補強事例であるが、球形タンク1の規模に応じて8本、10本などの複数本の場合についても同様に、以下詳述する補強構造を適用することができる。 球形タンク1の脚部の補強構造について、図1に基づいて説明する。支柱5の基礎3から外周に隔離して、水平に環状の支持枠6を基版2上に設ける。この支持枠6は、図1に示すように支柱5の本数6に応じた平面正六角形の平面多角形状に、支持枠接合部12にて連結し一体剛構造の環状体に形成する。
【0018】
この支持枠6の正六角形の頂点に相当する位置近傍の基版2にアンカー13を設置して位置決め固定し、その上端面から支柱5にわたって傾斜して支える傾斜材7を支柱取付部10にて連結し、この傾斜材7から支柱5にわたって水平に支える水平梁材9を支柱取付部11連結する。さらに支持枠6から基版2上に沿って基礎3の端縁に渡した水平材8を設け、これらの補強材全体を一体構造に形成する。
【0019】
上記した図1の事例は、支柱5の本数に応じた平面多角形状の環状体に形成する場合を示したが、支柱5の本数と異なる多角形、或いは円形の環状体であっても良い。また、図1の事例は、支柱5の外周に隔離して環状の支持枠6を設けた場合を示したが、球形タンクの規模や周囲の状況に応じて、支柱5の基礎3の内周に隔離して環状の支持枠6を設けて支持するようにしても良く、或いは支柱5の基礎間に支持枠6を設けて一体環状に接続して補強するようにしても良い。
【0020】
図2に基づいて、図1に示す脚部の補強構造についてさらに詳述する。この図2の事例では、支持枠6と基礎3との間に水平材8を設けていない場合を示している。支持枠6は基版2上の基礎3から外方に隔離して、図2に断面を示すような断面H型鋼材などを用いて支持枠接合部12にてボルト接合等によって組立て、平面多角形状で一体剛構造の環状体に配置する。この支持枠6の多角形の頂点近傍の下部フランジ面には、基版2の地面中へ至るアンカー13を設ける。この場合、支持枠6と基礎3との間に水平材8を設けていないので、既設の基礎3への荷重負担が軽減される。また、図2のX部に示すように、支持枠6の多角形の頂点近傍の上端面から、対向する支柱5の上部にわたって傾斜させて設ける傾斜材7は、支柱5へ支柱取付部10にて湾曲材を介してボルト接合等で結合する。さらに、図2のY部に示すように、支持枠6から支柱5へ水平に連結する水平梁材9は、支柱5へ支柱取付部11にて湾曲材を介してボルト接合等で結合する。
【0021】
上記した支持枠6、傾斜材7、及び水平梁材9などの補強部材は、例えば型鋼材、矩形鋼材、パイプ材等を適宜用いることができ、これらの部材をボルト接合等で組立て連結して一体架構の剛構造に形成する。このように、ボルト接合等で組立て連結して一体架構の剛構造に形成する補強構造体は、現地にて火気を使用することなく作業性良く組立て施工することができる。
【0022】
図3は、図2のX部で、支柱5と傾斜材7との固着部となる支柱取付部10の他の実施形態例を示す。支柱取付部10は、例えば湾曲材10A、10Bで形成し、湾曲材10Aには傾斜材
7を接合する傾斜材接合端7Aを予め工場で溶接にて固着した結合構造の場合を示す。この湾曲材10A、10Bを支柱5の所定位置へボルト接合等で固定する。14は傾斜材接合部で、上記傾斜材接合端7Aに傾斜材7の端縁をボルト接合等で結合する。このように傾斜材7は、支柱5へ湾曲材10A、10Bを用いて支柱取付部10にてボルト接合等で作業性良く簡単に結合することができる。
【0023】
図4は、図2のY部で、支柱5の基礎3近傍及び支柱5と水平梁材9との固着部となる支柱取付部11の他の実施形態例を示す。支柱取付部11は、例えば湾曲材11A、11Bで形成し、湾曲材11Aには水平梁材9を接合する水平梁材接合端9Aを予め工場で溶接にて固着した結合構造の場合を示す。この湾曲材11A、11Bを支柱5の所定位置へボルト接合等で固定する。15は水平梁材接合部で、上記水平梁材接合端9Aに水平梁材9の端縁をボルト接合等で結合する。このように水平梁材9は、支柱5へ湾曲材11A、11Bを用いて支柱取付部11にてボルト接合等で作業性良く簡単に結合することができる。
【0024】
17は支柱5の下端面を固着する鋼板などのアンカープレート、18はアンカープレート17を基礎3に固定するためのアンカーボルト、16は基礎2の割れや損傷部を被覆して補修するノンシュリンクモルタルなどのグラウト材、19はアンカープレート17の下端縁の隙間を埋める充填材である。 これらの補強部材及び補修部材を使用することにより、風雨や温度変化、地震などで基礎3部材が劣化し損傷などしないように保護し、支柱5及び基礎3の耐久性向上を図ることができる。
【0025】
上述のように、補強支持部材を用いて補強することにより、地震や強風などによる振動や揺れに対して、特定の支柱5及び基礎3に荷重が集中することなく、かつ局部的に損傷や破損を生じる心配がなく、垂直荷重及び水平荷重に対して、耐久性に優れた補強構造となる。よって、長周期の振動、大きな揺れなどの動きを生じる地震や強風などに対して一層強い構造となり、球形タンクの脚部の耐久性と安全性をより向上させることができる。
【0026】
既設の球形タンク1の脚部を補強する場合について説明する。支柱5の基礎3の外周地面の基版2の上に、所定間隔をおいて支持枠6を配置し、支持枠接合部12にてボルト接合等を用いて環状の多角形に組み立てる。支持枠6の多角形の頂点近傍の下部フランジ面に、アンカー13を挿通して基版2に埋設固定する。球形タンク1の支柱5には、その上部所定箇所に湾曲材10A,10Bよりなる支柱取付部10を取付け、また下部所定箇所に湾曲材11A,11Bよりなる支柱取付部11をボルト接合等で取付ける。環状多角形の支持枠6の頂点近傍の上端面から支柱5の上部にわたる傾斜材7の先端を、上記半割管材10Aの傾斜材接合端7Aに合せて傾斜材接合部14にてボルト接合等で結合する。また、傾斜材7から支柱5の下部にわたる水平梁材9の先端を、上記湾曲材11Aの水平梁材接合端9Aに合せて水平梁材接合部15にてボルト接合等で結合する。
【0027】
地震等で支柱5の位置がずれて基礎3が損傷した既設の球形タンクについて、支柱5を所定の位置へ移動し戻して脚部を補強する手順の事例を、以下に詳述する。(1)支柱5の基礎3の外周地面の基版2の上に所定間隔をおいて支持枠6を配置する。この際に、支持枠6の多角形の頂点近傍の下部フランジ面などの適所にアンカー13を施工するとともに、支持枠6を支持枠接合部12にてボルト接合等で環状の多角形に組み立てる。(2)支持枠6と各基礎3の間には、必要に応じて水平材8を渡して両端を固定保持し、上記環状の支持枠6と基礎3を一体構造とする。(3)地震などによって位置がずれた支柱5を、上記アンカー13で固定した支持枠6を支えに使用してジャッキやチェーンブロック等の治工具で押圧し、或いは引張って、支柱5の下端を基礎3上の所定位置に移動し修正する。(4)支柱5の上部所定箇所に湾曲材10A,10Bよりなる支柱取付部10を取付け、また下部所定箇所に湾曲材11A,11Bよりなる支柱取付部11を取付ける。(5)環状多角形の支持枠6の頂点近傍の上端面から、支柱5の上部に傾斜材7を斜めに掛け渡して、その端縁を支柱取付部10の湾曲材10Aの傾斜材接合端7Aに合せて傾斜材接合部14にてボルト接合等で結合する。(6)傾斜材7と支柱5の間に、水平梁材9を水平に渡してその端縁を支柱取付部11の湾曲材11Aの水平梁材接合端9Aに合せて水平梁材接合部15にてボルト接合等で結合する。(7)対向、或いは隣接する支柱5について、順次、(3)と同様に基礎3上の所定位置に移動修正し、(4)と同様に支柱5に支柱取付部10,11を取付け、(5)と同様に傾斜材7を掛け渡して端縁を結合し、(6)と同様に水平梁材9を渡し端縁を結合して全体を一体剛構造に組み立てる。(8)損傷した基礎3には、新しいアンカーボルト、グラウト材やモルタルなどを施工して補修する。
【0028】
上述のように、既設の球形タンクの脚部を補強する場合には、従来のように既設の各支柱5と基礎3を個別に補修するのではなく、また大掛かりな仮設機材を要することなく、上記のように補強部材である支持枠6をアンカー13で基版2に固定し、さらに必要に応じて水平材8を用いて基礎3と一体化し、位置ずれした支柱5に対して、安定した支持枠6を支えにして、ジャッキやチェーンブロック、ワイヤロープ等の治工具を用いて、大きな力を与えて押圧し、或いは引張ることができるため、作業が簡単容易、かつ短時間に、簡単な機材で支柱の修正を行うことが可能となる。上記の手順で作業性良く既設の支柱5及び基礎3を修正して補強するので、繁雑で手間を要する作業がない。また、補強材の配置と組立ての際にボルト接合で行うため、位置決め及び設置作業が容易で、現場で火気を使用しないため、供用中の球形タンクで周辺設備が稼働中であっても安全に作業することができ、短時間で作業能率良く一体剛構造に補強することができる。
【0029】
さらに、図示はしないが、基礎3にかかる垂直方向及び水平方向の振動、変位、荷重などを吸収緩和するように、各部材の接続部に緩衝部材を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
球形タンクにおける脚部の補強構造として簡便に対応することができ、殊に供用中の球形タンクで火気を使用することが困難な既設の球形タンク脚部の補強、並びに脚部が損傷した場合の補修及び補強に適用し、安全作業で作業能率良く施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明に係る球形タンクの脚部の補強構造の実施形態例を示す斜視説明図である。
【図2】図1の脚部の補強構造における支柱近傍部を拡大して示す側断面説明図である。
【図3】図2のX部に相当する箇所の他の実施形態例として、支柱と傾斜材の取付け部を拡大して示す斜視説明図である。
【図4】図2のY部に相当する箇所の他の実施形態例として、支柱と水平梁材の取付部及び基礎の部分を拡大して示す斜視説明図である。
【図5】従来の球形タンクの支持構造を示す側面説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 球形タンク 2 基版 3 基礎 4 球殻 5 支柱 6 支持枠 7 傾斜材 7A 傾斜材接合端 8 水平材9 水平梁材9A 水平梁材接合端10 支柱取付部10A 湾曲材10B 湾曲材11 支柱取付部11A 湾曲材11B 湾曲材12 支持枠接合部13 アンカー14 傾斜材接合部15 水平梁材接合部16 グラウト材17 アンカープレート18 アンカーボルト19 充填材 21 球形タンク22 基版23 基礎24 外壁面25 支柱26 上端部27 固着部28 ブレーシング
【技術分野】
【0001】
この発明は、圧縮ガス、液化ガス等を貯蔵する球形タンクの脚部の補強構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
球形タンクを支持する脚部の構造について、図5に基づいて説明する。 図5に示すように、球形タンク21は、地面の基版22上の隔離した複数の基礎23から地上に高く垂直に設けた複数本の円筒状の支柱25によって支持され、この隔離し独立した支柱25の相互間には傾斜し交差させて設けた斜材のブレーシング28が設けられている。この円筒状の支柱25の上端部26は、球形タンク21の球殻外壁面24の赤道部近傍の固着部27の位置に、溶接によって一体に固着されている。
【0003】
球形タンクの耐震性を向上させた従来発明として、例えば、特開平9−156688号公報「球形タンクの支持構造」に開示されている。この発明は、球形タンク1を複数の支持脚2で支持し、この複数の支持脚2に接する環状の帯板10を配置しかつ固定して耐震性を向上するようにしたものである。
【0004】
また、球形貯槽1の支承部の耐震性を向上させた発明としては、本出願人に係る特開2001−180797号公報「貯槽の支持構造」の発明がある。この発明は、一体架構の剛構造の支持枠体4の上に、球形貯槽1の湾曲した底部外壁面3を固着することなく、摺動可能に接触させた状態で支承するようにした支持構造である。
【0005】
さらにまた、球形タンクの耐震性を向上させた補強に関わる発明としては、本出願人に係る特願2004−365378号「球形タンク脚部の補強構造と補強方法」の発明がある。この発明は、球形タンクの支柱の基礎近傍に環状の支持枠を配置し、傾斜材と水平補強材にて一体剛構造に補強したものである。
【0006】
【特許文献1】特開平9−156688号
【特許文献2】特開2001−180797号
【特許文献3】特願2004−365378号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
図5のような球形タンク21の支柱25の上端部26は、地面の基版22上の基礎23から高い位置の固着部27で、球形タンク21の赤道部近傍に至る湾曲した球殻外壁面24に溶接で固着する構造である。そのため、垂直方向の自重は十分支持することができるが、地震などによる基版22の振動は、各基礎23に個別に伝わり、また強風や地震などによる球形タンク21の揺れは、固着部27から支柱25上端部26を介して基礎23に個別に伝わるため、この振動と揺れの荷重集中によって、一部の支柱25の基礎23に変形や損傷を生じる場合があった。このように複数の隔離した基礎23上に、長い円筒状の支柱25が独立して設けられているために、地震や強風などによる大きな振動や揺れに対して、各支柱25の応答挙動がバラバラとなり、荷重に偏りと集中が生じ易くなって、一部の支柱25の基礎23に大きな変形や損傷などの被害を受けることがあった。 この大きく変形し損傷した球形タンク21の支柱25及び基礎23を、後から大幅に補強することは大変であった。
【0008】
また、球形タンクの耐震性を向上させた特開平9−156688号公報に開示された従来発明の「球形タンクの支持構造」は、球形タンク1を複数の支持脚2で支持し、この複数の支持脚2に接する環状の帯板10を配置しかつ固定したもので、球形タンク1の水平方向の揺れを減衰する制震性能には優れている。しかしながら、長周期の振動や大きな横揺れなどは各支柱25及び基礎23へ伝わって変形や損傷を生じる心配があった。
【0009】
さらに、本出願人に係る発明、特開2001−180797号公報「貯槽の支持構造」に開示された発明の支持構造は、一体架構の剛構造の支持枠体4の上に、球形貯槽1の湾曲した底部外壁面3を固着することなく摺動可能に接触させた状態で支承するようにした支持構造である。しかしながら、このような支承する支持構造は、隔離し独立した支柱を補強する構造とは本質的に異なるもので、独立した支柱よりなる脚部の補強構造としては充分ではなかった。
【0010】
さらにまた、本出願人に係る発明、特願2004−365378号「球形タンク脚部の補強構造と補強方法」の発明は、球形タンクの支柱の基礎近傍に環状の支持枠を配置し、傾斜材と水平補強材にて一体剛構造に補強するものであるが、現地で溶接など火気を使用して組立て固着するため、供用中の球形タンク及び稼働中のガス設備などがある場合には、原則的に工事ができない状況であった。また、設備を休止して設置工事を行う場合であっても、溶接時の安全対策や養生などの配慮が大変で組立ての作業性も良くなかった。
【0011】
この発明の目的は、上述のような従来技術が有する問題点に鑑みてなされたもので、球形タンクを支持する支柱下部の基礎の外周に、環状枠材と傾斜材と水平梁材を組合せた構造体を、火気を使用することなく安全作業で作業能率良く構築し、基礎近傍に荷重が集中することなく損傷を生じないように補強支持して、地震や強風などによる振動や揺れによる変位を抑えて、耐久性と耐震性をより向上させた球形タンク脚部の補強構造を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1の発明に係る球形タンク脚部の補強構造は、基版の基礎から垂直に設置し球形タンクの外周下部を垂直に支承する支柱に対して、該支柱の基礎の近傍に隔離して設けた環状の支持枠と、該支持枠から上記支柱にわたって設けた傾斜材と、該傾斜材と上記支柱とを連結する水平梁材とで一体剛構造に形成する球形タンク脚部の補強構造であって、上記支柱と傾斜材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合し、また上記支柱と水平梁材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合して一体架構の剛構造とし、現地で火気を使用することなく組立て施工する接合構造にて形成したものである。
【0013】
請求項2の発明に係る球形タンク脚部の補強構造は、上記請求項1の環状の支持枠の適所に基版と一体化するアンカーを設けたものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明に係る球形タンク脚部の補強構造は、基版の基礎から垂直に設置し球形タンクの外周下部を垂直に支承する支柱に対して、該支柱の基礎の近傍に隔離して設けた環状の支持枠と、該支持枠から上記支柱にわたって設けた傾斜材と、該傾斜材と上記支柱とを連結する水平梁材とで一体剛構造に形成する球形タンク脚部の補強構造であって、上記支柱と傾斜材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合し、また上記支柱と水平梁材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合して一体架構の剛構造とし、現地で火気を使用することなく組立て施工する接合構造にて形成したので、既設の球形タンクの脚部の補強に簡便に対応することができ、殊に供用中で火気を使用することが困難な場合の既設の球形タンク脚部の補強、並びに脚部が損傷した場合の補修及び補強に適用し、安全作業で作業能率良く施工することができる。また、地震や強風などによる振動や揺れに対して、一体に組立てた補強構造体が支えるため、支柱下部の基礎に荷重が集中することなく、かつ補強構造体により変位や振動などを吸収緩和するので、局部的に基礎が損傷し破損する心配がなく、垂直荷重及び水平荷重に対して、耐久性及び耐震性に優れた脚部の補強構造となる。
【0015】
請求項2の発明に係る球形タンク脚部の補強構造は、上記請求項1の環状の支持枠の適所に基版と一体化するアンカーを設けたので、支持枠と基版との結合が一体化され既設の基礎への荷重負担が軽減されるため、一層の安定性を確保することができる。また、支持枠を設置する際に、基準となる位置が安定するため作業がし易い。環状の支持枠は剛性を持ちアンカーによって基版へ一体結合されているため、位置ずれした支柱に対して安定した支持枠を介してジャッキ等の治具で大きな力を与えて移動し復元することができるため、作業が簡単容易で、短時間に、簡単な機材で支柱及び基礎の修正を行うことが出来る。このように、支持枠などの補強材の設置の際に、基版上でアンカーによる位置決め固定と支柱への取付け作業が容易で、組立て作業などに手間を要することなく、短時間で作業能率良く脚部の補強と基礎の補修を行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
この発明に係る球形タンク脚部の補強構造を、図1乃至図4に基づいて説明する。 図1は、球形タンクの脚部の補強構造の実施形態例で全体の斜視説明図を示す。図2は、図1の支柱の一箇所要部を拡大して示す側面図である。
【0017】
球形タンク1は、地面の基版2上に隔離して設けた複数の基礎3から地上に垂直に設置した複数本の支柱5によって球殻4の外周を支えられている。図1に示す事例は6本の支柱5を設けた場合の補強事例であるが、球形タンク1の規模に応じて8本、10本などの複数本の場合についても同様に、以下詳述する補強構造を適用することができる。 球形タンク1の脚部の補強構造について、図1に基づいて説明する。支柱5の基礎3から外周に隔離して、水平に環状の支持枠6を基版2上に設ける。この支持枠6は、図1に示すように支柱5の本数6に応じた平面正六角形の平面多角形状に、支持枠接合部12にて連結し一体剛構造の環状体に形成する。
【0018】
この支持枠6の正六角形の頂点に相当する位置近傍の基版2にアンカー13を設置して位置決め固定し、その上端面から支柱5にわたって傾斜して支える傾斜材7を支柱取付部10にて連結し、この傾斜材7から支柱5にわたって水平に支える水平梁材9を支柱取付部11連結する。さらに支持枠6から基版2上に沿って基礎3の端縁に渡した水平材8を設け、これらの補強材全体を一体構造に形成する。
【0019】
上記した図1の事例は、支柱5の本数に応じた平面多角形状の環状体に形成する場合を示したが、支柱5の本数と異なる多角形、或いは円形の環状体であっても良い。また、図1の事例は、支柱5の外周に隔離して環状の支持枠6を設けた場合を示したが、球形タンクの規模や周囲の状況に応じて、支柱5の基礎3の内周に隔離して環状の支持枠6を設けて支持するようにしても良く、或いは支柱5の基礎間に支持枠6を設けて一体環状に接続して補強するようにしても良い。
【0020】
図2に基づいて、図1に示す脚部の補強構造についてさらに詳述する。この図2の事例では、支持枠6と基礎3との間に水平材8を設けていない場合を示している。支持枠6は基版2上の基礎3から外方に隔離して、図2に断面を示すような断面H型鋼材などを用いて支持枠接合部12にてボルト接合等によって組立て、平面多角形状で一体剛構造の環状体に配置する。この支持枠6の多角形の頂点近傍の下部フランジ面には、基版2の地面中へ至るアンカー13を設ける。この場合、支持枠6と基礎3との間に水平材8を設けていないので、既設の基礎3への荷重負担が軽減される。また、図2のX部に示すように、支持枠6の多角形の頂点近傍の上端面から、対向する支柱5の上部にわたって傾斜させて設ける傾斜材7は、支柱5へ支柱取付部10にて湾曲材を介してボルト接合等で結合する。さらに、図2のY部に示すように、支持枠6から支柱5へ水平に連結する水平梁材9は、支柱5へ支柱取付部11にて湾曲材を介してボルト接合等で結合する。
【0021】
上記した支持枠6、傾斜材7、及び水平梁材9などの補強部材は、例えば型鋼材、矩形鋼材、パイプ材等を適宜用いることができ、これらの部材をボルト接合等で組立て連結して一体架構の剛構造に形成する。このように、ボルト接合等で組立て連結して一体架構の剛構造に形成する補強構造体は、現地にて火気を使用することなく作業性良く組立て施工することができる。
【0022】
図3は、図2のX部で、支柱5と傾斜材7との固着部となる支柱取付部10の他の実施形態例を示す。支柱取付部10は、例えば湾曲材10A、10Bで形成し、湾曲材10Aには傾斜材
7を接合する傾斜材接合端7Aを予め工場で溶接にて固着した結合構造の場合を示す。この湾曲材10A、10Bを支柱5の所定位置へボルト接合等で固定する。14は傾斜材接合部で、上記傾斜材接合端7Aに傾斜材7の端縁をボルト接合等で結合する。このように傾斜材7は、支柱5へ湾曲材10A、10Bを用いて支柱取付部10にてボルト接合等で作業性良く簡単に結合することができる。
【0023】
図4は、図2のY部で、支柱5の基礎3近傍及び支柱5と水平梁材9との固着部となる支柱取付部11の他の実施形態例を示す。支柱取付部11は、例えば湾曲材11A、11Bで形成し、湾曲材11Aには水平梁材9を接合する水平梁材接合端9Aを予め工場で溶接にて固着した結合構造の場合を示す。この湾曲材11A、11Bを支柱5の所定位置へボルト接合等で固定する。15は水平梁材接合部で、上記水平梁材接合端9Aに水平梁材9の端縁をボルト接合等で結合する。このように水平梁材9は、支柱5へ湾曲材11A、11Bを用いて支柱取付部11にてボルト接合等で作業性良く簡単に結合することができる。
【0024】
17は支柱5の下端面を固着する鋼板などのアンカープレート、18はアンカープレート17を基礎3に固定するためのアンカーボルト、16は基礎2の割れや損傷部を被覆して補修するノンシュリンクモルタルなどのグラウト材、19はアンカープレート17の下端縁の隙間を埋める充填材である。 これらの補強部材及び補修部材を使用することにより、風雨や温度変化、地震などで基礎3部材が劣化し損傷などしないように保護し、支柱5及び基礎3の耐久性向上を図ることができる。
【0025】
上述のように、補強支持部材を用いて補強することにより、地震や強風などによる振動や揺れに対して、特定の支柱5及び基礎3に荷重が集中することなく、かつ局部的に損傷や破損を生じる心配がなく、垂直荷重及び水平荷重に対して、耐久性に優れた補強構造となる。よって、長周期の振動、大きな揺れなどの動きを生じる地震や強風などに対して一層強い構造となり、球形タンクの脚部の耐久性と安全性をより向上させることができる。
【0026】
既設の球形タンク1の脚部を補強する場合について説明する。支柱5の基礎3の外周地面の基版2の上に、所定間隔をおいて支持枠6を配置し、支持枠接合部12にてボルト接合等を用いて環状の多角形に組み立てる。支持枠6の多角形の頂点近傍の下部フランジ面に、アンカー13を挿通して基版2に埋設固定する。球形タンク1の支柱5には、その上部所定箇所に湾曲材10A,10Bよりなる支柱取付部10を取付け、また下部所定箇所に湾曲材11A,11Bよりなる支柱取付部11をボルト接合等で取付ける。環状多角形の支持枠6の頂点近傍の上端面から支柱5の上部にわたる傾斜材7の先端を、上記半割管材10Aの傾斜材接合端7Aに合せて傾斜材接合部14にてボルト接合等で結合する。また、傾斜材7から支柱5の下部にわたる水平梁材9の先端を、上記湾曲材11Aの水平梁材接合端9Aに合せて水平梁材接合部15にてボルト接合等で結合する。
【0027】
地震等で支柱5の位置がずれて基礎3が損傷した既設の球形タンクについて、支柱5を所定の位置へ移動し戻して脚部を補強する手順の事例を、以下に詳述する。(1)支柱5の基礎3の外周地面の基版2の上に所定間隔をおいて支持枠6を配置する。この際に、支持枠6の多角形の頂点近傍の下部フランジ面などの適所にアンカー13を施工するとともに、支持枠6を支持枠接合部12にてボルト接合等で環状の多角形に組み立てる。(2)支持枠6と各基礎3の間には、必要に応じて水平材8を渡して両端を固定保持し、上記環状の支持枠6と基礎3を一体構造とする。(3)地震などによって位置がずれた支柱5を、上記アンカー13で固定した支持枠6を支えに使用してジャッキやチェーンブロック等の治工具で押圧し、或いは引張って、支柱5の下端を基礎3上の所定位置に移動し修正する。(4)支柱5の上部所定箇所に湾曲材10A,10Bよりなる支柱取付部10を取付け、また下部所定箇所に湾曲材11A,11Bよりなる支柱取付部11を取付ける。(5)環状多角形の支持枠6の頂点近傍の上端面から、支柱5の上部に傾斜材7を斜めに掛け渡して、その端縁を支柱取付部10の湾曲材10Aの傾斜材接合端7Aに合せて傾斜材接合部14にてボルト接合等で結合する。(6)傾斜材7と支柱5の間に、水平梁材9を水平に渡してその端縁を支柱取付部11の湾曲材11Aの水平梁材接合端9Aに合せて水平梁材接合部15にてボルト接合等で結合する。(7)対向、或いは隣接する支柱5について、順次、(3)と同様に基礎3上の所定位置に移動修正し、(4)と同様に支柱5に支柱取付部10,11を取付け、(5)と同様に傾斜材7を掛け渡して端縁を結合し、(6)と同様に水平梁材9を渡し端縁を結合して全体を一体剛構造に組み立てる。(8)損傷した基礎3には、新しいアンカーボルト、グラウト材やモルタルなどを施工して補修する。
【0028】
上述のように、既設の球形タンクの脚部を補強する場合には、従来のように既設の各支柱5と基礎3を個別に補修するのではなく、また大掛かりな仮設機材を要することなく、上記のように補強部材である支持枠6をアンカー13で基版2に固定し、さらに必要に応じて水平材8を用いて基礎3と一体化し、位置ずれした支柱5に対して、安定した支持枠6を支えにして、ジャッキやチェーンブロック、ワイヤロープ等の治工具を用いて、大きな力を与えて押圧し、或いは引張ることができるため、作業が簡単容易、かつ短時間に、簡単な機材で支柱の修正を行うことが可能となる。上記の手順で作業性良く既設の支柱5及び基礎3を修正して補強するので、繁雑で手間を要する作業がない。また、補強材の配置と組立ての際にボルト接合で行うため、位置決め及び設置作業が容易で、現場で火気を使用しないため、供用中の球形タンクで周辺設備が稼働中であっても安全に作業することができ、短時間で作業能率良く一体剛構造に補強することができる。
【0029】
さらに、図示はしないが、基礎3にかかる垂直方向及び水平方向の振動、変位、荷重などを吸収緩和するように、各部材の接続部に緩衝部材を設けるようにしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0030】
球形タンクにおける脚部の補強構造として簡便に対応することができ、殊に供用中の球形タンクで火気を使用することが困難な既設の球形タンク脚部の補強、並びに脚部が損傷した場合の補修及び補強に適用し、安全作業で作業能率良く施工することができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【図1】この発明に係る球形タンクの脚部の補強構造の実施形態例を示す斜視説明図である。
【図2】図1の脚部の補強構造における支柱近傍部を拡大して示す側断面説明図である。
【図3】図2のX部に相当する箇所の他の実施形態例として、支柱と傾斜材の取付け部を拡大して示す斜視説明図である。
【図4】図2のY部に相当する箇所の他の実施形態例として、支柱と水平梁材の取付部及び基礎の部分を拡大して示す斜視説明図である。
【図5】従来の球形タンクの支持構造を示す側面説明図である。
【符号の説明】
【0032】
1 球形タンク 2 基版 3 基礎 4 球殻 5 支柱 6 支持枠 7 傾斜材 7A 傾斜材接合端 8 水平材9 水平梁材9A 水平梁材接合端10 支柱取付部10A 湾曲材10B 湾曲材11 支柱取付部11A 湾曲材11B 湾曲材12 支持枠接合部13 アンカー14 傾斜材接合部15 水平梁材接合部16 グラウト材17 アンカープレート18 アンカーボルト19 充填材 21 球形タンク22 基版23 基礎24 外壁面25 支柱26 上端部27 固着部28 ブレーシング
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基版の基礎から垂直に設置し球形タンクの外周下部を垂直に支承する支柱に対して、該支柱の基礎の近傍に隔離して設けた環状の支持枠と、該支持枠から上記支柱にわたって設けた傾斜材と、該傾斜材と上記支柱とを連結する水平梁材とで一体剛構造に形成する球形タンク脚部の補強構造であって、上記支柱と傾斜材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合し、また上記支柱と水平梁材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合して一体架構の剛構造とし、現地で火気を使用することなく組立て施工する接合構造にて形成したことを特徴とする球形タンク脚部の補強構造。
【請求項2】
上記環状の支持枠の適所に基版と一体化するアンカーを設けたことを特徴とする請求項1記載の球形タンク脚部の補強構造。
【請求項1】
基版の基礎から垂直に設置し球形タンクの外周下部を垂直に支承する支柱に対して、該支柱の基礎の近傍に隔離して設けた環状の支持枠と、該支持枠から上記支柱にわたって設けた傾斜材と、該傾斜材と上記支柱とを連結する水平梁材とで一体剛構造に形成する球形タンク脚部の補強構造であって、上記支柱と傾斜材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合し、また上記支柱と水平梁材は湾曲材を介して支柱取付部にてボルト接合等で結合して一体架構の剛構造とし、現地で火気を使用することなく組立て施工する接合構造にて形成したことを特徴とする球形タンク脚部の補強構造。
【請求項2】
上記環状の支持枠の適所に基版と一体化するアンカーを設けたことを特徴とする請求項1記載の球形タンク脚部の補強構造。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【公開番号】特開2006−273398(P2006−273398A)
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−97462(P2005−97462)
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成18年10月12日(2006.10.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年3月30日(2005.3.30)
【出願人】(000147729)株式会社石井鐵工所 (67)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]