説明

球形化処理装置

【課題】熱風噴射管内の熱風の温度が低下することがなく、かつ好ましい温度分布の熱風が得られる球形化処理装置を提供する。
【解決手段】反応槽1と、反応槽1の上部から内部に熱風を吹き付ける熱風噴射管2と、熱風噴射管2の出口部に先端が位置し、熱風噴射管2から噴射される熱風に向けて熱可塑性粒子を噴射する原料噴射管3と、熱風噴射管2内を流動する熱風によって原料噴射管3内の熱可塑性粒子が融点以上に温度上昇するのを防止する冷却手段と、冷却手段によって熱風噴射管2内を流動する熱風が冷却されるのを防止する断熱手段とを備えている。冷却手段が、原料噴射管3の周囲を覆うようにして設けられた筒状冷却ジャケット5を備え、冷却ジャケット5内に、二層の筒状空間を同心上に形成し、内側の筒状空間が冷却水通路5cとされ、外側の筒状空間に断熱手段としての断熱材7が充填されている

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複写機に用いられる現像用トナー等の熱可塑性粒子を球形化処理する球形化処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現像用トナーとして用いられる熱可塑性粒子を、流動性、分散性および帯電特性等の各種物性の向上のために、球形化処理することは従来から行われている。このような球形化処理を行うための装置として、例えば、特願2004−17074(特許文献1参照)に記載のものがある。
上記文献に記載の装置は、反応槽と、反応槽の上部から内部に熱風を吹き付ける熱風噴射管と、熱風噴射管の出口部の内部に配されて、熱風噴射管から噴射される熱風に向けて熱可塑性粒子を噴射する原料噴射管と、熱風噴射管内を流動する熱風によって原料噴射管内の熱可塑性粒子が融点以上に温度上昇するのを防止する冷却手段とを備えている。そして、熱風噴射管から噴射される熱風中に熱可塑性粒子を噴射して熱風により熱可塑性粒子の表面を溶融させて球形化処理を行う。
【特許文献1】特願2004−17074
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
ところで、上記特許文献1に記載された装置では、原料噴射管内の熱可塑性粒子が融点以上に加熱されるのが防止される一方、熱風噴射管内を流動する熱風が冷却手段により冷却されて温度低下するという問題があった。この問題を解決するための手段として、冷却手段によって冷却される分に相当するだけ熱風の温度を上げることが考えられる。しかしながら、そうするとエネルギー効率が悪くなるという新たな問題が生じる。
【0004】
その他、冷却手段によって熱風噴射管内の熱風が冷却されると、熱風の温度分布が悪くなり球形化にバラツキが生じると言う問題もある。
【0005】
本発明は上記問題を解決することを課題とし、熱風噴射管内の熱風の温度が低下することがなく、かつ好ましい温度分布の熱風が得られる球形化処理装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の球形化処理装置は、
反応槽と、反応槽の上部から内部に熱風を吹き付ける熱風噴射管と、熱風噴射管の出口部に先端が位置し、熱風噴射管から噴射される熱風に向けて熱可塑性粒子を噴射する原料噴射管と、熱風噴射管内を流動する熱風によって原料噴射管内の熱可塑性粒子が融点以上に温度上昇するのを防止する冷却手段と、冷却手段によって熱風噴射管内を流動する熱風が冷却されるのを防止する断熱手段とを備えた
ものである。
【0007】
上記球形化処理装置において、
冷却手段が、原料噴射管の周囲を覆うようにして設けられた筒状冷却ジャケットを備え、冷却ジャケット内に、二層の筒状空間を同心上に形成し、内側の筒状空間が冷却水通路とされ、外側の筒状空間に断熱手段としての断熱材が充填されている、
ことがある。
【0008】
さらに、熱風噴射管と原料噴射管とが同心上に位置し、かつ、原料噴射管の出口下方に、噴射された原料が衝突する衝突板が配されている、
ことがある。
【発明の効果】
【0009】
請求項1記載の球形化処理装置によれば、冷却手段と熱風噴射管内との間に断熱手段が設けられているので、熱風噴射管内を流れる熱風の温度が低下しにくい。このため、球形化処理装置に供給する熱風の温度を必要以上に上げるこを要しない。さらに、熱可塑性粒子の球形化処理に適した温度分布の熱風が得られる。
【0010】
また、請求項2記載の球形化処理装置によれば、冷却手段および断熱手段を容易かつ安価に形成することができる。
【0011】
請求項3記載の球形化処理装置によれば、原料が反応槽内で適切に分散し、球形化処理が有効に行える。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して本発明の一実施形態の球形化処理装置について説明する。
本発明の球形化処理装置は、反応槽1と、反応槽1の上部から反応槽1内に下向きに熱風を吹き付ける熱風噴射管2と、熱風噴射管2の出口内部に先端が位置し、熱風噴射管2から噴射される熱風に向けて熱可塑性粒子を下向きに噴射する原料噴射管3と、原料噴射管3の外周を覆うように設けられた冷却ジャケット5と、原料噴射管3の出口と対向するように設けられた水平板状の衝突部材8を備えている。この衝突部材8は、原料を熱風中に効果的に分散させるためのものである。
【0013】
反応槽1は、下端に行くに従って径の小さくなる逆円錐台状をなしており、上端開口が天板4で閉じられている。天板4の中央部には円形の第1エア取り入れ口4aが、周縁部には、円弧状の第2エア取り入れ口4bがそれぞれ開けられている。
【0014】
第1エア取り入れ口4aの径は、熱風噴射管2の出口部の外径より大きい。また、第1エア取り入れ口4aと熱風噴射管2の出口部とは同軸上に位置している。
【0015】
熱風噴射管2は、図1に示すように側面から見て逆L字状をなしている。そして、熱風噴射管2の垂直部下端内に、原料噴射管3および冷却ジャケット5の下端部が位置するとともに熱風噴射管2の垂直部から原料噴射管3および冷却ジャケット5の上部が突出するように、熱風噴射管2内を貫通する状態に原料噴射管3および冷却ジャケット5が配されている。
【0016】
冷却ジャケット5は、円筒状をなしている。また、冷却ジャケット5の内径は原料噴射管3の外径より大きく、冷却ジャケット5は、原料噴射管3の外周を覆うようにかつ原料噴射管3の外周と間隔をあけて同軸上に配されている。さらに、冷却ジャケット5の内部には二層の筒状空間が形成されており、内側の筒状空間が、環状冷却水通路5cとされ、外側の筒状空間が、断熱材7を充填するための空間とされている。そして、冷却ジャケット5の下部には半径方向に伸びて熱風噴射管2から外部に突出した冷却水入口5aが、冷却ジャケット5の上部には半径方向に伸びた冷却水出口5bが、それぞれ形成されており、冷却水入口5aから供給された冷却水が、環状冷却水通路5cを通って冷却水出口5bから排出されるようになっている。
なお、径の異なる3つの筒状部材を一体とすることで、内部に二層の筒状空間が形成された筒状冷却ジャケット5を容易に構成することができる。
【0017】
原料噴射管3の上端部は、冷却ジャケット5の上端から上方に突出しており、上端部には熱可塑性粒子を充填するホッパ9が取り付けられている。また、上述したように、冷却ジャケット5の内径は、原料噴射管3の外径より大きく、ジャケット5と原料噴射管3との間には、環状隙間が形成されており、この隙間がエア通路6とされている。冷却ジャケット5の冷却水出口5bの上側には、このエア通路6にエアを供給するためのエア供給口6aが形成されている。
【0018】
原料噴射管3のホッパ9直下部にはディフューザー部(図示せず)が形成されている。このディフューザー部のエアーの流れによりホッパ9に蓄えられた熱可塑性粒子が原料噴射管3に吸い込まれるようになっている。この構成は公知であるので図示は省略している。
【0019】
上記の構成を有する球形化処理装置は、以下のようにして用いられる。
まず、熱風噴射管2から反応槽1内に熱風を噴射する。同時にエア通路6から反応槽1内にエアを噴射する。さらには、冷却水入口5aから冷却水通路5cに冷媒としての水を流し、冷却水出口5bから水を排出する。この状態で原料噴射管3から熱可塑性粒子とエアとの混合流体を反応槽1内へと噴射する。
【0020】
原料噴射管3から反応槽1内へと噴射された熱可塑性粒子は、衝突部材8に衝突する。この衝突およびエア通路6から噴射されたエアによって熱可塑性粒子は、熱風噴射管2から噴射された熱風内において分散し、熱風と均一に接触する。
熱風と接触して球形化処理された熱可塑性粒子は、エア取り入れ口4a、4bから取り入れられたエアによって冷却される。
【0021】
ところで、原料噴射管3と熱風噴射管2との間には冷却ジャケット5が設けられているので原料噴射管3内を流れている熱可塑性粒子は、熱風噴射管2内を流れる熱風の影響をうけることがなく、噴射管3内での原料凝集がない。
さらに、冷却ジャケット5の冷却水通路5cの外側には断熱材7が配されているので熱風噴射管2内を流れる熱風は冷却水通路5c内を流れる水によって冷却されることがない。したがって、熱風は、熱風噴射管2から噴射されるまで熱可塑性粒子の球形化処理に適した温度に保たれる。さらには、冷却水通路5c内を流れる水の温度も上昇することはない。
【0022】
以上、本発明の一実施形態の球形化処理装置について述べたが、本発明の球形化処理装置は上記実施形態のものには限られない。例えば水平板状の衝突部材8に代えて円錐状の衝突部材を用いても良く、衝突部材の形状は適宜変更自在である。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の球形化処理装置の断面図である。
【図2】同球形化処理装置の要部の断面図である。
【符号の説明】
【0024】
1 反応槽
2 熱風噴射管
3 原料噴射管
4 天板
4a 第1エア取り入れ口
4b 第2エア取り入れ口
5 冷却ジャケット
5c 冷却水通路
6 エア通路
7 断熱材
8 衝突部材
9 ホッパ


【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽と、反応槽の上部から内部に熱風を吹き付ける熱風噴射管と、熱風噴射管の出口部に先端が位置し、熱風噴射管から噴射される熱風に向けて熱可塑性粒子を噴射する原料噴射管と、熱風噴射管内を流動する熱風によって原料噴射管内の熱可塑性粒子が融点以上に温度上昇するのを防止する冷却手段と、冷却手段によって熱風噴射管内を流動する熱風が冷却されるのを防止する断熱手段とを備えた球形化処理装置。
【請求項2】
冷却手段が、原料噴射管の周囲を覆うようにして設けられた筒状冷却ジャケットを備え、
冷却ジャケット内に、二層の筒状空間を同心上に形成し、内側の筒状空間が冷却水通路とされ、外側の筒状空間に断熱手段としての断熱材が充填されている、請求項1記載の球形化処理装置。
【請求項3】
熱風噴射管と原料噴射管とが同心上に位置し、かつ、原料噴射管の出口下方に、噴射された原料が衝突する衝突板が配されている、請求項1または2記載の球形化処理装置。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2006−346609(P2006−346609A)
【公開日】平成18年12月28日(2006.12.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−177293(P2005−177293)
【出願日】平成17年6月17日(2005.6.17)
【出願人】(000229450)日本ニューマチック工業株式会社 (44)
【Fターム(参考)】