説明

球面軸受装置

軸受ハウジング(3)及びその中に配置された玉(4)を備える球面軸受(2)を含む軸受装置(1)であって、軸受ハウジング(3)は、剛体外側軌道輪(5)、剛体内側軌道輪(6)、及び、各軌道輪(5,6)の間に挟み込まれた環状エラストマ部(7)を備え、軸受ハウジング(3)の外側軌道輪(5)は、締まり嵌め穴(11)の中に堅固に保持されている球面軸受装置が提供される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、球面軸受装置に係り、より具体的には、球面軸受の高トルク用途に関する。
【背景技術】
【0002】
球面軸受は、多くの場合、軸受が穴の中に設置されて二つの部品の間に軸受機能を提供するときに所定のトルクが維持されなければならない高トルク用途において使用される。球面軸受と、球面軸受が設置される穴との間に、ある程度の締め代を有することは好ましい実施であるが、締まり嵌め穴の使用は、軸受のトルクを、その設置前トルクからかなり増加させる。それは、単純に、締まり嵌めが軸受ハウジングを変形させて、軸受ハウジングを玉に押し付ける結果となるからである。これは不都合である。なぜなら、軸受と穴との間に提供される締め代が大きくなると、それだけ強固に軸受が穴の中に設置及び保持されるからである。残念ながら、もし締まり嵌め穴の中の軸受装置のトルクが、その用途において指定された公差の範囲外にあれば、締まり嵌め穴に挿入されたときにトルクが増加しており、その装置は全く使用不可能である。従って、従来の実施においては、球面軸受が挿入される隙間嵌め穴が使用されている。軸受ハウジングは、接着剤によって隙間嵌め穴に固定される。添付の図1は、球面軸受が隙間嵌め穴に設置され、隙間嵌め穴と軸受ハウジングの外面との間の接着剤の層によって固定されている軸受装置を示す。この方法は、組み立ての間にトルクをそれほど変化させず、設置前に測定された軸受のトルクは、設置後も大幅に変更されることなく確実に維持される。
【0003】
しかし、注意すべきは、軸受は、接着剤が与える力だけで隙間嵌め穴の中に固定されていることである。典型的には、これらの用途において使用される接着剤は脆く、その力は時間と共に減少し、接着剤の層が劣化するにつれて軸受ハウジングと隙間嵌め穴との間に移動の可能性が生ずる。典型的には、隙間嵌め穴は、全体の装置のなかでも高価又は精密機械加工部品の中に配置され、隙間嵌め穴の中の軸受ハウジングの移動の結果として、隙間嵌め穴、及び、可能性として製品の他の部分にも損傷が生ずることになる。従って、軸受ハウジングと隙間嵌め穴との間の移動のために、軸受も損傷を受けて、軸受を取り替える必要があるときには、隙間嵌め穴は超過サイズとなっており、もし可能であれば、隙間嵌め穴を再び穴あけするか、又は、装置を廃棄しなければならない。隙間嵌め穴を再び穴あけする場合、超過サイズの軸受ハウジングを供給することが必要となる。これは1個限りのものであり、費用のかかるプロセスである。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、設置後に軸受のトルクを許容範囲に維持するために、隙間嵌め穴の使用を必要としない軸受装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
従って、本発明の一つの観点は、軸受ハウジング、及び、軸受ハウジングの中に配置された玉を備える球面軸受であって、軸受ハウジングが、剛体外側軌道輪、剛体内側軌道輪、及び、これらの軌道輪の間に挟み込まれた環状エラストマ部を備え、軸受ハウジングの外側軌道輪が、締まり嵌め穴に堅固に保持されている球面軸受を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
本発明がさらに容易に理解されるように、以下、添付の図面を参照して、例としての実施の形態について説明する。
【0007】
ここで、図2を参照すると、本発明を具現化した軸受装置1が示されており、軸受ハウジング3及びその中に配置された玉4を備える球面軸受2が含まれている。軸受ハウジング3は、剛体鋼鉄外側軌道輪5及び剛体鋼鉄内側軌道輪6を有し、これらの軌道輪の間に、この例では、双方の軌道輪5及び6に接着されたゴムスリーブである環状エラストマ部7が挟み込まれている。軸受ハウジングの外側軌道輪5は、締まり嵌め穴8(穴8の内径が外側軌道輪5の外径より小さいので、締まり嵌め穴である)の中に堅固に固定されている。軸受ハウジング3の外側軌道輪5の外面と締まり嵌め穴8との間に、間隙が存在しないことが注目される。これは、接着剤10の層が隙間嵌め穴11に軸受ハウジングを接着している図1の従来型装置とは対照的である。同様の部品を示すため、同様の数字が使用されている。
【0008】
好ましくは、自己潤滑ライナ12が、玉4と接触する内側軌道輪6の内面に設けられる。代替的に、内側軌道輪6と玉4とが相互に直接接触していてもよい。
【0009】
もし、図1に示されるような従来型軸受が締まり嵌め穴8の中に設置されるならば、玉4とハウジング3との間でトルクの増加が認められるであろう。低トルク用途でのトルク増加は大きな関心事とはならないが、トルクが所定の範囲の高レベルで維持されるべき要求が存在する高トルク用途では、締まり嵌め穴8の使用は、通常、その高トルク用途において許容される範囲外にトルクを極度に増加させる。その理由は、高トルク(5乃至100Nm)用途においては、トルクと締め代量との間に、指数的とも言える関係が存在するからである。いくつかの高トルク用途(8乃至50Nm)では、予め定められた範囲内に高トルクを維持することが重要である。
【0010】
球面軸受2を締まり嵌め穴8の中に設置することは、穴8を画定する材料、典型的には鋼鉄ブロックを、例えば200℃に加熱し、典型的には−196℃の液体窒素の中への浸漬によって球面軸受2を冷却し、締まり嵌め穴8の中に球面軸受2を挿入し、二つの部品の温度を周囲温度に戻すことによって行われる。設置後に変動トルクの増加があったかどうかの確認テストが行われたが、1Nm乃至32Nmのトルクについては、設置前と比較した設置後において、測定された変動トルクに何の変化もなかった。軸受ハウジング3の二つの軌道輪5及び6の間に挟み込まれた環状エラストマ部7が締め代を吸収する機能を果たし、従って、この締め代は、玉4と軸受ハウジング3との境界面に伝達されないと考えられる。
【0011】
設置に締まり嵌め穴を使用する軸受装置1の追加の利点は、軸受2が締まり嵌め穴8の中に非常に堅固に保持され、穴からそれを取り外すには高い軸荷重を必要とすることである。
【0012】
66.736mm乃至66.782mmの外径(即ち、軸受ハウジング3の外側軌道輪5の外径)を有する軸受2について、0.033mm乃至0.198mmの締まり嵌めが使用された。これらの締まり嵌めを使用した設置の後、変動トルク値の増加は認められなかった。
【0013】
球面軸受2の締まり嵌め設置は、高トルク用途において所定範囲内にトルクを維持するだけでなく、この技術は、厳格な清浄を必要とする隙間嵌め穴を使用する接着組み立て方法よりもはるかに簡単である。さらに、軸受2と隙間嵌め穴11との間の固定用接着剤が破損したために、球面軸受との相対的移動によって生ずる設置穴の損傷の危険性が、本発明によって全面的に除去される利点がある。
【0014】
本明細書において、「含む(comprise)」は、「包含する(include)又は構成される(consist of)」を意味し、「含んでいる(comprising)」は「包含している(including)又は構成されている(consisting of)」を意味する。
【0015】
以上の説明又は特許請求の範囲又は添付の図面において開示され、特定の形態、又は、開示された機能を実施する手段、又は、開示された結果を得るための方法若しくはプロセスとして表現された特徴は、適宜、そのような特徴を分離して又は組み合わせて、本発明を様々な形態で実現するために利用され得る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明に従っていない軸受装置であって、隙間嵌め穴に設置された軸受装置の概略断面図である。
【図2】本発明を具現化した軸受装置であって、締まり嵌め穴に設置された軸受装置の図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受ハウジング、及び、前記軸受ハウジングの中に配置された玉を備える球面軸受を含む軸受装置であって、前記軸受ハウジングは、剛体外側軌道輪、剛体内側軌道輪、及び、前記各軌道輪の間に挟み込まれた環状エラストマ部を備え、前記軸受ハウジングの前記外側軌道輪は、締まり嵌め穴の中に堅固に保持されていることを特徴とする球面軸受装置。
【請求項2】
前記球面軸受は、前記締まり嵌め穴に挿入される前に5乃至100Nmの変動トルクを有する高トルク軸受であることを特徴とする請求項1に記載の球面軸受装置。
【請求項3】
前記球面軸受は、前記締まり嵌め穴に挿入される前に8乃至50Nmの変動トルクを有する高トルク軸受であることを特徴とする請求項2に記載の球面軸受装置。
【請求項4】
前記エラストマ部は、前記内側及び外側軌道輪に接着されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の球面軸受装置。
【請求項5】
ライナが、前記内側軌道輪の上に玉と接触して設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の球面軸受装置。
【請求項6】
前記ライナは、自己潤滑ライナであることを特徴とする請求項5に記載の球面軸受装置。
【請求項7】
前記内側軌道輪及び前記玉の双方が金属から製作され、前記内側軌道輪は、前記玉と直接接触することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の球面軸受装置。
【請求項8】
実質的に添付図面を参照して説明及び図示された球面軸受装置。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
軸受ハウジング、及び、前記軸受ハウジングの中に配置された玉を備える球面軸受を含む軸受装置であって、前記軸受ハウジングは、剛体外側軌道輪、剛体内側軌道輪、及び、前記各軌道輪の間に挟み込まれた環状エラストマ部を備え、前記軸受ハウジングの前記外側軌道輪は、締まり嵌め穴の中に堅固に保持されており、前記玉と前記ハウジングとの間のトルクは、前記締まり嵌め穴に設置される前に、ある所定範囲内にあり、前記締まり嵌め穴の中に保持されたときに、前記所定範囲内に維持されることを特徴とする球面軸受装置。
【請求項2】
前記球面軸受は、前記締まり嵌め穴に挿入される前に5乃至100Nmの変動トルクを有する高トルク軸受であることを特徴とする請求項1に記載の球面軸受装置。
【請求項3】
前記球面軸受は、前記締まり嵌め穴に挿入される前に8乃至50Nmの変動トルクを有する高トルク軸受であることを特徴とする請求項2に記載の球面軸受装置。
【請求項4】
前記エラストマ部は、前記内側及び外側軌道輪に接着されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載の球面軸受装置。
【請求項5】
ライナが、前記内側軌道輪の上に玉と接触して設けられることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の球面軸受装置。
【請求項6】
前記ライナは、自己潤滑ライナであることを特徴とする請求項5に記載の球面軸受装置。
【請求項7】
前記内側軌道輪及び前記玉の双方が金属から製作され、前記内側軌道輪は、前記玉と直接接触することを特徴とする請求項1乃至4のいずれか一項に記載の球面軸受装置。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−522292(P2006−522292A)
【公表日】平成18年9月28日(2006.9.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−506023(P2006−506023)
【出願日】平成16年3月25日(2004.3.25)
【国際出願番号】PCT/GB2004/001298
【国際公開番号】WO2004/088156
【国際公開日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000114215)ミネベア株式会社 (846)
【Fターム(参考)】