説明

環状オレフィン共重合体およびその架橋体

【課題】優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性、ガスバリア性および加工性を有する架橋体を得ることができる環状オレフィン共重合体、および架橋体を提供する。
【解決手段】環状オレフィン共重合体(P)は、(A)1種以上のオレフィン由来の特定な繰り返し単位と、(B)1種以上の特定な環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、から構成され、架橋性基を有し、オレフィン由来の特定な繰り返し単位(A)と特定な環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)とのモル比((A)/(B))が、40/60〜80/20である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋性基を有する環状オレフィン共重合体およびその架橋体に関する。
【背景技術】
【0002】
環状オレフィン共重合体は耐熱性、機械的特性、透明性、誘電特性、耐溶剤性、成形性、寸法安定性等に優れており、種々の分野に利用されている。しかし、用途によってはさらに耐熱性、耐溶剤性あるいは機械的強度を要求される場合があり、環状オレフィン共重合体を硫黄架橋、有機過酸化物架橋、電子線架橋、放射線架橋等種々の方法で架橋することにより、さらに耐熱性、耐溶剤性、機械的強度を向上させる試みが行われていた(特許文献1、特許文献2)。
【0003】
しかしながら、近年、電子部品に代表されるような成形材分野においては、より高い耐熱性が求められようになった。この要請を満足するために、大量の無機物を添加する方法(特許文献3)、あるいは環状オレフィン単量体のみを付加重合する方法(特許文献4)が提案されている。しかし、一般的に、無機充填材は有機材料の靭性、誘電特性、透明性を大きく低下させる点に課題があった。また、環状オレフィンのみを付加重合して得られた重合体はガラス転移点(Tg)が高すぎるため、実質的に熱溶融成形は不可能であり、任意の形状に成形することは工業的に困難であった。また、液晶ディスプレイ用基板や太陽電池用基板等として用いられる場合、水蒸気バリア性や加工性に改良の余地があった。
【0004】
特許文献5には、α−オレフィン・環状オレフィン・ポリエン共重合体が開示されている。しかしながら、架橋体については具体的に記載されておらず、優れた誘電特性、透明性および成形性を維持しつつ、耐熱性、水蒸気バリア性および加工性等を向上させる点に依然として改良の余地があった。
【0005】
特許文献6には、α−オレフィン・非共役環状ポリエン共重合体およびその架橋体が開示されている。しかしながら、非共役環状ポリエン由来の構成単位の含量は0.01〜20重量%と少なかった。特許文献7には、C2〜20のα−オレフィンとC=C二重結合を2個以上有する環状オレフィン等を構成単位とする硬化性樹脂の架橋体が開示されている。しかしながら、C=C二重結合を2個以上有する環状オレフィンの含量は記載されていない。したがって、特許文献5および6に記載の架橋体においても、上記の点に依然として改良の余地があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭62−34924号公報
【特許文献2】特開2006−313660号公報
【特許文献3】特開2005−47991号公報
【特許文献4】国際公開第2006/067950号パンフレット
【特許文献5】国際公開第2006/118261号パンフレット
【特許文献6】国際公開第2006/121086号パンフレット
【特許文献7】特開平11−343310号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、優れた耐熱性、透明性、機械的特性、誘電特性、ガスバリア性および加工性を有する架橋体を得ることができる架橋性基を有する環状オレフィン共重合体、さらに上記特性に優れる架橋体を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは前記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定の環状オレフィン共重合体を高密度に架橋することにより得られる架橋体が、優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性、ガスバリア性および加工性を有することを見出し、本発明を完成させた。
【0009】
本発明は以下に示すとおりである。
(1) (A)一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位と、
(B)下記一般式(II)、下記一般式(III)および下記一般式(IV)よりなる群から選択される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、から構成され、
オレフィン由来の繰り返し単位(A)と環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)とのモル比((A)/(B))が、40/60〜80/20である、架橋性基を有する環状オレフィン共重合体(P)。
【0010】
【化1】

【0011】
〔上記一般式(I)において、R300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。〕
【0012】
【化2】

【0013】
〔一般式(II)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R102とR103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0014】
【化3】

【0015】
〔一般式(III)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0016】
【化4】

【0017】
〔一般式(IV)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0018】
(2)一般式(I)で表されるオレフィン由来の繰り返し単位を構成するオレフィンがエチレンであることを特徴とする(1)に記載の環状オレフィン共重合体(P)。
【0019】
(3)さらに、(C1)一般式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位を含有することを特徴とする(1)または(2)に記載の環状オレフィン共重合体(P)。
【0020】
【化5】

【0021】
〔一般式(V)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75〜R78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。ただし、uおよびvがともに0のときは、R67〜R70、R75〜R78のうち少なくとも1つが水素原子以外の置換基である。〕
【0022】
(4)下記一般式(IX)で表される遷移金属化合物(K)と、有機金属化合物(m-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(m-2)および遷移金属化合物(K)と反応してイオン対を形成する化合物(m-3)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(M)とからなる触媒の存在下に、
下記一般式(Ia)で表される1種以上のオレフィンと、
下記一般式(IIa)、下記一般式(IIIa)および下記一般式(IVa)よりなる群から選択される少なくとも1種の環状非共役ジエンと、を付加重合することを特徴とする環状オレフィン共重合体(P)の製造方法。
【0023】
【化6】

【0024】
〔一般式(IX)中、Mは3族から11族の遷移金属を表す。mは、1〜4の整数を示し、R1〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合には、一つの配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基とが連結されていてもよく(但し、R1同士が結合されることはない)、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士は互いに同一でも異なっていてもよく、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。〕
【0025】
【化7】

【0026】
〔上記一般式(Ia)において、R300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。〕
【0027】
【化8】

【0028】
〔一般式(IIa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R102とR103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0029】
【化9】

【0030】
〔一般式(IIIa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0031】
【化10】

【0032】
〔一般式(IVa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0033】
(5)前記オレフィンと前記環状非共役ジエンとともに、一般式(Va)で表される環状オレフィンを付加重合することを特徴とする(4)に記載の環状オレフィン共重合体(P)の製造方法。
【0034】
【化11】

【0035】
〔一般式(Va)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75〜R78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0036】
(6) (1)乃至(3)のいずれかに記載の環状オレフィン共重合体(P)及び有機溶媒を含有するワニス。
【0037】
(7)(1)乃至(3)のいずれかに記載の環状オレフィン共重合体(P)を架橋して得られる架橋体(Q)。
【0038】
(8)(1)乃至(3)のいずれかに記載の環状オレフィン共重合体(P)をラジカル重合開始剤の存在下で加熱することにより製造されることを特徴とする(7)に記載の架橋体(Q)。
【0039】
(9)ラジカル重合開始剤がビベンジル化合物類である(8)に記載の架橋体(Q)。
【0040】
(10)周波数1Hz、引っ張りモードで測定された固体粘弾性測定において、30℃〜300℃の温度範囲における損失正接(tanδ)の最大値が0.6以下である(7)乃至(9)のいずれかに記載の架橋体(Q)。
【0041】
(11)周波数1Hz、温度260℃、引っ張りモードで測定された固体粘弾性測定において、貯蔵弾性率(E')が0.1GPa以上である(7)乃至(10)のいずれかに記載の架橋体(Q)。
【0042】
(12)周波数1Hz、引っ張りモードで測定された固体粘弾性測定における、温度260℃での貯蔵弾性率(E')をAとし、温度30℃での貯蔵弾性率(E')をBとした場合において、式:A/B≧0.05を満たす(7)乃至(11)のいずれかに記載の架橋体(Q)。
【0043】
(13)固体13C−NMRスペクトルにおける20〜50ppmの範囲において複数ピークが観測される(7)乃至(12)のいずれかに記載の架橋体(Q)。
【0044】
(14) (7)乃至(13)のいずれかに記載の架橋体(Q)を含む成形体。
【0045】
(15)フィルムまたはシートであることを特徴とする(14)に記載の成形体。
【0046】
(16)回路基板であることを特徴とする(14)に記載の成形体。
【0047】
(17)液晶ディスプレイ用基板であることを特徴とする(14)に記載の成形体。
【発明の効果】
【0048】
本発明の環状オレフィン共重合体は、オレフィン由来の繰り返し単位と所定の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位とを所定範囲のモル比で含むため、高密度に架橋することができ、優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性、ガスバリア性および加工性を有する架橋体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】実施例1に記載した環状オレフィン共重合体の架橋体の固体13C-NMRチャートである。
【図2】実施例2に記載した環状オレフィン共重合体の架橋体の固体13C-NMRチャートである。
【図3】比較例2に記載したポリブタジエンの架橋体の固体13C-NMRチャートである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0050】
以下、本発明について具体的に説明する。
[環状オレフィン共重合体(P)]
本発明の環状オレフィン共重合体(P)は、
(A)一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位と、
(B)下記一般式(II)、下記一般式(III)および下記一般式(IV)よりなる群から選択される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、から構成される。
オレフィン由来の繰り返し単位(A)と環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)とのモル比((A)/(B))は、40/60〜80/20、好ましくは55/45〜75/25、さらに好ましくは55/45〜70/30とすることができる。
【0051】
【化12】

【0052】
〔上記一般式(I)において、R300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。〕
【0053】
【化13】

【0054】
〔一般式(II)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R102とR103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0055】
【化14】

【0056】
〔一般式(III)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0057】
【化15】

【0058】
〔一般式(IV)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0059】
環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)は、上記一般式(III)および/または上記一般式(IV)であることが好ましい。
【0060】
このようなモノマー由来の繰り返し単位を所定の範囲で有する環状オレフィン共重合体(P)は、高密度に架橋されることが可能となるので、優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性、ガスバリア性および成形性を有する架橋体、言い換えればこれらの物性のバランスに優れた架橋体を得ることができる。
【0061】
環状オレフィン共重合体(P)の共重合原料の一つであるオレフィンモノマーは、付加共重合して前記式(I)で表される骨格を与えるモノマーであり、下記式(Ia)で表されるオレフィンである。
【0062】
【化16】

【0063】
式(Ia)中、R300は水素原子又は炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、3-エチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ヘキセン、4,4-ジメチル-1-ペンテン、4-エチル-1-ヘキセン、3-エチル-1-ヘキセン、1-オクテン、1-デセン、1-ドデセン、1-テトラデセン、1-ヘキサデセン、1-オクタデセン、1-エイコセンなどが挙げられる。優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性、ガスバリア性および加工性を有する架橋体を得る観点から、これらのなかでも、エチレンとプロピレンが好ましく、エチレンが特に好ましい。前記式(Ia)で表されるオレフィンモノマーは二種類以上を用いてもよい。
【0064】
環状オレフィン共重合体の共重合原料である環状非共役ジエン単量体は付加共重合して前記式(II)、(III)または(IV)で表される構成単位を形成するものである。具体的には、前記一般式(II)、(III)または(IV)に対応する下記一般式(IIa)、(IIIa)または(IVa)で表される環状非共役ジエンが用いられる。
【0065】
【化17】

【0066】
〔一般式(IIa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R102とR103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0067】
【化18】

【0068】
〔一般式(IIIa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0069】
【化19】

【0070】
〔一般式(IVa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【0071】
上記一般式(IIa)で表される環状非共役ジエンとしては、具体的には例えば5−エチリデン−2−ノルボルネン、5−n-プロピリデン−2−ノルボルネン、5−イソプロピリデン−2−ノルボルネン、5−エチリデン−6−メチル−2−ノルボルネン、8−エチリデン−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン等が挙げられる。このうち5−エチリデン−2−ノルボルネンが好ましい。
【0072】
上記一般式(IIIa)で表される環状非共役ジエンとしては、特に限定されるものではないが、例えば、下記化学式で表される環状非共役ジエンを挙げることができる。これらのうち5−ビニル−2−ノルボルネン、8−ビニル−9−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンが好ましく、5−ビニル−2−ノルボルネンが特に好ましい。
【0073】
【化20】

【0074】
【化21】

【0075】
上記一般式(IVa)で表される環状非共役ジエンとしては、具体的には例えばジシクロペンタジエン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]-4,10-ペンタデカジエンなどが挙げられる。このうちジシクロペンタジエンが好ましい。
【0076】
本発明に係る環状オレフィン共重合体(P)には、一般式(II)、一般式(III)、一般式(IV)で表される環状非共役ジエン由来の構成単位が含まれることにより、側鎖部分、すなわち共重合の主鎖以外の部分に二重結合を有することが特徴である。
【0077】
本発明に係る環状オレフィン共重合体(P)中に含まれる環状非共役ジエン由来の構成単位は、20mol%〜60mol%、好ましくは25mol%〜45mol%、さらに好ましくは30mol%〜45mol%とすることができる。
この範囲にあると、環状オレフィン共重合体(P)の成形性、溶解性が良好で、架橋体の製造が容易となり、製品の歩留まりが向上する。さらに、耐熱性、機械特性、誘電特性、透明性、ガスバリア性および加工性にも優れた架橋体(Q)を得ることができる。環状非共役ジエン由来の構成単位がこの範囲を超える場合、環状オレフィン共重合体(P)の成形性や溶解性が悪化し、この範囲を下回る場合には環状オレフィン共重合体(P)を架橋することによって得られる架橋体(Q)の耐熱性や機械的特性が低下する。
【0078】
本発明に係る環状オレフィン共重合体(P)は、上述したオレフィンモノマー、環状非共役ジエンモノマーに加えて、必要に応じて環状オレフィンモノマー及び鎖状ポリエンモノマーを共重合することもできる。
【0079】
本発明の環状オレフィン共重合体(P)は、(A)オレフィン由来の繰り返し単位および(B)環状非共役ジエン由来の繰り返し単位に加えて、(C)環状非共役ジエン以外の環状オレフィン及び/または鎖状ポリエン由来の繰り返し単位とから構成されていてもよい。
環状オレフィン共重合体(P)の共重合原料としては、前述したオレフィン、環状非共役ジエンに加えて、環状非共役ジエン以外の環状オレフィン及び鎖状ポリエンを用いることができる。このような環状オレフィン及び鎖状ポリエンとしては下記一般式(Va)、(VIa)、(VIIa)で表される環状非共役ジエン以外の環状オレフィン、または下記一般式(VIIIa)で表される鎖状ポリエンである。これらの環状オレフィンや鎖状ポリエンは異なる二種以上を用いてもよい。
【0080】
【化22】

【0081】
〔一般式(Va)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基、または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75〜R78は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。)
【0082】
【化23】

【0083】
〔一般式(VIa)中、xおよびdは0または1以上の整数であり、yおよびzは0、1または2であり、R81〜R99は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基もしくは炭素原子数3〜15のシクロアルキル基である脂肪族炭化水素基、炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基またはアルコキシ基であり、R89およびR90が結合している炭素原子と、R93が結合している炭素原子またはR91が結合している炭素原子とは、直接あるいは炭素原子数1〜3のアルキレン基を介して結合していてもよく、またy=z=0のとき、R95とR92またはR95とR99とは互いに結合して単環または多環の芳香族環を形成していてもよい。〕
【0084】
【化24】

【0085】
〔一般式(VIIa)中、R100、R101は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜5の炭化水素基を示し、fは1≦f≦18である。〕
【0086】
【化25】

【0087】
〔一般式(VIIIa)中、R201からR206は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、または炭素原子数1〜20の炭化水素基であり、Pは炭素原子数1〜20の直鎖または分岐状の炭化水素基で、二重結合及び/または三重結合を含んでいてもよい。〕
【0088】
前記一般式(Va)、一般式(VIa)および一般式(VIIa)で表される環状オレフィンの具体例については国際公開第2006/118261号パンフレットに記載の化合物を用いることができる。
【0089】
具体的には、ビシクロ-2-ヘプテン誘導体(ビシクロヘプト-2-エン誘導体)、トリシクロ-3-デセン誘導体、トリシクロ-3-ウンデセン誘導体、テトラシクロ-3-ドデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロペンタデカジエン誘導体、ペンタシクロ-3-ペンタデセン誘導体、ペンタシクロ-4-ヘキサデセン誘導体、ペンタシクロ-3-ヘキサデセン誘導体、ヘキサシクロ-4-ヘプタデセン誘導体、ヘプタシクロ-5-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-4-エイコセン誘導体、ヘプタシクロ-5-ヘンエイコセン誘導体、オクタシクロ-5-ドコセン誘導体、ノナシクロ-5-ペンタコセン誘導体、ノナシクロ-6-ヘキサコセン誘導体、シクロペンタジエン-アセナフチレン付加物、1,4-メタノ-1,4,4a,9a-テトラヒドロフルオレン誘導体、1,4-メタノ-1,4,4a,5,10,10a-ヘキサヒドロアントラセン誘導体、炭素数3〜20のシクロアルキレン誘導体が好ましく、特に[2.2.1]-2-ヘプテン(ノルボルネン)、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]-3-ドデセン(テトラシクロドデセン)が好ましい。
【0090】
一般式(VIIIa)で表される直鎖状ポリエンとして、具体的には、1,4−ヘキサジエン、3−メチル−1,4−ヘキサジエン、4−メチル−1,4−ヘキサジエン、5−メチル−1,4−ヘキサジエン、4,5−ジメチル−1,4−ヘキサジエン、7−メチル−1,6−オクタジエン、DMDT、1,3−ブタジエン,1,5−ヘキサジエンなどが挙げられる。また1,3−ブタジエン、1,5−ヘキサジエンなどのポリエンから環化した環化性のポリエンを用いても良い。
【0091】
発明に係る環状オレフィン共重合体(P)が、前記一般式(VIIIa)で表される直鎖状ポリエン由来の構成単位、あるいは環状非共役ジエン以外の環状オレフィン〔一般式(Va)、一般式(VIa)、一般式(VIIa)〕に由来する構成単位を含む場合は、該構成単位の含有量は、前記一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位、前記一般式(II)、前記一般式(III)および前記一般式(IV)で表されるいずれか1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位の合計モルに対して、通常0.1〜100mol%、好ましくは0.1〜50mol%である。
【0092】
一般式(Va)、(VIa)、(VIIa)で表される環状オレフィンのうちでも、一般式(Va)で表される環状オレフィンが好ましい。すなわち、本発明の環状オレフィン共重合体(P)は、(C)環状非共役ジエン以外の環状オレフィン及び/または鎖状ポリエン由来の繰り返し単位として、(C1)下記一般式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位を含有することが好ましい。
【0093】
【化26】

【0094】
〔一般式(V)中の各記号は、一般式(Va)と同一である。〕
【0095】
本発明に係る環状オレフィン共重合体(P)は目的とする用途に応じて、モノマーの仕込み比により、そのコモノマー含有量、及びガラス転位点(Tg)をコントロールできる。環状オレフィン共重合体(P)のTgは、通常300℃以下、好ましくは250℃以下、さらに好ましくは200℃以下、とりわけ好ましくは170℃以下である。Tgがこの範囲を超えると、環状オレフィン共重合体(P)の溶融成形が困難となる。
【0096】
本発明に係る環状オレフィン共重合体(P)の、135℃中デカリン中で測定した極限粘度[η]は、通常0.2〜15dl/g、好ましくは0.5〜5dl/g、より好ましくは0.5〜3dl/gの範囲である。この範囲より極限粘度[η]が高い場合、成形性が悪くなり、また、この範囲より極限粘度[η]が低い場合、環状オレフィン共重合体(P)を架橋することによって得られる架橋体(Q)の耐熱性や機械的特性が低下する。
なお、環状オレフィン共重合体(P)の極限粘度[η]は、重合触媒、助触媒、H添加量、重合温度等の重合条件により制御することが可能である。
【0097】
[環状オレフィン共重合体(P)の製造方法]
【0098】
本発明の環状オレフィン共重合体(P)を製造するためには、以下のような共重合触媒を用いることができる。
【0099】
(共重合触媒)
本発明に係る環状オレフィン共重合体(P)を製造する際に用いることのできる、好適な共重合触媒としては、
(K)下記一般式(IX)で表される遷移金属化合物と、
(M)(m-1)有機金属化合物、
(m-2)有機アルミニウムオキシ化合物、
(m-3)遷移金属化合物(K)と反応してイオン対を形成する化合物
から選ばれる少なくとも1種の化合物と、からなる触媒を挙げることができる。
【0100】
【化27】

【0101】
(一般式(IX)中、Mは3族から11族の遷移金属を表す。mは、1〜4の整数を示し、R1〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合には、一つの配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基とが連結されていてもよく(但し、R1同士が結合されることはない)、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士は互いに同一でも異なっていてもよく、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)。
【0102】
このような共重合触媒を用いることにより、環状オレフィン共重合体(P)における環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)の含有量を高くすることができ、本発明においては、オレフィン由来の繰り返し単位(A)と環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)とのモル比((A)/(B))を、40/60〜80/20、好ましくは55/45〜75/25、さらに好ましくは55/45〜70/30とすることができる。
【0103】
(K)遷移金属化合物
本発明に係る共重合体を製造する際に好適に用いられる共重合触媒を構成する(K)遷移金属化合物は、上記式(IX)で表される化合物である。
【0104】
上記式(IX)中、Mは周期律表第3から11族の遷移金属原子(3族にはランタノイドも含まれる)を示し、好ましくは3から6族の金属原子であり、より好ましくは4族または5族の金属原子である。具体的には、スカンジウム、チタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウム、ニオブ、タンタル、クロム、コバルト、鉄、ルテニウム等が挙げられるが、好ましくはチタン、ジルコニウム、ハフニウム、バナジウムであり、特に好ましくは、チタンである。mは1から4の整数を示すが、好ましくは1または2、さらに好ましくは2である。
【0105】
上記炭化水素基は、水素原子がハロゲンで置換されていてもよく、たとえば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロフェニル基、クロロフェニル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のハロゲン化炭化水素基が挙げられる。
【0106】
また、上記炭化水素基は、他の炭化水素基で置換されていてもよく、たとえば、ベンジル基、クミル基などのアリール基置換アルキル基などが挙げられる。
【0107】
さらにまた、上記炭化水素基は、ヘテロ環式化合物残基;アルコシキ基、アリーロキシ基、エステル基、エーテル基、アシル基、カルボキシル基、カルボナート基、ヒドロキシ基、ペルオキシ基、カルボン酸無水物基などの酸素含有基;アミノ基、イミノ基、アミド基、イミド基、ヒドラジノ基、ヒドラゾノ基、ニトロ基、ニトロソ基、シアノ基、イソシアノ基、シアン酸エステル基、アミジノ基、ジアゾ基、アミノ基がアンモニウム塩となったものなどの窒素含有基;ボランジイル基、ボラントリイル基、ジボラニル基などのホウ素含有基;メルカプト基、チオエステル基、ジチオエステル基、アルキルチオ基、アリールチオ基、チオアシル基、チオエーテル基、チオシアン酸エステル基、イソチアン酸エステル基、スルホンエステル基、スルホンアミド基、チオカルボキシル基、ジチオカルボキシル基、スルホ基、スルホニル基、スルフィニル基、スルフェニル基などのイオウ含有基;ホスフィド基、ホスホリル基、チオホスホリル基、ホスファト基などのリン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を有していてもよい。
【0108】
これらのうち、特に、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、t-ブチル基、ネオペンチル基、n-ヘキシル基などの炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状のアルキル基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニル基、ターフェニル基、フェナントリル基、アントラセニル基などの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;これらのアリール基にハロゲン原子、炭素原子数1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基またはアルコキシ基、炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基またはアリーロキシ基などの置換基が1〜5個置換した置換アリール基などが好ましい。
【0109】
酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基としては、上記例示したものと同様のものが挙げられる。
【0110】
ヘテロ環式化合物残基としては、ピロール、ピリジン、ピリミジン、キノリン、トリアジンなどの含窒素化合物、フラン、ピランなどの含酸素化合物、チオフェンなどの含硫黄化合物などの残基、およびこれらのヘテロ環式化合物残基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基、アルコキシ基などの置換基がさらに置換した基などが挙げられる。
【0111】
ケイ素含有基としては、シリル基、シロキシ基、炭化水素置換シリル基、炭化水素置換シロキシ基など、具体的には、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、ジメチル-t-ブチルシリル基、ジメチル(ペンタフルオロフェニル)シリル基などが挙げられる。これらの中では、メチルシリル基、ジメチルシリル基、トリメチルシリル基、エチルシリル基、ジエチルシリル基、トリエチルシリル基、ジメチルフェニルシリル基、トリフェニルシリル基などが好ましい。特にトリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、ジメチルフェニルシリル基が好ましい。炭化水素置換シロキシ基として具体的には、トリメチルシロキシ基などが挙げられる。
【0112】
ゲルマニウム含有基およびスズ含有基としては、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムおよびスズに置換したものが挙げられる。
【0113】
次に上記で説明したR1〜R5の例について、より具体的に説明する。
【0114】
アルコキシ基として具体的には、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、イソプロポキシ基、n-ブトキシ基、イソブトキシ基、t-ブトキシ基などが挙げられる。
【0115】
アルキルチオ基として具体的には、メチルチオ基、エチルチオ基等が挙げられる。
【0116】
アリーロキシ基として具体的には、フェノキシ基、2,6-ジメチルフェノキシ基、2,4,6-トリメチルフェノキシ基などが挙げられる。
【0117】
アリールチオ基として具体的には、フェニルチオ基、メチルフェニルチオ基、ナフチルチオ基等が挙げられる。
【0118】
アシル基として具体的には、ホルミル基、アセチル基、ベンゾイル基、p-クロロベンゾイル基、p-メトキシベンゾイル基などが挙げられる。
【0119】
エステル基として具体的には、アセチルオキシ基、ベンゾイルオキシ基、メトキシカルボニル基、フェノキシカルボニル基、p-クロロフェノキシカルボニル基などが挙げられる。
【0120】
チオエステル基として具体的には、アセチルチオ基、ベンゾイルチオ基、メチルチオカルボニル基、フェニルチオカルボニル基などが挙げられる。
【0121】
アミド基として具体的には、アセトアミド基、N-メチルアセトアミド基、N-メチルベンズアミド基などが挙げられる。
【0122】
イミド基として具体的には、アセトイミド基、ベンズイミド基などが挙げられる。
【0123】
アミノ基として具体的には、ジメチルアミノ基、エチルメチルアミノ基、ジフェニルアミノ基などが挙げられる。
【0124】
イミノ基として具体的には、メチルイミノ基、エチルイミノ基、プロピルイミノ基、ブチルイミノ基、フェニルイミノ基などが挙げられる。
【0125】
スルホンエステル基として具体的には、スルホン酸メチル基、スルホン酸エチル基、スルホン酸フェニル基などが挙げられる。
【0126】
スルホンアミド基として具体的には、フェニルスルホンアミド基、N-メチルスルホンアミド基、N-メチル-p-トルエンスルホンアミド基などが挙げられる。
【0127】
1〜R5は、これらのうちの2個以上の基、好ましくは隣接する基が互いに連結して脂肪環、芳香環または、窒素原子などの異原子を含む炭化水素環を形成していてもよく、これらの環はさらに置換基を有していてもよい。
【0128】
またR6はフェニル基に直接結合した炭素が1級,2級および3級炭素である脂肪族炭化水素基、脂環族炭化水素基および芳香族基であり、R6として好ましい脂肪族炭化水素基としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、ネオペンチル、n-ヘキシルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状(2級)のアルキル基;脂環族炭化水素基としてはシクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、2-メチルシクロヘキシル、3-メチルシクロヘキシル、4-メチルシクロヘキシル、4-tert-ブチルシクロヘキシル、2,6-ジメチルシクロヘキシル、2,4,6-トリメチルシクロヘキシル、3,5-ジメチルシクロヘキシル、2,3,4,5,6ペンタメチルシクロヘキシル、2,2-ジメチルシクロヘキシル、2,2,6,6-テトラメチルシクロヘキシル、3,5-ジ-tert-ブチルシクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデシルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基;芳香族基としてはフェニル、ベンジル、ナフチル、ビフェニリル、トリフェニリルなどの炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基;および、これらの基に炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20のアルキル基または炭素原子数が6〜30、好ましくは6〜20のアリール基などの置換基がさらに置換した基などが好ましく挙げられる。
【0129】
本発明では、R6としては特に、メチル、エチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、ネオペンチルなどの炭素原子数が1〜30、好ましくは1〜20の直鎖状または分岐状(2級)のアルキル基、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロへプチル、シクロオクチル、シクロドデシルなどの炭素原子数が3〜30、好ましくは3〜20の環状飽和炭化水素基から選ばれる基であることが好ましく、あるいはフェニル、ナフチル、フルオレニル、アントラニル、フェナントリルなどの炭素原子数6〜30、好ましくは6〜20のアリール基であることも好ましい。
【0130】
また、mが2以上の場合には、一つの配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基とが連結されていてもよい(但し、R1同士が結合されることはない)。さらに、mが2以上の場合にはR1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士は、互いに同一でも異なっていてもよい。
【0131】
nは、Mの価数を満たす数であり、具体的には0〜5、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3の整数である。
【0132】
Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示す。なお、nが2以上の場合には、互いに同一であっても、異なっていてもよい。
【0133】
ハロゲン原子としては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が挙げられる。
【0134】
炭化水素基としては、前記R1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられる。具体的には、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、オクチル基、ノニル基、ドデシル基、アイコシル基などのアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基、ノルボルニル基、アダマンチル基などの炭素原子数が3〜30のシクロアルキル基;ビニル基、プロペニル基、シクロヘキセニル基などのアルケニル基;ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基などのアリールアルキル基;フェニル基、トリル基、ジメチルフェニル基、トリメチルフェニル基、エチルフェニル基、プロピルフェニル基、ビフェニル基、ナフチル基、メチルナフチル基、アントリル基、フェナントリル基などのアリール基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。また、これらの炭化水素基には、ハロゲン化炭化水素、具体的には炭素原子数1〜20の炭化水素基の少なくとも一つの水素がハロゲンに置換した基も含まれる。これらのうちでは、炭素原子数が1〜20のものが好ましい。
【0135】
ヘテロ環式化合物残基としては、前記R1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられる。
【0136】
酸素含有基としては、前記R1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、ヒドロキシ基;メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基などのアルコシキ基;フェノキシ基、メチルフェノキシ基、ジメチルフェノキシ基、ナフトキシ基などのアリーロキシ基;フェニルメトキシ基、フェニルエトキシ基などのアリールアルコキシ基;アセトキシ基;カルボニル基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0137】
イオウ含有基としては、前記R1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、メチルスルフォネート基、トリフルオロメタンスルフォネート基、フェニルスルフォネート基、ベンジルスルフォネート基、p-トルエンスルフォネート基、トリメチルベンゼンスルフォネート基、トリイソブチルベンゼンスルフォネート基、p-クロルベンゼンスルフォネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフォネート基などのスルフォネート基;メチルスルフィネート基、フェニルスルフィネート基、ベンジルスルフィネート基、p-トルエンスルフィネート基、トリメチルベンゼンスルフィネート基、ペンタフルオロベンゼンスルフィネート基などのスルフィネート基;アルキルチオ基;アリールチオ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0138】
窒素含有基として具体的には、前記R1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、アミノ基;メチルアミノ基、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジプロピルアミノ基、ジブチルアミノ基、ジシクロヘキシルアミノ基などのアルキルアミノ基;フェニルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ジトリルアミノ基、ジナフチルアミノ基、メチルフェニルアミノ基などのアリールアミノ基またはアルキルアリールアミノ基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0139】
ホウ素含有基として具体的には、BR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられる。
【0140】
リン含有基として具体的には、トリメチルホスフィン基、トリブチルホスフィン基、トリシクロヘキシルホスフィン基などのトリアルキルホスフィン基;トリフェニルホスフィン基、トリトリルホスフィン基などのトリアリールホスフィン基;メチルホスファイト基、エチルホスファイト基、フェニルホスファイト基などのホスファイト基(ホスフィド基);ホスホン酸基;ホスフィン酸基などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0141】
ケイ素含有基として具体的には、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、フェニルシリル基、ジフェニルシリル基、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリプロピルシリル基、トリシクロヘキシルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、トリトリルシリル基、トリナフチルシリル基などの炭化水素置換シリル基;トリメチルシリルエーテル基などの炭化水素置換シリルエーテル基;トリメチルシリルメチル基などのケイ素置換アルキル基;トリメチルシリルフェニル基などのケイ素置換アリール基などが挙げられる。
【0142】
ゲルマニウム含有基として具体的には、前記R1〜R6で例示したものと同様のものが挙げられ、具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をゲルマニウムに置換した基が挙げられる。
【0143】
スズ含有基として具体的には、前記R1〜R5で例示したものと同様のものが挙げられ、より具体的には、前記ケイ素含有基のケイ素をスズに置換した基が挙げられる。
【0144】
ハロゲン含有基として具体的には、PF6、BF4などのフッ素含有基、ClO4、SbCl6などの塩素含有基、IO4などのヨウ素含有基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0145】
アルミニウム含有基として具体的には、AlR4(Rは水素、アルキル基、置換基を有してもよいアリール基、ハロゲン原子等を示す)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0146】
なお、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。
【0147】
本発明では、このような(K)遷移金属化合物として、上記式(IX)で表される遷移金属化合物のうち、下記一般式(X)で表される遷移金属化合物を用いると、さらに望ましい特性を有する共重合体を製造することが可能となるため好ましい。
【0148】
【化28】

【0149】
(一般式(X)中、mは、1〜4の整数を示し、R1〜R5は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、R6は、フェニル基に結合した炭素が1級、2級、または3級炭素である脂肪族炭化水素基、フェニル基に結合した炭素が1級、2級、または3級炭素である脂環族炭化水素基および芳香族基から選ばれ、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合には、一つの配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基とが連結されていてもよく(但し、R1同士が結合されることはない)、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士は互いに同一でも異なっていてもよく、nは、Tiの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。)
以下に、本発明で共重合触媒の成分として好適に用いられる(K)遷移金属化合物の具体的な例を示すが、これらに限定されるものではない。
【0150】
【化29】

【0151】
【化30】

【0152】
【化31】

【0153】
【化32】

【0154】
【化33】

【0155】
【化34】

【0156】
【化35】

【0157】
【化36】

【0158】
【化37】

【0159】
【化38】

【0160】
なお、上記例示中、Meはメチル基を、Etはエチル基を、n-Prはノルマルプロピル基を、i-Prはイソプロピル基を、n-Buはノルマルブチル基を、i-Buはイソブチル基を、t-Buはターシャリーブチル基を、Phはフェニル基を示す。
【0161】
このような遷移金属化合物(K)の製造方法は、特に限定されることなく、たとえば以下のようにして製造することができる。
【0162】
まず、遷移金属化合物(K)を構成する配位子は、サリチルアルデヒド類化合物を、式R1-NH2第1級アミン類化合物(R1は前記と同義である。)、例えばアルキルアミン類化合物と反応させることにより得られる。具体的には、両方の出発化合物を溶媒に溶解する。溶媒としては、このような反応に一般的なものを使用できるが、なかでもメタノール、エタノール等のアルコール溶媒、またはトルエン等の炭化水素溶媒が好ましい。次いで、室温から還流条件で、約1〜48時間攪拌すると、対応する配位子が良好な収率で得られる。配位子化合物を合成する際、触媒として、蟻酸、酢酸、パラトルエンスルホン酸等の酸触媒を用いてもよい。また、脱水剤として、モレキュラーシーブス、無水硫酸マグネシウムまたは無水硫酸ナトリウムを用いたり、ディーンスタークにより脱水しながら行うと、反応進行に効果的である。
【0163】
次に、こうして得られた配位子を遷移金属M含有化合物と反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することができる。具体的には、合成した配位子を溶媒に溶解し、必要に応じて塩基と接触させてフェノキサイド塩を調製した後、金属ハロゲン化物、金属アルキル化物等の金属化合物と低温で混合し、-78℃から室温、もしくは還流条件下で、約1〜48時間攪拌する。溶媒としては、このような反応に一般的なものを使用できるが、なかでもエーテル、テトラヒドロフラン(THF)等の極性溶媒、トルエン等の炭化水素溶媒などが好ましく使用される。また、フェノキサイド塩を調製する際に使用する塩基としては、n-ブチルリチウム等のリチウム塩、水素化ナトリウム等のナトリウム塩等の金属塩や、トリエチルアミン、ピリジン等を例示することができるが、この限りではない。
【0164】
また、化合物の性質によっては、フェノキサイド塩調製を経由せず、配位子と金属化合物とを直接反応させることで、対応する遷移金属化合物を合成することもできる。さらに、合成した遷移金属化合物中の金属Mを、常法により別の遷移金属と交換することも可能である。また、例えばR1〜R6の一つ以上が水素である場合には、合成の任意の段階において、水素以外の置換基を導入することができる。
【0165】
また、遷移金属化合物を単離せず、配位子と金属化合物との反応溶液をそのまま重合に用いることもできる。
【0166】
(触媒成分(M))
上述した(K)遷移金属化合物とともに好適に用いられる触媒成分(M)は、(m-1)有機金属化合物、(m-2)有機アルミニウムオキシ化合物、(m-3)遷移金属化合物(K)と反応してイオン対を形成する化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種の化合物である。
【0167】
(m-1)有機金属化合物
本発明で好適に用いられる(m-1)有機金属化合物としては、具体的には下記のような周期表第1、2族および第12、13族の有機金属化合物が用いられる。
(m-1a) 一般式 RamAl(ORb)npq
(一般式中、Ra およびRb は、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、pは0≦p<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+p+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0168】
(m-1b) 一般式 M2AlRa4
(一般式中、M2 はLi、NaまたはKを示し、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示す。)で表される周期表第1族金属とアルミニウムとの錯アルキル化物。
【0169】
(m-1c) 一般式 Rab3
(一般式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、M3はMg、ZnまたはCdである。)で表される周期表第2族または第12族金属のジアルキル化合物。
【0170】
前記(m-1a)に属する有機アルミニウム化合物としては、次のような化合物などを例示できる。
【0171】
一般式 RamAl(ORb)3-m
(一般式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは1.5≦m≦3の数である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 Ram AlX3-m
(一般式中、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは好ましくは0<m<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 Ram AlH3-m
(一般式中、Ra は炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、mは好ましくは2≦m<3である。)で表される有機アルミニウム化合物、
一般式 RamAl(ORbnq
(一般式中、RaおよびRbは、互いに同一でも異なっていてもよく、炭素原子数が1〜15、好ましくは1〜4の炭化水素基を示し、Xはハロゲン原子を示し、mは0<m≦3、nは0≦n<3、qは0≦q<3の数であり、かつm+n+q=3である。)で表される有機アルミニウム化合物。
【0172】
(m-1a)に属する有機アルミニウム化合物としてより具体的には、
トリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリn-ブチルアルミニウム、トリプロピルアルミニウム、トリペンチルアルミニウム、トリヘキシルアルミニウム、トリオクチルアルミニウム、トリデシルアルミニウムなどのトリn-アルキルアルミニウム;トリイソプロピルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウム、トリsec-ブチルアルミニウム、トリ tert-ブチルアルミニウム、トリ2-メチルブチルアルミニウム、トリ3-メチルブチルアルミニウム、トリ2-メチルペンチルアルミニウム、トリ3-メチルペンチルアルミニウム、トリ4-メチルペンチルアルミニウム、トリ2-メチルヘキシルアルミニウム、トリ3-メチルヘキシルアルミニウム、トリ2-エチルヘキシルアルミニウムなどのトリ分岐鎖アルキルアルミニウム;トリシクロヘキシルアルミニウム、トリシクロオクチルアルミニウムなどのトリシクロアルキルアルミニウム;トリフェニルアルミニウム、トリトリルアルミニウムなどのトリアリールアルミニウム;ジイソブチルアルミニウムハイドライドなどのジアルキルアルミニウムハイドライド;(i-C49)xAly(C510)z(式中、x、y、zは正の数であり、z≧2xである。)などで表されるトリイソプレニルアルミニウムなどのトリアルケニルアルミニウム;イソブチルアルミニウムメトキシド、イソブチルアルミニウムエトキシド、イソブチルアルミニウムイソプロポキシドなどのアルキルアルミニウムアルコキシド;ジメチルアルミニウムメトキシド、ジエチルアルミニウムエトキシド、ジブチルアルミニウムブトキシドなどのジアルキルアルミニウムアルコキシド;エチルアルミニウムセスキエトキシド、ブチルアルミニウムセスキブトキシドなどのアルキルアルミニウムセスキアルコキシド;Ra2.5Al(ORb)0.5などで表される平均組成を有する部分的にアルコキシ化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムフェノキシド、ジエチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、エチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、ジイソブチルアルミニウム(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)、イソブチルアルミニウムビス(2,6-ジ-t-ブチル-4-メチルフェノキシド)などのジアルキルアルミニウムアリーロキシド;ジメチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムクロリド、ジブチルアルミニウムクロリド、ジエチルアルミニウムブロミド、ジイソブチルアルミニウムクロリドなどのジアルキルアルミニウムハライド;エチルアルミニウムセスキクロリド、ブチルアルミニウムセスキクロリド、エチルアルミニウムセスキブロミドなどのアルキルアルミニウムセスキハライド;エチルアルミニウムジクロリド、プロピルアルミニウムジクロリド、ブチルアルミニウムジブロミドなどのアルキルアルミニウムジハライドなどの部分的にハロゲン化されたアルキルアルミニウム;ジエチルアルミニウムヒドリド、ジブチルアルミニウムヒドリドなどのジアルキルアルミニウムヒドリド;エチルアルミニウムジヒドリド、プロピルアルミニウムジヒドリドなどのアルキルアルミニウムジヒドリドなどその他の部分的に水素化されたアルキルアルミニウム;エチルアルミニウムエトキシクロリド、ブチルアルミニウムブトキシクロリド、エチルアルミニウムエトキシブロミドなどの部分的にアルコキシ化およびハロゲン化されたアルキルアルミニウムなどを挙げることができる。
【0173】
また(m-1a)に類似する化合物も使用することができ、たとえば窒素原子を介して2以上のアルミニウム化合物が結合した有機アルミニウム化合物を挙げることができる。このような化合物として具体的には、(C25)2AlN(C25)Al(C25)2などを挙げることができる。
【0174】
前記(m-1b)に属する化合物としては、LiAl(C25)4、LiAl(C715)4などを挙げることができる。またその他にも、(m-1) 有機金属化合物としては、メチルリチウム、エチルリチウム、プロピルリチウム、ブチルリチウム、メチルマグネシウムブロミド、メチルマグネシウムクロリド、エチルマグネシウムブロミド、エチルマグネシウムクロリド、プロピルマグネシウムブロミド、プロピルマグネシウムクロリド、ブチルマグネシウムブロミド、ブチルマグネシウムクロリド、ジメチルマグネシウム、ジエチルマグネシウム、ジブチルマグネシウム、ブチルエチルマグネシウムなどを使用することもできる。
【0175】
また重合系内で上記有機アルミニウム化合物が形成されるような化合物、たとえばハロゲン化アルミニウムとアルキルリチウムとの組合せ、またはハロゲン化アルミニウムとアルキルマグネシウムとの組合せなどを使用することもできる。
【0176】
このような(m-1) 有機金属化合物のなかでは、有機アルミニウム化合物が好ましい。上記のような(m-1) 有機金属化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
(m-2)有機アルミニウムオキシ化合物
本発明で用いられる(m-2) 有機アルミニウムオキシ化合物は、従来公知のアルミノキサンであってもよく、また特開平2-78687号公報に例示されているようなベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物であってもよい。
【0177】
従来公知のアルミノキサンは、たとえば下記(1)〜(3)のような方法によって製造することができ、通常、炭化水素溶媒の溶液として得られる。
(1)吸着水を含有する化合物または結晶水を含有する塩類、たとえば塩化マグネシウム水和物、硫酸銅水和物、硫酸アルミニウム水和物、硫酸ニッケル水和物、塩化第1セリウム水和物などの炭化水素媒体懸濁液に、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物を添加して、吸着水または結晶水と有機アルミニウム化合物とを反応させる方法。
(2)ベンゼン、トルエン、エチルエーテル、テトラヒドロフランなどの媒体中で、トリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に直接水、氷または水蒸気を作用させる方法。
(3)デカン、ベンゼン、トルエンなどの媒体中でトリアルキルアルミニウムなどの有機アルミニウム化合物に、ジメチルスズオキシド、ジブチルスズオキシドなどの有機スズ酸化物を反応させる方法。
【0178】
なお該アルミノキサンは、少量の有機金属成分を含有してもよい。また回収された上記のアルミノキサンの溶液から溶媒または未反応有機アルミニウム化合物を蒸留して除去した後、溶媒に再溶解またはアルミノキサンの貧溶媒に懸濁させてもよい。
【0179】
アルミノキサンを調製する際に用いられる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(m-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0180】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、トリメチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが特に好ましい。
【0181】
上記のような有機アルミニウム化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合せて用いられる。
【0182】
アルミノキサンの調製に用いられる溶媒としては、ベンゼン、トルエン、キシレン、クメン、シメンなどの芳香族炭化水素、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、ヘキサデカン、オクタデカンなどの脂肪族炭化水素、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロオクタン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素、ガソリン、灯油、軽油などの石油留分または上記芳香族炭化水素、脂肪族炭化水素、脂環族炭化水素のハロゲン化物とりわけ、塩素化物、臭素化物などの炭化水素溶媒が挙げられる。さらにエチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル類を用いることもできる。これらの溶媒のうち特に芳香族炭化水素または脂肪族炭化水素が好ましい。
【0183】
また本発明で用いられるベンゼン不溶性の有機アルミニウムオキシ化合物は、60℃のベンゼンに溶解するAl成分がAl原子換算で通常10%以下、好ましくは5%以下、特に好ましくは2%以下であるもの、すなわち、ベンゼンに対して不溶性または難溶性であるものが好ましい。
【0184】
本発明で用いられる有機アルミニウムオキシ化合物としては、下記一般式で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物を挙げることもできる。
【0185】
【化39】

【0186】
(上記式で表されるボロン化合物中、R7は炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。R8は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数が1〜10の炭化水素基を示す。)
前記式で表されるボロンを含んだ有機アルミニウムオキシ化合物は、下記一般式で表されるアルキルボロン酸と、
7-B(OH)2
(一般式中、R7は前記と同じ基を示す。)
有機アルミニウム化合物とを、不活性ガス雰囲気下に不活性溶媒中で、−80℃〜室温の温度で1分〜24時間反応させることにより製造できる。
【0187】
前記一般式で表されるアルキルボロン酸の具体的なものとしては、メチルボロン酸、エチルボロン酸、イソプロピルボロン酸、n-プロピルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、n-ヘキシルボロン酸、シクロヘキシルボロン酸、フェニルボロン酸、3,5-ジフルオロボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸、3,5-ビス(トリフルオロメチル)フェニルボロン酸などが挙げられる。これらの中では、メチルボロン酸、n-ブチルボロン酸、イソブチルボロン酸、3,5-ジフルオロフェニルボロン酸、ペンタフルオロフェニルボロン酸が好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0188】
このようなアルキルボロン酸と反応させる有機アルミニウム化合物として具体的には、前記(m-1a)に属する有機アルミニウム化合物として例示したものと同様の有機アルミニウム化合物を挙げることができる。
【0189】
これらのうち、トリアルキルアルミニウム、トリシクロアルキルアルミニウムが好ましく、特にトリメチルアルミニウム、トリエチルアルミニウム、トリイソブチルアルミニウムが好ましい。これらは1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0190】
上記のような (m-2)有機アルミニウムオキシ化合物は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いることができる。
【0191】
(m-3)遷移金属化合物(K)と反応してイオン対を形成する化合物
本発明で用いられる遷移金属化合物(A)と反応してイオン対を形成する化合物(m-3) (以下、「イオン化イオン性化合物」という。)としては、特開平1-501950号公報、特開平1-502036号公報、特開平3-179005号公報、特開平3-179006号公報、特開平3-207703号公報、特開平3-207704号公報、USP-5321106号などに記載されたルイス酸、イオン性化合物、ボラン化合物およびカルボラン化合物などを挙げることができる。さらに、ヘテロポリ化合物およびイソポリ化合物も挙げることができる。
【0192】
具体的には、ルイス酸としては、BR3(Rは、フッ素、メチル基、トリフルオロメチル基などの置換基を有していてもよいフェニル基またはフッ素である。)で示される化合物が挙げられ、たとえばトリフルオロボロン、トリフェニルボロン、トリス(4-フルオロフェニル)ボロン、トリス(3,5-ジフルオロフェニル)ボロン、トリス(4-フルオロメチルフェニル)ボロン、トリス(ペンタフルオロフェニル)ボロン、トリス(p-トリル)ボロン、トリス(o-トリル)ボロン、トリス(3,5-ジメチルフェニル)ボロンなどが挙げられる。
【0193】
イオン性化合物としては、たとえば下記一般式(XI)で表される化合物が挙げられる。
【0194】
【化40】

【0195】
式(XI)中において、R9+はH+またはカチオンであり、R10〜R13は、互いに同一でも異なっていてもよく、有機基、好ましくはアリール基または置換アリール基である。カチオンとしては、カルボニウムカチオン、オキソニウムカチオン、アンモニウムカチオン、ホスホニウムカチオン、シクロヘプチルトリエニルカチオン、遷移金属を有するフェロセニウムカチオンなどが挙げられる。
【0196】
前記カルボニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルカルボニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)カルボニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)カルボニウムカチオンなどの三置換カルボニウムカチオンなどが挙げられる。
【0197】
前記アンモニウムカチオンとして具体的には、トリメチルアンモニウムカチオン、トリエチルアンモニウムカチオン、トリプロピルアンモニウムカチオン、トリブチルアンモニウムカチオン、トリ(n-ブチル)アンモニウムカチオンなどのトリアルキルアンモニウムカチオン;N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオン、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムカチオンなどのN,N-ジアルキルアニリニウムカチオン;ジ(イソプロピル)アンモニウムカチオン、ジシクロヘキシルアンモニウムカチオンなどのジアルキルアンモニウムカチオンなどが挙げられる。
【0198】
前記ホスホニウムカチオンとして具体的には、トリフェニルホスホニウムカチオン、トリ(メチルフェニル)ホスホニウムカチオン、トリ(ジメチルフェニル)ホスホニウムカチオンなどのトリアリールホスホニウムカチオンなどが挙げられる。
【0199】
R9+としては、カルボニウムカチオン、アンモニウムカチオンなどが好ましく、特にトリフェニルカルボニウムカチオン、N,N-ジメチルアニリニウムカチオン、N,N-ジエチルアニリニウムカチオンが好ましい。
【0200】
またイオン性化合物としては、トリアルキル置換アンモニウム塩、N,N-ジアルキルアニリニウム塩、ジアルキルアンモニウム塩、トリアリールホスフォニウム塩などを挙げることもできる。
【0201】
トリアルキル置換アンモニウム塩として具体的には、たとえばトリエチルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(p-トリル)ホウ素、トリメチルアンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、トリプロピルアンモニウムテトラ(o,p-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(m,m-ジメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(p-トリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(3,5-ジトリフルオロメチルフェニル)ホウ素、トリ(n-ブチル)アンモニウムテトラ(o-トリル)ホウ素などが挙げられる。
【0202】
N,N-ジアルキルアニリニウム塩として具体的には、たとえばN,N-ジメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-ジエチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素、N,N-2,4,6-ペンタメチルアニリニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0203】
ジアルキルアンモニウム塩として具体的には、たとえばジ(1-プロピル)アンモニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ホウ素、ジシクロヘキシルアンモニウムテトラ(フェニル)ホウ素などが挙げられる。
【0204】
さらにイオン性化合物として、トリフェニルカルベニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、N,N-ジメチルアニリニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ボレート、フェロセニウムテトラ(ペンタフルオロフェニル)ボレート、トリフェニルカルベニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、N,N-ジエチルアニリニウムペンタフェニルシクロペンタジエニル錯体、下記式(XII)または(XIII)で表されるホウ素化合物などを挙げることもできる。
【0205】
【化41】

【0206】
(一般式(XII)中、Etはエチル基を示す。)
【0207】
【化42】

【0208】
(一般式(XIII)中、Etはエチル基を示す。)
ボラン化合物として具体的には、たとえば
デカボラン;ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ノナボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ウンデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕デカクロロデカボレート、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ドデカクロロドデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ドデカハイドライドドデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ドデカハイドライドドデカボレート)ニッケル酸塩(III)などの金属ボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0209】
カルボラン化合物として具体的には、たとえば
4-カルバノナボラン、1,3-ジカルバノナボラン、6,9-ジカルバデカボラン、ドデカハイドライド-1-フェニル-1,3-ジカルバノナボラン、ドデカハイドライド-1-メチル-1,3-ジカルバノナボラン、ウンデカハイドライド-1,3-ジメチル-1,3-ジカルバノナボラン、7,8-ジカルバウンデカボラン、2,7-ジカルバウンデカボラン、ウンデカハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボラン、ドデカハイドライド-11-メチル-2,7-ジカルバウンデカボラン、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム1-トリメチルシリル-1-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムブロモ-1-カルバドデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム6-カルバデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7-カルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウム2,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムドデカハイドライド-8-メチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-エチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-ブチル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-8-アリル-7,9-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-9-トリメチルシリル-7,8-ジカルバウンデカボレート、トリ(n-ブチル)アンモニウムウンデカハイドライド-4,6-ジブロモ-7-カルバウンデカボレートなどのアニオンの塩;トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-1,3-ジカルバノナボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)銅酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ウンデカハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)金酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)鉄酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(ノナハイドライド-7,8-ジメチル-7,8-ジカルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、トリ(n-ブチル)アンモニウムビス(トリブロモオクタハイドライド-7,8-ジカルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、トリス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)クロム酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)マンガン酸塩(IV)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)コバルト酸塩(III)、ビス〔トリ(n-ブチル)アンモニウム〕ビス(ウンデカハイドライド-7-カルバウンデカボレート)ニッケル酸塩(IV)などの金属カルボランアニオンの塩などが挙げられる。
【0210】
ヘテロポリ化合物は、ケイ素、リン、チタン、ゲルマニウム、ヒ素および錫から選ばれる原子と、バナジウム、ニオブ、モリブデンおよびタングステンから選ばれる1種または2種以上の原子からなっている。具体的には、リンバナジン酸、ゲルマノバナジン酸、ヒ素バナジン酸、リンニオブ酸、ゲルマノニオブ酸、シリコノモリブデン酸、リンモリブデン酸、チタンモリブデン酸、ゲルマノモリブデン酸、ヒ素モリブデン酸、錫モリブデン酸、リンタングステン酸、ゲルマノタングステン酸、錫タングステン酸、リンモリブドバナジン酸、リンタングストバナジンン酸、ゲルマノタングストバナジンン酸、リンモリブドタングストバナジン酸、ゲルマノモリブドタングストバナジン酸、リンモリブドタングステン酸、リンモリブドニオブ酸、およびこれらの酸の塩、例えば周期表第1族または2族の金属、具体的には、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム等との塩、トリフェニルエチル塩等との有機塩が使用できるが、この限りではない。
【0211】
上記のような (m-3)遷移金属化合物(K)と反応してイオン対を形成する化合物(イオン化イオン性化合物)は、1種単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。
【0212】
本発明では、遷移金属化合物(K)を触媒成分とする場合、助触媒成分としてのメチルアルミノキサンなどの有機アルミニウムオキシ化合物(m-2)とを併用すると、オレフィン化合物に対して非常に高い重合活性を示す。
【0213】
また、本発明に係るオレフィン重合用触媒は、上記遷移金属化合物(K)と、(m-1) 有機金属化合物、(m-2) 有機アルミニウムオキシ化合物、および(m-3) 遷移金属化合物(K)と反応してイオン対を形成する化合物(イオン化イオン性化合物)から選ばれる少なくとも1種の化合物(M)とともに、必要に応じて後述するような担体(N)を用いることもできる。
【0214】
(担体(N))
本発明で用いることのできる担体(N)は、無機または有機の化合物であって、顆粒状ないしは微粒子状の固体である。
【0215】
このうち無機化合物としては、多孔質酸化物、無機塩化物、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物が好ましい。
【0216】
多孔質酸化物として、具体的にはSiO2、Al23、MgO、ZrO、TiO2、B23、CaO、ZnO、BaO、ThO2など、またはこれらを含む複合物または混合物を使用、例えば天然または合成ゼオライト、SiO2-MgO、SiO2-Al23、SiO2-TiO2、SiO2-V25 、SiO2-Cr23、SiO2-TiO2-MgOなどを使用することができる。これらのうち、SiO2および/またはAl23を主成分とするものが好ましい。なお、上記無機酸化物は、少量のNa2CO3、K2CO3、CaCO3、MgCO3、Na2SO4、Al2(SO4)3、BaSO4、KNO3、Mg(NO3)2、Al(NO3)3、Na2O、K2O、Li2Oなどの炭酸塩、硫酸塩、硝酸塩、酸化物成分を含有していても差し支えない。
【0217】
このような多孔質酸化物は、種類および製法によりその性状は異なるが、本発明に好ましく用いられる担体は、粒径が10〜300μm、好ましくは20〜200μmであって、比表面積が50〜1000m2/g、好ましくは100〜700m2/gの範囲にあり、細孔容積が0.3〜3.0cm3/gの範囲にあることが望ましい。このような担体は、必要に応じて100〜1000℃、好ましくは150〜700℃で焼成して使用される。
【0218】
無機塩化物としては、MgCl2、MgBr2、MnCl2、MnBr2等が用いられる。無機塩化物は、そのまま用いてもよいし、ボールミル、振動ミルにより粉砕した後に用いてもよい。また、アルコールなどの溶媒に無機塩化物を溶解させた後、析出剤によって微粒子状に析出させたものを用いることもできる。
【0219】
本発明で用いられる粘土は、通常粘土鉱物を主成分として構成される。また、本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン結合などによって構成される面が互いに弱い結合力で平行に積み重なった結晶構造を有する化合物であり、含有するイオンが交換可能なものである。大部分の粘土鉱物はイオン交換性層状化合物である。また、これらの粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物としては、天然産のものに限らず、人工合成物を使用することもできる。
【0220】
また、粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物として、粘土、粘土鉱物、また、六方細密パッキング型、アンチモン型、CdCl2型、CdI2型などの層状の結晶構造を有するイオン結晶性化合物などを例示することができる。
【0221】
このような粘土、粘土鉱物としては、カオリン、ベントナイト、木節粘土、ガイロメ粘土、アロフェン、ヒシンゲル石、パイロフィライト、ウンモ群、モンモリロナイト群、バーミキュライト、リョクデイ石群、パリゴルスカイト、カオリナイト、ナクライト、ディッカイト、ハロイサイトなどが挙げられ、イオン交換性層状化合物としては、α-Zr(HAsO4)2・H2O、α-Zr(HPO4)2、α-Zr(KPO4)2・3H2O、α-Ti(HPO4)2、α-Ti(HAsO4)2・H2O、α-Sn(HPO4)2・H2O、γ―Zr(HPO4)2、γ-Ti(HPO4)2、γ-Ti(NH4PO4)2・H2Oなどの多価金属の結晶性酸性塩などが挙げられる。
【0222】
このような粘土、粘土鉱物またはイオン交換性層状化合物は、水銀圧入法で測定した半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/g以上のものが好ましく、0.3〜5cc/gのものが特に好ましい。ここで、細孔容積は、水銀ポロシメーターを用いた水銀圧入法により、細孔半径20〜30000Åの範囲について測定される。
【0223】
半径20Å以上の細孔容積が0.1cc/gより小さいものを担体として用いた場合には、高い重合活性が得られにくい傾向がある。
【0224】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物には、化学処理を施すことも好ましい。化学処理としては、表面に付着している不純物を除去する表面処理、粘土の結晶構造に影響を与える処理など、何れも使用できる。化学処理として具体的には、酸処理、アルカリ処理、塩類処理、有機物処理などが挙げられる。酸処理は、表面の不純物を取り除くほか、結晶構造中のAl、Fe、Mgなどの陽イオンを溶出させることによって表面積を増大させる。アルカリ処理では粘土の結晶構造が破壊され、粘土の構造の変化をもたらす。また、塩類処理、有機物処理では、イオン複合体、分子複合体、有機誘導体などを形成し、表面積や層間距離を変えることができる。
【0225】
本発明で用いられるイオン交換性層状化合物は、イオン交換性を利用し、層間の交換性イオンを別の大きな嵩高いイオンと交換することにより、層間が拡大した状態の層状化合物であってもよい。このような嵩高いイオンは、層状構造を支える支柱的な役割を担っており、通常、ピラーと呼ばれる。また、このように層状化合物の層間に別の物質を導入することをインターカレーションという。インターカレーションするゲスト化合物としては、TiCl、ZrClなどの陽イオン性無機化合物、Ti(OR)4、Zr(OR)4、PO(OR)3、B(OR)3などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基など)、[Al134(OH)24]7+、[Zr4(OH)14]2+、[Fe3O(OCOCH3)6]+などの金属水酸化物イオンなどが挙げられる。これらの化合物は単独でまたは2種以上組み合わせて用いられる。また、これらの化合物をインターカレーションする際に、Si(OR)4、Al(OR)3、Ge(OR)4などの金属アルコキシド(Rは炭化水素基等)などを加水分解して得た重合物、SiO2などのコロイド状無機化合物などを共存させることもできる。また、ピラーとしては、上記金属水酸化物イオンを層間にインターカレーションした後に加熱脱水することにより生成する酸化物などが挙げられる。
【0226】
本発明で用いられる粘土、粘土鉱物、イオン交換性層状化合物は、そのまま用いてもよく、またボールミル、ふるい分けなどの処理を行った後に用いてもよい。また、新たに水を添加吸着させ、あるいは加熱脱水処理した後に用いてもよい。さらに、単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0227】
これらのうち、好ましいものは粘土または粘土鉱物であり、特に好ましいものはモンモリロナイト、バーミキュライト、ペクトライト、テニオライトおよび合成雲母である。
【0228】
有機化合物としては、粒径が10〜300μmの範囲にある顆粒状ないしは微粒子状固体を挙げることができる。具体的には、エチレン、プロピレン、1-ブテン、4-メチル-1-ペンテンなどの炭素原子数が2〜14のオレフィンを主成分として生成される(共)重合体またはビニルシクロヘキサン、スチレンを主成分として生成される(共)重合体、およびそれらの変成体を例示することができる。
【0229】
重合の際における各触媒成分の使用法、添加順序は任意に選ばれるが、以下のような方法が例示される。
(1) 成分(K)を単独で重合器に添加する方法。
(2) 成分(K)および成分(M)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(3) 成分(K)を担体(N)に担持した触媒成分、成分(M)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(4) 成分(M)を担体(N)に担持した触媒成分、成分(K)を任意の順序で重合器に添加する方法。
(5) 成分(K)と成分(M)とを担体(N)に担持した触媒成分を重合器に添加する方法。
【0230】
上記(2) 〜(5) の各方法においては、各触媒成分の少なくとも2つ以上は予め接触されていてもよい。
【0231】
成分(M)が担体(N)に担持されている上記(4)(5)の各方法においては、必要に応じて担持されていない成分(M)を、任意の順序で添加してもよい。この場合成分(M)は同一でも異なっていてもよい。
【0232】
また、上記の成分(N)に成分(K)が担持された固体触媒成分、成分(N)に成分(K)および成分(M)が担持された固体触媒成分は、オレフィンが予備重合されていてもよく、予備重合された固体触媒成分上に、さらに触媒成分が担持されていてもよい。
【0233】
本発明に係る共重合体の製造方法では、上記のようなオレフィン重合用触媒の存在下に、上述した一般式(Ia)で表される1種以上のオレフィンと、上述した一般式(IIa)、下記一般式(IIIa)および下記一般式(IVa)よりなる群から選択される少なくとも1種の環状非共役ジエンと、を付加重合することにより、本発明の環状オレフィン共重合体(P)を得ることができる。さらに、環状オレフィン共重合体(P)の共重合原料として上記一般式(Va)、(VIa)、(VIIa)で表される環状非共役ジエン以外の環状オレフィン、または上記一般式(VIIIa)で表される鎖状ポリエンを用いることもできる。
【0234】
本発明では、重合は溶解重合、懸濁重合などの液相重合法または気相重合法のいずれにおいても実施できる。液相重合法において用いられる不活性炭化水素媒体として具体的には、プロパン、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、灯油などの脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、メチルシクロペンタンなどの脂環族炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;エチレンクロリド、クロルベンゼン、ジクロロメタンなどのハロゲン化炭化水素またはこれらの混合物などを挙げることができ、オレフィン自身を溶媒として用いることもできる。
【0235】
上記のようなオレフィン重合用触媒を用いて、オレフィンの重合を行うに際して、成分(K)は、反応容積1リットル当り、通常10-12〜10-2モル、好ましくは10-10〜10-3モルになるような量で用いられる。
【0236】
成分(m-1)は、成分(m-1)と、成分(K)中の全遷移金属原子(Metal)とのモル比〔(m-1)/Metal〕が通常0.01〜100000、好ましくは0.05〜50000となるような量で用いられる。成分(m-2)は、成分(m-2)中のアルミニウム原子と、成分(K)中の全遷移金属(Metal)とのモル比〔(m-2)/Metal〕が、通常10〜500000、好ましくは20〜100000となるような量で用いられる。成分(m-3)は、成分(m-3)と、成分(K)中の遷移金属原子(Metal)とのモル比〔(m-3)/Metal〕が、通常1〜10、好ましくは1〜5となるような量で用いられる。
【0237】
また、このようなオレフィン重合触媒を用いたオレフィンの重合温度は、通常-50〜+200℃、好ましくは0〜170℃の範囲である。重合圧力は、通常常圧〜100kg/cm2、好ましくは常圧〜50kg/cm2の条件下であり、重合反応は、回分式、半連続式、連続式のいずれの方法においても行うことができる。さらに重合を反応条件の異なる2段以上に分けて行うことも可能である。
【0238】
得られる共重合体の分子量は、重合系に水素を存在させるか、または重合温度を変化させることによっても調節することができる。さらに、使用する成分(M)の量により調節することもできる。上記に記載の触媒系を用いて得られる共重合体中の環状非共役ジエンに由来する構造単位を、全構成単位中、20mol%〜60mol%、好ましくは25mol%〜45mol%、さらに好ましくは30mol%〜45mol%とすることができる。
【0239】
上記に記載の触媒系を用いて得られる共重合体中の分子量に関しては、上記の触媒系の成分を選択、及び重合条件を選択することにより任意に制御可能である。
【0240】
上記に記載の触媒系を用いて得られる共重合体の分子量分布に関しては、上記の触媒系の成分を選択及び重合条件を選択することにより、Mw/Mnが3以下、好ましくは2.7以下、さらに好ましくは2.3以下の狭分子量分布ポリマーを合成することができる。
【0241】
上記に記載の触媒系を用いて得られる共重合体のガラス転移温度(Tg)関しては、上記の触媒系の成分を選択、および重合条件を選択することにより、Tgが70℃以上、好ましくは100℃以上、さらに好ましくは130℃以上の高Tgポリマーを合成することができる。
【0242】
本発明において得られた環状オレフィン共重合体(P)は、有機溶剤に溶解されたワニスの状態で架橋体(Q)の製造に用いられる。なお、ワニスは、環状オレフィン共重合体(P)が得られた際の反応溶液をそのまま用いることができ、また環状オレフィン共重合体(P)を精製した後、別途有機溶剤を添加することにより調製することもできる。
【0243】
[架橋体(Q)の製造方法]
本発明の架橋体(変性環状オレフィン共重合体)(Q)は、上述の環状オレフィン共重合体(P)を架橋することにより得られる。環状オレフィン共重合体(P)の架橋方法としては特に制限はないが、ラジカル重合開始剤や硫黄、電子線や他の放射線を用いて、任意の形に成形しながら、または成形後に架橋する方法等が挙げられる。
【0244】
ラジカル重合開始剤による架橋は、ポリオレフィンで適用されている通常のラジカル重合開始剤による架橋方法をそのまま適用できる。すなわち本発明に係る環状オレフィン共重合体(P)にジクミルペルオキシドのようなラジカル重合開始剤を配合し、加熱、架橋する。ラジカル重合開始剤の配合割合は特に制限がないものの、環状オレフィン共重合体(P)100重量部あたり約0.02〜20重量部、好ましくは0.05〜10重量部であり、さらに好ましくは0.5〜10重量部である。ラジカル重合開始剤の配合割合がこの範囲を超えると、架橋体(Q)の誘電特性が悪化し、この範囲を下回ると架橋体(Q)の耐熱性、機械的特性が低下するので好ましくない。
【0245】
本発明において、ラジカル重合開始剤としては、公知の熱ラジカル重合開始剤、光ラジカル重合開始剤およびこれらを併用することができる。これらのラジカル重合開始剤のうち、熱ラジカル開始剤を使用する場合は、保存安定性の観点から10時間半減期温度が通常80℃以上、好ましくは120℃以上のものである。このような開始剤として具体的には、例えば、ジクミルペルオキシド、t−ブチルクミルペルオキシド、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)2,5−ジメチルヘキサン、2,5−ビス(t−ブチルペルオキシ)2,5−ジメチルヘキシン−3、ジ−t−ブチルペルオキシド、イソプロピルクミル−t−ブチルペルオキシド、ビス(α−t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン等のジアルキルペルオキシド類あるいは1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルペルオキシ)シクロドデカン、n−ブチル−4,4−ビス(t−ブチルペルオキシ)バレレート、エチル−3,3−ビス(t−ブチルペルオキシ)ブチレート、3,3,6,6,9,9−ヘキサメチル−1,2,4,5,−テトラオキシシクロノナン等のペルオキシケタール類;ビス(t−ブチルペルオキシ)イソフタレート、t−ブチルペルオキシベンゾエート、t−ブチルペルオキシアセテート等のペルオキシエステル類;t−ブチルハイドロペルオキシド、t−ヘキシルハイドロペルオキシド、クミンハイドロペエルオキシド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロペルオキシド、ジイソプロピルベンゼンハイドロペルオキシド、p−メンタンハイドロペルオキシド等のハイドロペルオキシド類、2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン等のビベンジル化合物類、3,3,5,7,7−ペンタメチル−1,2,4−トリオキセパンが挙げられる。
【0246】
ラジカル重合開始剤のうち、光ラジカル開始剤は具体的には、例えば、ベンゾインアルキルエーテル、ベンジルジメチルケタール、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾフェノン、メチルベンゾイルフォーメート、イソプロピルチオキサントンおよびこれらの2種以上の混合物等が挙げられる。また、これらの光ラジカル開始剤とともに増感剤を使用することもできる。増感剤の例としては、アントラキノン、1,2−ナフトキノン、1,4−ナフトキノン,ベンズアントロン、p,p'−テトラメチルジアミノベンゾフェノン、クロラニル等のカルボニル化合物、ニトロベンゼン、p−ジニトロベンゼン、2−ニトロフルオレンなどのニトロ化合物、アントラセン、クリセンなどの芳香族炭化水素、ジフェニルジスルフィドなどの硫黄化合物、ニトロアニリン、2−クロロ−4−ニトロアニリン、5−ニトロ−2−アミノトルエン、テトラシアノエチレンなどの窒素化合物などを挙げることができる。
【0247】
硫黄等により架橋する場合には、環状オレフィン共重合体(P)に硫黄系化合物、必要に応じて加硫促進剤、加硫促進助剤を配合して加熱し、架橋反応を行う。硫黄系化合物の配合量はとくに制限はないものの、架橋反応を効率よく進行させ、かつ得られる架橋物の物性改善を計ること及び経済性の面などから環状オレフィン共重合体(P)100重量部に対して通常0.1〜10重量部、好ましくは0.3〜5重量部の範囲で使用され、加硫促進剤や加硫促進助剤を併用する場合には通常0.1〜20重量部、好ましくは0.2〜10重量部の範囲で使用される。架橋反応を起こすため使用される硫黄系化合物は公知の種々のものが使用でき、一例を挙げると硫黄、一塩化硫黄、二塩化硫黄、モルホリンジスルフィド、アルキルフェノールジスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、ジメチルジチオカルバミン酸セレン等がある。また加硫促進剤も種々のものを使用でき、N−シクロヘキシル−2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミド、N−オキシジエチレン−2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミド、N,N−ジイソプロピル−2−ベンゾチアゾール−スルフェンアミド、2−メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,4−ジニトロフェニル)メルカプトベンゾチアゾール、2−(2,6−ジエチル−4−モルホリノチオ)ベンゾチアゾール、ベンゾチアジル−ジスルフィドなどのチアゾール系;ジフェニルグアニジン、トリフェニルグアニジン、ジ−オルソ−トリルグアニジン、オルソートリルバイグアナイド、ジフェニルグアニジンフタレートなどのグアニジン系;アセトアルデヒド−アニリン反応物;ブチルアルデヒド−アニリン縮合物;ヘキサメチレンテトラミン、アセトアルデヒドアンモニアなどのアルデヒドアミン、又はアルデヒド−アンモニア系;2−メルカプトイミダゾリンなどのイミダゾリン系;チオカルバニリド、ジエチルチオユリアジブチルチオユリア、トリメチルチオユリア、ジオルソートリルチオユリアなどのチオユリア系;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィドなどのチウラム系;ジメチルジチオカルバミン酸亜鉛、ジエチルチオカルバミン酸亜鉛、ジ−n−ブチルジチオカルバミン酸亜鉛、エチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ブチルフェニルジチオカルバミン酸亜鉛、ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジメチルジチオカルバミン酸セレン、ジエチルジチオカルバミン酸テルルなどのジチオ酸塩系;ジブチルキサントゲン酸亜鉛などのザンテート系;などを挙げることができる。加硫促進剤としては、酸化亜鉛、活性亜鉛華、炭酸亜鉛、複合亜鉛華、酸化マグネシウム、リサージ、鉛丹、塩基性炭酸鉛等の金属酸化物系、ステアリン酸、オレイン酸、ラウリン酸、ステアリン酸鉛等の脂肪酸系、トリエタノールアミン、ジエチレングリコール等の有機アミン・グリコール系などを挙げることができる。
【0248】
本発明における環状オレフィン共重合体(P)をラジカル開始剤架橋、硫黄架橋共に、架橋する温度は通常100〜300℃、好ましくは120〜250℃、さらに好ましくは120〜200℃の温度で行い、温度を段階的に変化させて架橋を行っても良い。100℃未満では架橋が十分に進行しない場合があり、また300℃を超えると得られる架橋体の着色が顕著になったり、要求される高温が既存プロセスで対応できないなどの不具合が発生する場合がある。なお、代表的な二重結合含有重合体であるポリブタジエンは、一般に上記のような条件では架橋できず、300℃のような高温での架橋条件を必要とする。
【0249】
電子線や他の放射線を用いて架橋する方法は、成型時の温度、流動性の制限を伴わないという利点があり、放射線としては、電子線の他、γ線、UV等を挙げることができる。
【0250】
ラジカル重合開始剤や硫黄等を用いる方法、放射線を用いて架橋する方法のいずれの場合も、架橋助剤の併用下に架橋することができる。
【0251】
架橋助剤としては、特に制限はないが、具体的には例えばp−キノンジオキシム、p,p'−ジベンゾイルキノンジオキシム等のオキシム類;エチレンジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アクリル酸/酸化亜鉛混合物、アリルメタクリレート等のアクリレートもしくはメタクリレート類;ジビニルベンゼン、ビニルトルエン、ビニルピリジン等のビニルモノマー類;ヘキサメチレンジアリルナジイミド、ジアリルイタコネート、ジアリルフタレート、ジアリルイソフタレート、ジアリルモノグリシジルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等のアリル化合物類;N,N'−m−フェニレンビスマレイミド、N,N'−(4,4'−メチレンジフェニレン)ジマレイミド等のマレイミド化合物類等、ビニルノルボルネン、エチリデンノルボルネン、ジシクロペンタジエン等の環状非共役ジエン類が挙げられる。これらの架橋助剤は単独で用いてもよいし、組み合わせて使用することもできる。
【0252】
本発明の架橋体(Q)には、必要に応じて、耐熱安定剤、耐候安定剤、帯電防止剤、スリップ剤、アンチブロッキング剤、防曇剤、滑剤、染料、顔料、天然油、合成油、ワックス、有機または無機の充填剤などを本発明の目的を損なわない程度に配合することができ、その配合割合は適宜量である。任意成分として配合される安定剤として、具体的には、テトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン、β−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸アルキルエステル、2,2′−オキザミドビス〔エチル−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤;ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム、12−ヒドロキシステアリン酸カルシウム等の脂肪酸金属塩;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンジステアレート、ペンタエリスリトールモノステアレート、ペンタエリスリトールジステアレート、ペンタエリスリトールトリステアレート等の多価アルコール脂肪酸エステルなどをあげることができる。これらは単独で配合してもよいし、組合せて配合してもよく、たとえばテトラキス〔メチレン−3(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタンとステアリン酸亜鉛およびグリセリンモノステアレートとの組合せなどを例示できる。
【0253】
有機または無機の充填剤としては、シリカ、ケイ藻土、アルミナ、酸化チタン、酸化マグネシウム、軽石粉、軽石バルーン、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ドロマイト、硫酸カルシウム、チタン酸カリウム、硫酸バリウム、亜硫酸カルシウム、タルク、クレー、マイカ、アスベスト、ガラス繊維、ガラスフレーク、ガラスビーズ、ケイ酸カルシウム、モンモリロナイト、ベントナイト、グラファイト、アルミニウム粉、硫化モリブデン、ボロン繊維、炭化ケイ素繊維、ポリエチレン繊維、ポリプロピレン繊維、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維などを例示できる。
【0254】
架橋体(Q)と各種添加剤を混合するには、環状オレフィン共重合体(P)と各種添加剤を押出機などで溶融ブレンドする方法、または環状オレフィン共重合体(P)と各種添加剤を適当な溶媒、たとえばヘプタン、ヘキサン、デカン、シクロヘキサンのような飽和炭化水素;トルエン、ベンゼン、キシレンのような芳香族炭化水素などに溶解、分散させて行う溶液ブレンド法などを採用することができる。
【0255】
架橋反応は、環状オレフィン共重合体(P)と、前記したラジカル重合開始剤の如き架橋に与る化合物の混合物を溶融状態として行うこともできるし、または該混合物を溶媒に溶解、又は分散させた溶液状態で行うこともできるし、または溶媒に溶解した溶液状態から溶媒を揮発させフィルム、コーティング等任意の形に成形した後にさらに架橋反応を進行させることもできる。
【0256】
溶融状態で反応を行う場合はミキシングロール、バンバリーミキサー、押出機、ニーダ、連続ミキサーなどの混練装置を用いて、原料の混合物を溶融混練して反応させる。また、任意の手法で成形した後に更に架橋反応を進行させることもできる。
【0257】
溶液状態で反応を行う場合に使用する溶媒としては前記溶液ブレンド法で用いた溶媒と同様の溶媒が使用できる。
【0258】
電子線またはその他の放射線、UVを用いて架橋反応を行う場合には、任意の方法で付形した後に、反応を行うことができる。
【0259】
[架橋体(Q)]
上述の方法により得られる本発明の架橋体(Q)は、周波数1Hz、引っ張りモードで測定された固体粘弾性測定において、30℃〜300℃の温度範囲における損失正接(tanδ)の最大値が0.6以下、好ましくは0.45以下である。
【0260】
このように、損失正接(tanδ)の最大値が上記の範囲にあることから、架橋体(Q)の架橋密度は高く、熱膨張率(CTE)は低くなる。したがって、例えば、薄膜太陽電池を製造する際のプロセス温度(シリコン成膜工程:200℃〜250℃程度)や高周波回路を製造する際のプロセス温度(はんだ工程:260℃程度)においても耐熱性を有し、基板やフィルム(シートを含む)として形態安定性に優れる。
【0261】
また、同様の条件で測定された固体粘弾性測定において、貯蔵弾性率(E')が0.1GPa以上、好ましくは0.2GPa以上、より好ましくは0.25GPa〜1.0GPaの範囲にある。このような架橋体(Q)は、耐熱性に優れ、高い耐熱性を要求される電子部品等の分野に適している。
【0262】
さらに、周波数1Hz、引っ張りモードで測定された固体粘弾性測定において、温度260℃での貯蔵弾性率(E')をAとし、温度30℃での貯蔵弾性率(E')をBとした場合において、式:A/B≧0.05を満たす。
【0263】
本発明の架橋体(Q)は、DSC測定からは明確なガラス転移点は確認されないものの200℃〜250℃程度においてガラス転移点は存在する。しかしながら、本発明の架橋体(Q)からなる成形体は、ガラス転移点を超えても貯蔵弾性率(E')が低下しない。つまり、ガラス転移点を超えた高温領域においても高弾性率を維持することができ、耐熱性に優れ、高い耐熱性を要求される上記のような電子部品等の分野に好適に用いることができる。
【0264】
また、本発明の架橋体(Q)は、水蒸気バリア性に優れ、JIS K 7129に準拠し、40℃90%RHにおいて測定された水蒸気透過係数が1cc・mm/m・day・atm以下、好ましくは0.5cc・mm/m・day・atm以下である。これにより、液晶材料や透明電極を挟んで設けられる液晶ディスプレイ用基板や、太陽電池用基板として好適に用いることができる。
【0265】
また、本発明の架橋体(Q)の引張伸びは、2%以上、好ましくは3%以上である。したがって、フィルムやシート等として所定の用途に用いる場合、例えばロール・ツー・ロール方式等により加工する場合において、加工性に優れ、生産性および製品の歩留まりが向上する。
【0266】
固体13C−NMRスペクトルにおける20〜50ppmの範囲において複数ピークが観測される。好ましくは明瞭にピークトップ分離されたピークが二本以上観測される。
【0267】
上記のように、本発明の環状オレフィン共重合体は、オレフィン由来の繰り返し単位と所定の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位とを所定の範囲のモル比で含むため、高密度に架橋することができ、優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性、ガスバリア性および加工性を有する架橋体を提供することができる。
【0268】
[用途]
本発明の架橋体(Q)は、耐溶剤性、耐熱性、機械的強度、透明性に優れるので、当該架橋体からなる成形体は、例えば光ファイバー、光導波路、光ディスク基盤、光フィルター、レンズ、光学用接着剤等、PDP用光学フィルター、有機EL用コーティング材料、航空宇宙分野における太陽電池のベースフィルム基材、ソーラーセルや熱制御システムのコーティング材、半導体素子、発光ダイオード、各種メモリー類等の電子素子や、ハイブリッドIC、MCM、高周波用電気回路基板あるいは表示部品等のオーバコート材料あるいは層間絶縁材料、といった用途で使用することができる。特に、優れた耐熱性、透明性、機械的特性、誘電特性等を有するので、高周波回路基板などの高周波用途に好適に用いることができる。さらに、ガスバリア性および加工性にも優れるため、液晶ディスプレイや太陽電池の基板やフィルムまたはシートとして好適に用いることができる。
【0269】
以下、本発明を合成例、実施例によりさらに詳細に説明するが、本発明はこれにより何等制限されるものではない。
【0270】
なお、合成例、実施例、比較例で用いた環状オレフィン共重合体(P)の組成、極限粘度[η]、分子量分布(Mw/Mn)は、次に述べる方法で測定した。
【0271】
組成;H−NMR測定を行い、二重結合炭素に直接結合している水素由来のピークとそれ以外の水素のピークの強度により環状非共役ジエン含量を算出した。
【0272】
極限粘度[η];135℃デカリン中で測定した。
【0273】
分子量分布(Mw/Mn);GPCにより求めた重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)の比(Mw/Mn)で表した。GPCには、カラムに東ソー(株)製のGMH−HT、GMH−HTLを用い、溶媒にはオルソジクロロベンゼンを用いた。
【0274】
動的粘弾性(DMA);TA-Instruments社製のRSA−III、またはレオメトリクス社製のRSA−IIを用いて測定した。
ここで、貯蔵弾性率(E')損失弾性率(E")は、粘弾性体に正弦的振動ひずみを与えたときの応力と、ひずみの関係を表わす複素弾性率を構成する項であり、TA-Instruments社製のRSA−IIIによる引張粘弾性測定により3℃/minの昇温温度、周波数1Hz、ひずみ0.1にて測定される値である。ガラス転移温度は損失正接(tanδ)=E'/E"のピークトップにより決定した。
【0275】
固体13C-NMR;Chemagnetics製CMX300 7.5mmプローブを用いて測定した。
測定条件は下記のとおりである。
共鳴周波数:75.5563MHz
測定手法:CPMAS法
測定条件:90℃pulse 4.2μs、帯域幅 30kHz、繰り返し時間5s
積算回数:2500〜10000回
【0276】
DSC;セイコーインスツル社製DSC-6220を用いて、窒素気流下20℃〜200℃の温度範囲で10℃/minで昇温した後、200℃〜20℃の温度範囲で10℃/minで降温し、再び20℃〜300℃の温度範囲で10min/℃で昇温して測定を行った。
【0277】
引張試験;長さ6cm、幅1mmのサンプルを作成し、島津製作所社製 小型卓上引張試験機EZ-Tを用いて、室温(25℃)において、チャック間距離3cm、引張速度3mm/min、n=3で測定を行った。
【0278】
水蒸気透過係数測定;MOCON社製PERMATRAN-W を用いてJIS K 7129に準拠して、40℃ 90%RHで測定を行った
【0279】
誘電特性評価(1MHz);安藤電気社製 誘電体損自動測定装置 TR-1100型を用いて、ASTM D 150に準じて測定周波数1MHzにおける誘電率および誘電正接を測定した。
【0280】
誘電特性評価(12GHz);円筒空洞共振器法により、12GHzにおける誘電率および誘電正接を測定した。
【0281】
実験には以下の原材料を用いた。
遷移金属化合物(1)
(特開2004−331965号公報に記載の方法により合成。)
【0282】
【化43】

【0283】
メチルアルミノキサン(アルベマーレ社製:20%MAOトルエン溶液)
シクロヘキサン(和光純薬工業株式会社製:和光特級)
トルエン(和光純薬工業株式会社製:和光特級)
キシレン(和光純薬工業株式会社製:和光特級)
ジシクロペンタジエン(関東化学株式会社製:鹿1級)
ビニルノルボルネン(東京化成工業株式会社製)
ポリブタジエン(シグマアルドリッチ・ジャパン株式会社製:Tg=-30℃、62mol% 1,2付加)
アペル6015T(商品名、三井化学株式会社製:Tg=145℃)
パーヘキサ25B(商品名、日油株式会社製)
【0284】
【化44】

【0285】
ジクミルパーオキサイド(シグマアルドリッチ・ジャパン株式会社製)
【0286】
【化45】

【0287】
トリゴノックス311(商品名、化薬アクゾ社製)
【0288】
【化46】

【0289】
2,3−ジメチル−2,3−ジフェニルブタン(関東化学株式会社より購入)
【0290】
【化47】

【0291】
〔合成例1〕
十分に窒素置換した内容積2Lのガラス製オートクレーブにシクロヘキサン951ml、ジシクロペンタジエン(DCPD)の0.5g/mlのトルエン溶液48 mlを挿入し、液相及び気相を100NL/hの流量のエチレンガスで飽和させた。その後、このオートクレーブにメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で3 mmol、引き続き、遷移金属化合物(1)0.015 mmolをトルエン1mlに溶解させて加え、重合を開始した。上記のエチレンガス雰囲気下25℃常圧で20分間反応させた後、少量のイソブチルアルコールを添加することで重合を停止した。重合終了後、反応物を18 mLの濃塩酸を加えたアセトン/メタノール(それぞれ300 mL)混合溶媒に投入してポリマーを全量析出し、撹拌後濾紙でろ過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、エチレン/DCPD共重合体を8.88g得た。極限粘度[η]は2.43 (dL/g)、GPCによる分子量及び分子量分布測定の結果は、Mw;96.1万、Mw/Mn;2.47であった。NMRにより決定したポリマー中のDCPD由来構造の組成比は39.7mol%であった。
【0292】
〔合成例2〕
十分に窒素置換した内容積1Lのガラス製オートクレーブにシクロヘキサン244 mL、5-ビニル-2-ノルボルネン(VNB) 5 mlを挿入し、液相及び気相を100 NL/hの流量のエチレンガスで飽和させた。その後、このオートクレーブにメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で2 mmol、引き続き、前記の遷移金属化合物(1)を0.01 mmolをトルエン1mlに溶解させて加え、重合を開始した。上記のエチレンガス雰囲気下25℃常圧で30分間反応させた後、少量のイソブチルアルコールを添加することで重合を停止した。重合終了後、反応物を3 mlの濃塩酸を加えたメタノール1.5L に投入してポリマーを全量析出し、撹拌後濾紙でろ過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、エチレン/VNB共重合体を2.25g得た。極限粘度[η]は1.90(dL/g)、GPCによる分子量及び分子量分布測定の結果は、Mw;65.8万、Mw/Mn;3.34であった。NMRにより決定したポリマー中のVNB由来構造の組成比は39.0mol%であった。
【0293】
〔合成例3〜6〕
〔合成例1〕と同様の手順で表1に示す条件でそれぞれ重合を行い、ポリマーを得た。
【0294】
〔合成例7〕
十分に窒素置換した内容積2Lのガラス製オートクレーブにシクロヘキサン1449ml、ジシクロペンタジエン(DCPD)の0.5g/mlのトルエン溶液40 ml、テトラシクロドデセン(TD)10mlを挿入し、液相及び気相を100NL/hの流量のエチレンガス、0.3NL/hの流量の水素ガスで飽和させた。その後、このオートクレーブにメチルアルミノキサンをアルミニウム原子換算で2.4 mmol、引き続き、遷移金属化合物(1)0.012 mmolをトルエン1mlに溶解させて加え、重合を開始した。上記のガス雰囲気下25℃常圧で20分間反応させた後、少量のイソブチルアルコールを添加することで重合を停止した。重合終了後、反応物を27 mLの濃塩酸を加えたアセトン/メタノール(それぞれ4500 mL)混合溶媒に投入してポリマーを全量析出し、撹拌後濾紙でろ過した。ポリマーを80℃、10時間で減圧乾燥した後、エチレン/DCPD/TD共重合体を10.8g得た。極限粘度[η]は0.91 (dL/g)であった。NMRにより決定したポリマー中のDCPD由来構造の組成比は27.4mol%、TD由来構造の組成比は9.2mol%であった。
【0295】
〔合成例8,9〕
〔合成例7〕と同様の手順で表1に示す条件でそれぞれ重合を行い、ポリマーを得た。
【0296】
【表1】

【0297】
[実施例1]
合成例1で得られたエチレン/DCPD共重合体500 mg、上記化学式で表されるパーヘキサ25B(PH25B) 12.5 mgをキシレン 5 mlに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスを、アプリケーターを用いて、ギャップ500μmでガラス板上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中で140℃30分間、その後200℃に昇温して2時間加熱して架橋体からなるフィルムを得た。得られたフィルムをガラス基板から剥がして、固体13C-NMR、動的粘弾性測定により評価した。固体13C-NMRのチャートを[図1]に、動的粘弾性測定の結果を表2に示す。
【0298】
[実施例2]
合成例2で得られたエチレン/VNB共重合体500 mg、上記化学式で表されるジクミルパーオキサイド(DCP)50 mgをキシレン 4.5 mLに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスを、アプリケーターを用いて、ギャップ 600μmでガラス板上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中で140℃10分間、その後200℃に昇温して2時間加熱して架橋体からなるフィルムを得た。得られたフィルムをガラス基板から剥がして、固体13C-NMR、動的粘弾性測定、引張試験、DSC測定、水蒸気透過係数測定を行った。固体13C-NMRのチャートを[図2]に、その他の結果を表2、表3に示す。
【0299】
[実施例3]
合成例3で得られたそれぞれの共重合体800 mg、上記化学式で表されるトリゴノックス311(T311) 20 mgをクメン4.8 mlに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスをアプリケーターを用いて、ギャップ300μmでガラス板上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中常温で30分、その後120℃に昇温して30分、その後160℃に昇温して30min、200℃に昇温して2時間加熱して架橋体からなるフィルムを得た。得られたフィルムをガラス基板から剥がして、動的粘弾性測定、引張試験、DSC測定、水蒸気透過係数測定を行った。結果を表3に示す。
【0300】
[実施例4〜9]
合成例4〜8で得られたそれぞれの共重合体を実施例1と同様の手順で表3に示す条件で架橋させてフィルムを得た。得られたフィルムは動的粘弾性測定、引張試験、DSC測定、水蒸気透過係数測定を行った。結果を表3に示す。
【0301】
[実施例10]
合成例4で得られたそれぞれの共重合体800 mg、上記化学式で表されるジメチルジフェニルブタン(DMDPB) 20 mgをシクロヘキサン4.8 mlに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスをアプリケーターを用いて、ギャップ300μmでガラス板上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中40℃で60分、その後30分かけて140℃に昇温してから1時間、その後280℃に昇温して2時間加熱して架橋体からなるフィルムを得た。得られたフィルムをガラス基板から剥がして、動的粘弾性測定、引張試験、DSC測定、水蒸気透過係数測定を行った。結果を表3に示す。
【0302】
[実施例11]
合成例2で得られた重合体 500mg、ジクミルパーオキサイド25mgをシクロヘキサン 4.5mlに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスを、アプリケーターを用いて、ギャップ600μmでPETフィルム上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中で40℃で60分間、その後30分かけて140℃に昇温してから1時間加熱してフィルムを得た。フィルムをPETから剥離し、厚み30μm、6cm角のフィルムを切り出した。同様の作業を繰り返し行って得られた40枚のフィルムを重ね合わせて、ミニテストプレス((株)東洋精機製)を用いて、100℃、圧力10MPaで10分間、200℃、圧力10MPzで2時間熱プレスすることにより、厚さ0.99mmのプレス成形板を作製した。
このプレス成形板を用いて、12GHz、1MHzの誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。結果を表4に示す。
【0303】
[実施例12]
合成例3で得られた共重合体 500mg、T311 12.5mgをシクロヘキサン 2.5mlに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスをアプリケーターを用いて、ギャップ400μmでPETフィルム上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中40℃で60分、その後30分かけて140℃に昇温してから1時間加熱してフィルムを得た。フィルムをPETから剥離し、厚み40μm、6cm角のフィルムを切り出した。同様の作業を繰り返し行って得られた30枚のフィルムを重ね合わせて、ミニテストプレス((株)東洋精機製)を用いて、140℃、圧力10MPaで3分間、200℃、圧力10MPaで2時間熱プレスすることにより、厚さ1.02mmのプレス成形板を作製した。
このプレス成形板を用いて、12GHz、1MHzの誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。結果を表4に示す。
【0304】
[実施例13〜18]
合成例4〜8で得られた共重合体を実施例12と同様の手順で、表4に示す条件に従い、プレス板を作成した。作成したプレス成形板を用いて12GHz、1MHzの誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。結果を表4に示す。
【0305】
[実施例19]
合成例4で得られた共重合体を用いて、プレス条件を140℃、圧力10MPaで3分間、280℃、圧力10MPaで2時間とする事とT311の代わりにDMDPBを使用する事以外は実施例12と同様の手順で、表4に示す条件に従い、プレス成形板を作成した。作成したプレス成形板を用いて12GHz、1MHzの誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。結果を表4に示す。
【0306】
〔比較例1〕
ポリマー骨格中に二重結合を含まない「アペル6015T」500 mg、パーヘキサ25B 25mgをキシレン2.5mlに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスをアプリケーターを用いて、ギャップ 500μmでガラス板上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中で140℃で30分、その後200℃に昇温して2時間加熱して架橋フィルムを得た。得られたフィルムをガラス基板から剥がして、動的粘弾性測定、引張試験、DSC測定、水蒸気透過係数測定を行った。結果を表2、表3に示す。
【0307】
〔比較例2〕
ポリブタジエン1gをアプリケーターを用いて、ギャップ 200μmでガラス板上に塗布し、窒素気流下送風乾燥機中で、常温から200℃まで30分かけて昇温してから、200℃で1時間、その後300℃まで20分かけて昇温してから、300℃で30分間加熱して架橋フィルムを得た。得られたフィルムを13C-NMR、動的粘弾性測定により評価した。固体13C-NMRのチャートを[図3]に、動的粘弾性測定における各温度毎の貯蔵弾性率(E')を表2に示した。
【0308】
〔比較例3〕
ポリブタジエン1gにジクミルパーオキサイド30mgを加えて、充分に混合した高粘度の液体をアプリケーターを用いて、ギャップ 200μmでガラス板上に塗布し、窒素気流下送風乾燥機中で、200℃で2時間加熱してフィルムを得た。得られたフィルムは、充分に硬化せず、べたつきが残っており、固体引張粘弾性測定による評価は不可能であった。
【0309】
〔比較例4〕
ポリマー骨格中に二重結合を含まない「アペル6015T」500 mg、パーヘキサ25B 25mgをキシレン2.5mlに溶解させ、ワニスを得た。得られたワニスをアプリケーターを用いて、ギャップ400μmでPETフィルム上に塗布した。その後、窒素気流下送風乾燥機中40℃で10分、その後140℃に昇温して30分加熱してフィルムを得た。フィルムをPETから剥離し、厚み40μm、6cm角のフィルムを切り出した。同様の作業を繰り返し行って得られた30枚のフィルムを重ね合わせて、ミニテストプレス((株)東洋精機製)を用いて、100℃、圧力10MPaで10分間、200℃、圧力10MPzで2時間熱プレスすることにより、厚さ1.02mmのプレス成形板を作製した。
このプレス成形板を用いて、12GHz、1MHzの誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。結果を表4に示す。
【0310】
〔比較例5〕
合成例9で得られた共重合体を実施例1と同様の手順で表3に示す条件で架橋させてフィルムを得た。得られたフィルムは動的粘弾性測定、引張試験、DSC測定、水蒸気透過係数測定を行った。結果を表3に示す。
【0311】
〔比較例6〕
合成例9で得られた共重合体を実施例12と同様の手順で、表4に示す条件に従い、プレス成形板を作成した。作成したプレス成形板を用いて12GHz、1MHzの誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。結果を表4に示す。
【0312】
〔参考例1〕
トリゴノックス311を添加しない以外は実施例3と同様の条件でフィルムを作成し、動的粘弾性測定、引張試験、DSC測定、水蒸気透過係数測定を行った。結果を表3に示す。
【0313】
〔参考例2〕
ジクミルパーオキサイドを添加しない以外は実施例2と同様の条件でフィルムを作成し、動的粘弾性測定、引張試験、DSC測定、水蒸気透過係数測定を行った。結果を表3に示す。
【0314】
〔参考例3〕
ミニテストプレス((株)東洋精機製)を用いて、合成例3で得られた共重合体の粉末を200℃、圧力10MPaで2時間熱プレスすることにより、厚さ0.98mmのプレス板を作製した。このプレス板を用いて、12GHz、1MHzの誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。結果を表4に示す。
【0315】
〔参考例4〕
参考例3に示す手順で、合成例2で得られた共重合体の熱プレスを行い、プレス板を得た。このプレス板を用いて、12GHz、1MHzの誘電率(ε)および誘電正接(tanδ)の測定を行った。結果を表4に示す。
【0316】
【表2】

【0317】
【表3】

【0318】
【表4】

【0319】
実施例の結果から、本発明の環状オレフィン共重合体は、優れた耐熱性、機械的特性、誘電特性、透明性、ガスバリア性および加工性を有する架橋体を提供することができることが確認された。さらに、本発明の架橋体は、優れた耐熱性、透明性、機械的特性、誘電特性を有するので、高周波回路基板などの高周波用途に好適に用いられることが推認された。さらに、ガスバリア性および加工性にも優れるため、液晶ディスプレイや太陽電池の基板やフィルムまたはシートとして好適に用いられることが推認された。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(A)一般式(I)で表される1種以上のオレフィン由来の繰り返し単位と、
(B)下記一般式(II)、下記一般式(III)および下記一般式(IV)よりなる群から選択される1種以上の環状非共役ジエン由来の繰り返し単位と、から構成され、
オレフィン由来の繰り返し単位(A)と環状非共役ジエン由来の繰り返し単位(B)とのモル比((A)/(B))が、40/60〜80/20である、架橋性基を有する環状オレフィン共重合体(P)。
【化1】

〔上記一般式(I)において、R300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。〕
【化2】

〔一般式(II)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R102とR103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【化3】

〔一般式(III)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【化4】

〔一般式(IV)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【請求項2】
一般式(I)で表されるオレフィン由来の繰り返し単位を構成するオレフィンがエチレンであることを特徴とする請求項1に記載の環状オレフィン共重合体(P)。
【請求項3】
さらに、(C1)一般式(V)で表される1種以上の環状オレフィン由来の繰り返し単位を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の環状オレフィン共重合体(P)。
【化5】

〔一般式(V)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75〜R78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。ただし、uおよびvがともに0のときは、R67〜R70、R75〜R78のうち少なくとも1つが水素原子以外の置換基である。〕
【請求項4】
下記一般式(IX)で表される遷移金属化合物(K)と、有機金属化合物(m-1)、有機アルミニウムオキシ化合物(m-2)および遷移金属化合物(K)と反応してイオン対を形成する化合物(m-3)よりなる群から選択される少なくとも1種の化合物(M)とからなる触媒の存在下に、
下記一般式(Ia)で表される1種以上のオレフィンと、
下記一般式(IIa)、下記一般式(IIIa)および下記一般式(IVa)よりなる群から選択される少なくとも1種の環状非共役ジエンと、を付加重合することを特徴とする環状オレフィン共重合体(P)の製造方法。
【化6】

〔一般式(IX)中、Mは3族から11族の遷移金属を表す。mは、1〜4の整数を示し、R1〜R6は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、ヘテロ環式化合物残基、酸素含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、イオウ含有基、リン含有基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、これらのうちの2個以上が互いに連結して環を形成していてもよい。また、mが2以上の場合には、一つの配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基と、他の配位子に含まれるR1〜R6のうちの1個の基とが連結されていてもよく(但し、R1同士が結合されることはない)、R1同士、R2同士、R3同士、R4同士、R5同士、R6同士は互いに同一でも異なっていてもよく、nは、Mの価数を満たす数であり、Xは、水素原子、ハロゲン原子、炭化水素基、酸素含有基、イオウ含有基、窒素含有基、ホウ素含有基、アルミニウム含有基、リン含有基、ハロゲン含有基、ヘテロ環式化合物残基、ケイ素含有基、ゲルマニウム含有基、またはスズ含有基を示し、nが2以上の場合は、Xで示される複数の基は互いに同一でも異なっていてもよく、またXで示される複数の基は互いに結合して環を形成してもよい。〕
【化7】

〔上記一般式(Ia)において、R300は水素原子または炭素原子数1〜29の直鎖状または分岐状の炭化水素基を示す。〕
【化8】

〔一般式(IIa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R102とR103は互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【化9】

〔一般式(IIIa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R104は水素原子または炭素原子数1〜10のアルキル基であり、tは0〜10の正の整数であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【化10】

〔一般式(IVa)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R76ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75およびR76は、互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【請求項5】
前記オレフィンと前記環状非共役ジエンとともに、一般式(Va)で表される環状オレフィンを付加重合することを特徴とする請求項4に記載の環状オレフィン共重合体(P)の製造方法。
【化11】

〔一般式(Va)中、uは0または1であり、vは0または正の整数であり、wは0または1であり、R61〜R78ならびにRa1およびRb1は、互いに同一でも異なっていてもよく、水素原子、ハロゲン原子、炭素原子数1〜20のアルキル基、炭素原子数1〜20のハロゲン化アルキル基、炭素原子数3〜15のシクロアルキル基または炭素原子数6〜20の芳香族炭化水素基であり、R75〜R78は互いに結合して単環または多環を形成していてもよい。〕
【請求項6】
請求項1乃至3のいずれかに記載の環状オレフィン共重合体(P)及び有機溶媒を含有するワニス。
【請求項7】
請求項1乃至3のいずれかに記載の環状オレフィン共重合体(P)を架橋して得られる架橋体(Q)。
【請求項8】
請求項1乃至3のいずれかに記載の環状オレフィン共重合体(P)をラジカル重合開始剤の存在下で加熱することにより製造されることを特徴とする請求項7に記載の架橋体(Q)。
【請求項9】
ラジカル重合開始剤がビベンジル化合物類である請求項8に記載の架橋体(Q)。
【請求項10】
周波数1Hz、引っ張りモードで測定された固体粘弾性測定において、30℃〜300℃の温度範囲における損失正接(tanδ)の最大値が0.6以下である請求項7乃至9のいずれかに記載の架橋体(Q)。
【請求項11】
周波数1Hz、温度260℃、引っ張りモードで測定された固体粘弾性測定において、貯蔵弾性率(E')が0.1GPa以上である請求項7乃至10のいずれかに記載の架橋体(Q)。
【請求項12】
周波数1Hz、引っ張りモードで測定された固体粘弾性測定における、温度260℃での貯蔵弾性率(E')をAとし、温度30℃での貯蔵弾性率(E')をBとした場合において、式:A/B≧0.05を満たす請求項7乃至11のいずれかに記載の架橋体(Q)。
【請求項13】
固体13C−NMRスペクトルにおける20〜50ppmの範囲において複数ピークが観測される請求項7乃至12のいずれかに記載の架橋体(Q)。
【請求項14】
請求項7乃至13のいずれかに記載の架橋体(Q)を含む成形体。
【請求項15】
フィルムまたはシートであることを特徴とする請求項14に記載の成形体。
【請求項16】
回路基板であることを特徴とする請求項14に記載の成形体。
【請求項17】
液晶ディスプレイ用基板であることを特徴とする請求項14に記載の成形体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−100843(P2010−100843A)
【公開日】平成22年5月6日(2010.5.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−221386(P2009−221386)
【出願日】平成21年9月25日(2009.9.25)
【出願人】(000005887)三井化学株式会社 (2,318)
【Fターム(参考)】