説明

環状オレフィン系重合体、およびそれを用いた光学材料、偏光板および液晶表示装置

【課題】光学特性、耐熱性、接着性、密着性および耐吸湿性のいずれにも優れた環状オレフィン系重合体を提供することである。
【解決手段】 下記一般式(1)に示す繰り返し単位を含む環状オレフィン系重合体。


一般式(1)中、Rは置換基を表し、Rは置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表す。ただし、Lが2価の連結基の場合、LとC=Oの結合は炭素−炭素結合である。pは、0または1の整数、qは0〜3の整数、rは1〜4の整数を表す。RとR、RとLが結合する環骨格の炭素原子、または2つのRは互いに結合して5〜7員の環を形成していても良い。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状オレフィン系重合体およびそれを用いた光学材料に関するものであり、特に液晶表示装置等に用いられる、位相差フィルム、視野角拡大フィルム、プラズマディスプレイに用いられる反射防止フィルム等の各種機能フィルムに適した環状オレフィン系フィルム、偏光板保護フィルム、偏光板および画像表示装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
偏光板は通常、ヨウ素、もしくは二色性染料をポリビニルアルコールに配向吸着させた偏光子の両側に、保護フィルムとして、セルローストリアセテートを主成分とするフィルム貼り合わせることで製造されている。セルローストリアセテートフィルムは光学的等方性が高い(レターデーション値が低い)特徴を有し、光学的等方性が要求される用途に好適に用いられている。一方、液晶表示装置等の光学補償シート(位相差フィルム)には、逆に光学的異方性(高いレターデーション値)が要求される。従って、光学補償シートとしては、ポリカーボネートフィルムやポリスルホンフィルムのようなレターデーション値が高い合成ポリマーフィルムを用いることが一般的であった。また最近の液晶表示装置にはより厳しい表示性能が求められており、環境温湿度変化に対する光学特性変化をさらに良化することが求められている。
一方、環状オレフィン系フィルムはセルローストリアセテートフィルムに比べ吸湿性や透湿性が低く、環境温湿度変化による光学特性変化が小さいフィルムとして注目され、偏光板用および液晶表示用フィルムとしての開発が行われている。このような環状オレフィン系重合体としては下記のような開環重合体の水素化物および付加重合体が提案されている。
(1)開環重合体の水素化物
テトラシクロドデセン系化合物の開環共重合体の水素化物(特許文献1参照)
(2)付加重合体
(2−1)エチレンとノルボルネン系化合物の共重合体(特許文献2参照)
(2−2)ノルボルネンの付加重合体、ノルボルネンとアルキル置換ノルボルネンとの付加共重合体(非特許文献1参照)
(2−3)ノルボルネンのカルボン酸エステルの付加重合体、アルキル置換ノルボルネンとノルボルネンのカルボン酸エステルとの付加共重合体(非特許文献2、特許文献3参照)
【特許文献1】特許第3050196号公報
【特許文献2】特開昭61−292601号公報
【非特許文献1】B・L・グッドオール(B.L.Goodall)ら著、メトコン97(MetCon97)、June4−5,1997
【非特許文献2】マクロモレキュールス(Macromolecules),Vol.29,2755(1996)
【特許文献3】国際特許公開WO2004/49011号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上記の開環重合体の水素化物および付加重合体には以下のような問題点があった。
上記(1)および(2−1)の環状オレフィン系重合体はガラス転移温度が相対的に低く、ガラス転移温度の高い重合体を得ることが困難であり、高い耐熱性を要求される用途には不適である。また、極性基を含まないため、接着性および密着性の点で不十分なものである。特に、偏光板を構成するポリビニルアルコール系偏光子は親水性であるため、もともと疎水的であるこれら環状オレフィン系重合体との密着性は、通常用いられるトリアセチルセルロースとの密着性に比べて極めて悪い。さらに親水性のポリビニルアルコール系偏光子は、もともと偏光子自体の吸湿度が高く、透湿度の低い環状オレフィン系フィルムを偏光板を構成する保護フィルムとして用いたのでは、ポリビニルアルコール偏光子から発散される水分の透過が妨げられ、高温環境下などでは、偏光板自体の内部が高温高湿状態となってしまい、その結果、光線透過率、偏光度などの変化量が大きくなり、偏光板としての信頼性は低いものとなっていた。また透湿度の小さい環状オレフィン系フィルムを保護フィルムとして用いて偏光板を製造する際、水分の抜けが悪く、長時間の乾燥工程が必要になり、さらには偏光板使用時にも長時間の調湿が必要になるといった偏光板製造上および加工上の問題もあった。
(2−2)の環状オレフィン系重合体はガラス転移温度が高く、優れるが前記重合体同様、極性基を含有していないため、接着性および密着性の点で不十分である。
(2−3)に記載の環状オレフィン系重合体はガラス転移温度が高く、極性基として、アルコキシカルボニル基(エステル)、アシルオキシ基を有することから接着性および密着性の点では優れるが、耐吸湿性の点では不十分なものである。また、国際特許公開WO2004/49011号にはアシル基を含んでいても良いとの記載はあるがアシル基が導入された具体的な化合物例、およびアシル基の導入による具体的な効果に関する記載は無い。
また、従来から用いられているセルローストリアセテートフィルムでは、偏光子からの水分放出に十分な透湿度を有するため、ポリビニルアルコール偏光子から発散される水分の透過が妨げられることはないが、セルローストリアセテートフィルム自身の環境温湿度変化による光学特性変化が若干認められる。
【0004】
本発明は、従来例の前述のような問題点を鑑みてなされたものであり、本発明の課題は第一に光学特性、耐熱性、接着性、密着性および耐吸湿性のいずれにも優れた環状オレフィン系重合体を提供することであり、第二に偏光子との密着性、貼合性に優れ、さらには偏光板劣化を低減できる好ましい透湿度を有し、環境温湿度変化による光学特性変化の小さいフィルム等の光学材料を提供することである。また、別の課題は本発明の光学材料を用いた、優れた偏光板、液晶表示装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上述の目的を達成するためになされたものであり、以下の環状オレフィン系重合体、およびこれら重合体から形成した光学材料、特に光学フィルムを提供するものである。
また、本発明者らは鋭意検討した結果、特定の環状オレフィン系フィルムを偏光子の少なくとも片側に使用した偏光板において、適度な透湿度を有し、偏光板製造および加工時の乾燥工程の軽減がされ、上記の課題が解決されることを見出した。さらに、本発明の環状オレフィン系フィルムを保護フィルムとして用いた偏光板は、偏光子と保護フィルムとの密着性に優れ、加工時の接着が良好であり、偏光板加工時の歩留まりの向上と工程の自由度向上に貢献することが出来、また光線透過率、偏光度などの偏光板劣化を低減した、優れた偏光板が得られることを見出した。さらに本発明の環状オレフィン系フィルムは、環境湿度変化によって生じるフィルム自身の変化、すなわち寸法変化および光学特性変化が極めて小さいため、品質の高い偏光板が得られることを見出した。
本発明の環状オレフィン系重合体、およびそれを用いた光学材料、偏光板および液晶表示装置は以下の構成からなる。
【0006】
[1]下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする環状オレフィン系重合体。
【0007】
【化1】

【0008】
一般式(1)中、Rは置換基を表し、Rは置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表す。ただし、Lが2価の連結基の場合、LとC=Oの結合は炭素−炭素結合である。pは、0または1の整数、qは0〜3の整数、rは1〜4の整数を表す。RとR、RとLが結合する環骨格の炭素原子、または2つのRは互いに結合して5〜7員の環を形成していても良い。
[2]前記環状オレフィン系重合体が下記一般式(2)に示す繰り返し単位をさらに含むことを特徴とする[1]に記載の環状オレフィン系重合体。
【0009】
【化2】

【0010】
一般式(2)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、mは0または1の整数を表す。R、R、R、Rはそれぞれ互に結合し5〜7員の環を形成していても良い。
[3]前記[1]または[2]に記載の環状オレフィン系重合体を用いてなる光学材料。
[4]前記光学材料が薄膜、フィルムまたはシート形状である光学材料。
[5]偏光子と、その両側に配置された2枚の保護膜からなる偏光板において、前記保護膜のうちの少なくとも1枚が、[4]に記載の光学材料であることを特徴とする偏光板。
[6][5]に記載の偏光板を少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。
【0011】
また、液晶表示装置としては以下の形態が好ましい。
(1)液晶表示装置に使用される偏光板を構成する保護膜の少なくとも1枚が、面内レターデーションRe(590)が0nm≦Re≦20nmであり、膜厚方向のレターデーションRth(590)が40nm≦Rth≦80nmであり、かつディスコティック液晶層が積層されている、TNモードの前記[6]に記載の液晶表示装置。
(2)液晶表示装置に使用される偏光板を構成する保護膜の少なくとも1枚が、面内レターデーションRe(590)が30nm≦Re≦75nmであり、膜厚方向のレターデーションRth(590)が120nm≦Rth≦250nmであり、かつ棒状液晶層が積層されている、VAモードの前記[6]に記載のVA液晶表示装置。
(3)液晶表示装置に使用される偏光板を構成する保護膜の少なくとも1枚が、面内レターデーションRe(590)が30nm≦Re≦70nmであり、膜厚方向のレターデーションRth(590)が120nm≦Rth≦300nmであり、かつディスコティック液晶層が積層されている、OCBモードの前記[6]に記載のOCB液晶表示装置。
ここでRe(λ)、Rth(λ)は、それぞれ波長λnmで測定したRe、Rthを表す。
【発明の効果】
【0012】
本発明の環状オレフィン系重合体は、光学特性、耐熱性、接着性、密着性および耐吸湿性のいずれにも優れる。また、本発明の光学材料は偏光子との密着性、貼合性に優れ、さらには偏光板劣化を低減できる好ましい透湿度を有し、環境温湿度変化による光学特性変化の小さくすることができる。また、本発明の偏光板、液晶表示装置は光学特性に優れたものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態を具体的に説明する。本発明の環状オレフィン系重合体は、前記一般式(1)で表される繰り返し単位含む環状オレフィン系重合体であることを特徴とする。
【0014】
以下、本発明の重合体についてさらに具体的に説明する。本発明の重合体に用いられる前記一般式(1)で表される繰り返し単位は、下記一般式(3)で表される環状オレフィンの付加重合により形成することができる。
【0015】
【化3】

【0016】
一般式(3)中、R、R、L、p、q、およびrはそれぞれ前記一般式(1)に示すものと同じ意味である。
【0017】
は置換基を表わすが、置換基として好ましくはハロゲン原子(例えば、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子)、アルキル基(好ましくは炭素数1から30のアルキル基、例えばメチル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、t−ブチル、n−オクチル、2−エチルヘキシル)、シクロアルキル基(好ましくは、炭素数3から30の置換または無置換のシクロアルキル基、例えば、シクロヘキシル、シクロペンチル、4−n−ドデシルシクロヘキシル)、ビシクロアルキル基(好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルキル基、つまり、炭素数5から30のビシクロアルカンから水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[1,2,2]ヘプタン−2−イル、ビシクロ[2,2,2]オクタン−3−イル)、
【0018】
アルケニル基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のアルケニル基、例えば、ビニル、アリル)、シクロアルケニル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシクロアルケニル基、つまり、炭素数3から30のシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、2−シクロペンテン−1−イル、2−シクロヘキセン−1−イル)、ビシクロアルケニル基(置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、好ましくは、炭素数5から30の置換もしくは無置換のビシクロアルケニル基、つまり二重結合を一個持つビシクロアルケンの水素原子を一個取り去った一価の基である。例えば、ビシクロ[2,2,1]ヘプト−2−エン−1−イル、ビシクロ[2,2,2]オクト−2−エン−4−イル)、アルキニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換または無置換のアルキニル基、例えば、エチニル、プロパルギル)、アリール基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリール基、例えばフェニル、p−トリル、ナフチル)、ヘテロ環基(好ましくは5または6員の置換もしくは無置換の、芳香族もしくは非芳香族のヘテロ環化合物から一個の水素原子を取り除いた一価の基であり、さらに好ましくは、炭素数3から30の5もしくは6員の芳香族のヘテロ環基である。例えば、2−フリル、2−チエニル、2−ピリミジニル、2−ベンゾチアゾリル)、
【0019】
シアノ基、ヒドロキシル基、ニトロ基、カルボキシル基、アルコキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルコキシ基、例えば、メトキシ、エトキシ、イソプロポキシ、t−ブトキシ、n−オクチルオキシ、2−メトキシエトキシ)、アリールオキシ基(好ましくは、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールオキシ基、例えば、フェノキシ、2−メチルフェノキシ、4−t−ブチルフェノキシ、3−ニトロフェノキシ、2−テトラデカノイルアミノフェノキシ)、シリルオキシ基(好ましくは、炭素数3から20のシリルオキシ基、例えば、トリメチルシリルオキシ、t−ブチルジメチルシリルオキシ)、ヘテロ環オキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のヘテロ環オキシ基、1−フェニルテトラゾール−5−オキシ、2−テトラヒドロピラニルオキシ)、アシルオキシ基(好ましくはホルミルオキシ基、炭素数2から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルオキシ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルオキシ基、例えば、ホルミルオキシ、アセチルオキシ、ピバロイルオキシ、ステアロイルオキシ、ベンゾイルオキシ、p−メトキシフェニルカルボニルオキシ)、カルバモイルオキシ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイルオキシ基、例えば、N,N−ジメチルカルバモイルオキシ、N,N−ジエチルカルバモイルオキシ、モルホリノカルボニルオキシ、N,N−ジ−n−オクチルアミノカルボニルオキシ、N−n−オクチルカルバモイルオキシ)、アルコキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルオキシ基、例えばメトキシカルボニルオキシ、エトキシカルボニルオキシ、t−ブトキシカルボニルオキシ、n−オクチルカルボニルオキシ)、アリールオキシカルボニルオキシ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルオキシ基、例えば、フェノキシカルボニルオキシ、p−メトキシフェノキシカルボニルオキシ、p−n−ヘキサデシルオキシフェノキシカルボニルオキシ)、
【0020】
アミノ基(好ましくは、アミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアニリノ基、例えば、アミノ、メチルアミノ、ジメチルアミノ、アニリノ、N−メチル−アニリノ、ジフェニルアミノ)、アシルアミノ基(好ましくは、ホルミルアミノ基、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルカルボニルアミノ基、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールカルボニルアミノ基、例えば、ホルミルアミノ、アセチルアミノ、ピバロイルアミノ、ラウロイルアミノ、ベンゾイルアミノ)、アミノカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアミノカルボニルアミノ、例えば、カルバモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノカルボニルアミノ、N,N−ジエチルアミノカルボニルアミノ、モルホリノカルボニルアミノ)、アルコキシカルボニルアミノ基(好ましくは炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニルアミノ基、例えば、メトキシカルボニルアミノ、エトキシカルボニルアミノ、t−ブトキシカルボニルアミノ、n−オクタデシルオキシカルボニルアミノ、N−メチルーメトキシカルボニルアミノ)、アリールオキシカルボニルアミノ基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニルアミノ基、例えば、フェノキシカルボニルアミノ、p−クロロフェノキシカルボニルアミノ、m-n−オクチルオキシフェノキシカルボニルアミノ)、スルファモイルアミノ基(好ましくは、炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイルアミノ基、例えば、スルファモイルアミノ、N,N−ジメチルアミノスルホニルアミノ、N−n−オクチルアミノスルホニルアミノ)、アルキルおよびアリールスルホニルアミノ基(好ましくは炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルスルホニルアミノ、炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールスルホニルアミノ、例えば、メチルスルホニルアミノ、ブチルスルホニルアミノ、フェニルスルホニルアミノ、2,3,5−トリクロロフェニルスルホニルアミノ、p−メチルフェニルスルホニルアミノ)、メルカプト基、アルキルチオ基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のアルキルチオ基、例えばメチルチオ、エチルチオ、n−ヘキサデシルチオ)、アリールチオ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールチオ、例えば、フェニルチオ、p−クロロフェニルチオ、m−メトキシフェニルチオ)、ヘテロ環チオ基(好ましくは炭素数2から30の置換または無置換のヘテロ環チオ基、例えば、2−ベンゾチアゾリルチオ、1−フェニルテトラゾール−5−イルチオ)、
【0021】
スルファモイル基(好ましくは炭素数0から30の置換もしくは無置換のスルファモイル基、例えば、N−エチルスルファモイル、N−(3−ドデシルオキシプロピル)スルファモイル、N,N−ジメチルスルファモイル、N−アセチルスルファモイル、N−ベンゾイルスルファモイル、N−(N’−フェニルカルバモイル)スルファモイル)、スルホ基、アルキルおよびアリールスルフィニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルフィニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルフィニル基、例えば、メチルスルフィニル、エチルスルフィニル、フェニルスルフィニル、p−メチルフェニルスルフィニル)、アルキルおよびアリールスルホニル基(好ましくは、炭素数1から30の置換または無置換のアルキルスルホニル基、6から30の置換または無置換のアリールスルホニル基、例えば、メチルスルホニル、エチルスルホニル、フェニルスルホニル、p−メチルフェニルスルホニル)、アリールオキシカルボニル基(好ましくは、炭素数7から30の置換もしくは無置換のアリールオキシカルボニル基、例えば、フェノキシカルボニル、o−クロロフェノキシカルボニル、m−ニトロフェノキシカルボニル、p−t−ブチルフェノキシカルボニル)、アルコキシカルボニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換アルコキシカルボニル基、例えば、メトキシカルボニル、エトキシカルボニル、t−ブトキシカルボニル、n−オクタデシルオキシカルボニル)、カルバモイル基(好ましくは、炭素数1から30の置換もしくは無置換のカルバモイル、例えば、カルバモイル、N−メチルカルバモイル、N,N−ジメチルカルバモイル、N,N−ジ−n−オクチルカルバモイル、N−(メチルスルホニル)カルバモイル)、アリールおよびヘテロ環アゾ基(好ましくは炭素数6から30の置換もしくは無置換のアリールアゾ基、炭素数3から30の置換もしくは無置換のヘテロ環アゾ基、例えば、フェニルアゾ、p−クロロフェニルアゾ、5−エチルチオ−1,3,4−チアジアゾール−2−イルアゾ)、イミド基(好ましくは、N−スクシンイミド、N−フタルイミド)、ホスフィノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィノ基、例えば、ジメチルホスフィノ、ジフェニルホスフィノ、メチルフェノキシホスフィノ)、ホスフィニル基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニル基、例えば、ホスフィニル、ジオクチルオキシホスフィニル、ジエトキシホスフィニル)、ホスフィニルオキシ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルオキシ基、例えば、ジフェノキシホスフィニルオキシ、ジオクチルオキシホスフィニルオキシ)、ホスフィニルアミノ基(好ましくは、炭素数2から30の置換もしくは無置換のホスフィニルアミノ基、例えば、ジメトキシホスフィニルアミノ、ジメチルアミノホスフィニルアミノ)、シリル基(好ましくは、炭素数3から30の置換もしくは無置換のシリル基、例えば、トリメチルシリル、t−ブチルジメチルシリル、フェニルジメチルシリル)を表わす。
【0022】
上記の置換基の中で、水素原子を有するものは、これを取り去りさらに上記の基で置換されていても良い。そのような官能基の例としては、アルキルカルボニルアミノスルホニル基、アリールカルボニルアミノスルホニル基、アルキルスルホニルアミノカルボニル基、アリールスルホニルアミノカルボニル基が挙げられる。その例としては、メチルスルホニルアミノカルボニル、p−メチルフェニルスルホニルアミノカルボニル、アセチルアミノスルホニル、ベンゾイルアミノスルホニル基が挙げられる。
【0023】
また、置換基が二つ以上ある場合は、同じでも異なってもよい。また、可能な場合には互いに連結して環を形成してもよい。
【0024】
としてさらに好ましくはハロゲン原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜10のアシルオキシ基である。
【0025】
は置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、これらの好ましい例はRで述べたものと同じである。Rとしては、置換されていてもよい、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数2〜10のアルケニル基、炭素数2〜10のアルキニル基または炭素数6〜12のアリール基が更に好ましい。
【0026】
Lは単結合または2価の連結基を表す。ただし、2価の連結基の場合、LとC=Oの結合は炭素−炭素結合である。2価の連結基として好ましくは、置換されていてもよいアルキレン基、アルケニレン基、アルキニレン基、アリーレン基およびこれらの2価基を2つ以上組み合わせて得られる基であり、2つ以上の組み合わせにより構成される際、さらに他の2価の連結基で連結されていても良い。このような2価の連結基としては−NR−(Rは水素原子、置換基を有していても良いアルキル基またはアリール基を表す)で表される基、−O−、−S−、−SO−、−SO−、−CO−、−SONR−、−NRSO−、−CONR−、−NRCO−、−COO−、および−OCO−である。ここで、置換基としては前述のRにおける置換基の例が適用できる。
【0027】
Lはさらに好ましくは単結合、置換されていても良い炭素数1〜10のアルキレン基である。
【0028】
pは、0または1の整数であり、さらに好ましくは0である。qは0〜3の整数であり、さらに好ましくは0〜1である。rは1〜4の整数であり、さらに好ましくは1〜2である。RとR、RとLが結合する環骨格の炭素原子、または2つのRは互いに結合して5〜7員の環を形成していても良い。R、R、Lが形成する環は5または6員の環であることがより好ましい。また、炭素環であっても複素環であってもよいが炭素環が好ましい。
【0029】
このような一般式(3)で表される環状オレフィンの具体例を以下に示すが本発明はこれらに限定されない。
【0030】
【化4】

【0031】
【化5】

【0032】
【化6】

【0033】
【化7】

【0034】
前記一般式(3)で表される環状オレフィンは、1種単独でまたは2種以上を組合わせて用いることができる。
【0035】
前記一般式(2)で表される繰り返し単位は、下記一般式(4)で表される特定の環状オレフィンにより形成することができる。
【0036】
【化8】

【0037】
一般式(4)中、R、R、R、Rおよびmは、それぞれ前記一般式(2)に示すものと同じ意味である。
【0038】
、R、R、Rは水素原子または置換基を表し、置換基の好ましい例としては一般式(3)で述べた置換基Rの例と同様である。R、R、R、Rとしては、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、シアノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜10のアルコキシカルボニル基、炭素数6〜12のアリールオキシ基、炭素数2〜10のアシルオキシ基が更に好ましい。また、可能な場合には互いに連結して5〜7員環を形成してもよいが、5または6員の環であることがより好ましい。また、炭素環であっても複素環であってもよいが炭素環が好ましい。
【0039】
mは0または1の整数を表すがより好ましく0である。
【0040】
このような一般式(4)で表される環状オレフィンの具体例を以下に示すが本発明はこれらに限定されない。
【0041】
【化9】

【0042】
【化10】

【0043】
【化11】

【0044】
【化12】

【0045】
前記一般式(4)で表される環状オレフィンは、1種単独でまたは2種以上を組合わせて用いることができる。
【0046】
本発明で使用する環状オレフィンは文献既知の方法を参考に合成することができる。例えば、Bull. Chem. Soc. Jpn., 48, 3641-3644(1975)に記載の方法、およびJ. Chem. Soc. Perkin Trans., 2, 17-22(1974)に記載の方法などが挙げられるが本発明の環状オレフィンはこれらの方法に限定されない。
以下に本発明で使用する環状オレフィンの具体的な合成法を例を挙げて説明する。
(具体的化合物例3−1の合成)
蒸留精製したジシクロペンタジエン66g、メチルビニルケトン105g、およびハイドロキノン1gを500mlのオートクレーブ中で7時間、150℃で反応させた。反応後、粗生成物を蒸留し、15mmHg/77℃留出分より無色透明液体として具体的化合物例3−1を80.4g(収率59%)で得た。
【0047】
前記一般式(1)で表される繰り返し単位の含有量は、全繰り返し単位中、好ましくは、5モル%以上100モル%以下、さらに好ましくは、20モル%以上100モル%以下、特に好ましくは、30モル%以上100モル%以下である。本発明の環状オレフィン系重合体が前記一般式(2)で表される繰り返し単位を有する場合、その含有量は、全繰り返し単位中、好ましくは、0.01〜90モル%、さらに好ましくは、1モル%以上70モル%以下、特に好ましくは、10モル%以上50モル%以下であるが、好ましい含有量は繰り返し単位の構造によって異なるためこれらに限定されない。
【0048】
以下に本発明の環状オレフィン系重合体の好ましい具体例を示すが、本発明はこれらによって限定されない。
【0049】
【化13】

【0050】
本発明の環状オレフィン系重合体は、テトラヒドロフランを溶媒とするゲル・パーミエションクロマトグラムで測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が10,000〜1,000,000で,好ましくは50,000〜500,000である。また、ポリスチレン換算の重量平均分子量は15,000〜1,500,000で好ましくは70,000〜700,000である。ポリスチレン換算の数平均分子量が10,000未満、重量平均分子量が15,000未満であると、破壊強度が不十分となることがあり、ポリスチレン換算の数平均分子量が1,000,000を超え、重量平均分子量が1,500,000を超えると、シートとしての成形加工性が低下し、またキャストフィルム等とするときに溶液粘度が高くなり、扱い難くなることがある。
【0051】
本発明の環状オレフィン系重合体の好ましいガラス転移温度は、走査型示差熱量計(DSC)の測定において100〜400℃、好ましくは、150〜380℃、さらに好ましくは200〜350℃であり、100℃未満であると、光学材料として使用するときに熱変形を生じ易くなる。また、400℃を超えると、熱による成形加工を行う場合、重合体が熱分解することがある。
【0052】
本発明の環状オレフィン系重合体は、過酸化物、イオウ、ジスルフィド、ポリスルフィド化合物、ジオキシム化合物、テトラスルフィド等を含むシランカップリング剤等の架橋剤を、本発明の共重合体100重量部に対して0.05〜5重量部を添加し、熱等により架橋体に変換することもできるし、直接、光、電子線により架橋体に変換することもできる。
【0053】
本発明の環状オレフィン系重合体は優れた光学透明性、耐熱性、接着性、密着性および耐吸湿性を有するので、液晶表示素子基板、導光板、偏光フィルム、位相差フィルム、液晶バックライト、液晶パネル、OHP用フィルム、透明導電性フィルム等をはじめとして、光ディスク、光ファイバー、レンズ、プリズム等の光学材料、電子部品さらに医療機器、容器等に好適に用いられる。
【0054】
本発明の環状オレフィン系重合体、すなわち、特定の環状オレフィンから形成される重合体は、例えば、以下の製造方法で得ることができる。[Pd(CH3CN)4][BF42、ジ−μ−クロロ−ビス−(6−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−エンド−5σ,2π)−Pd(以下、「I」と略す)とメチルアルモキサン(MAO)、IとAgBF4、IとAgSbF6、[(η3−アリル)PdCl]2とAgSbF6、[(η3−アリル)PdCl]2とAgBF4、[(η3−クロチル)Pd(シクロオクタジエン)][PF6]、[(η3−クロチル)Ni(シクロオクタジエン)][B((CF32644]、[NiBr(NPMe3)]4とMAO、Ni(オクトエート)2とMAO、Ni(オクトエート)2とB(C653とAlEt3、Ni(オクトエート)2と[ph3C][B(C654]とAli−Bu3、Co(ネオデカノエート)とMAO等の周期律表8族のNi、Pd.Co等のカチオン錯体またはカチオン錯体を形成する触媒を用いて、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒ジクロロメタン、1,2−ジクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ニトロメタン等の極性溶媒から選ばれた溶媒中で−20〜100℃の範囲で特定の環状オレフィン化合物を(共)重合することにより得ることができる。
また、マクロモレキュールス(Macromolecules)、1996年、29巻、2755ページ、マクロモレキュールス(Macromolecules)、2002年、35巻、8969ページ、国際特許公開WO2004/7564号に記載の方法も好適に用いられる。
【0055】
本発明の光学材料は、薄膜、フィルムまたはシート形状であることが好ましい。また、これらの光学材料は、本発明の環状オレフィン系重合体を含有する組成物から形成することが好ましい。以下、本発明の環状オレフィン系重合体(以下、環状ポリオレフィン系重合体ともいう)を含有する組成物とそれから形成される光学材料について説明する。
【0056】
(添加剤)
本発明の環状ポリオレフィン系重合体組成物には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。添加する時期は溶液流延法によるフィルム作成の場合、環状ポリオレフィン重合体の溶液(ドープ)作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。溶融法によるフィルム作成の場合、樹脂ペレット作成時に添加していても良いし、フィルム作成時に混練しても良い。各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、環状ポリオレフィン系フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。
【0057】
(劣化防止剤)
本発明の環状ポリオレフィン系重合体組成物には公知の劣化(酸化)防止剤、例えば、2,6−ジ−t−ブチル,4−メチルフェノール、4,4’−チオビス−(6−t−ブチル−3−メチルフェノール)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。酸化防止剤の添加量は、環状ポリオレフィン重合体100質量部に対して、0.05〜5.0質量部を添加する。
【0058】
(紫外線吸収剤)
本発明の環状ポリオレフィン系重合体組成物には、偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、環状ポリオレフィン系重合体に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
【0059】
(微粒子)
次に本発明に用いる微粒子について記述する。フィルム面のすべり性の悪さを改良するためには、フィルム表面に凹凸を付与することが有効であり、有機、無機物質の微粒子を含有させて、フィルム表面の粗さを増加させ、いわゆるマット化することで、フィルム同士のブロッキングを減少させる方法が知られている。さらに本発明では環状オレフィン系フィルム中、または環状オレフィン系フィルムの少なくとも片方の面上に微粒子が存在することにより、偏光板加工時の偏光子と環状オレフィン系フィルム間の密着性が著しく向上する。
【0060】
本発明に使用するマット剤は、無機微粒子であれば、平均粒径0.05μm〜0.5μmの微粒子であり、好ましくは0.08μm〜0.3μm、より好ましくは0.1μm〜0.25μmである。
【0061】
本発明に用いられる微粒子は、無機化合物としては二酸化ケイ素、シリコーンおよび二酸化チタンが好ましく、高分子化合物としてはフッ素樹脂、ナイロン、ポリプロピレンおよび塩素化ポリエーテルが好ましいが、さらに好ましくは二酸化ケイ素であり、特に好ましくは有機物により表面処理されている二酸化ケイ素である。
【0062】
(剥離促進剤)
環状ポリオレフィン系フィルムの剥離抵抗を小さくする添加剤としては界面活性剤に効果の顕著なものが多くみつかっている。好ましい剥離剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸あるいはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸あるいはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。剥離剤の添加量は環状ポリオレフィン系重合体に対して0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がさらに好ましく、0.1〜0.5質量%が最も好ましい。
【0063】
(レターデーション発現剤)
本発明ではレターデーション値を発現するため、少なくとも二つの芳香族環を有する化合物をレターデーション発現剤として用いることができる。レターデーション発現剤を使用する場合は、ポリマー100質量部に対して、0.05〜20質量部の範囲で使用することが好ましく、0.1〜10質量部の範囲で使用することがより好ましく、0.2〜5質量部の範囲で使用することがさらに好ましく、0.5〜2質量部の範囲で使用することが最も好ましい。二種類以上のレターデーション発現剤を併用してもよい。
レターデーション発現剤は、250〜400nmの波長領域に最大吸収を有することが好ましく、可視領域に実質的に吸収を有していないことが好ましい。ここで、「芳香族環」は、芳香族炭化水素環に加えて、芳香族ヘテロ環を含む。
【0064】
レターデーション発現剤が有する芳香族環の数は、2〜20であることが好ましく、2〜12であることがより好ましく、2〜8であることがさらに好ましく、2〜6であることが最も好ましい。
レターデーション発現剤としては、欧州特許出願公開0911656A2号明細書、および特開2003−344655号公報に記載の発現剤などが挙げられるが、本発明はこれらに限定されない。
レターデーション発現剤の添加量は、環状ポリオレフィン系重合体量の0.1〜30質量%であることが好ましく、0.5〜20質量%であることがさらに好ましい。
【0065】
(環状オレフィン系フィルムの製膜)
本発明の環状オレフィン系フィルムの製膜は、熱溶融製膜の方法と溶液製膜の方法があり、いずれも適応可能である。本発明においては面状の優れたフィルムを得ることの出来る溶液製膜方法を用いることが好ましい。まず溶液製膜方法について記述する。
【0066】
(有機溶剤)
次に、本発明の環状ポリオレフィン系重合体が溶解される有機溶剤について記述する。本発明においては、環状ポリオレフィン系重合体が溶解し流延,製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、使用できる有機溶剤は特に限定されない。
本発明で用いられる有機溶剤は、例えばジクロロメタン、クロロホルムに代表される塩素系溶剤、炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、エステル、ケトン、エーテルから選ばれる溶剤が好ましい。エステル、ケトンおよび、エーテルは、環状構造を有していてもよい。炭素原子数が3〜12の鎖状炭化水素類の例としては、ヘキサン、オクタン、イソオクタン、デカンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12の環状炭化水素類としてはシクロペンタン、シクロヘキサン、デカリンおよびその誘導体が挙げられる。炭素原子数が3〜12の芳香族炭化水素としては、ベンゼン、トルエン、キシレンなどが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエステル類の例には、エチルホルメート、プロピルホルメート、ペンチルホルメート、メチルアセテート、エチルアセテートおよびペンチルアセテートが挙げられる。炭素原子数が3〜12のケトン類の例には、アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノンおよびメチルシクロヘキサノンが挙げられる。炭素原子数が3〜12のエーテル類の例には、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトールが挙げられる。二種類以上の官能基を有する有機溶剤の例には、2−エトキシエチルアセテート、2−メトキシエタノールおよび2−ブトキシエタノールが挙げられる。有機溶剤の好ましい沸点は35℃以上かつ200℃以下である。本発明に使用される溶剤は、乾燥性、粘度等の溶液物性調節のために2種以上の溶剤を混合して用いることができ、さらに、混合溶媒で環状ポリオレフィン系重合体が溶解する限りは、貧溶媒を添加することも可能である。
【0067】
好ましい貧溶媒は使用するポリマー種により適宜選択することができる。良溶媒として塩素系有機溶剤を使用する場合は、アルコール類を好適に使用することができる。アルコール類としては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。また、アルコールとしては、フッ素系アルコールも用いられる。例えば、2−フルオロエタノール、2,2,2−トリフルオロエタノール、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノールなども挙げられる。貧溶媒の中でも特に1価のアルコール類は、剥離抵抗低減効果があり、好ましく使用することができる。選択する良溶剤によって特に好ましいアルコール類は変化するが、乾燥負荷を考慮すると、沸点が120℃以下のアルコールが好ましく、炭素数1〜6の1価アルコールがさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコールが特に好ましく使用することができる。環状ポリオレフィン溶液を作成する上で特に好ましい混合溶剤は、ジクロロメタンを主溶剤とし、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールあるいはブタノールから選ばれる1種以上のアルコール類を貧溶媒にする組み合わせである。
【0068】
(ドープ調製)
次に本発明における環状ポリオレフィン溶液(ドープ)の調製については、室温攪拌溶解による方法、室温で攪拌してポリマーを膨潤させた後−20から−100℃まで冷却し再度20から100℃に加熱して溶解する冷却溶解法、密閉容器中で主溶剤の沸点以上の温度にして溶解する高温溶解方法、さらには溶剤の臨界点まで高温高圧にして溶解する方法などがある。本発明の環状ポリオレフィン溶液の粘度は25℃で1〜500Pa・sの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは5〜200Pa・sの範囲である。粘度の測定は次のようにして行った。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。
【0069】
溶液は流延に先だって金網やネルなどの適当な濾材を用いて、未溶解物やゴミ、不純物などの異物を濾過除去しておくのが好ましい。
環状ポリオレフィン溶液の製膜直前の粘度は、製膜の際に流延可能な範囲であればよく、通常5Pa・s〜1000Pa・sの範囲に調製されることが好ましく、15Pa・s〜500Pa・sがより好ましく、30Pa・s〜200Pa・sがさらに好ましい。なお、この時の温度はその流延時の温度であれば特に限定されないが、好ましくは−5〜70℃であり、より好ましくは−5〜35℃である。
【0070】
(製膜)
環状ポリオレフィン溶液を用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明の環状ポリオレフィン系フィルムを製造する方法および設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供するのと同様の溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(環状ポリオレフィン溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。
【0071】
特開2000−301555号、特開2000−301558号、特開平7−032391号、特開平3−193316号、特開平5−086212号、特開昭62−037113号、特開平2−276607号、特開昭55−014201号、特開平2−111511号、および特開平2−208650号の各公報に記載のセルロースアシレート製膜技術を本発明では応用できる。
【0072】
(重層流延)
環状ポリオレフィン溶液を、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数の環状ポリオレフィン液を流延してもよい。重層流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。
【0073】
(流延)
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。流延に用いられる環状ポリオレフィン溶液の温度は、−10〜55℃が好ましくより好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
【0074】
(乾燥)
環状ポリオレフィン系フィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(例えばドラム或いはバンド)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラム或いはバンドの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をバンドやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラム或いはバンドを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶剤の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶剤の内の最も沸点の低い溶剤の沸点より1〜10度低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
【0075】
(剥離)
生乾きのフィルムを金属支持体から剥離するとき、剥離抵抗(剥離荷重)が大きいと、製膜方向にフィルムが不規則に伸ばされて光学的な異方性むらを生じる。特に剥離荷重が大きいときは、製膜方向に段状に伸ばされたところと伸ばされていないところが交互に生じて、レターデーションに分布を生じる。液晶表示装置に装填すると線状あるいは帯状にむらが見えるようになる。このような問題を発生させないためには、フィルムの剥離荷重をフィルム剥離幅1cmあたり0.25N以下にすることが好ましい。剥離荷重はより好ましくは0.2N/cm以下、さらに好ましくは0.15N以下、特に好ましくは0.10N以下である。剥離荷重0.2N/cm以下のときはむらが現れやすい液晶表示装置においても剥離起因のむらは全く認められず、特に好ましい。剥離荷重を小さくする方法としては、前述のように剥離剤を添加する方法と、使用する溶剤組成の選択による方法がある。
剥離時の好ましい残留揮発分濃度は5〜60質量%である。10〜50質量%がさらに好ましく、20〜40質量%が特に好ましい。高揮発分で剥離すると乾燥速度が稼げて、生産性が向上して好ましい。一方、高揮発分ではフィルムの強度や弾性が小さく、剥離力に負けて切断したり伸びたりしてしまう。また剥離後の自己保持力が乏しく、変形、しわ、クニックを生じやすくなる。またレターデーションに分布を生じる原因になる。
【0076】
(延伸処理)
本発明の環状ポリオレフィン系フィルムを延伸処理する場合は、剥離のすぐ後の未だフィルム中に溶剤が十分に残留している状態で行うのが好ましい。延伸の目的は、(1)しわや変形のない平面性に優れたフィルムを得るためおよび、(2)フィルムの面内レターデーションを大きくするために行う。(1)の目的で延伸を行うときは、比較的高い温度で延伸を行い、延伸倍率も1%からせいぜい10%までの低倍率の延伸を行う。2から5%の延伸が特に好ましい。(1)と(2)の両方の目的、あるいは(2)だけの目的で延伸する場合は、比較的低い温度で、延伸倍率も5から150%で延伸する。
【0077】
フィルムの延伸は、縦あるいは横だけの一軸延伸でもよく同時あるいは逐次2軸延伸でもよい。VA液晶セルやOCB液晶セル用位相差フィルムの複屈折は、幅方向の屈折率が長さ方向の屈折率よりも大きくなることが好ましい。従って幅方向により多く延伸することが好ましい。
【0078】
本発明の出来上がり(乾燥後)の環状ポリオレフィン系フィルムの厚さは、使用目的によって異なるが、通常20から500μmの範囲であり、30〜150μmの範囲が好ましく、特に液晶表示装置用には40〜110μmであることが好ましい。
【0079】
次に熱溶融製膜方法について記述する。溶融した環状オレフィン系重合体を押出機のダイからシート状に押し出し、冷却ロール上で冷却して環状オレフィン系重合体の基体フィルムを形成する工程を有する。
この製造方法において、環状オレフィン系重合体を溶融させる場合、環状オレフィン系重合体ペレットを予熱しておくことができる。予熱温度は、Tg−90℃〜Tg+15℃、好ましくはTg−75℃〜Tg−5℃、さらに好ましくはTg−70℃〜Tg−5℃である。Tg−90℃〜Tg+15℃の範囲で予熱しておけば、この後の樹脂の溶融混練を均一に行うことができ、所望のH−V散乱光強度およびV−V散乱光強度を得ることができる。
【0080】
前記製造方法は、前記予熱の後、押出機を用いて200〜300℃の温度まで昇温し、環状オレフィン系重合体を溶融させる。この際、押出機の出口側の温度を入口側の温度より5〜100℃、好ましくは20〜90℃、さらに好ましくは30〜80℃高くしておくことが好ましい。押出機の出口側の温度を入口側の温度より高くしておくことにより、溶融した樹脂を均一に混練することができ、所望のH−V散乱強度およびV−V散乱強度の値を得ることができる。
【0081】
(環状ポリオレフィン系フィルムの透湿度)
本発明の環状ポリオレフィン系フィルムの好ましい透湿度は、偏光板保護フィルムとしての用途を考えた場合、40℃×90%RHにおける透湿度が200(g/m/24h)以上400(g/m/24h)以下であることが好ましく、250(g/m/24h)以上390(g/m/24h)以下であることがさらに好ましく、300(g/m/24h)以上380(g/m/24h)以下であることが特に好ましい。上記の範囲よりも透湿度が低い場合、偏光板加工時に偏光子からの水分放出が妨げられ、偏光子内部が高湿のまま保持されることとなり、偏光子の劣化が急速に進み、偏光板性能の低下をもたらす。また、ポリビニルアルコールを代表とする親水性の偏光子と保護フィルムの密着性が悪いことから、偏光子とフィルムの剥離が生じ、偏光板の耐久性悪化と打ち抜き加工での歩留まり低下を引き起こす。逆に上記の範囲よりも透湿度が高い場合には、親水性の偏光子と保護フィルムの密着性は十分であり、剥離に起因する問題はないものの、湿度などの外部環境変化の影響を内部の偏光子も受けやすくなるために、内部の偏光子の劣化を防止することは難しく、保護フィルムとして十分に機能しない。
【0082】
本発明の環状オレフィン系フィルムは、偏光板保護フィルムとして使用する際、保護フィルムとして両面に使用することも、その片面にセルローストリアセテートフィルムなどの従来より用いられているフィルムを対向のフィルムとして用いることができる。本発明の環状オレフィン系フィルムの透湿度は、セルローストリアセテートフィルムの透湿度に近いために、偏光板の片面に本発明の環状オレフィン系フィルムを、もう片面にセルローストリアセテートフィルムを用いた偏光板は、偏光板カールなどの製造および加工上の問題が発生しないかあるいは非常に小さい。
【0083】
(環状ポリオレフィン系フィルムの光学特性)
本発明の環状ポリオレフィン系フィルムの好ましい光学特性は、フィルムの用途により異なる。偏光板保護フィルム用途の場合は、面内レターデーション(Re)は5nm以下が好ましく、3nm以下がさらに好ましい。厚さ方向レターデーション(Rth)も50nm以下が好ましく、35nm以下がさらに好ましく、10nm以下が特に好ましい。
環状ポリオレフィン系フィルムを位相差フィルムとして使用する場合は、位相差フィルムの種類によってReやRthの範囲は異なり、多様なニーズがあるが、測定波長590nmにおいて、0nm≦Re≦100nm、40nm≦Rth≦400nmであることが好ましい。測定波長590nmにおいて、TNモードなら0nm≦Re≦20nm、40nm≦Rth≦80nm、VAモードなら20nm≦Re≦80nm、80nm≦Rth≦400nmがより好ましく、特にVAモードで好ましい範囲は、30nm≦Re≦75nm、120nm≦Rth≦250nmであり、一枚の位相差膜で補償する場合は、50nm≦Re≦75nm、180nm≦Rth≦250nm、2枚の位相差膜で補償する場合は、30nm≦Re≦50nm、80nm≦Rth≦140nmであることがVAモードの補償膜の場合、黒表示時のカラーシフト、コントラストの視野角依存性の点でよりし好ましい態様である。測定波長590nmにおいて、OCBモードなら30nm≦Re≦70nm、120nm≦Rth≦300nmが好ましい。本発明の環状ポリオレフィン系フィルムは使用するポリマー構造、添加剤の種類および添加量、延伸倍率、剥離時の残留揮発分などの工程条件を適宜調節することで所望の光学特性を実現することができる。
【0084】
本明細書において、Re(λ)、Rth(λ)は各々、波長λにおける面内のリターデーションおよび厚さ方向のリターデーションを表す。Re(λ)はKOBRA 21ADH(王子計測機器(株)製)において波長λnmの光をフィルム法線方向に入射させて測定される。Rth(λ)は前記Re(λ)、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して+40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値、および面内の遅相軸を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−40°傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて測定したレターデーション値の計3つの方向で測定したレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHが算出する。ここで平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する:セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。ここでは測定波長λは590nmを使用した。
【0085】
(偏光板)
偏光板は、通常、偏光子およびその両側に配置された二枚の透明保護膜を有する。両方または一方の保護膜として、本発明の環状ポリオレフィン系フィルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルム等を用いてもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明の環状ポリオレフィン系フィルムを偏光板保護膜として用いる場合、フィルムは後述の如き表面処理を行い、しかる後にフィルム処理面と偏光子を接着剤を用いて貼り合わせる。使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス、ゼラチン等が挙げられる。偏光板は偏光子およびその両面を保護する保護膜で構成されており、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。
【0086】
本発明の環状ポリオレフィン系フィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸と本発明の環状ポリオレフィン系フィルムの遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。
【0087】
(環状ポリオレフィン系フィルムの表面処理)
本発明では、偏光子と保護フィルムとの接着性を改良するため、環状ポリオレフィン保護フィルムの表面を表面処理することが好ましい。表面処理については、接着性を改善できる限りいかなる方法を利用してもよいが、好ましい表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理および火炎処理が挙げられる。ここでいうグロー放電処理とは、低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことである。本発明では大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。その他、グロー放電処理の詳細については、米国特許第3462335号、米国特許第3761299号、米国特許第4072769号および英国特許第891469号明細書に記載されている。放電雰囲気ガス組成を放電開始後にポリエステル支持体自身が放電処理を受けることにより容器内に発生する気体種のみにした特表昭59−556430号公報に記載された方法も用いられる。また真空グロー放電処理する際に、フィルムの表面温度を80℃以上180℃以下にして放電処理を行う特公昭60−16614号公報に記載された方法も適用できる。
【0088】
表面処理の程度については、表面処理の種類、環状ポリオレフィンの種類によって好ましい範囲も異なるが、表面処理の結果、表面処理を施された保護フィルムの表面の純水との接触角が、50°未満となるのが好ましい。前記接触角は、25°以上45°未満であるのがより好ましい。保護フィルム表面の純水との接触角が上記範囲にあると、保護フィルムと偏光膜との接着強度が良好となる。
【0089】
(接着剤)
ポリビニルアルコールからなる偏光子と、表面処理された環状ポリオレフィン系フィルムからなる保護フィルムとを貼合する際には、水溶性ポリマーを含有する接着剤を用いることが好ましい。
前記接着剤に好ましく使用される水溶性ポリマーとしては、N−ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド、ビニルイミダゾールなどエチレン性不飽和モノマーを構成要素として有する単独重合体もしくは共重合体、またポリオキシエチレン、ボリオキシプロピレン、ポリ−2−メチルオキサゾリン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースゼラチン、などが挙げられる。本発明では、この中でもPVAおよびゼラチンが好ましい。接着剤層厚みは、乾燥後に0.01〜5μmが好ましく、0.05〜3μmが特に好ましい。
【0090】
(反射防止層)
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層または透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。
【0091】
(光散乱層)
光散乱層は、表面散乱および/または内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。
【0092】
光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する観点並びにカールの発生および脆性の悪化抑制の観点から、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。
【0093】
(反射防止層の他の層)
さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
【0094】
(ハードコート層)
ハードコート層は、反射防止層を設けた透明保護膜に物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
【0095】
(帯電防止層)
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10−8(Ωcm−3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10−8(Ωcm−3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。
【0096】
(液晶表示装置)
本発明の環状ポリオレフィン系フィルム、該フィルムからなる位相差フィルム、該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、OCBモードまたはVAモードに好ましく用いることができる。
【実施例】
【0097】
以下、本発明を実施例に基づき具体的に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されない。
なお、本実施例における各特性の測定方法は以下のとおりである。
[透湿度]
試料70mmφを40℃、90%RHでそれぞれ24時間調湿し、透湿試験装置(KK−709007、東洋精機(株))にて、JIS Z−0208に従って、単位面積あたりの水分量を算出(g/m2)した。そして、透湿度を調湿後重量−調湿前重量により求めた。
[吸水率]
25℃の水中に24時間浸漬させた後、吸水率を測定した。
[接着性・密着性]
10cm×10cmの試験片にアルミニウムを蒸着し、この蒸着膜に対して、カッターにより、1mm×1mmの碁盤目が10個×10個形成されるように切込みを入れ、セロハンテープによる剥離試験を行い、25ブロック中における剥離したブロックの数を測定した。
[厚み方向レターデーション(Rth)および寸法変化の湿度依存性]
測定波長λは590nmを使用した。湿度依存性は25℃、10%RH及び25℃、80%RH条件下で、2時間調湿した測定を行い、そのRthの変化率を求めた。
ここで、Rthの変化率(%)=[Rth(10%RH)−Rth(80%RH)]/Rth(10%RH)×100である。
【0098】
実施例1
<環状ポリオレフィン系重合体P−1の合成、およびフィルム作成>
精製トルエン180質量部と2−アセチル−5−ノルボルネン100質量部を反応釜に投入した。次いでトルエン10質量部中に溶解したパラジウム(II)アセチルアセトネート(アルドリッチ社製)0.04質量部、トリシクロヘキシルフォスフィン(STREM CHEMICALS社製)0.04質量部、および塩化メチレン5質量部中に溶解したジメチルアルミニウムテトラキス(ペンタフルオロフェニル)ホウ酸塩(STREM CHEMICALS社製)0.040.20質量部を反応釜に投入した。90℃で攪拌しながら18時間反応させた。反応終了後、過剰のエタノール中に反応混合物を投入し、重合物沈殿を生成させた。沈殿を精製し得られた重合体(P−1)を真空乾燥で65℃24時間乾燥した。
【0099】
得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は78,000、重量平均分子量は163,000であった。重合体を塩化メチレン/メタノール(90/10重量比)の混合溶媒に溶かし、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて2%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムに皺が入らないように保持しながら、熱風を当てて乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、更に120℃から140℃で乾燥し巻き取った。できたフィルム(F−1)の厚さ、透湿度、吸水率、湿度寸法変化、湿度レターデーション変化、接着性・密着性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0100】
実施例2
<環状ポリオレフィン系重合体P−2の合成、およびフィルム作成>
実施例1において、単量体として2−メチル−2−アセチル−5−ノルボルネン110質量部に変更した以外は同様にして重合体(P−2)を得た。
得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は76,000、重量平均分子量は158,000であった。重合体を実施例1と同様にして延伸フィルム(F−2)を作成し、フィルムの厚さ、透湿度、光学測定、吸水率、接着性・密着性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0101】
実施例3
<環状ポリオレフィン系重合体P−3の合成、およびフィルム作成>
実施例1において、単量体として2−フェニル−2−アセチル−5−ノルボルネン156質量部に変更した以外は同様にして重合体(P−3)を得た。
得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は82,000、重量平均分子量は173,000であった。重合体を実施例1と同様にして延伸フィルム(F−3)を作成し、フィルムの厚さ、透湿度、光学測定、吸水率、接着性・密着性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0102】
実施例4
<環状ポリオレフィン系重合体P−4の合成、およびフィルム作成>
実施例1において、単量体として2−アセチル−5−ノルボルネン50質量部、およびノルボルネンカルボン酸メチルエステル56質量部に変更した以外は同様にして共重合体(P−4)を得た。
得られた重合体をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、ポリスチレン換算の数平均分子量は96,000、重量平均分子量は198,000であった。重合体を実施例1と同様にして延伸フィルム(F−4)を作成し、フィルムの厚さ、透湿度、光学測定、吸水率、接着性・密着性の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0103】
実施例5〜9
<環状ポリオレフィン系重合体P−5〜P−9の合成、およびフィルム作成>
実施例1〜4と同様にして重合体、および共重合体(P−5〜P−9)を合成し、さらにこれらから得られる延伸フィルム(F−5〜F−9)を得た。各種評価結果を表1に示す。
P−5:2−メチル−2−ベンゾイル−5−ノルボルネン重合体
P−6:2−アセチル−5−ノルボルネン/2−アセトキシメチル−5−ノルボルネンの1対1(モル比)共重合体
P−7:2−アセチル−5−ノルボルネン/5−ブチル−2−ノルボルネンの2対1(モル比)共重合体
P−8:2−アセチル−5−ノルボルネン/ノルボルネンの1対1(モル比)共重合体
P−9:6−アセチル−2−テトラシクロドデセン重合体
【0104】
比較例1、2
<環状ポリオレフィン系重合体PH−1〜PH−2の合成、およびフィルム作成>
実施例1と同様にして比較重合体、および比較共重合体(PH−1〜PH−2)を合成し、さらにこれらから得られる延伸フィルム(FH−1〜FH−2)を得た。各種評価結果を表1に示す。
PH−1:5−ノルボルネン−2−カルボン酸メチル(東京化成(株)製)の重合体
PH−2:5−ブチル−2−ノルボルネン重合体
【0105】
比較例3
市販のトリアセチルセルロースフィルム(フジタックTD80UF)(FH−3)の各種特性試験結果を表1に示す。
【0106】
【表1】

【0107】
表1の結果からわかるように、本発明の環状オレフィン系フィルムは、偏光板加工適性に優れた十分な透湿度を備えているにもかかわらず、レターデーション(Rth)の湿度依存性が小さく、従来のフィルム、特にトリアセチルセルロースフィルムに対して極めて優れていることがわかる。ここで、本発明のフィルム(F−8)の透湿度においても偏光板加工適性は十分であった。
【0108】
さらに、表1の結果からわかるように、本発明の環状オレフィン系フィルムは接着性・密着性に優れていることがわかる。疎水性の高い従来の環状オレフィン系フィルム(FH−2)は接着性・密着性が低い。
【0109】
また、表1の結果からわかるように、本発明の環状オレフィン系フィルムは、適度な透湿性、吸水性、湿度変化による寸法変化、Rth変化を有することがわかる。ここで、従来の環状オレフィン系フィルム(FH−1)は吸水性、湿度変化による寸法変化、Rth変化に関してはトリアセチルセルロースフィルムに対して優れているが透湿度が大きく、後述する偏光板、および液晶表示装置とした際の偏光板耐久性に問題があることがわかった。一方、本発明の環状オレフィン系フィルム(F−1、F−4)は、透湿度はトリアセチルセルロースフィルムに対してやや悪化傾向にあるが偏光板耐久性はトリアセチルセルロースフィルムとほぼ同等であり、実用上問題ないレベルであり、湿度変化による寸法変化、Rth変化に優れることから有用なフィルムであることがわかった。
【0110】
実施例10
<偏光板の作成、およびそれを用いた液晶表示装置の評価>
延伸したポリビニルアルコールフィルムにヨウ素を吸着させて偏光子を作製した。
実施例1で作製した環状ポリオレフィン系フィルム(F−1)にグロー放電処理(周波数3000Hz、4200Vの高周波数電圧を上下電極間に引加、20秒処理)を行った。い、その後ポリビニルアルコール系接着剤を用いて、偏光子の表裏に貼り付け、70℃で10分以上乾燥し、偏光板(Pol−1)を得た。
【0111】
次いで、偏光板(Pol−1)と同様にして本発明の環状ポリオレフィン系フィルム(F−2〜F−9)、および比較フィルム(FH−1、FH−2)を用いて本発明の偏光板(Pol−2〜Pol−9)、および比較偏光板(PolH−1)を作成した。なお、ここで比較フィルム(FH−2)はポリビニルアルコール偏光子中に残存する水分の乾燥がきわめて遅く、品位の高い偏光板を得ることはできなかった。
また、比較フィルム(FH−3)は公知の方法により比較偏光板(PolH−3)を作成した。
【0112】
<偏光板の耐久性>
上記の方法で作製した偏光板を、60℃、95%RHの湿熱条件で1000時間加熱し、加熱前と加熱後における偏光板の透過率と偏光度を測定し、その変化の状態をみたところ、本発明の偏光板(Pol−1〜Pol−9)は耐久性に優れることがわかった。一方、比較偏光板は変化が大きく耐久性に問題があることが判明した。
【0113】
VA型液晶セルを使用した26インチおよび40インチの液晶表示装置(シャープ(株)製)に液晶層を挟んで設置されている2対の偏光板のうち、観察者側の片面の偏光板を剥がし、粘着剤を用い、代わりに上記偏光板を貼り付けた。観察者側の偏光板の透過軸とバックライト側の偏光板の透過軸が直交するように配置して、液晶表示装置を作成した。得られた液晶表示装置が、黒表示状態で発生する光漏れと色ムラ、面内の均一性を観察した。本発明のフィルム(F−1〜F−9)は色調変化が無く、非常に優れたものであった。
また、本発明のフィルム(F−1〜F−9)を発明協会公開技報(公技番号2001−1745)の実施例47に従い、低反射フィルムを作成したところ、良好な光学性能を示した。
本発明のフィルム(F−1〜F−9)を特開平11−316378号の実施例1に従い、液晶層を塗布したところ、良好な光学補償フィルムが得られた。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される繰り返し単位を含むことを特徴とする環状オレフィン系重合体。
【化1】

一般式(1)中、Rは置換基を表し、Rは置換されていてもよいアルキル基、アルケニル基、アルキニル基またはアリール基を表し、Lは単結合または2価の連結基を表す。ただし、Lが2価の連結基の場合、LとC=Oの結合は炭素−炭素結合である。pは、0または1の整数、qは0〜3の整数、rは1〜4の整数を表す。RとR、RとLが結合する環骨格の炭素原子、または2つのRは互いに結合して5〜7員の環を形成していても良い。
【請求項2】
前記環状オレフィン系重合体が下記一般式(2)で表される繰り返し単位をさらに含むことを特徴とする請求項1記載の環状オレフィン系重合体。
【化2】

一般式(2)中、R、R、R、Rはそれぞれ独立に水素原子または置換基を表し、mは0または1の整数を表す。R、R、R、Rはそれぞれ互に結合し5〜7員の環を形成していても良い。
【請求項3】
請求項1または2に記載の環状オレフィン系重合体を用いてなる光学材料。
【請求項4】
前記光学材料が、薄膜、フィルムまたはシート形状である請求項3に記載の光学材料。
【請求項5】
偏光子と、その両側に配置された2枚の保護膜からなる偏光板において、前記保護膜のうちの少なくとも1枚が、請求項4に記載の光学材料であることを特徴とする偏光板。
【請求項6】
請求項5に記載の偏光板を少なくとも1枚使用したことを特徴とする液晶表示装置。

【公開番号】特開2007−131701(P2007−131701A)
【公開日】平成19年5月31日(2007.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−324682(P2005−324682)
【出願日】平成17年11月9日(2005.11.9)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】