説明

環状ジアミン誘導体を有効成分とする抗血小板剤

【課題】血小板凝集抑制作用を有する化合物を得ること。
【解決手段】一般式(1)


で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする血小板凝集に起因する疾患の予防・治療剤。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、優れた血小板凝集抑制作用を有する環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物に関する。
【背景技術】
【0002】
血小板は栓球とも呼ばれ、血液の重要構成成分粒子であり、通常は外傷の際に障害血管部位に集積し止血機能を発揮する。しかし、動脈硬化性疾患部位においては血管壁が血流、脂質沈着などにより障害を受け、血管破綻を引き起こしていることが多く、当該部位で活性化し、集積した血小板は、動静脈血管内での血栓の形成を誘発する。一方、抗血小板剤(血小板凝集抑制剤)はこの血栓形成の引き金となる血小板凝集亢進を抑制する働きを有する。従って、抗血小板剤は動静脈血管内での血栓形成によって引き起こされる疾患、例えば虚血により生ずる脳、心臓及び他の臓器を含む末梢組織の酸素や栄養供給などの低下から致命的な症状に至る疾患の予防、治療に有効と考えられ、特に動脈硬化、糖尿病や高血圧に伴って発症する心筋梗塞、脳血栓症、末梢動脈閉塞症等の予防、治療に重要であると考えられている(非特許文献1〜4)。
【0003】
かかる観点から、アスピリン、チクロピジン、クロピドグレル、シロスタゾール等の抗血小板剤は、血小板凝集を抑制することにより血液凝固進展の場を減少させ、病的な血管障害部位での血栓及び血餅形成能を抑制させる目的で使用されている。しかし、アスピリンは消化管粘膜保護物質の生成を抑制することにより、重篤な胃腸障害を引き起こすと共に血管拡張作用物質の生成も抑制することにより血管系の障害を誘発することが知られている(非特許文献5、6)。さらにチクロピジンやクロピドグレルは顆粒球減少症を誘発することが知られ(非特許文献7〜9)、シロスタゾールは重い頭痛を惹起することなどが知られている(非特許文献10)。また、これらの薬剤に感受性の低い患者の存在も知られていることから(非特許文献11)、新たな抗血小板剤の開発が望まれている。
【非特許文献1】松田保・延吉正清著、抗血栓薬療法、(株)南江堂、(1991)
【非特許文献2】松田保著、止血と血栓の療法、(株)新興医学出版社、(1996)
【非特許文献3】池田康夫ほか、血栓と循環 6:9 (1998)
【非特許文献4】A. D. Michelson, Platelets,Academic Press, (2002)
【非特許文献5】B. Cryer, N. Engl. J. Med. (2003) 352:3
【非特許文献6】G. J. Hankey et al., BMJ (2004) 328:477
【非特許文献7】S. Matetzky et al., Circulation (2004) 109:3171
【非特許文献8】M. Cattaneo, Arterioscler. Thromb. Vasc. Biol. (2004) 24:1980
【非特許文献9】後藤文男他、第17回チクロピジンシンポジウムハイライト (2003) 第一製薬報
【非特許文献10】K. Yamashita et al., Arzneim.-Forsch./Drug Res. (1990) 40(I) 587
【非特許文献11】R. R. Gollapudi et al., JAMA (2004) 292:3017
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、新たな血小板凝集抑制剤を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、斯かる実情に鑑み、鋭意研究した結果、抗アレルギー剤として有用であることが知られているWO99/02520号パンフレットに包含されるピペラジン構造又はホモピペラジン構造を有する化合物群が、優れた血小板凝集抑制作用を有することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、一般式(1)、
【0006】
【化1】

【0007】
〔式中、R1は水素原子、ヒドロキシ基、アラルキルオキシ基又はハロゲン原子を示し;
2は水素原子又はC1-6のアルキル基を示し;
Aは−C(R3)=CH−(ここでR3は水素原子又はヒドロキシ基を示す)、
−CH=N−、又は−N(R4)−(ここでR4は水素原子、C1-6のアルキル基又はアルコキシアルキル基を示す)、−O−、又は−S−を示し;
Bは単結合、−C(R5)(R6)−(CH2k−(ここでR5及びR6は同一又は異なって水素原子又はC1-6のアルキル基を示し、kは0〜2の数を示す)、
−S(O)qCH(R7)−(ここでqは0〜2の数を示し、R7は水素原子又はヒドロキシ基を示す)、又は−CH=CH−を示し;
Eは単結合又は−(CH2)3−を示し;
W及びYは同一又は異なって−CH2−又は−CO−を示し;
Zは酸素原子又はイオウ原子を示し;
lは0又は1、mは2又は3、nは0〜5の数を示す。但し、Bが単結合のときEは−(CH2)3−であり、Bが単結合以外の基のときEは単結合である。〕
で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする血小板凝集に起因する疾患の予防・治療剤を提供するものである。
【0008】
更に本発明は、前記一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物の血小板凝集に起因する疾患の予防・治療剤の製造のための使用を提供するものである。
【0009】
更に本発明は、前記一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物の有効量を投与することを特徴とする血小板凝集に起因する疾患の処置方法を提供するものである。
【発明の効果】
【0010】
本発明の環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物は、血小板凝集抑制作用に優れ、血小板凝集に起因する疾患、例えば、心筋梗塞、脳血栓症、末梢動脈閉塞症、閉塞性血栓血管炎等の虚血性疾患の予防並びに治療に用いることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
前記一般式(1)中、R1におけるハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アラルキルオキシ基としては、フェニルC1-6アルキルオキシ基等が挙げられる。R1としては水素原子が好ましい。
【0012】
また、前記一般式(1)中、R2、R4、R5及びR6におけるC1-6のアルキル基としては、炭素数1〜6の直鎖又は分岐鎖のアルキル基、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられるが、特にメチル基が好ましい。
【0013】
また、前記一般式(1)中、R4におけるアルコキシアルキル基としては、炭素数1〜6のアルコキシ基が置換した炭素数1〜6のアルキル基、例えばメトキシメチル基、メトキシエチル基、メトキシプロピル基、メトキシブチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、エトキシプロピル基、エトキシブチル基、プロポキシメチル基、プロポキシエチル基、プロポキシプロピル基、プロポキシブチル基等が挙げられる。
【0014】
また、前記一般式(1)中、R2、R3、R4、R5、R6及びR7は、特に水素原子又はメチル基が好ましい。
【0015】
また、前記一般式(1)中〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、Z、l、k及びqは前記と同じ定義〕、
【0016】
【化2】

【0017】
としては、好ましくは次の基が挙げられる。
【0018】
【化3】

【0019】
これらの基のうち、特に次の基が好ましく、さらに次の基においてl=0の場合が好ましい。
【0020】
【化4】

【0021】
また、W及びYはそれぞれ−CH2−が好ましい。nは1〜4が好ましい。
また、前記一般式(1)中〔式中、R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7、Z、l、k及びqは前記と同じ定義〕、
【0022】
【化5】

【0023】
としては、好ましくは次の基が挙げられる。
【0024】
【化6】

【0025】
これらの基のうち、特に次の基が好ましい。さらにこれらの基において、k=1のときR5及びR6がともに水素原子が好ましく、またZは酸素原子が好ましい。
【0026】
【化7】

【0027】
更に好ましい構造として、一般式(2)
【0028】
【化8】

【0029】
[式中、Gは−CH=CH−、又は−N(R8)−を示し(ここでR8は水素原子又はC1-6のアルキル基を示す);
キノリン環中の破線部分は二重結合があってもよいことを示し;
JはC1-6のアルキレン基を示し;
9は水素原子又はC1-6のアルキル基を示し;
mは2又は3の整数を示す。]
を挙げることができる。
【0030】
前記一般式(2)において、JはC2-5のアルキレン基が特に好ましい。J−O−はキノリン環の5位、6位、又は7位に置換することが好ましい。
また、R8及びR9は前記R4及びR2と同じ定義であり、R8、R9は水素原子又はメチル基が特に好ましい。さらに、R9はキノリン環の8位に置換することが好ましい。
【0031】
本発明の前記一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体の塩としては、薬学上許容される塩であれば特に制限されないが、例えば塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、硝酸塩、リン酸塩、炭酸塩のような鉱酸の酸付加塩、又は安息香酸塩、メタンスルホン酸塩、エタンスルホン酸塩、ベンゼンスルホン酸塩、p−トルエンスルホン酸塩、シュウ酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩のような有機酸の酸付加塩を挙げることができる。このうち、シュウ酸塩又はフマル酸塩が特に好ましい。
【0032】
また、本発明の前記一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体は、水和物に代表される溶媒和物の形態やケト−エノールの互変異性体の形態でも存在し得るが、かかる溶媒和物及び異性体も本発明に包含される。
【0033】
本発明の前記一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体は、例えばWO99/02520号パンフレット記載の方法によって製造することができる。
本発明の前記一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体は、さらに必要に応じて再結晶、カラムクロマトグラフィー等の通常の精製手段を用いて精製することができる。また必要に応じて、常法に従い前記した所望の塩にすることもできる。
【0034】
かくして得られる一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする本発明の抗血小板剤は、後記実施例に示すように、ラット多血小板血漿を用いコラーゲンにより誘発される凝集能を強力に抑制する作用を有する。従って、本発明の抗血小板剤は、血小板凝集に起因する疾患、例えば高血圧症、血管攣縮、動脈硬化、糖尿病等の単独あるいは併発に伴う血管障害に基づいて発症する虚血性疾患、特に心筋梗塞、脳血栓症、末梢動脈閉塞症又は閉塞性血栓血管炎の予防並びに治療に有効である。
【0035】
本発明の医薬は、一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物を含有するものであって、単独で用いてよいが、通常は薬学的に許容される担体、添加物等を配合して使用される。医薬の投与形態は、特に限定されず、治療目的に応じて適宜選択できる。例えば、経口剤、注射剤、坐剤、軟膏剤、吸入剤、点眼剤、点鼻剤、貼付剤等のいずれでもよい。これらの投与形態に適した医薬は、公知の製剤方法により製造できる。
【0036】
経口用固形製剤を調製する場合は、一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物に賦形剤、更に必要に応じて結合剤、崩壊剤、滑沢剤、着色剤、矯味剤、矯臭剤等を加えた後、常法により錠剤、被覆錠剤、顆粒剤、散剤、カプセル剤等を製造することができる。添加剤は、当該分野で一般的に使用されているものでよい。例えば、賦形剤としては、乳糖、白糖、塩化ナトリウム、ブドウ糖、デンプン、炭酸カルシウム、カオリン、微結晶セルロース、珪酸等が挙げられる。結合剤としては水、エタノール、プロパノール、単シロップ、ブドウ糖液、デンプン液、ゼラチン液、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルスターチ、メチルセルロース、エチルセルロース、シェラック、リン酸カルシウム、ポリビニルピロリドン等が挙げられる。崩壊剤としては乾燥デンプン、アルギン酸ナトリウム、カンテン末、炭酸水素ナトリウム、炭酸カルシウム、ラウリル硫酸ナトリウム、ステアリン酸モノグリセリド、乳糖等が挙げられる。滑沢剤としては精製タルク、ステアリン酸塩、ホウ砂、ポリエチレングリコール等が挙げられる。矯味剤としては白糖、橙皮、クエン酸、酒石酸等が挙げられる。
【0037】
経口用液体製剤を調製する場合は、一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物に矯味剤、緩衝剤、安定化剤、矯臭剤等を加えて常法により内服液剤、シロップ剤、エリキシル剤等を製造することができる。矯味剤としては前記に挙げられたものでよく、緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム等が、安定化剤としてはトラガント、アラビアゴム、ゼラチン等が挙げられる。
【0038】
注射剤を調製する場合は、一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物にpH調節剤、緩衝剤、安定化剤、等張化剤、局所麻酔剤等を添加し、常法により皮下、筋肉及び静脈内注射剤を製造することができる。pH調製剤及び緩衝剤としてはクエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、リン酸ナトリウム等が挙げられる。安定化剤としてはピロ亜硫酸ナトリウム、EDTA、チオグリコール酸、チオ乳酸等が挙げられる。局所麻酔剤としては塩酸プロカイン、塩酸リドカイン等が挙げられる。等張化剤としては、塩化ナトリウム、ブドウ糖等が挙げられる。
【0039】
坐薬を調製する場合は、一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物に公知の坐薬用担体、例えば、ポリエチレングリコール、ラノリン、カカオ脂、脂肪酸トリグリセライド等、更に必要に応じてツイーン(登録商標)等の界面活性剤等を加えた後、常法により製造することができる。
【0040】
軟膏剤を調製する場合は、一般式(1)で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物に通常使用される基剤、安定化剤、湿潤剤、保存剤等が必要に応じて配合され、常法により混合、製剤化される。基剤としては、流動パラフィン、白色ワセリン、サラシミツロウ、オクチルドデシルアルコール、パラフィン等が挙げられる。保存剤としては、p−ヒドロキシ安息香酸メチル、p−ヒドロキシ安息香酸エチル、p−ヒドロキシ安息香酸プロピル等が挙げられる。
【0041】
前記以外に、常法により吸入剤、点眼剤、点鼻剤とすることもできる。
【0042】
本発明の抗血小板剤の投与量は、症状により適宜選択されるが、1日当り1〜2000mg、好ましくは1〜500mg、更に好ましくは1〜200mg投与するのがよい。また、投与は、1日1回でもよいが、2回以上に分けて投与してもよい。
【0043】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0044】
<試験例>
下記の表1及び表2に示す化合物1〜12及びCilostazol(比較化合物)について、コラーゲンにより惹起されるラット血小板凝集に対する抑制効果を次法に従って測定した。
【0045】
(1)供試動物及び飼育環境
Wistar系雄性ラット(日本エスエルシー)8〜10週齢を供試した。実験期間を通じて、明暗サイクル(室内光による明るい期間:午前7時〜午後7時)、温度23±3℃、湿度55±15%に維持された飼育室で飼育し、固形飼料(CE2;オリエンタル酵母工業)及び水道水を自由摂取させた。
(2)薬物調製
各化合物及びシロスタゾールをそれぞれ10mMの濃度になるようにジメチルスルホキシド(DMSO)に溶解した。使用までの期間は冷凍庫(−30℃)内に遮光保存した。
【0046】
(3)試験方法
試験例1で供試したラットをペントバルビタールナトリウム(東京化成、50mg/kg腹腔内投与)で麻酔し、腹部大静脈より1/10量のクエン酸ナトリウム(和光純薬)水溶液を含むように採血した。次いで、25℃で1,600回転/分で7分間遠心分離操作(国産遠心機、H500R)を行い、血液全体の約30%にあたる多血小板血漿分画(PRP)を採取した。残りの血液はさらに3,000回転/分、5分間遠心分離操作を行って血漿(PPP)を得た。
血小板凝集測定はMCMヘマトレーサー313M(エムシーメディカル)を用いて行った。即ち、専用キュベットに0.1mLのPRPを加え、対照として0.2mLのPPPを加え、PRPに専用コラーゲン浮遊液(エムシーメディカル、MCMコラーゲン)を0.011mLずつ加えて血小板凝集を10分間測定した。
各化合物の血小板凝集抑制作用は、終濃度で0.02mg/mLとなるようにコラーゲン浮遊液を添加した場合に生ずる最大凝集(%)として求めた。化合物は、終濃度で0.1mMとなるように加え、50%以上の凝集を抑制した化合物については、終濃度で0.03mMとなるように加えた。
【0047】
(4)データ処理法
血小板凝集抑制作用結果は、0.001mLのDMSO(1/100量)添加時の最大凝凝集(%)(コントロール)に対する同用量の化合物DMSO溶液添加時(サンプル)の最大凝集(%)の比較(以下の式で求められる凝集抑制率(%))で示した。
凝集抑制率(%)=(1−(サンプル最大凝集/コントロール最大凝集))×100
0.1mMで50%以上の凝集抑制作用を示した化合物については、0.03mMでの凝集抑制作用を測定し、それぞれの抑制率を以下の式にあてはめて50%抑制に要する化合物濃度(IC50)を求めた。
IC50(M)=((0.0001×(50−I0.03)−(0.00003×(50−I0.1)))/(I0.1−I0.03))
但し、
0.03(%)=化合物0.03mM添加時の抑制率
0.1(%)=化合物0.1mM添加時の抑制率
【0048】
(5)試験結果
化合物1〜13及びCilostazolについてのコラーゲン誘発ラット血小板凝集抑制効果の試験結果を表1及び表2に示す。各化合物1〜13は0.1mMにおいていずれも血小板凝集抑制作用を示し、特に実施例11は59μMのIC50値を示し、強力な抗血小板剤であることが確認された。
【0049】
【表1】

【0050】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式(1)
【化1】

〔式中、R1は水素原子、ヒドロキシ基、アラルキルオキシ基又はハロゲン原子を示し;
2は水素原子又はC1-6のアルキル基を示し;
Aは−C(R3)=CH−(ここでR3は水素原子又はヒドロキシ基を示す)、
−CH=N−、−N(R4)−(ここでR4は水素原子、C1-6のアルキル基又はアルコキシアルキル基を示す)、−O−、又は−S−を示し;
Bは単結合、−C(R5)(R6)−(CH2k−(ここでR5及びR6は同一又は異なって水素原子又はC1-6のアルキル基を示し、kは0〜2の数を示す)、
−S(O)qCH(R7)−(ここでqは0〜2の数を示し、R7は水素原子又はヒドロキシ基を示す)、又は−CH=CH−を示し;
Eは単結合又は−(CH2)3−を示し;
W及びYは同一又は異なって−CH2−又は−CO−を示し;
Zは酸素原子又はイオウ原子を示し;
lは0又は1、mは2又は3、nは0〜5の数を示す。但し、Bが単結合のときEは−(CH2)3−であり、Bが単結合以外の基のときEは単結合である。〕
で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物を有効成分とする血小板凝集に起因する疾患の予防・治療剤。
【請求項2】
有効成分が一般式(2)
【化2】

[式中、Gは−CH=CH−、又は−N(R8)−を示し(ここでR8は水素原子又はC1-6のアルキル基を示す);
キノリン環中の破線部分は、二重結合があってもよいことを示し;
JはC1-6のアルキレン基を示し;
9は水素原子又はC1-6のアルキル基を示し;
mは2又は3の整数を示す。]
で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物である請求項1記載の予防・治療剤。
【請求項3】
疾患が虚血性疾患である請求項1又は2に記載の予防・治療剤。
【請求項4】
虚血性疾患が心筋梗塞、脳血栓症、末梢動脈閉塞症又は閉塞性血栓血管炎である請求項3記載の予防・治療剤。
【請求項5】
一般式(1)
【化3】

〔式中、R1は水素原子、ヒドロキシ基、アラルキルオキシ基又はハロゲン原子を示し;
2は水素原子又はC1-6のアルキル基を示し;
Aは−C(R3)=CH−(ここでR3は水素原子又はヒドロキシ基を示す)、
−CH=N−、−N(R4)−(ここでR4は水素原子、C1-6のアルキル基又はアルコキシアルキル基を示す)、−O−、又は−S−を示し;
Bは単結合、−C(R5)(R6)−(CH2k−(ここでR5及びR6は同一又は異なって水素原子又はC1-6のアルキル基を示し、kは0〜2の数を示す)、
−S(O)qCH(R7)−(ここでqは0〜2の数を示し、R7は水素原子又はヒドロキシ基を示す)、又は−CH=CH−を示し;
Eは単結合又は−(CH2)3−を示し;
W及びYは同一又は異なって−CH2−又は−CO−を示し;
Zは酸素原子又はイオウ原子を示し;
lは0又は1、mは2又は3、nは0〜5の数を示す。但し、Bが単結合のときEは−(CH2)3−であり、Bが単結合以外の基のときEは単結合である。〕
で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物の、血小板凝集に起因する疾患の予防・治療剤の製造のための使用。
【請求項6】
一般式(1)で表される化合物が、一般式(2)
【化4】

[式中、Gは−CH=CH−、又は−N(R8)−を示し(ここでR8は水素原子又はC1-6のアルキル基を示す);
キノリン環中の破線部分は二重結合があってもよいことを示し;
JはC1-6のアルキレン基を示し;
9は水素原子又はC1-6のアルキル基を示し;
mは2又は3の整数を示す。]
で表される環状ジアミン誘導体である請求項5記載の使用。
【請求項7】
一般式(1)
【化5】

〔式中、R1は水素原子、ヒドロキシ基、アラルキルオキシ基又はハロゲン原子を示し;
2は水素原子又はC1-6のアルキル基を示し;
Aは−C(R3)=CH−(ここでR3は水素原子又はヒドロキシ基を示す)、
−CH=N−、−N(R4)−(ここでR4は水素原子、C1-6のアルキル基又はアルコキシアルキル基を示す)、−O−、又は−S−を示し;
Bは単結合、−C(R5)(R6)−(CH2k−(ここでR5及びR6は同一又は異なって水素原子又はC1-6のアルキル基を示し、kは0〜2の数を示す)、
−S(O)qCH(R7)−(ここでqは0〜2の数を示し、R7は水素原子又はヒドロキシ基を示す)、又は−CH=CH−を示し;
Eは単結合又は−(CH2)3−を示し;
W及びYは同一又は異なって−CH2−又は−CO−を示し;
Zは酸素原子又はイオウ原子を示し;
lは0又は1、mは2又は3、nは0〜5の数を示す。但し、Bが単結合のときEは−(CH2)3−であり、Bが単結合以外の基のときEは単結合である。〕
で表される環状ジアミン誘導体、その塩又はそれらの溶媒和物の有効量を投与することを特徴とする、血小板凝集に起因する疾患の処置方法。
【請求項8】
一般式(1)で表される化合物が、一般式(2)
【化6】

[式中、Gは−CH=CH−、又は−N(R8)−を示し(ここでR8は水素原子又はC1-6のアルキル基を示す);
キノリン環中の破線部分は、二重結合があってもよいことを示し;
JはC1-6のアルキレン基を示し;
9は水素原子又はC1-6のアルキル基を示し;
mは2又は3の整数を示す。]
で表される環状ジアミン誘導体である、請求項7記載の処置方法。

【公開番号】特開2007−161677(P2007−161677A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−362637(P2005−362637)
【出願日】平成17年12月16日(2005.12.16)
【出願人】(000163006)興和株式会社 (618)
【Fターム(参考)】