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環状ペプチド
説明

環状ペプチド

【課題】G-CSF(顆粒球コロニー刺激因子)受容体に対する親和性および血清中での安定性が向上したG-CSF受容体に結合するペプチドの提供。
【解決手段】特定のアミノ酸配列からなり、N末端およびC末端のアミノ酸残基の官能基間に分子内結合を形成した環状ペプチド。ヘリックス・ループ・へリックスで構成される立体構造を有し、顆粒球コロニー刺激因子受容体に結合する環状ペプチド。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状ペプチドに関する。より詳細には本発明は、ヘリックス・ループ・へリックスで構成される立体構造を有し、顆粒球コロニー刺激因子受容体に結合する環状ペプチドに関する。
【背景技術】
【0002】
関節リウマチは、関節炎を主な臨床症状とする全身性の炎症性自己免疫疾患である。関節リウマチの発症にはIL-6やTNF-αなどが関与することが知られているが、顆粒球コロニー刺激因子(以下、「G-CSF」ともいう)も関与することが近年報告されている(非特許文献1)。
【0003】
G-CSFは、骨髄好中球前駆細胞の分化および増殖の制御に関与するサイトカインの一種である。また、G-CSFは医薬分野において、癌の化学療法の副作用により生じる顆粒球減少症や再生不良性貧血の治療薬として使用されている。
G-CSFと関節リウマチとの関連が明らかになった後、G-CSFのアンタゴニストが、関節リウマチを含む炎症性自己免疫疾患の治療に有用であることが報告されている(非特許文献2)。
【0004】
現在、関節リウマチの治療には化学療法剤に加えて、IL-6およびTNF-αの中和抗体のような抗体医薬も用いられているが、上記の文献の知見から、G-CSFの中和抗体も関節リウマチの治療に有効であると考えられている。
【0005】
しかしながら、抗体を医薬として用いる場合にはさまざまな問題が存在する。例えば、抗体は分子量が非常に大きく、複雑な高次構造を有するタンパク質であるので、化学合成は不可能である。また、抗体の製造には動物から得た細胞を用いることが必須であるので、得られた抗体を医薬品として使用可能とするためにはコストが高くなる。
【0006】
近年、サイトカインなどのシグナル伝達を調節し得る、抗体に代わる分子として、特定の立体構造を有するペプチドが注目されている。そのようなペプチドは、サイトカインなどの受容体に直接結合してアゴニストまたはアンタゴニストとして作用する。
本発明者も、ヘリックス・ループ・へリックス構造を有し、G-CSF受容体に結合できるペプチドをこれまでに見出している(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2005−151921号公報
【非特許文献】
【0008】
【非特許文献1】Lawlor. K.E.ら、Proc. Natl Acad. Sci. USA, vol. 101, p.11398-11403 (2004)
【非特許文献2】Cornish, A.L.ら、Nat. Rev. Rheumatol. vol.5, p.554-559 (2009)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、特許文献1に開示されるペプチドは、いずれもG-CSF受容体に結合できるが、該受容体に対する親和性および血清中での安定性について十分に満足できるものではなかった。
したがって、これらのペプチドを用いて生体内のG-CSFシグナル伝達を調節するためには、1回当たりの投与量を多くするか、または複数回の投与が必要となる。
【0010】
そこで本発明者は、G-CSF受容体に対する親和性および血清中での安定性が向上したG-CSF受容体に結合可能なペプチドを提供することを目的とした。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記のペプチドを環化させることによって、G-CSF受容体に対する高い親和性およびペプチド分子としては驚異的な安定性を有する環状ペプチドが得られることを予期せぬことに見出して、本発明を完成するに至った。
【0012】
すなわち、本発明によれば、
式:X1AAELAALEAELAALEGGGGGGGKLAMLKLKLAELKRYX2(配列番号1)
(式中、
X1は天然アミノ酸残基、またはα-アミノ基がアセチル化したグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、トリプトファンおよびスレオニンからなる群より1つ選択されるN-アセチル化アミノ酸残基であり、
ただし、
X1が天然アミノ酸残基である場合、X2も天然アミノ酸残基であり、
X1がN-アセチル化アミノ酸残基である場合、X2はシステイン残基である)
で表されるアミノ酸配列からなり、X1残基およびX2残基の官能基間に分子内結合を形成した環状ペプチドが提供される。
【発明の効果】
【0013】
本発明の環状ペプチドはG-CSF受容体に結合して、G-CSFのシグナル伝達を阻害できる。また、本発明の環状ペプチドは、非環状ペプチドよりも高いG-CSF受容体への親和性を有し、かつ血清中で長期間安定であるので、より低い濃度およびより少ない投与回数で生体内のG-CSFのシグナル伝達を阻害できる。
したがって、本発明の環状ペプチドは、関節リウマチなどを含むG-CSFが関与すると考えられている疾患を予防もしくは治療するための薬剤、またはG-CSFシグナル伝達系の研究用試薬として有用である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の環状ペプチドの立体構造の一例を示す模式図である。
【図2】本発明の環状ペプチドのマウス血清中での残存率を示すグラフである。
【図3】本発明の環状ペプチドをNFS60細胞に添加した場合の該細胞の増殖率を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本明細書においては、各種アミノ酸残基を常法に従って一文字表記で記載する。すなわち、Aはアラニン、Eはグルタミン酸、Lはロイシン、Gはグリシン、Kはリジン、Mはメチオニン、Rはアルギニン、Yはチロシン、Cはシステインを表す。
また、本明細書においては、ペプチドのアミノ酸配列を常法に従って、N末端からC末端方向へ左から右に記載する。
【0016】
本明細書において、「天然アミノ酸」とは、天然に存在するタンパク質中に通常見出される未修飾のL-アミノ酸を意味する。
また、本明細書において、「N末端」および「N末端側」とは便宜上それぞれ、各配列番号で表されるアミノ酸配列の最も左に示されるアミノ酸残基および左側に示されるアミノ酸配列を意味する。同様に「C末端」および「C末端側」とは、それぞれ各配列番号で表されるアミノ酸配列の最も右に示されるアミノ酸残基および右側に示されるアミノ酸配列を意味する。
【0017】
本発明の環状ペプチドは、配列番号1で表されるアミノ酸配列を有することにより、ヘリックス・ループ・ヘリックスで構成される立体構造を形成する(図1参照)。ここで、ヘリックス・ループ・ヘリックスで構成される立体構造とは、N末端側およびC末端側の2つのαヘリックス構造が、複数のアミノ酸からなるループで連結されている高次構造を意味する。
本発明の環状ペプチドにおいては、N末端側およびC末端側の各ヘリックスに存在するロイシン残基によってロイシンジッパーが形成されるので、ループにより連結された2つのヘリックスが平行に並んだ状態でペプチドの立体構造が安定化する。この立体構造の安定化には、N末端側のヘリックスに存在するグルタミン酸残基とC末端側のヘリックスに存在するリジン残基との間の静電的相互作用も関与している。
【0018】
本発明の環状ペプチドは、N末端およびC末端のアミノ酸残基の官能基間に分子内結合を形成することによって環状となっている。そのような分子内結合は共有結合であれば特に限定されず、例えばジスルフィド結合、チオエーテル結合、ペプチド結合、エーテル結合、エステル結合などが挙げられる。
好ましくは、本発明の環状ペプチドは、
N末端のアミノ酸残基が、α-アミノ基がアセチル化したグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、トリプトファンおよびスレオニンからなる群より1つ選択されるN-アセチル化アミノ酸残基であり、且つC末端のアミノ酸残基がシステイン残基である場合はチオエーテル結合により、
N末端およびC末端のアミノ酸残基がどちらもシステイン残基である場合はジスルフィド結合により、
N末端およびC末端のアミノ酸残基がどちらも天然アミノ酸残基である場合はペプチド結合により、環状となっている。
【0019】
したがって、本発明の環状ペプチドとしては、以下の環状ペプチドが好ましい:
アミノ酸配列が、
XAAELAALEAELAALEGGGGGGGKLAMLKLKLAELKRYC(配列番号2)
(XはN-アセチルグリシン残基を示す)
であり、N-アセチルグリシン残基のアセチル基とシステイン残基のチオール基との間にチオエーテル結合を形成した環状ペプチド、
アミノ酸配列が、
CAAELAALEAELAALEGGGGGGGKLAMLKLKLAELKRYC(配列番号3)
であり、システイン残基のチオール基間にジスルフィド結合を形成した環状ペプチド、および
アミノ酸配列が、
X3AAELAALEAELAALEGGGGGGGKLAMLKLKLAELKRYX4(配列番号4)
(X3およびX4は天然アミノ酸残基である)
であり、X3残基のアミノ基とX4残基のカルボキシル基との間にペプチド結合を形成した環状ペプチド。
【0020】
より好ましくは、本発明の環状ペプチドは、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなり、N-アセチルグリシン残基のアセチル基とシステイン残基のチオール基との間にチオエーテル結合を形成した環状ペプチドである。
【0021】
本発明の環状ペプチドは、当該技術においてそれ自体公知のペプチド合成方法により非環状ペプチドを得た後、これを環化させることにより製造できる。
非環状ペプチドの合成方法としては、例えばFmoc法のような固相合成法、フラグメント縮合法のような液相合成法などが挙げられるが、操作が簡便である点から固相合成法が好ましい。なお、固相合成法については、R.B. Merrifieldの文献(J. Am. Chem. Soc., vol.85, p.2149-2154 (1963))に記載の技術を用いることができる。
【0022】
Fmoc法による固相合成法は、次のようにして行われる。まず、合成しようとするペプチドのC末端に該当するアミノ酸の9-フルオレニルメチルオキシカルボニル(Fmoc)誘導体(第1のFmoc-アミノ酸)を、Rinkアミドレジンのアミノ基に連結する。次いで、Fmoc基を除去した後、該レジン上のアミノ酸の遊離したアミノ基に第2のFmoc-アミノ酸を連結する。この操作を繰り返して、所望のアミノ酸配列を有するペプチドを合成した後、全保護基を除くとともに該ペプチドをレジンから切り離す。このペプチド合成法は、市販の自動合成機を用いて行うこともできる。
【0023】
非環状ペプチドは、上記の化学合成の他に遺伝子工学的技術を用いることによっても得ることができる。例えば、上記のアミノ酸配列をコードする核酸を適切な発現ベクターに組み込み、得られた発現ベクターにより適切な宿主細胞、例えば哺乳動物細胞、昆虫細胞、大腸菌を形質転換する。そして、該宿主細胞をペプチドの発現に適する条件下で培養することにより、培養物からペプチドを得ることができる。
【0024】
得られた非環状ペプチドを環化させる方法は、当該技術において公知である。そのような方法としては、例えばN末端側およびC末端側のシステイン残基のチオール基どうしを反応させてジスルフィド結合を形成させる方法、N末端のアミノ基とC末端のカルボキシル基とを反応させてペプチド結合を形成させる方法などが挙げられる。
また、ペプチドのN末端が、例えばN-クロロアセチルグリシンのようなハロゲン化アセチル基でα-アミノ基が修飾されたアミノ酸残基である場合は、該残基のハロゲン化アセチル基とC末端側のシステイン残基のチオール基とを反応させてチオエーテル結合を形成させることにより環化させる方法も挙げられる。
【0025】
ペプチド結合によりペプチドを環化させる方法としては、例えばジシクロヘキシルカルボジイミドなどを用いる脱水縮合反応、対称酸無水物法、活性エステル法などが挙げられる。ジスルフィド結合によりペプチドを環化させる方法としては、例えば空気酸化法、フェリシアン化カリウムを用いる酸化法が挙げられる。
また、N末端のハロゲン化アセチル基でα-アミノ基が修飾されたアミノ酸残基とシステイン残基との間のチオエーテル結合形成によるペプチドの環化は、例えば該ペプチドを塩基性の緩衝液中で反応させることにより行うことができる。
【0026】
上記の環化反応では、反応条件によっては環状ペプチド以外に、複数の非環状ペプチドが分子間結合により連結したオリゴマーが形成される場合がある。したがって、環状ペプチドのみを得るために、環化反応後のペプチドを逆相高速液体クロマトグラフィーなどにより精製することが好ましい。
【0027】
上記のとおり、本発明の環状ペプチドはG-CSF受容体に結合してG-CSFのシグナル伝達を阻害できるので、本発明の環状ペプチドは、関節リウマチを含むG-CSFが関与すると考えられている疾患の予防もしくは治療のための薬剤、またはG-CSFシグナル伝達系の研究用試薬として利用可能である。
本発明の環状ペプチドをそのような薬剤または試薬として用いる場合は、例えば本発明の環状ペプチドを水、生理食塩水または適切な緩衝液に溶解して適切な濃度の溶液とすることにより、ヒトを含む哺乳動物に投与または生細胞を培養している培地に添加すればよい。
【0028】
また、本発明の環状ペプチドはG-CSF受容体に対して高い親和性を有するので、該受容体を発現している細胞を検出するための試薬としても利用可能である。そのような検出用試薬として本発明の環状ペプチドを用いる場合、該ペプチドを、酵素、色素、蛍光物質、放射性同位元素などの当該技術において公知の標識物質で標識してもよい。
G-CSF受容体発現細胞の検出は、標識された本発明の環状ペプチドと該細胞が含まれる疑いのある試料とを混合した後、該ペプチドと結合した細胞を標識に由来するシグナルに基づいて検出することにより行うことができる。
【0029】
以下に、本発明を実施例によって詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【実施例】
【0030】
I 本発明の環状ペプチドの製造
(1)非環状ペプチドの合成
配列番号5〜7で表される各アミノ酸配列からなる非環状ペプチドを、ペプチド合成機(Model 433A Peptide Synthesizer;Applied Biosystems社製)を用いて、FastMoc法により0.1 mmolスケールで合成した。なお、操作の詳細な手順については、該合成機に付属のマニュアルの記載に従った。
【0031】
該合成機に、Fmocアミドレジン(Applied Biosystems社)240 mgおよび各種のFmoc-アミノ酸(nova biochem社)0.5 mmolをセットして、ペプチドを合成させた。合成後、レジンをジエチルエーテルで洗浄した。レジンをカラムろ過により回収した後、真空乾燥した。乾燥したレジンをチューブに移し、クリベージ溶液(93%トリフルオロ酢酸(TFA)と7% 1, 2-エタンジチオール:アニソール:エチレンジアミン四酢酸=1:3:3(v/v)との混合液)10 mlを加えて攪拌して、3〜4時間反応させた。反応終了後、チューブ内の溶液を合成用カラムでろ過することによりレジンを除き、フロースルー(ペプチド溶液)を別のチューブに移した。チューブにジエチルエーテルを50 mlになるまで加えた後、氷上に10分間置いてペプチドを析出させた。析出したペプチドを、4200 rpm、4℃で12分間遠心分離することにより沈殿させた。上清を除いた後、ペプチドを洗浄するために冷ジエチルエーテルを加えて撹拌し、同じ条件の遠心分離によりペプチドを再び沈殿させた。この洗浄操作を3回繰り返した後、ペプチドを乾燥させた。
【0032】
乾燥させたペプチドを精製水に溶解し、得られたペプチド溶液を逆相高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(L-2310 Pump;HITACHI製)により精製して、配列番号5〜7で表される各アミノ酸配列からなる非環状ペプチドを得た。収量はそれぞれ16.8 mg、34.9 mgおよび23.1 mgであった。
なお、HPLCに用いたバッファーおよび条件は、以下のとおりである。
カラム:YMC-Pack ODS-AM AM323 250×10.0 mmI.D.(YMC社)
溶出剤:A)0.1%TFA、B)アセトニトリル(ナカライテスク)
20-50%B(0-30分、リニア)
流速:3.0 ml/分
検出:UV 280 nm
【0033】
(2)ペプチドの環化(分子内結合の形成)
上記の(1)で得られた配列番号5で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの水溶液を、35 mlの30 mM Tris-HCl(pH 8.5)にゆっくりと滴下して、一晩反応させることによりチオエーテル結合を形成させた。反応終了後、上記の(1)と同様にHPLCによりペプチドを精製して、配列番号2で表されるアミノ酸配列からなる本発明の環状ペプチドを得た。収量は5.9 mgであった。
また、配列番号6で表されるアミノ酸配列からなるペプチドの水溶液についても同様に、70 mlの30 mM Tris-HCl(pH 8.5)にゆっくりと滴下して、一晩反応させることによりジスルフィド結合を形成させた。反応終了後、上記の(1)と同様にHPLCによりペプチドを精製して、配列番号3で表されるアミノ酸配列からなる本発明の環状ペプチドを得た。収量は4.4 mgであった。
なお、上記のチオエーテル結合およびジスルフィド結合の形成反応の終了は、5, 5'-ジチオビス(2-ニトロ安息香酸)(DTNB)を用いるチオール基の定量法により確認した。
【0034】
II 本発明の環状ペプチドのG-CSF受容体に対する親和性の検討
表面プラズモン共鳴(SPR)法を利用するBIACORE(登録商標)T100(BIACORE社製)により、配列番号2および3で表される各アミノ酸配列からなる本発明の環状ペプチド(以下、それぞれ「P8-2KA-S(TE)」および「P8-2KA-S(DS)」ともいう)のG-CSF受容体に対する親和性を調べた。また、比較例として、配列番号7で表されるアミノ酸配列からなる非環状ペプチド(以下、「P8-2KA」ともいう)についても同様に親和性を調べた。なお、P8-2KAは特許文献1に開示されるペプチドの一つと同じものである。
【0035】
アミンカップリング法により、センサーチップ(Series S Sensor Chip CM5:BIACORE社)にG-CSF受容体(20μg/ml)を固定化した。なお、用いたG-CSF受容体は、Aritomi, M.らによる文献(Acta Cryst. (2000). D56, 751-753)の記載に従って調製した。
センサーチップのフローセル2に、N-エチルN'-(3-ジメチルアミノプロピル)-カルボジイミド塩酸(EDC)とN-ヒドロキシサクシンイミド(NHS)との等量混合液をインジェクトし、流速10μl/分で7分間反応させてカルボキシル基を活性化させた。次いで、G-CSF受容体溶液をインジェクトして、流速10μl/分で7分間反応させて固定化した。そして、1Mエタノールアミン-HCl(pH8.5)をインジェクトし、流速10μl/分で7分間反応させて、未反応のカルボキシル基をキャッピングした。リファレンスセルとして用いるフローセル1には、EDC/NHSによる活性化およびエタノールアミン-HClによるキャッピングを行った。なお、反応は全て25℃で行い、ランニングバッファーとしてHBS-EP buffer(10 mM HEPES(pH 7.4)、150 mM NaCl、3mM EDTA、0.005%界面活性剤P20;BIACORE社)を用いた。
HBS-EP bufferを用いて種々の濃度の各ペプチド溶液を調製した。これらをインジェクトし、流速30μl/分で2分間反応させてSPRを測定した。得られた結果をBIACORE(登録商標)T100のEvaluationソフトウェアにより解析した。解析の結果を表1に示す。
【0036】
【表1】

【0037】
表1より、環状ペプチドであるP8-2KA-S(TE)およびP8-2KA-S(DS)のG-CSF受容体に対する親和性は、非環状ペプチドであるP8-2KAよりも非常に高いことがわかる。
【0038】
III 本発明の環状ペプチドの血清中の安定性の検討
本発明の環状ペプチドとマウス血清とを混合して、本発明の環状ペプチドの血清中における安定性を検討した。
(1)血清の調製
5匹のマウスから血液を採取し、これを37℃で1時間インキュベートした。次いで、血液を4℃で一晩静置した。これを13000 rpm、4℃で、10分間遠心分離して血球成分を分離し、血清を500μl得た。
(2)安定性試験
P8-2KA-S(TE)、P8-2KA-S(DS)およびP8-2KAの各溶液100μlと血清100μlとを混合して、37℃でインキュベートを開始した。測定時間ごとに、各混合液から20μlを取り出してチューブに移した。これらに抽出液(0.1% TFA:アセトニトリル=1:1)を100μl加えて、13000 rpmで10分間遠心分離し、上清を別のチューブに移した。これらに抽出液を100μl加えて、アセトンおよびドライアイスにより凍結して、全てのサンプル採取が終わるまで−4℃で保管した。全サンプル採取後、実施例1と同様にしてHPLCによりペプチドを定量した。時間0でのピーク積分値を100%として、各時間のペプチド量の変化をグラフにプロットした。結果を図1に示す。また、各ペプチドの血清中での半減期を表2に示す。
【0039】
【表2】

【0040】
図1および表2より、環状ペプチドであるP8-2KA-S(TE)およびP8-2KA-S(DS)の血清中での安定性は非環状ペプチドであるP8-2KAよりも非常に高いことがわかる。特に半減期についてはP8-2KA-S(TE)およびP8-2KA-S(DS)はいずれも10日間以上であり、ペプチドとしては驚異的な値を示した。
【0041】
IV 本発明の環状ペプチドのG-CSF受容体に対するアンタゴニスト活性の検討
G-CSF受容体を細胞表面に発現し、G-CSF濃度に依存して増殖するNFS60細胞を用いて、本発明の環状ペプチドのアンタゴニスト活性を検討した。
【0042】
NFS60細胞(東レ株式会社)をアッセイ用培地(10%FCS、400 pM G-CSF、1%ペニシリン、1%L-グルタミンおよび0.1%2-メルカプトエタノールを含むRPMI培地)に、4×105 cells / mlの濃度となるよう懸濁した。この細胞懸濁液を96ウェルプレートの各ウェルに50μlずつ入れた後、種々の濃度の各ペプチド溶液を50μlずつ添加した。そして、細胞を37℃、5%CO2下で2日間培養した。
なお、ペプチドの終濃度は、P8-2KA-S(TE)およびP8-2KA-S(DS)が0.625 nM〜20μM、P8-2KAが0.03μM〜250μMであった。また、各ウェルの細胞濃度およびG-CSF濃度は、それぞれ2×105 cells / mlおよび200 pMであった。
培養後、MTT(M2128;SIGMA社)のPBS溶液(5mg/ml)を各ウェルに20μlずつ添加して、37℃、5%CO2雰囲気下で4時間インキュベーションした。その後、10%SDS/0.01 N HCl溶液を各ウェルに100μlずつ添加して、さらに一晩インキュベーションした。そして、マイクロプレートリーダー(Model 680;BIO-RAD社製)で570 nmにおける吸光度を測定した。
測定結果から、以下の計算式を用いて細胞の増殖率(OD570)を算出した。
(細胞の増殖率)=(検体の吸光度)−(培地のみの吸光度)
結果を図2示す。また、各ペプチドの増殖阻害活性をIC50(nM)として表3に示す。
【0043】
【表3】

【0044】
図2および表3より、環状ペプチドであるP8-2KA-S(TE)およびP8-2KA-S(DS)のG-CSF受容体に対するアンタゴニスト活性は、非環状ペプチドであるP8-2KAよりも非常に高いことがわかる。
なお、P8-2KA-S(TE)、P8-2KA-S(DS)およびP8-2KA自体に毒性がないことは、ミエローマ細胞を用いた同様の増殖アッセイにより確認している。すなわち、これらのペプチドはいずれの濃度においても、ミエローマ細胞(P3X63-Ag8.653:大日本製薬05-565)の生存および増殖には影響を及ぼさなかった。
したがって、上記の増殖阻害活性は、各ペプチドが有するG-CSF受容体に対するアンタゴニスト活性によるものであることが示される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式:X1AAELAALEAELAALEGGGGGGGKLAMLKLKLAELKRYX2(配列番号1)
(式中、
X1は天然アミノ酸残基、またはα-アミノ基がアセチル化したグリシン、アラニン、バリン、ロイシン、イソロイシン、フェニルアラニン、チロシン、セリン、トリプトファンおよびスレオニンからなる群より1つ選択されるN-アセチル化アミノ酸残基であり、
ただし、
X1が天然アミノ酸残基である場合、X2も天然アミノ酸残基であり、
X1がN-アセチル化アミノ酸残基である場合、X2はシステイン残基である)
で表されるアミノ酸配列からなり、X1残基およびX2残基の官能基間に分子内結合を形成した環状ペプチド。
【請求項2】
前記アミノ酸配列が、
XAAELAALEAELAALEGGGGGGGKLAMLKLKLAELKRYC(配列番号2)
(XはN-アセチルグリシン残基である)
であり、
前記分子内結合が、N-アセチルグリシン残基のアセチル基とシステイン残基のチオール基との間のチオエーテル結合である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項3】
前記アミノ酸配列が、
CAAELAALEAELAALEGGGGGGGKLAMLKLKLAELKRYC(配列番号3)
であり、
前記分子内結合が、システイン残基のチオール基間のジスルフィド結合である、請求項1に記載の環状ペプチド。
【請求項4】
前記アミノ酸配列が、
X3AAELAALEAELAALEGGGGGGGKLAMLKLKLAELKRYX4(配列番号4)
(X3およびX4は天然アミノ酸残基である)
であり、
前記分子内結合が、X3残基のアミノ基とX4残基のカルボキシル基との間のペプチド結合である、請求項1に記載の環状ペプチド。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−231085(P2011−231085A)
【公開日】平成23年11月17日(2011.11.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−105581(P2010−105581)
【出願日】平成22年4月30日(2010.4.30)
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第1項適用申請有り 2009年11月1日 社団法人日本薬学会発行の「YAKUGAKU ZASSHI 第129巻 第11号」において発表
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成21年度、文部科学省、「関西広域バイオメディカルクラスター構想(大阪北部 (彩都)地域)」に伴う研究委託業務、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(505127721)公立大学法人大阪府立大学 (688)
【Fターム(参考)】