説明

環状部材及びその製造方法、環状部材張架装置、並びに、画像形成装置

【課題】複数の層を積層した場合に比べ、層内での電荷蓄積を長期にわたり抑制した環状部材及びその製造方法、並びに、それを備えた環状部材張架装置及び画像形成装置を提供すること。
【解決手段】少なくとも、樹脂又はゴム材料とポリアニリンとを含んで構成され、外面の表面抵抗率が内面の表面抵抗率よりも大きい基材層を有することを特徴とする環状部材及びその製造方法である。樹脂の代わりに、ゴム材料を適用してもよい。そして、環状部材を備えた環状部材張架装置及び画像形成装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、環状部材及びその製造方法、環状部材張架装置、並びに、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真方式を用いた画像形成装置は、無機又は有機材料を用いた光導電性感光体である像保持体上に電荷を形成し、画像信号を変調したレーザー光等で静電濳像を形成した後、帯電したトナーで前記静電濳像を現像して可視化したトナー像とする。そして、上記トナー像を、中間転写体を介して、あるいは直接記録紙等の転写材に静電的に転写することにより所要の再生画像を得る。特に、上記像保持体に形成したトナー像を中間転写体に一次転写し、更に中間転写体上のトナー像を記録紙に二次転写する方式を採用した画像形成装置が知られている(特許文献1)。
【0003】
近年、画像欠陥を低減する目的で、中間転写ベルト外面と内面の表面抵抗率差を設けることが提案されている(特許文献1、2)。これら特許文献1、2の提案では、抵抗率の異なる複数の層を積層することで実現している。
【特許文献1】特開平08−030109号公報
【特許文献2】特開平2004−046277号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の課題は、複数の層を積層した場合に比べ、層内での電荷蓄積を長期にわたり抑制した環状部材を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、本発明者らは、下記本発明により当該課題を解決できることを見出した。すなわち、
【0006】
請求項1に係る発明は、
少なくとも、樹脂又はゴム材料とポリアニリンとを含んで構成され、外面の表面抵抗率が内面の表面抵抗率よりも大きい基材層を有することを特徴とする環状部材。
【0007】
請求項2に係る発明は、
前記基材層の外面と内面との表面抵抗率差(絶対値)が、0.5logΩ/□以上5logΩ/□以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の環状部材。
【0008】
請求項3に係る発明は、
前記基材層に、さらに、ポリアニリンとは異なる導電剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の環状部材。
【0009】
請求項4に係る発明は、
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の環状部材と、
前記環状部材を内周面側から回転可能に張架する張架部材と、
を備えることを特徴とする環状部材張架装置。
【0010】
請求項5に係る発明は、
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、
前記中間転写体から前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記中間転写体が、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の環状部材であることを特徴とする画像形成装置。
【0011】
請求項6に記載の発明は、
少なくとも、樹脂若しくは当該樹脂を形成するためのモノマーとポリアニリンと前記ポリアニリンを導電化するドーパントとを含む樹脂組成物、又は、少なくとも、ゴム材料若しくは当該ゴム材料を形成するためのモノマーとポリアニリンと前記ポリアニリンを導電化するドーパントとを含む樹脂組成物を準備する工程と、
円筒状金型の内面又は外面に前記樹脂組成物を塗布する工程と、
前記円筒状金型の内面又は外面に塗布された前記樹脂組成物を加熱して基材層を形成する工程と、
前記樹脂組成物を塗布する工程以降に、前記樹脂組成物又は基材層の外面にオゾン処理を施す工程と、
を有することを特徴とする環状部材の製造方法。
【0012】
請求項7に係る発明は、
少なくとも、樹脂若しくは当該樹脂を形成するためのモノマーとポリアニリンと光酸発剤と導電剤とを含む樹脂組成物、又は、少なくとも、ゴム材料若しくは当該ゴム材料を形成するためのモノマーとポリアニリンと光酸発剤と導電剤とを含む樹脂組成物を準備する工程と、
円筒状金型の内面又は外面に前記樹脂組成物を塗布する工程と、
前記円筒状金型の内面又は外面に塗布された前記樹脂組成物を加熱して基材層を形成する工程と、
前記樹脂組成物を塗布する工程以降に、前記樹脂組成物又は基材層の内面に光照射を施す工程と、
を有することを特徴とする環状部材の製造方法。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に係る発明によれば、複数の層を積層した場合に比べ、層内での電荷蓄積を長期にわたり抑制できる。
請求項2に係る発明によれば、複数の層を積層した場合に比べ、層内での電荷蓄積をより効果的に、抑制できる。
請求項3に係る発明によれば、複数の層を積層した場合に比べ、層内での電荷蓄積をより効果的に、抑制できる。
【0014】
請求項4に係る発明によれば、複数の層を積層した環状部材に比べ、層内での電荷蓄積を抑制できた事で、長期にわたり、うろこ状の画像ムラを抑制した画像が得られる。
請求項5に係る発明によれば、複数の層を積層した環状部材に比べ、層内での電荷蓄積を抑制できた事で、長期にわたり、うろこ状の画像ムラを抑制した画像が得られる。
【0015】
請求項6に係る発明によれば、本発明を採用しない場合に比較して、ポリアニリンの導電性を失活させて、当該ポリアニリンを含む系の単層構造での外面と内面との表面抵抗率差を持った環状部材が得られる。
請求項7に係る発明によれば、本発明を採用しない場合に比較して、ポリアニリンの導電化を利用し、当該ポリアニリンを含む系の単層構造での外面と内面との表面抵抗率差を持った環状部材が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施形態に係る環状部材(以下、中間転写ベルトと称する)について詳細に説明する。
【0017】
本実施形態に係る中間転写ベルトは、ポリアニリンを含んで構成される基材層であって、樹脂又はゴム材料と、のいずれかを主成分として構成される基材層を有する。そして、当該基材層は、外面の表面抵抗率が内面の表面抵抗率よりも大きく構成されている。当該外面とは、トナー像が転写される面、当該内面とは当該環状部材が張架部材によって張架される面である。本実施形態に係る中間転写ベルトは、当該基材層単独で構成されてもよいし、当該基材層上に、離型層などの機能層を設けた積層構造でもよい。
【0018】
本実施形態に係る中間転写ベルトは、ポリアニリンを含む系での単層構造、即ち基材層のみで、外面の表面抵抗率が内面の表面抵抗率よりも大きくなっている。つまり、当該基材層は、層内でその厚み方向の少なくとも一部で、抵抗率が漸次変化する傾斜構造が付与されている。一方、積層構造で、外面の表面抵抗率が内面の表面抵抗率よりも大きくなる構成とすると、互いの層界面で電荷の蓄積が生じ、抵抗変化が起きる。
【0019】
ここで、本実施形態に係る中間転写ベルトにおいて、上記ポリアニリンを含む系の単層構造で外面と内面との表面抵抗率差を持たせる基材層の構成として具体的には、以下の構成のものが好適に挙げられる。
【0020】
1)少なくとも、ポリアニリン、及びポリアニリンを導電化するためのドーパント(ポリアニリンを導電化後は一部又は全部が変性又は失活)を含んで構成される基材層であって、樹脂又はゴム材料のいずれかを主成分として構成される基材層。そして、当該基材層の外面(外周面)に対しオゾン処理し、導電化されたポリアニリンの導電性を失活させた構成。
2)少なくとも、ポリアニリン、光酸発生剤(ポリアニリンが導電化後は一部又は全部が変性又は失活)、及び導電剤を含んで構成される基材層であって、樹脂又はゴム材料又は当該ゴム材料のいずれかを主成分として構成される基材層。そして、当該基材層の内面(内周面)に対し光照射し、光酸発生剤から酸を発生させ、当該酸によりポリアニリンの導電性を発現させた構成。
【0021】
ここで、基材層は、外面の表面抵抗率が内面の表面抵抗率よりも大きく構成されているが、その外面(外周面)と内面(内周面)との表面抵抗率差(絶対値)は、0.5logΩ/□以上5logΩ/□以下の範囲が望ましく、より望ましくは、1logΩ/□以上3logΩ/□以下の範囲である。
【0022】
また、基材層の外面の表面抵抗率は、10Ω/□以上14Ω/□以下の範囲が望ましく、より望ましくは、10.5Ω/□以上13.5Ω/□以下の範囲、さらに望ましくは、11Ω/□以上13Ω/□以下の範囲である。一方、基材層の内面の表面抵抗率は、8Ω/□以上13.5Ω/□以下の範囲が望ましく、より望ましくは、9Ω/□以上13Ω/□以下の範囲、さらに望ましくは、10Ω/□以上12Ω/□以下の範囲である。
【0023】
ここで、表面抵抗率の測定方法は、次の通り行う。円形電極(例えば、三菱化学(株)製ハイレスターIPの「HRプローブ」)を用い、JIS K6991に従って測定する。表面抵抗率の測定方法を、図を用いて説明する。図2は、円形電極の一例を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。図2に示す円形電極は、第一電圧印加電極Aと板状絶縁体Bとを備える。第一電圧印加電極Aは、円柱状電極部Cと、該円柱状電極部Cの外径よりも大きい内径を有し、且つ円柱状電極部Cを一定の間隔で囲む円筒状のリング状電極部Dとを備える。第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと板状絶縁体Bとの間に中間転写ベルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cとリング状電極部Dとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、中間転写ベルトTの転写面の表面抵抗率ρs(Ω/□)を算出することができる。ここで、下記式中、d(mm)は円柱状電極部Cの外径を示し、D(mm)はリング状電極部Dの内径を示す。
式:ρs=π×(D+d)/(D−d)×(V/I)
なお、本実施形態では、円形電極(三菱化学(株)製ハイレスターIPのURプローブ:円柱状電極Cの外径Φ16mm、リング状電極部Dの内径Φ30mm、外径Φ40mm)を用い、22℃/55%RH環境下、電圧500V、10秒印加後の電流値を求め算出する。
【0024】
以下、各成分について説明する。
[ポリアニリン]
ポリアニリンは、酸(ドーパント)により導電性を発現するものであり、電子を受け取る働きのある物質を添加することで、分子内の電子が動ける状態となり導電性が発現する状態になるアニリンをいう。
なお、ポリアニリンの「導電性」とは、体積抵抗率が10以上Ω・cm1014以下Ω・cmの範囲内にあることをいう。
【0025】
(1)ポリアニリン
ポリアニリンは、酸により導電性を発現するため、導電材料として用いられる。
ポリアニリンは、主鎖骨格はp位で結合した構造となっている。本発明で用いられるポリアニリンは、キノンジイミン構造単位及び/又はフェニレンジアミン構造単位を主たる繰り返し単位として有することが望ましい。
【0026】
ポリアニリンは、酸によるドープ状態、及び脱ドープ状態により著しく電気化学活性が変化することが知られている。
なお、本実施の形態では、導電状態にあるポリアニリンを、酸によりドープされた状態であることから「ドープされたポリアニリン」又は「ドープ状態のポリアニリン」と称する。また、非導電状態にあるポリアニリンを、酸によるドープがなされていない状態であることから「脱ドープ状態のポリアニリン」と称して説明する。
【0027】
以下に示すように、ポリアニリンの主鎖中の構造単位は、酸化還元により、A:ロイコエメラルジン、B:エメラルジン、C:ペルニグラニリン、D:エメラルジン塩の4構造を取るとされている。
【0028】
【化1】



【0029】
この中でも、上記Bのエメラルジン構造を持つポリアニリンが、プロトン化、すなわち導電状態とすること(ドーピング)により、一番高い電気伝導度を持つ導電状態の(ドープ状態の)ポリアニリンとなり、空気の中で安定なので一番有用である。
すなわち、上記「非導電状態」、すなわち「脱ドープ状態のポリアニリン」とは、「B:エメラルジン」の状態に相当する。また、「ドープ状態のポリアニリン」とは、「Dのエメラルジン塩」の状態に相当する。このDの状態では、高い電気伝導度を有する。
なお、ポリアニリンは通常においては酸化されやすいため、導電性向上、安定化のためにはペルニグラニリン構造がより少ないことが望ましく、より還元状態からドーピング処理することが望ましい。
【0030】
ポリアニリンの合成・構造については、特開平3−28229号公報に詳しく述べられている。本発明におけるポリアニリンは、アニリン又はアニリン誘導体から酸化重合法にて容易に製造される。
具体的には、プロトン酸の存在下に溶剤中にてアニリンに温度を5℃以下、望ましくは0℃以下の温度を保持しつつ、酸化剤を作用させて酸化重合を行い、後述するプロトン酸を用いてドープされたアニリンの酸化重合体(以下、ドープされたポリアニリンという。)を生成させる。次いで、このドープされたポリアニリンを塩基性物質によって脱ドープすることによって得られる。
また、市販品としては、パニポール社製「Panipol PA」が挙げられる。
【0031】
なお、上述のようにポリアニリンは通常においては酸化されやすいため、導電性向上、安定化のためにはペルニグラニリン構造がより少ないことが望ましく、より還元状態からドーピング処理することで効率よくドーピングされる。
本発明では、フェニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物や、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等の還元剤を用いて還元処理し、溶媒中に溶解し、ドーピング処理を行うことで、脱ドープ状態のポリアニリンを得る。
【0032】
上記還元剤としては、フニルヒドラジン、ヒドラジン、ヒドラジン水和物、硫酸ヒドラジン、塩酸ヒドラジン等のヒドラジン化合物、水素化リチウムアルミニウム、水素化ホウ素リチウム等の還元性水素化金属化合物等が好適に用いられる。
【0033】
また、脱ドープ状態のポリアニリンの数平均分子量は、機械的強度の確保と、導電性の付与の観点から、4000以上400000以下であることが望ましい。
【0034】
ポリアニリンの添加量(使用量)は、発現させる導電度によって調整される。一般的には、樹脂(又はゴム材料)分100質量部に対して、添加されるポリアニリンは5質量部以上40質量部以下が望ましく、より望ましくは10質量部以上30質量部以下である。
ポリアニリンの添加量が上記範囲内にあると、電気導電性、及び得られる成形物のしなやかさの観点から好適である。
【0035】
[ドーパント]
ドーパントは、ポリアニリンをドーピングして導電性とするためのものである。ドーパントとしては、プロトン酸などの酸性化合物を望ましく用いることができる。ドーパントとして望ましいプロトン酸は、ポリイミド成型時の熱処理によって、揮発・分解しない化合物が望ましい。このようなプロトン酸としては、例えば、スルホン酸化合物、有機カルボン酸化合物が好適に用いられる。
【0036】
スルホン酸化合物としては、例えば、アミノナフトールスルホン酸、メタニル酸、スルファニル酸、アリルスルホン酸、ラウリル硫酸、キシレンスルホン酸、クロロベンゼンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンスルホン酸、1−プロパンスルホン酸、1−ブタンスルホン酸、1−ヘキサンスルホン酸、1−ヘプタンスルホン酸、1−オクタンスルホン酸、1−ノナンスルホン酸、1−デカンスルホン酸、1−ドデカンスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、スチレンスルホン酸、p−トルエンスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、エチルベンゼンスルホン酸、プロピルベンゼンスルホン酸、ブチルベンゼンスルホン酸、ペンチルベンゼンスルホン酸、ヘキシルベンゼンスルホン酸、ヘプチルベンゼンスルホン酸、オクチルベンゼンスルホン酸、ノニルベンゼンスルホン酸、デシルベンゼンスルホン酸、ウンデシルベンゼンスルホン酸、ドデシルベンゼンスルホン酸、ペンタデシルベンゼンスルホン酸、オクタデシルベンゼンスルホン酸、ジエチルベンゼンスルホン酸、ジプロピルベンゼンスルホン酸、ジブチルベンゼンスルホン酸、メチルナフタレンスルホン酸、エチルナフタレンスルホン酸、プロピルナフタレンスルホン酸、ブチルナフタレンスルホン酸、ペンチルナフタレンスルホン酸、ヘキシルナフタレンスルホン酸、ヘプチルナフタレンスルホン酸、オクチルナフタレンスルホン酸、ノニルナフタレンスルホン酸、デシルナフタレンスルホン酸、ウンデシルナフタレンスルホン酸、ドデシルナフタレンスルホン酸、ペンタデシルナフタレンスルホン酸、オクタデシルナフタレンスルホン酸、ジメチルナフタレンスルホン酸、ジエチルナフタレンスルホン酸、ジプロピルナフタレンスルホン酸、ジブチルナフタレンスルホン酸、ジペンチルナフタレンスルホン酸、ジヘキシルナフタレンスルホン酸、ジヘプチルナフタレンスルホン酸、ジオクチルナフタレンスルホン酸、ジノニルナフタレンスルホン酸、トリメチルナフタレンスルホン酸、トリエチルナフタレンスルホン酸、トリプロピルナフタレンスルホン酸、トリブチルナフタレンスルホン酸、カンフアースルホン酸、又はアクリルアミド−t−ブチルスルホン酸等を挙げることができる。これらの中でも、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸が好適に用いられる。
【0037】
また、有機カルボン酸化合物の具体例として、安息香酸、m−ブロモ安息香酸、p−クロロ安息香酸、m−クロロ安息香酸、p−クロロ安息香酸、o−ニトロ安息香酸、2,4−ジニトロ安息香酸、3,5−ジニトロ安息香酸、ピクリン酸、o−クロロ安息香酸、p−ニトロ安息香酸、m−ニトロ安息香酸、トリメチル安息香酸、p−シアノ安息香酸、m−シアノ安息香酸、チモールブルー、サリチル酸、5−アミノサリチル酸、o−メトキシ安息香酸、1,6−ジニトロ−4−クロロフェノール、2,6−ジニトロフェノール、2,4−ジニトロフェノール、又はp−オキシ安息香酸、等が挙げられる。
【0038】
ドーパントとして用いられるプロトン酸は、ポリマー酸であってもよい。このようなポリマー酸としては、例えば、ポリビニルスルホン酸、ポリビニル硫酸、ポリスチレンスルホン酸、スルホン化スチレン−ブタジエン共重合体、ポリアリルスルホン酸、ポリメタリルスルホン酸、ポリ−2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、又はポリイソプレンスルホン酸、等が挙げられる。
これらのドーパントの内、特に、ドデシルベンゼンスルホン酸、フェノールスルホン酸、又はフェニルホスホン酸が望ましい。
【0039】
これらのドーパントは、ポリアニリンの構成単位ユニットに対して、0.1当量以上5当量以下、より望ましくは、1当量以上3当量以下の範囲で添加される。
【0040】
[光酸発生剤]
光酸発生剤とは、300nm以下の波長の光を照射することによって酸を発生する化合物をいう。具体的には、ジフェニルヨードニウム塩型化合物、トリフェニルスルホニウム塩型化合物が好適に挙げられる。そのオニウム塩型化合物の対アニオンとしては、CFSO、PF、CFCFCFCFSO、CH(C)SO、(CHO)(C14)SO、又はNOなどが挙げられるが、特に、CFSO、PFが好適である。また、光酸発生剤は、これら塩型化合物に限られず、ジフェニルスルホニウム塩型化合物(その対アニオンとしては上記同様)、ヒドロキシナフタルイミドスルホネート化合物、ノルボルネンジカルボキシイミドスルホネートも用いられる。
【0041】
以下に、光酸発生剤(ジフェニルヨードニウム塩型化合物、トリフェニルスルホニウム塩型化合物、その他光酸発生剤)の好適な具体例を挙げるが、本発明はこれらの化合物に限定されない。以下例示する光酸発生剤は、付与番号に応じて「光酸発生剤(番号)」と表記する。
【0042】
【化2】

【0043】
【化3】

【0044】
【化4】

【0045】
【化5】

【0046】
【化6】

【0047】
光酸発生剤の含有量は、中間転写ベルトの使用導電域にも関係するが、ポリアニリン含有量に対して当モル量であることが望ましい。
【0048】
[導電剤]
導電剤は、ポリアニリンとは異なる導電剤である。導電剤としては、導電性又は半導電性の微粉末が使用でき、ベルトとして所望の電気抵抗を安定して得ることができれば、導電性に制限はないが、例えば、ケッチエンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラック、アルミニウムやニッケル等の金属、酸化錫等の酸化金属化合物、チタン酸カリウム等が例示される。そしてこれらを単独、あるいは併用して使用してもよいが価格面で有利なカーボンブラックが望ましい。ここで、「導電性」とは、体積抵抗率が10Ωcm未満であることを意味する。また、「半導電性」とは、体積抵抗率が10Ωcm以上1013Ωcm以下であることを意味する。以下同様である。
【0049】
導電剤としては、分散安定性が得られ、中間転写ベルトの抵抗バラツキを小さくなるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中がおきずらくなり電気抵抗の経時での安定性を得る点から、pH5以下の酸化処理カーボンブラック(以下、酸性カーボンブラックと称する。)が特に望ましい。
【0050】
酸性カーボンブラックは、カーボンブラックを酸化処理することで、表面にカルボキシル基、キノン基、ラクトン基、又は水酸基等を付与して製造される。この酸化処理は、高温雰囲気下で、空気と接触され、反応させる空気酸化法、常温(例えば25℃)下で窒素酸化物やオゾンと反応させる方法、及び高温下での空気酸化後、低い温度下でオゾン酸化する方法などにより行う。具体的には、酸性カーボンブラックは、コンタクト法により製造される。このコンタクト法としては、チャネル法、ガスブラック法等が挙げられる。また、酸性カーボンブラックは、ガス又はオイルを原料とするファーネスブラック法によっても製造される。必要に応じて、これらの処理を施した後、硝酸などで液相酸化処理を行ってもよい。なお、酸性カーボンブラックは、コンタクト法でも製造されるが、密閉式のファーネス法によって製造するのが通常である。ファーネス法では通常高pH・低揮発分のカーボンブラックしか製造されないが、これに上述の液相酸処理を施してpHが調整される。このためファーネス法製造により得られるカーボンブラックで、後工程処理によりpHが5以下となるように調節されたカーボンブラックも、本発明に含まれるとみなす。
【0051】
酸性カーボンブラックのpH値は、pH5.0以下であるが、望ましくはpH4.5以下であり、より望ましくはpH4.0以下である。pH5.0以下の酸性カーボンブラックは、表面にカルボキシル基、水酸基、キノン基、又はラクトン基などの酸素含有官能基が、あるので、樹脂中への分散性がよく、分散安定性が向上し、中間転写ベルトの抵抗バラツキを小さくなるとともに、電界依存性も小さくなり、転写電圧による電界集中がおきずらくなる。
【0052】
酸性カーボンブラックのpHは、カーボンブラックの水性懸濁液を調整し、ガラス電極で測定することで求める。酸性カーボンブラックのpHは、酸化処理工程での処理温度、処理時間等の条件によって、調整される。
【0053】
酸性カーボンブラックは、その揮発成分が1%以上25%以下、望ましくは2%以上20%以下、より望ましくは、3.5%以上15%以下含まれていることがよい。揮発分が1%未満である場合には、表面に付着する酸素含有官能基の効果がなくなり、結着樹脂への分散性が低下することがある。一方、25%より高い場合には、結着樹脂に分散させる際に、分解してしまう、又は、表面の酸素含有官能基に吸着された水などが多くなるなどによって、得られる成形品の外観が悪くなることがある。従って、揮発分を上記範囲とすることで、樹脂中への分散がより向上される。この揮発分は、カーボンブラックを950℃で7分間加熱したときに、出てくる有機揮発成分(カルボキシル基、水酸基、キノン基、又はラクトン基等)の割合により求まる。
【0054】
酸性カーボンブラックは2種類以上含有してもよい。そのとき、これらのカーボンブラックは実質的に互いに導電性の異なるものであると望ましく、例えば酸化処理の度合い、DBP吸油量、窒素吸着を利用したBET法(Brunauer,Emmett,Teller法、吸着した窒素量から、1g当たりの表面積を算出する方法)による比表面積等の物性が異なるものを用いる。ここで、DBP吸油量(cc/100g)とは、カーボンブラック100gに吸収されるジブチルフタレート(DBP)の量を示すものであり、ASTM(アメリカ標準試験法)D2414−6TTに定義される値である。
【0055】
導電性の異なる2種類以上の酸性カーボンブラックを添加する場合、例えば高い導電性を発現するカーボンブラックを先に添加した後、導電率の低いカーボンブラックを添加して表面抵抗率を調整すること等が可能である。このように2種類以上のカーボンブラックを含有させる場合も、少なくとも、そのうちの1種類に酸性カーボンブラックを使うことによって、両方のカーボンブラックの混合や分散が向上する。
【0056】
酸性カーボンブラックとして、具体的には、エボニック デグサ社製の「プリンテックス150T」(pH4.5、揮発分10.0%)、同「スペシャルブラック350」(pH3.5、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック100」(pH3.3、揮発分2.2%)、同「スペシャルブラック250」(pH3.1、揮発分2.0%)、同「スペシャルブラック5」(pH3.0、揮発分15.0%)、同「スペシャルブラック4」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック4A」(pH3.0、揮発分14.0%)、同「スペシャルブラック550」(pH2.8、揮発分2.5%)、同「スペシャルブラック6」(pH2.5、揮発分18.0%)、同「カラーブラックFW200」(pH2.5、揮発分20.0%)、同「カラーブラックFW2」(pH2.5、揮発分16.5%)、同「カラーブラックFW2V」(pH2.5、揮発分16.5%)、キャボット社製「MONARCH1000」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1300」(pH2.5、揮発分9.5%)、キャボット社製「MONARCH1400」(pH2.5、揮発分9.0%)、同「MOGUL−L」(pH2.5、揮発分5.0%)、又は同「REGAL400R」(pH4.0、揮発分3.5%)等が挙げられる。
【0057】
酸性カーブラックは、市販品以外にも精製して得てもよい。精製は、製造工程で混入した不純物、例えば残余の酸化剤、処理剤や副生成物等の不純物、その他の無機不純物や有機不純物を除去することである。例えば、不活性ガスや真空中で500℃以上1000℃以下程度にする加熱処理、二硫化炭素やトルエン等の有機溶媒処理、水スラリーのミキシングや有機酸水溶液中のミキシング処理等で不純物を除去する方法である。精製できれば如何なるものであってもよく、これらに限定するものではないが、粉体の加熱処理は製造工程上ハンドリングが難しく、エネルギーを多大に使う。有機溶媒処理や水を主体とした処理が精製方法として望ましい。特に、安全面の観点から水主体の処理方法が望ましい。用いる水は、特に不純物が混入することを防止するため、イオン交換水、超純水、蒸留水、限外濾過水を使用することが望ましい。
【0058】
また、酸性カーボンブラックの表面は活性が高く物質を非常に吸着しやすいため、酸性カーボンブラックの精製は、使用前に行う必要がある。望ましくは72時間前、より望ましくは48時間前である。72時間を越えるとカーボンブラック表面に不純物が再吸着することがあり、精製の効果が低下してしまうことがある。
【0059】
具体的には、酸性カーボンブラック、水を必須成分として混合したスラリーを準備しミキシングした後に、カーボンブラックを分離する方法が望ましい。また、カーボンブラック表面の濡れを良くする観点から界面活性作用を有する物質、例えば、界面活性剤やアルコール類を添加してもよい。また、必要に応じて水溶性の有機溶媒を添加してもよいが、製造後の中間転写ベルトに残留しないことが望ましい。このため、低沸点で界面活性作用のある溶媒が望ましい。例えば、メチルアルコール、エチルアルコール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、sec−ブチルアルコール、tert−ブチルアルコール、2−メトキシアルコール、又はアリルアルコール等である。更に適時、無機酸を添加してもよい。
【0060】
ミキシング方法は、できる限り酸性カーボンブラックを一次粒径まで凝集体を解すことがよい。このため、スラリーを一般的な分散機やホモジナイザーで処理することが望ましい。例えば、コロイドミル、フロージェットミル、スラッシャーミル、ハイスピードディスパーザー、ボールミル、アトライター、サンドミル、サンドグラインダー、ウルトラファインミル、アイガーモーターミル、ダイノーミル、パールミル、アジテータミル、コボルミル、3本ロールミル、2本ロールミル、エクストリューダー、ニーダー、マイクロフルイダイザー、ラボラトリホモジナイザー、超音波ホモジナイザー、又はジェットミル等があり、これらを単独で用いても組合わせて用いてもよい。また、無機不純物の混入を防ぐため、分散メディアを使用しない分散方法を用いる方が望ましく、マイクロフルイダイザーや超音波ホモジナイザーやジェットミル等の使用が適している。
【0061】
一方、分離方法としては、遠心分離、濾過、非水溶性有機への移行により精製された酸性カーボンブラックが得られる。非水溶性有機溶媒としては、トルエン、キシレン、ベンゼン、クロロホルム、ヘキサン、又はヘプタン等である。安全上の観点から、遠心分離や濾過による分離が望ましい。
【0062】
なお、分離後の酸性カーボンブラックは、不活性ガス中で加熱乾燥することが望ましいが、転写ベルト製造段階で、加熱処理を行うため必ずしも乾燥工程は必要としない。
【0063】
ここで、水に対するカーボンブラックの割合は、例えば5質量%以上30質量%以下である。より望ましくは、5質量%以上20質量%以下である。5質量%では精製による得率が低くなり生産性が得られないことがある。また、30質量%を超えると、スラリーが高粘度となりミキシングが困難となり、精製効率が低下してしまうことがある。
【0064】
酸性カーボンブラックは、一般的なカーボンブラックに比べ、前述したように表面に存在する酸素含有官能基の効果により、基材層中への分散性がよいため、導電剤としての添加量を高くすることが望ましい。これにより、中間転写ベルト中のカーボンブラックの量が多くなるため、上記電気抵抗値の面内バラツキが押えられる等の酸化処理カーボンブラックを用いることの効果が発揮される。
【0065】
このため、酸性カーボンブラックの含有量は、10質量%以上30質量%以下とすることがよい。これにより、中間転写ベルトの表面抵抗率の面内バラツキを抑制するなど、酸性カーボンブラックの効果が発揮される。この含有量が10質量%未満であると電気抵抗の均一性が低下し、表面抵抗率の面内ムラや電界依存性が大きくなることがある。一方、30質量%を超えると所望の抵抗値が得られ難くなることがある。さらに、酸性カーボンブラックの含有量を18質量%以上30質量%以下とすることで、その効果がより限発揮され、表面抵抗率の面内ムラや電界依存性が顕著に向上される。
【0066】
[樹脂]
樹脂としては、熱硬化性樹脂又は当該熱可塑性樹脂が挙げられる。
熱可塑性樹脂としては、特に制限されるものではなく、ポリイミド、ポリエーテルイミド、ポリフェニレンサルファイド、ポリエーテルサルホン、ポリエーテルエーテルケトン、ポリアミド、ポリカーボネイト、ポリエステル、ポリフッ化ビニリデン(PVDF)、又はポリフロロエチレン−エチレン共重合体(PTFE)、テトラフルオロエチレン−エチレン共重合体(ETFE)などの樹脂材料が挙げられる。
熱硬化性樹脂としては、特に制限されるものではなく、ポリイミド、フェノール、ユリア、メラミン、ベンゾグアナミン、アリル、アルキド、不飽和ポリエステル、エポキシ、ポリウレタン、シリコーンなどの樹脂材料が挙げられる。
【0067】
一方で、基材層を形成するための樹脂組成物には、当該樹脂を形成するためのモノマーが含有されていてもよい。
【0068】
樹脂(それを形成するためのモノマー)は、基材層中50質量%以上含有することが望ましい。
【0069】
[ゴム材料]
ゴム材料の種類は、特に限定されるものでなく、任意のエラストマーを用いられる。その具体例としては、塩素化ポリイソプレンゴム、クロロプレンゴム、ブチルゴム、エピクロルヒドリン系ゴム、ノルボルネンゴム、フッ素系ゴム、シリコーンゴム、ウレタンゴム、アクリルゴム、エチレン−プロピレン−ジエン共重合ゴム(EPDM)、スチレン−ブタジエン共重合ゴム(SBR)、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム(NBR)、又はアクリルニトリル−ブタジエン−スチレン共重合ゴム等が挙げられる。
また、熱可塑性エラストマーとしては、例えば、スチレンーブタジエンブロック共重合体、スチレンーエチレンーブチレンースチレンブロック共重合体等のスチレン系エラスマー、ウレタン系エラストマー、オレフィン系エラストマー、フッ素系エラストマー、又は塩ビ系エラストマーが挙げられる。
【0070】
一方で、基材層を形成するための樹脂組成物には、当該ゴム材料を形成するためのモノマーが含有されていてもよい。
【0071】
ゴム材料のうち、ポリウレタンについて説明する。ゴム材料がポリウレタンの場合には、ゴム材料を形成するためのモノマーとしては、少なくとも、(1)ポリオール成分としてのモノマーと、(2)イソシアネート成分としてのモノマーと、が必要である。
【0072】
ポリウレタンのポリオール成分のポリエーテルポリオールモノマーとしては例えば、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシブチレングリコール、ポリオキシテトラメチレンギリコール等のポリオキシアルキレングリコール類、ポリオキシプロピレントリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレントリオール、ポリオキシブリレントリオール等のポリオキシアルキレントリオール類、エチレンジアミン、ペンタエリスルトール、ソルビトール、スクロース、スターチ等を開始剤としたポリオキシプロピレンポリオール、ポリオキシプロピレンポリオキシエチレンポリオール等のポリ(オキシアルキレン)ポリオール等が挙げられる。
またポリオール成分のポリエステルポリオール化合物モノマーとしては、ポリ炭酸エステルポリオール、ポリカプロラクトンエステルポリオール、又はエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,3−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール等のグリコールの1種又2種以上の混合物と、アジピン酸等の炭素数2以上6以下のジカルボン酸とを反応させて得られるポリエステルポリオール等が挙げられるが、ポリオール成分としては上記のものに限定されない。
【0073】
またポリウレタンのイソシアネート成分としてはトリレンジイソソアネート(TDI)、メタキシレンジイソシアネート、ジフェニルメタンジイソアネート(MDI)、ポリメチレンポリフェニルジイソシアネート等の芳香族イソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等の脂肪族イソシアネート、プレポリマー変性イソシアネート、及びこれらのイソシアネート化合物をフェノール、芳香族2級アミン、3級アルコール、アミド、ラクタム、複素環化合物、亜硫酸塩等でブロックしたブロックイソシアネートをINDEX(活性水素基/イソシアネート基(NCO基))=0.80以上1.20以下に調整し、望ましくは0.98以上1.09以下に調整したものなどが挙げられる。
【0074】
発泡層のマトリックス(ゴム材料)としては特にウレタン発泡体を用いることが望ましく、ウレタン発泡体を用いることにより、安定した発泡状態を維持でき、その結果画像均一性が得られる。発泡剤としては水を用いる発泡方式、窒素、空気などの混合による機械発泡方式を用いることにより発熱を抑え破泡、連泡化を少なくし、また歪みも小さく、さらに低硬度化が得られる。
発泡硬度(アスカーC硬度)は3度以上60度以下、さらには5度以上20度以下にすることが望ましい。またウレタンは永久歪みが少なく繰り返しの使用によってへこみ、歪み、変形等が少なく、寸法精度が安定であり、したがって中間転写体の交換頻度が少なくなる。
【0075】
ポリアニリンと光酸発生剤とを組み合わせる場合、特に好適なゴム材料としては、ポリウレタン、塩素化ポリソプレンゴム、クロロプレンゴム、又はNBRであり、これらのゴム材料は導電剤との親和性が高く、分散性の観点から好適である。
【0076】
ゴム材料(それを形成するためのモノマ)は、基材層中50質量%以上含有することが望ましい。
【0077】
以下、本実施形態に係る中間転写ベルトの製造方法について説明する。本実施形態に係る中間転写ベルトの製造方法については、例えば、以下の製法が挙げられる。
【0078】
1)まず、中間転写ベルトの基材層を形成するための樹脂組成物を準備する。この樹脂組成物は、少なくとも、ポリアニリン、及びポリアニリンを導電化するためのドーパントを含む組成物であって、樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)又は当該樹脂を形成するためのモノマーと、ゴム材料又は当該ゴム材料を形成するためのモノマーと、のいずれかを主成分として含む樹脂組成物である。次に、円筒状金型の内面又は外面に樹脂組成物を塗布した後、円筒状金型の内面又は外面に塗布された樹脂組成物を加熱して無端ベルト基材層を形成する。そして、樹脂組成物を塗布する工程以降に、樹脂組成物又は無端ベルト基材層の外面にオゾン処理を施し、中間転写ベルトを得る。
本製法では、樹脂組成物又は無端ベルト基材層の外面(外周面)に対しオゾン処理を施すことで、当該外面から所定深さにおいて導電化されたポリアニリンの導電性を失活させて表面抵抗率を上昇させ、外面と内面との表面抵抗抵率差を有する中間転写ベルトを得る。
【0079】
2)まず、中間転写ベルトの基材層を形成するための樹脂組成物を準備する。この樹脂組成物は、少なくとも、ポリアニリン、光酸発剤及びポリアニリンとは異なる導電剤を含む組成物であって、樹脂(熱可塑性樹脂、熱硬化性樹脂)又は当該樹脂を形成するためのモノマーと、ゴム材料又は当該ゴム材料を形成するためのモノマーと、のいずれかを主成分として含む樹脂組成物である。次に、円筒状金型の内面又は外面に樹脂組成物を塗布した後、円筒状金型の内面又は外面に塗布された樹脂組成物を加熱して無端ベルト基材層を形成する。そして、樹脂組成物を塗布する工程以降に、樹脂組成物又は無端ベルト基材層の内面に光照射を施し、中間転写ベルトを得る。
本製法では、樹脂組成物又は無端ベルト基材層の内面(内周面)に対し光照射を施すことで、当該内面から所定深さにおいて、光酸発生剤から酸を発生させ、当該酸によりポリアニリンの導電性を発現させて、表面抵抗率を低減させ、外面と内面との表面抵抗抵率差を有する中間転写ベルトを得る。
【0080】
ここで、樹脂組成物の金型への塗布は、遠心塗布法、浸漬塗布法等、周知の塗布法により実施される。具体的には、例えば、円筒状金型の外面又は内面(外面又は裏面に下層又は上層となる層を有していてもよい)に、樹脂組成物を塗布する。特に、オゾン処理を施す製法の場合、樹脂組成物又は無端ベルト基材層の外面に処理を施すことから、円筒状金型の外面に樹脂組成物を塗布することがよい。一方、光照射を施す製法の場合、樹脂組成物又は無端ベルト基材層の内面に処理を施すことから、円筒状金型の内面に樹脂組成物を塗布することがよい。
【0081】
次に、無端ベルト基材層を形成する際の加熱は、乾燥、そして、樹脂種又はゴム材料種に応じてモノマー重合や焼成、硬化のために実施される。ここで、例えば、乾燥後、円筒状金型から取り外して、他の円筒状金型に嵌め込んでモノマー重合や焼成、硬化のための加熱を別途行ってもよい。
【0082】
次に、オゾン処理及び光照射は、樹脂組成物を円筒状金型に塗布する工程以降であれば、いずれの時期に実施してもよく、例えば、樹脂組成物の塗布後、樹脂組成物の乾燥後、無端ベルト基材層を形成した後に実施される。
【0083】
オゾン処理は、無端ベルト基材層の外面から所定深さにおいて、導電化されたポリアニリンの導電性を失活させるために、オゾン濃度や処理時間を調整して行われる。具体的には、オゾン処理は、例えば、オゾン濃度0.01g/Nm以上100g/Nm以下(望ましくは0.1g/Nm以上10g/Nm以下)の雰囲気で、1分以上30分以下(望ましくは5分以上20分以下)実施する。オゾン処理には、放電を利用した装置、高圧水銀ランプを利用した装置の、真空紫外光を利用した装置等のオゾン発生装置が適用される。
【0084】
一方、光照射は、無端ベルト基材層の内面から所定深さにおいて、光酸発生剤から酸を発生させ、当該酸によりポリアニリンの導電性を発現させるために、照射強度や処理時間を調整して行われる。具体的には、光酸発生剤の種類にもよるが、紫外線照射がよく、例えば、50W/m以上150W/m以下(望ましくは80W/m以上150W/m以下)の強度で、5分以上30分以下(望ましくは10分以上15分以下)で実施することがよい。光照射は、例えば、例えば、メタルハライドランプ、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、ディープ紫外線ランプ、マイクロ波を用い外部から無電極で水銀灯を励起するランプ、紫外線レーザー、キセノンランプ、又はUV−LEDなどが適用される
【0085】
次に、本実施形態に係る中間転写ベルトの特性について説明する。
本実施形態に係る中間転写ベルトの厚みは、総厚みで0.05mm以上0.5mm以下が望ましく、より望ましくは、0.06mm以上0.30mm以下、さらに望ましくは、0.06mm以上0.15mm以下である。中間転写ベルトの総厚みが、上記範囲未満の場合には、中間転写ベルトとして、必要な機械特性を満足させることが難しくなることがあり、上記範囲を超える場合には、ロール屈曲部での変形によって、ベルト表面の応力が集中して、表面にクラックが発生するなどの問題が生じることがある。
【0086】
本実施形態に係る中間転写ベルトの体積抵抗率は、500V、10秒印加条件で1×1011Ωcm以上1×1014Ωcm以下であることが望ましい。この体積抵抗率が上記範囲未満である場合には、転写で発生する放電により白抜け(画像の点状の抜け)が発生してしまうことがあり、上記範囲より高い場合には、電荷が蓄積してしまい、転写ベルトの次サイクルまで電荷が残り、繰り返し使用により転写ができなくなることがあり、別途除電機構が必要となることがある。
【0087】
ここで、体積抵抗率の測定は、円形電極(例えば、三菱化学(株)製ハイレスターIPのHRプローブ)を用い、JIS K6991に従って測定する。前記体積抵抗率の測定方法を図を用いて説明する。測定は表面抵抗率と同一の装置で測定できる。但し、図2に示す円形電極において、表面抵抗率測定時の板状絶縁体Bに代えて第二電圧印加電極B’とを備える。そして、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部C及びリング状電極部Dと第二電圧印加電極B’との間に中間転写バルトTを挟持し、第一電圧印加電極Aにおける円柱状電極部Cと第二電圧印加電極Bとの間に電圧V(V)を印加したときに流れる電流I(A)を測定し、下記式により、中間転写ベルトTの体積抵抗率ρv(Ωcm)を算出することができる。ここで、下記式中、tは、半導電性ベルトTの厚さを示す。
式ρv=19.6×(V/I)×t
【0088】
<画像形成装置>
以下、本実施形態に係る画像形成装置について説明する。図1は、実施形態に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【0089】
実施形態に係る画像形成装置は、上記実施形態に係る中間転写ベルトを備え、感光体ドラムを各色毎に4台持つ出力機である。
【0090】
実施形態に係る画像形成装置は、図1に示すように、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kが備えられている。
【0091】
画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kには、それぞれ、像保持体としての感光体ドラム12Y,12M,12C,12K(Yはイエロー用、Mはマゼンタ用、Cはシアン用、Kはブラック用を示す)を備え、感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの周囲には、それぞれ、感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの表面を帯電する帯電装置14Y,14M,14C,14Kと、帯電された感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの表面に静電潜像を形成する露光装置16Y,16M,16C,16Kと、感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの表面に形成された静電潜像を現像剤に含まれるトナーによりトナー像とする現像装置18Y,18M,18C,18Kと、トナー像を中間転写ベルト24に転写するための一次転写装置20Y,20M,20C,20K(例えば転写ロール)と、転写後の感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kの表面に付着した残留トナーを除去するための感光体ドラムクリーナー22Y,22M,22C,22Kとが備えられている。
【0092】
また、画像形成ユニット10Y,10M,10C,10Kに対向して、中間転写体としての中間転写ベルト24が配設されている。中間転写ベルト24は、感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kと一次転写装置(例えば一次転写ロール)20Y,20M,20C,20Kとの間に配設されている。
【0093】
そして、中間転写ベルト24は、駆動ロール26a、中間転写ベルト24がゆがんだり蛇行したりすることを防ぐテンション・ステアリングロール26c、支持ロール26b,26d,26eと共に、バックアップロール28により内周面側から張力を掛けつつ回転可能に支持されて、ベルト張架装置25を構成している。
【0094】
中間転写ベルト24の周囲には、当該中間転写ベルト24を介してバックアップロール28と対向して二次転写装置30(例えば二次転写ロール)が配設されると共に、二次転写装置30よりも中間転写ベルト24の回転方向下流側にベルトクリーナー32が配設されている。
【0095】
そして、二次転写装置30よる転写後の記録用紙P(記録媒体)を搬送するための搬送装置34が配設されると共に、搬送装置34による搬送方向下流側に定着装置36が配設されている。
【0096】
本実施形態に係る画像形成装置では、まず、画像形成ユニット10Yにおいて、感光体ドラム12Yは図中時計方向に回転し、帯電装置14Yでその表面が帯電される。帯電された感光体ドラム12Yにレーザー書き込み装置などの露光装置16Yにより第1色(Y)の静電潜像が形成される。
【0097】
この静電潜像は現像装置18Yにより供給されるトナー(トナーを含む現像剤)よってトナー現像されて可視化されたトナー像が形成される。トナー像は感光体ドラム12Yの回転により一次転写部に到り、一次転写装置20Yからトナー像に逆極性の電界を作用させることにより、トナー像が、反時計方向に回転する中間転写ベルト24に一次転写される。
【0098】
そして、同様にして第2色のトナー像(M)、第3色のトナー像(C)、第4色のトナー像(K)が画像形成ユニット10M,10C,10Kにより順次形成され中間転写ベルト24において重ね合わせられ、多重トナー像が形成される。
【0099】
次に、中間転写ベルト24に転写された多重トナー像は中間転写ベルト24の回転で二次転写装置30が設置された二次転写部に至る。
【0100】
この二次転写部では、二次転写装置30と中間転写ベルト24を介して対向配置したバックアップロール28との間にトナー像の極性と同極性のバイアス(転写電圧)を印加することで、当該トナー像を記録用紙Pに静電反発で転写する。
【0101】
記録用紙Pは、記録用紙容器(図示せず)に収容された記録用紙束からピックアップローラ(図示せず)で一枚ずつ取り出され、フィードロール(図示せず)で二次転写部の中間転写ベルト24と二次転写装置30との間に所定のタイミングで給送される。
【0102】
給送された記録用紙Pには、二次転写装置30とバックアップロール28による圧接及び転写電圧搬送と、中間転写ベルト24の回転と、の作用により、中間転写ベルト24に保持されたトナー像が転写される。
【0103】
トナー像が転写された記録用紙Pは、搬送装置34により定着装置36に搬送され、加圧/加熱処理でトナー像を固定して永久画像とされる。
【0104】
なお、多重トナー像の記録用紙Pへの転写の終了した中間転写ベルト24は二次転写部の下流に設けたベルトクリーナー32で残留トナーの除去が行われて次の転写に備える。また、二次転写装置30はブラシクリーニング(図示せず)により、転写で付着したトナー粒子や紙紛等の異物が除去される。
【0105】
また、単色画像の転写の場合は、一次転写されたトナー像を単色で二次転写して定着装置に搬送するが、複数色の重ね合わせによる多色画像の転写の場合は各色のトナー像が一次転写部で一致するように中間転写ベルト24と感光体ドラム12Y,12M,12C,12Kとの回転を同期させて各色のトナー像がずれないようにする。
【0106】
このようにして、本実施形態に係る画像形成装置では、記録用紙P(記録媒体)に画像が形成される。
【0107】
なお、本実施形態に係る画像形成装置は、上記に限られず、中間転写ベルトを利用した中間転写方式の画像形成装置であれば、いずれも適用される
【実施例】
【0108】
以下、本発明に対応する複数の実施例及びこれらの実施例に対する比較例について述べる。なお、これらの実施例は全て例示であり、この記述によって本発明の適用範囲が限定されるものではない。なお、実施例中「部」は重量部を意味する。
【0109】
[実施例A]
(実施例A1)
ポリアミドイミド樹脂のN−メチル−2ピロリドン溶液(東洋紡績(株)バイロマックス HR16NN 濃度18質量%)100部に、ポリアニリン(商品名:パニポールEB、パニポール社製)3.6部とフェノールスルホン酸3.4部とを加えて攪拌羽根付き容器を用いて30分間攪拌した。これにより、樹脂組成物(ポリアミドイミド樹脂組成物)を得た。
【0110】
この組成物を、内直径110mm径、長さ500mm、厚み5mmのアルミニウム製円筒状ドラム型の外面に浸漬塗布により塗布した。その後、円筒状ドラム型を回転させながら、温度120℃の条件で30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、円筒状ドラム型をオーブンに入れ、200℃で30分、260℃で30分、と段階的に昇温して焼成を行った。これにより無端ベルトが形成された。
その後、円筒状ドラム型を室温で放冷した後、オゾン処理装置(GWN−1000 オーニット(株)製)により、無端ベルトの外面に対してオゾン濃度1.5g/Nm、処理時間5分でオゾン処理を施した。そして、ドラム型から無端ベルトを取り外して、これを中間転写ベルトとした。
【0111】
(実施例A2)
ポリアミック酸の溶液(宇部興産社製「商品名:UワニスS」濃度18質量%)100部に、ポリアニリン(商品名:パニポールEB、パニポール社製)3.6部とリン酸2.0部とを加えて攪拌羽根付き容器を用いて30分間攪拌した。これにより、樹脂組成物(ポリアミック酸組成物)を得た。
【0112】
この組成物を、内直径110mm径、長さ500mm、厚み5mmのアルミニウム製円筒状ドラム型の外面に浸漬塗布により塗布した。その後、円筒状ドラム型を回転させながら、温度120℃の条件で30分間乾燥処理を行った。これにより無端ベルトが形成された。
その後、円筒状ドラム型を室温で放冷した後、オゾン処理装置(GWN−1000オーニット(株)製)により、無端ベルトの外面に対してオゾン濃度1.0g/Nm、処理時間5分でオゾン処理を施した。そして、ドラム型から無端ベルトを取り外して、これを中間転写ベルトとした。
【0113】
(実施例A3)
下記に示すA液とB液を室温(25℃)で攪拌混合し、その後、ポリアニリン(商品名:パニポールEB、パニポール社製)15部、フェノールスルホン酸17部、及びテトラブチルアンモニウム過塩素酸0.03部を加えて更に攪拌混合した。
【0114】
−A液−
・ポリテトラメチレングリコール(平均分子量:3000、三洋化成工業(株)製、PTMG3000): 100部
【0115】
−B液−
・ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI): 23.8部(ポリオールOH価に対して1.03)
・トリエチレンジアミン: 0.05部
【0116】
この組成物を、内直径110mm径、長さ500mm、厚み5mmのアルミニウム製円筒状ドラム型の外面に浸漬塗布により塗布した。その後、180℃×30分加熱硬化させ、ウレタンエラストマーをマトリックスとする膜厚300μmの無端ベルトが形成された。
その後、円筒状ドラム型を室温(25℃)で放冷した後、オゾン処理装置(GWN−1000 オーニット(株)製)により、無端ベルトの外面に対してオゾン濃度0.8g/Nm、処理時間5分でオゾン処理を施した。そして、ドラム型から無端ベルトを取り外して、これを中間転写ベルトとした。
【0117】
(比較例A1)
オゾン処理を実施せず、窒素雰囲気下で焼成を行った以外は、実施例A1と同様にして、中間転写ベルトを得た。
【0118】
(比較例A2)
オゾン処理の処理時間を60分間実施した以外は、実施例A1と同様にして、中間転写ベルトを得た。
【0119】
(比較例A3)
ポリアミック酸の溶液(宇部興産社製 UワニスS 濃度18%)100重量部に対し、カーボンブラック(デグサ製 SB4)を5重量部と添加し、ジェットミル分散機(Geanus PY ジーナス社製)を用い、圧力200Mpaで分散ユニットを5回通過させて液(A)を得た。同様な手順でカーボンブラック3重量部を添加した液(B)を調整した。
【0120】
この液(A)を、内直径110mm径、長さ500mm、厚み5mmのアルミニウム製円筒状ドラム型の外面に浸漬塗布により塗布した。その後、円筒状ドラム型を回転させながら、温度120℃の条件で30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、この塗膜(A)上に液(B)を塗膜(A)と同様にして作製後、円筒状ドラム型をオーブンに入れ、200℃で30分、260℃で30分、300℃で30分と段階的に昇温して焼成を行った。これにより2層に積層された無端ベルトが形成された。これを中間転写ベルトとした。
【0121】
(評価)
得られた中間転写ベルトに対し、転写画像の品質の評価を行うと共に、外面と内面との表面抵抗率を測定した。結果を表1に示す。
【0122】
−転写画像の品質の評価−
得られた中間転写ベルトを富士ゼロックス社製電子写真装置(DocuCentreColor400CP)に組み込み、50000枚目の転写画像の画質の評価を行った。
転写画像の画質の評価項目として、画質欠陥として、MWS(マイクロホワイトスポット)の有無、及びうろこ状の画像ムラの有無を目視にて確認した。評価基準は以下の通りである。
【0123】
・MWS(マイクロホワイトスポット)の評価基準
A:MWSの存在が全く確認されない。
B:MWSの存在は確認されたが、実用上問題の無い範囲。
C:MWSが多数存在し、実用上問題がある。
なお、マイクロホワイトスポットとは、ハーフトーンパッチ画像中、数十乃至100μmレベルの白抜けをいう。
【0124】
・うろこ状の画像ムラの評価基準
A:うろこ状の画像ムラが確認されない
B:画像全体には影響しないが一部に僅かにうろこ状の画像ムラが見られる。
C:目視で複数のうろこ状の画像ムラが確認される。
【0125】
【表1】

【0126】
以上結果から、本実施例では、比較例に比べ、MWS、うろこ状の画像ムラの画質欠陥の発生が抑制されることがわかる。
【0127】
[実施例B1]
(実施例B1)
ポリアミドイミド樹脂のN−メチル−2ピロリドン溶液(東洋紡績(株)バイロマックス HR16NN 濃度18質量%)100部に、ポリアニリン(商品名:パニポールEB、パニポール社製)3.0部と、光酸発生剤(1)6.5部(ポリアニリンに対して当モル量)と、導電剤(カーボンブラック:SPECIAL Black 4、Degussa社製)5部と、を加えて攪拌羽根付き容器を用いて30分間攪拌した。これにより、樹脂組成物(ポリアミドイミド樹脂組成物)を得た。
【0128】
この組成物を、内直径110mm径、長さ500mm、厚み5mmのアルミニウム製円筒状ドラム型の内面に塗布し、3000rpmで遠心成形した。その後、円筒状ドラム型を回転させながら、温度120℃の条件で30分間乾燥処理を行った。乾燥処理後、円筒状ドラム型をオーブンに入れ、200℃で30分、260℃で30分、と段階的に昇温して焼成を行った。これにより無端ベルトが形成された。
その後、円筒状ドラム型を室温で放冷した後、無端ベルトの内面に対して紫外線照射装置(UM1036−B、ウシオ電気製)により、得られた照射エネルギー100W/mで照射波長300nmの紫外光を10min照射した。そして、ドラム型から無端ベルトを取り外して、これを中間転写ベルトとした。
【0129】
(実施例B2)
ポリアミック酸の溶液(宇部興産社製「商品名:UワニスS」濃度18質量%)100部に、ポリアニリン(商品名:パニポールEB、パニポール社製)3.6部と、光酸発生剤(1)6.5部(ポリアニリンに対して当モル量)と、導電剤(カーボンブラック:SPECIAL Black 4、Degussa社製)5部と、を加えて攪拌羽根付き容器を用いて30分間攪拌した。これにより、樹脂組成物(ポリアミック酸組成物)を得た。
【0130】
この組成物を、内直径110mm径、長さ500mm、厚み5mmのアルミニウム製円筒状ドラム型の内面に塗布し、3000rpmで遠心成形した。その後、円筒状ドラム型を回転させながら、温度120℃の条件で30分間乾燥処理を行った。これにより無端ベルトが形成された。
その後、円筒状ドラム型を室温で放冷した後、無端ベルトの内面に対して紫外線照射装置(UM1036−B、ウシオ電気製)により、得られた照射エネルギー100W/mで照射波長300nmの紫外光を10min照射した。そして、ドラム型から無端ベルトを取り外して、これを中間転写ベルトとした。
【0131】
(実施例B3)
下記に示すA液とB液を室温(25℃)で攪拌混合し、その後、ポリアニリン(商品名:パニポールEB、パニポール社製)15部、光酸発生剤(1)30部(ポリアニリンに対して当モル量)と、導電剤(カーボンブラック:SPECIAL Black 4、Degussa社製)5部と、及びテトラブチルアンモニウム過塩素酸0.03部を加えて更に攪拌混合した。
【0132】
−A液−
・ポリテトラメチレングリコール(平均分子量:3000、三洋化成工業(株)製、PTMG3000): 100部
【0133】
−B液−
・ジフェニルメタンジイソシアネート(MDI): 23.8部(ポリオールOH価に対して1.03)
・トリエチレンジアミン: 0.05部
【0134】
この組成物を、内直径110mm径、長さ500mm、厚み5mmのアルミニウム製円筒状ドラム型の内面に塗布し、3000rpmで遠心成形した。その後、180℃×30分加熱硬化させ、ウレタンエラストマーをマトリックスとする膜厚300μmの無端ベルトが形成された。
その後、円筒状ドラム型を室温で放冷した後、無端ベルトの内面に対して紫外線照射装置(UM1036−B、ウシオ電気製)により、得られた照射エネルギー100W/mで照射波長300nmの紫外光を10min照射した。そして、ドラム型から無端ベルトを取り外して、これを中間転写ベルトとした。
【0135】
(比較例B1)
紫外線照射を実施せず、窒素雰囲気下で焼成を行った以外は、実施例A1と同様にして、中間転写ベルトを得た。
【0136】
(比較例B2)
紫外線照射を、60分間実施した以外は、実施例A1と同様にして、中間転写ベルトを得た。
【0137】
(比較例B3)
上記比較例A3と同様に無端ベルトを作製した。これを中間転写ベルトとした。
【0138】
(評価)
得られた中間転写ベルトに対し、実施例Aと同様にして転写画像の品質の評価を行うと共に、外面と内面との表面抵抗率を測定した。結果を表2に示す。
【0139】
【表2】

【0140】
以上結果から、本実施例では、比較例に比べ、MWS、うろこ状の画像ムラの画質欠陥の発生が抑制されることがわかる。
【図面の簡単な説明】
【0141】
【図1】実施形態の一例に係る画像形成装置を示す概略構成図である。
【図2】円形電極の一例を示す概略平面図(a)及び概略断面図(b)である。
【符号の説明】
【0142】
10Y,10M,10C,10K 画像形成ユニット
12Y,12M,12C,12K 感光体ドラム
14Y,14M,14C,14K 帯電装置
16Y,16M,16C,16K 露光装置
18Y,18M,18C,18K 現像装置
20Y,20M,20C,20K 一次転写装置
22Y,22M,22C,22K 感光体ドラムクリーナー
24 中間転写ベルト
25 ベルト張架装置
26c テンション・ステアリングロール
26a 駆動ロール
26b,26d,26e 支持ロール
28 バックアップロール
30 二次転写装置
32 ベルトクリーナー
34 搬送装置
36 定着装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも、樹脂又はゴム材料とポリアニリンとを含んで構成され、外面の表面抵抗率が内面の表面抵抗率よりも大きい基材層を有することを特徴とする環状部材。
【請求項2】
前記基材層の外面と内面との表面抵抗率差(絶対値)が、0.5logΩ/□以上5logΩ/□以下の範囲であることを特徴とする請求項1に記載の環状部材。
【請求項3】
前記基材層に、さらに、ポリアニリンとは異なる導電剤を含むことを特徴とする請求項1に記載の環状部材。
【請求項4】
請求項1乃至3のいずれか1項に記載の環状部材と、
前記環状部材を内周面側から回転可能に張架する張架部材と、
を備えることを特徴とする環状部材張架装置。
【請求項5】
像保持体と、
前記像保持体の表面を帯電する帯電手段と、
前記像保持体の表面に潜像を形成する潜像形成手段と、
前記潜像をトナー像として現像する現像手段と、
前記トナー像を中間転写体に転写する一次転写手段と、
前記中間転写体から前記トナー像を記録媒体に転写する二次転写手段と、
前記トナー像を前記記録媒体に定着する定着手段と、
を備え、
前記中間転写体が、請求項1乃至3のいずれか1項に記載の環状部材であることを特徴とする画像形成装置。
【請求項6】
少なくとも、樹脂若しくは当該樹脂を形成するためのモノマーとポリアニリンと前記ポリアニリンを導電化するドーパントとを含む樹脂組成物、又は、少なくとも、ゴム材料若しくは当該ゴム材料を形成するためのモノマーとポリアニリンと前記ポリアニリンを導電化するドーパントとを含む樹脂組成物を準備する工程と、
円筒状金型の内面又は外面に前記樹脂組成物を塗布する工程と、
前記円筒状金型の内面又は外面に塗布された前記樹脂組成物を加熱して基材層を形成する工程と、
前記樹脂組成物を塗布する工程以降に、前記樹脂組成物又は基材層の外面にオゾン処理を施す工程と、
を有することを特徴とする環状部材の製造方法。
【請求項7】
少なくとも、樹脂若しくは当該樹脂を形成するためのモノマーとポリアニリンと光酸発剤と導電剤とを含む樹脂組成物、又は、少なくとも、ゴム材料若しくは当該ゴム材料を形成するためのモノマーとポリアニリンと光酸発剤と導電剤とを含む樹脂組成物を準備する工程と、
円筒状金型の内面又は外面に前記樹脂組成物を塗布する工程と、
前記円筒状金型の内面又は外面に塗布された前記樹脂組成物を加熱して基材層を形成する工程と、
前記樹脂組成物を塗布する工程以降に、前記樹脂組成物又は基材層の内面に光照射を施す工程と、
を有することを特徴とする環状部材の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2009−258377(P2009−258377A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−107065(P2008−107065)
【出願日】平成20年4月16日(2008.4.16)
【出願人】(000005496)富士ゼロックス株式会社 (21,908)
【Fターム(参考)】