説明

甘えびの寿司種の製造方法

【課題】 本発明は、寿司店などでは作ることのできない甘えびを3尾重ね並べした大きくて豪華で新鮮な甘えびの寿司種の製造方法を新規に提供することにある。
【解決手段】 本発明は、甘えびを食用接着剤を挟んで接着するようにした寿司種において、該食用接着剤に酵素を含有させて且つ接着反応が始まる前の早い段階に該寿司種を形崩れを防止すべく順次冷凍して出荷し、出荷先による解凍にて該食用接着剤の接着反応の活性化接着により、形崩れすることなしに3尾重ね並べした甘えびの寿司種を提供可能にしたことを特徴とする甘えびの寿司種の製造方法にある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は新鮮な生の甘えびを3尾重ね並びした大きくて豪華な甘えびの寿司種の製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本願の出願人はこの種の接着寿司種として実用新案登録第3129623号を提案した。該実用新案は、にぎり寿司の具材として甘えび数尾をタンパク質同士に架橋反応させるトランスグルタミナーゼなどの酵素性食用接着剤を用いて並列または重ね合わせ接着して単位寿司種を構成するようにしたことを特徴とする甘えびの接着寿司種を記載している。
【特許文献1】実用新案登録第3129623号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
にぎり寿司のうち生の甘えびの寿司種は生産者から提供を受けてにぎりに載せ着けして寿司にするというルートがある。この甘えびを食用接着剤を挟んで接着するようにした寿司種は各地の寿司店などに新鮮なまま出荷配送するために製造後に冷凍することとなるが、食用接着剤は冷凍下では接着反応が生じないことから、冷凍する前におよそ1時間をかけて大気温のもとで接着反応により接着してから冷凍するようにしている。
この1時間に及ぶ大気温下での接着反応は甘えびの鮮度を劣化させて、寿司種としての品質を低下させるほか、外気に触れることで細菌等が附着して非衛生になるという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は、甘えびを食用接着剤を挟んで接着するようにした寿司種において、該食用接着剤による接着反応が始まる前のきわめて早い段階に該寿司種を冷凍した寿司種にして出荷し、出荷先による解凍にて該食用接着剤の接着反応の活性化接着により、形崩れすることなしに3尾重ね並べした大きくて豪華な甘えびの寿司種を提供可能にして、かかる課題を解決するようにしたのである。
【発明の効果】
【0005】
本発明は、寿司店などにおいては作ることができない甘えび3尾を重ね並べした大型で新鮮な寿司種を生産者より提供を受けることで、にぎり寿司の一品に加えることができることになるという効果を生ずる。
【0006】
冷凍前の1時間におよぶ接着反応時間をなくしたので、寿司種としての甘えびの鮮度,品質の劣化を防止することができるという効果を生ずる。
【0007】
出荷先での解凍による接着反応の活性化によって3尾重ね並べした甘えびの寿司種は相互に接着するから、にぎりの上に載せ付けする際に形崩れなどが全く生じないという効果を生ずる。
【0008】
寿司店は甘えび3尾を重ね並べした新鮮で大型の豪華な寿司種を常時用意することができるようになるという効果を生ずる。
【0009】
食用接着剤に酵素を含有させたので、酵素作用によって接着反応後は接着剤として残らず、しかも酵素は消化,代謝を助長するという効果を生ずる。
【0010】
甘えび3尾を重ね並べした寿司種は、冷凍前の接着時間をなくしたことで、製造能率がタイム的に向上してコストダウンするという効果を生ずる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明は、甘えびを食用接着剤を挟んで接着するようにした寿司種において、該食用接着剤に酵素を含有させるとともに接着反応が始まる前の早い段階に該寿司種を形崩れを防止すべく順次冷凍した寿司種にして出荷し、出荷先による解凍にて該食用接着剤の接着反応を活性化することにより、形崩れすることなしに3尾重ね並べした甘えびの寿司種を提供可能にしたのである。
【実施例1】
【0012】
実施例1は生甘えびを3尾重ね並べしてなる寿司種の例を示すもので、生の甘えびは頭部と殻と足をとりのぞいてむき身の甘えび1aとし、さらに尾もとりのぞいた甘えび1bとを用意して、図1乃至図2に示すように出荷用のトレイ2上に尾のない甘えび1bを2尾づつ並列させ、並列した各2尾の甘えび1b,1b間の上にトランスグルタミナーゼ等の酵素を含有してなる食用接着剤3を尾付きの甘えび1aの下面に塗布して重ね並べて3尾を一体とした大きくて豪華な寿司種1cを形成する。
【0013】
従来はこうして形成した寿司種1cを大気温下に1時間ほど置いて食用接着剤による接着反応によって寿司種1cを相互に接着させていたが、本発明は、食用接着剤による接着反応が生じない早期に寿司種1cを順次素早く冷凍するのである。およそ15分以内であれば鮮度の劣化に影響は少ないが、できれば5分以内が望ましい。寿司種1cは接着反応が生じない早い段階によって少しの振動,衝動が加わっても形崩れが生ずるため、図3に示すように寿司種1c上にフィルム4を被せ、四周をトレイ2上に密着させてからエアー抜きして真空にするのである。この過程でフィルム4は各寿司種1cを包み着して形崩れを防止することとなる。
【0014】
冷凍には急速冷凍法を採用する。急速冷凍法は大きな氷結晶の生じやすい−1℃〜−5℃の温度帯を短時間で通過することで氷の結晶が小さいものとなるので甘えびの組織の破壊がなく、解凍すると凍結前とほぼ同じ状態の鮮度と品質が再現されることとなる。冷凍後の保存温度はアメリカ農務省のT−T・T実験の結果において実証されたJASのCodex規格に準拠し、1年間以上の長期に亘って品質の維持が検証されている−18℃以下の温度帯とする。このようにして寿司種1cは形成してから素早くフィルム4にて包んで急速冷凍することによって細菌の附着、さらには乾燥,酸化の生ずることなくして衛生面と鮮度品質を良好に保ち続けることができることとなる。
【0015】
以上のようにして冷凍した甘えびを3尾重ね並べした寿司種1cは冷凍した状態のまま出荷して、配送を受けた例えば寿司店などにて解凍されることとなる。この解凍によって温度が5℃以上になると中断していた食用接着剤3の接着反応が活性化し、寿司種1cは寿司店の開店準備時間中に相互に接着した状態となる。また解凍によって寿司種1cは柔軟になり、フィルム4およびトレイ2から簡単に剥離し取出すことができることとなる。解凍が充分でないときは甘えびが硬くて取出す際に折損したりすることとなるが、充分に解凍されると折損等することなしに容易に取出すことができ、しかも接着状態が充分となる。このようにして解凍取出した寿司種1cはにぎり5の上に載せ付けしてにぎり寿司6とするのである。本発明は食用接着剤3に酵素を含有させたことで、この酵素作用により接着は甘えびの成分中のタンパク質同士の架橋反応を触媒として甘えび同士を接着することとなり、しかも架橋反応後は吸収されて接着剤として残るところがなくなって見栄えをよいものにする。なお酵素は食して害がないばかりか、消化,代謝を助長することとなる。
【実施例2】
【0016】
図5はトレイ2に寿司種1cを嵌め載せて形崩れを防止する多数の段落部2aを設けた例を示すもので、トレイ2の底板2aに甘えび1bが2尾並ぶ大きさの段落部2bを交互等に間隔を置いて多数形成し、この段落部2b内に下段となる甘えび2尾を入れ並べ、上段の甘えび1aを食用接着剤3を挟んで重ね並べしてフィルム4を被せ当てるようにしたのである。2尾の甘えびは段落部2a内に並べ入れするようにしたので能率よくきれいに整え並べることができ、下段の甘えびがずれ動くことがないので上に載せる甘えび1aも安定し、フィルム4にて押えつけることなくしても寿司種1cをトレイ2に載せ並べたときの形崩れが生じないものとなる。
【実施例3】
【0017】
図6は小さな甘えびを下段に3尾、上段に2尾の重ね並べてなるより大きな寿司種1cの例を示すもので、このように大きな寿司種1cも接着して一体化することでにぎり5の上に載せ付けても分離することがないので、従来は作ることのできなかった大きな甘えびのにぎり寿司6を提供することができることとなる。
【実施例4】
【0018】
図7は例えばマグロの赤身7aと中トロ7bと大トロ7cの3種のそれぞれ細分した具材を酵素含有の食用接着剤3を用いて並列接着して寿司種7dとした例を示すもので、従来にない食味のにぎり寿司7を提供することができるものとなる。このほか、図8に示すように小貝、小イカなどバラでは寿司種となり得ない小型の素材も酵素性食用接着剤にて並列または重ね合わせて接着して寿司種8aとして新規のにぎり寿司8を提供することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0019】
本発明は、甘えび3尾、その他の食用魚介の数尾または数切れを酵素含有の食用接着剤をつなぎにして接着してなる新規の寿司種とし、接着反応発生前に冷凍して出荷し、出荷先の解凍の進展に沿って相互に接着させるようにしたので、大型で豪華な寿司種にかかわらず、形崩れしないことで、寿司業界、家庭用のそれぞれに広く利用することができるものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】下段の甘えび2尾を並べた上に食用接着剤を塗布した上段の甘えび1尾を重ねつつある状態を示す斜視図
【図2】トレイ上に甘えびの寿司種を多数並列形成した状態を示す斜視図
【図3】寿司種上にフィルムを被せてトレイ上に密着させた状態を示す部分拡大断面図
【図4】接着した甘えびの寿司種を使用した握り寿司を示す正面図
【図5】トレイに段落部を形成した実施例を示す部分拡大断面図
【図6】甘えびを下段に3尾、上段に2尾重ね並べした寿司種によるにぎり寿司の例を示す斜視図
【図7】マグロを接着して形成した寿司種のにぎり寿司の例を示す斜視図
【図8】小型素材を接着した寿司種によるにぎり寿司の例を示す正面図
【符号の説明】
【0021】
1a,1bは生の甘えび
1cは甘えび3尾を重ね並べした寿司種
2はトレイ
2aはトレイに設けた多数の段落部
3は酵素を含有した食用接着剤
4はフィルム
5は米飯のにぎり
6は甘えびのにぎり寿司
7a,7b,7cはマグロの具材
7dはマグロの接着にてなる寿司種
7はマグロの接着寿司種にてなるにぎり寿司
8aは小貝,小イカなどの小型の素材
8は小形の素材を接着した寿司種にてなるにぎり寿司

【特許請求の範囲】
【請求項1】
甘えびを食用接着剤を挟んで接着するようにした寿司種において、該食用接着剤に酵素を含有させて且つ接着反応が始まる前の早い段階に該寿司種を形崩れを防止すべく順次冷凍して出荷し、出荷先による解凍にて該食用接着剤の接着反応の活性化接着により、形崩れすることなしに3尾重ね並べした甘えびの寿司種を提供可能にしたことを特徴とする甘えびの寿司種の製造方法。
【請求項2】
甘えびにかえて他の食用魚介類を重ね並べて一体の寿司種とする請求項1に記載の寿司種の製造方法。

【図1】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2009−27964(P2009−27964A)
【公開日】平成21年2月12日(2009.2.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−194401(P2007−194401)
【出願日】平成19年7月26日(2007.7.26)
【出願人】(593000719)東洋冷蔵株式会社 (1)
【Fターム(参考)】