説明

生ゴミマイクロ波処理装置の容器

【課題】マイクロ波透過性が良いのは勿論のこと、耐熱性が高くて焼損することが少なく、加えて、加工性、軽量性、耐衝撃性などにも優れ、さらに、生ゴミの滞留を生じさせることなく、生ゴミを回転カッタ方向へ案内できるとともに、容器による生ゴミの撹拌性の向上が図れる容器を提供する。
【解決手段】容器5をポリプロピレンとタルクとの混合原料にて一体成型する。ポリプロピレンとタルクの配合比は、ポリプロピレン60〜75重量%、タルク25〜40重量%とする。容器5の周壁内周面の一箇所に、容器内方へ突出する一つの隆起部5cを縦長に形成する。その最大突出高さは、容器底部5aの直径に対してその0.5〜3%とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生ゴミをマイクロ波にて加熱乾燥させる生ゴミマイクロ波処理装置において、生ゴミを収容する容器に関する。
【背景技術】
【0002】
生ゴミをマイクロ波にて加熱乾燥させる生ゴミマイクロ波処理装置として、図1に示したようなものは、例えば特許文献1(特許第3939585号公報)等で公知である。
【0003】
この生ゴミマイクロ波処理装置Aは、ハウジング1内に設けられた箱形のマイクロ波遮蔽室2の上面開口を、ハウジング1に蝶着された電磁遮蔽上蓋3にて開閉できるようになっている。マイクロ波遮蔽室2は、マイクロ波を反射するステンレス等の金属板4にて上面以外の面を囲繞されている。生ゴミはマイクロ波を透過する有底の容器5に収容する。この容器5は、マイクロ波遮蔽室2内に着脱自在にセットされ、収容した生ゴミを撹拌するため回転される。容器5内の底部には、生ゴミを切断するため、容器5外から回転される回転カッタが装着されている。
【0004】
マイクロ波遮蔽室2内には、ハウジング1内に設置されたマグネトロンからのマイクロ波がマイクロ波遮蔽室2の側壁下部から照射される。
また、ハウジング1内に設置された吸気ファンにて機外から吸気してマグネトロンの冷却に供された風が、電磁遮蔽上蓋3の内面(下面)に設けられた金属製の送風ガイド6にて案内されて容器5内へ送風される。更に、マイクロ波遮蔽室2の側壁上部には排気口7が設けられ、ハウジング1内の下部に設置された排気ファンにて容器5内を吸気することにより、ハウジング1外へ強制排気できるようになっている。
【0005】
このような生ゴミマイクロ波処理装置では、生ゴミを収容する容器5をマイクロ波透過材質にする必要があるが、そのために容器5の耐熱温度を高くすることが難しく、従来は、乾燥した生ゴミが燃焼するような事態になると、容器5が焼損することがあった。
【0006】
一方、特許文献2(特開2004−321940号公報)には、このような生ゴミマイクロ波処理装置において、容器内での回転カッタによる生ゴミ粉砕効率を高めるため、容器内壁から突出する縦長の複数の突出壁を、容器内壁の周方向に間隔をおいて設け、これら突出壁にて生ゴミを回転カッタに案内するようにした技術が開示されている。
【0007】
しかし、このような複数の突出壁を、容器内壁の周方向に間隔をおいて設けると、例えば粘性が高い生ゴミの場合、突出壁と突出壁との間に生ゴミが挟まれるような状況となって、突出壁と突出壁との間に滞留して容器内面から離れず、その結果、局所的に過剰加熱されて容器内面に焦げ付いて乾燥効率を低下させたり、燃焼して容器の焼損を招く恐れがある。
【特許文献1】特許第3939585号公報
【特許文献2】特開2004−321940号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
そこで、本発明の第1の課題は、生ゴミを収容して生ゴミマイクロ波処理装置のマイクロ波遮蔽室内にセットされる容器であって、マイクロ波透過性が良いのは勿論のこと、耐熱性が高くて焼損することが少なく、加えて、加工性、軽量性、耐衝撃性などにも優れた容器を提供することにある。
【0009】
本発明の第2の課題は、容器内面に複数の突出壁を設けた場合におけるような、生ゴミの滞留を生じさせることなく、生ゴミを回転カッタ方向へ案内できるとともに、容器による生ゴミの撹拌性の向上が図れるようにすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に係る本発明の容器は、上記第1の課題を達成するため、ポリプロピレンとセラミックスとの混合原料にて一体成型されている。
請求項2に係る発明は、ポリプロピレンと混合するセラミックスをタルクとする。
【0011】
その実施形態である請求項3に係る発明は、ポリプロピレンとタルクの配合比を、ポリプロピレン60〜75重量%、タルク25〜40重量%としたものである。
【0012】
請求項4に係る発明は、上記第2の課題も達成するため、容器の周壁内周面の一箇所に、容器内方へ突出する一つの隆起部を縦長に形成したものである。
その実施形態である請求項5に係る発明は、容器の周壁内周面からの隆起部の最大突出高さを、容器底部の直径に対してその0.5〜3%としたものである。
【0013】
請求項6に係る発明は、隆起部よりも上位置の容器周壁に、その内径を下側よりも段差をもって大きくする段部を形成したものである。
【発明の効果】
【0014】
本発明による容器は、ポリプロピレンとタルクとの混合原料にて一体成型されているので、ポリプロピレンの長所を活かしながら、しかも、必要条件であるマイクロ波透過性を充分に維持しながら、セラミックス、好ましくはタルクにより耐熱性を高めることができる。
すなわち、ポリプロピレンは、プロピレンが重合して規則正しく配列した可塑性樹脂で、先ずマイクロ波透過性が高い、比重が軽い、引っ張り強度・圧縮強度・衝撃強度が高い、酸やアルカリに強い、加工性が良い、樹脂材料として安価であるなど優れた性質があり、耐熱性においても、他の熱可塑性プラスチックに比べると耐熱温度が130〜165℃と高い。しかし、生ゴミをマイクロ波照射により乾燥させようとすると、燃焼温度に達することがあるため、ポリプロピレンのみでは充分な耐熱性を持たせることができない。
そこで、ポリプロピレンにタルクを混合すると、ポリプロピレンの上記のような長所を損なうことなく、ポリプロピレン自体の耐熱温度以上の耐熱性を与えることができる。
タルク(滑石)は、組成式がMgSi10(OH)で、水酸化マグネシウムとケイ酸塩からなる鉱物であるため、その粒子をポリプロピレンと混合して容器として一体成型すれば、ポリプロピレンのみで成型した場合に比べて、耐熱性が格段に向上し、生ゴミが燃焼しても焼損しなくなる。しかも、タルクは、他の鉱物に比べてマイクロ波透過性が高いため、ポリプロピレンの高いマイクロ波透過性を損なわない。
タルクは、このような長所があるが、本発明はこれと同等の性質を有する他のセラミックスの代用を妨げない。
【0015】
請求項3に係る発明は、ポリプロピレンとタルクの配合比を、ポリプロピレン60〜75重量%、タルク25〜40重量%としたので、ポリプロピレンとタルクの双方の長所を充分に活かした容器とすることができる。
【0016】
請求項4に係る発明は、容器の周壁内周面の一箇所のみに、容器内方へ突出する一つの隆起部を縦長に形成したので、特許文献2に記載のもののように、突出壁と突出壁との間に生ゴミが滞留して容器内面から離れず、局所的に過剰加熱されて容器内面に焦げ付いて乾燥効率を低下させたり、燃焼して容器の焼損を招くようなことがなく、生ゴミを一つの隆起部にて回転カッタ方向へ案内できるとともに、容器による生ゴミの撹拌性の向上が図れる。
【0017】
請求項5に係る発明は、隆起部の最大突出高さを、容器底部の直径に対してその0.5〜3%としたので、隆起部による上記のような作用を、容器の胴サイズに応じて適切に行うことができる。
【0018】
請求項6に係る発明は、隆起部よりも上位置の容器周壁に、その内径を下側よりも段差をもって大きくする段部を形成したので、その段部を生ゴミ収容高さの目盛とすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
次に、本発明の好適な実施例を図面に基づいて詳細に説明する。
【実施例】
【0020】
図2及び図3に本実施例の容器5を、その底部5aの上面中央に回転カッタ8、下面中央に継手口金9を取り付けて示す。図4はこのようにした容器5を、生ゴミマイクロ波処理装置Aのマイクロ波遮蔽室2内にセットした状態を示す。
【0021】
容器5は、ポリプロピレンとタルクとを、ポリプロピレン60〜75重量%、タルク25〜40重量%の配合比で混合した原料にて、有底円筒形に一体成型され、マイクロ波透過性が高い、耐熱温度が高い、比重が軽い、引っ張り強度・圧縮強度・衝撃強度が高い、酸やアルカリに強い、生ゴミが付着しないなどの、生ゴミマイクロ波処理装置のための容器として優れた材質となっている。
【0022】
容器5の周壁5bは、その下端より緩やかに湾曲しながら徐々に直径が大きくなっていて、その緩やかに湾曲しながら大きくなっている周壁内周面の一箇所のみに、容器内方へ突出する一つの隆起部5cが、その周壁部分を、図4図に示すように、内側にく字状に凹ませて縦長に形成されている。この隆起部5cは、その突出高さを見ると、周壁5bが緩やかに湾曲しながら上に行くに従い徐々に直径が大きくなっているのに応じて、周壁内周面からの突出高さを上に行くに従い徐々に高くして、下から上へ緩やかな傾斜でもって最大突出部分5dに至り、そこから上は下側よりも急な傾斜で低くくなっている。
【0023】
隆起部5cの最大突出部分5dの突出高さは、容器5の底部5aの直径に対して0.5〜3%としてある。例えば、容器5の底部5aの直径を200mmとした場合、図3及び図4において最大突出部分5dの突出高さHを約14.5mmとし、また、最大突出部分5dから急に低くなるその上側部分の傾斜角度θを約45度とする。
【0024】
また、容器5の周壁5bには、隆起部5cよりも上位置において、内径を下側よりも段差をもって大きくする上下2段の段部5e・5fが形成されている。さらに、周壁5bには、上段の段部5eよりも上位置に、対向する2つの把手取付孔10が設けられている。そして、この2つの把手取付孔10にC形の金属製把手11の両端部を嵌入させて、把手11が容器5に対し回動自在に装着されている。
【0025】
回転カッタ8は、そのカッタ軸8aを軸受けしたドーム形の軸受台12により、容器5の底部5a上に装着される。回転カッタ8は、上向きカッタ羽根13と下向きカッタ羽根14とを互いに交差させて組み合わせて構成される。カッタ軸8aは、容器5の底部5aの中央を貫通しており、その下端には、金属製のカッタ側クラッチ15が固定されている。このクラッチ15は、底部5aの外側において継手口金9にて周囲を覆われる。
【0026】
一方、図5に示すように、マイクロ波遮蔽室2の底部中央には、容器5を着脱自在に載置する回転受け台16が、マイクロ波遮蔽室2の底部外側の軸受17にて回転自在に支承されている。この回転受け台16は皿状で、容器5側の継手口金9と着脱自在に嵌合する継手構造となっている。回転受け台16は、生ゴミマイクロ波処理装置Aのハウジング1内の下部に設置された容器回転モータ18の回転を回転伝達機構を介して伝達される。
【0027】
また、ハウジング1内の下部に設置されたカッタモータ19にて回転されるカッタ駆動軸20は、回転受け台16の軸受17の中心を上方へと貫通しており、このカッタ駆動軸20の上端には、モータ側クラッチ21が固定されている。このクラッチ21は回転受け台16にて周囲を囲まれている。
【0028】
容器5を回転受け台16上に載置すると、カッタ側クラッチ15がモータ側クラッチ21と上下に向かい合って接離自在に噛み合い、カッタモータ19の回転が回転カッタ8に伝達され、回転カッタ8が連続的又は間欠的に回転される。
【0029】
容器5は、回転カッタ8をこのように回転させながら、回転受け台16上においてこれと一体に回転される。
【0030】
ハウジング1内には、マイクロ波遮蔽室2外においてマグネトロン22が設置されており、これからのマイクロ波は、導波管23を通じてマイクロ波遮蔽室2内へその中間部から照射され、容器5の周壁5bを透過して容器5内の生ゴミに照射される。
【0031】
容器5内の生ゴミは、回転カッタ8により切断と同時に細かく撹拌され、また、容器5自体が回転することにより大きく撹拌されるが、容器5の周壁5bに突出形成した隆起部5cにより撹拌を助長されるとともに、回転カッタ8へ近づけられる。隆起部5cは、容器5の周壁内周面の一箇所のみに一つだけ縦長に形成されているので、粘性が高い生ゴミであっても、隆起部5cがあるために容器5の周壁内周面上に滞留するようなことはない。
【0032】
容器5の周壁5bには、上下2段の段部5e・5fが形成されているので、これを生ゴミ収容高さの目盛として適切な処理を行える。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【図1】本発明による容器を使用する生ゴミマイクロ波処理装置の一例の斜視図である。
【図2】本発明の実施例である容器の一部切欠斜視図である。
【図3】その縦断面図である。
【図4】その周壁に突出形成された隆起部の拡大横断面である。
【図5】この容器を生ゴミマイクロ波処理装置のマイクロ波遮蔽室内にセットし、生ゴミマイクロ波処理装置内の機構を簡略化して示す断面図である。
【符号の説明】
【0034】
A 生ゴミマイクロ波処理装置
1 ハウジング
3 電磁遮蔽上蓋
4 金属板
5 容器
5a 底部
5b 周壁
5c 隆起部
5d 最大突出部分
5e・5f 段部
6 送風ガイド
7 排気口
8 回転カッタ
9 継手口金
10 把手取付孔
11 把手
12 軸受台
13 上向きカッタ羽根
14 下向きカッタ羽根
15 カッタ側クラッチ
16 回転受け台
17 軸受
18 容器回転モータ
19 カッタモータ
20 カッタ駆動軸
21 モータ側クラッチ
22 マグネトロン
23 導波管

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生ゴミマイクロ波処理装置のマイクロ波を照射されるマイクロ波遮蔽室内に、生ゴミを収容して着脱自在に設置される容器であって、ポリプロピレンとセラミックスとの混合原料にて一体成型されていることを特徴とする生ゴミマイクロ波処理装置の容器。
【請求項2】
セラミックスがタルクであることを特徴とする請求項1に記載の生ゴミマイクロ波処理装置の容器。
【請求項3】
ポリプロピレンとタルクの配合比が、ポリプロピレン60〜75重量%、タルク25〜40重量%であることを特徴とする請求項2に記載の生ゴミマイクロ波処理装置の容器。
【請求項4】
容器の周壁内周面の一箇所に、容器内方へ突出する一つの隆起部が縦長に形成されていることを特徴とする請求項1ないし3のいずれかに記載の生ゴミマイクロ波処理装置の容器。
【請求項5】
容器の周壁内周面からの隆起部の最大突出高さが、容器底部の直径に対してその0.5〜3%であることを特徴とする請求項4に記載の生ゴミマイクロ波処理装置の容器。
【請求項6】
隆起部よりも上位置の容器周壁に、その内径を下側よりも段差をもって大きくする段部が形成されていることを特徴とする請求項4又は5に記載の生ゴミマイクロ波処理装置の容器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−247971(P2009−247971A)
【公開日】平成21年10月29日(2009.10.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−98149(P2008−98149)
【出願日】平成20年4月4日(2008.4.4)
【出願人】(301022493)株式会社ジャパン・エンジニアリング・サプライ (5)
【出願人】(592014067)
【Fターム(参考)】