説明

生体内アクチュエータ及び骨調整装置

【課題】外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる生体内アクチュエータを提供する。
【解決手段】電磁ユニット11は、生体外102から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れることで磁力を発生する電磁石15を有する。ケーシング12は、電磁石15を直線方向に沿って変位可能に保持する。弾性部材13は、電磁石15をケーシング12内において付勢する。電磁石15は、電磁誘導作用により磁力を発生した状態において、生体外102から作用する磁力によって駆動されて弾性部材13の付勢力に抗して直線方向に沿って変位する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、直線方向に沿って変位する動作が可能な動作部を有するとともに生体内に配置される生体内アクチュエータと、その生体内アクチュエータを備えて骨の相対的な位置を調整する骨調整装置とに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、直線方向に沿って変位する動作が可能な動作部を有するとともに生体内に配置される生体内アクチュエータを備え、骨の相対的な位置を調整する骨調整装置が知られている(特許文献1乃至特許文献4参照)。これらの骨調整装置は、生体内に配置されたアクチュエータが駆動される構成であるため、生体内に骨調整装置を埋入する埋入手術が行われた後は、外科手術を伴わずに骨の相対的な位置を調整することができる。
【0003】
特許文献1に開示された骨調整装置は、大腿骨接手部分と脛骨接手部分とを備えるヒンジ接手形式の補形物膝接手として構成されている。そして、この特許文献1においては、長さを変化させるための生体内アクチュエータとしてスピンドル及びナットからなるネジ機構を備えるものが設けられ、このネジ機構を作動させるための機構が補形物膝接手の最大曲げ位置において駆動される構成が開示されている。
【0004】
特許文献2に開示された骨調整装置は、骨に伸長力を加えるための延伸装置として構成され、長さを伸長するための生体内アクチュエータとしてスピンドル及びナットからなるネジ機構を備えるものが設けられている。そして、この特許文献2においては、生体外に配置された電磁石コイルによって移動する磁界を発生させることによって、スピンドルにギアボックスを介して接続された磁石が回転され、スピンドルが回転する構成が開示されている。
【0005】
特許文献3に開示された骨調整装置は、人工骨インプラントとして構成され、生体内アクチュエータとしてバネを備えるものが設けられている。そして、この特許文献3においては、誘導電流によるジュール効果によって導電層を加熱し、その熱伝導によってポリエチレンで構成された部材の一部を軟化させてクリープ変形させるとともにバネ力により部材の相対移動を行わせるものが開示されている。
【0006】
特許文献4に開示された骨調整装置は、骨の伸長装置として構成され、生体内アクチュエータとしてシリンダ及びピストンを備えるものが設けられている。そして、この特許文献4においては、生体内に埋め込まれた容器をポンプにより作動させることで作動用食塩水をシリンダに供給する構成が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2757976号明細書(第2−3頁、第1図)
【特許文献2】特表2003−530195号公報(第7頁、第1−2図)
【特許文献3】特表平10−508524号公報(第9−10頁、第3図)
【特許文献4】特表平9−512717号公報(第9−11頁、第1図、第7−8図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
前述のように、特許文献1乃至特許文献4においては、生体内アクチュエータを備えて骨の相対的な位置を調整する骨調整装置が開示されている。しかしながら、これらの骨調
整装置においては、機械的な駆動力を付加することで、或いは磁界や誘導電流を生じさせることで、生体内アクチュエータが駆動されるように構成されている。このため、患者や術者が意図していないような機械的な駆動力や磁界、誘導電流が生じた場合であっても、生体内アクチュエータが意図に反して駆動されてしまう虞があり、誤作動を生じてしまう虞がある。
【0009】
本発明は、上記実情に鑑みることにより、外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる、生体内アクチュエータ及びこの生体内アクチュエータを備える骨調整装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するための第1発明に係る生体内アクチュエータは、直線方向に沿って変位する動作が可能な動作部を有するとともに生体内に配置される生体内アクチュエータであって、生体外から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れることで磁力を発生するとともに前記動作部として設けられる電磁石を有する電磁ユニットと、前記電磁石を直線方向に沿って変位可能に保持するケーシングと、前記電磁石を前記ケーシング内において付勢する弾性部材と、を備え、前記電磁石は、前記電磁誘導作用により磁力を発生した状態において、生体外から作用する磁力によって駆動されて前記弾性部材の付勢力に抗して直線方向に沿って変位することを特徴とする。
【0011】
この発明によると、生体外から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流により励磁される電磁石が、直線方向に沿って変位する動作部として設けられ、ケーシングに保持されるとともに弾性部材により付勢されている。そして、患者や術者がコイルを有する電磁石や永久磁石といった磁石を用い、上記電磁誘導作用とは独立してさらに生体外から磁力を作用させることにより、あるいは上記電磁誘導作用とともに生体外から磁力を作用させることにより、励磁した状態の電磁石が弾性部材の付勢力に抗して変位することになる。このため、外科手術を行わずに生体内アクチュエータを駆動することができる。また、生体内アクチュエータの駆動のためには、上述のように、生体外から電磁誘導作用と磁力とを同時に作用させる必要がある。このため、生体外から作用する条件が複数成立しないと生体内アクチュエータが駆動されないため、患者や術者が意図していないような駆動が行われる誤作動が生じてしまうことを抑制することができる。
【0012】
従って、本発明によると、外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる、生体内アクチュエータを提供することができる。
【0013】
第2発明に係る生体内アクチュエータは、第1発明の生体内アクチュエータにおいて、前記電磁ユニットは、前記電磁誘導作用により給電されて前記電磁石に通電する受電コイル部を有し、前記受電コイル部は、前記ケーシングの外側に配置されて、前記ケーシングの壁部に形成された貫通孔を貫通して延びるように配置されたリード線を介して前記電磁石に接続されていることを特徴とする。
【0014】
この発明によると、生体外からの電磁誘導作用に基づいて電磁石に通電する受電コイル部が、リード線を介してケーシングの外側に配置されている。このため、受電コイル部と電磁石とを離れた位置に配置させることが容易となる。これにより、受電コイル部に給電するための電磁誘導作用の影響を電磁石が受けにくく、電磁石を駆動するための磁力の影響を受電コイル部が受けにくい構成を実現し易くなる。
【0015】
第3発明に係る生体内アクチュエータは、第2発明の生体内アクチュエータにおいて、前記受電コイル部は、前記電磁石が変位する方向と平行に延びる前記ケーシングの側面に
対して取り付けられていることを特徴とする。
【0016】
この発明によると、受電コイル部がケーシングに対して電磁石の変位方向と平行に延びる側面に取り付けられる。このため、電磁誘導作用により給電するための給電コイル部を近づける方向を、電磁石を変位させるために磁石を近づける方向に対して90度ずらすように、生体内アクチュエータを構成することができる。このため、電磁石と受電コイル部との間でさらに相互に影響を受けにくい構成を実現することができる。
【0017】
第4発明に係る生体内アクチュエータは、第1発明乃至第3発明のいずれかの生体内アクチュエータにおいて、前記電磁石は、前記ケーシング内において一端側に向かって押し付けられるように前記弾性部材によって付勢され、生体外から作用する磁力が前記ケーシングの一端側から作用することで駆動されることを特徴とする。
【0018】
この発明によると、電磁石は、弾性部材によりケーシングの一端側に押し付けられ、この一端側から作用する磁力によって駆動される。このため、電磁石に近い位置で生体外から効率よく磁力を作用させて電磁石を駆動させることができ、より磁力の小さい磁石での操作を可能とすることができる。
【0019】
第5発明に係る生体内アクチュエータは、第4発明の生体内アクチュエータにおいて、前記電磁石に取り付けられるとともに、前記ケーシングにおいて前記電磁石が押し付けられる一端側とは反対側の他端側に形成された開口から突出するロッド部材をさらに有し、前記弾性部材は、前記ロッド部材が中心を貫通するように配置されるコイルバネとして形成されていることを特徴とする。
【0020】
この発明によると、生体内アクチュエータにおける電磁石の変位をケーシングから突出するロッド部材を介して生体内に配置される他の装置に伝達してこの装置を駆動することができる。そして、コイルバネとして形成された弾性部材の中心を貫通するようにロッド部材が配置されるため、ロッド部材と弾性部材とをケーシング内における共通するスペースを活用して効率よく配置することができる。このため、よりコンパクトな構成の生体内アクチュエータを実現することができる。
【0021】
第6発明に係る生体内アクチュエータは、第1発明の生体内アクチュエータにおいて、前記電磁ユニットは、前記電磁石として設けられて生体内に配置される内部コイルを備え、生体外に配置される外部コイルに通電されて当該外部コイルの内側に生じる磁場中に前記内部コイルが配置されることで、当該内部コイルにおいて、生体外から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れて磁力を発生することを特徴とする。
【0022】
この発明によると、電磁ユニットの電磁石が生体内に配置される内部コイルとして設けられ、この内部コイルが生体外に配置される外部コイルの内側の磁場中に配置される。そして、外部コイルに通電が行われることで、内部コイルにおいて、生体外からの電磁誘導作用による誘導電流が流れて磁力を発生することになる。このため、生体外で内部コイルの外側に位置するように外部コイルを配置して通電することで、電磁ユニットの電磁石に対して直接的に効率よく且つ容易に給電して、この電磁石に誘導電流を流すことができる。また、内部コイルとは別個の受電コイル部を設けなくても、電磁ユニットの電磁石に直接に誘導電流を流すことができる。
【0023】
第7発明に係る生体内アクチュエータは、第6発明の生体内アクチュエータにおいて、前記外部コイルに交流電圧が印加されて通電されることで、前記内部コイルに前記電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れることを特徴とする。
【0024】
この発明によると、外部コイルに交流電圧を印加して通電するだけで、外部コイルにて発生する磁場が変化して内部コイルにおいて電磁誘導作用により誘導電流が流れることになる。このため、外部コイルの位置を変動させなくてもよく、電磁ユニットの電磁石に対して更に容易に誘導電流を流すことができる。
【0025】
第8発明に係る生体内アクチュエータは、第7発明の生体内アクチュエータにおいて、前記外部コイルに交流電圧が印加されて磁場が生じることによって、前記電磁誘導作用により前記内部コイルにおいて発生する磁力と、当該外部コイルにおいて発生して生体外から作用する磁力とが、互いに斥け合う力として発生することを特徴とする。
【0026】
この発明によると、外部コイルに交流電圧を印加して生じさせる生体外からの磁場の変化による電磁誘導作用により内部コイルにおいて磁場が生じ、外部コイルの磁場と内部コイルの磁場とが互いに作用する。そして、内部コイルにおいて外部コイルとの間で発生する磁力と、外部コイルにおいて内部コイルとの間で発生する生体外からの磁力とが、互いに斥け合う反発力として発生することになる。これにより、外部コイルに交流電圧を印加して通電するだけで、電磁ユニットの電磁石を弾性部材の付勢力に抗して容易に駆動することができる。
【0027】
第9発明に係る生体内アクチュエータは、第7発明の生体内アクチュエータにおいて、前記電磁石は、前記ケーシング内において一端側に向かって押し付けられるように前記弾性部材によって付勢され、生体外において前記ケーシングの一端側に磁石が配置されることで生体外から作用する磁力によって駆動されることを特徴とする。
【0028】
この発明によると、電磁ユニットの電磁石は、弾性部材によりケーシングの一端側に押し付けられ、生体外でこの一端側に配置された磁石から作用する磁力によって駆動される。このため、外部コイルに交流電圧を印加して通電することによる駆動力が小さい場合であっても、上記の磁石を更に用いることで、電磁ユニットの電磁石に対して、弾性部材の付勢力に抗するに十分な所望の駆動力をより確実に付与することができる。尚、生体外においてケーシングの一端側に配置する磁石としては、永久磁石でも電磁石でもいずれでもよい。尚、交流電圧が印加されるコイルを有する電磁石を上記の磁石として用いる場合には、電磁ユニットの内部コイルにおいて電磁誘導作用により生じる誘導電流の位相との関係に基づいて、電磁ユニットの電磁石と生体外に配置される上記磁石との間で斥け合う力が生じるように、位相が調整された交流電圧を上記磁石に印加する必要がある。
【0029】
また、他の観点の発明として、上述したいずれかの生体内アクチュエータを備える骨調整装置の発明を構成することもできる。即ち、第10発明に係る骨調整装置は、骨の相対的な位置を調整する骨調整装置であって、第1発明乃至第9発明のいずれかの生体内アクチュエータと、両端側においてそれぞれ骨に対して固定され又は係合するように取り付けられる第1取付部及び第2取付部を有し、前記生体内アクチュエータが配置されるとともに、前記電磁石の変位に基づいて、前記第1取付部及び前記第2取付部の一方に対する他方の相対位置を変更する調整機構と、を備え、前記調整機構により、前記第1取付部が取り付けられる第1の骨と前記第2取付部が取り付けられる第2の骨との相対的な位置を調整することを特徴とする。
【0030】
この発明によると、生体内アクチュエータの電磁石の変位に基づいて第1及び第2取付部の相対位置を変更する調整機構により、第1及び第2取付部がそれぞれ取り付けられる第1及び第2の骨の相対的な位置が調整される。このように、前述した生体内アクチュエータにより駆動されて骨の相対的な位置を調整する骨調整装置を構成することができる。従って、外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる、骨調整装置を提供することができる。
【0031】
第11発明に係る骨調整装置は、第10発明の骨調整装置において、前記調整機構は、前記第1取付部及び前記第2取付部の一方を他方に対して直線方向に沿って相対変位させるように駆動する直線駆動部と、前記電磁石が変位する方向における駆動力をその作用方向を変換して前記直線駆動部に伝達する駆動力方向変換部とを、を有することを特徴とする。
【0032】
この発明によると、生体内アクチュエータの駆動力の作用方向を駆動力方向変換部により変換し、直線駆動部により直線方向に沿って相対変位させるように第1及び第2の骨の相対的な位置を調整することができる。このため、生体内アクチュエータの駆動力の作用方向と第1及び第2の骨の位置調整方向とを適宜組み合わせて実現することができ、生体内アクチュエータと調整機構とがよりコンパクトなスペースに効率よく配置された骨調整装置を実現することができる。
【0033】
第12発明に係る骨調整装置は、第10発明の骨調整装置において、前記調整機構は、前記第1取付部及び前記第2取付部の一方を他方に対して直線方向に沿って相対変位させるように駆動する直線駆動部と、前記電磁石が変位する方向である電磁石変位方向における駆動力を当該電磁石変位方向を中心とする回転力に変換して前記直線駆動部に伝達する駆動力回転変換部とを、有し、前記直線駆動部は、ネジ機構として設けられて前記第1取付部及び前記第2取付部の一方を他方に対して直線方向に沿って相対変位させることを特徴とする。
【0034】
この発明によると、生体内アクチュエータの駆動力を駆動力回転変換部によって電磁石変位方向を中心とする回転力に変換し、ネジ機構として構成された直線駆動部により直線方向に沿って相対変位させるように第1及び第2の骨の相対的な位置を調整することができる。このため、生体内アクチュエータの駆動力の作用方向と直線駆動部による第1及び第2の骨の位置調整方向とを一致させる骨調整装置を実現することができる。これにより、生体内アクチュエータと調整機構とがよりコンパクトなスペースに効率よく配置された骨調整装置を実現することができる。
【0035】
第13発明に係る骨調整装置は、第12発明の骨調整装置において、前記駆動力回転変換部は、一方の端部に歯面が形成され、前記電磁石とともに前記電磁石変位方向に変位する内歯車と、一方の端部に歯面が形成され、前記内歯車の周囲に配置された環状の外歯車と、前記内歯車に対して内側で噛合可能であるとともに前記外歯車に対して外側で噛合可能な歯面が端部に形成され、前記内歯車及び前記外歯車に対向するよう配置されて前記直線駆動部におけるネジ軸に回転力を伝達する対向歯車と、を有し、前記内歯車が前記対向歯車と噛み合いながら前記電磁石とともに変位して当該対向歯車を前記外歯車から離間させた後、前記弾性部材の付勢力によって前記電磁石とともに前記内歯車が変位して当該内歯車が前記対向歯車から離間するとともに当該対向歯車と前記外歯車とが噛合することで、前記電磁石変位方向における駆動力を当該電磁石変位方向を中心とする回転力に変換して前記直線駆動部に伝達することを特徴とする。
【0036】
この発明によると、駆動力回転変換部が、内歯車と、その外側に配置された外歯車と、内歯車に内側で外歯車に外側で噛合する対向歯車とで構成される。そして、電磁ユニットの電磁石が磁力で変位したときは内歯車が対向歯車を外歯車から離間させ、弾性部材の付勢力で電磁石の変位が戻るときは対向歯車が外歯車と噛み合いながら回転して直線駆動部のネジ軸を回転する。このため、電磁ユニットの電磁石の駆動力を電磁石変位方向を中心とする回転力に変換して直線駆動部に伝達する駆動力回転変換部を、内歯車と外歯車と対向歯車とを用いたコンパクトな構成で実現することができる。
【0037】
第14発明に係る骨調整装置は、第10発明乃至第13発明の骨調整装置において、前記第1の骨及び前記第2の骨の少なくともいずれか一方の長手方向に沿って前記第1の骨と前記第2の骨との間隔を拡大するように前記第1の骨と前記第2の骨との相対的な位置を調整することを特徴とする。
【0038】
この発明によると、骨調整装置により、第1及び第2の骨の少なくともいずれかの長手方向に沿って第1及び第2の骨の間隔が拡大されるように調整される。これにより、骨と骨との相対位置を引き伸ばすように延長する骨延長装置としての骨調整装置を実現することができる。
【0039】
第15発明に係る骨調整装置は、第10発明乃至第13発明の骨調整装置において、前記第1の骨及び前記第2の骨の長手方向に対して直交する方向又は斜めの方向において前記第1の骨と前記第2の骨との間隔を変更するように前記第1の骨と前記第2の骨との相対的な位置を調整することを特徴とする。
【0040】
この発明によると、骨調整装置により、第1及び第2の骨の長手方向に対して直交又は斜めの方向において第1及び第2の骨の間隔が変更されるように調整される。これにより、例えば脊柱の歪みを矯正する脊椎矯正装置のように、骨と骨との相対位置を所定の方向に矯正する骨矯正装置としての骨調整装置を実現することができる。
【発明の効果】
【0041】
本発明によると、外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる、生体内アクチュエータ及びこの生体内アクチュエータを備える骨調整装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0042】
【図1】本発明の第1実施形態に係る生体内アクチュエータが生体内に配置された状態を模式的に示す断面図である。
【図2】図1に示す生体内アクチュエータの作動を説明するための断面図である。
【図3】本発明の第2実施形態に係る生体内アクチュエータが生体内に配置された状態を模式的に示す断面図である。
【図4】図3に示す生体内アクチュエータの作動を説明するための断面図である。
【図5】本発明の第1実施形態に係る骨調整装置を示す断面図である。
【図6】図5に示す骨調整装置が、人工関節として適用された例を骨の断面とともに示す断面図である。
【図7】図6に示す骨調整装置の作動を説明する断面図である。
【図8】図6に示す骨調整装置の変形例に係る骨調整装置を示す断面図である。
【図9】本発明の第2実施形態に係る骨調整装置を示す断面図である。
【図10】図9に示す骨調整装置が適用される脊柱を説明するための脊柱の正面図である。
【図11】図9に示す骨調整装置の変形例に係る骨調整装置を示す断面図である。
【図12】本発明の第3実施形態に係る骨調整装置を示す断面図である。
【図13】図12に示す骨調整装置が、人工関節として適用された例を骨の断面とともに示す断面図である
【図14】図12に示す骨調整装置における歯車機構の作動を説明するための側面図である。
【図15】図12に示す骨調整装置における歯車機構の作動を説明するための側面図である。
【図16】図12に示す骨調整装置の作動を説明する断面図である。
【図17】図6に示す骨調整装置における生体内アクチュエータの他の駆動形態を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0043】
以下、本発明を実施するための形態について図面を参照しつつ説明する。尚、本発明の実施形態に係る生体内アクチュエータは、直線方向に沿って変位する動作が可能な動作部を有するとともに生体内に配置される生体内アクチュエータとして広くて適用できるものである。また、本発明の実施形態に係る骨調整装置は、骨の相対的な位置を調整する骨調整装置として広く適用できるものである。
【0044】
[生体内アクチュエータの第1実施形態]
(生体内アクチュエータの全体構成)
図1は、本発明の第1実施形態に係る生体内アクチュエータ1が人体に対して適用されて生体内である人体の内部に配置された状態を模式的に示す断面図である。尚、図1では、人体については、皮膚100の外形の一部を図示しており、人体組織の図示を省略している。また、図1では、皮膚の内側である生体内101及び皮膚の外側である生体外102の各領域を矢印で示している。また、生体内アクチュエータ1は、図示しないシール手段により、この生体内アクチュエータ1とその周囲の生体組織とが電気的に遮断されており、漏電などが防止される構成になっている。
【0045】
図1に示す生体内アクチュエータ1は、生体内101に配置された状態で用いられる。そして、この生体内アクチュエータ1は、電磁ユニット11、ケーシング12、弾性部材13、ロッド部材14などを備えて構成されている。尚、図1において、電磁ユニット11及びケーシング12は断面図を示している。
【0046】
(電磁ユニットの構成)
図1に示すように、電磁ユニット11は、電磁石15、磁心16、受電コイル部17、リード線18を備えて構成されている。電磁石15は、後述する給電装置103によって生体外102から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れることで励磁されて磁力を発生するように構成されている。尚、本実施形態では、この電磁石15は、上記電磁誘導作用により誘導電流が流れて磁場が発生し、後述のように生体外での磁場発生手段である磁石104によって生体外からの磁場が作用することで、磁石104との間で磁力を発生するように構成されている。そして、この電磁石15は、リード線18を介して受電コイル部17と接続されている。また、電磁石15の中心部には、より強い磁力を発生させることができるようにするため、磁心16が配置されている。この磁心16を形成する材料としては、軟磁性材料が適しており、例えば、Fe−Co系合金などを用いることができる。
【0047】
電磁ユニット11の受電コイル部17は、給電装置103からの電磁誘導作用により非接触で給電されてリード線18を介して電磁石15に通電するように構成されている。尚、給電装置103は、生体内アクチュエータ1を駆動するために必要な複数(2つ)の機器のうちの1つであり、給電コイル部103a、電源103bなどを備えて構成されている。給電コイル部103aと受電コイル部17とを接近させるように生体外102から皮膚100に対して給電装置103を近づけることで、電磁誘導作用により生じた誘導電流が受電コイル部17及び電磁石15が接続された回路に流れ、電磁石15が通電されて励磁されることになる。また、受電コイル部17は、適宜被覆された状態でケーシング12の外側に配置されている。
【0048】
(ケーシングの構成)
図1に示すように、ケーシング12は、円筒状に形成されており、その内周側において電磁石15の外周を支持し、円筒軸方向である直線方向(図中両端矢印A方向)に沿って電磁石15を変位可能に保持している。このケーシング12は、例えば、チタン合金等を用いて形成することができる。尚、電磁石15は、ケーシング12により直線方向に沿って変位可能に保持されるように構成されることで、本実施形態において、直線方向に沿って変位する動作が可能な動作部として設けられている。
【0049】
また、ケーシング12は、電磁石15が内部で対向する一端側が皮膚100に対向するように配置されている。そして、ケーシング12の一端側の端部には、磁束部材19が取り付けられている。この磁束部材19は、後述する磁石104(図2参照)が生体外102から皮膚100を介して生体内アクチュエータ1に近づけられたときに、磁石104からの磁場を伝達し易くするために設けられている。この磁束部材19を形成する材料としては、透磁率の高い材料が適しており、例えば、Fe−Co系合金や鉄酸化物のフェライトなどを用いることができる。
【0050】
また、ケーシング12の側面の壁部には、円筒軸方向に沿って延びるスリット状の孔として設けられた貫通孔12aが形成されている。電磁石15と受電コイル部17とを接続するリード線18が、貫通孔12aを貫通して延びるように配置されている。リード線18が配置される貫通穴12aにおいては、図示しないシール手段によりケーシング12の内部と外部とが封止された状態に維持されている。尚、貫通孔12aを介して延びるリード線18に接続される受電コイル部17は、電磁石15が変位する方向と平行に延びるケーシング12の側面に対して取り付けられている。
【0051】
(弾性部材の構成)
図1に示すように、弾性部材13は、例えばコイルバネとして形成されており、その伸縮方向がケーシング12の円筒軸方向に沿うようにケーシング12内に配置され、電磁石15をケーシング12内において付勢するように構成されている。そして、弾性部材13の一端側は電磁石15に当接し、弾性部材13の他端側はケーシング12の他端側において係止されている。これにより、電磁石15は、ケーシング12内において一端側に向かって押し付けられるように弾性部材13によって付勢される。尚、ケーシング12においては電磁石15が押し付けられる一端側とは反対側の他端側に開口20が形成されており、弾性部材13の他端側はケーシング12における開口20を形成する他端側の縁部分にて係止されている。
【0052】
(ロッド部材の構成)
図1に示すように、ロッド部材14は、電磁石15に取り付けられるとともにケーシング12の開口20から突出するように配置されている。そして、ロッド部材14は、ケーシング12内においてコイルバネとして設けられている弾性部材13の中心を貫通するよ
うに配置されている。また、ロッド部材14は、固定部材14aと揺動部材14bとを備えて構成されている。固定部材14aの一端側は、電磁石15に対して固定されるように取り付けられており、固定部材14aの他端側には、揺動部材14bが取り付けられている。尚、揺動部材14bは、その一端側が固定部材14aに対して所定の方向において揺動自在に取り付けられている。
【0053】
(生体内アクチュエータの作動)
次に、上述した生体内アクチュエータ1の作動について説明する。生体内アクチュエータ1は、ケーシング12内において電磁石15が弾性部材13により押し付けられている一端側が皮膚100に近い側に位置するように、生体内101において配置される。そして、生体内アクチュエータ1は、その全てが生体内101に配置される手術が完了し、皮膚100の縫合処置等も施され、生体内101と生体外102とが皮膚100を介して遮断された状態で、駆動されることになる。この生体内アクチュエータ1は、生体内に配置されるとともに直線方向に沿って変位する動作に基づいて作動する装置であれば広く適用でき、後述するような骨調整装置を含む種々の装置に対して適用することができる。尚、骨調整装置以外としては、例えば、生体内で必要に応じて所定量の薬剤を供給するための薬剤供給装置や、人工食道装置、人工尿道装置などに対して適用することができる。
【0054】
図2は、図1に対応して生体内アクチュエータ1の作動を説明するための図である。生体内101に配置された生体内アクチュエータ1は、駆動操作が行われていない状態、即ち、後述する電磁誘導作用や磁力が生体外102から作用していない状態においては、図1に示すように、弾性部材13の付勢力によってケーシング12内で一端側に押し付けられて停止している。
【0055】
上述の状態から、患者や術者が生体内アクチュエータ1を作動させる際には、まず、図1に示すように、給電装置103を電源が投入された状態でその給電コイル103aが受電コイル部17に近づくように皮膚100に接近させる。これにより、電磁ユニット11に対して非接触で給電が行われ、電磁誘導作用により生じる誘導電流が受電コイル部17に流れて電磁石15に通電が行われてこの電磁石15が励磁される。この状態では、図1に示すように、弾性部材13の付勢力によって電磁石15がケーシング12内の一端側に押し付けられた状態のまま停止している。
【0056】
生体内アクチュエータ1は、給電装置103による非接触式の給電が行われている状態において、即ち、電磁石15が上記電磁誘導作用により磁力を発生した状態において、さらに、図2に示すように、生体外102から患者や術者の操作に基づいて磁石104が皮膚100に接近するように近づけられることで、駆動操作が行われる。磁石104が皮膚100を介して生体内アクチュエータ1に近づけられると、電磁石15は、生体外102から作用する磁石104の磁場による磁力により駆動されて弾性部材13の付勢力に抗して直線方向に沿って変位することになる。このとき、電磁石15は、生体外102から作用する磁力がケーシング12の一端側から作用することで駆動される。これにより、電磁石15とともにロッド部材14が変位し、この変位動作に基づいて、ロッド部材14に連結された他の装置が作動することになる。一方、上述の図2に示す状態から、給電装置103による給電を停止すると、電磁石15が弾性部材13の付勢力によってケーシング12内にて一端側に付勢される。このように、磁石104による磁力を作用させた状態のまま、給電装置103による給電動作と給電の停止動作とを繰り返すことで、往復運動を行わせるように電磁石15及びロッド部材14を駆動することができる。
【0057】
尚、磁石104としては、永久磁石や電磁石を用いることができる。磁石104として永久磁石を用いる場合には、例えば、ネオジム磁石などの強力な磁場を発生させることができる磁石を用いることができる。また、往復運動を行わせるように電磁石15を駆動す
る際には、前述のような給電装置103による操作でなく、磁石104による操作を行ってもよい。この場合、磁石104を皮膚100に対して接近させたり遠ざけたりすることで操作してもよく、また、電磁石として構成された磁石104の電源の切り替えにより操作してもよい。
【0058】
(生体内アクチュエータの効果)
以上説明した生体内アクチュエータ1によると、生体外102の給電装置103から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流により励磁される電磁石15が、直線方向に沿って変位する動作部として設けられ、ケーシング12に保持されるとともに弾性部材13により付勢されている。そして、患者や術者が磁石104を用い、上記電磁誘導作用とは独立してさらに生体外102から磁力を作用させることにより、励磁した状態の電磁石15が弾性部材13の付勢力に抗して変位することになる。このため、外科手術を行わずに生体内アクチュエータ1を駆動することができる。また、生体内アクチュエータ1の駆動のためには、上述のように、生体外102から電磁誘導作用と磁力とを別々に且つ同時に作用させる必要がある。このため、生体外102から作用する条件が複数成立しないと生体内アクチュエータ1が駆動されないため、患者や術者が意図していないような駆動が行われる誤作動が生じてしまうことを抑制することができる。
【0059】
従って、生体内アクチュエータ1によると、外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる。
【0060】
また、生体内アクチュエータ1によると、生体外102からの電磁誘導作用に基づいて電磁石15に通電する受電コイル17が、リード線18を介してケーシング12の外側に配置されている。このため、受電コイル部17と電磁15とを離れた位置に配置させることが容易となる。これにより、受電コイル部17に給電するための電磁誘導作用の影響を電磁石15が受けにくく、電磁石15を駆動するための磁力の影響を受電コイル部17が受けにくい構成を実現し易くなる。
【0061】
また、生体内アクチュエータ1によると、受電コイル部17がケーシング12に対して電磁石15の変位方向と平行に延びる側面に取り付けられる。このため、電磁誘導作用により給電するための給電コイル部103aを近づける方向を、電磁石15を変位させるために磁石104を近づける方向に対して90度ずらすように、生体内アクチュエータ1を構成することができる。このため、電磁石15と受電コイル部17との間でさらに相互に影響を受けにくい構成を実現することができる。
【0062】
また、生体内アクチュエータ1によると、電磁石15は、弾性部材13によりケーシング12の一端側に押し付けられ、この一端側から作用する磁力によって駆動される。このため、電磁石15に近い位置で生体外102から効率よく磁力を作用させて電磁石15を駆動させることができ、より磁力の小さい磁石104での操作を可能とすることができる。
【0063】
また、生体内アクチュエータ1によると、生体内アクチュエータ1における電磁石15の変位をケーシング12から突出するロッド部材14を介して生体内101に配置される他の装置に伝達してこの装置を駆動することができる。そして、コイルバネとして形成された弾性部材13の中心を貫通するようにロッド部材14が配置されるため、ロッド部材14と弾性部材13とをケーシング12内における共通するスペースを活用して効率よく配置することができる。このため、よりコンパクトな構成の生体内アクチュエータ1を実現することができる。
【0064】
[生体内アクチュエータの第2実施形態]
(生体内アクチュエータの全体構成)
図3は、本発明の第2実施形態に係る生体内アクチュエータ2が人体に対して適用されて生体内である人体の内部に配置された状態を模式的に示す断面図である。尚、図3では、人体については、足(脚)又は腕における皮膚110の外形の一部を例示しており、人体組織の図示を省略している。また、図3では、皮膚の内側である生体内111及び皮膚の外側である生体外112の各領域を矢印で示している。また、生体内アクチュエータ2は、図示しないシール手段により、この生体内アクチュエータ2とその周囲の生体組織とが電気的に遮断されており、漏電などが防止される構成になっている。
【0065】
図3に示す生体内アクチュエータ2は、生体内111に配置された状態で用いられる。そして、この生体内アクチュエータ2は、電磁ユニット21、ケーシング22、弾性部材23、ロッド部材24などを備えて構成されている。尚、図3において、電磁ユニット21及びケーシング22は断面図を示している。
【0066】
(電磁ユニットの構成)
図3に示すように、電磁ユニット21は、電磁石として設けられて生体内に配置される内部コイル25(「電磁石25」ともいう)と、磁心26とを備えて構成されている。尚、電磁ユニット21においては、第1実施形態の電磁ユニット11のような受電コイル部17やリード線18は設けられていない。内部コイル25は、後述する外部コイル113によって生体外112から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れることで励磁されて磁力を発生するように構成されている。尚、本実施形態では、この内部コイル25は、上記電磁誘導作用により誘導電流が流れて磁場が発生し、生体外での磁場発生手段である外部コイル113によって生体外からの磁場が作用することで、外部コイル113との間で磁力を発生するように構成されている。また、内部コイル25の中心部には、より強い磁力を発生させることができるようにするため、磁心26が配置されている。この磁心26を形成する材料としては、軟磁性材料が適しており、例えば、Fe−Co系合金などを用いることができる。
【0067】
また、図3に示すように、電磁ユニット21の作動のために、本実施形態では、生体外112に配置される環状の外部コイル113が用いられる。電磁ユニット21を作動させる際には、例えば、生体内アクチュエータ2が配置された足や腕が外部コイル113の貫通孔に挿入され、外部コイル113に交流電圧が印加されて通電が行われる。尚、このとき、外部コイル113は内部コイル25と略同心上に配置され、内部コイル25の中心位置に対して外部コイル113の中心位置が少しずれるように配置される。このように外部コイル113に通電されて外部コイル113の内側に生じる磁場中に内部コイル25が配置されることで、内部コイル25において、生体外112から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れて磁力を発生することになる。そして、外部コイル113に交流電圧が印加されて磁場が生じることによって、外部コイル113からの電磁誘導作用により内部コイル25において発生する磁力と、外部コイル113において発生して生体外112から作用するする磁力とが、互いに斥け合う(反発し合う)力として発生することになる。即ち、トムソンリングの原理による磁力が発生することになる。尚、外部コイル113は、内部コイル25に対して電磁誘導作用により非接触で給電する機構を構成するとともに、内部コイルをトムソンリングの原理により駆動する機構も構成している。この外部コイル113としては、例えば、MRI(Magnetic Resonance Imaging system:核磁気共鳴画像装置)を利用してもよい。
【0068】
(ケーシングの構成)
図3に示すケーシング22は、円筒状に形成されており、その内周側において電磁石25の外周を支持し、円筒軸方向である直線方向(図中両端矢印B方向)に沿って電磁石25を変位可能に保持している。このケーシング22は、例えば、チタン合金等を用いて形
成することができる。尚、電磁石25は、ケーシング22により直線方向に沿って変位可能に保持されるように構成されることで、本実施形態において、直線方向に沿って変位する動作が可能な動作部として設けられている。
【0069】
(弾性部材の構成)
図3に示す弾性部材23は、例えばコイルバネとして形成されており、その伸縮方向がケーシング22の円筒軸方向に沿うようにケーシング22内に配置され、電磁石25を磁心26とともにケーシング22内において付勢する圧縮バネとして構成されている。そして、弾性部材23の一端側は電磁ユニット21に当接し、弾性部材23の他端側はケーシング22の他端側において係止されている。これにより、電磁ユニット21の電磁石25は、ケーシング22内において一端側に向かって押し付けられるように弾性部材23によって付勢される。尚、ケーシング22においては電磁石25が押し付けられる一端側とは反対側の他端側に開口27が形成されており、弾性部材23の他端側はケーシング22における開口27を形成する他端側の縁部分にて係止されている。
【0070】
(ロッド部材の構成)
図3に示すロッド部材24は、電磁ユニット21に取り付けられるとともにケーシング22の開口27から突出するように配置されている。そして、ロッド部材24は、ケーシング22内においてコイルバネとして設けられている弾性部材23の中心を貫通するように配置されている。このロッド部材24は、電磁ユニット21に対して固定され、電磁ユニット21とともに直線方向に沿って変位するように構成されている。尚、本実施形態では、ロッド部材24は、電磁ユニット21に対して一体的に固定されているが、第1実施形態のロッド部材14のように固定部材と揺動部材とで構成されているものであってもよい。
【0071】
(生体内アクチュエータの作動)
次に、上述した生体内アクチュエータ2の作動について説明する。生体内アクチュエータ2は、その全てが生体内111に配置される手術が完了し、皮膚110の縫合処置等も施され、生体内111と生体外112とが皮膚110を介して遮断された状態で、駆動されることになる。この生体内アクチュエータ2は、生体内に配置されるとともに直線方向に沿って変位する動作に基づいて作動する装置であれば広く適用でき、後述するような骨調整装置を含む種々の装置に対して適用することができる。尚、骨調整装置以外としては、例えば、生体内で必要に応じて所定量の薬剤を供給するための薬剤供給装置や、人工食道装置、人工尿道装置などに対して適用することができる。
【0072】
図4は、図3に対応して生体内アクチュエータ2の作動を説明するための図である。生体内111に配置された生体内アクチュエータ2は、駆動操作が行われていない状態、即ち、後述する電磁誘導作用および磁力が生体外112から作用していない状態においては、図3に示すように、弾性部材23の付勢力によってケーシング22内で一端側に押し付けられて停止している。
【0073】
上述の状態から生体内アクチュエータ2を作動させる際には、まず、生体内アクチュエータ2が配置された足や腕が外部コイル113の貫通孔に挿入され、前述のように、外部コイル113が内部コイル25と略同心上に配置され、内部コイル25の中心位置に対して外部コイル113の中心位置が少しずれるように配置される。そして、外部コイル113に交流電圧が印加されて通電が行われる。これにより、電磁ユニット21に対して非接触で給電が行われ、電磁誘導作用により生じる誘導電流が内部コイル25に流れてこの内部コイル(電磁石)25が励磁される。
【0074】
そして、生体内アクチュエータ2は、外部コイル113による非接触式の給電が行われ
ている状態においては、内部コイル25に上記電磁誘導作用により誘導電流が流れて磁場が発生し、生体外112での磁場発生手段でもある外部コイル113によって生体外112からの磁場が作用することで、内部コイル25において外部コイル113との間で磁力を発生することになる。このとき、内部コイル25においては、外部コイル113に交流電圧が印加されることで外部コイル113において生じる変動磁場に対して、上記電磁誘導作用により約半波長分位相がずれた変動磁場が発生する。即ち、内部コイル25と外部コイル113において、常時逆向きの変動磁場が発生することになる。このため、外部コイル113による電磁誘導作用による変動磁場が生じた内部コイル25における磁力と、交流電圧が印加されることで変動磁場が生じた外部コイル113における磁力(生体外112から作用する磁力)とは、互いに斥け合う反発力として発生することになる。これにより、図4に示すように、内部コイル(電磁石)25は、電磁誘導作用により磁力を発生した状態において、生体外112の外部コイル113から作用する磁力によって駆動されて弾性部材23の付勢力に抗して直線方向に沿って変位することになる。
【0075】
尚、内部コイル25と外部コイル113との間で発生する反発力の大きさは、外部コイル113の変動磁場とこれと逆位相の内部コイル25の変動磁場とに応じて、最大値とゼロ近傍との間で振動することになる。しかし、弾性部材23のバネ変形の速度よりも十分に速く変化する周波数の交流電圧が外部コイル113に印加されることで、内部コイル25と外部コイル113との間では、常時平均的な大きさの反発力が作用したような状態となる。このため、外部コイル113の交流電圧の電源が投入されている間(電源がONの間)は、内部コイル25は、上記反発力により、弾性部材23の付勢力に抗して変位した状態に維持されることになる。
【0076】
上述のように電磁石25が駆動されることで、この電磁石25とともにロッド部材24が変位し、この変位動作に基づいて、ロッド部材24に連結された他の装置が作動することになる。一方、図4に示す状態から、外部コイル113の交流電圧の電源を切断し(電源をOFFにし)、電磁石25への給電を停止すると、電磁石25が弾性部材23の付勢力によってケーシング22内にて一端側に付勢される。このように、外部コイル113の交流電圧の電源のON−OFF動作を繰り返すことで、往復運動を行わせるように電磁石25及びロッド部材24を駆動することができる。
【0077】
(生体内アクチュエータの効果)
以上説明した生体内アクチュエータ2によると、生体外112の外部コイル113から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流により励磁される電磁石25が、直線方向に沿って変位する動作部として設けられ、ケーシング22に保持されるとともに弾性部材23により付勢されている。そして、外部コイル113により、上記電磁誘導作用とともに生体外112から磁力を作用させることにより、励磁した状態の電磁石25が弾性部材23の付勢力に抗して変位することになる。このため、外科手術を行わずに生体内アクチュエータ2を駆動することができる。また、生体内アクチュエータ2の駆動のためには、上述のように、生体外112から電磁誘導作用と磁力とを同時に作用させる必要がある。このため、生体外112から作用する条件が複数成立しないと生体内アクチュエータ2が駆動されないため、患者や術者が意図していないような駆動が行われる誤作動が生じてしまうことを抑制することができる。
【0078】
従って、生体内アクチュエータ2によると、外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる。
【0079】
また、生体内アクチュエータ2によると、電磁ユニット21の電磁石25が生体内11に配置される内部コイル25として設けられ、この内部コイル25が生体外112に配置される外部コイル113の内側の磁場中に配置される。そして、外部コイル113に通電
が行われることで、内部コイル25において、生体外112からの電磁誘導作用による誘導電流が流れて磁力を発生することになる。このため、生体外112で内部コイル25の外側に位置するように外部コイル113を配置して通電することで、電磁ユニット21の電磁石25に対して直接的に効率よく且つ容易に給電して、この電磁石25に誘導電流を流すことができる。また、内部コイル25とは別個の受電コイル部を設けなくても、電磁ユニット21の電磁石25に直接に誘導電流を流すことができる。
【0080】
また、生体内アクチュエータ2によると、外部コイル113に交流電圧を印加して通電するだけで、外部コイル113にて発生する磁場が変化して内部コイル25において電磁誘導作用により誘導電流が流れることになる。このため、外部コイル113の位置を変動させなくてもよく、電磁ユニット21の電磁石25に対して更に容易に誘導電流を流すことができる。
【0081】
また、生体内アクチュエータ2によると、外部コイル113に交流電圧を印加して生じさせる生体外112からの磁場の変化による電磁誘導作用により内部コイル25において磁場が生じ、外部コイル113の磁場と内部コイル25の磁場とが互いに作用する。そして、内部コイル25において外部コイル113との間で発生する磁力と、外部コイル113において内部コイル25との間で発生する生体外112からの磁力とが、互いに斥け合う反発力として発生することになる。これにより、外部コイル113に交流電圧を印加して通電するだけで、電磁ユニット21の電磁石25を弾性部材23の付勢力に抗して容易に駆動することができる。
【0082】
[骨調整装置の第1実施形態]
(骨調整装置の構成)
次に、骨調整装置の第1実施形態について説明する。図5は、第1実施形態に係る骨調整装置30を示す断面図である。骨調整装置30は、骨の相対的な位置を調整する装置として構成され、第1実施形態においては、後述するように骨と骨との間隔を拡大する骨延長装置として設けられている。尚、第1実施形態の骨調整装置としては、骨腫瘍に対して腫瘍部である骨及び関節を切除する手術が行われた際において、この切除部分の代替として用いられる骨腫瘍用人工関節として機能する骨延長装置を例にとって説明する。
【0083】
図5に示すように、骨調整装置30は、第1実施形態の生体内アクチュエータ1と、調整機構31とを備えて構成されている。尚、生体内アクチュエータ1の構成と作動については、前述の通りであり、説明を省略する。調整機構31は、第1取付部32、第2取付部33、ハウジング34、ネジ機構35、リンク機構36、ギアボックス37を備えて構成されている。この調整機構31は、生体内アクチュエータ1が配置されるとともに、電磁石15の変位に基づいて、第1取付部32及び第2取付部33の一方に対する他方の相対位置を変更するように構成される。尚、調整機構31における各要素については、生体親和性を有するとともに高い強度を有する材料で形成されることが望ましく、例えば、ステンレス鋼やCo−Cr合金、チタン合金などを用いて形成することができる。
【0084】
第1取付部32及び第2取付部33は、骨調整装置30の両端側においてそれぞれ骨に対して固定され又は係合するように取り付けられる。図6は、骨調整装置30が骨腫瘍用人工関節として適用された例を骨の断面とともに示す断面図である。骨調整装置30が大腿骨105と脛骨106との間に配置され、第1取付部32が大腿骨105に対して固定され、第2取付部33が脛骨106に対して係合するように、第1取付部32及び第2取付部33がそれぞれ取り付けられる。また、第1取付部32は、円板状の端部として形成された円板状部分32aとこの円板状部分32aから突出する軸状に形成されたステム部分32bとで構成されている。そして、ステム部分32bが大腿骨105の髄腔105a内に嵌め込まれるように挿入されて固定される。一方、第2取付部33は、人工膝関節部
分を構成して脛骨106に滑らかに係合する形状に形成されている。
【0085】
図5及び図6に示すように、ハウジング34は、一方の端部が閉じて他方の端部が開口した状態の円筒状の部材として形成されており、生体内アクチュエータ1、ネジ機構35、リンク機構36、ギアボックス37が配置されている。尚、ハウジング34において、ネジ機構35は開口した他方の端部側に配置され、生体内アクチュエータ1は一方の端部側に配置され、ギアボックス37がネジ機構35及び生体内アクチュエータ1の間に配置されている。また、ハウジング34の一方の端部は第2取付部33と固定されている。
【0086】
図5及び図6に示すように、ネジ機構35は、雌ネジ部材38と雄ネジ部材39とを備えて構成されている。雌ネジ部材38は、一方の端部が開口した円筒状の部材として構成され、内周側に雌ネジ部が設けられ、外周側はハウジング34の内周と摺接する側面として形成されている。雌ネジ部材38における他方の端部は、第1取付部32の円板状部分32aに対して取り付けられている。また、雄ネジ部材39は、雌ネジ部材38の内周の雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が外周に設けられた軸状に形成されている。この雄ネジ部材39の一方の端部はギアボックス37に連結されている。このネジ機構35は、螺合する雌ネジ部材38と雄ネジ部材39との間で相対的な回転動作が行われることで、第1取付部32に取り付けられた雌ネジ部材38とハウジング34にギアボックス37を介して取り付けられた雄ネジ部材39との間隔を変更するように構成されている。これにより、ネジ機構35は、第1取付部32及び第2取付部33の一方を他方に対して直線方向に沿って相対変位するように駆動する本実施形態の直線駆動部を構成している。
【0087】
図5及び図6に示すように、リンク機構36は、クランク軸36aを備えたスライダリンク機構として構成されており、このクランク軸36aに対してクランクピン(図示せず)を介して生体内アクチュエータ1のロッド部材14における揺動部材14bの端部が回転自在に連結されている。これにより、リンク機構36は、生体内アクチュエータ1が駆動されて電磁石15とともにロッド部材14が往復運動をすると、この往復方向の駆動力を回転方向の駆動力に変換するように構成されている。そして、クランク軸36aの一方の端部はハウジング34に対して回転自在に支持され、他方の端部はギアボックス37への回転入力軸を構成している。ギアボックス37は、複数の図示しない平歯車を備えて構成されており、これらの平歯車の噛み合いを介して回転駆動力を伝達して雄ネジ部材39を回転駆動するように構成されている。尚、リンク機構36は、電磁石15が変位する方向における駆動力をその作用方向を変換するとともにギアボックス37を介して直線駆動部であるネジ機構35に伝達する本実施形態の駆動力方向変換部を構成している。
【0088】
(骨調整装置の作動)
次に、上述した骨調整装置30の作動について説明する。骨調整装置30は、調整機構31により、第1取付部32が固定されて取り付けられた第1の骨である大腿骨105と第2取付部33が係合して取り付けられた第2の骨である脛骨106との相対的な位置を調整するように作動する。この骨調整装置30は、例えば、成長途中の若年者が左右の一方の足について骨腫瘍部を切除する手術が行われた際に、その切除部分を代替する人工関節として用いられる。若年者の場合、左右の一方の足に人工関節を適用すると、身体の成長により脚長差が生じてしまうことになる。しかしながら、骨調整装置30により、他方の足の成長に合わせて、骨調整装置30が適用されている一方の足における大腿骨105と脛骨106との間隔を大腿骨105の長手方向に沿って拡大するように大腿骨105と脛骨106との相対的な位置を調整することができる。
【0089】
図7は、骨調整装置30の作動を図6に対応して説明する断面図である。まず、図6に示す状態において、前述したように生体内アクチュエータ1が給電装置103と磁石104とを用いた操作によって駆動されると(図1、図2参照)、電磁石15がケーシング1
2内で直線方向に往復運動を行うことになる。そして、電磁石15とともにロッド部材14が往復運動をしながらその揺動部材14bが揺動し、この揺動部材14bの揺動動作に伴ってリンク機構36のクランク軸36aが回転することになる。
【0090】
クランク軸36aが回転すると、この回転駆動力がギアボックス37を介して雄ネジ部材39に伝達され、雄ネジ部材39が回転する。雄ネジ部材39が回転すると、この雄ネジ部材39に螺合する雌ネジ部材38は、その外周がハウジング34の内周に摺接して直線方向に沿って案内されながら、雄ネジ部材39からの回転駆動力により雄ネジ部材39に対して直線方向に沿って移動する。これにより、図7に示すように、第1取付部32と第2取付部33との間隔が拡大し、第1取付部32が取り付けられた大腿骨105と第2取付部33が取り付けられた頚骨106との間隔も拡大するように調整され、骨延長が行われることになる。また、ギアボックス37内の歯車の噛み合いでの摩擦や、雌ネジ部材38と雄ネジ部材39との摩擦により、第1取付部32と第2取付部33とが接近する方向における変位は抑制されることになる。尚、骨延長装置30による上述のような骨の相対位置の調整は、前述のように、他方の足の成長に合わせて行われる。
【0091】
(骨調整装置の効果)
以上説明した骨調整装置30によると、生体内アクチュエータ1の電磁石15の変位に基づいて第1及び第2取付部(32、33)の相対位置を変更する調整機構31により、第1及び第2取付部(32、33)がそれぞれ取り付けられる第1及び第2の骨(105、106)の相対的な位置が調整される。このように、生体内アクチュエータ1により駆動されて骨の相対的な位置を調整する骨調整装置30を構成することができる。従って、外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる、骨調整装置30を提供することができる。
【0092】
また、骨調整装置30によると、生体内アクチュエータ1の駆動力の作用方向を駆動力方向変換部であるリンク機構36により変換し、直線駆動部であるネジ機構35により直線方向に沿って相対変位させるように第1及び第2の骨(105、106)の相対的な位置を調整することができる。このため、生体内アクチュエータ1の駆動力の作用方向と第1及び第2の骨(105、106)の位置調整方向とを適宜組み合わせて実現することができ、生体内アクチュエータ1と調整機構31とがよりコンパクトなスペースに効率よく配置された骨調整装置30を実現することができる。
【0093】
また、骨調整装置30によると、第1の骨105の長手方向に沿って第1及び第2の骨(105、106)の間隔が拡大されるように調整される。これにより、骨と骨との相対位置を引き伸ばすように延長する骨延長装置としての骨調整装置30を実現することができる。
【0094】
尚、上述した骨調整装置30においては、生体内アクチュエータ1、ハウジング34、ネジ機構35、リンク機構36、ギアボックス37からなる調整機構内の駆動ユニットが1つのみ設けられた調整機構31を備えるものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、図8に示すように、生体内アクチュエータ1、ハウジング34、ネジ機構35、リンク機構36、ギアボックス37からなる調整機構内の駆動ユニットを複数備えてそれらが直列に連結された調整機構41を備える骨調整装置40であってもよい。この骨調整装置40によると、骨腫瘍による切除部分が大きく、1つの駆動ユニットだけでは十分な調整が困難な場合に、複数の駆動ユニットを作動させる構成とすることで、十分な骨延長のストローク(調整量)を確保することができる。
【0095】
[骨調整装置の第2実施形態]
(骨調整装置の構成)
次に、骨調整装置の第2実施形態について説明する。図7は、第2実施形態に係る骨調整装置50について一部断面を含む状態で骨の断面図とともに示す図である。骨調整装置50は、骨の相対的な位置を調整する装置として構成され、第2実施形態においては、後述するように骨と骨との間隔を変更して骨の相対的な位置関係を矯正する骨矯正装置として設けられている。尚、第2実施形態の骨調整装置としては、湾曲した脊柱の歪みを矯正する脊椎矯正装置として機能する骨矯正装置を例にとって説明する。
【0096】
図9に示すように、骨調整装置50は、前述した生体内アクチュエータ1と、調整機構51とを備えて構成されている。第1実施形態と同様、生体内アクチュエータ1の構成と作動については、説明を省略する。調整機構51は、第1取付部52、第2取付部53、ウォーム54、ウォームホイール55を備えて構成されている。この調整機構51は、生体内アクチュエータ1が配置されるとともに、電磁石15の変位に基づいて、第1取付部52及び第2取付部53の一方に対する他方の相対位置を変更するように構成される。尚、調整機構51における各要素については、生体親和性を有するとともに高い強度を有する材料で形成されることが望ましく、例えば、ステンレス鋼やCo−Cr合金、チタン合金などを用いて形成することができる。
【0097】
第1取付部52及び第1取付部53は、骨調整装置50の両端側においてそれぞれ骨に対して係合するように取り付けられる。図10は、脊椎矯正装置としての骨調整装置50が適用される脊柱107の正面図である。尚、図10では、湾曲していない状態の脊柱107を示している。図10に示す真っ直ぐな状態に対して、脊柱107の中心線が例えば二点鎖線Pで示すように湾曲した場合、その湾曲した脊柱107の歪みを矯正するために骨調整装置50が用いられる。この場合、積み重なった状態で脊柱107を構成している椎骨108のうち、間隔を変更して位置を矯正したい2つの椎骨108、108に対して第1取付部52及び第2取付部53がそれぞれ係合するように取り付けられる。即ち、骨調整装置50は、その長手方向が脊柱107に沿うように脊柱107の中心線に対する側方に配置されるとともに、複数の椎骨108のうちの所定の2つの椎骨108、108に対して係合するよう配置される。
【0098】
第1取付部52は、ブロック状の部材として形成されており、後述するウォーム54に螺合する雌ネジ部が形成されたネジ孔(図示せず)が設けられている。一方、第2取付部53は、ウォーム54を回転自在に支持する回転支持部(図示せず)が設けられ、さらに、生体内アクチュエータ1が取り付けられるとともにウォームホイール55が配置されている。また、第1取付部52には1つの椎骨108と係合する係合凹部52aが形成され、第2取付部53には他の椎骨108と係合する係合凹部53aが形成されている。尚、図9では、所定の椎骨108、108の間隔を近づける方向に変更する骨調整装置50を例示している。このため、第1取付部52の係合凹部52a及び第2取付部53の係合凹部53aは、互いに対向するように配置されている。このように、係合凹部52aと係合凹部53aとが対向するように位置することで、係合凹部52a、53a間で所定の椎骨108、108に対して接近する方向に向かって荷重を負荷することができるように構成されている。
【0099】
図9に示すように、ウォーム54は、軸状の部材に雄ネジ部が形成されたネジ歯車として形成されている。ウォーム54の一端側は、第1取付部52のネジ孔と螺合している。一方、ウォーム54の他端側は、第2取付部53に回転自在に支持されるとともに、後述するウォームホイール55と噛み合った状態に配設されている。このウォーム54とウォームホイール55とにより、ウォームギア機構が構成されている。尚、ウォーム54のねじれ角度については、ウォームホイール55との摩擦力を考慮して、ウォームホイール55からウォーム54に滑らかに駆動力が伝達されるように適宜設定されている。また、ウォーム54は、ウォームホイール55からの駆動によって回転することで、第1取付部5
2と第2取付部53との間隔を接近する方向に変更するように構成されている。これにより、ウォーム54は、第1取付部52及び第2取付部53の一方を他方に対して直線方向に沿って相対変位するように駆動する本実施形態の直線駆動部を構成している。
【0100】
ウォームホイール55は、第2取付部53に対して回転自在に支持されているとともに、生体内アクチュエータ1のロッド部材14の揺動部材14bの端部が回転自在に連結されている。これにより、ウォームホイール55は、生体内アクチュエータ1が駆動されて電磁石15とともにロッド部材14が往復運動をすると、この往復方向の駆動力を回転方向の駆動力に変換するように構成されている。そして、ウォームホイール55の回転駆動力によりウォーム54が回転駆動されることになる。尚、ウォームホイール55は、電磁石15が変位する方向における駆動力をその作用方向を変換するとともに直線駆動部であるウォーム54に伝達する本実施形態の駆動力方向変換部を構成している。
【0101】
(骨調整装置の作動)
次に、上述した骨調整装置50の作動について説明する。骨調整装置50は、調整機構51により、第1取付部52が係合して取り付けられた第1の骨である1つの椎骨108と第2取付部53が係合して取り付けられた第2の骨である他の椎骨108との相対的な位置を調整するように作動する。そして、この骨調整装置50により、1つの椎骨108と他の椎骨108との間隔を脊柱107の中心線と直交する方向である椎骨108の長手方向に対して直交する方向又は斜めの方向において変更するように、1つの椎骨108と他の椎骨108との相対的な位置を調整することができる。尚、この骨調整装置50は、湾曲した脊柱107の歪みの矯正の際に所定の椎骨108、108間の間隔を接近する方向に変更するために用いられる。
【0102】
まず、生体内アクチュエータ1が給電装置103と磁石104とを用いた操作によって駆動されると(図1、図2参照)、電磁石15がケーシング12内で直線方向に往復運動を行うことになる。そして、電磁石15とともにロッド部材14が往復運動をしながらその揺動部材14bが揺動し、この揺動部材14bの揺動動作に伴ってウォームホイール55が回転することになる。ウォームホイール55が回転すると、この回転駆動力がウォーム54に伝達され、ウォーム54が回転する。これにより、第1取付部52と第2取付部53との間隔が接近する方向に変更され、第1取付部52に係合面52aにて係合する1つの椎骨108と第2取付部53に係合面53aにて係合する他の椎骨108との間隔も接近するように調整され、脊椎矯正が行われることになる。
【0103】
(骨調整装置の効果)
以上説明した骨調整装置50によると、生体内アクチュエータ1の電磁石15の変位に基づいて第1及び第2取付部(52、53)の相対位置を変更する調整機構51により、第1及び第2取付部(52、53)がそれぞれ取り付けられる第1及び第2の骨(108、108)の相対的な位置が調整される。このように、生体内アクチュエータ1により駆動されて骨の相対的な位置を調整する骨調整装置50を構成することができる。従って、外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる、骨調整装置50を提供することができる。
【0104】
また、骨調整装置50によると、生体内アクチュエータ1の駆動力の作用方向を駆動力方向変換部であるウォームホイール55により変換し、直線駆動部であるウォーム54により直線方向に沿って相対変位させるように第1及び第2の骨(108、108)の相対的な位置を調整することができる。このため、生体内アクチュエータ1の駆動力の作用方向と第1及び第2の骨(108、108)の位置調整方向とを適宜組み合わせて実現することができ、生体内アクチュエータ1と調整機構51とがよりコンパクトなスペースに効率よく配置された骨調整装置50を実現することができる。
【0105】
また、骨調整装置50によると、第1及び第2の骨(108、108)の長手方向に対して直交又は斜めの方向において第1及び第2の骨(108、108)の間隔が変更されるように調整される。これにより、脊柱107の歪みを矯正する脊椎矯正装置のように、骨と骨との相対位置を所定の方向に矯正する骨矯正装置としての骨調整装置を実現することができる。
【0106】
尚、上述した骨調整装置50においては、湾曲した脊柱107の歪みの矯正の際に所定の椎骨108、108間の間隔を接近する方向に変更するために用いられるものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。図11に示すように、脊柱107の歪みの矯正の際に所定の椎骨108、108間の間隔を離間する方向に変更するために用いられる骨調整装置60であってもよい。この骨調整装置60の調整機構61においては、骨調整装置50の場合とは異なり、第1取付部62の係合凹部62aと第2取付部63の係合凹部63aとが互いに反対方向を向くように配置されている。このため、係合凹部52a及び係合凹部53aからそれぞれ外側に向かって各椎骨108を付勢し、これらの椎骨108、108に対して離間する方向に向かって荷重を負荷することができるように構成されている。尚、脊柱107の歪みの矯正の際には、骨調整装置50と骨調整装置60とを組み合わせて用いることもできる。
【0107】
[骨調整装置の第3実施形態]
(骨調整装置の構成)
次に、骨調整装置の第3実施形態について説明する。図12は、第3実施形態に係る骨調整装置70を示す断面図である。骨調整装置70は、骨の相対的な位置を調整する装置として構成され、第3実施形態においては、第1実施形態の骨調整装置30と同様に、骨と骨との間隔を拡大する骨延長装置として設けられている。尚、第3実施形態の骨調整装置としては、骨腫瘍に対して腫瘍部である骨及び関節を切除する手術が行われた際において、この切除部分の代替として用いられる骨腫瘍用人工関節として機能する骨延長装置を例にとって説明する。
【0108】
図12に示すように、骨調整装置70は、第2実施形態の生体内アクチュエータ2と、調整機構71とを備えて構成されている。尚、生体内アクチュエータ2の構成と作動については、前述の通りであり、説明を省略する。調整機構71は、第1取付部72、第2取付部73、ハウジング74、ネジ機構75、歯車機構76等を備えて構成されている。この調整機構71は、生体内アクチュエータ2が配置されるとともに、電磁石25の変位に基づいて、第1取付部72及び第2取付部73の一方に対する他方の相対位置を変更するように構成される。尚、調整機構71における各要素については、生体親和性を有するとともに高い強度を有する材料で形成されることが望ましく、例えば、ステンレス鋼やCo−Cr合金、チタン合金などを用いて形成することができる。
【0109】
第1取付部72及び第2取付部73は、骨調整装置70の両端側においてそれぞれ骨に対して固定され又は係合するように取り付けられる。図13は、骨調整装置70が骨腫瘍用人工関節として適用された例を骨の断面とともに示す断面図である。尚、図13では、骨以外の人体組織の図示は省略している。骨調整装置70が大腿骨105と脛骨106との間に配置され、第1取付部72が大腿骨105に対して固定され、第2取付部73が脛骨106に対して係合するように、第1取付部72及び第2取付部73がそれぞれ取り付けられる。また、第1取付部72は、円板状の端部として形成された円板状部分72aとこの円板状部分72aから突出する軸状に形成されたステム部分72bとで構成されている。そして、ステム部分72bが大腿骨105の髄腔105a内に嵌め込まれるように挿入されて固定される。一方、第2取付部73は、人工膝関節部分を構成して脛骨106に滑らかに係合する形状に形成されている。
【0110】
図12及び図13に示すように、ハウジング74は、一方の端部が閉じて他方の端部が開口した状態の円筒状の部材として形成されており、生体内アクチュエータ2、ネジ機構75、歯車機構76が配置されている。尚、ハウジング74において、ネジ機構75は開口した他方の端部側に配置され、生体内アクチュエータ2は一方の端部側に配置され、歯車機構76がネジ機構75及び生体内アクチュエータ2の間に配置されている。また、ハウジング74の一方の端部は第2取付部73と固定されている。
【0111】
図12及び図13に示すように、ネジ機構75は、雌ネジ部材77と雄ネジ部材78とを備えて構成されている(尚、図12及び図13では、雄ネジ部材78については、断面でなく外形を図示している)。雌ネジ部材77は、一方の端部が開口した円筒状の部材として構成され、内周側に雌ネジ部が設けられ、外周側はハウジング74の内周と摺接する側面として形成されている。雌ネジ部材77における他方の端部は、第1取付部72の円板状部分72aに対して取り付けられている。また、雄ネジ部材78は、雌ネジ部材77の内周の雌ネジ部と螺合する雄ネジ部が外周に設けられた軸状に形成されている。この雄ネジ部材78の一方の端部は後述する歯車機構76に連結されている。このネジ機構75は、螺合する雌ネジ部材77と雄ネジ部材78との間で相対的な回転動作が行われることで、第1取付部72に取り付けられた雌ネジ部材77とハウジング74側に歯車機構76を介して連結された雄ネジ部材78との間隔を変更するように構成されている。このように、本実施形態では、第1取付部72及び第2取付部73の一方を他方に対して直線方向に沿って相対変位するように駆動する直線駆動部は、ネジ機構75として設けられている。
【0112】
図12及び図13に示すように、ハウジング74内に配置される歯車機構76は、内歯車79と、外歯車80と、対向歯車81とを備えて構成されている。尚、図12及び図13では、内歯車79については外歯車80の一部切欠き断面で示している。また、図14及び図15は、歯車機構76のみを示す側面図であって、歯車機構76の作動を説明する図である。
【0113】
図12乃至図15に示すように、内歯車79は、円盤状の歯車部材として設けられ、生体内アクチュエータ2側とは反対側に位置する一方の端部に歯面79aが形成されている。そして、この内歯車79は、ロッド部材24に固定されており、これにより、電磁石25が変位する直線方向である電磁石変位方向において電磁石25とともに変位するように構成されている。外歯車80は、内歯車79の周囲に配置された環状の歯車部材として設けられ、生体内アクチュエータ2側とは反対側に位置する一方の端部に歯面80aが形成されている。そして、外歯車80は、ハウジング74に固定されている。
【0114】
対向歯車81は、円盤状の歯車部材として設けられ、生体内アクチュエータ2側に位置する端部に歯面81aが形成されている。この歯面81aは、内歯車79の歯面79aに対して内側で噛合可能であるとともに外歯車80の歯面80aに対して外側で噛合可能に形成されている。この対向歯車81は、内歯車79及び外歯車80に対向するよう配置されている。そして、対向歯車81は、雄ネジ部材78の生体内アクチュエータ2側の端部に対して、例えば、キースライド機構を介して、雄ネジ部材78の軸方向を中心とした回転方向の相対的な変位が拘束されるとともに、雄ネジ部材78の軸方向に沿った直線方向の相対的な変位が拘束されないように(自由となるように)、連結されている。尚、対向歯車81と雄ネジ部材78との間には、対向歯車81から雄ネジ部材78が抜けないようにするための抜け防止機構(図示せず)が設けられている。上述のように対向歯車81と雄ネジ部材78とが連結されていることにより、対向歯車81は、直線駆動部であるネジ機構75におけるネジ軸である雄ネジ部材78に回転力を伝達可能に構成されている。尚、雄ネジ部材78に対して対向歯車81を固定するように取り付けてもよい。
【0115】
また、図12及び図13に示すように、ハウジング74の内周には、対向歯車81と雌ネジ部材77との間の位置において周方向に延びる溝が形成されており、この溝に対して、例えばスナップリングとして設けられた止めリング83が取り付けられている。そして、この止めリング83と対向歯車81における歯面81aに反対側の端部との間には、雄ネジ部材78が中心を貫通するコイルバネ82が圧縮バネとして配置されている。このコイルバネ82は、一端側が対向歯車81に当接し、他端側が止めリング83に係止している。これにより、コイルバネ82は、ハウジング74に固定された止めリング83に対して対向歯車81を内歯車79及び外歯車80側に向かって常時付勢するように構成されている。尚、本実施形態では、コイルバネ82が止めリング83によって係止されている場合を例示したが、止めリング83以外の種々の手段によってコイルバネ82を係止してもよい。例えば、ハウジング74の内周に凸部を形成することで、コイルバネ82を係止してもよい。
【0116】
ここで、歯車機構76の作動について説明する。まず、骨調整装置70が配置された足が外部コイル113に挿入されて電磁石25と外部コイル113とが磁力を発生可能な所定の位置関係に配置される。そして、この配置関係の下、外部コイル113に交流電圧が印加されていない状態では、電磁石25は駆動されておらず、内歯車79は電磁石25及びロッド部材24とともに弾性部材23の付勢力によって、対向歯車81から離間する方向に付勢されている。このため、図14(a)に示すように、コイルバネ82によって付勢された対向歯車81の歯面81aは、ハウジング74に固定された外歯車80の歯面80aに噛み合った状態となっている。この状態から、外部コイル113に交流電圧が印加されて前述したように電磁石25が駆動されると、電磁石25が弾性部材23の付勢力に抗して変位し、電磁石25にロッド部材24を介して固定された内歯車79も電磁石25とともに対向歯車81に向かって変位することになる。これにより、図14(b)に示すように、内歯車79は、その歯面79aが対向歯車81の歯面81aと噛み合いながら、電磁石25とともに変位し、対向歯車81を外歯車80から離間させることになる。
【0117】
上述のように対向歯車81が外歯車80から離間して対向歯車81と外歯車80との噛み合いが完全に外れると、図15(a)に示すように、歯面81aと歯面79aとの噛み合いにより、コイルバネ82で付勢された対向歯車81が内歯車79に噛み合いながら回転することになる。この状態の後、外部コイル113の交流電圧の電源が切断されると、弾性部材23の付勢力によって電磁石25がケーシング22内の一端側に付勢され、電磁石25及びロッド部材24とともに内歯車79は、図15(b)に示すように、対向歯車81から離間する方向に変位することになる。そして、内歯車79が対向歯車81から離間することで、コイルバネ82に付勢された対向歯車81は、その歯面81aが外歯車80の歯面80aと噛み合いながら、図14(a)のように外歯車80と奥まで噛み合う状態になるまで回転することになる。これにより、歯車機構76は、電磁石変位方向における駆動力をその電磁石変位方向を中心とする回転力に変換してネジ機構75の雄ネジ部材78に伝達するように構成されている。尚、本実施形態では、歯車機構76が、電磁石変位方向における駆動力を電磁石変位方向を中心とする回転力に変換して直線駆動部に伝達する駆動力回転変換部を構成している。
【0118】
(骨調整装置の作動)
次に、上述した骨調整装置70の作動について説明する。骨調整装置70は、調整機構71により、第1取付部72が固定されて取り付けられた第1の骨である大腿骨105と第2取付部73が係合して取り付けられた第2の骨である脛骨106との相対的な位置を調整するように作動する。この骨調整装置70は、第1実施形態の骨調整装置30と同様に、例えば、成長途中の若年者が左右の一方の足について骨腫瘍部を切除する手術が行われた際に、その切除部分を代替する人工関節として用いられる。この骨調整装置70を用
いることで、身体成長に伴う脚長差が生じないように、骨調整装置70が適用されている一方の足における大腿骨105と脛骨106との間隔を拡大するよう大腿骨105と脛骨106との相対的な位置を調整することができる。
【0119】
図16は、骨調整装置70の作動を図13に対応して説明する断面図である。まず、図13に示す状態において、前述したように生体内アクチュエータ2が外部コイル113を用いた操作によって駆動されると(図3、図4参照)、電磁石25及びロッド部材24がケーシング22内で直線方向に往復運動を行うことになる。そして、電磁石25及びロッド部材24のこの往復運動に伴って、歯車機構76が作動し、雄ネジ部材78が回転することになる。即ち、電磁石25の往復運動に伴って、内歯車79も往復運動し、対向歯車81がハウジング74に固定された外歯車80に対して噛み合う歯面(81a、80a)をずらしながら回転し、雄ネジ部材78が回転することになる。
【0120】
雄ネジ部材78が回転すると、この雄ネジ部材78に螺合する雌ネジ部材77は、その外周がハウジング74の内周に摺接して直線方向に沿って案内されながら、雄ネジ部材78からの回転駆動力により雄ネジ部材78に対して直線方向に沿って移動する。これにより、図16に示すように、第1取付部72と第2取付部73との間隔が拡大し、第1取付部72が取り付けられた大腿骨105と第2取付部73が取り付けられた頚骨106との間隔も拡大するように調整され、骨延長が行われることになる。また、外部コイル113による操作が行われていないときは、ハウジング74に固定された止めリング83に対してコイルバネ82で付勢された対向歯車81と、ハウジング74に固定された外歯車80とが噛み合っているため、逆方向に回転するような誤作動が防止され、第1取付部72と第2取付部73とが接近する方向における変位は防止されることになる。尚、骨延長装置70による上述のような骨の相対位置の調整は、他方の足の成長に合わせて行われる。
【0121】
(骨調整装置の効果)
以上説明した骨調整装置70によると、生体内アクチュエータ2の電磁石25の変位に基づいて第1及び第2取付部(72、73)の相対位置を変更する調整機構71により、第1及び第2取付部(72、73)がそれぞれ取り付けられる第1及び第2の骨(105、106)の相対的な位置が調整される。このように、生体内アクチュエータ2により駆動されて骨の相対的な位置を調整する骨調整装置70を構成することができる。従って、外科手術を伴わずに生体内で駆動することができるとともに誤作動が生じてしまうことを抑制することができる、骨調整装置70を提供することができる。
【0122】
また、骨調整装置70によると、生体内アクチュエータ2の駆動力を駆動力回転変換部である歯車機構76によって電磁石変位方向を中心とする回転力に変換し、ネジ機構75により直線方向に沿って相対変位させるように第1及び第2の骨(105、106)の相対的な位置を調整することができる。このため、生体内アクチュエータ2の駆動力の作用方向と直線駆動部であるネジ機構75による第1及び第2の骨(105、106)の位置調整方向とを一致させる骨調整装置70を実現することができる。これにより、生体内アクチュエータ2と調整機構71とがよりコンパクトなスペースに効率よく配置された骨調整装置70を実現することができる。
【0123】
また、骨調整装置70によると、駆動力回転変換部が、内歯車79と、その外側に配置された外歯車80と、内歯車79に内側で外歯車80に外側で噛合する対向歯車81とで構成される。そして、電磁石25が磁力で変位したときは内歯車79が対向歯車81を外歯車80から離間させ、弾性部材23の付勢力で電磁石25の変位が戻るときは対向歯車81が外歯車80と噛み合いながら回転してネジ機構75の雄ネジ部材78を回転する。このため、電磁石25の駆動力を電磁石変位方向を中心とする回転力に変換してネジ機構75に伝達する駆動力回転変換部を、内歯車79と外歯車80と対向歯車81とを用いた
コンパクトな構成で実現することができる。
【0124】
また、骨調整装置70によると、第1の骨105の長手方向に沿って第1及び第2の骨(105、106)の間隔が拡大されるように調整される。これにより、骨と骨との相対位置を引き伸ばすように延長する骨延長装置としての骨調整装置70を実現することができる。
【0125】
尚、上述した骨調整装置70においては、生体内アクチュエータ2、ハウジング74、ネジ機構75、歯車機構76からなる調整機構内の駆動ユニットが1つのみ設けられた調整機構71を備えるものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。例えば、第1実施形態の骨調整装置の変形例において説明したものと同様に、生体内アクチュエータ2、ハウジング74、ネジ機構75、歯車機構76からなる調整機構内の駆動ユニットを複数備えてそれらが直列に連結された調整機構を備える骨調整装置であってもよい。
【0126】
[変形例]
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施の形態に限られるものではなく、特許請求の範囲に記載した限りにおいて様々に変更して実施することができるものである。例えば、次のような変形例を実施することができる。
【0127】
(1)生体内アクチュエータの第1実施形態においては、電磁ユニットの電磁石と生体外から磁力を作用させる磁石との間で反発し合う(斥け合う)方向に力が作用する場合を例にとって説明したが、必ずしもこの通りでなくてもよい。電磁ユニットの電磁石と生体外の磁石との間で引き付け合う方向に力が作用するように構成されるものであってもよい。
【0128】
(2)生体内アクチュエータの第1及び第2実施形態においては、弾性部材としてコイルバネを用いる場合を例にとって説明したが、必ずしもこの通りでなくてもよい。コイルバネ以外のバネやバネ以外の弾性部材を用いてもよい。
【0129】
(3)第1実施形態の生体内アクチュエータにおける電磁石、受電コイル部、弾性部材、及びロッド部材の配置については、上述の実施形態にて説明したものに限られず、適宜変更して実施することができる。また、第2実施形態の生体内アクチュエータにおける電磁石、弾性部材、及びロッド部材の配置についても、上述の実施形態にて説明したものに限られず、適宜変更して実施することができる。
【0130】
(4)骨調整装置の第1乃至第3実施形態においては、大腿骨に配置された骨延長装置や脊椎矯正装置を例にとって説明したが、この例に限らず、大腿骨や脊柱以外において本発明を適用してもよい。また、骨延長装置としては、脚長差に応じて骨延長を図るものに限られず、分離された骨の間において骨組織を成長させながら骨を延長する骨延長装置を実施することもできる。
【0131】
(5)骨調整装置の調整機構において、生体内アクチュエータからの駆動に基づく作動方向と反対方向の作動を防止するための独立した機構としてのラチェット機構がさらに設けられた骨調整装置を実施することもできる。
【0132】
(6)第2実施形態の生体内アクチュエータは、外部コイルのみによって駆動するものを例にとって説明したが、この通りでなくてもよい。即ち、外部コイルによって内部コイル(電磁石)に対して電磁誘導作用による誘導電流を生じさせ、外部コイルとは別個の生体外に配置される磁石によって電磁ユニットの電磁石との間で磁力を発生させてこの電磁石を駆動してもよい。図17は、外部コイルとは別個に電磁ユニットの電磁石を駆動するための磁石が用いられる場合を説明するための断面図であり、第3実施形態の骨調整装置7
0が足に配置されている状態を示している。尚、図17では、人体組織の図示は省略しており、骨調整装置70についてもその一部のみを図示している。図17に示すように、電磁石25は、ケーシング22内において一端側に向かって押し付けられるように弾性部材23によって付勢されている。そして、電磁石25は、生体外112においてケーシング22の一端側に(図17の例では、生体内アクチュエータ2に対して膝が位置する側に)外部磁石114が配置されることで生体外112から作用する磁力によって駆動される。この外部磁石114としては、電磁石を用いることもでき、また、永久磁石を用いることもできる。
【0133】
図17に示す生体内アクチュエータ2の駆動形態によると、電磁ユニット21の電磁石25は、弾性部材23によりケーシング22の一端側に押し付けられ、生体外112でこの一端側に配置された外部磁石114から作用する磁力によって駆動される。このため、外部コイル113に交流電圧を印加して通電することによる駆動力が小さい場合であっても、外部磁石114を更に用いることで、電磁ユニット21の電磁石25に対して、弾性部材23の付勢力に抗するに十分な所望の駆動力をより確実に付与することができる。尚、交流電圧が印加されるコイルを有する電磁石を外部磁石114として用いる場合には、電磁ユニット21の内部コイル25において電磁誘導作用により生じる誘導電流の位相との関係に基づいて、電磁ユニット21の電磁石25と生体外に配置される外部磁石114との間で斥け合う力が生じるように、位相が調整された交流電圧を外部磁石に印加する必要がある。
【0134】
(7)第1実施形態の生体内アクチュエータについては、第1又は第2実施形態の骨調整装置の調整機構とともに適用される場合について、第2実施形態の生体内アクチュエータについては、第3実施形態の骨調整装置の調整機構とともに適用される場合について説明したが、この通りでなくてもよく、適宜組み合わせを変更して実施することができる。例えば、第1実施形態の生体内アクチュエータを第3実施形態の骨調整装置の調整機構とともに適用し、第2実施形態の生体内アクチュエータを第1又は第2実施形態の骨調整装置の調整機構とともに適用してもよい。
【産業上の利用可能性】
【0135】
本発明は、直線方向に沿って変位する動作が可能な動作部を有するとともに生体内に配置される生体内アクチュエータ、及びその生体内アクチュエータを備えて骨の相対的な位置を調整する骨調整装置として、広く適用することができるものである。
【符号の説明】
【0136】
1 生体内アクチュエータ
11 電磁ユニット
12 ケーシング
13 弾性部材
15 電磁石
101 生体内
102 生体外
103 給電装置
104 磁石

【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線方向に沿って変位する動作が可能な動作部を有するとともに生体内に配置される生体内アクチュエータであって、
生体外から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れることで磁力を発生するとともに前記動作部として設けられる電磁石を有する電磁ユニットと、
前記電磁石を直線方向に沿って変位可能に保持するケーシングと、
前記電磁石を前記ケーシング内において付勢する弾性部材と、
を備え、
前記電磁石は、前記電磁誘導作用により磁力を発生した状態において、生体外から作用する磁力によって駆動されて前記弾性部材の付勢力に抗して直線方向に沿って変位することを特徴とする、生体内アクチュエータ。
【請求項2】
請求項1に記載の生体内アクチュエータであって、
前記電磁ユニットは、前記電磁誘導作用により給電されて前記電磁石に通電する受電コイル部を有し、
前記受電コイル部は、前記ケーシングの外側に配置されて、前記ケーシングの壁部に形成された貫通孔を貫通して延びるように配置されたリード線を介して前記電磁石に接続されていることを特徴とする、生体内アクチュエータ。
【請求項3】
請求項2に記載の生体内アクチュエータであって、
前記受電コイル部は、前記電磁石が変位する方向と平行に延びる前記ケーシングの側面に対して取り付けられていることを特徴とする、生体内アクチュエータ。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3のいずれか1項に記載の生体内アクチュエータであって、
前記電磁石は、前記ケーシング内において一端側に向かって押し付けられるように前記弾性部材によって付勢され、生体外から作用する磁力が前記ケーシングの一端側から作用することで駆動されることを特徴とする、生体内アクチュエータ。
【請求項5】
請求項4に記載の生体内アクチュエータであって、
前記電磁石に取り付けられるとともに、前記ケーシングにおいて前記電磁石が押し付けられる一端側とは反対側の他端側に形成された開口から突出するロッド部材をさらに有し、
前記弾性部材は、前記ロッド部材が中心を貫通するように配置されるコイルバネとして形成されていることを特徴とする、生体内アクチュエータ。
【請求項6】
請求項1に記載の生体内アクチュエータであって、
前記電磁ユニットは、前記電磁石として設けられて生体内に配置される内部コイルを備え、
生体外に配置される外部コイルに通電されて当該外部コイルの内側に生じる磁場中に前記内部コイルが配置されることで、当該内部コイルにおいて、生体外から作用する電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れて磁力を発生することを特徴とする、生体内アクチュエータ。
【請求項7】
請求項6に記載の生体内アクチュエータであって、
前記外部コイルに交流電圧が印加されて通電されることで、前記内部コイルに前記電磁誘導作用により生じる誘導電流が流れることを特徴とする、生体内アクチュエータ。
【請求項8】
請求項7に記載の生体内アクチュエータであって、
前記外部コイルに交流電圧が印加されて磁場が生じることによって、前記電磁誘導作用
により前記内部コイルにおいて発生する磁力と、当該外部コイルにおいて発生して生体外から作用する磁力とが、互いに斥け合う力として発生することを特徴とする、生体内アクチュエータ。
【請求項9】
請求項7に記載の生体内アクチュエータであって、
前記電磁石は、前記ケーシング内において一端側に向かって押し付けられるように前記弾性部材によって付勢され、生体外において前記ケーシングの一端側に磁石が配置されることで生体外から作用する磁力によって駆動されることを特徴とする、生体内アクチュエータ。
【請求項10】
骨の相対的な位置を調整する骨調整装置であって、
請求項1乃至請求項9のいずれか1項に記載の生体内アクチュエータと、
両端側においてそれぞれ骨に対して固定され又は係合するように取り付けられる第1取付部及び第2取付部を有し、前記生体内アクチュエータが配置されるとともに、前記電磁石の変位に基づいて、前記第1取付部及び前記第2取付部の一方に対する他方の相対位置を変更する調整機構と、
を備え、
前記調整機構により、前記第1取付部が取り付けられる第1の骨と前記第2取付部が取り付けられる第2の骨との相対的な位置を調整することを特徴とする、骨調整装置。
【請求項11】
請求項10に記載の骨調整装置であって、
前記調整機構は、前記第1取付部及び前記第2取付部の一方を他方に対して直線方向に沿って相対変位させるように駆動する直線駆動部と、前記電磁石が変位する方向における駆動力をその作用方向を変換して前記直線駆動部に伝達する駆動力方向変換部とを、を有することを特徴とする、骨調整装置。
【請求項12】
請求項10に記載の骨調整装置であって、
前記調整機構は、
前記第1取付部及び前記第2取付部の一方を他方に対して直線方向に沿って相対変位させるように駆動する直線駆動部と、前記電磁石が変位する方向である電磁石変位方向における駆動力を当該電磁石変位方向を中心とする回転力に変換して前記直線駆動部に伝達する駆動力回転変換部とを、有し、
前記直線駆動部は、ネジ機構として設けられて前記第1取付部及び前記第2取付部の一方を他方に対して直線方向に沿って相対変位させることを特徴とする、骨調整装置。
【請求項13】
請求項12に記載の骨調整装置であって、
前記駆動力回転変換部は、
一方の端部に歯面が形成され、前記電磁石とともに前記電磁石変位方向に変位する内歯車と、
一方の端部に歯面が形成され、前記内歯車の周囲に配置された環状の外歯車と、
前記内歯車に対して内側で噛合可能であるとともに前記外歯車に対して外側で噛合可能な歯面が端部に形成され、前記内歯車及び前記外歯車に対向するよう配置されて前記直線駆動部におけるネジ軸に回転力を伝達する対向歯車と、
を有し、
前記内歯車が前記対向歯車と噛み合いながら前記電磁石とともに変位して当該対向歯車を前記外歯車から離間させた後、前記弾性部材の付勢力によって前記電磁石とともに前記内歯車が変位して当該内歯車が前記対向歯車から離間するとともに当該対向歯車と前記外歯車とが噛合することで、前記電磁石変位方向における駆動力を当該電磁石変位方向を中心とする回転力に変換して前記直線駆動部に伝達することを特徴とする、骨調整装置。
【請求項14】
請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の骨調整装置であって、
前記第1の骨及び前記第2の骨の少なくともいずれか一方の長手方向に沿って前記第1の骨と前記第2の骨との間隔を拡大するように前記第1の骨と前記第2の骨との相対的な位置を調整することを特徴とする、骨調整装置。
【請求項15】
請求項10乃至請求項13のいずれか1項に記載の骨調整装置であって、
前記第1の骨及び前記第2の骨の長手方向に対して直交する方向又は斜めの方向において前記第1の骨と前記第2の骨との間隔を変更するように前記第1の骨と前記第2の骨との相対的な位置を調整することを特徴とする、骨調整装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【公開番号】特開2009−254804(P2009−254804A)
【公開日】平成21年11月5日(2009.11.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−58447(P2009−58447)
【出願日】平成21年3月11日(2009.3.11)
【出願人】(504418084)日本メディカルマテリアル株式会社 (106)
【Fターム(参考)】