説明

生体医療装置の抽出方法

生体医療装置、特にコンタクトレンズを処理する方法は、抽出成分を含有するポリマー製装置を、抽出成分を溶解して装置から除去する溶媒と接触させることからなっている。これらの装置は、溶媒で少なくとも二回処理されて、装置内の抽出成分が除去される。前記処理ステップのうち一方は、先行バッチの装置の最終すすぎ液として使用された溶媒を使用する。その溶媒は、直列のタンクを通じて循環され、この場合、装置は、まず下流のタンク内で抽出され、続いて、新しい溶媒が入ってくる第一タンク内で抽出される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリマー製生体医療装置、特にコンタクトレンズ、眼内レンズ及び眼科移植体を含む眼科装置から、抽出成分を除く方法に関する。
【背景技術】
【0002】
ヒドロゲルは、コンタクトレンズを含む各種生体医療装置を製造するのに使用する望ましいクラスの材料である。ヒドロゲルは、水を平衡状態で含有する水和された架橋ポリマー系である。ヒドロゲル製レンズは、望ましい生体適合性と快適さを提供する。
【0003】
コンタクトレンズなどのヒドロゲルポリマー製眼科装置の典型的な製造方法では、レンズ形成モノマーの混合物を含有する組成物が、型に充填され次いで硬化され、そのレンズ形成モノマーが重合して成形された製品が生成する。このモノマー混合物はさらに希釈剤を含有していてもよく、この場合、その希釈剤は、生成したポリマー製品中に残留する。さらにこれらレンズ形成モノマーの中には、十分に重合しないものがいくらかあり、かつそのモノマーの副反応によってオリゴマーが生成することがあり、これら未反応のモノマーとオリゴマーはポリマー製品中に残留する。このような残留物質は、光学的清澄性を損なうか又はその眼科製品を着用したとき眼を刺激することがあるので、一般にその製品を抽出して、前記残留物質を除去する。親水性の残留物質は水又は水溶液で抽出できるが、一方、疎水性の残留物質は、一般に、有機溶媒で抽出する必要がある。広く使われている有機溶媒は、水と混和性の有機溶媒であるイソプロパノールである。抽出の後、そのヒドロゲル製レンズ製品は、水、又は有機溶媒を水と置換する働きもする水溶液中に浸漬することによって水和される。成形されたレンズは、包装や滅菌処置のみならず旋盤切削、バフ仕上げ及びポリシングなどの機械加工操作を受けることができる。
【0004】
国際特許願公開第WO 03/082367号には、眼科の生体医療装置から抽出成分を除く方法の改良法が記載されている。この方法には、一般に、抽出成分を含有する一バッチの装置を第一容積の新しい溶媒と接触させて、抽出成分のいくらかをそのバッチの装置から除き次いでそのバッチの装置をそのとき抽出成分をいくらか含有している第一容積の溶媒から分離し、続いて、同じバッチの装置を、第二容積の新しい溶媒と接触させて、追加の抽出成分をこのバッチの装置から除き、次いでこのバッチの装置をそのとき追加の抽出成分を含有している第二容積の溶媒から分離するステップが含まれている。このバッチの装置を、随意選択的に、追加の容積の新しい溶媒に接触させて一層多くの抽出成分を除いてもよい。好ましくは、そのバッチの装置を溶媒で完全に処置した後、これら装置を、その装置中に残留している溶媒を置換する水又は水溶液と接触させる。国際特許願第WO 03/082367号に開示されている発明は、与えられた数のポリマー製生体医療装置から抽出成分を除くのに必要な溶媒の量及び/又は全抽出時間を少なくするのみならず、従来の抽出法と比べて、複数バッチの抽出されるレンズがより均一な抽出効率で抽出されることを保証している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、国際特許願第WO 03/082367号に記載されている方法を超えて工程効率が改善され、かつ経費が節減される抽出成分除去方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、生体医療装置、特に眼科の生体医療装置の改善された製造方法及びその装置の抽出成分を除く改善された方法を提供する。
【0007】
特定の実施態様によれば、上記方法は、抽出成分を含有する一バッチの装置を第一容積の溶媒と接触させていくらかの抽出成分をそのバッチの装置から除き次いでそのバッチの装置をそのときいくらかの抽出成分を含有している第一容積の溶媒から分離するステップを含んでいる。この第一容積の溶媒は、前記一バッチの装置と接触する前に、その前のバッチの装置からの抽出成分を含有している。続いて、この同じバッチの装置を第二容積の新しい溶媒と接触させて、このバッチの装置から追加の抽出成分を除き、次いでこのバッチの装置を、そのとき追加の抽出成分を含有する第二容積の溶媒から分離する。このバッチの装置は、随意選択的に追加の容積の新しい溶媒と接触させて一層多くの抽出成分を除くことができる。好ましくは、そのバッチの装置を溶媒で完全に処置した後、その装置を、それら装置に残留している溶媒を置換する水又は水溶液と接触させる。
【0008】
他の好ましい実施態様によれば、本発明は、溶媒を、直列に接続されたタンクを通じて循環させて、その際、新しい溶媒が直列の第一タンクに受け取られ次いでその溶媒が第一タンクの下流の少なくとも一つのタンクに循環され、次いで抽出成分を含有する一バッチの装置を前記直列のタンクの溶媒と接触させて抽出成分をその装置から除き、その際、前記バッチの装置を前記少なくとも一つの下流のタンクの溶媒と接触させ、次いで前記第一タンク内の新しい溶媒と接触させることからなるポリマー製生体医療用装置の製造方法を提供するものである。そのバッチの装置を第一タンクの新しい溶媒と接触させた後、その装置は、水又は水溶液と接触させて、装置に残留している溶媒を水で置換することができる。
【0009】
好ましくは、前記バッチの装置は溶媒中に浸漬され、その溶媒はイソプロパノールを含有している。好ましい装置は、眼科の生体医療装置、特に、眼内レンズ又はコンタクトレンズである。
【0010】
特定の他の好ましい実施態様によれば、本発明は、直列に接続されたタンクを通じて溶媒を循環させて、その際、新しい溶媒が直列の第一タンクに受け取られ次いでその溶媒が第一タンクの下流の少なくとも一つのタンクに循環され、次いでポリマー製医療装置を前記直列のタンク内で抽出して、その際、その装置は、溶媒の循環する方向と逆の方向に、直列のタンクを通じて輸送されることを含んでなる方法を提供する。
【0011】
さらに、本発明によって、国際特許願公開第WO 03/082367号に記載されている方法と類似の、抽出される多数のバッチのレンズの均一な抽出効率が達成される。その上に、本発明の方法によって、与えられた数のポリマー製生体医療装置から抽出成分を除くのに必要な溶媒の量を減らして、経費を節減しかつ工程の効率を改善されることが分かった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明は、生体医療装置、特に眼科の生体医療装置から、抽出成分を除く方法を提供するものである。用語「生体医療装置」は、生体組織と直接接触させる装置を意味する。用語「眼科の生体医療装置」は、コンタクトレンズ、眼内レンズ及び眼科移植体を含む、眼の組織と直接接触させる装置を意味する。以下の記述では、本発明の好ましい実施態様であるヒドロゲル製コンタクトレンズを取り上げて上記方法を考察するが、本発明は、他のポリマー製生体医療装置の抽出にも利用できる。
【0013】
ヒドロゲルは、平衡状態で水を含有する水和された架橋ポリマー系である。ヒドロゲル製レンズは、一般に、少なくとも一種の親水性モノマーを含有するレンズ形成モノマーの混合物を重合させることによって製造される。親水性のレンズ形成モノマーとしては、メタクリル酸及びアクリル酸などの不飽和カルボン酸類;メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、アクリル酸2-ヒドロキシエチル及びメタクリル酸グリセリルなどの(メタ)クリル置換アルコール類又はグリコール類;N-ビニル-2-ピロリドンなどのビニルラクタム類;並びにメタクリルアミド及びN,N-ジメチルアクリルアミドなどのアクリルアミド類がある。その外の親水性モノマーは、当該技術分野でよく知られている。
【0014】
前記モノマー混合物は、一般に、架橋性モノマーすなわち多数の重合性官能価を有するモノマーと定義される架橋性モノマーを含有している。前記親水性モノマーのうちの一種が架橋性モノマーとして機能してもよく、又は別の架橋性モノマーを利用してもよい。代表的な架橋性モノマーとしては、ジビニルベンゼン、メタクリル酸アリル、ジメタクリル酸エチレングリコール、ジメタクリル酸テトラエチレングリコール、ジメタクリル酸ポリエチレングリコール、及びジメタクリル酸グリコールの炭酸ビニル誘導体がある。
【0015】
一クラスのヒドロゲルはシリコーンヒドロゲルであり、レンズ形成モノマーは親水性モノマーに加えて、少なくとも一種のシリコーン含有モノマーを含有している。そのシリコーン含有モノマーは、多数の重合性ラジカルを含有している場合、架橋性モノマーとして機能できる。本発明は、シリコーンヒドロゲル製生体医療装置を抽出するのに特に適している。一般に、未反応のシリコーン含有モノマー及びこれらモノマーから生成するオリゴマーは疎水性なので、ポリマー製装置から抽出することは一層困難である。したがって、有効な抽出を行うには、一般に、イソプロパノールなどの有機溶媒による処置が必要である。
【0016】
適切な一クラスのシリコーン含有モノマーとしては、下記式(I):
【化1】

(式中、Xは-COO-、-CONR4-、-OCOO-又は-OCONR4-(式中、R4はH又は低級アルキルである)を表し;R3は水素又はメチルを表し;hは1〜10であり;そして各R2は独立して低級アルキルもしくはハロゲン化アルキルの基、フェニル基又は下記式:
-Si(R5)3
(式中、各R5は独立して低級アルキル基又はフェニル基である)で表される基である)で表される公知の嵩高で一官能価のポリシロキサニルアルキルモノマーがある。このような嵩高モノマーとしては、具体的に述べると、メタクリルオキシプロピル トリス(トリメチルシロキシ)シラン、ペンタメチルジシロキサニル メチルメタクリレート、トリス(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシプロピルシラン、メチルジ(トリメチルシロキシ)メタクリルオキシメチルシラン、3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカルバメート、及び3-[トリス(トリメチルシロキシ)シリル]プロピルビニルカーボネートがある。
【0017】
別の適切なクラスは、多官能価のエチレン系「末端閉鎖」シロキサン含有モノマーであり、特に下記式(II):
【化2】

(式中、各A’は独立して活性化不飽和基であり、
各R’は独立して1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基(これらの炭素原子は、その間にエーテル、ウレタン又はウレイドの結合を含有していてもよい)であり、
各R8は独立して、間にエーテル結合を含有していてもよい1〜18個の炭素原子を有する一価の炭化水素基又はハロゲン置換一価炭化水素基から選択され、及び
aは1又は2以上の整数である)で表される二官能価モノマーである。好ましくは、各R8は、独立してアルキル基、フェニル基及びフッ素置換アルキル基から選択される。少なくとも一つのR8は、下記式:
-D’-(CF2)s-M’
(式中、D’は、間にエーテル結合を有していてもよい1〜10個の炭素原子を有するアルキレン基であり
M’は水素、フッ素又はアルキル基であるが好ましくは水素であり、及び
sは1〜20の整数であり好ましくは1〜6の整数である)で表されるようなフッ素置換アルキル基でもよいことがさらに分かるであろう。
【0018】
A’に対する用語「活性化」は、フリーラジカル重合をしやすくする少なくとも一つの置換基、好ましくはエチレン系不飽和基を含む不飽和基を表すのに使用する。多種類のかような基を利用できるが、好ましくは、A’は、下記一般式:
【化3】

(式中、Xは好ましくは水素又はメチルであり、及びYは-O-又は-NH-である)で表される(メタ)アクリル酸のエステル又はアミドである。その外の適切な活性化不飽和基の例としては、ビニルカーボネート類、ビニルカルバメート類、フマレート類、フマルアミド類、マレエート類、アクリロニトリル、ビニルエーテルおよびスチリルがある。式(II)で表されるモノマーの具体例としては下記のものがある。
【0019】
【化4】

なお、上記3式中、d、f、g及びhは0〜250の範囲内であり好ましくは2〜100の範囲内であり、hは1〜20の整数であり好ましくは1〜6の整数であり、及びM’は水素又はフッ素である。
【0020】
さらに適切なクラスのシリコーン含有モノマーとしては、下記式(III a)と(III b):
(III a) E’(*D*A*D*G)a*D*A*D*E’、又は
(III b) E’(*D*G*D*A)a*D*G*D*E’
で表されるモノマーがあり、これらの式中、
Dは、6〜30個の炭素原子を有するアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを表し、
Gは、1〜40個の炭素原子を含有しかつその主鎖中にエーテル、チオ又はアミンの結合を含有していてもよいアルキルジラジカル、シクロアルキルジラジカル、アルキルシクロアルキルジラジカル、アリールジラジカル又はアルキルアリールジラジカルを表し、
*はウレタン又はウレイドの結合を表し、
Aは下記式:
【化5】

(式中、各Rsは、独立して、炭素原子の間にエーテル結合を有していてもよい1〜10個の炭素原子を有するアルキル基又はフルオロ置換アルキル基を表し、
m’は少なくとも1であり、及び
pは400〜10,000の部分分子量(moiety weight)を与える数値である)で表される二価のポリマーラジカルを表し、
各E’は独立して、下記式:
【化6】

(式中、R23は水素又はメチルであり、
R24は水素、1〜6個の炭素原子を有するアルキル基又は-CO-Y-R26基(式中、Yは-O-、-S-又は-NH-である)であり、
R25は1〜10個の炭素原子を有する二価のアルキレン基であり、R26は1〜12個の炭素原子を含有するアルキル基であり、Xは-CO-又は-OCO-を表し、Zは-O-又は-NH-を表し、Arは6〜30個の炭素原子を含有する芳香族基を表し、wは0〜6であり、xは0又は1であり、yは0又は1であり、及びzは0又は1である)で表される重合性不飽和有機基を表す。
【0021】
特定のウレタンモノマーは、下記式:
【化7】

(式中、mは少なくとも1であって好ましくは3又は4であり、aは少なくとも1であって好ましくは1であり、pは400〜10,000という部分分子量を与える数値であって好ましくは少なくとも30であり、R27は、イソシアネート基を除いた後のジイソシアネートのジラジカル、例えばイソホロンジイソシアネートのジラジカルであり、及び各E”は、下記式:
【化8】

で表される基である)で表される。
【0022】
その外のシリコーン含有モノマーとしては、米国特許第5,034,461号、同第5,070,215号、同第5,260,000号、同第5,610,252号及び同第5,496,871号に記載されているシリコーン含有モノマーがある。なおこれらの特許に開示されている事項は本願に援用するものである。他のシリコーン含有モノマーは当該技術分野でよく知られている。
【0023】
先に述べたように、最初のモノマー混合物に有機希釈剤が含有されていてもよい。用語「有機希釈剤」は、本願で使用する場合、最初の混合物中の成分とは実質的に反応せずかつこの混合物のモノマー成分の不相溶性を最小にするために使われることが多い有機化合物を包括的に含んでいる。代表的な有機希釈剤としては、一価のアルコール類、例えばC6-C10の一価アルコール類;ジオール類、例えばエチレングリコール;ポリオール類、例えばグリセリン;エーテル類、例えばジエチレングリコールモノエチルエーテル;ケトン類、例えばメチルエチルケトン;エステル類、例えばヘプタン酸メチル;及び炭化水素類、例えばトルエンがある。
【0024】
通常、モノマー混合物は、型に充填され次いで熱線及び/又は紫外線などの光線を照射されて、型の中のモノマー混合物が硬化されすなわちフリーラジカル重合される。コンタクトレンズなどの生体医療装置を製造する際にモノマー混合物を硬化させる各種の方法が知られており、スピンキャスティング(spincasting)及びスタティックキャスティング(static casting)がある。スピンキャスティング法は、モノマー混合物を型に充填し、次いでそのモノマー混合物を光線に暴露しながら、制御された方法で、その型を回転させる方法である。スタティックキャスティング法は、製品の所望の形状を提供する型キャビティを形成する型の二つの部分の間に、モノマー混合物を充填し、次いで熱及び/又は光に暴露することによってモノマー混合物を硬化させる方法である。コンタクトレンズの場合、型の一方の部分はレンズの前部表面を成形する形状でありそして型のもう一つの部分はレンズの後部表面を成形する形状である。モノマー混合物が型の中で硬化された後、必要に応じて、所望の最終形状を有するコンタクトレンズすなわち製品を提供するため機械加工を行ってもよい。このような方法は、米国特許第3,408,429号、同第3,660,545号、同第4,113,224号、同第4,197,226号、同第5,271,875号及び同第5,260,000号に記載されている。なお、これら特許文献の開示する事項は本願に援用するものである。さらに、モノマー混合物は、ロッド又はボタンの形状にキャストし次いで旋盤で切削して所望の形状例えばレンズ形状の製品にしてもよい。
【0025】
一般に、ポリマー製コンタクトレンズの抽出成分は、その成分を実質的に完全に除くことを保証するのに十分な期間、そのレンズを、抽出溶媒と接触させることによって除去される。例えば、公知の一方法によれば、第一バッチのコンタクトレンズをイソプロパノールの浴に浸漬し、次いで数時間保持して、未反応モノマー及びオリゴマーなどの抽出成分をレンズから除去する。このバッチのレンズを前記浴から取り出し次いで新しいバッチのレンズを同じ浴に浸漬する。さらに数時間経過した後この第二バッチを取り出し、次いで、最終的に、その浴の使用済みイソプロパノールを新しいイソプロパノールに取り替えるまで前記工程を繰り返す。
【0026】
このイソプロパノール浴の抽出成分の濃度は、レンズを抽出する操作が進行するにつれて増大するので、後から処理されるレンズから抽出成分を除く効率が低下する。したがって、たとえ、イソプロパノールの浴で抽出されるすべてのレンズが仕上げ製品の仕様を満たしていても、溶媒浴の耐用期間が尽きる時点の近くで抽出された後の方のバッチのレンズは、残留抽出成分の濃度が耐用期間の早い時期に処理されたバッチより高くなる傾向がある。溶媒浴の耐用期間中、均一な抽出効率を維持することは、必要なことでありそして与えられた量の溶媒で処理されるレンズの数を減らすことによって達成されることは明らかであるが、これは、与えられた数のレンズに対して大量の溶媒が必要であるから、経済と環境両方の観点から望ましくないであろう。あるいは、溶媒を連続的に補充することによって、抽出効率を維持できるであろうが、やはりこの方法は、与えられた数のレンズに対して大量の溶媒が必要なので、廃棄しなければならない汚染した溶媒が大量に生成することになる。
【0027】
国際特許願公開第WO 03/082367号に記載されている方法は、与えられた数のポリマー製生体医療装置から抽出成分を除くのに必要な溶媒の量を減らす機会を与えながら、多数のバッチのレンズ全体にわたってより均一な抽出効率を保証している。本発明は、与えられた数の装置に必要な溶媒の量を一層大きく減らして、コストを大きく節減しかつ大量商業生産の効率を改善する。具体的に述べると、使用される溶媒の量は、50%まで減らすことができる。
【0028】
図1に、各種の好ましい実施態様に従って本発明を実施する装置と方法が図式的に例示されている。新しい溶媒の例えばイソプロパノールは容器1に貯蔵されている。タンク2には、当初、第一バッチのポリマー製生体医療装置、例えばコンタクトレンズが入っている。その例示実施態様では、この第一バッチのコンタクトレンズは、垂直に積み重ねられたいくつかのトレー10で構成され、その各トレー10には多数のコンタクトレンズが入っている。この第一バッチの装置はすでに、第一容積のイソプロパノールと接触している。次に、予め定められた容積の新しい溶媒を、容器1から管路3を通じタンク2にポンプ輸送するが、この容積は、前記積み重ねたトレー10を浸漬するのに十分な容積である。必要に応じて、タンク2の中の溶媒は、タンク中、トレー10の周りの循環を促進するため攪拌してもよく、例えばタンク2に機械攪拌機を設置してもよく又は超音波を利用して攪拌してもよい。このバッチのトレー10はこの容積の新しい溶媒と予め定められた時間接触させる。次いでトレー10をタンク7に移送する。タンク7を、供給管路8を通じて水又は緩衝生理的食塩水などの水溶液で満たして、すべてのトレー10をその水又は水溶液中に浸漬する。
【0029】
第一バッチのトレーの最終すすぎステップに使われたタンク2中の溶媒は、タンク2の中に残っている。ここで、第二バッチの装置を処理する。積み重ねたトレー10中に入っているその第二バッチのレンズをタンク2の中に入れる。やはり、必要に応じて、タンク2の中の溶媒は、タンク内とトレー10の周りの循環を促進するため攪拌してもよい。従来の抽出法の場合と同様に、溶媒は装置に浸透して、装置中の各種抽出成分、例えば未反応モノマー及びオリゴマーなどを溶解する。次にタンク2の中の溶媒を管路4を通じて排出して、その溶媒に溶解した抽出成分を、その溶媒とともにタンク2から取り出す。
【0030】
タンク2から排出されたこの使用済み容積の溶媒は、廃棄してもよく、又は随意選択的に精製装置5にかけて抽出成分をその容積から除いて精製された溶媒を管路6を通じて容器1に戻してもよい。用語「新しい溶媒」は、本願で使用する場合、抽出するため先に使用したが精製して抽出成分を除いた溶媒を含むものとする。代表的な精製装置は、活性炭などの吸着剤を含有する充填層又は流動層を備えている。溶媒から抽出成分を除くかような方法は、Ayyagariらの米国特許第6,423,820号に開示されている。なおその開示事項は本願に援用するものである。
【0031】
次に、同じバッチのトレー10がまだ入っているタンク2に、タンク1からの予め決定められた容積の新しい溶媒を再び充填し、次いでこの同じバッチのトレー10のレンズを、この第二容積の溶媒と予め定められた時間接触させて、第一容積の溶媒で除けなかった追加の抽出成分をこの第二容積の新しい溶媒に溶解させる。随意選択的に、トレー10中の装置のバッチは、必要に応じて新しい溶媒で一回以上追加して処理してもよい。
【0032】
このタンク2の溶媒は、タンク2から排出せずに、次の第三バッチのレンズの最初のすすぎに使用する。
【0033】
トレー10内の装置の抽出成分の濃度が、所望の濃度まで低下した後、トレー10はタンク7に移送する。タンク7に、水又は緩衝生理的食塩水などの水溶液を、供給管路8を通じて満たして、すべてのトレー10を、その水又は水溶液に浸漬する。その水又は水溶液は、前記装置から溶媒をすすぎだす働きをするものであるから、溶媒は前記装置から容易に除けるように水混和性有機溶媒が好ましい。また、ヒドロゲルコポリマーの場合は、前記水又は水溶液が、装置に吸収されて、そのポリマー材料に含有されている有機溶媒と置換される。言い換えると、その水又は水溶液が溶媒を装置から追い出す。タンク7は、その水又は水溶液がトレー10内の装置の周りを循環しやすいように、タンク2と同様に随意選択的に攪拌してもよい。予め定められた期間の後、その水又は水溶液は管路9を通じて排出される。このバッチの装置は、好ましくは、タンク内の水又は水溶液で少なくとももう一回処理される。
【0034】
続いて、トレー10は、タンク7から取り出して追加の処理を実施する。例えば、コンタクトレンズの場合、これらレンズは包装され滅菌される。
【0035】
図2は、各種の追加の好ましい実施態様に従って本発明を実施する装置及び方法を図式的に示す。新しい溶媒の例えばイソプロパノールは、容器15に貯蔵されている。その溶媒は管路25を通じてタンク11にポンプ輸送される。溶媒は、タンク11から管路21を通じてタンク12に流動する。管路21に対しては重量供給を利用するか又は随意選択的にポンプを設置してもよい。溶媒は、タンク12から管路22を通じてタンク13に流動する。例示されている実施態様では、タンク13は、直列のタンクのうち最下流のタンクであり、溶媒は、タンク13から管路23を通じて流動する。溶媒は管路23から廃棄してもよく、又は図2に示すように、この溶媒を、精製装置19に受け入れてその溶媒から抽出成分を除き、次いでその精製された溶媒を容器15に戻してもよい。
【0036】
図2に示すように、タンク13には、一バッチのポリマー製生体医療装置、例えばコンタクタクトレンズが入っている。例示されている実施態様では、このバッチのコンタクトレンズは、垂直に積み重ねられたいくつものトレー10で構成され、各トレーには多数のレンズが入っている。レンズのこのトレー10は、タンク13内でイソプロパノールに浸漬される。予め定められた期間経過した後、トレー10をタンク12に移送して、そのトレー内のコンタクトレンズを再びイソプロパノールに浸漬する。タンク12内の溶媒は、タンク13内の溶媒より純度が高い(すなわち、先行のコンタクトレンズを抽出するので抽出成分が少ない)。予め定められた期間の後、トレー10をタンク11に移送して、そのトレーのコンタクトレンズをイソプロパノールに浸漬する。タンク11内の溶媒は、タンク12内の溶媒より純度が高い。タンク11からトレー10を容器17に移送する。容器17には水又は緩衝生理的食塩水などの水溶液が満たされ、その中にすべてのトレー10が浸漬される。したがって、図1の矢印は、トレー10内のコンタクトレンズのバッチの移送を示し、この方向は、溶媒が直列のタンクを循環する方向と逆の方向である。
【0037】
装置のバッチの処理は、比較的連続して行う方が好ましい。したがって、トレー10をタンク13からタンク12に移送した後ただちに、新しいセットのトレーをタンク13内に入れる。
【0038】
タンク11、12及び13内の溶媒は、タンク内及びトレー10の周りの循環を促進するため攪拌してもよい。従来の抽出法と同様に、装置のバッチが各種抽出タンク内の溶媒に浸漬されている間に、溶媒が装置に浸透して、装置内の各種抽出成分、例えば未反応モノマー及びオリゴマーを溶解する。
【0039】
この方法によれば、抽出されるレンズの多数のバッチ全体について均一な抽出効率が達成される。各抽出タンク内の溶媒の純度のレベルは比較的一定のままであるので、各バッチのレンズは、各タンク内で、類似の純度の溶媒によって抽出される。図2に示すように、タンク11の管路31に循環ポンプを設置してもよい。同様に、タンク12とタンク13それぞれに循環管路32と33を設けてもよい。これらの循環管路は、イソプロピルアルコールがタンク内を循環して、抽出効率を改善しかつ各タンク内全体の溶媒の濃度のばらつきを小さく維持することを保証するのに役立つている。しかしこの方法を開始したとき、最初の数バッチのレンズは、不純物の少ない溶媒に暴露されることは明らかである。この方法が定常状態に到達すると、各タンク内の溶媒の純度レベルは比較的一定に維持される。
【0040】
その上に、本発明の方法によれば、与えられた数のポリマー製生体医療装置から抽出成分を除くのに必要な溶媒の量がさらに減少するので、国際特許願公開第WO 03/082367号の方法と比べて、コストが低減されかつ工程効率が改善される。
【0041】
容器17は供給管路28を通じて水又は緩衝生理的食塩水などの水溶液を満たされ、すべてのトレーがその水又は水溶液に浸漬される。その水又は水溶液は、装置から溶媒をすすぎ出す働きをするので、溶媒は、装置から容易に除けるように水混和性有機溶媒が好ましい。また、ヒドロゲルコポリマーの場合、その水又は水溶液は、装置に吸収されて、そのポリマー材料に含有されている有機溶媒が置換される。換言すると、その水又は水溶液は、装置から溶媒を追い出す。容器17は、水又は水溶液がトレー10内の装置の周りを循環しやすくなるように、抽出タンクと同様に、随意選択的に攪拌してもよい。予め定められた期間の後、前記水又は水溶液を管路29を通じて排出する。このバッチの装置は、容器17内にて、水又は水溶液で少なくとももう一回処理することが好ましい。
【0042】
続いて、トレー10を容器17から取り出して追加の処理を実施できる。例えば、コンタクトレンズの場合、これらレンズは包装し滅菌される。
【0043】
図示されている工程の条件は以下の通りである。第一に、各タンクの大きさは、100個のコンタクトレンズを保持し、イソプロパノールの流量が0.33リットル/時間で各タンクの保持時間が55分間である大きさである。第二に、各タンクの大きさは、300個のコンタクトレンズを保持し、イソプロパノールの流量が1リットル/時間で各タンクの保持時間が55分間である大きさである。第三に、各タンクの大きさは、750個のコンタクトレンズを保持し、イソプロパノールの流量が2.5リットル/時間で各タンクの保持時間が55分間である大きさである。もちろん、この記載事項によって、当業者は、各種の抽出レベルを必要とする生体医療装置の工程条件を容易に最適化できる。
【0044】
タンクとその中の溶媒は、室温に保持する方が好ましい。しかし、必要に応じて溶媒は加熱してもよい。
【0045】
用語「新しい溶媒」は、本願で使用する場合、抽出するために先に使用されたが精製されて抽出成分を除かれた溶媒を含んでいる。代表的な精製装置は、活性炭などの吸着剤を含有する充填層又は流動層を備えている。溶媒から抽出成分を除くかような方法は、Ayyagariらの米国特許第6,423,820号に開示されている。なおその開示事項は本願に援用するものである。
【0046】
装置を保持する各種のトレーは、当該技術分野で公知である.一般に、そのトレーは、レンズ又は装置を保持しているので抽出中に置き違えることがなく、かつトレーは、溶媒に、レンズ又は装置の周りを良好に循環させる。代表的なトレーは、Staffordらの米国特許第6,581,761号及びIndraらの国際特許願公開第WO 03/082367号(2003年3月19日付けで出願された米国特許願第10/392,741号)に記載されている。なおこの特許文献の開示事項は本願に援用するものである。
【0047】
本発明の好ましい実施態様を説明してきたが、当業者は、各種の変形、付加及び変更を、本願の特許請求の範囲に記載されている本発明の精神と範囲を逸脱することなく実施できることは分かるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の各種の好ましい実施態様を実施するための装置及び方法の図式図である。
【図2】本発明の他の各種の好ましい実施態様を実施するための装置及び方法の図式図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
抽出成分を含有する一バッチのポリマー製生体医療装置を、第一容積の溶媒と接触させていくらかの抽出成分を前記バッチの装置から除き、その際、その第一容積の溶媒が、このバッチの装置と接触する前に、先行バッチの装置からの抽出成分を含有しており、
前記バッチの装置を、そのバッチの装置からの前記いくらかの抽出成分を含有する第一容積の溶媒から分離し、
前記バッチの装置を、前記第一容積の溶媒より純度の高い第二容積の溶媒と接触させて、前記バッチの装置から追加の抽出成分を除き、次いで
前記バッチの装置を、前記追加の抽出成分を含有する第二容積の溶媒から分離する
ステップを含んでなるポリマー製生体医療装置の製造方法。
【請求項2】
前記バッチの装置を、第一容積の溶媒及び第二容積の溶媒に浸漬する請求項1に記載の方法。
【請求項3】
溶媒がイソプロパノールを含有している請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記装置が眼科の生体医療装置である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記装置が眼科のレンズである請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記装置がコンタクトレンズである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
コンタクトレンズがシリコーンヒドロゲルコポリマーで構成されている請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記装置がシリコーンヒドロゲルコポリマーで構成されている請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記バッチの装置を、第三容積の新しい溶媒と接触させて、そのバッチの装置から追加の抽出成分を除くステップを、随意選択的に含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項10】
溶媒による抽出に続いて、前記バッチの装置を水又は水溶液と接触させて、その装置に残留している溶媒を水で置換するステップをさらに含んでいる請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記バッチの装置を、新しい水又は新しい水溶液と数回接触させる請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記バッチの装置から分離された第一容積の溶媒を精製してその溶媒から抽出成分を除く請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記バッチの装置から分離された第二容積の溶媒を、精製すること無く使用して、次に続くバッチの装置から抽出成分を除く請求項1に記載の方法。
【請求項14】
直列に接続されているタンクを通じて溶媒を循環させ、その際、新しい溶媒を直列の第一タンクに受け取らせ、次いでその溶媒を第一タンクの下流の少なくとも一つのタンクに循環させ、次いで、
抽出成分を含有する一バッチの装置を直列のタンク内の溶媒に接触させて、抽出成分をその装置から除き、その際、前記バッチの装置を、前記下流の少なくとも一つのタンク内の溶媒と接触させ次に前記第一タンク内の溶媒と接触させる
ステップを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
直列に接続されているタンクを通じて、溶媒を循環させ、その際、新しい溶媒を直列の第一タンクに受け取らせ、次いでその溶媒を第一タンクの下流の第二タンクと第三タンクに循環させ、次いで、
抽出成分を含有する一バッチの装置を、直列のタンク内の溶媒に接触させて、抽出成分をその装置から除き、その際、前記バッチの装置を、前記第三タンク内の溶媒と接触させ、次に前記第二タンク内の溶媒と接触させ次に前記第一タンク内の溶媒と接触させる
ステップを含む請求項14に記載の方法。
【請求項16】
直列に接続されているタンクを通じて溶媒を循環させ、その際、新しい溶媒を直列の第一タンクに受け取らせ、次いでその溶媒を第一タンクの下流の少なくとも一つのタンクに循環させ、次いで、
ポリマー製生体医療装置を直列のタンク内で抽出し、その際、その装置を、直列のタンクを通じて、溶媒の循環する方向と逆の方向に輸送する
ステップを含む方法。
【請求項17】
新しい溶媒を直列の第一タンクに受け取らせ、次にその溶媒を、第一タンクの下流の第二タンクと第三タンクに循環させ、次いで前記装置を順次、第三、第二及び第一のタンク内で抽出する請求項16に記載の方法。
【請求項18】
抽出成分を含有する一バッチのポリマー製生体医療装置を第一容積の溶媒と接触させて、前記バッチの装置からいくらかの抽出成分を除き、その際、第一容積の溶媒は、前記バッチの装置と接触する前に、先行バッチの装置からの抽出成分を含有しており、
前記バッチの装置を、このバッチの装置からの前記いくらかの抽出成分を含有する第一容積の溶媒から分離し、
前記バッチの装置を第二容積の新しい溶媒と接触させて、前記バッチの装置から追加の抽出成分を除き、次いで
前記バッチの装置を、前記追加の抽出成分を含有する第二容積の溶媒から分離する
ステップを含んでなるポリマー製生体医療装置の製造方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公表番号】特表2008−500137(P2008−500137A)
【公表日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−527403(P2007−527403)
【出願日】平成17年5月17日(2005.5.17)
【国際出願番号】PCT/US2005/017371
【国際公開番号】WO2005/113028
【国際公開日】平成17年12月1日(2005.12.1)
【出願人】(506076640)ボーシュ アンド ローム インコーポレイティド (99)
【Fターム(参考)】