生体器官病変部改善用器具
【課題】ステントの放出作業時における圧縮された自己拡張型ステントの外面と、ステントを収納するチューブ体の内面間の摺接抵抗を少なくし、ステントの放出操作を容易とした生体器官病変部改善用器具を提供する。
【解決手段】生体器官病変部改善用器具1は、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント3と、内側チューブ体(内管)4と、ステント3を収納したステント収納チューブ体(シース)2とを備え、ステント収納チューブ体を内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、ステント3を放出可能となっている。シースの先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、シース2の軸方向に延びる溝23が設けられている。
【解決手段】生体器官病変部改善用器具1は、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント3と、内側チューブ体(内管)4と、ステント3を収納したステント収納チューブ体(シース)2とを備え、ステント収納チューブ体を内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、ステント3を放出可能となっている。シースの先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、シース2の軸方向に延びる溝23が設けられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、消化管その他の臓器などの生体内に形成された狭窄部または閉塞部に、ステントを留置するための生体器官病変部改善用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管、胆管、食道、気管、尿道、消化管その他の臓器などの生体管腔または体腔に形成された狭窄部あるいは閉塞部にステントを留置して、管腔または体腔空間を確保する生体器官病変部改善用器具が提案されている。
上記生体器官病変部改善用器具を構成するステントとしては、機能および留置方法によって、バルーン拡張型ステントと自己拡張型ステントとがある。
バルーン拡張型ステントは、ステント自身に拡張機能はなく、ステントを目的部位に留置するには、バルーンの上にマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的部位の内面に密着させて固定する。
このタイプのステントは上記のようなステントの拡張作業が必要であるが、収縮したバルーンにステントを直接取り付けて留置することもできるので、留置に関してはさほど問題がない。
これに対して、自己拡張型ステントは、ステント自身が収縮および拡張機能を有している。このステントを目的部位に留置するためには、収縮させた状態にて目的部位に挿入した後、収縮状態の維持のために負荷していた応力を除去する。例えば、目的部位の内径より小さい外径のシース内にステントを収縮させて収納し、このシースの先端を目的部位に到達させた後、ステントをシースより押し出す。押し出されたステントは、シースより解放されることにより応力負荷が解除され、収縮前の形状に復元し拡張する。これにより、目的部位の内面に密着し固定する。
このタイプのステントは、ステント自身が拡張力を有しているので、バルーン拡張型ステントのような拡張作業は必要なく、血管の圧力等によって径が次第に小さくなり再狭窄を生じるといった問題もない。
【0003】
しかしながら、自己拡張型ステントは、バルーン拡張型ステントより、一般的に目的部位に正確に留置しにくいと言われている。その理由は、バルーン拡張型ステントにおいては、ステントを目的の狭窄部に配置した後は、バルーンの中に液体を注入するだけであるため、ステントの拡張時にステントが前後に動くことがない。一方、自己拡張型ステントのデリバリーシステムの構造は、内管と外管の間にステントを収納して拘束し、内管のステント基端側にステントの動きを規制する係止部を設け、外管を基端側に引くことで、ステントの拘束を解放して自己拡張させるものである。このとき外管の体腔内でのたるみや、外管と体腔若しくは外管を導入しているカテーテルとの摩擦、または、システムを体内に導入するためのイントロデューサーといわれるデバイスの弁との摩擦などに起因して、ステントは拡張するときに前進しやすいといわれている。
【0004】
そこで、本件出願人は、特許文献1(特開2007−97620号公報)に示すものを提案している。
この生体器官病変部改善用器具1は、ガイドワイヤルーメン21を有する先端側チューブ2と、先端側チューブ2の基端部に固定された基端側チューブ4と、先端側チューブ2の先端側を被包しかつ基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材5と、筒状部材5内に収納されたステント3と、筒状部材5を基端側に移動させるための牽引ワイヤ6とを備える。先端側チューブ2は、先端側チューブ2の基端側にて開口する基端側開口23と、ステントの基端側への移動を規制するステント係止部22と、牽引ワイヤ巻取機構およびワイヤ巻取量規制機構を備える操作部を有する。
さらに、この生体器官病変部改善用器具1は、先端側チューブ2の基端側およびステント収納筒状部材5の基端側を被包し、基端部にて先端側チューブ2の基端部および基端側チューブ4の先端部と固定された中間チューブ7を備えている。中間チューブ7は、ステント収納筒状部材5の基端側への移動を規制することなく被包するものであり、牽引ワイヤ6の一端部は、中間チューブ7内にてステント収納筒状部材5と固定されており、牽引ワイヤ6は、中間チューブ7と先端側チューブ2との間を通り、基端側チューブ4内へ延びるものとなっている。
【0005】
そして、この生体器官病変部改善用器具は、自己拡張型ステントを用いる生体器官病変部改善用器具であっても、ガイドワイヤルーメンの基端側開口が器具の基端ではなく、先端側チューブの基端側にあるため、ステント留置作業時において、他の生体器官病変部改善用器具に交換する作業が容易である。そして、牽引ワイヤを基端側に牽引することにより、ステントを放出できるため、ステントの放出作業時におけるステントの位置移動が極めて少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−97620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものも十分に有効であるが、ステントの放出操作はより容易であることが望ましい。特許文献1のものでは、圧縮された自己拡張型ステントは、その外面のほぼ全面において、ステント収納用筒状部材の内面と接触するため、ステントの放出作業時、圧縮された自己拡張型ステントの外面のほぼ全面が、ステント収納用筒状部材の内面と摺接することになる。
そこで、本発明の目的は、圧縮された自己拡張型ステントの外面と、ステントを収納するチューブ体の内面との接触面積を減少させ、ステントの放出作業時、圧縮された自己拡張型ステントの外面とステント収納チューブ体間の摺接抵抗を少なくすることにより、ステントの放出操作が容易である生体器官病変部改善用器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを露出可能である生体器官病変部改善用器具であって、前記ステント収納チューブ体の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、前記ステントの外面と前記ステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられており、かつ前記溝は、該ステント収納チューブ体の軸方向に延びる複数の溝である生体器官病変部改善用器具。
(2) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に平行に延びる複数の溝である上記(1)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(3) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して緩やかな螺旋状となっている複数の溝である上記(1)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(4) 前記溝は、実質的に角部を持たないものとなっている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(5) 略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを露出可能である生体器官病変部改善用器具であって、前記ステントは、先端部を除き前記ステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものであり、かつ、前記ステント収納チューブ体の先端部よりステントの収納部位の基端部までの内面には、前記ステントの外面と前記ステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられている生体器官病変部改善用器具。
(6) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に平行に延びる複数の溝である上記(5)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(7) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して緩やかな螺旋状となっている複数の溝である上記(5)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(8) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に直交もしくは所定角度斜めに延びる複数の環状溝である上記(5)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(9) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して螺旋状に延びる1または複数の溝である上記(5)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(10) 前記ステント収納チューブ体は、最先端部に溝非形成部を備えている上記(5)ないし(9)のいずれかにに記載の生体器官病変部改善用器具。
(11) 前記溝は、実質的に角部を持たないものとなっている上記(5)ないし(10)のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
(12) 前記内側チューブ体は、前記ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、基端側チューブと、前記先端側チューブの基端部および前記基端側チューブの先端部が固定されるとともに前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口を備える固定チューブとを備え、前記ステント収納チューブ体は、前記先端側チューブの先端側を被包しかつ前記先端側チューブの基端方向に摺動可能であり、前記生体器官病変部改善用器具は、前記ステント収納チューブ体に一端部が固定され、前記基端側チューブ内を延びるとともに該基端側チューブの基端側に牽引することにより、前記ステント収納チューブ体を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤとを備えるものである上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
(13) 前記先端側チューブは、該先端側チューブの先端側に位置し、前記ステント収納チューブ体内に収納された前記ステントの基端と当接し、該ステントの基端側への移動を規制するステント基端部係止部を備えている上記(12)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(14) 前記生体器官病変部改善用器具は、前記ステント収納チューブ体の基端に近接するように配置されたスライドチューブを備え、かつ、前記固定チューブは、前記スライドチューブを基端側より収納可能もしくは前記スライドチューブが基端側より被嵌可能であり、前記スライドチューブは、前記牽引ワイヤの牽引により前記ステント収納チューブ体とともに基端側に移動可能であり、かつ、前記ステント収納チューブ体に固定されていないものとなっている上記(12)または(13)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(15) 前記基端側チューブの基端部には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納チューブ体を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する上記(12)ないし(14)のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体器官病変部改善用器具は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備える。ステントが内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体を内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、ステントを露出可能(放出可能)となっている。
そして、本発明の第1の態様の生体器官病変部改善用器具では、ステント収納チューブ体の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、ステント収納チューブ体の軸方向に延びる複数の溝が設けられている。
また、本発明の他の態様の生体器官病変部改善用器具では、ステントは、先端部を除きステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものであり、かつ、ステント収納チューブ体の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、ステントの外面とステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられている。
このため、本発明の生体器官病変部改善用器具では、圧縮された自己拡張型ステントの外面とステントを収納するチューブ体の内面との接触部分が少なく、ステントの放出作業時、圧縮された自己拡張型ステントの外面とステント収納チューブ体間の摺接抵抗も少なくなり、ステントの放出操作が容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施例の生体器官病変部改善用器具の部分省略正面図である。
【図2】図2は、図1に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大横断面図である。
【図4】図4は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用されるステント収納チューブ体の先端部を説明するための説明図である。
【図5】図5は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される他の例のステント収納チューブ体の先端部を説明するための説明図である。
【図6】図6は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される他の例のステント収納チューブ体の内面形状を説明するための説明図である。
【図7】図7は、図1に示した生体器官病変部改善用器具の基端部付近の部分省略拡大断面図である。
【図8】図8は、本発明の生体器官病変部改善用器具の作用を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される自己拡張型ステントの一例の斜視図である。
【図10】図10は、図9に示す自己拡張型ステントの展開図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具の部分省略正面図である。
【図12】図12は、図11に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大縦断面図である。
【図13】図13は、図11に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大横断面図である。
【図14】図14は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用されるステント収納チューブ体の一例の先端部を説明するための説明図である。
【図15】図15は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される他の例のステント収納チューブ体の先端部を説明するための説明図である。
【図16】図16は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される自己拡張型ステントの一例の正面図である。
【図17】図17は、図16に示したステントの展開図である。
【図18】図18は、図17に示したステントの展開図の部分拡大図である。
【図19】図19は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される自己拡張型ステントの他の例の正面図である。
【図20】図20は、図19に示したステントの展開図である。
【図21】図21は、図19に示したステントの拡張状態の展開図である。
【図22】図22は、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具の部分省略外観図である。
【図23】図23は、図22の生体器官病変部改善用器具の先端部の拡大外観図である。
【図24】図24は、図22の生体器官病変部改善用器具の先端部の拡大断面図である。
【図25】図25は、図23のA−A線断面図である。
【図26】図26は、図23のB−B線断面図である。
【図27】図27は、図23のC−C線断面拡大図である。
【図28】図28は、図23のD−D線断面拡大図である。
【図29】図29は、図23のE−E線断面拡大図である。
【図30】図30は、図22の生体器官病変部改善用器具のステント収納チューブ体の基端部およびスライドチューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図31】図31は、図22の生体器官病変部改善用器具の固定チューブの基端側部分付近の拡大断面図である。
【図32】図32は、図22の生体器官病変部改善用器具の作用を説明するための説明図である。
【図33】図33は、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具の先端部の拡大断面図である。
【図34】図34は、図22の生体器官病変部改善用器具の操作部付近の拡大正面図である。
【図35】図35は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部付近の背面図である。
【図36】図36は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【図37】図37は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部分のみの右側面図である。
【図38】図38は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の生体器官病変部改善用器具を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の生体器官病変部改善用器具1は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント3と、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体(この実施例では、内管)4と、ステント3を先端部内に収納したステント収納チューブ体(この実施例では、シース)2とを備える。ステント3が内側チューブ体(内管)4の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体(シース)2を内側チューブ体(内管)4に対して基端側に移動させることにより、ステント3を露出可能(放出可能)となっている。さらに、ステント収納チューブ体(シース)2の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、ステント収納チューブ体(シース)2の軸方向に延びる複数の溝23が設けられている。
【0013】
この実施例の生体器官病変部改善用器具1は、図1に示すように、ステント収納チューブ体(シース)2、自己拡張型ステント3、内側チューブ体(内管)4を備えている。
シース2は、図1ないし図4に示すように、管状体であり、先端および後端は開口している。先端開口は、ステント3を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント3の放出口として機能する。ステント3は、この先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。シース2の先端部は、ステント3を内部に収納するステント収納部位22となっている。
そして、シース2は、図3および図4に示すように、シース2の先端よりステントの収納部位22の基端部までの内面に、シース2の軸方向に延びる複数の溝23を有している。また、図3および図4に示す実施例のシース2では、溝23は、シース2の軸方向(中心軸)に平行に延びるものとなっている。
また、図6に示す実施例のように、溝23は、実質的にシース内表面に露出する部分に角部を持たないものとなっていることが好ましい。
また、溝23は、図5に示す実施例のシース2aのように、シース2aの軸方向(中心軸)に対して螺旋状(好ましくは、緩やかな螺旋状)となるものであってもよい。
この場合においても、実質的にシース内表面に露出する部分に角部を持たないものであることが好ましい。螺旋状の場合の溝23aのシースの中心軸に対する角度は、0〜45度であることが好ましく、特に、0〜10度であることが好ましい。
【0014】
また、上述したすべての実施例において、多数の溝23としては、それぞれの幅および深さがほぼ等しいものであることが好ましいが、各溝は、幅、深さが異なるものであってもよい。また、溝の幅としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。また、溝の深さとしては、0.01〜0.3mmが好ましく、特に、0.02〜0.1mmが好ましい。また、溝間隔としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。
【0015】
シース2の外径としては、1.1〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、シース2の内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。シース2の長さは、300〜2500mm、特に、300〜2000mm程度が好ましい。
【0016】
シース2の形成材料としては、シースに求められる物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性)を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
さらに、シース2の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、シース2の内面に、ステント3及び内管4との摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
【0017】
また、シース2の基端部には、図1および図7に示すように、シースハブ6が固定されている。シースハブ6は、図7に示すように、シースハブ本体61と、シースハブ本体61内に収納され、内管4を摺動可能、かつ液密に保持する弁体62を備えている。また、シースハブ6は、シースハブ本体61の中央付近より斜め後方に分岐するサイドポート63を備えている。
さらに、シースハブ6は、内管4の移動を規制する内管ロック機構を備えている。この実施例では、ロック機構は、圧縮により内管4の基端部を液密状態に挟持する弁体62と弁体62を圧縮する操作部材64およびシースハブ本体61により構成されている。このロック機構を備えることにより、内管4はシース2に対して任意の位置で固定可能である。弁体62は、シースハブ本体61の基端部に設けられた弁体収納用凹部内に設置されており、弁体62の内部には内管用ルーメンの一部を形成する内管挿通用通路が形成されている。また、弁体収納用凹部の内径は、弁体62の外径より若干大きく作製されており、弁体62が操作部材64により圧縮された際の弁体の内側方向への拡径を可能にしている。弁体62の内部形状(言い換えれば、内管挿通用通路形状)は、軸方向に2つの略球形状が一部重なり合った形状に作製されており、両端と中央部が縮径したものとなっている。
【0018】
操作部材64は、中央部に先端側に突出した筒状の弁体押圧部64aと、この弁体押圧部64aを被包するように形成され、かつ、シースハブ本体61の後端外面に形成された螺合部61aと螺合可能な螺合部64bを備える内筒部64cと、内筒部64cを被包するように形成された筒状の把持部64dを備えている。把持部64dは、操作部材64を回転させる際に把持するための部位である。また、操作部材64の内部、具体的には、弁体押圧部64aの内部には、内管用ルーメンの一部を形成する内部通路が形成されている。また、弁体押圧部64aの先端側部分は、図7に示すように、弁体収納用凹部内に侵入しており、操作部材64の先端への移動により弁体62を圧縮可能となっている。
【0019】
この実施例のロック機構では、操作部材64を回転させて、シースハブ6の先端側に移動するように螺合を進行させると、弁体押圧部64aの先端は弁体62の後端に接触して、さらに、操作部材64を回転させて螺合を進行させると弁体62は軸方向に圧縮される。そして、弁体62は圧縮が進行するに従い内部通路の内径は小さくなり最終的に弁体62により内管4が把持され固定される。なお、ロック機構の解除は、上記と逆の回転操作により行われる。
【0020】
シースハブ本体61および操作部材64の構成材料としては、硬質もしくは半硬質材料が使用される。硬質もしくは半硬質材料としては、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー)、スチレン系樹脂[例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)]、ポリエステルなどの合成樹脂、ステンレス鋼、アルミもしくはアルミ合金などの金属が使用できる。
【0021】
また、弁体62の構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー等が使用される。
また、シース2の基端部とシースハブ6間には、シースハブ6の先端より先端側に延びる補強用チューブ66が設けられている。この補強用チューブ66は、シースハブ6の先端におけるシース2のキンクを防止する。補強用チューブ66としては、熱収縮性チューブを用いることが好ましい。
【0022】
内管4は、図1ないし図3,図7に示すように、シャフト状の内管本体部40と、内管本体部40の先端に設けられ、シース2の先端より突出する先端部47と、内管本体部40の基端部に固定された内管ハブ7とを備える。
先端部47は、シース2の先端より突出し、かつ、図2に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、内管4は、ステント3よりも先端側に設けられ、シースの先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。先端部47の基端は、シース2の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
先端部47の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部47の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmが好ましい。
【0023】
また、内管4は、図2に示すように、後述する自己拡張型ステント3を保持するための2つの突出部43,45を備えている。突出部43,45は、環状突出部であることが好ましい。内管4の先端部47の基端側には、ステント保持用突出部43が設けられている。そして、このステント保持用突出部43より所定距離基端側には、ステント押出用突出部45が設けられている。これら2つの突出部43,45間にステント3が配置される。よって、生体器官病変部改善用器具1におけるこれら2つの突出部43と突出部45間がステント収納部位22となっている。言い換えれば、内管4は、ステント収納部位22より基端側に設けられたステント押出用突出部45と、ステント収納部位22より先端側に設けられたステント保持用突出部43を備えるものである。これら突出部43,45の外径は、後述する圧縮されたステント3と当接可能な大きさとなっている。このため、ステント3は、突出部43により先端側への移動が規制され、突出部45により基端側への移動が規制される。さらに、内管4が先端側に移動すると、突出部45によりステント3は先端側に押され、シース2より排出される。さらに、ステント押出用突出部45の基端側は、図2に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部46となっていることが好ましい。同様に、ステント保持用突出部43の基端側は、図2に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部44となっていることが好ましい。このようにすることにより、内管4をシース2の先端より突出させ、ステント3をシースより放出した後に、内管4をシース2内に再収納する際に、突出部がシースの先端に引っかかることを防止することが可能である。
【0024】
突出部43,45の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。なお、突出部43,45は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステント3の移動を規制し、かつ、押出可能であればよく、例えば、内管4に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、突出部43,45は、X線造影性材料からなる別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、突出部は、X線造影性材料によりワイヤを形成し内管の外面に巻き付けること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成し内管の外面にかしめる又は接着することにより取り付けられる。
また、突出部43の基端側に形成されるテーパー部44および突出部45の基端側に形成されるテーパー部46は、テーパー状部材を固定すること、また、硬化性樹脂をテーパー状に塗布し硬化させることなどにより形成される。
【0025】
内管4は、図2に示すように、先端より少なくともシース2のステント収納部位22より基端側まで延びるルーメン41と、ステント収納部位22より基端側においてルーメン41と連通する内管側孔42とを備えている。この実施例の生体器官病変部改善用器具1では、ルーメン41は、側孔42形成部位にて終端している。ルーメン41は、生体器官病変部改善用器具1の先端よりガイドワイヤの一端を挿入し、内管内を部分的に挿通させた後、内管側面より外部に導出するためのものである。そして、内管側孔42は、シース側孔21より、生体器官病変部改善用器具1の若干先端側に位置している。内管側孔42の中心は、シース側孔21の中心より、0.5〜10mm先端側となっていることが好ましく、特に、1〜2mm先端側となっていることが好ましい。また、内管側孔42の中心とシース側孔21の中心間距離を長いものとすることにより、内管4の側孔42からシース2の側孔21間を通るガイドワイヤの湾曲が緩やかなものとなり、ガイドワイヤの挿通ならびに生体器官病変部改善用器具の操作性が良好なものとなる。
なお、生体器官病変部改善用器具としては、上述のタイプのものに限定されるものではなく、上記のルーメン41は、内管の基端まで延びるものであってもよい。この場合には、シースの側孔21は不要となる。
【0026】
内管4の外径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましく、特に、1.0〜2.0mmが好ましい。また、内管4の長さは、400〜2500mm程度が好ましく、特に、400〜2200mmが好ましい。また、ルーメン41の内径としては、0.5〜2.0mm程度が好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。また、ルーメン41の長さは、10〜400mm程度が好ましく、特に、50〜350mmが好ましい。また、側孔42の位置は、内管4の先端より、10〜400mm基端側に位置することが好ましく、特に、50〜350mmが好ましい。また、側孔42の位置は、配置されるステント3の後端(言い換えれば、ステント収納部位の後端)より、50〜250mm程度基端側であることが好ましい。
【0027】
内管4の形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、内管4の外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する材料をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
さらに、内管4のうち、シース2より突出する可能性のある部分の外面は、潤滑性を有していることが好ましい。このために、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定してもよい。また、内管4の外面全体に上記のものをコーティング、または固定してもよい。さらに、ガイドワイヤとの摺動性を向上させるために、内管4の内面にも上記のものをコーティング、または固定してもよい。
そして、内管4は、シース2内を貫通し、シース2の後端開口より突出している。内管4の基端部には、図1,図7に示すように、内管ハブ7が固着されている。
【0028】
さらに、この実施例の生体器官病変部改善用器具1では、内管4の基端部には、硬質パイプ72が被嵌されており、また、内管4の基端には、ハブ71が固定されている。この硬質パイプ72は、内管4の基端部より先端側に所定距離延び、少なくともパイプ72の先端部は、シースハブ6内に侵入し、かつ、弁体62より先端側となる位置まで延びている。このため、シースハブ6の後端における内管4のキンクを防止し、弁体62の圧縮に対向する。硬質パイプとしては、金属製パイプ、硬質樹脂製パイプが使用できる。
さらに、内管4の基端部には、シース2の先端側への移動距離を規制する挿入深度規制部を備えていることが好ましい。内管4は、基端部に挿入深度規制用チューブ73を備えている。このチューブ73は、外径がシースハブ6の操作部材64の通路の内径よりも大きく、シースハブ6内に侵入不能なものとなっている。このためこのチューブが内管の挿入深度、言い換えれば、内管のシース先端側への移動距離を規制する。この実施例では、チューブ73は、上述した硬質パイプ72を被包するように設けられている。なお、挿入深度規制部は、上記のようなチューブ体に限定されるものではなく、内管4の基端部側面に環状部材を固定することにより形成してもよい。
また、内管ハブ7の形成材料としては、シースハブ6において説明したものが好適に使用できる。
【0029】
本発明の実施例のステント3は、自己拡張型ステントであり、シース内においては、図3に示すように、自らの復元力によりシース2の内面を押圧する状態にて保持され、シース2の先端開口より放出されることにより、図8に示すように、応力付加が解除されて拡張して圧縮前の形状に復元する。また、ステント3は、シース2内では、内管4に設けられた突出部43および突出部45との間に配置され、シース2内での移動が規制されている。なお、ステントは、いわゆる自己拡張型ステントであればどのような形状のものであってもよい。
ステント3は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なものとなっている。
この実施例にて用いるステント3は、図9,図10に示すように、側面に開口部を備えている。また、ステント3は、拡張保持の役割を担う波状(ジグザグ状)かつ環状につながった線状体54からなる複数の環状体52により構成され、これらの環状体52は接続部53(コネクター)により隣り合う環状体52が離反しないように接続されている。環状体52および接続部53を構成する部分以外の部分は開口部を形成している。
そして、この実施例のステント3では、複数の環状体52は、軸方向に隣り合う波状環状体52の谷部と山部が向かい合うようにほぼ直線的に配列されている。この実施例においては、環状体52は軸方向に11個連結している。また、ひとつの環状体52は、12個の山部(谷部)により形成されている。一つの環状体52を構成する山部(谷部)の個数はステントの直径と長さにより適宜選択されるが、4〜36個であることが好ましく、環状体52は、軸方向に5〜50個連結することが好ましい。
【0030】
接続部53は、ステント3の最も一端側と最も他端側においては、円形状の接続部53aとなっており、その他の部分においては、線状の接続部53bとなっている。このように隣接する環状体52同士を部分的に接続することにより、体腔に沿って容易に湾曲するものとなる。なお、円形状の接続部53aは、後述するようにX線不透過性マーカー56が取り付けられる部分となっている。
円状の接続部53aは、隣接する環状体52の山部と谷部が軸方向に隣接するように環状体52同士を連結している。隣接する山部と谷部は、それぞれ円形状の接続部53aの上端部および下端部に連結している。線状の接続部53bは、隣接する環状体52の山部と谷部が軸方向に隣接するように環状体52同士を連結している。線状の接続部53bは、直線状、曲線状のいずれであってもよい。
円形状の接続部53a及び線状の接続部53bは、中心軸に対してほぼ等角度となるような位置に配置されていることが好ましい。円形状の接続部53aは、隣接する環状体間に3か所、言い換えると、4つおき(120°毎)の山部(谷部)に形成されている。また、線状の接続部53bは、隣接する環状体間に4か所、言い換えると3つおき(90°毎)の山部(谷部)に形成されている。本発明の実施例においては、軸方向に最も近接する線状の接続部53b同士は、山部(谷部)が1つ半ずつずれて配置されている。なお、接続部は、全部が線状の接続部であってもよい。
【0031】
そして、ステント3は、留置対象部位により異なるが、一般的に、外径が2.0〜30mm、好ましくは、2.5〜15mm、肉厚が0.04〜1.0mm、好ましくは0.06〜0.5mmのものであり、長さは、5〜150mm、より好ましくは20〜60mmである。特に、血管内留置用ステントの場合には、外径が2.0〜14mm、好ましくは2.5〜10mm、肉厚が0.04〜0.3mm、好ましくは0.06〜0.2mmのものであり、長さは5〜80mm、より好ましくは10〜60mmである。
【0032】
上述したように、この実施例のステント3では、環状体52は、上記のように波状(ジグザグ状)かつ環状につながった線状体54からなるものであり、波の数は、4〜36程度が好適であり、特に、8〜24が好ましい。環状体52の長さは、1〜10mm、より好ましくは1.5〜5mmである。また、環状体52の数は、5〜50、より好ましくは5〜20である。そして、環状体52間の距離は、0.2〜10mmが好ましい。また、接続部53の長さは、0.2〜10mmが好ましい。また、接続部を構成する線状体の幅は、軽い力で曲げられるように小さい方が好ましい。具体的には、接続部53を構成する線状体54の幅は、0.03〜0.2mm、より好ましくは0.05〜0.12mmである。
【0033】
ステント3の形状は、挿入時に縮径可能であり、かつ、体内放出時に拡径(復元)可能なものであればよく、上述の形状に限定されるものではない。例えば、コイル状のもの、円筒状のもの、ロール状のもの、異形管状のもの、高次コイル状のもの、板バネコイル状のもの、カゴまたはメッシュ状のものでもよい。
ステント3は、全体において物性の急激な変更点が形成されることなく一体に形成されていることが好ましい。ステント3は、例えば、留置される生体内部位に適合した外径を有する金属パイプを準備し、金属パイプの側面を、切削加工、化学エッチングなどにより部分的に除去することにより作製される。
【0034】
ステント3を形成する材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0035】
使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0036】
ステント3は、X線不透過材料製マーカー56を有していることが好ましい。特に、X線不透過材料製マーカーは、所定の表面積を有するものであることが好ましい。X線不透過材料製マーカー56は、ステントの端部側に設けることが好ましい。実施例においては、X線不透過材料製マーカー56は、ステント3の両端部に位置する複数の円状の接続部53aに設けられている。X線不透過材料製マーカー56は、接続部53aに形成された小開口を閉塞するようにステントに固定されている。このようなマーカーは、例えば、ステントに形成された小開口に、この小開口より若干小さいX線造影用物質の円盤状部材を配置し両面より押圧してかしめることにより取り付けられることが好ましい。なお、X線不透過材料製マーカーとしては、どのようなものであってもよく、上記のようなものに限定されない。例えば、X線造影性物質をステントの外面に被覆すること、またX線造影性物質により形成された線材を巻き付けたもの、さらには、X線造影性物質により形成されたリング状部材を取り付けたものなどであってもよい。なお、X線不透過材料製マーカーの形成材料としては、例えば、金、白金、タングステン、タンタルあるいはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金等が好適である。
そして、本発明の生体器官病変部改善用器具1としては、上述したようなX線不透過材料製マーカーを有するステントを用いる場合に、特に有効である。上述したように、ステント3が収納されるシース2の内面は、略多角柱状内面となっているため、シース2の内面とX線不透過材料製マーカー56の表面との接触面積も減少するため、ステント3の放出時におけるマーカーに起因する摺動抵抗を減少させることができる。
【0037】
次に、本発明の生体器官病変部改善用器具1の使用方法について図面を用いて説明する。
まず、図2,図8に示すように、ガイドワイヤ9の後端部を内管4のルーメン41の先端より挿入し、内管4の側孔42およびシース2の側孔21を通過させ外部に導出する。その後、シース2を把持して、ガイドワイヤ9に沿って本発明の生体器官病変部改善用器具1を体腔(例えば血管)内に挿入させ、目的とする狭窄部内にステント3を位置させる。
次に、シース2を軸方向基端側に移動させる。この時、ステント3はその後端面がステント押出用突出部45の先端面に当接し係止されるので、シース2の移動に伴ってシース2の先端開口より放出される。この放出により、ステント3は、図8に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。その後、内管4を軸方向基端側に移動させ、シース2内に収納し、シース2を内管4とともに体腔内から抜去することにより手技が終了する。この内管4をシース2内に収納する際、本発明の生体器官病変部改善用器具1は、内管4の突出部43の基端側付近に、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部44が形成されているので、シース2が突出部43に引っかかることがない。
【0038】
次に、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具を図面を用いて説明する。
図11は、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具の部分省略正面図である。図12は、図11に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大縦断面図である。図13は、図11に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大横断面図である。図14は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用されるステント収納チューブ体の一例の先端部を説明するための説明図である。
この実施例の生体器官病変部改善用器具200は、上述した生体器官病変部改善用器具1と同様に、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント203と、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体(この実施例では、内管)204と、ステント203を先端部内に収納したステント収納チューブ体(この実施例では、シース)202とを備える。ステント203が内側チューブ体(内管)204の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体(シース)202を内側チューブ体(内管)204に対して基端側に移動させることにより、ステント203を露出可能(放出可能)となっている。そして、この実施例の生体器官病変部改善用器具200では、ステント203は、先端部を除きステント203の先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものであり、ステント収納チューブ体(シース)202は、先端部よりステント203の収納部位の基端部までの内面に、ステント203の外面とステント収納チューブ体202の内面間の接触面積を減少させるための溝223を備えている。
この実施例の生体器官病変部改善用器具200と上述した生体器官病変部改善用器具1との基本構成は、同じであり、相違点は、ステント203の形態と、ステント収納チューブ体(シース)202の内面に設けられた溝の形態のみである。
【0039】
この実施例の生体器官病変部改善用器具200は、図11および図12に示すように、ステント収納チューブ体(シース)202、自己拡張型ステント203、内側チューブ体(内管)204を備えている。
シース202は、図11ないし図14に示すように、管状体であり、先端および後端は開口している。先端開口は、ステント203を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント203の放出口として機能する。ステント203は、この先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。シース202の先端部は、ステント203を内部に収納するステント収納部位22となっている。
【0040】
そして、シース202は、図12および図14に示すように、シース202の先端よりステントの収納部位の基端部までの内面部位222に、ステント203の外面とテント収納チューブ体202の内面間の接触面積を減少させるための溝223を有している。また、図12ないし図14に示す実施例のシース202では、溝223は、シース2の軸方向(中心軸)に直交する複数の環状溝となっている。また、上述した図6に示す実施例のように、溝223は、実質的にシース内表面に露出する部分に角部を持たないものとなっていることが好ましい。
また、溝223は、図12および図14に示すシース202のように、シース202の軸方向(中心軸)に対して直交するものに限定されるものではなく、ステント収納チューブ体202の軸方向に対して所定角度斜めに延びる複数の環状溝であってもよい。さらに、溝は、図15に示す実施例のシース202aのように、シース202aの軸方向(中心軸)に対して螺旋状となる溝223aであってもよい。 この場合において、溝223aは、一本の螺旋状溝であってもよく、また、複数の螺旋状溝であってもよい。
【0041】
また、上述した実施例の生体器官病変部改善用器具において、溝223、223aとしては、幅および深さが全体において等しいものであることが好ましいが、溝が、部位により幅、深さが異なるものであってもよい。また、溝の幅としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。また、溝の深さとしては、0.01〜0.3mmが好ましく、特に、0.02〜0.1mmが好ましい。また、溝間隔としては、0.02〜0.1mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。
【0042】
そして、この実施例では、シース(ステント収納チューブ体)202は、最先端部に溝非形成部225を備えている。そして、ステント203は、その最先端部(具体的には、ステント203の先端方向を向く屈曲部、自由端となっている部分)が、シース202の溝非形成部225内に位置するように、配置されている。このため、ステント203が、その最先端部に、ステント203の先端方向を向く屈曲部および自由端を有するものであっても、当該部分が、シース202の内面に形成された溝に係合することがなく、ステント203の放出を阻害しないものとなっている。
シース202の外径としては、1.1〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、シース202の内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。シース202の長さは、300〜2500mm、特に、300〜2000mm程度が好ましい。シース202の形成材料としては、上述したものが好適に使用できる。また、シース202の外面には、上述した実施例と同様に、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。
また、シース202の基端部には、図11に示すように、上述した生体器官病変部改善用器具1と同様に、シースハブ206が固定されている。シースハブ206は、上述したシースハブ6と同じである。
【0043】
内管204は、図11に示すように、上述した生体器官病変部改善用器具1と同様に、内管ハブ207とを備える。内管204の構造(具体的には、先端側および基端側の構造)、形成材料等については、上述した生体器官病変部改善用器具1と同じである。また、内管204のうち、シース202より突出する可能性のある部分の外面は、上述した実施例と同様に、潤滑性を有していることが好ましい。
なお、生体器官病変部改善用器具としては、図11、図12に示すタイプのものに限定されるものではなく、ルーメン241は、内管の基端まで延びるものであってもよい。この場合には、シースの側孔221は不要となる。
【0044】
この実施例の生体器官病変部改善用器具200に使用されるステント203は、自己拡張型ステントであり、シース内においては、図12、図13に示すように、自らの復元力によりシース2の内面を押圧する状態にて保持され、シース202の先端開口より放出されることにより、応力付加が解除されて拡張して圧縮前の形状に復元する。ステント203は、いわゆる自己拡張型ステントである。また、ステント203は、図16に示すように、先端部を除きステント203の先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものが用いられている。シース202内では、内管204に設けられた突出部243および突出部245との間に配置され、シース202内での移動が規制されている。
この実施例のステント203は、図12および図13に示すように、網状の側面形態を有しており、先端部を除きステント203の先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものとなっている。
具体的には、ステント203は、図16ないし図18に示すように、線状構成要素231により形成されるとともに、側面に多数の開口232を有するものとなっている。また、線状構成要素231は、交差部255において一体化し、最先端部および最基端部を除き、屈曲部および自由端を持たないものとなっている。そして、このステント203は、いわゆる自己拡張型ステントである。
【0045】
そして、ステント203は、留置対象部位により異なるが、一般的に、外径が2.0〜30mm、好ましくは、2.5〜15mm、肉厚が0.04〜1.0mm、好ましくは0.06〜0.5mmのものであり、長さは、5〜150mm、より好ましくは20〜60mmである。特に、血管内留置用ステントの場合には、外径が2.0〜14mm、好ましくは2.5〜10mm、肉厚が0.04〜0.3mm、好ましくは0.06〜0.2mmのものであり、長さは5〜80mm、より好ましくは10〜60mmである。
ステント203は、全体において物性の急激な変更点が形成されることなく一体に形成されていることが好ましい。ステント203は、例えば、留置される生体内部位に適合した外径を有する金属パイプを準備し、金属パイプの側面を、切削加工、化学エッチングなどにより部分的に除去することにより作製される。ステント203を形成する材料としては、上述したステント3において説明したものが好適に使用できる。
【0046】
また、この実施例の生体器官病変部改善用器具200に使用されるステントとしては、図19、図20および図21に示すようなタイプのステント300であってもよい。
この実施例のステント300は、ステント1の一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第1波状ストラット303と、第1波状ストラット303間に位置し、ステントの一端側より他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第2波状ストラット304と、各隣り合う第1波状ストラット303と第2波状ストラット304とを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つもしくは複数の接続ストラット305とを備え、先端部を除きステント300の先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものとなっている。また、ステント300は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能な、いわゆる自己拡張型ステントである。
そして、この実施例のステント300では、第2波状ストラット304の頂点は、この頂点とステント300の周方向に近接しかつ同じ方向に湾曲する第1波状ストラット303の頂点に対して、ステントの軸方向に所定長ずれたものとなっている。また、第1波状ストラット303の端部333、334は、近接する第2波状ストラットの端部343、344と結合されている。
【0047】
この実施例のステント300は、図19ないし図21に示すように、ステント300の一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第1波状ストラット303と、同様にステントの他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第2波状ストラット304と、両者を接続しかつ所定長軸方向に延びる複数の接続ストラット305により構成されている。
第1波状ストラット303は、ステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第1波状ストラット303は、ステントの周方向に複数本配列されている。第1波状ストラット303の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本程度が好適である。さらに、複数本の第1波状ストラット303は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。
そして、この実施例のステント300では、第1波状ストラット303は、両側部を除きほぼ同じ波形が所定長継続するものとなっている。つまり、第1波状ストラット303は、結合部306と結合する両端部付近を除き、ほぼ同じ波形、つまり、同じ波長および同じ振幅の波が連続するものとなっている。第1波状ストラット303が、ほぼ全体に同じ波形を有する場合には、その波長は、ステントの外径によっても相違するが、0.5〜8.0mm程度が好適であり、特に、2.0〜4.0mm程度が好適であり、振幅は、0.5〜10.0mm程度が好適であり、特に、1.0〜3.0mm程度が好適である。
【0048】
第2波状ストラット304もステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第2波状ストラット304は、ステントの周方向に複数本配列されており、各第2波状ストラット304は、各第1波状ストラット間に配列されている。第2波状ストラット304の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本程度が好適である。さらに、複数本の第2波状ストラット304は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。また、第2波状ストラット304の数は、第1波状ストラットの数と同じとなっている。
そして、この実施例のステント300では、第2波状ストラット304は、両側部を除きほぼ同じ波形が所定長継続するものとなっている。つまり、第2波状ストラット304は、結合部306と結合する両端部付近を除き、ほぼ同じ波形、つまり、同じ波長および同じ振幅の波が連続するものとなっている。第2波状ストラット304が、ほぼ全体に同じ波形を有する場合には、その波長は、ステントの外径によっても相違するが、0.5〜8.0mm程度が好適であり、特に、2.0〜4.0mm程度が好適であり、振幅は、0.5〜10.0mm程度が好適であり、特に、1.0〜3.0mm程度が好適である。
さらに、この実施例のステント300では、第1波状ストラット303と第2波状ストラット304は、ほぼ同じ波形のものとなっている。つまり、この実施例のステント300では、第1波状ストラット303と第2波状ストラット304は、波長、振幅ともに同じものとなっている。
【0049】
そして、第2波状ストラット304のステントの周方向の一方側に突出する頂点は、この頂点とステント300の周方向に近接しかつ同じ方向に湾曲する第1波状ストラット303の頂点(周方向の一方側に突出する頂点)に対して、ステントの軸方向に所定長ずれたものとなっている。同様に、第2波状ストラット304のステントの周方向の他方側に突出する頂点は、この頂点とステント300の周方向に近接しかつ同じ方向に湾曲する第1波状ストラット303の頂点(周方向の他方側に突出する頂点)に対して、ステントの軸方向に所定長ずれたものとなっている。
【0050】
この実施例のステントでは、上述したように、第1波状ストラット303と第2波状ストラット304は、ほぼ同じ波形のものとなっており、第2波状ストラット304は、第1波状ストラット303に対して、所定量(所定長)位相がステントの軸方向にずれた形態となっており、これにより、各頂点位置が軸方向に重ならない、言い換えれば、第1波状ストラット303の頂点と第2波状ストラット304の頂点が、同じ環状ライン上とならないものとなっている。言い換えれば、周方向に隣り合う波状ストラットの頂点1はジグザグ状に位置するものとなっている。
【0051】
そして、この実施例のステント300では、ステントの軸方向および周方向に複数の接続ストラット305を備えるものとなっている。そして、接続ストラット305は、ステント300の軸方向に複数直列状に設けられていることが好ましい。また、接続ストラット305は、ステント300の周方向に複数設けられていることが好ましい。また、接続ストラット305は、円弧状に湾曲するとともに、ステント300の周方向に近接する第1波状ストラット303または第2波状ストラット304の湾曲部の円弧とほぼ同じ半径を有するものとなっている。
また、結合部306には、図19ないし図20に示すように放射線不透過性マーカー307が取り付けられている。この実施例では、結合部306は、端部方向に所定距離離間して平行に延びる2本のフレーム部を備えており、放射線不透過性マーカー307は、2本のフレーム部のほぼ全体もしくは一部を被包するものとなっている。放射線不透過性マーカーの形成材料としては、イリジウム、プラチナ、金、レニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、タンタル、銀、ルテニウム、及びハフニウムからなる元素の群から選択された一種のもの(単体)もしくは二種以上のもの(合金)が好適に使用できる。また、マーカーの長さは、0.1〜4.0mm程度が好ましく、0.3〜1.0mmが特に好ましい。また、マーカーの肉厚は、0.01〜0.30mmが好ましく、0.03〜0.10mmが特に好ましい。また、一端側結合部306の端部には、係留用穴308が形成されている。係留用穴308の直径としては、0.01〜0.30mm程度が好ましく、0.05〜0.20mmが特に好ましい。
【0052】
次に、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具について、図22ないし図38を用いて説明する。
そして、上述したすべての実施例において、生体器官病変部改善用器具は、図22ないし図38に示すようなタイプのものであってもよい。
この実施例の生体器官病変部改善用器具100は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント103と、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、ステント103を先端部内に収納したステント収納チューブ体105とを備える。ステント103が内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体105を内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、ステント103を露出可能(放出可能)となっている、さらに、ステント収納チューブ体105の少なくともステント103の収納部位の内面は、ステント収納チューブ体105の軸方向に延びる略多角柱状内面となっている。 さらに、ステント収納チューブ体(シース)105の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、ステント収納チューブ体(シース)105の軸方向に延びる複数の溝151bが設けられている。
【0053】
そして、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、内側チューブ体は、ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブ102と、基端側チューブ104と、先端側チューブ102の基端部および基端側チューブ104の先端部が固定されるとともにガイドワイヤルーメン121と連通する開口123を備える固定チューブ108とを備える。また、ステント収納チューブ体105は、先端側チューブ102の先端側を被包しかつ先端側チューブ102の基端方向に摺動可能となっている。そして、生体器官病変部改善用器具100は、ステント収納チューブ体105に一端部が固定され、基端側チューブ104内を延びるとともに基端側チューブ104の基端側に牽引することにより、ステント収納チューブ体105を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤ106を備えている。
【0054】
具体的には、この実施例の生体器官病変部改善用器具100は、ガイドワイヤルーメン121を有する先端側チューブ102と、基端側チューブ104と、先端側チューブ102の基端部および基端側チューブ104の先端部が固定されるとともにガイドワイヤルーメン121と連通する開口123を備える固定チューブ108と、先端側チューブ102の先端側を被包しかつ先端側チューブ102の基端方向に摺動可能であるステント収納チューブ体105と、ステント収納チューブ体105内に収納されたステント103と、ステント収納チューブ体105に一端部が固定され、基端側チューブ104内を延びるとともに基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納チューブ体105を基端側に移動させるための移動手段を構成する牽引ワイヤ106(106a,106b)とを備える。
そして、先端側チューブ102は、先端側に位置し、ステント収納チューブ体105内に収納されたステント103の基端と当接し、ステント103の基端側への移動を規制するステント基端部係止部122を備える。
【0055】
ステント103は、略円筒形状に形成され、中心軸方向に圧縮された状態にてステント収納チューブ体105内に収納され、ステント収納チューブ体105からの放出時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである。
そして、生体器官病変部改善用器具100は、ステント収納チューブ体105の基端に近接するように配置されたスライドチューブ107を備え、固定チューブ108は、スライドチューブ107を基端側より収納可能であり、スライドチューブ107は、牽引ワイヤ106の牽引によりステント収納チューブ体105とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納チューブ体105に固定されていないものとなっている。さらに、スライドチューブ107は、スライドチューブ本体171と、スライドチューブ本体171の先端部に固定され、スライドチューブ本体171の先端を覆い、かつスライドチューブ本体171の先端より生体器官病変部改善用器具100の先端側に延びる先端側筒状部材172とを備えている。そして、先端側筒状部材172は、先端側筒状部材172の先端と基端間に位置しかつ少なくとも内径が縮径した縮径部173を有する一体成形筒状体となっている。
【0056】
また、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、基端側チューブ104の外径が、生体器官病変部改善用器具100の基端側チューブ104より先端側における最大径部分の外径より小さいものとなっている。このため、開口123より基端側に延びるガイドワイヤを基端側チューブの側面に沿わせた状態においても生体器官病変部改善用器具の基端側チューブより先端側における最大径部分の外径と同等程度のものとすることができ、細径の血管への挿入が可能である。
そして、この実施例の生体器官病変部改善用器具100は、基端側チューブ104の基端部には、牽引ワイヤ106を巻き取り、ステント収納チューブ体105を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備えている。
この実施例の生体器官病変部改善用器具100は、先端側チューブ102、ステント103、基端側チューブ104、ステント収納チューブ体105、牽引ワイヤ106、スライドチューブ107,固定チューブ108および牽引ワイヤ106の巻取機構を有する操作部110を備えている。そして、固定チューブ108は、先端側チューブ102と基端側チューブ104を接続するとともに、先端側チューブ102の基端部と連通する開口123を備えている。
【0057】
先端側チューブ102は、図22ないし図32に示すように、先端から基端まで貫通するガイドワイヤルーメン121を有するチューブ体であり、先端に固定された先端部材125により、先端部が形成されており、その先端に、先端開口125aを備えている。なお、先端部は、先端側チューブと一体に形成してもよい。そして、先端側チューブ102は、基端部において、固定チューブ108に固定されている。また、先端側チューブ102の基端は、固定チューブ108に形成された開口123と連通している。また、先端側チューブ102の基端部は、図25に示すように、湾曲している。また、開口123は、図22および図25に示すように、基端側に向かって傾斜するように斜めに形成されている。これにより、ガイドワイヤの誘導を容易にしている。
先端側チューブ102は、図に示すように、先端から基端まで貫通したガイドワイヤルーメン121を有するチューブ体である。先端側チューブ102としては、外径が0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmであり、内径が0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1.2mm、長さが、20〜600mm、好ましくは30〜450mmである。
【0058】
そして、先端部材125は、ステント収納チューブ体105の先端より先端側に位置し、かつ、図22ないし図25に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、先端側チューブ102は、ステント103よりも先端側に設けられ、ステント収納チューブ体の先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。この実施例では、先端部材125の基端は、ステント収納チューブ体105の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
なお、先端部材(先端部)125の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部材(先端部)125の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmが好ましい。
【0059】
また、先端側チューブ102は、図24および図25に示すように、ステント103の基端側への移動を規制するために、チューブ102の先端より所定距離基端側となる位置に設けられたステント基端部係止部122を備えている。係止部122は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント基端部係止部122より先端側が、ステント収納部位となっている。この係止部122の外径は、圧縮されたステント103の基端と当接可能な大きさとなっている。そして、ステント収納チューブ体105が、基端側に移動しても、係止部122によりステント103は位置を維持するため、ステント収納チューブ体105より、結果的に放出される。
【0060】
そして、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、先端側チューブ102は、図24および図25に示すように、ステント基端部係止部122より所定長(ほぼステントの軸方向長)先端側となる位置に設けられたステント先端部係止部126を備えている。ステント先端部係止部126は、図24および図25に示すように、ステント収納チューブ体105の先端より、若干基端側に位置している。係止部126は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント先端部係止部126とステント基端部係止部122間が、ステント収納部位となっている。この係止部126の外径は、圧縮されたステント103の先端と当接可能な大きさとなっている。また、ステント先端部係止部126は、基端面が基端方向に向かって縮径するテーパー面となっている。このため、ステント放出時において、ステント先端部係止部126が障害となることがなく、また、ステント103の放出後の生体器官病変部改善用器具100の回収(具体的には、ガイディングカテーテルあるいはシース内への収納)が容易となる。
【0061】
ステント基端部係止部122およびステント先端部係止部126の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。なお、ステント基端部係止部122およびステント先端部係止部126は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステント103の移動を規制し、かつ、押出可能であればよく、例えば、先端側チューブ102に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、ステント基端部係止部122およびステント先端部係止部126は、X線造影性材料からなる別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、突出部は、X線造影性材料によりワイヤを形成し先端側チューブの外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成し、内管の外面にかしめる又は接着することにより取り付けられる。
【0062】
先端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。特に、上記の樹脂のうち、熱可塑性を有する樹脂が好ましい。なお、先端側チューブの露出する外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する材料をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【0063】
また、先端部を先端側チューブと別部材により構成する場合には、先端部(先端部材)125としては、柔軟性を有する材料を用いることが好ましい。例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類が使用される。
【0064】
特に、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、先端側チューブ102と先端部材125は、別部材にて形成されているとともに、先端側チューブ102は、先端部に、ストッパー部材127が固定されている。ストッパー部材127は、先端側チューブ102に固定された筒状部とこの筒状部より、テーパー状に広がるスカート部を備えている。そして、ストッパー部材127は、先端部材125内に埋設された状態となっており、先端部材125の離脱および先端側への移動を防止している。ストッパー部材127は、金属(例えば、ステンレス鋼)により形成することが好ましい。
【0065】
基端側チューブ104は、図22、図23および図25に示すように、先端から基端まで貫通したチューブ体であり、基端に固定された操作部110を備えている。基端側チューブ104の先端部は、固定チューブ108に、固定部材184により、接合されている。基端側チューブ104は、内部に牽引ワイヤ106を挿通可能な牽引ワイヤ用ルーメンを備えている。
基端側チューブ104としては、長さが300mm〜1500mm、より好ましくは、1000〜1300mmであり、外径が0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.3mmであり、内径が0.3〜1.4mm、好ましくは0.5〜1.2mmである。
基端側チューブ104の中心軸と先端側チューブ102の中心軸とのずれの距離としては、0.1〜2.0mmが好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。
【0066】
基端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、基端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する材料をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが使用できる。また、基端側チューブ104の形成材料としては、比較的剛性の高い材質を用いることが好ましい。例えばNi−Ti、真鍮、ステンレス鋼、アルミ等の金属、さらには、比較的剛性の高い樹脂、例えば、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等を用いることもできる。
【0067】
ステント収納チューブ体105は、図24ないし図26に示すように所定長を備える管状体であり、先端および後端は開口している。先端開口は、ステント103を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント103の放出口として機能する。ステント103は、図32に示すように、この先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。
そして、ステント収納チューブ体105は、図26に示すように、ステント収納チューブ体105の先端よりステントの収納部位の基端部までの内面は、ステント収納チューブ体105の軸方向に延びる略多角柱状内面となっている。
ステント収納チューブ体105の長さとしては、20mm〜400mm程度が好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、外径としては、1.1〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納チューブ体105の内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。
【0068】
そして、このステント収納チューブ体105は、基端部に設けられた小径部151aを備えるチューブ体本体部151と、この小径部151aを被包するように設けられた筒状部152を備えている。なお、小径部151aの基端部は、筒状部152より突出している。具体的には、牽引ワイヤ106(106a、106b)の先端部169(169a,169b)は、小径部151aと筒状部152間に形成された空隙内に侵入し、空隙に充填された固定剤153により、ステント収納チューブ体105に固定されている。小径部151aは、外径が基端側に向かって縮径するテーパー部とこのテーパー部より基端側に延びる短い円筒部を備えている。そして、チューブ体本体部151の縮径部151aを被包するように筒状部152は、チューブ体本体部151の基端部に固定されている。このため、チューブ体本体部151の小径部151aは、ステント収納チューブ体105の内方かつ基端方向に突出する環状突出部を構成している。そして、この環状突出部と筒状部152の内面間により、環状空隙部が形成されている。そして、この実施例では、牽引ワイヤ106(106a、106b)の先端部169(169a,169b)は、小径部151aの外面にて固定されている。そして、この空隙部には、固定剤(接着剤)が充填されており、チューブ体本体部151と基端側筒状部152を一体化している。また、環状空隙部に充填された固定剤等により、後述する牽引ワイヤ106(106a,106b)の先端部(固定点)169(169a,169b)は、ステント収納チューブ体105に固定されている。固定剤としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、シアノアクリレート系樹脂などの接着剤を用いることが好ましいが、熱融着であってもよい。
【0069】
そして、この実施例では、ステント収納チューブ体105のチューブ体本体部151は、図24,図25および図26に示すように、先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、多数の溝151bが設けられている。なお、各溝および溝部が形成されている部分(溝部形成部)は、ステントの収納部位の基端を越えてさらに基端側に延びるものであってもよい。図4に示し上述した実施例と同様に、溝151bは、チューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の軸方向(中心軸)に平行に延びるものとなっている。また、溝151bは、図6に示した実施例のように、実質的にチューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)内表面に露出する部分に角部を持たないものとなっていることが好ましい。
また、溝は、図5に示し上述した実施例と同様に、チューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の軸方向(中心軸)に対して螺旋状(好ましくは、緩やかな螺旋状)となるものであってもよい。 この場合においても、実質的にチューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)内表面に露出する部分に角部を持たないものであることが好ましい。螺旋状の場合の溝のチューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の中心軸に対する角度は、0〜90度であることが好ましく、特に、10〜89度であることが好ましい。
【0070】
また、上述したすべての実施例において、多数の溝151bとしては、それぞれの幅および深さがほぼ等しいものであることが好ましいが、各溝は、幅、深さが異なるものであってもよい。また、溝の幅としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。また、溝の深さとしては、0.01〜0.3mmが好ましく、特に、0.02〜0.1mmが好ましい。また、溝間隔としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。
さらに、上述したステント203,300のように、先端部を除きステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものを用いてもよい。そして、このようなタイプのステントを用いる場合には、ステント収納チューブ体105は、先端部よりステントの収納部位の基端部までの内面に、ステントの外面とステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝を備えるものとなる。このタイプのステントを用いる場合においては、溝は、上述したようなチューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の軸方向(中心軸)に平行に延びるもの、チューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の軸方向(中心軸)に対して螺旋状(好ましくは、緩やかな螺旋状)となるものであってもよい。さらには、図12ないし図14に示した実施例のシース202のように、溝は、チューブ体本体部151の軸方向(中心軸)に直交する複数の環状溝であってもよい。さらには、溝は、図15に示した実施例のシース202aのように、チューブ体本体部の軸方向(中心軸)に対して螺旋状となる溝あってもよい。 この場合において、溝223aは、一本の螺旋状溝であってもよく、また、複数の螺旋状溝であってもよい。
【0071】
そして、チューブ体本体部に上記のような環状溝および螺旋状溝を設ける場合には、チューブ体本体部の最先端部に溝非形成部を設けることが好ましい。そして、ステントをその最先端部(具体的には、ステントの先端方向を向く屈曲部、自由端となっている部分)が、チューブ体本体部の溝非形成部内に位置するように、配置することが好ましい。このようにすることにより、ステントが、その最先端部に、ステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を有するものであっても、当該部分が、チューブ体本体部の内面に形成された溝に係合することがなく、ステントの放出を阻害しないものとなっている。
【0072】
そして、この実施例において用いられているステント収納チューブ体105では、チューブ体本体部151および筒状部152は、ほぼ同じ外径を有するものとなっている。チューブ体本体部151および筒状部152の外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納チューブ体105の長さとしては、20〜400mm程度が好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、チューブ体本体部151の長さとしては、10〜200mm程度が好ましく、特に、15mm〜150mmが好ましく、筒状部152の長さとしては、10〜200mm程度が好ましく、特に、15mm〜150mmが好ましい。
なお、ステント収納チューブ体105としては、上述したようなチューブ体本体部151と筒状部152からなるものに限定されるものではなく、一体物であってもよい。
【0073】
スライドチューブ107は、その先端が、ステント収納チューブ体105の基端に近接するように配置されている。また、スライドチューブ107は、その基端側より固定チューブ内に収納可能なものとなっている。なお、スライドチューブ107は、基端側より固定チューブ108に被嵌可能なものであってもよい。スライドチューブ107は、牽引ワイヤ106の牽引によりステント収納チューブ体105とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納チューブ体105に固定されていないものとなっている。
そして、本発明の生体器官病変部改善用器具100では、図23ないし図30に示すように、スライドチューブ107は、スライドチューブ本体171と、スライドチューブ本体171の先端部に接着剤177により固定され、スライドチューブ本体171の先端を覆い、かつスライドチューブ本体171の先端より生体器官病変部改善用器具100の先端側に延びる先端側筒状部材172とを備えている。そして、先端側筒状部材172は、先端側筒状部材172の先端部174と基端部間に位置しかつ少なくとも内径が縮径した縮径部173を有する一体成形筒状体となっている。そして、この実施例では、縮径部173の内径は、スライドチューブ本体171の内径とほぼ等しいまたは若干大きいもしくは若干小さいものとなっている。さらに、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、図23ないし図30に示すように、先端側筒状部材172は、少なくとも縮径部173以外の部分の外径および内径が、スライドチューブ本体171より大きいものとなっている。
【0074】
そして、この実施例における生体器官病変部改善用器具100では、スライドチューブ本体171の先端と先端側筒状部材172の縮径部173間に、リング状部材175が収納されている。そして、牽引ワイヤ106a,106bは、リング状部材175に固定されている。そして、先端側筒状部材172の縮径部173の内径は、先端側チューブ102の外径より大きいものとなっている。このため、先端側筒状部材172は、先端側チューブ102に接触することなく、基端側に移動可能となっている。また、先端側筒状部材172の縮径部173の内径は、リング状部材175の外径より小さいものとなっている。このため、リング状部材175の先端方向への移動を規制する。そして、牽引ワイヤ106a,106bが基端側に牽引されることにより、スライドチューブ107は、リング状部材175とともに基端側に移動する。また、リング状部材175は、スライドチューブ本体171および先端側筒状部材172のいずれにも固定されておらず、スライドチューブ本体171の先端と先端側筒状部材172の縮径部173間に回動可能に収納されている。スライドチューブ107の先端側筒状部材172は、リング状部材175の回動を許容し、かつ軸方向への大きな移動を縮径部173とスライドチューブ本体171の先端により、実質的に阻止している。
【0075】
このように、リング状部材175が、スライドチューブ107に対して、回動可能であることにより、先端側筒状部材172(スライドチューブ107)の回動に対して、リング状部材175、牽引ワイヤの固定部および牽引ワイヤ自体も追従しにくいものとなる。また、リング状部材175と、スライドチューブ本体171の先端間には、樹脂リング176を配置してもよい。このような樹脂リングを配置することにより、リング状部材175の回動がより容易なものとなる。樹脂リングとしては、摩擦抵抗の少ないものが好ましい。樹脂リングとしては、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
【0076】
また、スライドチューブ107の先端側筒状部材172は、その先端部174が、ステント収納チューブ体105の小径部151aの基端部を被包していることが好ましい。また、スライドチューブ107の先端側筒状部材172とステント収納チューブ体105は、接合されていないことが好ましい。この実施例では、図25および図30に示すように、接合されることなく、さらには、実質的に接触することなく、スライドチューブ107の先端側筒状部材172の先端部は、ステント収納チューブ体105の小径部151aの基端部を被包している。
さらに、この実施例では、スライドチューブ本体171の全体にわたり補強層178を備えている。このような補強層を設けることにより、耐キンク性が向上し、スライドチューブ107のスライドが良好なものとなる。補強層は、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層は、ブレード線で形成することが好ましい。例えば、ワイヤブレードであり、線径0.01〜0.2mm、好ましくは0.03〜0.1mmのステンレス、弾性金属、超弾性合金、形状記憶合金等の金属線で形成することができる。または、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維で形成してもよい。
【0077】
固定チューブ108は、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、図23ないし図25、図29および図31に示すように、外径の大きい先端側固定チューブ181と、この先端側固定チューブ181の基端部に固定された基端側固定チューブ182を備えている。そして、先端側固定チューブ181は、先端縮径部181aを備えており、先端縮径部181aの内面は、スライドチューブ107の基端部の外面に接触している。そして、スライドチューブ107は、先端側固定チューブ181に固定されておらず、基端側に摺動することにより、先端側固定チューブ181内に侵入し、収納される。
【0078】
基端側固定チューブ182の先端部は、先端側固定チューブ181の基端内に侵入し、固定部181bにより固定されている。また、先端側チューブ102の外面には、固定チューブ108内、具体的には、図31に示すように、先端側固定チューブ181の基端部となる位置に、スライドチューブ係止部124が設けられている。スライドチューブ107は、このスライドチューブ係止部124に当接するまで、基端側にスライド可能となっている。言い換えれば、スライドチューブ107は、このスライドチューブ係止部124に当接することにより、それ以上の基端側への移動が規制されている。
【0079】
さらに、この実施例では、図31に示すように、固定チューブ108の先端側部分、具体的には、先端側固定チューブ181は、そのほぼ全体にわたり補強層185を備えている。補強層としては、網目状のもの、螺旋状のものなどが好ましい。特に、網目状補強層であることが好ましい。網目状補強層としては、金属細線により網状に形成されたものが好適である。金属細線としては、ステンレス鋼が好ましい。さらに、図31に示すように、基端側固定チューブ182との接続部となる部分には、補強層が存在しないものとすることが好ましい。
先端側チューブ102の基端部には、その基端部を収納した筒状固着部材183が設けられており、また、基端側チューブ104の先端には、その先端部を収納した筒状固定部材184が設けられている。そして、図29および図31に示すように、基端側固定チューブ182に、筒状固着部材183および筒状固定部材184が固着されている。
【0080】
また、図23および図24に示すように、この生体器官病変部改善用器具100では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ106a,106bを備えており、牽引ワイヤ106a、106bは、上述したステント収納チューブ体105が備える空隙部にて、固定点169a、169bが、固定剤153により、ステント収納チューブ体105の筒状部152の外側に固定されている。また、牽引ワイヤ106a,106bおよびこの固定点169a、169bは、所定長離間している。
【0081】
ステント収納チューブ体105(チューブ体本体部151、筒状部152)、スライドチューブ107(スライドチューブ本体171、先端側筒状部材172)、固定チューブ108(先端側固定チューブ181、基端側固定チューブ182)の形成材料としては、ステント収納チューブ体に求められる物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性)を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
さらに、ステント収納チューブ体105の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、ステント収納チューブ体105の内面に、ステント103の摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
また、ステント収納チューブ体105は、上記のようなポリマーの2層構造(例えば、外面はナイロン、内面はPTFE)の組み合わせで形成しても良い。
【0082】
そして、生体器官病変部改善用器具100は、ステント収納チューブ体105の基端部に一端部が固定され、ステント収納チューブ体105の基端を越え、スライドチューブ107,固定チューブ108を貫通し、基端側チューブ104内を延びる牽引ワイヤ106を備えている。そして、この牽引ワイヤ106を基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納チューブ体105およびスライドチューブ107は、基端側に移動する。
そして、図22、図23、図27ないし図30および図32に示すように、この生体器官病変部改善用器具100では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ106a,106bを備えており、牽引ワイヤ106a、106bは、かなりステントに近い部分に設けられた固定点169a、169bにより、ステント収納チューブ体105の基端部に固定されている。また、牽引ワイヤ106a,106bおよびこの固定点169a、169bは、所定距離離間するように配置されている。
【0083】
さらに、この実施例では、牽引ワイヤ106a,106bは、牽引により移動する部材に固定されている。具体的には、図30に示し、また、上述したように、牽引ワイヤ106a,106bは、スライドチューブ107が備えるリング状部材175(具体的には、その内面)に固定されている。このため、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、牽引ワイヤ106a,106bが、基端側に牽引されることにより、リング状部材175も基端側に牽引され、このリング状部材175にスライドチューブ107(スライドチューブ本体171)が当接することにより、スライドチューブも基端側に牽引される。よって、この実施例では、ステント収納チューブ体105とスライドチューブ107とは、両者それぞれが別個に牽引されるものとなっており、牽引時に、ステント収納チューブ体105とスライドチューブ107が当接しないものとなっている。また、牽引ワイヤ106a,106bの牽引時の力は、固定点169a、169bと牽引により移動する部材であるリング状部材175の固定部175a,175bとに分散されるため、固定点169a、169bにおける牽引ワイヤ106a,106bとステント収納チューブ体105間の固定が解除されることを確実に防止する。
【0084】
この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、牽引ワイヤ106は、図22に示すように、基端側チューブ104を貫通し、基端側チューブの基端より延出するものとなっている。
牽引ワイヤの構成材料としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、牽引ワイヤの線径は、特に限定されないが、通常、0.01〜0.55mm程度が好ましく、0.1〜0.3mm程度がより好ましい。
また、牽引ワイヤ106の形成材料としては、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材や、ポリアミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等の比較的高剛性の高分子材料、あるいは、これらを適宜組み合わせたものが挙げられる。
また、牽引ワイヤの側面に滑性を増加させる低摩擦性樹脂を被覆してもよい。低摩擦性樹脂としては、フッ素系樹脂、ナイロン66、ポリエーテルエーテルケトン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。この中でも、フッ素系樹脂がより好ましい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、パーフロロアルコキシ樹脂等が挙げられる。またシリコンや各種親水性樹脂によるコーティングであってもよい。
【0085】
さらに、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、上述した牽引ワイヤとは別に、剛性付与体111が設けられている。剛性付与体111は、図22ないし図25,図29および図31に示すように、生体器官病変部改善用器具100の基端側より延び、基端側チューブ104内を通り、さらに、固定チューブ108に侵入している。そして、剛性付与体111の先端111aは、図31に示すように、スライドチューブ係止部124に固定されている。剛性付与体111の先端111aをスライドチューブ係止部124の形成材料に埋設することにより固定することが好ましい。なお、牽引ワイヤ106a、106bは、図24に示すように、スライドチューブ係止部124に固定されておらず、スライドチューブ係止部124に形成された通路124a、124bを通過している。
【0086】
さらに、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、図31に示すように、剛性付与体111は、固定チューブ108に固定された筒状固定部材184にも固定されている。筒状固定部材184には、図31に示すように、軸方向に所定長のびる剛性付与体固定部184aが形成されている。このように、剛性付与体111の先端部を2カ所において固定することにより、剛性付与体111の先端部による強い補強効果を発揮する。特に、スライドチューブ係止部124へのスライドチューブ107の当接時において、スライドチューブ係止部124を補強する。
そして、剛性付与体111は、基端部にて基端側チューブ104の基端部もしくは後述する操作部110に固定されていることが好ましい。このような剛性付与体111を設けることにより、牽引部材(牽引ワイヤ)の牽引時における生体器官病変部改善用器具の変形を抑制できる。また、剛性付与体111の先端111aは、スライドチューブ係止部124による固定を確実にするために、平坦部となるように形成してもよい。さらに、側面に波状部分を形成して固定部材からの抜け止めを設けてもよい。
【0087】
剛性付与体111としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、剛性付与体111の太さは、特に限定されないが、通常、0.01〜1.5mm程度が好ましく、0.1〜1.0mm程度がより好ましい。
また、剛性付与体111としては、本体側部分(具体的には、基端側チューブ内となる部分)の剛性が高く(例えば、線径が太い)、先端側部分の剛性が低い(具体的には、線径が細い)ものであることが好ましい。さらに、両者の変化点は、線径がテーパー状に変形するテーパー部となっていることが好ましい。
また、剛性付与体111の形成材料としては、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材が挙げられる。また、剛性付与体111は、牽引部材(牽引ワイヤ)より、硬質であることが好ましい。
ステント収納チューブ体105内には、ステント103が収納されている。
ステント103としては、いわゆる自己拡張型ステントであればどのようなものであってもよい。ステント103としては、例えば、上述したステントが好適に使用できる。
【0088】
なお、本発明の生体器官病変部改善用器具は、図33に示す生体器官病変部改善用器具120のようなものであってもよい。
上述した実施例の生体器官病変部改善用器具では、固定チューブ108は、牽引時において、スライドチューブ107を基端側より収納するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ107のスライドチューブ本体171が、基端より、固定チューブ108内に侵入するタイプのものとなっている。
これに対して、この実施例の生体器官病変部改善用器具120では、牽引時において、スライドチューブ107が基端側より固定チューブ108を被嵌するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ107のスライドチューブ本体171aが、基端より、固定チューブ108の先端側固定チューブ181cを被包するものとなっている。
このため、スライドチューブ本体171aの内径は、固定チューブ108の先端側固定チューブ181cの外径とほぼ等しい、もしくは、若干大きいものとなっている。先端側固定チューブ181cは、固定部181bにより、その基端部において、基端側固定チューブ182の先端部に固定されている。また、この実施例では、部材124は、スライドチューブ係止部として機能しない。
【0089】
そして、本発明の生体器官病変部改善用器具100は、図22,図34ないし図38に示すように、基端側チューブ104の基端に固定された操作部110を備えている。
図34は、本発明の生体器官病変部改善用器具の操作部付近の拡大正面図である。図35は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部付近の背面図である。図36は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。図37は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部分のみの右側面図である。図38は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
この実施例の生体器官病変部改善用器具100における操作部110は、牽引ワイヤ巻取機構に加えて、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構および牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
【0090】
操作部110は、図34ないし図38に示すように、操作部ハウジング150を備える。操作部ハウジング150は、第1ハウジング150aと第2ハウジング150bにより構成されている。操作部ハウジング150は、基端側および中央部が屈曲しかつ丸みを帯びた形状となっており、把持しやすく、かつ、把持した状態におけるローラの操作を容易なものとしている。
そして、図36に示すように、基端側チューブ104の基端には、筒状コネクタ145の先端部が固定されている。また、操作部ハウジング150内には、コネクタ145の基端部に接続されたシール機構が収納されている。このシール機構は、図36に示すように、コネクタ145の後端部に固定された先端部を備えるシール機構筒状本体部材170と、筒状本体部材170の基端に固定されたキャップ部材170aと、筒状本体部材170とキャップ部材170a間に配置されたシール部材170bと、筒状本体部材170内に収納された剛性付与体固定用部材170cを備えている。筒状本体部材170およびキャップ部材170aは、貫通する開口部を備えている。シール部材170bは、牽引ワイヤ106(106a,106b)を液密状態かつ摺動可能に貫通させるための孔部もしくはスリットを備えている。また、剛性付与体固定用部材170cには、剛性付与体111の基端部が固定されている。そして、剛性付与体固定用部材170cは、筒状本体部材170内に固定されている。
【0091】
ハウジング150は、図34ないし図37に示すように、操作用回転ローラ161を部分的に突出させるための開口部158、ローラ161に設けられた歯車部162の突出部と係合するロック用リブ(図示せず)、ローラ161の回転軸の一端164bを収納する軸受部194b、ローラ161の回転軸の他端164aを収納する軸受部194aを備えている。ロック用リブは、ローラ161の歯車部162に形成された突起部間に侵入可能な形状となっている。また、軸受部194a、194bは、図34および図35に示すように、ローラ161の回転軸の一端164bおよび他端164aを収納するとともに、上述の開口部と離間する方向に延びる瓢箪状のものとなっている。なお、軸受部194a、194bは、瓢箪状に限定されるものではなく、ロック用リブとの係合が解除できる距離移動できるものであればよい。例えば、軸受部194a、194bの形状は、長円、矩形、楕円状などであってもよい。特に、この実施例の操作部110では、上記の軸受部194a、194bは、図34および図35に示すように、瓢箪状のものとなっている。このため、操作用回転ローラ161を押し、軸受部194a,194bの一端側空間に収納されているローラ161の回転軸の端部164a,164bを、軸受部194a,194bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分を乗り越えさせることにより、ローラ161の回転軸の端部164a,164bは、軸受部194a,194bの他端側空間に収納された状態となる。図36に示す状態が、ローラ161が押圧された状態である。そして、この状態において、ローラ161は、付勢部材により押圧されるが、ローラ161の回転軸の端部164a,164bは、軸受部194a,194bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分に当接するため、軸受部194a,194bの一端側空間に移動しない。このため、ローラ161は、回転可能な状態を維持するものとなっている。
【0092】
そして、この実施例では、図35および図38に示すように、操作部110は、カラー部材112を備えている。カラー部材112は、巻取シャフト部163を収納するとともに、巻取シャフト部163との間に環状空間を形成するカラー部114を有する。このカラー部114により、巻取シャフト部163に巻き取られた牽引ワイヤのゆるみが防止される。また、カラー部材112は、回転ローラの押圧時の移動の誘導および回転ローラのガタツキを抑制する機能も有する。カラー部材112のピン113が、第1ハウジング150aの突出部(軸受部)159および第2ハウジング150bの凹部(軸受部)258によって軸支されている。そして、軸受部194a、194bは、図34および図35に示すように、ピン113(軸受部159、258)を中心とする緩やかな円弧状に形成されており、かつ、ローラ161が、ロック用リブの高さ以上の距離を移動可能な長さを有するものとなっている。また、カラー部材112は、図38に示すように、側面よりカラー部114内の空間に到達する向かい合う2つの切欠部115を備えている。牽引ワイヤ106は、一方の切欠部115を貫通し、巻取シャフト部163に固定されている。
【0093】
そして、牽引ワイヤ巻取機構は、ローラ161と、このローラ161の回転により回転する巻取シャフト部163とにより構成されている。巻取シャフト部163は、牽引ワイヤ106の基端部を把持もしくは固定している。具体的には、図35に示すように、牽引ワイヤ106の基端部には、ワイヤ106より大きく形成されたアンカー部165を備えており、巻取シャフト部163には、牽引ワイヤ106を収納可能なスリット163aが設けられている。そして、アンカー部165がスリット163aの基端外方に位置するように、巻取シャフト部163のスリット163aに、牽引ワイヤ106の基端部が収納されている。これにより、巻取シャフト部163が回転することにより、ワイヤ106は、巻取シャフト部163外面に巻き取られる。なお、牽引ワイヤ106の巻取シャフト部163への把持もしくは固定は、上述のものに限定されるものではなく、どのような方式のものであってもよい。例えば、牽引ワイヤ106の基端もしくは基端部を直接、巻取シャフトに固定してもよい。
【0094】
また、牽引ワイヤ106の巻き取られる基端部は、巻取を容易なものとするために、柔軟なものとなっていることが好ましい。このような柔軟なものとする方法としては、牽引ワイヤ106の基端部を柔軟な材料により形成する方法、牽引ワイヤ106の基端部を細径とする方法などにより行うことができる。
そして、この実施例では、巻取シャフト部163は、回転ローラ161と同軸となるように一体化されている。さらに、図34、図36および図37に示すように、巻取シャフト部163は、回転ローラ161の一方の側面側に設けられている。そして、回転ローラ161を回転させることにより、巻取シャフト部163も同時に回転する。なお、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないことが好ましい。このようにすることにより、ゆっくりとした巻取を行うことができ、ステント収納チューブ体の基端側への移動もゆっくりかつ良好なものとなる。この実施例では、巻取シャフト部の外径は、回転操作用ローラより小径となっているため、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないものとなっている。
【0095】
また、巻取シャフト部163の外径としては、1〜60mm程度が好適であり、特に、3〜30mmが好ましく、回転ローラの外径としては、巻取シャフト部の外径の1〜20倍程度が好適であり、特に、1〜10倍が好ましい。また、回転ローラの外径としては、10〜60mm程度が好適であり、特に、15〜50mmが好ましい。
なお、回転ローラと巻取シャフト部は、このような一体的なものに限定されるものではなく、回転ローラが回転することにより、追従して回転する別部材により構成したものであってもよい。回転ローラの回転の伝達方式としては、ギア形式のもの、ベルト形式のものなどであってもよい。また、ローラ161の操作する際に接触する可能性のある表面部位は、滑りにくい表面となっていることが好ましい。例えば、ローラ161の操作する際に接触する可能性のある表面部位には、ローレット処理、エンボス処理、高摩擦材料被覆などを行うことが好ましい。
【0096】
そして、この実施例の操作部110は、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
操作用回転ローラ161は、図34ないし図36に示すように、同軸にかつ一体的に回動するように設けられた歯車部162を備えている。さらに、図35、図37に示すように、歯車部162は、回転ローラ161の他方の側面側(言い換えれば、巻取シャフト部163が設けられた面と反対側の面)に設けられている。よって、歯車部162と巻取シャフト部163は、操作用ローラ部が構成する壁により仕切られた状態となっている。
また、操作用回転ローラ161は、部分的に開口部より露出しており、この部分が操作部となる。そして、回転ローラは、一方の側面(具体的には、歯車部の側面)に設けられた回転軸の他端164aおよび他方の側面(具体的には、巻取シャフトの側面)に設けられた回転軸の一端164bを備えている。
【0097】
さらに、ハウジング150内には、回転ローラ161をハウジングの開口部方向に付勢する付勢手段(付勢部材)180を備えている。具体的には、付勢手段180により、ローラ161は、付勢されている。さらに、ハウジング150には、付勢部材180により付勢された回転ローラ161の歯車部162の突起部間に侵入可能なロック用リブ(図示せず)が設けられている。このため、回転ローラ161は、付勢部材180により付勢された状態では、図35に示す状態となり、ロック用リブが歯車部162の突起部と係合するため、回転不能となっている。そして、回転ローラ161をロック用リブと離間する方向に押すと、回転ローラの回転軸の一端164bおよび他端164aは、ハウジング150に設けられた軸受部194aおよび194b内を移動し回転可能となる。よって、この実施例の操作部110は、回転ローラ161を押圧しない状態での回転を規制しており、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を有するものとなっている。
【0098】
さらに、この実施例の操作部では、上記の付勢手段180と上述した歯車部162により、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構が構成されている。
操作部110内には、図34ないし図36に示すように、逆回転規制機構を備えている。この操作部110では、付勢部材180に逆回転規制機構が設けられており、付勢部材180は、逆回転規制部材でもある。逆回転規制機構は、逆回転規制部材(付勢部材でもある)180の先端部の上記操作用回転ローラ161の歯車部162と向かい合う部分に設けられ、歯車部と噛合可能な噛合部188と、弾性変形可能部186と、ハウジングへの装着部187を備えている。また、第1ハウジング150aは、内面に形成された第1の突出部(軸受部)159および第2の突出部179を備えている。第1の突出部159は、逆回転規制部材(付勢部材)180の弾性変形可能部186内に侵入するとともに、弾性変形可能部186の内面形状に対応した外面形状を有するものとなっている。具体的には、弾性変形可能部186の内面形状は、円弧状となっており、第1の突出部159は、その円弧形状に対応した円筒状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)180の装着部187は、第1ハウジング150aに形成された第1の突出部159と第2の突出部179間に装着可能な形状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)180は、その装着部187が、第1ハウジング150aの第1の突出部159と第2の突出部179間に装着されることにより、回動不能に装着されるとともに、弾性変形可能部186の弾性力により、操作用回転ローラ161を開口部158方向に付勢するものとなっている。また、逆回転規制部材(付勢部材)180の装着部187は、カラー部材112に設けられた円盤状の突出部113aにより、側面方向への移動が規制されている。
【0099】
そして、上述したように、ローラ161を押圧することにより、ローラは回転可能となる。しかし、図36の矢印方向(牽引ワイヤを巻き取る方向)への回転は可能であるが、逆方向にローラ161を回転させようとすると、歯車部162の1つの歯部と逆回転規制部材(付勢部材)180の噛合部188とが係合し、その回転を阻止する。これにより、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向へのローラの回転を規制する。また、この操作部110では、図37に示すように、逆回転規制部材(付勢部材)180は、第1ハウジング150aの内面と回転ローラ161の側面間に配置されている。このため、逆回転規制部材(付勢部材)180の横方向(水平方向)への動きが、第1ハウジング150aの内面と回転ローラ161の側面により規制されるものとなっている。
【0100】
歯車部162は、回転ローラより小径のものとなっており、歯車部162の外径としては、10〜60mm程度が好適であり、特に、15〜50mmが好ましく、歯数としては、4〜200程度が好適であり、特に、4〜70が好ましい。
そして、操作部110が備えるカラー部材112は、一端部がピン113により軸支されているとともに、他端側のカラー部114は、巻取シャフト部163を収納するとともに、巻取シャフト部163との間に環状空間を形成する。この環状空間はあまり大きな空間ではなく、巻き取ったワイヤの外面間により狭小な環状空間を形成するものである。
【0101】
次に、本発明の生体器官病変部改善用器具100の使用方法について図面を用いて説明する。
まず、図22および図24に示す生体器官病変部改善用器具の先端部材の開口部125aに、ガイドワイヤの後端部を挿入し、開口123よりガイドワイヤ(図示せず)を導出する。次に、生体内に挿入されているガイディングカテーテル(図示せず)内に生体器官病変部改善用器具100を挿入し、ガイドワイヤに沿わせて生体器官病変部改善用器具100を押し進め、目的とする狭窄部内にステント収納チューブ体105のステント収納部位を位置させる。
次に、操作部110の操作用回転ローラ161を押圧した後、ローラを図36の矢印方向に回転させる。これにより、牽引ワイヤ106は、巻取シャフト163の外周面に巻き取られるとともに、ステント収納チューブ体105およびスライドチューブ107は、軸方向基端側に移動する。この時、ステント103はその後端面が先端側チューブ102のステント基端部係止部122の先端面に当接し係止されるので、ステント収納チューブ体105の移動に伴って、ステント収納チューブ体105の先端開口より放出される。この放出により、ステント103は、図32に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
【符号の説明】
【0102】
1 生体器官病変部改善用器具
2 ステント収納チューブ体(シース)
3 ステント
4 内側チューブ体(内管)
22 ステントの収納部位
23 溝
100 生体器官病変部改善用器具
103 ステント
105 ステント収納チューブ体
151 チューブ体本体部
151b 溝
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管、胆管、気管、食道、尿道、消化管その他の臓器などの生体内に形成された狭窄部または閉塞部に、ステントを留置するための生体器官病変部改善用器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、血管、胆管、食道、気管、尿道、消化管その他の臓器などの生体管腔または体腔に形成された狭窄部あるいは閉塞部にステントを留置して、管腔または体腔空間を確保する生体器官病変部改善用器具が提案されている。
上記生体器官病変部改善用器具を構成するステントとしては、機能および留置方法によって、バルーン拡張型ステントと自己拡張型ステントとがある。
バルーン拡張型ステントは、ステント自身に拡張機能はなく、ステントを目的部位に留置するには、バルーンの上にマウントしたステントを目的部位に挿入した後、バルーンを拡張させ、バルーンの拡張力によりステントを拡張(塑性変形)させ目的部位の内面に密着させて固定する。
このタイプのステントは上記のようなステントの拡張作業が必要であるが、収縮したバルーンにステントを直接取り付けて留置することもできるので、留置に関してはさほど問題がない。
これに対して、自己拡張型ステントは、ステント自身が収縮および拡張機能を有している。このステントを目的部位に留置するためには、収縮させた状態にて目的部位に挿入した後、収縮状態の維持のために負荷していた応力を除去する。例えば、目的部位の内径より小さい外径のシース内にステントを収縮させて収納し、このシースの先端を目的部位に到達させた後、ステントをシースより押し出す。押し出されたステントは、シースより解放されることにより応力負荷が解除され、収縮前の形状に復元し拡張する。これにより、目的部位の内面に密着し固定する。
このタイプのステントは、ステント自身が拡張力を有しているので、バルーン拡張型ステントのような拡張作業は必要なく、血管の圧力等によって径が次第に小さくなり再狭窄を生じるといった問題もない。
【0003】
しかしながら、自己拡張型ステントは、バルーン拡張型ステントより、一般的に目的部位に正確に留置しにくいと言われている。その理由は、バルーン拡張型ステントにおいては、ステントを目的の狭窄部に配置した後は、バルーンの中に液体を注入するだけであるため、ステントの拡張時にステントが前後に動くことがない。一方、自己拡張型ステントのデリバリーシステムの構造は、内管と外管の間にステントを収納して拘束し、内管のステント基端側にステントの動きを規制する係止部を設け、外管を基端側に引くことで、ステントの拘束を解放して自己拡張させるものである。このとき外管の体腔内でのたるみや、外管と体腔若しくは外管を導入しているカテーテルとの摩擦、または、システムを体内に導入するためのイントロデューサーといわれるデバイスの弁との摩擦などに起因して、ステントは拡張するときに前進しやすいといわれている。
【0004】
そこで、本件出願人は、特許文献1(特開2007−97620号公報)に示すものを提案している。
この生体器官病変部改善用器具1は、ガイドワイヤルーメン21を有する先端側チューブ2と、先端側チューブ2の基端部に固定された基端側チューブ4と、先端側チューブ2の先端側を被包しかつ基端方向に摺動可能であるステント収納用筒状部材5と、筒状部材5内に収納されたステント3と、筒状部材5を基端側に移動させるための牽引ワイヤ6とを備える。先端側チューブ2は、先端側チューブ2の基端側にて開口する基端側開口23と、ステントの基端側への移動を規制するステント係止部22と、牽引ワイヤ巻取機構およびワイヤ巻取量規制機構を備える操作部を有する。
さらに、この生体器官病変部改善用器具1は、先端側チューブ2の基端側およびステント収納筒状部材5の基端側を被包し、基端部にて先端側チューブ2の基端部および基端側チューブ4の先端部と固定された中間チューブ7を備えている。中間チューブ7は、ステント収納筒状部材5の基端側への移動を規制することなく被包するものであり、牽引ワイヤ6の一端部は、中間チューブ7内にてステント収納筒状部材5と固定されており、牽引ワイヤ6は、中間チューブ7と先端側チューブ2との間を通り、基端側チューブ4内へ延びるものとなっている。
【0005】
そして、この生体器官病変部改善用器具は、自己拡張型ステントを用いる生体器官病変部改善用器具であっても、ガイドワイヤルーメンの基端側開口が器具の基端ではなく、先端側チューブの基端側にあるため、ステント留置作業時において、他の生体器官病変部改善用器具に交換する作業が容易である。そして、牽引ワイヤを基端側に牽引することにより、ステントを放出できるため、ステントの放出作業時におけるステントの位置移動が極めて少ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2007−97620号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のものも十分に有効であるが、ステントの放出操作はより容易であることが望ましい。特許文献1のものでは、圧縮された自己拡張型ステントは、その外面のほぼ全面において、ステント収納用筒状部材の内面と接触するため、ステントの放出作業時、圧縮された自己拡張型ステントの外面のほぼ全面が、ステント収納用筒状部材の内面と摺接することになる。
そこで、本発明の目的は、圧縮された自己拡張型ステントの外面と、ステントを収納するチューブ体の内面との接触面積を減少させ、ステントの放出作業時、圧縮された自己拡張型ステントの外面とステント収納チューブ体間の摺接抵抗を少なくすることにより、ステントの放出操作が容易である生体器官病変部改善用器具を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するものは、以下のものである。
(1) 略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを露出可能である生体器官病変部改善用器具であって、前記ステント収納チューブ体の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、前記ステントの外面と前記ステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられており、かつ前記溝は、該ステント収納チューブ体の軸方向に延びる複数の溝である生体器官病変部改善用器具。
(2) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に平行に延びる複数の溝である上記(1)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(3) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して緩やかな螺旋状となっている複数の溝である上記(1)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(4) 前記溝は、実質的に角部を持たないものとなっている上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【0009】
また、上記目的を達成するものは、以下のものである。
(5) 略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを露出可能である生体器官病変部改善用器具であって、前記ステントは、先端部を除き前記ステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものであり、かつ、前記ステント収納チューブ体の先端部よりステントの収納部位の基端部までの内面には、前記ステントの外面と前記ステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられている生体器官病変部改善用器具。
(6) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に平行に延びる複数の溝である上記(5)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(7) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して緩やかな螺旋状となっている複数の溝である上記(5)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(8) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に直交もしくは所定角度斜めに延びる複数の環状溝である上記(5)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(9) 前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して螺旋状に延びる1または複数の溝である上記(5)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(10) 前記ステント収納チューブ体は、最先端部に溝非形成部を備えている上記(5)ないし(9)のいずれかにに記載の生体器官病変部改善用器具。
(11) 前記溝は、実質的に角部を持たないものとなっている上記(5)ないし(10)のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
(12) 前記内側チューブ体は、前記ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、基端側チューブと、前記先端側チューブの基端部および前記基端側チューブの先端部が固定されるとともに前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口を備える固定チューブとを備え、前記ステント収納チューブ体は、前記先端側チューブの先端側を被包しかつ前記先端側チューブの基端方向に摺動可能であり、前記生体器官病変部改善用器具は、前記ステント収納チューブ体に一端部が固定され、前記基端側チューブ内を延びるとともに該基端側チューブの基端側に牽引することにより、前記ステント収納チューブ体を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤとを備えるものである上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
(13) 前記先端側チューブは、該先端側チューブの先端側に位置し、前記ステント収納チューブ体内に収納された前記ステントの基端と当接し、該ステントの基端側への移動を規制するステント基端部係止部を備えている上記(12)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(14) 前記生体器官病変部改善用器具は、前記ステント収納チューブ体の基端に近接するように配置されたスライドチューブを備え、かつ、前記固定チューブは、前記スライドチューブを基端側より収納可能もしくは前記スライドチューブが基端側より被嵌可能であり、前記スライドチューブは、前記牽引ワイヤの牽引により前記ステント収納チューブ体とともに基端側に移動可能であり、かつ、前記ステント収納チューブ体に固定されていないものとなっている上記(12)または(13)に記載の生体器官病変部改善用器具。
(15) 前記基端側チューブの基端部には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納チューブ体を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する上記(12)ないし(14)のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【発明の効果】
【0010】
本発明の生体器官病変部改善用器具は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備える。ステントが内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体を内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、ステントを露出可能(放出可能)となっている。
そして、本発明の第1の態様の生体器官病変部改善用器具では、ステント収納チューブ体の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、ステント収納チューブ体の軸方向に延びる複数の溝が設けられている。
また、本発明の他の態様の生体器官病変部改善用器具では、ステントは、先端部を除きステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものであり、かつ、ステント収納チューブ体の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、ステントの外面とステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられている。
このため、本発明の生体器官病変部改善用器具では、圧縮された自己拡張型ステントの外面とステントを収納するチューブ体の内面との接触部分が少なく、ステントの放出作業時、圧縮された自己拡張型ステントの外面とステント収納チューブ体間の摺接抵抗も少なくなり、ステントの放出操作が容易なものとなる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】図1は、本発明の一実施例の生体器官病変部改善用器具の部分省略正面図である。
【図2】図2は、図1に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大縦断面図である。
【図3】図3は、図1に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大横断面図である。
【図4】図4は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用されるステント収納チューブ体の先端部を説明するための説明図である。
【図5】図5は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される他の例のステント収納チューブ体の先端部を説明するための説明図である。
【図6】図6は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される他の例のステント収納チューブ体の内面形状を説明するための説明図である。
【図7】図7は、図1に示した生体器官病変部改善用器具の基端部付近の部分省略拡大断面図である。
【図8】図8は、本発明の生体器官病変部改善用器具の作用を説明するための説明図である。
【図9】図9は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される自己拡張型ステントの一例の斜視図である。
【図10】図10は、図9に示す自己拡張型ステントの展開図である。
【図11】図11は、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具の部分省略正面図である。
【図12】図12は、図11に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大縦断面図である。
【図13】図13は、図11に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大横断面図である。
【図14】図14は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用されるステント収納チューブ体の一例の先端部を説明するための説明図である。
【図15】図15は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される他の例のステント収納チューブ体の先端部を説明するための説明図である。
【図16】図16は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される自己拡張型ステントの一例の正面図である。
【図17】図17は、図16に示したステントの展開図である。
【図18】図18は、図17に示したステントの展開図の部分拡大図である。
【図19】図19は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用される自己拡張型ステントの他の例の正面図である。
【図20】図20は、図19に示したステントの展開図である。
【図21】図21は、図19に示したステントの拡張状態の展開図である。
【図22】図22は、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具の部分省略外観図である。
【図23】図23は、図22の生体器官病変部改善用器具の先端部の拡大外観図である。
【図24】図24は、図22の生体器官病変部改善用器具の先端部の拡大断面図である。
【図25】図25は、図23のA−A線断面図である。
【図26】図26は、図23のB−B線断面図である。
【図27】図27は、図23のC−C線断面拡大図である。
【図28】図28は、図23のD−D線断面拡大図である。
【図29】図29は、図23のE−E線断面拡大図である。
【図30】図30は、図22の生体器官病変部改善用器具のステント収納チューブ体の基端部およびスライドチューブの先端部付近の拡大断面図である。
【図31】図31は、図22の生体器官病変部改善用器具の固定チューブの基端側部分付近の拡大断面図である。
【図32】図32は、図22の生体器官病変部改善用器具の作用を説明するための説明図である。
【図33】図33は、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具の先端部の拡大断面図である。
【図34】図34は、図22の生体器官病変部改善用器具の操作部付近の拡大正面図である。
【図35】図35は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部付近の背面図である。
【図36】図36は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【図37】図37は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部分のみの右側面図である。
【図38】図38は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明の生体器官病変部改善用器具を図面に示した実施例を用いて説明する。
本発明の生体器官病変部改善用器具1は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント3と、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体(この実施例では、内管)4と、ステント3を先端部内に収納したステント収納チューブ体(この実施例では、シース)2とを備える。ステント3が内側チューブ体(内管)4の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体(シース)2を内側チューブ体(内管)4に対して基端側に移動させることにより、ステント3を露出可能(放出可能)となっている。さらに、ステント収納チューブ体(シース)2の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、ステント収納チューブ体(シース)2の軸方向に延びる複数の溝23が設けられている。
【0013】
この実施例の生体器官病変部改善用器具1は、図1に示すように、ステント収納チューブ体(シース)2、自己拡張型ステント3、内側チューブ体(内管)4を備えている。
シース2は、図1ないし図4に示すように、管状体であり、先端および後端は開口している。先端開口は、ステント3を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント3の放出口として機能する。ステント3は、この先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。シース2の先端部は、ステント3を内部に収納するステント収納部位22となっている。
そして、シース2は、図3および図4に示すように、シース2の先端よりステントの収納部位22の基端部までの内面に、シース2の軸方向に延びる複数の溝23を有している。また、図3および図4に示す実施例のシース2では、溝23は、シース2の軸方向(中心軸)に平行に延びるものとなっている。
また、図6に示す実施例のように、溝23は、実質的にシース内表面に露出する部分に角部を持たないものとなっていることが好ましい。
また、溝23は、図5に示す実施例のシース2aのように、シース2aの軸方向(中心軸)に対して螺旋状(好ましくは、緩やかな螺旋状)となるものであってもよい。
この場合においても、実質的にシース内表面に露出する部分に角部を持たないものであることが好ましい。螺旋状の場合の溝23aのシースの中心軸に対する角度は、0〜45度であることが好ましく、特に、0〜10度であることが好ましい。
【0014】
また、上述したすべての実施例において、多数の溝23としては、それぞれの幅および深さがほぼ等しいものであることが好ましいが、各溝は、幅、深さが異なるものであってもよい。また、溝の幅としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。また、溝の深さとしては、0.01〜0.3mmが好ましく、特に、0.02〜0.1mmが好ましい。また、溝間隔としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。
【0015】
シース2の外径としては、1.1〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、シース2の内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。シース2の長さは、300〜2500mm、特に、300〜2000mm程度が好ましい。
【0016】
シース2の形成材料としては、シースに求められる物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性)を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
さらに、シース2の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、シース2の内面に、ステント3及び内管4との摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
【0017】
また、シース2の基端部には、図1および図7に示すように、シースハブ6が固定されている。シースハブ6は、図7に示すように、シースハブ本体61と、シースハブ本体61内に収納され、内管4を摺動可能、かつ液密に保持する弁体62を備えている。また、シースハブ6は、シースハブ本体61の中央付近より斜め後方に分岐するサイドポート63を備えている。
さらに、シースハブ6は、内管4の移動を規制する内管ロック機構を備えている。この実施例では、ロック機構は、圧縮により内管4の基端部を液密状態に挟持する弁体62と弁体62を圧縮する操作部材64およびシースハブ本体61により構成されている。このロック機構を備えることにより、内管4はシース2に対して任意の位置で固定可能である。弁体62は、シースハブ本体61の基端部に設けられた弁体収納用凹部内に設置されており、弁体62の内部には内管用ルーメンの一部を形成する内管挿通用通路が形成されている。また、弁体収納用凹部の内径は、弁体62の外径より若干大きく作製されており、弁体62が操作部材64により圧縮された際の弁体の内側方向への拡径を可能にしている。弁体62の内部形状(言い換えれば、内管挿通用通路形状)は、軸方向に2つの略球形状が一部重なり合った形状に作製されており、両端と中央部が縮径したものとなっている。
【0018】
操作部材64は、中央部に先端側に突出した筒状の弁体押圧部64aと、この弁体押圧部64aを被包するように形成され、かつ、シースハブ本体61の後端外面に形成された螺合部61aと螺合可能な螺合部64bを備える内筒部64cと、内筒部64cを被包するように形成された筒状の把持部64dを備えている。把持部64dは、操作部材64を回転させる際に把持するための部位である。また、操作部材64の内部、具体的には、弁体押圧部64aの内部には、内管用ルーメンの一部を形成する内部通路が形成されている。また、弁体押圧部64aの先端側部分は、図7に示すように、弁体収納用凹部内に侵入しており、操作部材64の先端への移動により弁体62を圧縮可能となっている。
【0019】
この実施例のロック機構では、操作部材64を回転させて、シースハブ6の先端側に移動するように螺合を進行させると、弁体押圧部64aの先端は弁体62の後端に接触して、さらに、操作部材64を回転させて螺合を進行させると弁体62は軸方向に圧縮される。そして、弁体62は圧縮が進行するに従い内部通路の内径は小さくなり最終的に弁体62により内管4が把持され固定される。なお、ロック機構の解除は、上記と逆の回転操作により行われる。
【0020】
シースハブ本体61および操作部材64の構成材料としては、硬質もしくは半硬質材料が使用される。硬質もしくは半硬質材料としては、ポリカーボネート、ポリオレフィン(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン−プロピレンコポリマー)、スチレン系樹脂[例えば、ポリスチレン、MS樹脂(メタクリレート−スチレン共重合体)、MBS樹脂(メタクリレート−ブチレン−スチレン共重合体)]、ポリエステルなどの合成樹脂、ステンレス鋼、アルミもしくはアルミ合金などの金属が使用できる。
【0021】
また、弁体62の構成材料としては、弾性材料が使用される。弾性材料としては、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー等が使用される。
また、シース2の基端部とシースハブ6間には、シースハブ6の先端より先端側に延びる補強用チューブ66が設けられている。この補強用チューブ66は、シースハブ6の先端におけるシース2のキンクを防止する。補強用チューブ66としては、熱収縮性チューブを用いることが好ましい。
【0022】
内管4は、図1ないし図3,図7に示すように、シャフト状の内管本体部40と、内管本体部40の先端に設けられ、シース2の先端より突出する先端部47と、内管本体部40の基端部に固定された内管ハブ7とを備える。
先端部47は、シース2の先端より突出し、かつ、図2に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、内管4は、ステント3よりも先端側に設けられ、シースの先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。先端部47の基端は、シース2の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
先端部47の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部47の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmが好ましい。
【0023】
また、内管4は、図2に示すように、後述する自己拡張型ステント3を保持するための2つの突出部43,45を備えている。突出部43,45は、環状突出部であることが好ましい。内管4の先端部47の基端側には、ステント保持用突出部43が設けられている。そして、このステント保持用突出部43より所定距離基端側には、ステント押出用突出部45が設けられている。これら2つの突出部43,45間にステント3が配置される。よって、生体器官病変部改善用器具1におけるこれら2つの突出部43と突出部45間がステント収納部位22となっている。言い換えれば、内管4は、ステント収納部位22より基端側に設けられたステント押出用突出部45と、ステント収納部位22より先端側に設けられたステント保持用突出部43を備えるものである。これら突出部43,45の外径は、後述する圧縮されたステント3と当接可能な大きさとなっている。このため、ステント3は、突出部43により先端側への移動が規制され、突出部45により基端側への移動が規制される。さらに、内管4が先端側に移動すると、突出部45によりステント3は先端側に押され、シース2より排出される。さらに、ステント押出用突出部45の基端側は、図2に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部46となっていることが好ましい。同様に、ステント保持用突出部43の基端側は、図2に示すように、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部44となっていることが好ましい。このようにすることにより、内管4をシース2の先端より突出させ、ステント3をシースより放出した後に、内管4をシース2内に再収納する際に、突出部がシースの先端に引っかかることを防止することが可能である。
【0024】
突出部43,45の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。なお、突出部43,45は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステント3の移動を規制し、かつ、押出可能であればよく、例えば、内管4に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、突出部43,45は、X線造影性材料からなる別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、突出部は、X線造影性材料によりワイヤを形成し内管の外面に巻き付けること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成し内管の外面にかしめる又は接着することにより取り付けられる。
また、突出部43の基端側に形成されるテーパー部44および突出部45の基端側に形成されるテーパー部46は、テーパー状部材を固定すること、また、硬化性樹脂をテーパー状に塗布し硬化させることなどにより形成される。
【0025】
内管4は、図2に示すように、先端より少なくともシース2のステント収納部位22より基端側まで延びるルーメン41と、ステント収納部位22より基端側においてルーメン41と連通する内管側孔42とを備えている。この実施例の生体器官病変部改善用器具1では、ルーメン41は、側孔42形成部位にて終端している。ルーメン41は、生体器官病変部改善用器具1の先端よりガイドワイヤの一端を挿入し、内管内を部分的に挿通させた後、内管側面より外部に導出するためのものである。そして、内管側孔42は、シース側孔21より、生体器官病変部改善用器具1の若干先端側に位置している。内管側孔42の中心は、シース側孔21の中心より、0.5〜10mm先端側となっていることが好ましく、特に、1〜2mm先端側となっていることが好ましい。また、内管側孔42の中心とシース側孔21の中心間距離を長いものとすることにより、内管4の側孔42からシース2の側孔21間を通るガイドワイヤの湾曲が緩やかなものとなり、ガイドワイヤの挿通ならびに生体器官病変部改善用器具の操作性が良好なものとなる。
なお、生体器官病変部改善用器具としては、上述のタイプのものに限定されるものではなく、上記のルーメン41は、内管の基端まで延びるものであってもよい。この場合には、シースの側孔21は不要となる。
【0026】
内管4の外径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましく、特に、1.0〜2.0mmが好ましい。また、内管4の長さは、400〜2500mm程度が好ましく、特に、400〜2200mmが好ましい。また、ルーメン41の内径としては、0.5〜2.0mm程度が好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。また、ルーメン41の長さは、10〜400mm程度が好ましく、特に、50〜350mmが好ましい。また、側孔42の位置は、内管4の先端より、10〜400mm基端側に位置することが好ましく、特に、50〜350mmが好ましい。また、側孔42の位置は、配置されるステント3の後端(言い換えれば、ステント収納部位の後端)より、50〜250mm程度基端側であることが好ましい。
【0027】
内管4の形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、内管4の外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する材料をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
さらに、内管4のうち、シース2より突出する可能性のある部分の外面は、潤滑性を有していることが好ましい。このために、例えば、ポリ(2−ヒドロキシエチルメタクリレート)、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定してもよい。また、内管4の外面全体に上記のものをコーティング、または固定してもよい。さらに、ガイドワイヤとの摺動性を向上させるために、内管4の内面にも上記のものをコーティング、または固定してもよい。
そして、内管4は、シース2内を貫通し、シース2の後端開口より突出している。内管4の基端部には、図1,図7に示すように、内管ハブ7が固着されている。
【0028】
さらに、この実施例の生体器官病変部改善用器具1では、内管4の基端部には、硬質パイプ72が被嵌されており、また、内管4の基端には、ハブ71が固定されている。この硬質パイプ72は、内管4の基端部より先端側に所定距離延び、少なくともパイプ72の先端部は、シースハブ6内に侵入し、かつ、弁体62より先端側となる位置まで延びている。このため、シースハブ6の後端における内管4のキンクを防止し、弁体62の圧縮に対向する。硬質パイプとしては、金属製パイプ、硬質樹脂製パイプが使用できる。
さらに、内管4の基端部には、シース2の先端側への移動距離を規制する挿入深度規制部を備えていることが好ましい。内管4は、基端部に挿入深度規制用チューブ73を備えている。このチューブ73は、外径がシースハブ6の操作部材64の通路の内径よりも大きく、シースハブ6内に侵入不能なものとなっている。このためこのチューブが内管の挿入深度、言い換えれば、内管のシース先端側への移動距離を規制する。この実施例では、チューブ73は、上述した硬質パイプ72を被包するように設けられている。なお、挿入深度規制部は、上記のようなチューブ体に限定されるものではなく、内管4の基端部側面に環状部材を固定することにより形成してもよい。
また、内管ハブ7の形成材料としては、シースハブ6において説明したものが好適に使用できる。
【0029】
本発明の実施例のステント3は、自己拡張型ステントであり、シース内においては、図3に示すように、自らの復元力によりシース2の内面を押圧する状態にて保持され、シース2の先端開口より放出されることにより、図8に示すように、応力付加が解除されて拡張して圧縮前の形状に復元する。また、ステント3は、シース2内では、内管4に設けられた突出部43および突出部45との間に配置され、シース2内での移動が規制されている。なお、ステントは、いわゆる自己拡張型ステントであればどのような形状のものであってもよい。
ステント3は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なものとなっている。
この実施例にて用いるステント3は、図9,図10に示すように、側面に開口部を備えている。また、ステント3は、拡張保持の役割を担う波状(ジグザグ状)かつ環状につながった線状体54からなる複数の環状体52により構成され、これらの環状体52は接続部53(コネクター)により隣り合う環状体52が離反しないように接続されている。環状体52および接続部53を構成する部分以外の部分は開口部を形成している。
そして、この実施例のステント3では、複数の環状体52は、軸方向に隣り合う波状環状体52の谷部と山部が向かい合うようにほぼ直線的に配列されている。この実施例においては、環状体52は軸方向に11個連結している。また、ひとつの環状体52は、12個の山部(谷部)により形成されている。一つの環状体52を構成する山部(谷部)の個数はステントの直径と長さにより適宜選択されるが、4〜36個であることが好ましく、環状体52は、軸方向に5〜50個連結することが好ましい。
【0030】
接続部53は、ステント3の最も一端側と最も他端側においては、円形状の接続部53aとなっており、その他の部分においては、線状の接続部53bとなっている。このように隣接する環状体52同士を部分的に接続することにより、体腔に沿って容易に湾曲するものとなる。なお、円形状の接続部53aは、後述するようにX線不透過性マーカー56が取り付けられる部分となっている。
円状の接続部53aは、隣接する環状体52の山部と谷部が軸方向に隣接するように環状体52同士を連結している。隣接する山部と谷部は、それぞれ円形状の接続部53aの上端部および下端部に連結している。線状の接続部53bは、隣接する環状体52の山部と谷部が軸方向に隣接するように環状体52同士を連結している。線状の接続部53bは、直線状、曲線状のいずれであってもよい。
円形状の接続部53a及び線状の接続部53bは、中心軸に対してほぼ等角度となるような位置に配置されていることが好ましい。円形状の接続部53aは、隣接する環状体間に3か所、言い換えると、4つおき(120°毎)の山部(谷部)に形成されている。また、線状の接続部53bは、隣接する環状体間に4か所、言い換えると3つおき(90°毎)の山部(谷部)に形成されている。本発明の実施例においては、軸方向に最も近接する線状の接続部53b同士は、山部(谷部)が1つ半ずつずれて配置されている。なお、接続部は、全部が線状の接続部であってもよい。
【0031】
そして、ステント3は、留置対象部位により異なるが、一般的に、外径が2.0〜30mm、好ましくは、2.5〜15mm、肉厚が0.04〜1.0mm、好ましくは0.06〜0.5mmのものであり、長さは、5〜150mm、より好ましくは20〜60mmである。特に、血管内留置用ステントの場合には、外径が2.0〜14mm、好ましくは2.5〜10mm、肉厚が0.04〜0.3mm、好ましくは0.06〜0.2mmのものであり、長さは5〜80mm、より好ましくは10〜60mmである。
【0032】
上述したように、この実施例のステント3では、環状体52は、上記のように波状(ジグザグ状)かつ環状につながった線状体54からなるものであり、波の数は、4〜36程度が好適であり、特に、8〜24が好ましい。環状体52の長さは、1〜10mm、より好ましくは1.5〜5mmである。また、環状体52の数は、5〜50、より好ましくは5〜20である。そして、環状体52間の距離は、0.2〜10mmが好ましい。また、接続部53の長さは、0.2〜10mmが好ましい。また、接続部を構成する線状体の幅は、軽い力で曲げられるように小さい方が好ましい。具体的には、接続部53を構成する線状体54の幅は、0.03〜0.2mm、より好ましくは0.05〜0.12mmである。
【0033】
ステント3の形状は、挿入時に縮径可能であり、かつ、体内放出時に拡径(復元)可能なものであればよく、上述の形状に限定されるものではない。例えば、コイル状のもの、円筒状のもの、ロール状のもの、異形管状のもの、高次コイル状のもの、板バネコイル状のもの、カゴまたはメッシュ状のものでもよい。
ステント3は、全体において物性の急激な変更点が形成されることなく一体に形成されていることが好ましい。ステント3は、例えば、留置される生体内部位に適合した外径を有する金属パイプを準備し、金属パイプの側面を、切削加工、化学エッチングなどにより部分的に除去することにより作製される。
【0034】
ステント3を形成する材料としては、超弾性金属が好適である。超弾性金属としては、超弾性合金が好適に使用される。ここでいう超弾性合金とは一般に形状記憶合金といわれ、少なくとも生体温度(37℃付近)で超弾性を示すものである。特に好ましくは、49〜53原子%NiのTi−Ni合金、38.5〜41.5重量%ZnのCu−Zn合金、1〜10重量%XのCu−Zn−X合金(X=Be,Si,Sn,Al,Ga)、36〜38原子%AlのNi−Al合金等の超弾性金属体が好適に使用される。特に好ましくは、上記のTi−Ni合金である。また、Ti−Ni合金の一部を0.01〜10.0%Xで置換したTi−Ni−X合金(X=Co,Fe,Mn,Cr,V,Al,Nb,W,Bなど)とすること、またはTi−Ni合金の一部を0.01〜30.0%原子で置換したTi−Ni−X合金(X=Cu,Pb,Zr)とすること、また、冷間加工率または/および最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。また、上記のTi−Ni−X合金を用いて冷間加工率および/または最終熱処理の条件を選択することにより、機械的特性を適宜変えることができる。
【0035】
使用される超弾性合金の座屈強度(負荷時の降伏応力)は、5〜200kg/mm2(22℃)、より好ましくは、8〜150kg/mm2、復元応力(除荷時の降伏応力)は、3〜180kg/mm2(22℃)、より好ましくは、5〜130kg/mm2である。ここでいう超弾性とは、使用温度において通常の金属が塑性変形する領域まで変形(曲げ、引張り、圧縮)させても、変形の解放後、加熱を必要とせずにほぼ圧縮前の形状に回復することを意味する。
【0036】
ステント3は、X線不透過材料製マーカー56を有していることが好ましい。特に、X線不透過材料製マーカーは、所定の表面積を有するものであることが好ましい。X線不透過材料製マーカー56は、ステントの端部側に設けることが好ましい。実施例においては、X線不透過材料製マーカー56は、ステント3の両端部に位置する複数の円状の接続部53aに設けられている。X線不透過材料製マーカー56は、接続部53aに形成された小開口を閉塞するようにステントに固定されている。このようなマーカーは、例えば、ステントに形成された小開口に、この小開口より若干小さいX線造影用物質の円盤状部材を配置し両面より押圧してかしめることにより取り付けられることが好ましい。なお、X線不透過材料製マーカーとしては、どのようなものであってもよく、上記のようなものに限定されない。例えば、X線造影性物質をステントの外面に被覆すること、またX線造影性物質により形成された線材を巻き付けたもの、さらには、X線造影性物質により形成されたリング状部材を取り付けたものなどであってもよい。なお、X線不透過材料製マーカーの形成材料としては、例えば、金、白金、タングステン、タンタルあるいはそれらの合金、あるいは銀−パラジウム合金等が好適である。
そして、本発明の生体器官病変部改善用器具1としては、上述したようなX線不透過材料製マーカーを有するステントを用いる場合に、特に有効である。上述したように、ステント3が収納されるシース2の内面は、略多角柱状内面となっているため、シース2の内面とX線不透過材料製マーカー56の表面との接触面積も減少するため、ステント3の放出時におけるマーカーに起因する摺動抵抗を減少させることができる。
【0037】
次に、本発明の生体器官病変部改善用器具1の使用方法について図面を用いて説明する。
まず、図2,図8に示すように、ガイドワイヤ9の後端部を内管4のルーメン41の先端より挿入し、内管4の側孔42およびシース2の側孔21を通過させ外部に導出する。その後、シース2を把持して、ガイドワイヤ9に沿って本発明の生体器官病変部改善用器具1を体腔(例えば血管)内に挿入させ、目的とする狭窄部内にステント3を位置させる。
次に、シース2を軸方向基端側に移動させる。この時、ステント3はその後端面がステント押出用突出部45の先端面に当接し係止されるので、シース2の移動に伴ってシース2の先端開口より放出される。この放出により、ステント3は、図8に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。その後、内管4を軸方向基端側に移動させ、シース2内に収納し、シース2を内管4とともに体腔内から抜去することにより手技が終了する。この内管4をシース2内に収納する際、本発明の生体器官病変部改善用器具1は、内管4の突出部43の基端側付近に、基端側に向かって徐々に縮径するテーパー部44が形成されているので、シース2が突出部43に引っかかることがない。
【0038】
次に、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具を図面を用いて説明する。
図11は、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具の部分省略正面図である。図12は、図11に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大縦断面図である。図13は、図11に示した生体器官病変部改善用器具の先端部付近の拡大横断面図である。図14は、本発明の生体器官病変部改善用器具に使用されるステント収納チューブ体の一例の先端部を説明するための説明図である。
この実施例の生体器官病変部改善用器具200は、上述した生体器官病変部改善用器具1と同様に、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント203と、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体(この実施例では、内管)204と、ステント203を先端部内に収納したステント収納チューブ体(この実施例では、シース)202とを備える。ステント203が内側チューブ体(内管)204の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体(シース)202を内側チューブ体(内管)204に対して基端側に移動させることにより、ステント203を露出可能(放出可能)となっている。そして、この実施例の生体器官病変部改善用器具200では、ステント203は、先端部を除きステント203の先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものであり、ステント収納チューブ体(シース)202は、先端部よりステント203の収納部位の基端部までの内面に、ステント203の外面とステント収納チューブ体202の内面間の接触面積を減少させるための溝223を備えている。
この実施例の生体器官病変部改善用器具200と上述した生体器官病変部改善用器具1との基本構成は、同じであり、相違点は、ステント203の形態と、ステント収納チューブ体(シース)202の内面に設けられた溝の形態のみである。
【0039】
この実施例の生体器官病変部改善用器具200は、図11および図12に示すように、ステント収納チューブ体(シース)202、自己拡張型ステント203、内側チューブ体(内管)204を備えている。
シース202は、図11ないし図14に示すように、管状体であり、先端および後端は開口している。先端開口は、ステント203を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント203の放出口として機能する。ステント203は、この先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。シース202の先端部は、ステント203を内部に収納するステント収納部位22となっている。
【0040】
そして、シース202は、図12および図14に示すように、シース202の先端よりステントの収納部位の基端部までの内面部位222に、ステント203の外面とテント収納チューブ体202の内面間の接触面積を減少させるための溝223を有している。また、図12ないし図14に示す実施例のシース202では、溝223は、シース2の軸方向(中心軸)に直交する複数の環状溝となっている。また、上述した図6に示す実施例のように、溝223は、実質的にシース内表面に露出する部分に角部を持たないものとなっていることが好ましい。
また、溝223は、図12および図14に示すシース202のように、シース202の軸方向(中心軸)に対して直交するものに限定されるものではなく、ステント収納チューブ体202の軸方向に対して所定角度斜めに延びる複数の環状溝であってもよい。さらに、溝は、図15に示す実施例のシース202aのように、シース202aの軸方向(中心軸)に対して螺旋状となる溝223aであってもよい。 この場合において、溝223aは、一本の螺旋状溝であってもよく、また、複数の螺旋状溝であってもよい。
【0041】
また、上述した実施例の生体器官病変部改善用器具において、溝223、223aとしては、幅および深さが全体において等しいものであることが好ましいが、溝が、部位により幅、深さが異なるものであってもよい。また、溝の幅としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。また、溝の深さとしては、0.01〜0.3mmが好ましく、特に、0.02〜0.1mmが好ましい。また、溝間隔としては、0.02〜0.1mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。
【0042】
そして、この実施例では、シース(ステント収納チューブ体)202は、最先端部に溝非形成部225を備えている。そして、ステント203は、その最先端部(具体的には、ステント203の先端方向を向く屈曲部、自由端となっている部分)が、シース202の溝非形成部225内に位置するように、配置されている。このため、ステント203が、その最先端部に、ステント203の先端方向を向く屈曲部および自由端を有するものであっても、当該部分が、シース202の内面に形成された溝に係合することがなく、ステント203の放出を阻害しないものとなっている。
シース202の外径としては、1.1〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、シース202の内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。シース202の長さは、300〜2500mm、特に、300〜2000mm程度が好ましい。シース202の形成材料としては、上述したものが好適に使用できる。また、シース202の外面には、上述した実施例と同様に、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。
また、シース202の基端部には、図11に示すように、上述した生体器官病変部改善用器具1と同様に、シースハブ206が固定されている。シースハブ206は、上述したシースハブ6と同じである。
【0043】
内管204は、図11に示すように、上述した生体器官病変部改善用器具1と同様に、内管ハブ207とを備える。内管204の構造(具体的には、先端側および基端側の構造)、形成材料等については、上述した生体器官病変部改善用器具1と同じである。また、内管204のうち、シース202より突出する可能性のある部分の外面は、上述した実施例と同様に、潤滑性を有していることが好ましい。
なお、生体器官病変部改善用器具としては、図11、図12に示すタイプのものに限定されるものではなく、ルーメン241は、内管の基端まで延びるものであってもよい。この場合には、シースの側孔221は不要となる。
【0044】
この実施例の生体器官病変部改善用器具200に使用されるステント203は、自己拡張型ステントであり、シース内においては、図12、図13に示すように、自らの復元力によりシース2の内面を押圧する状態にて保持され、シース202の先端開口より放出されることにより、応力付加が解除されて拡張して圧縮前の形状に復元する。ステント203は、いわゆる自己拡張型ステントである。また、ステント203は、図16に示すように、先端部を除きステント203の先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものが用いられている。シース202内では、内管204に設けられた突出部243および突出部245との間に配置され、シース202内での移動が規制されている。
この実施例のステント203は、図12および図13に示すように、網状の側面形態を有しており、先端部を除きステント203の先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものとなっている。
具体的には、ステント203は、図16ないし図18に示すように、線状構成要素231により形成されるとともに、側面に多数の開口232を有するものとなっている。また、線状構成要素231は、交差部255において一体化し、最先端部および最基端部を除き、屈曲部および自由端を持たないものとなっている。そして、このステント203は、いわゆる自己拡張型ステントである。
【0045】
そして、ステント203は、留置対象部位により異なるが、一般的に、外径が2.0〜30mm、好ましくは、2.5〜15mm、肉厚が0.04〜1.0mm、好ましくは0.06〜0.5mmのものであり、長さは、5〜150mm、より好ましくは20〜60mmである。特に、血管内留置用ステントの場合には、外径が2.0〜14mm、好ましくは2.5〜10mm、肉厚が0.04〜0.3mm、好ましくは0.06〜0.2mmのものであり、長さは5〜80mm、より好ましくは10〜60mmである。
ステント203は、全体において物性の急激な変更点が形成されることなく一体に形成されていることが好ましい。ステント203は、例えば、留置される生体内部位に適合した外径を有する金属パイプを準備し、金属パイプの側面を、切削加工、化学エッチングなどにより部分的に除去することにより作製される。ステント203を形成する材料としては、上述したステント3において説明したものが好適に使用できる。
【0046】
また、この実施例の生体器官病変部改善用器具200に使用されるステントとしては、図19、図20および図21に示すようなタイプのステント300であってもよい。
この実施例のステント300は、ステント1の一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第1波状ストラット303と、第1波状ストラット303間に位置し、ステントの一端側より他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第2波状ストラット304と、各隣り合う第1波状ストラット303と第2波状ストラット304とを接続するとともに所定長軸方向に延びる1つもしくは複数の接続ストラット305とを備え、先端部を除きステント300の先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものとなっている。また、ステント300は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能な、いわゆる自己拡張型ステントである。
そして、この実施例のステント300では、第2波状ストラット304の頂点は、この頂点とステント300の周方向に近接しかつ同じ方向に湾曲する第1波状ストラット303の頂点に対して、ステントの軸方向に所定長ずれたものとなっている。また、第1波状ストラット303の端部333、334は、近接する第2波状ストラットの端部343、344と結合されている。
【0047】
この実施例のステント300は、図19ないし図21に示すように、ステント300の一端側から他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第1波状ストラット303と、同様にステントの他端側まで軸方向に延びかつステントの周方向に複数配列された第2波状ストラット304と、両者を接続しかつ所定長軸方向に延びる複数の接続ストラット305により構成されている。
第1波状ストラット303は、ステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第1波状ストラット303は、ステントの周方向に複数本配列されている。第1波状ストラット303の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本程度が好適である。さらに、複数本の第1波状ストラット303は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。
そして、この実施例のステント300では、第1波状ストラット303は、両側部を除きほぼ同じ波形が所定長継続するものとなっている。つまり、第1波状ストラット303は、結合部306と結合する両端部付近を除き、ほぼ同じ波形、つまり、同じ波長および同じ振幅の波が連続するものとなっている。第1波状ストラット303が、ほぼ全体に同じ波形を有する場合には、その波長は、ステントの外径によっても相違するが、0.5〜8.0mm程度が好適であり、特に、2.0〜4.0mm程度が好適であり、振幅は、0.5〜10.0mm程度が好適であり、特に、1.0〜3.0mm程度が好適である。
【0048】
第2波状ストラット304もステントの中心軸にほぼ平行に軸方向に延びるものとなっている。そして、第2波状ストラット304は、ステントの周方向に複数本配列されており、各第2波状ストラット304は、各第1波状ストラット間に配列されている。第2波状ストラット304の数としては、3本以上であることが好ましく、特に、3〜8本程度が好適である。さらに、複数本の第2波状ストラット304は、ステントの中心軸に対してほぼ等角度となるように配置されていることが好ましい。また、第2波状ストラット304の数は、第1波状ストラットの数と同じとなっている。
そして、この実施例のステント300では、第2波状ストラット304は、両側部を除きほぼ同じ波形が所定長継続するものとなっている。つまり、第2波状ストラット304は、結合部306と結合する両端部付近を除き、ほぼ同じ波形、つまり、同じ波長および同じ振幅の波が連続するものとなっている。第2波状ストラット304が、ほぼ全体に同じ波形を有する場合には、その波長は、ステントの外径によっても相違するが、0.5〜8.0mm程度が好適であり、特に、2.0〜4.0mm程度が好適であり、振幅は、0.5〜10.0mm程度が好適であり、特に、1.0〜3.0mm程度が好適である。
さらに、この実施例のステント300では、第1波状ストラット303と第2波状ストラット304は、ほぼ同じ波形のものとなっている。つまり、この実施例のステント300では、第1波状ストラット303と第2波状ストラット304は、波長、振幅ともに同じものとなっている。
【0049】
そして、第2波状ストラット304のステントの周方向の一方側に突出する頂点は、この頂点とステント300の周方向に近接しかつ同じ方向に湾曲する第1波状ストラット303の頂点(周方向の一方側に突出する頂点)に対して、ステントの軸方向に所定長ずれたものとなっている。同様に、第2波状ストラット304のステントの周方向の他方側に突出する頂点は、この頂点とステント300の周方向に近接しかつ同じ方向に湾曲する第1波状ストラット303の頂点(周方向の他方側に突出する頂点)に対して、ステントの軸方向に所定長ずれたものとなっている。
【0050】
この実施例のステントでは、上述したように、第1波状ストラット303と第2波状ストラット304は、ほぼ同じ波形のものとなっており、第2波状ストラット304は、第1波状ストラット303に対して、所定量(所定長)位相がステントの軸方向にずれた形態となっており、これにより、各頂点位置が軸方向に重ならない、言い換えれば、第1波状ストラット303の頂点と第2波状ストラット304の頂点が、同じ環状ライン上とならないものとなっている。言い換えれば、周方向に隣り合う波状ストラットの頂点1はジグザグ状に位置するものとなっている。
【0051】
そして、この実施例のステント300では、ステントの軸方向および周方向に複数の接続ストラット305を備えるものとなっている。そして、接続ストラット305は、ステント300の軸方向に複数直列状に設けられていることが好ましい。また、接続ストラット305は、ステント300の周方向に複数設けられていることが好ましい。また、接続ストラット305は、円弧状に湾曲するとともに、ステント300の周方向に近接する第1波状ストラット303または第2波状ストラット304の湾曲部の円弧とほぼ同じ半径を有するものとなっている。
また、結合部306には、図19ないし図20に示すように放射線不透過性マーカー307が取り付けられている。この実施例では、結合部306は、端部方向に所定距離離間して平行に延びる2本のフレーム部を備えており、放射線不透過性マーカー307は、2本のフレーム部のほぼ全体もしくは一部を被包するものとなっている。放射線不透過性マーカーの形成材料としては、イリジウム、プラチナ、金、レニウム、タングステン、パラジウム、ロジウム、タンタル、銀、ルテニウム、及びハフニウムからなる元素の群から選択された一種のもの(単体)もしくは二種以上のもの(合金)が好適に使用できる。また、マーカーの長さは、0.1〜4.0mm程度が好ましく、0.3〜1.0mmが特に好ましい。また、マーカーの肉厚は、0.01〜0.30mmが好ましく、0.03〜0.10mmが特に好ましい。また、一端側結合部306の端部には、係留用穴308が形成されている。係留用穴308の直径としては、0.01〜0.30mm程度が好ましく、0.05〜0.20mmが特に好ましい。
【0052】
次に、本発明の他の実施例の生体器官病変部改善用器具について、図22ないし図38を用いて説明する。
そして、上述したすべての実施例において、生体器官病変部改善用器具は、図22ないし図38に示すようなタイプのものであってもよい。
この実施例の生体器官病変部改善用器具100は、略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステント103と、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、ステント103を先端部内に収納したステント収納チューブ体105とを備える。ステント103が内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつステント収納チューブ体105を内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、ステント103を露出可能(放出可能)となっている、さらに、ステント収納チューブ体105の少なくともステント103の収納部位の内面は、ステント収納チューブ体105の軸方向に延びる略多角柱状内面となっている。 さらに、ステント収納チューブ体(シース)105の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、ステント収納チューブ体(シース)105の軸方向に延びる複数の溝151bが設けられている。
【0053】
そして、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、内側チューブ体は、ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブ102と、基端側チューブ104と、先端側チューブ102の基端部および基端側チューブ104の先端部が固定されるとともにガイドワイヤルーメン121と連通する開口123を備える固定チューブ108とを備える。また、ステント収納チューブ体105は、先端側チューブ102の先端側を被包しかつ先端側チューブ102の基端方向に摺動可能となっている。そして、生体器官病変部改善用器具100は、ステント収納チューブ体105に一端部が固定され、基端側チューブ104内を延びるとともに基端側チューブ104の基端側に牽引することにより、ステント収納チューブ体105を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤ106を備えている。
【0054】
具体的には、この実施例の生体器官病変部改善用器具100は、ガイドワイヤルーメン121を有する先端側チューブ102と、基端側チューブ104と、先端側チューブ102の基端部および基端側チューブ104の先端部が固定されるとともにガイドワイヤルーメン121と連通する開口123を備える固定チューブ108と、先端側チューブ102の先端側を被包しかつ先端側チューブ102の基端方向に摺動可能であるステント収納チューブ体105と、ステント収納チューブ体105内に収納されたステント103と、ステント収納チューブ体105に一端部が固定され、基端側チューブ104内を延びるとともに基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納チューブ体105を基端側に移動させるための移動手段を構成する牽引ワイヤ106(106a,106b)とを備える。
そして、先端側チューブ102は、先端側に位置し、ステント収納チューブ体105内に収納されたステント103の基端と当接し、ステント103の基端側への移動を規制するステント基端部係止部122を備える。
【0055】
ステント103は、略円筒形状に形成され、中心軸方向に圧縮された状態にてステント収納チューブ体105内に収納され、ステント収納チューブ体105からの放出時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元するものである。
そして、生体器官病変部改善用器具100は、ステント収納チューブ体105の基端に近接するように配置されたスライドチューブ107を備え、固定チューブ108は、スライドチューブ107を基端側より収納可能であり、スライドチューブ107は、牽引ワイヤ106の牽引によりステント収納チューブ体105とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納チューブ体105に固定されていないものとなっている。さらに、スライドチューブ107は、スライドチューブ本体171と、スライドチューブ本体171の先端部に固定され、スライドチューブ本体171の先端を覆い、かつスライドチューブ本体171の先端より生体器官病変部改善用器具100の先端側に延びる先端側筒状部材172とを備えている。そして、先端側筒状部材172は、先端側筒状部材172の先端と基端間に位置しかつ少なくとも内径が縮径した縮径部173を有する一体成形筒状体となっている。
【0056】
また、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、基端側チューブ104の外径が、生体器官病変部改善用器具100の基端側チューブ104より先端側における最大径部分の外径より小さいものとなっている。このため、開口123より基端側に延びるガイドワイヤを基端側チューブの側面に沿わせた状態においても生体器官病変部改善用器具の基端側チューブより先端側における最大径部分の外径と同等程度のものとすることができ、細径の血管への挿入が可能である。
そして、この実施例の生体器官病変部改善用器具100は、基端側チューブ104の基端部には、牽引ワイヤ106を巻き取り、ステント収納チューブ体105を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備えている。
この実施例の生体器官病変部改善用器具100は、先端側チューブ102、ステント103、基端側チューブ104、ステント収納チューブ体105、牽引ワイヤ106、スライドチューブ107,固定チューブ108および牽引ワイヤ106の巻取機構を有する操作部110を備えている。そして、固定チューブ108は、先端側チューブ102と基端側チューブ104を接続するとともに、先端側チューブ102の基端部と連通する開口123を備えている。
【0057】
先端側チューブ102は、図22ないし図32に示すように、先端から基端まで貫通するガイドワイヤルーメン121を有するチューブ体であり、先端に固定された先端部材125により、先端部が形成されており、その先端に、先端開口125aを備えている。なお、先端部は、先端側チューブと一体に形成してもよい。そして、先端側チューブ102は、基端部において、固定チューブ108に固定されている。また、先端側チューブ102の基端は、固定チューブ108に形成された開口123と連通している。また、先端側チューブ102の基端部は、図25に示すように、湾曲している。また、開口123は、図22および図25に示すように、基端側に向かって傾斜するように斜めに形成されている。これにより、ガイドワイヤの誘導を容易にしている。
先端側チューブ102は、図に示すように、先端から基端まで貫通したガイドワイヤルーメン121を有するチューブ体である。先端側チューブ102としては、外径が0.3〜2.0mm、好ましくは0.5〜1.5mmであり、内径が0.2〜1.5mm、好ましくは0.3〜1.2mm、長さが、20〜600mm、好ましくは30〜450mmである。
【0058】
そして、先端部材125は、ステント収納チューブ体105の先端より先端側に位置し、かつ、図22ないし図25に示すように、先端に向かって徐々に縮径するテーパー状に形成されていることが好ましい。このように形成することにより、狭窄部への挿入を容易なものとする。また、先端側チューブ102は、ステント103よりも先端側に設けられ、ステント収納チューブ体の先端方向への移動を阻止するストッパーを備えることが好ましい。この実施例では、先端部材125の基端は、ステント収納チューブ体105の先端と当接可能なものとなっており、上記のストッパーとして機能している。
なお、先端部材(先端部)125の最先端部の外径は、0.5mm〜1.8mmであることが好ましい。また、先端部材(先端部)125の最大径部の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。さらに、先端側テーパー部の長さは、2.0〜20.0mmが好ましい。
【0059】
また、先端側チューブ102は、図24および図25に示すように、ステント103の基端側への移動を規制するために、チューブ102の先端より所定距離基端側となる位置に設けられたステント基端部係止部122を備えている。係止部122は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント基端部係止部122より先端側が、ステント収納部位となっている。この係止部122の外径は、圧縮されたステント103の基端と当接可能な大きさとなっている。そして、ステント収納チューブ体105が、基端側に移動しても、係止部122によりステント103は位置を維持するため、ステント収納チューブ体105より、結果的に放出される。
【0060】
そして、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、先端側チューブ102は、図24および図25に示すように、ステント基端部係止部122より所定長(ほぼステントの軸方向長)先端側となる位置に設けられたステント先端部係止部126を備えている。ステント先端部係止部126は、図24および図25に示すように、ステント収納チューブ体105の先端より、若干基端側に位置している。係止部126は、環状突出部であることが好ましい。そして、このステント先端部係止部126とステント基端部係止部122間が、ステント収納部位となっている。この係止部126の外径は、圧縮されたステント103の先端と当接可能な大きさとなっている。また、ステント先端部係止部126は、基端面が基端方向に向かって縮径するテーパー面となっている。このため、ステント放出時において、ステント先端部係止部126が障害となることがなく、また、ステント103の放出後の生体器官病変部改善用器具100の回収(具体的には、ガイディングカテーテルあるいはシース内への収納)が容易となる。
【0061】
ステント基端部係止部122およびステント先端部係止部126の外径は、0.8〜4.0mmであることが好ましい。なお、ステント基端部係止部122およびステント先端部係止部126は、図示するような環状突出部が好ましいが、ステント103の移動を規制し、かつ、押出可能であればよく、例えば、先端側チューブ102に一体にあるいは別部材で設けられた1つまたは複数の突起であってもよい。また、ステント基端部係止部122およびステント先端部係止部126は、X線造影性材料からなる別部材により形成されていてもよい。これにより、X線造影下でステントの位置を的確に把握することができ、手技がより容易なものとなる。X線造影性材料としては、例えば、金、プラチナ、プラチナ−イリジウム合金、銀、ステンレス、白金、あるいはそれらの合金等が好適である。そして、突出部は、X線造影性材料によりワイヤを形成し先端側チューブの外面に巻きつけること、もしくはX線造影性材料によりパイプを形成し、内管の外面にかしめる又は接着することにより取り付けられる。
【0062】
先端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレートなどのポリエステル、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。特に、上記の樹脂のうち、熱可塑性を有する樹脂が好ましい。なお、先端側チューブの露出する外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する材料をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが好適に使用できる。
【0063】
また、先端部を先端側チューブと別部材により構成する場合には、先端部(先端部材)125としては、柔軟性を有する材料を用いることが好ましい。例えば、オレフィン系エラストマー(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)、ポリアミドエラストマー、スチレン系エラストマー(例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンコポリマー、スチレン−イソプレン−スチレンコポリマー、スチレン−エチレンブチレン−スチレンコポリマー)、ポリウレタン、ウレタン系エラストマー、フッ素樹脂系エラストマーなどの合成樹脂エラストマー、ウレタンゴム、シリコーンゴム、ブタジエンゴムなどの合成ゴム、ラテックスゴムなどの天然ゴムなどのゴム類が使用される。
【0064】
特に、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、先端側チューブ102と先端部材125は、別部材にて形成されているとともに、先端側チューブ102は、先端部に、ストッパー部材127が固定されている。ストッパー部材127は、先端側チューブ102に固定された筒状部とこの筒状部より、テーパー状に広がるスカート部を備えている。そして、ストッパー部材127は、先端部材125内に埋設された状態となっており、先端部材125の離脱および先端側への移動を防止している。ストッパー部材127は、金属(例えば、ステンレス鋼)により形成することが好ましい。
【0065】
基端側チューブ104は、図22、図23および図25に示すように、先端から基端まで貫通したチューブ体であり、基端に固定された操作部110を備えている。基端側チューブ104の先端部は、固定チューブ108に、固定部材184により、接合されている。基端側チューブ104は、内部に牽引ワイヤ106を挿通可能な牽引ワイヤ用ルーメンを備えている。
基端側チューブ104としては、長さが300mm〜1500mm、より好ましくは、1000〜1300mmであり、外径が0.5〜1.5mm、好ましくは0.6〜1.3mmであり、内径が0.3〜1.4mm、好ましくは0.5〜1.2mmである。
基端側チューブ104の中心軸と先端側チューブ102の中心軸とのずれの距離としては、0.1〜2.0mmが好ましく、特に、0.5〜1.5mmが好ましい。
【0066】
基端側チューブの形成材料としては、硬度があってかつ柔軟性がある材質であることが好ましく、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのポリオレフィン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。なお、基端側チューブの外面には、生体適合性、特に抗血栓性を有する材料をコーティングしてもよい。抗血栓性材料としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタアクリレート、ヒドロキシエチルメタアクリレートとスチレンの共重合体(例えば、HEMA−St−HEMAブロック共重合体)などが使用できる。また、基端側チューブ104の形成材料としては、比較的剛性の高い材質を用いることが好ましい。例えばNi−Ti、真鍮、ステンレス鋼、アルミ等の金属、さらには、比較的剛性の高い樹脂、例えば、ポリイミド、塩化ビニル、ポリカーボネート等を用いることもできる。
【0067】
ステント収納チューブ体105は、図24ないし図26に示すように所定長を備える管状体であり、先端および後端は開口している。先端開口は、ステント103を体腔内の狭窄部に留置する際、ステント103の放出口として機能する。ステント103は、図32に示すように、この先端開口より押し出されることにより応力負荷が解除されて拡張し圧縮前の形状に復元する。
そして、ステント収納チューブ体105は、図26に示すように、ステント収納チューブ体105の先端よりステントの収納部位の基端部までの内面は、ステント収納チューブ体105の軸方向に延びる略多角柱状内面となっている。
ステント収納チューブ体105の長さとしては、20mm〜400mm程度が好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、外径としては、1.1〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納チューブ体105の内径としては、1.0〜2.5mm程度が好ましい。
【0068】
そして、このステント収納チューブ体105は、基端部に設けられた小径部151aを備えるチューブ体本体部151と、この小径部151aを被包するように設けられた筒状部152を備えている。なお、小径部151aの基端部は、筒状部152より突出している。具体的には、牽引ワイヤ106(106a、106b)の先端部169(169a,169b)は、小径部151aと筒状部152間に形成された空隙内に侵入し、空隙に充填された固定剤153により、ステント収納チューブ体105に固定されている。小径部151aは、外径が基端側に向かって縮径するテーパー部とこのテーパー部より基端側に延びる短い円筒部を備えている。そして、チューブ体本体部151の縮径部151aを被包するように筒状部152は、チューブ体本体部151の基端部に固定されている。このため、チューブ体本体部151の小径部151aは、ステント収納チューブ体105の内方かつ基端方向に突出する環状突出部を構成している。そして、この環状突出部と筒状部152の内面間により、環状空隙部が形成されている。そして、この実施例では、牽引ワイヤ106(106a、106b)の先端部169(169a,169b)は、小径部151aの外面にて固定されている。そして、この空隙部には、固定剤(接着剤)が充填されており、チューブ体本体部151と基端側筒状部152を一体化している。また、環状空隙部に充填された固定剤等により、後述する牽引ワイヤ106(106a,106b)の先端部(固定点)169(169a,169b)は、ステント収納チューブ体105に固定されている。固定剤としては、エポキシ樹脂、紫外線硬化樹脂、シアノアクリレート系樹脂などの接着剤を用いることが好ましいが、熱融着であってもよい。
【0069】
そして、この実施例では、ステント収納チューブ体105のチューブ体本体部151は、図24,図25および図26に示すように、先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、多数の溝151bが設けられている。なお、各溝および溝部が形成されている部分(溝部形成部)は、ステントの収納部位の基端を越えてさらに基端側に延びるものであってもよい。図4に示し上述した実施例と同様に、溝151bは、チューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の軸方向(中心軸)に平行に延びるものとなっている。また、溝151bは、図6に示した実施例のように、実質的にチューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)内表面に露出する部分に角部を持たないものとなっていることが好ましい。
また、溝は、図5に示し上述した実施例と同様に、チューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の軸方向(中心軸)に対して螺旋状(好ましくは、緩やかな螺旋状)となるものであってもよい。 この場合においても、実質的にチューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)内表面に露出する部分に角部を持たないものであることが好ましい。螺旋状の場合の溝のチューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の中心軸に対する角度は、0〜90度であることが好ましく、特に、10〜89度であることが好ましい。
【0070】
また、上述したすべての実施例において、多数の溝151bとしては、それぞれの幅および深さがほぼ等しいものであることが好ましいが、各溝は、幅、深さが異なるものであってもよい。また、溝の幅としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。また、溝の深さとしては、0.01〜0.3mmが好ましく、特に、0.02〜0.1mmが好ましい。また、溝間隔としては、0.02〜0.5mmが好ましく、特に、0.05〜0.3mmが好ましい。
さらに、上述したステント203,300のように、先端部を除きステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものを用いてもよい。そして、このようなタイプのステントを用いる場合には、ステント収納チューブ体105は、先端部よりステントの収納部位の基端部までの内面に、ステントの外面とステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝を備えるものとなる。このタイプのステントを用いる場合においては、溝は、上述したようなチューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の軸方向(中心軸)に平行に延びるもの、チューブ体本体部151(ステント収納チューブ体105)の軸方向(中心軸)に対して螺旋状(好ましくは、緩やかな螺旋状)となるものであってもよい。さらには、図12ないし図14に示した実施例のシース202のように、溝は、チューブ体本体部151の軸方向(中心軸)に直交する複数の環状溝であってもよい。さらには、溝は、図15に示した実施例のシース202aのように、チューブ体本体部の軸方向(中心軸)に対して螺旋状となる溝あってもよい。 この場合において、溝223aは、一本の螺旋状溝であってもよく、また、複数の螺旋状溝であってもよい。
【0071】
そして、チューブ体本体部に上記のような環状溝および螺旋状溝を設ける場合には、チューブ体本体部の最先端部に溝非形成部を設けることが好ましい。そして、ステントをその最先端部(具体的には、ステントの先端方向を向く屈曲部、自由端となっている部分)が、チューブ体本体部の溝非形成部内に位置するように、配置することが好ましい。このようにすることにより、ステントが、その最先端部に、ステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を有するものであっても、当該部分が、チューブ体本体部の内面に形成された溝に係合することがなく、ステントの放出を阻害しないものとなっている。
【0072】
そして、この実施例において用いられているステント収納チューブ体105では、チューブ体本体部151および筒状部152は、ほぼ同じ外径を有するものとなっている。チューブ体本体部151および筒状部152の外径としては、1.0〜4.0mm程度が好ましく、特に、1.5〜3.0mmが好ましい。また、ステント収納チューブ体105の長さとしては、20〜400mm程度が好ましく、特に、30mm〜300mmが好ましい。また、チューブ体本体部151の長さとしては、10〜200mm程度が好ましく、特に、15mm〜150mmが好ましく、筒状部152の長さとしては、10〜200mm程度が好ましく、特に、15mm〜150mmが好ましい。
なお、ステント収納チューブ体105としては、上述したようなチューブ体本体部151と筒状部152からなるものに限定されるものではなく、一体物であってもよい。
【0073】
スライドチューブ107は、その先端が、ステント収納チューブ体105の基端に近接するように配置されている。また、スライドチューブ107は、その基端側より固定チューブ内に収納可能なものとなっている。なお、スライドチューブ107は、基端側より固定チューブ108に被嵌可能なものであってもよい。スライドチューブ107は、牽引ワイヤ106の牽引によりステント収納チューブ体105とともに基端側に移動可能であり、かつ、ステント収納チューブ体105に固定されていないものとなっている。
そして、本発明の生体器官病変部改善用器具100では、図23ないし図30に示すように、スライドチューブ107は、スライドチューブ本体171と、スライドチューブ本体171の先端部に接着剤177により固定され、スライドチューブ本体171の先端を覆い、かつスライドチューブ本体171の先端より生体器官病変部改善用器具100の先端側に延びる先端側筒状部材172とを備えている。そして、先端側筒状部材172は、先端側筒状部材172の先端部174と基端部間に位置しかつ少なくとも内径が縮径した縮径部173を有する一体成形筒状体となっている。そして、この実施例では、縮径部173の内径は、スライドチューブ本体171の内径とほぼ等しいまたは若干大きいもしくは若干小さいものとなっている。さらに、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、図23ないし図30に示すように、先端側筒状部材172は、少なくとも縮径部173以外の部分の外径および内径が、スライドチューブ本体171より大きいものとなっている。
【0074】
そして、この実施例における生体器官病変部改善用器具100では、スライドチューブ本体171の先端と先端側筒状部材172の縮径部173間に、リング状部材175が収納されている。そして、牽引ワイヤ106a,106bは、リング状部材175に固定されている。そして、先端側筒状部材172の縮径部173の内径は、先端側チューブ102の外径より大きいものとなっている。このため、先端側筒状部材172は、先端側チューブ102に接触することなく、基端側に移動可能となっている。また、先端側筒状部材172の縮径部173の内径は、リング状部材175の外径より小さいものとなっている。このため、リング状部材175の先端方向への移動を規制する。そして、牽引ワイヤ106a,106bが基端側に牽引されることにより、スライドチューブ107は、リング状部材175とともに基端側に移動する。また、リング状部材175は、スライドチューブ本体171および先端側筒状部材172のいずれにも固定されておらず、スライドチューブ本体171の先端と先端側筒状部材172の縮径部173間に回動可能に収納されている。スライドチューブ107の先端側筒状部材172は、リング状部材175の回動を許容し、かつ軸方向への大きな移動を縮径部173とスライドチューブ本体171の先端により、実質的に阻止している。
【0075】
このように、リング状部材175が、スライドチューブ107に対して、回動可能であることにより、先端側筒状部材172(スライドチューブ107)の回動に対して、リング状部材175、牽引ワイヤの固定部および牽引ワイヤ自体も追従しにくいものとなる。また、リング状部材175と、スライドチューブ本体171の先端間には、樹脂リング176を配置してもよい。このような樹脂リングを配置することにより、リング状部材175の回動がより容易なものとなる。樹脂リングとしては、摩擦抵抗の少ないものが好ましい。樹脂リングとしては、ETFE等のフッ素系ポリマー、PEEK(ポリエーテルエーテルケトン)、ポリイミドなどが好適に使用できる。
【0076】
また、スライドチューブ107の先端側筒状部材172は、その先端部174が、ステント収納チューブ体105の小径部151aの基端部を被包していることが好ましい。また、スライドチューブ107の先端側筒状部材172とステント収納チューブ体105は、接合されていないことが好ましい。この実施例では、図25および図30に示すように、接合されることなく、さらには、実質的に接触することなく、スライドチューブ107の先端側筒状部材172の先端部は、ステント収納チューブ体105の小径部151aの基端部を被包している。
さらに、この実施例では、スライドチューブ本体171の全体にわたり補強層178を備えている。このような補強層を設けることにより、耐キンク性が向上し、スライドチューブ107のスライドが良好なものとなる。補強層は、網目状の補強層であることが好ましい。網目状の補強層は、ブレード線で形成することが好ましい。例えば、ワイヤブレードであり、線径0.01〜0.2mm、好ましくは0.03〜0.1mmのステンレス、弾性金属、超弾性合金、形状記憶合金等の金属線で形成することができる。または、ポリアミド繊維、ポリエステル繊維、ポリプロピレン繊維等の合成繊維で形成してもよい。
【0077】
固定チューブ108は、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、図23ないし図25、図29および図31に示すように、外径の大きい先端側固定チューブ181と、この先端側固定チューブ181の基端部に固定された基端側固定チューブ182を備えている。そして、先端側固定チューブ181は、先端縮径部181aを備えており、先端縮径部181aの内面は、スライドチューブ107の基端部の外面に接触している。そして、スライドチューブ107は、先端側固定チューブ181に固定されておらず、基端側に摺動することにより、先端側固定チューブ181内に侵入し、収納される。
【0078】
基端側固定チューブ182の先端部は、先端側固定チューブ181の基端内に侵入し、固定部181bにより固定されている。また、先端側チューブ102の外面には、固定チューブ108内、具体的には、図31に示すように、先端側固定チューブ181の基端部となる位置に、スライドチューブ係止部124が設けられている。スライドチューブ107は、このスライドチューブ係止部124に当接するまで、基端側にスライド可能となっている。言い換えれば、スライドチューブ107は、このスライドチューブ係止部124に当接することにより、それ以上の基端側への移動が規制されている。
【0079】
さらに、この実施例では、図31に示すように、固定チューブ108の先端側部分、具体的には、先端側固定チューブ181は、そのほぼ全体にわたり補強層185を備えている。補強層としては、網目状のもの、螺旋状のものなどが好ましい。特に、網目状補強層であることが好ましい。網目状補強層としては、金属細線により網状に形成されたものが好適である。金属細線としては、ステンレス鋼が好ましい。さらに、図31に示すように、基端側固定チューブ182との接続部となる部分には、補強層が存在しないものとすることが好ましい。
先端側チューブ102の基端部には、その基端部を収納した筒状固着部材183が設けられており、また、基端側チューブ104の先端には、その先端部を収納した筒状固定部材184が設けられている。そして、図29および図31に示すように、基端側固定チューブ182に、筒状固着部材183および筒状固定部材184が固着されている。
【0080】
また、図23および図24に示すように、この生体器官病変部改善用器具100では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ106a,106bを備えており、牽引ワイヤ106a、106bは、上述したステント収納チューブ体105が備える空隙部にて、固定点169a、169bが、固定剤153により、ステント収納チューブ体105の筒状部152の外側に固定されている。また、牽引ワイヤ106a,106bおよびこの固定点169a、169bは、所定長離間している。
【0081】
ステント収納チューブ体105(チューブ体本体部151、筒状部152)、スライドチューブ107(スライドチューブ本体171、先端側筒状部材172)、固定チューブ108(先端側固定チューブ181、基端側固定チューブ182)の形成材料としては、ステント収納チューブ体に求められる物性(柔軟性、硬度、強度、滑り性、耐キンク性、伸縮性)を考慮して、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ナイロン、ポリエチレンテレフタレート、ポリイミド、PTFE、ETFE等のフッ素系ポリマー、さらには、熱可塑性エラストマーが好ましい。熱可塑性エラストマーとしては、ナイロン系(例えば、ポリアミドエラストマー)、ウレタン系(例えば、ポリウレタンエラストマー)、ポリエステル系(例えば、ポリエチレンテレフタレートエラストマー)、オレフィン系(例えば、ポリエチレンエラストマー、ポリプロピレンエラストマー)の中から適宜選択される。
さらに、ステント収納チューブ体105の外面には、潤滑性を呈するようにするための処理を施すことが好ましい。このような処理としては、例えば、ポリヒドロキシエチルメタクリレート、ポリヒドロキシエチルアクリレート、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルビニルエーテル無水マレイン酸共重合体、ポリエチレングリコール、ポリアクリルアミド、ポリビニルピロリドン等の親水性ポリマーをコーティング、または固定する方法などが挙げられる。また、ステント収納チューブ体105の内面に、ステント103の摺動性を良好なものにするため、上述のものをコーティング、または固定してもよい。
また、ステント収納チューブ体105は、上記のようなポリマーの2層構造(例えば、外面はナイロン、内面はPTFE)の組み合わせで形成しても良い。
【0082】
そして、生体器官病変部改善用器具100は、ステント収納チューブ体105の基端部に一端部が固定され、ステント収納チューブ体105の基端を越え、スライドチューブ107,固定チューブ108を貫通し、基端側チューブ104内を延びる牽引ワイヤ106を備えている。そして、この牽引ワイヤ106を基端側チューブの基端側に牽引することにより、ステント収納チューブ体105およびスライドチューブ107は、基端側に移動する。
そして、図22、図23、図27ないし図30および図32に示すように、この生体器官病変部改善用器具100では、複数(具体的には、2本)の牽引ワイヤ106a,106bを備えており、牽引ワイヤ106a、106bは、かなりステントに近い部分に設けられた固定点169a、169bにより、ステント収納チューブ体105の基端部に固定されている。また、牽引ワイヤ106a,106bおよびこの固定点169a、169bは、所定距離離間するように配置されている。
【0083】
さらに、この実施例では、牽引ワイヤ106a,106bは、牽引により移動する部材に固定されている。具体的には、図30に示し、また、上述したように、牽引ワイヤ106a,106bは、スライドチューブ107が備えるリング状部材175(具体的には、その内面)に固定されている。このため、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、牽引ワイヤ106a,106bが、基端側に牽引されることにより、リング状部材175も基端側に牽引され、このリング状部材175にスライドチューブ107(スライドチューブ本体171)が当接することにより、スライドチューブも基端側に牽引される。よって、この実施例では、ステント収納チューブ体105とスライドチューブ107とは、両者それぞれが別個に牽引されるものとなっており、牽引時に、ステント収納チューブ体105とスライドチューブ107が当接しないものとなっている。また、牽引ワイヤ106a,106bの牽引時の力は、固定点169a、169bと牽引により移動する部材であるリング状部材175の固定部175a,175bとに分散されるため、固定点169a、169bにおける牽引ワイヤ106a,106bとステント収納チューブ体105間の固定が解除されることを確実に防止する。
【0084】
この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、牽引ワイヤ106は、図22に示すように、基端側チューブ104を貫通し、基端側チューブの基端より延出するものとなっている。
牽引ワイヤの構成材料としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、牽引ワイヤの線径は、特に限定されないが、通常、0.01〜0.55mm程度が好ましく、0.1〜0.3mm程度がより好ましい。
また、牽引ワイヤ106の形成材料としては、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材や、ポリアミド、ポリイミド、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、フッ素系樹脂等の比較的高剛性の高分子材料、あるいは、これらを適宜組み合わせたものが挙げられる。
また、牽引ワイヤの側面に滑性を増加させる低摩擦性樹脂を被覆してもよい。低摩擦性樹脂としては、フッ素系樹脂、ナイロン66、ポリエーテルエーテルケトン、高密度ポリエチレン等が挙げられる。この中でも、フッ素系樹脂がより好ましい。フッ素系樹脂としては、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリフッ化ビニリデン、エチレンテトラフルオロエチレン、パーフロロアルコキシ樹脂等が挙げられる。またシリコンや各種親水性樹脂によるコーティングであってもよい。
【0085】
さらに、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、上述した牽引ワイヤとは別に、剛性付与体111が設けられている。剛性付与体111は、図22ないし図25,図29および図31に示すように、生体器官病変部改善用器具100の基端側より延び、基端側チューブ104内を通り、さらに、固定チューブ108に侵入している。そして、剛性付与体111の先端111aは、図31に示すように、スライドチューブ係止部124に固定されている。剛性付与体111の先端111aをスライドチューブ係止部124の形成材料に埋設することにより固定することが好ましい。なお、牽引ワイヤ106a、106bは、図24に示すように、スライドチューブ係止部124に固定されておらず、スライドチューブ係止部124に形成された通路124a、124bを通過している。
【0086】
さらに、この実施例の生体器官病変部改善用器具100では、図31に示すように、剛性付与体111は、固定チューブ108に固定された筒状固定部材184にも固定されている。筒状固定部材184には、図31に示すように、軸方向に所定長のびる剛性付与体固定部184aが形成されている。このように、剛性付与体111の先端部を2カ所において固定することにより、剛性付与体111の先端部による強い補強効果を発揮する。特に、スライドチューブ係止部124へのスライドチューブ107の当接時において、スライドチューブ係止部124を補強する。
そして、剛性付与体111は、基端部にて基端側チューブ104の基端部もしくは後述する操作部110に固定されていることが好ましい。このような剛性付与体111を設けることにより、牽引部材(牽引ワイヤ)の牽引時における生体器官病変部改善用器具の変形を抑制できる。また、剛性付与体111の先端111aは、スライドチューブ係止部124による固定を確実にするために、平坦部となるように形成してもよい。さらに、側面に波状部分を形成して固定部材からの抜け止めを設けてもよい。
【0087】
剛性付与体111としては、線材もしくは複数本の線材を撚ったものが好適に使用できる。また、剛性付与体111の太さは、特に限定されないが、通常、0.01〜1.5mm程度が好ましく、0.1〜1.0mm程度がより好ましい。
また、剛性付与体111としては、本体側部分(具体的には、基端側チューブ内となる部分)の剛性が高く(例えば、線径が太い)、先端側部分の剛性が低い(具体的には、線径が細い)ものであることが好ましい。さらに、両者の変化点は、線径がテーパー状に変形するテーパー部となっていることが好ましい。
また、剛性付与体111の形成材料としては、ステンレス鋼線(好ましくは、バネ用高張力ステンレス鋼)、ピアノ線(好ましくは、ニッケルメッキあるいはクロムメッキが施されたピアノ線)、または超弾性合金線、Ni−Ti合金、Cu−Zn合金、Ni−Al合金、タングステン、タングステン合金、チタン、チタン合金、コバルト合金、タンタル等の各種金属により形成された線材が挙げられる。また、剛性付与体111は、牽引部材(牽引ワイヤ)より、硬質であることが好ましい。
ステント収納チューブ体105内には、ステント103が収納されている。
ステント103としては、いわゆる自己拡張型ステントであればどのようなものであってもよい。ステント103としては、例えば、上述したステントが好適に使用できる。
【0088】
なお、本発明の生体器官病変部改善用器具は、図33に示す生体器官病変部改善用器具120のようなものであってもよい。
上述した実施例の生体器官病変部改善用器具では、固定チューブ108は、牽引時において、スライドチューブ107を基端側より収納するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ107のスライドチューブ本体171が、基端より、固定チューブ108内に侵入するタイプのものとなっている。
これに対して、この実施例の生体器官病変部改善用器具120では、牽引時において、スライドチューブ107が基端側より固定チューブ108を被嵌するタイプ、言い換えれば、スライドチューブ107のスライドチューブ本体171aが、基端より、固定チューブ108の先端側固定チューブ181cを被包するものとなっている。
このため、スライドチューブ本体171aの内径は、固定チューブ108の先端側固定チューブ181cの外径とほぼ等しい、もしくは、若干大きいものとなっている。先端側固定チューブ181cは、固定部181bにより、その基端部において、基端側固定チューブ182の先端部に固定されている。また、この実施例では、部材124は、スライドチューブ係止部として機能しない。
【0089】
そして、本発明の生体器官病変部改善用器具100は、図22,図34ないし図38に示すように、基端側チューブ104の基端に固定された操作部110を備えている。
図34は、本発明の生体器官病変部改善用器具の操作部付近の拡大正面図である。図35は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部付近の背面図である。図36は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。図37は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部分のみの右側面図である。図38は、図34に示した生体器官病変部改善用器具の操作部の内部構造を説明するための説明図である。
この実施例の生体器官病変部改善用器具100における操作部110は、牽引ワイヤ巻取機構に加えて、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構および牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
【0090】
操作部110は、図34ないし図38に示すように、操作部ハウジング150を備える。操作部ハウジング150は、第1ハウジング150aと第2ハウジング150bにより構成されている。操作部ハウジング150は、基端側および中央部が屈曲しかつ丸みを帯びた形状となっており、把持しやすく、かつ、把持した状態におけるローラの操作を容易なものとしている。
そして、図36に示すように、基端側チューブ104の基端には、筒状コネクタ145の先端部が固定されている。また、操作部ハウジング150内には、コネクタ145の基端部に接続されたシール機構が収納されている。このシール機構は、図36に示すように、コネクタ145の後端部に固定された先端部を備えるシール機構筒状本体部材170と、筒状本体部材170の基端に固定されたキャップ部材170aと、筒状本体部材170とキャップ部材170a間に配置されたシール部材170bと、筒状本体部材170内に収納された剛性付与体固定用部材170cを備えている。筒状本体部材170およびキャップ部材170aは、貫通する開口部を備えている。シール部材170bは、牽引ワイヤ106(106a,106b)を液密状態かつ摺動可能に貫通させるための孔部もしくはスリットを備えている。また、剛性付与体固定用部材170cには、剛性付与体111の基端部が固定されている。そして、剛性付与体固定用部材170cは、筒状本体部材170内に固定されている。
【0091】
ハウジング150は、図34ないし図37に示すように、操作用回転ローラ161を部分的に突出させるための開口部158、ローラ161に設けられた歯車部162の突出部と係合するロック用リブ(図示せず)、ローラ161の回転軸の一端164bを収納する軸受部194b、ローラ161の回転軸の他端164aを収納する軸受部194aを備えている。ロック用リブは、ローラ161の歯車部162に形成された突起部間に侵入可能な形状となっている。また、軸受部194a、194bは、図34および図35に示すように、ローラ161の回転軸の一端164bおよび他端164aを収納するとともに、上述の開口部と離間する方向に延びる瓢箪状のものとなっている。なお、軸受部194a、194bは、瓢箪状に限定されるものではなく、ロック用リブとの係合が解除できる距離移動できるものであればよい。例えば、軸受部194a、194bの形状は、長円、矩形、楕円状などであってもよい。特に、この実施例の操作部110では、上記の軸受部194a、194bは、図34および図35に示すように、瓢箪状のものとなっている。このため、操作用回転ローラ161を押し、軸受部194a,194bの一端側空間に収納されているローラ161の回転軸の端部164a,164bを、軸受部194a,194bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分を乗り越えさせることにより、ローラ161の回転軸の端部164a,164bは、軸受部194a,194bの他端側空間に収納された状態となる。図36に示す状態が、ローラ161が押圧された状態である。そして、この状態において、ローラ161は、付勢部材により押圧されるが、ローラ161の回転軸の端部164a,164bは、軸受部194a,194bの中央部内側面に形成された向かい合うリブ部分に当接するため、軸受部194a,194bの一端側空間に移動しない。このため、ローラ161は、回転可能な状態を維持するものとなっている。
【0092】
そして、この実施例では、図35および図38に示すように、操作部110は、カラー部材112を備えている。カラー部材112は、巻取シャフト部163を収納するとともに、巻取シャフト部163との間に環状空間を形成するカラー部114を有する。このカラー部114により、巻取シャフト部163に巻き取られた牽引ワイヤのゆるみが防止される。また、カラー部材112は、回転ローラの押圧時の移動の誘導および回転ローラのガタツキを抑制する機能も有する。カラー部材112のピン113が、第1ハウジング150aの突出部(軸受部)159および第2ハウジング150bの凹部(軸受部)258によって軸支されている。そして、軸受部194a、194bは、図34および図35に示すように、ピン113(軸受部159、258)を中心とする緩やかな円弧状に形成されており、かつ、ローラ161が、ロック用リブの高さ以上の距離を移動可能な長さを有するものとなっている。また、カラー部材112は、図38に示すように、側面よりカラー部114内の空間に到達する向かい合う2つの切欠部115を備えている。牽引ワイヤ106は、一方の切欠部115を貫通し、巻取シャフト部163に固定されている。
【0093】
そして、牽引ワイヤ巻取機構は、ローラ161と、このローラ161の回転により回転する巻取シャフト部163とにより構成されている。巻取シャフト部163は、牽引ワイヤ106の基端部を把持もしくは固定している。具体的には、図35に示すように、牽引ワイヤ106の基端部には、ワイヤ106より大きく形成されたアンカー部165を備えており、巻取シャフト部163には、牽引ワイヤ106を収納可能なスリット163aが設けられている。そして、アンカー部165がスリット163aの基端外方に位置するように、巻取シャフト部163のスリット163aに、牽引ワイヤ106の基端部が収納されている。これにより、巻取シャフト部163が回転することにより、ワイヤ106は、巻取シャフト部163外面に巻き取られる。なお、牽引ワイヤ106の巻取シャフト部163への把持もしくは固定は、上述のものに限定されるものではなく、どのような方式のものであってもよい。例えば、牽引ワイヤ106の基端もしくは基端部を直接、巻取シャフトに固定してもよい。
【0094】
また、牽引ワイヤ106の巻き取られる基端部は、巻取を容易なものとするために、柔軟なものとなっていることが好ましい。このような柔軟なものとする方法としては、牽引ワイヤ106の基端部を柔軟な材料により形成する方法、牽引ワイヤ106の基端部を細径とする方法などにより行うことができる。
そして、この実施例では、巻取シャフト部163は、回転ローラ161と同軸となるように一体化されている。さらに、図34、図36および図37に示すように、巻取シャフト部163は、回転ローラ161の一方の側面側に設けられている。そして、回転ローラ161を回転させることにより、巻取シャフト部163も同時に回転する。なお、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないことが好ましい。このようにすることにより、ゆっくりとした巻取を行うことができ、ステント収納チューブ体の基端側への移動もゆっくりかつ良好なものとなる。この実施例では、巻取シャフト部の外径は、回転操作用ローラより小径となっているため、回転ローラの回転操作量に比べて、牽引ワイヤの巻取量が少ないものとなっている。
【0095】
また、巻取シャフト部163の外径としては、1〜60mm程度が好適であり、特に、3〜30mmが好ましく、回転ローラの外径としては、巻取シャフト部の外径の1〜20倍程度が好適であり、特に、1〜10倍が好ましい。また、回転ローラの外径としては、10〜60mm程度が好適であり、特に、15〜50mmが好ましい。
なお、回転ローラと巻取シャフト部は、このような一体的なものに限定されるものではなく、回転ローラが回転することにより、追従して回転する別部材により構成したものであってもよい。回転ローラの回転の伝達方式としては、ギア形式のもの、ベルト形式のものなどであってもよい。また、ローラ161の操作する際に接触する可能性のある表面部位は、滑りにくい表面となっていることが好ましい。例えば、ローラ161の操作する際に接触する可能性のある表面部位には、ローレット処理、エンボス処理、高摩擦材料被覆などを行うことが好ましい。
【0096】
そして、この実施例の操作部110は、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構を備えている。
操作用回転ローラ161は、図34ないし図36に示すように、同軸にかつ一体的に回動するように設けられた歯車部162を備えている。さらに、図35、図37に示すように、歯車部162は、回転ローラ161の他方の側面側(言い換えれば、巻取シャフト部163が設けられた面と反対側の面)に設けられている。よって、歯車部162と巻取シャフト部163は、操作用ローラ部が構成する壁により仕切られた状態となっている。
また、操作用回転ローラ161は、部分的に開口部より露出しており、この部分が操作部となる。そして、回転ローラは、一方の側面(具体的には、歯車部の側面)に設けられた回転軸の他端164aおよび他方の側面(具体的には、巻取シャフトの側面)に設けられた回転軸の一端164bを備えている。
【0097】
さらに、ハウジング150内には、回転ローラ161をハウジングの開口部方向に付勢する付勢手段(付勢部材)180を備えている。具体的には、付勢手段180により、ローラ161は、付勢されている。さらに、ハウジング150には、付勢部材180により付勢された回転ローラ161の歯車部162の突起部間に侵入可能なロック用リブ(図示せず)が設けられている。このため、回転ローラ161は、付勢部材180により付勢された状態では、図35に示す状態となり、ロック用リブが歯車部162の突起部と係合するため、回転不能となっている。そして、回転ローラ161をロック用リブと離間する方向に押すと、回転ローラの回転軸の一端164bおよび他端164aは、ハウジング150に設けられた軸受部194aおよび194b内を移動し回転可能となる。よって、この実施例の操作部110は、回転ローラ161を押圧しない状態での回転を規制しており、牽引ワイヤ巻取機構の回転を解除可能にロックするロック機構を有するものとなっている。
【0098】
さらに、この実施例の操作部では、上記の付勢手段180と上述した歯車部162により、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向への回転を規制する逆回転規制機構が構成されている。
操作部110内には、図34ないし図36に示すように、逆回転規制機構を備えている。この操作部110では、付勢部材180に逆回転規制機構が設けられており、付勢部材180は、逆回転規制部材でもある。逆回転規制機構は、逆回転規制部材(付勢部材でもある)180の先端部の上記操作用回転ローラ161の歯車部162と向かい合う部分に設けられ、歯車部と噛合可能な噛合部188と、弾性変形可能部186と、ハウジングへの装着部187を備えている。また、第1ハウジング150aは、内面に形成された第1の突出部(軸受部)159および第2の突出部179を備えている。第1の突出部159は、逆回転規制部材(付勢部材)180の弾性変形可能部186内に侵入するとともに、弾性変形可能部186の内面形状に対応した外面形状を有するものとなっている。具体的には、弾性変形可能部186の内面形状は、円弧状となっており、第1の突出部159は、その円弧形状に対応した円筒状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)180の装着部187は、第1ハウジング150aに形成された第1の突出部159と第2の突出部179間に装着可能な形状となっている。そして、逆回転規制部材(付勢部材)180は、その装着部187が、第1ハウジング150aの第1の突出部159と第2の突出部179間に装着されることにより、回動不能に装着されるとともに、弾性変形可能部186の弾性力により、操作用回転ローラ161を開口部158方向に付勢するものとなっている。また、逆回転規制部材(付勢部材)180の装着部187は、カラー部材112に設けられた円盤状の突出部113aにより、側面方向への移動が規制されている。
【0099】
そして、上述したように、ローラ161を押圧することにより、ローラは回転可能となる。しかし、図36の矢印方向(牽引ワイヤを巻き取る方向)への回転は可能であるが、逆方向にローラ161を回転させようとすると、歯車部162の1つの歯部と逆回転規制部材(付勢部材)180の噛合部188とが係合し、その回転を阻止する。これにより、牽引ワイヤ巻取機能の牽引ワイヤの巻取方向と逆方向へのローラの回転を規制する。また、この操作部110では、図37に示すように、逆回転規制部材(付勢部材)180は、第1ハウジング150aの内面と回転ローラ161の側面間に配置されている。このため、逆回転規制部材(付勢部材)180の横方向(水平方向)への動きが、第1ハウジング150aの内面と回転ローラ161の側面により規制されるものとなっている。
【0100】
歯車部162は、回転ローラより小径のものとなっており、歯車部162の外径としては、10〜60mm程度が好適であり、特に、15〜50mmが好ましく、歯数としては、4〜200程度が好適であり、特に、4〜70が好ましい。
そして、操作部110が備えるカラー部材112は、一端部がピン113により軸支されているとともに、他端側のカラー部114は、巻取シャフト部163を収納するとともに、巻取シャフト部163との間に環状空間を形成する。この環状空間はあまり大きな空間ではなく、巻き取ったワイヤの外面間により狭小な環状空間を形成するものである。
【0101】
次に、本発明の生体器官病変部改善用器具100の使用方法について図面を用いて説明する。
まず、図22および図24に示す生体器官病変部改善用器具の先端部材の開口部125aに、ガイドワイヤの後端部を挿入し、開口123よりガイドワイヤ(図示せず)を導出する。次に、生体内に挿入されているガイディングカテーテル(図示せず)内に生体器官病変部改善用器具100を挿入し、ガイドワイヤに沿わせて生体器官病変部改善用器具100を押し進め、目的とする狭窄部内にステント収納チューブ体105のステント収納部位を位置させる。
次に、操作部110の操作用回転ローラ161を押圧した後、ローラを図36の矢印方向に回転させる。これにより、牽引ワイヤ106は、巻取シャフト163の外周面に巻き取られるとともに、ステント収納チューブ体105およびスライドチューブ107は、軸方向基端側に移動する。この時、ステント103はその後端面が先端側チューブ102のステント基端部係止部122の先端面に当接し係止されるので、ステント収納チューブ体105の移動に伴って、ステント収納チューブ体105の先端開口より放出される。この放出により、ステント103は、図32に示すように、自己拡張し狭窄部を拡張するとともに狭窄部内に留置される。
【符号の説明】
【0102】
1 生体器官病変部改善用器具
2 ステント収納チューブ体(シース)
3 ステント
4 内側チューブ体(内管)
22 ステントの収納部位
23 溝
100 生体器官病変部改善用器具
103 ステント
105 ステント収納チューブ体
151 チューブ体本体部
151b 溝
【特許請求の範囲】
【請求項1】
略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを露出可能である生体器官病変部改善用器具であって、前記ステント収納チューブ体の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、前記ステントの外面と前記ステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられており、かつ前記溝は、該ステント収納チューブ体の軸方向に延びる複数の溝であることを特徴とする生体器官病変部改善用器具。
【請求項2】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に平行に延びる複数の溝である請求項1に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項3】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して緩やかな螺旋状となっている複数の溝である請求項1に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項4】
前記溝は、実質的に角部を持たないものとなっている請求項1ないし3のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項5】
略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを露出可能である生体器官病変部改善用器具であって、前記ステントは、先端部を除き前記ステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものであり、かつ、前記ステント収納チューブ体の先端部よりステントの収納部位の基端部までの内面には、前記ステントの外面と前記ステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられていることを特徴とする生体器官病変部改善用器具。
【請求項6】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に平行に延びる複数の溝である請求項5に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項7】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して緩やかな螺旋状となっている複数の溝である請求項5に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項8】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に直交もしくは所定角度斜めに延びる複数の環状溝である請求項5に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項9】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して螺旋状に延びる1または複数の溝である請求項5に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項10】
前記ステント収納チューブ体は、最先端部に溝非形成部を備えている請求項5ないし9のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項11】
前記溝は、実質的に角部を持たないものとなっている請求項5ないし10のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項12】
前記内側チューブ体は、前記ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、基端側チューブと、前記先端側チューブの基端部および前記基端側チューブの先端部が固定されるとともに前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口を備える固定チューブとを備え、前記ステント収納チューブ体は、前記先端側チューブの先端側を被包しかつ前記先端側チューブの基端方向に摺動可能であり、前記生体器官病変部改善用器具は、前記ステント収納チューブ体に一端部が固定され、前記基端側チューブ内を延びるとともに該基端側チューブの基端側に牽引することにより、前記ステント収納チューブ体を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤとを備えるものである請求項1ないし11のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項13】
前記先端側チューブは、該先端側チューブの先端側に位置し、前記ステント収納チューブ体内に収納された前記ステントの基端と当接し、該ステントの基端側への移動を規制するステント基端部係止部を備えている請求項12に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項14】
前記生体器官病変部改善用器具は、前記ステント収納チューブ体の基端に近接するように配置されたスライドチューブを備え、かつ、前記固定チューブは、前記スライドチューブを基端側より収納可能もしくは前記スライドチューブが基端側より被嵌可能であり、前記スライドチューブは、前記牽引ワイヤの牽引により前記ステント収納チューブ体とともに基端側に移動可能であり、かつ、前記ステント収納チューブ体に固定されていないものとなっている請求項12または13に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項15】
前記基端側チューブの基端部には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納チューブ体を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する請求項12ないし14のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項1】
略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを露出可能である生体器官病変部改善用器具であって、前記ステント収納チューブ体の少なくとも先端よりステントの収納部位の基端部までの内面には、前記ステントの外面と前記ステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられており、かつ前記溝は、該ステント収納チューブ体の軸方向に延びる複数の溝であることを特徴とする生体器官病変部改善用器具。
【請求項2】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に平行に延びる複数の溝である請求項1に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項3】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して緩やかな螺旋状となっている複数の溝である請求項1に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項4】
前記溝は、実質的に角部を持たないものとなっている請求項1ないし3のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項5】
略円筒形状に形成され、生体内挿入時には中心軸方向に圧縮され、生体内留置時には外方に拡張して圧縮前の形状に復元可能なステントと、ガイドワイヤルーメンを有する内側チューブ体と、前記ステントを先端部内に収納したステント収納チューブ体とを備え、かつ前記ステントが前記内側チューブ体の先端部を覆うように配置され、かつ前記ステント収納チューブ体を前記内側チューブ体に対して基端側に移動させることにより、前記ステントを露出可能である生体器官病変部改善用器具であって、前記ステントは、先端部を除き前記ステントの先端方向を向く屈曲部および自由端を持たないものであり、かつ、前記ステント収納チューブ体の先端部よりステントの収納部位の基端部までの内面には、前記ステントの外面と前記ステント収納チューブ体の内面間の接触面積を減少させるための溝が設けられていることを特徴とする生体器官病変部改善用器具。
【請求項6】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に平行に延びる複数の溝である請求項5に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項7】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して緩やかな螺旋状となっている複数の溝である請求項5に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項8】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に直交もしくは所定角度斜めに延びる複数の環状溝である請求項5に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項9】
前記溝は、前記ステント収納チューブ体の軸方向に対して螺旋状に延びる1または複数の溝である請求項5に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項10】
前記ステント収納チューブ体は、最先端部に溝非形成部を備えている請求項5ないし9のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項11】
前記溝は、実質的に角部を持たないものとなっている請求項5ないし10のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項12】
前記内側チューブ体は、前記ガイドワイヤルーメンを有する先端側チューブと、基端側チューブと、前記先端側チューブの基端部および前記基端側チューブの先端部が固定されるとともに前記ガイドワイヤルーメンと連通する開口を備える固定チューブとを備え、前記ステント収納チューブ体は、前記先端側チューブの先端側を被包しかつ前記先端側チューブの基端方向に摺動可能であり、前記生体器官病変部改善用器具は、前記ステント収納チューブ体に一端部が固定され、前記基端側チューブ内を延びるとともに該基端側チューブの基端側に牽引することにより、前記ステント収納チューブ体を基端側に移動させるための少なくとも一つの牽引ワイヤとを備えるものである請求項1ないし11のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項13】
前記先端側チューブは、該先端側チューブの先端側に位置し、前記ステント収納チューブ体内に収納された前記ステントの基端と当接し、該ステントの基端側への移動を規制するステント基端部係止部を備えている請求項12に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項14】
前記生体器官病変部改善用器具は、前記ステント収納チューブ体の基端に近接するように配置されたスライドチューブを備え、かつ、前記固定チューブは、前記スライドチューブを基端側より収納可能もしくは前記スライドチューブが基端側より被嵌可能であり、前記スライドチューブは、前記牽引ワイヤの牽引により前記ステント収納チューブ体とともに基端側に移動可能であり、かつ、前記ステント収納チューブ体に固定されていないものとなっている請求項12または13に記載の生体器官病変部改善用器具。
【請求項15】
前記基端側チューブの基端部には、前記牽引ワイヤを巻き取り、前記ステント収納チューブ体を基端側に移動させるための牽引ワイヤ巻取機構を備える操作部を有する請求項12ないし14のいずれかに記載の生体器官病変部改善用器具。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
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【図28】
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【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【公開番号】特開2012−55484(P2012−55484A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201243(P2010−201243)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(000109543)テルモ株式会社 (2,232)
【Fターム(参考)】
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