説明

生体情報測定装置

【課題】血管石灰化の発症者に対する使用に適した生体情報測定装置を提供すること。
【解決手段】血圧脈波計測部20は、カフ圧の加圧中に血圧測定を行うと共に、カフ圧の減圧中にも血圧測定を行う。さらに、血圧脈波計測部20は、加圧中の最低血圧の測定値SBPと、減圧中の最低血圧の測定値SBPとの差dを判定する。判定の結果、差dがある場合には、表示部70は、血管石灰化の可能性がある旨の情報として、血管石灰化警告と石灰化指数CSとを表示する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体情報測定装置に関し、特に、オシロメトリック式の血圧測定が可能な生体情報測定装置に関する。
【背景技術】
【0002】
オシロメトリック式の血圧測定は、一般的な血圧測定手法の一つであり、被検者の血圧検査のみならず、被検者の動脈硬化度の検査等にも利用されている。この血圧測定手法では、被検者の腕或いは脚に巻回したカフにより血管を圧迫し、そのときに検出される脈波振幅及びカフ圧(カフ内部の気圧)に基づいて被検者の血圧を判定する。
【0003】
カフ減圧中(すなわちカフからの排気中)の脈波振幅及びカフ圧に基づいて血圧判定を行う血圧計(例えば特許文献1参照)では、脈波の振幅が増大する過程で最高血圧が判定され、脈波の振幅が減少する過程で最低血圧が判定される。また、カフ加圧中(すなわちカフへの給気中)の脈波振幅及びカフ圧に基づいて血圧判定を行う血圧計(例えば特許文献2参照)では、脈波の振幅が増大する過程で最低血圧が判定され、脈波の振幅が減少する過程で最高血圧が判定される。
【特許文献1】特開2006−75437号公報
【特許文献2】特開2001−204698号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、被検者によっては、測定部位の血管が例えば石灰化により硬化した状態となっている場合もある。この場合、血管の弾性変形が生じにくくなる。よって、オシロメトリック式の血圧測定では、血管の狭窄や閉塞を生じさせるのに必要なカフ圧が高くなるため、測定血圧の値が実際の血圧の値よりも高くなる傾向がある。
【0005】
しかしながら、オシロメトリック式の血圧測定を行う上記従来の血圧計においては、血管石灰化の有無を判定することができないため、血管石灰化の発症の有無に応じて適切な測定結果を出力することができず、したがって、血管石灰化の発症者に対する使用に適していないという問題がある。
【0006】
本発明は、かかる点に鑑みてなされたもので、血管石灰化の発症者に対する使用に適した生体情報測定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の生体情報測定装置は、カフ圧の加圧中及び減圧中に血圧を測定する測定部と、前記カフ圧の加圧中及び減圧中に測定した前記血圧の値の差を判定する判定部と、判定の結果、前記差がある場合に、血管石灰化の可能性がある旨の情報を表示する表示部とを有する構成を採る。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、血管石灰化の発症者に対する使用に適した生体情報測定結果を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。
【0010】
図1は、本発明の一実施の形態に係る血圧脈波検査装置の構成を示す図である。
【0011】
図1の血圧脈波検査装置は、装置本体において、演算制御部10、血圧脈波計測部20、心音計測部30、心電図計測部40、脈波計測部50、表示部70、記録部75、保存部80、音声発生部85及び操作部90を備えると共に、装置本体に、左腕用のカフ21a、右腕用のカフ21b、左脚用のカフ21c及び右脚用のカフ21dをそれぞれホース22a、22b、22c、22dを介して接続し、心音マイク31を接続し、四肢用の心電電極部41a及び胸部用の心電電極部41bを接続し、脈波センサ51a、51bを接続してなるものである。
【0012】
演算制御部10は、演算処理装置と記憶装置とからなるものであり、記憶装置に予め記憶された制御プログラムを、操作部90からの入力信号に従って演算処理装置で実行することにより、以下説明する装置全体の動作を制御し、血圧脈波検査装置の各機能を実現させる。
【0013】
演算制御部10は、各種生体情報の計測を行う血圧脈波計測部20、心音計測部30、心電図計測部40及び脈波計測部50(以下「生体情報計測部」と総称する)の計測実行タイミングを制御し、各生体情報計測部から生体情報の計測結果を示すディジタルデータ(生体データ)を受信する。演算制御部10は、受信した生体データを保存部80に読み出し可能なデータとして保存する。
【0014】
また、演算制御部10は、受信した生体データを、文字や波形等の視覚的な情報として表示部70又は記録部75に表示又は印刷させるために表示用データ又は印刷用データに変換し、表示用データ又は印刷用データを表示部70又は記録部75に出力する。なお、変換される生体データは、保存部80から読み出されたものであってもよい。
【0015】
また、演算制御部10は、血圧脈波計測部20から、後述する血管石灰化判定データを、血圧データと共に受信した場合は、受信した血管石灰化判定データを、文字等の視覚的な情報として表示部70又は記録部75に表示又は印刷させるための表示用データ又は印刷用データに変換し、表示用データ又は印刷用データを表示部70又は記録部75に出力する。
【0016】
また、演算制御部10は、受信し又は読み出した生体データに基づいて、又はこの生体データに対して特徴点検出等の波形分析を行い、波形分析の結果に基づいて、動脈硬化を評価するための指数(例えば、ABI(Ankle Brachial Index)、PWV(Pulse Wave Velocity)、CAVI(Cardio-Ankle Vascular Index)等)を算出する。演算制御部10は、波形分析結果や動脈硬化評価指数を、生体データと同様に表示用データ又は印刷用データに変換し、表示用データ又は印刷用データを表示部70又は記録部75に出力する。
【0017】
また、演算制御部10は、ユーザによる操作を支援するための音声ガイダンスが必要なときには、ガイダンス用データを音声発生部85に出力する。
【0018】
表示部70は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)等の表示装置であり、演算制御部10から入力された表示用データに従って、生体情報の測定結果、血管石灰化判定結果、波形分析結果及び動脈硬化評価指数を文字や波形等の視覚的な情報として画面に表示する。
【0019】
記録部75は、プリンタであり、演算制御部10から入力された印刷用データに従って、生体情報の測定結果、血管石灰化判定結果、波形分析結果及び動脈硬化評価指数を文字や波形等の視覚的な情報として用紙に印刷する。
【0020】
保存部80は、記憶装置であり、演算制御部10から入力される生体データの保持が可能である。
【0021】
音声発生部85は、スピーカであり、演算制御部10から入力されたガイダンス用データに従って、ガイダンス音声を出力する。
【0022】
操作部90は、キーボードやマウス、ボタン、タッチパネル等の入力装置であり、ユーザ(検査者)の操作に従って、計測動作や表示・印刷動作が実行されるよう入力信号を生成して演算制御部10に出力する。
【0023】
脈波計測部50は、増幅器、フィルタ及びA/D(アナログディジタル)変換器(いずれも図示せず)を有しており、被検者の例えば頸動脈部及び股動脈部にそれぞれ装着されたアモルファス式の脈波センサ51a、51bによる検出信号に対し、増幅、高域雑音除去及びA/D変換といった信号処理を施し、信号処理後のディジタルデータを脈波データとして演算制御部10に供給する。脈波計測部50による脈波の計測は、演算制御部10で大動脈PWVを求める場合に好適に用いられる。
【0024】
心電図計測部40は、増幅器、フィルタ及びA/D(アナログディジタル)変換器(いずれも図示せず)を有しており、被検者の四肢及び胸部にそれぞれ装着された心電電極部41a、41bによる検出信号に対し、増幅、高域雑音除去及びA/D変換といった信号処理を施し、信号処理後のディジタルデータを心電図データとして演算制御部10に供給する。
【0025】
心音計測部30は、増幅器、フィルタ及びA/D(アナログディジタル)変換器(いずれも図示せず)を有しており、被検者の例えば心尖部に装着された心音マイク31による検出信号に対し、増幅、高域雑音除去及びA/D変換といった信号処理を施し、信号処理後のディジタルデータを心音データとして演算制御部10に供給する。
【0026】
測定部及び判定部としての血圧脈波計測部20は、増幅器、フィルタ及びA/D(アナログディジタル)変換器(いずれも図示せず)を有しており、被検者の左腕、右腕、左脚及び右脚にそれぞれ装着されたカフ21a〜21dによる検出信号に対し、増幅、高域雑音除去及びA/D変換といった信号処理を施すことにより、カフ圧データを得る。血圧脈波計測部20は、ポンプ24a〜24dと、排気弁25a〜25dと、圧力センサ26a〜26dと、導管27a〜27dと、ポンプ24a〜24d及び排気弁25a〜25dの制御のプログラム並びに血圧判定処理のプログラムを実行する演算処理装置(図示せず)と、これらのプログラムを記憶する記憶装置(図示せず)とをさらに有しており、カフ圧データを得る際には、ポンプ24a〜24dと排気弁25a〜25dとを制御する。ここで、カフ21a〜21dによる検出信号とは、カフ21a〜21dの空気袋211a〜211dの内部の空気圧を示す信号であって、圧力センサ26a〜26dにより検出されたものである。血圧脈波計測部20は、脈波計測の場合には、例えば左腕又は右腕のカフ圧データを脈波データとして演算制御部10に供給し、血圧計測の場合には、四肢それぞれのカフ圧データに対して血圧判定を行い、その結果を血圧データとして演算制御部10に供給する。血圧脈波計測部20は、血圧判定を行う際に血管石灰化判定も行う。この判定により血管石灰化の発症が認められた場合、血圧脈波計測部20は、血管石灰化の程度を表す石灰化指数を算出し、これを示す血管石灰化判定データを血圧データと共に演算制御部10に供給する。血管石灰化判定については後でより具体的に説明する。
【0027】
ポンプ24aは、流体連通された導管27a及びホース22aを介してカフ21aの空気袋211aの内部への給気を、血圧脈波計測部20の制御に従って行うことにより、カフ圧(つまり、空気袋211aの内部の空気圧)を加圧する。ポンプ24b〜24dの構成はポンプ24aと同様である。
【0028】
排気弁25aは、例えば電磁式の弁であり、導管27aに設けられている。排気弁25aの開度は血圧脈波計測部20の制御に従って調整され、排気弁25aは、閉弁時には空気袋211a内の空気の排気を防止し、開弁時には空気袋211a内の空気を排気する。排気弁25b〜25dの構成は排気弁25aと同様である。
【0029】
以下、血管石灰化判定の動作について図2を参照して説明する。ここでは、カフ21cを被検者の左脚に巻着固定し、左脚について血圧判定及び血管石灰化判定を行う場合を例にとって説明する。
【0030】
まず、ステップS10では、血圧脈波計測部20で、一次血圧測定を実行する。一次血圧測定は、排気弁25cが完全に閉止されポンプ24cが作動されることにより空気袋211cへの給気が行われるとき、すなわちカフ加圧時に行われる。一次血圧測定においては、カフ加圧中に脈波の振幅が最大となる時のカフ21cのカフ圧が左脚の平均血圧の測定値MBPとして取得され、脈波の振幅が最大振幅まで増大する過程で急増した時のカフ21cのカフ圧が左脚の最低血圧の測定値SBPとして取得され、脈波の振幅が最大振幅から減少する過程で急減した時のカフ21cのカフ圧が左脚の最高血圧の測定値DBPとして取得される。カフ加圧は、カフ圧が予め設定された値まで上昇すると停止される。なお、カフ加圧の停止は、最高血圧の測定値の取得をトリガとして実行されてもよい。
【0031】
ステップS10での一次血圧測定終了後、ステップS20では、血圧脈波計測部20で、二次血圧測定を実行する。二次血圧測定は、排気弁25cを非全開状態に開く制御を行うことにより空気袋211cからの排気が行われるとき、すなわちカフ減圧時に行われる。二次血圧測定においては、カフ減圧中に脈波の振幅が最大となる時のカフ21cのカフ圧が左脚の平均血圧の測定値MBPとして取得され、脈波の振幅が最大振幅まで増大する過程で急増した時のカフ21cのカフ圧が左脚の最高血圧の測定値DBPとして取得され、脈波の振幅が最大振幅から減少する過程で急減した時のカフ21cのカフ圧が左脚の最低血圧の測定値SBPとして取得される。カフ減圧は、カフ圧が予め設定された値まで低下すると停止される。なお、カフ減圧の停止は、最低血圧の測定値の取得をトリガとして実行されてもよい。
【0032】
ここで、一次血圧測定(つまり、カフ加圧中の血圧測定)の結果の例を図3(b)及び図4(b)に、また、二次血圧測定(つまり、カフ減圧中の血圧測定)の結果の例を、図3(a)及び図4(a)に、それぞれ示す。これらの例に示すように、カフ加圧時とカフ減圧時とでは、脈波振幅の変動の態様が同一とならない。また、この非同一性は、血管の石灰化による硬化が進行するほど顕著となる。本発明者は、このようなカフ加圧時とカフ減圧時とにおける脈波振幅の変動態様の非同一性に着目した結果として、本願発明に至ったものである。図3及び図4に示す例を用いた血圧石灰化判定については後で詳述する。
【0033】
ステップS20での二次血圧測定終了後、ステップS30では、血圧脈波計測部20で、最低血圧の測定値SBP、SBPの差dを算出する。
【0034】
そして、ステップS40では、血圧脈波計測部20で、例えば算出した差dを所定値と比較することにより、血管石灰化の発症の可能性を判定する。算出した差dが所定値以上である場合、つまり最低血圧の測定値SBP、SBPに顕著な差がある場合は、被検者の左脚に血管石灰化が発症している可能性があると判定する。算出した差dが所定値未満である場合、つまり最低血圧の測定値SBP、SBPに顕著な差がない場合は、被検者の左脚に血管石灰化が発症している可能性はないと判定する。
【0035】
血管石灰化の可能性ありと判定された場合は、ステップS50に進み、血圧脈波計測部20で、測定値SBP、SBPの差dから石灰化指数CSを算出する。
【0036】
そして、ステップS60では、血圧脈波計測部20で、例えば測定値SBP、SBPとその差dとを所定の数式に代入することにより、最低血圧の判定値SBPを、測定値SBP、SBPの補正値として算出する。このようにして得られた最低血圧の判定値SBP、換言すれば補正された最低血圧の測定値は、血圧判定の結果として血圧データに示され、血圧脈波計測部20から演算制御部10に供給される。また、この血圧データと共に、石灰化指数CSを示す血管石灰化判定データも、血圧脈波計測部20から演算制御部10に供給される。
【0037】
そして、ステップS70では、演算制御部10で、血管石灰化判定データを表示用データに変換し、表示用データを表示部70に出力することにより、表示部70に、石灰化指数CSと、血管石灰化の可能性がある旨の血管石灰化警告とを、表示させる。
【0038】
血管石灰化の可能性なしと判定された場合は、ステップS80に進み、血圧脈波計測部20で、測定値SBP、SBPのいずれか一方又は測定値SBP、SBPの平均値を最低血圧の判定値SBPとする。このようにして得られた最低血圧の判定値SBPは、血圧判定の結果として血圧データに示され、血圧脈波計測部20から演算制御部10に供給される。ただし、血管石灰化判定データの供給は行われない。よって、石灰化指数や血管石灰化警告の表示も行われない。
【0039】
以上のようにして、血管石灰化判定が行われる。
【0040】
なお、上記の例では、最低血圧の測定値SBP、SBPの差を算出したが、その代わりに、平均血圧の測定値MBP、MBPの差を算出し、その算出結果に基づいて血管石灰化判定を行ってもよく、最高血圧の測定値DBP、DBPの差を算出し、その算出結果に基づいて血管石灰化判定を行ってもよい。或いは、最低血圧の測定値SBP、SBPの差と平均血圧の測定値MBP、MBPの差と最高血圧の測定値DBP、DBPの差とのうち複数のものを算出し、これらの算出結果に基づいて血管石灰化判定を行ってもよい。最低血圧や平均血圧、最高血圧と異なる血圧の測定値を使用することも可能である。
【0041】
また、上記の例では、左脚について血管石灰化判定を行ったが、右脚、左腕、右腕についても同様に血管石灰化判定を行うことができる。したがって、血管石灰化判定は、一箇所についてのみ行うことも、複数箇所について行うこともできる。
【0042】
また、上記の例では、血管石灰化の可能性がある旨の情報として、血管石灰化警告及び石灰化指数の両方を表示させたが、血管石灰化警告及び石灰化指数のうち一方のみを表示させてもよい。
【0043】
また、上記の例では、血管石灰化の可能性の判定結果に応じて血管石灰化警告及び石灰化指数の表示/非表示を切り替える一方で、血圧の判定結果は常に非表示であるが、血圧の判定結果を常に表示させるようにしてもよい。
【0044】
また、上記の例では、血管石灰化の可能性なしと判定された場合には、血管石灰化判定結果について何ら表示させていないが、血管石灰化の可能性がない旨の情報を表示させてもよい。
【0045】
また、上記の例では、血管石灰化警告及び石灰化指数を表示させたが、血管石灰化警告及び石灰化指数を印刷させるようにしてもよい。
【0046】
次いで、図3及び図4に示す血圧測定結果の例を比較して、血管石灰化判定について説明する。
【0047】
図3は、ある被検者についての血圧測定結果を、図4は、別の被検者についての血圧測定結果を、それぞれ示した図である。図3(a)及び図4(a)は、カフ減圧中の測定結果を示すものであり、したがって血圧の測定値は矢印P、Pの方向に変動する。図3(b)及び図4(b)は、カフ加圧中の測定結果を示すものであり、したがって血圧の測定値は矢印P、Pの方向に変動する。
【0048】
まず、図3を参照すると、図3(a)におけるA部分は、カフ減圧中に脈波の振幅が最大となる部分を示し、図3(b)におけるB部分は、カフ加圧中に脈波の振幅が最大となる部分を示す。A部分の振幅に対応する血圧測定値(つまり減圧中の平均血圧の測定値)と、B部分の振幅に対応する血圧測定値(つまり加圧中の平均血圧の測定値)との差dABは約20mmHgであり、比較的大きく、顕著なものとなっている。
【0049】
また、図3(a)におけるC部分は、カフ減圧中に脈波の振幅が最大振幅の約50%となる部分を示し、図3(b)におけるD部分は、カフ加圧中に脈波の振幅が最大振幅の約50%となる部分を示す。C部分の振幅に対応する血圧測定値(つまり減圧中の最低血圧の測定値)と、D部分の振幅に対応する血圧測定値(つまり加圧中の最低血圧の測定値)との差dCDは約20mmHgであり、上記の差dABと同様に比較的大きく、顕著なものとなっている。
【0050】
一方、図4を参照すると、図4(a)におけるE部分は、カフ減圧中に脈波の振幅が最大となる部分を示し、図4(b)におけるF部分は、カフ加圧中に脈波の振幅が最大となる部分を示す。E部分の振幅に対応する血圧測定値(つまり減圧中の平均血圧の測定値)と、F部分の振幅に対応する血圧測定値(つまり加圧中の平均血圧の測定値)との差dEFは約5mmHgであり、比較的小さいものとなっている。
【0051】
また、図4(a)におけるG部分は、カフ減圧中に脈波の振幅が最大振幅の約50%となる部分を示し、図4(b)におけるH部分は、カフ加圧中に脈波の振幅が最大振幅の約50%となる部分を示す。G部分の振幅に対応する血圧測定値(つまり減圧中の最低血圧の測定値)と、H部分の振幅に対応する血圧測定値(つまり加圧中の最低血圧の測定値)との差dGHは約10mmHgであり、上記の差dEFと同様に比較的小さいものとなっている。
【0052】
したがって、図3に示された血圧測定結果に対して血管石灰化判定を行うと血管石灰化の可能性ありと判定することができる一方、図4に示された血圧測定結果に対して血管石灰化判定を行うと血管石灰化の可能性なしと判定することができる。
【0053】
このように、本実施の形態によれば、血圧の判定の際に血管石灰化の判定も行い、血管石灰化の可能性があると判定した場合には、それに応じた内容を表示するため、血管石灰化の発症者に対しても血圧脈波検査装置を好適に使用することができる。
【0054】
以上、本発明の実施の形態について説明した。なお、以上の説明は本発明の好適な実施の形態の例証であり、本発明の範囲はこれに限定されない。つまり、上記装置の構成についての説明は一例であり、本発明の範囲においてこれらの例に対する様々な変更や追加が可能であることは明らかである。例えば、本発明は、血圧脈波検査装置だけでなく電子血圧計等、様々な生体情報測定装置に適用して実施することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】本発明の一実施の形態に係る血圧脈波検査装置の構成を示す図
【図2】本発明の一実施の形態に係る血管石灰化判定動作を説明するためのフロー図
【図3】血圧測定結果の一例を示す図
【図4】血圧測定結果の他の例を示す図
【符号の説明】
【0056】
10 演算制御部
20 血圧脈波計測部
21a、21b、21c、21d カフ
24a、24b、24c、24d ポンプ
25a、25b、25c、25d 排気弁
26a、26b、26c、26d 圧力センサ
70 表示部
211a、211b、211c、211d 空気袋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カフ圧の加圧中及び減圧中に血圧を測定する測定部と、
前記カフ圧の加圧中及び減圧中に測定した前記血圧の値の差を判定する判定部と、
判定の結果、前記差がある場合に、血管石灰化の可能性がある旨の情報を表示する表示部と、
を有することを特徴とする生体情報測定装置。
【請求項2】
前記測定部は、平均血圧、最低血圧又は最高血圧を測定し、
前記判定部は、測定した前記平均血圧、前記最低血圧又は前記最高血圧の値の差を判定する、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項3】
前記判定部は、判定した前記差に基づいて血管石灰化の程度を判定し、
前記表示部は、判定した前記血管石灰化の程度を示す情報を表示する、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報測定装置。
【請求項4】
前記判定部は、判定した前記差に基づいて、測定した前記血圧の値を補正し、
前記表示部は、補正した前記血圧の値を表示する、
ことを特徴とする請求項1記載の生体情報測定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−233003(P2009−233003A)
【公開日】平成21年10月15日(2009.10.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−81216(P2008−81216)
【出願日】平成20年3月26日(2008.3.26)
【出願人】(000112602)フクダ電子株式会社 (196)
【Fターム(参考)】