説明

生体成分測定装置及び生体成分測定方法

【課題】小型で簡単に高精度の測定ができ、患者に苦痛を与えるおそれが少ない生体成分測定装置及び生体成分測定方法を提供する。
【解決手段】生体成分測定装置は、生体表面に接触する検査ヘッド11と、検査ヘッド11から出力される信号に基づいて生体成分を測定する制御部21とを具備する。検査ヘッド11は、生体表面を挟んで隆起させる第1の挟み部13a及び第2の挟み部13bと、制御部21により制御されて第1の挟み部13a及び第2の挟み部13b間の距離を変化させる距離調整部14と、第1の挟み部13a及び第2の挟み部13b間に挟まれて隆起した部分の生体表面に光を投射する光投射部16a,16b,17と、隆起した部分の生体表面を透過した光の光量に応じた信号を出力する受光部18a,18b,19a,19bとを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体成分測定装置及び生体成分測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
血圧、血中酸素飽和度及び血糖値などの情報は患者の状態を知る上で重要であり、投薬のタイミングを判断する材料にもなる。一般的に、血中酸素飽和度や血糖値などの生体情報は生体から採取した血液により取得しており、病院に入院している患者では血液採取用の針(採血針)が常時人体に挿入されて定期的に血液の採取が行われている。また、通院治療を行っている糖尿病患者の場合も、1日に3〜4回程度血液を採取して検査する必要がある。
【0003】
しかし、針を使った血液採取には精神的及び肉体的な苦痛を伴う。このため、非侵襲で生体成分を測定する方法が提案されている。例えば、近赤外領域の波長の光を指等に照射し、透過光の強度から血糖値を測定する方法が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−147706号公報
【特許文献2】WO2006/040841号
【特許文献3】特開2004−290226号公報
【特許文献4】特開平11−178799号公報
【特許文献5】特開平8−189891号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
小型で簡単に高精度の測定ができ、患者に苦痛を与えるおそれが少ない生体成分測定装置及び生体成分測定方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
開示の技術の一観点によれば、生体表面に接触する検査ヘッドと、前記検査ヘッドから出力される信号に基づいて生体成分を測定する制御部とを具備し、前記検査ヘッドは、前記生体表面を挟んで隆起させる第1の挟み部及び第2の挟み部と、前記制御部により制御されて前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を変化させる距離調整部と、前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間に挟まれて隆起した部分の生体表面に光を投射する光投射部と、前記隆起した部分の生体表面を透過した光の光量に応じた信号を出力する受光部とを有する生体成分測定装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
上記一観点に係る生体成分測定装置は、動脈の脈動によるノイズ成分を低減でき、生体成分を精度よく測定することができる。また、装置の小型化が容易であり、通院患者が日常生活下で使用することが可能である。更に、採血針を人体に挿入する必要がなく、且つ血液の流れを止めることなく生体成分を測定することができるので、患者に苦痛を与えるおそれが少ない。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】図1は、第1の実施形態に係る生体成分測定装置の構成を例示した図である。
【図2】図2は、第1の実施形態に係る生体成分測定装置を使用した生体成分測定を説明する説明図である。
【図3】図3は、検査ヘッドの上に指を置いた状態を示す上面図である。
【図4】図4は、皮膚の構造を示す模式断面図である。
【図5】図5は、第1の実施形態に係る生体成分測定方法を説明するフローチャートである。
【図6】図6は、第2の実施形態に係る生体成分測定装置の検査ヘッドを説明する図である。
【図7】図7は、第2の実施形態に係る生体成分測定装置の検査ヘッドの端面により被検者の指が押圧されて皮膚が隆起した状態を表した図である。
【図8】図8は、第3の実施形態に係る生体成分測定装置の構成を例示した図である。
【図9】図9は、第3の実施形態に係る生体成分測定装置の検査ヘッドにより被検者の指を挟んだ状態を表した図である。
【図10】図10は、第3の実施形態に係る生体成分測定装置の動作を説明するフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、実施形態について説明する前に、実施形態の理解を容易にするための予備的事項について説明する。
【0010】
従来から、波長が異なる2以上の近赤外光を人体(例えば指)に照射し、人体を透過した光を2箇所で検出して透過光量の比から血液中のグリコース濃度を算出する方法が知られている。しかし、この方法では、皮膚表面のしみやメラミン若しくは皮下脂肪や骨による光の吸収や散乱、及び筋肉の動きや動脈の脈動等が外乱要因となり、SN(信号/ノイズ)比が低い。
【0011】
そこで、生体表面をポンプで吸引して膨らんだ部分に近赤外光を透過させ、透過光量から生体成分(グリコース)を測定することが提案されている。近赤外光によるグリコースの検出感度は近赤外光が通過する部分の血液量に関係するが、この方法では吸引して膨らんだ部分に血液が溜まるため血液量が多くなり、ノイズ成分が相対的に減少する。
【0012】
しかし、上述した吸引ポンプを使用する方法では、ポンプの振動ノイズが加わるため、SN比の低減が十分ではない。また、吸引ポンプのために装置が大掛かりになり、病院内等での測定には使用可能であるものの、通院患者が日常生活下で使用することは難しい。
【0013】
更に、上述した方法は、生体表面を吸引してうっ血状態としているため、血管に不安がある患者に使用することは好ましくない。例えば糖尿病患者は血管障害(血管がぼろぼろになる合併症、具体的には糖尿病性網膜症、糖尿病性腎症、糖尿病性壊疽等)を併発している可能性があり、血管に負荷をかけることはできるだけ避けなければならない。
【0014】
そこで、小型で高精度の測定ができ、血管に与える負荷が少ない生体成分測定装置が望まれる。以下、実施形態について説明する。
【0015】
(第1の実施形態)
図1は、第1の実施形態に係る生体成分測定装置の構成を例示した図である。
【0016】
この図1のように、本実施形態に係る生体成分測定装置は、生体の一部(例えば指又は腕など)を接触させる検査ヘッド11と、検査ヘッド11と接続された制御部21とを有している。検査ヘッド11の中央部には略長方形の溝12が形成されており、この溝12を挟む位置に棒状の押圧部材13a,13bがその長手方向を検査ヘッド11の表面に平行にして配置されている。押圧部材13a,13bは、それらの長手方向の両端部に配置された圧電素子14により支持されている。なお、押圧部材13a,13bは第1の挟み部及び第2の挟み部の一例であり、圧電素子14は距離調整部の一例である。
【0017】
これらの圧電素子14に制御部21から電圧を印加すると、圧電素子14が伸縮して押圧部材13a,13bが検査ヘッド11の表面に平行な方向に移動し、押圧部材13a,13b間の間隔が変化する。この押圧部材13a,13b間に、生体の一部を配置して血液中の生体成分を測定する。本実施形態では、押圧部材13a,13b間に指を配置するものとする。
【0018】
押圧部材13aが配置された側には溝12に連絡する溝15aが形成されており、この溝15a内に光源16a,16b及び投射レンズ17が配置されている。また、押圧部材13bが配置された側にも溝12に連絡する溝15bが形成されており、この溝15b内には受光レンズ18a,18b及び受光素子19a,19bが配置されている。
【0019】
光源16a,16bは、制御部21から供給される電力により点灯して相互に異なる波長の光を発生する。光源16a,16bで発生した光は混合器により混合されて投射レンズ17に伝達され、投射レンズ17により溝12の反対側に配置された受光レンズ18a,18b向けて投射される。
【0020】
なお、図1では光源の数を2個としているが、光源の数は3個又はそれ以上でもよい。また、相互に異なる2以上の波長の光を発生する光源の場合は、光源の数は1個でもよい。光源には、半導体レーザ又は発光ダイオード等を使用することができる。本実施形態では、光源16aは主に波長が940nmの光を発生し、光源16bは主に波長が1130nmの光を発生するものとする。
【0021】
受光レンズ18a,18bは溝12の辺に沿って相互に離隔した位置に配置され、投射レンズ17により投射された光を受光する。受光レンズ18a,18bで受光した光は受光素子19a,19bに伝達され、受光素子19a,19bからは受光量に応じた電気信号が出力される。
【0022】
制御部21は、受光素子19a,19bから出力される信号を処理して、生体の血液中に含まれる成分、例えばグリコース等を測定する。
【0023】
図2は上述の生体成分測定装置を使用した生体成分測定を説明する説明図、図3は検査ヘッド11の上に指を置いた状態を示す上面図である。また、図4は皮膚の構造を示す模式断面図である。以下、これらの図を参照して、本実施形態に係る生体成分測定装置を使用した生体成分測定を説明する。
【0024】
まず、図2(a),図3のように、検査ヘッド11の溝12の上に被検者の指を軽くおく。このとき、圧電素子14には電圧が印加されてなく、押圧部材13a,13bは十分に離れている。この状態では、投射レンズ17により投射された光は皮膚を透過することなく受光レンズ18a,18bに到達する。このときの光量(受光素子19a,19bの出力)は、初期光量として制御部21内に記憶される。なお、被検者が検査ヘッド11に指をおく前に初期光量を取得するようにしてもよい。
【0025】
次に、制御部21から圧電素子14に低電圧が印加されると、図2(b)のように、圧電素子14が伸長して押圧部材13a,13bが相互に近づく方向に移動する。これにより、押圧部材13a,13b間に指が挟まれて、皮膚が若干隆起する。この場合、投射レンズ17により投射された光は表皮を通過する。
【0026】
図4のように、表皮にはしみ(図4中に網掛けした部分)やメラミンが存在することがあり、投射レンズ17により投射された光はこれらのしみやメラミンにより吸収又は散乱される。また、表皮には血管がないため、表皮のみを透過した光からは血液中の生体成分(グリコース等)を検出することはできない。
【0027】
次に、制御部21から圧電素子14に中電圧が印加されると、図2(c)のように、押圧部材13a,13b間の間隔が縮まって皮膚が更に隆起する。これにより、投射レンズ17により投射された光は真皮を通過するようになる。真皮には静脈があるため、静脈を流れる血液中の生体成分により光が吸収又は散乱される。従って、真皮を通過した光から血液中の生体成分を検出することが可能になる。
【0028】
次いで、圧電素子14に高電圧が印加されると、図2(d)のように、押圧部材13a,13b間の間隔が狭くなって皮膚が更に隆起する。これにより、投射レンズ17により投射された光は表皮及び真皮だけでなく、皮下組織を通るようになる。この場合、皮下組織には動脈があるため、受光素子19a,19bの出力は動脈の脈動に応じて変化する。
【0029】
血液中の生体成分を測定する際に、動脈の脈動はノイズ成分となる。動脈の脈動による受光量の変化(受光素子19a,19bの出力の脈動)が小さいときは測定精度への影響は少ないが、受光量の変化がある程度以上になると生体成分の測定精度が著しく低下する。このため、本実施形態では、動脈の脈動による受光量の変化を検出し、受光量の変化(脈動成分)がある程度以上大きい場合は圧電素子14に印加する電圧を減少して、光が皮下組織を通過しないようにする。
【0030】
図5は、本実施形態に係る生体成分測定方法を説明するフローチャートである。このフローチャートは、制御部21の動作を表している。なお、ここでは、圧電素子14に印加する電圧として最も低い電圧(第1の電圧)から最も高い電圧(第10の電圧)まで10段階の電圧が設定され、制御部21は圧電素子14にこれらの電圧を段階的に印加するものとする。
【0031】
まず、ステップS11において、制御部21は初期光量を取得する。すなわち、制御部21は、光源16a,16bに電力を供給して点灯させる。そして、制御部21は、このとき受光素子19a,19bから出力される信号を初期光量として記憶する。前述したように、初期光量の取得は、被検者が検査ヘッド11の上に指を軽くおいたとき、又は被検者が検査ヘッド11の上に指をおく前に行う。
【0032】
次に、ステップS12において、制御部21は圧電素子14に第1の電圧を印加して押圧部材13a,13b間の距離を1段階縮小する。これにより、被検者の指の表面が若干隆起する。
【0033】
次に、ステップS13において、制御部21は圧電素子14に印加した電圧が上限値(第10の電圧)か否かを判定する。ここで、上限値であると判定した場合(YESの場合)はステップS17に移行し、上限値ではないと判定した場合(NOの場合)はステップS14に移行する。
【0034】
ステップS14において、制御部21は、受光素子19a,19bの出力(受光量)を取得する。この場合、制御部21は受光素子19a,19bの出力を一定時間監視する。そして、ステップS15において、制御部21は受光素子19a,19bの出力に大きな脈動があるか否かを判定する。受光素子19a,19bの出力に大きな脈動があると判定した場合(YESの場合)、すなわち光が皮下組織を通過していると考えられる場合は、ステップS15からステップS17に移行する。一方、脈動がない又は脈動が十分に小さいと判定した場合(NOの場合)、すなわち光が皮下組織を透過していないと考えられる場合は、ステップS15からステップS16に移行する。
【0035】
ステップS16において、制御部21は受光素子19a,19bの出力(受光量)が十分か否かを判定する。十分であると判定した場合はステップS12に移行し圧電素子14に印加する電圧を1段階高くして押圧部材13a,13b間の距離を1段階縮小した後、上述の処理を繰り返す。一方、ステップS16において、光量が十分でないと判定した場合はステップS17に移行する。
【0036】
ステップS17において、制御部21は圧電素子14に印加する電圧を1段階低くして、押圧部材13a,13b間の距離を1段階広くする。そして、ステップS18において、受光素子19a,19bから受光量を取得し、ステップS19において生体成分を算出する。生体成分の算出にはステップS11で取得した初期光量とステップS18で取得した光量とを使用する。これらの光量から生体成分を算出する方法は公知(例えば特許文献2参照)であるので、ここではその説明を省略する。
【0037】
上述したように、本実施形態では、光が皮下組織を通過するまで押圧部材13a,13b間の距離を狭くする。そして、受光素子19a,19bの出力の脈動により光が皮下組織を通過したことを検出すると、押圧部材13a,13b間の間隔を若干広くして光が皮下組織を通過しないようにする。その後、受光素子19a,19bの受光量を取得し、このときの受光量と初期光量とから生体成分を算出する。これにより、動脈の脈動によるノイズ成分を減少でき、真皮内の静脈を流れる血液中の生体成分を精度よく測定することができる。
【0038】
また、本実施形態に係る生体成分測定装置は、ノイズの原因となる吸引ポンプが不要であるため、測定精度が高い。更に、吸引ポンプが不要であるため、装置の小型化が容易であり、通院患者が日常生活下で使用することが可能である。
【0039】
更にまた、本実施形態では、生体表面を押圧部材13a,13bで挟んで隆起させているものの、血液の流れを止めてはいないので、血管障害を有する患者であっても安全に使用することができる。
【0040】
なお、上述の実施形態では、ステップS13でYESと判定した場合及びステップS16でNOと判定した場合も、ステップS17に移行して押圧部材13a,13b間の距離を1段階広くし、ステップS18,S19で生体成分を測定している。しかし、ステップS13でYESと判定した場合及びステップS16でNOと判定した場合は、測定精度が十分でない可能性があるので、エラーを表示するようにしてもよい。エラーが表示された場合は、測定部位を変更して再度測定を行えばよい。
【0041】
また、上述の実施形態では押圧部材13a,13bを圧電素子14により駆動しているが、その他の方法で押圧部材13a,13bを駆動するようにしてもよい。例えば、モータとギアとを組み合わせて押圧部材13a,13bを駆動するようにしてもよい。
【0042】
(第2の実施形態)
図6は第2の実施形態に係る生体成分測定装置の検査ヘッドを説明する図である。なお、本実施形態が第1の実施形態と異なる点は、検査ヘッドの形状が異なることにあり、その他の構成は基本的に第1の実施形態と同様であるので、本実施形態において第1の実施形態と重複する部分の説明は省略する。
【0043】
本実施形態に係る生体成分測定装置では、検査ヘッド31が“C”字状の形状を有し、この検査ヘッド31を被検者の指にはめて使用する。検査ヘッド31の相互に対向する2つの端面31a,31bのうちの一方の面側には光源及び投射レンズを備えた光投射部33aが配置され、他方の面には受光レンズ及び受光素子を備えた受光部33bが配置されている。
【0044】
検査ヘッド31の内周側には圧電素子32が配置されている。この圧電素子32に制御部(図1参照)から電圧を印加すると、検査ヘッド31の径が縮まって、図7のように検査ヘッド31の端面31a,31bにより被検者の指が押圧され、皮膚が隆起する。制御部は、この皮膚が隆起した部分に光投射部33aから出射された光を照射し、受光部33bの出力から生体成分を算出する。制御部の動作は基本的に第1の実施形態と同様(図5参照)であるので、ここでは説明を省略する。
【0045】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を奏する。
【0046】
(第3の実施形態)
図8は、第3の実施形態に係る生体成分測定装置の構成を例示した図である。
【0047】
この図8のように、本実施形態に係る生体成分測定装置は、検査ヘッド41と、検査ヘッド41に接続された制御部51とを有している。
【0048】
検査ヘッド41は、第1のアーム42aと、第2のアーム42bと、角度調整部(接続部の一例)43とを有している。角度調整部43は、アーム42a,42bの端部に配置されてアーム42a,42bを回転可能に支持するとともに、制御部51からの信号によりアーム42a,42b間の角度を調整する。
【0049】
この検査ヘッド41は、図9に例示するように、アーム42a,42bの先端(角度調整部43と反対側の端部)間に測定部位を挟んで使用する。図9では検査ヘッド41により被検者の指の皮膚を挟んでいるが、指以外の部分を測定部位としてもよい。
【0050】
第1のアーム42aの先端には光投射部44aとアクチュエータ45aとが配置されている。光投射部44aは、制御部51から供給される電力により相互に異なる波長の光を発生する複数の光源(図示せず)と、これらの光源から出射された光を投射する投射レンズ(図示せず)とを有する。
【0051】
また、第2のアーム42bの先端には、受光部44bとアクチュエータ45bとが配置されている。受光部44bには、相互に離隔して配置された複数の受光レンズ(図示せず)と、それらの受光レンズで受光した光が個別に伝達される複数の受光素子(図示せず)とを有している。これらの受光素子の出力は制御部51に伝達される。
【0052】
第1のアーム42aのアクチュエータ45a及び第2のアーム42bのアクチュエータ45bは、制御部51からの信号に応じて光投射部44aの光軸と受光部44bの光軸とが一致するように、それぞれ光投射部44a及び受光部44bの角度を変化させる。アクチュエータ45a,45bとして、例えば圧電素子を使用することができる。
【0053】
また、角度調整部43には、制御部51からの信号に応じて第1のアーム42aと第2のアーム42bとのなす角度を変化させるアクチュエータが配置されている。このアクチュエータとして、例えばギアードモータを使用することができる。
【0054】
図10は、本実施形態に係る生体成分測定装置の動作を説明するフローチャートである。
【0055】
まず、ステップS21において、制御部51は初期光量を取得する。すなわち、制御部51は、光投射部42aに電力を供給して光を発生させ、受光部42bから出力される信号を初期光量として記憶する。このとき、制御部51は角度調整部43を制御してアーム42a,42b間の角度を所定の角度にするとともに、アクチュエータ45a,45bを制御して光投射部44a及び受光部45bの光軸を一致させる。初期光量の取得は、検査ヘッド41を被検者の皮膚に軽く接触させたとき又は検査ヘッド41を被検者に接触させる前に行う。
【0056】
次に、ステップS22において、制御部41は角度調整部43を駆動してアーム42a,42b間の角度を所定量だけ小さくするとともに、アクチュエータ45a,45bを駆動して光投射部44a及び受光部44bの光軸を一致させる。アーム42a,42b間の角度を小さくすることにより、アーム42a,42bの先端部に挟まれた生体表面が隆起する。
【0057】
次に、ステップS23において、制御部41はアーム42a,42b間の角度が予め設定された最小値か否かを判定する。ここで、最小値であると判定した場合(YESの場合)はステップS27に移行し、最小値でないと判定した場合(NOの場合)はステップS24に移行する。
【0058】
ステップS24において、制御部51は、受光部45bの出力(受光量)を取得する。この場合、制御部51は受光部45bの出力を一定時間監視する。そして、ステップS25において、制御部51は受光部45bの出力に大きな脈動があるか否かを判定する。受光部45bの出力に大きな脈動があると判定した場合(YESの場合)は、光が皮下組織を通過していると考えられる。この場合は、ステップS25からステップS27に移行する。一方、脈動がない又は脈動が十分に小さいと判定した場合(NOの場合)は、ステップS25からステップS26に移行する。
【0059】
ステップS26において、制御部51は受光部の出力(受光量)が十分か否かを判定する。十分であると判定した場合はステップS22に移行し、制御部51は角度調整部43を駆動してアーム42a,42b間の角度を更に所定量だけ縮小した後、上記の処理を繰り返す。一方、ステップS26において、光量が十分でないと判定した場合はステップS27に移行する。
【0060】
ステップS27において、制御部51は角度調整部43を駆動してアーム42a,42b間の角度を所定量だけ広げるとともに、アクチュエータ46a,46bを駆動して光投射部44a及び受光部44bの光軸を一致させる。そして、ステップS28において、受光部44bから受光量を取得し、ステップS29において生体成分を算出する。
【0061】
本実施形態においても、第1の実施形態と同様の効果を得ることができる。また、本実施形態では、アーム42a,42b間の角度を変更する度にアクチュエータ45a,45bを駆動して光投射部44a及び受光部44bの光軸を一致させている。これにより、測定部位に拘わらず血液中の生体成分を常に良好な精度で測定することができる。
【0062】
なお、第1及び第2の実施形態に係る非侵襲生体成分測定装置においても、光投射部及び受光部の光軸を一致させるように光投射部及び受光部の少なくとも一方を移動させるアクチュエータを設けてもよい。
【0063】
以上の実施形態に関し、更に以下の付記を開示する。
【0064】
(付記1)生体表面に接触する検査ヘッドと、
前記検査ヘッドから出力される信号に基づいて生体成分を測定する制御部とを具備し、
前記検査ヘッドは、
前記生体表面を挟んで隆起させる第1の挟み部及び第2の挟み部と、
前記制御部により制御されて前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を変化させる距離調整部と、
前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間に挟まれて隆起した部分の生体表面に光を投射する光投射部と、
前記隆起した部分の生体表面を透過した光の光量に応じた信号を出力する受光部とを有することを特徴とする生体成分測定装置。
【0065】
(付記2)前記制御部は、前記距離調整部を制御して前記受光部から出力される信号に含まれる脈動成分の大きさが設定値に到達するまで前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を小さくし、前記脈動成分の大きさが前記設定値に到達すると所定量だけ前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を広げ前記受光部の出力を取得し、このときの受光部の出力を用いて生体成分を算出することを特徴とする付記1に記載の生体成分測定装置。
【0066】
(付記3)前記制御部は、前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間に前記生体表面を挟む前の前記受光部の出力を記憶し、前記生体成分を算出する際にこの記憶した受光部の出力も用いることを特徴とする付記2に記載の生体成分測定装置。
【0067】
(付記4)前記検査ヘッドには溝が設けられており、
前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部は前記溝を挟んで配置されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【0068】
(付記5)前記検査ヘッドは“C”字状に形成されており、前記距離調整部は前記検査ヘッドの周面に配置された圧電素子であることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【0069】
(付記6)前記検査ヘッドは、第1のアーム及び第2のアームと、前記第1のアーム及び第2のアームの端部に配置されて前記第1のアーム及び第2のアームを回転可能に接続する接続部とを有し、
前記光投射部は前記第1のアームの前記接続部と反対側の端部に配置され、前記受光部は前記第2のアームの前記接続部と反対側の端部に配置されていることを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【0070】
(付記7)前記検査ヘッドには更に、前記光投射部の光軸と前記受光部の光軸とが一致するように前記光投射部及び前記受光部の少なくとも一方を移動させるアクチュエータを有することを特徴とする付記1乃至3のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【0071】
(付記8)生体表面の一部を第1の挟み部及び第2の挟み部間に挟んで隆起させ、
前記生体表面の隆起した部分に光を投射しつつ、前記生体表面の隆起した部分を透過した光を受光部で受光し、
前記受光部の出力に含まれる脈動成分が設定値に到達するまで前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を小さくし、
前記脈動成分が前記設定値に到達すると前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を所定量だけ広くして前記受光部の出力を取得し、
前記受光部の出力から生体成分を算出することを特徴とする生体成分測定方法。
【0072】
(付記9)前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間に前記生体表面を挟む前の前記受光部の出力を記憶し、この記憶した受光部の出力と前記隆起した生体表面を透過した光を受光したときの前記受光部の出力とを用いて前記生体成分の算出を行うことを特徴とする付記8に記載の生体成分測定装置。
【符号の説明】
【0073】
11,31,41…検査ヘッド、12…溝、13a,13b…押圧部材、14,32…圧電素子、15a,15b…溝、16a,16b…光源、17…投射レンズ、18a,18b…受光レンズ、19a,19b…受光素子、21,51…制御部、31a,31b…端面、33a,44a…光投射部、33b,44b…受光部、42a,42b…アーム、43…角度調整部、45a,45b…アクチュエータ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体表面に接触する検査ヘッドと、
前記検査ヘッドから出力される信号に基づいて生体成分を測定する制御部とを具備し、
前記検査ヘッドは、
前記生体表面を挟んで隆起させる第1の挟み部及び第2の挟み部と、
前記制御部により制御されて前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を変化させる距離調整部と、
前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間に挟まれて隆起した部分の生体表面に光を投射する光投射部と、
前記隆起した部分の生体表面を透過した光の光量に応じた信号を出力する受光部とを有することを特徴とする生体成分測定装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記距離調整部を制御して前記受光部から出力される信号に含まれる脈動成分の大きさが設定値に到達するまで前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を小さくし、前記脈動成分の大きさが前記設定値に到達すると所定量だけ前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を広げ前記受光部の出力を取得し、このときの受光部の出力を用いて生体成分を算出することを特徴とする請求項1に記載の生体成分測定装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間に前記生体表面を挟む前の前記受光部の出力を記憶し、前記生体成分を算出する際にこの記憶した受光部の出力も用いることを特徴とする請求項2に記載の生体成分測定装置。
【請求項4】
前記検査ヘッドには溝が設けられており、
前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部は前記溝を挟んで配置されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の生体成分測定装置。
【請求項5】
生体表面の一部を第1の挟み部及び第2の挟み部間に挟んで隆起させ、
前記生体表面の隆起した部分に光を投射しつつ、前記生体表面の隆起した部分を透過した光を受光部で受光し、
前記受光部の出力に含まれる脈動成分が設定値に到達するまで前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を小さくし、
前記脈動成分が前記設定値に到達すると前記第1の挟み部及び前記第2の挟み部間の距離を所定量だけ広くして前記受光部の出力を取得し、
前記受光部の出力から生体成分を算出することを特徴とする生体成分測定方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2012−105809(P2012−105809A)
【公開日】平成24年6月7日(2012.6.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−256769(P2010−256769)
【出願日】平成22年11月17日(2010.11.17)
【出願人】(000005223)富士通株式会社 (25,993)
【Fターム(参考)】