説明

生体界面への活性物質の送達のイオントフォレーシス装置及び方法

イオントフォレーシス装置は、電位を提供するように動作可能な作用側電極要素、電解質組成物を含む電解質貯留槽及びゲルマトリクスと、当該ゲルマトリクス中に分配された第一の正荷電活性物質とを含む内部活性物質貯留槽、上記電解質貯留槽と上記内部活性物質貯留槽との間に配置される内部イオン選択膜、並びに生体界面に対向する外表面を有する最外部イオン選択膜を備え、上記ゲルマトリクスは正味負電荷を有する親水性ポリカルボキシル化ポリマーを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は一般的に、イオントフォレーシスの分野に、特に起電力及び/又は電流の影響下での生体界面への活性物質、例えば治療薬又は薬剤の送達に関する。
【0002】
[関連出願の相互参照]
本出願は、米国特許仮出願第60/722,757号(2005年9月30日提出)の米国特許法第119条(e)項下での利益を主張する。
【背景技術】
【0003】
イオントフォレーシスは、活性物質、例えばイオン性薬剤又は他の治療薬を生体界面、例えば皮膚又は粘膜に運ぶために起電力及び/又は電流を用いる。
【0004】
イオントフォレーシス装置は典型的には、電源、例えば化学電池の反対極又は端子に各々接続される作用側電極構造体及び対向電極構造体を包含する。各電極構造体は、典型的には、起電力及び/又は電流を印加するためのそれぞれの電極要素を包含する。このような電極要素はしばしば、犠牲要素又は化合物、例えば銀又は塩化銀を含む。
【0005】
活性物質は陽イオン又は陰イオンのいずれかであってもよく、電源は、活性物質の極性に基づいて適切な電圧極性を印加するように構成され得る。イオントフォレーシスは、有益には、活性物質の送達速度を増強又は制御するために用いられ得る。例えば米国特許第5,395,310号で考察されているように、活性物質は、貯留槽、例えばキャビティ中に保存されるか、或いは多孔性構造又はゲル中に保存され得る。
【0006】
イオントフォレーシス装置のさらなる開発に際して、イオン選択膜は、米国特許第5,395,310号で考察されているように、活性物質貯留槽と生体界面との間の極性選択的障壁として役立つように配置され得る。典型的には、一の特定の型のイオン(即ち荷電活性物質)に関してのみ透過性である膜は、皮膚又は粘膜からの逆荷電イオンの逆流を防止する。層中の膜とイオントフォレーシスとの組合せは活性物質の効率的な制御送達を生じ、電極系の選択における柔軟性を可能にするが、これらの膜からの送達は困難であり得る。生物学的活性物質、例えば薬剤又はワクチンは乾燥形態で膜上に堆積されなければならないため、その上に吸収される薬剤の量は投薬量要件を満たすのに不十分であり得る。
【0007】
ゲルマトリクスに生物学的活性物質を分散させることで物質の安定性及び装荷される物質の量を増強し得る。当該技術分野で用いられるゲルマトリクスのうち、ヒドロゲルは、イオントフォレーシス中の水和用のリザーバとして役立ち得る有意量の水を固有に含有するため、特に選択される。しかしながらヒドロゲルの薬剤の装荷及び放出特質は、最適化薬剤送達のためにさらなる研究が必要である領域として残されている。
【0008】
生物学的活性物質の有効且つ制御された送達は、イオントフォレーシス装置の商業的受入れを査定する場合の一重要因子であり、他の因子としては、製造コスト、貯蔵中の保存寿命又は安定性、生物学的能力、及び/又は処分問題が挙げられる。1つ又は複数のこれらの因子に取り組むイオントフォレーシス装置が望ましい。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
一実施の形態において、改良された装荷及び放出特質を有し得る生体界面、例えば皮膚又は粘膜への活性物質の送達のためのイオントフォレーシス装置が提供される。この装置は、電位を提供するように動作可能な作用側電極要素と、電解質組成物を含む電解質貯留槽と、ゲルマトリクス及び当該ゲルマトリクス中に分配された第一の正荷電活性物質とを含む内部活性物質貯留槽を包含し、前記ゲルマトリクスは正味負電荷を有する親水性ポリカルボキシル化ポリマーを含む。任意的に、内部イオン選択膜は、上記電解質貯留槽と上記内部活性物質貯留槽との間に配置され、最外部イオン選択膜は生体界面に対する外部表面を有する。
【0010】
特に、陽イオン性活性物質と結合するポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクスは、それにより装荷能力を増強する。陽子を内部活性物質貯留槽に移動させる電気化学的に誘導されたpHシフトのため、負荷電ポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクスは中和され、そして陽イオン性活性物質がゲルマトリクスから解離する。一実施形態では、ゲルマトリクスはカルボポール(商標)を含む。
【0011】
他の実施の形態では、イオントフォレーシスによる薬剤の経皮投与のための製品であって、電位を提供するように動作可能な作用側電極要素、電解質組成物を含む電解質貯留槽及びゲルマトリクスと、当該ゲルマトリクス中に分配された第一の正荷電活性物質とを含む内部活性物質貯留槽を包含し、前記ゲルマトリクスは正味負電荷を有する親水性ポリカルボキシル化ポリマーを有するイオントフォレーシス装置並びに内部活性物質貯留槽中に装荷される1つ又は複数の活性物質を含む少なくとも1つの投薬量形態を包含する製品が記載される。
【0012】
さらなる実施の形態では、イオントフォレーシスによる活性物質の経皮投与のための方法であって、対象の生体界面上にイオントフォレーシス装置の作用側電極構造体及び対向電極構造体を配置するステップであって、前記作用側電極構造体は、電位を提供するように動作可能な作用側電極要素、電解質組成物を含む電解質貯留槽、及び、ゲルマトリクスと、当該ゲルマトリクス中に分配された第一の正荷電活性物質とを含む内部活性物質貯留槽を包含し、前記ゲルマトリクスが正味負電荷を有する親水性ポリカルボキシル化ポリマーを有するステップと、限定された時間に渡って、前記ゲルマトリクスから前記活性物質を放出し、対象の前記生体界面への前記活性物質を輸送し、対象において治療的有効量の前記正荷電活性物質を投与するのに十分な量の電流を印加するステップとを包含するイオントフォレーシスによる活性物質の経皮投与のための方法が記載される。
【0013】
添付の図面中では、同一参照番号は類似の要素又は作用を確認する。添付の図中の要素のサイズ及び相対位置は、必ずしも一定の比率で描かれていない。例えば種々の要素及び角度の形状は一定の比率で描かれていないし、これらの要素のいくつかは、添付の図面を見やすくするために随意に拡大され、配置される。さらに、図示されるような要素の特定形状は、特定要素の実際の形状に関する任意の情報を伝えるように意図されず、専ら添付の図面中での認識を容易にするために選択されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
下記において、或る種の特定の詳細は、種々の開示実施形態の十分な理解を提供するために説明される。しかしながら、実施形態は1つ又は複数のこれらの特定詳細なしに、或いは他の方法、構成成分、材料等を用いて実行され得ると当業者は認識する。その他の場合、制御装置に関連した既知の構造物、例えば電圧及び/又は電流調整器(これらに限定されない)は、当該実施形態の不必要に曖昧な記述を避けるために詳細に示されていないし記載されてもいない。
【0015】
状況がそうでない場合を必要としない限り、以下の明細書及び添付の特許請求の範囲全体を通して、「含む(comprise)」という語及びその変形、例えば「含む(comprises)」及び「含む(comprising)」は、開かれた包括的意味で、すなわち「包含するが、限定されない」と解釈されるべきである。
【0016】
本明細書全体を通して、「一実施形態」又は「1つの実施形態」という言及は、実施形態に関連して記載される特定の特徴、構造又は特質が少なくとも1つの実施形態に包含されるということを意味する。したがって本明細書全体を通して種々の箇所における「一実施形態における」又は「1つの実施形態における」という語句の出現は、必ずしもすべてが同一実施形態を指すわけではない。さらに、特定の特徴、構造物又は特質は、1つ又は複数の実施形態において任意の好適な様式で組合せられ得る。
【0017】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、「膜」という用語は、透過性である場合も、透過性でない場合もある層、障壁、又は物質を意味する。別記しない限り、膜は、固体、液体又はゲルの形態をとり得るし、そして異なる格子又は架橋構造を有しても、有しなくてもよい。
【0018】
本明細書中及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、「イオン選択膜」という用語は、イオンに対して実質的に選択性であり、或る種のイオンを通すが、他のイオンの通過を遮断する膜を意味する。イオン選択膜は、例えば電荷選択膜の形態をとり得るか、又は半透性膜の形態をとり得る。
【0019】
本明細書中並びに添付の特許請求の範囲で用いる場合、「電荷選択膜」という用語は、主にイオンにより保有される極性又は電荷に基づいて、イオンを実質的に通過及び/又は実質的に遮断する膜を意味する。電荷選択膜は典型的にはイオン交換膜を指し、そしてこれらの用語は、本明細書中で並びに添付の特許請求の範囲において互換的に用いられる。電荷選択膜又はイオン交換膜は、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜及び/又は両極性膜の形態をとり得る。陽イオン交換膜は、陽イオンの通過のみを実質的に可能にし、そして陰イオンを実質的に遮断する。市販の陽イオン交換膜の例としては、NEOSEPTA、CM−1、CM−2、CMX、CMS及びCMB(株式会社トクヤマ)の呼称で入手可能なものが挙げられる。逆に陰イオン交換膜は、陰イオンの通過のみを実質的に可能にし、そして陽イオンを実質的に遮断する。市販の陰イオン交換膜の例としては、NEOSEPTA、AM−1、AM−3、AMX、AHA、ACH及びACS(同じく株式会社トクヤマ)の呼称で入手可能なものが挙げられる。
【0020】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、「両極性膜」という用語は、2つの異なる電荷又は極性に対して選択的である膜を意味する。別記しない限り、両極性膜は、一体膜構造又は多重膜構造の形態をとり得る。一体膜構造は、陽イオン交換物質又は基を含む第一の部分、並びに陰イオン交換物質又は基を含む第一の部分と向き合った第二の部分を包含し得る。多重膜構造(例えば二重皮膜)は、陰イオン交換膜に付着又は結合される陽イオン交換膜により形成され得る。陽イオン交換膜及び陰イオン交換膜は最初に異なる構造物として出発し、その結果生じる両極性膜の構造中でそれらの弁別性を保持し得るか、又は保持し得ない。
【0021】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、「半透性膜」という用語は、イオンのサイズ又は分子量に基づいて実質的に選択的である膜を意味する。したがって半透性膜は、第一の分子量又はサイズのイオンを実質的に通す一方で、第一の分子量又はサイズより大きい第二の分子量又はサイズのイオンの通過を実質的に遮断する。
【0022】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、「多孔性膜」という用語は、問題のイオンに関して実質的に選択的ではない膜を意味する。例えば多孔性膜は、極性に基づいて実質的に選択的でなく、そして対象の要素又は化合物の分子量又はサイズに基づいて実質的に選択的でないものである。
【0023】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、「貯留槽」という用語は、液体状態、固体状態、気体状態、混合状態及び/又は遷移状態で、要素又は化合物を保持するための任意の形態のメカニズムを意味する。例えば別記しない限り、貯留槽は、構造物により形成される1つ又は複数のキャビティを含み得るし、そしてこのようなものが少なくとも一時的に要素又は化合物を保持し得る場合には、1つ又は複数のイオン交換膜、半透性膜、多孔性膜及び/又はゲルを含み得る。典型的には、貯留槽は、生体界面への起電力及び/又は電流によるこのような作用物質の放出の前に、生物学的活性物質を保持するのに役立つ。貯留槽は、電解質溶液も保持し得る。
【0024】
概して、イオントフォレーシス中は、荷電種又は非荷電種(活性物質を含む)は、透過性生体界面を通って下にある生物組織中に移動し得る。典型的には、イオントフォレーシス装置は、電気反発力及び電気浸透力の両方を生じる。荷電種に関しては、移動は主に、逆荷電活性電極と荷電種との間の電気反発により駆動される。電気反発力のほかに、液体(例えば溶媒)の電気浸透流は、荷電種の輸送にも関与し得る。或る種の実施形態では、電気浸透溶媒流は、荷電種の移動を増強し得る第二の力である。非荷電種又は中性種に関しては、移動は主に、溶媒の電気浸透流により駆動される。
【0025】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、「活性物質(active agent)」という用語は、任意の宿主、動物、脊椎動物又は無脊椎動物、例えば魚類、哺乳類、両生類、爬虫類、鳥類及びヒトからの生物学的応答を引き出す化合物、分子又は治療物質を指す。活性物質の例としては、治療用物質、薬学的物質、調合薬(例えば薬剤、治療用化合物、薬学的塩等)、非調合薬(例えば化粧用物質等)、ワクチン、免疫学的作用物質、局所麻酔薬又は全身麻酔薬又は鎮痛剤、抗原又はタンパク質又はペプチド、例えばインスリン、化学療法薬、抗腫瘍薬が挙げられる。
【0026】
いくつかの実施形態では、「活性物質」という用語はさらに、活性物質、並びにその薬理学的活性塩、薬学的に許容可能な塩、プロドラッグ、代謝産物、類縁体等を指す。いくつかのさらなる実施形態では、活性物質としては、少なくとも1つのイオン性、陽イオン性、イオン化可能及び/又は中性治療薬及び/又はそれらの薬学的に許容可能な塩が挙げられる。さらに他の実施形態では、活性物質は、正に荷電され、及び/又は水性媒質中で正電荷を生じ得る1つ又は複数の「陽イオン性活性物質」を含み得る。例えば多数の生物学的活性物質は、陽性イオンに容易に転化可能であるか又は水性媒質中で正荷電イオン及び対イオンに解離し得る官能基を有する。その他の活性物質は、分極されるか又は分極可能であり、即ち別の部分に比べてある部分で極性を示す。例えばアミン基を有する活性物質は、典型的には、適切なpHにおいてプロトン化アミンとも呼ばれる4級アンモニウム陽イオン(−NR)の形態を取る。以下に述べるように、大半の「陽イオン」タイプの鎮痛剤および麻酔薬を含む多くの活性物質はアミン基を有する。これらのアミン基はイオントフォレーシス装置においてプロトン化された形態で存在し得る。
【0027】
「活性物質」という用語は、電気浸透圧流により送達され得る電気的に中性な作用物質、分子又は化合物も指す。電気的に中性な作用物質は、典型的には、例えば電気泳動中の溶媒の流れにより運ばれる。したがって適切な活性物質の選択は、当業者の知識内である。
【0028】
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の活性物質は、鎮痛薬、麻酔薬、麻酔薬ワクチン、抗生剤、アジュバント、免疫学的アジュバント、免疫原、寛容原、アレルゲン、トル様受容体アゴニスト、トル様受容体アンタゴニスト、免疫アジュバント、免疫調節物質、免疫応答物質、免疫刺激物質、特異的免疫刺激物質、非特異的免疫刺激物質、及び免疫抑制物質、又はこれらの組合せから選択されてもよい。
【0029】
このような活性物質の非限定的な例としては、リドカイン、アルチカイン及び−カイン群の他のもの、モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニル、オキシコドン、ヒドロコドン、ブプレノルフィン、メタドン及び同様のオピオイドアゴニスト、コハク酸スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタンHCl、安息香酸リザトリプタン、リンゴ酸アルモトリプタン、コハク酸フロバトリプタン及び他の5−ヒドロキシトリプタミン1受容体サブタイプアゴニスト、レシキモド(resiquimod)、イミキモド(imiquidmod)並びに同様のTLR7及びTLR8のアゴニスト及びアンタゴニスト、ドンペリドン、塩酸グラニセトロン、オンダンセトロン及びこのような鎮吐剤、酒石酸ゾルピデム及び同様の睡眠剤、L−ドーパ及び他の抗パーキンソン病薬、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、クロザピン及びジプラシドン並びに他の精神安定剤、エクセナチド等の糖尿病薬、並びに肥満及び他の疾患の治療用のペプチド及びタンパク質が挙げられる。
【0030】
麻酔性活性物質又は鎮痛剤のさらなる非限定例としては、アンブカイン、アメトカイン、p−アミノ安息香酸イソブチル、アモラノン、アモキセカイン、アミロカイン、アプトカイン、アザカイン、ベンカイン、ベノキシネート、ベンゾカイン、N,N−ジメチルアラニルベンゾカイン、N,N−ジメチルグリシルベンゾカイン、グリシルベンゾカイン、β−アドレナリン受容体アンタゴニストベトキシカイン、ブメカイン、ブピバカイン(bupivicaine)、レボブピビカイン(levobupivicaine)、ブタカイン、ブタンベン、ブタニリカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、メタブトキシカイン、カルビゾカイン(carbizocaine)、カルチカイン、セントブクリジン、セパカイン(cepacaine)、セタカイン(cetacaine)、クロロプロカイン、コカエチレン、コカイン、プソイドコカイン、クロロメチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジクロニン、エコグニン(ecognine)、エコゴニジン(ecogonidine)、アミノ安息香酸エチル、エチドカイン、ユープロシン、フェナルコミン、フォモカイン、ヘプタカイン、ヘキサカイン、ヘキソカイン、ヘキシルカイン、ケトカイン、ロイシノカイン、レボキサドロール、リグノカイン、ロツカイン、マーカイン、メピバカイン、メタカイン、塩化メチル、ミルテカイン、ネパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセタザイン、パレントキシカイン(parenthoxycaine)、ペンタカイン、フェナシン、フェノール、ピペロカイン、ピリドカイン、ポリドカノール、ポリカイン、プリロカイン、プラモキシン、プロカイン(ノボカイン(登録商標))、ヒドロキシプロカイン、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プロポキシカイン、ピロカイン、カタカイン、リノカイン、リソカイン、ロドカイン、ロピバカイン、サリチルアルコール、テトラカイン、ヒドロキシテトラカイン、トリカイン(tolycaine)、トラペンカイン、トリカイン(tricaine)、トリメカイン、トロパコカイン、ゾラミン、これらの薬学的に許容可能な塩、及びこれらの混合物が挙げられる。
【0031】
好ましい実施形態では、本明細書中に記載される活性物質は正荷電されるか、又は水性媒質中で正電荷を形成し得る。これらの正荷電活性物質は、「陽イオン性活性物質」とも呼ばれる。多数の生物学的活性物質は、陽イオンに容易に変換可能であるか、又は水性媒質中で正荷電イオン及び対イオンに解離し得る官能基を有する。他の活性物質は、分極されるか又は分極可能な分子を含み、これは分子の別の部分に比べてある部分で極性を示す。したがって適切な活性物質の選択は当業者の知識内である。このような薬剤の非限定例としては、リドカイン(登録商標)、アルチカイン及びカイン群の他のもの、モルヒネ、ヒドロモルホン、フェンタニル、オキシコドン、ヒドロコドン、ブプレノルフィン、メタドン及び類似のオピオイドアゴニスト、コハク酸スマトリプタン、ゾルミトリプタン、ナラトリプタンHCl、安息香酸リザトリプタン、リンゴ酸アルモトリプタン、コハク酸フロバトリプタン、及び他の5−ヒドロキシトリプタミン1受容体サブタイプアゴニスト、レシキモド(resiquimod)、イミキモド(imiquidmod)並びに類似のTLR7及び8アゴニスト及びアンタゴニスト、ドンペリドン、塩酸グラニセトロン、オンダンセトロン及びこのような鎮嘔吐剤、酒石酸ゾルピデム及び類似の睡眠剤、L−ドーパ及び他の抗パーキンソン病薬、アリピプラゾール、オランザピン、クエチアピン、リスペリドン、クロザピン及びジプラシドン、並びに他の精神安定剤、糖尿病薬、例えばエクセナチド、並びに肥満及び他の疾患の治療のためのペプチド及びタンパク質が挙げられる。
【0032】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で用いる場合、「ゲルマトリクス」という用語は、貯留槽の型を意味し、本明細書中で定義される場合、これは、三次元構造、固体、半固体、架橋ゲル、非架橋ゲル中の液体のコロイド懸濁液、ゼリー様状態等の形態をとる。いくつかの実施形態では、ゲルマトリクスは、絡み合いポリマー又は高分子(例えば円柱状ミセル)の三次元構造から生じ得る。他の実施形態では、ゲルマトリクスは、ヒドロゲル、オルガノゲル等を包含し得る。ヒドロゲルは、例えばゲルの形態のそして実質的に水で構成される架橋親水性ポリマーの三次元構造を指す。ヒドロゲルは、正味正電荷又は負電荷を有し得るか、又は中性であり得る。
【0033】
一実施形態では、ゲルマトリクスは、正味負電荷を有する生体適合性、親水性ポリカルボキシル化ポリマーを含む。典型的には、ポリカルボキシル化ポリマーは、ポリマー主鎖上にカルボキシレート基を有する実質的に線状の一次ポリマー粒子(linear primary polymer particles)を含み、一次ポリマー粒子は架橋剤を介して化学結合され、そして相互連結される。「カルボキシレート基」とは、本明細書中で用いる場合、カルボン酸、エステル又はその塩形態を指す。線状一次ポリマーは一般に、以下の式で表わされる。
【化1】

(式中、nは少なくとも10の整数であり、R、R、R及びRは同一であるか又は異なり、そして独立して水素、アルキル、アルケニル、アリール、−COOR又はCHCOORであるが、但し、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは−COOR又はCHCOORであり、そしてRは水素、低級アルキル、アリール、アラルキル、アミノ(例えば一置換アミノ又は二置換アミノ)又は対イオンである)
【0034】
アルキルは、飽和、直鎖又は分枝鎖炭化水素鎖を指す。「低級アルキル」とは、C1−6炭化水素鎖を指す。アルキルの例としては、メチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル及びヘキシルが挙げられる。
【0035】
アルケニルは、少なくとも1つのオレフィン結合(二重結合)を有する炭化水素鎖を指す。アルケニルの例としては、エテニル、プロペニル、ブテニル等が挙げられる。
【0036】
アミノとは、−NR(ここで、R及びRは独立して水素又はアルキルである)のラジカルを指す。アミノの例としては、−NH、−N(CHCH、−NHCH等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0037】
アリールとは、芳香族環状炭化水素を指す。例示的アリールはフェニルである。
【0038】
アラルキルとは、少なくとも1つの水素が本明細書中で定義されるようなアリールで置換されるアルキルを指す。例示的アラルキルはベンジル(即ちフェニルメチル)である。
【0039】
対イオンとは、本明細書中で用いる場合、カルボキシレート基と塩を形成する正荷電イオンを指す。典型的には、対イオンは生理学的に許容可能なイオン、例えばNa、K、NH等である。
【0040】
本明細書中に記載されるポリマーは、複数の反復単位(モノマー)を含む。ポリカルボキシル化ポリマーを調製するための適切なモノマーとしては、典型的には、活性オレフィン結合を含有するものが挙げられる。例示的モノマーとしては、α,β−不飽和カルボン酸、例えばアクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、α−クロロ−アクリル酸、α−シアノアクリル酸、β−メチル−アクリル酸(クロトン酸)、α−フェニルアクリル酸、β−アクリルオキシプロピオン酸、ソルビン酸、α−クロロソルビン酸、アンゲリカ酸、桂皮酸、p−クロロ桂皮酸、β−スチリルアクリル酸(1−カルボキシ−4−フェニル−1,3−ブタジエン)、イタコン酸、シトラコン酸、メサコン酸、グルタコン酸、アコニチン酸、マレイン酸、フマル酸、トリカルボキシルエチレン等が挙げられるが、これらに限定されない。
【0041】
カルボキシレート基を有する適切な一次線状ポリマーの例としては、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、ポリ(マレイン酸)、ポリ(イタコン酸)及びポリ(クロトン酸)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0042】
本発明の開示の目的のために、ポリカルボキシル化ポリマーは、上記の式により表わされるホモポリマーの2つ以上の多い別個のブロックを有するブロックコポリマーでもあり得る。このようなコポリマーの例としては、ポリ(アクリル酸−コ−メチルメタクリレート)、ポリ(アクリル酸−コ−ブチルアクリレート)が挙げられる。
【0043】
或る種の実施形態では、ポリカルボキシル化ポリマーは、架橋剤の存在下で、本明細書中に記載される1つ又は複数のモノマーを用いて架橋プロセスにより製造される。「架橋剤」とは、本明細書中で用いる場合、化学結合を形成するか又はポリカルボキシル化ポリマーのモノマーと交差結合し得る多官能基を有する分子を指す。典型的には、架橋剤は少なくとも2つのオレフィン結合を有する。架橋剤の例としては、スクロースのアリルエーテル、ペンタエリトリトール、ポリアルケニルエーテル、ジビニルグリコール、ジビニルベンゼン、N,N−ジアリルアクリルアミド、3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン及び類似の作用物質が挙げられるが、これらに限定されない。
【0044】
典型的には、ポリカルボキシル化ポリマーの分子量は、少なくとも1000である。さらに典型的には、分子量は少なくとも5000である。さらにより典型的には、分子量は少なくとも10000である。
【0045】
一実施形態では、ゲルマトリクスは、正味負電荷を有するカルボマーを含み得る。カルボマーとは、ポリアルケニルエーテル又はジビニルグリコールと交差結合されるポリアクリル酸のファミリーを指す。カルボマーは典型的には、それらの元の容積の1000倍まで水中で膨潤して、ゲルを形成し得る。ポリマー主鎖上のカルボキシレート基は、カルボキシレート基のpKaを超えるpH環境に曝露されると脱プロトン化し、これが負電荷間に反発力を生じる。この反発力はさらに、ポリマーの膨潤に加わる。「負荷電カルボキシレート基」及び「脱プロトン化カルボキシレート基」は、本明細書中で互換的に用いられ、COO基を指す。
【0046】
カルボマーの適切な商用銘柄としては、カルボポール(商標)910、カルボポール(商標)934P、カルボポール(商標)940、カルボポール(商標)941、カルボポール(商標)971P、カルボポール(商標)974P、カルボポール(商標)980、カルボポール(商標)981、カルボポール(商標)1342が挙げられ、これらは既知の流動性改質剤及び皮膚科用賦形剤である。それらは、B F Goodrich Specialty Chemicals (Cleveland, Ohio)から入手可能である。付加的カルボマーとしては、レオジック252L及びレオジック250H(日本純薬株式会社)、並びにホスタセリンPN73(Hoechst UK)が挙げられる。
【0047】
ポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクス中の活性物質の放出及び装荷特質は、多数の因子、例えばゲルの架橋度、pH環境、負荷電カルボキシレート基の密度の関数であり得る。
【0048】
例えばカルボマーは典型的には、約3〜6.8の範囲のpKaを有する。さらに典型的には、カルボマーは、約5.5〜6.5の範囲のpKaを有する。pKaを上回るpH環境に曝露されると、カルボマーは、脱プロトン化カルボキシレート基のために負荷電ゲルを形成する。正荷電生物学的活性物質は、イオン相互作用によりカルボマーと結合し得る。典型的には、逆荷電種間の強い相互作用のため、負荷電ゲルマトリクスの装荷容量は、正荷電活性物質に関して最適化され得る。これはさらに、活性物質を安定化するために役立ち得る。局所pHが下がると、負荷電カルボキシレート基は中和され、活性物質がイオン相互作用の非存在下でゲルマトリクスから解離する。
【0049】
有益には、電場が印加されると、イオントフォレーシス装置は、電解質貯留槽から、正荷電活性物質を装荷されたゲルマトリクスの付近に、プロトンを移動させる。プロトンの存在は、ゲルマトリクスの局所pHを下げ、そして負荷電カルボキシレート基を中和して、それにより活性物質の解離(放出)を引き起こす。電気反発力及び/又は電気浸透力と組合せたこの電気的誘導性pHシフトの作用は、活性物質の移動及び放出を促進する。このメカニズムは、以下のイオントフォレーシス装置の説明に関連して、より詳細に記載される。
【0050】
活性物質は、米国特許第6,238,689号(この記載内容は参照によりその全体において本明細書中で援用される)に記載された方法に従ってゲルマトリクス中に組入れられ得る。要するに、カルボマーは、微細白色粉末として入手可能であり、これは、水中に分散されて低粘度の酸性コロイド懸濁液(1%分散液は約3のpHを有する)を形成する。塩基を用いたこれらの懸濁液の中和は、無色の半透明(clear translucent)ゲルの形成を生じる。例示的塩基としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム又は水酸化アンモニウム、低分子量アミン及びアルカノールアミンが挙げられるが、これらに限定されない。活性物質及びその塩は、pHが約3.5のカルボマーと安定な親水性複合体を形成することが可能で、約5.6の最適pHで安定化される。
【0051】
例えば活性物質/カルボマー複合体を調製するために、カルボマーは適切な溶媒、例えば水、アルコール又はグリセリン中に懸濁される。好ましくはカルボマーは、水、好ましくは脱イオン水と混合される。混合物は、例えば0.002〜0.2gのカルボマー/溶媒1ml、好ましくは0.02〜0.1gのカルボマー/溶媒1mlの範囲であり得る。混合物は、コロイド懸濁液が形成されるまで室温で十分に混合される。混合物は、羽根型インペラーを備える適切なミキサーを用いて撹拌され、500ミクロンの真鍮篩いを用いて撹拌機により作られる渦中に粉末が篩にかけられる。この技法は、粉末を十分に湿潤させて、湿潤及び分散が難しくなり得る粒子のクラスターを粉末が形成しないようにする。
【0052】
活性物質又はその塩は、任意の薬学的に許容可能な溶媒で希釈され得る。好ましい一実施形態では、溶媒はアルコール、例えばエタノールである。別の実施形態では、溶媒は水である。混合物は、例えば0.01〜10gの薬剤/溶媒1ml、好ましくは0.5〜5gの薬剤/溶媒1mlの範囲であり得る。次にこの溶液はカルボマー懸濁液に滴下されて、均一粘稠度のゲルが形成されるまで、継続的に混合される。好ましくは活性物質/カルボマー複合体は、1gの活性物質又はその塩を、0.1〜100gのカルボマーと、さらに好ましくは1〜50gのカルボマーと併合することにより作製される。懸濁液の漸次濃化は、カルボマーの中和が起こる場合に生じる。調製は、この時点では、わずかに白色の半透明ゲルという外観を取る。
【0053】
一実施形態では、活性物質を装荷したゲルマトリクスは、本明細書中に定義されるような内部活性物質貯留槽中にそのゲル形態で組入れられ得る。別の実施形態では、活性物質を装荷したゲルマトリクスは、乾燥され得る。一実施形態によれば、ゲルは真空乾燥される。例として、ゲルはガラス板上で広げられ、50℃で約24時間、真空下で乾燥される。代替的には、ゲルは凍結乾燥される。このような方法は、当該技術分野で既知である。乾燥粉末形態は保存され、内部活性物質貯留槽中に導入される直前に再構成され得る。
【0054】
本明細書中で提示される見出しは、便宜上に過ぎず、当該実施形態の範囲又は意味を説明するものではない。
【0055】
図1及び図2は、一例示的実施形態に従って、イオントフォレーシスにより、生体界面18(図2)、例えば皮膚又は粘膜の一部に作用側電極構造体12中に含有される活性物質を供給するように動作可能である電源16と電気的に結合されるそれぞれ作用側電極構造体12及び対向電極構造体14を含むイオントフォレーシス装置10を示す。
【0056】
例示的実施形態では、作用側電極構造体12は、作用側電極構造体12の内部20から外部22に、作用側電極要素24、電解質28を貯留する電解質貯留槽26、内部イオン選択膜30、任意の内部封止ライナー32、ゲルマトリクス33内の活性物質36を貯留する内部活性物質貯留槽34、付加的活性物質40を任意に貯蔵する任意の最外部イオン選択膜38、最外部イオン選択膜38の外表面44により担持される任意のさらなる活性物質42、及び外部リリースライナー46を含む。上記要素又は構造物の各々を、以下で詳細に考察する。
【0057】
作用側電極要素24は、電源16の第一の電極16aと接続され、そして作用側電極構造体12に配置されて、起電力又は電流を印加して、作用側電極構造体12の種々の他の構成成分を介して活性物質36、40、42を輸送する。輸送される活性物質が正荷電される場合、作用側電極要素は陽極である。
【0058】
作用側電極要素24は、種々の形態をとり得る。一実施形態では、この装置は、有益には、炭素ベースの作用側電極要素24を用い得る。このようなものは、例えば多重層、例えば炭素を含むポリマーマトリクス及び炭素繊維又は炭素繊維紙を含む導電性シートを含み、例えば同一出願人による係属中特願2004/317317号公報(2004年10月29日出願)に記載されている。炭素ベースの電極は、それら自体が電気化学反応を受けないか又はそれに関与しないため不活性電極である。したがって不活性電極は、腐蝕又は枯渇されることなく電流を分配し、水の電気分解により電流を伝導する、すなわち、水の酸化又は還元によりイオン(H及びOH)を発生する。不活性電極の付加的例としては、ステンレススチール(steal)、金、白金又は黒鉛が挙げられる。
【0059】
代替的には、犠牲導電性物質、例えば化学化合物又はアマルガムの活性電極も用いられ得る。犠牲電極は水の電気分解を引き起こさないが、それ自体は酸化又は還元される。典型的には、陽極に関しては、金属/金属塩が用いられ得る。このような場合、金属は金属イオンに酸化されて、これは次に不溶性塩として沈殿される。このような陽極の一例としては、Ag/AgCl電極が挙げられる。
【0060】
電解質貯留槽26は、種々の形態、例えば電解質28を保持し得る任意の構造をとり、いくつかの実施形態では、例えば電解質28がゲル、半固体又は固体形態である場合、電解質28自体でさえあり得る。例えば電解質貯留槽26は、特に電解質28が液体である場合、パウチ又はその他の容器、孔、キャビティ又は隙間を有する膜の形態をとり得る。
【0061】
一実施形態では、電解質28は、イオン性成分又はイオン化可能成分を水性媒質中に含み、これは、作用側電極要素に向けて又はそれから離れて電流を伝達し得る。適切な電解質としては、例えば塩の水溶液が挙げられる。好ましくは電解質28は、生理学的イオン、例えばナトリウム、カリウム、クロリド及びホスフェートの塩を含む。
【0062】
電位が印加されると、水は作用側及び対向電極構造体の両方で電解される。作用側電極構造体(即ち陽極)では、水は酸化される。その結果、酸素が水から除去される一方で、陽子(H)が産生される。一実施形態では、効率を増強し、及び/又は送達速度を増大するために、電解質28は、酸化防止剤をさらに含んで、酸素気泡の生成を阻害し得る。生物学的適合性酸化防止剤の例としては、アスコルビン酸(ビタミンC)、トコフェロール(ビタミンE)又はクエン酸ナトリウムが挙げられるが、これらに限定されない。
【0063】
上記のように、電解質28は、貯留槽26内に収容される水溶液の形態をとり得るか、若しくは相当量の水を保持し得るヒドロゲル又は親水性ポリマー中の分散液の形態であり得る。例えば適切な電解質は、0.5Mフマル酸二ナトリウム:0.5Mポリアクリル酸:0.15M酸化防止剤の溶液の形態をとり得る。
【0064】
内部イオン選択膜30は一般に、電解質28及び内部活性物質貯留槽34を分離するよう配置される。内部イオン選択膜30は、電荷選択膜の形態をとり得る。例えば活性物質36、40、42が陽イオン性活性物質を含むため、内部イオン選択膜30は、陰イオンを実質的に通し、そして陽イオンを実質的に遮断するように選択的である陰イオン交換膜の形態をとり得る。内部イオン選択膜30は、有益には、電解質28と内部活性物質貯留槽34との間の望ましくない要素又は化合物の移動を防止し得る。例えば内部イオン選択膜30は、電解質28からのナトリウム(Na)イオンの移動を防止又は阻害し、それによりイオントフォレーシス装置10の移動速度及び/又は生物学的適合性を増大し得る。
【0065】
内部イオン選択膜30はさらに陽子(H)の移動を阻害し得るが、少量の陽子は膜30を通って透過する。或る種の環境においては、電解質貯留槽26から内部活性物質貯留槽34への陽子(H)の移動は、潜在的不利益を引き起こし、例えば効率を低減し、移動速度を低減し得るし、及び/又は生体界面18に向けて陽子移動が継続する場合、生体界面18の潜在的刺激を引き起こし得る。しかしながら本発明の装置に関しては、陽子移動は実際、意外な利点を提供し、これを以下でさらに詳細に考察する。
【0066】
内部活性物質貯留槽34は一般に、内部イオン選択膜30と最外部イオン選択膜38との間に配置される。内部活性物質貯留槽34は、種々の形態、例えば活性物質36を一時的に保持し得る任意の構造をとり得る。例えば内部活性物質貯留槽34は、特に活性物質36が液体である場合、パウチ又はその他の容器、孔、キャビティ又は隙間を有する膜の形態をとり得る。
【0067】
内部活性物質貯留槽34はさらに、ゲルマトリクス33、例えばポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクスを含む。上記のように、ポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクスは、作用側電極構造体中に大用量の陽イオン性活性物質を装荷するために特に適している。さらに特定的には、ポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクスは適切なpH範囲で負電荷(COO)を担持し、したがってそれは強いイオン相互作用を介して陽イオン性活性物質と結合し得る。
【0068】
陽イオン性活性物質を放出するために、ゲルマトリクスを中和することができ、これが活性物質を解離させる。典型的には、中和は、内部活性物質貯留槽34中の酸性度が増大すると起きる。或る種の実施形態では、イオントフォレーシス装置の動作中、陽子は、作用側電極構造体、例えば不活性電極中の水の酸化の電気化学的生成物として産生される。その結果生じる陽子は、電流により誘導されて、作用側電極構造体12から離れる方向に移動する。陽子が内部活性物質貯留槽34に到達すると、それらはゲルマトリクス33のpH環境を下げ、負電荷を中和する。したがって活性物質36はゲルマトリクス33から解離されるようになり、迅速に放出され得る。放出された活性物質は、電気反発力及び/又は電気浸透力下で生体界面18に向けて移動する。
【0069】
犠牲電極(例えばAg/AgCl)が陽極として用いられる場合、電極自体が酸化される。陽子は電気化学的に産生されないため、電解質28は緩衝溶液により酸性として保持され得る。電場下で、電解質貯留槽中のHイオンの一部は、内部活性物質貯留槽34に移動するように誘導され得る。
【0070】
任意に、最外部イオン選択膜38は、内部活性物質貯留槽24と作用側電極構造体の外部22との間に配置され得る。最外部膜38は、図1及び図2に図示した実施形態のように、イオン交換膜の形態をとることができ、当該イオン選択膜38の孔48(図を分かりやすくするために図1及び図2では1つだけが示されている)はイオン交換物質又は基50(図を分かりやすくするために図1及び図2では3つだけが示されている)を有している。電気反発力及び/又は電気浸透力の影響下では、イオン交換物質又は基50は、活性物質36、40と同じ極性を有するイオンを実質的に通す一方で、反対極性を有するイオンを実質的に遮断する。したがって最外部イオン交換膜38は、電荷選択的である。活性物質36、40、42が陽イオン(例えばリドカイン(登録商標))である場合、最外部イオン選択膜38は陽イオン交換膜の形態をとることができA、したがって陽イオン性活性物質の通過を許容する一方で、生体界面、例えば皮膚に存在する陰イオンの逆流を遮断する。
【0071】
最外部イオン選択膜38は、任意に活性物質40を貯蔵し得る。特に、イオン交換基又は物質50は、起電力又は電流の非存在下で活性物質の極性と同じ極性を有するイオンを一時的に保持し、そして起電力又は電流の影響下で同様の極性又は電荷を有する代用イオンと置き換えられる場合、それらのイオンを実質的に放出する。
【0072】
代替的には、最外部イオン選択膜38は、サイズにより選択的である半透性膜又は微小孔膜の形態をとり得る。いくつかの実施形態では、このような半透性膜は有益には、例えば外部リリースライナー46が使用前に除去されるまで、活性物質40を担持するために除去的に取り外し可能な外部リリースライナー46を用いることにより、活性物質40を貯蔵し得る。
【0073】
最外部イオン選択膜38は、付加的活性物質40、例えばイオン化した又はイオン化可能な薬剤又は治療薬、及び/又は、分極化された又は分極化可能な薬剤又は治療薬を任意に予備装荷され得る。最外部イオン選択膜38がイオン交換膜である場合、相当量の活性物質40が最外部イオン選択膜38の孔(又はキャビティ、隙間)48中のイオン交換基50と結合し得る。
【0074】
物質50のイオン交換基と結合できない活性物質42は、さらなる活性物質42として最外部イオン選択膜38の外表面44に付着し得る。代替的には又は付加的には、さらなる活性物質42は、例えば噴霧、フラッディング、コーティングにより、静電的に、蒸着により、及び/又は別のやり方で、最外部イオン選択膜38の外表面44の少なくとも一部の上に積極的に堆積される及び/又はそれに付着され得る。いくつかの実施形態では、さらなる活性物質42は、異なる層52を形成するために外表面44を十分に被覆し及び/又は十分な厚みを有し得る。他の実施形態では、さらなる活性物質42は、このような用語の慣用的意味で層を構成することについては、容積、厚み又は被覆面積において十分であるというわけではない。
【0075】
活性物質42は、種々の高濃縮形態、例えば固体形態、ほぼ飽和した溶液形態又はゲル形態で堆積され得る。固体形態である場合、水和の供給源が提供され、作用側電極構造体12に組込まれるか、又は使用直前にその外部から適用され得る。
【0076】
いくつかの実施形態では、活性物質36、付加的活性物質40及び/又はさらなる活性物質42は、同一又は類似の組成物又は要素であり得る。他の実施形態では、活性物質36、付加的活性物質40、及び/又はさらなる活性物質42は、互いに異なる組成物又は要素であり得る。したがって第一の型の活性物質が内部活性物質貯留槽34中に保存され得る一方で、第二の型の活性物質は最外部イオン選択膜38中に貯蔵され得る。このような実施形態では、第一の型又は第二の型の活性物質のいずれかが、さらなる活性物質42として最外部イオン選択膜38の外表面44上に堆積され得る。代替的には、第一の型及び第二の型の活性物質の混合物がさらなる活性物質42として最外部イオン選択膜38の外表面44上に堆積され得る。さらにそれに代わるものとして、第三の型の活性物質の組成物又は要素が、さらなる活性物質42として最外部イオン選択膜38の外表面44上に堆積され得る。別の実施形態では、第一の型の活性物質が活性物質36として内部活性物質貯留槽34中に保存され、そして付加的活性物質40として最外部イオン選択膜38中に貯蔵され得る一方で、第二の型の活性物質はさらなる活性物質42として最外部イオン選択膜38の外表面44上に堆積され得る。典型的には、1つ又は複数の異なる活性物質が用いられる実施形態では、活性物質36、40、42はすべて、共通の極性を有し、活性物質36、40、42が互いに競合しないようにする。他の組合せも可能である。
【0077】
外部リリースライナーは一般に、最外部イオン選択膜38の外表面44により保有されるさらなる活性物質42の上に重なるか又はそれを覆って配置され得る。外部リリースライナー46は、起電力又は電流の印加前に、貯蔵中、さらなる活性物質42及び/又は最外部イオン選択膜38を保護する。外部リリースライナー46は、耐水性物質製の選択的に取り外し可能なライナー、例えば感圧性接着剤に一般的に関連するリリースライナーであり得る。図1では内部リリースライナーが示され、図2では除去されていることに留意されたい。
【0078】
界面結合媒質(示されていない)は、電極構造体と生体界面18との間に用いられ得る。界面結合媒質は、例えば接着剤及び/又はゲルの形態をとり得る。ゲルは、例えば水和ゲルの形態をとり得る。適切な生体接着性ゲルの選択は、当業者の知識内である。
【0079】
図1及び図2に示した実施形態では、対向電極構造体は、対向電極構造体14の内部64から外部66に向けて順に、対向電極要素68、電解質72を保存する電解質貯留槽70、内部イオン選択膜74、緩衝物質78を保存する任意の緩衝物質貯留槽76、任意の最外部イオン選択膜80、及び任意の外部リリースライナー82を含み得る。
【0080】
対向電極要素68は、電源16の第二の電極16bと電気的に結合され、第二の電極16bは第一の電極16aと逆の極性を有する。従って、対向電極要素68は装置のカソードである。一実施形態では、対向電極要素68は不活性電極である。例えば対向電極要素68は、上記の炭素ベースの電極要素であり得る。
【0081】
電解質貯留槽70は、種々の形態、例えば電解質72を保持し得る任意の構造をとり、そしていくつかの実施形態では、例えば電解質72がゲル形態、半固体形態又は固体形態である場合、電解質72自体でさえあり得る。例えば電解質貯留槽70は、特に電解質72が液体である場合、パウチ又はその他の容器、或いは孔、キャビティ又は隙間を有する膜の形態をとり得る。
【0082】
電解質72は一般に、対向電極要素68と、対向電極要素68に隣接した最外部イオン選択膜80との間に配置される。上記のように、電解質72は、イオンを提供するか又は電荷を供与して、対向電極要素68上の気泡(例えば水素)の形成を防止又は阻害し、そして酸又は塩基の形成を防止又は阻害するか、或いはそれを中和し、これにより効率が高められ、及び/又は、生体界面18における刺激発生の可能性が低減され得る。
【0083】
内部イオン選択膜74は、電解質72と緩衝物質78との間に、及び/又は電解質72を緩衝物質78から分離するよう配置される。内部イオン選択膜74は、電荷選択膜、例えば第一の極性又は電荷を有するイオンの通過を実質的に可能にするが一方で、第二の反対極性を有するイオン又は電荷の通過を実質的に遮断する図示したイオン交換膜の形態をとり得る。内部イオン選択膜74は典型的には、最外部イオン選択膜80を通るイオンと逆の極性又は電荷を有するイオンを通す一方で、同様の極性又は電荷を有するイオンを実質的に遮断する。代替的には、内部イオン選択膜74は、サイズに基づいて選択的である半透性膜又は微小孔膜の形態をとり得る。
【0084】
内部イオン選択膜74は、緩衝物質78への望ましくない要素又は化合物の移動を防止し得る。例えば内部イオン選択膜74は、電解質72から緩衝物質78中へのヒドロキシ(OH)イオン又は塩化物(Cl)イオンの移動を防止又は阻害し得る。
【0085】
任意の緩衝物質貯留槽76は一般に、電解質貯留槽と最外部イオン選択膜80との間に配置される。緩衝物質貯留槽76は、緩衝物質78を一時的に保有し得る種々の形態をとり得る。例えば緩衝物質貯留槽76は、キャビティ、多孔性膜又はゲルの形態をとり得る。
【0086】
緩衝物質78は、最外部イオン選択膜42を通して生体界面18への移動のためのイオンを供給し得る。その結果として、緩衝物質78は、例えば塩(例えばNaCl)を含み得る。
【0087】
対向電極構造体14の最外部イオン選択膜80は、種々の形態をとり得る。例えば最外部イオン選択膜80は、電荷選択性イオン交換膜の形態をとり得る。典型的には対向電極構造体14の最外部イオン選択膜80は、作用側電極構造体12の最外部イオン選択膜38のイオンと逆の電荷又は極性を有するイオンに対して選択的である。したがって最外部イオン選択膜80は、陰イオン交換膜であり、これは実質的に陰イオンを通し、そして陽イオンを遮断し、それにより生体界面からの陽イオンの逆流を防止する。適切なイオン交換膜の例としては、上記の膜が挙げられる。
【0088】
代替的には、最外部イオン選択膜80は、イオンのサイズ又は分子量に基づいて、イオンを実質的に通す及び/又は遮断する半透性膜の形態をとり得る。
【0089】
外部リリースライナー82は一般に、最外部イオン選択膜80の外表面84の上に重なるか又はそれを覆って配置され得る。図1では内部リリースライナーが示され、図2では除去されていることに留意されたい。外部リリースライナー82は、起電力又は電流の印加前に、貯蔵中、最外部イオン選択膜80を保護し得る。外部リリースライナー82は、耐水性物質製の選択的に取り外し可能なライナー、例えば感圧性接着剤に一般的に関連するリリースライナーであり得る。いくつかの実施形態では、外部リリースライナー82は、作用側電極構造体12の外部リリースライナー82と同一の広がりを有し得る。
【0090】
電源16は、1つ又は複数の化学電池、スーパーキャパシタ又はウルトラキャパシタ、或いは燃料電池の形態をとり得る。電源16は、選択的に、電極構造体12、14に送達される電圧、電流及び/又は電力を制御するディスクリートの回路要素及び/又は集積回路要素を含み得る制御回路(不図示)を介して作用側電極構造体12及び対向電極構造体14と電気的に結合され得る。
【0091】
イオントフォレーシス装置10は、作用側電極構造体12及び対向電極構造体14を形成する種々の他の構造の露出側面に隣接する不活性成形物質86をさらに含む。成形物質86は、有益には、作用側電極構造体12及び対向電極構造体14の種々の構造に対する環境保護を提供し得る。作用側電極構造体12及び対向電極構造体14の囲いは、収容物質90である。
【0092】
図2で最も良く分かるように、作用側電極構造体12及び対向電極構造体14は、生体界面18上に配置される。生体界面上の配置は、回路を閉じて、起電力を印加させ、及び/又は作用側電極構造体、生体界面18及び対向電極構造体14を介して、電流を電源16の一方の極16aから他方の極16bに流させ得る。
【0093】
したがって或る種の実施形態は、イオントフォレーシスによる薬剤の経皮投与のための製品であって、電位を提供するように動作可能な作用側電極要素、電解質組成物を含む電解質貯留槽及び正味負電荷を有する親水性ポリカルボキシル化ポリマーであるゲルマトリクスを含む内部活性物質貯留槽を包含する作用側電極構造体、並びに前記内部活性物質貯留槽中に装荷される1つ又は複数の活性物質を含む少なくとも1つの投薬量形態を含むイオントフォレーシスによる薬剤の経皮投与のための製品を記載する。
【0094】
さらに或る種の実施形態は、
イオントフォレーシスによる活性物質の経皮投与のための方法であって、対象の生体界面上にイオントフォレーシス装置の作用側電極構造体及び対向電極構造体を配置するステップであって、前記作用側電極構造体は、電位を提供するように動作可能な作用側電極要素、電解質組成物を含む電解質貯留槽、及び、ゲルマトリクスと、当該ゲルマトリクス中に分配された第一の正荷電活性物質とを含む内部活性物質貯留槽を包含し、前記ゲルマトリクスが正味負電荷を有する親水性ポリカルボキシル化ポリマーを有するステップと、限定された時間に渡って、前記ゲルマトリクスから前記活性物質を放出し、対象の前記生体界面への前記活性物質を輸送し、対象において治療的有効量の前記正荷電活性物質を投与するのに十分な量の電流を印加するステップとを包含する方法記載する。
【0095】
或る種の実施形態では、使用中である場合、イオントフォレーシス装置は、少量の陽子を生じ、これは電解質貯留槽26から、内部イオン(陰イオン)選択膜30を通って、内部活性物質貯留槽34に移動する。陽子の存在は負荷電ゲルマトリクス33を中和し、陽イオン性活性物質36をゲルマトリクスから解離させて、生体界面18に向けて輸送させる。任意に、付加的活性物質40は同じ電荷又は極性(例えば活性物質36)のイオンの置換によりイオン交換基又は物質50により放出され、生体界面18に向けて輸送される。活性物質36のいくつかは付加的活性物質40に置換し得る一方で、活性物質36のいくつかは最外部イオン選択膜38を通して生体界面18中に移され得る。最外部イオン選択膜38の外表面44により担持されるさらなる任意の活性物質42も生体界面18に移される。
【0096】
使用に際して、最外部イオン選択膜38は、生体界面18と直接接触して配置され得る。代替的には、界面結合媒質(示されていない)が、最外部イオン選択膜38と生体界面18との間で用いられ得る。界面結合媒質は、例えば付着剤及び/又はゲルの形態をとり得る。ゲルは、例えば水和ゲル又はヒドロゲルの形態をとり得る。使用される場合、界面結合媒質は、活性物質34により透過される必要がある。
【0097】
電源16は、1つ又は複数の化学電池、スーパーキャパシタ又はウルトラ−キャパシタ、若しくは燃料電池の形態をとり得る。電源16は、例えば12.8V DCの電圧を、0.8V DCの許容量及び0.3mAの電流とともに提供し得る。電源16は、選択的に、制御回路を介して、例えば炭素繊維リボンを介して、作用側電極構造体12及び対向電極構造体14と電気的に結合され得る。イオントフォレーシス装置10aは、電極構造体12、14に送達される電圧、電流及び/又は電力を制御するために、別個の回路要素及び/又は集積回路要素を包含し得る。例えばイオントフォレーシス装置10は、電極要素20、40に定電流を提供するためのダイオードを包含し得る。
【0098】
要約に記載されたものを含めて上記の例証的実施形態についての記載は、網羅的であるように意図されないし、添付の特許請求の範囲を開示された精確な形態に限定するものでもない。例示の目的で特定の実施形態及び実施例を本明細書に記載しているが、本発明の精神及び範囲を逸脱しない限り、そして当業者に理解されるように、種々の等価の改変がなされ得る。本明細書中に提供される本発明の教示は、他の物質送達システム及び装置に適用可能であり、必ずしも一般的に上記した例示的なイオントフォレーシス活性物質システム及びイオントフォレーシス活性物質装置であるというわけではない。例えばいくつかの実施形態は、付加的構造を包含し得る。例えばいくつかの実施形態は、作用側電極要素20及び対向電極要素40に印加される電圧、電流又は電力を制御するための制御回路又はサブシステムを包含し得る。さらにまた例えばいくつかの実施形態は、最外部活性電極イオン選択膜38と生体界面18との間に介在される界面層を包含し得る。いくつかの実施形態は、付加的なイオン選択膜、イオン交換膜、半透性膜及び/又は多孔性膜、並びに電解質及び/又は緩衝剤のための付加的貯留槽を含み得る。
【0099】
種々の導電性ヒドロゲルが既知であり、対象の皮膚に又は対象への電気刺激を接続するための装置内に電気的界面を提供するために医療分野で用いられてきた。ヒドロゲルは皮膚を水和し、したがってヒドロゲルにより電気刺激のための炎症に対して保護する一方で、皮膚を膨潤し、活性構成成分のより効率的な移動を可能にする。このようなヒドロゲルの例は、米国特許第6,803,420号、同第6,576,712号、同第6,908,681号、同第6,596,401号、同第6,329,488号、同第6,197,324号、同第5,290,585号、同第6,797,276号、同第5,800,685号、同第5,660,178号、同第5,573,668号、同第5,536,768号、同第5,489,624号、同第5,362,420号、同第5,338,490号及び同第5,240,995号(これらの記載内容は参照により本明細書中でその全体において援用される)に開示されている。このようなヒドロゲルのさらなる例は、米国特許出願第2004/166147号、同第2004/105834号及び同第2004/247655号(これらの記載内容は参照により本明細書中でその全体において援用される)に開示されている。種々のヒドロゲル及びヒドロゲルシートの製品商標名としては、Corplex(商標)(Corium)、Tegagel(商標)(3M)、PuraMatrix(商標)(BD)、Vigilon(商標)(Bard)、ClearSite(商標)(Conmed Corporation)、FlexiGel(商標)(Smith & Nephew)、Derma-Gel(商標)(Medline)、NU-Gel(商標)(Johnson & Johnson)及びCuragel(商標)(Kendall)又はアクリルヒドロゲル・フィルム(Sun Contact Lens Co., Ltd.から入手可能)が挙げられる。
【0100】
上記のイオントフォレーシス装置は有益には、他の微細構造、例えばマイクロニードルと組合され得る。マイクロニードル及びマイクロニードルアレイ、それらの製造並びに使用が記載される。マイクロニードルは、独立して又はアレイで、中空、固体及び透過性、固体及び半透性、又は固体及び非透過性であり得る。固体、非透過性マイクロニードルはさらに、それらの外表面に添った溝を含み得る。複数のマイクロニードルを含むマイクロニードルアレイは、種々の立体配置で、例えば長方形又は円形で配列され得る。マイクロニードル及びマイクロニードルアレイは、種々の材料、例えばケイ素、二酸化ケイ素、成形プラスチック材料、例えば生分解性ポリマー又は非生分解性ポリマー、セラミック並びに金属から製造され得る。マイクロニードル(独立して、又はアレイのいずれかで)は、中空アパーチャを介して、固体透過性材料又は半透性材料を介して、若しくは外部溝を介して、流体を分配又はサンプリングするために用いられ得る。マイクロニードル装置は、例えば種々の化合物及び組成物を生きている身体に、生体界面、例えば皮膚又は粘膜を介して送達するために用いられる。或る種の実施形態では、化合物及び薬剤は、生体界面に又はそれを通して送達され得る。例えば皮膚を介した化合物又は組成物の送達に際しては、マイクロニードル(単数又は複数)(独立して、又はアレイのいずれかで)の長さ、及び/又は挿入深度は、化合物又は組成物が表皮中だけ、表皮を通して真皮へ、若しくは皮下に投与されるかに関わらず、制御するために用いられ得る。或る種の実施形態では、マイクロニードル装置は、高分子量化合物及び薬剤、例えばタンパク質、ペプチド及び/又は核酸を含むもの並びに対応するその組成物を送達するために有用であり得る。例えば流体がイオン性溶液である、或る種の実施形態では、マイクロニードル(単数又は複数)又はマイクロニードルアレイ(単数又は複数)は、電源とマイクロニードル(単数又は複数)の先端との間の電気的連続性を提供し得る。マイクロニードル(単数又は複数)又はマイクロニードルアレイ(単数又は複数)は有益には、本明細書中に開示されるようなイオントフォレーシス方法により化合物又は組成物を送達又はサンプリングするために用いられ得る。
【0101】
したがって或る種の実施形態では、例えば複数のマイクロニードル(アレイでの)は有益には、イオントフォレーシス装置の外表面と接触する最外部生体界面上に形成され得る。このような装置により送達又はサンプリングされる(sample)活性物質は、例えば高分子量分子又は薬剤、例えばタンパク質、ペプチド及び/又は核酸を含み得る。
【0102】
或る種の実施形態では、化合物又は組成物は、生体界面に、その中に又はそれを介して活性物質を送達するために、電源に電気的に結合された作用側電極構造体及び対向電極構造体を含むイオントフォレーシス装置により送達され得る。作用側電極構造体は、電源の正電極に接続される第一の電極部材、第一の電極部材と接触し、第一の電極部材を介して電圧を印加される薬剤溶液を有する活性物質貯留槽、生体界面接触部材(これはマイクロニードルアレイであり得るし、活性物質貯留槽の前面に対面して配置される)、及びこれらの部材を収容する第一の被膜又は容器を包含する。対向電極構造体は、電源の負電極に接続される第二の電極部材、第二の電極部材と接触し、第二の電極部材を介して電圧が印加される電解質を担持する第二の電解質保持部分、及びこれらの部材を収容する第二の被膜又は容器を包含する。
【0103】
或る種の他の実施形態では、化合物又は組成物は、生体界面に、その中に又はそれを介して活性物質を送達するために、電源に電気的に結合された作用側電極構造体及び対向電極構造体を含むイオントフォレーシス装置により送達され得る。作用側電極構造体は、電源の正電極に接続される第一の電極部材、第一の電極部材と接触し、第一の電極部材を介して電圧を印加される電解質を有する第一の電解質保持部分、第一の電解質保持部分の前面に配置される第一の陰イオン交換膜、第一の陰イオン交換膜の前面に対して配置される活性物質貯留槽、生体界面接触部材(これはマイクロニードルアレイであり得るし、活性物質貯留槽の前面に対面して配置される)、及びこれらの部材を収容する第一の被膜又は容器を包含する。対向電極構造体は、電源の負電極に接続される第二の電極部材、第二の電極部材と接触し、第二の電極部材を介して電圧を印加される電解質を担持する第二の電解質保持部分、第二の電解質保持部分の前面に配置される陽イオン交換膜、陽イオン交換膜の前面に対して配置され、第二の電解質保持部分及び陽イオン交換膜を介して第二の電極部材から電圧が印加される電解質を担持する第三の電解質保持部分、第三の電解質保持部分の前面に対して配置される第二の陰イオン交換膜、並びにこれらの部材を収容する第二の被膜又は容器を包含する。
【0104】
マイクロニードル装置、それらの使用及び製造についての或る程度の詳細は、米国特許第6,256,533号、同第6,312,612号、同第6,334,856号、同第6,379,324号、同第6,451,240号、同第6,471,903号、同第6,503,231号、同第6,511,463号、同第6,533,949号、同第6,565,532号、同第6,603,987号、同第6,611,707号、同第6,663,820号、同第6,767,341号、同第6,790,372号、同第6,815,360号、同第6,881,203号、同第6,908,453号及び同第6,939,311号(これらの記載内容はすべて、参照により本明細書中で援用される)に開示されている。その中の教示のいくつか又はすべてが、マイクロニードル装置、それらの製造、並びにイオントフォレーシス用途におけるそれらの使用に適用され得る。
【0105】
種々の実施形態の態様は、必要な場合、本明細書中で同定されるそれらの特許及び出願を含めてさらなる実施形態を提供するために種々の特許、出願及び出版物の系、回路及び概念を用いるよう修正され得る。いくつかの実施形態は、上記の膜、貯留槽及びその他の構造のすべてを包含し得る一方で、他の実施形態は、膜、貯留槽又は他の構造のいくつかを省略し得る。さらなる他の実施形態は、一般的に上記した膜、貯留槽及び構造の付加的なものを用い得る。さらなる実施形態は、一般的に上記した膜、貯留槽及び構造の付加的なものを用いながら、上記の膜、貯留槽及び構造のいくつかを省略し得る。
【0106】
上記の様々な実施形態を組合せて、さらなる実施形態を提供することができる。本明細書で言及され、且つ/又は出願データシートに列挙されるすべての米国特許、米国特許出願公開、米国特許出願、外国特許、外国特許出願及び非特許出版物は、下記に列記のものを非限定的に含めて、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
特許第3040517号として2000年3月3日に発行され、特開平04−297277号公報を有する1991年3月27日に出願された特願平03−86002号公報、
特開2000−229128号公報を有する1999年2月10日に出願された特願平11−033076号公報、特開2000−229129号公報を有する1999年2月12日に出願された特願平11−033765号公報、特開2000−237326号公報を有する1999年2月19日に出願された特願平11−041415号公報、特開2000−237327号公報を有する1999年2月19日に出願された特願平11−041416号公報、特開2000−237328号公報を有する1999年2月22日に出願された特願平11−042752号公報、特開2000−237329号公報を有する1999年2月22日に出願された特願平11−042753号公報、特開2000−288098号公報を有する1999年4月6日に出願された特願平11−099008号公報、特開2000−288097号公報を有する1999年4月6日に出願された特願平11−099009号公報、PCT公開番号WO03037425を有する2002年5月15日に出願されたPCT特許出願WO2002JP4696、2004年3月9日に出願された米国特許出願第10/488970号、2004年10月29日に出願された特願2004/317317号公報、2004年10月29日に出願された米国仮特許出願第60/722,757号、2004年11月16日に出願された米国仮特許出願第60/627,952号、2004年11月30日に出願された特願2004−347814号公報、2004年12月9日に出願された特願2004−357313号公報、2005年2月3日に出願された特願2005−027748号公報、2005年3月22日に出願された特願2005−081220号公報。
【0107】
種々の実施形態の態様は、必要な場合、さらなる実施形態を提供するために種々の特許、出願及び出版物のシステム、回路及び概念を用いるように変形され得る。
【0108】
上記の詳細な記載にかんがみて、様々な変更が為され得る。概して、添付の特許請求の範囲においては、用いられる用語は、本明細書及び添付の特許請求の範囲に開示される特定の実施形態に限定するように解釈されるべきでなく、添付の特許請求の範囲に従って動作するすべてのシステム、装置及び/又は方法を含むように解釈されるべきである。したがって本発明は本開示により限定されなるものでなく、その範囲は添付の特許請求の範囲により専ら確定されるべきものである。
【図面の簡単な説明】
【0109】
【図1】一例示的実施形態による作用側電極構造体及び対向電極構造体を含むイオントフォレーシス装置のブロック図である。
【図2】生体界面上に配置される図1のイオントフォレーシス装置であって、一例示的実施形態に従って外部リリースライナーが除去されて活性物質が露出された状態のイオントフォレーシス装置のブロック図。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体界面に活性物質を送達するためのイオントフォレーシス装置であって、作用側電極構造体及び対向電極構造体を含み、該作用側電極構造体が、
電位を提供するように動作可能な作用側電極要素、
電解質組成物を含む電解質貯留槽及び
ゲルマトリクスと、当該ゲルマトリクス中に分配された第一の正荷電活性物質とを含む内部活性物質貯留槽を包含し、前記ゲルマトリクスが正味負電荷を有する親水性ポリカルボキシル化ポリマーを有する、生体界面に活性物質を送達するためのイオントフォレーシス装置。
【請求項2】
前記ポリカルボキシル化ポリマーが、複数のカルボキシレート基を有する線状の一次ポリマー粒子を含み、該一次ポリマー粒子が架橋剤を介して化学的に結合され、相互連結される、請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項3】
前記線状一次ポリマーが、
nは少なくとも10の整数、
、R、R及びRは同一であるか又は異なり、そして独立して水素、アルキル、アルケニル、−COOR又は−CHCOORであるが、但し、R、R、R及びRのうちの少なくとも1つは−COOR又は−CHCOORであり、そして
Rは水素、低級アルキル、アリール、アラルキル、アミノ(一置換アミノ又は二置換アミノを含む)又は対イオンとして、次式により表わされる、請求項2に記載のイオントフォレーシス装置。
【化1】

【請求項4】
前記架橋剤が、少なくとも2つのオレフィン結合を含む分子である、請求項2に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項5】
前記架橋剤がスクロースのアリルエーテル、ペンタエリトリトール、ポリアルケニルエーテル、ジビニルグリコール、ジビニルベンゼン、N,N−ジアリルアクリルアミド、3,4−ジヒドロキシ−1,5−ヘキサジエン、2,5−ジメチル−1,5−ヘキサジエン及び類似の作用物質である、請求項4に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項6】
前記ポリカルボキシル化ポリマーがカルボポール(商標)である、請求項2に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項7】
前記電解質組成物が、水、生理学的イオン及び酸化防止剤を含む、請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項8】
前記電解質組成物がヒドロゲルを含む、請求項7に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項9】
前記酸化防止剤が、アスコルビン酸、トコフェロール、クエン酸ナトリウム又はそれらの組合せである、請求項7に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項10】
前記正荷電活性物質が、約3〜6.8の範囲のpHでイオン相互作用により前記負荷電ポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクスと結合する、請求項2に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項11】
前記正荷電活性物質が、3より低いpHでポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクスから解離する、請求項10に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項12】
前記正荷電活性物質が、約5.5〜6.5の範囲のpHでイオン相互作用により前記負荷電ポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクスと結合する、請求項2に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項13】
前記正荷電活性物質が、5.5より低いpHでポリカルボキシル化ポリマーゲルマトリクスから解離する、請求項12に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項14】
前記電解質貯留槽と前記内部活性物質貯留槽との間に配置される内部イオン選択膜をさらに包含する、請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項15】
前記内部イオン選択膜が陰イオンを実質的に通し、そして陽イオンを実質的に遮断する、請求項14に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項16】
外表面を有する最外部イオン選択膜をさらに包含し、該外表面が使用中である場合前記生体界面に近位である、請求項14に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項17】
前記外部イオン選択膜が陽イオンを実質的に通し、そして陰イオンを実質的に遮断する、請求項16に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項18】
前記最外部イオン選択膜中に貯蔵される第二の正荷電活性物質をさらに包含する、請求項16に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項19】
前記最外部イオン選択膜の外表面上に堆積される第三の正荷電活性物質をさらに包含する、請求項16に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項20】
前記外表面の下にある外部リリースライナーをさらに含み、使用中である場合に該外部リリースライナーが前記生体界面に近位である、請求項16に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項21】
前記イオントフォレーシス装置の外表面と接触しているマイクロニードルアレイをさらに包含する、請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項22】
前記作用側電極要素が不活性電極である、請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項23】
前記電解質組成物が水を含み、使用中に陽子が生成される、請求項22に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項24】
前記正荷電活性物質が、セントブクリジン(centbucridine)、テトラカイン、ノボカイン(登録商標)(プロカイン)、アンブカイン、アモラノン、アミルカイン(amylcaine)、ベノキシネート、ベトキシカイン、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、シクロメチカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、カルチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジクロニン、エコゴニジン、エコグニン、ユープロシン、フェナルコミン、ホルモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、ロイシノカイン、レボキサドロール、メタブトキシカイン、ミルテカイン、ブタンベン、ブピバカイン(bupivicaine)、メピバカイン、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、オピオイド鎮痛薬、ブタニリカイン、アミノ安息香酸エチル、ホモシン(fomocine)、ヒドロキシプロカイン、p−アミノ安息香酸イソブチル、ネパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサゼイン、パレントキシカイン、フェナシン、フェノール、ピペロカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン(prilocaine)、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プソイドコカイン、ピロカイン、サリチルアルコール、パレチオキシカイン(parethyoxycaine)、ピリドカイン、リソカイン、トリカイン(tolycaine)、トリメカイン、テトラカイン、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、アルチカイン、コカイン、プロカイン、アメトカイン(amethocaine)、クロロプロカイン、マーカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、プリロカイン、リグノカイン、ベンゾカイン、ゾラミン、ロピバカイン及びジブカイン又はそれらの組合せである、請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項25】
前記第一の正荷電活性物質がリドカイン(登録商標)である、請求項1に記載のイオントフォレーシス装置。
【請求項26】
イオントフォレーシスによる薬剤の経皮投与のための製品であって、
電位を提供するように動作可能な作用側電極要素、電解質組成物を含む電解質貯留槽及び正味負電荷を有する親水性ポリカルボキシル化ポリマーであるゲルマトリクスを含む内部活性物質貯留槽を包含する作用側電極構造体、並びに
前記内部活性物質貯留槽中に装荷される1つ又は複数の活性物質を含む少なくとも1つの投薬量形態
を含むイオントフォレーシスによる薬剤の経皮投与のための製品。
【請求項27】
前記1つ又は複数の活性物質が正荷電される、請求項26に記載の製品。
【請求項28】
前記1つ又は複数の活性物質が鎮痛薬又は麻酔薬を包含する、請求項26に記載の製品。
【請求項29】
前記1つ又は複数の活性物質が、セントブクリジン、テトラカイン、ノボカイン(登録商標)(プロカイン)、アンブカイン、アモラノン、アミルカイン、ベノキシネート、ベトキシカイン、カルチカイン、クロロプロカイン、コカエチレン、シクロメチカイン、ブテタミン、ブトキシカイン、カルチカイン、ジブカイン、ジメチソキン、ジメトカイン、ジペロドン、ジクロニン、エコゴニジン、エコグニン、ユープロシン、フェナルコミン、ホルモカイン、ヘキシルカイン、ヒドロキシテトラカイン、ロイシノカイン、レボキサドロール、メタブトキシカイン、塩化メチル、ミルテカイン、ブタンベン、ブピバカイン(bupivicaine)、メピバカイン、β−アドレナリン受容体アンタゴニスト、オピオイド鎮痛薬、ブタニリカイン、アミノ安息香酸エチル、ホモシン、ヒドロキシプロカイン、p−アミノ安息香酸イソブチル、ネパイン、オクタカイン、オルトカイン、オキセサゼイン、パレントキシカイン、フェナシン、フェノール、ピペロカイン、ポリドカノール、プラモキシン、プリロカイン(prilocaine)、プロパノカイン、プロパラカイン、プロピポカイン、プソイドコカイン、ピロカイン、サリチルアルコール、パレチオキシカイン、ピリドカイン、リソカイン、トリカイン、トリメカイン、テトラカイン、抗痙攣薬、抗ヒスタミン薬、アルチカイン、コカイン、プロカイン、アメトカイン、クロロプロカイン、マーカイン、クロロプロカイン、エチドカイン、プリロカイン、リグノカイン、ベンゾカイン、ゾラミン、ロピバカイン及びジブカイン又はそれらの組合せである、請求項28に記載の製品。
【請求項30】
前記1つ又は複数の活性物質が、リドカイン(登録商標)を包含する、請求項28に記載の製品。
【請求項31】
前記イオントフォレーシス装置が前記電解質貯留槽と前記内部活性物質貯留槽との間に配置される内部イオン選択膜をさらに包含する、請求項27に記載の製品。
【請求項32】
前記内部イオン選択膜が陰イオンを通し、そして陽イオンを実質的に遮断する、請求項31に記載の製品。
【請求項33】
前記イオントフォレーシス装置が、外部イオン選択膜をさらに包含し、該外部イオン選択膜が陽イオンを通しそして陰イオンを実質的に遮断する、請求項31に記載の製品。
【請求項34】
対向電極構造体をさらに包含する、請求項26に記載の製品。
【請求項35】
イオントフォレーシスによる活性物質の経皮投与のための方法であって、
対象の生体界面上にイオントフォレーシス装置の作用側電極構造体及び対向電極構造体を配置するステップであって、前記作用側電極構造体は、電位を提供するように動作可能な作用側電極要素、電解質組成物を含む電解質貯留槽、及び、ゲルマトリクスと、当該ゲルマトリクス中に分配された第一の正荷電活性物質とを含む内部活性物質貯留槽を包含し、前記ゲルマトリクスが正味負電荷を有する親水性ポリカルボキシル化ポリマーを有するステップと、
限定された時間に渡って、前記ゲルマトリクスから前記活性物質を放出し、対象の前記生体界面への前記活性物質を輸送し、対象において治療的有効量の前記正荷電活性物質を投与するのに十分な量の電流を印加するステップとを包含するイオントフォレーシスによる活性物質の経皮投与のための方法。
【請求項36】
前記十分量の電流の印加が、前記電解質組成物中の水を電気化学的に酸化すること、及び陽子を生成することを包含する、請求項35に記載の方法。
【請求項37】
前記陽子が、前記ゲルマトリクスの負電荷を中和して、前記正荷電活性物質を放出させる、請求項36に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−509659(P2009−509659A)
【公表日】平成21年3月12日(2009.3.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−533547(P2008−533547)
【出願日】平成18年9月27日(2006.9.27)
【国際出願番号】PCT/US2006/037570
【国際公開番号】WO2007/038555
【国際公開日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【出願人】(505046776)TTI・エルビュー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】