説明

生体認証装置及び生体認証方法

【課題】ICカードやパスワードなどによる従前の認証機能を有さなくても生体認証装置が生体認証未対応者の認証を可能にした生体認証装置を提供すること。
【解決手段】筐体10内に指12が挿入されたときに、CPU78は、撮像素子28の撮像による画像から抽出された静脈パターンとメモリ82に登録された静脈パターンとを照合して照合結果をユーザに通知し、筐体10内に指12の代わりにカード型記録媒体14が挿入されたときには、撮像素子28の撮像による画像から擬似パターン64を抽出し、抽出された擬似パターン64と登録された擬似パターンとを照合して照合結果をユーザに通知する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は生体認証装置及びその方法に係わり、特に、指静脈を用いて生体の認証を行う生体認証技術に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、パスワードや鍵、印鑑等の従来のものに代わって、個人に特有な身体的特徴を利用した生体認証技術が注目を浴びている。生体認証技術は、盗難、紛失、不正譲渡、忘却のリスクが低くセキュリティレベルが高いという有利性がある。
【0003】
さまざまな生体認証技術の中でも、指静脈認証は、身体内部の指静脈パターンを使用するために優れた認証精度を実現し、かつ指紋認証に比べて偽造・改ざんが困難であることにより高度なセキュリティを実現できる。
【0004】
この種の認証技術を、例えば、特開2003−129712号公報に記載の共同玄関施開錠システムに適用すると、ユーザは共同のエントランスにある生体認証装置を通過し、次いで、ユーザ自身の住宅の生体認証を通過しなければならない。
【0005】
ところで、ユーザの一部に指静脈用血管が細いことなどが理由となって、生体認証装置が認証のために必要な特徴情報を生体から抽出することができないという問題がある。
【0006】
そこで、この種の生体認証未対応者の認証を可能にするために、生体認証装置に他の認証機能を付設することが考えられる。例えば、特開2006−251961号公報には生体認証機能を有するクライアント・サーバシステムにパスワードを認証する機能を設けて、生体認証不可能時の救済を図る方法が記載されている。
【0007】
また、特開2005−350960号公報には、ゲートにおける人の認証を実行する認証装置において、ICカードと指紋認証とを組み合わせたシステムが開示されている。
【特許文献1】特開2003−129712号公報
【特許文献2】特開2006−251961号公報
【特許文献3】特開2005−350960号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
生体認証未対応者を防ぐために、生体認証のための装置の感度を低くするとセキュリティのレベルが低下する問題がある。従来の生体認証では、僅かではあるが、生体認証未対応者が発生することを避けることができないために、ICカードやパスワードなどによる従前の認証機能を生体認証技術に組み合わせる必要があった。
【0009】
しかしながら、これでは、従来の認証技術に代えてセキュリティが高く利便性に優れているはずの生体認証技術の有利性が損なわれてしまうことと、生体認証装置が複雑になり、その費用が嵩むという課題がある。
【0010】
そこで、本発明は、ICカードやパスワードなどによる従前の認証機能を有さなくても生体認証装置が生体認証未対応者の認証を可能にした生体認証装置を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
そこで、本発明はこの目的を達成するために、生体から当該生体の特徴情報を検出して、前記生体の認証を行う生体認証装置において、前記生体の一部から前記特徴情報を持った画像を検出する検出部と、前記生体の一部を前記検出部に臨むように収容する収容部と、を備え、前記収容部は、前記生体の一部が存在しない状態で、前記特徴情報に代わる代替情報を備えたカード型記録媒体を前記検出部に対向するように収容し、前記検出部は前記カード型記録媒体から前記代替情報を検出することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、収容部が特徴情報に代わる代替情報を備えたカード型記録媒体を収容できるように構成され、検出部は前記カード型記録媒体から前記代替情報を検出することができるために、ICカードやパスワードなどによる従前の認証機能を有さなくても生体認証装置が生体認証未対応者の認証を可能にした生体認証装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、セキュリティシステムなどに用いる好適な生体認証装置について説明する。この生体認証装置は、生体の一部、例えば、指から指の特徴情報を検出して、生体の認証を行う。すなわち、生体認証装置は、指静脈認証装置として、生体の一部として指が挿入されたときに、指の上方に設けられたLED(Light Emitting Diode)などの赤外線光源から赤外光を指内に照射し、指内で拡散した赤外光のうち静脈を透過するかまたは静脈から反射するなどして、指の静脈の形態(静脈パターン)を含む指の内部環境の影響を受けて指外部に放出される透過光に基づく画像を撮像し、この画像から静脈パターンを特徴情報として抽出して本人認証を行う。
【0014】
また、この生体認証装置は、生体の一部の特徴情報に代わる代替情報を備えたカード型記録媒体が挿入されたときに、赤外線光源からの赤外光をカード型記録媒体内に照射し、カード型記録媒体内を透過した透過光に基づく画像を撮像し、この画像から擬似パターンを代替情報として抽出して本人認証を行う。
【0015】
図1は、認証対象が指であるときの生体認証装置の要部断面図であり、図2は、認証対象がカード型記録媒体であるときの生体認証装置の要部断面図である。
【0016】
図1および図2において、生体認証装置は、全体が立方体状に形成された筐体10を備えている。筐体10の内部には、生体の一部としての指12またはカード型記録媒体14を挿入可能な空間部が形成されており、この空間部の上部側には、LEDで構成された赤外線光源16が配置されている。空間部の底部側には、指12を載置するための指ガイド部18が設けられているとともに、指12と後述の光学系との焦点距離を確保するための溝部20が設けられている。
【0017】
溝部20の幅は、指12の幅よりも狭くなっている。ユーザが指12を指ガイド部18上に挿入し、指12が溝部20を全て覆うように、指12を指ガイド部18上に置くと、赤外線光源16からの赤外光が指12の表面に照射される。
【0018】
溝部20の底面22には、指12を透過した透過光を取り込むために、例えば、矩形(長方形)の透過光取込口24が設けられている。この透過光取込口24にはIRフィルタ(図示せず)が付設されている。IRフィルタは太陽光や蛍光灯などの光など、認証には不要な外光を遮断する。また、塵・水滴などが認証装置内部に侵入するのを防ぐ。底面22の下方には、光学系としてのレンズ装置や撮像素子が配置されている。レンズ装置や撮像素子により、透過光取込口24から取り込まれた透過光に基づく画像が撮像される。
【0019】
図3は、生体認証装置の光学系と指との位置関係の一例を示す概略図である。
【0020】
図3において、光学系を構成するレンズ装置26は、透過光を撮像素子28に結像するものであって、指側の第1レンズ30と撮像素子側の第2レンズ32とからなるレンズユニット34がレンズ筐体36に支持固定されている。第1レンズ30と第2レンズ32は、互いに光軸38に沿って対向するようにレンズ筐体36内に収納されている。
【0021】
第1レンズ30および第2レンズ32は、有効直径Dが約2mm以下、好ましく1mm〜1.5mmの極小径レンズである。第1レンズ30は、撮像素子28側が凹状に形成され、全体が負のパワーを有する凹レンズである。第2レンズ32は、指12側および撮像素子28側が凸状に形成され、全体が正のパワーを有する凸レンズである。
【0022】
撮像素子28は、CCDあるいはCMOSから構成されて、基板40上に固定されている。撮像素子28の表面には、撮像素子28を保護する透明層42が形成されている。基板40は、筐体10の底面部44に支持されている。
【0023】
レンズ筐体36は、レンズユニット34が収納できるように中空円筒状に形成されている。レンズ筐体36は、支持部材46によって基板40に支持されている。
【0024】
レンズユニット34は、凸凹レンズを組み合わせることにより、短焦点で広画角を持ったレンズとしての特性を有している。このことにより、レンズユニット34を被写体である指12に近づけることができ、且つ、レンズユニット34を指12に近づけても、広い範囲の画像を撮像素子28に取り込むことができる。
【0025】
この結果、指底48と撮像素子28との間の距離(共役距離)L1を低減でき、共役距離を5.0mm〜12.0mmの範囲に納めることができる。
【0026】
また符合50は、ジャストピント位置を示し、符号L2は、指12内のジャストピント位置50と撮像素子28との間のジャストピント長である。指12内にジャストピント位置50が来るように、レンズ装置26を撮像素子28に対して進退させて、レンズユニット34と撮像素子28との間隔が調整される。
【0027】
図4は、歪み特性を示すグラフである。図4に示す物高とは、画像の中心点(光軸38)から画像の端部までの相対位置を示し、例えば、物高が“1.0”とは画像の最端部の位置を示し、物高が“0.6”とは、中心点が60%の位置(端部から40%)であることを表している。
【0028】
図4において、800は第1のレンズユニットの特性であり、802は第2のレンズユニットの特性である。歪み特性がマイナスであるとは画素が画像の中心側に歪み、歪み特性がプラスであるとは、画素が画像の中心から離れる方向に歪んでいることを示している。
【0029】
歪み(%)は、画素の本来の位置(中心からの距離“T”)と歪んだ後の画素の位置(中心からの距離“S”)に対して、“T/S”に相当する値である。光学歪みがマイナス60%よりマイナス側に大きいと、周辺部での解像度が急に劣化し、画像の歪み補正を行っても画像を完全に修復できないことがある。
【0030】
また光学歪みが+50%を超えると、広い範囲の画像を処理する必要があり、処理時間に問題が生じることがある。したがって、第1の特性(800)と第2の特性(802)との間に歪みが制限されている限り、すなわち、光学歪みが−60%から+50%の範囲内に納まっている限り、画像処理部で歪みを補正することができる。
【0031】
レンズユニット34の特性として、さらに物側最大画角での感度比が10%以上60%以下であることが好ましく、さらに、好ましくは感度が40%以上65%以下である。
【0032】
図1および図2に戻り説明を続けると、筐体10内部にはカード位置決めスリット52が指12の両側面側を臨むように形成されている。このカード位置決めスリット52には、カード型記録媒体14が挿入されるようになっている。カード型記録媒体14がカード位置決めスリット52内に挿入された状態を図2に示す。すなわち、筐体10は、指12を、検出部である撮像素子28を臨むように収容し、指12が存在しない状態では、カード型記録媒体14を撮像素子28に対向するように収容する収容部として機能する。
【0033】
カード型記録媒体14は、図5(a)に示すように、ほぼ長方形形状に形成され、その厚さが0.5mm乃至6mmである。カード型記録媒体14の長さと幅は、筐体10内に挿入可能であって、カード位置決めスリット52内に挿入可能な値に設定されている。
【0034】
カード型記録媒体14は、図5(b)に示すように、赤外線光源16からの赤外光を透過する透明層54を備えている。この透明層54は、例えば、ポリアセタール樹脂で構成されている。透明層54の上部側と下部側には可視光をカットする可視光カットフィルタとして機能する遮光層56、58が形成されている。各遮光層56、58には、各遮光層56、58を保護し、赤外光を透過する保護層60、62が形成されている。保護層60、62は、例えばプラスチック材を用いて構成されている。
【0035】
カード型記録媒体14のうち透明層54の表面には、図6に示すように、指12の静脈パターン(特徴情報)に代わる代替情報としての擬似パターン64がユーザ固有の任意のパターンとして描かれているとともに、特徴情報による認証を生体認証装置に解除させるための特殊符号としての解除マーク66が描かれている。
【0036】
図7は、生体認証装置における画像処理装置の機能ブロック図である。画像処理装置は、検出部である撮像素子28によって撮像された画像から指12の静脈パターンまたはカード型記録媒体14の擬似パターン64を抽出する抽出部68と、画像の歪みを補正する補正部70と、生体毎の静脈パターンと生体に対応した擬似パターン64を予め記録する記録部72と、抽出部68により抽出された静脈パターンと記録部72に記録された静脈パターンとを照合し、または抽出部68により抽出された擬似パターンと記録部72に記録された擬似パターンとを照合する照合部74と、照合部74の照合結果をユーザなどに通知する通知部76と、照合部74の照合結果に応じて制御対象を制御する制御部77を備えている。
【0037】
具体的には、図8に示すように、画像処理装置は、抽出部68、照合部74、通知部76、制御部77として機能するCPU(Central Processing Unit)78と、補正部として機能するDSP(Digital Signal Processor)80、記録部72として機能するメモリ82を備えている。
【0038】
CPU78は、ユーザの操作に基づき、メモリ82に記録された画像処理プログラムをスタートし、DSP80に、撮像素子28から画像を取り込むように指令する。CPU78は、撮像素子28の各画素の輝度データを、DSP80から取り込み、筐体10内に指12またはカード型記録媒体14が挿入されているか否かを判定する。
【0039】
筐体10内に指12またはカード型記録媒体14が挿入されていない場合には、外光が撮像素子28に至り、所定以上に画素の輝度が上がるために、CPU78は、筐体10内に指12またはカード型記録媒体14が挿入されていないと判定する。
【0040】
一方、CPU78は、筐体10内に指12またはカード型記録媒体14が挿入されていると判定すると、撮像素子28で得られた画像の各画素の輝度をチェックして、輝度が各画素で均一になるように、赤外線光源16からの赤外光の光量を制御する。
【0041】
例えば、指12の厚みが薄い場合、厚い指12と比較して輝度が高くなる傾向にあるので、光量が少なくなるように、CPU78は、赤外線光源16に駆動信号を出力する。また、幅の細い指12の場合、幅の太い指12と比較して、底面22から撮像素子28までの距離が遠くなるため、光が届きにくい。このため、十分な量の光を指12に照射するために、CPU78は、赤外線光源16からの光量を強くするための制御を行う。
【0042】
また、同一の指12では、指先側と指根元側では幅が違うため、適切な光量値が異なる。よって、CPU78は、指先側と指根元側の光量値をそれぞれ独立に制御する。また、指12は、指先が細く、指根元ほど太くなるという特徴を利用し、指先側の光量が強くなるように、CPU78は、予め光量を調整し、指先側、指根元側の光量を同時に制御してもよい。
【0043】
CPU78は、光量の補正の終了と判定すると、DSP80に、撮像素子28で撮影された画像について歪み補正を行うように指令する。DSP80による歪み補正は、歪み特性に基づく演算によって行われる。したがって、生体認証装置の出荷前に、予めレンズユニット34の歪み特性を求めて、メモリ82に歪み特性を保存しておく。DSP80は、この歪み特性を参照して、撮像素子28で得られた各画素について歪み補正を行う。
【0044】
歪みがX%であると、画像中の補正対象画素に補正値(100/X)が乗じられて、画像中心(光軸)に対する画素位置が演算結果に基づいて補正される。歪みがプラスである場合には、画素位置が光軸側に補正され、歪みがマイナスである場合には、画素位置が光軸から離間する方向に補正される。
【0045】
次に、CPU78は、歪み補正後の画像をメモリ82に記憶し、補正後のモノクロ画像の各画素について濃淡を判定し、補正後の画像から静脈パターンまたは擬似パターンを抽出する(特徴点抽出)。
【0046】
赤外線光源16から指12に照射された赤外光は静脈中のヘモグロビンに吸収される一方、他の組織によって様々な方向に拡散するので、静脈パターンに対応した透過光がレンズユニット34を介して撮像素子28に至る。静脈パターンに相当する画素領域では透過光が吸収によって弱められるので、静脈パターンに相当する領域が暗くなったモノクロ画像が撮像素子28によって得られる。
【0047】
また赤外線光源16からカード型記録媒体14に照射された赤外光は保護層60、遮光層56、透明層54、遮光層58、保護層62を透過するので、擬似パターン64と解除マーク66に対応した透過光がレンズユニット34を介して撮像素子28に至る。擬似パターン64と解除マーク66に相当する画素領域では透過光が吸収によって弱められるので、擬似パターン64と解除マーク66に相当する領域が暗くなったモノクロ画像が撮像素子28によって得られる。
【0048】
CPU78は、このモノクロ画像から静脈パターンまたは擬似パターン64と解除マーク66を検出し、検出した静脈パターンまたは擬似パターン64と解除マーク66を用いて生体認証を行う。
【0049】
具体的には、抽出された静脈パターンと擬似パターン64をメモリ82に記録し、記録された静脈パターンと新たに抽出された静脈パターンとが一致するか否かの判定を行って本人認証の合否を決定する。また抽出された擬似パターン64と解除マーク66をメモリ82に記録し、記録された擬似パターンと新たに抽出された擬似パターンとが一致するか否かの判定を行って本人認証の合否を決定する。
【0050】
この際、CPU78は、本人の認証結果を情報処理装置や外部装置に通知する。この通知を用いて情報処理装置や外部装置はセキュリティに関するサービスなどをユーザに対して提供する。
【0051】
静脈パターンを登録するに際しては、図9(a)に示すように、ユーザが指12を生体認証装置の筐体10内に挿入すると(S1)、CPU78は、撮像素子28の画像を基に静脈パターンを取得し(S2)、取得した静脈パターンを特徴情報としてメモリ82に登録する(S3)。
【0052】
擬似パターンを登録するに際しては、図9(b)に示すように、ユーザが生体認証装置の筐体10内にカード型記録媒体14を挿入すると(S11)、CPU78は撮像素子28の画像を基に代替情報としての擬似パターン64を取得し(S12)、取得した擬似パターンをユーザ固有の情報としてメモリ82に登録する(S13)。
【0053】
また、透明層54に解除マーク66が描かれているときの擬似パターンを登録するに際しては、図9(c)に示すように、ユーザがカード型記録媒体14を筐体10内に挿入すると(S21)、CPU78は、撮像素子28の画像を基に代替情報の擬似パターン64と解除マーク66を取得し(S22)、取得した擬似パターン64と解除マーク66をユーザ固有の情報としてメモリ82に登録する(S23)。
【0054】
次に、本発明の第1実施形態の作用を図10のフローチャートにしたがって説明する。ユーザが筐体10内に指12を挿入すると(S31)、撮像素子28は、指12の特徴情報である静脈パターンの画像を検出する(S32)。このあと、CPU78は、撮像素子28の画像を取り込んで、認証に必要な画像を抽出したか、すなわち画像から、生体の一部の特徴情報である静脈パターンを抽出したか否かの判定を行う(S33)。
【0055】
CPU78は、認証に必要な画像を抽出したと判定したときには、抽出した特徴情報(静脈パターン)を基にメモリ82を参照し、抽出した静脈パターンとメモリ82に登録されている静脈パターンとの照合を行う(S34)。
【0056】
ここで、CPU78は、抽出した静脈パターンとメモリ82に登録されている静脈パターンとの照合が成功したか否かの判定を行う(S35)。CPU78は、照合が成功したときには、認証が成功(OK)として、すなわち、抽出した静脈パターンは、特定の生体(ユーザ)であることを決定し、認証に成功した旨をユーザに通知し(S36)、このルーチンでの処理を終了する。一方、CPU78は、照合が失敗であると判定したときには、認証に失敗(NG)した旨をユーザに通知し(S37)、このルーチンでの処理を終了する。
【0057】
一方、ステップS33において、認証に必要な画像が抽出されないと判定したときには、CPU78は、抽出画像がNGである旨をユーザに告知するとともに、ユーザにカード型記録媒体14の挿入を促す旨の処理を行う(S38)。
【0058】
このあと、CPU78は、筐体10内にカード型記録媒体14が挿入されたか否かの判定を行い(S39)、カード型記録媒体14が筐体10内に挿入されないときには、一定時間経過したか否かを判定し(S40)、一定時間経過したときには認証に失敗(NG)した旨をユーザに告知し(S41)、このルーチンでの処理を終了する。
【0059】
一方、CPU78は、ステップS39で筐体10内にカード型記録媒体14が挿入されたと判定したときには、撮像素子28の画像を基に解除マーク66を認識し(S42)、続いて擬似パターン64を認識する(S43)。この後、CPU78は、認識した擬似パターン64を基にメモリ82を参照し、認識した擬似パターン64とメモリ82に登録されている擬似パターンとの照合を行う(S44)。
【0060】
ここで、CPU78は、認識した擬似パターン64とメモリ82に登録されている擬似パターンとの照合が成功した否かを判定する(S45)。CPU78は、照合が成功したときには、認証に成功(OK)した旨をユーザに通知し(S46)、このルーチンでの処理を終了し、照合が失敗であるときには、認証に失敗(NG)した旨をユーザに通知し(S41)、このルーチンでの処理を終了する。
【0061】
これらの処理により、静脈パターンを登録することができる生体認証対応者は、指12を生体認証装置の筐体10に挿入することで本人認証を受けることができ、静脈パターンを登録することができない生体認証未対応者は、カード型記録媒体14を生体認証装置の筐体10に挿入することで本人認証を受けることができる。
【0062】
次に、本発明の第2実施形態の作用を図11のフローチャートにしたがって説明する。まず、ユーザが筐体10内にカード型記録媒体14を挿入すると(S51)、CPU78は、撮像素子28の画像を基に解除マーク66を認識したか否かを判定する(S52)。
【0063】
CPU78は、解除マーク66を認識したときには、続いて擬似パターン64を認識したか否かを判定する(S53)。
【0064】
CPU78は、ステップS52、S53において、解除マーク66または擬似パターン64を認識しないときには、カード型記録媒体14による認証が失敗(NG)である旨の告知をユーザに行い(S54)、このルーチンでの処理を終了する。
【0065】
一方、CPU78は、解除マーク66と擬似パターン64を認識したときには、認識した擬似パターン(代替パターン)64を基にメモリ82を参照し、認識した擬似パターン64とメモリ82に記録されている擬似パターンとの照合を行い(S55)、照合が成功したか否かの判定を行う(S56)。
【0066】
CPU78は、照合に成功したときには、カード型記録媒体14による認証に成功(OK)した旨の告知をユーザに行い(S57)、このルーチンでの処理を終了し、照合に失敗したときには、カード型記録媒体14による認証に失敗(NG)した旨の告知をユーザに行い(S58)、このルーチンでの処理を終了する。
【0067】
これらの処理により、静脈パターンを登録することができない生体認証未対応者は、カード型記録媒体14を生体認証装置の筐体10に挿入することで本人認証を受けることができる。
【0068】
次に、本発明の第3実施形態の作用を図12のフローチャートにしたがって説明する。まず、ユーザが筐体10内にカード型記録媒体14を挿入すると(S61)、CPU78は、撮像素子28の画像を基に解除マーク66を認識したか否かを判定する(S62)。CPU78は、解除マーク66を認識しないと判定したときには、カード型記録媒体14による認証は失敗(NG)である旨の告知をユーザに行い(S63)、このルーチンでの処理を終了し、解除マーク66を認識したときには、一旦カード型記録媒体14を筐体10から取り出すようにとのメッセージをユーザに対して行う(S64)。
【0069】
筐体10からカード型記録媒体14が取り出されたあと、筐体10内にユーザの指12が挿入されると(S65)、CPU78は、撮像素子28の画像を基に、何らかの静脈パターン(血管パターン)を認識したか否かの判定を行う(S66)。このとき、CPU78は、ユーザの指12から何らかの静脈パターン(血管パターン)を認識できないときには、カード型記録媒体14による認証に失敗(NG)した旨の告知をユーザに行い(S67)、このルーチンでの処理を終了し、何らかの静脈パターン(血管パターン)を認識したときには、筐体10内にカード型記録媒体14を再度挿入させるためのメッセージをユーザに対して行う(S68)。
【0070】
このあと、筐体10内にカード型記録媒体14が再度挿入されたときには、CPU78は、撮像素子28の画像を基に擬似パターン64を認識したか否かを判定する(S60)。このとき、CPU78は、擬似パターン64を認識しないときにはステップS67に移行し、カード型記録媒体14による認証に失敗した旨の告知を行い、擬似パターン64を認識したときには、認識した擬似パターン64を基にメモリ82を参照する。
【0071】
このあとCPU78は、認識した擬似パターン64とメモリ82に登録された擬似パターンとの照合を行い(S70)、照合が成功したか否かを判定する(S71)。このとき、CPU78は、照合に成功したときにはカードによる認証が成功(OK)である旨の告知をユーザに対して行い(S72)、照合に失敗したときには、カード型記録媒体14による認証に失敗(NG)した旨の告知をユーザに行い(S67)、このルーチンでの処理を終了する。
【0072】
これらの処理により、静脈パターンを登録することができない生体認証未対応者は、カード型記録媒体14を生体認証装置の筐体10に挿入することで本人認証を受けることができ、また、生体認証を受ける擬似動作を生体認証装置に要求することができる。
【0073】
図13は、本発明を入退出管理システム、例えば、セキュリティマンションに適用した際の実施形態に係わるものであり、第1の区画と、第1の区画に繋がる複数の第2の区画からなり、各区画の端部に本発明に係わる生体認証装置が設定されている。図13はセキュリティマンションの平面図を示している。図13において、セキュリティマンションは部屋A〜Gを備え、各部屋A〜Gは廊下90に面して配置されている。廊下90は、ロビーに隣接して配置されており、ロビーの中央部には、自動ドア94が配置され、自動ドア94の外側にはエントランス96が設けられている。
【0074】
自動ドア94近傍には、生体認証装置100が設置され、各部屋A〜Gのドア近傍には、生体認証装置100がそれぞれ設置されている。
【0075】
エントランス96に設置された生体認証装置100と各部屋A〜Gに設けられた生体認証装置100は同一のもので構成されている。エントランス96に設けられた生体認証装置100のメモリ82には、全ての部屋A〜Gの居住者に関する静脈パターンあるいは擬似パターン64が記録され、各部屋A〜Gの生体認証装置100のメモリ82には、各部屋A〜Gの居住者の静脈パターンあるいは擬似パターン64が記録されている。
【0076】
セキュリティマンションのいずれかの居住者がエントランス96の生体認証装置100の筐体10内に指12またはカード型記録媒体14を挿入すると、生体認証装置100による生体認証処理が実行される。
【0077】
例えば、居住者がエントランス96の生体認証装置100の筐体10内に指12を挿入すると、CPU78は、撮像素子28の撮像による画像から抽出した静脈パターンを基にメモリ82を参照し、抽出した静脈パターンとメモリ82に登録されている静脈パターンとの照合を行う。
【0078】
ここで、CPU78が照合に成功したと判定したときには、自動ドア94を制御対象とする制御部77の処理により、自動ドア94が開かれ、居住者は自動ドア94を介してロビー92や廊下90まで行くことができる。なお、CPU78が照合に失敗したと判定したときには、制御部77の処理により、自動ドア94は閉じたままとなる。このとき、CPU78は、筐体10内に指12を挿入した居住者に対して、認証に失敗した旨を通知する。
【0079】
一方、居住者がエントランス96の生体認証装置100の筐体10内に、指12の代わりに、カード型記録媒体14を挿入すると、CPU78は、撮像素子28の撮像による画像から抽出した擬似パターン64を基にメモリ82を参照し、抽出した擬似パターン64とメモリ82に記録されている擬似パターンとの照合を行う。
【0080】
ここで、CPU78が照合に成功したと判定したときには、制御部77の処理により、自動ドア94が開かれ、居住者は自動ドア94を介してロビー92や廊下90まで行くことができる。なお、CPU78が照合に失敗したと判定したときには、制御部77の処理により、自動ドア94は閉じたままとなる。このとき、CPU78は、筐体10内にカード型記録媒体14を挿入した居住者に対して、認証に失敗した旨を通知する。
【0081】
このあと、例えば、部屋Aの居住者が部屋Aの入口に設けられた生体認証装置100の筐体10内に指12またはカード型記録媒体14を挿入すると、生体認証装置100による生体認証処理が実行される。この場合も、エントランス96の生体認証装置100で実行された生体認証処理と同様の生体認証処理が実行される。そして、認証に成功すると、部屋Aの入口ドアが制御部77によって開かれ、居住者は部屋A内に入ることができる。なお、認証に失敗したときには、部屋Aの入口ドアは閉じたままである。
【0082】
本実施形態によれば、セキュリティマンションの居住者は、エントランスに設けられた生体認証装置100または各部屋A〜Gに設けられた生体認証装置100の筐体10内に指12またはカード型記録媒体14を挿入することで、自動ドア14を開閉したり、自分の部屋のドアを開閉したりすることができる。すなわち、静脈パターンを登録した居住者とともに、静脈パターンを登録できない居住者であっても、擬似パターン64を登録した居住者は、生体認証装置100による認証を受けることで、自動ドア94や自分の部屋のドアを開閉することができる。
【0083】
なお、本実施形態では、本発明をセキュリティマンションに適用したものについて述べたが、本発明は、ホテルや客船、一般のビル、学校、貸金庫、ロッカーエレベータ等の所謂入退出システムにも適用することができる。
【0084】
また、各部屋A〜Gに設けられた生体認証装置100と、エントランス96に設けられた生体認証装置100でそれぞれ本人認証を行う代わりに、各生体認証装置100をそれぞれサーバに接続し、各部屋A〜Gやエントランス96における本人認証をサーバが行うようにすることもできる。
【0085】
また、前記各実施形態では、生体認証装置を静脈認証装置として用いるものについて述べたが、本発明は、静脈認証装置以外の装置であって、指紋、手のひら静脈をパターンとして用いるものにも適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0086】
【図1】本発明に係る生体認証装置の一実施形態であって、指を認証対象としたときの状態を示す生体認証装置の要部断面図である。
【図2】本発明に係る生体認証装置の一実施形態であって、カード型記録媒体を認証対象としたときの状態を示す生体認証装置の要部断面図である。
【図3】指と光学系との位置関係を説明するための概略図である。
【図4】物高と歪み(%)との関係の一例を示す特性図である。
【図5】(a)はカード型記録媒体の斜視図であり、(b)はカード型記録媒体の拡大断面図である。
【図6】カード型記録媒体の透明層の斜視図である。
【図7】画像処理装置の機能ブロック図である。
【図8】画像処理装置のブロック図である。
【図9】(a)は静脈パターンの登録を説明するためのフローチャート、(b)は擬似パターンの登録を説明するためのフローチャート、(c)は擬似パターンと解除マークの登録を説明するためのフローチャートである。
【図10】本発明の第1実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図11】本発明の第2実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図12】本発明の第3実施形態の作用を説明するためのフローチャートである。
【図13】セキュリティマンションの構成を示す平面図である。
【符号の説明】
【0087】
10 筐体、12 指、14 カード型記録媒体、16 赤外線光源、28 撮像素子、54 透明層、56、58 遮光層、64 擬似パターン、66 解除マーク、78 CPU、82 メモリ、100 生体認証装置

【特許請求の範囲】
【請求項1】
生体から当該生体の特徴情報を検出して、前記生体の認証を行う生体認証装置において、
前記生体の一部から前記特徴情報を持った画像を検出する検出部と、
前記生体の一部を前記検出部に臨むように収容する収容部と、
を備え、
前記収容部は、前記生体の一部が存在しない状態で、前記特徴情報に代わる代替情報を備えたカード型記録媒体を前記検出部に対向するように収容し、前記検出部は、前記カード型記録媒体から前記代替情報を検出する、生体認証装置。
【請求項2】
前記画像から前記特徴情報を抽出する抽出部と、
前記特徴情報を生体毎に複数登録した記録部と、
前記抽出した前記特徴情報を、前記記録部を参照して照合する照合部と、
前記照合部による照合結果を通知する通知部と、
を備える、請求項1記載の生体認証装置。
【請求項3】
前記抽出部は、前記カード型記録媒体から前記代替情報を抽出し、
前記記録部は、前記生体毎に前記代替情報を記録し、
前記照合部は、前記抽出した代替情報に基づいて前記記録部を参照し、前記抽出した代替情報に関連する特定の生体を決定する、請求項2記載の生体認証装置。
【請求項4】
前記照合部は、前記抽出した前記特徴情報と前記記録部に記録された特徴情報とが一致したことを条件に、前記抽出した前記特徴情報に関連する特定の生体を決定する、請求項2記載の生体認証装置。
【請求項5】
前記抽出部は、前記カード型記録媒体に記録された特殊符号を抽出すると、前記照合部は、前記特徴情報の照合を行うことなく、前記代替情報を照合する、請求項3記載の生体認証装置。
【請求項6】
前記画像から前記特徴情報を抽出し、前記カード型記録媒体から前記代替情報を抽出する抽出部と、
前記特徴情報と前記代替情報をそれぞれ生体毎に複数登録した記録部と、
前記抽出部が特徴情報を抽出したときには、前記抽出した前記特徴情報と前記記録部に記録された特徴情報とを照合し、前記抽出部が代替情報を抽出したときには、前記抽出した代替情報と前記記録部に記録された代替情報とを照合する照合部と、
前記照合部による照合結果を通知する通知部と、
を備える、請求項1記載の生体認証装置。
【請求項7】
前記照合部の照合結果に従って制御対象を制御する制御部を備える、請求項6記載の生体認証装置。
【請求項8】
生体から当該生体の特徴情報を検出して、前記生体の認証を行う生体認証装置に適用されるカード型記録媒体であって、
前記特徴情報に代わる代替情報が描かれた透明層と、
当該透明層を遮光する遮光層と、
を備える、カード型記録媒体。
【請求項9】
前記透明層には、前記特徴情報による認証を前記生体認証装置に解除させるための特殊符号が描かれている、請求項8記載のカード型記録媒体。
【請求項10】
カード型記録媒体に記録された情報を検出して、生体の認証を行う生体認証方法であって、
前記カード型記録媒体から前記生体の特徴情報に代わる代替情報を検出するステップと、
前記ステップで検出された代替情報と前記生体毎に記録された代替情報とを照合するステップと、
前記ステップの照合結果を告知するステップと、
を備える、生体認証方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate


【公開番号】特開2010−20546(P2010−20546A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−180477(P2008−180477)
【出願日】平成20年7月10日(2008.7.10)
【出願人】(000153535)株式会社日立メディアエレクトロニクス (452)
【Fターム(参考)】