説明

生分解性チロシンキナーゼインヒビター硝子体内インプラント

【課題】 眼の硝子体へ小分子チロシンキナーゼインヒビターを一定速度で放出することができる生分解性ポリマーを含む生分解性眼内インプラントを提供する。
【解決手段】 小分子チロシンキナーゼインヒビターおよびポリカプロラクトンを含んでなり、眼の硝子体内に配置される生分解性眼内インプラント。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般に、患者の眼を治療する器具および方法、特に、インプラントを配置した眼に治療薬の長時間放出を与える眼内インプラント、ならびに、例えば、眼症状の1つ以上を治療するまたは軽減するための、そのようなインプラントの製造方法および使用法に関する。
【背景技術】
【0002】
網膜、硝子体、および眼球血管膜への薬剤の送達は、典型的には、高用量の全身投与、眼内注射または他の思い切った方法によって達成される。全身的に投与された薬剤の網膜への浸透は、大部分の化合物についての血液−網膜関門(BRB)によって、非常に制限される。眼内注射(例えば硝子体内注射)は、BRBが有するいくつかの制約を解決して、全身毒性の危険度を顕著に減らすにもかかわらず、眼内注射技術は、網膜剥離、硝子体に対する身体損害、外因性眼内炎を生じる場合があり、さらに、硝子体および眼内の他の組織で薬剤の高パルス濃度を生じる場合がある。
【0003】
化合物は、房水を介した排出を伴う後毛様小帯スペースへの拡散または網膜横断除去によって、硝子体から除去される。ほとんどの化合物は前者の経路を利用するが、親油性化合物およびトランスレチナール輸送機構を用いる化合物は後者を利用する。残念なことに、網膜を通って除去される化合物は、極めて短い半減期を有する。それ故、これらの化合物について、眼内直接注射によって治療的な濃度を維持することは難しく、したがって、頻繁な注射がしばしば必要である。
【0004】
さらに、網膜から消失する化合物が迅速に除去されるため、制御送達系の処方を挑戦的にする。例えば、チロシンキナーゼインヒビター(TKI)は、極めて短い眼内半減期を所有している場合があり、制御送達系の処方に対する挑戦をもたらす場合がある。本発明者らは、TKIを含有する眼内インプラントは勿論のこと、眼内投与することによって与えられる低分子TKIを知らない。
【0005】
米国特許第6713081号は、ポリビニルアルコールから製造され、制御的または持続的に眼に治療薬を送達するのに使用される眼球インプラント器具を開示している。該インプラントは、眼において、結膜下または硝子体内に配置しうる。
【0006】
眼への配置用の生体適合性インプラントは、下記のような多くの特許に開示されている:米国特許第4521210号、第4853224号、第4997652号、第5164188号、第5443505号、第5501856号、第5766242号、第5824072号、第5869079号、第6074661号、第6331313号、第6369116号および第6699493号。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
長期間にわたって、かつ負の副作用をほとんどまたは全く生じずに、治療薬を持続的または制御的速度で放出することができる眼内移植可能な薬剤送達システム、例えば眼内インプラント、およびそのようなシステムを使用する方法を提供することが好都合である。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、例えば1つまたはそれ以上の所望の治療効果を得るための、眼への長期間または持続的薬剤放出用の新規薬剤送達システム、ならびにそのようなシステムの製造方法および使用法を提供する。該薬剤送達システムは、眼に配置しうるインプラントまたはインプラント要素の形態である。本発明のシステムおよび方法は、好都合にも、1つまたはそれ以上の治療薬の長い放出時間を与える。従って、眼にインプラントを配置された患者は、薬剤の付加的投与を必要とせずに、長期間または延長された期間にわたって、治療量の薬剤を受ける。例えば、患者は、比較的長い期間にわたって、例えば、インプラントを配置されてから、少なくとも約1週間程度、例えば約1ヶ月〜約6ヶ月間にわたって、または1年を超える期間でさえ、実質的に一貫したレベルの治療的活性剤を、一貫した眼の治療のために得ることができる。そのような長い放出時間は、優れた治療効果を得ることを促進する。このインプラントは、侵襲的手段を減らし、断続的な投与に伴う高い一時的な濃度を減少しつつ、治療薬の延長された送達を可能にする。
【0009】
本明細書中の開示に従う眼内インプラントは、治療成分と、治療成分に付随する薬剤放出持続成分とを含む。インプラントは、固体、半固体、または粘弾性であってよい。本発明に従えば、治療成分は、チロシンキナーゼインヒビター(TKI)、例えば、チロシンキナーゼの活性を阻害または低下する薬剤または化合物を含み、これから本質的になり、またはこれのみからなる。TKIはさらに、低分子TKIであると理解し得る。薬剤放出持続成分は、インプラントが配置された眼にTKIを持続的に放出するための治療成分に付随する。TKIは、拡散、侵食、溶解または浸透によってインプラントから放出され得る。薬剤放出持続成分は、1つ以上の生分解性ポリマーまたは1つ以上の非生分解性ポリマーを含んでもよい。本発明のインプラントの生分解性ポリマーの例としては、ポリ−ラクチド−コ−グリコリド(PLGAおよびPLA)、ポリエステル、ポリ(オルトエステル)、ポリ(ホスファジン)、ポリ(ホスフェートエステル)、ポリカプロラクトン、天然ポリマー(例えばゼラチンまたはコラーゲン)、またはポリマーブレンドを挙げることができる。インプラントが眼に配置された時点から約1週間を超える期間、ある量のTKIが眼に放出され、眼症状を軽減するかまたは治療するのに効果的である。
【0010】
1つの態様では、眼内インプラントは、TKIと生分解性ポリマーマトリックスとを含む。TKIは、眼症状を治療するために有効な量のTKIをインプラントから持続的に放出するのに効果的な速度で分解する生分解性ポリマーマトリックスに付随する。眼内インプラントは、生分解性または生体侵食性であり、長期間、例えば1週間を超える期間、例えば約1ヶ月〜約6ヶ月またはそれ以上、眼にTKIを持続的に放出する。インプラントは、実質的に1つの方向で治療薬の放出を提供するために構成されてもよいか、またはインプラントは、インプラントの全ての表面から治療薬の放出を提供してもよい。
【0011】
上述のインプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性ポリマーの混合物であってもよく、またはマトリックスは、単一種の生分解性ポリマーを含んでよい。例えば、マトリックスは、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトンおよびそれらの組み合わせからなる群から選択されるポリマーを含み得る。
【0012】
別の態様では、眼内インプラントは、TKIを含む治療成分と、治療成分を覆うポリマー外層とを含む。ポリマー外層は、インプラントへ液体を送るのに有効で、TKIがインプラントの外側に流れ出すのに有効な1つ以上のオリフィスまたは開口または穴を含む。治療成分は、インプラントのコアまたは内部部分に提供され、ポリマー外層はコアを覆うかまたはコーティングする。ポリマー外層は、1つ以上の非生分解性部分を含んでよい。インプラントは、約2ヶ月を超える期間、約1年を超える期間、および約5年または約10年を超える期間、TKIの遅延性放出を提供することができる。このようなポリマー外層の被膜の一例は、米国特許第6,331,313号に開示される。
【0013】
有利には、本発明のインプラントは、眼からTKIが迅速に除去されるにもかかわらず、持続されたレベルで治療薬の持続送達または制御送達を提供する。例えば、本発明のインプラントは、TKIに関連する短い眼内半減期にもかかわらず、少なくとも約30日間から約1年間、治療的な量のTKIを送達可能である。移植後に得られるリンパ漿TKIレベルは非常に低く、それによって全身的な毒性の問題またはリスクが少なくなる。本発明のインプラントからのTKIの制御送達は、TKIを含有する液体処方物の眼内注射と関連する場合がある、毒性が減らされた状態または血液−房水関門および血液−網膜関門を低下させた状態でTKIが眼に投与されることを可能にする。
【0014】
本発明のインプラントを製造する方法は、TKIと生分解性ポリマーとを組み合わせるまたは混合する工程を含む。次いで、この混合物を押し出すかまたは圧縮して単一組成物を形成できる。次いで、この単一組成物を処理して、患者の眼に配置するのに適切な個々のインプラントを形成できる。
【0015】
本発明のインプラントを製造する別の方法は、TKIを含有するコア部分の周りにポリマー被覆を提供する工程を含み、ここで、このポリマー被覆は1つ以上の穴を有する。
【0016】
このインプラントは、種々の眼症状を治療する、例えば、非滲出性老化関連黄斑部変性、滲出性老化関連黄斑部変性、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経網膜症、類嚢胞黄斑部浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、ベーチェット症、糖尿病性網膜症、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉鎖、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー処置によって引き起こされた症状、光感作療法によって引き起こされた症状、光凝固、放射網膜症、網膜上膜、増殖性糖尿病網膜症、網膜枝静脈閉塞、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病網膜機能不全、網膜色素変性、眼腫瘍、眼新生物などと関連する少なくとも1つの症状を治療し、予防し、または軽減するために眼の領域に入れられてもよい。
【0017】
本発明のキットは、1つまたはそれ以上の本発明のインプラント、およびインプラントの使用説明書を含んで成ってよい。例えば、使用説明書は、患者へのインプラントの投与の仕方、およびインプラントで治療しうる症状のタイプを説明しうる。
【0018】
本発明は、チロシンキナーゼインヒビター(TKI)および生分解性ポリマーを含んでなる生分解性硝子体内インプラントをも包含する。インプラントは、眼の硝子体内にインプラントが配置された後、少なくとも1週間、インプラントからのTKIの放出を持続させるのに有効な速度でTKIを放出することができる。ポリマーは、ポリラクチド、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)、ポリカプロラクトン、それらの誘導体およびそれらの混合物であり得る。ポリマーは、眼の硝子体内にインプラントが配置された後、1ヶ月を超える期間、インプラントからのTKIの放出を持続させるのに有効な速度でTKIを放出することができる。TKIは、インプラントの約30重量%〜約70重量%の量で供給され得、生分解性ポリマーマトリックスは、インプラントの約30重量%〜約70重量%の量でポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含むことができる。より好ましくは、TKIは、インプラントの約40重量%〜約60重量%の量で供給され得、生分解性ポリマーマトリックスは、インプラントの約40重量%〜約60重量%の量でポリ(ラクチド−コ−グリコリド)を含むことができる。インプラントは、押出法により製造することができる。
【0019】
本発明の詳細な態様は、生分解性硝子体内インプラントの製造方法であって、TKIおよび生分解性ポリマーの混合物を押し出して、眼の硝子体内にインプラントが配置された後、少なくとも1週間、インプラントからのTKIの放出を持続させるのに有効な速度で分解する生分解性インプラントを形成する工程を含んでなる方法であり得る。混合物は、TKIおよび生分解性ポリマーから本質的になり得る。
【0020】
また、本発明は、患者の眼症状を治療する方法であって、患者の眼の硝子体内にTKIおよび生分解性ポリマーを含んでなる生分解性眼内インプラントを配置する工程を含んでなり、インプラントは、眼症状を治療するのに有効なTKIのインプラントからの放出を持続させるのに有効な速度で分解する、方法を包含する。この方法は、網膜眼症状、例えば緑内障または増殖性硝子体網膜症を治療するのに効果的であり得る。
【0021】
インプラントで使用されるTKIは、例えば、以下の構造の1つを有し得る:
【化1】

【0022】
本明細書に記載する個々のおよび全ての特徴、ならびにそのような特徴の2つまたはそれ以上の個々のおよび全ての組合せは、そのような組合せに含まれる特徴が互いに矛盾しないことを条件として、本発明の範囲に含まれる。さらに、任意の特徴または特徴の組合せは、本発明の任意の態様から特に除外しうる。
【0023】
本発明のさらなる局面および利点は、特に添付の図面と組み合わせて考慮される場合、以下の記載および特許請求の範囲に記載されている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0024】
本明細書中で記載されるように、1つ以上の眼内インプラントの使用を介した治療薬の制御投与および持続投与は、望ましくない眼症状の治療を改良し得る。インプラントは、医薬的に許容されるポリマー組成物を含み、1つ以上の医薬的に許容される活性薬剤(例えば、チロシンキナーゼインヒビター(TKI))を、長期間、放出するように処方される。インプラントは、1つ以上の望ましくない眼症状の1つ以上の症状を治療し、予防し、および/または軽減するために、眼の領域に直接、治療有効量の薬剤を供給するのに効果的である。このように、1回の投与で、治療薬は、患者に繰り返し注射されるよりも、または、自己投与点眼剤の場合には、活性薬剤に対する限定された突然の暴露による効果的ではない処置よりも、必要な部位で利用可能になり、長期間持続される。
【0025】
本明細書中の開示に従う眼内インプラントは、治療成分と、治療成分に付随する薬剤放出持続成分とを含む。本発明に従えば、治療成分は、TKIを含み、TKIから本質的になり、またはTKIのみからなる。薬剤放出持続成分は、インプラントが配置された眼に有効量の治療成分を持続的に放出するための治療成分に付随する。インプラントが眼に配置された時点から約1週間を超える期間、ある量の治療成分が眼に放出され、1つ以上の眼症状の少なくとも1つの症状、例えば、網膜色素上皮またはグリア細胞の移動または増殖が病気の原因であるかまたは病気の原因の一因となる病気を治療するかまたは軽減するのに効果的である。本発明のインプラントで治療されてもよい眼症状のいくつかの例としては、限定されないが、非滲出性老化関連黄斑部変性、滲出性老化関連黄斑部変性、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経網膜症、類嚢胞黄斑部浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、ベーチェット症、糖尿病性網膜症、未熟児網膜症、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉鎖、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー処置によって引き起こされた症状、光感作療法によって引き起こされた症状、光凝固、放射網膜症、網膜上膜、増殖性糖尿病網膜症、網膜枝静脈閉塞、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病網膜機能不全、網膜色素変性、眼腫瘍、眼新生物などが挙げられる。
【0026】
(定義)
以下の用語は、その用語の内容が異なる意味を示さない限り、以下に定義されるとおりである。
【0027】
本明細書において使用する場合、「眼内インプラント」は、眼に配置されるように構成され、寸法設定され、またはその他の設計を施された器具または要素を意味する。眼内インプラントは、一般に、眼の生理学的条件に生体適合性であり、不利な副作用を生じない。眼内インプラントは、視覚を損なわずに眼に配置しうる。
【0028】
本明細書において使用する場合、「治療成分」は、眼の医学的症状を治療するのに使用される1つまたはそれ以上の治療薬または物質を含んで成る眼内インプラントの部分を意味する。治療成分は、眼内インプラントの個別の領域であってもよく、またはインプラント全体に均一に分布させてもよい。治療成分の治療薬は、一般に、眼科的に許容され、インプラントを眼に配置した際に不利な反応を生じない形態で使用される。
【0029】
本明細書において使用する場合、「薬剤放出持続成分」は、インプラントの治療薬の持続放出を与えるのに有効な、眼内インプラントの部分を意味する。薬剤放出持続成分は、生分解性ポリマーマトリックスであってもよく、または治療成分を含んで成るインプラントのコア領域を覆う被覆物であってもよい。
【0030】
本明細書において使用する場合、「〜に付随する」は、〜と混合する、〜に分散する、〜にカップリングする、被覆する、または包囲することを意味する。
【0031】
本明細書において使用する場合、「眼の領域」または「眼の部位」は、眼の前区および後区を含む眼球の任意領域を一般に意味し、かつ、眼球に見出される任意の機能的(例えば、視覚用)または構造的組織、または眼球の内部または外部に部分的にまたは完全に並んだ組織または細胞層を一般に包含するが、それらに限定されない。眼領域における眼の領域の特定の例は、前眼房、後眼房、硝子体腔、脈絡膜、脈絡膜上腔、結膜、結膜下腔、強膜外隙、角膜内隙、角膜上隙、強膜、毛様体輪、外科的誘導無血管領域、網膜黄斑および網膜である。
【0032】
本明細書において使用する場合、「眼の症状」は、眼、または眼の部分または領域の1つを冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。一般に言えば、眼は、眼球、および眼球を構成している組織および流体(体液)、眼周囲筋(例えば、斜筋および直筋)、ならびに眼球の中かまたは眼球に近接した視神経の部分を包含する。
【0033】
前眼症状は、水晶体包の後壁または毛様体筋の前方に位置する、前眼(即ち、眼の前方)領域または部位、例えば、眼周囲筋、眼瞼または眼球組織または流体を冒しているか、またはそれに関係している疾患、不快または症状である。従って、前眼症状は、結膜、角膜、前眼房、虹彩、後眼房(網膜の後ろであるが、水晶体包の後壁の前)、水晶体または水晶体包、および前眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している。
【0034】
従って、前眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:無水晶体;偽水晶体;乱視;眼瞼痙攣;白内障;結膜疾患;結膜炎;角膜疾患;角膜潰瘍;眼乾燥症候群;眼瞼疾患;涙器疾患;涙管閉塞;近視;老眼;瞳孔障害;屈折障害および斜視。緑内障も前眼症状と考えられるが、その理由は、緑内障治療の臨床目的が、前眼房における水性液の高圧を減少させる(即ち、眼内圧を減少させる)ことでありうるからである。
【0035】
後眼症状は、後眼領域または部位、例えば、脈絡膜または強膜(水晶体包の後壁全体にわたる平面の後方位置)、硝子体、硝子体腔、網膜、視神経(即ち、視神経円板)、ならびに後眼領域または部位を血管新生化するかまたは神経支配する血管および神経を、主に冒しているかまたはそれに関係している疾患、不快または症状である。
【0036】
従って、後眼症状は、下記のような疾患、不快または症状を包含しうる:急性斑状視神経網膜疾患;ベーチェット病;脈絡膜新生血管形成;糖尿病性ブドウ膜炎;ヒストプラスマ症;感染症、例えば、真菌またはウイルスによる感染症;黄斑変性、例えば、急性黄斑変性、非滲出性老化関連黄斑変性および滲出性老化関連黄斑変性;浮腫、例えば、黄斑浮腫、類嚢胞黄斑浮腫および糖尿病性黄斑浮腫;多病巣性脈絡膜炎;後眼部位または領域を冒す眼の外傷;眼腫瘍;網膜障害、例えば、網膜中心静脈閉鎖、糖尿病性網膜症(増殖性糖尿病性網膜症を含む)、増殖性硝子体網膜症(PVR)、網膜動脈閉鎖性疾患、網膜剥離、ブドウ膜炎網膜疾患;交感性眼炎;フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群;ブドウ膜拡散;眼のレーザー治療によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光ダイナミック療法によって生じたかまたは影響を受けた後眼症状;光凝固、放射線網膜症、網膜上膜疾患、網膜枝静脈閉鎖、前虚血性視神経症(anterior ischemic optic neuropathy)、非網膜症糖尿病性網膜機能不全、色素性網膜炎および緑内障。緑内障は、その治療目標が、網膜細胞または視神経細胞の損傷または欠損による視力低下を予防するか、または視力低下の発生を減少させること(即ち、神経保護)であるので、後眼症状と考えることができる。
【0037】
「生分解性ポリマー」という用語は、生体内で分解する1つまたはそれ以上のポリマーを意味し、1つまたはそれ以上のポリマーの侵食は、治療薬の放出と同時かまたはそれに続いて、経時的に起こる。厳密に言えば、ポリマーの膨潤によって薬剤を放出する作用をするメチルセルロースのようなヒドロゲルは、「生分解性ポリマー」という用語から特に除外される。「生分解性」および「生体内分解性」という用語は、同意義であり、本明細書において互換的に使用される。生分解性ポリマーは、ホモポリマー、コポリマー、または3種類以上のポリマー単位を有するポリマーであってよい。
【0038】
本明細書において使用する場合、「治療する」、「治療すること」または「治療」という用語は、眼症状、眼の傷害または損傷の減少または回復または予防、または傷害または損傷を受けた眼組織の治癒を促進することを意味する。
【0039】
本明細書において使用する場合、「治療有効量」という用語は、眼または眼領域に有意な負のまたは不利な副作用を生じずに、眼症状を治療するか、眼傷害または損傷を減少させるかまたは予防するのに必要とされる薬剤のレベルまたは量を意味する。
【0040】
眼内インプラントは、種々の期間にわたって薬剤負荷量を放出することができるように開発されている。これらのインプラントは、眼(例えば眼の硝子体)に挿入された場合、長期間(例えば、約1週間以上)、治療レベルのTKIを提供する。開示されたインプラントは、例えば、非滲出性老化関連黄斑部変性、滲出性老化関連黄斑部変性、脈絡膜血管新生、急性黄斑視神経網膜症、類嚢胞黄斑部浮腫、糖尿病性黄斑浮腫、ベーチェット症、糖尿病性網膜症、網膜動脈閉塞性疾患、網膜中心静脈閉鎖、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー処置によって引き起こされた症状、光感作療法によって引き起こされた症状、光凝固、放射網膜症、網膜上膜、増殖性糖尿病網膜症、網膜枝静脈閉塞、前部虚血性視神経症、非網膜症糖尿病網膜機能不全、網膜色素変性、眼腫瘍、眼新生物などの眼症状を治療するのに効果的である。
【0041】
本発明の一態様では、眼内インプラントは生分解性ポリマーマトリックスを含む。生分解性ポリマーマトリックスは、薬剤放出持続成分の一種である。生分解性ポリマーマトリックスは、生分解性眼内インプラントを形成するのに効果的である。生分解性眼内インプラントは、生分解性ポリマーマトリックスに付随するTKIを含む。マトリックスは、インプラントが眼の領域または眼の部位(例えば眼球)に配置された時点から約1週間よりも長い期間、インプラントからのある量のTKIの放出を持続するのに効果的な速度で分解する。
【0042】
インプラントのTKIは、典型的には、チロシンキナーゼの活性を阻害または低減する薬剤である。TKIは、チロシンキナーゼ分子に直接作用することによってチロシンキナーゼ活性を阻害してもよく、または1つ以上の他の因子または薬剤とともに所望の阻害を達成してもよい。本発明のインプラントに有用なTKIの例は、米国特許出願第10/256,879号(米国特許出願公開第20030199478号)および同第10/259,703号(米国特許公開20030225152号)に記載されている。
【0043】
要するに、本発明のインプラントのTKIは、チロシンキナーゼシグナル形質導入を調節し、制御しおよび/または阻害することが可能な有機分子を包含する。本発明のインプラントにおいて有用ないくつかの化合物は、以下の式またはそれらの医薬的に許容される塩によって代表される:
【化2】

【0044】
[式中、R1は、ハロゲン、NO2、CN、C1〜C4アルキルおよびアリール、例えばフェニルからなる群から選択され;R2は、水素、C1〜C8アルキル、COCH3、CH2CH2OH、CH2CH2CH2OHおよびフェニルからなる群から選択され;Rは、D、ハロゲン、C1〜C8アルキル、CF3、OCF3、OCF2H、CH2CN、CN、SR2、(CR7R8CC(O)OR2、C(O)N(R22、(CR7R8COR2、HNC(O)R2、HN−C(O)OR2、(CR7R8CN(R22、SO2(CR7R8CN(R22、OP(O)(OR22、OC(O)OR2、OCH2O、HN−CH=CH、−N(COR2)CH2CH2、HC=N−NH、N=CH−S、O(CR7R8d−R6および(CR7R8C−R6、−NR2(CR7R8R6(ここで、R6は、ハロゲン、3−フルオロピロリジニル、3−フルオロピペリジニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、3−ピロリニル、ピロリジニル、メチルイソニペコテート、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルアミル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、モルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、ピペラジニル−2−オン、ピペラジニル、N−(2−メトキシエチル)エチルアミニル、チオモルホリニル、ヘプタメチレンイミニル、1−ピペラジニルカルボキサアルデヒド、2,3,6,7−テトラヒドロ−(1H)−1,4−ジアゼピニル−5(4H)−オン、N−メチルホモピペラジニル、(3−ジメチルアミノ)ピロリジニル、N−(2−メトキシエチル)−N−プロピルアミニル、イソインドリニル、ニペコタミジニル、イソニペコタミジニル、1−アセチルピペラジニル、3−アセトアミドピロリジニル、trans−デカヒドロイソキノリニル、cis−デカヒドロイソキノリニル、N−アセチルホモピペラジニル、3−(ジエチルアミノ)ピロリジニル、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカニニル、1−(2−メトキシエチル)−ピペラジニル、2−ピロリジン−3−イルピリジニル、4−ピロリジン−3−イルピリジニル、3−(メチルスルホニル)ピロリジニル、3−ピコリルメチルアミニル、2−(2−メチルアミノエチル)ピリジニル、1−(2−ピリミジル)−ピペラジニル、1−(2−ピラジニル)−ピペラジニル、2−メチルアミノメチル−1,3−ジオキソラン、2−(N−メチル−2−アミノエチル)−1,3−ジオキソラン、3−(N−アセチル−N−メチルアミノ)ピロリジニル、2−メトキシエチルアミニル、テトラヒドロフルフリルアミニル、4−アミノテトラヒドロピラン、2−アミノ−1−メトキシブタン、2−メトキシイソプロピルアミニル、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスタミル、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミニル、1−ベンジル−3−アミノピロリジル、2−(アミノメチル)−5−メチルピラジニル、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタンアミニル、(R)−3−アミノ−1−N−BOC−ピロリジニル、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル、4−アミノメチルテトラヒドロピラン、エタノールアミンおよびそれらのアルキル置換誘導体からなる群から選択される)、cが1の場合CR7R8はCH2
【化3】

およびCH2CH2CH2であってもよい;ただし、上記アルキルまたはフェニル基は、1つまたは2つのハロ、ヒドロキシまたは低級アルキルアミノ基で置換されていてもよく、上記式中、R7およびR8は、H、FおよびC1〜C4アルキルからなる群から選択されてもよいか、またはCR7R8は3〜6炭素の炭素環式環を表してもよく、好ましくはR7およびR8はHまたはCH3である。
bは0または1〜3の整数であり;
aは0または1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり;
cは0または1〜4の整数であり、
dは2〜5の整数である。
波線はEまたはZ結合を表す。]
【0045】
あるインプラントでは、TKIは、R1が、H(すなわちbが0);CH3、F、Clおよびフェニルからなる群から選択される、上記式で示される化合物である。
【0046】
好ましくは、Rは、CH3、CH2CH3、OCH3、OH、t−ブチル、F、CN、C(O)NH2、HNC(O)CH3、CH2C(O)OH、SO2NH2、C(O)OH、OCF2H、イソプロピル、C2H5OH、C(O)OCH3、CH2OH、NH-CH=CH、HC=N-N-H、N=CH-S、O(CR7R8dR6、(CR7R8CR6および-NR2(CR7R8dR6からなる群から選択され、ここで、R6は、3−フルオロピロリジニル、3−フルオロピペリジニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、3−ピロリニル、ピロリジニル、メチルイソニペコテート、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルアミル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、モルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、ピペラジニル−2−オン、ピペラジニル、N−(2−メトキシエチル)エチルアミニル、チオモルホリニル、ヘプタメチレンイミニル、1−ピペラジニルカルボキサアルデヒド、2,3,6,7−テトラヒドロ−(1H)−1,4−ジアゼピニル−5(4H)−オン、N−メチルホモピペラジニル、(3−ジメチルアミノ)ピロリジニル、N−(2−メトキシエチル)−N−プロピルアミニル、イソインドリニル、ニペコタミジニル、イソニペコタミジニル、1−アセチルピペラジニル、3−アセトアミドピロリジニル、trans−デカヒドロイソキノリニル、cis−デカヒドロイソキノリニル、N−アセチルホモピペラジニル、3−(ジエチルアミノ)ピロリジニル、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカニニル、1−(2−メトキシエチル)−ピペラジニル、2−ピロリジン−3−イルピリジニル、4−ピロリジン−3−イルピリジニル、3−(メチルスルホニル)ピロリジニル、3−ピコリルメチルアミニル、2−(2−メチルアミノエチル)ピリジニル、1−(2−ピリミジル)−ピペラジニル、1−(2−ピラジニル)−ピペラジニル、2−メチルアミノメチル−1,3−ジオキソラン、2−(N−メチル−2−アミノエチル)−1,3−ジオキソラン、3−(N−アセチル−N−メチルアミノ)ピロリジニル、2−メトキシエチルアミニル、テトラヒドロフルフリルアミニル、4−アミノテトラヒドロピラン、2−アミノ−1−メトキシブタン、2−メトキシイソプロピルアミニル、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスタミル、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミニル、1−ベンジル−3−アミノピロリジル、2−(アミノメチル)−5−メチルピラジニル、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタンアミニル、(R)−3−アミノ−1−N−BOC−ピロリジニル、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル、4−アミノメチルテトラヒドロピラニル、エタノールアミンおよびそれらのアルキル置換誘導体からなる群から選択され、例えば、R6はモルホリニルまたはCH2N(CH32である。
【0047】
さらに好ましくは、Rは、m−エチル、p−メトキシ、p−ヒドロキシ、m−ヒドロキシ、p−シアノ、m-C(O)NH2、p-HNC(O)CH3、p-CH2C(O)OH、p-SO2NH2、p-CH2OH、m-メトキシ、p-CH2CH2OH、HNCH=CH、HC=N-NH、p−モルホリニル、N=CH-S、p-OCHF2、p-COOH、p-CH3、p-OCH3、m-F、m-CH2N(C2H32、(CR7R8CR6、O(CR7R8dR6およびNR2(CR7R8dR6からなる群から選択される。
【0048】
Rが、2つの位置で上記フェニル環に結合した縮合環を表してもよい。例えば、CH2CH2CH2は、フェニル環の3位および4位(すなわちmおよびp)に結合してもよい。
【0049】
より好ましくは、Rは、フルオロ、メチル、(CR7R8CR6、O(CR7R8dR6およびNR2(CR7R8dR6からなる群から選択され、ここで、R6は、ジメチルアミノ、ジエチルアミノ、3−フルオロピロリジニル、3−フルオロピペリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、ピロリジニル、モルホリニル、ピペラジニル、ヘプタメチレンイミニル、テトラヒドロフルフリルアミニル、4−アミノテトラヒドロピラニル、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミニル、および4−アミノメチルテトラヒドロピランからなる群から選択される。
【0050】
特に、本発明のインプラントの化合物は、以下の表の化合物から選択され得る。
【0051】
非置換4−メチルおよび5−クロロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化4】

【表1】

【0052】
非置換4−メチルおよび5−クロロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化5】

【表2】

【0053】
非置換4−メチルおよび5−クロロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化6】

【表3】

【0054】
非置換4−メチルおよび5−クロロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化7】

【表4】

【0055】
非置換4−メチル、5−クロロおよび5−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化8】

【表5】

【0056】
非置換4−メチル、5−クロロおよび5−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化9】

【表6】

【0057】
非置換4−メチル、5−クロロおよび5−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化10】

【表7】

【0058】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化11】

【表8】

【0059】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化12】

【表9】

【0060】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化13】

【表10】

【0061】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化14】

【表11】

【0062】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化15】

【表12】

【0063】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−シアノ、5−フルオロ、5−ニトロ、6−フルオロおよび6−アリール 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化16】

【表13】

【0064】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−フルオロおよび6−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化17】

【表14】

【0065】
非置換4−フルオロ、4−メチル、5−クロロ、5−フルオロおよび6−フルオロ 3−[(置換フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン
【化18】

【表15】

【0066】
本発明のインプラントはさらに、以下の式で表されるTKIまたはTKIの組み合わせを含んでもよい。
【化19】

【化20】

【0067】
本発明のインプラントにおいて使用されてもよいさらなるTKIとしては、Goel et al., "Tyrosine Kinase Inhibitors: A Clinical Perspective", Current Oncology Reports, 4:9-19(2002); Haluska et al., "Receptor tyrosine kinase inhibitors", Current Opinion in Investigational Drugs, 2(2):280−286(2001); Hubbard et al., "Protein tyrosine kinase structure and function", Annu. Rev. Biochem., 69:373−98(2000); Busse et al., "Tyrosine kinase inhibitors:rationale,mechanisms of action, and implications for drug resistance", Semin Oncol 28(suppl 16)47-55(2001); and Fabbro et al., "Protein tyrosine kinase inhibitors:new treatment modalities?",Current Opinion in Pharmacology, 2: 374−381(2002)に開示される化合物が挙げられる。
【0068】
上記化合物は、通常の化学技術および米国特許出願第10/256,879号(米国特許出願公開第20030199478号)および同第10/259,703号(米国特許出願公開第20030225152号)および他の上記参考文献に開示されるものを含む方法を用いて合成されてもよい。
【0069】
本発明のインプラントはさらに、TKIの塩を含んでもよい。本発明の化合物の医薬的に許容される酸付加塩は、医薬的に許容されるアニオンを含有する非毒性付加塩を形成する酸から形成されるもの、例えば、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、硫酸塩、または硫酸水素酸塩、リン酸塩または酸リン酸塩、酢酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、シュウ酸塩、乳酸塩、酒石酸塩、クエン酸塩、グルコン酸塩、サッカレートおよびp−トルエンスルホン酸塩である。
【0070】
このように、インプラントは、TKI、それらの塩およびそれらの混合物を含み、これから本質的になり、またはこれのみからなる治療成分を含み得る。このようなインプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、ポリビニルアルコールが実質的に存在しなくてよく、言い換えると、ポリビニルアルコールを含まなくてよい。
【0071】
さらなるTKIは、従来の方法を用いて、例えば、当業者に知られている通常の化学合成方法によって得られるまたは合成され得る。治療的に有効なTKIは、本明細書中に記載されるTKIのために使用される従来のスクリーニング技術を用いてスクリーニングおよび同定し得る。
【0072】
TKIは、粒子状または粉末状であってよく、生分解性ポリマーマトリックスに封入されてもよい。通常、眼内インプラント中のTKI粒子は、約3000ナノメートル未満の有効平均寸法を有する。特定のインプラントでは、粒子は、3000ナノメートルよりも小さいオーダーの有効平均粒子寸法を有し得る。例えば、粒子は約500ナノメートル未満の有効平均粒子寸法を有してもよい。さらなるインプラントでは、粒子は、約400ナノメートル未満の有効平均粒子寸法を有してもよく、なおさらなる態様では、約200ナノメートル未満の有効平均粒子寸法を有してもよい。
【0073】
インプラントのTKIは、好ましくはインプラントの約10wt%〜90wt%である。さらに好ましくは、TKIは、インプラントの約20wt%〜80wt%である。好ましい態様では、TKIはインプラントの約40%(例えば、30%〜50%)を占める。別の態様では、TKIはインプラントの約60wt%を占める。
【0074】
インプラントにおいて使用するのに適したポリマー材料または組成物としては、眼の機能または生理機能を実質的に阻害しないような眼と適合性の(すなわち、生体適合性の)材料が挙げられる。このような材料は、好ましくは、少なくとも部分的に、さらに好ましくは、実質的に完全に生分解性または生体分解(侵食)性である。
【0075】
有用なポリマー材料の例としては、限定されないが、分解した際に生理学的に許容される分解生成物(モノマーを含む)を生じる、有機エステルおよび有機エーテルから誘導される材料、および/または有機エステルおよび有機エーテルを含む材料が挙げられる。また、酸無水物、アミド、オルトエステルなどから、それら自体または他のモノマーと組み合わせて、誘導されるポリマー材料および/または酸無水物、アミド、オルトエステルなどをそれら自体または他のモノマーと組み合わせて含むポリマー材料も、使用され得る。ポリマー材料は、付加ポリマーまたは縮合ポリマーであってよく、有利には縮合ポリマーである。ポリマー材料は、架橋または非架橋であってよく、例えば、せいぜい架橋度が小さい、例えば、ポリマー材料の約5%未満、または約1%未満が架橋されていてもよい。ほとんどの場合、ポリマーは、炭素および水素以外に少なくとも1つの酸素および窒素、有利には酸素を含む。酸素は、オキシ(例えば、ヒドロキシまたはエーテル、カルボニル)、例えば、非オキソ−カルボニル(例えば、カルボン酸エステル)などとして存在してよい。窒素は、アミド、シアノおよびアミノとして存在してよい。ポリマーは、Heller, Biodegradable Polymers in Controlled Drug Delivery, In: CRC Critical Reviews in Therapeutic Drug Carrier Systems, Vol. 1, CRC Press, BOCa Raton, FL 1987, 39-90頁に記載され、この文献には、本発明のインプラントにおいて採用し得る、制御された薬剤送達のためのカプセル化が記載されている。
【0076】
さらに興味深いのは、ヒドロキシ脂肪族カルボン酸のポリマー(ホモポリマーまたはコポリマーのいずれか)、および多糖類である。興味深いポリエステルとしては、D−乳酸、L−乳酸、ラセミ体乳酸、グリコール酸のポリマー、ポリカプロラクトン、およびそれらの組み合わせが挙げられる。一般に、L−ラクテートまたはD−ラクテートを使用することによって、ゆっくりと分解するポリマーまたはポリマー材料が達成され、一方、この分解は、ラクテートのラセミ化合物を用いて実質的に促進される。
【0077】
有用な多糖類の中で、限定されないが、アルギン酸カルシウム、および官能化セルロースが挙げられ、特に、水不溶性に特徴があるカルボキシメチルセルロースエステル(例えば、約5kD〜500kD)が挙げられる。
【0078】
興味深い他のポリマーとしては、限定されないが、生体適合性であり、生分解性および/または生体分解性であってよい、ポリエステル、ポリエーテルおよびそれらの組み合わせが挙げられる。
【0079】
本発明において使用するためのポリマーまたはポリマー材料のいくつかの好ましい特徴としては、生体適合性、治療成分との適合性、本発明の薬剤送達系の製造におけるポリマーの使用容易性、少なくとも約6時間(好ましくは約1日を超える時間)の生理学的環境における半減期、硝子体の粘度を顕著に上昇しないこと、および水不溶性を挙げることができる。
【0080】
マトリックスを形成するために含まれる生分解性ポリマー材料は、望ましくは、酵素不安定性または加水分解不安定性を有する。水溶性ポリマーは、有用な水不溶性ポリマーを提供するために、不安定な加水分解性または生分解性架橋で架橋されてよい。安定度は、モノマーの選択、ホモポリマーまたはコポリマーのいずれが使用されるか、ポリマーの混合物が使用されるか、ポリマーが末端酸基を含むか否かに依存して、広範囲に変化することができる。
【0081】
ポリマーの生分解性を制御することによりインプラントの放出プロフィールを延長することに対して同様に重要なのは、インプラント中で使用されるポリマー組成物の相対平均分子量である。異なる分子量を有する同じまたは異なるポリマー組成物が、放出プロフィールを調整するためにインプラント中に含まれてもよい。特定のインプラントでは、ポリマーの相対平均分子量は、約9〜約64kDの範囲、一般に約10〜約54kD、より一般には約12kD〜約45kDの範囲である。
【0082】
いくつかのインプラントでは、グリコール酸および乳酸のコポリマーが使用され、ここで、生分解速度は、グリコール酸対乳酸の比によって制御される。最も迅速に分解するコポリマーは、ほぼ同量のグリコール酸および乳酸を含む。ホモポリマー、または等しい比以外の比を有するコポリマーは、分解に対してさらに耐性である。グリコール酸対乳酸の比率はさらに、インプラントのもろさに影響を与え、より可とう性のインプラントは、さらに大きい幾何形状のために望ましい。ポリ乳酸ポリグリコール酸(PLGA)コポリマー中のポリ乳酸の割合(%)は0〜100%であることができ、好ましくは約15〜85%、さらに好ましくは約35〜65%である。いくつかのインプラントでは、50/50のPLGAコポリマーが使用される。
【0083】
眼内インプラントの生分解性ポリマーマトリックスは、2種以上の生分解性ポリマーの混合物を含んでもよい。例えば、インプラントは、第1の生分解性ポリマーと異なる第2の生分解性ポリマーとを含んでもよい。生分解性ポリマーの1種以上は、末端酸基を有していてもよい。
【0084】
侵食可能なポリマーからの薬剤の放出は、いくつかの機構または機構の組み合わせの結果である。これらの機構のいくつかは、インプラント表面からの脱離、溶解、水和ポリマーの多孔性チャンネルを介した拡散、および侵食を含む。侵食は、バルクまたは表面またはそれら両方の組み合わせであってよい。本明細書に記載されているように、眼内インプラントのマトリックスは、眼に移植された1週間後を超える期間、ある量のTKIを持続的に放出するのに効果的な速度で薬剤を放出し得る。特定のインプラントでは、治療量のTKIが、約1ヶ月を超える期間、さらに約6ヶ月以上の期間、放出される。
【0085】
生分解性眼内インプラントの一例は、TKIと、ポリ(ラクチド−コ−グリコリド)またはポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)を含む生分解性ポリマーマトリックスとを含む。インプラントは、インプラントの約20wt%〜約60wt%の量のTKIを有し得る。このような混合物は、インプラントが眼に配置された時点から約1ヶ月〜約6ヶ月の期間、治療有効量のTKIを持続的に放出するのに効果的である。
【0086】
生分解性眼内インプラントの別の例は、TKIと、1種類のポリマーを含む生分解性ポリマーマトリックスとを含む。例えば、生分解性ポリマーマトリックスは、ポリカプロラクトンから本質的になってもよい。ポリカプロラクトンは、約10〜約20キロダルトン、例えば約15キロダルトンの分子量を有し得る。これらのインプラントは、少なくとも約70日間、ほぼ線形の放出速度を提供することができる。
【0087】
生分解性ポリマーマトリックスを含む眼内インプラントからのTKIの放出は、放出されたTKIの量を徐々に増加させることによる初期の大量な突発的な暴露を含んでもよいか、またはこの放出は、放出の増加によるTKIの放出における初期の遅れを含んでもよい。インプラントが実質的に完全に分解したら、放出したTKIの割合は約100である。既存のインプラントと比較して、本明細書に開示されるインプラントは、眼に配置されてから約1週間経過するまでに、完全には放出しないか、または約100%のTKIを放出する。
【0088】
インプラントの寿命全期間にわたって、インプラントからのTKIの比較的一定速度の放出を提供することが望ましいことがある。例えば、インプラントの寿命の間、TKIが約0.01μg〜約2μg/日の量で放出されることが望ましいことがある。しかし、放出速度は、生分解性ポリマーマトリックスの組成に依存して増加するかまたは減少するかのいずれかに変化する場合がある。それに加えて、TKIの放出プロフィールは、1つ以上の線形部分および/または1つ以上の非線形部分を含んでもよい。好ましくは、放出速度は、一旦インプラントが分解または侵食し始めると、ゼロより大きい。
【0089】
インプラントは、一体型(すなわち、ポリマー性マトリックス内に均一に分散した活性薬剤を含有)であってもよいか、またはカプセル化されていてもよい(ここで、活性薬剤の貯蔵部がポリマー性マトリックスによってカプセル化されている)。製造の容易性の故に、通例、カプセル化形態よりも一体型インプラントが好ましい。しかし、カプセル化貯蔵部型インプラントによって与えられるより大きい制御はいくつかの環境において利点を有することがあり、この場合、薬剤の治療レベルは狭い範囲にある。加えて、TKIを含む治療成分は、マトリックス中の非均一パターンで分布してもよい。例えば、インプラントは、インプラントの第2の部分に比べ、より大きな濃度のTKIを有する部分を含んでいてもよい。
【0090】
1つのこのようなインプラント100を図14に示す。インプラント100は、一方向薬剤送達器具であると理解される。インプラント100は、第1の部分110と第2の部分120とを含むことに特徴がある。第1の部分110は、治療薬(例えばTKI)と、生分解性ポリマーマトリックス(例えば、PLGA、PLAのマトリックス、またはそれらの組み合わせ)との混合物を含む。第2の部分120は、ポリマー(例えば生分解性ポリマー)を含み、治療薬を実質的に含まない。第1の部分110および第2の部分120のポリマー成分は、同じポリマー材料を含んでもよく、例えば、両方の成分がPLGAポリマーから製造されてもよい。治療薬はTKIであるが、他のインプラントは、本明細書中に記載されるものを含む他の治療薬を含んでいてもよい。第1の部分110は活性層であると理解され、第2の部分120はバリア層であると理解されてよく、後者は、インプラントの片側からの治療薬の拡散を防止または減少するのに有効である。これらの層はフィルムとして別個に形成されてもよく、例えば、Carverプレスを用いて一緒にプレスされてもよい。または、これらの層は、従来の押出技術を用いて共押出されてもよいか、または射出成形技術を用いて射出成形されてもよい。インプラント110は、特定の方向(例えば一方向)における治療薬の流れまたは放出を制御するのに有効である。インプラントは、例えば、結膜下適用のために、特定の様式および制御された様式での治療薬の放出を必要とする疾患位置(例えば眼)に適用することができる。
【0091】
本発明のインプラントはさらに、本明細書中に記載されるように、TKIとポリカプロラクトンとの組み合わせを含んでもよい。このようなインプラントは、眼に配置された後約70日間以上、単一オーダーの放出速度を与えてもよい。ポリカプロラクトンは約15キロダルトンの分子量を有し得る。すなわち、本発明のインプラントの一態様は、溶解性の低い薬剤または治療薬と、実質的に線形の放出速度で(例えば、ゼロ次速度で)薬剤を放出する単一ポリマー成分とを含む。
【0092】
本発明のインプラントはさらに、本明細書に記載されるように、非生分解性ポリマー成分を含んでいてもよい。治療薬(例えばTKI)の放出は、1つ以上の開口、オリフィスまたは穴を通る治療薬の移動によって達成されてもよい。このようなインプラントの例は、米国特許第6,331,313号に開示されている。
【0093】
本明細書に開示される眼内インプラントは、針を用いて投与するために約5μm〜約2mm、または約10μm〜約1mmの寸法、外科移植による投与のために1mmを超える、または2mmを超える、例えば3mmまたは10mmまでの寸法を有し得る。ヒトの硝子体腔は、種々の幾何形状を有する、例えば1〜10mmの長さを有する比較的大きなインプラントを収容することができる。インプラントは、約2mm×0.75mm直径の寸法を有する円筒状ペレット(例えば棒)であってもよい。あるいは、インプラントは、約7mm〜約10mmの長さ、約0.75mm〜約1.5mmの直径を有する円筒状ペレットであってもよい。
【0094】
インプラントはさらに、眼(例えば硝子体)内へのインプラントの挿入を容易にするため、およびインプラントの収容を容易にするために、少なくともいくらか可撓性であってもよい。インプラントの全重量は、通常約250〜5000μg、さらに好ましくは500〜1000μgである。例えば、インプラントは約500μg、または約1000μgであってもよい。非ヒト個体について、インプラントの寸法および全重量は、個体の種類に依存して、より大きくてもより小さくてもよい。例えば、ウマの約30ml、ゾウの約60〜100mlと比較して、ヒトの硝子体体積は、約3.8mlである。ヒトに使用するために寸法設計されたインプラントは、他の動物についてのインプラントに応じて寸法を大きくするかまたは小さくしてもよく、例えば、ウマに対するインプラントは約8倍、または、例えばゾウについてのインプラントは約26倍大きい。
【0095】
インプラントは、中心が1つの材料から成り、表面が同じまたは異なる組成の1つ以上の層を有するように調製することができ、これらの層は、架橋されているか、または異なる分子量を有するか、または異なる密度または多孔度などを有することができる。例えば、薬剤の初期のボーラスを迅速に放出することが望ましい場合、中心は、初期分解速度を高めるために、ポリラクテート−ポリグリコレートコポリマーでコーティングされたポリラクテートであってもよい。あるいは、中心は、外側のポリラクテートの分解の際に、中心が溶解し、眼から迅速に洗い流されるため、ポリラクテートでコーティングされたポリビニルアルコールであってもよい。
【0096】
インプラントは、繊維、シート、フィルム、微小球、球、円板、平板などを含む任意の幾何形状であってよい。インプラントの寸法の上限は、インプラントの許容性、挿入の際の寸法制限、取扱いの容易性などの因子によって決定される。シートまたはフィルムを使用する場合、シートまたはフィルムは、取扱いの容易性のために、約0.1〜1.0mの厚みを有して、少なくとも約0.5mm×0.5mm、通常は約3〜10mm×5〜10mmの範囲である。繊維を使用する場合、繊維の直径は一般に約0.05〜3mmの範囲であり、繊維の長さは一般に約0.5〜10mmの範囲である。球は、他の形状の粒子に匹敵する体積を有し、その直径は約0.5μm〜約4mmの範囲であってよい。
【0097】
インプラントの寸法および形状はさらに、放出速度、治療期間および移植部位での薬剤濃度を制御するために使用することができる。より大きなインプラントは、比例して大きな用量を送達するが、質量比に対する表面に依存して、よりゆっくりとした放出速度を有し得る。インプラントの特定の寸法および幾何形状は、移植部位に適するように選択される。
【0098】
TKI、ポリマー、および任意の他の改質剤の割合は、種々の割合を有するいくつかのインプラントを処方することにより経験的に決定され得る。USP承認の溶解または放出試験方法を使用して、放出速度を測定することができる(USP 23;NF 18(1995), p.1790-1798)。例えば、無限沈下法(infinite sink method)を使用して、秤量したインプラント試料を、水中に0.9%NaClを含有する測定容量の溶液に添加すると、該溶液容量は、放出後の薬剤濃度が飽和の5%未満であるような容量になる。混合物を37℃に維持し、ゆっくり撹拌して、インプラントを懸濁状態に維持する。時間の関数としての溶解薬剤の外観を、当分野で既知の種々方法、例えば、分光光度的に、HPLC、質量分析等によって、吸収が一定になるまでか、または90%を超える薬剤が放出されるまで、追跡しうる。
【0099】
本明細書に開示される眼内インプラントに含まれるTKIに加えて、眼内インプラントは、1つまたはそれ以上の付加的な眼科的に許容される治療剤も含有しうる。例えば、インプラントは、1つまたはそれ以上の抗ヒスタミン薬、1つまたはそれ以上の抗生物質、1つまたはそれ以上のβ遮断薬、1つまたはそれ以上のステロイド、1つまたはそれ以上の抗新生物薬、1つまたはそれ以上の免疫抑制薬、1つまたはそれ以上の抗ウイルス薬、1つまたはそれ以上の酸化防止剤、およびそれらの混合物を含有しうる。
【0100】
本発明のシステムに使用しうる薬理学的または治療的薬剤は、米国特許第4474451号第4〜6欄、および同第4327725号第7〜8欄に開示されている薬剤を包含するが、それらに限定されない。
【0101】
抗ヒスタミン薬の例は、ロラタジン、ヒドロキシジン、ジフェンヒドラミン、クロルフェニラミン、ブロムフェニルアミン、シプロヘプタジン、テルフェナジン、クレマスチン、トリプロリジン、カルビノキサミン、ジフェニルピラリン、フェニンダミン、アザタジン、トリペレナミン、デクスクロルフェニラミン、デクスブロムフェニラミン、メトジラジン、およびトリメプラジン、ドキシラミン、フェニラミン、ピリラミン、クロルシクリジン、トンジラミン、ならびにそれらの誘導体であるが、それらに限定されない。
【0102】
抗生物質の例は、セファゾリン、セフラジン、セファクロール、セファピリン、セフチゾキシム、セフォペラゾン、セフォテタン、セフトキシム(cefutoxime)、セフォタキシム、セファドロキシル、セフタジジム、セファレキシン、セファロチン、セファマンドール、セフォキシチン、セフォニシド、セフォラニド、セフトリアキソン、セファドロキシル、セフラジン、セフロキシム、シクロスポリン、アンピシリン、アモキシリン、シクラシリン、アンピシリン、ペニシリンG、ペニシリンVカリウム、ピペラシリン、オキサシリン、バカンピシリン、クロキサシリン、チカルシリン、アズロシリン、カルベニシリン、メチシリン、ナフシリン、エリスロマイシン、テトラサイクリン、ドキシサイクリン、ミノサイクリン、アズトレオナム、クロラムフェニコール、塩酸シプロフロキサシン、クリンダマイシン、メトロニダゾール、ゲンタマイシン、リンコマイシン、トブラマイシン、バンコマイシン、硫酸ポリミキシンB、コリスチメテート、コリスチン、アジスロマイシン、オーグメンチン、スルファメトキサゾール、トリメトプリム、ガチフロキサシン、オフロキサシンおよびそれらの誘導体であるがそれらに限定されない。
【0103】
β遮断薬の例は、アセブトロール、アテノロール、ラベタロール、メトプロロール、プロプラノロール、チモロール、およびそれらの誘導体である。
【0104】
ステロイドの例は、コルチコステロイド、例えば、コルチゾン、プレドニゾロン、フルオロメトロン、デキサメタゾン、メドリゾン、ロテプレドノール(loteprednol)、フルアザコート、ヒドロコルチゾン、プレドニゾン、ベタメタゾン、プレドニゾン、メチルプレドニゾロン、トリアムシノロンヘキサアセトニド、酢酸パラメタゾン、ジフロラゾン、フルオシノニド、フルオシノロン、トリアムシノロン、それらの誘導体、ならびにそれらの混合物である。
【0105】
抗新生物薬の例は、アドリアマイシン、シクロホスファミド、アクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、エピルビシン、マイトマイシン、メトトレキサート、フルオロウラシル、カルボプラチン、カルムスチン(BCNU)、メチル−CCNU、シスプラチン、エトポシド、インターフェロン、カンプトテシンおよびその誘導体、フェネステリン、タキソールおよびその誘導体、タキソテールおよびその誘導体、ビンブラスチン、ビンクリスチン、タモキシフェン、エトポシド、ピポスルファン、シクロホスファミド、およびフルタミド、ならびにそれらの誘導体である。
【0106】
免疫抑制薬の例は、シクロスポリン、アザチオプリン、タクロリムスおよびそれらの誘導体である。
【0107】
抗ウイルス薬の例は、インターフェロンガンマ、ジドブジン、塩酸アマンタジン、リバビリン、アシクロビル、バラシクロビル、ジデオキシシチジン、ホスホノ蟻酸、ガンシクロビルおよびそれらの誘導体である。
【0108】
酸化防止剤の例は、アスコルベート、α−トコフェロール、マンニトール、還元型グルタチオン、種々のカロテノイド、システイン、尿酸、タウリン、チロシン、スーパーオキシドジスムターゼ、ルテイン、ゼアキサンチン、クリプトキサンチン、アスタキサンチン、リコペン、N−アセチル−システイン、カルノシン、γ−グルタミルシステイン、ケルセチン、ラクトフェリン、ジヒドロリポ酸、シトレート、イチョウエキス、茶カテキン、ビルベリーエキス、ビタミンEまたはビタミンEのエステル、レチニルパルミテート、およびそれらの誘導体である。
【0109】
他の治療薬は、スクアラミン、炭酸脱水酵素阻害薬、αアゴニスト、プロスタミド、プロスタグランジン、駆虫薬、抗真菌薬、およびそれらの誘導体を包含する。
【0110】
個々にまたは組み合わせてインプラントに使用される1つまたはそれ以上の活性剤の量は、必要とされる有効投与量、およびインプラントからの所望放出速度に依存して広く変化する。本明細書に示すように、薬剤は、インプラントの少なくとも約1wt%、より一般的には少なくとも約10wt%であり、かつ、一般に約80wt%以下、より一般的には約40wt%以下である。
【0111】
本明細書に開示する眼内インプラントは、治療成分に加えて、有効量の緩衝剤、防腐剤等も含有しうる。好適な水溶性緩衝剤は、アルカリおよびアルカリ土類炭酸塩、燐酸塩、炭酸水素塩、クエン酸塩、硼酸塩、酢酸塩、琥珀酸塩等、例えば、燐酸、クエン酸、硼酸、酢酸、炭酸水素、炭酸等のナトリウム塩を包含するが、それらに限定されない。これらの緩衝剤は、システムのpHを約2〜約9、より好ましくは約4〜約8に維持するのに充分な量で存在するのが好都合である。従って、緩衝剤は、全インプラントの約5wt%もの量で存在する場合もある。好適な水溶性防腐剤は、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸水素ナトリウム、チオ硫酸ナトリウム、アスコルベート、塩化ベンザルコニウム、クロロブタノール、チメロサール、酢酸フェニル水銀、硼酸フェニル水銀、硝酸フェニル水銀、パラベン、メチルパラベン、ポリビニルアルコール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール等、およびそれらの混合物を包含する。これらの防腐剤は、0.001〜約5wt%、好ましくは0.01〜約2wt%の量で存在しうる。
【0112】
さらに、インプラントは、溶解促進成分を含有していない実質的に同じインプラントと比較して、TKIの溶解性を増加させるのに有効な量で使用される溶解促進成分を含有しうる。例えば、インプラントは、TKIの溶解性を増加させるのに有効なβ−シクロデキストリンを含有しうる。β−シクロデキストリンは、インプラントの約0.5%(w/w)〜約25%(w/w)の量で使用しうる。特定のインプラントにおいて、β−シクロデキストリンは、インプラントの約5%(w/w)〜約15%(w/w)の量で使用される。
【0113】
ある場合には、同じかまたは異なる薬理学的物質を使用して、インプラントの混合物を使用しうる。この場合、単一投与によって二相または三相放出を与える放出プロフィールの組み合わせが得られ、放出のパターンがかなり変化しうる。インプラントは、シグモイド型放出プロフィールを有していてもよい。
【0114】
さらに、米国特許第5869079号に記載されているような放出調節剤もインプラントに含有させてよい。使用される放出調節剤の量は、所望の放出プロフィール、調節剤の活性、および調節剤の不存在下のTKIの放出プロフィールに依存する。電解質、例えば塩化ナトリウムおよび塩化カリウムも、インプラントに含有させてよい。緩衝剤または促進剤が親水性である場合、それは放出促進剤としても作用しうる。親水性添加剤は、薬剤粒子を囲んでいる材料のより速い溶解(これは、露出した薬剤の表面積を増加させ、それによって薬剤の生体内分解速度を増加させる)によって、放出速度を増加させる作用をする。同様に、疎水性緩衝剤または促進剤は、よりゆっくり溶解し、薬剤粒子の露出を遅くし、それによって薬剤の生体内分解速度を遅くする。
【0115】
種々の方法を使用して、本明細書に開示するインプラントを製造しうる。有用な方法は、溶媒蒸発法、相分離法、界面法、成形法、射出成形法、押出法、同時押出法、カーバープレス(carver press)法、ダイ打抜き法、熱圧縮法、それらの組合せ等であるが、必ずしもそれらに限定されない。
【0116】
特定の方法が、米国特許第4997652号に記載されている。押出法を使用して、製造における溶媒の必要性を回避しうる。押出法を使用する場合、ポリマーおよび薬剤は、製造に必要とされる温度(一般に、低くとも約85℃)において安定であるように選択される。押出法は、約25℃〜約150℃、より好ましくは約65℃〜約130℃の温度を使用する。インプラントは、薬剤/ポリマー混合のために、約0〜1時間、0〜30分間、または5〜15分間にわたって、温度を約60℃〜約150℃、例えば約130℃にすることによって製造しうる。例えば、時間は、約10分間、好ましくは約0〜5分間であってよい。次に、インプラントを、約60℃〜約130℃、例えば約75℃の温度で押し出す。
【0117】
さらに、インプラントを同時押出してもよく、それによってインプラントの製造の間に、コア領域に被膜を形成しうる。
【0118】
圧縮法を使用してインプラントを製造してもよく、圧縮法は、一般に、押出法より速い放出速度のインプラントを生じる。圧縮法は、約3.5〜10bar(約50〜150psi)、より好ましくは約4.8〜5.5bar(約70〜80psi)、さらに好ましくは約5.2bar(約76psi)の圧力を使用し、約0℃〜約115℃、より好ましくは約25℃の温度を使用する。
【0119】
本発明のインプラントは、2〜3mmの強膜切開後の鉗子またはトロカールによる配置を包含する種々の方法によって、眼、例えば眼の硝子体腔に挿入しうる。インプラントを眼に挿入するのに使用しうる器具の1つの例は、米国特許出願公開第2004/0054374号に開示されている。配置方法は、治療成分または薬剤放出速度論に影響を与えうる。例えば、トロカールでのインプラントの送達は、鉗子による配置より、硝子体内に深くインプラントを配置し、それによって、インプラントを硝子体の縁により近づけうる。インプラントの位置は、要素の周囲の治療成分または薬剤の濃度勾配に影響を与える場合があり、従って、放出速度に影響を与えうる(例えば、硝子体の縁の近くに配置するほど、より遅い放出速度を生じうる)。
【0120】
本発明のインプラントは、眼の症状、例えば、眼後部の症状を、治療または減少させるのに有効な所定量のTKIを放出するように構成される。
【0121】
本明細書に開示するインプラントは、下記のような疾患または症状を予防するために、前記のTKIまたは他の治療薬を放出するように構成してもよい。
【0122】
黄斑症/網膜変性:
非滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、滲出性老化関連黄斑変性(ARMD)、脈絡膜新生血管形成、糖尿病性網膜症、急性斑状視神経網膜疾患、中心性漿液性脈絡網膜症、類嚢胞黄斑浮腫、糖尿病性黄斑浮腫。
【0123】
ブドウ膜炎/網膜炎/脈絡膜炎:
急性多発性斑状色素上皮症、ベーチェット病、バードショット(Birdshot)網膜脈絡膜症、感染症(梅毒、ライム病、結核、トキソプラズマ症)、中間部ブドウ膜炎(扁平部炎)、多病巣性脈絡膜炎、多発性一過性白点症候群(Multiple Evanescent White Dot Syndrome)(MEWDS)、眼類肉腫症、後強膜炎、ほ行性脈絡膜炎、網膜下線維症およびブドウ膜炎症候群、フォークト−コヤナギ−ハラダ(VKH)症候群。
【0124】
血管疾患/滲出性疾患:
コーツ病、傍中心窩(parafoveal)毛細管拡張症、乳頭静脈炎、霜状分岐血管炎、鎌状赤血球網膜症および他の異常ヘモグロビン症、網膜色素線条症、家族性滲出性硝子体網膜症。
【0125】
外傷性/外科性:
交感神経性眼炎、ブドウ膜炎網膜疾患、網膜剥離、外傷、レーザー、PDT、光凝固、手術時低灌流、放射線性網膜症、骨髄移植性網膜症。
【0126】
増殖性疾患:
増殖性硝子体網膜症および網膜上膜、増殖性糖尿病性網膜症、未熟児網膜症(水晶体後線維増殖症)。
【0127】
感染性疾患:
眼ヒストプラスマ症候群、眼トキソカラ症、推定眼ヒストプラスマ症候群(POHS)、眼内炎、トキソプラスマ症、HIV感染関連網膜疾患、HIV感染関連脈絡膜疾患、HIV感染関連ブドウ膜炎疾患、ウイルス性網膜炎、急性網膜壊死、進行性外網膜壊死、真菌性網膜疾患、眼梅毒、眼結核、広汎性片側性亜急性視神経網膜炎、ハエウジ病。
【0128】
遺伝性疾患:
網膜ジストロフィー関連全身性疾患、先天性停在夜盲症、錐体ジストロフィー、黄色斑眼底、ベスト病、網膜色素上皮のパターンジストロフィー(Pattern Dystrophy of the Retinal Pigmented Epithelium)、X染色体性網膜分離、ソーズビー眼底ジストロフィー、良性同心性黄斑症、ビエッティ結晶性ジストロフィー(Bietti’s Crystalline Dystrophy)、弾性線維性仮性黄色腫、オースラー−ウェーバー症候群。
【0129】
網膜断裂/円孔:
網膜剥離、斑状円孔、巨大網膜断裂。
【0130】
腫瘍:
腫瘍、固形腫瘍、腫瘍転移、良性腫瘍、例えば、血管腫、神経線維腫、トラコーマおよび化膿性肉芽腫に関連した網膜疾患;RPEの先天性肥大、後部ブドウ膜黒色腫、脈絡膜血管腫、脈絡膜骨腫、脈絡膜転移、網膜および網膜色素上皮の複合過誤腫、網膜芽細胞腫、眼底の血管増殖性腫瘍、網膜星状細胞腫、眼内リンパ系腫瘍。
【0131】
その他:
点状内脈絡膜症、急性後多発性斑状色素上皮症、近視性網膜変性、急性網膜色素上皮炎、眼炎症性および免疫性疾患、眼血管機能不全、角膜移植片拒絶、血管新生緑内障等。
【0132】
1つの態様において、インプラント、例えば、本明細書に開示するインプラントを、ヒトまたは動物患者、好ましくは生体ヒトまたは動物の、眼の後区に投与する。少なくとも1つの態様において、眼の網膜下腔に接近せずに、インプラントを投与する。例えば、患者の治療法は、後眼房に直接的にインプラントを配置することを含みうる。他の態様において、患者の治療法は、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者にインプラントを投与することを含みうる。
【0133】
少なくとも1つの態様において、患者の視力を向上または維持する方法は、本明細書に開示する1つまたはそれ以上のTKIを含有する1つまたはそれ以上のインプラントを、硝子体内注入、結膜下注入、テノン下注入、眼球後注入および脈絡膜上注入の少なくとも1つによって、患者に投与することを含んで成る。適切な太さの針、例えば、22ゲージ針、27ゲージ針または30ゲージ針を含む注入器具を効果的に使用して、ヒトまたは動物の眼の後区に組成物を注入することができる。インプラントからのTKIの長期間放出により、繰り返しの注入が必要でない場合が多い。
【0134】
本発明の他の局面において、下記を含んで成る眼疾患治療用キットを提供する:a)TKIを含有する治療成分および薬剤放出持続成分を含んで成る長期間放出インプラントを含有する容器、およびb)使用説明書。使用説明書は、インプラントの取扱い方法、眼領域へのインプラントの挿入方法、およびインプラントの使用により予期される事柄を含みうる。
【実施例1】
【0135】
流体組成物中でのTKIの硝子体内薬剤動態
雌の白ウサギの眼に硝子体内注射を1回行なった後に、AGN199659、AGN200954、AGN201088およびAGN201666の硝子体内薬剤動態を評価した。動物に、1つの眼につき、242ngのAGN201088、128ngのAGN201666、114ngのAGN199659または222ngのAGN200954を含む50μLを、硝子体内注射により投与した。硝子体液サンプル(各時点につきn=4の眼)を、投与後0.5時間、1時間、2時間、4時間、8時間、および12時間で集めた。硝子体液中のTKI濃度を、液体クロマトグラフィータンデム型質量分析方法(LC-MS/MS)を使用して決定した。
【0136】
全ての化合物は、かなり迅速にウサギの眼から除去された。これは、網膜横断経路の除去を示す。化合物の核に対する偏りはなかった。しかし、除去が非常に速かった場合であっても、局所的な持続送達が可能であることが決定された。3−[(4−モルホリン−4−イル−フェニルアミノ)−メチレン]−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン、3−(6−アミノ−3H−イソベンゾフラン−1−イリデン)−5−クロロ−1,3−ジヒドロ−インドロ−2−オン、AGN201088およびAGN201666についての研究において決定され、2回の定常状態の有効濃度をEC50値であると推定した硝子体のクリアランス(インビトロ受容体結合および細胞内Ca2+アッセイによって決定)に基づいて、試験した全てのチロシンキナーゼインヒビターは、約6ヶ月間の持続時間、所望される定常状態の薬剤硝子体濃度を維持する、1mgインプラント内に配合できた。このデータは、表16および図1および図2にまとめられている。
【0137】
【表16】

【実施例2】
【0138】
TKI生分解性インプラント
押出によって、チロシンキナーゼインヒビターをPLGAまたはPLAインプラントに配合した。TKIを所定の比でポリマーとともに粉砕し、次いでフィラメントに押出した。次いで、これらのフィラメントを、約1mgの重さのインプラントになるように、切断した。いくつかのTKIを、表17に示されるようにそれらの有効性および生理化学的性質に基づいて、PLGAおよびPLAインプラントに配合した。
【0139】
【表17】

【0140】
インプラントからのTKI放出をインビトロで評価した。インプラントを、放出媒体を含むバイアルに入れ、37℃で振盪した。適切な時点で、分析のためにサンプルを放出媒体から採取し、媒体を全て入れ替えて沈積状態を維持した。サンプル中の薬剤をHPLCでアッセイし、インプラントからの薬剤の累積放出割合を時間の関数として記録した。AGN200954、AGN202314、AGN201635、およびAGN202564のインビトロでの放出プロフィールを図3〜図10にそれぞれ示す。
【0141】
図3〜図10に示した製剤放出データから、広範囲の生理化学的性質を有するTKIを用いて、数週間から1年にわたってインビトロで薬剤を放出するように設計可能であることが、明らかである。
【実施例3】
【0142】
TKI含有インプラントのインビボでの薬剤動態特性
AGN202314を含有するインプラントを、眼の硝子体内または結膜下に配置した。このインプラントは、14日間にわたってAGN202314をインビトロで放出した(図3)。この研究の意図は、硝子体内インプラントを用いて硝子体内のインビボ/インビトロ相関関係を確認し、眼周囲への送達の可能性を評価することであった。
【0143】
硝子体内インプラントPLGA(AGN202314投与量400μg、インプラントの全重量1mg)を、外科的切開によって白ウサギの硝子体中央に移植した。8日目、15日目、31日目および61日目に、ウサギを殺し、硝子体液、硝子体、房水およびリンパ漿をAGN202314についてアッセイした。
【0144】
結膜下インプラントPLGA(AGN202314投与量1200μg;3つのインプラント)およびPLA微小球(AGN202314 300μg)を結膜下に移植した。8日目、15日目、31日目、および61日目に、ウサギを殺し、硝子体液、硝子体、房水およびリンパ漿をAGN202314についてアッセイした。
【0145】
データを表18〜表20にまとめた。
【0146】
【表18】

【0147】
【表19】

【0148】
【表20】

【0149】
この研究からのデータは、AGN202314について良好なインビボインビトロ相関関係が存在したことを示している。AGN202314インプラントは、インビトロおよびインビボの両方で2週間にわたって薬剤を放出した。全ての時点で、リンパ漿レベルがBLQ(検出限界未満)に維持されるかまたは非常に低いことも重要である。このことは、最悪の場合でさえ、2週間にわたる全身暴露を超える硝子体内送達のシナリオをほとんど無視できることを示す。さらに、眼周囲への送達は、硝子体および網膜に対するAGN202314の送達では成功しなかったことも注記しておく。
【0150】
白ウサギの眼への1個の硝子体内移植後に、後続の2ヶ月の眼球でのAGN202314の薬剤動態研究を開始した。この処方物は、AGN202314をインビトロで4ヶ月にわたって送達した。以下の1mgインプラントを評価した:30%のAGN202314/70%のPurac PLA;ロット番号 JS493028(図4)、50%のAGN201634/50%のPurac PLA;ロット番号JS493034(図6)。2匹のウサギ(4つの眼および2つのリンパ漿)を各時点について使用した。硝子体切除を行わない強膜切開術による両眼への外科的硝子体内配置によってインプラントを投与した。硝子体液および網膜のAGN202314濃度を8日目、15日目、31日目および61日目にアッセイした。データを表21に示す。
【0151】
【表21】

【0152】
この研究から達成される網膜レベルは、第1週までに治療レベルに接近し、最初の30日間にわたって維持される。このデータは、TKIを局所的にインビボで持続的に実際に送達することが可能であることを示す。
【0153】
6ヶ月の薬剤動態研究を、硝子体内および結膜下のAGN200954インプラントを用いて開始した。このインプラントは、AGN200954をインビトロで180日間放出した(図3)。硝子体内インプラントPLGA(AGN200954投与量500μg、インプラントの全重量1mg、Puracポリマー)およびPLGA(AGN200954投与量500μg、インプラントの全重量1mg、RG503Hポリマー)を外科的切開によって白ウサギの硝子体中央に移植した。8日目、15日目、31日目、および61日目に、ウサギを殺し、硝子体液、硝子体、房水およびリンパ漿をAGN200954についてアッセイした。結膜下インプラントPLGA(AGN200954投与量500μg、インプラントの全重量1mg、Puracポリマー)およびPLGA微小球(AGN200954投与量370μgおよび740μg)を投与した。8日目、15日目、31日目、および61日目に、ウサギを殺し、硝子体液、硝子体、房水およびリンパ漿をAGN200954についてアッセイした。
【0154】
【表22】

【0155】
第1の処方物について、インビボで見られるかなりの遅延時間がインビトロでは見られないことが明らかである。いずれの処方物も測定可能なリンパ漿濃度を示さなかった。
【実施例4】
【0156】
インプラントからのTKI(AGN201634)のインビトロでの放出
振盪した水浴中37℃で、洗浄剤を添加しまたは添加せずに、ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)(PDLG)またはポリ(D,L−ラクチド)(PDL)から製造したインプラントについて、TKI放出を試験した。
【0157】
AGN201634をAllergan から得た。AGN201634の化学構造を以下に示す。AGN201634はさらなる精製を行なわず、受け取った状態で使用した。PDLG/PDLポリマー材料をPurac America Inc. から得た。
【化21】

【0158】
種々の媒体(食塩水、pH7.4のリン酸緩衝食塩水、0.1%のセチルトリメチルアンモニウムブロミド(CTAB)を含有するpH6.0±0.1の50mMの重炭酸緩衝液、および0.5%のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)を含有するpH8.5±0.1の50mMホウ酸緩衝液)中において、振盪した水浴(精密)中37℃で、TKI放出を試験した。媒体10ml中でサンプルをインキュベートし、それぞれのサンプリング時間に新しい媒体と全て入れ替えた。Waters XTerra RP8カラム(3.9×150mm、5μm、周囲状態で平衡化)およびWaters 996光ダイオードアレイ検出器(238nmに設定)を取り付けたWaters 2690 Separation Moduleを用いたHPLCによって、アセトニトリル/0.1%酢酸水(体積で40/60)を移動相として用いて、1.2ml/分の流速で薬剤濃度を測定した。サンプル注入を開始する前に、カラムを移動相で少なくとも30分間平衡化させた。
【0159】
処方物番号、ロット番号、薬剤含有量、ポリマーの固有粘度、および押出温度を含む処方物の特性を以下の表にまとめた。薬剤含有量は20〜50%である。処方物を750μmノズルから押出し、円筒状DDSを形成した。
【0160】
【表23】

【0161】
脱イオン水/アセトニトリル(75%/25%)中のAGN201634標準溶液の安定性を4℃で試験し、その結果を以下の表にまとめた。標準溶液の濃度は0.0695μg/ml〜8.693μg/mlであり、濃度を14日目、21日目、および35日目に分析した。その結果は、回収率が全て95%よりも大きく、8.7μg/mlまでの濃度でさえ、4℃で35日目まで脱イオン水/アセトニトリル(75%/25%)中でAGN201634が良好な安定性をもつことを示す。
【0162】
【表24】

【0163】
処方物中のTKIの安定性を試験するために、それぞれpH6.0、7.4または8.5の媒体中で処方物3および4を種々の濃度になるように調製し、周囲条件下で7日間、または4℃で14日間のいずれかの定温放置条件に付し、その結果を以下の表にまとめた。その結果は、回収率が全て98%よりも大きく、AGN201634はpH6.0、7.4、または8.5の媒体中で安定であり、その安定が周囲条件下で7日間、または4℃で14日間続いたことを示す。
【0164】
【表25】

【0165】
食塩水20mlまたはPBS20〜30ml中の処方物1のTKI放出を図11に示す。DDSを40mlまたは20mlのいずれかのバイアル中でインキュベートし、それぞれのサンプリング時間に、10mlサンプルを同じ体積の新しい媒体と交換した。食塩水およびPBS中の放出プロフィールは明らかに異なっていた。最初の70日間で、5%未満のTKIが食塩水中で放出した。対照的に、DDSがPBS中でインキュベートされた場合、食塩水中と同様に、5%未満のAGN201634は、最初の3週間で放出したが、80%を超えるAGN201634は70日後に放出した。しかし、DDSが20mlまたは40mlバイアル中のPBS20mlまたは30ml中でインキュベートされる場合、放出プロフィールにおける顕著な違いは見出されなかった。このゆっくりとした途中でパターンが変わる放出プロフィールに起因して、その処方物が、さらに低い薬剤含有量を有する同じポリマーに基づくため、処方物2の放出プロフィールは実施しなかった。
【0166】
pH6.0(0.1%CTAB含有)、pH7.4(PBS)、またはpH8.5(0.5%SDS含有)中37℃での処方物3および4のTKI放出を、それぞれ図12および図13に示す。処方物3について、DDSがpH6.0(0.1%CTAB含有)、pH7.4(PBS)、またはpH8.5(0.5%SDS含有)中でインキュベートされる場合、50%を超える量、45%を超える量、および75%を超える量のTKIが最初の3、7、および2週間で放出した。一方、DDSを上述の媒体中でインキュベートした場合、約47%、6%、および68%のTKIが処方物4から放出した。媒体中に洗剤が存在する状態または存在しない状態で、異なるpH媒体中でのTKI放出はpH8.5>pH6.0>pH7.4であるようである。両処方物について、すべての媒体中で大きな標準偏差は見られなかった。
【0167】
分解中のDDSの外観をモニターするために、pH6.0(0.1%CTAB含有)、pH7.4(PBS)、またはpH8.5(0.5%SDS含有)10ml媒体中でインキュベートしたF3およびF4処方物の画像を37℃で撮影した。全ての処方物は、膨潤の後にマトリックス分解を受け、薬剤を放出した。処方物マトリックスの完全な崩壊は37℃で153日以内に観察されなかった。
【0168】
要約すると、チロシンキナーゼインヒビター(AGN201634)DDSを、種々の薬剤含有量で、種々のPLGAまたはPLAを用いて処方した。4℃での脱イオン水/アセトニトリル(75%/25%)中のAGN201634溶液の安定は35日を超え、種々のpH媒体中のDDS溶液は、周囲条件下で7日間を超えて、または4℃で14日間を超えて安定であった。DDSがPBS中または食塩水中で試験される場合、異なる薬剤放出プロフィールが見出された。薬剤バースト効果は、pH6.0の媒体中でインキュベートした場合に処方物3でのみ見られた。インビトロでの制御されたAGN201634放出は、pH8.5の媒体中で4週間を超え、pH7.4およびpH6.0の媒体中で5ヶ月を超えた。
【実施例5】
【0169】
線形放出プロフィールをもつ生分解性インプラント
生分解性インプラントを、ステンレス鋼乳鉢中で、TKIと生分解性ポリマー組成物とを合わせることによって製造する。生分解性ポリマー組成物は、単一種の生分解性ポリマーを含む。その組合せを、96RPMに設定したTurbulaシェーカーで15分間混合する。粉末ブレンドを、乳鉢の壁からこすり取り、次に、さらに15分間再混合する。混合した粉末ブレンドを、所定の温度で合計30分間にわたって半溶融状態に加熱し、ポリマー/薬剤メルトを形成する。
【0170】
9ゲージのポリテトラフルオロエチレン(PTFE)管を使用してポリマー/薬剤メルトをペレット化し、ペレットをバレルに装填し、材料を所定コア押出温度でフィラメントに押し出すことによって、ロッドを製造する。次に、フィラメントを、約1mgサイズのインプラントまたは薬物送達システムに切る。ロッドは、約2mm長さ×0.72mm直径の寸法を有する。ロッドインプラントは、約900μg〜1100μgの重さである。
【0171】
所定温度においてCarverプレスでポリマーメルトを平板化し、該平板材料を、それぞれ約1mgのウエハに切ることによって、ウエハを形成する。ウエハは、直径約2.5mm、厚さ約0.13mmである。ウエハインプラントは、約900μg〜約1100μgの重さである。
【0172】
生体外放出試験を、インプラント(ロッドまたはウエハ)の各ロットについて行うことができる。各インプラントを、37℃において、燐酸緩衝生理食塩水10mLと共に、24mLのネジ蓋バイアルに入れ、第1、4、7、14、28日およびその後2週間ごとに、1mLアリコートを取り、等容量の新しい媒質と交換する。
【0173】
薬剤アッセイは、HPLC(Waters 2690 Separation Module(または2696)、およびWaters 2996 Photodiode Array Detectorから成る)によって行ってよい。30℃に加熱したUltrasphere, C-18(2), 5μm;4.6×150mmカラムを分離に使用することができ、検出器は264nmに設定することができる。移動相は、流速1mL/分および合計実行時間12分/試料の(10:90)MeOH緩衝移動相であってよい。緩衝移動相は、(68:0.75:0.25:31)13mM 1−ヘプタンスルホン酸、ナトリウム塩−氷酢酸−トリエチルアミン−メタノールを含んで成ってよい。放出速度は、時間の経過に伴って、所定容量の媒質に放出された薬剤量(μg/日)を算出することによって求めることができる。
【0174】
インプラントのために選択された単一ポリマーはポリ(カプロラクトン)であった。棒インプラントおよびウエハインプラントを、50:50比の(ポリ(カプロラクトン):TKI)で処方した。すなわち、1mgのインプラントは、約500μgのポリ(カプロラクトン)と500μgのTKIとを含む。AGN200954をTKIとして使用した。
【0175】
図15に示されるように、難溶性薬剤(TKI)と単一生分解性ポリマー(ポリ(カプロラクトン))から形成されたインプラントは、少なくとも約70日間、TKIをほぼゼロ次の速度で放出した。特定のポリ(カプロラクトン)は、約15キロダルトンの分子量を有していた。ほぼ線形の放出速度は、図15中のデキサメタゾン含有インプラントについて示されるように、単一ポリマー成分に基づく他の生分解性インプラントで達成することは非常に困難である。
【実施例6】
【0176】
TKIと生分解性ポリマーマトリックスとを含有するインプラントの製造および試験
さらなる生分解性インプラントを、TKIと生分解性ポリマー組成物とを実施例5に記載されるように組み合わせることによって製造する。インプラントのために選択されるポリマーは、例えば、Boehringer IngelheimまたはPURAC AMERICAから得ることができる。ポリマーの例としては、以下のものが包含される:RG502、RG752、R202H、R203およびR206、およびPurac PDLG(50/50)。RG502は、(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、RG752は(75:25)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)であり、R202Hは酸末端基または末端酸基を有する100%ポリ(D,L−ラクチド)であり、R203およびR206は両方とも100%ポリ(D,L−ラクチド)である。Purac PDLG(50:50)は(50:50)ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)である。RG502、RG752、R202H、R203およびR206、およびPurac PDLGの固有粘度は、それぞれ、0.2、0.2、0.2、0.3、1.0、および0.2dL/gである。RG502、RG752、R202H、R203およびR206、およびPurac PDLGの平均分子量は、それぞれ、11700、11200、6500、14000、63300、および9700ダルトンである。
【実施例7】
【0177】
種々のTKIインプラントのインビトロ評価
概要
TKIは、血管内皮成育因子受容体(VEGFR)の活性化に必要な内因性チロシンキナーゼ活性を阻害することができる。VEGFおよびVEGFシグナル経路は、脈管形成を誘発することができ、血管透過性、血管新生に必要な活性を増す。このように、TKIは、脈絡膜血管新生(CNV)、例えば、老化関連黄斑部変性(AMD)および糖尿病性網膜症(DRO)から生じるかまたは老化関連黄斑部変性(AMD)および糖尿病性網膜症(DRO)の症状を有するCNVを予防または治療するために有用である。
【0178】
この実験では、血管新生阻害活性を有する5つの異なるTKI(受容体媒介チロシンキナーゼインヒビター)の1つを含有する実験インプラントを製造し、評価した。インプラントは、異なるポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)およびポリ(D−L−ラクチド)ポリマーを含むTKI持続性放出性生分解性ポリマーインプラントとして処方し、溶融押出法によって製造した。これらのインプラントは、1つ以上の眼球の障害を処置するための眼内(例えば硝子体内)用途に適している。特に、本発明者らは、TKI AGN206639、AGN205558、AGN206320、AGN206784およびAGN206316について制御放出硝子体内インプラントを製造し、評価したところ、これらインプラントは、約3〜約6ヶ月間にわたって、TKIを定常的に放出することができることを示した。インプラント処方物を、2つの異なる放出媒体(リン酸緩衝食塩水およびクエン酸リン酸緩衝液、0.1%セチルトリメチルアンモニウムブロミド含有)中でインビトロ評価した。効能についての評価された温度での保存およびγ線での滅菌の効果も試験した。
【0179】
インプラントをポリ(ラクチド)またはポリ(ラクチド−コ−グリコリド)ポリマーを用いた溶融押出によって製造したが、種々のインプラント処方物を、異なる薬剤(TKI)を用いてまたは異なる薬剤(TKI)含有状態、ラクチド−グリコリド比、固有粘度、および押出温度で製造した。製造したポリマーインプラント薬剤送達系(DDS)を、初期の効能、滅菌後の効能、および促進条件にさらした後の効能について、HPLCによってアッセイした。DDSからのTKIの放出を、2つの異なる放出媒体中37℃でインキュベーションした後にHPLCによって評価した:(1)リン酸緩衝食塩水(pH7.4)、および(2)0.1%セチルトリメチルアンモニウムブロミド含有クエン酸リン酸緩衝液(pH5.4)。一般に、放出速度は、より高い薬剤(TKI)含有状態で、同様のポリマー系について、より高かった。
【0180】
表26は、薬剤送達系(すなわちインプラント)に配合された5つの異なるTKIを記載する。
【0181】
【表26】

【0182】
TKI薬剤送達系を処方するために使用されたポリマーは以下のとおりである:
Purasorb PDL、ポリ(D,L−ラクチド)、Purac Corp. ロット番号DG676GA(固有粘度[iv]は6dL/gまで、分子量[mw、ダルトン]は700Kまでである)。
Resomer RG502、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehringer Ingelheim Corp. ロット番号R02M002(ivは0.16〜0.24dL/gである)。
Resomer RG502S、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehringer Ingelheim Corp. ロット番号Res-0354(ivは0.16〜0.24dL/gである)。
Resomer RG504、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehringer Ingelheim Corp. ロット番号1009731(ivは0.45〜0.60dL/gである)。
Resomer RG505、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehringer Ingelheim Corp. ロット番号223799(ivは0.61〜0.74dL/gである)。
Resomer RG506、50:50ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehringer Ingelheim Corp. ロット番号34034(ivは0.75〜0.95dL/gである)。
Resomer RG752、75:25ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehringer Ingelheim Corp. ロット番号R02A005(ivは0.16〜0.24dL/gである)。
Resomer RG755、75:25ポリ(D,L−ラクチド−コ−グリコリド)、Boehringer Ingelheim Corp. ロット番号1009232(ivは0.50〜0.70dL/gである)。
Resomer R104、ポリ(D,L−ラクチド)、Boehringer Ingelheim Corp. ロット番号290588(mwは、C3H4O2の繰り返しモノマー単位を有する約1,500〜約2,250のポリマーの存在下で決定される)。
Resomer R207、ポリ(D,L−ラクチド)、Boehringer Ingelheim Corp. ロット番号260911(ivは1.3〜1.7dL/g)である。
【0183】
使用したクエン酸リン酸緩衝液(CTAB)は、二塩基性リン酸ナトリウム七水和物27.56g、クエン酸9.32gおよびセチルトリメチルアンモニウムブロミド2g(1%)(CTAB,JT Baker)を2Lのメスフラスコに添加し、脱イオン水で満たすことによって調製した。
【0184】
使用したリン酸緩衝食塩水(PBS)溶液は、PBS(Sigmaカタログ番号P-3813)顆粒2包を2Lメスフラスコに添加し、脱イオン水で満たすことによって調製した。
【0185】
放出プロフィール標準
AGN206784以外の化合物についてのストック標準調製のために、5mgを50mlメスフラスコに加え、アセトニトリルを標線まで添加した。作業標準液は、ストック標準5mlを50mlメスフラスコに加え、アセトニトリル:水(60:40)混合物に添加することによって調製した。AGN206784ストック標準調製のために、化合物5mgを50mlメスフラスコに加え、80%アセトニトリルおよび20%水の溶液で、一杯になるまで添加した。作業標準液調製のために、ストック標準5mlを50mlメスフラスコに加え、アセトニトリル:水(40:60)混合物で満たすまで添加することによって調製した。
【0186】
放出プロフィール移動相
アセトニトリル(ACN)をBurdick and Jacksonによって製造した。トリフルオロ酢酸(TFA)をBurdick and Jacksonによって製造した。5mMヘキサンスルホン酸を含む、ACN:水:酢酸(75:24.5:0.5)混合物をAGN206748処方物以外の全ての分析について使用し、ACN:水:TFA(60:40:1)混合物を移動相として使用した。
【0187】
装置:
粉末ブレンド:Glenn Mills Inc.Turbula shakerT2F型、ID番号990720を使用した。それに加えて、F.Kurt Retsch GmbH & CoモデルMM200ボールミルを使用した。
【0188】
粉末圧縮:改変されたJanesville Tool and Manufacturing Inc. 空気圧駆動粉末圧縮機モデルA−1024を使用した。
【0189】
ピストン押出:APS Engineering Inc. により製造された特注ピストン押出機を、Watlow 93温度コントローラーおよび熱電対とともに使用した。
【0190】
秤量:Mettler Toledo MT6バランス、S/N1118481643を使用した。
サンプルインキュベーション:Precision Inc. Reciprocal Shaking Bathを水とともに使用した。
【0191】
HPLC:Waters LC モジュール1プラス、S/NM98LCJ242Mを、Supelco HSF 5μm、4.6×150mmカラムおよびWaters 2487デュアル波長吸収検出器とともに使用した。データをPeak Proソフトウェア、バージョン9.1bによって分析した。
【0192】
粉末ブレンド
薬剤(TKI)は、最小の光暴露状態において室温で保存し、ポリマーは5℃で保存し、使用前に室温で平衡化した。両方の材料を受け取った状態で使用した。表27に示す処方物をステンレス鋼混合カプセル中で2つのステンレス鋼球を用いてブレンドし、0.03Pa・s(30cps)のRetsch ミル中、または96rpm のTurbulaブレンダー中に、5〜15分間置いた。標準物質に依存して、処方物を、各5〜15分間で4〜6回のブレンドサイクルによりブレンドした。ブレンドサイクルの間、ステンレス鋼スパチュラを使用して混合容器の内部表面から物質を取り除いた。全ての処方物についての処方比率および押出温度を表27に示した。
【0193】
粉末圧縮
720μm開口部を有するダイをステンレス鋼バレルに取り付けた。粉末圧縮機を約3.5kg/cm2(50psi)に設定した。バレルを粉末圧縮機アセンブリに挿入した。ステンレス鋼粉末漏斗を使用して少量の粉末をバレルに添加し、空気圧圧縮機を始動した。この方法を、バレルがいっぱいになるか、または粉末が残らなくなるまで繰り返した。
【0194】
押出
ピストン押出機をある温度に設定し、平衡化した。押出温度は、薬剤含有量およびポリマーに依存して選択された。押出温度は、平滑で均一に見えるフィラメントを製造するために各処方物について調整した。押出温度が平衡化した後、ピストン押出バレルを押出機に挿入し、熱電対を挿入し、バレルの表面の温度を測定した。バレル温度が平衡化した後、ピストンをバレルに挿入し、ピストン速度を約0.0064センチ/分(0.0025インチ/分)に設定した。押出品の最初の約5〜10センチ(2〜4インチ)は廃棄した。その後、約8〜13センチ(3〜5インチ)片を遠心管に直接切断した。サンプルにラベルをつけ、乾燥剤を含有する密閉したホイルポーチに保存した。
【0195】
より高い薬剤含有量を有する処方物はより高い押出温度を必要とした。より高い固有粘度を有するポリマーは、より低い固有粘度を有するポリマーよりも高い押出温度を必要とした。ラクチドの割合がより高い(75:25)ラクチド−グリコリドコポリマーは、ラクチドの割合がより低い(50:50)ポリマーよりも低い加工温度を必要とした。処方物の情報および押出温度を表27に示した。
【0196】
内容物均一性分析
1mg(±10%)の10個のサンプルをそれぞれの処方物から切断した。それぞれのサンプルを秤量し、個々に50mlメスフラスコに入れた。AGN206784について、40:60のACN:水または100%アセトニトリルを添加し、サンプルを超音波破砕した。以下の放出プロフィール分析に使用されるHPLC法に従ってサンプルを分析した。他のTKIについて、60:40のACN:水を各50mlフラスコに添加した。フラスコを超音波破砕に付し、サンプルをインビボ放出(下記)に使用されるのと同じHPLC法に従って試験した。
【0197】
γ線滅菌
サンプルを秤量し、バイアルに入れ、それぞれのバイアルを、乾燥剤を入れたホイルポーチに密閉し、ラベルをつけた。全てのサンプルを25〜40kGyのγ線によって殺菌した。
【0198】
安定性試験:
フィラメントを1mg(±10%)サンプルに切断し、ねじ蓋付きバイアルに入れた。次いで、処方物を40℃で周囲湿度の乾燥機に入れた。14日後に、TKI含量についてサンプルを試験した。
【0199】
インビトロ放出プロフィール分析
1mg(±10%)の12個のサンプルをそれぞれの処方物から切断した。それぞれのサンプルを秤量し、個々に60mlサンプルバイアルに入れた。50mlのクエン酸リン酸緩衝溶液を6個のバイアルに添加し、50mlのリン酸緩衝食塩水放出媒体を6個のバイアルに添加した。全てのバイアルを37℃50RPMに設定した振盪水浴に入れた。各時点で、分析のために2mlを各バイアルから採取し、残った溶液を捨て、新しい放出媒体50mlをバイアルに添加した。
【0200】
【表27】

【0201】
表27では、API(活性薬剤成分[すなわち、TKI])値は重量パーセントでの値である。
【0202】
HPLCアッセイ
HPLCを1ml/分の流速で安定になるまで280nmで調整した。サンプルをシステムの適合性および標準化のために加えたサンプルとともに、自動採取装置バイアルに移した。全測定時間は10分であり、温度は周囲温度であり、注入体積は20μLであった。サンプルを1日目、4日目、7日目、その後は試験が終了するかまたは100%の放出が達成されるまで、7日間隔で採取した。標準ピークの高さと比較した280nmでのピークの高さから存在する全TKIの割合を計算した。処方物内で放出した薬剤の割合、放出した全μg、および標準偏差を検出した薬剤の量から計算した。
【0203】
結果
行なった内容物均一性分析により、ほとんどの処方物は100%±20%のラベル強度で試験されたことが示された。
【0204】
図16〜図21は、種々のポリマー処方物を有するインプラントにおいて使用される5つのTKIについて、インビトロ放出データの例を提供するグラフである(pH5.4クエン酸リン酸緩衝液媒体中またはpH7.4リン酸緩衝食塩水放出媒体中のいずれか)。図16〜図21は、より高い溶解度を有するTKIが、より低い溶解度を有するTKIよりも早い速度で放出される傾向を有することを示す。さらに、図16〜図21は、より低い薬剤(TKI)含有量を有するTKIインプラント処方物は、より高い薬剤含有量を有するものよりも遅い速度で放出されることを示す。
【0205】
このように、多くの異なる持続性放出の生分解性ポリマー性処方物(インプラント)を、5つの異なるチロシンキナーゼインヒビター化合物について製造した。この結果は、PLGAポリマーインプラントからのTKIの放出が、ポリマーマトリックスおよび押出条件を変えることによって調整可能であることを示す。特に、リン酸緩衝食塩水放出媒体(pH7.4)およびCTAB媒体中の5つのTKI化合物すべてについて持続性放出が達成され、この結果は、ポリマーマトリックスからのTKIの放出が、処方物に依存して約1ヶ月〜6ヶ月を超えて持続し得ることを示す。顕著なことに、リン酸緩衝食塩水中の5つのTKIのそれぞれから、線形の一貫した薬剤放出プロフィールが得られた(処方物7409-024、7409-009、7409-022、7409-032および7409-071を参照)。
【実施例8】
【0206】
TKIインプラントのインビボ評価
哺乳類の視力に対する硝子体内TKIインプラントの効果を評価するために、実験を行った。すなわち、PLGA偽薬インプラントまたはTKI PLGAインプラントのいずれかをウサギの眼の硝子体に挿入した。TKI PLGA眼内インプラントは、例えば網膜血管拡張、網膜血管ねじれ(血流増加)、血液−網膜関門機能停止、網膜浮腫および黄斑浮腫のような、またはこれらに共通する症状を効果的に処置することにより、視力を改善または維持できることが分かった。
【0207】
視力改善を評価するためのモデルシステムとして、VEGF(血管内皮増殖因子)誘発網膜損傷を受けたウサギを使用した。組み替え型ヒトVEGF165をウサギに硝子体内注射すると、強度の、血管拡張および血管ねじれ(血流増加)、血液−網膜関門機能停止並びに網膜浮腫を起こすことが知られている。例えば、Edelman, J. L. et al., Corticosteroids inhibit VEGF-induced vascular leakage in a rabbit model of blood-retinal and blood-aqueous barrier breakdown, Experimental Eye Research, 80:249-258(2005) 参照。このようなVEGF誘発眼効果は、VEGF受容体-1およびVEGF受容体-2の活性化により、媒介されると考えられている。
【0208】
本実験では、そのようなVEGF誘発網膜損傷は、TKI硝子体内インプラントを使用することにより、治療できる(すなわち、阻止、緩和、反転および/または抑制できる)ことが見出された。おそらく、(硝子体内インプラントから治療水準で)放出されたチロシンキナーゼインヒビターが、標的組織においてリン酸化反応を禁止し、それにより、VEGF媒介応答をブロックしているのであろう。すなわち、本発明者らは、2mgのAGN-206639(TKI)インプラントが、硝子体への移植後少なくとも約1ヶ月の期間、VEGF誘発効果、例えば血液−網膜関門機能停止を顕著に抑制することができることを見出した。
【0209】
本実験において、7匹のダッチベルト種Dutch Beltメスウサギ(体重2.1〜2.6kg)を使用した。1 mgのPLGA偽薬インプラント(実施例7で製造)を、6匹のウサギ(N=6)の右目または左目のいずれか(対照)に、挿入した。残りの8つの目に、2mgのTKIインプラントを挿入した(実施例7に記載したように製造。表27参照;処方7409-041 をTKIインプラントとして使用)(N=8)。表28に、使用したインプラントの特性を示す。
【0210】
【表28】

【0211】
インプラントは、以下のように、硝子体内に挿入した。T0(0日目)に、ウサギ(N=7)を、ケタミン/キシラジン(皮下)により麻酔し、眼の表面を、1%プロパラカイン2滴で麻酔し、眼科グレードベタジンにより潅注し、眼の上側部4分の1において、結膜を切開し、下にある強膜から外した。20G MVR ナイフを使用して、上直筋の一時的挿入に隣接した扁平部(縁に対して3mm後方)において、強膜に孔を開けた。1つのインプラント(偽薬または活性)を、強膜切開術により、消毒済み鉗子を用いて硝子体に挿入した。強膜および結膜の切開を、8-0被覆Vicryl縫合糸により閉じた。次いで、移植を受けた眼に、術後直ちにおよびその後少なくとも3日間、局所ケタロラック(Acular)およびゲンタマイシンt.i.d. (1日3回)を塗り込んだ。
【0212】
12日目および26日目に、移植を受けたウサギ(N=7)を、ケタミン/キシラジンおよび1%プロパラカインにより麻酔し、眼の表面にベタジンを局所投与した。直後に(12日目および26日目)、移植(偽薬または活性)を受けた各ウサギの各眼に、縁に対して約3mm後方へ、28G針により、滅菌PBS 100μL中のVEGF165 500ngを硝子体内注射した。
【0213】
移植を受けた眼は、移植後数回の時点で、(1)眼底検査および血管造影法、並びに(2)蛍光測定法により評価した。
【0214】
眼底検査および血管造影法は、インプラント挿入後14日目および28日目に行った。すなわち、周縁耳静脈を介してフルオレセインナトリウム(10mg/kg)を静脈注射してから5〜10分後に、Zeiss 製網膜カメラを用いて、遅発血管造影を行った。全ての造影像をマスクし、次いで、網膜フルオレセイン漏出の程度(正常=1、重度=5)について、3名の検査員により、等級分けした。統計的有意性を、クラスカル-ワリス・ノンパラメトリックANOVA検定、Dunn多重比較試験、およびマン-ホイットニー検定(両側検定)を用いて、決定した。例えば、移植後14日目に、偽薬インプラントを移植した眼は、4.6グレードという高い評点を記録したが、TKIインプラントを移植した眼は、1.0という低い評点を記録したことが分かった。加えて、例えば、移植後28日目で、多くの偽薬投与眼は、5.0という高い評点を記録したが、多くのTKIインプラント移植眼は、約1.0という低い評点を記録したことが分かった。これらの結果は、偽薬に比べると、2mgのTKI(AGN206639)インプラントが、VEGF誘発血管造影フルオレセイン漏出を、眼へのTKIインプラントの外科的挿入後14日目および28日目の両方において、顕著に阻止していることを、明白に示している。
【0215】
また、蛍光測定を、インプラント挿入後14日目および28日目に行った。すなわち、フルオレセインナトリウムを静脈注射してから50分後に、血液−網膜関門の完全性を、走査眼球蛍光測定により評価した。硝子体網膜蛍光について曲線下面積(AUC)を、Kaleidagraphソフトウエアを用いて計算した。統計的有意性を、単一要素パラメータANOVA検定および両側非対応t-検定により、決定した。図22に示されるように、偽薬に比べ、2mgのAGN-206639インプラントは、ウサギへのインプラントの外科的挿入後14日目および28日目に走査眼球蛍光測定により測定すると、VEGF誘発血液−網膜関門機能停止を著しく抑制した。
【0216】
この実験は、例えばウサギにおける実験的血液−網膜関門機能停止を抑制することにより示されるように、TKI PLGA硝子体内インプラントは、硝子体への移植から少なくとも約1ヶ月間、顕著な視力の改善をもたらすために使用できることを実証している。従って、これらの結果は、硝子体内TKIインプラントは、糖尿病性黄斑浮腫、増殖性糖尿病性網膜症、および老老化関連黄斑部変性に伴う脈絡膜血管新生を含む眼の血管障害を包含する種々の眼症状を治療するのに使用できることを示している。
【0217】
本明細書に引用されている全ての文献、論文、刊行物、特許および特許出願は、参照により全体として本明細書に組み入れられる。
【0218】
本発明を、種々の特定の実施例および態様に関して記載したが、本発明はそれらに限定されず、特許請求の範囲内において様々に実施しうるものと理解される。
【図面の簡単な説明】
【0219】
【図1】時間の関数としての、2つのTKIの硝子体液濃度を示すグラフである。
【図2】2つの異なるTKIについての図1と類似のグラフである。
【図3】時間の関数としての、AGN200954についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図4】時間の関数としての、AGN202314についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図5】AGN202314の異なる処方物についての図4と類似のグラフである。
【図6】時間の関数としての、AGN201634についてのTTL放出のグラフである。
【図7】30%のAGN201634を含有するインプラントを用いた、図6と類似のグラフである。
【図8】異なる溶液中のAGN201634についての図6と類似のグラフである。
【図9】時間の関数としての、異なるツイーン80/食塩水溶液中で放出されたTKIの割合のグラフである。
【図10】リン酸緩衝液中を除く、図9と類似のグラフである。
【図11】食塩水およびPBS中の処方物1のTKI AGN201634についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図12】pH6.0(0.1%CTAB含有)、pH7.4(PBS)、またはpH8.5(0.5%SDS含有)の媒体中の処方物3のTKI AGN201634放出についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図13】pH6.0(0.1%CTAB含有)、pH7.4(PBS)、またはpH8.5(0.5%SDS含有)の媒体中の処方物4のTKI AGN201634放出についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図14】薬剤放出活性層およびバリア層を含む生分解性インプラントの図である。
【図15】TKI含有インプラントおよびデキサメタゾン含有インプラントについての累積放出プロフィールのグラフであり、ここで、生分解性ポリマーはポリカプロラクトンである。
【図16】リン酸緩衝食塩水放出媒体(pH7.4)中のTKI(AGN206639)含有インプラントの3つの異なる処方物についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図17】リン酸緩衝食塩水放出媒体(pH7.4)中のTKI(AGN206639)含有インプラントの5つのさらなる異なる処方物についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図18】リン酸緩衝食塩水放出媒体(pH7.4)中のTKI(AGN205558)含有インプラントの3つの異なる処方物についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図19】リン酸緩衝食塩水放出媒体(pH7.4)中のTKI(AGN206320)含有インプラントの8つの異なる処方物についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図20】リン酸緩衝食塩水放出媒体(pH7.4)中のTKI(AGN206784)含有インプラントの8つの異なる処方物についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図21】リン酸緩衝食塩水放出媒体(pH7.4)中のTKI(AGN206316)含有インプラントの7つの異なる処方物についての累積放出プロフィールのグラフである。
【図22】X軸上に、ウサギの眼(N=7)にPLGA偽薬インプラントまたはTKI(AGN206639)PLGAインプラントのいずれかを硝子体内移植した後の時間(14日および28日)を示し、Y軸上に、硝子体網膜蛍光発光(フルオレセインナトリウムを静脈注射した後、スキャニング・オキュラー・フルオロフォトメトリー曲線下面積法(AUC)により決定)を示す棒グラフである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
小分子チロシンキナーゼインヒビターおよびポリカプロラクトンを含んでなり、眼の硝子体内に配置される生分解性眼内インプラント。
【請求項2】
小分子チロシンキナーゼインヒビターが、式:
【化1】

[式中、R1は、ハロゲン、NO2、CN、C1〜C4アルキルおよびアリール、例えばフェニルからなる群から選択され;R2は、水素、C1〜C8アルキル、COCH3、CH2CH2OH、CH2CH2CH2OHおよびフェニルからなる群から選択され;Rは、D、ハロゲン、C1〜C8アルキル、CF3、OCF3、OCF2H、CH2CN、CN、SR2、(CR7R8CC(O)OR2、C(O)N(R22、(CR7R8)COR2、HNC(O)R2、HN−C(O)OR2、(CR7R8)CN(R22、SO2(CR7R8)N(R22、OP(O)(OR22、OC(O)OR2、OCH2O、HN−CH=CH、−N(COR2)CH2CH2、HC=N−NH、N=CH−S、O(CR7R8d−R6および(CR7R8C−R6、−NR2(CR7R8R6(ここで、R6は、ハロゲン、3−フルオロピロリジニル、3−フルオロピペリジニル、2−ピリジニル、3−ピリジニル、4−ピリジニル、3−ピロリニル、ピロリジニル、メチルイソニペコテート、N−(2−メトキシエチル)−N−メチルアミル、1,2,3,6−テトラヒドロピリジニル、モルホリニル、ヘキサメチレンイミニル、ピペラジニル−2−オン、ピペラジニル、N−(2−メトキシエチル)エチルアミニル、チオモルホリニル、ヘプタメチレンイミニル、1−ピペラジニルカルボキサアルデヒド、2,3,6,7−テトラヒドロ−(1H)−1,4−ジアゼピニル−5(4H)−オン、N−メチルホモピペラジニル、(3−ジメチルアミノ)ピロリジニル、N−(2−メトキシエチル)−N−プロピルアミニル、イソインドリニル、ニペコタミジニル、イソニペコタミジニル、1−アセチルピペラジニル、3−アセトアミドピロリジニル、trans−デカヒドロイソキノリニル、cis−デカヒドロイソキノリニル、N−アセチルホモピペラジニル、3−(ジエチルアミノ)ピロリジニル、1,4−ジオキサ−8−アザスピロ[4.5]デカニニル、1−(2−メトキシエチル)−ピペラジニル、2−ピロリジン−3−イルピリジニル、4−ピロリジン−3−イルピリジニル、3−(メチルスルホニル)ピロリジニル、3−ピコリルメチルアミニル、2−(2−メチルアミノエチル)ピリジニル、1−(2−ピリミジル)−ピペラジニル、1−(2−ピラジニル)−ピペラジニル、2−メチルアミノメチル−1,3−ジオキソラン、2−(N−メチル−2−アミノエチル)−1,3−ジオキソラン、3−(N−アセチル−N−メチルアミノ)ピロリジニル、2−メトキシエチルアミニル、テトラヒドロフルフリルアミニル、4−アミノテトラヒドロピラン、2−アミノ−1−メトキシブタン、2−メトキシイソプロピルアミニル、1−(3−アミノプロピル)イミダゾール、ヒスタミル、N,N−ジイソプロピルエチレンジアミニル、1−ベンジル−3−アミノピロリジル、2−(アミノメチル)−5−メチルピラジニル、2,2−ジメチル−1,3−ジオキソラン−4−メタンアミニル、(R)−3−アミノ−1−N−BOC−ピロリジニル、4−アミノ−1,2,2,6,6−ペンタメチルピペリジニル、4−アミノメチルテトラヒドロピラン、エタノールアミンおよびそれらのアルキル置換誘導体からなる群から選択される)、cが1の場合CH2
【化2】

およびCH2CH2CH2であってもよい;ただし、上記アルキルまたはフェニル基は、1つまたは2つのハロ、ヒドロキシまたは低級アルキルアミノ基で置換されていてもよく、上記式中、R7およびR8は、H、FおよびC1〜C4アルキルからなる群から選択されてもよいか、またはCR7R8は3〜6炭素の炭素環式環を表してもよく、好ましくはR7およびR8はHまたはCH3である。
bは0または1〜3の整数であり;
aは0または1〜5の整数、好ましくは1〜3の整数であり;
cは0または1〜4の整数であり、
dは2〜5の整数である。)
波線はEまたはZ結合を表す。]
を有する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項3】
小分子チロシンキナーゼインヒビターが、式:
【化3】

で示される化合物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項4】
小分子チロシンキナーゼインヒビターが、式:
【化4】

で示される化合物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項5】
小分子チロシンキナーゼインヒビターが、式:
【化5】

で示される化合物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項6】
小分子チロシンキナーゼインヒビターが、式:
【化6】

で示される化合物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項7】
小分子チロシンキナーゼインヒビターが、式:
【化7】

で示される化合物からなる群から選択される化合物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項8】
小分子チロシンキナーゼインヒビターが、インプラント要素の30重量%〜70重量%の量で存在する、請求項1に記載のインプラント。
【請求項9】
インプラントが、小分子チロシンキナーゼインヒビターおよびポリカプロラクトンの押出成形混合物である、請求項1に記載のインプラント。
【請求項10】
小分子チロシンキナーゼインヒビターが、インプラントを眼の硝子体に配置した後少なくとも1週間、インプラントから放出される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項11】
小分子チロシンキナーゼインヒビターが、線形放出プロフィールで放出される、請求項1に記載のインプラント。
【請求項12】
小分子チロシンキナーゼインヒビターおよびポリカプロラクトンからなる、請求項1に記載のインプラント。
【請求項13】
トロカールまたは注射器内に供給された、請求項1に記載のインプラント。
【請求項14】
請求項1〜13いずれかに記載のインプラントを含んでなる医薬。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【公開番号】特開2011−224408(P2011−224408A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−178804(P2011−178804)
【出願日】平成23年8月18日(2011.8.18)
【分割の表示】特願2007−511075(P2007−511075)の分割
【原出願日】平成17年4月29日(2005.4.29)
【出願人】(591018268)アラーガン、インコーポレイテッド (293)
【氏名又は名称原語表記】ALLERGAN,INCORPORATED
【Fターム(参考)】