説明

生単板の脱水装置及び脱水方法

【課題】短時間でより多くの水分を生単板から除去可能な脱水装置を提供することである。
【解決手段】脱水装置が、互いに対向するよう配置されている一対の定盤と、一対の定盤を近接させて一対の定盤間に挟持された単板積層体に圧力を加え、各生単板から水分が絞り出されるように、該一対の定盤の少なくとも一方を駆動する駆動手段と、単板積層体に加わる圧力を検出する圧力検出手段と、圧力検出手段が検出する圧力の大きさをモニタし、単板積層体を構成する生単板の厚さによって定まる所定圧力に定盤間の圧力が達したとき、第1の時間だけ所定圧力を維持した後に少なくとも一方の定盤を駆動してかかる圧力を除荷するように駆動手段を制御する制御手段とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生単板を圧迫してその内部の水分を除去する脱水装置及び脱水方法に関する。
【背景技術】
【0002】
家屋等に使用される構造材料として、木材の単板を複数枚接着して板状に形成した合板が広く利用されている。この合板を形成する単板は、以下の工程にて製造される。
【0003】
まず、2m程度の長さに切断され、表皮が除去された原木から、ロータリーレースによって生単板を切り出す。ロータリーレースは、その軸周りに回転する原木の外周方向に沿ってブレードを当て、略一定の厚さの薄板を切り出すとともに、この薄板を原木長さ方向に沿って一定長さごとに切断し、略一定の寸法の矩形状の生単板を一本の原木から複数枚生成する装置である。
【0004】
原木や原木から切り出された生単板には水分が多く含まれている。このような水分を多く含む生単板をそのまま接着して合板を作ることはできず、事前に生単板を十分に乾燥させる必要がある。そのため、チャンバの中に生単板を収容し、収容された生単板にドライヤから熱風を吹きかけて生単板を乾燥させている。しかしながら、生単板には多量の水分が含まれているため、ドライヤのみでは乾燥に時間がかかり、ドライヤのエネルギ消費量も非常に大きなものとなる。
【0005】
このため、特許文献1に記載されているもののような、ドライヤによる乾燥を行う前に生単板から水分を除去する脱水装置が提案されている。特許文献1に記載の脱水装置は、一対のローラ間に単板を一枚ずつ通し、ローラにより単板をプレスして単板から水分を絞り出している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開昭60−99983号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のもののような従来の脱水装置は、ローラと単板との間の微小な接触部において単板が短時間プレスされるものである。しかしながら、ローラ間で生単板を短時間プレスするのみでは、生単板の水分を十分に除去することができなかった。一方、生単板の送り速度を遅くして生単板の特定部分がローラ間でプレスされる時間を長くすることも考えられるが、その場合は、生単板一枚あたりの脱水時間が長くなるという問題が生じる。
【0008】
本発明は上記の問題を解決するためになされたものである。すなわち、本発明は、短時間でより多くの水分を生単板から除去可能な生単板の脱水装置及び脱水方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の目的を達成するため、本発明の生単板の脱水装置は、互いに対向するよう配置されている一対の定盤と、一対の定盤を近接させて一対の定盤間に挟持された単板積層体に圧力を加え、各生単板から水分が除去されるように、該一対の定盤の少なくとも一方を駆動する駆動手段と、単板積層体に加わる圧力を検出する圧力検出手段と、圧力検出手段が検出する圧力の大きさをモニタし、単板積層体を構成する生単板の厚さによって定まる所定圧力に定盤間の圧力が達したとき、第1の時間だけ所定圧力を維持した後、少なくとも一方の定盤を駆動してかかる圧力を除荷するように駆動手段を制御する制御手段とを有する。
【0010】
また、本発明の生単板の脱水方法は、互いに対向するよう配置されている一対の定盤の間に生単板を積層して形成された単板積層体を配置する配置ステップと、一対の定盤を近接させて一対の定盤間に挟持された単板積層体に圧力を加えて各生単板から水分を除去する第1の加圧ステップと、第1の加圧ステップにおいて単板積層体を構成する生単板の厚さによって定まる所定圧力に定盤間の圧力が達したときに第1の時間かかる圧力状態を維持する第1の圧力維持ステップと、第1の圧力維持ステップの後一対の定盤を離間させてかかる圧力を除荷する第1の除荷ステップとを有する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の脱水装置は、上記のように、一対の定盤間で生単板全体を同時にプレスするものであるため、ローラ式の従来の脱水装置と比べて、生単板の一枚あたりの処理時間を延ばすことなく、生単板の単位面積あたりのプレス時間を長くすることができる。これにより、より多くの水分を生単板から除去することができる。このような方法で脱水を行う場合、定盤が生単板に加える圧力の大きさが、生単板の一端側と他端側とで異なる押圧むらが発生する可能性があるが、本発明においては、複数の生単板を積層した単板積層体を一度にプレスするため、このような押圧むらが軽減され、生単板は略均一にプレスされる。さらに、複数の生単板を一度にプレスできるので、効率よく生単板の水分を除去することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、本発明の実施の形態の脱水装置の正面図である。
【図2】図2は、本発明の実施の形態の脱水装置の側面図である。
【図3】図3は、本発明の実施の形態の脱水装置の各油圧シリンダを駆動するための要素を示したブロック図である。
【図4】図4は、本発明の実施の形態の傾きセンサを示したものである。
【図5】図5は、本発明の実施の形態の脱水装置による脱水処理の手順を示すフローチャートである。
【図6】図6は、図5のフローチャートの各ステップにおいて積層ベニヤ単板に加わる荷重の変動を示すグラフである。
【図7】図7は、本発明の実施の形態の脱水装置による可動定盤傾き監視ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施の形態について、図面を用いて詳細に説明する。図1及び図2は、本実施形態の脱水装置の正面図及び側面図を、夫々示したものである。
【0014】
図1及び2に示されるように、本実施形態の脱水装置1は、装置フレーム10、固定定盤22、可動定盤24及び駆動機構30を有する。なお、以下の記載においては、図1の左右方向(図2の紙面に垂直な方向)を幅方向、図1の紙面に垂直な方向(図2の左右方向)を奥行方向、図1及び2の上下方向を高さ方向と定義する。
【0015】
フレーム10は、略水平面であるベースB上に固定される一対の脚部11、脚部11の上に固定されている底板12、底板12の幅方向両端の上に固定され高さ方向に延びる一対の側板13及び両側板13の上端を連絡するように両側板13の上に固定されている天板14を有する。また、天板14及び側板13から構成されるコの字状部の奥行方向両側には、夫々奥行方向フレーム板15aが形成されている。また、一対の奥行方向フレーム板15aの底部を連絡するように、主シリンダ固定フレーム15bが設けられている。さらに、タンク固定用フレーム16が、一対の奥行方向フレーム板の上部外面に固定されている。
【0016】
駆動機構30は、幅方向に並べて配置された4本の主油圧シリンダ31と、幅方向両端に配置された第1及び第2副油圧シリンダ32a、32bとを有する。主油圧シリンダ31のスリーブ部は主シリンダ固定フレーム15bに固定されている。また、第1及び第2副油圧シリンダ32a、32bのシリンダ部はフレーム10の天板14上に形成された図示されない固定部材を介して天板14に固定されている。主油圧シリンダ31並びに第1及び第2副油圧シリンダ32a、32bの各スリーブ部には、図示しないピストンが内蔵されており、各ピストンには、下向きに延びるピストンロッドが固定されている。
【0017】
固定定盤22は、フレーム10の底板12の上に固定されている。また、主油圧シリンダ31並びに第1及び第2副油圧シリンダ32a、32bのピストンロッドの先端(下端)には、可動定盤24が固定されている。すなわち、可動定盤24は、主油圧シリンダ31並びに第1及び第2副油圧シリンダ32a、32bを介して、フレーム10からつり下げられた状態となっている。また、図1及び2に示されるように、固定定盤22は可動定盤24の直下に配置されており、且つ、可動定盤24の下面24aと、固定定盤22の上面22aとは対向している。
【0018】
タンク固定用フレーム16には、主油圧シリンダ31並びに第1及び第2副油圧シリンダ32a、32bに供給される作動オイルを貯蔵するオイルタンク41が固定されている。オイルタンク41内の作動オイルは、ポンプ42(図1、2には不図示)によって汲み出されて各油圧シリンダに供給されて各油圧シリンダのピストンロッドを上下動させる。
【0019】
前述のように、可動定盤24と固定定盤22は対向しているため、生単板を多数積層して形成された積層ベニヤ単板を可動定盤24と固定定盤22の間に配置し、次いで各油圧シリンダを駆動して可動定盤24を降下させることによって、固定定盤22と可動定盤24との間で積層ベニヤ単板をプレスすることができる。積層ベニヤ単板の導管は、各単板の面長辺或いは面短辺に沿って伸びており、各導管は、単板の縁部で途切れている。そのため、積層ベニヤ単板をプレスすると、各単板の導管内に含まれる水分が絞り出され、単板の縁部から漏出して除去される。なお、図1に示されるように、フレーム10の底板12は、その略中央部が縁部に対して下向きに凹んでいる容器状に形成されており、単板から絞り出された水分が一時的に貯め込まれるバット部となっている。なお、図1及び2に示されるように、本実施形態の固定定盤22及び可動定盤24は、幅方向寸法よりも奥行方向寸法が短くなっている。このため、積層ベニヤ単板は、おおよそ面長辺を脱水装置1の幅方向に向けて、固定定盤22上に搬入される。
【0020】
次に、脱水装置1の制御について説明する。図3は、脱水装置1の各油圧シリンダ31、32a、32bを駆動するための構成を示したブロック図である。図3に示されるように、脱水装置1は、コントローラ51、荷重センサ52、傾きセンサ53、主サーボバルブ43、第1副サーボバルブ44a、第2副サーボバルブ44bをさらに有している。なお、図3において実線矢印は制御信号やセンサ出力を示し、破線矢印は作動オイルの移動を示す。
【0021】
ポンプ42は、オイルタンク41から作動オイルを汲み出して主サーボバルブ43、第1及び第2副サーボバルブ44a、44bに送る。主サーボバルブ43、第1及び第2副サーボバルブ44a、44bは、夫々主油圧シリンダ31、第1及び第2副油圧シリンダ32a、32bに接続されている。各サーボバルブは、対応する油圧シリンダのヘッド側圧力室(ピストンによって2分割されているスリーブの内部空間において、ピストンロッドが配置されていない側の空間。図1、2の上側)とロッド側圧力室(スリーブの内部空間において、ピストンロッドが配置されている側の空間。図1、2において下側)のいずれに作動オイルを送るかを切り換えると共に、圧力室に送られる作動オイルの圧力を制御する機能を有する。ヘッド側圧力室とロッド側圧力室のどちらに作動オイルを送るか、及び、圧力室に送られる作動オイルの圧力は、コントローラ51によって制御される。なお、作動オイルが送られない側の圧力室中の作動油は、ピストンの移動に伴って油圧シリンダから押し出されるが、押し出された作動オイルは、オイルタンク41に戻されるようになっている。また、ポンプ42は、一定の流量でオイルタンク41から作動オイルを汲み出しているが、各サーボバルブを介して油圧シリンダに送られずに残った作動オイルは、そのままオイルタンク41に戻される。言い換えれば、ポンプ42は、オイルタンク41から各サーボバルブを介して再びオイルタンク41に戻る経路に作動オイルを循環させており、循環する作動オイルの一部がサーボバルブを介して各油圧シリンダに送られるようになっている。
【0022】
このように、本実施形態においては、コントローラ51が各サーボバルブ43、44a及び44bを制御することによって、各油圧シリンダ31、32a、32bのピストンロッドを上下動させるとともに、各油圧シリンダ内の作動オイルの圧力(すなわち、油圧シリンダが積層ベニヤ単板に加える荷重)を制御することができる。
【0023】
ここで、主油圧シリンダ31は、主として、可動定盤24の下面24aに積層ベニヤ単板の上面が当接した後に駆動され、積層ベニヤ単板をプレスするために使用される。このため、図1に示されるように、主油圧シリンダ31は副油圧シリンダ32a、32bと比べて大口径のものが4つ使用され、大荷重を積層ベニヤ単板に加えることができるようになっている。また、副油圧シリンダ32a、32bは、可動定盤24の上下動に使用される。すなわち、副油圧シリンダ32a、32bは、下面24aに積層ベニヤ単板の上面が当接するまで可動定盤24を降下させるとともに、プレスが終了した後に可動定盤24を上昇させる際に使用される。このため、副油圧シリンダ32a、32bは可動定盤24を上下動させることができる程度の小口径のものとなっている。
【0024】
荷重センサ52は、例えば可動定盤24内に設けられたロードセルであり、主油圧シリンダ31が積層ベニヤ単板をプレスする際のプレス荷重を検出する。コントローラ51は、荷重センサ52の検出結果に基づいて、主サーボバルブを制御し、所望の荷重で積層ベニヤ単板がプレスされるようにする。
【0025】
傾きセンサ53は、水平面(すなわち、固定定盤22の上面22a)に対する)可動定盤24の幅方向(すなわち、単板の面長辺方向)の傾きを検出するためのセンサである。傾きセンサ53によって検出された可動定盤24の傾きは、コントローラ51に送られる。コントローラ51は、傾きセンサ53の検出結果に基づいて、各サーボバルブ43、44a、44bの制御を行う。例えば、可動定盤24を上昇又は降下させる際に、可動定盤24の水平面に対する傾きが所定範囲内となるよう、副油圧シリンダ32a、32bを制御する。或いは、プレス中に、各単板の密度のバラツキなどによって可動定盤24の水平面に対する傾きが所定の閾値を超えたときに、警報を発し、主油圧シリンダ31を強制停止させる。
【0026】
傾きセンサ53について以下に説明する。図4に示されるように、傾きセンサ53は、可動定盤24の上面に固定されている一対の軸受53aと、この一対の軸受に軸支されているスプール53bと、スプール53bに巻き回され且つ一端がフレーム10の天板14の下面に、他端がスプール53bに固定されているワイヤ53cとを有する。また、スプール53bには図示しないトーションバネが設けられており、ワイヤ53cに一定のテンションを与えている。また、スプール53bには、ロータリーエンコーダ53dが設けられており、スプールの回転数を検出することができる。一対の軸受53a、スプール53b、ワイヤ53c及びロータリーエンコーダ53dの組は、天板14と可動定盤24の間の空間の幅方向両側に1組ずつ設けられており、傾きセンサ53の図示しない回路部は、一対のロータリーエンコーダ53dが検出する回転数の差分に基づいて可動定盤24の傾きを検出することができる。
【0027】
なお、傾きセンサ53の図示しない回路部は、一対のロータリーエンコーダ53dが検出する回転数の平均値に基づいて天板14と可動定盤24との間隔を演算し、これをコントローラ51に送信している。コントローラ51は、この間隔に基づいて、可動定盤24と固定常磐22の間隔を算出する。
【0028】
次に、本実施形態の脱水装置1による積層ベニヤ単板の脱水手順について説明する。図5は、本実施形態の脱水装置1による脱水処理の手順を示すフローチャートである。また、図6は、図5のフローチャートの各ステップにおいて積層ベニヤ単板に加わる荷重の変動を示すグラフである。なお、図5の処理が開始される前は、可動定盤24は十分に高い位置まで上昇されており、固定定盤22との間に積層ベニヤ単板を搬入できるようになっている。
【0029】
図5に示す処理が開始されると、脱水装置1の外部にあるストッカからフォークリフト等によって一組の積層ベニヤ単板が取り出され、固定定盤22上に配置される(ステップS1)。ストッカには、積層ベニヤ単板が少なくとも一組収容されている。ストッカに収容されている積層ベニヤ単板は、多数の生単板をその短辺と長辺とを揃えて積層したものであり、その高さは、生単板の面短辺寸法の平均値の寸法の略半分から略二倍程度となっている。
【0030】
次に、ステップS2が実行される。ステップS2では、コントローラ51は、第1及び第2副サーボバルブ44a、44bを制御して、可動定盤24を降下させる。このとき、コントローラ51は、主サーボバルブ43を制御して、可動定盤24が自由に降下できるようにする(主油圧シリンダ31のヘッド側の圧力室に作動オイルが大気圧で流れ込むように制御する)。コントローラ51は、荷重センサ52が検出する荷重の大きさをモニタしており、この荷重が所定値より大きくなったときに、可動定盤24の下面24aが積層ベニヤ単板に接触したものと判断して、副油圧シリンダ32a、32bの動作を停止する。
【0031】
次に、コントローラ51は、主サーボバルブ43を駆動して、積層ベニヤ単板をプレスしながら可動定盤24を降下させる。このとき、コントローラ51は、副サーボバルブ44a、44bを制御して、可動定盤24が自由に降下できるようにする(副油圧シリンダのヘッド側の圧力室に作動オイルが大気圧で流れ込むように制御する)。コントローラ51は、荷重センサ52が検出する荷重Lと積層ベニヤ単板の底面積Aに基づいて積層ベニヤ単板に加わる圧力(L/A)を算出している。コントローラ51は、この圧力がプレス圧力Pに達するまで、可動定盤24を降下させる。なお、プレス圧力Pは、積層ベニヤ単板を構成する生単板の厚さによって決定される。具体的には、生単板の厚さが厚くなるほど、プレス圧力Pは小さく設定される。例えば、生単板の厚さが2.7mmの場合は、プレス圧力Pは1.5〜1.7MPaの間の値に設定され、厚さが3.4mmの場合は、プレス圧力Pは1.3〜1.5MPaの間の値に設定され、さらに、厚さが3.5mm以上の場合は、プレス圧力Pは1.1〜1.3MPaの間の値に設定される。
【0032】
次に、ステップS3が実行される。ステップS3では、コントローラ51は、荷重センサ52の検出結果に基づいて、150から230秒の間の一定の時間Tの間、荷重Lで積層ベニヤ単板がプレスされる状態を維持する。
【0033】
次に、ステップS4が実行される。ステップS4では、コントローラ51は、主サーボバルブ43を駆動して、積層ベニヤ単板に加える荷重を減少させながら可動定盤24を上昇させる。このとき、コントローラ51は、副サーボバルブ44a、44bを制御して、可動定盤24が自由に上昇できるようにする(副油圧シリンダのロッド側の圧力室に作動オイルが大気圧で流れ込むように制御する)。コントローラ51は、荷重センサ52が検出する荷重の大きさに基づいて積層ベニヤ単板に加わる圧力の大きさをモニタしており、この圧力が略0となるまで、可動定盤24を上昇させる。可動定盤24を上昇させるに従い、積層ベニヤ単板を構成する各単板は、その厚さ方向寸法が復元するように変形し、積層ベニヤ単板の高さは増大する。そして、各単板がこれ以上復元できなくなったときに、積層ベニヤ単板に加わる圧力が略0となり、このときは積層ベニヤ単板の上面と可動定盤24の下面が軽く接触した状態となる。
【0034】
次に、ステップS5が実行される。ステップS5では、短時間(数秒程度)可動定盤24を停止する。
【0035】
次に、ステップS6が実行される。ステップS6では、コントローラ51は、主サーボバルブ43を駆動して、積層ベニヤ単板をプレスしながら可動定盤24を降下させる。コントローラ51は、荷重センサ52が検出する荷重に基づいて積層ベニヤ単板に加わる圧力の大きさをモニタしており、この圧力がプレス圧力Pに達するまで、可動定盤24を降下させる。なお、本ステップにおいては、主油圧シリンダ31によって可動定盤24を駆動させるため、コントローラ51は、副サーボバルブ44a、44bを制御して可動定盤24が自由に降下できるようにしている。
【0036】
次に、ステップS7が実行される。ステップS7では、コントローラ51は、荷重センサ52の検出結果に基づいて、一定の時間Tの間、圧力Pで積層ベニヤ単板がプレスされる状態を維持する。なお、このときのプレス時間Tは、最初のプレス時(ステップS)におけるプレス時間Tの70から80%の間の長さとなっている。
【0037】
次に、ステップS8が実行される。ステップS8では、コントローラ51は、主サーボバルブ43を駆動して、積層ベニヤ単板に加える荷重を減少させながら可動定盤24を上昇させる。このとき、コントローラ51は、副サーボバルブ44a、44bを制御して、可動定盤24が自由に上昇できるようにする(副油圧シリンダのロッド側の圧力室に作動オイルが大気圧で流れ込むように制御する)。コントローラ51は、荷重センサ52が検出する荷重の大きさに基づいて積層ベニヤ単板に加わる圧力をモニタしており、この圧力が略0となるまで、可動定盤24を上昇させる。可動定盤24を上昇させるに従い、積層ベニヤ単板を構成する各単板は、その厚さ方向寸法が復元するように変形し、積層ベニヤ単板の高さは増大する。そして、各単板がこれ以上復元できなくなったときに、積層ベニヤ単板に加わる圧力が略0となり、このときは積層ベニヤ単板の上面と可動定盤24の下面が軽く接触した状態となる。
【0038】
次に、ステップS9が実行される。ステップS9では、短時間(数秒程度)可動定盤24を停止する。
【0039】
次に、ステップS10が実行される。ステップS10では、コントローラ51は、主サーボバルブ43を駆動して、積層ベニヤ単板をプレスしながら可動定盤24を降下させる。コントローラ51は、荷重センサ52が検出する荷重に基づいて積層ベニヤ単板に加わる圧力の大きさをモニタしており、この圧力がプレス圧力Pに達するまで、可動定盤24を降下させる。なお、本ステップにおいては、主油圧シリンダ31によって可動定盤24を駆動させるため、コントローラ51は、副サーボバルブ44a、44bを制御して可動定盤24が自由に硬化できるようにしている。
【0040】
次に、ステップS11が実行される。ステップS11では、コントローラ51は、荷重センサ52の検出結果に基づいて、一定の時間Tの間、プレス圧力Pで積層ベニヤ単板がプレスされる状態を維持する。
【0041】
次に、ステップS12が実行される。ステップS12では、コントローラ51は、主サーボバルブ43を駆動して、積層ベニヤ単板に加える荷重を減少させながら可動定盤24を上昇させる。このとき、コントローラ51は、副サーボバルブ44a、44bを制御して、可動定盤24が自由に上昇できるようにする(副油圧シリンダのロッド側の圧力室に作動オイルが大気圧で流れ込むように制御する)。コントローラ51は、荷重センサ52が検出する荷重の大きさに基づいて積層ベニヤ単板に加わる圧力をモニタしており、この圧力が略0となるまで、可動定盤24を上昇させる。可動定盤24を上昇させるに従い、積層ベニヤ単板を構成する各単板は、その厚さ方向寸法が復元するように変形し、積層ベニヤ単板の高さは増大する。そして、各単板がこれ以上復元できなくなったときに、積層ベニヤ単板に加わる圧力が略0となり、このときは積層ベニヤ単板の上面と可動定盤24の下面が軽く接触した状態となる。
【0042】
次に、コントローラ51は、第1及び第2副サーボバルブ44a、44bを制御して、可動定盤24を上昇させる。このとき、コントローラ51は、主サーボバルブ43を制御して、可動定盤24が自由に上昇できるようにする(主油圧シリンダ31のロッド側の圧力室に作動オイルが大気圧で流れ込むように制御する)。そして、傾きセンサ53が検出した天板14と可動定盤24の間隔に基づいて演算される固定定盤22と可動定盤24との間隔が十分に大きくなった(ステップS2開始前の間隔に戻った)ことをコントローラ51が検出すると、第1及び第2副サーボバルブ44a、44bを制御して、可動定盤24を停止する。
【0043】
次いでステップS13が実行される。ステップS13では、ベルトコンベア等によって、脱水の終わった積層ベニヤ単板が脱水装置から取り出され、熱風にて各ベニヤ単板の水分をさらに除去するためのドライヤチャンバに搬送される。
【0044】
積層ベニヤ単板をプレスすると、積層ベニヤ単板を形成する各単板は厚さ方向に圧縮され、単板に含まれる水分は単板の縁部から押し出されて除去される。しかしながら、プレスを行ったままある程度時間が経過すると、単板の厚さが減少しなくなり、それ以上プレスを行っても単板から水分を除去できない。このため、本実施形態においては、複数回に分けて脱水プレスを行っている。一回プレスを行った後、除荷を行うと、積層ベニヤ単板を形成する各単板の持つ弾性によって、単板の厚さ方向寸法は大きくなる。そして、除荷後に数秒程度間を置いた(ステップS5、S9)後に再度プレスを行うことにより、単板が再びプレスされてその中の水分が押し出される。このように、本実施形態のような脱水プレスを複数回行う構成においては、長時間の脱水プレスを一回のみ行う場合と比べて、効率よく水分を除去することができる。特に、脱水プレスを3回行う構成で、最も効果的に積層ベニヤ単板の水分を除去することができる。また、一回目のプレスを行う前は、単板は多くの水分を含んでいるため、比較的長い時間Tの間プレスを行う(ステップS3)必要があるが、二回目以降のプレス時には、一回目のプレスにより単板からある程度の量の水分が除去されているため、二回目以降のプレス時のプレス時間Tを、一回目のプレス時のプレス時間Tよりも短く設定し、効率よく水分を除去できるようにしている。なお、本実施形態においては、二回目と三回目のプレス時間を同じ時間としているが、二回目以降のプレスについては、プレスを行うごとにプレス時間を短くする、或いはプレスを行うごとにTを超えない範囲でプレス時間を長くするなど、プレスごとにプレス時間を変える構成としてもよい。
【0045】
次に、主油圧シリンダ31によって積層ベニヤ単板のプレスを行っている際に可動定盤24の水平面に対する傾きを監視し、この傾きが大きくなったときに警報を発して主油圧シリンダ31を強制停止させるための制御について説明する。図7は、本実施形態の可動定盤傾き監視ルーチンのフローチャートである。このフローチャートに示される各ステップは、主油圧シリンダ31の駆動が始まったとき(図5のステップS3、S7及びS11)に、コントローラ31によって、実行される。
【0046】
本ルーチンが実行されると、ステップS21が実行される。ステップS21では、コントローラ51は、傾きセンサ53から可動定盤24の水平面に対する傾きの大きさを取得する。
【0047】
次に,ステップS22が実行される。ステップS22では、コントローラ51は、ステップS21で取得した可動定盤24の傾きが所定の閾値(例えば1°)以上であるかどうかの判定を行う。傾きが閾値未満であれば(S22:NO)、ステップS25に進む。
【0048】
ステップS25では、コントローラ25は、現在主油圧シリンダ31がプレスを行っているかどうかの判定を行う。主油圧シリンダ31がプレスを行っているのであれば(S25:YES)、ステップS21に戻る。一方、主油圧シリンダ31がプレスを行っていないのであれば(S25:NO)、積層ベニヤ単板に対して除荷中である、すなわち図5のステップS3、S7又はS11が終了したということであるため、本ルーチンを終了する。
【0049】
一方、ステップS22において、可動定盤24の傾きが所定の閾値以上であることが確認された場合は(S22:YES)、ステップS23に進む。
【0050】
ステップS23においては、コントローラ51は主サーボバルブを制御して主油圧シリンダ31に加えている油圧を低下させて、積層ベニヤ単板へのプレスを中断する。次いで、ステップS24が実行され、警報(ランプ又はサイレン)が発せられる。
【0051】
以上のように、コントローラ51は、可動定盤24が所定の閾値以上に傾いたときは異常動作であると判断して、プレスを中断すると共に、警報を発して以上が発生したことを脱水装置のオペレータに報知する。
【0052】
なお、本実施形態においては、4本の主油圧シリンダ31は単一の主サーボバルブに接続されており、主油圧シリンダ夫々の油圧は等しくなっている。また、主油圧シリンダ31が積層ベニヤ単板をプレスしている間に、傾きセンサ53によって検出される可動定盤24の傾きが所定の閾値を超えたときにプレスを中止するよう構成されている。しかしながら、本発明はこの構成に限定されるものではない。すなわち、4本の主油圧シリンダ31の夫々が異なるサーボバルブに接続されており、且つ、コントローラ2が、傾きセンサ53の検出結果に基づいて、可動定盤24の傾きが所定の閾値内に収まるよう主油圧シリンダ31夫々の油圧を調整する構成としてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1 脱水装置
10 装置フレーム
12 底板
22 固定定盤
24 可動定盤
30 駆動機構
31 主油圧シリンダ
32a 第1副油圧シリンダ
32b 第2副油圧シリンダ
41 オイルタンク
42 ポンプ
43 主サーボバルブ
44a 第1副サーボバルブ
44b 第2副サーボバルブ
51 コントローラ
52 荷重センサ
53 傾きセンサ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに対向するよう配置されている一対の定盤と、
前記一対の定盤を近接させて該一対の定盤間に挟持された単板積層体に圧力を加え、各生単板から水分が絞り出されるように、該一対の定盤の少なくとも一方を駆動する駆動手段と、
前記単板積層体に加わる圧力を検出する圧力検出手段と、
前記圧力検出手段が検出する圧力の大きさをモニタし、前記単板積層体を構成する生単板の厚さによって定まる所定圧力に前記定盤間の圧力が達したとき、第1の時間だけ前記所定圧力を維持した後、前記少なくとも一方の定盤を駆動してかかる圧力を除荷するように前記駆動手段を制御する制御手段と、
を有する生単板の脱水装置。
【請求項2】
前記駆動手段は、前記少なくとも一方の定盤を他方の定盤に近接させる第1のシリンダ手段と、定盤間に挟持された単板積層体に圧力を加える第2のシリンダ手段とからなることを特徴とする請求項1に記載の脱水装置。
【請求項3】
前記一対の定盤は、固定定盤と、前記固定定盤に対して近接/離間するよう駆動される可動定盤とを有し、
前記可動定盤の水平面に対する傾き検出する傾きセンサをさらに有し、
前記制御手段は、前記駆動手段が単板積層体に圧力を加えている間に、前記傾きセンサによって検出される可動定盤の傾きが所定の閾値を超えたとき、単板積層体に圧力加えられている圧力が除荷されるように前記駆動手段を制御する
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の脱水装置。
【請求項4】
前記傾きセンサは、前記可動定盤の両端において該可動定盤の変位を計測し、該可動定盤の両端の変位の差分に基づいて該可動定盤の傾きを検出することを特徴とする請求項3に記載の脱水装置。
【請求項5】
前記傾きセンサは、前記可動定盤の両端と装置フレームとの間に渡された一対のワイヤと、該一対のワイヤを巻き取って該ワイヤにテンションを与える一対のスプールと、前記一対のスプール夫々の回転数を検出するロータリーエンコーダとを有し、該ロータリーエンコーダの検出結果に基づいて該可動定盤の両端の変位を計測することを特徴とする請求項4に記載の脱水装置。
【請求項6】
前記単板積層体は、高さ方向の寸法が前記生単板の面短辺の略半分から略二倍となるように生単板を積層してなることを特徴とする請求項1から5のいずれか記載の脱水装置。
【請求項7】
前記制御手段は、前記単板積層体に1.1から1.7MPaの間の前記所定圧力を加え、150から230秒の間の前記第1の時間、前記所定圧力を維持するよう、前記駆動手段を制御することを特徴とする請求項1かち6のいずれかに記載の脱水装置。
【請求項8】
前記所定圧力は、前記生単板の厚さが大きくなるほど小さくなるよう設定されていることを特徴とする請求項1から7のいずれかに記載の脱水装置。
【請求項9】
前記単板積層体に前記所定圧力が加わった状態が第1の時間維持された後、前記制御手段は、該単板積層体に加わる圧力を除荷し、次いで、該単板積層体に再度前記所定圧力が加わった状態を第2の時間維持するように前記駆動手段を制御することを特徴する請求項1から8のいずれかに記載の脱水装置。
【請求項10】
前記第2の時間は、前記第1の時間よりも短いことを特徴とする請求項9に記載の脱水装置。
【請求項11】
前記第2の時間は、前記第1の時間の70から80%の間であることを特徴とする請求項10に記載の脱水装置。
【請求項12】
前記単板積層体への所定圧力を前記第2の時間加える圧力状態が、複数回に亙って行われることを特徴とする請求項9から11のいずれかに記載の脱水装置。
【請求項13】
前記一対の定盤のうち、下側のものの下部には、前記単板積層体が前記定盤間で圧迫されているときに、各単板の側面から放出される水分を受け止めるためのバットが設けられていることを特徴とする請求項1から12のいずれかに記載の脱水装置。
【請求項14】
互いに対向するよう配置されている一対の定盤の間に、生単板を積層して形成された単板積層体を配置する配置ステップと、
前記一対の定盤を近接させて該一対の定盤間に挟持された単板積層体に圧力を加えて各生単板から水分を除去する第1の加圧ステップと、
前記第1の加圧ステップにおいて前記単板積層体を構成する生単板の厚さによって定まる所定圧力に前記定盤間の圧力が達したときに、第1の時間かかる圧力状態を維持する第1の圧力維持ステップと、
前記第1の圧力維持ステップの後、前記一対の定盤を離間させてかかる圧力を除荷する第1の除荷ステップと
を有する、生単板の脱水方法。
【請求項15】
前記単板積層体は、高さ方向の寸法が前記生単板の面短辺の略半分から略二倍となるように積層されていることを特徴とする請求項14に記載の脱水方法。
【請求項16】
前記所定圧力が1.1から1.7MPaの間の大きさであり、
前記第1の時間が150から230秒の間の長さである
ことを特徴とする請求項14又は15に記載の脱水方法。
【請求項17】
前記所定圧力は、前記生単板の厚さが大きくなるほど小さくなるよう設定されていることを特徴とする請求項14から16のいずれかに記載の脱水方法。
【請求項18】
前記第1の除荷ステップの後に、前記一対の定盤を近接させて該一対の定盤間に挟持された単板積層体に圧力を加えて各生単板から水分を除去する第2の加圧ステップと、
前記第2の加圧ステップにおいて前記所定圧力に前記定盤間の圧力が達したときに、第2の時間かかる圧力状態を維持する第2の圧力維持ステップと、
前記第2の圧力維持ステップの後、前記一対の定盤を離間させてかかる圧力を除荷する第2の除荷ステップと
をさらに有することを特徴する請求項14から17のいずれかに記載の脱水方法。
【請求項19】
前記第2の時間は、前記第1の時間よりも短いことを特徴とする請求項18に記載の脱水方法。
【請求項20】
前記第2の時間は、前記第1の時間の70から80%の間であることを特徴とする請求項19に記載の脱水方法。
【請求項21】
前記第2の加圧ステップ、前記第2の圧力維持ステップ及び前記第2の除荷ステップが、複数回に亙って行われることを特徴とする請求項18から20のいずれかに記載の脱水装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−197004(P2010−197004A)
【公開日】平成22年9月9日(2010.9.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−44075(P2009−44075)
【出願日】平成21年2月26日(2009.2.26)
【出願人】(300004946)キタガワエンジニアリング株式会社 (1)
【Fターム(参考)】