生殖幹細胞の単離、増殖および分化のインビトロ方法
本発明は、生殖幹細胞をインビトロで分離し、増殖および分化させる方法を開示する。さらに詳細には本発明は、哺乳類の精巣から分離した細胞を胚性幹細胞の培養培地で培養することを特徴とする哺乳類生殖幹細胞の単離および増殖の方法、ならびに哺乳類の生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化して管周囲細胞と共培養することを特徴とする生殖幹細胞の体外での分化の方法を開示する。また、本発明は、該方法により得られる生殖幹細胞、該生殖幹細胞を含む男性不妊治療用の組成物および該生殖幹細胞を利用して男性不妊を治療する方法も開示する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の雄性生殖幹細胞(Germ−line Stem Cells:GSCs)をインビトロで体外分離、増殖および分化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雄性生殖幹細胞は、成人幹細胞の一種であり、自家増殖と分化とによって精子だけを作ることができる単一分化能を有すると知られている。生殖幹細胞は、その数が少なく、精巣内で支持細胞間の安全なところに休止状態で存在しており、外部のシグナルとの交流により増殖および分化が調節されている。
【0003】
生殖幹細胞の発生および分化過程は、よく知られている。例えば、マウスの原始生殖細胞は、7.5dpc(days post coitum)で外胚葉(epiblast)に出現し、増殖および移動を行って生殖隆起部に達し、それから12.5dpcで生殖腺を形成した後、生殖細胞に分化する。前記生殖細胞は、16dpcまで増殖を続けるが、それ以降は増殖を止める。出生後、前記生殖細胞は、未分化のA型精原細胞に分化する。精原細胞は、自家増殖と分化とによって思春期後に続けて精子を生産することが可能である(Kierszenbaum et al.,Endocr Rev 15:116−134,1994)。
【0004】
精子形成過程は、1)体細胞分裂により精原細胞から精母細胞が生成される精母細胞発生、2)精母細胞から精子細胞が生成される減数分裂、および3)精子細胞から精子が生成される精子分化過程の3つに大別される。前記精子形成過程(spermatogenesis)は、
脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)により調節される。LHは、精巣の間質細胞であるライディヒ細胞に作用し、男性ホルモンであるテストステロンの産生を調節する。FSHは、生殖細胞を物理的および生化学的に支持しているセルトリ細胞の機能を調節することにより、精子形成過程に関与する。
【0005】
生殖幹細胞は、幹細胞の自家増殖および分化と関係する因子の探索およびそれらの機構を調べる研究に利用されてきた。ヒト胚性幹細胞(Thomson et al.,Science 282:1145−1147,1998)、およびヒト胚性生殖細胞(Sha
mblott et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95:137
26−13731,1998)についての研究がかなり進められている現在、生殖幹細胞は幹細胞の特性を解析するための主要な研究分野として残されている。また、生殖細胞増殖および分化の欠如に起因するヒト男性の不妊の治療、遺伝的に改変させた動物精子を用いるトランスジェニク動物の生産に関する研究など、生殖幹細胞を利用する可能性が検討されている(Nagano et al.,Biol Reprod 64:1409−1416,2001;Hamra et al.,Proc Natl Acad Sci USA
99:14931−14936,2002)。
【0006】
前記のような生殖幹細胞の有用性のために、生殖幹細胞を体外で分離、増殖および分化させようとする試みは、1960年代初期から続けられてきた。例えば、マウスの生殖幹細胞中にTERT遺伝子を導入して該細胞を不死化させた後、その不死化細胞をインビトロで長期間増殖および分化を誘導させることにより、円形精子細胞の産生が可能であるという報告がある(Feng et al.,Science 297:392−395,2
002)。しかしながら不死化された細胞から産生されたこの円形精子細胞の臨床的な利用は、潜在的な危険性を孕んでいる。また、生殖幹細胞を長期間インビトロで培養し、再びこれを精巣内に移植して精子に分化させることができることが確認された(Kanat
su−shinohara et al.,Biol Reprod 69:61−6,2003)。
【0007】
しかし、前記のような努力にもかかわらず、生体内に存在する生殖幹細胞の量が極めて少なく、これを分離するための特定マーカー(marker)の開発がなされておらず、生殖幹細胞の分離には困難さが伴う。また、かかる分離の困難性のために、インビトロの培養によって生殖幹細胞を大量に増殖できる技術的体系も完成に至っていない。
【0008】
従って、哺乳類の生殖幹細胞をインビトロで大量に分離し、および増殖させる方法、および生殖幹細胞を効果的に分化させる方法の開発が切実に要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、哺乳類の精巣から生殖幹細胞を分離し、これを増殖および分化させる方法についての広範な研究の過程で、哺乳類の精巣から分離された細胞を胚性幹細胞の培養培地で培養すれば、該生殖幹細胞が細胞コロニーの塊を形成することとなり、これにより生殖幹細胞の単離および増殖が同時に効果的になされるということを発見した。また本発明者らは、分離された生殖幹細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化して管周囲細胞(peritubular cell)と共培養する場合には、該生殖幹細胞の分化が効果的になされるということを発見した。これらの発見に基づいて本発明が完成されるに至ったのである。
【0010】
従って、本発明の目的は、哺乳類の精巣から生殖幹細胞を効率的に単離しおよび増殖させる方法を提供することである。
本発明の他の目的は、インビトロで生殖幹細胞を効率的に分化させる方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、前記方法により得られる生殖幹細胞を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、男性不妊治療用の組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、男性不妊の治療方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、哺乳動物において生殖幹細胞の存在を判別する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、哺乳動物の生殖幹細胞の分化能を評価する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記本発明の目的を達成するために、一様態として、本発明は、哺乳類の精巣から分離された細精管を胚幹細胞の培養培地で培養する段階を含む、哺乳類生殖幹細胞のインビトロの単離および増殖方法を提供する。
【0015】
他の様態として、本発明は、哺乳類の生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、そのカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階を含む、生殖幹細胞のインビトロ分化方法を提供する。
【0016】
さらに他の様態として、本発明は、前記方法のうちいずれか1つの方法により得られる生殖幹細胞を提供する。
さらに他の様態として、本発明は、前記生殖幹細胞の有効量を個体に投与することを含む男性不妊の治療方法を提供する。
【0017】
さらに他の様態として、本発明は、前記生殖幹細胞を含む男性不妊治療用の組成物を提供する。
さらに他の様態として、本発明は、哺乳動物で生殖幹細胞の存否を判別する方法を提供する。
【0018】
さらに他の様態として、本発明は、哺乳動物の生殖幹細胞の分化能を評価する方法を提供する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明は、哺乳類の精巣から分離された細胞懸濁液を胚幹細胞の培養培地で培養する段階を含む、生殖幹細胞の単離および増殖の方法に関するものである。
具体的には、本発明による生殖幹細胞の単離および増殖方法は、a)哺乳動物から精巣組織を摘出する段階、b)前記の摘出された精巣組織に二段階の酵素消化過程を適用して細胞懸濁液を調製する段階、およびc)該細胞懸濁液を胚性幹細胞の培養培地で培養する段階を含む。
【0020】
哺乳類から精巣組織を摘出する段階は、通常の方法により行うことができる。例えば、哺乳類から精巣の全部または一部を摘出し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で摘出された組織を洗浄して洗浄された組織から白膜(tunica albuginea)を除去することによって行うことができる。
【0021】
前記の二段階酵素消化過程は、公知の方法(例えば、Ogawa et al.,Int.J.Dev.Biol.,41:111−122,1997)、またはその変法により行うことができる。例えば、その過程に使われる酵素液として、Ca2+およびMg2+を含まないPBS(Phosphate Buffer Saline)にコラゲナーゼ(Type I)、DNase I、大豆トリプシンインヒビターおよびヒアルロニダーゼ(Sigma)の添加されたものを使用できる。
【0022】
本発明に使われる胚性幹細胞用の培養培地は、胚性幹細胞の増殖に使われ得るあらゆる培地を含む。その胚性幹細胞用の培養培地は、ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、2−メルカプトエタノール、ヒト白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor)、bFGFおよびフォスコリン(forskolin)が補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium;GIBCO)である。さらに具体的には、本発明に使われる胚性幹細胞の培養培地は、15%のウシ胎児血清(HyClone)、1%の非必須アミノ酸(GIBCO)、10μMの2−メルカプトエタノール、1500 U/
mlのヒト白血病抑制因子(ESGRO)、1ng/mlのbFGF(R&D)および10μMのフォスコリン(Sigma)が補充されたDMEM(Dulbecco’s m
odified Eagle’s medium;GIBCO)でありうる。
【0023】
本発明で「哺乳類」とは、ヒト、マウスおよびウシといったあらゆる哺乳動物を含み、ヒトが特に望ましい。
本発明の生殖幹細胞の単離および増殖方法は、前記胚性幹細胞の培養培地で培養された細胞を酵素で処理して該細胞を単一細胞に分離し、その単一細胞を継代培養する段階を、追加的に含んでもよい。その継代培養培地は、前記胚性幹細胞の培養培地の組成と同一であり、この継代培養は、5〜7回実施することができる。その酵素処理に使われる酵素は、トリプシンでもよい。
【0024】
本発明の生殖幹細胞の単離および増殖方法は、さらに胚性幹細胞の培養培地で培養された細胞を機械的に切り刻み、調製された支持細胞層(feeder layer)でこの切り刻まれた
細胞を継代培養する段階も含むことができる。この支持細胞層は、胚性幹細胞の培養培地で培養された精巣内の管周囲細胞から生殖幹細胞を除外することにより調製してもよい。
【0025】
本発明の一態様では、本発明の単離および増殖方法により、マウスの精巣から単離した細胞懸濁液を胚性幹細胞の培養培地で培養した。
培養3〜5日後には、多数の多細胞コロニーが形成され始めた(図1Aないし図1C参照)。また、生成されたコロニーから分離された細胞を継代培養すると、再びコロニーが形成された。五回継代培養されたコロニーを観察した結果、繊維芽細胞に類似した細胞が底部に付着しており、その上に複数層の細胞コロニーが存在していた(図1Dおよび図1E参照)。生殖幹細胞で特異的に発現されるマーカーであるCD29、CD49fおよびOct−4が上記コロニーで強く発現していた(図1Fないし図1H参照)。また、胚性幹細胞で特異的に発現するSSEA−1、SSEA−3およびSSEA−4も、前記コロニーで強く発現していた(図2参照)。
【0026】
これらの結果は、マウスの精巣から分離された細胞を胚性幹細胞の培養培地で培養すれば、生殖幹細胞だけからなるコロニーが形成され、よって、本発明による生殖幹細胞の単離および増殖を同時に非常に効果的に達成できるということを示す。
【0027】
本発明の他の態様として、非閉塞性無精子症(non-obstructive azoospermia)患者か
ら分離した細胞懸濁液を本発明の生殖幹細胞単離および増殖の方法により、ヒト胚性幹細胞の培養培地で培養した。
【0028】
培養2〜4週間後、多数の多細胞コロニーが形成され始めた。形成されたコロニーから分離された細胞を継代培養すると再びコロニーが形成された。三回継代培養された細胞の場合、コロニーがまた形成された(図3A参照)。生殖幹細胞で特異的に発現するマーカーのるアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase)(図3B
参照)、インテグリンβ1(integrin β1)(図3C参照)、およびインテグ
リンα6(integrin α6)(図示せず)が前記の生成されたコロニーで強く発
現していた。また、幹細胞に特異的なOct−4ならびに精原細胞に特異的なc−kitのmRNAバンドが培養前には検出されていないが、培養後には検出されるという事実から、本発明に使われた培養方法により、生殖幹細胞の増殖が効果的になされたということが分かる(図4参照)。
【0029】
これらの結果から非閉塞性無精子症の患者から分離された細胞を胚性幹細胞の培養培地で培養すれば、生殖幹細胞だけからなるコロニーが形成され、よって本発明による方法が生殖幹細胞の単離および増殖を同時に非常に効果的に達成できるということを示される。
【0030】
また、本発明は、哺乳類の精巣から分離された生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、このカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階を含む、生殖幹細胞のインビトロでの分化の方法に関するものである。
【0031】
アルギン酸カルシウムでカプセル化する段階は、公知の方法(例えば、Lee et al.,Biol.Reprod.65:873−878,2001)により行うことができる。
【0032】
カプセル化された細胞が分化する培養培地として、生殖幹細胞の分化に使われうるあらゆる分化用培地が挙げられる。具体的にこの分化用培地は、インシュリン−トランスフェリン−セレン溶液、ビタミンC、ビタミンE、レチノイン酸、レチノール、ピルベート、遺伝子組換えヒトFSH、テストステロン、抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有)およびBCSが補充されたH
EPES緩衝化DMEM/F12培地である。さらに具体的に、該分化用培地は、10μg/mlのインシュリン−トランスフェリン−セレン溶液、10−4MのビタミンC、10μg/mlのビタミンE、3.3x10−7Mのレチノイン酸、3.3x10−7Mのレチノール、1mMのピルベート、2.5x10−5Uの組換えヒトFSH、10−7Mのテストステロン、1X抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有)および10%BCSが補充されたHEPES緩衝化DMEM/F12培地でありうる。
【0033】
生殖幹細胞の三次元的培養において、カプセル化された細胞を哺乳類の精巣から分離された管周囲細胞とともに共培養することが望ましい。
前記管周囲細胞は、共培養される生殖幹細胞の起源と同一の種である哺乳類から分離されることが望ましい。通常の方法により哺乳類から管周囲細胞を分離できる。具体的には、管周囲細胞は、哺乳類の精巣から精巣細胞を分離した後に、仔牛血清、FSHおよびテストステロンを追加したDMEM/F12培地でその分離された細胞を培養することによって調製することができる。さらに具体的には、10%の仔牛血清、10ng/mlのFSHおよび10−3Mのテストステロンを含有するDMEM/F12培地で前記の分離された細胞を培養することによって調製されうる。
【0034】
本発明の一態様例で、本発明による生殖幹細胞のインビトロ分化の方法により、マウスまたはヒトの生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化した後に、分化用の培地で培養した。
【0035】
本発明の一実験例では、円形精子細胞の特徴である「尖体(acrosome)」の形成を確認するために、尖体に特異的に結合する染色物質を使用した。その結果、本発明の方法によって培養された生殖幹細胞は、精子細胞の特徴である尖体を有していた(図5参照)。
【0036】
本発明の他の実験例では、精原細胞および精母細胞のマーカーとして知られるc−kitの発現を、免疫組織化学染色によって検証した。その結果、マウスから分離され、増殖させた精巣細胞はc−kitを発現していないが(図6Aおよび図6C参照)、本発明の方法によって培養された細胞では、c−kitが発現していた(図6D参照)。これらの結果から、本発明の方法によって培養されたマウス生殖幹細胞は、精原細胞または精母細胞に分化されうるということが分かる。そうした結果は、ヒト生殖幹細胞についても確認された(図9参照)。
【0037】
本発明のさらに他の実験例では、培養時間による分化の程度を調べるために、生殖幹細胞に特異的なOct−4、精原細胞に特異的なc−kit、精母細胞に特異的なTH2Bおよび精子細胞に特異的なTP−1の遺伝子について、mRNA転写をRT−PCRによって調べた。その結果、3週間培養された生殖幹細胞が精母細胞に分化し、6週間培養された細胞は、精子細胞に分化した(図7参照)。
【0038】
また本発明のさらに他の実験例では、管周囲細胞が生殖幹細胞の分化に及ぼす影響を調べるために、精母細胞に特異的なTH2B遺伝子および精子細胞に特異的なTP−1遺伝子のmRNA転写レベルを測定した。その結果、管周囲細胞を共培養した場合は、そうではない場合に比べてTH2Bの発現は減少し、TP−1の発現は増加した(図8参照)。これらの結果から、管周囲細胞との共培養は、精母細胞から精子細胞への分化の効率を向上させるということが分かる。
【0039】
前記結果から、哺乳類の生殖幹細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化した後、分化用培地で管周囲細胞と共培養すれば、生殖幹細胞の分化効果が顕著に向上するということ
が分かる。
【0040】
本発明の一実施例において、本発明の方法によって単離し、増殖および分化させた円形精子細胞が卵子と受精するか否かを確認するために、本発明の方法によって調製されたマウスの円形精子細胞を成熟卵子に注入した後に、受精卵の分裂、胞胚(blastocyst)形成および孵化が発生するか否かを調べた(図10参照)。その結果、本発明の方法によって調製した精子細胞が注入された受精卵の分裂レベルは、活性化だけさせた対照群と比べて差異はなかったが、胞胚形成レベルおよび孵化レベルは、それぞれ対照群に比べて高かった。これらの結果から、本発明の方法により生成される精子細胞は、優秀な生殖能力を有するということが分かる。
【0041】
また、本発明は、本発明の単離および増殖方法により得られる生殖幹細胞、および本発明の分化の方法により得られる精子細胞に関するものである。
また、本発明は、本発明の単離および増殖方法により得られる生殖幹細胞、または本発明の分化の方法により得られる精子細胞を用いて男性不妊を治療する方法に関するものである。
【0042】
精子細胞を用いて男性不妊を治療する方法は、精子細胞を卵子とを体外受精させた後に、胚を子宮内に移植する段階を含むことができる。具体的に卵子は、排卵誘導によって直径が18mm超の卵胞を吸引することによって採取される。吸い込まれた卵子は、それらの成熟度を確認し、卵子の成熟度に応じて前培養を行う。典型的な成熟卵子は、概して4〜6時間前培養される。このとき卵子の成熟度は、卵丘細胞(cumulus cell)の膨脹および第1極体(first polar body)の存在を基準にして判定することができる。1個の円形精子細胞を注入ピペットに吸い込ませ、次いで成熟した卵子に注入できる。受精した卵は、新しい培養培地で24〜48時間さらに培養し、4〜6細胞期において子宮に移植する。胚の移植においては特別の子宮内挿入カテーテルを利用できる。
【0043】
また本発明は、本発明の単離および増殖方法により得られる生殖幹細胞、または本発明の分化の方法により得られる精子細胞を含む男性不妊治療用の組成物に関するものである。
【0044】
本発明における男性不妊として、乏精子症(oligozoospermia)、無力精子症(asthenozoospermia)、奇形精子症(teratozoospermia)および無精子症(azoospermia)が挙げ
られるが、これらに限定されるものではない。前記乏精子症は、精液1ml当たりの精子数が20,000,000未満であることをいい、無力精子症は、全体精子の50%未満だけが運動性を有することをいい、奇形精子症は、高倍率顕微鏡で観察するとき、正常形態の精子が50%未満である場合をいい、無精子症は、精管が塞がっていたり(閉塞性無精子症)、精子形成が正しくなされず(非閉塞性無精子症)、射精された精液に精子のないことをいう。前記無精子症は、非閉塞性無精子症であることが望ましい。
【0045】
また本発明は、(a)哺乳動物から精巣組織を採取する段階、(b)該精巣組織に二段階の酵素消化処理を施して細胞懸濁液を調製する段階、ならびに(c)その細胞懸濁液を幹細胞用の培養培地で培養した後に、細胞コロニーが形成されるか否かを判別する段階とを含む、哺乳動物において生殖幹細胞の存在を判別する方法に関するものである。
【0046】
本発明は、(a)哺乳動物から精巣組織を採取する段階、(b)その精巣組織に二段階酵素消化過程を適用して細胞懸濁液を調製する段階、(c)その細胞懸濁液を幹細胞用の培養培地で培養する段階、ならびに(d)前記の培養された生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化した後に、このカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階とを含む、生殖幹細胞の分化能を評価する方法に関するものである。前記
で哺乳動物は、マウスまたはヒト、特に男性不妊を有する人間の患者を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。 ただし下記の実施例は、本発明を例
示するものであり、本発明の範囲がそれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
雄性マウスからの生殖幹細胞の単離および増殖
30匹の3〜5日齢である雄性C57BL/6マウスまたはICRマウス(大韓バイオリンク)の精巣から生殖幹細胞を単離して増殖させた。
【0049】
まず、雄性マウスから細精管を分離するために、下記の二段階の酵素消化過程を行った(Ogawa et al.,Int.J.Dev.Biol.,41:111−122,1997)。
【0050】
すなわち、マウスから精巣を摘出してPBSで洗浄した後、白膜を前記精巣から除去した。該精巣で露出された細精管を集め、Ca2+およびMg2+を含まないPBSに0.5mg/mlのコラゲナーゼ(Type I、Sigma)、10μg/mlのDNas
e I、1μg/mlの大豆トリプシンインヒビター(Gibco、GrandIsla
nd、NY)、1500 U/mlの白血病抑制因子(ESGRO)および1mg/ml
のヒアルロニダーゼ(Sigma)が添加された第一酵素溶液(10ml)中で、室温で20分間インキュベートした。その後、PBSを上記の第一酵素溶液に添加した後、1,500rpmで4分間遠心分離し、上澄み液を除去してペレットを得た。
【0051】
管周囲細胞を上記過程によって除去した後、該ペレットを、Ca2+およびMg2+のないPBSに5mg/mlのコラゲナーゼ(Type I、Sigma)、10μg/m
lのDNase I、1μg/mlの大豆トリプシンインヒビター(Gibco、Gra
ndIsland、NY)および1mg/mlのヒアルロニダーゼ(Sigma)が添加された第二酵素溶液10ml中で、37℃で30分間インキュベートした。その後、PBSを該第二酵素溶液に添加した後、1,500rpmで4分間遠心分離し、上澄み液を除去してペレットを得た。
【0052】
上記ペレットを0.2%ゼラチンのコーティングされた培養皿に付着させて培養した。この培養培地は、15%のウシ胎児血清(HyClone)、1%の非必須アミノ酸(GIBCO)、10μMの2−メルカプトエタノール、1500 U/mlの白血病抑制因
子(ESGRO)、1ng/mlのbFGF(R&D)および10μMのフォスコリン(Sigma)が補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium;GIBCO)であった。また上記ペレットは、5%CO2および
95%湿度に維持された培養器で培養された。培養3〜5日後に、多数の多細胞コロニーが形成された。
【0053】
継代培養のために、生成された生殖幹細胞コロニーを、6日ごとの間隔で0.25%トリプシンで37℃で6分間処理し、ピペットを使用して培養皿から単一細胞を分離し、トリプシン反応を阻害するために、血清含有培養液を添加した。次いで培養液は1,500rpmで4分間、遠心分離を行い、上澄み液を除去してペレットを得た。前記培養液と同一組成の培養液にペレットを再懸濁した後に、新しい培養皿で続けて培養した。分離された単一細胞を続けて培養すれば、さらに再びコロニーが形成されることが観察された。
実験例1:マウス生殖幹細胞の単離および増殖の確認
実施例1で形成されたコロニーが生殖幹細胞であるか否かを確認するために、免疫細胞化学染色およびインシチュ(in situ)・ハイブリダイゼーションを行った。
【0054】
(1−1)生殖幹細胞マーカーの発現確認
生殖幹細胞マーカーとして知られるアルカリホスファターゼ(AP)の発現を確認した。すなわち実施例1で、6日間培養し、ならびに五回継代培養されて形成されたコロニー細胞を、66%アセトン/3.7%ホルムアルデヒドに固定させた後、ナフトール/FRV−アルカリ性AP基質(Sigma)またはDAPI(核染色物質、図1C)で染色して観察した。
【0055】
他の生殖幹細胞のマーカーであるIntegrin α6 chainおよびIntegrin β1 chainの発現も、免疫組織化学染色により確認した。すなわち、実施例1で生成されたコロニーの細胞を、ダルベッコPBS(Dulbecco’s PBS)
中の4%パラホルムアルデヒド(GIBCO/BRL)で固定させた。一次抗体を1:500濃度で添加した。細胞を室温で2時間インキュベートした後、二次抗体を添加してインキュベートした。免疫組織化学染色のための一次抗体として、CD49f(Integrin α6 chain;BD/Pharmingen)およびCD29(Integrin β1 chain;BD/Pharmingen)を使用した。前記一次抗体を検出するための二次抗体として、ビオチン標識された抗マウスIgM抗体である、ABC−AP(Vector Lab.Inc.)を使用した。発色のため、AP反応バッファ中の
BCIP(Sigma)およびNBT(Sigma)の混合物を使用した。
【0056】
図1は、前記細胞の顕微鏡写真を示す。図1に示されたように、培養6日後には、APを強く発現している細胞が培養皿に付着して凝集するところが観察された(図1A)。これを拡大してみれば、多数の細胞がコロニー形態で増殖することを確認することができた(図1Bおよび図1C)。五回の継代培養後には、繊維芽細胞と類似した細胞が底に付着しており、その細胞上に複層の細胞コロニーが観察された(図1D)。底に付着した細胞がセルトリ細胞、その上のコロニーを生殖幹細胞であると推定した。生殖幹細胞と推定されるコロニーの一つを拡大して見た結果、1つのコロニーは、いくつかの細胞塊からなっているということを確認することができた(図1E)。
【0057】
また、胚性幹細胞のさらに別のマーカーとして知られるOct−4の発現を、インシチュ・ハイブリダイゼーションによって調べた。まず実施例1で、6日間の培養および五回継代培養されて生成されたコロニーの細胞を、MEMFA(0.1M MOPS、pH7
.5、2mM EDTA、1mM MgSO4、3.7%ホルムアルデヒド)で室温で20分間固定した。ハイブリダイゼーションおよびその後の洗浄過程が55℃で行れたことを除いては、インシチュ・ハイブリダイゼーション方法(Song et al.,Dev.Biol.,213:157−169,1999)において知られている同じやり方でハイブリダイゼーションを実施した。その結果、胚性幹細胞で特異的に発現するOct−4が、生殖幹細胞と推定されるコロニーでのみ強く発現していた(図1H)。
【0058】
上記の結果から、実施例1でのように、マウス精巣から単離された細胞を胚性幹細胞の増殖に使われる単純培養液で培養させると、生殖幹細胞は、コロニーを形成することが見出された。これによりマウス生殖幹細胞の単離および増殖が、同時に極めて効果的になされ得るということを確認することができる。
【0059】
(1−2)胚性幹細胞マーカーの発現確認
免疫組織化学染色のための一次抗体として、MC480(SSEA−1)、MC631(SSEA−3)およびMC813−70(SSEA−4)抗体(それぞれ、Devel−opmental Studies Hybridoma Bank、Universi
ty of Iowa)を使用したことを除いては、胚性幹細胞および胚性生殖細胞のマーカーとして知られるSSEA(Stage Specific Embryonic An
tigen)−1、SSEA−3およびSSEA−4の発現を、実験例1−1の時と同じ方法で確認した。
【0060】
図2は、該細胞の顕微鏡写真を示す。図2に示されたように、胚性幹細胞で特異的に発現するSSEA−1、SSEA−3およびSSEA−4が、生殖幹細胞と推定されるコロニーでのみ強く発現していた(図2Aないし図2C)。これらの結果により、実施例1でのように培養された細胞は、マウス胚性幹細胞の特徴もともに有しているということを確認することができる。
【実施例2】
【0061】
ヒト無精子症患者からの生殖幹細胞の単離および増殖
13人のヒト非閉塞性無精子症患者の精巣から生殖幹細胞を分離して増殖させた。 ま
ず、前記13人の患者から細精管を分離するために、精巣組織の一部を生検(biopsy)により採取した後、実施例1と同じ方法で二段階の酵素消化過程を行った。
【0062】
前記方法によって生成されたペレットを0.2%ゼラチンでコーティングされた培養皿に付着させて培養した。前記培養培地は、15%のウシ胎児血清(HyClone)、1%の非必須アミノ酸(GIBCO)、10μMの2−メルカプトエタノール、1500
U/mlのヒト白血病抑制因子(ESGRO)、4ng/mlのbFGF(R&D)および10μMのフォスコリン(Sigma)が補充されたDMEM(Dulbecco’s
modified Eagle’s medium;GIBCO)であり、この培養は、
5%CO2および95%湿度に維持された培養器内で行われた。培養2〜4週間した後、前記患者13人のうち6人のサンプル(46.2%)において、多数の多細胞コロニーおよびセルトリ細胞類似の支持細胞(feeder cell)が形成された。2週間隔の継代培養の
ために、支持細胞上のコロニーを機械的に分散させた後、マイクロピペットを利用して三つの切片に分離し、他の支持細胞に移した。継代培養の他の条件は、実施例1の場合と同一であった。他の支持細胞に移されたコロニーは、首尾よく付着して六回、七回の継代まで増殖された。これらの分離された細胞を続けて培養すれば、再びコロニーが形成されることが観察された。他の3患者のサンプルでもコロニー類似の構造が形成されたが、継代後に消滅した。
実験例2:ヒト生殖幹細胞の単離および増殖確認
実施例2で単離され、および増殖させたコロニーが生殖幹細胞であるか否かを確認するために、免疫細胞化学染色およびRT−PCT(reverse transcript
ion−polymerase chain reaction:逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。
(2−1)生殖幹細胞マーカーの発現確認
生殖幹細胞マーカーとして知られるAP(alkaline phosphatase
)、CD49f(Integrin α6 chain)およびCD29(Integrin β1 chain)が、三回継代培養されて生成された細胞において発現するか否かを確認するために、実施例1−1で記載された方法によって免疫細胞化学染色を行った。
【0063】
図3は、染色された細胞の顕微鏡写真を示す。図3に示されたように、生殖幹細胞で特異的に発現するAP(図3B)、CD29(図3C)およびCD49f(結果は図示せず)が前記コロニーで強く発現していた。
【0064】
これらの結果からヒト非閉塞性無精子症患者の精巣から分離された細精管を、実施例2に記載されたように胚性幹細胞増殖用の培地で培養する場合、生殖幹細胞はコロニーを形成することが示された。これにより、ヒト生殖幹細胞の単離および増殖が同時的に非常に効果的になされ得るということを確認することができる。
(2−2)精子形成過程に特異的な遺伝子の発現確認
実施例2で培養された細胞の特性を調べるために、精子形成過程段階に特異的な遺伝子のmRNA転写パターンをRT−PCRで分析した。前記精子形成過程段階に特異的な遺伝子として、Oct−4(生殖幹細胞に特異的)、c−kit(精原細胞および精母細胞に特異的)およびTP−1(精子細胞に特異的)を利用した。
【0065】
本実験例は、次の精巣細胞に対して行なわれた:正常男子(fertile man)
から分離された精巣細胞;陰性対照(negative control)として生殖細
胞を有さない男子(man with no germ cell)から分離された精巣細胞;生殖幹細胞を有さない男子(man1 with no GSCs)から分離された精巣
細胞;生殖幹細胞を有さない男子(man1 with no GSCs)から分離された
精巣細胞であって、実施例2でのように2週間培養した精巣細胞;生殖幹細胞を有する男子から分離された精巣細胞;および生殖幹細胞を有する男子から分離された精巣細胞であって、実施例2でのように2週間培養した精巣細胞。
【0066】
まず、上記細胞それぞれをトリプシン−EDTAとともに30分間培養し、Ca2+およびMg2+のないPBSで三回洗浄し、サンプルとした。前記精巣および培養された細胞の約100mgの総RNAが、TRIzol方法(Gibco)によって抽出された。
【0067】
Huangら,Biotechniques 20:1012−1020,1996に
開示された方法に基づき、RNAの逆転写を次の手順で行った:1μgの総RNA、5mMのMgCl2および1UのDNase Iを混合して37℃で30分間反応させた後、
1mMのdNTP、2.5μMのoligo dTおよび2.5Uの逆転写酵素(Sup
erScript、Gibco)を添加した後、42℃で1時間反応させた。得られるcDNAをPCRのテンプレートとして使用した。
【0068】
PCRは、Oct−4、c−kitおよびTP−1遺伝子について行ない、陽性対照(ポジティブコントロール)として、18Sリボソームタンパク質に対しても行った。遺伝子についてのPCRは、下記表1に表した配列を有する各プライマーの3〜5pmol、10mMのトリス−塩酸(pH8.3)、2mMのMgCl2、50mMのKCl、0.25mMのdNTPおよび1.25UのTaqポリメラーゼ(Gibco)を含む20μlの反応溶液で行われた。PCR反応は、94℃で5分間、最初の変性反応を行い、94℃で30秒、60℃で30秒および72℃で30秒の反応を35回反復して行った後、72℃で10分間、最終の延長反応を行った。PCR産物は、2%アガロースゲル電気泳動法により分離された。
【0069】
【表1】
【0070】
その結果を図4に表した。図4に示されたように、分離された細胞を実施例2でのように培養する前には、Oct−4およびc−kitのmRNAバンドは検出されなかったが(レーン5)、培養後には、Oct−4およびc−kitのmRNAバンドが検出された(レーン6)。
【0071】
これらの結果から実施例2でのように、ヒト非閉塞性無精子症患者の精巣組織が極少量の生殖幹細胞を含む場合においても、本発明の方法により生殖幹細胞が首尾よくインビトロで増殖され得るということが分かった。
【実施例3】
【0072】
生殖幹細胞から半数体生殖細胞へのインビトロ(体外)分化
単離されおよび増殖させた生殖幹細胞を体外(インビトロ)で培養して生殖細胞に分化させた。すなわち、実施例1および実施例2でそれぞれ単離され、および増殖させたマウスおよびヒト非閉塞性無精子症患者の生殖幹細胞およびセルトリ細胞をトリプシンで処理して単一細胞に分離した後、再懸濁してアルギン酸ナトリウムでカプセル化した(Lee
ら,Biol.Reprod.65:873−878,2001)。
【0073】
その後に前記のカプセル化された細胞を、支持細胞としての管周囲細胞の単一層がない培養培地、1.0mlが添加された24−ウェル培養皿に移し、32℃で5%CO2および95%湿度に維持された培養器内で7週間培養し、培地を二日に一度ずつ替えた。その培養培地は、10μg/mlのインシュリン−トランスフェリン−セレン溶液(Gibco)、10−4MのビタミンC(Sigma)、10μg/mlのビタミンE(Sigma)、3.3x10−7Mのレチノイン酸(Sigma)、3.3x10−7Mのレチノール(Sigma)、1mMのピルベート(Sigma)、2.5x10−5Uの組換えヒトFSH(Gonal−F;Serono)、10−7Mのテストステロン(Sigma)、1X抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有、Gibco)および10%BCS(Weiss ら,Biol
.Reprod.57:68−76,1997)が補充されたHEPES−緩衝化DMEM/F12培地であった(単一の培養群)。FSHおよびテストステロンの濃度を培養期間の間に上昇させ、培養7週間後には、最終分化のためにその濃度を1,000倍まで上昇させた。
【0074】
一方、15日齢のマウスの管周囲細胞を含む精巣細胞を培養皿に付着させて培養し、培養培地は、10%の仔牛血清、10ng/mlのFSHおよび10−3Mのテストステロンを含有するDMEM/F12培地であった。一週間の培養後、管周囲細胞の単一層が形成され、これを支持細胞(feeder cell)として利用した。前記管周囲細胞が生殖幹細胞
の分化に及ぼす影響を検証するために、該管周囲細胞の単一層を前記のカプセル化された細胞とともに、前記単一培養群と同じ組成の培地で、前記のような方法で共培養した(共培養群)。
実験例3:マウス生殖幹細胞から生殖細胞への分化の確認
実施例3の方法によってマウスの生殖幹細胞が生殖細胞に分化されるか否か、およびその程度を確認するために、免疫組織化学染色およびRT−PCR(reverse tr
anscription−polymerase chain reaction)を行った。(3−1)尖体生成確認
円形精子細胞の尖体が生成されるか否かを調べるために、前記の単一培養群の細胞を顕微鏡下で観察した。すなわち、実施例3で培養された細胞を機械的に脱カプセル化した後に、トリプシン−EDTAで30分間インキュベートした。その後、分散された細胞をPBSでリンスし、5%パラホルムアルデヒドで30分間室温で固定化した。該細胞を三回洗浄した後、サイトスピン(Cyto−TEKTM、Miles Inc.、Elkhar
t、IN)を1,500rpmで15分間使用し、プレコーティングされたスライドガラス(Probe On PlusTM、Fisher、PA)上に付着させた後、無水メタノールに30分間浸透(permeate)させた。前記細胞を尖体グラニュール(acrosome granules)に特異的に結合するテトラメチルローダミンイソチオシアネート
−ピーナッツ・アグルチニン(TRITC−PNA)10g/mlと室温で1時間反応させた。洗浄した後に、該細胞をPBSとともにスライドガラスに移してカバーガラスで覆い、ネール・バニッシュ(nail vanish)で密封した後、顕微鏡下で観察した
。
【0075】
その結果を図5に示す。図5に示されたように、実施例3の培養過程を経た細胞は、円形精子細胞の特徴である尖体を有していた(矢印)。これらの結果により、実施例3に記載された培養方法によって、生殖幹細胞が円形精子細胞に分化されるということを確認することができた。
(3−2)c−kit発現の確認
精原細胞および精母細胞のマーカーとして知られるc−kitの発現を確認するために、下記の試験を行った。
【0076】
アルギン酸塩でカプセル化された細胞塊を培養した後に、それぞれ0週、3週および6週で回収し、回収された細胞塊それぞれを10%ホルムアルデヒドが添加されたPBS緩衝液で24時間固定させた。その後、これらの各サンプルをPBSで24時間洗浄し、エタノールの濃度を変化させつつ(50、70、85、96および100%)、それぞれ20分間、二回脱水させ、次いでキシレンでそれぞれ30分間二回クリーニングし、60℃でパラフィンにそれぞれ30分間二回浸透させ、パラフィンワックス内に包埋した。その後、連続切片(5μm)を作製し、スライドガラス上で37℃で一晩乾燥させ、免疫組織化学染色まで室温で保管した。
【0077】
上記の作製した切片をキシレンでパラフィン除去を行い、エタノールの濃度を変化させつつ再水和させた。スライドガラス上の切片を、抗c−kit抗体と4℃で一晩反応させた反応バッファで三回リンスした。一次モノクローナル抗体の検出は、ビオチン化二次抗体、次いでストレプトアビジンと西洋ワサビペルオキシダーゼとの混合物を使用して行った。次にDAB基質−クロモゲン溶液(Histostain(R)−Plus DAB k
it、Zymed、CA)を添加してペルオキシダーゼの存在を確認した。
【0078】
それらの結果を図6に示す。図6に示されたように5日齢のマウス精巣では、c−kitの発現を観察できなかったが(図6A)、15日齢のマウスの精巣細胞では、c−kitの発現を観察できた(図6B)。一方、5日齢のマウスから単離され、および増殖させた精巣細胞を実施例3の場合と同じ方法で3週間培養したときには、c−kitが発現した(図6D)。これらの結果から、実施例3の単一培養群について実施したように培養する場合、生殖幹細胞が精原細胞または精母細胞に分化されるということが分かる。
(3−3)精子形成過程段階に特異的な遺伝子の発現確認
実施例3で培養された細胞の特性を調べるために、Oct−4(生殖幹細胞に特異的)、c−kit(精原細胞および精母細胞に特異的)、TH2B(精母細胞に特異的)およびTP−1(精子細胞に特異的)遺伝子のmRNA転写をRT−PCRで確認した。下記に特別に開示した条件を除いては、前記実験例2−2と同じ方法で行った。
【0079】
マウスの出生後、経時的な生殖幹細胞の分化過程を調べるために、5日齢、10日齢、15日齢および20日齢のマウス、および成体マウスから分離された生殖細胞に対して試験を行った。また、新生児マウスの精巣から分離された生殖幹細胞を、実施例3の方法によって培養された細胞に対して確認した(0週、3週および6週)。PCRのプライマーとして、前記表1および下記表2の配列を使用した。
【0080】
【表2】
【0081】
結果を図7Aおよび7Bに表した。図7Aから、野生型マウスの精巣内の生殖幹細胞が、出生後20日になれば、精原細胞および精母細胞を経て精子細胞まで分化するということが分かった。また図7Bから、分化していない生殖幹細胞だけを含む新生児マウスの精巣細胞について実施例3の方法によって3週間培養する場合に、試験管内で(インビトロ)該生殖幹細胞を精母細胞まで分化させ、6週間培養する場合には精子細胞まで分化するということを確認することができた。
(3−4)管周囲細胞が分化に及ぼす効果の確認
実施例3で設計された共培養(co-culture)システムが生殖幹細胞の分化に及ぼす影響を確認するために、TH2B(精母細胞に特異的)およびTP−1(精子細胞に特異的)遺伝子に対してリアルタイム−PCRを行い、これらの遺伝子のmRNA転写および転写レベルを測定した。15日齢のマウスから分離した細胞を使用した。
【0082】
結果を図8に示す。図8に示されたように、管周囲細胞とともに三次元的に共培養を一週間行った場合(レーン4)を、単一培養の場合(レーン2)および通常の培養(レーン3)と比べると、精母細胞に特異的なTH2B遺伝子の発現は減少したが、精子細胞に特異的なTP−1遺伝子の発現は増加した。これらの結果から、管周囲細胞を用いて三次元の共培養システム(レーン4)は、単一培養(レーン2)または通常培養(レーン3)と比べて、生殖細胞から精子細胞に分化する効率が向上するということを確認することができた。
【0083】
前記の実験例3−1ないし3−4の結果は、マウスから単離され、および増殖させた生殖幹細胞を培養前にアルギン酸カルシウムでカプセル化させればそれらの分化が向上し、それらのカプセル化された生殖幹細胞を管周囲細胞と共培養すれば、生殖幹細胞の分化がさらに向上するということを示す。
実験例4:ヒト生殖幹細胞から生殖細胞への分化の確認
実施例3の方法によってヒトの生殖幹細胞が生殖細胞に分化するか否かを検証するために、Oct−4(生殖幹細胞に特異的)およびc−kit(精原細胞および精母細胞に特異的)遺伝子に対して、前記実施例で使われたRT−PCRを実施し、これらの遺伝子のmRNA転写を測定した。
【0084】
結果を図9に示す。図9に示されたように、非閉鎖性無精子症患者6人の精巣組織から採取した細胞の懸濁液を培養したとき、細胞がコロニーを形成した患者(1、2、5番)ではOct−4 mRNAが発現し、細胞がコロニーを形成していない患者(3、4、6
番)では、Oct−4 mRNAが発現しなかった(図10A)。これらの結果から、コ
ロニーの形成が、生殖幹細胞の存在の評価診断を提供できるということが分かる。また、これら患者のうちの一人(5番)のコロニー細胞を支持細胞とともにアルギン酸カルシウムでカプセル化して2週間培養した結果、精原細胞と精母細胞とのマーカーであるc−kit遺伝子のmRNAが発現し、生殖幹細胞は、精原細胞または精母細胞に分化された(図9B)。
【実施例4】
【0085】
卵子細胞質内への精子細胞の注入ならびに胚形成の確認
本発明で分離され、増殖および分化させた生殖幹細胞が卵子と受精するか否かを検証するために、実施例3で生成され、実験例3において円形精子細胞と確認されたマウス細胞を培養液から分離して成熟した卵子に注入した。
【0086】
まず、卵子を得るために、小型のガラスピペットを使用して反復的にピペッティングすることによって膨脹した卵丘細胞(cumulus cell)を除去し、卵子を0.1mg/mlのヒアルロニダーゼで5分間インキュベートした。その後、成熟した卵子を5μMのカルシウムイオノフォア(Sigma)で活性化させて3時間培養した。
【0087】
注入のために選別された1つの円形精子細胞を注入ピペットで吸い込み(図10Aおよび図10B)、これを上記の前処理した卵子へ一次極体から90°方向に注入した(図10C)。精子細胞が注入された卵子を鉱油下で、0.3%BSA−含有KSOM培地(Lawitts et al.,J Reprod Fertil 91:543−56,19
91)に移して培養し、その培養培地は、二日ごとに取り替えた。胚の分裂、胞胚形成および胚が透明帯(Zona Pellucida)を突き抜けて出てくる孵化を評価した
。比較のために、精子細胞を注入せずに活性化のみ行ったグループを活性対照として使用した。
【0088】
円形精子細胞が注入された胚の分裂率は、活性対照に比べて差がなかったが、胞胚形成率および孵化率は、それぞれ活性対照のそれに比べて高かった。具体的には、胚56個のうち24個で胞胚が形成され、そのうち12個が孵化した。活性対照として50個の胚を活性化させると、そのうち12個が胞胚を形成し、さらに3個だけが孵化し、本実施例の胚とは統計的に有意な差があった(本実施例の胚の胞胚形成率:24/56(42.9%);本実施例の胚の孵化率:12/24(50%);活性対照の胞胚形成率:12/50(24.0%);および活性対照の孵化率:3/12(25.0%);P<0.05。
【産業上の利用可能性】
【0089】
前記の通り、本発明は、哺乳類の精巣から単離された生殖幹細胞を胚性幹細胞の培養培地で培養すれば、その生殖幹細胞がコロニーを形成することにより、生殖幹細胞の単離および増殖が同時に効果的になされる。それだけではなく、分離された生殖幹細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、管周囲細胞とともに共培養すると、分化が効果的になされるということも解明した。従って、本発明による方法は、生殖幹細胞についての研究、
男性不妊の治療および精子を利用したトランスジェニック動物の産生などに効果的に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、マウス精巣から単離され、増殖させた細胞に対する免疫組織化学染色、およびインシチュ(in situ)・ハイブリダイゼーションの結果を示す顕微鏡写真である。
【0091】
A:培養初期;B:Aの拡大写真(培養3日後);C:AP/DAPI染色;D:AP(100X);E:Dの拡大写真(200X);F:CD29;G:CD49f;およびH:Oct−4。図1A〜図1Cは、培養初期の細胞であり、図1D〜図1Hは、五回継
代培養後の細胞を示す。図中、“Integrin”は“インテグリン”を表す。
【図2】図2は、マウス精巣から単離され、増殖させた細胞に対する胚性幹細胞マーカーに対する免疫組織化学染色の結果を示す顕微鏡写真である。
【0092】
A:SSEA−1;B:SSEA−3;およびC:SSEA−4。
【図3】図3は、ヒト非閉塞性無精子症患者の精巣から単離され、および増殖させた細胞に対する生殖幹細胞マーカーの免疫組織化学染色の結果を示す顕微鏡写真である。図中、“staining”は、“染色”、“Integrin”は“インテグリン”を表す。
【0093】
A:染色なし;B:AP染色;C:Integrin β1;およびD:Hoechs
t核染色。
【図4】図4は、ヒト非閉塞性無精子症患者の精巣から単離され、増殖させた細胞の精子発生段階に特異的な遺伝子のmRNA転写パターンを調べるためのRT−PCRの結果を示す電気泳動写真である。
【0094】
レーン1:生殖力のある(fertile) man;
レーン2:生殖細胞欠如のman(ネガティブコントロール);
レーン3:man1 with no GSCs+0週;
レーン4:man1 with no GSCs+2週間の培養;
レーン5:man2 with GSCs+0週;
レーン6:man2 with GSCs+2週間の培養:および
N:ローディングなし。
【図5】図5は、マウス精巣から分離され、増殖および分化させた細胞の尖体を検査するためのTRITC−PNA染色の結果を示す顕微鏡写真である。
【0095】
A:光学顕微鏡写真;およびB:蛍光顕微鏡写真。尖体部位(矢印)での蛍光強度が強く示された。
【図6】図6は、培養前後において、マウス精巣から単離され、増殖させた細胞の分化を調べるためのc−kitの発現を示す顕微鏡写真である。図中の“day”は、“日”、“wks”は“週”を表す。
【0096】
A:培養前の5日齢マウスの精巣;B:培養前の15日齢マウスの精巣細胞;C:培養前の5日齢マウスの精巣細胞;およびD:3週間培養後の5日齢マウスの精巣細胞。
【図7】図7のAは、マウス精巣から単離され、増殖させた生殖幹細胞の精子発生段階に特異的な遺伝子のmRNA転写パターンを検査するためのRT−PCRの結果を示す電気泳動写真である。
【0097】
レーン1:5日齢マウス;レーン2:10日齢マウス;レーン3:15日齢マウス;レーン4:20日齢マウス;およびレーン5:成体マウス。
図7のBは、新生マウス精巣から分離され、増殖および分化させた生殖幹細胞の精子発生段階に特異的な遺伝子のmRNA転写パターンを検査するためのRT−PCRの結果を示す電気泳動写真である。
【0098】
レーン1:培養前;レーン2:3週間培養を介した分化;レーン3:6週間培養を介した分化:およびN:ローディングなし。
【図8】図8は、管周囲細胞との共培養がマウス生殖幹細胞の分化に及ぼす効果を調べるためのRT−PCRの結果を示す電気泳動写真である。
【0099】
レーン1:培養前;2:アルギン酸カルシウムでカプセル化して一週間培養後;レーン3:一週間培養後;レーン4:アルギン酸カルシウムでカプセル化して管周囲細胞とともに一週間共培養後:およびNC:陰性対照群。
【図9】図9のAは、6人のヒト非閉塞性無精子症の患者から単離され、増殖させた細胞に対してOct−4遺伝子の発現パターンを検査するためのRT−PCR分析の結果を示す写真である。3人の患者は、生殖幹細胞を有しており(レーン1、2および5)、残りは、生殖幹細胞を有していない(レーン3、4および6)。図9のBは、図9-Aの生殖幹細胞を有する患者のうちの1名(レーン5)から分離された細胞であり、本発明の増殖方法によって2週間培養した細胞のOct−4、c−kitおよびTP−1の各遺伝子発現パターンを検査するためのRT−PCRの結果を示す写真である。
【図10】図10は、本発明の方法によって分離され、増殖および分化させた円形精子細胞を卵子に注入する場合に胚が形成されるか否かを示す写真である。
【0100】
A:アルギン酸カルシウムでカプセル化した後に培養された生殖幹細胞;B:分化させた円形精子細胞の分離;C:円形精子細胞を注入された卵子;D:円形精子細胞が注入された卵子に生成された胞胚。
【技術分野】
【0001】
本発明は、哺乳類の雄性生殖幹細胞(Germ−line Stem Cells:GSCs)をインビトロで体外分離、増殖および分化させる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
雄性生殖幹細胞は、成人幹細胞の一種であり、自家増殖と分化とによって精子だけを作ることができる単一分化能を有すると知られている。生殖幹細胞は、その数が少なく、精巣内で支持細胞間の安全なところに休止状態で存在しており、外部のシグナルとの交流により増殖および分化が調節されている。
【0003】
生殖幹細胞の発生および分化過程は、よく知られている。例えば、マウスの原始生殖細胞は、7.5dpc(days post coitum)で外胚葉(epiblast)に出現し、増殖および移動を行って生殖隆起部に達し、それから12.5dpcで生殖腺を形成した後、生殖細胞に分化する。前記生殖細胞は、16dpcまで増殖を続けるが、それ以降は増殖を止める。出生後、前記生殖細胞は、未分化のA型精原細胞に分化する。精原細胞は、自家増殖と分化とによって思春期後に続けて精子を生産することが可能である(Kierszenbaum et al.,Endocr Rev 15:116−134,1994)。
【0004】
精子形成過程は、1)体細胞分裂により精原細胞から精母細胞が生成される精母細胞発生、2)精母細胞から精子細胞が生成される減数分裂、および3)精子細胞から精子が生成される精子分化過程の3つに大別される。前記精子形成過程(spermatogenesis)は、
脳下垂体から分泌される卵胞刺激ホルモン(FSH)および黄体形成ホルモン(LH)により調節される。LHは、精巣の間質細胞であるライディヒ細胞に作用し、男性ホルモンであるテストステロンの産生を調節する。FSHは、生殖細胞を物理的および生化学的に支持しているセルトリ細胞の機能を調節することにより、精子形成過程に関与する。
【0005】
生殖幹細胞は、幹細胞の自家増殖および分化と関係する因子の探索およびそれらの機構を調べる研究に利用されてきた。ヒト胚性幹細胞(Thomson et al.,Science 282:1145−1147,1998)、およびヒト胚性生殖細胞(Sha
mblott et al.,Proc Natl Acad Sci USA 95:137
26−13731,1998)についての研究がかなり進められている現在、生殖幹細胞は幹細胞の特性を解析するための主要な研究分野として残されている。また、生殖細胞増殖および分化の欠如に起因するヒト男性の不妊の治療、遺伝的に改変させた動物精子を用いるトランスジェニク動物の生産に関する研究など、生殖幹細胞を利用する可能性が検討されている(Nagano et al.,Biol Reprod 64:1409−1416,2001;Hamra et al.,Proc Natl Acad Sci USA
99:14931−14936,2002)。
【0006】
前記のような生殖幹細胞の有用性のために、生殖幹細胞を体外で分離、増殖および分化させようとする試みは、1960年代初期から続けられてきた。例えば、マウスの生殖幹細胞中にTERT遺伝子を導入して該細胞を不死化させた後、その不死化細胞をインビトロで長期間増殖および分化を誘導させることにより、円形精子細胞の産生が可能であるという報告がある(Feng et al.,Science 297:392−395,2
002)。しかしながら不死化された細胞から産生されたこの円形精子細胞の臨床的な利用は、潜在的な危険性を孕んでいる。また、生殖幹細胞を長期間インビトロで培養し、再びこれを精巣内に移植して精子に分化させることができることが確認された(Kanat
su−shinohara et al.,Biol Reprod 69:61−6,2003)。
【0007】
しかし、前記のような努力にもかかわらず、生体内に存在する生殖幹細胞の量が極めて少なく、これを分離するための特定マーカー(marker)の開発がなされておらず、生殖幹細胞の分離には困難さが伴う。また、かかる分離の困難性のために、インビトロの培養によって生殖幹細胞を大量に増殖できる技術的体系も完成に至っていない。
【0008】
従って、哺乳類の生殖幹細胞をインビトロで大量に分離し、および増殖させる方法、および生殖幹細胞を効果的に分化させる方法の開発が切実に要求されている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明者らは、哺乳類の精巣から生殖幹細胞を分離し、これを増殖および分化させる方法についての広範な研究の過程で、哺乳類の精巣から分離された細胞を胚性幹細胞の培養培地で培養すれば、該生殖幹細胞が細胞コロニーの塊を形成することとなり、これにより生殖幹細胞の単離および増殖が同時に効果的になされるということを発見した。また本発明者らは、分離された生殖幹細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化して管周囲細胞(peritubular cell)と共培養する場合には、該生殖幹細胞の分化が効果的になされるということを発見した。これらの発見に基づいて本発明が完成されるに至ったのである。
【0010】
従って、本発明の目的は、哺乳類の精巣から生殖幹細胞を効率的に単離しおよび増殖させる方法を提供することである。
本発明の他の目的は、インビトロで生殖幹細胞を効率的に分化させる方法を提供することである。
【0011】
本発明のさらに他の目的は、前記方法により得られる生殖幹細胞を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、男性不妊治療用の組成物を提供することである。
【0012】
本発明のさらに他の目的は、男性不妊の治療方法を提供することである。
本発明のさらに他の目的は、哺乳動物において生殖幹細胞の存在を判別する方法を提供することである。
【0013】
本発明のさらに他の目的は、哺乳動物の生殖幹細胞の分化能を評価する方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0014】
前記本発明の目的を達成するために、一様態として、本発明は、哺乳類の精巣から分離された細精管を胚幹細胞の培養培地で培養する段階を含む、哺乳類生殖幹細胞のインビトロの単離および増殖方法を提供する。
【0015】
他の様態として、本発明は、哺乳類の生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、そのカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階を含む、生殖幹細胞のインビトロ分化方法を提供する。
【0016】
さらに他の様態として、本発明は、前記方法のうちいずれか1つの方法により得られる生殖幹細胞を提供する。
さらに他の様態として、本発明は、前記生殖幹細胞の有効量を個体に投与することを含む男性不妊の治療方法を提供する。
【0017】
さらに他の様態として、本発明は、前記生殖幹細胞を含む男性不妊治療用の組成物を提供する。
さらに他の様態として、本発明は、哺乳動物で生殖幹細胞の存否を判別する方法を提供する。
【0018】
さらに他の様態として、本発明は、哺乳動物の生殖幹細胞の分化能を評価する方法を提供する。
以下、本発明について詳細に説明する。
【0019】
本発明は、哺乳類の精巣から分離された細胞懸濁液を胚幹細胞の培養培地で培養する段階を含む、生殖幹細胞の単離および増殖の方法に関するものである。
具体的には、本発明による生殖幹細胞の単離および増殖方法は、a)哺乳動物から精巣組織を摘出する段階、b)前記の摘出された精巣組織に二段階の酵素消化過程を適用して細胞懸濁液を調製する段階、およびc)該細胞懸濁液を胚性幹細胞の培養培地で培養する段階を含む。
【0020】
哺乳類から精巣組織を摘出する段階は、通常の方法により行うことができる。例えば、哺乳類から精巣の全部または一部を摘出し、リン酸緩衝化生理食塩水(PBS)で摘出された組織を洗浄して洗浄された組織から白膜(tunica albuginea)を除去することによって行うことができる。
【0021】
前記の二段階酵素消化過程は、公知の方法(例えば、Ogawa et al.,Int.J.Dev.Biol.,41:111−122,1997)、またはその変法により行うことができる。例えば、その過程に使われる酵素液として、Ca2+およびMg2+を含まないPBS(Phosphate Buffer Saline)にコラゲナーゼ(Type I)、DNase I、大豆トリプシンインヒビターおよびヒアルロニダーゼ(Sigma)の添加されたものを使用できる。
【0022】
本発明に使われる胚性幹細胞用の培養培地は、胚性幹細胞の増殖に使われ得るあらゆる培地を含む。その胚性幹細胞用の培養培地は、ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、2−メルカプトエタノール、ヒト白血病抑制因子(leukemia inhibitory factor)、bFGFおよびフォスコリン(forskolin)が補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium;GIBCO)である。さらに具体的には、本発明に使われる胚性幹細胞の培養培地は、15%のウシ胎児血清(HyClone)、1%の非必須アミノ酸(GIBCO)、10μMの2−メルカプトエタノール、1500 U/
mlのヒト白血病抑制因子(ESGRO)、1ng/mlのbFGF(R&D)および10μMのフォスコリン(Sigma)が補充されたDMEM(Dulbecco’s m
odified Eagle’s medium;GIBCO)でありうる。
【0023】
本発明で「哺乳類」とは、ヒト、マウスおよびウシといったあらゆる哺乳動物を含み、ヒトが特に望ましい。
本発明の生殖幹細胞の単離および増殖方法は、前記胚性幹細胞の培養培地で培養された細胞を酵素で処理して該細胞を単一細胞に分離し、その単一細胞を継代培養する段階を、追加的に含んでもよい。その継代培養培地は、前記胚性幹細胞の培養培地の組成と同一であり、この継代培養は、5〜7回実施することができる。その酵素処理に使われる酵素は、トリプシンでもよい。
【0024】
本発明の生殖幹細胞の単離および増殖方法は、さらに胚性幹細胞の培養培地で培養された細胞を機械的に切り刻み、調製された支持細胞層(feeder layer)でこの切り刻まれた
細胞を継代培養する段階も含むことができる。この支持細胞層は、胚性幹細胞の培養培地で培養された精巣内の管周囲細胞から生殖幹細胞を除外することにより調製してもよい。
【0025】
本発明の一態様では、本発明の単離および増殖方法により、マウスの精巣から単離した細胞懸濁液を胚性幹細胞の培養培地で培養した。
培養3〜5日後には、多数の多細胞コロニーが形成され始めた(図1Aないし図1C参照)。また、生成されたコロニーから分離された細胞を継代培養すると、再びコロニーが形成された。五回継代培養されたコロニーを観察した結果、繊維芽細胞に類似した細胞が底部に付着しており、その上に複数層の細胞コロニーが存在していた(図1Dおよび図1E参照)。生殖幹細胞で特異的に発現されるマーカーであるCD29、CD49fおよびOct−4が上記コロニーで強く発現していた(図1Fないし図1H参照)。また、胚性幹細胞で特異的に発現するSSEA−1、SSEA−3およびSSEA−4も、前記コロニーで強く発現していた(図2参照)。
【0026】
これらの結果は、マウスの精巣から分離された細胞を胚性幹細胞の培養培地で培養すれば、生殖幹細胞だけからなるコロニーが形成され、よって、本発明による生殖幹細胞の単離および増殖を同時に非常に効果的に達成できるということを示す。
【0027】
本発明の他の態様として、非閉塞性無精子症(non-obstructive azoospermia)患者か
ら分離した細胞懸濁液を本発明の生殖幹細胞単離および増殖の方法により、ヒト胚性幹細胞の培養培地で培養した。
【0028】
培養2〜4週間後、多数の多細胞コロニーが形成され始めた。形成されたコロニーから分離された細胞を継代培養すると再びコロニーが形成された。三回継代培養された細胞の場合、コロニーがまた形成された(図3A参照)。生殖幹細胞で特異的に発現するマーカーのるアルカリホスファターゼ(alkaline phosphatase)(図3B
参照)、インテグリンβ1(integrin β1)(図3C参照)、およびインテグ
リンα6(integrin α6)(図示せず)が前記の生成されたコロニーで強く発
現していた。また、幹細胞に特異的なOct−4ならびに精原細胞に特異的なc−kitのmRNAバンドが培養前には検出されていないが、培養後には検出されるという事実から、本発明に使われた培養方法により、生殖幹細胞の増殖が効果的になされたということが分かる(図4参照)。
【0029】
これらの結果から非閉塞性無精子症の患者から分離された細胞を胚性幹細胞の培養培地で培養すれば、生殖幹細胞だけからなるコロニーが形成され、よって本発明による方法が生殖幹細胞の単離および増殖を同時に非常に効果的に達成できるということを示される。
【0030】
また、本発明は、哺乳類の精巣から分離された生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、このカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階を含む、生殖幹細胞のインビトロでの分化の方法に関するものである。
【0031】
アルギン酸カルシウムでカプセル化する段階は、公知の方法(例えば、Lee et al.,Biol.Reprod.65:873−878,2001)により行うことができる。
【0032】
カプセル化された細胞が分化する培養培地として、生殖幹細胞の分化に使われうるあらゆる分化用培地が挙げられる。具体的にこの分化用培地は、インシュリン−トランスフェリン−セレン溶液、ビタミンC、ビタミンE、レチノイン酸、レチノール、ピルベート、遺伝子組換えヒトFSH、テストステロン、抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有)およびBCSが補充されたH
EPES緩衝化DMEM/F12培地である。さらに具体的に、該分化用培地は、10μg/mlのインシュリン−トランスフェリン−セレン溶液、10−4MのビタミンC、10μg/mlのビタミンE、3.3x10−7Mのレチノイン酸、3.3x10−7Mのレチノール、1mMのピルベート、2.5x10−5Uの組換えヒトFSH、10−7Mのテストステロン、1X抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有)および10%BCSが補充されたHEPES緩衝化DMEM/F12培地でありうる。
【0033】
生殖幹細胞の三次元的培養において、カプセル化された細胞を哺乳類の精巣から分離された管周囲細胞とともに共培養することが望ましい。
前記管周囲細胞は、共培養される生殖幹細胞の起源と同一の種である哺乳類から分離されることが望ましい。通常の方法により哺乳類から管周囲細胞を分離できる。具体的には、管周囲細胞は、哺乳類の精巣から精巣細胞を分離した後に、仔牛血清、FSHおよびテストステロンを追加したDMEM/F12培地でその分離された細胞を培養することによって調製することができる。さらに具体的には、10%の仔牛血清、10ng/mlのFSHおよび10−3Mのテストステロンを含有するDMEM/F12培地で前記の分離された細胞を培養することによって調製されうる。
【0034】
本発明の一態様例で、本発明による生殖幹細胞のインビトロ分化の方法により、マウスまたはヒトの生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化した後に、分化用の培地で培養した。
【0035】
本発明の一実験例では、円形精子細胞の特徴である「尖体(acrosome)」の形成を確認するために、尖体に特異的に結合する染色物質を使用した。その結果、本発明の方法によって培養された生殖幹細胞は、精子細胞の特徴である尖体を有していた(図5参照)。
【0036】
本発明の他の実験例では、精原細胞および精母細胞のマーカーとして知られるc−kitの発現を、免疫組織化学染色によって検証した。その結果、マウスから分離され、増殖させた精巣細胞はc−kitを発現していないが(図6Aおよび図6C参照)、本発明の方法によって培養された細胞では、c−kitが発現していた(図6D参照)。これらの結果から、本発明の方法によって培養されたマウス生殖幹細胞は、精原細胞または精母細胞に分化されうるということが分かる。そうした結果は、ヒト生殖幹細胞についても確認された(図9参照)。
【0037】
本発明のさらに他の実験例では、培養時間による分化の程度を調べるために、生殖幹細胞に特異的なOct−4、精原細胞に特異的なc−kit、精母細胞に特異的なTH2Bおよび精子細胞に特異的なTP−1の遺伝子について、mRNA転写をRT−PCRによって調べた。その結果、3週間培養された生殖幹細胞が精母細胞に分化し、6週間培養された細胞は、精子細胞に分化した(図7参照)。
【0038】
また本発明のさらに他の実験例では、管周囲細胞が生殖幹細胞の分化に及ぼす影響を調べるために、精母細胞に特異的なTH2B遺伝子および精子細胞に特異的なTP−1遺伝子のmRNA転写レベルを測定した。その結果、管周囲細胞を共培養した場合は、そうではない場合に比べてTH2Bの発現は減少し、TP−1の発現は増加した(図8参照)。これらの結果から、管周囲細胞との共培養は、精母細胞から精子細胞への分化の効率を向上させるということが分かる。
【0039】
前記結果から、哺乳類の生殖幹細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化した後、分化用培地で管周囲細胞と共培養すれば、生殖幹細胞の分化効果が顕著に向上するということ
が分かる。
【0040】
本発明の一実施例において、本発明の方法によって単離し、増殖および分化させた円形精子細胞が卵子と受精するか否かを確認するために、本発明の方法によって調製されたマウスの円形精子細胞を成熟卵子に注入した後に、受精卵の分裂、胞胚(blastocyst)形成および孵化が発生するか否かを調べた(図10参照)。その結果、本発明の方法によって調製した精子細胞が注入された受精卵の分裂レベルは、活性化だけさせた対照群と比べて差異はなかったが、胞胚形成レベルおよび孵化レベルは、それぞれ対照群に比べて高かった。これらの結果から、本発明の方法により生成される精子細胞は、優秀な生殖能力を有するということが分かる。
【0041】
また、本発明は、本発明の単離および増殖方法により得られる生殖幹細胞、および本発明の分化の方法により得られる精子細胞に関するものである。
また、本発明は、本発明の単離および増殖方法により得られる生殖幹細胞、または本発明の分化の方法により得られる精子細胞を用いて男性不妊を治療する方法に関するものである。
【0042】
精子細胞を用いて男性不妊を治療する方法は、精子細胞を卵子とを体外受精させた後に、胚を子宮内に移植する段階を含むことができる。具体的に卵子は、排卵誘導によって直径が18mm超の卵胞を吸引することによって採取される。吸い込まれた卵子は、それらの成熟度を確認し、卵子の成熟度に応じて前培養を行う。典型的な成熟卵子は、概して4〜6時間前培養される。このとき卵子の成熟度は、卵丘細胞(cumulus cell)の膨脹および第1極体(first polar body)の存在を基準にして判定することができる。1個の円形精子細胞を注入ピペットに吸い込ませ、次いで成熟した卵子に注入できる。受精した卵は、新しい培養培地で24〜48時間さらに培養し、4〜6細胞期において子宮に移植する。胚の移植においては特別の子宮内挿入カテーテルを利用できる。
【0043】
また本発明は、本発明の単離および増殖方法により得られる生殖幹細胞、または本発明の分化の方法により得られる精子細胞を含む男性不妊治療用の組成物に関するものである。
【0044】
本発明における男性不妊として、乏精子症(oligozoospermia)、無力精子症(asthenozoospermia)、奇形精子症(teratozoospermia)および無精子症(azoospermia)が挙げ
られるが、これらに限定されるものではない。前記乏精子症は、精液1ml当たりの精子数が20,000,000未満であることをいい、無力精子症は、全体精子の50%未満だけが運動性を有することをいい、奇形精子症は、高倍率顕微鏡で観察するとき、正常形態の精子が50%未満である場合をいい、無精子症は、精管が塞がっていたり(閉塞性無精子症)、精子形成が正しくなされず(非閉塞性無精子症)、射精された精液に精子のないことをいう。前記無精子症は、非閉塞性無精子症であることが望ましい。
【0045】
また本発明は、(a)哺乳動物から精巣組織を採取する段階、(b)該精巣組織に二段階の酵素消化処理を施して細胞懸濁液を調製する段階、ならびに(c)その細胞懸濁液を幹細胞用の培養培地で培養した後に、細胞コロニーが形成されるか否かを判別する段階とを含む、哺乳動物において生殖幹細胞の存在を判別する方法に関するものである。
【0046】
本発明は、(a)哺乳動物から精巣組織を採取する段階、(b)その精巣組織に二段階酵素消化過程を適用して細胞懸濁液を調製する段階、(c)その細胞懸濁液を幹細胞用の培養培地で培養する段階、ならびに(d)前記の培養された生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化した後に、このカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階とを含む、生殖幹細胞の分化能を評価する方法に関するものである。前記
で哺乳動物は、マウスまたはヒト、特に男性不妊を有する人間の患者を指す。
【発明を実施するための最良の形態】
【0047】
以下、本発明を実施例によって詳細に説明する。 ただし下記の実施例は、本発明を例
示するものであり、本発明の範囲がそれらに限定されるものではない。
【実施例1】
【0048】
雄性マウスからの生殖幹細胞の単離および増殖
30匹の3〜5日齢である雄性C57BL/6マウスまたはICRマウス(大韓バイオリンク)の精巣から生殖幹細胞を単離して増殖させた。
【0049】
まず、雄性マウスから細精管を分離するために、下記の二段階の酵素消化過程を行った(Ogawa et al.,Int.J.Dev.Biol.,41:111−122,1997)。
【0050】
すなわち、マウスから精巣を摘出してPBSで洗浄した後、白膜を前記精巣から除去した。該精巣で露出された細精管を集め、Ca2+およびMg2+を含まないPBSに0.5mg/mlのコラゲナーゼ(Type I、Sigma)、10μg/mlのDNas
e I、1μg/mlの大豆トリプシンインヒビター(Gibco、GrandIsla
nd、NY)、1500 U/mlの白血病抑制因子(ESGRO)および1mg/ml
のヒアルロニダーゼ(Sigma)が添加された第一酵素溶液(10ml)中で、室温で20分間インキュベートした。その後、PBSを上記の第一酵素溶液に添加した後、1,500rpmで4分間遠心分離し、上澄み液を除去してペレットを得た。
【0051】
管周囲細胞を上記過程によって除去した後、該ペレットを、Ca2+およびMg2+のないPBSに5mg/mlのコラゲナーゼ(Type I、Sigma)、10μg/m
lのDNase I、1μg/mlの大豆トリプシンインヒビター(Gibco、Gra
ndIsland、NY)および1mg/mlのヒアルロニダーゼ(Sigma)が添加された第二酵素溶液10ml中で、37℃で30分間インキュベートした。その後、PBSを該第二酵素溶液に添加した後、1,500rpmで4分間遠心分離し、上澄み液を除去してペレットを得た。
【0052】
上記ペレットを0.2%ゼラチンのコーティングされた培養皿に付着させて培養した。この培養培地は、15%のウシ胎児血清(HyClone)、1%の非必須アミノ酸(GIBCO)、10μMの2−メルカプトエタノール、1500 U/mlの白血病抑制因
子(ESGRO)、1ng/mlのbFGF(R&D)および10μMのフォスコリン(Sigma)が補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium;GIBCO)であった。また上記ペレットは、5%CO2および
95%湿度に維持された培養器で培養された。培養3〜5日後に、多数の多細胞コロニーが形成された。
【0053】
継代培養のために、生成された生殖幹細胞コロニーを、6日ごとの間隔で0.25%トリプシンで37℃で6分間処理し、ピペットを使用して培養皿から単一細胞を分離し、トリプシン反応を阻害するために、血清含有培養液を添加した。次いで培養液は1,500rpmで4分間、遠心分離を行い、上澄み液を除去してペレットを得た。前記培養液と同一組成の培養液にペレットを再懸濁した後に、新しい培養皿で続けて培養した。分離された単一細胞を続けて培養すれば、さらに再びコロニーが形成されることが観察された。
実験例1:マウス生殖幹細胞の単離および増殖の確認
実施例1で形成されたコロニーが生殖幹細胞であるか否かを確認するために、免疫細胞化学染色およびインシチュ(in situ)・ハイブリダイゼーションを行った。
【0054】
(1−1)生殖幹細胞マーカーの発現確認
生殖幹細胞マーカーとして知られるアルカリホスファターゼ(AP)の発現を確認した。すなわち実施例1で、6日間培養し、ならびに五回継代培養されて形成されたコロニー細胞を、66%アセトン/3.7%ホルムアルデヒドに固定させた後、ナフトール/FRV−アルカリ性AP基質(Sigma)またはDAPI(核染色物質、図1C)で染色して観察した。
【0055】
他の生殖幹細胞のマーカーであるIntegrin α6 chainおよびIntegrin β1 chainの発現も、免疫組織化学染色により確認した。すなわち、実施例1で生成されたコロニーの細胞を、ダルベッコPBS(Dulbecco’s PBS)
中の4%パラホルムアルデヒド(GIBCO/BRL)で固定させた。一次抗体を1:500濃度で添加した。細胞を室温で2時間インキュベートした後、二次抗体を添加してインキュベートした。免疫組織化学染色のための一次抗体として、CD49f(Integrin α6 chain;BD/Pharmingen)およびCD29(Integrin β1 chain;BD/Pharmingen)を使用した。前記一次抗体を検出するための二次抗体として、ビオチン標識された抗マウスIgM抗体である、ABC−AP(Vector Lab.Inc.)を使用した。発色のため、AP反応バッファ中の
BCIP(Sigma)およびNBT(Sigma)の混合物を使用した。
【0056】
図1は、前記細胞の顕微鏡写真を示す。図1に示されたように、培養6日後には、APを強く発現している細胞が培養皿に付着して凝集するところが観察された(図1A)。これを拡大してみれば、多数の細胞がコロニー形態で増殖することを確認することができた(図1Bおよび図1C)。五回の継代培養後には、繊維芽細胞と類似した細胞が底に付着しており、その細胞上に複層の細胞コロニーが観察された(図1D)。底に付着した細胞がセルトリ細胞、その上のコロニーを生殖幹細胞であると推定した。生殖幹細胞と推定されるコロニーの一つを拡大して見た結果、1つのコロニーは、いくつかの細胞塊からなっているということを確認することができた(図1E)。
【0057】
また、胚性幹細胞のさらに別のマーカーとして知られるOct−4の発現を、インシチュ・ハイブリダイゼーションによって調べた。まず実施例1で、6日間の培養および五回継代培養されて生成されたコロニーの細胞を、MEMFA(0.1M MOPS、pH7
.5、2mM EDTA、1mM MgSO4、3.7%ホルムアルデヒド)で室温で20分間固定した。ハイブリダイゼーションおよびその後の洗浄過程が55℃で行れたことを除いては、インシチュ・ハイブリダイゼーション方法(Song et al.,Dev.Biol.,213:157−169,1999)において知られている同じやり方でハイブリダイゼーションを実施した。その結果、胚性幹細胞で特異的に発現するOct−4が、生殖幹細胞と推定されるコロニーでのみ強く発現していた(図1H)。
【0058】
上記の結果から、実施例1でのように、マウス精巣から単離された細胞を胚性幹細胞の増殖に使われる単純培養液で培養させると、生殖幹細胞は、コロニーを形成することが見出された。これによりマウス生殖幹細胞の単離および増殖が、同時に極めて効果的になされ得るということを確認することができる。
【0059】
(1−2)胚性幹細胞マーカーの発現確認
免疫組織化学染色のための一次抗体として、MC480(SSEA−1)、MC631(SSEA−3)およびMC813−70(SSEA−4)抗体(それぞれ、Devel−opmental Studies Hybridoma Bank、Universi
ty of Iowa)を使用したことを除いては、胚性幹細胞および胚性生殖細胞のマーカーとして知られるSSEA(Stage Specific Embryonic An
tigen)−1、SSEA−3およびSSEA−4の発現を、実験例1−1の時と同じ方法で確認した。
【0060】
図2は、該細胞の顕微鏡写真を示す。図2に示されたように、胚性幹細胞で特異的に発現するSSEA−1、SSEA−3およびSSEA−4が、生殖幹細胞と推定されるコロニーでのみ強く発現していた(図2Aないし図2C)。これらの結果により、実施例1でのように培養された細胞は、マウス胚性幹細胞の特徴もともに有しているということを確認することができる。
【実施例2】
【0061】
ヒト無精子症患者からの生殖幹細胞の単離および増殖
13人のヒト非閉塞性無精子症患者の精巣から生殖幹細胞を分離して増殖させた。 ま
ず、前記13人の患者から細精管を分離するために、精巣組織の一部を生検(biopsy)により採取した後、実施例1と同じ方法で二段階の酵素消化過程を行った。
【0062】
前記方法によって生成されたペレットを0.2%ゼラチンでコーティングされた培養皿に付着させて培養した。前記培養培地は、15%のウシ胎児血清(HyClone)、1%の非必須アミノ酸(GIBCO)、10μMの2−メルカプトエタノール、1500
U/mlのヒト白血病抑制因子(ESGRO)、4ng/mlのbFGF(R&D)および10μMのフォスコリン(Sigma)が補充されたDMEM(Dulbecco’s
modified Eagle’s medium;GIBCO)であり、この培養は、
5%CO2および95%湿度に維持された培養器内で行われた。培養2〜4週間した後、前記患者13人のうち6人のサンプル(46.2%)において、多数の多細胞コロニーおよびセルトリ細胞類似の支持細胞(feeder cell)が形成された。2週間隔の継代培養の
ために、支持細胞上のコロニーを機械的に分散させた後、マイクロピペットを利用して三つの切片に分離し、他の支持細胞に移した。継代培養の他の条件は、実施例1の場合と同一であった。他の支持細胞に移されたコロニーは、首尾よく付着して六回、七回の継代まで増殖された。これらの分離された細胞を続けて培養すれば、再びコロニーが形成されることが観察された。他の3患者のサンプルでもコロニー類似の構造が形成されたが、継代後に消滅した。
実験例2:ヒト生殖幹細胞の単離および増殖確認
実施例2で単離され、および増殖させたコロニーが生殖幹細胞であるか否かを確認するために、免疫細胞化学染色およびRT−PCT(reverse transcript
ion−polymerase chain reaction:逆転写ポリメラーゼ連鎖反応)を行った。
(2−1)生殖幹細胞マーカーの発現確認
生殖幹細胞マーカーとして知られるAP(alkaline phosphatase
)、CD49f(Integrin α6 chain)およびCD29(Integrin β1 chain)が、三回継代培養されて生成された細胞において発現するか否かを確認するために、実施例1−1で記載された方法によって免疫細胞化学染色を行った。
【0063】
図3は、染色された細胞の顕微鏡写真を示す。図3に示されたように、生殖幹細胞で特異的に発現するAP(図3B)、CD29(図3C)およびCD49f(結果は図示せず)が前記コロニーで強く発現していた。
【0064】
これらの結果からヒト非閉塞性無精子症患者の精巣から分離された細精管を、実施例2に記載されたように胚性幹細胞増殖用の培地で培養する場合、生殖幹細胞はコロニーを形成することが示された。これにより、ヒト生殖幹細胞の単離および増殖が同時的に非常に効果的になされ得るということを確認することができる。
(2−2)精子形成過程に特異的な遺伝子の発現確認
実施例2で培養された細胞の特性を調べるために、精子形成過程段階に特異的な遺伝子のmRNA転写パターンをRT−PCRで分析した。前記精子形成過程段階に特異的な遺伝子として、Oct−4(生殖幹細胞に特異的)、c−kit(精原細胞および精母細胞に特異的)およびTP−1(精子細胞に特異的)を利用した。
【0065】
本実験例は、次の精巣細胞に対して行なわれた:正常男子(fertile man)
から分離された精巣細胞;陰性対照(negative control)として生殖細
胞を有さない男子(man with no germ cell)から分離された精巣細胞;生殖幹細胞を有さない男子(man1 with no GSCs)から分離された精巣
細胞;生殖幹細胞を有さない男子(man1 with no GSCs)から分離された
精巣細胞であって、実施例2でのように2週間培養した精巣細胞;生殖幹細胞を有する男子から分離された精巣細胞;および生殖幹細胞を有する男子から分離された精巣細胞であって、実施例2でのように2週間培養した精巣細胞。
【0066】
まず、上記細胞それぞれをトリプシン−EDTAとともに30分間培養し、Ca2+およびMg2+のないPBSで三回洗浄し、サンプルとした。前記精巣および培養された細胞の約100mgの総RNAが、TRIzol方法(Gibco)によって抽出された。
【0067】
Huangら,Biotechniques 20:1012−1020,1996に
開示された方法に基づき、RNAの逆転写を次の手順で行った:1μgの総RNA、5mMのMgCl2および1UのDNase Iを混合して37℃で30分間反応させた後、
1mMのdNTP、2.5μMのoligo dTおよび2.5Uの逆転写酵素(Sup
erScript、Gibco)を添加した後、42℃で1時間反応させた。得られるcDNAをPCRのテンプレートとして使用した。
【0068】
PCRは、Oct−4、c−kitおよびTP−1遺伝子について行ない、陽性対照(ポジティブコントロール)として、18Sリボソームタンパク質に対しても行った。遺伝子についてのPCRは、下記表1に表した配列を有する各プライマーの3〜5pmol、10mMのトリス−塩酸(pH8.3)、2mMのMgCl2、50mMのKCl、0.25mMのdNTPおよび1.25UのTaqポリメラーゼ(Gibco)を含む20μlの反応溶液で行われた。PCR反応は、94℃で5分間、最初の変性反応を行い、94℃で30秒、60℃で30秒および72℃で30秒の反応を35回反復して行った後、72℃で10分間、最終の延長反応を行った。PCR産物は、2%アガロースゲル電気泳動法により分離された。
【0069】
【表1】
【0070】
その結果を図4に表した。図4に示されたように、分離された細胞を実施例2でのように培養する前には、Oct−4およびc−kitのmRNAバンドは検出されなかったが(レーン5)、培養後には、Oct−4およびc−kitのmRNAバンドが検出された(レーン6)。
【0071】
これらの結果から実施例2でのように、ヒト非閉塞性無精子症患者の精巣組織が極少量の生殖幹細胞を含む場合においても、本発明の方法により生殖幹細胞が首尾よくインビトロで増殖され得るということが分かった。
【実施例3】
【0072】
生殖幹細胞から半数体生殖細胞へのインビトロ(体外)分化
単離されおよび増殖させた生殖幹細胞を体外(インビトロ)で培養して生殖細胞に分化させた。すなわち、実施例1および実施例2でそれぞれ単離され、および増殖させたマウスおよびヒト非閉塞性無精子症患者の生殖幹細胞およびセルトリ細胞をトリプシンで処理して単一細胞に分離した後、再懸濁してアルギン酸ナトリウムでカプセル化した(Lee
ら,Biol.Reprod.65:873−878,2001)。
【0073】
その後に前記のカプセル化された細胞を、支持細胞としての管周囲細胞の単一層がない培養培地、1.0mlが添加された24−ウェル培養皿に移し、32℃で5%CO2および95%湿度に維持された培養器内で7週間培養し、培地を二日に一度ずつ替えた。その培養培地は、10μg/mlのインシュリン−トランスフェリン−セレン溶液(Gibco)、10−4MのビタミンC(Sigma)、10μg/mlのビタミンE(Sigma)、3.3x10−7Mのレチノイン酸(Sigma)、3.3x10−7Mのレチノール(Sigma)、1mMのピルベート(Sigma)、2.5x10−5Uの組換えヒトFSH(Gonal−F;Serono)、10−7Mのテストステロン(Sigma)、1X抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有、Gibco)および10%BCS(Weiss ら,Biol
.Reprod.57:68−76,1997)が補充されたHEPES−緩衝化DMEM/F12培地であった(単一の培養群)。FSHおよびテストステロンの濃度を培養期間の間に上昇させ、培養7週間後には、最終分化のためにその濃度を1,000倍まで上昇させた。
【0074】
一方、15日齢のマウスの管周囲細胞を含む精巣細胞を培養皿に付着させて培養し、培養培地は、10%の仔牛血清、10ng/mlのFSHおよび10−3Mのテストステロンを含有するDMEM/F12培地であった。一週間の培養後、管周囲細胞の単一層が形成され、これを支持細胞(feeder cell)として利用した。前記管周囲細胞が生殖幹細胞
の分化に及ぼす影響を検証するために、該管周囲細胞の単一層を前記のカプセル化された細胞とともに、前記単一培養群と同じ組成の培地で、前記のような方法で共培養した(共培養群)。
実験例3:マウス生殖幹細胞から生殖細胞への分化の確認
実施例3の方法によってマウスの生殖幹細胞が生殖細胞に分化されるか否か、およびその程度を確認するために、免疫組織化学染色およびRT−PCR(reverse tr
anscription−polymerase chain reaction)を行った。(3−1)尖体生成確認
円形精子細胞の尖体が生成されるか否かを調べるために、前記の単一培養群の細胞を顕微鏡下で観察した。すなわち、実施例3で培養された細胞を機械的に脱カプセル化した後に、トリプシン−EDTAで30分間インキュベートした。その後、分散された細胞をPBSでリンスし、5%パラホルムアルデヒドで30分間室温で固定化した。該細胞を三回洗浄した後、サイトスピン(Cyto−TEKTM、Miles Inc.、Elkhar
t、IN)を1,500rpmで15分間使用し、プレコーティングされたスライドガラス(Probe On PlusTM、Fisher、PA)上に付着させた後、無水メタノールに30分間浸透(permeate)させた。前記細胞を尖体グラニュール(acrosome granules)に特異的に結合するテトラメチルローダミンイソチオシアネート
−ピーナッツ・アグルチニン(TRITC−PNA)10g/mlと室温で1時間反応させた。洗浄した後に、該細胞をPBSとともにスライドガラスに移してカバーガラスで覆い、ネール・バニッシュ(nail vanish)で密封した後、顕微鏡下で観察した
。
【0075】
その結果を図5に示す。図5に示されたように、実施例3の培養過程を経た細胞は、円形精子細胞の特徴である尖体を有していた(矢印)。これらの結果により、実施例3に記載された培養方法によって、生殖幹細胞が円形精子細胞に分化されるということを確認することができた。
(3−2)c−kit発現の確認
精原細胞および精母細胞のマーカーとして知られるc−kitの発現を確認するために、下記の試験を行った。
【0076】
アルギン酸塩でカプセル化された細胞塊を培養した後に、それぞれ0週、3週および6週で回収し、回収された細胞塊それぞれを10%ホルムアルデヒドが添加されたPBS緩衝液で24時間固定させた。その後、これらの各サンプルをPBSで24時間洗浄し、エタノールの濃度を変化させつつ(50、70、85、96および100%)、それぞれ20分間、二回脱水させ、次いでキシレンでそれぞれ30分間二回クリーニングし、60℃でパラフィンにそれぞれ30分間二回浸透させ、パラフィンワックス内に包埋した。その後、連続切片(5μm)を作製し、スライドガラス上で37℃で一晩乾燥させ、免疫組織化学染色まで室温で保管した。
【0077】
上記の作製した切片をキシレンでパラフィン除去を行い、エタノールの濃度を変化させつつ再水和させた。スライドガラス上の切片を、抗c−kit抗体と4℃で一晩反応させた反応バッファで三回リンスした。一次モノクローナル抗体の検出は、ビオチン化二次抗体、次いでストレプトアビジンと西洋ワサビペルオキシダーゼとの混合物を使用して行った。次にDAB基質−クロモゲン溶液(Histostain(R)−Plus DAB k
it、Zymed、CA)を添加してペルオキシダーゼの存在を確認した。
【0078】
それらの結果を図6に示す。図6に示されたように5日齢のマウス精巣では、c−kitの発現を観察できなかったが(図6A)、15日齢のマウスの精巣細胞では、c−kitの発現を観察できた(図6B)。一方、5日齢のマウスから単離され、および増殖させた精巣細胞を実施例3の場合と同じ方法で3週間培養したときには、c−kitが発現した(図6D)。これらの結果から、実施例3の単一培養群について実施したように培養する場合、生殖幹細胞が精原細胞または精母細胞に分化されるということが分かる。
(3−3)精子形成過程段階に特異的な遺伝子の発現確認
実施例3で培養された細胞の特性を調べるために、Oct−4(生殖幹細胞に特異的)、c−kit(精原細胞および精母細胞に特異的)、TH2B(精母細胞に特異的)およびTP−1(精子細胞に特異的)遺伝子のmRNA転写をRT−PCRで確認した。下記に特別に開示した条件を除いては、前記実験例2−2と同じ方法で行った。
【0079】
マウスの出生後、経時的な生殖幹細胞の分化過程を調べるために、5日齢、10日齢、15日齢および20日齢のマウス、および成体マウスから分離された生殖細胞に対して試験を行った。また、新生児マウスの精巣から分離された生殖幹細胞を、実施例3の方法によって培養された細胞に対して確認した(0週、3週および6週)。PCRのプライマーとして、前記表1および下記表2の配列を使用した。
【0080】
【表2】
【0081】
結果を図7Aおよび7Bに表した。図7Aから、野生型マウスの精巣内の生殖幹細胞が、出生後20日になれば、精原細胞および精母細胞を経て精子細胞まで分化するということが分かった。また図7Bから、分化していない生殖幹細胞だけを含む新生児マウスの精巣細胞について実施例3の方法によって3週間培養する場合に、試験管内で(インビトロ)該生殖幹細胞を精母細胞まで分化させ、6週間培養する場合には精子細胞まで分化するということを確認することができた。
(3−4)管周囲細胞が分化に及ぼす効果の確認
実施例3で設計された共培養(co-culture)システムが生殖幹細胞の分化に及ぼす影響を確認するために、TH2B(精母細胞に特異的)およびTP−1(精子細胞に特異的)遺伝子に対してリアルタイム−PCRを行い、これらの遺伝子のmRNA転写および転写レベルを測定した。15日齢のマウスから分離した細胞を使用した。
【0082】
結果を図8に示す。図8に示されたように、管周囲細胞とともに三次元的に共培養を一週間行った場合(レーン4)を、単一培養の場合(レーン2)および通常の培養(レーン3)と比べると、精母細胞に特異的なTH2B遺伝子の発現は減少したが、精子細胞に特異的なTP−1遺伝子の発現は増加した。これらの結果から、管周囲細胞を用いて三次元の共培養システム(レーン4)は、単一培養(レーン2)または通常培養(レーン3)と比べて、生殖細胞から精子細胞に分化する効率が向上するということを確認することができた。
【0083】
前記の実験例3−1ないし3−4の結果は、マウスから単離され、および増殖させた生殖幹細胞を培養前にアルギン酸カルシウムでカプセル化させればそれらの分化が向上し、それらのカプセル化された生殖幹細胞を管周囲細胞と共培養すれば、生殖幹細胞の分化がさらに向上するということを示す。
実験例4:ヒト生殖幹細胞から生殖細胞への分化の確認
実施例3の方法によってヒトの生殖幹細胞が生殖細胞に分化するか否かを検証するために、Oct−4(生殖幹細胞に特異的)およびc−kit(精原細胞および精母細胞に特異的)遺伝子に対して、前記実施例で使われたRT−PCRを実施し、これらの遺伝子のmRNA転写を測定した。
【0084】
結果を図9に示す。図9に示されたように、非閉鎖性無精子症患者6人の精巣組織から採取した細胞の懸濁液を培養したとき、細胞がコロニーを形成した患者(1、2、5番)ではOct−4 mRNAが発現し、細胞がコロニーを形成していない患者(3、4、6
番)では、Oct−4 mRNAが発現しなかった(図10A)。これらの結果から、コ
ロニーの形成が、生殖幹細胞の存在の評価診断を提供できるということが分かる。また、これら患者のうちの一人(5番)のコロニー細胞を支持細胞とともにアルギン酸カルシウムでカプセル化して2週間培養した結果、精原細胞と精母細胞とのマーカーであるc−kit遺伝子のmRNAが発現し、生殖幹細胞は、精原細胞または精母細胞に分化された(図9B)。
【実施例4】
【0085】
卵子細胞質内への精子細胞の注入ならびに胚形成の確認
本発明で分離され、増殖および分化させた生殖幹細胞が卵子と受精するか否かを検証するために、実施例3で生成され、実験例3において円形精子細胞と確認されたマウス細胞を培養液から分離して成熟した卵子に注入した。
【0086】
まず、卵子を得るために、小型のガラスピペットを使用して反復的にピペッティングすることによって膨脹した卵丘細胞(cumulus cell)を除去し、卵子を0.1mg/mlのヒアルロニダーゼで5分間インキュベートした。その後、成熟した卵子を5μMのカルシウムイオノフォア(Sigma)で活性化させて3時間培養した。
【0087】
注入のために選別された1つの円形精子細胞を注入ピペットで吸い込み(図10Aおよび図10B)、これを上記の前処理した卵子へ一次極体から90°方向に注入した(図10C)。精子細胞が注入された卵子を鉱油下で、0.3%BSA−含有KSOM培地(Lawitts et al.,J Reprod Fertil 91:543−56,19
91)に移して培養し、その培養培地は、二日ごとに取り替えた。胚の分裂、胞胚形成および胚が透明帯(Zona Pellucida)を突き抜けて出てくる孵化を評価した
。比較のために、精子細胞を注入せずに活性化のみ行ったグループを活性対照として使用した。
【0088】
円形精子細胞が注入された胚の分裂率は、活性対照に比べて差がなかったが、胞胚形成率および孵化率は、それぞれ活性対照のそれに比べて高かった。具体的には、胚56個のうち24個で胞胚が形成され、そのうち12個が孵化した。活性対照として50個の胚を活性化させると、そのうち12個が胞胚を形成し、さらに3個だけが孵化し、本実施例の胚とは統計的に有意な差があった(本実施例の胚の胞胚形成率:24/56(42.9%);本実施例の胚の孵化率:12/24(50%);活性対照の胞胚形成率:12/50(24.0%);および活性対照の孵化率:3/12(25.0%);P<0.05。
【産業上の利用可能性】
【0089】
前記の通り、本発明は、哺乳類の精巣から単離された生殖幹細胞を胚性幹細胞の培養培地で培養すれば、その生殖幹細胞がコロニーを形成することにより、生殖幹細胞の単離および増殖が同時に効果的になされる。それだけではなく、分離された生殖幹細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、管周囲細胞とともに共培養すると、分化が効果的になされるということも解明した。従って、本発明による方法は、生殖幹細胞についての研究、
男性不妊の治療および精子を利用したトランスジェニック動物の産生などに効果的に利用されうる。
【図面の簡単な説明】
【0090】
【図1】図1は、マウス精巣から単離され、増殖させた細胞に対する免疫組織化学染色、およびインシチュ(in situ)・ハイブリダイゼーションの結果を示す顕微鏡写真である。
【0091】
A:培養初期;B:Aの拡大写真(培養3日後);C:AP/DAPI染色;D:AP(100X);E:Dの拡大写真(200X);F:CD29;G:CD49f;およびH:Oct−4。図1A〜図1Cは、培養初期の細胞であり、図1D〜図1Hは、五回継
代培養後の細胞を示す。図中、“Integrin”は“インテグリン”を表す。
【図2】図2は、マウス精巣から単離され、増殖させた細胞に対する胚性幹細胞マーカーに対する免疫組織化学染色の結果を示す顕微鏡写真である。
【0092】
A:SSEA−1;B:SSEA−3;およびC:SSEA−4。
【図3】図3は、ヒト非閉塞性無精子症患者の精巣から単離され、および増殖させた細胞に対する生殖幹細胞マーカーの免疫組織化学染色の結果を示す顕微鏡写真である。図中、“staining”は、“染色”、“Integrin”は“インテグリン”を表す。
【0093】
A:染色なし;B:AP染色;C:Integrin β1;およびD:Hoechs
t核染色。
【図4】図4は、ヒト非閉塞性無精子症患者の精巣から単離され、増殖させた細胞の精子発生段階に特異的な遺伝子のmRNA転写パターンを調べるためのRT−PCRの結果を示す電気泳動写真である。
【0094】
レーン1:生殖力のある(fertile) man;
レーン2:生殖細胞欠如のman(ネガティブコントロール);
レーン3:man1 with no GSCs+0週;
レーン4:man1 with no GSCs+2週間の培養;
レーン5:man2 with GSCs+0週;
レーン6:man2 with GSCs+2週間の培養:および
N:ローディングなし。
【図5】図5は、マウス精巣から分離され、増殖および分化させた細胞の尖体を検査するためのTRITC−PNA染色の結果を示す顕微鏡写真である。
【0095】
A:光学顕微鏡写真;およびB:蛍光顕微鏡写真。尖体部位(矢印)での蛍光強度が強く示された。
【図6】図6は、培養前後において、マウス精巣から単離され、増殖させた細胞の分化を調べるためのc−kitの発現を示す顕微鏡写真である。図中の“day”は、“日”、“wks”は“週”を表す。
【0096】
A:培養前の5日齢マウスの精巣;B:培養前の15日齢マウスの精巣細胞;C:培養前の5日齢マウスの精巣細胞;およびD:3週間培養後の5日齢マウスの精巣細胞。
【図7】図7のAは、マウス精巣から単離され、増殖させた生殖幹細胞の精子発生段階に特異的な遺伝子のmRNA転写パターンを検査するためのRT−PCRの結果を示す電気泳動写真である。
【0097】
レーン1:5日齢マウス;レーン2:10日齢マウス;レーン3:15日齢マウス;レーン4:20日齢マウス;およびレーン5:成体マウス。
図7のBは、新生マウス精巣から分離され、増殖および分化させた生殖幹細胞の精子発生段階に特異的な遺伝子のmRNA転写パターンを検査するためのRT−PCRの結果を示す電気泳動写真である。
【0098】
レーン1:培養前;レーン2:3週間培養を介した分化;レーン3:6週間培養を介した分化:およびN:ローディングなし。
【図8】図8は、管周囲細胞との共培養がマウス生殖幹細胞の分化に及ぼす効果を調べるためのRT−PCRの結果を示す電気泳動写真である。
【0099】
レーン1:培養前;2:アルギン酸カルシウムでカプセル化して一週間培養後;レーン3:一週間培養後;レーン4:アルギン酸カルシウムでカプセル化して管周囲細胞とともに一週間共培養後:およびNC:陰性対照群。
【図9】図9のAは、6人のヒト非閉塞性無精子症の患者から単離され、増殖させた細胞に対してOct−4遺伝子の発現パターンを検査するためのRT−PCR分析の結果を示す写真である。3人の患者は、生殖幹細胞を有しており(レーン1、2および5)、残りは、生殖幹細胞を有していない(レーン3、4および6)。図9のBは、図9-Aの生殖幹細胞を有する患者のうちの1名(レーン5)から分離された細胞であり、本発明の増殖方法によって2週間培養した細胞のOct−4、c−kitおよびTP−1の各遺伝子発現パターンを検査するためのRT−PCRの結果を示す写真である。
【図10】図10は、本発明の方法によって分離され、増殖および分化させた円形精子細胞を卵子に注入する場合に胚が形成されるか否かを示す写真である。
【0100】
A:アルギン酸カルシウムでカプセル化した後に培養された生殖幹細胞;B:分化させた円形精子細胞の分離;C:円形精子細胞を注入された卵子;D:円形精子細胞が注入された卵子に生成された胞胚。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
哺乳類の精巣から分離された細胞懸濁液を胚性幹細胞の培養培地で培養する段階を含む、哺乳類生殖幹細胞のインビトロの単離および増殖方法。
【請求項2】
前記胚性幹細胞の培養培地は、ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、2−メルカプトエタノール、ヒト白血病抑制因子、bFGFおよびフォスコリンが補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium;GIBCO)である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記胚性幹細胞の培養培地が、15%のウシ胎児血清、1%の非必須アミノ酸、10μMの2−メルカプトエタノール、1500 U/mlのヒト白血病抑制因子、4ng/m
lのbFGFおよび10μMのフォスコリンが補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)であることを特徴とする請求項1
に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳類がマウスまたは人間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞懸濁液は、哺乳類から精巣組織を摘出する段階と、前記精巣組織に二段階の酵素消化段階とを実施して調製されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記胚性幹細胞の培養培地で培養された細胞を酵素で処理し、前記細胞を単一細胞に分離し、該単一細胞を継代培養する段階を、追加で含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記継代培養を5から7回行うことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素は、トリプシンであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記胚性幹細胞の培養培地で培養された細胞を機械的に切り刻み、調製された支持細胞層でその切り刻まれた細胞を継代培養する段階を追加で含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記の調製された支持細胞層は、胚性幹細胞の培養培地で培養された精巣内の管周囲細胞から生殖幹細胞を除外して調製されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
哺乳類の生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、そのカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階を含む、生殖幹細胞のインビトロ分化方法。
【請求項12】
前記カプセル化された細胞を、管周囲細胞を含有する哺乳類の精巣細胞と共培養することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記培養は、インシュリン−トランスフェリン−セレン溶液、ビタミンC、ビタミンE、レチノイン酸、レチノール、ピルベート、組換えヒトFSH、テストステロン、抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有)およびBCSが補充されたHEPES−緩衝化DMEM/F12培地で行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記培養は、インシュリン−トランスフェリン−セレン溶液、ビタミンC、ビタミンE
、レチノイン酸、レチノール、ピルベート、組換えヒトFSH、テストステロン、抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有)およびBCSが補充されたHEPES−緩衝化DMEM/F12培地で行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記管周囲細胞を含有する哺乳類の精巣細胞は、精巣細胞を仔牛血清、FSHおよびテストステロンが補充されたDMEM/F12培地で培養して調製されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載の方法により得られる、分離された未分化の生殖幹細胞。
【請求項17】
請求項11から請求項15のうちいずれか1項に記載の方法により得られる、分離された分化された生殖幹細胞。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の生殖幹細胞の有効量を個体に投与することを含む、男性不妊の治療方法。
【請求項19】
前記男性不妊が乏精子症、無力精子症、奇形精子症および無精子症からなる群より選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記無精子症が非閉塞性無精子症であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項16または請求項17に記載の生殖幹細胞を含む男性不妊治療用の組成物。
【請求項22】
(a)哺乳動物から精巣組織を摘出する段階と、
(b)該精巣組織に二段階の酵素消化過程を行って細胞懸濁液を調製する段階と、
(c)該細胞懸濁液を幹細胞の培養培地で培養してコロニー形成を判別する段階と
を含む、生殖幹細胞の存在を判別する方法。
【請求項23】
(a)哺乳動物から精巣組織を摘出する段階と、
(b)該精巣組織に二段階の酵素消化過程を行って細胞懸濁液を調製する段階と、
(c)該細胞懸濁液を幹細胞の培養培地で培養する段階と、
(d)培養された該生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、そのカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階と
を含む、生殖幹細胞の分化能を評価する方法。
【請求項1】
哺乳類の精巣から分離された細胞懸濁液を胚性幹細胞の培養培地で培養する段階を含む、哺乳類生殖幹細胞のインビトロの単離および増殖方法。
【請求項2】
前記胚性幹細胞の培養培地は、ウシ胎児血清、非必須アミノ酸、2−メルカプトエタノール、ヒト白血病抑制因子、bFGFおよびフォスコリンが補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium;GIBCO)である
ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記胚性幹細胞の培養培地が、15%のウシ胎児血清、1%の非必須アミノ酸、10μMの2−メルカプトエタノール、1500 U/mlのヒト白血病抑制因子、4ng/m
lのbFGFおよび10μMのフォスコリンが補充されたDMEM(Dulbecco’s modified Eagle’s medium)であることを特徴とする請求項1
に記載の方法。
【請求項4】
前記哺乳類がマウスまたは人間であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記細胞懸濁液は、哺乳類から精巣組織を摘出する段階と、前記精巣組織に二段階の酵素消化段階とを実施して調製されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記胚性幹細胞の培養培地で培養された細胞を酵素で処理し、前記細胞を単一細胞に分離し、該単一細胞を継代培養する段階を、追加で含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記継代培養を5から7回行うことを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記酵素は、トリプシンであることを特徴とする請求項6に記載の方法。
【請求項9】
前記胚性幹細胞の培養培地で培養された細胞を機械的に切り刻み、調製された支持細胞層でその切り刻まれた細胞を継代培養する段階を追加で含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記の調製された支持細胞層は、胚性幹細胞の培養培地で培養された精巣内の管周囲細胞から生殖幹細胞を除外して調製されることを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
哺乳類の生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、そのカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階を含む、生殖幹細胞のインビトロ分化方法。
【請求項12】
前記カプセル化された細胞を、管周囲細胞を含有する哺乳類の精巣細胞と共培養することを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記培養は、インシュリン−トランスフェリン−セレン溶液、ビタミンC、ビタミンE、レチノイン酸、レチノール、ピルベート、組換えヒトFSH、テストステロン、抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有)およびBCSが補充されたHEPES−緩衝化DMEM/F12培地で行われることを特徴とする請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記培養は、インシュリン−トランスフェリン−セレン溶液、ビタミンC、ビタミンE
、レチノイン酸、レチノール、ピルベート、組換えヒトFSH、テストステロン、抗生物質−抗糸状菌剤(ABAM)(ペニシリン、ストレプトマイシンおよびアムホテリシンBを含有)およびBCSが補充されたHEPES−緩衝化DMEM/F12培地で行われることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項15】
前記管周囲細胞を含有する哺乳類の精巣細胞は、精巣細胞を仔牛血清、FSHおよびテストステロンが補充されたDMEM/F12培地で培養して調製されることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項16】
請求項1から請求項10のうちいずれか1項に記載の方法により得られる、分離された未分化の生殖幹細胞。
【請求項17】
請求項11から請求項15のうちいずれか1項に記載の方法により得られる、分離された分化された生殖幹細胞。
【請求項18】
請求項16または請求項17に記載の生殖幹細胞の有効量を個体に投与することを含む、男性不妊の治療方法。
【請求項19】
前記男性不妊が乏精子症、無力精子症、奇形精子症および無精子症からなる群より選択されることを特徴とする請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記無精子症が非閉塞性無精子症であることを特徴とする請求項19に記載の方法。
【請求項21】
請求項16または請求項17に記載の生殖幹細胞を含む男性不妊治療用の組成物。
【請求項22】
(a)哺乳動物から精巣組織を摘出する段階と、
(b)該精巣組織に二段階の酵素消化過程を行って細胞懸濁液を調製する段階と、
(c)該細胞懸濁液を幹細胞の培養培地で培養してコロニー形成を判別する段階と
を含む、生殖幹細胞の存在を判別する方法。
【請求項23】
(a)哺乳動物から精巣組織を摘出する段階と、
(b)該精巣組織に二段階の酵素消化過程を行って細胞懸濁液を調製する段階と、
(c)該細胞懸濁液を幹細胞の培養培地で培養する段階と、
(d)培養された該生殖幹細胞およびセルトリ細胞をアルギン酸カルシウムでカプセル化し、そのカプセル化された細胞を三次元的に培養する段階と
を含む、生殖幹細胞の分化能を評価する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【公表番号】特表2007−532128(P2007−532128A)
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−508266(P2007−508266)
【出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000850
【国際公開番号】WO2005/100551
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(507298256)カレッジ オブ メディスン ポーチョン シーエイチエー ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション (5)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年11月15日(2007.11.15)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年4月13日(2004.4.13)
【国際出願番号】PCT/KR2004/000850
【国際公開番号】WO2005/100551
【国際公開日】平成17年10月27日(2005.10.27)
【出願人】(507298256)カレッジ オブ メディスン ポーチョン シーエイチエー ユニバーシティ インダストリー−アカデミック コーポレーション ファウンデーション (5)
【Fターム(参考)】
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