説明

生物学的適合性の三次元要素を製造するための方法

電流を流し、圧力を印加することによって、成形手段(6)中、焼結温度(T1)で、容量(11)の成形材料を焼結し、成形された凹状および/または凸状の要素(1)を得ることを含む、生物学的適合性の三次元要素を製造するための方法。前記焼結操作の前に、前記成形された凹状および/または凸状の要素(1)から除去可能で、前記焼結温度(T1)より高い融解温度(T2)を有する顆粒状材料(12)が、前記容量(11)の成形材料に添加され、この方法によって孔(5)が得られる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物学的適合性の三次元要素を製造するための方法、特にヒトおよび動物の体内に移植できるプロテーゼを製造するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術には、外傷または関節炎および関節症のような疾患により、回復不能な損傷を受けた骨の一部または関節を置換するために、ヒトまたは動物の体内に移植されるプロテーゼを製造するために用いられる、例えば杯状物(cotyls)のような、生物学的適合性の凹状(concave)および凸状(convex)の要素の製造が含まれる。
これらの凹状および/または凸状の要素の製造は、異なった方法を用いて行われる。
【0003】
第1の方法では、凹状または凸状の要素は、所望の大きさおよび形状が得られるまで、削り屑を取り除いていく造形操作に固体を付すことにより固体から直接最終的な形状に製造される。
【0004】
第2の公知の方法には、固体の高温または常温での塑性変形によって、凹状−凸状の形状を製造することが含まれる。
【0005】
「選択的レーザ焼結(Selective Laser Sintering)」(SLS)および「電子ビーム溶融(Electron Beam Melting)」(EBM)として知られた技術を用いる、「ラピッド・プロトタイピング」として知られた、金属粉末を用いるさらなる方法では、凹状および凸状の要素は、焼結することによって凝集する連続層を蓄積させて要素を得るように、粉末層を堆積し、焼結することによって成形される。
【0006】
言い換えれば、各層において、粉末が凝集した所定の形状を有するゾーンと、粉末がゆるく凝集した状態に置かれているゾーンとが作られる。
【0007】
この方法では、前記焼結を行う機器は、製造される外形によって規定されるゾーン内の粉末を照射する、レーザ発信器(SLS、選択的レーザ焼結)または電子発信器(EBM、電子ビーム溶融)である。
【0008】
凹状および凸状の要素が前記に挙げた方法の1つによって得られる場合、それらが、生物学的非適合性に関連する現象を引き起こすことなく、それらが移植される体内の骨に容易にかつ安定的に結合し得るように、その外側の凸状の表面を前処理するための第2の作業工程が必要である。
【0009】
要素が最初に製造されたときに実質的に平滑な、これらの外側の凸状の表面の前処理は、骨の結合のプロセスが加速され、移植された要素のよりよい機械的安定性が保証されるように、それらを多孔性とするか、またはその表面を粗くすることにある。
【0010】
さらに、この多孔性または粗さは、例えばヒドロキシアパタイトまたはチタンおよびその合金のような、骨材中への凹状および/または凸状の要素の自然な混合を容易とするために、好適な材料を用いて行われなければならない。
【0011】
これらの凹状および凸状の要素、または杯状物は、特に股関節のプロテーゼを製造するために用いられ、それらは体重および歩行に由来する力および応力に耐えることができなければならないことが強調される。
【0012】
前記の多孔性または粗さを得るために、凹状および凸状の要素の保持面、一般的には凸状の表面が、ヒドロキシアパタイト、チタンまたはその他の生物学的適合性の物質が、所望の粗さを作り出すように凹状および凸状の要素の保持面上に溶射される、プラズマ溶射として知られた方法を用いて、前記のように、ヒドロキシアパタイトまたはチタンおよびその合金のような、要素がヒトまたは動物の体を保持できるようにし、かつ、ヒトまたは動物の体と生物学的に適合性とし得る、粗いかまたは多孔性の添加剤の物質の層で被覆されている。
【0013】
前記粗さを得る別の方法は、「ラピッド・プロトタイピング」として知られた方法を用いて、要素を成形する間に直接粗さを作り上げる方法である。
【0014】
しかしながら、両方の場合において、従来技術はいくつかの欠点を示している。第1の欠点は、プラズマ溶射による塗布の場合、溶射される、ヒドロキシアパタイトの粒子、またはチタンおよび/もしくはチタン合金の粒子あるいはその他の生物学的適合性の材料が、溶射される表面上で平坦化することにより変形すること、および良好な骨の結合には不十分な低いレベルでの粗さを作り出すことを防ぐために、溶射エネルギーが制限されたレベルに保たれなければならないことである。
【0015】
この溶射エネルギーの制限は、粒子の貧弱な接着を引き起こし、その結果、被覆した表面からの粒子の脱離を引き起こす。
【0016】
プロテーゼが移植された後、脱離した粒子が長期に亘って生体中に放出されるので、この欠点は必ず回避されなければならない。
【0017】
ラピッド・プロトタイピング法を用いる、外側が多孔性で凹状および凸状の要素、または杯状物の成形は、非凝集粒子の脱離と、その結果生体中に放出されやすいというまさにこの欠点を有する。
【0018】
凹状の要素の進歩的な前記成形は、焼結された部分のみが実際に凝集する粉末層の浸漬において行われるため、非凝集粒子は、成形プロセスにおいて作り出される微小孔の内部に集まり得る。
【0019】
従来技術のさらなる欠点は、生物学的適合性の凹状および凸状の要素を製造するのに用いられるいくつかの方法は、かなり長い製造時間を必要とすることである。
【0020】
さらに、その他の方法は、要素および多孔性の部分を製造するために異なった技術の組み合わせおよび手順を必要とする。
【0021】
固体片から機械的に製造するようなその他の方法では、多量の廃棄物を作り出してしまうというさらなる欠点を示し、その結果、製造コストを上げてしまう。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0022】
本発明の課題は、従来技術のこのような状況を改善することである。
【0023】
本発明のさらなる課題は、ヒトおよび動物の体内に移植できるプロテーゼを製造するのに特に好適な生物学的適合性の凹状および凸状の要素を製造するための方法であって、すぐに用いることができ、単一の作業工程でこれらの凹状および凸状の要素を得ることを可能とする方法を実現することである。
【0024】
本発明のさらなる課題は、材料が導電性であるか否かに関わらず、作製される成形材料の迅速で完全な焼結を可能とする、生物学的適合性の凹状および凸状の要素を製造するための方法を構築することである。
【0025】
本発明の1つの観点においては、次の:
−成形手段中、焼結温度で、導電性/非導電性のタイプのある容量の成形材料を焼結し、成形された凹状および凸状の要素を得ること;
−前記焼結の前に、前記成形された凹状および凸状の要素から除去可能な顆粒状材料を前記成形材料に添加すること
を含み、
前記顆粒状材料(12)が、前記焼結温度より高い融解温度を有し、
前記顆粒状材料(12)が、
前記成形材料が伝導性のタイプであるときに、低いレベルの導電率を有する顆粒状材料を含むか、または
前記成形材料が実質的に、非導電性のタイプであるときに、高いレベルの導電率を有する顆粒状材料を含む
ことを特徴とする生物学的適合性の凹状および凸状の要素を製造するための方法が提供される。
【発明の効果】
【0026】
生物学的適合性の凹状および凸状の要素を製造するための、特に、ヒトおよび動物の体内に移植できるプロテーゼを製造するのに好適な方法は、単一の作業工程でこれらの凹状および凸状の要素を得ること、製造の時間およびコストを低減することならびに作り出される廃棄物をなくすことを可能とする。
【0027】
さらに、生物学的適合性の凹状および凸状の要素を製造するための方法は、それが導電性であるか、非導電性であるかにかかわらず、成形材料の迅速な焼結を可能とする。
【図面の簡単な説明】
【0028】
本発明のさらなる特徴および利点は、生物学的適合性の凹状および凸状の要素を製造するための、特に、ヒトおよび動物の体内において移植できるプロテーゼを製造するのに好適な方法についての以下の記載からよりよく明らかになり、これは、添付の図面において非限定的な例として説明される。
【図1】生物学的適合性の要素を製造するための方法を用いて得られる杯状物の斜視図である。
【図2】凸状のパンチがマトリックスから引き抜かれるという構成における、図1の杯状物を得るための、マトリックス、凹状のパンチおよび凸状のパンチを含むダイの垂直断面の詳細な概略図である。
【図3】図1の杯状物の成形工程における、図2のダイの垂直断面の詳細な概略図である。
【図4】図3の細部の、拡大したスケールの部分切り取り断面図である。
【図5】図1の杯状物の一部の、拡大したスケールの部分切り取り断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本発明の好ましい実施態様
図に関して、1は、患者の股関節の寛骨臼中に移植でき、凹状の表面3および凸状の表面4を規定するカップの形状の形体2を表す杯状物を示す。
【0030】
凸状の表面4は、杯状物1が寛骨臼に関して移動せず、患者の骨の中への組み込みが容易となるように、杯状物1を寛骨臼の内部に配置することを可能とする多数のセル5を有する。
【0031】
杯状物1は、損傷を受けた股関節を置換し、患者の大腿骨の先端部に用いられる人工的な球状の先端部と回転可能な結合を可能とするために、患者に用いられるプロテーゼの通常の部品であり、股関節のプロテーゼを完成させる。
【0032】
本発明の実施例中ではカップの形状であるが、この技術分野の専門家によく知られ、その他の特殊な要件および用途に従った、その他の公知の凹状の形状を示してもよい、杯状物1の成形は、成形および焼結のプロセスを行うためのスパーク・プラズマ焼結システム(Spark Plasma Sintering system)中に挿入され、凸状のパンチ7と、凹状のパンチ8aと、マトリックス8bとを含むダイ6を用いて行われる。
【0033】
このスパーク・プラズマ焼結システムは、例えば黒鉛のような、同時に電極にもなる、導電性の材料を用いて製造され、凸状のパンチ7と凹状のパンチ8aの両方と、ライン109とライン209とでつながれる、例えばパルス電流発生器9を含む。
【0034】
しかしながら、この技術分野の専門家は、プロセスでの必要性に応じて温度分布を改善するように、例えば酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、タングステンカーバイドのような黒鉛とは異なった材料を用いて、凸状のパンチ7と、凹状のパンチ8aと、マトリックス8bとを得るために選択することができる。
【0035】
この技術分野の専門家は、混合構造の部分、即ち一部が黒鉛で製造され、一部が酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、タングステンカーバイドで製造された部分を用いて、凸状のパンチ7と、凹状のパンチ8aと、マトリックス8bとを得ることもできる。
【0036】
ジュール効果によって、凸状のパンチ7と、凹状のパンチ8aと、マトリックス8bとの加熱を引き起こす電流の作用と共に、同軸方向での圧縮力が、凸状のパンチ7と、凹状のパンチ8aと、マトリックス8bとに印加され、例えば油圧装置を用いて、該圧縮力は、矢印309および409によって表される。
【0037】
ダイ6は、真空チャンバの内部に次いで挿入され、これは破線10で模式的に示される。
粉末材料の層11は、凹状のパンチ8a内に配置され、該粉末材料は導電性のタイプであるか、または非導電性であってもよく、杯状物1を成形するために、チタンまたは、例えばクロム−コバルト、ステライト、ニッケル−チタン、アルミナ、ジルコニウム、ヒドロキシアパタイトのような、別の生物学的適合性の材料もしくは合金を通常含む。
【0038】
粉末の層11は、ダイ6内でプレスする間に焼結される。しかしながら、杯状物1の外面を所望の多孔性とするために、即ち患者の骨組織への杯状物1の保持を容易とするのに、凹状の孔5を外面に存在させるために、選択された寸法を有し、後に除去、例えば溶媒を用いるか、または熱化学的な処理によって溶解する顆粒12を含む、ある量の顆粒状材料が層11に添加される。
【0039】
用語「添加される」によって、顆粒状材料を、粉末の材料と混合できるか、または顆粒状材料が、層11が導入される前に、凹状のパンチ8aの内部に配置されるさらなる層13を構成できることを意味する。
【0040】
使用される顆粒状材料は、例えばチタンのような、粉末の材料の層の焼結温度T1より高い融解温度T2を有する材料の中から選択され、この理由のために、層11が作られ、ダイ6の内部で焼結されるときに、顆粒12はダイ6の内部で圧縮され、その形状を維持する。
【0041】
本発明によれば、顆粒12は、成形材料のタイプ、即ち粉末の層11に従って、導電性となるか、または導電性不良となるように選択される。
【0042】
言い換えれば、成形材料が導電性である場合、顆粒12は、成形材料を加熱し、成形材料を焼結する焼結電流が集中し、成形材料のみを流れるような非導電性(または導電性不良)である。
【0043】
他方、成形材料または合金が非導電性または導電性不良であるとき、選択された顆粒12は、焼結電流が顆粒12を流れ、それらを加熱し、顆粒12から、熱も導電によって、成形材料に伝導し、それを焼結するように導電性の材料(例えば黒鉛)である。
【0044】
満足のいく結果が次の実施例から得られたが、それらは本発明を限定するものではない。
【実施例】
【0045】
実施例1
寸法が20〜45ミクロンの市販の純粋な1級チタン粉末(1級のcpTi、密度4.51g/cm3)を、寸法が500〜1000ミクロンの塩化ナトリウム(NaCl、密度2.16g/cm3)の顆粒12と、35%の1級のcpTiと65%のNaClとの容量比で混合する。アセトンまたは別の溶媒の添加は、顆粒12が粉末で均一に被覆されるように、粉末と顆粒との均質化を容易とすることができる。凹状のパンチ8a、凸状のパンチ7、および65MPaより高い耐屈曲性を有する緻密な等方性の黒鉛のマトリックス8bを用いる。凹状のパンチ8aを、マトリックス8b内に挿入し、導入される材料の実効容量が多孔層に求められる最終的な容量と同一となるように、粉末11と顆粒12との混合物で満たす。1.89mmの厚さの多孔層および50mmの外径の寛骨臼カップ(または杯状物)1のために、合計4.36cm3の実効容量の粉末11および顆粒12、即ち6.88gの市販の純粋な1級チタン粉末の塊と6.12gの塩化ナトリウムの塊を導入する。
【0046】
粉末11と顆粒12との混合物を好適に塑性および変形性となるようにアセトンで可能であれば湿らせた、粉末11と顆粒12との混合物を、凹状のパンチ8aの凹状の表面上に均一な層として分布させる。この操作を、特殊な半球状で凸状の器具を用いて容易とすることができる。その代わりに、粉末11と顆粒12との混合物を、例えばテープの注型、中空ダイ中への注入、成形のような1以上の異なった成形技術を用いて、カップの形状2に予め、別々に成形することができ、その後、外側の成形操作の後に凹状のパンチ8a内に装填することができる。
【0047】
パンチ8aおよびマトリックス8bに、スパーク・プラズマ焼結によって粉末11を完全に締固めした後に、所望の形状および容量を有する寛骨臼カップ(または杯状物)1を得るために必要な、容量11の市販の純粋な1級チタン粉末を装填する。
【0048】
次に、パンチ7の凸状の表面が、凸状のパンチ7それ自体の形状に焼結および成形される粉末11と接触するように、凸状のパンチ7をマトリックス8b内に挿入する。凸状のパンチ7の表面仕上げの品質は、寛骨臼カップ1の内面の粗さの程度を決定し、内面を仕上げるのに必要な機械的な作業を低減する。
【0049】
次に、パンチ、マトリックスおよび粉末の系を、6Paの圧力の真空下に置き、次いでスパーク・プラズマ焼結によって、5分間、790℃の焼結温度まで約100℃/分の速度で加熱し(804℃である、塩化ナトリウムの融点より低い)、パンチに40MPaの軸方向の圧力を同時に印加する。金属粉末の導電率よりかなり低い導電率を有する塩化ナトリウムの存在は、金属粒子を介する優先的な導電をもたらし、金属粒子における放電は溶接効果をもたらし、粉末を1つの緻密な形状に成形する。
【0050】
粉末内部の隙間に捕捉される空気および残留アセトンの排出を容易とするために、圧力を、適当な時間と温度、例えば3分後、または300℃より高い温度に到達した後に印加することができる。
【0051】
焼結が完了した後、加工物を150℃より低い温度に冷却し、通常の大気に戻す。次いで、寛骨臼カップ1を黒鉛のダイから回収し、塩化ナトリウムの顆粒12の抽出が完了するまで水中に浸漬する;表面の層を除去するための、多孔性の表面の少しの予備的な研磨は、塩化ナトリウムの抽出を容易とすることができる。この方法によって、所望の形状を有し、マトリックス8bならびにパンチ8aおよび7によって規定される寛骨臼カップ1が得られる。寛骨臼カップ1は、65容量%の相互に連結した気孔率(interconnected porosity)を有する外面を有し、500〜1000ミクロンの孔径および1.89mmの厚さを有する。寛骨臼カップ1の内側の層は、95%より高い平均密度を有する。抽出が完了したとき、寛骨臼部材1を、残留塩化ナトリウムを除去するために注意深くリンスする。次いで、内面を、所望の最終的な仕上げを得るために工作機械で研磨し、処理する。
【0052】
実施例2
大きさ0.4ミクロンのアルミナ粉末を用いる(A16SG、密度3.96g/cm3)。この粉末を、250〜500ミクロンの間の寸法を有する黒鉛の顆粒12(密度1.84g/cm3)と、40%のアルミナと60%の黒鉛との容量比で混合する。アセトンまたは別の溶媒の添加は、顆粒12が粉末11で均一に被覆されるような、粉末11と顆粒12との均質化を容易とすることができる。65MPaより高い耐屈曲性を有し、緻密な等方性の黒鉛で作られた、凹状のパンチ8aと、凸状のパンチ7と、マトリックス8bとを用いる。凹状のパンチ8aを、マトリックス8b内に挿入し、導入される材料の実効容量が多孔層に求められる最終的な容量と同一となるように、粉末11と顆粒12との混合物で満たす。1.89mmの厚さの多孔層および50mmの外径の寛骨臼カップ1のために、挿入される粉末11および顆粒12の合計の実効容量は、4.36cm3、即ち6.91gのアルミナ粉末の塊と4.81gの黒鉛の塊である。
【0053】
粉末11と顆粒12との混合物をより塑性および変形性とするのに必要なアセトンで可能であれば湿らせた、粉末11と顆粒12との混合物を、凹状のパンチ8aの凹状の表面上に均一な層として分布させる。この操作を、凸状で、通常半球状の器具を用いて容易とすることができる。その代わりに、粉末11と顆粒12との混合物を、例えばテープの注型、中空ダイ中への注入、成形のような1以上の異なった成形技術を用いて、カップの形状2に予め、別々に成形することができ、次いで外側の成形操作の完了後、凹状のパンチ8a内に挿入することもできる。
【0054】
パンチ8aおよびマトリックス8bに、スパーク・プラズマ焼結プロセスにおいて粉末11を完全に締固めした後に、所望の形状および容量を有する寛骨臼カップ1を得るために必要な量のアルミナ粉末11を装填する。
【0055】
次に、凸状のパンチ7を、凸状のパンチ7それ自体の形状に焼結および成形するために、凸状のパンチ7の凸状の表面が粉末と接触するようにマトリックス8b内に挿入する。パンチの表面の研磨は、寛骨臼カップ1の優れた内面の仕上げをもたらす。
【0056】
次いで、パンチ、マトリックスおよび粉末の系を、6Paの圧力の真空下に置き、10分間、1250℃〜1550℃の間から選択される焼結温度まで、約100℃/分の速度で加熱し、スパーク・プラズマ焼結を用い、パンチに40MPaの軸方向の圧力を同時に印加する。
アルミナが絶縁体であるのに対し、導電性である黒鉛の存在は、粉末11と顆粒12との混合物におけるブリッジ効果、即ち顆粒12における放電をもたらし、その結果ジュール効果による発熱は、アルミナ粉末11の粒子近傍における効果的な発熱をもたらし、そのものの締固めおよび焼結を容易とする。
【0057】
粉末11内部の隙間に捕捉される空気および残留アセトンの排出を容易とするために、圧力を、適当な時間と温度の後、例えば5分後、または500℃より高い温度の後に印加することができる。
【0058】
焼結が完了した後、加工物を150℃より低い温度に冷却し、通常の大気に戻す。寛骨臼カップ1を成形手段から回収し、酸化して黒鉛を除去するために、制御された空気流下の窯中、800℃〜1200℃の間から選択される温度で、8時間挿入する。この方法を用いることで、マトリックス8bならびにパンチ8aおよび7によって規定される所望の形状を有する寛骨臼カップ1が得られ、寛骨臼カップ1は、60容量%の相互に連結した気孔率を有する外面を有し、350〜700ミクロンの間の孔径および1.89mmの厚さを有する。寛骨臼カップ1の内側の層は、94%より高い平均密度を有する。アルミナが使用された内面は、既に十分平滑であり、所望の表面仕上げを得るための研磨は必要ではない。
【0059】
この分野の専門家は、溶媒として酸性溶液または塩基性溶液を用いて、顆粒状材料12のために、例えば、特に、ナトリウム、カルシウム、カリウム、リチウム、マグネシウムの塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩および酸化物のような組成を容易に使用することができる。
【0060】
以下の表1は、使用し得る顆粒状材料12のいくつかの例を報告し、それらは前記方法で成形された寛骨臼カップ(または杯状物)1から抽出され得る。
【0061】
【表1】

【符号の説明】
【0062】
1 寛骨臼カップ(または杯状物)
2 凹状および/または凸状の形体
3 凹状の表面
4 凸状の表面
5 孔
6 成形手段
7 凸状のパンチ
8 凹状のパンチ
8a 凹状のパンチ
8b マトリックス
9 パルス電流発生器
10 破線
11 粉末材料
12 顆粒
109 ライン
209 ライン
309 矢印
409 矢印

【特許請求の範囲】
【請求項1】
成形手段(6)中、焼結温度(T1)で、容量(11)の導電性/非導電性のタイプの成形材料を焼結し、成形された凹状および/または凸状の要素(1)を得ること;
前記焼結前に、前記成形された凹状および/または凸状の要素(1)から除去可能な顆粒状材料(12)を前記成形材料に添加すること
を含み、
前記顆粒状材料(12)が、前記焼結温度(T1)より高い融解温度(T2)を有し、
前記顆粒状材料(12)が、
前記成形材料が導電性のタイプであるときに、低いレベルの導電率を有する顆粒状材料を含むか、または、
前記成形材料が実質的に非導電性のタイプであるときに、高いレベルの導電率を有する顆粒状材料を含む
ことを特徴とする生物学的適合性の凹状および/または凸状の要素(1)を製造するための方法。
【請求項2】
前記成形手段(6)が、前記容量(11)の成形材料および前記顆粒状材料(12)が導入され得る凹状のパンチ手段(8a)と、前記凹状のパンチ(8a)内で前記容量(11)の成形材料および前記顆粒状材料(12)を圧縮するのに好適な凸状のパンチ(7)とを含むプレス手段を含む請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記焼結の後、前記顆粒状材料(12)が、孔(5)を有する凹状および/または凸状の要素(1)を得ることによって成形される、前記凹状および/または凸状の要素(1)から除去される請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記顆粒状材料(12)が溶媒に可溶性である請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記除去が前記顆粒状材料(12)を溶媒に溶解させることを含む請求項3に記載の方法。
【請求項6】
前記顆粒状材料(12)が予め選択された顆粒の寸法を有する請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記顆粒状材料(12)が塩化ナトリウムを含む請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項8】
前記溶媒が水を含む請求項4または7に記載の方法。
【請求項9】
前記顆粒状材料(12)が酸化マグネシウムを含む請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項10】
前記溶媒が5〜50重量%の間の量の塩酸の溶媒溶液を含む請求項4または9に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒溶液が0℃〜90℃の間の温度を示す請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記顆粒状材料(12)が、ナトリウム、カルシウム、カリウム、リチウム、マグネシウムの中から選択される元素の塩、硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩および酸化物の中から選択される請求項1〜6のいずれか1つに記載の方法。
【請求項13】
前記添加が混合を含む請求項1に記載の方法。
【請求項14】
前記添加が、保持を行うための生物学的な表面との接触面となる前記容量(11)の成形材料の層の表面上に前記顆粒状材料(12)の層を施すことを含む請求項1に記載の方法。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1つに記載の生物学的適合性の要素を製造するための方法で得ることができ、前記要素が孔(5)を有する凹状および/または凸状の形体(2)を有することを特徴とする生物学的適合性の凹状および/または凸状の要素(1)。
【請求項16】
前記孔(5)が、実質的に前記凹状および/または凸状の形体(2)の表面上に得られる請求項15に記載の要素。
【請求項17】
前記表面が凸状の表面(4)を含む請求項16に記載の要素。
【請求項18】
前記孔(5)が、表面(3、4)上に得られ、前記凹状および/または凸状の形体(2)の厚みの中にある請求項15に記載の要素。
【請求項19】
前記凹状および/または凸状の形体(2)がカップの形状を示す請求項15に記載の要素。
【請求項20】
前記凹状および/または凸状の形体(2)が杯状物の形状を示す請求項15に記載の要素。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公表番号】特表2010−531703(P2010−531703A)
【公表日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−514168(P2010−514168)
【出願日】平成20年6月27日(2008.6.27)
【国際出願番号】PCT/IB2008/001686
【国際公開番号】WO2009/004444
【国際公開日】平成21年1月8日(2009.1.8)
【出願人】(510003450)ケー4シント エス.アール.エル. (1)
【氏名又は名称原語表記】K4SINT S.R.L.
【住所又は居所原語表記】Viale Dante, 78, 38057 Pergine Valsugana(TN), Italy
【Fターム(参考)】