説明

生物発光検出によるピロリン酸塩の検出方法

本発明は、生物発光検出によりピロリン酸塩を検出する方法に関する。さらに、ピロリン酸塩が形成されるまたは消費される化学反応、特に酵素触媒反応を測定する方法を記載する。かかる反応は、例えばグアニリルシクラーゼ、アデニリルシクラーゼ、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼにより触媒される。この新規な方法は高感度性および干渉に対する低感受性により区別され、容易に自動化および小型化でき、さらに連続的な測定を行うのに適している。本方法は、医薬品有効成分の研究を含む、医学的診断および生物医学的研究の領域において特に有利に用いることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生物発光検出によりピロリン酸塩を検出する方法に関する。さらに、ピロリン酸塩が形成されるまたは消費される化学反応、特に酵素触媒反応を測定する方法を記載する。かかる反応は、例えばグアニリルシクラーゼ、アデニリルシクラーゼ、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼにより触媒される。
【0002】
この新規な方法は、高感度であり干渉に対して低感受性であることにより区別され、容易に自動化および小型化でき、さらに連続的な測定を行うのに適している。この方法は、医薬品有効成分の研究を含む、医学的診断および生物医学的研究の領域において、特に有利に用いることができる。
【背景技術】
【0003】
ピロリン酸塩(二リン酸塩(V)、PPi)は、多くの酵素反応、例えば、中心的な代謝反応、例えば、ピロリン酸塩の形成が共に起こる、多糖、タンパク質および核酸の合成において、形成または消費される細胞代謝の中心的な代謝産物である。ピロリン酸塩はさらに無生物環境において生じ、様々な産業上の反応において形成または消費される。
【0004】
それ故に、ピロリン酸塩を検出および定量する方法は様々な領域において用いることができる;特に興味深いのは、医学的診断、生物医学的研究、特に活性成分の研究および医薬研究の領域における、また、環境および食物分析の領域における使用である。ピロリン酸塩含量の分析の他に、これに関連して特に重要であるのは、ピロリン酸塩が形成されるまたは消費される化学反応の測定、およびかかる反応を触媒する酵素活性の決定である。
【0005】
医学的診断の領域において、ピロリン酸塩を検出するための方法の使用は、試験サンプルのピロリン酸塩含量が病理学的変化のインジケーターとなり得るならばいずれの場合にも適している。特に興味深いサンプルは、体液または組織調製物、例えば血液、血清、尿、脊髄液、滑液サンプルまたはそれらの調製物であり得る。かかる試験サンプルを分析する方法は、最高感度であり、干渉、特に典型的なサンプル成分、例えばリン酸塩またはATPからの干渉に対して低感受性であることにより区別されるべきである。さらに、効率的かつ費用効果的な分析パフォーマンスには、その方法が容易に自動化および小型化できるのが望ましい。
【0006】
生物医学的研究の領域において、特に医薬品有効成分の研究の領域において、新規な候補活性成分を発見するために、通常程度に大きい物質ライブラリー、いくつかの場合においては、百万以上の物質を含むライブラリーを、自動化された方法を活用してスクリーニングする(ハイスループットスクリーニング);この場合におけるスクリーニングは典型的には、医学的治療の標的となり得る生物学的活性、例えば酵素活性のモジュレーターを同定することを目的とする。ピロリン酸塩形成または消費反応を触媒し、医学的治療の標的となり得る酵素は、例えばグアニリルシクラーゼ、アデニリルシクラーゼ、DNAポリメラーゼおよびRNAポリメラーゼ、およびスクアレン合成酵素である。医薬のハイスループットスクリーニングにおいて、かかる酵素活性を測定する方法は、容易に自動化でき、試薬および試験物質の費用を制限し、また小型化できるべきである。加えて、さらに低い酵素活性を検出するために感度はできる限り高く、また高質なデータが得られるように干渉に対する感受性はできる限り低くあるのが望ましい。
【0007】
酵素-モジュレーター複合体の形成および解離速度の、または酵素-モジュレーター複合体の形成および解離と関係するエネルギー消費の、阻害のメカニズムを決定することを含む、モジュレーターのさらなる酵素-速度論的な特徴決定のために、典型的には調べた酵素反応の過程を記録し分析する。それ故に、適切な方法は、最大の時間分解能によって、理想的には連続的に、反応の過程を描写するべきである。
【0008】
ピロリン酸塩濃度の連続的測定を、ゲノム分析および遺伝子発現分析の領域に、例えば核酸配列決定(ピロシークエンシング(pyrosequencing))、またはポリメラーゼ連鎖反応(定量的PCR)による核酸増幅の測定に適用するのも望ましい可能性がある。これらに関連する適切な方法は、リン酸塩およびATPからの干渉に対する最小の感受性によってさらに区別される。
【0009】
生物発光は、自然において広く知られた現象であるが、技術的にも用いられており、酵素触媒化学反応の過程における光の放出を意味し;生物発光反応は、例えばルシフェラーゼまたは発光タンパク質により触媒される。アデノシン三リン酸(ATP)、Mg2+および酸素(O2)の存在下における、フォチヌス・ピラリス(Photinus pyralis)ルシフェラーゼにより触媒される、D-ルシフェリンからオキシルシフェリンへの酸化的な脱炭酸反応は、かなり前から知られている。この反応と反応メカニズムを特徴決定するための研究は、例えばMcElroy, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 33 (1947) 342-345、McElroy, J. Biol. Chem. 191 (1951) 547-557、McElroy et al., Arch. Biochem. Biophys. 46 (1953) 399-416、Green&McElroy, Biochim. Biophys. Acta 20 (1956) 170-176、Bitler&McElroy, Arch. Biochem. Biophys. 72 (1957) 358-368、Rhodes et al., J. Biol. Chem. 233 (1958) 1528-1537、White et al., J. Am. Chem. Soc. 85 (1963) 337-343、Denburg et al., Arch. Biochem. Biophys. 134 (1969) 381-394、Lee et al., Arch. Biochem. Biophys. 141 (1970) 38-52、Denburg&McElroy, Arch. Biochem. Biophys. 141 (1970) 668-675、Biolum. Chemilum.:Status Report(Ed. Szalay, Kricka)のLundin, (1993), 291-295、Fontes et al., Biochem. Biophys. Res. Comun. 237 (1997) 445-450、Fontes et al., FEBS Lett. 438 (1998) 190-194、Sillero et al., Pharmacol. Therap. 87 (2000) 91-102、国際公開第9640988号パンフレットおよびEriksson et al., Anal. Biochem. 293 (2001) 67-70に比較的正確に記載されている;この関連において、ピロリン酸塩の活性化および阻害効果の両方が記載されている。反応中に放出される発光は、非常に感度良く測定することができ、これにより反応過程を正確に追跡することができる。フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼにより触媒される反応は通常、ATPの検出に用いられるが、ATPが形成されるまたは消費される酵素反応の測定にも用いられる(Luminescent Assays:Perspectives in Endocrinology and Clin. Chem.(Ed. Serio, Pazzagli)29-45のLundin (1982))。フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼの遺伝子は細胞アッセイ系におけるリポーター遺伝子としてさらに頻繁に用いられる(Gould et al., Anal. Biochem. 175 (1988) 5-13)。
【0010】
あらゆる甲虫のルシフェラーゼ(コメツキムシ上科(Elateroidea)およびホタル上科(Cantharoidea)から単離されたルシフェラーゼ)は、同じ基質、アデノシン三リン酸(ATP)、ルシフェリンおよび酸素分子を消費する生物発光反応を触媒することが知られている。甲虫のルシフェラーゼは全て同じ反応メカニズムを用いると考えられる(米国特許第6,387,675号明細書)。
【0011】
ピロリン酸塩を検出する様々な方法が従来技術において知られている。
【0012】
Flynn et al., J. Biol. Chem. 211 (1954) 791-796、Grindey et al., Anal. Biochem. 33 (1970) 114-119、Putnins et al., Anal. Biochem. 68 (1975) 185-195、Heinonen et al., Anal. Biochem. 117 (1981) 293-300およびMansurova et al., Anal. Biochem. 176 (1991) 390-94は、ピロリン酸塩の直接的な化学的検出法を記載している。記載された方法において、ピロリン酸塩を含有する試験サンプルを、酸モリブデン酸塩溶液および還元性チオール試薬(システイン、ジスルフィド/チオグリセロールまたはメルカプトエタノール)と混合し、生じた青色の複合体をUV分光分析により定量化する。問題のひとつは、これらの検出法の、特にリン酸塩からの干渉に対する感受性である。さらに、ゆっくり複合体形成すること(システインと10-15分以上)が、効率的な自動化パフォーマンスにとって不利である。
【0013】
Heinonen et al., Anal. Biochem. 59 (1974) 366-374およびRussel et al., J. Clin. Invest. 50 (1971) 961-969は、複数の産生工程を含み、それ故に自動化には困難が伴う、放射性の検出法を記載している。さらに、これらの方法はピロリン酸塩サンプル濃度の経時変化を決定するための連続的な測定に不適である。
【0014】
さらに、共役酵素反応によるピロリン酸塩の検出が従来技術において知られている;これらの方法において、1つのまたは複数の共役酵素反応によって、ピロリン酸塩は酵素学的に変換され、反応生成物として検出される。
【0015】
この種の方法は例えばJohnson et al., Anal. Biochem. 26 (1968) 137-145に記載されており;この場合、ピロリン酸塩はグルコースピロホスファターゼによる触媒作用によって、UDP-グルコースとともに、UTPおよびグルコース1 Pへと変換される;形成されたグルコース1 Pはホスホグルコムターゼによる触媒作用によってグルコース6 Pへと異性化し、グルコース-6 PデヒドロゲナーゼによりNADPを消費して触媒されてグルコノラクトン6 Pへと反応する。この場合、形成されたNADPHをUV吸収測定により定量し、試験サンプル中のピロリン酸塩含量の決定に用いる。共役酵素反応によるピロリン酸塩のさらなる検出法は、例えばCartier et al., Anal. Biochem. 61 (1974) 416-428、Cheung et al., Anal.Biochem. 83 (1977) 61-63、Reeves et al., Anal. Biochem. 28 (1969) 282-287、Arakawa et al., Anal.Biochem. 333 (2004) 296-302、Guillory et al., Anal. Biochem. 39 (1971) 170-180、Cook et al., Anal. Biochem. 91 (1978) 557-565、Jansson et al., Anal. Biochem. 304 (2002) 135-137、Tagiri-Endo, Anal. Biochem. 315 (2003) 170-174、Drake et al., Anal. Biochem. 94 (1979) 117-120、Nyren et al., Anal. Biochem. 151 (1985) 504-509およびBarshop et al., Anal. Biochem. 197 (1991) 266-72に記載されている。
【0016】
これらの方法には、必要な酵素および他の試薬を得るのがしばしば困難である、または高額でしか購入できないという不利益がある。さらに、これらの方法は、用いた共役酵素の酵素活性を調節する物質からの干渉に対して基本的に感受性である;これは、特に医学的診断および生物医学的研究、例えば医薬のハイスループットスクリーニングの領域において、それらが用いられる適性をかなり制限している。
【0017】
ピロリン酸塩の間接的な検出にリン酸塩の検出を使用することも従来技術において知られている;これらの場合において、ピロリン酸塩をはじめに、酵素学的にまたは化学的に切断し、生じたリン酸塩を検出し定量化する。この種の方法は、例えばFiske et al., J. Biol.Chem. 66 (1925) 375、Silcox et al., J. Clin. Invest. 52 (1973) 1863-1870、Gibson et al., Anal. Biochem. 254 (1997) 18-22、Cogan et al., Anal. Biochem. 271 (1999) 29-35、Upson et al., Anal. Biochem. 243 (1996) 41-45、国際公開第0042214号明細書およびBaykov et al., Anal. Biochem. 119 (1982) 211-213に記載されている。これらの方法は、典型的には連続的な測定に不適であり、リン酸塩からの干渉に基本的に感受性である。
【0018】
Fabbrizzi et al., Angew. Chem. Int. Ed. 41(2002)3811-3814は、選択的受容体分子からのインジケーター分子のピロリン酸塩媒介性の置換に基づく蛍光検出による検出法を記載している。その方法はマイクロモーラー濃度範囲に検出限界を有する低い感度しか持たない。
【0019】
Eriksson et al., Anal. Biochem. 293 (2001) 67-70の方法は、同様に、培地においてマイクロモーラー濃度範囲の検出限界を有する低い感度を有する。この場合、両ルシフェリンエナンチオマー、D-ルシフェリンおよびL-ルシフェリン、および少量のATPを用いるルシフェラーゼ触媒性の発光反応が用いられる。検出は、ピロリン酸塩の発光反応に対する阻害効果、およびそれに伴う光の放出の減少によって行われる。Erikssonらは、ピロホスファターゼの酵素活性を測定するためのこの検出方法の使用をさらに記載している;この場合、導入されたピロリン酸塩をピロホスファターゼにより分解し、光の放出の増加を測定する。
【0020】
独国特許出願公開第19602662号明細書にはピロリン酸塩を検出する方法が記載されており、そこではピロリン酸塩の試験サンプルを、ルシフェラーゼ、L-ルシフェリン、ATPおよびピロホスファターゼをプレインキュベートした混合物に加え、これにより発光を作り出す;その発光を記録しピロリン酸塩濃度の決定に用いる。10μM〜100μMの濃度のピロリン酸塩の検出が記載されている。この方法は連続的な測定に不適である。
【0021】
独国特許出願公開第10250491号明細書には、加ピロリン酸分解(pyrophosphorolysis)活性を有するポリメラーゼおよび特異的に標識化されたオリゴヌクレオチドインジケーター基質を用いるピロリン酸塩の検出方法が記載されている;加えたピロリン酸塩により、インジケーター基質の加ピロリン酸分解が起こり、これには標識化したモノヌクレオチドの遊離が伴い、最終的にこれを定量化する。不利な点は核酸インターカレート物質からの干渉に対するこの方法の感受性であり、これにより医薬のハイスループットスクリーニングを含む医薬品有効成分の研究の領域における使用がかなり制限される。
【0022】
国際公開第0036151号パンフレットは、ヌクレオチド三リン酸からのピロリン酸塩の酵素学的除去を検出する方法に関する。用いられる基質は、フルオロフォアおよび蛍光クエンチャーの両方により修飾されたヌクレオチド三リン酸である;基質の酵素学的切断によりフルオロフォア標識化ピロリン酸塩が遊離し、これを検出し、最終的に定量化する。天然ヌクレオチド三リン酸の代わりの前記基質は、導入された標識のせいで、切断酵素に依拠して制限された程度しか利用することができない。
【0023】
グアニリルシクラーゼの酵素活性を測定する方法も従来技術において知られている。
【0024】
グアニリルシクラーゼ(E.C. 4.6.1.2)は、グアノシン三リン酸(GTP)から環状3'-5'-グアノシン一リン酸(cGMP)およびピロリン酸塩への変換を触媒する。
【0025】
Domino et al., Methods in Enzymology 105 (1991) 345-355は、グアニリルシクラーゼにより触媒される反応過程でcGMPに変換される放射標識化GTPを用いる方法を記載している。形成されたcGMPを未反応のGTPから分離し、放射活性測定により定量化し、酵素活性の算出に用いる。この方法は複数の産生工程を含み、それ故に自動化には困難が伴う。さらに、この方法は連続的な測定を行うのに不適である。
【0026】
さらに、cGMP特異的抗体を用いる様々なイムノアッセイが知られている(CatchPoint cGMP Fluorescent Assay Kit(Molecular Devices)の製品説明;HTRF cGMP Assay(Cisbio international)の製品説明、cGMP EIA Kit(Alexis Biochemicals)の製品説明、HitHunter cGMP Assay(DiscoverRx)の製品説明)。これらの場合、形成されたcGMPは抗体に結合したプローブの置換および定量化により間接的に検出される(競合イムノアッセイ)。これらの方法の不利な点は、必要な抗体を得るための試薬が高額なことまたは調製の労力が大きいことであり、これによりハイスループット実験、例えば医薬のハイスループットスクリーニングにおける使用がかなり制限される。この方法はさらに連続的な測定を行うのに不適である。さらに、いくつかの方法は複数の産生工程、特に洗浄工程を含み、これが効率的な自動化をかなり妨害している。
【0027】
米国特許出願公開第20040229251号明細書には、フルオロフォア標識化GTP、特異的BODIPY標識化GTPが代替基質として用いられる方法が記載されている。記載の方法は、天然基質により反応を行わず、体系的な人為現象が生じるおそれがあるという内因性の不利益を有する。前記の代替基質を得るための高額の試薬または調製の労力が、医薬のハイスループットスクリーニングを含むハイスループット実験の領域における使用の可能性をさらに制限している。
【0028】
スクアレン合成酵素の酵素活性を測定する方法も従来技術において知られている。
【0029】
スクアレン合成酵素(E.C. 2.5.1.21)は、第1の触媒工程において2分子のファルネシルピロリン酸塩(FPP)の濃縮を媒介してプレスクアレンピロリン酸塩を生じる二機能性の酵素である。第2の触媒工程において、プレスクアレンピロリン酸塩はスクアレンに変換される。2つの工程のそれぞれにおいて、1分子のピロリン酸塩が形成され、2分子のNADPHが消費される。
【0030】
いくつかの放射性の方法が従来技術において知られている(A. Qureshi et al., J.Biol.Chem. 248 (1973) 1848、Ishihara et al., Bioorg.Med.Chem.11 (2003) 2403、H. Hiyoshi et al., J.Lip.Res. 41 (2000) 1136)。これらの方法において、放射標識化FPPを基質として用い、それらの反応過程で形成されたスクアレンを有機溶媒に取り込み、クロマトグラフィーにより分離し、最終的に定量化する。これらの方法は実験的に非常に複雑であり自動化には困難が伴う。さらに、これらの方法は連続的な測定ができない。
【0031】
米国特許出願公開第20030157583号明細書には、上記のように反応の進行と結びついているNADPH消費の測定に基づく方法が記載されている。この方法は制限された感度しか持たず、低酵素活性を測定するのに不適である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0032】
本発明は従来技術の上記の不利益および制限を克服し、高感度性および干渉に対する低感受性により区別され、容易に自動化および小型化でき、さらに連続的な測定を行うのに適している、ピロリン酸塩を検出する方法を提供するという目的に基づいている。
【課題を解決するための手段】
【0033】
その目的は、本発明に従い、生物発光検出によりピロリン酸塩を検出する方法によって達成される。
【0034】
本発明は、以下の段階を含むピロリン酸塩を検出する方法に関する:
(a)デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよび、ピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼを含む組成物を準備する;
(b)その組成物を試験サンプルと接触させる;および
(c)発光を測定する。
【0035】
本発明の方法の段階(a)に用いられる組成物は、好ましい一実施態様において、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼを含む水溶液であり、個々の成分の水溶液を合わせることにより得ることができる。ルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼは、好ましくは高純度の製品を、フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼの場合は、好ましくはさらに、高い特異性の酵素活性の製品を市販購入し得る。デヒドロルシフェリンは、従来技術において報告されている方法により、市販購入し得るルシフェリンから容易に得ることができる(Bitler&McElroy, Arch. Biochem. Biophys. 72 (1957) 358)。個々の成分の水溶液は必要な濃度のものを困難なく調製できる。
【0036】
本発明は、非組換えまたは組換えルシフェラーゼおよびそれらから由来するまたは突然変異誘発された変異体の使用であって、それらが生物発光性の生化学的反応を触媒することを特徴とする使用に関する。
【0037】
本発明は、生物発光性の生化学的反応がピロリン酸塩により活性化される非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、およびそれらから由来するまたは突然変異誘発された変異体の使用に関する。ルシフェラーゼの生物発光性の生化学的反応の活性化は、生成物阻害を無効にすることによって、または、直接的な、例えばアロステリックな、酵素活性化によって、または他のメカニズムによって、起こり得る。
【0038】
本発明は、コメツキムシ上科およびホタル上科の昆虫から、例えば昆虫フォチヌス・ピラリス、ピロフォルス・プラギオフタラムス(Pyrophorus plagiophthalamus)、ルシオラ・クルシアタ(Luciola cruciata)(ゲンジボタル)、ルシオラ・ラテラリス(Luciola lateralis)(ヘイケボタル)またはルシオラ・ミングレリカ(Luciola mingrelica)から選択されるがこれらに限定されない昆虫から本来的に単離された、ルシフェラーゼおよび組換えルシフェラーゼの使用であって、それらがATPおよびルシフェリンを消費する生物発光性の生化学的反応を触媒することを特徴とする使用に関する(米国特許第6,387,675号明細書、Wood et al., J. Biolum. Chemilum. 4 (1989) 289-301, Wood et al., J. Biolum. Chemilum. 4(1989)31-39, Tatsumi et al., Biochim. Biophys. Acta 1131(1992)161-165)。本発明は、特に好ましくは、フォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼの使用に関する。
【0039】
本発明は、改変されたスペクトルの生物発光特性を有することにより区別される、例えば限定しないがピロフォルス・プラギオフタラムスからのルシフェラーゼLucPplGRのアミノ酸の215、224、232、236、237、242、244、245、248、282、283または348位に対応する置換から選択されるものにより区別される、ルシフェラーゼ変異体の使用に関する(米国特許第6,387,675号明細書)。
【0040】
本発明はさらに、改変された熱安定性を有することにより区別される、例えば限定しないがルシオラ・クルシアタまたはルシオラ・ラテラリスからのルシフェラーゼのアミノ酸の217位に対応する部分の疎水性アミノ酸による置換から選択されるものにより区別されるルシフェラーゼ変異体の使用に関する(米国特許第5,229,285号明細書)。
【0041】
本発明はさらに、改変された熱安定性を有することにより区別される、例えば限定しないが、ルシオラ・クルシアタからのルシフェラーゼの286位のアミノ酸(セリンのアスパラギンによる)、326位のアミノ酸(グリシンのセリンによる)、433位のアミノ酸(ヒスチジンのチロシンによる)または452位のアミノ酸(プロリンのセリンによる)に対応する置換から選択されるものにより区別されるルシフェラーゼ変異体の使用に関する(米国特許第5,219,737号明細書)。
【0042】
列挙した成分を含む水溶液としての本組成物の好ましい実施態様は、
好ましい濃度範囲が5μM〜250μM、より好ましくは10μM〜100μMの範囲、および最も好ましくは20μM〜40μMの範囲のデヒドロルシフェリン、
好ましい濃度範囲が10μM〜500μM、より好ましくは30μM〜300μMの範囲、および最も好ましくは70μM〜200μMの範囲のルシフェリン、
好ましい濃度範囲が10μM〜500μM、より好ましくは30μM〜300μMの範囲、および最も好ましくは70μM〜200μMの範囲のATP、および
好ましい濃度範囲が0.1 nM〜10 nM、より好ましくは0.3 nM〜3 nMの範囲、および最も好ましくは0.5 nM〜2 nMの範囲のフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、
を含む。
【0043】
本発明の方法の段階(a)に用いられる組成物は、さらなる成分、例えば緩衝物質、一価のおよび二価の塩、還元剤、特に遊離のメルカプト基、タンパク質、合成ポリマーおよび界面活性剤(detergent)を含有するもの、を含み得る。
【0044】
緩衝物質の例は、HEPES、TEA、Tris、トリシン、MESおよびMOPSであり、好ましくはTEAおよびTrisである。緩衝物質は好ましくは10 mM〜100 mMの濃度にて存在する。pHは好ましくは7.0〜8.0の範囲、さらにより好ましくは7.3〜7.7の範囲である。
【0045】
一価の塩の例は、NaCl、KCl、NH4Cl、酢酸Na、酢酸K、酢酸NH4であり、好ましくはNaClおよびKClである。一価の塩は好ましくは0 mM〜200 mMの濃度にて存在する。
【0046】
二価の塩の例はMgCl2、MgSO4、酢酸Mg、MnCl2およびCaCl2であり、好ましくはMgCl2である。二価の塩は好ましくは1 mM〜10 mMの濃度にて存在する。
【0047】
還元剤、特に遊離のメルカプト基を含有するものの例は、メルカプトエタノール、DTE、DTTおよびグルタチオンであり、好ましくはDTTである。還元剤は好ましくは0.2 mM〜20 mMの濃度にて存在する。
【0048】
さらなるタンパク質または合成ポリマーの例は、BSA、HSA、ヘモグロビン、カゼインおよびPEGであり、好ましくはBSAである。さらなるタンパク質または合成ポリマーは、好ましくは0.01%〜1%(体積当たりの重量)の濃度にて存在する。
【0049】
界面活性剤の例は、Brij、Tween、CHAPS、TRITONおよびNP-40であり、好ましくはBrijおよびCHAPSである。界面活性剤は好ましくは、0.001%〜0.01%(体積当たりの重量)の濃度にて存在する。
【0050】
本組成物の特に好ましい実施態様は、さらなる成分として50 mM TEA(pH=7.5)、2 mM MgCl2、0.4 mM DTT、0.1%(w/v)BSA(第V画分)、および0.005%(w/v)Brij-35を含む。
【0051】
上記にて指摘したように、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼを含む水溶液としての本組成物の好ましい実施態様は、個々の成分の水溶液を合わせることにより得ることができる;これは好ましくは、はじめにフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、デヒドロルシフェリンおよびATPの水溶液を合わせ、最後にルシフェリン、好ましくは水溶液を加えることを必要とする。フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、デヒドロルシフェリンおよびATPのはじめに合わせた溶液をインキュベートし、その後ルシフェリンを加えることができ、インキュベーション時間は1分〜15分の範囲、インキュベーション温度は15℃〜30℃の範囲が好ましい。
【0052】
好ましくは本発明の方法の段階(a)に用いられる組成物を、以下の段階を含む方法により調製するのが特に好ましい:
(a)それぞれさらなる成分として 50 mM TEA(pH=7.5)、2 mM MgCl2、0.4 mM DTT、0.1%(w/v)BSA(第V画分)、および0.005%(w/v)Brij-35を含む、フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、デヒドロルシフェリンおよびATPの各水溶液を合わせる、
(b)(a)の混合液を20℃〜25℃の温度にて5分〜10分間インキュベートする;
(c)インキュベートした(b)の溶液に、さらなる成分として50 mM TEA(pH=7.5)、2 mM MgCl2、0.4 mM DTT、0.1%(w/v)BSA(第V画分)および0.005%(w/v)Brij-35を含むルシフェリンの水溶液を補足する。
【0053】
本発明の方法の段階(a)において用いられ、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、加えてさらなる成分を含む組成物の水溶液は、保存することができる。本組成物の保存安定性は、とりわけさらなる成分の選択および濃度、ならびに保存条件に依拠する。典型的には数日から数週間の保存安定性が達成される。好ましい保存温度は2℃〜10℃の範囲である。本組成物は、凍結状態、好ましくは−70℃以下にても保存することもできる;この場合、本組成物はできるだけ速く凍結しなければならず、好ましくは瞬間冷凍する(shock-frozen)。
【0054】
本発明の方法の段階(a)において用いられ、水溶液中にデヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、およびさらなる成分として50 mM TEA(pH=7.5)、2 mM MgCl2、0.4 mM DTT、0.1%(w/v)BSA(第V画分)、および0.005%(w/v)Brij-35を含む組成物は、典型的には数日間、少なくとも24時間、4℃〜10℃にて保存することができる。
【0055】
試験サンプルは好ましくは本質的に水性サンプルであり、本質的にそのままで既に水性であるサンプル、または予め行ったサンプル調製、例えば抽出の生成物であり得る。
【0056】
試験サンプルは、生物および無生物環境を含む天然の供給源が起源であり得る。無生物環境からの試験サンプルの例は、水サンプルまたは土壌、砂または石からの抽出物である。生物環境からの試験サンプルの例は、動物または植物からのサンプルである。特に興味深いサンプルは、ヒトの身体からのサンプルであり、可能性としては組織サンプルまたは体液のサンプルまたはそれらの調製物がある。かかる体液の例は、血液、血清、尿、脊髄液、滑液またはそれらの調製物である。
【0057】
試験サンプルはさらに、ピロリン酸塩が産生されるまたは消費される化学反応でもあり得る。これに関連して特に興味深いものは、ピロリン酸塩が産生されるまたは消費される酵素触媒化学反応(酵素反応)である。かかる反応は、例えば、グアニリルシクラーゼ、アデニリルシクラーゼ、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼ、スクアレン合成酵素またはピロホスファターゼにより触媒される。
【0058】
好ましい一実施態様において、本発明の方法は均一相において行われる。この実施態様において、本発明の方法は、特に容易に自動化および小型化することができる。この目的のために、本方法の段階(b)において、水溶液としてデヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼを含む本組成物は、本質的に水性の試験サンプルと合わされる。得られる試験サンプルの体積は、好ましくは1000μl以下、より好ましくは100μl以下、最も好ましくは10μl以下である。
【0059】
本組成物および試験サンプルを合わせることは、液体を取り扱う市販購入し得る装置(液体処理系)を用いて行うことができる。適切な装置の例は、ピペッティング装置(マイクロピペットおよびパラレルピペッタ(parallel pipettor)を含む)、分注装置(圧電効果(piezo effect)に基づく系、バブルジェット系、およびバルブ制御による分注機器を含む)、および移行装置(ピンツールに基づく系を含む)である。
【0060】
本発明の方法は、市販購入し得る反応容器、好ましくは96、384または1536ウェルを有するマイクロプレートにおいて行うことができる。1536ウェルを有するマイクロプレートが特に好ましい。また反応チャンバーとして適切なものは、キャピラリーまたは毛細管系、および多孔性物質の腔(ポリマーゲルおよび多孔性ミクロスフェア(ビーズ)を含む)である。おそらく微小な支持体(チップ)上にてまたは顕微鏡スライド上の液体フィルムにおいてまたはミクロスフェア(ビーズ)上にても行うことができる。本方法は、チップ上のラボの過程または過程の一部として行うことも可能であり得る。
【0061】
さらなる実施態様において、本発明の方法は不均一な相の集合において行うこともできる。この場合、試験サンプルまたは組成物の少なくとも1つの成分はさらなる相に存在する。
【0062】
好ましい一実施態様において、フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼを適切な固体支持体上に固定し、デヒドロルシフェリン、ルシフェリンおよびATPを含む水性組成物と接触させることにより活性化する。次いで本質的に水性の試験サンプルを、好ましくは活性化組成物との混合物中において、固定されたルシフェラーゼと接触させ、放射された発光を測定する。ルシフェラーゼは、装置、例えば、キャピラリー、毛細管系、微小支持体(チップ)またはミクロスフェア(ビーズ)の表面に応じて固定化することができる。
【0063】
本発明の方法の段階(c)において測定すべき発光は、試験サンプルにおけるピロリン酸塩濃度と相関し(実施例1を参照)、より高いピロリン酸塩濃度により、より強い発光シグナルが生じる。20μM以下のピロリン酸塩の濃度範囲において、発光シグナルおよびピロリン酸塩濃度の間で典型的には直線の相関関係が観察される(実施例1を参照)。本発明の方法はそれ故に、特に20μM以下の濃度のピロリン酸塩を検出するのに適している。好ましいピロリン酸塩濃度の範囲は、試験サンプル中20 nM〜20μMであり、より好ましい範囲は50 nM〜10μMであり、最も好ましい範囲は100 nM〜1μMである。
【0064】
試験サンプルにおけるピロリン酸塩濃度の定量的な測定において、既知のピロリン酸塩濃度のさらなる参照サンプルを取扱い、試験サンプルと同様に測定する;与えられた実験条件下における発光シグナルの相関関係およびピロリン酸塩濃度は、このさらなる測定に由来し、測定されたデータは、例えばグラフを使って補間する、または電子的処理により近似値を求めることができる。引き出された相関関係から、ピロリン酸塩濃度は、試験サンプルについて測定された発光値から直接導き出せる。
【0065】
本発明の方法の段階(c)における発光の測定は、市販購入し得るルミノメーターにより行うことができる;しかしながら、本方法の実施態様によっては、特に反応容器の実施態様によっては、特別な指示が必要であり得る。
【0066】
試験混合物は、好ましくは反応容器において直接測定される;この場合、96、384または1536ウェルを有するマイクロプレートにおいて直接測定するのが好ましい。しかしながら、本方法の実施態様に応じて、試験混合物を、測定に適するさらなる容器に完全にまたは部分的に移し、それから測定するのも有利であり得る。
【0067】
試験サンプル中のピロリン酸塩濃度を様々な回数測定すべきである場合、本発明の方法の段階(c)における発光の測定は、繰り返し、反応容器において試験混合物を直接測定して行うことができ、またはアリコートを測定に適するさらなる容器へ移し、所望の回数測定することができる。両方の場合において、検出反応は、可能であれば、ピロリン酸塩濃度を決定するまたはピロリン酸塩濃度に影響する試験サンプルの加工によって妨害されるべきではない。別の手順において、試験サンプルから直接アリコートを所望の回数採取し、これらのアリコートを本組成物と接触させ、次いで測定することも可能である。
【0068】
本発明の方法の段階(b)において試験サンプルを本組成物と接触させた後、段階(c)において測定するべき、生じる発光シグナルは、すばやく、典型的には数秒以内に展開する。シグナルは普通は市販購入し得るルミノメーターによって短い積分時間、典型的には数秒以内に確実に測定することができる強度を有する。
【0069】
それ故に本発明の方法は、ピロリン酸塩濃度を、特に素早く適時の様式にて測定することを可能にする。その素早さのために、本方法は好ましくは試験サンプル中のピロリン酸塩濃度の時間分解測定にも適し、上記に詳細に示した様式にて行うことができる。
【0070】
ピロリン酸塩濃度の時間分解測定は、特に試験サンプルが、ピロリン酸塩が形成されるまたは消費される酵素触媒化学反応などの化学反応を含む場合に興味深い。ピロリン酸塩濃度の経時変化に基づいて、調べた反応における変換速度、さらに既知の方法において必要に応じて用いた酵素の活性を計算することができる。
【0071】
本発明はさらに、以下の段階を含むピロリン酸塩を検出する方法に関する:
(a)デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化することができるルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼを含む組成物の成分を;試験サンプルと接触させる
(b)発光を測定する。
【0072】
本方法の段階(a)は好ましくは、本組成物の成分と試験サンプルを合わせる順序に応じて、素早く(数分以内を意味する)行われるべきである。本方法の段階(b)において測定されるべき発光シグナルは、本組成物の成分および試験サンプルを合わせる順序に応じて、またさらなる成分に応じて、はじめに短時間の間隔にわたって展開し、その後にのみ安定化し得る;これらの場合において、安定化した発光強度をピロリン酸塩濃度を測定するのに用いるべきである。
【0073】
本組成物および含まれる個々の成分は好ましくは、水溶液として形成され合わせられる;それらの溶液は、上記にて説明したように、さらなる成分を含み得る。
【0074】
水性成分を合わせること、および試験サンプルと接触させること、ならびにこれに次ぐ発光の測定は上記に説明した様式にて行うことができる。
【0075】
本方法の好ましい一実施態様では、段階(a)において、はじめに、デヒドロルシフェリン、ATP、フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼを含む混合物を準備し;次いで混合物を試験サンプルと接触させ、最後にルシフェリンを加える。
【0076】
デヒドロルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼを含む混合物は保存することができる。混合物の保存安定性は、とりわけ、さらなる成分の選択および濃度、ならびに保存条件に依拠する。
【0077】
本発明はさらに、以下の段階を含む、ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の時間経過を測定する方法に関する:
(a)デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼを含む組成物を準備する;
(b)その組成物をピロリン酸塩形成または消費酵素反応と接触させる;および
(c)発光を連続的に測定する。
【0078】
デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼを含む本組成物は、上記に説明したように、好ましくは水溶液として形成され、さらなる成分を含み得る。
【0079】
好ましくは水性成分を合わせて本組成物を準備すること、および試験サンプルと接触させることは、同様に、上記に説明した方法にて行うことができる。
【0080】
本方法の段階(c)における発光の連続的な測定において、短い積分期間の個々の測定を短い間隔にて行う。市販購入し得る機器によって、確実にかつ短い間隔(1秒未満の間隔を意味する)にて、数秒の領域の、場合により1秒未満の積分期間の典型的な発光シグナルを測定することができる。
【0081】
本発明の方法は、上述のように、特に素早く適時の様式にて、それぞれのピロリン酸塩濃度を測定することを可能にする。上記の連続的な発光測定を活用して、高時間分解によるピロリン酸塩濃度の経過を測定し、追跡することができる。ピロリン酸塩形成または消費反応において、ピロリン酸塩濃度の経時変化を、反応の経過、およびそれぞれの場合において達成された反応変換のインジケーターとして用いることができ、それぞれの反応速度(用いたそれぞれの酵素の活性を含む)を既知の方法にて算出することができる。
【0082】
本方法の段階(c)における連続的な発光測定の開始および期間は、実験の目的に応じて変化し得る。好ましい一実施態様において、酵素反応を発光測定を開始する直前に始める。これにより、多くの酵素-速度論的な研究において望まれる反応初速度の決定を行うことができる。
【0083】
本発明はさらに、以下の段階を含む、ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の時間経過を測定する方法に関する:
(a)ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の1以上の成分を、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼを含む組成物と接触させる;
(b)(a)の混合物をピロリン酸塩形成または消費酵素反応の残りの成分と接触させる;および
(c)発光を連続的に測定する。
【0084】
デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼを含む本組成物は、上記に説明したように、好ましくは水溶液として形成され、さらなる成分を含み得る。
【0085】
好ましくは水性成分を合わせて本組成物を準備すること、ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の成分と接触させること、および連続的な発光測定は、同様に、上記に説明した様式にて行うことができる。
【0086】
好ましい一実施態様において、本方法の段階(a)の混合物を段階(b)を開始する前にインキュベートする;インキュベーションは好ましくは、目的とする反応温度、例えば37℃にて、少なくとも混合物の全体積が目的とする反応温度となるのに十分な期間にわたって行う。段階(b)において、段階(a)からの混合物と、ピロリン酸塩形成または消費酵素反応のただ1つの残りの成分が接触し、こうして反応が開始するように、段階(a)を構成するのがさらに好ましい(実施例2を参照:可溶性血管グアニル酸シクラーゼにより触媒される酵素反応の測定)。この場合において、その1つの残りの成分は、発光の連続的な測定がすぐに開始できる(典型的には1秒未満の時間間隔によることを意味する)ように、好ましくは分注装置を活用してルミノメーターに直接加える。あるいは、その測定は1つの残りの成分を加える前でも開始することができる。この場合、測定の適切な区分を用いて、反応初速度または酵素活性を測定する。
【0087】
本発明はさらに、以下の段階を含む、ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の時間経過を測定する方法に関する:
(a)ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の成分を、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼを含む組成物の成分と接触させる;
(b)発光を連続的に測定する。
【0088】
デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびフォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼを含む本組成物は、上記に説明したように、好ましくは水溶液として形成され、さらなる成分を含み得る。本組成物の成分をピロリン酸塩形成または消費酵素反応の成分と接触させること、および発光の連続的な測定は、同様に、上記に説明した様式にて行うことができる。
【0089】
本方法の段階(a)は好ましくは、本組成物の成分およびピロリン酸塩形成または消費酵素反応の成分を合わせる順序に応じて、すばやく(数分以内を意味する)行うべきである。本方法の段階(b)において測定すべき発光シグナルは、本組成物の成分およびピロリン酸塩形成または消費酵素反応の成分を合わせる順序に応じて、またさらなる成分に応じて、はじめに短い時間間隔にわたって展開し、その後にのみ安定化し得る;これらの場合において、連続的な発光測定の適切な後の区分を、反応速度または酵素活性の測定に用いるべきである。
【0090】
本発明の方法は、様々な領域において有利に用いることができ;医学的診断、生物医学的研究、特に活性成分の研究および製薬研究の領域、ならびに環境および食物分析の領域における使用が特に興味深い。さらに、本発明の方法の使用は、ピロリン酸塩濃度の測定のみならず、化学反応変換および酵素活性の測定をも対象とすることができる。
【0091】
本発明の方法は、上記に説明したように、均一相において、およびいくつかの簡単な処理段階において行うことができ;それ故にそれらは自動化および小型化に非常に適している。
【0092】
医学的診断の領域において、試験サンプルのピロリン酸塩含量が病理学的変化のインジケーターとなり得るならばいずれの場合にも、本発明の方法の使用は適している。特に興味深いサンプルは、体液または組織調製物のサンプル、例えば血液、血清、尿、脊髄液、滑液またはそれらの調製物のサンプルであり得る。本発明の方法は、高感度性および特に典型的なサンプル組成、例えば、リン酸塩またはATPからの干渉に対する低感受性のために、かかる試験サンプルを分析するのに非常に適している。さらに、本発明の方法が容易に自動化でき、小型化できることで、特に効率的にかつ費用効果的に分析を行うことができる。
【0093】
本発明の方法の自動化された使用はさらに、生物医学的研究、特に医薬品有効成分の研究の領域において重要であり得る;この場合、通常の大きさの物質のライブラリー、場合により百万以上の物質を有するライブラリーは、新規な候補活性成分を発見するために自動化方法(ハイスループットスクリーニング)を活用してスクリーニングされる;本方法の自動化容易性に加え、特に小型化可能性、高感度性および干渉に対する低感受性はこの用途に有利である。試験形態の小型化および高感度性により、試薬の調製または獲得のための労力、および試験物質の消費が減少する。干渉に対する低感受性は、通常、試験結果の高い質のデータおよび良好な再現性を導く。
【0094】
医薬のハイスループットスクリーニングは、典型的には医学的治療の標的となり得る生物学的活性、例えば酵素活性のモジュレーターの同定を対象とする。本発明の方法は、医薬のハイスループットスクリーニング、特にピロリン酸塩形成または消費反応を触媒する酵素のモジュレーターの発見における係る使用に非常に適している;これに関連して特に興味深いものは、例えば、グアニリルシクラーゼ、アデニリルシクラーゼ、DNAポリメラーゼまたはRNAポリメラーゼまたはスクアレン合成酵素の酵素活性のモジュレーターである。この目的のために、関連酵素の活性を、1以上の適切な濃度の試験物質の存在下において上記の本発明の方法の1つにより測定し、試験物質の非存在下における酵素活性と比較し、そこから試験物質の調節特性を既知の方法にて引き出す。通常、引き出される試験物質の特性は、調べた酵素活性に対する活性化または阻害効果である(実施例3および5を参照)。
【0095】
さらに、本発明の方法は、モジュレーターのさらなる酵素-速度論的な特徴決定、例えば阻害のメカニズム、酵素-モジュレーター複合体の形成および解離速度、または酵素-モジュレーター複合体の形成および解離に関係するエネルギー消費の決定にも用いることができる。その方法はさらに、本発明によって、ピロリン酸塩が形成または消費される酵素および酵素反応の特徴決定(基質特性の特徴決定ならびに代替基質の発見および最適化を含む)に、有利に用いることができる。
【0096】
本発明の方法の利点、特にリン酸塩およびATPからの干渉に対する低感受性はさらに、ゲノム分析および遺伝子発現分析の領域における用途に利用することができる。これらの用途は、本発明の方法を活用した、DNAまたはRNA-依存性ポリメラーゼ(逆転写酵素を含む)の酵素活性の検出、および必要であれば測定に基づく;連続的な発光測定による実施態様の使用はこれらの場合において特に興味深い。ゲノム分析および遺伝子発現分析の領域におけるあり得る使用の例は、DNAまたはRNAの核酸配列決定(ピロシークエンシング)およびポリメラーゼ連鎖反応(PCR)による核酸増幅の検出または測定である。
【0097】
本発明はさらに、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼを含む化学組成物に関する。本組成物は、上記に説明したように、好ましくは水溶液として形成され、さらなる成分を含み得る。本組成物を準備するための様々なおよび好ましい可能性ある手段、および保存安定性、およびさらなる操作は、同様に、上記にて説明している。
【0098】
本発明はさらに、少なくとも以下を含む、記載の方法の1つを行うためのアッセイキットに関する:
少なくともデヒドロルシフェリンを含む適切な第1の容器、
少なくともルシフェリンを含む適切な第2の容器、
少なくともATPを含む適切な第3の容器、
少なくともピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼを含む適切な第4の容器。
【0099】
記載した方法の1つを行うための本発明のさらなるアッセイキットは、少なくとも1以上の適切な容器を含み、容器はそれぞれ、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼからなる群から選択される少なくとも1以上の成分を含む。ここで列挙したそれぞれの成分は少なくとも1つの適切な容器に存在する。
【0100】
本発明はさらに、記載した方法の1つを行うためのアッセイキットであって、少なくともデヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化することができるルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼを含む、少なくとも1つの適切な容器を含むアッセイキットに関する。
【0101】
列挙した成分はそれぞれの場合においてさらなる成分と合わせて存在し得る:さらなる成分の例は、上記にて既に記載している。列挙した成分または成分を合わせたものは、ルシフェラーゼを含まない場合、好ましくは乾燥固体または乾燥固体混合物として、例えば凍結乾燥物として適切な容器内に存在する。ルシフェラーゼ、例えばフォチヌス・ピラリスからのルシフェラーゼを含む場合、列挙した成分または成分を合わせたものは、好ましくは10%〜60%の体積比率、好ましくは50%の体積比率のグリセリン含量を有する水溶液として存在する。本発明の方法の1つを行うために、存在する成分および成分を合わせたものは、実施態様に応じて、水溶液に入れ、または水により希釈し、試験サンプルと一緒に合わせまたは試験サンプルと接触させ、測定する。
【0102】
適切な容器は、+20℃〜−80℃の範囲の温度(急速な温度変化を含む)における、良好な長期の安定性により区別される。好ましい容器は不透明であり、ポリマー合成材質の空気および水に対する緊密な密閉性を有する。
【0103】
本発明のアッセイキットは、本発明の方法の様々な実施態様を行うための典型的なプロトコール、典型的な結果、参照サンプル、参考資料およびさらなる物質をさらに含み得る。
【図面の簡単な説明】
【0104】
【図1】ピロリン酸塩濃度系列の測定;RLU、相対的な発光単位の発光シグナル;[ピロリン酸塩]、ピロリン酸塩濃度、マイクロモーラー
【図2】様々な濃度のBAY 41-2272による可溶性グアニリルシクラーゼ(sGC)の活性化の測定;RLU、相対的な発光単位の発光シグナル;t、インキュベーション時間(分);[BAY 41 2272]、BAY 41-2272の濃度、マイクロモーラー
【図3】スクアレン合成酵素(SQS)の活性の測定;RLU、相対的な発光単位の発光シグナル;t、インキュベーション時間(分);[SQS]、スクアレン合成酵素の濃度、ナノモーラー
【図4】様々な濃度のザラゴジン酸によるスクアレン合成酵素の阻害の測定;RLU/分、単位時間当たりの発光シグナルの変化(相対的な発光単位/分);[ザラゴジン酸]、ザラゴジン酸濃度、ナノモーラー
【発明を実施するための形態】
【0105】
本発明を以下の実施例によりさらに詳細に説明する。
【実施例1】
【0106】
ピロリン酸塩の検出
ピロリン酸塩(PPi)を本発明の方法により検出する。アッセイにおいて生じたシグナルはPPi濃度の増加に伴って増大する(図1を参照)。
【0107】
PPi検出のための手順
PPi検出を行うために、PPi溶液40μl(Sigma;緩衝液における連続希釈:50 mM TEA、2 mM MgCl2、0.1%BSA(第V画分)、0.005%Brij、pH 7.5)をマイクロプレートに導入した。次に、検出用混合液20μl(緩衝液(50 mM TEA、2 mM MgCl2、0.1% BSA(第V画分)、0.005% Brij、pH 7.5)中、1.2 nMホタルルシフェラーゼ(フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、Promega)、29μMデヒドロルシフェリン(Bitler&McElroy, Arch. Biochem. Biophys. 72 (1957) 358に従って調製)、122μMルシフェリン(Promega)、153μM ATP(Sigma)および0.4 mM DTT(Sigma))を加えた。検出混合物を室温にてルミノメーターにおいて測定した。
【実施例2】
【0108】
PPi検出によるsGC酵素活性の測定
可溶性グアニリルシクラーゼ(sGC)は刺激するとGTPをcGMPとピロリン酸塩(PPi)に変換する。PPiを本発明の方法を活用して検出する。アッセイにおいて生じたシグナルは反応の進行につれて増大し、sGC酵素活性の尺度として役立つ。PPi参照プロットを活用して(実施例1を参照)、既知の方法、例えば変換速度、刺激能(stimulability)またはミカエリス定数によって酵素を特徴決定することができる。
【0109】
アッセイ手順
アッセイを行うために、酵素溶液29μl(50 mM TEA、2 mM MgCl2、0.1% BSA(第V画分)、0.005% Brij、pH 7.5中、0-10 nM可溶性グアニリルシクラーゼ(Honicka et al., Journal of Molecular Medicine 77 (1999) 14-23に従って調製)をマイクロプレートに導入し、刺激用溶液1μl(DMSO中0-10μM DEA NONOate(Alexis))を加えた。混合物を室温にて10分間インキュベートした。次いで検出用混合液20μl(50 mM TEA、2 mM MgCl2、0.1% BSA(第V画分)、0.005% Brij、pH 7.5中、1.2 nMホタルルシフェラーゼ(フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、Promega)、29μMデヒドロルシフェリン(Bitler&McElroy, Arch. Biochem. Biophys. 72 (1957) 358に従って調製)、122μMルシフェリン(Promega)、153μM ATP(Sigma)および0.4 mM DTT(Sigma))を加えた。基質溶液20μl(50 mM TEA、2 mM MgCl2、0.1%BSA(第V画分)、0.005%Brij、pH 7.5中、1.25 mMグアノシン5'-三リン酸(Sigma))を加えて酵素反応を開始させ、ルミノメーターにおいて連続的に測定した。
【実施例3】
【0110】
sGC酵素活性の刺激についての試験物質の特徴決定
可溶性グアニリルシクラーゼ(sGC)は刺激するとGTPをcGMPとピロリン酸塩(PPi)に変換する。PPiを本発明の方法を活用して検出する。アッセイにおいて生じたシグナルは、反応の進行につれて増大し、与えられた刺激下におけるsGC酵素活性の尺度として役立つ(図2を参照)。
【0111】
アッセイ手順:
アッセイを行うために、酵素溶液29μl(50 mM TEA、2 mM MgCl2、0.1%BSA(fractionV)、0.005%Brij、pH 7.5中、0-10 nM可溶性グアニリルシクラーゼ(Honicka et al., Journal of Molecular Medicine 77 (1999) 14-23に従って調製))をマイクロプレートへ導入し、試験すべき物質1μl(例えばDMSO中に連続希釈したBAY 412272(Alexis))を加えた。混合物を室温にて10分間インキュベートした。次いで検出用混合液20μl(50 mM TEA、2 mM MgCl2、0.1%BSA(第V画分)、0.005%Brij、pH 7.5中、1.2 nMホタルルシフェラーゼ(フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、Promega)、29μMデヒドロルシフェリン(Bitler&McElroy, Arch. Biochem. Biophys. 72 (1957)358に従って調製)、122μMルシフェリン(Promega)、153μM ATP(Sigma)および0.4 mM DTT(Sigma))を加えた。基質溶液20μl(50 mM TEA、2 mM MgCl2、0.1%BSA(第V画分)、0.005%Brij、pH 7.5中、1.25 mMグアノシン5'-三リン酸(Sigma))を加えて酵素反応を開始させ、ルミノメーターにおいて連続的に測定した。試験すべき物質による刺激の程度は、無刺激の反応のシグナルと比較して決定することができる。
【実施例4】
【0112】
PPi検出によるSQS酵素活性の測定
スクアレン合成酵素(SQS)は、NADPHの存在下において、ファルネシルピロリン酸塩をスクアレンおよびピロリン酸塩(PPi)に変換する。PPiを本発明による方法を活用して検出する。アッセイにおいて生じたシグナルは反応の進行につれて増大し、SQS酵素活性の尺度として役立つ(図3を参照)。酵素は、PPi参照プロットを活用して(実施例1を参照)、既知の方法、例えば変換速度またはミカエリス定数によって、特徴決定することができる。
【0113】
アッセイ手順:
アッセイを行うために、酵素溶液40μl(50 mM Tris、5 mM MgCl2、1.5 mMグルタチオン、5 mM CHAPS、pH 7.5中、0-10 nM SQS(Soltis, Arch. Biochem. Biophys. 316 (1995) 713に従って調製))をマイクロプレートへ導入した。次いで検出混合液20μl(50 mM Tris、5 mM MgCl2、5 mM CHAPS、0.02% BSA(第V画分)、pH 7.5中、1.3 nMホタルルシフェラーゼ(フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、Promega)、35μMデヒドロルシフェリン(Bitler&McElroy, Arch. Biochem. Biophys. 72 (1957) 358に従って調製)、140μMルシフェリン(Promega)、175μM ATP(Sigma)および0.5 mM DTT(Sigma))を加えた。基質溶液20μl(50 mM Tris、5 mM MgCl2、5 mM CHAPS、pH 7.5中、10.5μMファルネシルピロリン酸塩(Sigma)、150μM NADPH(Sigma))を加えて酵素反応を開始させ、ルミノメーターにおいて連続的に測定した。
【実施例5】
【0114】
SQS酵素活性の阻害に関する試験物質の特徴決定
スクアレン合成酵素(SQS)は、NADPHの存在下においてファルネシルピロリン酸塩をスクアレンとピロリン酸塩(PPi)に変換する。PPiを本発明による方法を活用して検出する。アッセイにおいて生じたシグナルは反応の進行につれて増大し、与えられた阻害によるSQS酵素活性の尺度として役立つ(図4を参照)。
【0115】
アッセイ手順:アッセイを行うために、酵素溶液39μl(50 mM Tris、5 mM MgCl2、1.5 mM グルタチオン、5 mM CHAPS、pH 7.5中、0 10 nM SQS(Soltis, Arch. Biochem. Biophys. 316 (1995) 713に従って調製))をマイクロプレートへ導入し、試験物質溶液1μl(DMSOにおける連続希釈)を加えた。その混合物を室温にて10分間インキュベートした。次いで検出用混合液20μl(50 mM Tris、5 mM MgCl2、5 mM CHAPS、0.02% BSA(第V画分)、pH 7.5中、1.3 nMホタルルシフェラーゼ(フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、Promega)、35μMデヒドロルシフェリン(Bitler&McElroy, Arch. Biochem. Biophys. 72 (1957) 358に従って調製)、140μMルシフェリン(Promega)、175μM ATP(Sigma)および0.5 mM DTT(Sigma))を加えた。基質溶液20μl(50 mM Tris、5 mM MgCl2、5 mM CHAPS、pH 7.5中、10.5μMファルネシルピロリン酸塩(Sigma)、150μM NADPH(Sigma))を加えて酵素反応を開始させ、ルミノメーターにおいて連続的に測定した。阻害の程度は、無阻害の反応のシグナルと比較して決定することができる。
【0116】
ルシフェラーゼ活性の可能性ある試験物質媒介性の阻害を以下のように調べることができる:ルミノメーター測定の完了後、PPi含有対照溶液20μl(50 mM Tris、2 mM MgCl2、pH 8中、5μM PPi(Sigma)、0.02%BSA(第V画分、Sigma)、44μM ATP(Sigma)、35μMルシフェリン(Promega)、0.4 nMホタルルシフェラーゼ(フォチヌス・ピラリスのルシフェラーゼ、Promega)、6μMデヒドロルシフェリン(Bitler&McElroy, Arch. Biochem. Biophys. 72 (1957) 358に従って調製))を加え、ここでもルミノメーターにおいて測定する。
【0117】
阻害された反応混合物に PPi含有対照溶液を加えることにより生じたシグナルの増大が、無阻害の対照混合物における場合と同程度の大きさである場合、ルシフェラーゼ反応の阻害は無視することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
以下の段階を含むことを特徴とする、ピロリン酸塩を検出する方法:
(a)デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼを含む組成物の成分を試験サンプルと接触させる
(b)発光を測定する。
【請求項2】
ルシフェラーゼが以下からなる群から選択される、請求項1に記載の方法:
非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
コメツキムシ上科およびホタル上科の昆虫からの非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
昆虫フォチヌス・ピラリス、ピロフォルス・プラギオフタラムス、ルシオラ・クルシアタ、ルシオラ・ラテラリスまたはルシオラ・ミングレリカからの非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
それらから由来するまたは突然変異誘発されたルシフェラーゼ、
またはそれらに由来するルシフェラーゼの混合物。
【請求項3】
試験サンプルが生物および無生物環境を含む天然起源に由来することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
試験サンプルが植物または動物に由来することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
試験サンプルがヒトの身体に由来することを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
試験サンプルが組織または体液のサンプルまたは調製物を含むことを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
試験サンプルがピロリン酸塩形成または消費化学反応であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
試験サンプルがピロリン酸塩形成または消費酵素反応であることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の時間経過を測定する方法であって、以下の段階を含む方法:
(a)ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の成分を、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼを含む組成物の成分と接触させる;
(b)発光を連続的に測定する。
【請求項10】
ルシフェラーゼが以下からなる群から選択される、請求項9に記載の方法:
非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
コメツキムシ上科およびホタル上科の昆虫からの非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
昆虫フォチヌス・ピラリス、ピロフォルス・プラギオフタラムス、ルシオラ・クルシアタ、ルシオラ・ラテラリスまたはルシオラ・ミングレリカからの非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
それらから由来するまたは突然変異誘発されたルシフェラーゼ、
またはそれらに由来するルシフェラーゼの混合物。
【請求項11】
ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の時間経過を測定する方法であって、以下の段階を含むことを特徴とする方法:
(a)1以上のピロリン酸塩形成または消費酵素反応の成分を、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼを含む組成物と接触させる;
(b)(a)からの混合物を、ピロリン酸塩形成または消費酵素反応の残りの成分と接触させる;および
(c)発光を連続的に測定する。
【請求項12】
ルシフェラーゼが以下からなる群から選択される、請求項11に記載の方法:
非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
コメツキムシ上科およびホタル上科の昆虫からの非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
昆虫フォチヌス・ピラリス、ピロフォルス・プラギオフタラムス、ルシオラ・クルシアタ、ルシオラ・ラテラリスまたはルシオラ・ミングレリカからの非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
それらから由来するまたは突然変異誘発されたルシフェラーゼ、
またはそれらに由来するルシフェラーゼの混合物。
【請求項13】
酵素反応が以下からなる群から選択される、請求項8〜12のいずれかに記載の方法:
ピロリン酸塩形成またはピロリン酸塩消費酵素反応、グアニリルシクラーゼ触媒反応、アデニリルシクラーゼ触媒反応、スクアレン合成酵素触媒反応、ピロホスファターゼ触媒反応、DNAポリメラーゼ触媒反応またはRNAポリメラーゼ触媒反応。
【請求項14】
酵素反応が可溶性血管グアニリルシクラーゼにより触媒されることを特徴とする、請求項8〜12のいずれかに記載の方法。
【請求項15】
医学的診断の領域における請求項1〜14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項16】
生物医学的研究、製薬研究または医薬品有効成分の研究の領域における、請求項1〜14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項17】
医薬のハイスループットスクリーニングにおける、請求項1〜14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項18】
ピロシークエンシングを含む、核酸配列決定の領域における、請求項1〜14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項19】
ポリメラーゼ連鎖反応を含む、核酸増幅の領域における、請求項1〜14のいずれかに記載の方法の使用。
【請求項20】
デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼを含む、化学組成物。
【請求項21】
ルシフェラーゼが以下からなる群から選択される、請求項20に記載の組成物:
非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
コメツキムシ上科およびホタル上科の昆虫からの非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
昆虫フォチヌス・ピラリス、ピロフォルス・プラギオフタラムス、ルシオラ・クルシアタ、ルシオラ・ラテラリスまたはルシオラ・ミングレリカからの非組換えまたは組換えルシフェラーゼ、
それらから由来するまたは突然変異誘発されたルシフェラーゼ、
またはそれらに由来するルシフェラーゼの混合物。
【請求項22】
少なくとも以下を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法を行うためのアッセイキット:
少なくともデヒドロルシフェリンを含む、適切な第1の容器
少なくともルシフェリンを含む、適切な第2の容器
少なくともATPを含む、適切な第3の容器、および
少なくともピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼを含む、適切な第4の容器。
【請求項23】
請求項1〜14のいずれかに記載の方法を行うためのアッセイキットであって、少なくとも1以上の適切な容器を含み、容器はそれぞれ、デヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼからなる群から選択される少なくとも1以上の成分を含み、ここで列挙された各成分は少なくとも1つの適切な容器中に存在する、アッセイキット。
【請求項24】
少なくともデヒドロルシフェリン、ルシフェリン、ATPおよびピロリン酸塩により活性化できるルシフェラーゼを含む少なくとも1つの適切な容器を含む、請求項1〜14のいずれかに記載の方法を行うためのアッセイキット。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公表番号】特表2010−509924(P2010−509924A)
【公表日】平成22年4月2日(2010.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−537504(P2009−537504)
【出願日】平成19年11月7日(2007.11.7)
【国際出願番号】PCT/EP2007/009625
【国際公開番号】WO2008/061626
【国際公開日】平成20年5月29日(2008.5.29)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.バブルジェット
【出願人】(507113188)バイエル・シェーリング・ファルマ・アクチェンゲゼルシャフト (141)
【氏名又は名称原語表記】Bayer Schering Pharma Aktiengesellschaft
【Fターム(参考)】