説明

生理学的パラメータの非侵襲的特徴決定

本発明は、生理学的パラメータを特徴決定するための方法及び装置を提供する。前記方法は、非侵襲的センサーを用いて患者データを収集するが、環境条件についてのデータを収集してもよい。患者データの一部は、前記生理学的パラメータと直接的関係を有し、前記生理学的パラメータの大きさは、ノイズ、干渉又は環境や患者による他の影響によってマスキングされることもあるが、前記生理学的パラメータにおける変化はデータセットに反映される。前記直接患者データは、生理学的パラメータとほぼ線形関係を有するが、そうでない場合は、アルゴリズム等によって線形化される。前記線形化されたデータにブラインド信号源処理を適用することにより、分離信号が生成され、前記生理学的パラメータに付随する信号が同定される。前記同定された信号は、スケーリングされるか、さらに処理され、特徴決定の結果が提示される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の実施態様は、非侵襲的な装置及びヒトなどの生体内における生理学的パラメータを特徴決定する方法に関する。本発明は、一例において、グルコース濃度などの血中分析物の濃度レベルを推定する装置及び方法を提供する。
【背景技術】
【0002】
糖尿病は、治療法がない慢性疾患である。2005年には、アメリカ合衆国国民の約2,080万人(人口の7%)が糖尿病にかかっていると推定された。糖尿病は、2000年の病気による死亡原因の第6位として、アメリカ合衆国の医療保険制度に年間推定1,320億ドルの負担を与えている。National Diabetes Information Clearinghouse, NIH Publication No. 04−3892, November 2003を参照。糖尿病による経済的費用よりも重大なのは、糖尿病による生活の質の低下、健康における重大な合併症・影響、及び死亡である。
【0003】
糖尿病は、インスリンの生産、インスリンの作用、あるいはその両方の欠損による高血糖値を特徴とする疾病群である。食物の炭水化物は単糖グルコースに変換され、これがベータ細胞にインスリンを血中に放出させる。インスリンは、エネルギー、分子変換または貯蔵のための、他の細胞によるグルコース吸収を可能にする。インスリンは、肝内及び筋細胞内での貯蔵のためのグリコーゲンへのグルコース変換に対する制御を示す。しかしながら、生成されるインスリンの量が十分でない場合、インスリンに欠陥がある場合又は細胞がインスリンに適切に反応しない場合、グルコースが適切に調整されないこともある。これにより、高血糖値、不良なタンパク質合成及びその他の代謝性障害といった結果になることもある。
【0004】
糖尿病患者の高血糖は、心血管疾患、動脈硬化症、失明、脳卒中などの脳血管疾患、高血圧、腎不全、末梢血管疾患及び早世などの、糖尿病の長期作用に関与すると強く疑われている。重度の低血糖でも同様の重篤な結果をもたらす。正常人において、血糖値は、1デシリットル当たり60〜130ミリグラムで変動することがあり、分散が100%を超えているが、糖尿病患者においては場合によって、濃度が1デシリットル当たり40〜500ミリグラムで変動することがあり、高血糖についての分散は1150%である。低血糖については、1デシリットル当たり60ミリグラムで治療が必要であることを示し、グルコースは、1デシリットル当たり20ミリグラムという危険な濃度に到達することもある。これらのグルコース濃度の大きな変動は、疾患の病徴や合併症を防ぐためにも回避しなければならない。理想的には、糖尿病患者は、自分の血糖値を簡易的にモニターし、カロリー摂取、食生活及びインスリンを変化させてグルコース濃度を制御することによって、これらの変動を回避することであろう。効果的な制御のためには、血糖を頻繁にモニターしなければならない。
【0005】
現在グルコースをモニターする好ましい手法として、採血法がある。糖尿病患者は、通常手指の表皮を針やランセットで刺し、血液を一滴取り、その血液を化学処理された紙片上に吸収させる。その後、前記片を糖測定器(グルコースの濃度を読み取る分光光度計)に入れることによって、グルコース濃度を読み取ることができ、または前記片の色変化を目盛り付けされた色表と比較することもできる。他には、前記片の電気抵抗を、1デシリットル当たりのミリグラムで目盛り付けされたオームメーターである糖測定器で測定する方法などがある。一部の糖尿病患者は、効果的な制御のために、指頭血を一日4回以上使用しなければならない。
【0006】
しかし、糖尿病患者にとっては多くの場合、このような検査のための採血がたいへん負担になることから、グルコース濃度を定期的にモニターすることができない。手順が侵襲性であるため、並びに頻繁に指先を刺すことに伴う疼痛のため、糖尿病患者はグルコース濃度を日常的にモニターしにくい。さらに、検査に用いる化学試薬は、特に検査回数が多いことを考えると、かなり高価である。従って、糖尿病患者はグルコース濃度を適切にモニターできない場合がある。
【0007】
グルコースなどの分析物の体内濃度をモニターするために、負担がより少ない又は侵襲性がより低いアプローチが多数試行されているが、今のところ成功したものはない。例えば、これらのアプローチは十分に正確でないことが判明したり、環境条件に敏感すぎて測定値が無意味になってしまうということがあった。さらに、被験者において妥当なデータを出力する装置には通常、相当数の較正データが必要となり、数日にわたって多数の較正を行う場合が多い(例えば、血糖値の個数が20を超える)。限界を別にすれば、グルコースの非侵襲的モニタリングなどの生理学的パラメータの非侵襲的モニタリングは、未だに、糖尿病管理、並びに循環器疾患や一つ以上の生理学的パラメータを使用してモニター又は検出できるその他の疾患の至高の目標となっている。例えば、血中分析物などの生理学的パラメータをモニターする光学技法は、真に非侵襲性である。組織を照射し、吸収された又は分散された放射線を分析し、その情報を処理することにより、皮膚組織内の血中分析物の濃度に比例した測定値が出る。これらの技法には、近赤外線から遠赤外線及びラマン分光法、旋光分析法、光散乱法又は光吸収法、及び光音響分光法などがある。
【0008】
多くの注目が集まった1つの非侵襲的アプローチには、組織(皮膚)電気インピーダンス測定などの誘電率測定が関与している。このアプローチでは、複素インピーダンスが幅広い(Hz〜MHz〜GHz〜THz)周波数範囲にわたって測定される。インピーダンス分光法では、分析物の変動によって誘導される組織の誘電特性の変化を測定する。低周波数での応答は、水中でのイオン回転によるものと考えられている。この回転は、電解質(NaClなど)の濃度及び溶媒の粘度を変化させる物質(グルコースまたは組織水和の変化など)の両方から影響を受けることがある。高周波数での応答は、主に電解質成分の双極子モーメントの変化に起因する。しかしながら、純粋なインピーダンス測定の特異性が低いため、このアプローチが成功する見込みは少ない。これらの問題を克服するために、データは通常、幅広い周波数範囲で取得され(いわゆる、インピーダンス分光法)、部分最小二乗法、主成分分析法及び神経回路網解析を含め、複雑な統計的アルゴリズムによって分析されることが多い。
【0009】
被験者の血糖値を求める皮膚インピーダンスの非侵襲的測定は、例えば、米国特許第5,890,489号及び第6,517,482号と、国際特許出願PCT/US 98/02037号に記載されている。インピーダンスに基づく技術は、1920年代の初期から医学的な目的で使用されてきたが、新しい計器や方法は、ここ数十年になってやっと様々な臨床的応用において利用可能となった。例えば、心肺断層撮影(Metherallら、Nature 1996;380:509− 512)、皮膚及び組織の水和(例えば、PCT出願WO 05/018432号及びWO 06/029034号、Tagamiら、Invest Dermatol 1980;75:500−507を参照)、虫歯の検出(Longbottomら、Nat Med 1996、2:235−237)、または新形成の検出(Brownら、Lancet 2000、355−892−895;Abergら、IEEE Trans Biomed Eng 2004、51 :2097−2102;Abergら、Skin Res Technol、2005、11 :281−286;Emtestamら、Skin Res Technol 2007、13:73−78;Hope & Iles、Breast Cancer Res、2004:6(2)69−74)及び皮膚における各種病理所見(例えば、Emtestam & Nyren, Am J Contact Dermatitis 1997、8:202−206;Hagstromerら、Skin Pharmacol Appl Skin Physiol Physiol 2001、14:27−33;Nicander、Br J Dermatol 1996、134:221− 228;Emtestamら、Dermatology 1998、197:313−316、Nicanderら、Skin Res Technol 1997、3:121−12510を参照)が挙げられ、それぞれ参照することにより本明細書に組み込まれる。電磁波を用いる分析物の誘電特性の検討により、血中分析物の実時間検出及び制御について有用な情報が取得できる。これらの検討は、他の応用においても注目されている(ミクロメータ波、ミリメータ・テラヘルツ範囲のRF信号について、例えば、米国仮特許出願第2006/0025664号、Siegel、P.H.、IEEE Trans. Microwave Theory and Techniques、2004;52(10):2438− 2447;Huoら、IEEE Trans. Biomed. Eng. 2004;51(7):1089− 1094も参照)。
【0010】
したがって、哺乳類の体内の分析物(例えば、グルコース)の濃度などの、生理学的パラメータを測定する又は特徴決定する、非侵襲的でありながら信頼できる方法及び装置が必要とされている。
【発明の開示】
【0011】
本発明は、生理学的パラメータを特徴決定するための方法及び装置を提供する。一応用において、前記方法は、一つ以上の非侵襲的センサーを用いて患者データを収集するが、環境条件についてのデータを収集することもある。前記患者データの少なくとも一部は、前記生理学的パラメータと直接的関係を有し、即ち、前記生理学的パラメータの大きさは、ノイズ、干渉、又は環境や患者による他の影響によってマスキングされることもあるが、前記生理学的パラメータにおける変化は、データセットに反映される。前記直接患者データは、好ましくは生理学的パラメータとほぼ線形関係を有するが、そうでない場合は、前記患者データは、アルゴリズム、テーブル、又はその他の調整処理によって線形化される。これらの線形化処理は、あらかじめ定義されていてもよく、適応的に学習又は調整してもよい。前記線形化されたデータにブラインド信号源処理を適用することにより、分離された信号が生成され、前記生理学的パラメータに付随する信号が同定される。前記同定された信号は、スケーリングされるか、さらに処理され、特徴決定の結果が提示される。ヒトにおける使用に関して前記方法及び装置を説明したが、これらは動物において好適に使用してもよい。
【0012】
本発明は、一例において、グルコース・モニター装置及び方法を提供する。前記グルコース・モニターは、グルコース濃度と直接的関係を有するデータの第1セットを非侵襲的に収集する。データの第1セットは、例えば、RFインピーダンス・データ又は赤外線データであってもよいが、その他多くの種類のデータも使用できる。前記グルコース・モニターはまた、患者又は環境からその他のデータをいくつか収集し、そのデータを使用してデータの第1セットをより効率的に処理する。前記その他のデータは、例えば、皮膚温度、皮膚湿度、非侵襲的センサーと皮膚の間の圧力、または室温であってもよい。前記データの第1セットは、例えば、帯域通過フィルターを介する処理によって、ノイズを減少してから、予め定義されたアルゴリズム又はテーブルに従って線形化されてもよい。一部の例において、線形化処理は、学習することなどによる適応的なものであってもよい。前記線形化されたデータは、グルコース信号が同定される独立成分分析処理に渡される。その後、前記グルコース信号は、例えば、他のデータに従ってスケーリングされ、現在のグルコース濃度として患者に提示される。一例において、前記グルコース装置は、携帯型及び電池式の装置である。他の例では、前記グルコース・モニターは、事務所や病院内で使用するための計器である。
【0013】
有利には、これらの新規の特徴決定方法及び装置は、変動する患者及び環境条件に対して比較的に非感受性である。このおかげで、前記方法及び過程によって、生理学的パラメータをより正確に特徴づけられ、より幅広い範囲の応用において確実な特徴決定が可能になる。一部の応用においては、前記方法及び装置により、完全に非侵襲的な測定が可能になり、患者は疼痛及び恐怖を回避できる。例えば、この方法を使用するグルコース・モニターは完全に非侵襲的であり、針を刺すことによる疼痛やその結果生じる血液による汚れを回避できる。さらに、前記グルコース・モニターは患者条件又は環境条件に対して比較的に非感受性であるため、糖尿病患者は、広範囲の環境においてグルコース・モニターを安心して使うことができる。例えば、前記グルコース・モニターは、患者が寒かろうと、暖かろうと、安静にしていようと、活動していようと、暖かい部屋にいようと、寒い部屋にいようと、高湿度の場所にいようと、乾燥した場所にいようと、朝測定しようと、遅くに測定しようと関係なく、良好な測定値を提示し得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明による対象の生理学的パラメータを特徴決定する過程を示すフローチャートである。
【図2】本発明による対象の生理学的パラメータを特徴決定する過程を示すフローチャートである。
【図3】本発明による血中分析物の濃度レベルを推定する過程を示すフローチャートである。
【図4】本発明による血中分析物の濃度レベルを推定する装置のコンポーネントを示すブロック図である。
【図5】図4の算出部のサブコンポーネントを示すブロック図である。
【図6】本発明によるヒトにおけるグルコース濃度を特徴決定する過程を示すフローチャートである。
【図7】本発明によるグルコースを特徴決定する過程を用いた一実施例のデータ及び結果を示すグラフである。
【図8】本発明によるグルコースを特徴決定する過程を用いた一実施例のデータ及び結果を示すグラフである。
【図9】本発明によるグルコースを特徴決定する過程を用いた一実施例のデータ及び結果を示すグラフである。
【図10】本発明による対象の生理学的パラメータを特徴決定する過程を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0015】
下記の詳細な説明は、本発明の特定の実施態様の一部に関するものであるが、本発明は、請求の範囲によって定義かつ網羅されるように、多数の異なった様態で実施することができる。本説明では、全体を通して、図面における同一の部分は同一の符号によって示される。
【0016】
一般に、開示する実施態様では、非侵襲的データを用いて対象の生理学的パラメータを特徴決定することができる処理及び関連する装置について説明する。ほとんどの実施例において、前記処理及び装置は、非侵襲的データのみを用いて前記パラメータを特徴づけることができるが、他の実施例についても記述する。また、対象のパラメータを1つ以上選択してもよく、対象のパラメータの選択は静的であっても適応的であってもよく、手動で選んでも自動的に選んでもよい。一部の実施態様において、本発明は、血中分析物の濃度レベルを非侵襲的に推定する方法又は装置に関する。まず、血中分析物の濃度レベルに依存する少なくとも1つの変数及び/又は血中分析物の濃度レベルに依存しない少なくとも1つの変数を含んでもよい複数の変数を非侵襲的に測定してもよい。前記複数の変数は、非線形的に変換されてもよく、この変換されたデータを源分離方法に付してもよい。一部の実施態様において、前記血中分析物はグルコースである。
【0017】
定義
「生理学的パラメータ」及び「パラメータ」という表現は、被験者又は対象に関連する一つ以上の定量的な生理学的濃度及び/又は作用を決定するためにモニターし得る、生理学に関係する任意の値又は量あるいはデータを示すために適用される。ある対象の生理学的状態を示すための複数の生理学的パラメータは、ある時間間隔又は期間にわたって、またはある時点で、または連続的に、集合的にデータベースなどの保存又は測定されたパラメータの収集物に収集できる。例えば、測定したり示すことができる生理学的パラメータには、分析物、水和又は水分、脂肪又はリポース、心拍出量、呼吸、酸素飽和、血圧、癌などの細胞特性又は組織特性、温度などの生理学関係の情報が含まれる。一般表現の「パラメータ」も、周囲の情報(例えば、室温又は水分)などの生理学的パラメータを直接的又は間接的に作用又は影響し得る環境的な値又はデータのことをいう。「特性」という表現は一般的に「パラメータ」という表現と置き換えてもよい。
【0018】
「分析物」という表現は、分析できる生体液(例えば、血液又は尿液)中の物質又は化学成分のことをいう。一部の実施態様において、本発明の装置及び方法によって測定される分析物は、グルコースである。他の実施態様において、分析物は、乳酸塩、ピルビン酸塩、グルタミン酸塩、シュウ酸塩、Dアスパラギン酸塩、Lアミノ酸、Dアミノ酸、ガラクトース、サルコシン、尿酸塩、エタノール、リシン、コレステロール、グリセロール、ピルビン酸塩、コリン、アスコルビン酸塩、モノアミン酸化酵素、トリグリセリド及び尿酸、又はその他の電解質のうちの一種類以上である。
【0019】
「血中グルコース症状」という表現は、患者のグルコース濃度を変調することが望ましい状態のことをいう。一部の実施態様において、血中グルコース症状は、血中グルコース濃度を低下させることが望ましい状態を含む。例えば、高い血中グルコース濃度は血中グルコース症状とすることができる。他の実施態様において、血中グルコース症状は、血中グルコース濃度をある特定の値又はある特定の範囲内に保持することが望ましい状態を含む。さらに他の実施態様において、血中グルコース症状は血中グルコース濃度を上昇させることが望ましい状態を含む。一部の実施態様において、本明細書に記載する方法及び組成物は、まず血中グルコース濃度を低下させ、その後、その血中グルコース濃度をある特定の値又はある範囲内に保持するために使用することができる。血中グルコース症状は、患者が血中グルコース症状を発現する危険性がある状態を含む。一実施態様において、インスリン耐性は血中グルコース症状である。他の実施態様において、糖尿病は血中グルコース症状である。
【0020】
グルコース恒常性(又は代謝)障害とは、血糖値が正常よりも高いが、糖尿病と確認される程高くない状態をいう。将来の糖尿病及び循環器疾患について危険因子として考えられるものには二種類ある。耐糖能異常(impaired glucose tolerance、IGT)は、二時間の経口糖負荷試験後のグルコース濃度が、140〜199 mg/dlになると発生する。IGTは、2型糖尿病の主要危険因子であり、成人の約11%、つまり約2千万人のアメリカ人が耐糖能異常である。65歳以上の約40〜45%が、2型糖尿病かIGTのいずれかにかかっている。空腹時血糖異常(Impaired fasting glucose、IFG)は、8時間の空腹時血漿グルコース試験後のグルコース濃度が、110〜126 mg/dlになると発生する。
【0021】
「インスリン」という表現は、哺乳類の膵臓によって天然に生産され(ランゲルハンス島のベータ細胞によって分泌される)、筋肉や脂肪組織によるグルコースの取り込みを刺激することによって血中に存在するグルコースの量を制御するポリペプチド・ホルモン(分子量は約5700)のことをいう。インスリンは、プレプロインシュリン及びプロインスリンなどの数種類の状態で存在し得る。また、「インスリン」という表現は、ヒューマリン(登録商標)(イーライリリーより市販されている)などの合成版のことも指す。
【0022】
「インスリン耐性」という表現は、生体の組織が正常にインスリンに応答しなくなる状態または疾患のことをいう。インスリン耐性は、内生インスリン及びグルコースの濃度が病的に高くなって発症し、哺乳類に、ある程度の耐糖能異常、血漿中トリグリセリド及び低密度リポタンパク質コレステロール(LDL)濃度の増加、高密度リポタンパク質コレステロール(HDL)濃度の低下、高血圧、高尿酸血症、血漿中の線溶活性の低下、循環器疾患及びアテローム性動脈硬化症の増加など、一群の異常を発生しやすくさせる(Reaven、 G.M.Physiol Rev.75(3):473−86、1995)。非代償性インスリン耐性は、インシュリン非依存性糖尿病(non−insulin dependent diabetes mellitus、NIDDM)の根本原因であると広く考えられている。高インスリン血症とは、膵臓細胞によるインスリンの過剰産生のことをいう。高インスリン血症は、多くの場合、インスリンの作用に対する細胞耐性として定義される状態であるインスリン耐性の結果として発生する。上記のごとく定義されるインスリン耐性は、正常量のインスリンが、正常以下の生物学的(代謝性)応答を発現する状態・疾患である。インスリン治療を受けている糖尿病の患者においては、治療量のインスリンが、正常人におけるインスリン分泌速度を超えると、インスリン耐性があるとみなされる。
【0023】
「非侵襲的」という表現は、体表面の完全性を壊す必要がないことを意味する。血中分析物の濃度レベルの非侵襲的推定技法では、例えば、分析のために血液を収集するのに皮膚を壊すこと、すなわち、真皮を穿通する必要がない。しかしながら、再も外側の皮膚層である表皮、特に角質層を穿通しても未だ非侵襲的であり、望ましいこともある。
【0024】
生理学的パラメータの非侵襲的特徴決定
【0025】
本出願でさらに説明するように、二つ以上の患者条件又は環境条件の非侵襲的測定によって収集したデータを用いて、対象の生理学的パラメータ(複数も可)を特徴決定してもよい。前記測定は、多数の異種的な物理的性質の各々から収集したデータ、または単一の物理的性質の多数の異種測定から収集したデータを含んでいてもよい。そのような対象のパラメータには、血中分析物の情報(例えば、酸素飽和度、血色素、グルコース及び乳酸の濃度などの血液化学)をモニター又は測定すること、身体組成(脂質又は脂肪の組成・含量など)、細胞・組織の特徴決定又は生理学的変化、水和及び液量、身体質量又は身体含水量、血流又は血圧、脈拍情報、又は心血管情報が含まれる。このような情報は、本明細書にさらに説明するように、特定のものでも一般的なものでもよく、収集されても保存されてもよい。
【0026】
一部の例では、公開される特徴決定処理は、対象の生理学的パラメータを、そのパラメータにおける変化またはそのパラメータに対する変化の総合的な影響を測定することから導出させると、改善された結果を得ることができる場合もあるという事実を利用している。前記対象の生理学的パラメータは、生理学的特性又は環境特性の多数の異種測定から導出することができる。本文脈において、異種とは、特性が性質上物理的に異なっていることを意味する。前記測定は、同じパラメータからのものでも、別のパラメータからのものでもよい。例えば、別々の測定は、同じパラメータについて、異なった時間帯又は条件または様式から生じる場合があったり、別々の測定は、多数のパラメータから生じる場合もある。あるいは、前記測定は、これらの組み合わせとすることもできる。前記物理的性質は、それぞれが独立して測定可能であって、最初から明らかであったりそうでなかったりするが、好ましくは、対象の生理学的パラメータの特徴と認識可能な関係を有する。このようにして、物理的性質における変化による総合的な影響から、最終的な結果を予測してもよい。
【0027】
例えば、対象のパラメータは、異なった方法を用いたそのパラメータの測定から導出してもよい。かかる一例として、水和レベルにおける変化が、動物対象の光学的及び生体インピーダンス特性に同時に影響することがある。特定の水和レベルは、光学的及び生体インピーダンス特性の値の特定な組み合わせを示す。水和レベルをこれらの特性に対する総合的な作用から導出することにより、これらの特性のいずれかのみから得られるものよりも、あるいは、例えば環境変化によって、システムに導入された不正確さを単に補正しようとするよりも、より正確な結果を得ることができる。なお、本応用においては、動物という表現は、ヒト及び非ヒト動物の両方を指している。
【0028】
あるいは、対象のパラメータは、例えば、様々な条件または時間におけるそのパラメータの測定値から導出することができる。例えば、深さ選択的な皮膚インピーダンス分光器は、皮膚の様々な領域や層にわたってインピーダンスを測定するのに理想的である。生体組織の電気インピーダンスは、様々な設定及び周波数によって変動する。変動するエネルギーまたは周波数の間隔などの様々な設定には、様々な種類の情報が含まれている。例えば、低周波数でのインピーダンスは細胞外環境によって、また、高周波数でのインピーダンスは細胞および細胞膜の構造及び形状に影響される(Foster & Schwan、Crit. Rev. Biamed. Eng.(1989)17:25−104。
【0029】
あるいは、例えば、いくつかの独立パラメータの測定を併用して、特異性が高い複合測定を実現することが望ましい場合もある。例えば、生体インピーダンス情報を利用する方法は、どの血中分析物にも特異的ではなく、他の生物分子及び電解質の存在に依存する。さらに、インピーダンス値は、温度及び分析される組織の体積に大きく依存する。しかしながら、インピーダンスと、皮膚温度、汗の生成などの水和のモニタリング、血流などの心血管情報、灌流、並びに他の生理学的値などの他のグルコース依存性生理学的変数とを組み合わせれば、所望の分析物情報の特異度を上げられる場合もある。
【0030】
対象のパラメータを適切かつ確実に特徴決定するには、測定可能な物理的性質と対象の生理学的パラメータとの関係を定義しなくてはならない。これは、例えば、実験的に測定を行い、かかる情報を用いて、結果の特定の組み合わせからパラメータの調整を得ること、あるいは、動物生理の数学的モデルを用いて、前記生理学的パラメータの変化が特性に及ぼす作用を予測することによって達成することができる(例えば、T.Forst,T.ら、Diabetes Tech.&Ther.2006、8(1):94−101を参照)。他の例においては、アルゴリズム関数を定義してもよい。換言すれば、不明のパラメータについての相補情報を得るためには、身体パラメータについての独立した情報源を同時に使用してもよい。一実施態様では、独立した情報源として測定を行う。
【0031】
より具体的な例においては、記載される特徴決定処理は、被験者における対象の生理学的パラメータを非侵襲的に決定する方法を提供する。前記処理では、被験者の少なくとも二つの異種的な物理的性質を表す測定データが検出かつ生成され、それぞれの異種的な物理的性質は、対象の生理学的パラメータに依存して変動する値を有し、独立してそのパラメータを測定するのに使用できる。前記測定データは、対象の生理学的パラメータが物理的性質に及ぼす総合的な作用から前記生理学的パラメータを分離、認識、及び特徴決定するために処理される。なお、本文脈においては、更なる処理に適した、性質を表す電気信号が作成されるようにして、測定データを生成してもよい。これら(の信号)は、例えば、脈拍数など、何らかの物理的現象からの信号(複数も可)を能動的に生成するトランスデューサ(複数も可)によって生成されてもよい。あるいは、前記信号は、体内から発信されるもの、例えば、単に受動ピックアップによって検出されるECG信号であってもよい。
【0032】
処理中、測定可能な成分を二つ以上の信号から抽出してもよい。例えば、複素生体インピーダンスの場合、最終結果は、総合インピーダンス、総合位相及びインピーダンス変化の総合最大速度などの値に依存することもある。
【0033】
他の側面において、患者の生理学的パラメータを決定する、または特徴決定する非侵襲的装置が提供される。前記装置またはデバイスは、被験者の異種的な物理的性質を表す測定信号を生成及び/又は検出するセンサーを少なくとも二つ有し、それぞれの異種的な物理的性質は、対象の生理学的パラメータに依存して変動する値を有し、独立してそのパラメータを測定するのに使用できる。対象の生理学的パラメータが物理的性質に及ぼす総合的な作用から、前記生理学的パラメータを分離、同定及び特徴決定するように、プロセッサを構成する。前記プロセッサは、メモリに保存された適応データから、又は数学的アルゴリズム又は動物(ヒト又は非ヒト)生理学の数学的モデルから前記生理学的パラメータを導出させてもよい。なお、前記センサーは、光学的、力学的、又は電気的、デジタル式又はアナログ式などの様式であってもよい。好ましい実施態様において、センサーのうち少なくとも1つは、RF又は生体インピーダンス信号を提供する。特徴決定することができる典型的な対象の生理学的パラメータとして、水、電解質、脂肪、分析物、グルコース、血色素、乳酸、心拍出、呼吸、酸素飽和度、血圧、脈拍などが挙げられる。
【0034】
本明細書において開示される実施例は、誘電特性(例えば、生体インピーダンス及び/又は生体・静電容量情報)、灌流情報、温度、水和情報、心血管情報などの生理学情報などの一見異種的な生理学的パラメータであって、そのそれぞれが、それ自体では特定かつ選択的な情報を提供し得ないものを組み合わせて、心拍出、血圧、身体成分(例えば体の局所的及び全体的な水分、脂肪及び電解質)、および酸素飽和、血色素、グルコース及び乳酸濃度などの血液化学などの患者の生理の特定の側面を測定及び解析することによって、生体の生理学的パラメータの非侵襲的かつ正確な測定又は特徴決定を行う装置及び方法を提供する。異種的な源からの多数の入力の使用によって、単一源から、又は単に補正された単一源から得られるものよりも正確な結果が提供される。さらに、このような装置及び処理の方が、環境条件及び使用条件の変化による影響を受けないので、広範囲の用途及び環境において使用可能かつ実用的である。
【0035】
ここで、図1を参照して、生理学的パラメータを特徴決定する方法の例を説明する。特徴決定方法10は有意に、非侵襲性データを用いて生理学的パラメータの特徴決定ができる、容易かつ着実な処理を可能にする。使用例の一部においては、これによって、グルコース濃度などの血中分析物情報を非侵襲的に測定及びモニターする簡易携帯型装置が可能になる。このような装置であれば、精度は向上し、環境条件に対する感受性は低下するであろう。このようにすれば、患者は、グルコース濃度などの生理学的パラメータを容易かつ痛みなく測定及びモニターすることができる。方法10によってこの処理が患者により便利なものになれば、患者が生理学的パラメータをより一貫してモニターし、それによって治療の有効性が増加し、全体的な生活の質が改善する可能性が高い。
【0036】
特徴決定方法10は、一つ以上の生理学的パラメータを特徴決定し得るが、多くの場合、一つの特定の生理学的パラメータに集中する。前記生理学的パラメータとして、血中分析物のレベル、組織異常の検出、癌の検出、心拍または心組織における問題、脂肪成分、組織特徴決定、血流圧の特徴決定、電解質の濃度またはレベル、血液含有または血色素レベル、乳酸レベル、酸素飽和度情報、及び呼吸指標が挙げられる。方法10を用いて他の生理学的パラメータを特徴決定してもよいことは言うまでもない。ブロック12に示す装置のために、前記対象の生理学的パラメータを選択する。一例において、前記生理学的パラメータはグルコース濃度であってもよいが、追加の、もしくは他の生理学的対象を選択してもよい。
【0037】
ブロック14は、患者からのデータ収集を示す。通常、非侵襲性センサーを用いる患者についてデータを収集する。前記センサーは、例えば、電気的、RF又はその他の電磁的、光学的、力学的センサーであってもよく、単一の装置に統合されていても、相互接続された多数の装置に分離されていてもよい。一部の例では、侵襲的センサーを用いて他の患者データを収集してもよい。例えば、一部の血液情報、流量情報、または血圧情報を侵襲的に得てもよい。また、一部のデータを収集して実時間的に処理してもよく、その一方で、他のデータを収集して、後で処理するために保存してもよい。このようにすると、データをある時に収集して、また別の時に又は他の場所で使用して特徴決定の結果を提供できる。一部の例では、一種類のみの患者データを収集してもよく、他の過程では多種類のデータを収集してもよい。例えば、患者についてRFインピーダンス・データ、並びに体温データを取り込むことが有用なこともある。患者データを収集するセンサーは公知であり、本明細書では詳細に説明しない。
【0038】
ブロック14において患者から収集したデータは、一般に二種類に分別される。そのうち一方では、患者から収集したデータのセットのうち少なくとも1つは、対象の生理学的パラメータと既知である直接的な関係19を有する。これは、例えば、対象の生理学的パラメータの変化が、そのデータセットにおいて変化を引き起こすことを意味する。前記データのセットには、データセットの最終的な値に影響を及ぼす他の影響があり得るが、これらの他の影響は、特徴決定処理10の他の側面において除去されるか低減される。他方では、前記患者データは間接的情報18を含んでいてもよい。間接的情報18は、対象の生理学的パラメータの値を直接測定するために使用されるのではなく、特徴決定処理10の他の側面で、同定関数、フィルタリング関数、またはスケーリング関数を提供するために使用される。これらの間接的関数は、環境的な影響を最小化するため、また、患者の特定の現状を考慮するためにも有用である。例えば、一部の生理学的パラメータは、患者の体温によって自然に高かったり低かったりすることがある。従って、体温を測定しても対象の生理学的パラメータのレベルを直接示すことにはならないが、前記体温を利用することで、規格化処理、較正処理又はスケーリング処理を提供し、より有意で一貫性ある情報が提供される。
【0039】
特徴決定処理10はさらに、ブロック20に示す環境条件の測定を可能にする。これらの環境条件も、環境条件に従ってフィルタリング処理、同定処理、又はスケーリング処理を提供するために有用な間接的情報を提供する。例えば、一部の生理学的パラメータは、時刻によって自然に高かったり低かったりすることがある。特徴決定処理10は、時刻を考慮することによって、規格化処理又はスケーリング処理を提供し、より有意で一貫性ある情報を提供する。なお、前記環境条件は、患者データと共に測定してもよく、又は他のセンサー及び他の装置に由来してもよい。前記環境データ20及び前記間接的データ18は、患者データ19を前処理するデータ処理21を誘導するために使用してもよい。方法21の前処理は、比較的単純なフィルタリング処理であってもよく、より高度な適応調整処理として構成されてもよい。しかし、殆どの場合、前処理21は必要なく、もし使用されるとしても、比較的単純な前処理方法である。特徴決定処理10を再も有効に活用するには、患者データ19が、最小の情報損失で後続処理工程に提供されることが望ましい。従って、PCAなどの、より複雑なフィルタリング・アルゴリズム及び処理アルゴリズムの多くは、それらの損失作用が大きいため、望ましくないこともある。
【0040】
対象の生理学的パラメータと、患者から収集したデータ19との間の関係は、過去の情報又は実験室試験によって把握されている。一部の例において、前記関係はほぼ線形でありうるが、多くの場合、前記関係は非線形である。特徴決定処理10における後続工程の有効性を向上させるには、患者データ19が、対象の生理学的パラメータとほぼ線形関係を有することが望ましい。従って、患者データが、対象の生理学的パラメータとほぼ線形関係を有することが分かれば、前記データ19は分離処理25に渡される。しかし、前記患者データ19が、より非線形的な関係を有していれば、前記患者データ19は、線形化処理23に渡される。線形化処理23において、前記患者データ19は、組み込まれている生理学対象のデータが、前記生理学的パラメータとより線形的関係を有するように、スケーリングされるか、他の方法で調整される。前記線形化処理は、アルゴリズムの形で、参照テーブルとして、又は他のモデル化処理又はスケーリング処理で実行してもよい。患者データが、直接的にブロック14から受け取られようと、先ず線形化ブロック23で処理されようと、分離ブロック25で受け取られたデータ24は、前記データと前記対象の生理学的パラメータとの間でほぼ線形関係を有する。
【0041】
ブロック25において、線形化されたデータ24は、ブラインド信号源(blind signal source、BSS)分離処理を用いて処理される。一例において、前記BSSは、独立成分分析(Independent Component Analysis、ICA)処理である。他の信号分離処理を使用してもよいことは言うまでもない。前記BSS処理は、線形化されたデータ24を別々の独立信号源に分離するために使用され、信号のうち一つが、対象の生理学的パラメータに直接関連している。独立成分分析(Independent Component Analysis、ICA)とは、非ガウス源信号が互いに統計的独立していることを前提として、多変量信号を相加性副成分に分離する計算法である。これは、ブラインド信号源分離法の特殊な場合である。この統計的方法は、推定成分の統計的独立を最大化することによって、独立成分(因子、潜伏変数又は源としても知られている)を求める。ICAは、信号から独立成分の線形部分空間を同定することができる。その簡易化された形では、ICAは、「非混合化用」重み行列を混合信号に対して操作して、例えば行列を混合信号で乗算して、分離された信号を生成する。前記重みは、初期値が割り当てられた後、調整されることにより、情報冗長性を最小化するために信号の結合エントロピーを極大化する。この重み調整及びエントロピー増加処理は、信号の情報冗長性が最小に低減するまで繰り返される。より一般的には、信号分離法を適用することによって、互いに独立している線形成分を同定することができる。本発明の信号分離法は、高いノイズと混合している多次元観測信号から元の信号を抽出することができるので、所望の生理学的パラメータと高度な相関性を示す明確な信号を抽出又は分離することができる。ICA用のアルゴリズムとして、infomax、FastICA及びJADEが挙げられるが、他にも多くある。
【0042】
独立信号源が一旦ブロック25において同定されると、特定の対象の信号がブロック27において同定される。前記対象の信号は、その独自の特性又は他の信号との関係によって同定されてもよいし、間接的情報18又は測定した環境条件などの他のデータとの関係によって同定されてもよい。前記対象の信号が一旦同定されたら、ブロック32に示すように、一貫性ある規格化結果を提供するようにスケーリングされてもよい。スケーリングは、間接的情報又は環境条件情報20の使用によって補助してもよい。スケーリング済みの結果が一旦決定されたら、ブロック34に示すように提示されてもよい。前記結果は、画像ディスプレイ上に表示しても、印刷しても、他の装置に伝達しても、警告を設定するために使用してもよい。特定の種類の提示は、用途の必要性に応じて調整してもよい。
【0043】
ここで図2を参照して、特徴決定方法50の例を説明する。特徴決定方法50は、多様な生理学的パラメータを特徴決定するために使用してもよい。さらに特徴決定処理50は、単一の生理学的パラメータを特徴決定するために使用してもよいし、多数の生理学的パラメータを特徴決定するために使用してもよい。特徴決定処理50は一般に、4つの工程を有する。非侵襲的技法を使用してデータを患者及び環境から収集する第1の工程52、収集されたデータと対象の生理学的パラメータの間にほぼ線形の関係を与える第2の工程54、対象の生理学的パラメータを示すデータセットから信号を同定する第3の工程56、及び、提示するための処理において前記選択された信号をスケーリングする第4の工程58。これらの工程によって、特徴決定処理50は、変動する患者又は環境条件下でも、対象の生理学的パラメータの高度に正確な特徴決定を提供することができる。このようにして処理50は、以前の装置や処理よりも幅広い範囲の用途及び環境で実施することもでき、高い信頼性と少ない疼痛で使用することができる。
【0044】
工程52において、患者61から又は環境63から非侵襲性データを収集する。通常、データは、非侵襲性皮膚表面センサーを用いて患者から収集する。これらのセンサーは、例えば、電気的特性、光学的特性、温度特性、又は湿度特性を測定するために使用してもよい。これらの特性には、表面特性を測定するものもあれば、根底にある組織又は体液の特性を示すものもある。センサーは、温度などの既存の特性を測定するように構成されているセンサーもあれば、能動的に刺激を与えるセンサーもある。例えば、RFインピーダンスを測定するためにRF周波数信号を提供するセンサーもあれば、光学的特性を測定するために光情報を提供するセンサーもある。つまり、広範囲の非侵襲性センサーを用いることができる。患者から収集したデータ61のうち少なくとも一部は、矢印264で示すように、対象の生理学的パラメータと既知の直接的関係を有する情報を有する。これは、例えば、対象の生理学的パラメータの変化が、そのデータのセットにおいて変化を引き起こすことを意味する。患者及び環境からの他のデータは、矢印62で示すように間接的関係を有していてもよい。対象の生理学的パラメータと既知の関係を有するデータ64は、同定工程56で使用する前に、ほぼ線形の関係を有していることが好ましい。従って、工程66において、前記対象のデータは、対象のパラメータと線形関係を有しているか、非線形関係を有しているかによって分類してもよい。一部の例において、前記の決定は予め定義されていてもよく、他の例では、決定は前処理工程中に行ってもよい。前記データが線形関係を有していれば、前記データは、同定工程56に渡される。前記データが非線形であれば、前記データは、アルゴリズム、テーブル、モデル化、又は他のスケーリング処理65に通され、前記データはより線形関係に調整される。この線形化されたデータは、その後、同定工程56に渡される。
【0045】
ブロック56において、前記データは、ブロック67に示すように、まず独立信号源に分離された後、対象の生理学的パラメータに付随する信号がブロック69において同定される。通常、前記分離処理は、ブラインド信号源処理、例えば、独立成分分析であるが、他の信号分離処理が適用されることもある。適切な信号が同定されると、前記信号は通常、間接的情報62を使用してスケーリング71される。その後、前記スケーリングされた結果は、ブロック73に示すように提示される。
【0046】
図3は、血中分析物の濃度レベルを推定する処理100の例を説明するフローチャートである。実施態様によって、さらに工程が追加されたり、他の工程が除去されたり、あるいは工程の順序が変更されたりすることもある。
【0047】
処理100の工程105を開始点として、患者データを得てもよい。前記患者データは、センサーを使用して収集してもよく、力学的、電気的、又は光学的センサーのいずれであってもよい。前記データは、他の入力手段及び/又は測定手段によって取得してもよく、また、前記患者データは、一つ以上の装置から取得してもよい。前記複数の特性は、好ましくは非侵襲的に測定する。好ましい実施態様において、多数の物理的性質を表すデータはほとんど同時に測定される。他の好ましい実施態様では、各物理的性質のデータは順次又は経時的に測定される。一部の実施態様において、非侵襲的測定を行うのとほぼ同時に侵襲的な測定を行うことはない。一部の実施態様において、後でより詳細に説明するように、侵襲的測定特性及び非侵襲的測定特性の両方を最初に測定し、収集されたデータとの関係及び血中分析物の濃度レベルとの関係を決定する。前記物理的特性は、さらに処理するのに適した特性を表す、任意の方法で生成された任意の信号を使用して測定してもよい。これらは、例えば、ある物理的現象から信号を能動的に生成して記録するトランスデューサによって生成することができる。あるいは、前記信号は、起源が体内にあって、能動ピックアップ又は受動ピックアップによって検出されるということもありえる。
【0048】
一部の実施態様において、測定値物理的特性のうち少なくとも1つは、血中分析物の濃度レベルに依存する。前記物理的特性のうち一つ以上が、患者に関連していてもよい。前記物理的性質のうち一つ以上が、誘電率測定を用いた測定値であってもよい。前記誘電率測定は、インピーダンス分光法測定値であってもよい。前記インピーダンス測定値は、ラジオ周波数(radio−frequency、RF)又は生体インピーダンスのインピーダンス測定値であってもよい。前記物理的特性のうち一つ以上は、光学センサー及び検出器(例えば、IR、ドップラー、反射率、ラマン、偏光、蛍光など)を使用して測定してもよい。前記物理的特性のうち一つ以上は、静電容量変数を使用して測定してもよい。前記物理的特性のうち一つ以上は、音声又は脈波測定を使用して測定してもよい。前記物理的特性のうち一つ以上は、電流変数を使用して測定してもよい。前記物理的特性のうち一つ以上は、画像法を使用して測定してもよい。前記物理的性質特性のうち一つ以上は、電磁測定を使用して測定してもよい。当業者であれば、かかる他の方法は既知であろう。前記物理的特性は、患者の皮膚に及び/又は皮膚の上に設置した装置で測定してもよく、場合によっては、インプラントなどの侵襲的装置を含んでもよい。一実施態様においては、このような測定を組み合わせることができる。
【0049】
一部の実施態様において、患者データの種類のうち少なくとも1種類は、血中分析物の濃度レベルに直接依存しない。いかなる特定の理論にも拘束されることを望むものではないが、血中分析物の濃度レベルに対して非感受性の患者データでも、前記濃度レベルに対して感受性を有する他の物理的特性に影響し得るので、前記推定に役立つこともある。かかる物理的特性として、温度(例えば、周囲、皮膚又は内部)、汗生成などの水分、灌流又は血流、内部又は外部の圧力(例えば、血圧又は装置の圧力)、血中酸素測定又は脈拍、並びにECG値又はEEG値が挙げられる。一部の実施態様において、血中分析物の濃度レベルに直接依存しない患者データは、測定せずに推定する。例えば、室温は、おおよそ知られていることもあるので、測定せず、推定してもよい。測定値データセットのうち一つ以上が、患者の体温など、患者に関連しているものであってもよい。測定したデータセットのうち一つ以上が、室温又は周囲温度など、環境に関連しているものであってもよい。例えば、ブロック108は、時刻、湿度、温度、周辺光などの環境データを収集してもよいことを示す。一部の実施態様において、測定したデータセットのうち一つ以上が時刻に関連しているが、他の実施態様においては、測定したデータセットのいずれも時刻に関連していない。一部の実施態様において、一つの血中分析物の濃度レベルは、全体的に他の血中分析物の濃度レベルに依存しているものもあれば、日常的な変動には影響されないものもある。かかる概念の例として、糖尿病患者は高い血圧を有する可能性が大きいが、患者の瞬時のグルコース濃度レベルを知るのに、血圧の測定値では役に立たないということもある。
【0050】
一実施態様において、RFインピーダンス測定データを患者データとして収集する。生体組織の電気インピーダンスは、印加する周波数、電流又は電位信号によって変化するため、前記インピーダンス値を測定して収集してもよい。異なった周波数間隔には、異なった種類の情報が含まれる。例えば、低い周波数でのインピーダンスは、細胞外環境に、高い周波数でのインピーダンスは、細胞及び細胞膜の構造や形状に影響される。インピーダンス・スペクトルにおいて、この情報は、周波数全体に拡散して広がり、重複している。また、前記インピーダンスは、例えば、交流電流及び/又は電圧及び直流電流及び/又は電圧の両方などの、外部電力からのエネルギー交換より生成することもできる。前記交流電流及び/又は電圧は、交代する周波数又は周波数の範囲を含むことができる。血液、組織又は生体における電気的変化を感知する、インピーダンス分光法に基づくセンサーを開発するためには、適切な周波数を選ぶ必要がある。例えば、グルコース変動は、10 Hz〜50 GHz、好ましくは1 KHz〜100 MHzの範囲で選択することができる。腫瘍検出などの他の組織特性の変化の測定は、1 Hzほどの低さから50 GHz、好ましくは10 Hz〜200 KHzの範囲で選択することができる。
【0051】
前記測定したデータセットは、患者の皮膚温度、患者の体温又は周囲温度、患者の皮膚水分、患者の血流又は血圧又はその他の血管活動、患者の皮膚・組織の水和、ECG変数、EEG変数、酸素飽和度変数、気温、湿度、気圧、皮膚と装置間の圧力変数、及び装置の移動変数のうち一つ以上を含むが、これらに限定されない、他の生理学的データを含んでもよい。
異なったセンサー及び類似のセンサーから複数の測定を行うことが好ましい。
【0052】
前処理
処理100の工程110では、一つ以上のデータセットが前処理される。ここで使用される前処理には、信号分離処理120用の入力データ(信号又は情報)の用意が含まれる。一部の実施態様において、工程110は処理100に含まれていない。前記一つ以上のデータセットは、測定した変数及び/又は入力変数であってもよい。前記前処理は、関連情報が失われないような、同定、分類、フィルタリングリング、変換、較正、再サンプリング、平滑化、変換、正規化、選択、登録、量子化、及び他の同様の処理を含む種々の処理を、個別で又は組み合わせて含んでもよい。前記データは、関連する、又は関連し得るなるべく多くの情報を保持するために、なるべく多くの情報を、例えば、未加工で保持することが好ましい。例えば、主成分分析法(principal components analysis、PCA)は、多次元的データセットを分析するために低次元に縮減することによって、データセットを単純化する技法である。かかる工程は、処理を単純化するが、重要な又は潜在的に重要な情報が、永久的に失われてしまう。前処理は、各データセット又はデータの集合セットに対して実施してもよいが、好ましくは、前処理工程による出力成分の数が入力成分と同数になるようにする。
【0053】
好ましくは、前記前処理工程110には、入力情報の同定及び/又は分類、さらに前処理が必要かどうかの決定を含む。入力データセットを、非活性・静的・空の情報、反復、非線形性などの特徴として同定する情報があれば、処理が向上するだろう。フィルタリングには、非関連入力の除去などの、各データ信号又は信号の集合に対するフィルターを含めることができる。前処理は、静的でも適応的でもよい。例えば、分離信号の出力が、前送り又は逆送りループとして、前処理工程に影響してもよいし、前記フィルターを予備知識又は経験的データの取得から学習した設計されたフィルターとしてもよい。また、前処理は、二つ以上の測定の組み合わせを含んでもよい。例えば、二つ以上のインピーダンス測定値が同一である場合、組み合わせて単一の変数としてもよい。
【0054】
非線形変換
処理110の工程115で、一つ又はデータセットがもし同定された時は、非線形的に変換される。前記非線形変換は、例えば、非線形フィルタリング、参照テーブル、又はアルゴリズムであってもよい。一部の実施態様において、血中分析物の濃度レベルに依存する一つ以上のデータセットは非線形的に変換されるが、血中分析物の濃度レベルに依存しないデータセットはいずれも非線形的に変換されない。例えば、RFインピーダンスの測定から導出されるデータセットは線形化処理を受けられるが、室温に関するデータは受けられない。一部の実施態様において、血中分析物の濃度レベルに依存しない一つ以上のデータセットは非線形的に変換されるが、血中分析物の濃度レベルに依存する変数は非線形的に変換されない。一部の実施態様において、血中分析物の濃度レベルに依存する一つ以上のデータセット及び血中分析物の濃度レベルに依存しない一つ以上のデータセットは両方とも非線形的に変換される。
【0055】
前記非線形変換は、単変量変換、多項式変換、例えばf(x)=a・xb+c、三角法変換、例えばf(x)=cosh(x)、指数関数型変換、例えばf(x)=1/(l+exp(−x))、対数変換、例えばf(x)=log(x)、などを限定なしで含めた、種々の変換であってよい。多数の変数に非線形変換を適用する場合、異なった、又は同一の非線形変換が前記変数に適用され得る。
【0056】
特定の非線形変換は、データセット又は物理的特性と他のデータセットの既知の関係、あるいはデータセットと血中分析物の濃度レベルなどの既知の生理学的パラメータとの既知の関係によって決定してもよい。例えば、インピーダンス・データセットと体温データセットの既知の関係を確立し、これらのデータセットの片方もしくは両方を、この既知の関係に基づいて非線形的に変換してもよい。一部の実施態様において、前記非線形関係は、テストデータを使用して確立する。前記テストデータには、非侵襲的に測定したデータセット及び相当する侵襲的に測定したデータセットの一組が含まれてもよい。一部の実施態様において、一つ以上の非侵襲的に測定したデータセットに対して種々の非線形変換を行い、推定された血中分析物の濃度レベルを、侵襲的に測定したデータセットと比較する。その後、最も正確な変換を、非侵襲的に測定したデータセットのみを測定するときに用いて血中分析物の濃度レベルを推定してもよい。一部の実施態様において、テストデータに基づいて非線形変換を推定するために、学習法則を用いる。前記学習法則は、制約されていてもよい。前記学習法則には、先験的な制約及び/又は導出された制約が含まれていてもよい。前記学習法則には、ニューラルネットワークが含まれていてもよい。
【0057】
一部の実施態様において、前記非線形変換工程115は信号分離工程120の前に行われるが、他の実施態様において、信号分離工程120は前記非線形変換工程115の前に行われる。一部の実施態様において、前記非線形変換工程115は前処理工程105の後に行われる。一部の実施態様において、前記非線形変換は少なくとも一部適応的である。
【0058】
信号源分離
一部の実施態様において、変数であるYから線形写像であるzを算出し、血中分析物の濃度レベルなどの所望の生理学的パラメータと前記線形写像であるzを相関させる。
【0059】
z = WY 式1
【0060】
前記変数であるYは、非線形なYの変換も含め、前処理されていてもよい非侵襲的に測定した変数を含んでもよい。前記写像は、個人的及び/又は環境的な変化に対して実質的に非感受性なこともあるが、目的はそのような変化に対して強固なシステムを有することである。従って、予測重みであるWは、種々の方法によって決定してもよい。例えば、テストデータを用いて、侵襲的に測定した血中分析物の濃度レベルと変数Yの間で直線回帰を確立してもよい。しかしながら、好ましくは、ニューラルネットワークなどの、より複雑な回帰モデルを用いて前記予測重みを決定することができる。
処理100の工程120で、信号源分離処理を用いて、独立信号を少なくとも二つのデータセットから分離する。一部の実施態様において、工程120は、処理100に含まれていない。一例において、信号分離処理(複数も可)120は、非直交変換法も含め、当業者に既知の信号分離又はブラインド信号源抽出(blind source extraction、BSE)技法を含む。各入力データセットは、入力信号の変換への経路とみなされる。前記信号分離法を入力信号の経路に適用することにより、多変量信号を分離して統計上実質的に独立した成分とする。特定の実装において、ブラインド信号源分離(BSS)もしくは独立成分分析(Independent Component Analysis、ICA)又は独立ベクター分析(Independent Vector Analysis、IVA)法は信号分離処理として用いられる。ブラインド信号源抽出(blind source extraction、BSE)は、高次元の観察信号から源信号の小さいサブセットを抽出する技法である。例えば、Cichocki, A.、 Amari, S.、適応ブラインド信号画像処理―学習アルゴリズムと応用[Adaptive Blind Signal and Image Processing : Learning Algorithms and Applications]、 John Wiley & Sons、 New York (2002); Cichocki, A.ら: 時間的に相関のある統計的に依存する音響信号のブラインド抽出 [A Blind Extraction of Temporally Correlated but Statistically Dependent Acoustic Signals]、第10回信号処理のニューラルネットワークワークショップ2000年IEEE信号処理ソサエティ会報[Proc. of the 2000 IEEE Signal Processing Society Workshop on Neural Networks for Signal Processing X](2000) 455-46; Smith, D.、 Lukasiak, J.、 Burnett, L:共同言語産出モデルを用いたブラインド音声分離 [Blind Speech Separation Using a Joint Model of Speech Production]、IEEE信号処理レター [IEEE Signal Processing Lett]. 12 (11) (2005) 784-787; Zhang,Z.-L.、 Yi, Z.: 時間的構造を有する特定の信号の着実な抽出[Robust Extraction of Specific Signals with Temporal Structure]、ニューロ・コンピューティング [Neuro computing] 69 (7-9) (2006) 888-893; Barros, A.K.、 Cichocki, A.:時間的構造を有する特定の信号の抽出[Extraction of Specific Signals with Temporal Structure]、ニューラル計算 [Neural Computation] 13 (9) (2001) 1995-2003; Cichocki, A.、 Thawonmas, R.:任意に分布されているが時間的に相関のある信号源の二次統計を用いたブラインド信号抽出用オンライン・アルゴリズム[Online Algorithm for Blind Signal Extraction of Arbitrarily Distributed, but Temporally Correlated Sources Using Second Order Statistics]、 ニューラル処理レター [Neural Processing Letters] 12 (2000) 91-98; Mandic, D.P.、 Cichocki, A.:動的構造を有する信号源のブラインド信号抽出用オンライン・アルゴリズム[An Online Algorithm for Blind Extraction of Sources with Different Dynamical Structures],第4回独立成分分析・ブラインド信号分離国際学会会報 [Proc. of the 4th Int. Conf. on Independent Component Analysis and Blind Signal Separation] (ICA 2003) (2003) 645-650; Liu、 W., Mandic、 D.P.、 Cichocki, A.:前傾予測器に基づいた新しいブラインド信号源抽出アルゴリズムのクラス [A Class of Novel Blind Source Extraction Algorithms Based on a Linear Predictor]、 Proc. of ISCAS 2005、 pp.3599-3602; Liu, W.、 Mandic, D.P.、Cichocki, A.:瞬時雑音混合のブラインド二次信号源抽出 [Blind Second-order Source Extraction of Instantaneous Noisy Mixtures]、 IEEE Trans. Circuits Syst. II 53 (9) (2006) 931-935を参照されたい。
【0061】
独立成分分析(Independent Component Analysis,ICA)とは、非ガウス源信号が互いに統計的に独立していることを前提として、多変量信号を相加性副成分に分離する計算法である。これは、ブラインド信号源分離法の特殊な例である。この統計的方法は、推定成分の統計的独立を最大化することによって、独立成分(因子、潜伏変数又は信号源としても知られている)を求める。ICAは、信号から独立成分の線形部分空間を同定することができる。その簡易化された形では、ICAは、「非混合化用」重み行列を混合信号に対して操作して、例えば行列を混合信号で乗算して、分離された信号を生成する。前記重みは、初期値が割り当てられた後、調整されることにより、情報冗長性を最小化するために信号の結合エントロピーが極大化する。この重み調整及びエントロピー増加処理は、信号の情報冗長性が最小に低減するまで繰り返される。信号Yに適用すると、前記ICA法は、信号が互いに独立している多くの部分空間を同定することもある。より一般的には、信号分離法を適用することによって、互いに独立している線形成分を同定することができる。本発明の信号分離法は、高いノイズと混合している多次元観測信号から元の信号を抽出することができるので、所望の生理学的パラメータと高度な相関性を示す明確な信号を抽出又は分離することができる。ICA用のアルゴリズムとして、infomax、FastICA及びJADEが挙げられるが、他にも多くある。
【0062】
処理120は、ICA処理を用いることもあるが、ICAの拡張も含め、他の信号分離処理を本開示に従って使用してもよい。分離を解決する多くの異なるアルゴリズムは、JADE (Cardoso & Souloumiac (1993) IKE proceedings−F, 140(6); SOBI (Belouchraniら (1997) 信号処理のIEEEトランザクション[IEEE transactions on signal processing] 45(2)); BLISS (Clarke, I.J. (1998) EUSIPCO 1998)); Fast ICA (Hyvarinen & Oja (1997) ニューラル処理[Neural Computation] 9:1483-92)など、より公知のアルゴリズムも含め、文献において記載されている。最も広く使われているアルゴリズム及び技法の概要は、ICA及びBSSに関する書籍及びその中の参考資料において記載されている(例えば、PCT 出願第WO 05/052848号及び第WO 03/073612号; Girolami, M.、独立成分分析のあゆみ [Advances in Independent Component Analysis]、 Springer (2006年12月); Stone, J.V.、独立成分分析―入門・導入 [Independent Component Analysis : A Tutorial Introduction]、 MIT Press (2004年9月); Roberts と Everson、 独立成分分析―原理と実践[Independent Component Analysis : Principles and Practice]、Cambridge University Press (2001年3月); Hyvarinen ら、独立成分分析 [Independent Component Analysis]、 第1版(Wiley-Interscience、2001年5月); Haykin、 Simon. 教師無し適応フィルタリング処理 [Unsupervised Adaptive Filtering]、 第1巻: ブラインド信号源分離[Blind Source Separation].Wiley-Interscience; (2000年3月31日); Haykin, Simon. 教師無し適応フィルタリング処理 [Unsupervised Adaptive Filtering] 第2巻:ブラインド・デコンボリューション[Blind Deconvolution]. Wiley-Interscience (2005年3月); 及び Mark Girolami、自己組織化ニューラルネットワーク―独立成分分析とブラインド信号源分離 [Self Organizing Neural Networks : Independent Component Analysis and Blind Source Separation] (ニューラルコンピューティングの視点[Perspectives in Neural Computing] ) (Springer Verlag、1999年9月)。 特異値分解アルゴリズムは、Simon Haykinによって適応フィルタリング論[Adaptive Filter Theory] (第3版、Prentice-Hall (NJ)、(1996年)において開示されている。
【0063】
より広いデータ分析領域の範囲に適用するICAが可能になるように開発されたICAの拡張も意図される。これらの拡張には、雑音付きICA、独立部分空間分析、多次元的ICA、(後)非線形ICA、ツリー依存型成分分析、サブバンド分解ICA、独立ベクター分析(independent vector analysis、IVA、PCT出願第PCT/US2006/007496号;米国仮出願第60/891,677号、第60/777,900号及び第60/777,920号; Kimら、独立ベクター分析―独立成分分析の多変量成分への拡張[Independent Vector Analysis : An Extension of ICA to Multivariate Components]、ICA 2006: 165-172; Leeら、複合高速独立ベクター分析―畳み込みブラインド信号源分離のための多変量独立成分分析の着実な最尤アプローチ[Complex FastIVA: A Robust Maximum Likelihood Approach of MICA for Convolutive BSS]、ICA 2006: 625-632; Taesu Kim、「独立ベクター分析[Independent Vector Analysis]」、博士論文、KAIST、2007年2月が含まれ、それぞれは、参照によって本明細書に組み込まれる。
【0064】
信号源分離について意図される、Varimax、Promax、変分法など、他の非直交変換法も用いることができる。一実験において、単極誘導ECG信号を単離し、時間的に整合して5000回の心拍動周期にし、ICA法によって150個の成分に分離する。処理120は、ICA処理を用いることもあるが、他の信号分離処理を本開示に従って使用してもよい。前記信号源分離処理120は、線形信号源分離処理であってもよい。一部の実施態様において、血中分析物の濃度レベルに依存する第1のデータセットは、第2のデータセットにも依存する。ここで説明するような信号源分離処理を用いて、第1変数と血中分析物の濃度レベルとの相関を改善してもよい。前記信号源分離処理は、少なくとも一部適応的であってもよい。前記信号源分離処理は、一つ以上の制約を含んでいてもよい。前記制約は、先験的な制約及び/又は導出された制約を含んでもよい。前記信号源分離処理に関連するパラメータ、方程式及び/又は他の特性は、ニューラルネットワークなどの学習法則によって決定してもよい。
【0065】
後処理
処理100の工程125において、本明細書に記載の分離処理による一つ以上の出力が、後処理を受けることもある。一部の実施態様において、工程125は、処理100に含まれていない。一部の実施態様において、信号源分離処理によって分離された一つ以上の信号は後処理される。例えば、前記後処理工程は、対象の生理学的パラメータで信号源同僚を同定することを含む。他の例では、適切な信号のみが後処理に渡されるように前記信号分離処理を調節してもよい。一部の実施態様において、血中分析物の濃度レベルなどの既知の生理学的パラメータに相関すると推定される一つ以上の変数は後処理を受ける。
【0066】
前記後処理には、スケーリング及び/又はオフセットの適用が含まれてもよい。スケール倍数及び/又はオフセットは、テストデータセットによって決定してもよいし、他の患者データセット又は環境データセットに応答するものでもよい。前記テストデータセットには、非侵襲的に測定した変数及び侵襲的に測定したデータから導出された、分離されたデータの両方が含まれてもよい。前記後処理には、分離された変数のうち少なくとも二つを組み合わせることが含まれてもよい。一部の実施態様において、前記後処理には線形処理が含まれる。一部の実施態様において、前記後処理には非線形処理が含まれる。一部の実施態様において、前記後処理は少なくとも一部適応的である。一部の実施態様において、前記後処理は、先験的な制約及び/又は導出された制約を含みうる制約を含む。
【0067】
出力変数
処理100の工程130では、対象のパラメータの特性が一つ以上出力される。一部の実施態様において、工程130は処理100に含まれていない。本明細書に記載のシステム及び/又は方法は、所望の生理学的パラメータ、例えば、血中分析物の濃度レベルを推定して出力してもよい。一部の実施態様において、出力特性は単一の推定濃度レベルである。一部の実施態様において、前記出力特性には濃度レベルの範囲又は変化の速度が含まれる。前記レベルの範囲は、例えば、計算に対する信頼性を示してもよい。前記レベルの範囲は、前記レベルが特定の生理学的範囲内にあることを示してもよい。例えば、濃度レベルを算出した後、前記システム及び/又は方法は単に、それが正常とみなされるレベル範囲内にあることを示してもよい。
【0068】
一部の実施態様において、前記出力変数は、推定された生理学的パラメータのレベルが閾値よりも高いか低いかを示す。例えば、出力変数は、血中分析物の濃度レベルが高すぎるため、インスリンなどの対抗薬を注射すべきことを示してもよい。一部の実施態様において、前記出力特性は数値ではない。前記出力特性は、濃度レベルの解釈であってもよい。例えば、前記出力変数は、「許容レベル未満」、「許容レベル」、及び「許容レベルより高い」を含んでもよい。前記出力特性は、血中分析物の濃度レベルに基づいて、患者に指示を提供してもよい。前記指示は、実施する治療の種類、タイミング、及び/又は投与量、食事方法に関するアドバイス、及び/又は医師や救急室などの専門家の援助を求めることについてのアドバイスに関連していてもよい。一部の例において、前記出力は、警報であってもよい。一部の実施態様において、前記出力変数は、他の濃度レベルに対する濃度レベルを含む。例えば、前記出力変数には、一番最近測定した濃度レベルに対する、もしくは許容されるとみなされる平均濃度レベルに対する血中分析物の濃度レベルが含まれてもよい。一部の実施態様において、前記出力特性には、血中分析物の濃度レベルをスケーリングしたものが含まれる。例えば、前記濃度レベルを1〜10の尺度でスケーリングし、濃度レベルが許容値よりはるかに低いことを「1」で示し、濃度レベルが許容値よりはるかに高いことを「10」で示してもよい。一部の実施態様において、前記出力は、患者、主介護者又は主治医、又は救急隊員などの医療提供者に有用でありえる。
【0069】
本明細書に記載の方法及び/又はシステムの後処理部は、推定された血中分析物の濃度レベルを本明細書に記載の出力特性に変換する変換部を含んでもよい。一部の実施態様において、前記変換は、出力特性が計算の信頼性を示すときなどは、濃度レベルの算出の詳細に依存する。一部の実施態様において、前記変換は固定変換であって、血中分析物の濃度レベルと出力特性の間に固定関係を提供して、そのレベルが許容されるかどうかを表したりする。一部の実施態様において、前記変換は、患者に合わせてカスタマイズされる。このカスタマイズには、例えば、血中分析物の濃度レベルがある許容範囲内にあるかどうかを決定するために患者の体重などの患者特異的変数の導入が含まれてもよい。前記カスタマイズには、例えば、血中分析物の濃度レベルと患者の濃度レベルの傾向との関連性、患者の濃度レベルの可変性、及び/又は患者の濃度レベルの平均値を決定するための学習法則が含まれてもよい。
【0070】
前記特性は、視覚的出力を表示することによって出力してもよい。例えば、前記出力には、グラフが含まれてもよい。前記グラフは、血中分析物の濃度値の許容範囲を(例えば、棒グラフ又は陰影部によって)示してもよいし、また、推定濃度値を(例えば、星印によって)示してもよい。前記グラフは、多数の血中分析物の推定濃度値を示してもよい。例えば、前記グラフには、各棒が異なった血中分析物の推定濃度レベルを示す棒グラフが含まれてもよい。別の例として、前記グラフには、血中分析物の推定濃度レベルを時間の関数としたグラフが含まれてもよい。後者の例では、本明細書に記載の方法及び/又はシステムは、血中分析物の推定濃度値を保存してもよい。前記出力特性には、血中分析物の推定濃度値の平均値が含まれてもよい。例えば、所定の日における全推定濃度値の平均値を求めてもよい。他の例として、所定の時刻の推定濃度値の平均値を数日にわたって求めてもよい。
【0071】
一部の実施態様において、方法及び/又はシステムは、特定の血中分析物の濃度値の潜在的原因を同定するために、コンポーネントを含んでもよいし、使用されてもよい。例えば、所定の温度範囲で血中分析物の推定濃度値の平均値を計算すれば、例えば、高温度では高濃度の値がより多くみられることがわかるかもしれない。追加コンポーネントによって、特定の血中分析物の濃度値の原因を推定するための入力をユーザーが行えるようになる。例えば、患者が摂取した食物を入力すると、出力変数は、特定の食物の種類又は食物の特性によって血中分析物の濃度値が高くなっている可能性があるということを示すことができる。
【0072】
一部の実施態様において、本明細書に記載のシステム及び/又は装置は、追加の出力特性を表示することもある。例えば、一例として装置が腕時計である場合、前記装置は、時刻を表示することもある。前記システム及び/又は装置は、警告部及び/又はタイマー部を含んでもよく、それによって患者による行動が必要になる時または望ましい時を示してもよい。例えば、血中分析物の濃度レベルが定期的に推定される実施態様においては、濃度レベルを推定すべきであると患者に警告する警報が一日中定期的に鳴ってもよい。このような場合、例えば、もし装置にユーザー入力が必要とされる、ユーザーの不動が必要とされる、あるいはその他の状況的特性が必要とされるのであれば、警報が必要となることもある。それに加え、もしくはその代わりに、前記警報は、血中分析物の推定濃度レベルへ患者の注意を引くような機構として作用してもよい。他の例として、患者の注意及び/又は入力を必要とせずに血中分析物の濃度レベルを持続的に推定又は定期的に推定する実施態様においては、例えば、推定濃度レベルが妥当とされる範囲外にある場合、警報を用いてユーザーに警告してもよい。前記装置には、スピーカーのような音声トランスデューサが含まれてもよい。
【0073】
テストデータ及び適応
非侵襲的に測定したデータセット間及び/又は非侵襲的に測定したデータセットと血中分析物の濃度レベル間の関係を決定する目的で、テストデータ又は経歴データを用いてもよい。これらの場合は、侵襲的に測定したデータ及び非侵襲的に測定したデータの両方を取得してもよい。好ましい実施態様では、前記データセットはほとんど同時に取得される。かかるテストデータは、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの一部を調整又は適応するために用いてもよい。例えば、前記テストデータは、前処理、非線形変換、信号源分離処理、及び後処理のうち一つ以上に関連するパラメータ、方程式、及び/又はその他の特性を設定又は適応するために使用してもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載の方法及び/又はシステムを較正するために既知のパラメータを用いる。例えば、一つ以上のパラメータ、方程式及び/又は他の特性を決定するために患者の体重を使用してもよい。
【0074】
一部の実施態様においては、パラメータ、方程式、及び/又はその他の特性がテストデータの分析前に決定される。その後、前記テストデータは、既定のパラメータ、方程式及び/又は他の特性の精度を確認するため及び/又は既定のパラメータ、方程式、及び/又はその他の特性を変更するために使用してもよい。一部の実施態様においては、複数のパラメータ、方程式、及び/又はその他の特性がテストデータの分析前に同定される。その後、前記テストデータは、好ましいパラメータ、方程式、及び/又はその他の特性の決定に使用してもよい。一部の実施態様においては、パラメータ、方程式、及び/又はその他の特性がテストデータの分析前に同定されない。前記パラメータ、方程式、及び/又はその他の特性は、例えば、学習法則によって決定されてもよい。
【0075】
一部の実施態様においては、本明細書に記載の方法及び/又はシステムの信号源分離部の出力のうちのどれが血中分析物の濃度レベルと関連しているかを決定するためにテストデータを使用する。例えば、濃度レベルに関連する信号源分離部からの出力の個数を決定するためにテストデータを用いることもできる。これらの出力は、その後組み合わせてもよい。テストデータはまた、分離された変数のうちどれが濃度レベルに関連するかを決定するために用いてもよい。例えば、テストデータによって、一定の変化、強度、自己相関及び/又はスペクトル特性を有する出力を、濃度レベルと関連するものとして同定できることがわかる。前記テストデータは、例えば、パラメータ、方程式、及び/又はその他の特性がその個人について最適になるように、個人の患者について収集してもよい。あるいは、テストデータは、患者に使用する妥当なパラメータ、方程式及び/又は他の特性を決定するように一人以上の個人から収集してもよい。
【0076】
一部の実施態様においては、まずテストデータを収集し、その後、非侵襲的に測定したデータに基づいて血中分析物の濃度レベルを推定してもよい。一部の実施態様においては、非侵襲的に測定したデータのみに基づく各推定の間でテストデータが周期的に収集される。例えば、前処理、非線形変換、信号源分離処理、及び後処理のうち一つ以上に関連する初期のパラメータ、方程式及び/又は他の特性は、初期のテストデータ又は他の方法によって決定してもよい。血中分析物の濃度レベルは、一週間などの規定した期間について推定してもよい。その後テストデータを収集し、パラメータ、方程式及び/又は他の特性を調整してもよい。あるいは、推定の誤差が所定の程度になったという懸念が生じるまで、血中分析物の濃度レベルを推定してもよい。例えば、濃度レベルが各推定の間で予測したほど大きく変動しない場合又は通常予測されるよりも高い又は低い場合である。その後、テストデータを収集してもよく、また、パラメータ、方程式及び/又は他の特性を調整してもよい。
【0077】
装置
本明細書に記載するシステムには、図4に示す装置200などの装置が含まれてもよい。前記装置200には、複数の物理的特性又は環境条件を測定するように構成された測定部205、少なくとも1つのデータセットを前処理し、少なくとも1つのデータセットを非線形的に変換し、データセットを独立信号に分離し、及び/又は少なくとも1つの信号を後処理するように構成された算出部210、出力を表示するように構成されたディスプレイ部215、テストデータ又は履歴評価に従って適応を行うように構成された適応部220、データ又は結果を保存するように構成されたデータ保存部225、及び/又はユーザー及び/又は装置による入力を受信するように構成された入力部230が含まれてもよい。実施態様によっては、新たなコンポーネントを追加したり、他のものを削除してもよく、また、コンポーネント間の接続を追加及び/又は削除してもよい。
【0078】
一部の実施態様において、前記装置200には、複数の患者の物理的性質及び環境条件を測定するように構成された測定部205が含まれてもよい。前記患者の物理的特性及び環境条件には、本明細書に記載するいずれもが含められる。測定装置又はセンサー装置のうち一部は、前記装置200と接続または連動する個別の装置であってもよい。他の例において、前記測定装置又はセンサー装置は、単一の装置200の中にあってもよい。
【0079】
一部の実施態様において、前記測定部205は、患者のインピーダンス及び/又は誘導特性を測定する。前記測定部205には、一つ以上の電極が含まれてもよい。前記一つ以上の電極には、容量性フリンジ電界電極が含まれてもよい。前記一つ以上の電極には、二つ以上の電極が含まれてもよい。前記二つ以上の電極には、例えば、200 μm〜4 mmの間隔で互いに離れていてもよい。他の実施態様において、前記電極は数インチ又は数フィート離れていてもよい。前記電極は、患者の皮膚内及び/又は皮膚下の各種組織層内に電磁場を生成するために用いられてもよい。貫通度がそれぞれ異なる複数の電磁場を電極によって生成してもよい。
【0080】
一部の実施態様において、前記測定部205は患者の水和特性を測定する。前記水和特性には、皮膚及び/又は根底にある組織の水和レベルが含まれてもよい。前記測定部205には、汗・湿度センサーが含まれてもよい。前記汗・湿度センサーには、電極が含まれてもよい。前記電極には櫛形電極が含まれてもよく、電気反応に基づく測定技法を用いてもよい。
【0081】
一部の実施態様において、前記測定部205は患者の光学特性を測定する。前記光学変数には、患者の皮膚の光学特性に関連する変数が含まれてもよい。前記光学特性は、可視スペクトルに関連していてもよい。前記測定部205には、光学センサーが含まれてもよい。前記光学センサーには、一つ以上の微小分光光度計が含まれてもよい。前記光学センサーには、二つ以上の微小分光光度計が含まれてもよい。前記光学センサーには光学センサー頭部が含まれてもよく、そこには光ファイバ発信機及び一つまたは二つ以上の受信機が含まれてもよい。一部の実施態様において、前記装置200には入力光源が含まれる。前記受信機は、入力光源から一つまたは二つ以上の分離距離にあってもよい。
【0082】
一部の実施態様において、前記測定部205は患者の圧力特性を測定する。前記圧力特性には、患者の皮膚上にかかる装置の圧力を示す変数が含まれてもよい。前記測定部205には圧電素子が含まれてもよい。前記圧電素子は、集積圧電センサーであってもよい。一部の実施態様において、前記測定部205は患者の移動特性を測定する。前記移動特性には、装置200の移動を示す変数が含まれてもよい。前記装置200の移動は、例えば、患者の移動に対して絶対的または相対的であってよい。前記測定部205には、加速度計が含まれてもよい。一部の実施態様において、前記測定部205は天気関連の条件を測定する。前記天気関連の条件には、温度、圧力変数及び/又は湿度変数が含まれてもよい。前記測定部205には、温度計、気圧計、乾湿計及び/又は湿度計を含んでもよい。一部の実施態様において、前記測定部205は患者の静電容量特性及び/又は患者の電流特性を測定する。一部の実施態様において、前記測定部205は、体温、皮膚温度、血流、血圧、ECG変数、EEG数、及び酸素飽和変数のうち一つ以上を測定する。前記測定部205には、これらの特性又は条件のいずれかを測定するコンポーネントが含まれてもよい。
【0083】
一部の実施態様において、前記測定部205は、分析物感受性物理的特性及び分析物非感受性物理的特性の両方を測定する。他の実施態様において、前記測定部205は、分析物感受性物理的特性又は分析物非感受性物理的特性のいずれかを測定する。前記装置200は、前記入力部230を介して一つ以上の分析物感受性データセット及び/又は一つ以上の分析物非感受性データセットを受信してもよい。一部の実施態様において、前記測定部205は分析物感受性物理的特性を測定し、入力部230は分析物非感受性の物理的特性又は条件を入力として受信する。
【0084】
一部の実施態様において、前記装置200には算出部210が含まれる。図5に示すように、前記算出部210には、前処理部305、非線形算出部310、信号源分離部315、及び後処理部320のうち一種以上が含まれてもよい。実施態様によっては、追加コンポーネントを追加したり、他のものを削除してもよく、コンポーネント間の接続を追加及び/又は削除してもよい。例えば、前記前処理部305及び/又は前記後処理部32は、前記算出部210から削除してもよい。
【0085】
一部の実施態様において、前記算出部210には前処理部305が含まれる。前記前処理部305には、前記装置200の前記測定部205によって提供されてもよい一つ以上の測定済みデータセット及び/又は前記装置200の前記入力部230によって提供されてもよい一つ以上の入力データを前処理してもよい。前記前処理には、正規化処理などの種々の処理が含まれてもよい。また、前処理には、二つ以上の測定値のデータセットを組み合わせることが含まれてもよい。例えば、二つ以上のインピーダンス測定値を組み合わせて単一のデータセットとしてもよい。
【0086】
一部の実施態様において、前記算出部210には少なくとも1つのデータセットを非線形的に変換するように構成された非線形算出部310が含まれる。前記少なくとも1つのデータセットには、前記装置200の前記測定部205によって測定されたデータセット、前記装置200の前記入力部230を介して入力されたデータ、及び/又は前記算出部210の前記前処理部305によって前処理されたデータが含まれてもよい。前記少なくとも1つのデータセットには、分析物感受性データセット及び/又は分析物非感受性データセットが含まれてもよい。前記少なくとも1つのデータセットには前処理済みデータセット及び/又は未前処理データセットが含まれてもよい。前記非線形算出部310には、先験的な制約及び/又は導出された制約などの制約が含まれてもよい。前記非線形算出部310には、一つ以上の学習法則が含まれてもよい。
【0087】
一部の実施態様において、前記算出部210には線形算出部が含まれる。前記線形算出部には、信号源分離部が含まれてもよい。前記算出部310には、信号源分離部315が含まれてもよい。前記信号源分離部315には、少なくとも二つの信号を分離するように構成されたブラインド信号源分離モジュールが含まれてもよい。前記ブラインド信号源分離モジュールには、例えば、ICAモジュール及び/又はIVAモジュールが含まれてもよい。前記線形算出部及び/又は前記信号源分離部315は、血中分析物の濃度レベルに関連する一つ以上の信号を同定するように構成されてもよい。前記線形算出部及び/又は前記信号源分離部315は、前記装置200の前記測定部205から提供される測定済みデータセット、前記装置200の前記入力部230によって提供される入力データ、前記算出部210の前記前処理部305によって提供される前処理済みのデータセット、及び前記算出部210の前記非線形算出部310によって提供される非線形的変換済みデータセットのうち一つ以上を入力として受信してもよい。
【0088】
一部の実施態様において、前記算出部210には後処理部320が含まれる。前記後処理部320は、分離処理315からの一つ以上の信号をスケーリングする及び/又はオフセットするように構成されていてもよい。前記後処理部320は、信号を組み合わせるために及び/又は所望の信号を同定するように構成されてもよい。前記後処理部320は、血中分析物の濃度レベルの推定値の信頼性及び/又は誤差を算出するように構成されていてもよい。前記後処理部320は、血中分析物の濃度レベルの推定値を出力の形態に変換するように構成されていてもよい。前記後処理部320は、前記装置200の前記測定部205によって提供される測定済みデータセット、前記装置200の前記入力部230によって提供される入力データ、前記算出部210の前記前処理部305によって提供される前処理済みデータセット、前記算出部210の前記非線形算出部310によって提供される非線形的変換済みデータセット、及び前記算出部210の前記信号源分離部315によって提供される分離された信号のうち一つ以上に作用してもよい。また、前記後処理320は、スケーリング、フィルタリング、又はその他の分析機能を提供してもよい。
【0089】
一部の実施態様において、前記装置200には多数のコンポーネントが、他のコンポーネントの上、近く又は遠くに含まれていてもよい。例えば、前記出力部はセンサーから離れていてもよい。前記のさまざまなコンポーネントは、有線又は無線で接続されていてもよい。
【0090】
一部の実施態様において、前記装置200には、一つ以上の出力信号、結果、又はデータを出力し得る出力部が含まれる。前記出力は、ディスプレイ部215に表示されてもよい。前記ディスプレイ部215には、一つ以上の数字、文章、指示、グラフ、表、図表及び画像が表示されてもよい。前記ディスプレイ部215には、血中分析物の濃度レベルに関連する情報及び/又は血中分析物の濃度レベルに関連しない情報(例えば、時刻)が表示されてもよい。前記ディスプレイ部215には、前記算出部210によって提供される情報が表示されてもよい。前記ディスプレイ部215には、血中分析物の濃度レベルに関連する履歴が表示されてもよい。前記ディスプレイ部215には、血中分析物の推定濃度レベルが時間の関数として表示されてもよい。
【0091】
一部の実施態様において、前記装置200には適応部220が含まれてもよい。前記適応部220にはテストデータ部が含まれてもよい。前記テストデータ部では、例えば、侵襲的に測定した又はその他の方法によって既知である血中分析物の濃度レベルが、非侵襲的に測定したデータセットから推定される血中分析物の濃度レベルと比較されてもよい。前記適応部220は、例えば患者の体重などの患者に関するテストデータ及び/又は情報に基づいて、パラメータ、方程式及び/又は他のコンポーネント(例えば、前記算出部210)に関連する他の特性を決定してもよい。一部の実施態様において、前記適応部220は装置の初期設定の時のみに使用される。一部の実施態様において、前記適応部220は初期設定後に使用される。前記適応部220は、定期的間隔又は不規則間隔で使用されてよい。前記適応部220には、例えば、学習法則が含まれてよい。
【0092】
一部の実施態様において、前記装置200にはデータ保存部225が含まれる。前記データ保存部225には、例えば、前記算出部210によって提供され得る血中分析物の推定濃度レベルが保存されてもよい。前記データ保存部225には、一つ以上の測定したデータセット、結果、又は暫定値が保存されてもよい。前記データ保存部225には、一つ以上の出力信号又は結果が保存されてもよい。一部の実施態様において、前記データ保存部225は、保存したデータを前記算出部210に提供してもよい。前記算出部210は、例えば、前記保存したデータを使って、血中分析物の推定濃度レベルの平均値又は濃度レベルの傾向を算出してもよい。一部の実施態様において、前記データ保存部225は、保存したデータを前記ディスプレイ部215に提供してもよい。前記ディスプレイ部215には、例えば、前記保存したデータを使って濃度レベルの傾向が時間の関数として示されてもよい。
【0093】
一部の実施態様において、前記装置200には入力部230が含まれる。前記入力部230には、マウス、キーボード、及び/又は一つ以上のボタンが含まれてもよい。前記入力部230には、タッチ応答スクリーンなどの応答スクリーンが含まれてもよい。前記入力部230には、入出力ポート又は電気的接続が含まれてもよい。例えば、前記入力部230には、USBポートが含まれてもよい。前記入力部230は、他の装置によって測定された変数などの変数を受信するように構成されてもよい。前記入力部230は、指示又は摂取した食物のリスト又は前に受けた一つ以上の治療(例えば、インスリン注射)の時間などの情報をユーザーから受信するように構成されてもよい。前記入力部230は、血中分析物の濃度レベルの推定値に関連する入力を受信するように構成されてもよい。例えば、前記入力は、前記算出部210の成分のパラメータ及び/又は方程式を変更するために使用されてもよい。他の例として、平均値を求めるべき濃度レベルの推定値を同定するために入力が使用されてもよい(例えば、入力は、一日の全ての濃度レベルの平均値を求めることを知らせてもよい)。また、入力は、推定を行う時間が来たこと及び/又は前記測定部205が一つ以上の物理的特性又は条件を測定する時間が来たことを知らせてもよい。入力は、侵襲的に測定した変数を前記装置に提供するなど、テストデータを較正部220に提供するために使用してもよいし、較正部220によって較正を行う時間が来たことを知らせてもよい。入力は、前記装置200のディスプレイ設定を制御してもよい。入力は、前記装置200のメモリに保存されているデータを制御してもよい。一部の実施態様において、前記装置200にはコンピュータが含まれる。
【0094】
一部の実施態様において、前記装置200は患者に装着可能である。前記装置200には、例えば、時計が含まれてもよい。前記装置200にはリストバンド又は足首用のバンドなどのバンドが含まれてもよい。前記装置200には手袋が含まれてもよい。前記装置200にはパッチが含まれてもよい。一部の実施態様において、前記装置200は血中分析物の濃度レベルを持続的に推定する。一部の実施態様において、前記装置200は血中分析物の濃度レベルを定期的に推定する。一部の実施態様において、前記装置200は特定のユーザー入力を受信した後に血中分析物の濃度レベルを推定する。
【0095】
コンピュータによる実行
一部の実施態様において、本明細書に記載の方法にはコンピュータによって実行される方法が含まれる。一部の実施態様において、本明細書に記載のシステム及び/又は装置にはコンピュータが含まれる。一部の実施態様において、本明細書に記載のシステム及び/又は装置の算出部にはコンピュータが含まれる。前記コンピュータには、デジタル信号プロセッサ(digital signal processor、DSP)又は中央処理装置(central processing unit、CPU)、一つ以上の周辺機器(例えば、RAM、ROM、PROM、又はEPROM)、及びDSP又はCPUによって実行されるプログラムが含まれてもよい。前記コンピュータには、他の装置からデータを受信するように及び/又はユーザーから入力データを受信するように構成されてもよい入力装置が含まれてもよい。前記コンピュータには、データ及び/又は情報を受信又は表示するためのユーザー・インターフェイスが含まれてもよい。前記コンピュータには、データ及び/又は情報を表示するように構成されてもよい出力装置が含まれてもよい。前記プログラムには、本明細書に開示した方法を行うための指示を含むコンピュータ読み取り可能な媒体が含まれてもよい。
【0096】
ここでは、図6を参照して、グルコース特徴決定方法350を説明する。通常、グルコース特徴決定処理350には、4つの工程がある。非侵襲的技法を使用してデータを患者及び環境から収集する第1の工程352、収集されたデータとグルコース濃度との間にほぼ線形関係を与える第2の工程354、グルコース濃度を示すデータセットから信号を同定する第3の工程356、及び、提示するための処理において前記選択された信号をスケーリングする第4の工程58。これらの工程によって、グルコース特徴決定処理350は、変動する患者又は環境条件下でも、グルコース濃度の高度に正確な特徴決定を提示することができる。このようにして、処理50は、以前の装置や処理よりも幅広い範囲の用途及び環境で実施することもでき、より高い信頼性かつより少ない疼痛で使用することできる。
【0097】
工程352において、患者361から又は環境363から非侵襲性データを収集する。通常、データは、非侵襲性皮膚表面センサーを用いて患者から収集する。これらのセンサーは、例えば、電気的特性、光学的特性、温度特性、又は湿度特性を測定するために使用されてもよい。これらの特性には表面特性を測定するものもあれば、根底にある組織又は体液の特性を示すものもある。センサーには、温度などの既存の性質を測定するように構成されるものもあれば、能動的に刺激を与えるものもある。例えば、センサーには、RFインピーダンスを測定するためにRF周波数信号を提供するものもあれば、光学特性を測定するために光情報を提供するものもある。つまり、広範囲の非侵襲性センサーが用いられる。患者から収集したデータ361のうち少なくとも一部は、矢印364で示すように、対象の生理学的パラメータと既知の直接的関係を有する情報を有する。これは、例えば、グルコース濃度の変化が、そのデータのセットに変化を引き起こすことを意味する。患者及び環境からの他のデータは、矢印362で示すように間接的関係を有していてもよい。
【0098】
処理350の具体的な例においては、非侵襲的センサーを用いてRFインピーダンス・データを患者から収集する。前記RFデータは、グルコース濃度と既知の直接的関係を有する。皮膚温度及び皮膚湿度などの他の患者データ、並びに前記センサーと皮膚の間の圧力が測定される。この後者のデータは、直接的にはグルコース濃度を示さないが、例えば、スケーリング、較正、又はフィルタリングを行う処理350の他の側面を調整するために使用される。
【0099】
前記グルコース濃度と既知の非線形関係を有する前記RFデータ364は、前記RFデータを調整してより線形的な関係にするために、アルゴリズム、テーブル、モデル化、又はその他のスケーリング処理365に通される。その後、この線形化されたデータは、同定工程356に渡される。前記線形化処理354は、履歴データ、公開済みデータに従って決定しても、徐々に学習して適応してもよい。ブロック356において、前記線形化されたデータは、ブロック367に示すように独立信号源にまず分離され、その後、グルコース濃度に付随する信号がブロック369において同定される。通常、前記分離処理は、例えば、独立成分分析などのブラインド信号源処理であり、あるいは他の信号分離処理が適用されてもよい。適切な信号が同定されると、前記グルコース信号は、通常、間接的情報362を用いてスケーリング371される。その後、前記スケーリングしたグルコース濃度は、ブロック373に示すように提示される。
【0100】
患者
本明細書に記載の方法及び/又はシステムは、患者の血中分析物の濃度レベルなどの所望の生理学的パラメータを特定するために用いてもよい。本明細書に記載のシステムは、患者に提供してもよい。患者は、医師などの第三者に複数のデータセットを提供してもよい。その後、その医師は、本明細書に記載の方法及び/又はシステムを使用して患者の血中分析物の濃度レベルを推定してもよい。例えば、前記第三者は、複数の変数のうち少なくとも1つに非線形変換を適用した後、信号源分離処理及び後処理技法を使用して血中分析物の濃度レベルを推定してもよい。このように、患者は、測定される物理的特性又は環境条件のデータセットを測定及び収集するために構成された、より小型の装置を装着してもよい。分析が必要になると、前記データセットが上記過程を適用する処理装置に読み込まれる。一部の実施態様において、血中分析物の濃度レベルを推定するという、本明細書に記載の指示を含むキットが提供される。従って、装置200の特定のモジュールは、多数の個別の装置に配置されることもある。
【0101】
一部の実施態様において、本明細書に記載方法及び/又はシステムは、グルコースなどの所定の血中分析物の濃度レベルを推定する。一部の実施態様において、本明細書に記載の方法及び/又はシステムは、グルコース及びコレステロールなどの複数の所定の血中分析物の濃度レベルを推定する。一部の実施態様において、本明細書に記載の方法及び/又はシステムは、複数の血中分析物の濃度レベルを推定することにより、潜在的な症状をスクリーニングする。一部の実施態様において、前記患者は健康である。
【0102】
一部の実施態様においては、前記患者が既知の症状(例えば、血中グルコース症状)を患っており、他の実施態様においては、前記患者がその症状を患う危険にさらされている。前記患者がその症状を患う危険にさらされる原因として、例えば、家族歴、病歴、グルコース試験の履歴(例えば、空腹時グルコースの異常又は血糖能異常)、インスリン症状(例えば、インスリン耐性)、体重症状(例えば、肥満)、高血圧、コレステロール症状(例えば、35 mg/dL未満のHDLコレステロール又は250 mg/dL以上のトリグリセリドレベル)、代謝性疾患(例えば、多嚢胞性卵巣症候群)、特定の民族性であること、及び/又は血管症状が挙げられる。前記症状は血中分析物の濃度レベルに関連していることもある。前記症状は、異常な血中分析物の濃度レベルに関連していることもある。前記症状は、グルコース濃度に関連していることもある。前記症状は、インスリン耐性でもありえる。前記症状は、糖尿病でもありえる。前記症状は、グルコース恒常性の異常及び/又は耐糖能異常でもありえる。他の実施態様において、前記患者は、既知の症状を認識しておらず、特定の症状を検出するために本発明の方法及び装置を使用する。
【0103】
糖尿病は、1型又は2型の糖尿病でありうる。1型(又はインスリン依存性糖尿病あるいは若年発症糖尿病)は、血糖値を制御するホルモンであるインスリンを生産する膵細胞が免疫系によって破壊されると発生する。通常、1型糖尿病は、子供及び若年成人において発生するが、発症はどの年齢でも発生し得る。1型糖尿病は、診断される糖尿病の全体の約5〜10パーセントに及ぶ。1型糖尿病の危険因子には、自己免疫性、遺伝的、及び環境的な因子が含まれる。2型(またはII型)糖尿病(インスリン非依性型糖尿病(non−insulin−dependent diabetes mellitus、NIDDM)あるいは成人発症糖尿病)は、糖代謝の調節不全及びインスリン耐性を伴う代謝性疾患であり、眼、腎臓、神経、及び血管が関与する長期合併症をもたらすことがある。2型糖尿病は、体がインスリンを十分に作れないこと(異常なインスリン分泌)、あるいは体がインスリンを効率的に使えない(標的器官及び組織におけるインスリン作用に対する耐性)ことに起因する。通常この疾患は、細胞がインスリンを適切に使わない疾患であるインスリン耐性として始まり、インスリンの必要性が上昇するに従い、膵臓がインスリンを生成する能力を次第に失ってしまう。2型糖尿病を患う患者は、相対的なインスリン不足である。即ち、これらの患者において、血漿インスリン濃度は、絶対的には正常〜高値であるものの、存在する血漿グルコースの濃度に対して予測されるものよりは低い。2型糖尿病は、この疾患でもっともよくみられる型であり、糖尿病の90〜95%を占めている。
【0104】
患者の年齢はさまざまである。18歳未満の患者がいる場合もある。65歳以上の患者がいる場合もある。患者は、持続的に高い血漿グルコース濃度(高血糖症)、多尿症、多飲症、多食症、網膜症・腎症・神経障害などの慢性微小血管合併症、及び高脂血症・高血圧などの大血管合併症のうち一つ以上を患っている、または患っていた可能性がある。失明、末期の腎疾患、手足の切断及び心筋梗塞を患っている、または患っていた可能性がある患者もいる。これらの病徴のいずれもが糖尿病の病徴でありえる。
【0105】
妊娠性糖尿病を患っている、または患う危険性のある患者もいる。妊娠性糖尿病とは、妊婦において診断されるグルコース不耐症の一種である。患者は妊娠していることもある。妊娠性糖尿病の女性の割合(5〜10パーセント)は、妊娠後に2型糖尿病になる。また、妊娠性糖尿病になった女性は、20〜50パーセントの確率でその後5〜10年以内に糖尿病を発症する。その患者は最近又は以前に妊娠した患者である場合がある。患者は、ある症状を治療するための治療を受けていることもある。前記症状は、本明細書に記載の症状のいずれか、又はその他の症状のいずれかであってもよい。前記治療にはインスリン治療が含まれてもよい。前記治療は、定期的に又は必要に応じて実施されるものであってよい。定期的に実施される治療の場合、毎日の実施であってよい。本明細書に記載の方法及び/又はシステムは、いつ治療を患者に実施及び/又は提供するべきかを決定するために使用してもよい。
【0106】
キット
一部の実施態様において、キットには本明細書に記載のシステム及び/又は装置が含まれる。一部の実施態様において、キットには本明細書に記載の方法を提供するための指示セットが含まれる。一部の実施態様において、キットには本明細書に記載のシステム及び/又は装置の使用に関連する指示セットが含まれる。一部の実施態様において、キットには本明細書に記載のシステム、装置及び/又は方法による出力の解釈に関連する指示セットが含まれる。指示は、本明細書に記載のシステム、装置、及び/又は方法を使用する回数を示してもよい。指示は、適切な血中分析物の濃度レベルを示してもよい。前記適切な血中分析物の濃度レベルは、標準的な医療知識によって決定されてもよい。指示は本明細書に記載のシステム、装置及び/又は方法によって提供された血中分析物の濃度レベルの推定値が高い及び/又は低い場合の措置を推奨してもよい。指示は、本明細書に記載のシステム及び/又は装置の適切な使用法を示してもよい。例えば、前記指示は、装置との好ましい及び/又は必要な皮膚接触に関連する詳細を示してもよい。指示は、システム及び/又は装置をいつ較正するべきかを推奨してもよい。
【0107】
使用
一部の実施態様において、本明細書に記載の装置及び/又は方法は、ある症状(例えば、糖尿病)の治療の一部として用いてもよい。例えば、前記装置及び/又は方法は、投与すべき薬の投与量又は薬を投与すべき時間を決定するために有用なデータを提供することもできる。一部の実施態様において、本明細書に記載の装置及び/又は方法は、食事療法及び/又は減量計画の一部として使用されてもよい。前記食事療法及び/又は前期減量計画は、健康関連の状態に関連していてもよい。例えば、前記装置及び/又は方法は、高コレステロールの患者によって使用されてもよい。そして前記装置及び/又は方法は、例えば、患者が特定の種類の食物を摂取する又は摂取しないことを推奨する時間を示してもよい。一部の実施態様において、本明細書に記載の装置及び/又は方法は、医療専門家によって情報源として使用されてもよい。例えば、前記装置及び/又は方法は、医師が来診時に患者のグルコース濃度をモニターする手段を提供しえる。かかる実施態様では、推定されたグルコース濃度は、例えば、ネットワーク接続を介して医療専門家へ送信されてもよい。他の例として、血中分析物の推定濃度レベルは、複数の患者について分析されてもよい。かかる分析によって、特定のレベルの特定の原因、特定のレベルに対する素因、効果的な治療、及び/又は患者の健康の動向が示唆しえる。
【実施例1】
【0108】
データ測定
さまざまな生理学的特性をモニターするための各種センサーを使用し、一つ以上のデータセットを生成することによって、患者に関する情報を取得した。健常者及び糖尿病の患者の両方でテストしたが、他の患者でも容易にテストできる。特に前腕の皮膚上で多数のセンサーを使用して、さまざまな情報を取得した。前腕でテストしたが、前記センサーは、体のさまざまな部分や、一つの離散点に配置することもできる。最終的には、非接触型センサーが開発されれば、皮膚近傍に配置することもできるが、皮膚と直接接触する方が好ましい。前記測定データには、RF(高周波)インピーダンスと共に温度(皮膚及び装置)、湿度及び皮膚と装置の間の圧力を含めた。前記RFインピーダンスは、対象とする一次信号であるが、温度及び湿度などの環境条件も個人的及び環境的な変動を較正するために使用される。
【0109】
接触点(複数も可)で取得された情報は、皮膚及び根底にある組織の誘電特性、圧力、温度、水分及び血液灌流であったが、脈拍及びその他の心血管情報など、他の生理学的測定も行った。深度選択型電気インピーダンス分光器(例えば、Quantum XTM(RJL Systems、Inc.、Clinton Twp.、MI)、HYDRA ECF/ICF 4200 Bio−Impedance Spectrum Analyzer(Xitron Technologies、Inc.、サンディエゴ、カリフォルニア州)、SciBase II分光器(SciBase AB、フディンゲ、スウェーデン)、Solianis 分光器(Solianis AG、チューリッヒ、スイス)、Fusion XSTM 分光器(Biopeak Corp、オタワ、カナダ)などの誘電分光法に基づいた差動的センサー、生体インピーダンスアナライザー)を用いてインピーダンス情報を取得した。他の生理学的信号、例えば、赤外線温度センサーからの温度、圧力を検出する圧電センサー及び灌流又は毛細管血流を測定する光学センサー(例えば、レーザードップラー流速計測法 − PerifluxTM Pf2(Perimed AB、ストックホルム、スウェーデン)も取得した。
【0110】
線形処理
RF測定データは、グルコース濃度と非線形関係を有することが経験的に確認されているため、その非線形性を線形予測段階の前に低減させる必要がある。この線形処理工程は、前記RFデータを非線形的に変換又は適応させ、変換済みデータセットがグルコース濃度とより線形的な関係を有するようにする。前記測定したデータと前記グルコース濃度の間により線形的な関係を与える目的で、1次元写像関数f(.)を使用して、前処理済みの信号Yを計算した。
【0111】
yi = fi(xi)(式2)
式中、X = [xl,,,xn]、Y = [yl,,,yn]
【0112】
本実施例において、具体的には、データセットを調整してグルコース濃度とより線形的な関係を有するようにするために、信号を非線形的にスケーリングする関数を用いる。なお、前記線形化処理後の関係は、完全に線形的ではないが、変換前より線形的な関係である。より多くのデータが収集され分析されるにしたがって、他の関数、テーブル、又はアルゴリズムを用いて、線形性を改善してもよい。それぞれのデータ次元について、異なった写像関数を設計することができる。かかる非線形スケーリング関数の例として:
【0113】
f(x) = a x Λ b + c、
f(x) = cosh (x)、
f(x) = l/(l+exp (-x))、及び
f(x) = log (x)がある。
【0114】
別の非線形写像関数を図7に例示した。なお、参照テーブル、モデル、又はその他の変換処理を使用してもよい。
【0115】
独立信号源分離。変換済みのテストデータセットから、グルコース濃度と高度な相関性を有する、個人的及び環境的な変化に対して強固でありうる線形写像zを計算することができる。ICA(独立成分分析)は入力信号のセットから独立成分の線形的部分空間を同定するアルゴリズムである。変換した信号に適用すると、ICAは、信号が互いに独立している部分空間を複数探し出す。ICAは、互いに独立している線形成分を同定することができる。前記前処理済みのRFインピーダンス信号は、グルコース濃度と線形的に相関しているが、他のノイズ入りの因子によってかなり汚染されている。ICAは、高いノイズが混ざっている多次元観測信号から元の信号を抽出することができるので、グルコース濃度とより高度な相関性を示す、より明確な信号を探し出すことができる。ICA源信号のうち成分1(Zl)は、元のグルコース濃度と高い相関性を示す。図9(A)及び(B)は、ICA源信号Zlと、侵襲的方法によって測定した真のグルコース濃度との比較を示す。ICA源Zlは、高い相関係数を示す(0.87)。その一方で、入力データXは、図8において最小の相関性を示す。
【0116】
後処理。グルコース予測因子を算出した後、標準のグルコース濃度と一致させる値のスケール及びオフセットを式(3)によって補正する。
G = c Zl + オフセット(式3)
【0117】
較正定数
c及びオフセットは、少数の実際のグルコース濃度測定を用いて推定することができる。図9(C)は、最終的に推定されたグルコース濃度Gを示し、これは、図6(A)の真のグルコース濃度と高度な相関性を示す。
【実施例2】
【0118】
第2の実施例において、RFデータを多数セット収集した。いくつかのRFデータのセットは、各セットが皮膚内の各深さでのインピーダンスを表すように収集した。他の例においては、各セットは、異なった周波数で、又は異なった信号形を使用して、異なったセンサー位置又はセンサー配置で、又はある時間帯にわたって、測定したRFインピーダンスを表す。漸進的な変化は通常数分にわたって起こるので、血中分析物情報のうちいくつかのデータ点は、ある時間帯にわたって分析することができる。このようにして、実施例2では、各データセットがグルコース又は他の対象の生理学的パラメータと既知の直接的関係を有する、同種類のデータを多数セット使用する。同種類のデータの多数セットを使用することによって、他の間接的データへの依存性が除去又は低減されうる。
【実施例3】
【0119】
第3の実施例においては、直接的データが多数セット収集される。例えば、RFデータのセットを収集してもよく、また赤外線データのセットを収集してもよい。このようにして、実施例3では、各データセットがグルコース又は他の対象の生理学的パラメータと既知の直接的関係を有する、別々の直接的データを多数セット使用する。直接的データを多数セット使用することによって、他の間接的データへの依存性が除去又は低減されうる。なお、多くのさまざまな種類の直接的データセットで置き換えたり、使用してもよい。例えば、直接的データは、RFインピーダンス・データ、近赤外線データ、遠赤外線データ、偏光データ、又は蛍光データなどを含んでもよい。多数の直接的データセットを使用することによって、他の間接的データ測定への依存性を低減しながら、精度及び信頼性を向上させられることもある。図10は、そのような過程の概要を示す。処理450は前記処理50及び350と同様であるため詳細に記載しない。特徴決定処理450においては、ブロック461に示すように、前記生理学的パラメータと直接的関係を有するデータのみが収集される。ただし、多数セットが収集される。一例において、前記多数セットは、同種類のデータによるそれぞれ異なった収集体を表す(例えば、すべてRFインピーダンス・データであるが、皮膚内での深さがそれぞれ異なるもの)。他の例では、前記多数セットのそれぞれは、異なった種類のデータを表す(例えば、1セットのRFインピーダンス・データ及び1セットの赤外線データ)。さらに他の例においては、一部のデータセットが、同種類の日付の異なった収集体を有することもあり、他のデータセットは、異なった種類のデータを有することもある。つまり、広範囲の種類に及ぶ直接的データ及び収集特徴が可能である。ブロック466において、各データセットが対象の生理学的パラメータと線形関係を有するかどうかが決定される。線形関係を有する場合、データは同定処理に渡され、線形関係を有さない場合、各非線形データセットは1つ以上のアルゴリズム/テーブル/モデル465を用いて線形化される。前記ほぼ線形のデータは、分離処理467に受信される。なお、線形データセットのそれぞれが単一処理への入力信号になる単一の分離処理を用いてもよく、あるいは多数の分離処理を用いてもよい。同定された信号又は複数の信号は、スケーリングされ提示される。
【0120】
上記の詳細な記述において、本発明の新規の特徴を多様な実施態様に適用した形で示し、説明し、指摘したが、例示した装置又は過程の形態及び詳細において種々の省略、置換、及び変更が、発明の精神から逸脱することなく当業者によってなされてもよい。本発明の範囲は、上記説明によってではなく、付属の請求の範囲によって示されるものである。請求の範囲と同等の意味及び範囲内にある変更の全ては、請求の範囲に含まれるものとする。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
血中分析物の濃度レベルを推定する方法であって、
患者における複数の変数を非侵襲的に測定し、入力データのセットを得ること、
前記入力データのセットの少なくとも一部を、非線形的にフィルタし、フィルタされたデータのセットを得ること、及び
前記フィルタされたデータのセットに源分離法を適用して出力データのセットを得ることを含み、
前記複数の変数のうち少なくとも1つの第1変数が、患者の血中分析物の濃度レベルに依存し、かつ
前記複数の変数のうち少なくとも1つの第2変数が、患者の血中分析物の濃度レベルに依存しない方法。
【請求項2】
前記血中分析物が、グルコースを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記源分離法が、少なくとも一部適応的であることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記非線形的にフィルタリングすることが、少なくとも一部適応的な成分を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記少なくとも1つの第1変数が、電気インピーダンス変数、静電容量変数、及び電流変数から選択される変数を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記少なくとも1つの第1変数が、電気インピーダンス変数を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも1つの第1変数が、インピーダンス分光学変数を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記少なくとも1つの第1変数が、皮膚の静電容量変数を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記少なくとも1つの第1変数が、前記少なくとも1つの第2変数に依存することを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項10】
前記複数の変数が、皮膚温度、体温、気温、皮膚水分、血流、血圧、水和変数、ECG変数、EEG変数、皮膚装置間の圧力変数、装置の移動、気圧、酸素飽和変数、及び湿度から選択される変数を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項11】
前記複数の変数が、時刻を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記非侵襲的に測定することが、少なくとも1対の波長を、エネルギー源から患者の第1の所定領域へ放射させ、患者の第2の所定領域から放出されるエネルギーを検出することを含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記少なくとも1対の波長が、約600〜約1ミリメータの範囲内にあることを特徴とする請求項12に記載の方法。
【請求項14】
血中分析物に依存する変数を侵襲的に測定することをさらに含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項15】
前記侵襲的に測定した変数を、前記複数の変数の少なくとも1つと比較することをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記侵襲的に測定した変数を、前記フィルタリングされたデータのセットの少なくとも1つの変数と比較することをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記侵襲的に測定した変数を、前記出力データのセットの少なくとも1つの変数と比較することをさらに含むことを特徴とする請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記源分離法が、独立成分分析(Independent Component Analysis、ICA)及び独立ベクタ分析(Independent Vector Analysis、IVA)法の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項19】
非侵襲的血中分析物モニタ装置であって、
患者における血中分析物の濃度レベルに関連する分析物感受性変数を測定するように構成された分析物感受性測定部と、
患者における血中分析物の濃度レベルに関連する分析物非感受性変数を測定するように構成された分析物非感受性測定部と、
少なくとも1つの変数を非線形的にフィルタリングするように構成された非線形算出部を含む分析物算出部と、を含み、
前記分析物算出部が、前記分析物感受性変数及び前記分析物非感受性変数を入力として受信し、前記患者の血中分析物の推定濃度レベルを算出するように構成されている装置。
【請求項20】
前記血中分析物が、グルコースを含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項21】
前記分析物算出部が、少なくとも一部適応的であることを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項22】
前記分析物感受性変数が、電気インピーダンス変数、静電容量変数及び電流変数から選択される変数を含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項23】
前記分析物感受性変数が、インピーダンス変数を含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項24】
前記分析物非感受性変数が、皮膚温度、体温、気温、皮膚水分、水和変数、皮膚装置間の圧力変数、気圧、装置の移動及び湿度から選択される変数を含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項25】
前記分析物感受性測定部が、少なくとも1つの電極を含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項26】
刺激出力部をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項27】
温度測定部をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項28】
圧力測定部をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項29】
光学センサーをさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項30】
前記刺激出力部が少なくとも1つの電極を含むことを特徴とする請求項24に記載の装置。
【請求項31】
前記非線形的にフィルタリングすることが、前記少なくとも1つの変数の対数をとることを含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項32】
前記分析物算出部が、少なくとも2つの信号を分離するように構成されているブラインド源分離モジュールを含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項33】
前記ブラインド源分離モジュールが、独立成分分析(Independent Component Analysis、ICA)モジュール及び独立ベクタ分析(Independent Vector Analysis、IVA)モジュールの少なくとも1つを含むことを特徴とする請求項32に記載の装置。
【請求項34】
ディスプレイ部をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項35】
前記ディスプレイ部が、患者の血中分析物の推定濃度レベルを表示するように構成されていることを特徴とする請求項31に記載の装置。
【請求項36】
データ保存部をさらに含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項37】
前記データ保存部が、血中分析物の推定濃度レベルのデータを保存することを特徴とする請求項36に記載の装置。
【請求項38】
患者の血中分析物の推定濃度レベルを時間の関数として表示するように構成されたディスプレイ部をさらに含むことを特徴とする請求項37に記載の装置。
【請求項39】
前記装置が、腕時計を含むことを特徴とする請求項19に記載の装置。
【請求項40】
患者における血中分析物の濃度レベルを推定する方法であって、
入力変数の第1セットが侵襲的に測定した変数を含まず、
入力変数の第1セットの少なくとも1つの第1変数が、患者の血中分析物の濃度レベルによって影響され、及び
入力変数の第1セットの少なくとも1つの第2変数が、患者の血中分析物の濃度レベルによって影響されない
入力変数の第1セットを受信すること、
入力変数の第1セットの少なくとも1つを前処理して、変数の第2セット生成すること、及び
線形分離法を変数の第2セットに適用して、変数の第3セットを生成すること
を含む方法。
【請求項41】
前記血中分析物が、グルコースを含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項42】
前記入力変数の第1セットの少なくとも1つを前処理することが、入力変数の第1セットの少なくとも1つを非線形的に変換することを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項43】
前記入力変数の第1セットの少なくとも1つを前処理することが、少なくとも一部適応的であることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項44】
前記線形分離法が、ブラインド源分離法を含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項45】
前記線形分離法が、少なくとも一部適応的であることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項46】
前記ブラインド源分離法が、独立成分分析(Independent Component Analysis、ICA)法及び独立ベクタ分析(Independent Vector Analysis、IVA)法の少なくとも一方を含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項47】
前記変数の第3セットの少なくとも1つを後処理することをさらに含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項48】
非侵襲的に測定した変数と侵襲的に測定した変数の両方を含むテストデータを用いて、前記非線形変換を決定することをさらに含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項49】
ニューラルネットワークを用いて、非侵襲的に測定した変数を含むテストデータを侵襲的に測定した変数を含むテストデータと関連付けして、前記非線形変換を決定することをさらに含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項50】
非侵襲的に測定した変数と侵襲的に測定した変数の両方を含むテストデータを用いて、前記線形分離法のパラメータを決定することをさらに含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項51】
ニューラルネットワークを用い、非侵襲的に測定した変数を含むテストデータを侵襲的に測定した変数を含むテストデータと関連付けし、線形分離のパラメータを決定することをさらに含むことを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項52】
前記方法が、コンピュータに実装された方法であることを特徴とする請求項40に記載の方法。
【請求項53】
対象の生理学的パラメータを特徴決定する方法であって、
対象の生理学的パラメータと直接的関係を有する、患者のデータの第1のデータセットを収集すること、
第2のデータセットを収集すること、
処理済みの第1のデータセットが対象の生理学的パラメータとほぼ線形関係を有するように第1のデータセットを処理すること、
処理済みの第1のデータセットを独立信号に分離すること、
対象の生理学的パラメータをその源として有するパラメータ信号を同定すること、
第2のデータセットに応じてパラメータ信号をスケーリングすること及び
スケーリングしたパラメータを提示することを含む方法。
【請求項54】
前記第1のデータセットを収集することが、光学的、電気的、RF、赤外センサー、あるいはインピーダンス・センサーを用いることをさらに含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項55】
前記第2のデータセットを収集することが、対象の生理学的パラメータと直接的関係を有するデータのセットであることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項56】
前記第2のデータセットを収集することが、対象の生理学的パラメータと間接的関係を有するデータのセットであることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項57】
前記第2のデータセットを収集することが、対象の生理学的パラメータと直接的関係を有するデータのセットであることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項58】
前記第2のデータセットの収集が、患者からのものであって、生理学的パラメータを示すことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項59】
前記第2のデータセットの収集することが、患者からであって、生理学的パラメータを示さないことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項60】
前記第2のデータセットを収集することが、環境条件を示すことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項61】
処理工程によって前記第1のデータセット内のデータ値が変更されないように、前記第1のデータセットが、対象の生理学的パラメータとほぼ線形関係を有することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項62】
処理工程が、前記第1のデータセットと前記第1のデータセットがほぼ線形関係を有すると決定することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項63】
処理工程が、前記第1のデータセットと前記第1のデータセットがほぼ非線形関係を有すると決定することを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項64】
処理工程が、処理済みのデータセットを作成するために、前記第1のデータセットにアルゴリズムあるいはテーブルを適用することを含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項65】
前記分離処理が、ブラインド信号分離処理あるいは独立成分分析処理であることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項65】
前記分離処理が、ブラインド信号分離処理あるいは独立成分分析処理であることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項66】
前記分離工程が、前記第2のデータセットに合わせて適応されることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項67】
前記同定工程が、前記第2のデータセットに合わせて適応されることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項68】
前記スケーリング工程が、前記第2のデータセットに合わせて適応されることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項69】
前記提示工程が、視覚的に表示する、音声で伝える、警告を設定する、警告を鳴らす、メッセージを通知する、あるいは他の装置を作動させることを含むことを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項70】
対象の生理学的パラメータが、血中分析物、癌検出、心臓の状態、水和状態、脂肪組成、組織特徴決定、血流・血圧、電解液、脂肪、血色素、乳酸、酸素飽和、及び呼吸を含む群から選択されることを特徴とする請求項53に記載の方法。
【請求項71】
グルコースモニターであって、
ハウジングと、
RFインピーダンス・データを収集する非侵襲的センサーと、
他の患者データを収集する他のセンサーと、
測定したグルコース濃度を提示するハウジング内のディスプレイ、及び
前記RFインピーダンス・データのセットを受信する工程、
前記RFインピーダンス・データをグルコースに線形化する工程、
前記線形化したデータを、ブラインド信号源アルゴリズムを用いて分離する工程、
グルコース信号を同定する工程、
他の患者データに応じて前記グルコース信号をスケーリングする工程、及び
前記スケーリングされたグルコース信号を、測定したグルコース濃度として提示する工程、を行うハウジング内のプロセッサと、
を含むグルコースモニター。
【請求項72】
前記非侵襲的センサーが、前記ハウジング内にあることを特徴とする、請求項71に記載のグルコースモニター。
【請求項73】
前記他のセンサーが、前記ハウジング内にあることを特徴とする請求項71に記載のグルコースモニター。
【請求項74】
前記非侵襲的センサーが、前記ハウジング内にあることを特徴とする請求項71に記載のグルコースモニター。
【請求項75】
前記他のデータが、皮膚温度、皮膚湿度、非侵襲的センサーと皮膚との間の圧力、あるいは周囲温度であることを特徴とする請求項71に記載のグルコースモニター。
【請求項76】
前記プロセッサが、さらに前記他のデータ用いて前記RFインピーダンス・データのノイズをフィルタリングすることを特徴とする請求項71に記載のグルコースモニター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2010−526646(P2010−526646A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−508526(P2010−508526)
【出願日】平成20年5月12日(2008.5.12)
【国際出願番号】PCT/US2008/063469
【国際公開番号】WO2008/141306
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509311942)シグメッド,インコーポレーティッド (1)
【氏名又は名称原語表記】SIGMED,INC.
【住所又は居所原語表記】3830 Valley Center Dr.,Suite 705−632,San Diego,CA 92130
【Fターム(参考)】