説明

産業用ロボット

【課題】 フォークが長くても、これを太くすることなく、フォークの先端の垂れ下がりを補正して搬送物を容易、迅速かつ的確に搬送することのできる産業用ロボットを提供する。
【解決手段】 フォーク16は、ボルト17によりハンド15に着脱可能に取り付けられている。ハンド15には、フォーク16の下面に当接してフォーク16の先端側を押し上げるようにシム21とシム押さえ22とからなるフォーク先端位置調整手段20が取り付けられている。このシム21は、予め種々の厚さのものが用意され、フォーク16の先端が元端とほぼ同じ高さとなる厚さのものが選択されて使用される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、液晶パネル用ガラス基板等の搬送物を搬送するための産業用ロボットに係り、特にハンドに取り付けられたフォークの上に搬送物を載せて搬送する産業用ロボットに関する。
【背景技術】
【0002】
この種の産業用ロボットは、二次元ないし三次元の移動、さらには回転を行うハンドにフォークを取り付けたものであり、このフォークの上に搬送物を載せて搬送する方式が広く採用されている。この産業用ロボットのフォークは、収納カセット内に多段に載置された搬送物や処理部に置かれた搬送物の下に差し込まれ、このフォークを上昇させて搬送物をフォークの上に載せ、ハンドを移動させて搬送物を搬送する。
【0003】
搬送物が大形の液晶パネル用ガラス基板のような大きな面積を有する場合、非常に長いフォークを用いる必要があり、フォークの先端が垂れ下がってしまう。このフォークの先端の垂れ下がり量は、個々のフォークによって異なると共に、搬送物の変更に合わせてフォークの長さを変えた場合にも異なる。このため、従来、この種の産業用ロボットの位置制御は操作が煩雑であるという欠点があった。
【0004】
なお、フォークの先端の垂れ下がりを防ぐには、フォークを太くして剛性を高めればよいが、フォークを太くすると、重量が増加して操作性が悪くなり、搬送速度を低くしなければならない。そこで、従来、特開2004−148476号公報に記載のように、フォークを中空形状にすると共に、フォークの厚みを先端に向かうに従って薄くなるように構成した発明などが提案されている。これによれば、フォークの先端の垂れ下がり量を小さく抑えることはできるが、垂れ下がりをなくすことはできず、フォークが長くなれば、垂れ下がり量は大きくなり、また、フォーク全体の太さ、特に厚さを薄くすることはできない。
【0005】
また、フォークを太くし、厚くすると、収納カセット内に多段に載置される搬送物の間隔を大きくする必要が生じ、大形の収納カセットを必要とすると共に、産業用ロボットの移動範囲を拡大させなければならない。
【特許文献1】特開2004−148476号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、フォークが長くても、これを太くすることなく、フォークの先端の垂れ下がりを補正して搬送物を容易、迅速かつ的確に搬送することのできる産業用ロボットを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するためのこの発明は、ハンドに、搬送物を載せるフォークを取り付けてなる産業用ロボットにおいて、前記フォークを前記ハンドに着脱可能に取り付けると共に、前記ハンドには前記フォークの下面に当接して該フォークの先端側を押し上げるためのフォーク先端位置調整手段を設けたことを特徴としている。
【0008】
前記フォーク先端位置調整手段は、前記ハンドに着脱可能に取り付けられた高さ調整駒からなるもの、また、シムと、このシムを介して前記ハンドに着脱可能に取り付けられたシム押さえからなるもの、さらにまた、前記フォークの下面に当接するようにこの下面に向けて出入可能に前記ハンドに取り付けられた高さ調整ねじからなるもの、さらにまた、前記フォークの下面に向けて出入可能に前記ハンドに取り付けられた高さ調整駒と、この高さ調整駒の出入量を調整するためのくさび又はねじとからなるものであってよい。
【0009】
また、前記フォークは、幅方向の取付位置を変更可能に前記ハンドに取り付けられ、前記フォーク先端位置調整手段は、前記フォークの幅方向の各取付位置にそれぞれ対応可能に設けられていてもよい。
【発明の効果】
【0010】
この発明は、上記のように構成したため、フォークの先端が垂れ下がっても、フォーク先端位置調整手段によりフォークの先端の垂れ下がりを容易かつ的確に補正することができる。このため、産業用ロボットの位置制御が容易となり、操作性が良くなると共に、フォークの太さを増大させないため、産業用ロボット自体の操作性を阻害することもなく、搬送物を容易、迅速かつ的確に搬送することができる効果を得ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下図1ないし図3によりこの発明の一実施形態例について説明する。図1は、この発明を適用した産業用ロボットの一例を示すもので、10はベース、11は旋回台、12は昇降・回転軸、13は第一旋回アーム、14は第二旋回アーム、15はハンド、16はフォークである。
【0012】
第一及び第二旋回アーム13、14は、互いに逆方向に旋回してハンド15を昇降・回転軸12の半径方向へ移動させる。このときハンド15は、第一及び第二旋回アーム13、14の旋回に連動して第二旋回アーム14上で回転し、ハンド15の向きを一定に保つ。また、ハンド15は、上記連動と別に、回転することもできる。さらに、ハンド15は、昇降・回転軸12の昇降によって上下動し、旋回台11の旋回によって昇降・回転軸12の円周方向へ移動する。
【0013】
図2は、ハンド15及びフォーク16の拡大詳細平面図であり、この図2に示すように、2本のフォーク16がボルト17によりハンド15の上面に着脱可能に取り付けられている。図3は、図2のA−A線による断面図であり、この図3に示すように、ハンド15の先端側には段差部15aが設けられている。この段差部15aには、各フォーク16の下面に対応する位置にフォーク先端位置調整手段20を構成するシム21とシム押さえ22がボルト23により着脱可能に取り付けられている。
【0014】
シム21は、予め種々の厚さのものが用意されており、図3に示すように、シム押さえ22の上端がフォーク16の下面を押し上げ、フォーク16の先端が元端部とほぼ同じ高さとなるような厚さのシム21が選択されている。
【0015】
次いでこの産業用ロボットの作用について説明する。フォーク16は、これが長いと図3に示すように、先端が垂れ下がる。この垂れ下がりは、シム21の厚さを選択して図3に示すように、フォーク16の先端が元端部とほぼ同じ高さとなるようすることにより補正される。そこで、図示しない搬送物に対するハンド15の高さに関する位置制御が容易となり、操作性が良くなる。また、フォーク16の太さが増加しないため、産業用ロボットの負荷を増加させることがなく、産業用ロボット自体の操作性を阻害することもない。このため搬送物を容易、迅速かつ的確に搬送することができる。
【0016】
前述した実施形態例では、フォーク先端位置調整手段20を、シム21、シム押さえ22及びこれらをハンド15に取り付けるボルト23により構成し、予め種々の厚さのシム21を用意し、最適な厚さのシム21を選択して使用する例を示したが、この発明は、これに限定されるものではなく、シム21を用いず、シム押さえ22をこれと同様の形状をした高さ調整駒として種々の厚さのものを予め用意し、最適な厚さの高さ調整駒を選択して使用するか、又は1つの高さ調整駒のみを用意し、最適な厚さとなるようにその場で加工して使用するようにしてもよい。
【0017】
図4は、この発明の他の実施形態例を示すもので、フォーク16は、ボルト17を緩めることにより、ハンド15に設けたT溝15bに沿って移動され、任意の位置でボルト17を締めることにより、幅方向の任意の位置に固定されるように取り付けられている。そして、前述したシム押さえ22と同様のシム押さえ22Aが、フォーク16の幅方向の各取付位置にそれぞれ対応可能な範囲にわたる長さに形成されて2本のボルトによってハンド15取り付けられている。なお、シム押さえ22Aの下には、このシム押さえ22Aと同じ長さの前述したシム21と同様のシムが配置されている。このシム押さえ22A及びその下の図示されていないシムは、これらに代えて前述した高さ調整駒と同様のものとしてもよい。
【0018】
図5は、この発明のさらに他の実施形態例を示すもので、フォーク先端位置調整手段20として、フォーク16の下面に当接するように、この下面に向けて出入する高さ調整ねじ24をハンド15に設けたものである。なお、25は、ロックナットである。これによれば、フォーク16の先端高さ位置は任意に定められる。
【0019】
この図5に示す実施形態例においては、フォーク16の幅方向取付位置を複数箇所に変更できるようにし、各取付位置にそれぞれ対応させて高さ調整ねじ24を複数設けてもよい。
【0020】
図6は、この発明のさらに他の実施形態例を示すもので、フォーク先端位置調整手段20として、フォーク16の下面に向けて出入する高さ調整駒26をハンド15に設けたものである。この高さ調整駒26の下端は傾斜しており、この傾斜した下面はくさび27で受けられている。くさび27は、ねじ28により図6において左右に移動されて高さ調整駒26を上下に移動させる。なお、29は、ロックナットである。これによっても、図5に示した実施形態例と同様に、フォーク16の先端高さ位置は任意に定められる。
【0021】
図7は、この発明のさらに他の実施形態例を示すもので、図6に示した実施形態例と同様に、フォーク先端位置調整手段20として、フォーク16の下面に向けて出入する高さ調整駒30をハンド15に設けたものであるが、この高さ調整駒30をねじ31により上下に移動させるようにしたものである。なお、32は、ロックナットである。これによっても、図5及び図6に示した実施形態例と同様に、フォーク16の先端高さ位置は任意に定められる。
【0022】
これらの図6及び図7に示す実施形態例においては、フォーク16を図4に示したように幅方向の任意の位置に固定可能に取り付け、高さ調整駒26、30を、図4に示したシム押さえ22Aと同様に、フォーク16の幅方向の各取付位置にそれぞれ対応可能な範囲にわたる長さに形成してもよい。このとき、くさび27又はねじ31は、高さ調整駒26、30の幅方向の中央に1つ設けるか、又は両端にそれぞれ設けてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0023】
この発明は、液晶パネル用ガラス基板等の搬送物を搬送するための産業用ロボットのように長いフォークを備えた産業用ロボットに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】この発明の一実施形態例を示す産業用ロボットの概要正面図。
【図2】図1に示した産業用ロボットのハンド及びフォークの拡大詳細平面図。
【図3】図2のA−A線による断面図。
【図4】この発明の他の実施形態例を示す産業用ロボットのハンド及びフォークの拡大詳細平面図。
【図5】この発明のさらに他の実施形態例を示す図3相当の断面図。
【図6】この発明のさらに他の実施形態例を示す図3相当の断面図。
【図7】この発明のさらに他の実施形態例を示す図3相当の断面図。
【符号の説明】
【0025】
10 ベース
11 旋回台
12 昇降・回転軸
13 第一旋回アーム
14 第二旋回アーム
15 ハンド
16 フォーク
17、23 ボルト
20 フォーク先端位置調整手段
21 シム
22、22A シム押さえ
24 高さ調整ねじ
25、29、32 ロックナット
26、30 高さ調整駒
27 くさび
28、31 ねじ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハンドに、搬送物を載せるフォークを取り付けてなる産業用ロボットにおいて、前記フォークを前記ハンドに着脱可能に取り付けると共に、前記ハンドには前記フォークの下面に当接して該フォークの先端側を押し上げるためのフォーク先端位置調整手段を設けたことを特徴とする産業用ロボット。
【請求項2】
前記フォーク先端位置調整手段は、前記ハンドに着脱可能に取り付けられた高さ調整駒からなることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項3】
前記フォーク先端位置調整手段は、シムと、このシムを介して前記ハンドに着脱可能に取り付けられたシム押さえからなることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項4】
前記フォーク先端位置調整手段は、前記フォークの下面に当接するようにこの下面に向けて出入可能に前記ハンドに取り付けられた高さ調整ねじからなることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項5】
前記フォーク先端位置調整手段は、前記フォークの下面に向けて出入可能に前記ハンドに取り付けられた高さ調整駒と、この高さ調整駒の出入量を調整するためのくさびとからなることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項6】
前記フォーク先端位置調整手段は、前記フォークの下面に向けて出入可能に前記ハンドに取り付けられた高さ調整駒と、この高さ調整駒の出入量を調整するためのねじとからなることを特徴とする請求項1に記載の産業用ロボット。
【請求項7】
前記フォークは、幅方向の取付位置を変更可能に前記ハンドに取り付けられ、前記フォーク先端位置調整手段は、前記フォークの幅方向の各取付位置にそれぞれ対応可能に設けられていることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の産業用ロボット。


【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate


【公開番号】特開2006−110662(P2006−110662A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299476(P2004−299476)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000003458)東芝機械株式会社 (843)
【Fターム(参考)】