説明

産業車両用アンダーカバー構造

【課題】 産業車両のエンジンルーム内の清掃作業を簡単に行えるようにする。
【解決手段】 産業車両用アンダーカバー構造において、複数の第1の開孔20aが形成された固定プレート20を車両本体の機台1の底部10に固定し、複数の第1の開孔20aにそれぞれ対応する複数の第2の開孔21aが形成されたスライドプレート21を固定プレート20の下方に設けるとともに、各々対応する第1、第2の開孔20a、21aが上下に整列することにより車両本体の内部が外部と連通する連通位置と、各々対応する第1、第2の開孔20a、21aが上下に整列しないことにより第1の開孔20aがスライドプレート21により閉塞される閉塞位置とをとり得るように、スライドプレート21が固定プレート20に対してスライド可能に設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、産業車両において、車両本体の底部に設けられるアンダーカバーの構造の改良に関する。
【背景技術】
【0002】
産業車両の車両本体の底部には、一般に、アンダーカバーが設けられている。従来のアンダーカバーは、例えば、特開2000−79886号公報の図5に示すように、その中央に貫通形成された開孔部(ドレン孔)を有しており、当該ドレン孔を通してエンジンのオイル交換作業が行えるようになっている。
【0003】
ところが、この場合には、アンダーカバーのドレン孔が常時開口状態にあるため、車両の走行中に跳ね上げた石や砂等の異物がドレン孔を通って車両本体の内部に侵入する恐れがある。
【0004】
そこで、同公報の図3および図4に示すように、車両本体の底面開口部にスライド式のアンダーカバーを設けた構造が提案されている。アンダーカバーは、サイドフレーム下部に取り付けられたガイドレールに沿って前後方向にスライド自在に設けられており、車両本体の底面開口部の全面を覆う閉塞位置と、当該底面開口部の一部を開放する一部開放位置とをとり得るようになっている。
【0005】
この場合、車両走行中には、アンダーカバーを閉塞位置におくことにより、車両本体の内部に石や砂等の異物が侵入するのが防止され、また、オイル交換時には、アンダーカバーを一部開放位置におくことにより、アンダーカバーを取り外すことなくオイル交換作業を行えるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
産業車両の走行中に車両本体の内部に侵入する異物は、石や砂に限らない。例えば、スキッドステアローダ等の産業車両を畜産業に使用すると、車両本体の底面に形成された隙間から、わら等の繊維状の異物が内部に侵入して、エンジンルーム内に堆積する場合がある。これを放置すると、エンジンルーム内の熱により加熱され、最悪の場合には、火災を引き起こす恐れがあるため、好ましくない。
【0007】
ところが、上記公報に記載されたようなアンダーカバー構造では、アンダーカバーをスライドさせても、アンダーカバー上に堆積したわら等の繊維状の異物は、アンダーカバーとともに移動するだけであって、アンダーカバーを閉塞位置から一部開放位置に移動させただけでは、アンダーカバー上の異物を簡単に除去することはできない。この場合、アンダーカバーを移動させて生じた開口部から作業者が手を入れて、アンダーカバー上に堆積した異物を取り出す作業が必要になり、エンジンルームの清掃作業が面倒である。
【0008】
なお、この場合、アンダーカバーをガイドレールから抜き取ることにより、開口部の全面を開放することで、アンダーカバー上に堆積した異物を除去することも可能であるが、この場合には、清掃作業後にアンダーカバーを再度ガイレールに嵌め込む作業が必要になり、面倒である。
【0009】
本発明は、このような従来の実情に鑑みてなされたものであり、本発明が解決しようとする課題は、産業車両において、底部から車両本体内部への異物の侵入を防止でき、かつ車両本体内部に異物が侵入した場合でも侵入した異物を車両本体外部に容易に排出できるアンダーカバー構造を提供することにある。別の言い方をすれば、本発明は、アンダーカバーを取り外すことなく、産業車両のエンジンルーム内の清掃作業を簡単に行えるアンダーカバー構造を提供しようとしている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1の発明に係る産業車両用アンダーカバー構造においては、複数の第1の開孔が形成された固定プレートを車両本体の底部に固定し、複数の第1の開孔に対応する複数の第2の開孔が形成されたスライドプレートを固定プレートの下方に設けるとともに、対応する第1、第2の開孔が上下に整列することにより車両本体の内部が外部と連通する連通位置と、対応する第1、第2の開孔が上下に整列しないことにより第1の開孔がスライドプレートにより閉塞される閉塞位置とをとり得るように、スライドプレートが固定プレートに対してスライド可能に設けられている。
【0011】
請求項1の発明によれば、産業車両の運転時には、スライドプレートをスライドさせて閉塞位置におくことにより、固定プレートの第1の開孔をスライドプレートで閉塞する。これにより、運転時に、石や砂等の異物が車両本体の内部に侵入するのを防止できる。
【0012】
また、車両本体内部の清掃作業時には、閉塞位置にあったスライドプレートを連通位置までスライドさせる。このとき、車両本体の内部にわら等の繊維状の異物が侵入していてスライドプレート上にこのような異物が堆積していたとすると、この繊維状の異物は、スライドプレートの移動とともに移動しようとする。ところが、そのとき、スライドプレートの上方に配置された固定プレートの第1の開孔の開口縁部に繊維状の異物が干渉するため、繊維状の異物は、その移動が規制されて、固定プレートの第1の開孔の開孔縁部の位置に留まろうとする。
【0013】
このため、スライドプレートが連通位置まで移動して、スライドプレートの第2の開孔が固定プレートの第1の開孔と上下に整列したとき、スライドプレート上に堆積しかつ固定プレートの第1の開孔の開孔縁部の位置に留まっていた繊維状の異物は、スライドプレートの第2の開孔を通って自重で下方に落下することにより、車両本体の外部に排出されることになる。
【0014】
この場合には、車両本体内部に侵入していたわら等の繊維状の異物は、スライドプレートを閉塞位置から連通位置まで移動させるだけで、スライドプレートの第2の開孔を通って自重で簡単に外部に排出されるので、スライドプレートを取り外すことなく、車両本体内部の清掃作業を簡単に行えるようになる。
【0015】
請求項2の発明では、請求項1において、第1および第2の開孔が、スライドプレートのスライド方向にそれぞれ所定間隔を隔てて設けられている。
【0016】
請求項3の発明では、請求項1において、第1および第2の開孔が、スライドプレートのスライド方向と交差する方向に延びる帯状の開孔である。
【0017】
請求項4の発明では、請求項1において、スライドプレートのスライド方向が当該車両本体の前後方向または幅方向である。
【0018】
請求項5の発明では、請求項1において、スライドプレートが、閉塞位置で固定プレートに係止するための係止部材が有している。
【0019】
この場合には、産業車両の運転時には、係止部材によりスライドプレートを閉塞位置で固定プレートに係止しておくことにより、固定プレートの第1の開孔の閉塞状態を維持でき、運転時に石や砂等の異物が車両本体の内部に侵入するのを防止できる。また、車両本体内部の清掃作業時には、係止部材によるスライドプレートの係止状態を解除して、スライドプレートを連通位置まで移動させ、スライドプレートの第2の開孔を固定プレートの第1の開孔と上下に整列させる。
【0020】
請求項6の発明では、請求項1において、スライドプレートには、当該スライドプレートをスライド方向に引き出すための取っ手が取り付けられている。
【0021】
請求項7の発明に係る産業車両用アンダーカバー構造は、車両本体の底部に固定され、中央に開口部を有する枠状部材と、枠状部材の下面の一端に上下方向回動可能に設けられ、開口部を覆う閉塞位置および開口部を開放する開放位置をとり得る開閉プレートとを備えている。
【0022】
請求項7の発明によれば、産業車両の運転時には、開閉プレートを上方に回動させて閉塞位置におくことにより、枠状部材の開口部を開閉プレートで閉塞する。これにより、運転時に、石や砂等の異物が車両本体の内部に侵入するのを防止できる。
【0023】
また、車両本体内部の清掃作業時には、閉塞位置にあった開閉プレートを下方に回動させて開放位置まで移動させる。このとき、車両本体の内部にわら等の繊維状の異物が侵入していて開閉プレート上にこのような異物が堆積していたとすると、この繊維状の異物は、開閉プレートが下方に移動すると、開閉プレートに沿って自重で下方に移動して、外部に排出されることになる。
【0024】
この場合には、車両本体内部に侵入していたわら等の繊維状の異物は、開閉プレートを閉塞位置から開放位置まで移動させるだけで、開閉プレートに沿って自重で下方に移動して外部に排出されるので、開閉プレートを取り外すことなく、車両本体内部の清掃作業を簡単に行えるようになる。
【0025】
請求項8の発明に係る産業車両用アンダーカバー構造においては、車両本体の底部に、当該底部の開口を覆うプレートが取り付けられており、プレートには、複数の開孔が形成されている。各開孔には、各々上下方向回動可能な複数の開閉プレート部材が設けられている。開閉プレート部材は、対応する開孔を覆う閉塞位置と、対応する開孔を開放する開放位置とをそれぞれとり得るようになっている。
【0026】
請求項8の発明によれば、産業車両の運転時には、各開閉プレート部材をそれぞれ上方に回動させて閉塞位置におくことにより、プレートの各開孔、したがって車両本体の底部の開口を各開閉プレート部材で閉塞する。これにより、運転時に、石や砂等の異物が車両本体の内部に侵入するのを防止できる。
【0027】
また、車両本体内部の清掃作業時には、閉塞位置にあった各開閉プレート部材をそれぞれ下方に回動させて開放位置まで移動させる。このとき、車両本体の内部にわら等の繊維状の異物が侵入していて各開閉プレート部材上にこのような異物が堆積していたとすると、この繊維状の異物は、各開閉プレート部材がそれぞれ下方に移動すると、自重で下方に移動して、外部に排出されることになる。
【0028】
この場合には、車両本体内部に侵入していたわら等の繊維状の異物は、各開閉プレート部材を閉塞位置から開放位置まで移動させるだけで、自重で下方に移動して外部に排出されるので、開閉プレート部材を取り外すことなく、車両本体内部の清掃作業を簡単に行えるようになる。しかも、この場合には、車両本体の底部の開口を開閉するのに、複数の開閉プレート部材を用いるようにしたので、単一の開閉プレートを用いる場合に比べて、個々の開閉プレート部材の重量を軽減でき、これにより、開閉作業ひいては車両本体内部の清掃作業が容易になる。
【0029】
請求項9の発明では、請求項1、7または8のいずれかにおいて、当該産業車両がスキッドステアローダ、ホイールローダまたはフォークリフトである。
【発明の効果】
【0030】
以上のように、本発明の第1の発明によれば、固定プレートを車両本体の底部に固定し、スライドプレートを固定プレートの下方にスライド可能に設けたことにより、連通位置でスライドプレートの第2の開孔が固定プレートの第1の開孔と上下に整列して車両本体の内外部を連通させるとともに、閉塞位置でスライドプレートが固定プレートの第1の開孔を閉塞させるようにしたので、車両運転時には、スライドプレートを閉塞位置におくことで、固定プレートの第1の開孔をスライドプレートで閉塞でき、石や砂等の異物が車両本体の内部に侵入するのを防止できるとともに、車両本体内部の清掃作業時には、スライドプレートを閉塞位置から連通位置までスライドさせることで、スライドプレート上に堆積していたわら等の繊維状の異物が、スライドプレートの第2の開孔を通って自重で下方に落下して、車両本体の外部に排出されることになる。
【0031】
この場合には、車両本体内部に侵入していたわら等の繊維状の異物は、スライドプレートを閉塞位置から連通位置まで移動させるだけで、スライドプレートの第2の開孔を通って自重で外部に排出されるので、スライドプレートを取り外すことなく、車両本体内部の清掃作業を簡単に行えるようになる。
【0032】
また、本発明の第2の発明によれば、枠状部材を車両本体の底部に固定し、開閉プレートを枠状部材の下面の一端に上下方向回動可能に設けたことにより、閉塞位置で開閉プレートが枠状部材の開口部を覆うとともに、開放位置で開閉プレートが枠状部材の開口部を開放するようにしたので、車両運転時には、開閉プレートを閉塞位置におくことで、枠状部材の開口部を開閉プレートで閉塞でき、石や砂等の異物が車両本体の内部に侵入するのを防止できるとともに、車両本体内部の清掃作業時には、開閉プレートを下方に回動させて開放位置まで移動させることで、開閉プレート上に堆積していたわら等の繊維状の異物が、開閉プレートに沿って自重で下方に移動して、車両本体の外部に排出されることになる。
【0033】
この場合には、車両本体内部に侵入していたわら等の繊維状の異物は、開閉プレートを閉塞位置から開放位置まで回動させるだけで、開閉プレートに沿って自重で下方に移動して外部に排出されるので、開閉プレートを取り外すことなく、車両本体内部の清掃作業を簡単に行えるようになる。
【0034】
さらに、本発明の第3の発明によれば、車両本体の底部の開口を覆うプレートを取り付けるとともに、プレートに形成した複数の開孔の各々に上下方向回動可能な開閉プレート部材をそれぞれ設けたことにより、閉塞位置で開閉プレート部材が対応する開孔を覆うとともに、開放位置で開閉プレート部材が対応する開孔を開放するようにしたので、
車両運転時には、各開閉プレート部材をそれぞれ閉塞位置におくことで、プレートの各開孔を閉塞でき、石や砂等の異物が車両本体の内部に侵入するのを防止できるとともに、車両本体内部の清掃作業時には、各開閉プレート部材をそれぞれ下方に回動させて開放位置まで移動させることで、各開閉プレート部材上に堆積していたわら等の繊維状の異物が、自重で下方に移動して、車両本体の外部に排出されることになる。
【0035】
この場合には、車両本体内部に侵入していたわら等の繊維状の異物は、各開閉プレート部材を閉塞位置から開放位置まで移動させるだけで、自重で下方に移動して外部に排出されるので、開閉プレート部材を取り外すことなく、車両本体内部の清掃作業を簡単に行えるようになる。しかも、この場合には、車両本体の底部の開口を開閉するのに、複数の開閉プレート部材を用いるようにしたので、単一の開閉プレートを用いる場合に比べて、個々の開閉プレート部材の重量を軽減でき、これにより、開閉作業ひいては車両本体内部の清掃作業が容易になる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の第1の実施例によるアンダーカバー構造体を採用するスキッドステアローダの機台部分を示す斜視図である。
【図2】前記アンダーカバー構造体(図1)の分解組立図である。
【図3】(a)は前記アンダーカバー構造体(図1)を構成する固定プレートの平面図、(b)は前記アンダーカバー構造体(図1)を構成するスライドプレートの平面図である。
【図4】前記アンダーカバー構造体(図1)の車両運転時の状態を示す平面図である。
【図5】前記アンダーカバー構造体(図1)のエンジンルーム内清掃作業時の状態を示す平面図である。
【図6】本発明の第2の実施例によるアンダーカバー構造体を示す全体斜視図である。
【図7】本発明の第3の実施例によるアンダーカバー構造体を示す縦断面概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の実施例を添付図面に基づいて説明する。
<第1の実施例>
図1ないし図5は、本発明の第1の実施例による産業車両用アンダーカバー構造を説明するための図である。ここでは、産業車両としてスキッドステアローダを例にとって説明する。なお、図1中、左側が車両前側であり、右側が車両後側である。以下、車両前側を前側、車両後側を後側、車両前後方向を前後方向、車両前後方向と直交する車両幅方向を幅方向とそれぞれ呼称することにする。
【0038】
図1は、このスキッドステアローダの車両本体を構成する機台を示している。機台1には、エンジンが据え付けられるようになっている。底部10の開口部分には、本発明の一実施例によるアンダーカバー構造体2が設けられている。
【0039】
アンダーカバー構造体2は、機台1の底部10に固定される固定プレート20と、固定プレート20の下方に前後方向スライド可能に設けられたスライドプレート21とを備えている。
【0040】
図2および図3(a)に示すように、固定プレート20は、例えば矩形状の固定プレート本体20Aを有している。固定プレート本体20Aには、複数(ここでは4個)の第1の開孔20aが貫通形成されている。各第1の開孔20aは、前後方向に所定間隔を隔てて配置されるとともに、それぞれ幅方向に帯状に延びている。固定プレート本体20Aの下面において幅方向両端部には、一対のガイドレール20bが配設されている。これらのガイドレール20bは、スライドプレート21を下方から前後方向スライド自在に支承するためのものである。固定プレート本体20Aの前側端部中央には、ピン孔20cが貫通形成されている。また、固定プレート本体20Aの幅方向両端縁部には、固定プレート20を機台1の底部10に固定するための取付ボルト(図示せず)が挿入されるボルト孔20dが貫通形成されている。
【0041】
図2および図3(b)に示すように、スライドプレート21は、同様に、例えば矩形状のスライドプレート本体21Aを有しており、スライドプレート本体21Aには、複数(ここでは3個)の第2の開孔21aが貫通形成されている。各第2の開孔21aは、前後方向に所定間隔を隔てて配置されるとともに、それぞれ幅方向に帯状に延びている。各第2の開孔21aの間隔は、固定プレート20の各第1の開孔20aの間隔と実質的に同一であり、対応する第1、第2の開孔20a、21aは、上下に整列し得るようになっている。スライドプレート21は、固定プレート20の各ガイドレール20bに対して抜き差し自在になっている。なお、固定プレート20およびスライドプレート21間の上下の隙間はできるだけ小さい方が好ましい。これは、両プレート20、21間に異物が混入するのを防止するためである。また、スライドプレート本体21Aの前側端部中央には、ピン孔21cが貫通形成されている。さらに、スライドプレート21の前端には、作業者がスライドプレート21を引き出すための取っ手21bが取り付けられている。
【0042】
アンダーカバー構造体2の組立時には、スライドプレート21が固定プレート20の各ガイドレール20bに前後方向スライド自在に支持されており、図4に示すように、スライドプレート21の第2の開孔21aが固定プレート20の対応する第1の開孔20aと上下に整列しない(つまり隣り合う各第1の開孔20aの間に第2の開孔21aが配置される)ことにより、固定プレート20の第1の開孔20aがスライドプレート21(つまりスライドプレート21において第2の開孔21aが形成されていない領域部分)により閉塞される閉塞位置と、図5に示すように、スライドプレート21の第2の開孔21aが固定プレート20の対応する第1の開孔20aと上下に整列することにより、機台の内部が外部と連通する連通位置とをとり得るようになっている。
【0043】
また、図4に示す閉塞位置においては、スライドプレート21のピン孔21cが固定プレート20のピン孔20cと上下に整列している。これらのピン孔20c、21cには、下方から係止ピン3(図2)が挿入されるようになっている。係止ピン3の先端には、径方向に出没自在な係止突起3aが設けられており、ピン孔20c、21cへの係止ピン3の挿入後、係止突起3aがピン孔20cに係合することで、スライドプレート21が固定プレート20に対して閉塞位置で保持されるようになっている。
【0044】
上述のように構成されるアンダーカバー構造体においては、車両運転時には、スライドプレート21をスライドさせて閉塞位置におくことにより(図1、図4参照)、固定プレート20の第1の開孔20aをスライドプレート21で閉塞する。これにより、運転時に、石や砂等の異物が車両本体の機台内部(つまりエンジンルーム内部)に侵入するのを防止できる。
【0045】
また、機台内部の清掃作業時には、閉塞位置にあったスライドプレート21を取っ手21bを用いて連通位置までスライドさせる(図5参照)。このとき、車両本体の機台内部にわら等の繊維状の異物が侵入していてスライドプレート21上にこのような異物が堆積していたとすると、この繊維状の異物は、スライドプレート21の移動とともに移動しようとする。ところが、そのとき、スライドプレート21の上方に配置された固定プレート20の第1の開孔20aの開口縁部に繊維状の異物が干渉するため、繊維状の異物は、その移動が規制されて、固定プレート20の第1の開孔20aの開孔縁部の位置に留まろうとする。
【0046】
このため、スライドプレート21が連通位置まで移動して、スライドプレート21の第2の開孔21aが固定プレート20の第1の開孔20aと上下に整列したとき、スライドプレート21上に堆積しかつ固定プレート20の第1の開孔20aの開孔縁部の位置に留まっていた繊維状の異物は、スライドプレート21の第2の開孔21aを通って自重で下方に落下することにより、車両本体外部に排出されることになる。
【0047】
この場合には、車両本体の機台内部に侵入していたわら等の繊維状の異物は、スライドプレート21を閉塞位置(図4)から連通位置(図5)まで移動させるだけで、スライドプレート21の第2の開孔21aを通って自重で外部に排出されるので、スライドプレート21を固定プレート20から取り外すことなく、車両本体の機台内部(エンジンルーム内部)の清掃作業を簡単に行えるようになる。
【0048】
<第2の実施例>
図6は、本発明の第2の実施例によるアンダーカバー構造体を示している。同図において、前記第1の実施例と同一または相等部分には、「’」付きの同一符号が用いられている。
【0049】
図6に示すように、アンダーカバー構造体2’は、機台の底部に固定される枠状部材20’と、枠状部材20’の下方に上下方向回動可能に設けられた開閉プレート21’とを備えている。
【0050】
枠状部材20’には、中央に単一の開口部20’aが貫通形成されている。また、枠状部材20’の幅方向(または前後方向)両端縁部には、枠状部材20’を機台の底部に固定するための取付ボルト(図示せず)が挿入されるボルト孔20’dが貫通形成されている。
【0051】
開閉プレート21’は、その前後方向の一端部(ここでは後側端部)が枠状部材20’の下面の一端(ここでは後側端部)にヒンジ25を介して上下方向回動可能に設けられている。開閉プレート21’は、枠状部材20’に下方から重なって、枠状部材20’の開口部20’aを覆う閉塞位置と、枠状部材20’の下方に回動して、枠状部材20’の開口部20’aを開放する開放位置とをとり得るようになっている。
【0052】
また、開閉プレート21’の前側端部中央には、係止孔21’cが貫通形成されている。一方、枠状部材20’の下面において前側端部中央には、係止孔21c’に上方から嵌入し得る係止突起20’eが設けられている。係止突起20’eには、幅方向の貫通孔20’fが形成されている。貫通孔20’fは、係止突起20’eが係止孔21c’に嵌入したとき、開閉プレート21’の下方に位置するようになっており、このとき、当該貫通孔20’fには、係止ピン(図示せず)が取り付けられる。これにより、開閉プレート21’が閉塞位置で保持されるようになっている。
【0053】
上述のように構成されるアンダーカバー構造体においては、車両運転時には、開閉プレート21’を上方に回動させて閉塞位置におくことにより、枠状部材20’の開口部20’aを開閉プレート21’で閉塞する。これにより、運転時に、石や砂等の異物が車両本体の機台内部(エンジンルーム内部)に侵入するのを防止できる。
【0054】
また、機台内部の清掃作業時には、閉塞位置にあった開閉プレート21’を下方に回動させて開放位置まで移動させる。このとき、車両本体の内部にわら等の繊維状の異物が侵入していて開閉プレート21’上にこのような異物が堆積していた場合でも、この繊維状の異物は、開閉プレート21’が下方に移動することで、開閉プレート21’に沿って自重で下方に移動して、外部に排出されることになる。
【0055】
この場合には、車両本体内部に侵入していたわら等の繊維状の異物は、開閉プレート21’を閉塞位置から開放位置まで移動させるだけで、開閉プレート21’に沿って自重で下方に移動して外部に排出されるので、開閉プレート21’を枠状部材20’から取り外すことなく、車両本体の機台内部(エンジンルーム内部)の清掃作業を簡単に行えるようになる。
【0056】
<第3の実施例>
図7は、本発明の第3の実施例によるアンダーカバー構造体を示している。同図において、前記第2の実施例と同一または相等部分は、「’」の代わりに「”」を付けた同一符号で示されている。
【0057】
図7に示すように、アンダーカバー構造体2”は、機台の底部に固定される固定プレート20”を有している。固定プレート20”には、複数の開孔20”aが貫通形成されている。固定プレート20”の下方には、各開孔20”aに対応する位置に開閉プレート部材21”がそれぞれ設けられている。開閉プレート部材21”は、それぞれヒンジ25”を介して上下方向回動可能に設けられており、対応する開孔20”aを覆う閉塞位置と、対応する開孔20”aを開放する開放位置とをそれぞれとり得るようになっている。なお、図示していないが、各開閉プレート部材21”には、閉塞位置で固定プレート20”に係止するための係止ピンが設けられている。
【0058】
上述のように構成されるアンダーカバー構造体においては、車両運転時には、各開閉プレート部材21”をそれぞれ上方に回動させて閉塞位置におくことにより(図7実線参照)、固定プレート20”の各開孔20”aを各開閉プレート部材21”で閉塞する。これにより、運転時に、石や砂等の異物が車両本体の機台内部(エンジンルーム内部)に侵入するのを防止できる。
【0059】
また、車両本体内部の清掃作業時には、閉塞位置にあった各開閉プレート部材21”をそれぞれ下方に回動させて開放位置まで移動させる(図7一点鎖線参照)。このとき、車両本体の内部にわら等の繊維状の異物が侵入していて各開閉プレート部材21”上にこのような異物が堆積していた場合でも、この繊維状の異物は、各開閉プレート部材21”がそれぞれ下方に移動することで、自重で下方に移動して、外部に排出されることになる。
【0060】
この場合には、車両本体内部に侵入していたわら等の繊維状の異物は、各開閉プレート部材21”を閉塞位置から開放位置まで移動させるだけで、自重で下方に移動して外部に排出されるので、開閉プレート部材21”を固定プレート20”から取り外すことなく、車両本体の機台内部(エンジンルーム内部)の清掃作業を簡単に行えるようになる。しかも、この場合には、車両本体の底部の開口を開閉するのに、複数の開閉プレート部材を用いるようにしたので、単一の開閉プレートを用いる場合に比べて、個々の開閉プレート部材の重量を軽減でき、これにより、開閉作業ひいては車両本体の機台内部の清掃作業が容易になる。
【0061】
<他の実施例>
前記第1の実施例では、スライドプレートが車両前後方向にスライド可能に設けられた例を示したが、スライドプレートは車両幅方向にスライド可能に設けられていてもよい。この場合、固定プレート20に形成される複数の第1の開孔20aおよびスライドプレート21に形成される複数の第2の開孔21aは、いずれも車両幅方向に所定間隔を隔てて配置される。
【0062】
<他の適用例>
前記実施例では、本発明によるアンダーカバー構造がスキッドステアローダに適用された例を示したが、本発明はその他の産業車両(例えばホイールローダやフォークリフト)にも同様に適用可能である。
【産業上の利用可能性】
【0063】
以上のように、本発明は、エンジンルーム内の清掃作業が必要となるスキッドステアローダやホイールローダ等の産業車両に適している。
【符号の説明】
【0064】
1: 機台
10: 底部

2: アンダーカバー構造体
20: 固定プレート
20a: 第1の開孔
21: スライドプレート
21a: 第2の開孔
21b: 取っ手
【先行技術文献】
【特許文献】
【0065】
【特許文献1】特開2000−79886号公報(図3ないし図5参照)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
産業車両において車両本体の底部に設けられるアンダーカバー構造であって、
複数の第1の開孔が形成された固定プレートを前記底部に固定し、
前記複数の第1の開孔に対応する複数の第2の開孔が形成されたスライドプレートを前記固定プレートの下方に設けるとともに、対応する前記第1、第2の開孔が上下に整列することにより車両本体の内部が外部と連通する連通位置と、対応する前記第1、第2の開孔が上下に整列しないことにより前記第1の開孔が前記スライドプレートにより閉塞される閉塞位置とをとり得るように、前記スライドプレートが前記固定プレートに対してスライド可能に設けられている、
ことを特徴とする産業車両用アンダーカバー構造。
【請求項2】
請求項1において、
前記第1および第2の開孔が、前記スライドプレートのスライド方向にそれぞれ所定間隔を隔てて設けられている、
ことを特徴とする産業車両用アンダーカバー構造。
【請求項3】
請求項1において、
前記第1および第2の開孔が、前記スライドプレートのスライド方向と交差する方向に延びる帯状の開孔である、
ことを特徴とする産業車両用アンダーカバー構造。
【請求項4】
請求項1において、
前記スライドプレートのスライド方向が当該車両本体の前後方向または幅方向である、
ことを特徴とする産業車両用アンダーカバー構造。
【請求項5】
請求項1において、
前記スライドプレートが、前記閉塞位置で前記固定プレートに係止するための係止部材が有している、
ことを特徴とする産業車両用アンダーカバー構造。
【請求項6】
請求項1において、
前記スライドプレートには、当該スライドプレートをスライド方向に引き出すための取っ手が取り付けられている、
ことを特徴とする産業車両用アンダーカバー構造。
【請求項7】
産業車両において車両本体の底部に設けられるアンダーカバー構造であって、
前記底部に固定され、中央に開口部を有する枠状部材と、
前記枠状部材の下面の一端に上下方向回動可能に設けられ、前記開口部を覆う閉塞位置と、前記開口部を開放する開放位置とをとり得る開閉プレートと、
を備えた産業車両用アンダーカバー構造。
【請求項8】
産業車両において車両本体の底部に設けられるアンダーカバー構造であって、
前記底部には、当該底部の開口を覆うプレートが取り付けられており、
前記プレートには、複数の開孔が形成されるとともに、前記各開孔には、各々上下方向回動可能な開閉プレート部材がそれぞれ設けられており、前記開閉プレート部材は、対応する前記開孔を覆う閉塞位置と、対応する前記開孔を開放する開放位置とをそれぞれとり得るようになっている、
ことを特徴とする産業車両用アンダーカバー構造。
【請求項9】
請求項1、7または8のいずれかににおいて、
当該産業車両がスキッドステアローダ、ホイールローダまたはフォークリフトである、
ことを特徴とする産業車両用アンダーカバー構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−171401(P2012−171401A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−33142(P2011−33142)
【出願日】平成23年2月18日(2011.2.18)
【出願人】(000003241)TCM株式会社 (319)
【Fターム(参考)】