説明

用紙トレイおよび画像形成装置

【課題】用紙トレイの引き出し方向と用紙送出方向とが平行である形式の画像形成装置において、重量の増加を抑制するとともに紙詰り処理を簡易化することのできる用紙トレイおよびこの用紙トレイを用いた画像形成装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る用紙送出方向に水平移動可能に積層配置される用紙トレイ10は、用紙を収納するトレイ本体11と、トレイ本体の用紙送り出し方向面に、用紙が通過可能な空隙を隔てて配置されるカバー部材12と、トレイ本体11とカバー部材12とを係合する係合状態と、係合を解除した解除状態の2つの状態を有する係合部材14および15と、トレイ本体11とカバー部材12の間の空隙内に、用紙が存在しないときは係合部材14および15を係合状態とし、用紙が存在するときは係合部材14および15を係合解除状態とする切り換え機構とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は給紙トレイおよび画像形成装置に係り、特に紙詰り処理を簡易化した用紙トレイおよび画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子写真複写装置、プリンタのような画像形成装置にあっては、記録紙等の記録媒体を収納した複数の用紙トレイを画像形成装置の画像形成部の下方に着脱可能に積層配置することが一般的である。
【0003】
このような構成の画像形成装置では、用紙トレイ内の用紙を画像形成部に搬送するために略鉛直方向に搬送経路を設けることが必要となるが、用紙が搬送経路内において渋滞する紙詰りが発生した場合の対応を容易にしておくことが重要である。
【0004】
画像形成装置には、用紙トレイからの記録紙送り出し方向と直角する方向に用紙トレイの着脱を行う形式(主として電子写真複写機)と、用紙トレイからの用紙送出方向に用紙トレイの着脱を行う形式(主としてプリンタ)とが存在するが、形式によらず紙詰り処理を容易にした画像形成装置がすでに提案されている(例えば、特許文献1、特許文献2および特許文献3参照)。
【0005】
すなわち、特許文献1には、装置本体から引き出し可能な用紙トレイと、用紙トレイの装置本体からの引き出しを禁止するロック機構と、用紙トレイの引き出し方向と直交する方向に用紙を送出する用紙送出ユニットと、用紙送出ユニットの直後流側に設置され用紙搬送路を開放する開閉部材と、用紙搬送路上の用紙の有無を検知する検知部とを備え、用紙搬送路上で紙詰りを検知したときにはロック機構により用紙トレイの引き出しを禁止する画像形成装置が開示されている。
【0006】
これにより、紙詰り発生時に用紙トレイの引き出しにより用紙が引き裂かれて装置内に残留することを防止している。
【0007】
特許文献2に開示された画像形成装置は、用紙送出方向に着脱可能な用紙送出部と、用紙送出部から用紙を搬送する第一搬送部と、第一搬送部により搬送された用紙の一方に画像を形成する画像形成部と、画像形成部で画像の形成された用紙を搬送する第二搬送部と、第二搬送部により搬送された用紙に形成された画像を定着する定着部と、画像が定着された用紙の他方面にも画像を形成する場合に定着部から第一搬送部の上流側に用紙を戻す戻し搬送部と、を供え、用紙送り出し部、第一搬送部、第二搬送部および戻し搬送部を一体として用紙送出方向に引き出し可能としている。
【0008】
これにより、紙詰り発生時に紙詰りの原因となった用紙を損傷することなく排出することを可能としている。
【0009】
また、特許文献3に開示された画像形成装置は、画像形成部の上方部および下方部の一方に配設された用紙供給部、他方に配設された排出部、用紙供給部から画像形成部を経由して用紙排出部に至る略鉛直な用紙搬送路、用紙搬送路内で用紙を搬送する搬送機構を具備し、画像形成部の主要部および用紙供給部を不動側の装置本体に内蔵し、搬送機構の一部を含む搬送ユニットを装置本体の下方を軸に装置本体に対し回転可能に支持している。
【0010】
これにより、紙詰り発生時に搬送ユニットを引き出して用紙搬送路を開放することが可能となり、紙詰り処理を容易としている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】特開2005−084181号公報([0013]、図2)
【特許文献2】特開2006−184855号公報([0008]、[0025]、図4、図8)
【特許文献3】特公平07−057650号公報(第6欄第14〜38行目、第1図、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかしながら、特許文献1に開示された画像形成装置は、用紙トレイの引き出し方向と用紙送出方向とが直交する形式であり、用紙トレイの引き出し方向と用紙送出方向とが平行である形式に適用した場合には、紙詰りを発生させた用紙へのアクセスが困難になる。
【0013】
また、特許文献2および特許文献3に開示された画像形成装置は、紙詰りを発生させた用紙を除去するためには画像形成装置の一部を引き出す必要があり、引き出し部の重量が大きくなることを回避できない。
【0014】
このため、引き出し部の構造を強固にせざるを得ないため画像形成装置の重量が増加するだけでなく、紙詰り処理時の操作性も劣化してしまう。
【0015】
本発明は上記課題に鑑みなされたものであって、用紙トレイの引き出し方向と用紙送出方向とが平行である形式の画像形成装置において、重量の増加を抑制するとともに紙詰り処理を簡易化することのできる用紙トレイおよびこの用紙トレイを用いた画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明に係る用紙トレイ10は、用紙送出方向に水平移動可能に積層配置される用紙トレイ10であって、用紙を収納するトレイ本体11と、トレイ本体の用紙送り出し方向面に用紙が通過可能な空隙を隔てて配置されるカバー部材12と、トレイ本体11とカバー部材12とを係合する係合状態とトレイ本体11とカバー部材12との係合を解除した解除状態の2つの状態を有する係合部材14および15と、トレイ本体11とカバー部材12の間の空隙内に用紙が存在しないときは係合部材14および15を係合状態とし用紙が存在するときは係合部材14および15を係合解除状態とする切り換え機構とを具備する。
【0017】
この構成により、トレイ本体とカバー部材の間の用紙搬送路で紙詰りが発生したときは、トレイ本体とカバー部材との係合が解除され、カバー部材だけを取り除くことができるので、紙詰りの原因となった用紙を容易に排除することができることとなる。
【0018】
本発明に係る用紙トレイ10は、切り換え機構が、空隙の用紙通過域に自由端をトレイ本体11またはカバー部材に支持端を有する用紙検知レバー16と、用紙検知レバー16を基準位置に引き戻す引き戻し部材と、用紙検知レバー16が基準位置にあるときは係合部材14および15を係合状態とし空隙内を通過する用紙により用紙検知レバー16が基準位置から移動したときは係合部材14および15を解除状態とするリンク部材と、を含む。
【0019】
この構成により、用紙搬送路で紙詰りが発生したときは、トレイ本体とカバー部材との係合を機械的に解除できることとなる。
【0020】
本発明に係る用紙トレイは、切り換え機構が、空隙の用紙通過域中の用紙の有無を検出する用紙検出センサ40と、用紙検出センサ40により用紙が検出されたときに非励磁状態から励磁状態にあるいは励磁状態から非励磁状態に移行する係合ソレノイド42と、用紙検出センサ40により用紙が検出されていないときには係合部材14および15を係合状態とし用紙検出センサ40により用紙が検出されたときには係合ソレノイド42の状態移行に応動して係合部材14および15を解除状態とするリンク部材と、を含む。
【0021】
この構成により、用紙搬送路で紙詰りが発生したときは、トレイ本体とカバー部材との係合を制御部の制御により解除できることとなる。
【0022】
本発明に係る用紙トレイは、カバー部材がトレイ本体の用紙送り出し方向の所定位置にあることを検出するカバー部材センサと、カバー部材が所定位置にあることをカバー部材センサが検出しないときは用紙の送り出しを禁止する用紙送り出し禁止手段と、を具備する。
【0023】
この構成により、誤操作を防止することができることとなる。
【0024】
本発明に係る用紙トレイは、用紙送り出し中はトレイ本体とカバー部材との係合を維持する係合維持手段を具備する。
【0025】
この構成により、紙詰りを未然に防止できることとなる。
【0026】
本発明による画像形成装置は、本発明に係るいずれかの用紙トレイを具備する。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、用紙トレイの引き出し方向と用紙送出方向とが平行である形式のプリンタのような画像形成装置において、用紙の用紙搬送路通過時には用紙トレイとカバー部材との係合を解除してカバー部材の取り外しを可能とすることにより、紙詰り処理を簡易化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明に係る画像形成装置の概略構成図である。
【図2】画像形成装置を制御するために画像形成装置に組み込まれる制御部の構成を示すブロック図である。
【図3】第1の実施形態に適用される用紙トレイの拡大図(用紙が供給されていない状態)である。
【図4】第1の実施形態に適用される用紙トレイの拡大図(用紙が供給されている状態)である。
【図5】用紙トレイの斜視図である。
【図6】用紙供給部にロックソレノイドおよびロックレバーを設置した場合の用紙トレイのY1−Y1断面図である。
【図7】第1の実施形態において制御部が実行する第1の給紙ルーチンのフローチャートである。
【図8】第2の実施形態に適用される用紙トレイの拡大図(用紙が供給されていない状態)である。
【図9】第2の実施形態に適用される用紙トレイの拡大図(用紙が供給されている状態)である。
【図10】第2の実施形態において制御部が実行する第2の給紙ルーチンのフローチャートである。
【図11】紙詰り処理ルーチンのフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1は本発明に係る画像形成装置1の概略構成図であって、画像情報に基づいて露光光を発生する露光部2、露光部が発生した露光光に感光して潜像が生成される感光体ドラム3、感光体ドラム3にトナーを塗布してトナー像を生成する作像部4、感光体ドラム3に用紙を押圧してトナー像を用紙に転写する転写ローラ5、用紙に転写されたトナー像と定着する定着部6、定着後の用紙を排出する用紙排出部7、および、用紙を供給する用紙供給部8を含む。
【0030】
なお、露光部2、感光体ドラム3、作像部4、転写ローラ5、定着部6および用紙排出部7は画像形成部を形成する。
【0031】
電気信号である画像情報が画像形成装置1に供給されると、露光部2から画像情報に応じてレーザ光等の露光光が放射される。
【0032】
作像部4において感光体ドラム3に対して帯電処理、露光部2の発生した露光光による露光処理およびトナーを塗布する現像処理が実行され、感光体ドラム3上にトナー像が生成される。
【0033】
転写ローラ5により用紙供給部8から搬送されてきた用紙が感光体ドラム3に押圧され、用紙上にトナー像が転写される。
【0034】
用紙に転写されたトナー像は、定着部6において定着ローラの発生する熱および押圧力により定着された後、用紙排出部7から画像形成装置1の外部に排出される。
【0035】
用紙供給部8は画像形成装置1の画像形成部の下側に配設されており、用紙Pを収納した用紙トレイ10A、10B、10Cおよび10Dが図1の右方向に引き出し可能に積層配置されている。
【0036】
図2は画像形成装置1を制御するために画像形成装置1に組み込まれる制御部9の構成を示すブロック図である。
【0037】
すなわち、制御部9はバス90に、CPU91、メモリ92、ユーザインターフェイス(以下I/Fと略記する)93およびマシンI/F94が接続された構成を有する。
【0038】
ユーザI/F93には、画像形成装置1の使用者が操作する操作スイッチ95および画像形成装置1の動作状態を表示する表示パネル96が接続されている。
【0039】
マシンI/F94には、画像形成装置1を構成する露光部2、感光体ドラム3、作像部4、転写ローラ5、定着部6、用紙排出部7および用紙供給部8に取り付けられているモータ、ソレノイド等のアクチュエータならびに光電スイッチ等のセンサが接続されている。
【0040】
以下、本発明の実施形態について説明する。
[第1の実施形態]
図3および図4は、本発明の第1の実施形態に適用される用紙トレイ10Bおよび10Cの拡大図であって、図3は用紙が供給されていない状態を、図4は用紙トレイ10Cから用紙が供給されている状態を示す。
【0041】
また、図4は、用紙トレイ10Cから供給された用紙Pが、用紙トレイ10Bの搬送路内で紙詰りを起こした状態を示している。
【0042】
以下用紙トレイ10A〜Dの構造を説明するが、すべての用紙トレイは同一構造であるので、参照符号(A、B、C、D)を省略し、参照番号だけを使用して説明する。
【0043】
図5は用紙トレイ10の斜視図である。
【0044】
すなわち、用紙トレイ10は、用紙を格納するトレイ本体11、トレイ本体11の用紙送り出し方向に配設されるカバー部材12、トレイ本体11とカバー部材12を相互に位置決めするための位置決めピン13、カバー部材12に配設される係合レバー14、トレイ本体11に配設され係合レバー14と係合する係合ピン15、カバー部材12に配設され係合レバー14と連動する用紙検知レバー16を具備する。
【0045】
なお、トレイ本体11とカバー部材12との間には、用紙Pが略鉛直方向に通過可能な空隙が形成されている。
【0046】
なお、係合レバー14と係合ピン15とは係合部材を構成している。
【0047】
用紙供給部8は用紙トレイ10A〜Dと画像形成装置1に組み込まれるローラ組み込み部とから構成されるが、ローラ組み込み部にはトレイ本体11に格納された用紙を送出する送出ローラ17およびトレイ本体11から送出された用紙を略鉛直方向に搬送する搬送ローラ18が配設されている。
【0048】
また、トレイ本体11は、送出ローラ17の直後流に配置され、最上部の1枚の用紙だけがトレイ本体11から送出されるように余剰の用紙を分離する分離機構19を具備する。
【0049】
用紙検知レバー16は、トレイ本体11とカバー部材12の間の空隙の用紙通過域内に自由端を、カバー部材内に配設されている回転軸161に固定端を有し、自由端は図示しない戻し部材(例えば、バネ)により常に基準位置に戻されている。
【0050】
そして、用紙検知レバー16が基準位置にあるときは、係合レバー14は係合ピン15と係合して係合状態を維持し、トレイ本体およびカバー部材12を一体として引き出すことが可能となる。
【0051】
用紙Pがトレイ本体11とカバー部材12の間の空隙の用紙通過域を通過すると、用紙Pの上端が用紙検知レバー16を上方に移動させる。
【0052】
用紙検知レバー16の上方への動きはリンク部材を介して係合レバー14に伝達され、係合レバー14は係合ピン15との係合状態を解除する。
【0053】
リンク部材としては、たとえば係合機構の係合レバー14の固定端を回転軸161上に配置する構成など、用紙検知レバー16の動きを係合レバーに機械的に伝達できるものであれば、どのような構成であってもよい。
【0054】
すなわち、本実施例においては、用紙検知レバー16、戻し部材および回転軸161は、切り換え機構を構成する。
【0055】
画像形成装置1は画像形成指令を受信すると、送出ローラ17および搬送ローラ18および分離機構19が動作を開始し、用紙トレイに格納されている最上部の用紙がトレイ本体11とカバー部材12の間の空隙を通過して、感光体ドラム3と転写ローラ5の間に供給される。
【0056】
このとき、トレイ本体11とカバー部材12の間の空隙の用紙通過域内に自由端を有する用紙検知レバー16は空隙内を通過する用紙により押し上げられ、係合レバー14は係合ピン15との係合状態を解除する。
【0057】
したがって、用紙搬送中に紙詰りが発生した場合には、カバー部材12だけを引き出して用紙搬送路を開放状態にすることが可能となり、紙詰りの原因となった用紙を容易に除去できることとなる。
【0058】
カバー部材12が閉位置にあるか否かを検出するためのたとえばフォトセンサであるカバー部材センサ30を用紙供給部8に設置し、カバー部材12が閉位置にないことをカバー部材センサ30が検出した場合は画像形成装置1の動作を禁止するようにしてもよい。
【0059】
さらに用紙供給部8にロックソレノイド50およびロックレバー51を設置し、用紙搬送中は、トレイ本体11とカバー部材12の係合を維持して、誤操作を防止するようにするようにしてもよい。
【0060】
すなわち、ロックソレノイド50およびロックレバー51は係合維持手段を構成する。
【0061】
図6は、用紙供給部8にロックソレノイド50およびロックレバー51を設置した場合の用紙トレイ10のY1−Y1断面図であって、(a)はカバー部材12がロックレバー51によりロックされていない状態を、(b)はカバー部材12がロックレバー51によりロックされている状態を示している。
【0062】
すなわち、印刷開始指令の受信後に、用紙Pが用紙搬送路を通過中は、ロックソレノイド50を励磁状態としてロックレバー51をカバー部材12内に挿入し、ロック状態として、トレイ本体11とカバー部材12の係合を維持する。
【0063】
画像形成部内の転写ローラ5の直上流に設けられているニップ部Kに設置されているセンサ(図示せず)により給紙開始後所定時間内に用紙P後端が通過したことが検出されない場合は、ロックソレノイド50を無励磁状態としてロックレバー51をカバー部材12から引き抜いてロック状態を解除し、カバー部材12をトレイ本体11から分離可能とし、紙詰り処理を容易としている。
【0064】
なお、上記説明ではロックソレノイド50が励磁状態のときロック状態、無励磁状態のときロック解除状態になるものとしたが、ロックソレノイド50が無励磁状態のときロック状態、励磁状態のときロック解除状態となるようにしてもよい。
【0065】
図7は第1の実施形態において、制御部9が実行する第1の給紙ルーチンのフローチャートであって、図示しないメインルーチンから印刷開始指令を受信するごとに実行される。
【0066】
すなわち、CPU91は、印刷開始指令を受信して給紙ルーチンを開始すると、まず用紙トレイ10に対応して設置されているすべてのカバー部材センサ30が"ON"であるか否かを判定する(ステップS61)。
【0067】
CPU91は、ステップS61で「すべてのカバー部材センサ30が"ON"である」と判定したときは、用紙供給部8に設置されているアクチュエータを起動し所定の用紙トレイからの給紙を開始し(ステップS62)する。
【0068】
CPU91は、ステップS61で「すべてのカバー部材センサ30が"ON"でない」と判定したとき、すなわち「いずれかのカバー部材が閉位置に無い」ときは、表示パネル96に「カバー部材が閉位置に無い」旨を表示して(ステップS63)、このルーチンを終了する。
【0069】
なお、ステップS61〜63は用紙送り出し禁止手段を構成する。
【0070】
CPU91は、用紙トレイからの給紙を開始(ステップS62)後に、ロックソレノイド50を励磁し(ステップS64)、予め定められた所定時間経過後にニップ部Kで用紙Pの後端が検出されたか否かを判定する(ステップS65)。
【0071】
CPU91はステップS65で「用紙Pの後端が検出された」と判定したときは、紙詰りは発生していないものとして、このルーチンを終了する。
【0072】
CPU91はステップS65で「用紙Pの後端が検出された」と判定したときは、紙詰りが発生したものとして、ロックソレノイド50を無励磁とする(ステップS66)。
【0073】
なお、本実施例においては、用紙検知レバー15、係合レバー14、回転軸161および戻し部材はカバー部材12に配置され、係合ピン15はトレイ本体11に配置されている場合について説明したが、用紙検知レバー15、係合レバー14、回転軸161および戻し部材をトレイ本体に、係合ピン15をカバー部材12に配置してもよい。
【0074】
すなわち、第1の実施形態にあっては、用紙トレイの前面の用紙搬送路を用紙が通過中であることを検知し、用紙トレイ本体とカバー部材との係合を解除する動作を機械的に行うこととしているので、簡易な構成で紙詰り処理を簡略化できることとなる。
[第2の実施形態]
図8および図9は、本発明の第2の実施形態に適用される用紙トレイ10Bおよび10Cの拡大図であって、図8は用紙が供給されていない状態を、図9は用紙トレイ10Cから用紙が供給されている状態を示す。
【0075】
また、図9は、用紙トレイ10Cから供給された用紙が、用紙トレイ10Bの搬送路内で紙詰りを起こした状態を示している。
【0076】
以下用紙トレイ10A〜Dの構造を説明するが、すべての用紙トレイは同一構造であるので、参照符号(A、B、C、D)を省略し、参照番号だけを使用して説明する。
【0077】
なお、第1の実施形態と同一の構成については同一の参照番号を使用して説明を省略する。
【0078】
すなわち、第2の実施形態では、用紙検知レバー16に代えて略鉛直の用紙搬送路に用紙が存在するか否かを検出する用紙検出センサ40が設置される。
【0079】
さらに、第2の実施形態では、係合レバー14の固定端が固定されている回転軸161から係合レバー14の反対側にリンクレバー25が延伸している。
【0080】
リンクレバー25の自由端は、駆動レバー41の一方の自由端と接触するようになっている。
【0081】
駆動レバー41は支点43によって用紙供給部8内に回転自在に配置されている。
【0082】
駆動レバー41の他方の自由端は、用紙供給部8内に配置される係合ソレノイド42によって駆動されるようになっている。
【0083】
すなわち、本実施例においては、用紙検出センサ40、駆動レバー41、係合ソレノイド42、支点43およびリンクレバー25は切り換え機構を構成する。
【0084】
その他の構造は、第1の実施形態と同一である。
【0085】
図10は第2の実施形態において、制御部9が実行する第2の給紙ルーチンのフローチャートであって、図示しないメインルーチンから印刷開始指令を受信するごとに実行される。
【0086】
第2の給紙ルーチンは、ステップS62において紙詰り処理ルーチンを実行することが、第1の給紙ルーチンと相違する。
【0087】
図11は紙詰り処理ルーチンのフローチャートであって、CPU91は、給紙開始後に用紙検出センサ40が用紙を検出して"ON"状態となっているか否かを判定する(ステップS621)。
【0088】
CPU91は、ステップS621で用紙検出センサ40が"ON"状態となっていると判断したときは給紙を継続する(ステップS622)。
【0089】
CPU91は、給紙を継続してから予め定めた所定時間経過後に用紙検出センサ40が用紙ないことを検出して"OFF"状態となっているか否かを判定する(ステップS623)。
【0090】
CPU91は、ステップS623で用紙検出センサ40が"OFF"状態となっていると判断したときは給紙を継続して(ステップS624)、このルーチンを終了する。
【0091】
CPU91は、ステップS621で用紙検出センサ40が"ON"状態となっていないと判断したときは、紙詰りが発生したものとして表示パネル96に「紙詰り発生情報」を表示して(ステップS625)用紙の供給を中断する。
【0092】
CPU91は、ステップS623で用紙検出センサ40が"OFF"状態となっていないと判断したときは、紙詰りが発生したものとして、係合ソレノイド42を励磁し(ステップS626)、表示パネル96に「紙詰り発生情報」を表示して(ステップS627)用紙の供給を中断する。
【0093】
係合ソレノイド42が励磁されるとアーマチュアが引き込まれ、駆動レバー41の他方の自由端が上昇する。
【0094】
すると、駆動レバー41の一方の自由端が下降し、リンクレバー25の自由端を押し下げるので、回転軸161は時計回りに回転する。
【0095】
この結果、係合レバー14は、時計回りに回転して係合ピン15から分離し、トレイ本体11とカバー部材12の係合状態を解除する。
【0096】
したがって、用紙搬送中に紙詰りが発生した場合には、カバー部材12だけを引き出して用紙搬送路を開放状態にすることが可能となり、紙詰りの原因となった用紙を容易に除去できることとなる。
【0097】
なお、上記実施例では、用紙検出センサ40が用紙を検出したときに係合ソレノイドは励磁状態となるものとして説明したが、用紙検出センサ40が用紙を検出したときに係合ソレノイドは無励磁状態となるようにしてもよい。
【0098】
すなわち、第2の実施形態にあっては、用紙トレイの前面の用紙搬送路を用紙が通過中であることを用紙検知センサにより検知し、係合ソレノイドにより用紙トレイ本体とカバー部材との係合を解除する動作を行うこととしているので、簡易な構成で紙詰り処理を簡略化できることとなる。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、用紙トレイの引き出し方向と用紙送出方向とが平行である形式のプリンタのような画像形成装置において、用紙の用紙搬送路通過時には用紙トレイとカバー部材との係合を解除することにより、紙詰り処理を簡易化することが可能な用紙トレイおよびそれを用いた画像形成装置が提供するものであり、産業上有用である。
【符号の説明】
【0100】
1 画像形成装置
2 露光部
3 感光体ドラム
4 作像部
5 転写ローラ
6 定着部
7 用紙排出部
8 用紙供給部
9 制御部
10(A〜D) 用紙トレイ
11 トレイ本体
12 カバー部材
14 係合レバー(係合部材)
15 係合ピン(係合部材)
16 用紙検知レバー(切り換え機構)
17 送出ローラ
18 搬送ローラ
19 分離機構
25 リンクレバー(切り換え機構)
30 カバー部材センサ
40 用紙検出センサ(切り換え機構)
41 駆動レバー(切り換え機構)
42 係合ソレノイド(切り換え機構)
43 支点
50 ロックソレノイド
51 ロックレバー
90 バス
91 CPU
93 ユーザI/F
94 マシンI/F
95 操作スイッチ
96 表示パネル
161 回転軸(切り換え機構)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙送出方向に水平移動可能に積層配置される用紙トレイであって、
用紙を収納するトレイ本体と、
前記トレイ本体の用紙送り出し方向面に、用紙が通過可能な空隙を隔てて配置されるカバー部材と、
前記トレイ本体と前記カバー部材とを係合する係合状態と、前記トレイ本体と前記カバー部材との係合を解除した解除状態の2つの状態を有する係合部材と、
前記トレイ本体と前記カバー部材の間の前記空隙内に、用紙が存在しないときは前記係合部材を係合状態とし、用紙が存在するときは前記係合部材を係合解除状態とする切り換え機構とを具備する用紙トレイ。
【請求項2】
前記切り換え機構が、前記空隙の用紙通過域に自由端を、前記トレイ本体または前記カバー部材に支持端を有する用紙検知レバーと、
前記用紙検知レバーを基準位置に引き戻す引き戻し部材と、
前記用紙検知レバーが前記基準位置にあるときは前記係合部材を係合状態とし、前記空隙内を通過する用紙により前記用紙検知レバーが前記基準位置から移動したときは前記係合部材を解除状態とするリンク部材と、を含む請求項1に記載の用紙トレイ。
【請求項3】
前記切り換え機構が、前記空隙の用紙通過域中の用紙の有無を検出する用紙検出センサと、
前記用紙検出センサにより用紙が検出されたときに非励磁状態から励磁状態に、あるいは励磁状態から非励磁状態に移行するソレノイドと、
前記用紙検出センサにより用紙が検出されていないときには前記係合部材を係合状態とし、前記用紙検出センサにより用紙が検出されたときには前記ソレノイドの状態移行に応動して前記係合部材を解除状態とするリンク部材と、を含む請求項1に記載の用紙トレイ。
【請求項4】
前記カバー部材が前記トレイ本体の用紙送り出し方向の所定位置にあることを検出するカバー部材センサと、
前記カバー部材が所定位置にあることを前記カバー部材センサが検出しないときは、用紙の送り出しを禁止する用紙送り出し禁止手段と、を具備する請求項1から請求項3のいずれか一項に記載の用紙トレイ。
【請求項5】
用紙送り出し中は前記トレイ本体と前記カバー部材との係合を維持する係合維持手段を具備する請求項1から請求項4のいずれか一項に記載の用紙トレイ。
【請求項6】
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載の用紙トレイを具備する画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2013−18586(P2013−18586A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−151896(P2011−151896)
【出願日】平成23年7月8日(2011.7.8)
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】