説明

用紙残量検出装置、画像形成装置

【課題】測距センサにより得られた測定信号を、測定距離とレベル値との関係を線形的に示す信号に変換することにより、測距センサにより得られたレベル値を距離に変換するための処理量を軽減することができる用紙残量検出装置、及び、画像形成装置を提供することを目的とする。
【解決手段】自身とトレイ上面との間の距離に応じてレベル値が対数的に変化する第1測定信号Vaを出力する測距センサS1、S2と、第1測定信号Vaを対数増幅することにより、距離の変化に応じてレベル値が略線形的に変化する第2測定信号Vbを得るログアンプ30と、距離と第2測定信号Vbのレベル値との対応関係を示す対応付け情報を記憶する記憶部40と、第2測定信号Vbと対応付け情報とを用いて、トレイ334、335に載置されている用紙の残量を検出する残量検出部11と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、用紙残量検出装置、及び、画像形成装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1記載の給送装置は、用紙束を載置するためのトレイを備えており、当該用紙束の最上位置の用紙を画像形成装置に向けて給紙する。
【0003】
そして、当該給送装置は、トレイに載置されている用紙の量が少なくなるにつれて、当該トレイに載置されている用紙束の最上位置の用紙を給紙ローラで給紙することができるように、トレイを上方向に押し上げる。
【0004】
また、当該給送装置は、トレイに載置されている用紙の残量を検出するために、当該トレイの上面と自身との間の距離を測定して、測定した距離を測定信号の形で表す測距センサが設けられている。そして、当該給送装置は、測距センサにより出力された測定信号のレベル値を用いて用紙の残量を検出する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−114452号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
図12は、測距センサの出力特性を示した図である。図12に示すように、測距センサにより得られる電圧値(レベル値)Voutは、測距センサとトレイ上面との間の距離Lが0cmから2cmに達するまでの間は、距離Lが大きくなるにつれて順次大きくなる。そして、距離Lが2cmを超えた後には、電圧値Voutは、距離Lが大きくなるにつれて、順次対数的に低下する。
【0007】
図13は、測距センサとトレイ上面との間の距離Lを、20mm、30mm、・・・、180mmというように、10mmきざみで変化させながら、測距センサにより得られた電圧値を取得して、取得した各電圧値をプロットすることにより得られた図である。図13においても、図12と同じように、距離Lが20mmを超えた後では、距離Lが大きくなるにつれて、電圧値Voutが順次対数的に低下する。
【0008】
このように、測距センサにより得られるレベル値が、当該測距センサとトレイ上面との間の距離が大きくなるにつれて対数的に低下するため、給送装置の制御部には、測距センサにより得られるレベル値を用いた処理を行うに際し、当該レベル値を距離に変換するためにソフトウェア的な処理量が増大する。
【0009】
本発明は、上記の問題を解決するためになされたもので、測距センサにより得られた測定信号を、測定距離とレベル値との関係を線形的に示す信号に変換することにより、測距センサにより得られたレベル値を距離に変換するための処理量を軽減することができる用紙残量検出装置、及び、画像形成装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一局面に係る用紙残量検出装置は、用紙を収容する用紙収容部と、前記用紙を載置するために設けられ、前記用紙収容部の内部で予め設定された、最下位置と用紙取出位置との間で上下方向に移動可能なトレイと、前記トレイを前記上下いずれか一方の方向に移動させるトレイ移動部と、前記トレイ上面と対向して設けられており、自身と当該トレイ上面との間の距離を表し当該距離の変化に応じてレベル値が対数的に変化する第1測定信号を出力する測距センサと、前記測距センサにより出力された第1測定信号を受け付けて当該第1測定信号を対数増幅することにより、前記距離の変化に応じてレベル値が略線形的に変化する第2測定信号を得るログアンプと、前記距離と前記第2測定信号のレベル値との対応関係を示す対応付け情報を記憶する記憶部と、前記ログアンプにより得られた前記第2測定信号と、前記記憶部に記憶されている前記対応付け情報とを用いて、前記トレイに載置されている用紙の残量を検出する残量検出部と、を備えることを特徴とする(請求項1)。
【0011】
この構成によれば、測距センサにより出力された第1測定信号を、ログアンプにより対数増幅して、当該測距センサとトレイ上面との間の距離を表し当該距離の変化に応じてレベル値が略線形的に変化する第2測定信号を得る。
【0012】
これにより、測距センサにより得られた測定信号を、測定距離とレベル値との関係を線形的に示す信号に変換することができる。そのため、測距センサにより得られたレベル値を距離に変換するための処理量を軽減することができる。
【0013】
上記構成において、前記記憶部に記憶されている対応付け情報を較正するための較正部をさらに備えており、前記較正部は、前記トレイ移動部により、前記トレイ上面を前記測距センサから予め設定された第1距離離れた位置に位置させるとともに、前記トレイ上面を前記測距センサから予め設定された第2距離離れた位置に位置させ、前記トレイ上面が前記測距センサから前記第1距離離れた位置に位置するときに当該測距センサにより得られる第1レベル値と、前記トレイ上面が前記測距センサから前記第2距離離れた位置に位置するときに当該測距センサにより得られる第2レベル値とを取得して、取得した各レベル値を基にして前記対応付け情報を生成することが好ましい(請求項2)。
【0014】
この構成によれば、トレイをトレイ移動部により移動させて、トレイ上面を、測距センサから予め設定された第1距離離れた位置に位置させるとともに、測距センサから予め設定された第2距離離れた位置に位置させる。
【0015】
そして、トレイ上面が測距センサから第1距離離れたときに測距センサにより得られる第1レベル値と、トレイ上面が測距センサから第2距離離れたときに測距センサにより得られる第2レベル値とを取得し、取得した各レベル値を基にして、測距センサとトレイ上面との間の距離と第2測定信号のレベル値との対応関係を表す対応付け情報を生成する。
【0016】
これにより、トレイを移動させて、トレイ上面の測距センサに対する距離を、第1距離、第2距離のそれぞれにして、各距離に対応するレベル値を実測すれば、測距センサとトレイ上面との間の距離と第2測定信号のレベル値との対応関係を表す対応付け情報が得られる。そのため、対応付け情報を生成するための処理量を軽減することができる。
【0017】
上記構成において、前記較正部は、前記距離及び前記レベル値をそれぞれ変数としたときに、前記第1距離と前記第1レベル値とで定まる点と、前記第2距離と前記第2レベル値とで定まる点とを結ぶ回帰直線を求め、当該回帰直線を表す情報を前記対応付け情報として前記記憶部に記憶させることが好ましい(請求項3)。
【0018】
この構成によれば、第1距離と第1レベル値とで定まる点と、第2距離と第2レベル値とで定まる点とを結ぶ回帰直線を求め、当該回帰直線を表す情報そのものを対応付け情報として記憶部に記憶させる。
【0019】
これにより、残量検出部が、第2測定信号と対応付け情報とを用いて用紙残量を検出するに際し、測距センサとトレイ上面との間の距離の変化を精度良く検出することができる。そのため、用紙残量の検出精度が向上する。
【0020】
上記構成において、前記較正部は、前記距離及び前記レベル値をそれぞれ変数としたときに、前記第1距離と前記第1レベル値とで定まる点と、前記第2距離と前記第2レベル値とで定まる点とを結ぶ回帰直線を求め、当該回帰直線を用いて、前記測距センサと前記トレイ上面との間の互いに異なる複数の距離に対応するレベル値を取得し、前記各距離と当該距離に対応するレベル値とを前記対応付け情報として前記記憶部に記憶させることが好ましい(請求項4)。
【0021】
この構成によれば、第1距離と当該第1距離に対応する第1レベル値とで定まる点と、第2距離と当該第2レベル値とで定まる点とを結ぶ回帰直線を求め、当該回帰直線を用いて、測距センサと前記トレイ上面との間の互いに異なる複数の距離に対応するレベル値を取得し、各距離と当該距離に対応するレベル値とを、データテーブルで表された対応付け情報として記憶部に記憶させる。
【0022】
これにより、測距センサとトレイ上面との間の互いに異なる複数の距離に対応する第2測定信号のレベル値を取得する処理量を軽減することができる。
【0023】
上記構成において、前記第1距離は、前記トレイが前記最下位置に位置するときの前記距離であり、前記第2距離は、前記トレイが前記用紙取出位置に位置するときの前記距離であることが好ましい(請求項5)。
【0024】
この構成によれば、トレイが最下位置に位置すること、及び、トレイが用紙取出位置に位置することを検出するセンサを配置するだけで、予め設定された第1距離に対応する第1レベル値と、予め設定された第2距離に対応する第2レベル値とを実測することができる。
【0025】
上記構成において、前記第1測定信号は、前記距離が予め設定された距離範囲にあるときには、当該距離の変化に応じたレベル値の変化が、当該距離が前記距離範囲にあるときの前記第2測定信号のレベル値の当該距離の変化に応じた変化よりも大きな信号であり、前記用紙残量検出装置は、前記測距センサにより出力された測定信号を、前記ログアンプをバイパスして前記残量検出部に入力させるバイパス回路と、前記ログアンプにより得られたレベル値が、前記距離が前記距離範囲にあるときには、前記バイパス回路によって前記ログアンプをバイパスさせるバイパス回路駆動部と、をさらに備えることが好ましい(請求項6)。
【0026】
この構成によれば、測距センサとトレイ上面との間の距離が、当該距離の変化に応じた、当該測距センサにより得られるレベル値の変化が、当該距離の変化に応じた、ログアンプにより得られるレベル値の変化よりも大きくなる範囲であるときには、バイパス回路駆動部により、測距センサからの第1測定信号がログアンプをバイパスして残量検出部に入力する。
【0027】
これにより、用紙収容部の内部におけるトレイの移動の過程で、測距センサとトレイ上面との間の距離が一定の範囲内にあるときには、第2測定信号よりも距離の変化に応じた変化の割合が大きな第1測定信号が、残量検出部に入力される。
【0028】
そのため、測距センサとトレイ上面との間の距離の変化をレベル値の変化として残量検出部に伝えやすくなる。結果として、トレイに載置されている用紙残量の検出精度が向上する。
【0029】
上記構成において、前記ログアンプにより得られた前記第2測定信号に予め設定されたレベルのオフセットを加算するオフセット回路をさらに備えることが好ましい(請求項7)。
【0030】
この構成によれば、第2測定信号には予め設定されたレベルのオフセットが加算されるため、残量検出部に到来する第2測定信号のレベル値が大きくなる。その結果、残量検出部による用紙残量の検出精度が向上する。
【0031】
上記構成において、前記オフセット回路は、前記オフセットが加算された後の前記第2測定信号のレベル値が0を超えるように、前記オフセットを加算することが好ましい(請求項8)。
【0032】
この構成によれば、残量検出部には、必ずプラスのレベル値の第2測定信号が到来するため、マイナスのレベル値の第2測定信号を処理する機能が残量検出部にない場合でも、用紙の残量検出が可能になる。
【0033】
また、本発明の他の局面に係る画像形成装置は、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の用紙残量検出装置と、前記用紙収容部に収容された用紙を前記用紙取出位置で取り出して搬送する搬送部と、前記搬送部により搬送された用紙に画像を形成する画像形成部と、を備えることを特徴とする(請求項9)。
【0034】
この構成によれば、請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の用紙残量検出装置を備えているため、請求項1乃至請求項8のいずれか一項の効果を奏する画像形成装置を提供することができる。
【発明の効果】
【0035】
本発明によれば、測距センサにより得られた測定信号を、測定距離とレベル値との関係を線形的に示す信号に変換することができる。そのため、測距センサにより得られたレベル値を距離に変換するための処理量を軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【図1】本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を示した概略断面図である。
【図2】ストッカの外観の一例を概念的に示した図である。
【図3】本発明の一実施形態に係る用紙残量検出装置の機能モジュールの一例を示したブロック図である。
【図4】測距センサと第1トレイ上面との間の距離LがL0からL10の間で変化するときの、測距センサから出力される第1電圧信号の電圧値の変化について説明するための図である。
【図5】ログアンプの出力特性の一例を示した図である。
【図6】測距センサと第1トレイ上面との間の距離を、20mm、30mm、・・・、180mmというように、10mmきざみで変化させながら、第3電圧信号の電圧値を取得して、プロットすることにより得られた図である。
【図7】電圧値範囲−残量対応テーブルの一例を示した図である。
【図8】残量検出処理の概要の一例を示したフローチャートである。
【図9】電圧値較正用テーブルの一例を示した図である。
【図10】電圧値較正処理の概要の一例を示したフローチャートである。
【図11】バイパス回路駆動部の基本動作の一例を示したフローチャートである。
【図12】測距センサの出力特性を示した図である。
【図13】測距センサとトレイ上面との間の距離を、20mm、30mm、・・・、180mmというように、10mmきざみで変化させながら、測距センサにより得られた電圧値を取得して、取得した各電圧値をプロットすることにより得られた図である。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の一実施形態に係る用紙残量検出装置及び画像形成装置を図面に基づいて説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る画像形成装置の一例を示した概略断面図である。尚、図1に示す画像形成装置には、本発明の一実施形態に係る用紙残量検出装置が含まれている。
【0038】
図1に示すように、画像形成装置Aは、略直方体に形成された筐体2と、筐体2の内部空間下部に配設されるとともに用紙SHが蓄えられる貯留部3と、貯留部3から用紙SHを取り出すとともに搬送する搬送部4と、搬送途中の用紙SHの面にトナー画像を形成する画像形成部5と、用紙上に形成されたトナー画像を用紙SHの面上に定着させる定着部6と、トナー画像が定着された用紙SHを筐体2外に排出する排出部7とを備える。筐体2の上部には、原稿の画像を読み取るための原稿読取部8が配設される。原稿読取部8は、原稿の画像を読み取り、電子データ化する。
【0039】
貯留部3は、少量の用紙SHの束を収容する第1カートリッジ31及び第2カートリッジ32を含む。第2カートリッジ32は、第1カートリッジ31の上方に配設される。貯留部3は、第1カートリッジ31及び第2カートリッジ32が収容可能な枚数以上の用紙SHを収容するためのストッカ(用紙収容部)33をさらに含む。ストッカ33は、第2カートリッジ32の上方に配設される。
【0040】
ストッカ33は、略矩形板状の底部331と、底部331の周縁から上方に向かって延出する周壁部332とを含む。周壁部332の上縁は、ストッカ33の開口部を形成する。底部331と周壁部332とで定められるストッカ33の内部空間に収容された用紙SHは、ストッカ33の上部に形成される開口部を通じて、搬送部4により取り出され、画像形成部5に向けて搬送される。第1カートリッジ31、第2カートリッジ32及びストッカ33は、筐体2内部から引き出し可能に設けられている。
【0041】
ストッカ33は、当該ストッカ33の内部空間を横切って配設される仕切板333を含む。仕切板333は、底部331から上方に延出し、図1中において、ストッカ33の内部空間を左右に互いに隣接する小空間に仕切る。左方に形成される小空間は第1収容部33Aを形成しており、右方に形成される小空間は第2収容部33Bを形成している。
【0042】
第1収容部33Aには、第1トレイ334が配設され、第2収容部33Bには第2トレイ335が配設されている。第1トレイ334は、用紙SHの束を載置するための上面を備える。また、第2トレイ335も、用紙SHの束を載置するための上面を備える。
【0043】
第1トレイ334及び第2トレイ335は、ストッカ33の内部において、最下位置PLと用紙取出位置PHとの間で上下方向に移動可能に構成されている。尚、用紙取出位置PHは、後述するように最上部の基準位置としても設定されている。
【0044】
また、ストッカ33では、最下位置PL及び用紙取出位置PHが予め設定されている。
【0045】
搬送部4は、貯留部3の右側で上下方向に延びる搬送路43を含む。用紙取りだしローラ413A及び414Aによりストッカ33から取り出された用紙SHは、ベルト装置412により搬送路43に搬送され、搬送路43を通じて画像形成部5に向かう。
【0046】
用紙取りだしローラ413Aは第1ローラ装置413に設けられており、用紙取りだしローラ414Aは第2ローラ装置414に設けられている。第1ローラ装置413及び第2ローラ装置414は、筐体2に対して回動可能に取り付けられており、ストッカ33に載置されている用紙SHに上方向に押されることにより水平面との間の角度が変動する。
【0047】
そして、第1ローラ装置413及び第2ローラ装置414の水平面との間の角度が予め設定された角度となったときに、第1ローラ装置413及び第2ローラ装置414を上方向に押す力を発生させるモータの駆動が停止する。
【0048】
搬送部4は更に、第1カートリッジ31及び第2カートリッジ32の右上部角隅部近傍に配設されるピックアップローラ44及びピックアップローラ44の近傍下流に配設される分離・給紙ローラ45を含む。ピックアップローラ44及び分離・給紙ローラ45は、第1カートリッジ31及び第2カートリッジ32から1枚ずつ用紙SHを取り出し、搬送路43へ搬送する。搬送部4は更に、搬送路43に沿って配設される複数の搬送ローラ46を含む。搬送ローラ46は、ストッカ33、第1カートリッジ31又は第2カートリッジ32から送り出された用紙SHを、搬送路43を通じて、画像形成部5へ搬送する。
【0049】
画像形成部5は、筐体2に回転可能に支持される略円筒形状の感光体ドラム51と、感光体ドラム51の上方に配設される帯電器52とを含む。感光体ドラム51は、図1中、時計回りに回転する。帯電器52は、感光体ドラム51に電荷を付与し、感光体ドラム51周面を一様に帯電させる。画像形成部5は更に、露光装置53を備える。露光装置53は、原稿読取部8が原稿の画像を読み取ることにより得られた画像データに基づき、レーザ光を感光体ドラム51の帯電された周面に照射する。この結果、レーザ光は感光体ドラム51上の電荷を消失させるため、感光体ドラム51上には画像データに一致する静電潜像が形成されることとなる。画像形成部5は更に、現像装置54を備える。現像装置54は、トナーを収容するトナーコンテナ55を備え、トナーコンテナ55から静電潜像が形成された感光体ドラム51の周面にトナーを供給する。この結果、感光体ドラム51の周面に、静電潜像に一致するトナー像が形成されることになる。
【0050】
画像形成部5は更に、感光体ドラム51の下方に配設される転写ベルト56を含む。搬送路43を通じて、用紙SHは、感光体ドラム51と転写ベルト56との間に送り込まれる。感光体ドラム51と転写ベルト56との間を用紙SHが通過するとき、感光体ドラム51の周面に形成されたトナー像は、トナーの帯電と逆の極性の逆バイアスの印加により用紙SHに転写されることとなる。
【0051】
画像形成部5は更に、用紙SHへトナー像を転写した後の感光体ドラム51の周面上に残留するトナーを除去するクリーニング装置57と、残留トナーの除去がなされた感光体ドラム51の周面から残留電荷を除去する除電装置58とを含む。
【0052】
画像形成部5にて、トナー像の転写がなされた用紙SHは、定着部6へ送られる。定着部6は、定着ローラ61と、定着ローラ61に圧接される加圧ローラ62とを含む。定着ローラ61の内部には熱源63が配設され、定着ローラ61と加圧ローラ62との間を通過する用紙SH上のトナーが溶融されるとともに、加圧ローラ62からの圧力により用紙SH上にトナーが定着される。これにより、用紙SH上へのトナー像の定着がなされることとなる。
【0053】
排出機構7は、定着部6の下流に配設されるとともに筐体2の内壁面近傍に取り付けられる排出ローラ71と、排出ローラ71から筐体2外に排出された用紙SHを受け止める排出トレイ72とを含む。
【0054】
図1に示される画像形成装置Aは、ストッカ33と画像形成部5/定着部6との間に両面印刷用の搬送路47を備える。排出ローラ71は、スイッチバック方式で搬送路47へ用紙SHを送り出すことも可能である。搬送路47は、搬送路43途中部に配設されたレジストローラ48の直前で合流する。搬送路47を通過した用紙SHは、レジストローラ48により画像形成部5へ送り出され、画像形成部5内でトナー像が定着されていない面にトナー像の転写がなされる。その後、定着ユニット6により新たに転写されたトナー像の用紙SHへの定着がなされる。最後に、用紙SHは排出ローラ71により排紙トレイ72上に排紙されることとなる。
【0055】
図2は、ストッカ33の外観の一例を概念的に示した図である。尚、図1と同一の構成要素については同一の符号を付し、説明を省略する。
【0056】
このストッカ33では、第1トレイ334及び第2トレイ335は、当該第1トレイ334及び第2トレイ335の上面に、予め設定された最大枚数の用紙SHが載置されたときには、ストッカ33の底部331に当接する。このときの第1トレイ334及び第2トレイ335の上面の位置が、先述した最下位置PLとして設定されている。
【0057】
このように、最大枚数の用紙SHが載置されたときには、第1トレイ334及び第2トレイ335の上面が最下位置PLに位置し、第1トレイ334及び第2トレイ335の上面に載置された用紙SHのうち最上位置の用紙SHが、用紙取出位置PHに位置する。最上位置の用紙SHが用紙取出位置PHに位置するときには、当該最上位置の用紙SHが、用紙取りだしローラ413及び414と当接する。
【0058】
そして、第1トレイ334及び第2トレイ335上の最上位置の用紙SHが順次取り出されると、第1トレイ334及び第2トレイ335上の用紙SHの枚数が減少する。すると、第1トレイ334及び第2トレイ335上の用紙SHのうち最上位置の用紙SHが用紙取りだしローラ413及び414と当接しなくなる。
【0059】
したがって、第1トレイ334及び第2トレイ335上の用紙SHの枚数が減少するにつれて、第1トレイ334及び第2トレイ335は、後述するモータの駆動力を受けて上方向に移動する。すると、第1トレイ334及び第2トレイ335上の用紙SHのうち最上位置の用紙SHが用紙取りだしローラ413及び414と当接する。これにより、第1トレイ334及び第2トレイ335の用紙SHの枚数が減少しても、最上位置にある用紙SHを順次取り出すことができる。
【0060】
また、ストッカ33では、第1トレイ334に載置されている用紙SHの残量を検出するために、第1トレイ334の上面と対向する位置であって、用紙取出位置PHよりも上の位置に、第1トレイ334に載置されている用紙SHの残量を検出するための測距センサS1が配置されている。
【0061】
また、第2トレイ335に載置されている用紙SHの残量を検出するために、第2トレイ335の上面と対向する位置であって、用紙取出位置PHよりも上の位置には、第2トレイ335に載置されている用紙SHの残量を検出するため、測距センサS1と同様の測距センサS2が配置されている。
【0062】
測距センサS1は、いわゆる三角測距法により、当該測距センサS1と第1トレイ334の上面との間の距離を測定し、測定した距離を電圧値(レベル値)で表す第1電圧信号(第1測定信号)Vaを出力する。また、測距センサS2は、三角測距法により、当該測距センサS2と第2トレイ335の上面との間の距離を測定し、測定した距離を電圧値(レベル値)で表す第1電圧信号(第1測定信号)Vaを出力する。
【0063】
尚、測距センサS1及びS2は、測定された距離と測定信号のレベル値との関係が対数関数で表されるものであればよく、三角測距法により距離を測定するセンサには限られない。また、測定信号のレベル値は、電流信号やデジタル信号で表されていてもよい。つまり、トレイ上面と自身との間の距離と、測定信号のレベル値との関係が対数関数で表されていればよい。
【0064】
図3は、本発明の一実施形態に係る用紙残量検出装置の機能モジュールの一例を示したブロック図である。図4は、測距センサS1と第1トレイ334上面との間の距離LがL0からL10の間で変化するときの、測距センサS1から出力される第1電圧信号Vaの電圧値Voutの変化について説明するための図である。
【0065】
ここにおいて、測距センサS1及び測距センサS2は同様に構成されており、第1トレイ334及び第2トレイ335の構成や機能はそれぞれ同一であり、測距センサS1と第1トレイ334とを用いた処理(残量検出処理及び電圧値較正処理)と、第2トレイ335と測距センサS2とを用いた前記処理とは同じ手順で行われる。そのため、以下の説明では、第2トレイ335と測距センサS2とについては説明を省略し、第1トレイ334と測距センサS1とについて説明する。
【0066】
用紙残量検出装置1は、CPUやA/Dコンバータなどで構成されており用紙残量検出装置1を統括的に制御する制御部10を備える。また、用紙残量検出装置1は、第1トレイ334をストッカ33内部で上下いずれか一方の方向に移動させるための駆動力を発生させるモータ(トレイ移動部)20、及び、ストッカ33を備える。
【0067】
さらには、用紙残量検出装置1は、測距センサS1から出力された第1電圧信号Vaを対数増幅して、距離の変化に応じて電圧値が略線形的に変化する、すなわち、距離と電圧値(レベル値)との関係が一次関数で表されるような第2電圧信号(第2測定信号)Vbを取得するログアンプ30、及び、当該ログアンプ30により得られた第2電圧信号Vbに予め設定されたレベル(例えば3V)のオフセット電圧Voffを加算するオフセット回路50を備える。
【0068】
さらには、用紙残量検出装置1は、EEPROMなどの不揮発性メモリで構成された記憶部40を備える。
【0069】
さらには、用紙残量検出装置1Aは、バイパス回路駆動部13、及び、当該バイパス回路駆動部13によりオンオフ制御されるスイッチSW1及びSW2を備える。
【0070】
記憶部40は、第1トレイ334に載置されている用紙の残量を検出するための電圧値範囲−残量対応テーブル40Aと、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aに記憶されている電圧値範囲データを較正するための電圧値較正用テーブル40Bと、をルックアップテーブルとして記憶する。
【0071】
また、記憶部40には、後述する電圧値較正処理のために、距離L0(第1距離)、距離L1〜L9、及び、距離L10(第2距離)を予め記憶している。距離L0は、第1トレイ334上面が最下位置PLに位置するときの第1トレイ334上面と測距センサS1との間の距離Lとして記憶されている。また、距離L10は、第1トレイ334上面が用紙取出位置PHに位置するときの第1トレイ334上面と測距センサS1との間の距離Lとして記憶されている。
【0072】
そして、距離L1〜L9の各々は、距離L1から距離L9に向けてL/10ずつ大きくなるように設定されており、設定された各距離が、第1トレイ334上面と測距センサS1との間の距離Lとして記憶されている。
【0073】
尚、本実施形態では、第1距離を距離L0、第2距離を距離L10としているが、この例には限られず、前記距離Lの範囲内で互いに異なる2つの距離であればよい。
【0074】
モータ20は、制御部10により制御される。電圧値範囲データを較正するときのように第1トレイ334及び第2トレイ335に用紙が載置されていない状態では、制御部10は、モータ20により、第1トレイ334及び第2トレイ335の上面が、最下位置PL及び用紙取出位置PHに位置するように、第1トレイ334及び第2トレイ335を移動させる。
【0075】
また、制御部10は、第1トレイ334及び第2トレイ335に載置されている用紙の残量を検出するときには、モータ20により、第1トレイ334及び第2トレイ335に載置されている用紙のうち最上位置の用紙が用紙取出位置PHに位置するように、第1トレイ334及び第2トレイ335を移動させる。
【0076】
制御部10は、第1トレイ334に載置されている用紙残量を検出する残量検出部11と、電圧値範囲−残量テーブル40Aとして記憶されている電圧値範囲データを較正する較正部12と、を備える。
【0077】
残量検出部11は、第3電圧信号Vcを受け付けたときに、記憶部40内の電圧値範囲−残量対応テーブル40Aを参照して、第1トレイ334及び第2トレイ335に載置されている用紙の残量を検出する。尚、残量検出部11の処理の詳細については後述する。
【0078】
較正部12は、第1トレイ334及び第2トレイ335が最下位置PLと用紙取出位置PHとに位置するときにログアンプ30により得られたレベル値をそれぞれ取得し、取得した各レベル値を用いて、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aに記憶されている電圧値範囲データを較正する。
【0079】
バイパス回路駆動部13は、オフセット回路50を通じて出力される第3電圧信号Vcを受け付けて、当該第3電圧信号Vcの電圧値VCoutが、後述される範囲内となったときには、スイッチSW1及びSW2を駆動させて、測距センサS1により得られた第1電圧信号Vaを、ログアンプ30をバイパスさせて残量検出部11に向けて出力させる。
【0080】
尚、第3電圧信号Vcは、後述するように、第2電圧信号Vbにオフセット電圧Voffが加算された信号である。
【0081】
スイッチSW1は、ログアンプ30及びオフセット回路50を、残量検出部11及び較正部12から切り離すために設けられている。当該スイッチSW1は、測距センサS1から、ログアンプ30及びオフセット回路50を経て、残量検出部11及び較正部12に至る経路上において、例えばオフセット回路50の出力段に配置されている。当該スイッチSW1は、オフセット回路50から残量検出部11及び較正部12への第3電圧信号Vcの入力をオンオフする。
【0082】
スイッチSW2は、ログアンプ30、オフセット回路50、及び、スイッチSW1の直列回路と並列に接続されており、測距センサS1からの第1電圧信号Vaを、ログアンプ30をバイパスさせるために配置されている。
【0083】
スイッチSW1がオン、スイッチSW2がオフの状態では、測距センサS1により得られた第1電圧信号Vaは、第3電圧信号Vcとして、残量検出部11及び較正部12に向けて出力される。
【0084】
その一方で、スイッチSW1がオフ、スイッチSW2がオンの状態では、測距センサS1により得られた第1電圧信号Vaはログアンプ30及びオフセット回路50をバイパスして残量検出部11及び較正部12に向けて出力される。
【0085】
このように、スイッチSW1とスイッチSW2とは、測距センサS1により得られた第1電圧信号Vaを、ログアンプ30及びオフセット回路50をバイパスさせるバイパス回路として機能する。
【0086】
測距センサS1は、図4に示す出力特性を有する。図4において、距離Lと測距センサS1により得られる電圧値Voutとの関係を示すグラフGは、例えば、底aが0<a<1であるときの対数関数Vout=logLで表される。
【0087】
以下、測距センサS1の出力特性について、図4を用いて説明する。距離L0〜L10は、距離L10から距離L0に向けて、L/10ずつ大きくなるように設定されており、設定された各距離が記憶部40に予め記憶されている。
【0088】
図4に示すように、第1トレイ334上面と測距センサS1との間の距離Lが、距離L10から距離L0に向けて大きくなるにつれて、測距センサS1から出力される第1電圧信号Vaの電圧値Voutは、V10からV0に向けて順次対数的に小さくなる。
【0089】
一方で、第1トレイ334上面と測距センサS1との間の距離Lが、距離L0から距離L10に向けて小さくなるにつれて、測距センサS1から出力される第1電圧信号Vaの電圧値Voutは、V0からV10に向けて順次対数的に大きくなる。
【0090】
ログアンプ30は、例えば、以下の式(1)に表される対数関係に基づいて、第1電圧信号Vaから第2電圧信号Vbを取得する。
【0091】
Vb=3.32log10(Va)・・・(1)
このような式(1)に表される対数関数に基づいて得られた第2電圧信号Vbは、オフセット回路50によりオフセット電圧Voffが加算された状態で、残量検出部11、較正部12、及び、バイパス回路駆動部13に向けて、第3電圧信号Vcとして出力される。
【0092】
以下、オフセット電圧Voffが加算された第2電圧信号Vbを第3電圧信号Vcとして説明する。
【0093】
尚、オフセット回路50は、残量検出部11がマイナスの第3電圧信号Vcを処理できない場合でも用紙SHの残量検出を可能にする観点から、ログアンプ30により第2電圧信号Vbに加算されるオフセット電圧Voffの電圧値は、オフセット電圧Voffが加算された第2電圧信号Vb、つまり、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutの最小値が0を超える電圧値となる電圧値であることが好ましい。
【0094】
また、オフセット回路50は、必ずしも必要な回路ではない。すなわち、ログアンプ30により得られた対数出力にオフセット電圧Voffを加算しなくても、当該対数出力のレベル値(VLout)に基づいて、残量検出部11、較正部12、及び、バイパス回路駆動部13が後述する処理を行うことができれば、オフセット回路50を設ける必要はない。
【0095】
図5は、ログアンプ30の出力特性の一例を示した図である。図5に示すように、測距センサS1と第1トレイ334との間の距離が、20mmから180mmに向けて短くなると、測距センサS1により得られる第1電圧信号Vaの電圧値Voutは3.28Vから0.2Vに向けて順次対数的に小さくなる。
【0096】
第1電圧信号Vaの電圧値Voutが3.28Vから0.2Vに向けて順次小さくなるとき、ログアンプ30による出力電圧として、1.713695815Vから−2.321928095Vに向けて順次小さくなる対数出力が得られる。尚、当該対数出力は、オフセット回路50によりオフセット電圧Voffが加算される前の第2電圧信号Vbであり、当該第2電圧信号Vbの電圧値はVLoutで表される。
【0097】
そして、ログアンプ30により得られた第2電圧信号Vbには、先述したように、オフセット回路50によりオフセット電圧Voffが加算される。したがって、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutとして、4.713695815Vから0.678071905Vに向けて順次小さくなる電圧値が得られる。
【0098】
図6は、測距センサS1と第1トレイ334上面との間の距離を、20mm、30mm、・・・、180mmというように、10mmきざみで変化させながら、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutを取得して、プロットすることにより得られた図である。
【0099】
図6から、測距センサS1と第1トレイ334上面との距離が20mmから180mmに向けて大きくなるにつれて、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutはほぼ線形的に低下することが判る。
【0100】
以下、残量検出部11による残量検出処理について、図7及び図8を用いて説明する。図7は、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aの一例を示した図である。図8は、残量検出処理の概要の一例を示したフローチャートである。
【0101】
図7に示すように、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aには、複数の電圧値範囲データが記憶されている。各電圧値範囲データには、番号が付されており、当該電圧値範囲データを設定するための、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutが対応する電圧範囲は、番号に応じて予め定められている。
【0102】
本実施形態では、番号(1)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L0〜L1であると定められている。番号(2)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L1〜L2であると定められている。番号(3)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L2〜L3であると定められている。
【0103】
また、番号(4)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L3〜L4であると定められている。番号(5)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L4〜L5であると定められている。番号(6)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L5〜L6であると定められている。
【0104】
さらに、番号(7)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L6〜L7であると定められている。番号(8)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L7〜L8であると定められている。番号(9)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L8〜L9であると定められている。番号(10)の電圧値範囲データを設定するための電圧値が対応する距離範囲は、距離L9〜L10であると定められている。
【0105】
そして、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aには、各電圧値範囲データに対応して、残量10%、20%、30%、・・・、100%のうちいずれかの残量を示す残量データが記憶されている。
【0106】
残量検出部11は、図8に示すように、第3電圧信号Vcを受信したときには(ステップS1のYES)、受信した第3電圧信号Vcの電圧値VCoutが、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aにおいていずれの電圧値範囲データに含まれているかを判断する(ステップS2)。
【0107】
残量検出部11は、受信した第3電圧信号Vcの電圧値VCoutが含まれる電圧値範囲データに対応して電圧値範囲−残量対応テーブル40Aに記憶されている残量データを判断して、当該残量データで示される残量を検出する(ステップS3)。
【0108】
例えば、ステップS2において、電圧値VCoutが、電圧値V2を超え電圧値V3以下の範囲を示す電圧値範囲データに含まれていると判断された場合には、残量80%を検出する。そして、残量検出部11は、検出された残量を、例えば回路の表示器に表示することにより通知する(ステップS4)。
【0109】
尚、図7及び図8では、測距センサS1と第1トレイ334上面との間の距離L0〜L10と、距離L0〜L10を表す第3測定信号Vcの電圧値V0〜V10との対応関係を表す情報(対応付け情報)が、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aとして記憶されている。
【0110】
そして、残量検出部11が、受信した第3電圧信号Vcと、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aとを用いて、受信した第3電圧信号Vcの電圧値VCoutがどの電圧値範囲データに含まれているかを判断して、残量検出をしている。
【0111】
しかしながら、本発明ではこの例に限られず、測距センサS1と第1トレイ334上面との間の距離Lと、当該距離を表す第3電圧信号Vcの電圧値との対応関係を表す情報(対応付け情報)として、前記距離Lの変化に応じた第3電圧信号Vcの電圧値VCoutの変化を表す回帰直線がデータとして記憶されていてもよい。
【0112】
このような回帰直線がデータとして記憶されていれば、残量検出部11は、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutに対応する前記距離を回帰直線に基づいてきめ細かく判断することができるため、用紙残量の検出を精度良く行うことができる。
【0113】
ここにおいて、回帰直線としては、前記距離Lを変数としたときには、例えば、式「Vc=(−0.0252226494375)L+5.21814880375」の一次関数で表される直線が挙げられる。かかる直線は、後述する電圧値較正処理で求められる。
【0114】
以下に、電圧値較正処理について、図9及び図10を用いて説明する。図9は、電圧値較正用テーブル40Bの一例を示した図である。図10は、電圧値較正処理の概要の一例を示したフローチャートである。
【0115】
図9に示すように、電圧値較正用テーブル40Bには、距離L0〜L10の各々に対応して、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutが記憶されるように構成されている。
【0116】
以下に示す電圧値較正処理は、ストッカ33が筐体2内部にセットされたとき、電圧値較正処理の実行を指示するための操作ボタン(不図示)がユーザにより操作されたとき、予め設定された時間が到来したとき、などに実行される。
【0117】
図10は、電圧値較正処理の概要の一例を示したフローチャートである。まず、較正部12は、第1トレイ334の上面がストッカ33の最下位置PLに位置するときの電圧値VCoutを実測する(ステップS10)。これにより、距離L0(第1距離)に対応する電圧値V0が取得される。
【0118】
ついで、較正部12は、第1トレイ334の上面をストッカ33の最下位置PLから用紙取出位置PHに向けて上方向に移動させ(ステップS11)、第1トレイ334の上面が用紙取出位置PHに位置するときの電圧値VCoutを実測する(ステップS12)。これにより、距離L10(第2距離)に対応する電圧値V10が取得される。
【0119】
尚、図示はされていないが、第1トレイ334が用紙取出位置PHに位置することを検出するセンサが配置されている。較正部12は、当該センサから出力された信号を受信することにより、トレイが用紙取出位置PHに位置することを検出する。
【0120】
ついで、較正部12は、第1トレイ334上面と測距センサS1との間の距離L、及び、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutを変数としたときに、距離L0と当該距離L0に対応する電圧値V0とにより定まる点と、距離L10と当該距離L10に対応する電圧値V10とにより定まる点とを通る回帰直線を求める(ステップS13)。
【0121】
較正部12は、回帰直線として、例えば、上記2点を通る、一次関数で表される直線を求める。この直線は、第3電圧信号Vcの電圧値VCout、及び、測距センサS1と第1トレイ334上面との間の距離Lを変数としたときに、式「VCout=aL+b(a及びbは定数)」で表される。
【0122】
較正部12は、この回帰直線を求めるに当たり、定数a及びbを、予め記憶部30に記憶されている距離L0及びL1と、距離L0に対応して実測された電圧値V0と、距離L10に対応して実測された電圧値V10と、を用いて算出する。
【0123】
例えば、較正部12は、定数a及びbを以下の式(2)及び(3)からなる連立方程式を用いて算出する。
【0124】
V0=a×(L0)+b・・・(2)
V10=a×(L10)+b・・・(3)
例えば、距離L0として予め記憶部40に「180mm」を表すデータが記憶されており、電圧値V0として「0.678071905V」が実測され、且つ、距離L1として予め記憶部40に「20mm」を表すデータが記憶されており、電圧値V10として「4.713695815V」が実測されたとする。
【0125】
すると、式(2)及び(3)は、以下のようになる。
【0126】
4.713695815=20a+b・・・(5)
0.678071905=180a+b・・・(6)
式(5)及び(6)から、−0.0252226494375である定数aが求まり、5.21814880375である定数bが求まる。
【0127】
これにより、式「VCout=−0.0252226494375L+5.21814880375」で表される回帰直線が求められる。
【0128】
ついで、較正部12は、当該回帰直線に変数として含まれる距離Lに、記憶部40に予め記憶されている距離L1〜L9の各々を代入して、距離L1〜L9の各々に対応する第3電圧信号Vcの電圧値VCoutを取得する(ステップ14)。
【0129】
そして、較正部12は、距離L1〜L9の各々に対応する第3電圧信号Vcの電圧値VCoutを、記憶部40に電圧値較正用テーブル40Bとして、各距離に対応させて記憶させる(ステップS15)。
【0130】
そして、較正部12は、電圧値較正用テーブル40Bに各距離に対応して記憶されている電圧値V0〜V10を、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aにおける新たな電圧値V0〜V10として記憶させる(ステップS16)。
【0131】
尚、図10に示す電圧値較正処理では、予め記憶部40に記憶されている距離L0〜距離L11の各々に対応する電圧値を電圧値較正用テーブル40Bに記憶させ、電圧値較正用テーブル40Bに記憶させた各電圧値を用いて、電圧値範囲−残量対応テーブル40Aを較正している。
【0132】
しかしながら、本発明ではこの例には限られず、第1トレイ334が最下位置PLに位置するときの電圧値を距離L0に対応する電圧値として取得するとともに、第1トレイ335が用紙取出位置PHに位置するときの電圧値を距離L10に対応する電圧値として取得し(以上、ステップS10〜S12)、取得した各電圧値を用いて、回帰直線として先述した回帰直線を求め(ステップS13)、当該回帰直線を表す一次関数式を、前記距離Lと第3電圧信号Vcの電圧値VCoutとの間の対応関係を表す対応付け情報として、記憶部40に記憶させてもよい。
【0133】
そして、この場合には、残量検出部11は、実測された第3電圧信号Vcの電圧値VCoutを当該一次関数式に代入することにより、当該電圧値VCoutに対応する距離を取得して、取得した距離を用紙1枚あたりの厚みで除算することにより、残量枚数を検出する。
【0134】
また、図10に示す電圧値較正処理では、較正部12が最下位置PL及び用紙取出位置PHに位置するときの電圧値VCoutを取得するに当たり、第1トレイ334を最下位置PLから用紙取出位置PHに向けて移動させている。
【0135】
しかしながら、本発明はこの例には限られず、最下位置PL及び用紙取出位置PHに位置するときの電圧値VCoutがそれぞれ取得できればよく、最下位置PL及び用紙取出位置PHに位置するときの電圧値VCoutを取得するための手順は限定されない。
【0136】
以上のように、本実施形態によれば、予め記憶部40に記憶された距離L0と、実測により得られた電圧値V1とにより定まる点と、予め記憶部40に記憶された距離L10と、実測により得られた電圧値V10とにより定まる点とを通る回帰直線を求め、当該回帰直線を用いて、測距センサS1と第1トレイ334上面との間の距離Lと第3電圧信号Vcの電圧値VCoutとの間の対応関係を取得する。
【0137】
これにより、当該回帰直線を用いて、ランダムな距離に対応する電圧値を取得することができるため、互いに異なる複数の距離に対応する電圧値を取得するための処理量を軽減することができる。
【0138】
次に、バイパス回路駆動部13の基本動作について図11を用いて説明する。図11は、バイパス回路駆動部13の基本動作の一例を示したフローチャートである。尚、以下の処理が行われる前提として、第1トレイ334が、当該第1トレイ334に載置されている用紙SHの残量が減少するにつれて、最上位置の用紙SHが用紙取出位置PHに位置するように、モータ20の駆動力を受けて上方向に移動させるようにしている。
【0139】
そして、当該移動の過程において、バイパス回路駆動部13は、以下のように動作する。すなわち、バイパス回路駆動部13は、第3電圧信号Vcを受信したときには(ステップS20のYES)、当該第3電圧信号Vcの電圧値VCoutが、Vx以上でありVy以下である電圧範囲に含まれているか否かを判定する(ステップS21)。
【0140】
ここにおいて、Vxは、測距センサS1により得られる電圧値Voutの距離の変化に応じた変化(図13参照)が、ログアンプ30により得られた電圧値VCoutの距離の変化に応じた変化(図6参照)よりも大きくなる範囲における、電圧値VCoutの下限値を示している。また、Vyは、当該範囲における、電圧値VCoutの上限値を示している。
【0141】
例えば、ログアンプ30が図6に示す出力特性を有し、測距センサS1が図13に示す出力特性を有している場合には、上記範囲は、測距センサS1と第1トレイ334上面との間の距離範囲がおよそ20mmからおよそ50mmの範囲である。
【0142】
このように、測距センサS1と第1トレイ334上面との距離範囲が、およそ20mmからおよそ50mmの範囲であるとき、Vx≒3.64V、Vy≒4.71Vとなる(図5の「加算後のログアンプ出力電圧欄」参照)。
【0143】
尚、Vx及びVyは、本実施形態では、第3電圧信号Vcを基準として設定されているが、本発明ではこの例には限られず、第1電圧信号Vaを基準として設定されていてもよい。このように、第1電圧信号Vaを基準として設定した場合には、Vx≒1.56V、Vy≒3.28Vとなる(図5の「測距センサ出力電圧」欄参照)。
【0144】
ステップS21において、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutが、Vx以上でありVy以下である電圧範囲に含まれているときには(ステップS21のYES)、バイパス回路駆動部13は、スイッチSW1をオフ、スイッチSW2をオンとする(ステップS22)。
【0145】
これにより、測距センサS1により得られる第1電圧信号Vaが、ログアンプ30及びオフセット回路50をバイパスして、残量検出部11及び較正部12に入力される。
【0146】
その一方で、ステップS21において、第3電圧信号Vcの電圧値VCoutが、Vx以上でありVy以下である電圧範囲に含まれていないときには(ステップS21のNO)、バイパス回路駆動部13は、スイッチSW1がオン、スイッチSW2がオフの状態を維持して、ステップS20の処理に戻る。
【0147】
バイパス回路駆動部13は、以上のステップS20〜S22の処理を、第1トレイ334の上面が用紙取出位置PHに到達するまでの間継続して行い、第1トレイ334上の用紙が無くなって第1トレイ334の上面が用紙取出位置PHに到達すると(ステップS23のYES)、スイッチSW1をオン、スイッチSW2をオフに戻す(ステップS24)。
【0148】
以上に示したように、本実施形態によれば、Vx以上Vy以下の電圧範囲の電圧値VCoutが得られたときには、測距センサS1により得られた第1電圧信号Vaを、ログアンプ30及びオフセット回路50をバイパスさせて残量検出部11に入力させている。
【0149】
そのため、第1トレイ334が当該トレイに載置されている最上位置の用紙SHが用紙取出位置PHに位置するように上方向に移動している過程で、測距センサS1と第1トレイ334上面との間の距離の変化をレベル値の変化として残量検出部11に伝えやすくなる。結果として、第1トレイ334に載置されている用紙残量の検出精度が向上する。
【0150】
尚、本発明においては、本実施形態のように、スイッチSW1及びSW2と、バイパス回路駆動部13とを必ずしも設ける必要はなく、第3電圧信号Vcが常時、残量検出部11及び較正部12に入力されるようにしてもよい。
【符号の説明】
【0151】
A 画像形成装置
1 用紙残量検出装置
11 残量検出部
12 較正部
13 バイパス回路駆動部
20 モータ
30 ログアンプ
33 ストッカ
40 記憶部
50 オフセット回路
334 第1トレイ
335 第2トレイ
L0 第1距離
L10 第2距離
S1、S2 測距センサ
SH 用紙
SW1、SW2 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
用紙を収容する用紙収容部と、
前記用紙を載置するために設けられ、前記用紙収容部の内部で予め設定された、最下位置と用紙取出位置との間で上下方向に移動可能なトレイと、
前記トレイを前記上下いずれか一方の方向に移動させるトレイ移動部と、
前記トレイ上面と対向して設けられており、自身と当該トレイ上面との間の距離を表し当該距離の変化に応じてレベル値が対数的に変化する第1測定信号を出力する測距センサと、
前記測距センサにより出力された第1測定信号を受け付けて当該第1測定信号を対数増幅することにより、前記距離の変化に応じてレベル値が略線形的に変化する第2測定信号を得るログアンプと、
前記距離と前記第2測定信号のレベル値との対応関係を示す対応付け情報を記憶する記憶部と、
前記ログアンプにより得られた前記第2測定信号と、前記記憶部に記憶されている前記対応付け情報とを用いて、前記トレイに載置されている用紙の残量を検出する残量検出部と、
を備えることを特徴とする用紙残量検出装置。
【請求項2】
前記記憶部に記憶されている対応付け情報を較正するための較正部をさらに備えており、
前記較正部は、
前記トレイ移動部により、前記トレイ上面を前記測距センサから予め設定された第1距離離れた位置に位置させるとともに、前記トレイ上面を前記測距センサから予め設定された第2距離離れた位置に位置させ、
前記トレイ上面が前記測距センサから前記第1距離離れた位置に位置するときに当該測距センサにより得られる第1レベル値と、前記トレイ上面が前記測距センサから前記第2距離離れた位置に位置するときに当該測距センサにより得られる第2レベル値とを取得して、取得した各レベル値を基にして前記対応付け情報を生成する
ことを特徴とする請求項1に記載の用紙残量検出装置。
【請求項3】
前記較正部は、
前記距離及び前記レベル値をそれぞれ変数としたときに、前記第1距離と前記第1レベル値とで定まる点と、前記第2距離と前記第2レベル値とで定まる点とを結ぶ回帰直線を求め、当該回帰直線を表す情報を前記対応付け情報として前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項2に記載の用紙残量検出装置。
【請求項4】
前記較正部は、
前記距離及び前記レベル値をそれぞれ変数としたときに、前記第1距離と前記第1レベル値とで定まる点と、前記第2距離と前記第2レベル値とで定まる点とを結ぶ回帰直線を求め、当該回帰直線を用いて、前記測距センサと前記トレイ上面との間の互いに異なる複数の距離に対応するレベル値を取得し、前記各距離と当該距離に対応するレベル値とを前記対応付け情報として前記記憶部に記憶させる
ことを特徴とする請求項2に記載の用紙残量検出装置。
【請求項5】
前記第1距離は、前記トレイが前記最下位置に位置するときの前記距離であり、
前記第2距離は、前記トレイが前記用紙取出位置に位置するときの前記距離である
ことを特徴とする請求項2乃至請求項4に記載の用紙残量検出装置。
【請求項6】
前記第1測定信号は、前記距離が予め設定された距離範囲にあるときには、当該距離の変化に応じたレベル値の変化が、当該距離が前記距離範囲にあるときの前記第2測定信号のレベル値の当該距離の変化に応じた変化よりも大きな信号であり、
前記用紙残量検出装置は、
前記測距センサにより出力された測定信号を、前記ログアンプをバイパスして前記残量検出部に入力させるバイパス回路と、
前記ログアンプにより得られたレベル値が、前記距離が前記距離範囲にあるときには、前記バイパス回路によって前記ログアンプをバイパスさせるバイパス回路駆動部と、
をさらに備えることを特徴とする請求項1乃至請求項5のいずれか一項に記載の用紙残量検出装置。
【請求項7】
前記ログアンプにより得られた前記第2測定信号に予め設定されたレベルのオフセットを加算するオフセット回路をさらに備える
ことを特徴とする請求項1乃至請求項6のいずれか一項に記載の用紙残量検出装置。
【請求項8】
前記オフセット回路は、
前記オフセットが加算された後の前記第2測定信号のレベル値が0を超えるように、前記オフセットを加算する
ことを特徴とする請求項7に記載の用紙残量検出装置。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか一項に記載の用紙残量検出装置と、
前記用紙収容部に収容された用紙を前記用紙取出位置で取り出して搬送する搬送部と、
前記搬送部により搬送された用紙に画像を形成する画像形成部と、
を備えることを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2011−246253(P2011−246253A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−123059(P2010−123059)
【出願日】平成22年5月28日(2010.5.28)
【出願人】(000006150)京セラミタ株式会社 (13,173)
【Fターム(参考)】