説明

田植機搭載型農薬散布装置

【課題】田植機の田植え動作と農薬散布装置の散布動作とが常に正確に同調し、その結果、常に正確な量の農薬を散布することができる田植機搭載型農薬散布装置を提供する。
【解決手段】農薬を散布する散布機構と、田植機の本体に回転可能に支持された円板6と、田植機に具備される苗床台の往復動作を円板6の回転運動に変換する変換機構7と、円板6に設けられて散布機構の作動の契機となる複数の磁性体8と、円板6の回転に伴って移動する磁性体8の接近を検出する近接スイッチ9と、近接スイッチ9による磁性体8の検出を契機として散布機構を作動させる制御部とを備える田植機搭載型農薬散布装置を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、田植機搭載型農薬散布装置に関する。
【背景技術】
【0002】
田植機に搭載され、田植え作業に並行して粒状の農薬を散布する田植機搭載型農薬散布装置が提案されている(例えば、下記の特許文献1、2を参照)。この散布装置には、苗床台に接し、苗床台の往復動作により回転するローラと、ローラの回転に伴って移動する突起や金属ボルト等の作動契機部との接触または接近によって接点を繋ぐスイッチと、スイッチの接点が繋がれると作動して農薬を散布する散布機構とが具備されている。
【特許文献1】特開平11−308959号公報
【特許文献2】特開2005−110569号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記の田植機搭載型農薬散布装置においては、田植機の振動等に起因して、ローラが苗床台に対して滑りを生じることがある。ローラが滑りを生じると、苗床台の移動量がローラの回転量に正しく変換されない場合がある。このような場合、田植機の田植え動作と農薬散布装置の散布動作とが正確に同調しない可能性がある。
【0004】
本発明は上記の事情に鑑みてなされたもので、田植機の田植え動作と農薬散布装置の散布動作とが常に正確に同調し、その結果、常に正確な量の農薬を散布することができる田植機搭載型農薬散布装置を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の課題を解決するための手段として、次のような構成の田植機搭載型農薬散布装置を採用する。すなわち、本発明の田植機搭載型農薬散布装置は、田植え作業と並行して粒状の農薬を散布する田植機搭載型農薬散布装置であって、前記農薬を散布する散布機構と、前記田植機の本体に回転可能に支持された回転体と、前記田植機に具備される苗床台の往復動作を回転体の回転運動に変換する変換機構と、前記回転体に設けられ、前記散布機構の作動の契機となる作動契機部と、前記回転体の回転に伴って移動する前記作動契機部との接触、または前記作動契機部の接近を検出するスイッチと、前記スイッチによる前記作動契機部の検出を契機として前記散布機構を作動させる制御部とを備える。
【0006】
本発明においては、苗床台に生じる振動が、苗床台の往復動作が変換機構によって回転体の回転運動に変換される過程で変換機構に吸収されるので、苗床台の移動量が回転体の回転量に正しく変換される。これにより、苗床台が振動しても、田植機の田植え動作と農薬散布装置の散布動作とが常に正確に同調する。
【0007】
本発明の田植機搭載型農薬散布装置において、前記変換機構は、前記回転体を一方向に回転させる付勢力を発揮する付勢部材と、一端を前記回転体または同回転体の中心軸に接続されるとともに他端を前記苗床台に接続され、前記中心軸の周囲に巻回されるワイヤとを備えていてもよい。このとき、前記回転体は、前記苗床台の移動に伴って前記ワイヤが引き出されることにより、前記付勢部材の前記一方向への付勢力に抗して他方向に回転するのが好ましい。
【0008】
本発明においては、苗床台の往復動作中、常にワイヤに張力が作用しているので、苗床台の移動が回転体にロスなく伝達される。このとき、苗床台が振動しても、その振動がワイヤに吸収されるので、苗床台の移動量が回転体の回転量に正しく変換される。
【0009】
本発明の田植機搭載型農薬散布装置において、前記作動契機部は磁性体であってもよい。このとき、前記スイッチは、前記作動契機部の接近によって生じる磁場の変化を検出する近接スイッチであるのが好ましい。
【0010】
本発明においては、上記のような非接触型の近接スイッチを採用することにより、近接スイッチや回転体(および回転体に設けられた作動契機部)に多少の振動が生じても、近接スイッチによる作動契機部の検出が誤作動なく行われる。
【0011】
本発明の田植機搭載型農薬散布装置において、前記回転体、前記変換機構、前記作動契機部および前記スイッチは、ケーシングに内蔵されていてもよい。
【0012】
本発明においては、上記の各部材がケーシングに内蔵されることにより、各部材に泥が付着することがない。したがって、泥の付着による誤作動が防止される。
【0013】
本発明の田植機搭載型農薬散布装置において、前記回転体は円板であってもよい。このとき、前記作動契機部は、前記円板の円周面に設けられるのが好ましい。
【0014】
本発明においては、回転体を円板とすることにより、回転体とスイッチとの意図しない干渉が防止される。また、スイッチに対する作動契機部の接近、離間が円滑に行われる。
【0015】
本発明の田植機搭載型農薬散布装置において、前記散布機構、前記回転体、前記変換機構、前記作動契機部および前記スイッチは、前記苗床台の後方に配置されていてもよい。
【0016】
本発明においては、散布機構、回転体、変換機構、作動契機部およびスイッチが同じ側、すなわち苗床台の後方に配置されているので、各部を繋ぐ配線が苗床台と干渉することがない。したがって、田植機の植え付け動作を円滑に行われる。
【発明の効果】
【0017】
本発明の田植機搭載型農薬散布装置によれば、田植機の田植え動作と農薬散布装置の散布動作とを常に正確に同調させることができ、その結果、常に正確な量の農薬を散布することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
本発明の第1の実施形態を、図1から図4を参照して詳細に説明する。
本実施形態の田植機搭載型農薬散布装置(以下は散布装置と呼ぶ)は、農薬を散布する散布機構1と、田植機の植え付け作業と同調して散布機構に農薬散布を行わせる散布動作制御装置2とを備えている。散布機構1は、図1に示すように、散布機構1の各駆動部に電力を供給するバッテリパック3と、バッテリパック3から散布機構1への電力供給を断続する主スイッチ4aを備えるスイッチボックス4とを備えている。散布機構1、バッテリパック3およびスイッチボックス4は、苗床台Sの後方に立設された門形のフレームF1に固定されている。バッテリパック3は、商用電源を使って繰り返し充電可能である。
【0019】
散布動作制御装置2は、図2および図3に示すように、田植機本体に固定されるケーシング5と、ケーシング5に回転可能に支持された円板(回転体)6と、苗床台Sの往復動作を円板6の回転運動に変換する変換機構7と、円板6の円周面に設けられた複数の磁性体(作動契機部)8と、磁性体8の接近を検出する近接スイッチ9と、近接スイッチ9による磁性体の検出を契機として散布機構1を作動させる制御部10とを備えている。散布動作制御装置2を構成する各部材のうち、円板6、変換機構7、磁性体8および近接スイッチ9はケーシング5に内蔵され、制御部10はスイッチボックス4に内蔵されている。
【0020】
近接スイッチ9は、制御部10と信号ケーブルCを介して接続されている。散布機構1は、近接スイッチ9が磁性体8の接近を検出すると、ソレノイドに接続された遮蔽弁(図示略)を開き、農薬を散布する。なお、ソレノイドや遮蔽弁を含む散布機構1の構造については、上記特許文献1(特開平11−308959号公報)に詳細に説明されているので、ここでは省略する。
【0021】
円板6は、中心軸6aまわりに正逆いずれの方向にも回転可能に支持されている。複数の磁性体8は、円板6の円周面に、等間隔に離間するように配置されている。近接スイッチ9は、検出面9aを円板6の円周面に向け、かつ検出面9aと円板6の円周面との間に隙間を空けるようにしてケーシング5に固定されている。変換機構7は、図3に示すように、ねじりコイルバネ(付勢部材)11と、ワイヤ12とを備えている。ねじりコイルバネ11は、円板6を所定の一方向に回転させる付勢力を発揮している。ワイヤ12は、一端を円板6に接続されるとともに、円板6の周囲に巻き付けられている。
【0022】
円板6、変換機構7、磁性体8および近接スイッチ9を内蔵するケーシング5は、図4に示すように、苗床台Sを往復移動可能に支持する田植機本体のフレームF2に、ブラケットB1を介して固定されている。一方、ワイヤ12の他端は、苗床台Sの任意の個所に鎖12aを介して接続されている。
【0023】
上記のように構成された散布装置の作動の仕方について説明する。
まず、苗の束を苗床台Sに搭載した田植機を水田に乗り入れ、主スイッチ4aを接続する。主スイッチ4aを接続すると、散布機構1に内蔵されたモータ(図示略)にバッテリパック3から電力が供給され、モータが駆動してインペラ(図示略)が回転する。
【0024】
田植機を操作して植え付け作業を開始すると、苗床台Sは掻き取り爪による苗の掻き取り動作に同調して往復移動を開始する。そして、苗床台Sが往路方向に移動すると、支持フレームに固定されたケーシング5と、苗床台Sの、ワイヤ12の他端を固定した箇所とが離間する。これにより、ワイヤ12がねじりコイルバネ11の付勢力に抗して円板6から引き出され、円板6が他方向に回転する。また、苗床台Sが復路方向に移動すると、支持フレームに固定されたケーシング5と、苗床台Sの、ワイヤ12の他端を固定した箇所とが接近する。これにより、ワイヤ12がねじりコイルバネ11の付勢力に従って円板6に巻き付けられ、円板6が所定の一方向に回転する。つまり、円板6は、田植機の植え付け動作の一環である苗床台Sの往復移動に伴って正逆二方向に交互に回転する。
【0025】
円板6が正逆いずれかの方向に回転すると、円板6の側面に形成された複数の磁性体8は、定位置に固定された近接スイッチ9の検出面9aに、次々と接近しては離間していく。近接スイッチ9は、検出面9aに磁性体8が接近するたびに、その接近によって生じる磁場の変化を検出し、信号を発信する。近接スイッチ9から発信された信号は、信号ケーブルCを介して制御部10に受信される。制御部10は、近接スイッチ9の信号を受信すると、ソレノイドを駆動して散布機構1の遮蔽弁を開く。遮蔽弁が開かれると、収容部からインペラに向けて微粒状の農薬が流下し、回転するインペラにはじかれて飛散する。
【0026】
上記のように構成された散布装置によれば、苗床台Sの往復動作中、常にワイヤ12に張力が作用しているので、苗床台Sの移動が円板6にロスなく伝達される。このとき、苗床台Sが振動しても、その振動がワイヤ12に吸収されるので、苗床台Sの移動量が円板6の回転量に正しく変換される。これにより、田植機の田植え動作と散布装置の散布動作とが常に正確に同調する。
【0027】
上記の散布装置によれば、非接触型の近接スイッチ9が採用されているので、近接スイッチ9や円板6に多少の振動が生じても、近接スイッチ9による磁性体8の検出が誤作動なく行われる。
【0028】
上記の散布装置によれば、円板6、変換機構7の各部材、磁性体8および近接スイッチ9の検出面9aがケーシング5に内蔵されているので、これら各部材に泥が付着することがない。したがって、泥の付着による誤作動が防止される。
【0029】
上記の散布装置によれば、回転体として円板6を採用したので、円板6が回転してもその円周面と近接スイッチ9の検出面9aとの間の間隔が常に一定に保たれる。したがって、円板6と近接スイッチ9との意図しない干渉が防止される。また、近接スイッチ9に対する磁性体8の接近、離間が円滑に行われる。
【0030】
ところで、本実施形態においては、田植機にバッテリパック3を搭載し、このバッテリパック3から散布機構1の各駆動部に電力を供給する構造を採用したが、田植機に既設のバッテリから、散布機構1の各駆動部に電力を供給するようにし、バッテリパックは搭載しない構造を採用することも可能である。
【0031】
本実施形態において、磁性体8は、苗床台Sの往路方向の移動または復路方向の移動における円板6の回転数に応じてその数が適宜選択される。すなわち、円板6の回転数が多ければ、磁性体8をひとつだけ設置してもよいし、円板6の回転数が少なければ、磁性体8をより多く設置してもよい。ちなみに、苗床台Sの往路方向の移動または復路方向の移動における円板6の回転数は、ワイヤ12を巻回される円板6または中心軸の円周長に反比例する。
【0032】
本実施形態においては、変換機構7としてねじりコイルバネ11と、ワイヤ12とを採用したが、これらに代え、変換機構に以下のような構造を採用してもよい。すなわち、ワイヤの一端を苗床台Sに接続し、そのワイヤを円板6の周囲に何度か巻回したうえで、ワイヤの他端を苗床台Sに接続する。この場合、苗床台Sが移動すると、ワイヤと円板6との間に作用する摩擦力によって円板6が回転する。
その他に、苗床台Sと円板6とを連結するバーを採用し、バーの一端を苗床台に回転自在に接続するとともに、バーの他端を円板6の側面の偏心した位置に回転自在に接続する。この場合は、苗床台Sが移動すると、バーの一端に押推力が作用し、バーの他端に接続された円板6が回転する。
【0033】
本実施形態のような近接スイッチ9ではなく、突起等の作動契機部との接触を検出する接触型のスイッチを採用してもよい。また、非接触型、接触型のいずれのスイッチにかかわらず、作動契機部を回転体の側面に設けてもよい。
さらに、田圃の水面から離れた位置に、円板6、変換機構7の各部材、磁性体8および近接スイッチ9を取り付けることが可能であれば、これら各部材をケーシング5に内蔵しなくてもよい。すなわち、ケーシング5を廃しても構わない。ただし、円板6や近接スイッチ9を固定する台座は必要であり、この台座をなんらかの手段で田植機の本体に固定する必要がある。
【0034】
本発明の第2の実施形態を、図5から図7を参照して詳細に説明する。なお、上記第1の実施形態において既に説明した構成要素には同一符号を付して説明は省略する。
本実施形態の散布装置においては、散布動作制御装置2を構成するケーシング5が、散布機構1、バッテリパック3およびスイッチボックス4と同じく、苗床台Sの後方に立設された門形のフレームF1に固定されている。詳述すると、ケーシング5は、図5に示すように、フレームF1の脚部に、ブラケットB2,B3を介して固定されている。一方、ワイヤ12の他端は、苗床台Sの下縁から立設されたフレームF3の先端に、鎖12aを介して接続されている。
【0035】
フレームF3は、苗床台Sの下縁に沿って固定される横バー21と、横バー21のほぼ中央に横バー21に対して垂直に固定された縦バー22とからなる。横バー21の両端には貫通孔が形成されていて、この貫通孔に挿入されたボルト23の先端を苗床台Sの下縁に螺着することにより、フレームF3が苗床台Sに固定される。縦バー22の先端には、ブラケットB4が取り付けられていて、ワイヤ12の他端がこのブラケットB4に鎖12aを介して係止されることにより、ワイヤ12の他端がフレームF3に接続される。
【0036】
上記のように構成された散布装置によれば、ケーシング5がスイッチボックス4と同じく苗床台Sの後方に配置されるので、ケーシング5とスイッチボックス4とを接続する信号ケーブルCが、第1の実施形態とは異なり、苗床台Sを跨ぐことなく配設される。したがって、苗床台Sが往復移動する際、信号ケーブルCが苗床台Sと干渉することがない。したがって、田植機の植え付け動作を円滑に行うことができる。
【0037】
図6および図7に、ワイヤ12の他端が接続されるフレームの変形例を示す。両図に示されるフレームF4は、苗床台Sの下縁部分の形状の違いに応じて取り付け方を変更することにより、形状の異なる二種類の苗床台に支障なく取り付けられる。
まず、苗床台Sの下縁部分の形状の違いについて説明すると、図6に示す苗床台Sの下縁には、田植機の車幅方向に、ほぼ水平に配設された水平バー31と、水平バー31に直交する方向に配設され、下部のある領域32aがL形に屈曲された垂直バー32とが設けられている。L形に屈曲された垂直バー32の下部領域32aは、水平バー31を同じ高さに配設されており、垂直バー32の下端は、水平バー31の側面に溶接されている。
図7に示す苗床台Sの下縁にも、水平バー31と垂直バー32とが設けられている。ただし、図7の場合、L形に屈曲された垂直バー32の下部領域32aは、水平バー31の下に配設されており、垂直バー32の下部領域32aの上側面が、水平バー31の下側面に溶接されている。
【0038】
次に、フレームF4の構造について説明する。図6および図7に示すように、フレームF4は、水平バー31および垂直バー32に固定される基部41と、基部41に水平バー31に対して垂直に固定された縦バー42とからなる。基部41は、水平バー31および垂直バー32の下に配置される下押さえ金具43と、水平バー31および垂直バー32の上に配置されて下押さえ金具43との間で水平バー31および垂直バー32を挟む上押さえ金具44と、上下の押さえ金具43,44を締結する2本のボルト45と、下押さえ金具43に縦バー42の下端を固定するツマミネジ46とを備えている。縦バー42の下端には、ツマミネジ46を通すための貫通孔42aが形成されている。
【0039】
下押さえ金具43は、平面視するとT字形に形成されており、中央の板状部43aにはボルト45を螺着するための雌ネジ孔47が2つ形成されている。また、板状部43aの先端は、斜め上方に向けて折り曲げられ、その折り曲げられた領域には、ツマミネジ46を螺着するための雌ネジ孔48が形成されるとともに、縦バー42の下端を支持するためのホルダ49が取り付けられている。ホルダ49には、ツマミネジ46を通すための貫通孔49aが形成されている。中央の板状部43aから両側に突き出す2つの板状部のうち、一方の板状部43bは、根本部分が下向きに90°折り曲げられ、さらに中央部分が逆向きに90°折り曲げられている。これにより、一方の板状部43bの先端領域は、中央の板状部43aよりも下方にあって板状部43aと平行に配置されている。他方の板状部43cは、折り曲げられることなく水平に延びており、その先端領域は中央の板状部43aと同じ高さである。
【0040】
上押さえ金具44も、下押さえ金具43と同じく平面視するとT字形に形成されており、中央の板状部44aにはボルト45を通すための貫通孔51が2つ形成されている。また、2つの貫通孔51の間の板状部44aには、水平バー31に対する上押さえ金具44の接触面積を広く確保するための溝状部52が設けられている。溝状部52は、板状部44aの一部を波打つように屈曲することにより形成されている。中央の板状部44aから両側に突き出す2つの板状部のうち、一方の板状部44bは、根本部分が下向きに90°折り曲げられ、さらに中央部分が逆向きに90°折り曲げられている。これにより、一方の板状部44bの先端領域は、中央の板状部44aよりも下方にあって板状部44aと平行に配置されている。他方の板状部44cは、折り曲げられることなく水平に延びており、その先端領域は中央の板状部44aと同じ高さである。
【0041】
上記のように構成されたフレームF4を、図6のように垂直バー32の下部領域32aが水平バー31と同じ高さに配設された苗床台Sに取り付ける場合は、まず、下押さえ金具43を水平バー31の下に、上押さえ金具44を水平バー31の上にし、水平バー31を2つの押さえ金具43,44で挟む。このとき、下押さえ金具43を、水平バー31が中央の板状部43aの2つの雌ネジ孔47の間に接し、垂直バー32の下部領域32aが他方の板状部43cに接するように配置する。また、上押さえ金具44を、水平バー31が中央の板状部44aの2つの貫通孔51の間に接し、垂直バー32の下部領域32aが他方の板状部44cに接するように配置する。もし必要なら、押さえ金具と垂直バー32の下部領域32aとの間にゴム材53を挟み込んでもよい。
【0042】
次に、2本のボルト45をそれぞれ貫通孔51に通し、さらに雌ネジ孔47に螺着する。ボルト45を強く締めることにより、水平バー31および垂直バー32の下部領域32aが上下の押さえ金具43,44に挟まれるので、基部41が苗床台Sの定位置に固定される。
【0043】
次に、縦バー42の下端を、板状部43aの先端とホルダ49との間に挿入する。そして、スプリングワッシャ54に通したツマミネジ46を貫通孔49aに通し、さらに雌ネジ孔48に螺着する。ツマミネジ46を強く締めることにより、縦バー42の下端が板状部43aの先端とホルダ49との間に挟まれるので、縦バー42が基部41に固定される。
【0044】
また、フレームF4を、図7のように垂直バー32の下部領域32aが水平バー31の下に配設された苗床台Sに取り付ける場合は、まず、下押さえ金具43を水平バー31の下に、上押さえ金具44を水平バー31の上にし、水平バー31を2つの押さえ金具43,44で挟む。このとき、下押さえ金具43を、水平バー31が中央の板状部43aの2つの雌ネジ孔47の間に接し、垂直バー32の下部領域32aが一方の板状部43bに接するように配置する。また、上押さえ金具44を、水平バー31が中央の板状部44aの2つの貫通孔51の間に接し、垂直バー32の下部領域32aが一方の板状部44bに接するように配置する。もし必要なら、押さえ金具と垂直バー32の下部領域32aとの間にゴム材53を挟み込んでもよい。
【0045】
次に、2本のボルト45をそれぞれ貫通孔51に通し、さらに雌ネジ孔47に螺着する。ボルト45を強く締めることにより、水平バー31および垂直バー32の下部領域32aが上下の押さえ金具43,44に挟まれるので、基部41が定位置に固定される。
縦バー42の取り付け方については、上記と同じなので省略する。
【0046】
上記のように構成されたフレームF4は、図6および図7に示すように、水平バー31に対する垂直バー32の下部領域32aの高さが異なる二種類の苗床台にも、支障なく取り付けることができる。
【0047】
以上、本発明の好ましい実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されることはない。本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、構成の付加、省略、置換、およびその他の変更が可能である。本発明は前述した説明によって限定されることはなく、特許請求の範囲に記載された事項によってのみ限定される。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、田植え作業と並行して粒状の農薬を散布する田植機搭載型農薬散布装置であって、前記農薬を散布する散布機構と、前記田植機の本体に回転可能に支持された回転体と、前記田植機に具備される苗床台の往復動作を回転体の回転運動に変換する変換機構と、前記回転体に設けられ、前記散布機構の作動の契機となる作動契機部と、前記回転体の回転に伴って移動する前記作動契機部との接触、または前記作動契機部の接近を検出するスイッチと、前記スイッチによる前記作動契機部の検出を契機として前記散布機構を作動させる制御部とを備える田植機搭載型農薬散布装置に関する。本発明によれば、田植機の田植え動作と農薬散布装置の散布動作とを常に正確に同調させることができ、その結果、常に正確な量の農薬を散布することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】本発明の田植機搭載型農薬散布装置の第1の実施形態を示す斜視図である。
【図2】散布動作制御装置の構造を示す概略図である。
【図3】ケーシング内部の構造を示す平面図である。
【図4】ケーシングを田植機に搭載した状態を示す外観図である。
【図5】本発明の田植機搭載型農薬散布装置の第2の実施形態を示す斜視図である。
【図6】第2の実施形態の変形例を示す斜視図である。
【図7】上記第2の実施形態の変形例において、田植機への取り付け方を違えた状態を示す斜視図である。
【符号の説明】
【0050】
1…散布機構、2…散布動作制御装置、5…ケーシング、6…円板(回転体)、7…変換機構、8…磁性体(作動契機部)、9…近接スイッチ、10…制御部、11…ねじりコイルバネ(付勢部材)、12…ワイヤ、S…苗床台、C…信号ケーブル、F1,F2…フレーム


【特許請求の範囲】
【請求項1】
田植え作業と並行して粒状の農薬を散布する田植機搭載型農薬散布装置であって、
前記農薬を散布する散布機構と、
前記田植機の本体に回転可能に支持された回転体と、
前記田植機に具備される苗床台の往復動作を回転体の回転運動に変換する変換機構と、
前記回転体に設けられ、前記散布機構の作動の契機となる作動契機部と、
前記回転体の回転に伴って移動する前記作動契機部との接触、または前記作動契機部の接近を検出するスイッチと、
前記スイッチによる前記作動契機部の検出を契機として前記散布機構を作動させる制御部と
を備える田植機搭載型農薬散布装置。
【請求項2】
前記変換機構は、
前記回転体を一方向に回転させる付勢力を発揮する付勢部材と、
一端を前記回転体または同回転体の中心軸に接続されるとともに他端を前記苗床台に接続され、前記中心軸の周囲に巻回されるワイヤと
を備え、
前記回転体は、前記苗床台の移動に伴って前記ワイヤが引き出されることにより、前記付勢部材の前記一方向への付勢力に抗して他方向に回転する
請求項1に記載の田植機搭載型農薬散布装置。
【請求項3】
前記作動契機部は磁性体であり、前記スイッチは、前記作動契機部の接近によって生じる磁場の変化を検出する近接スイッチである
請求項1または2に記載の田植機搭載型農薬散布装置。
【請求項4】
前記回転体、前記変換機構、前記作動契機部および前記スイッチは、ケーシングに内蔵されている
請求項1から3のいずれかに記載の田植機搭載型農薬散布装置。
【請求項5】
前記回転体は円板であり、前記作動契機部は、前記円板の円周面に設けられている
請求項1から4のいずれかに記載の田植機搭載型農薬散布装置。
【請求項6】
前記散布機構、前記回転体、前記変換機構、前記作動契機部および前記スイッチは、前記苗床台の後方に配置されている
請求項1から5のいずれかに記載の田植機搭載型農薬散布装置。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2008−48659(P2008−48659A)
【公開日】平成20年3月6日(2008.3.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−227752(P2006−227752)
【出願日】平成18年8月24日(2006.8.24)
【出願人】(000114938)ヤマト農磁株式会社 (12)
【Fターム(参考)】