甲状腺ホルモンを含んでなる新たな医薬組成物及びその治療的使用
本発明は、活性物質として、3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、rT3誘導ホルモン又はrT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4の中から選択される少なくとも1つのホルモンを、医薬的に許容され得るビヒクルとの組合せで含んでなる医薬組成物に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲状腺ホルモンを含んでなる新たな医薬組成物及びその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺ホルモンは古くから知られている。甲状腺ホルモンファミリーはT4ホルモン及びT4の連続モノ脱ヨード化から生じる誘導ヨードチロニンからなる。T4の脱ヨード化カスケードの経路は、Hulbert A.J.(Biol. Rev.,2000)により記載されている。T4は外環5'-脱ヨード化を経てT3を生じるか、又は内環5'-脱ヨード化を経てrT3を生じる。T3は外環5'-脱ヨード化を経て3,5-T2を生じるか、又は内環5'-脱ヨード化を経て3,3'-T2を生じる。rT3は外環5'-脱ヨード化を経て3,3'-T2を生じるか、又は内環5'-脱ヨード化を経て3',5'-T2を生じる。3-T1は、3,5-T2から内環5'-脱ヨード化を経て又は3,3'-T2から外環5'-脱ヨード化を経て得られる。3'-T1は、3,3'-T2から内環5'-脱ヨード化を経て又は3',5'-T2から外環5'-脱ヨード化を経て得られる。
【0003】
情報として、表1に、甲状腺ホルモンファミリーの幾つかのメンバーの式を示す。
【表1−1】
【表1−2】
【0004】
甲状腺ホルモン、特にT3ホルモンの公知の効果は、主に、甲状腺ホルモンの2つの核レセプターTRα-1及びTRβ-1(異なる効果を有すると考えられている核レセプターTRα及びTRβのファミリーに属する)への結合に起因する。これらレセプターは、特にヨウ素の数及び空間的配置(spatial arrangement)に関して、T3に高度に特異的であると考えられている(Bolgerら,J. Biol. Chem.,1980;Koernerら,J. Biol. Chem.,1975;Dietrichら,J. Med Chem.,1977)。甲状腺核レセプターの発見以来、ほとんどの科学者は、甲状腺ホルモンの転写変化の効果に注目している。
【0005】
T3ホルモンは核レセプターに非常に効率的に結合する一方、T4ホルモンの結合は効率がより低い。T4及びT3から誘導されるホルモンは核レセプターに結合しない(Koernerら,J. Biol. Chem.,1975;Lazar,Endocrine Rev.,1993;Hulbert,Bio. Rev.,2000;Oppenheimer,Biochimie,1999;Yen,Physiol. Rev.,2001)。
【0006】
肥満を治療するためのT3ホルモンの使用は当業者に周知である。しかし、その使用は、T3ホルモンの重篤な副作用、特に心臓への副作用のために、高度に制限されている。甲状腺機能低下症の治療はT3による。T3は、直接使用され得るか、又は極僅かに活性な前駆体であるT4ホルモンの変換によりインビボで産生され得る(Yen,Physiol. Rev.,2001)。T3は真の活性甲状腺ホルモンとして知られている。
【0007】
甲状腺ホルモン、例えばT3により核レセプター経路を経て誘導される効果は、非常に低濃度で観察される生理学的に重要な効果である。これら効果は、T3を甲状腺機能低下症を患っていない被検体に投与したときには、しばしば有害である。これら効果は、核レセプター経路に関係する「甲状腺機能亢進効果」と考えることができる。
【0008】
国際出願WO2005/009433及び対応する科学論文(Lanniら,The FASEB Journal,2005)は、エネルギー代謝に対する3,5-T2の効果を開示している。より詳細には、高脂肪食餌を与え、3,5-T2の腹膜注射で毎日処置した正常ラットは、未処置ラットより、体重増加が少なく、脂肪沈着も少なかった。このため、3,5-T2ホルモンは肥満及び関連する病状の治療用に提案された。
【0009】
rT3ホルモンは、一般に、不活性ホルモンと考えられており、甲状腺ホルモンの不活化経路を代表していると考えられていた(Yen,Physiol. Rev.,2001)。このように、上昇したrT3血漿濃度は低T3症候群でしばしば見出される。最近、rT3の脳効果が、星状神経膠細胞の樹立及び構造化において開示されている(Farwellら,Endocrinology,2006)。
【0010】
先行技術には、甲状腺ホルモンがインスリン及び血糖に対する効果を有し得ることは決して開示されていない。
【0011】
糖尿病は高血糖により特徴付けられる慢性疾患である。
1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓β細胞の破壊により生じる。1型糖尿病の治療は、特には、インスリンの投与からなる。
【0012】
2型糖尿病は、集団内で1型糖尿病より頻度が高く、一般には肥満に伴う。2型糖尿病は、独立した2つの異常により特徴付けられる:インスリン抵抗性及び血糖に応答したインスリン産生の減少。
2型糖尿病の治療は、特には、インスリンのアゴニスト薬剤又はβ細胞によるインスリン分泌のアゴニストを用いることであり、糖尿病患者の血糖及び体重を減少させることである。
【0013】
肥満は、先進国及び発展途上国における公衆衛生上の主要な関心事の1つである。肥満に関与する機序はあまり理解されていない。肥満に関与する要因は、特に栄養(alimentation)(脂肪食及び甘味食)及び環境条件(身体的活動、社会環境、食物の入手容易性)である。
【0014】
(特に、副作用、患者の快適性(例えば使用頻度及び投与経路)に関して)より効率的でより適切な治療が、慢性疾患、例えば糖尿病、肥満及び異脂肪血症に対して必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の1つの目的は、活性物質として甲状腺ホルモンを含んでなる新たな医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、甲状腺機能亢進症を誘導しない代謝障害の治療のための新たな医薬組成物を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、新たな治療クラスの糖尿病治療用薬剤を提供することである。
本発明の別の目的は、糖尿病の治療用を意図した、同時、別々又は逐次の使用のための組合せ製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、活性物質として、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン(3',3-T2)、5',3-ジヨードチロニン(5',3-T2)、3'-ヨードチロニン(3'-T)、5'-ヨードチロニン(5'-T)又は3-ヨードチロニン(3-T)、或いは
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンを、医薬的に許容され得るビヒクルと組み合せて含んでなる医薬組成物に関する。
【0018】
rT3を不活性であると示している先行技術の教示に反して、本発明者らは、rT3ホルモン及びその誘導ホルモンを薬剤として使用できることを見出した。
更に、他の甲状腺ホルモン(例えばT3)の効果とは対照的に、本発明によるホルモンの効果には核レセプター経路は関与しないようである。なぜならば、rT3はTHレセプターに対して非常に小さなアフィニティーしか有さないことが知られているからである。
【0019】
rT3ホルモン及びrT3誘導ホルモンは、甲状腺機能低下症の治療に関して不活性であるか、又は甲状腺機能亢進症の誘導剤としての生理学的形態の甲状腺ホルモンである。3,5-T2とは対照的に、これらホルモンは、活性甲状腺ホルモンであるT3を介して得ることはできない。
本発明者らにより、rT3、rT3誘導ホルモン又はrT3前駆体がエネルギー活性を有し、血糖及びインスリン感受性並びに血漿濃度に対する効果を有することが最初に示された。
【0020】
本発明者らは、rT3及びその誘導ホルモンの使用が、甲状腺機能亢進症を誘導することなく有益な代謝効果を得るための生理学的方法であることを提案する。
更に、本発明者らは、rT3が糖尿病被験体の血糖に対してのみ有益な効果を有し、非糖尿病被験体の血糖に対しては血糖低下効果を有しないことを提案する(実施例の章を参照)。
【0021】
本発明によれば、用語「3',5',3-トリヨードチロニン」とは、逆転T3又はrT3をいう。
表現「rT3誘導ホルモン」とは、特に1又は幾つかのヨウ素を除去することによって、天然に存在する方法及び/又は人工的方法を介して、rT3から得ることができる少なくとも1つのヨウ素を有する任意の化合物を意味する。
「天然に存在する方法」とは、特に、rT3誘導ホルモンが、rT3から、1又は幾つかのヨウ素を除去する酵素(例えば、ヨードチロニン脱ヨウ素酵素)により得られることを意味する。所望の誘導ホルモンを得るためには幾つかの生物学的反応が必要となり得る。
【0022】
表現「人工的方法を介して」とは、特に、rT3誘導ホルモンが化学合成、生化学合成又は組換え技術により得られることを意味する。
好適なrT3誘導ホルモンは、ジヨードチロニン及びヨードチロニンである。好適なrT3誘導ホルモンは、3',3-ジヨードチロニン、3',5'-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン又は3-ヨードチロニンである。
【0023】
表現「rT3の前駆体」とは、rT3を与えることができる任意の化合物を意味する。rT3の前駆体は、天然ホルモン、合成又は組換えホルモン又は修飾ホルモンであり得る。
表現「天然ホルモン」とは、生物(例えば、動物又はヒト)中に見出され、該生物から精製及び単離されたホルモンを意味する。
表現「合成又は組換えホルモン」とは、化学若しくは生化学合成又は組換え技術により得られたホルモンを意味する。
表現「修飾ホルモン」とは、官能基を付加するように化学的に修飾されたホルモンを意味する。この官能基は、ホルモンの活性を改変してもよいし、又はホルモンを分解から保護してもよい。
【0024】
本発明の有利な実施形態において、rT3の前駆体はT4ホルモン、いわゆる「チロキシン」である。
rT3前駆体は、rT3形成の促進を可能にする分子との組合せで優先的に使用される。rT3の前駆体及び前記分子の使用は同時、別々又は逐次であることができる。
【0025】
T4ホルモンをrT3前駆体として使用するときには特に、前記rT3形成の促進を可能にする分子は、
− T3ホルモンの代わりに優先的にrT3ホルモンの形成を可能にするチロニン脱ヨウ素酵素、若しくは前記チロニン脱ヨウ素酵素のアゴニスト、又は
− rT3ホルモンの代わりにT3ホルモンの優先的な形成を可能にする脱ヨウ素酵素のアンタゴニスト
である。
【0026】
本発明は、特に、前記活性物質がrT3である上記の医薬組成物に関する。
【0027】
本発明は、特に、約0.01μg/kg/日〜約250μg/kg/日、特に約0.01μg/kg/日〜約25μg/kg/日、特に約0.1μg/kg/日〜約15μg/kg/日の活性物質、更に特には約0.1μg/kg/日〜約5μg/kg/日の活性物質、最も特には約0.1μg/kg/日〜1μg/kg/日の活性物質の放出に適切な形態である上記の医薬組成物に関する。
活性物質の投薬量は投与経路に特に依存し、これは、当業者によって容易に決定される。
【0028】
本発明は、更に、期間の満了時に放出されるべき活性物質を、投薬単位基準で、(70kgのヒトについて上記値の範囲(μg/kg/日又はmg/kg/日)に対応する)約5μg〜約1.5g、特に約75mg〜約750mg含んでなる上記の医薬組成物に関する。
【0029】
例として、70kgのヒトの治療には、投薬量は
− 8日の処置を達成するためには、約5μg〜約150mg、特に約5μg〜約15mg、特に約50μg〜約10mg、特に約50μg〜約3mg、最も特には約50μg〜約500μgの活性物質、
− 30日の処置を達成するためには、約20μg〜約500mg、特に約20μg〜約50mg、特に約200μg〜約30mg、特に約200μg〜約10mg、最も特には約200μg〜約2mgの活性物質、
− 90日の処置を達成するためには、約60μg〜約1.5g、特に約60μg〜約150mg、特に約600μg〜約100mg、特に約600μg〜約30mg、最も特には約600μg〜約6mgの活性物質
である。
【0030】
表現「投薬単位」とは、1薬剤単位中に含まれる活性物質の量を意味する。
本医薬組成物の投与経路及び製剤に依存して、投薬単位中に含まれる活性物質は、迅速に又は或る期間にわたって連続的に放出され得る。本医薬組成物はまた徐放薬剤であり得る。
【0031】
本発明の医薬組成物は、部分用量(partial dose)又は1用量で24時間の間に1回又はそれより多い回数投与され得る。分割投薬、2回又はその他の複数回投薬は、同時に又は24時間の間で異なる時間に行い得る。
有利な実施形態において、本発明の医薬組成物は、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月間、最も好ましくは少なくとも2ヶ月間、特に少なくとも3ヶ月間の間の連続放出を可能にする独特な用量で投与される。
【0032】
本発明は、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンの、
− 高血糖、インスリン抵抗性、β膵臓細胞不全又は関連する病状、
− コレステロール及び/若しくはトリグリセリドの血漿濃度が正常濃度より高い病状又は異脂肪血症、或いは
− 過体重又は脂肪沈着の過剰に関連する病状
の治療用を意図した薬剤の製造のための使用。
【0033】
有利な実施形態において、本発明は、1型及び2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、β膵臓細胞不全又は関連する病状の治療用を意図した薬剤の製造のための上記の使用に関する。
本発明者らは、rT3、rT3誘導ホルモン又はrT3前駆体が血糖及びインスリン血漿濃度を減少させることができることを最初に示した。
【0034】
高血糖は、1g/l(又は110mg/dl若しくは5.5mmol/l)より高い、特に1.20g/lより高い空腹時グルコース濃度により特徴付けられる。rT3、rT3誘導ホルモン又はrT3前駆体の使用により血糖を正常濃度まで減少させることが可能になる。
表現「グルコースの正常濃度」とは、4.4mmol/l〜5.5mmol/lのグルコース血漿濃度を意味し、「異常」血中グルコースは空腹時血漿グルコース>5.55mmol/lで定義され、糖尿病は空腹時血漿グルコース>6.1mmol/lで定義される(Meggsら,Diabetes,2003)。
【0035】
血糖は、参照としてグルコースオキシダーゼ法を使用する古典的な血液検査により評価される(Yeni-Komshianら,Diabetes Care,2000,p171-175;Chewら,MJA,2006,p445-449;Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)。
【0036】
rT3、rT3誘導ホルモン又はrT3前駆体の使用はまた、インスリン抵抗性を改善する。
インスリン抵抗性は、8mU/l又は60pmol/lより高いインスリン血漿濃度により特徴付けられる(Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)。
インスリン抵抗性は、正常量のインスリンが脂肪、筋肉及び肝臓細胞からの正常応答を生じるには不十分である状態、すわわちインスリンの生理学的作用に対して抵抗性である状態である。
【0037】
それは、調べた集団中、インスリン感受性の尺度(例えば、オイグリセミッククランプの間のインスリン刺激グルコース摂取)の最も低い四分位数又は空腹時インスリン又は恒常性モデル評価(HOMA)インスリン抵抗性指標の最も高い四分位数として規定される(Albertiら,「Definition,diagnosis and classification of diabetes mellitus and its complications. Part 1: Diagnosis and classification of diabetes mellitus,provisional report of a WHO consultation」,Diabetic Med,1998,p539-553;Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)。
【0038】
上記の活性物質の使用により、インスリン血漿濃度を正常濃度に減少させること、インスリンに対する感受性を増大させること及びグルコース及び脂質の代謝を改善させることが可能になる。
【0039】
表現「インスリンの正常濃度」とは、5〜8mU/l(36〜60pmol/l)のインスリン血漿濃度を意味する。
インスリン濃度は古典的な血液検査により評価される(ヒト抗体を用いるRIAアッセイ;Yeni-Komshianら,Diabetes Care,2000,p171-175;Chewら,MJA,2006,p445-449;Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)。
インスリンに対する感受性はHOMA(恒常性モデル評価)法により評価することができる(Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495、1489頁の図2を参照)。
【0040】
驚くべきことに、上記の活性物質の使用は、膵臓β細胞の生存を改善し、よってインスリン分泌細胞の再生を改善するようである。
前記細胞の再生は、インスリン濃度の測定(ヒト抗体を用いるRIAアッセイ;Yeni-Komshianら,Diabetes Care,2000,p171-175;Chewら,MJA,2006,p445-449;Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)により評価する。
【0041】
ZDFラットで得られた結果は、rT3での処置がグルコース濃度の減少及び血漿インスリン濃度の増加を誘導したことを示している。
2型糖尿病の遺伝モデルであるGoto-Kakizaki(GK)ラットには、胎齢の早期にβ細胞量(cell mass)の制限が存在し、これは成体動物で維持される。β細胞量の制限は、このモデルで明白な糖尿病を導くシーケンスにおける重大な事象と考えられている。GKモデルでは、β細胞の再生は、非糖尿病Wistarラットと比較して、より低い効率で起こる。GKラットにおけるこの欠損は、変化したβ細胞新生能力に寄与する遺伝的素因及び成体動物に特異的な減少したβ細胞増殖能を導く環境因子(例えば慢性高血糖)の両方の結果である。これら結果は、Movassatら,Diabetologia,1997,p916-925及びPlachotら,Histochem Cell Biol.,2001,p131-139に記載されている(共に、その内容の全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0042】
慢性高血糖が膵臓β細胞の破壊、したがってインスリン分泌の減少を誘導したと仮定すれば、回復された正常インスリン濃度はβ細胞が再生されることを意味し得る。
β細胞の機能的な量は、HOMA法によるインスリン分泌レベルに相関付けることができる。動物モデルでは、当業者は膵臓量(pancreas mass)の直接評価を考えることができる。
【0043】
別の実施形態によれば、本発明は、コレステロール及び/又はトリグリセリドの血漿濃度が正常濃度より高い病状、又は異脂肪血症、又は過体重若しくは脂肪沈着の過剰に関連する病状の治療用を意図した薬剤の製造のための上記の使用に関する。
正常濃度より高いコレステロール濃度とは、2.5g/lより高い血漿濃度を意味する。
正常濃度より高いトリグリセリド濃度とは、2g/lより高い血漿濃度を意味する。
【0044】
異脂肪血症は、1.7mmol/lより高いトリグリセリド濃度及び/又は1mmol/l(男性)若しくは1.3mmol/l(女性)より低いHDL-コレステロールレベルによって特徴付けられる(Chew,MJA,2006,p445-449、「Clinical definitions of the metabolic syndrome」と題する表を参照)。
脂肪沈着の過剰は、25kg/m2より高いボディマスインデックス(体重(kg)/伸長2(m2))により特徴付けられ、肥満は30kg/m2より高いボディマスインデックスにより特徴付けられる。
【0045】
本発明は更に、糖尿病、特に1型又は2型糖尿病、β膵臓細胞不全、肥満、過体重又は関連する病状、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、異脂肪血症、アルコール肝炎性及び非アルコール肝炎性皮脂欠乏症、アテローム性動脈硬化症、代謝異常に関連するヘパトパシー、胆嚢疾患、皮下脂肪の沈着、特にセリュライト、又は血管運動神経性鼻炎の中から選択される病状の治療用を意図した薬剤の製造のための上記の使用に関する。
有利な実施形態において、本発明は、前記ホルモンがrT3である上記の使用に関する。
【0046】
本発明は、特に、前記医薬的に許容され得るビヒクルが医薬組成物を製造するために製薬産業で通常用いられている、医薬的に許容され得る固体又は液体の、希釈剤又はカプセル化剤、充填剤又はキャリア剤をいう上記の医薬組成物に関する。
【0047】
本発明は、経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、鼻、腹腔内、舌下又は直腸経路を介する投与に適切である上記の医薬組成物に関する。
経口経路では、薬剤は、経口的に、特に錠剤、コーチング錠、丸剤、シロップ又はエリキシル剤、糖衣剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁剤、液状溶液、分散剤(dispersible powder)又は顆粒、乳剤、硬若しくは軟カプセル剤の形状で、投与される。
静脈内経路又は全身経路では、薬剤は単回注射又は連続注入により、究極的にはポンプを介して血流中に投与することができる。
【0048】
皮膚経路では、薬剤は皮膚に塗布される。製剤は軟膏、クリーム、ローション、溶液、粉剤又はゲルであり得る。
皮下経路では、薬剤は、皮膚直下の脂肪組織中に直接注射することができるか、又は薬剤は、皮膚の下に挿入されるカプセル中に含ませることができる。
経皮経路では、薬剤は注射することなく血流まで皮膚を通過する。詳細には、薬剤は、皮膚に適用されるパッチ中に含まれる。パッチ製剤に関しては、薬剤は、皮膚透過性を亢進させる化学物質(例えばアルコール)と混合させることができる。
【0049】
剤形としては、即時放出、延長放出、パルス放出、可変放出、制御放出、時限放出、持続放出、遅延放出、長期作用及びそれらの組合せが挙げられる。
剤形としては、限定されないが、錠剤、多層錠、二層錠、咀嚼錠、急速溶解錠、発泡錠、シロップ、懸濁剤、乳剤、カプセル、柔ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、ロゼンジ、咀嚼ロゼンジ、ビーズ、散剤、顆粒、粒子、微粒子、分散性顆粒、カシェ剤、クリーム、局所剤、パッチ、移植物、注射剤(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)、輸液を挙げることができる。
【0050】
本発明の有利な実施形態において、本医薬組成物は(特にパッチによる)経皮用に適切である。
有利な実施形態において、本医薬組成物の投与は、薬剤が(このホルモンの重要な分解をもたらす)肝臓を通過することを部分的に回避する。
本発明の別の有利な実施形態において、本医薬組成物は(特に皮膚の直下に注入されるカプセルによる)皮下投与用に適切である。
【0051】
本発明は、更に、前記医薬的に許容され得るビヒクルが前記活性物質の連続放出、好ましくは定常放出を可能にし、活性物質が、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン(3',3-T2)、5',3-ジヨードチロニン(5',3-T2)、3'-ヨードチロニン(3'-T)、5'-ヨードチロニン(5'-T)若しくは3-ヨードチロニン(3-T)、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される上記の医薬組成物に関する。
【0052】
活性物質の連続放出、好ましくは定常放出により、
− 代謝障害に対する、別の投与態様を介して得られる結果と比較して増加した効果、又は、
− 以前にはポジティブな結果がみられなかった動物モデルの代謝障害に対して新たに観察される効果
を得ることが可能になる。
【0053】
表現「連続放出」とは、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも1ヶ月、最も好ましくは少なくとも2ヶ月、特に3ヶ月にわたる薬剤の連続放出を意味する。また、本発明における連続放出は非連続放出に相当し得る。実際、2回の放出の間で薬剤の濃度が血中で実質的に一定のままであるか又は血中で十分に効率的な量のままであるように、或る放出が別の放出と短時間の時間間隔で分離されていてもよい。この短時間の間隔は、例えば10秒〜3時間、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは5分〜1時間である。
【0054】
表現「定常放出」とは、放出される薬剤の量/時間単位が本質的に一定であり、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも1ヶ月、最も好ましくは少なくとも2ヶ月、特に3ヶ月にわたる薬剤の連続放出を意味する。
連続及び定常放出は、例えば、パッチ又は皮膚の下に注入されるカプセルを用いることによって達成される。また、ホルモンを連続的に放出し、皮膚の下に配置される電気シリンジ又は電気ポンプもまた使用することができる。シリンジ又はポンプは腹腔内にも配置することができる。
【0055】
また、連続及び定常放出は、薬剤の制御放出(CR)製剤により提供することができる。
制御放出製剤により、血中で実質的に一定のままであるか又は血中で十分に効率的な量のままであるように、経時的な薬剤の緩慢な放出が可能になる。
【0056】
制御放出薬剤は、例えば、活性成分が不溶性物質(例えば、或る種のアクリル樹脂、キチン、PEG(ポリエチレングリコール)、...)又は徐分解性物質のマトリクス中に埋め込まれるように製剤化される。放出されるためには、薬剤はマトリクス中の穴を通って外へ通じる道を見つけなければならない。或る制御放出製剤において、マトリクスは膨潤してゲルを形成し、薬剤はマトリクス中で溶解してマトリクスの外表面に分散しなければならない。
【0057】
別の実施形態では、本発明のrT3、rT3誘導ホルモン及びrT3前駆体は、別の甲状腺ホルモン(例えば、3,5-T2又は3',5-T2)との同時、別々又は逐次の組合せで使用される。
【0058】
本発明はまた、糖尿病の治療用を意図した同時、別々又は逐次使用のための組合せ製品として、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又はrT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3前駆体、例えばT4の中から選択される少なくとも1つのホルモンと、
− 特に抗糖尿病性経口薬剤の中から選択されるインスリンの膵臓分泌を活性化する少なくとも1つの活性物質、又はグルコースの消化吸収の緩徐化を可能にする少なくとも1つの活性物質とを
含んでなる製品に関する。
【0059】
本発明はまた、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンを含んでなる栄養補助物質又は食品組成物に関する。
【0060】
本発明はまた、特に:
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンを含んでなる栄養補助物質又は食品組成物の投与により、
− 通常の食餌で飼育した動物の脂肪組織の重量と比較して、動物の脂肪組織の重量を低下させ、
− 通常の食餌で飼育した動物の赤身(lean tissue)の重量と比較して、赤身の重量を維持又は増加させることによって、
脂肪組織の重量と赤身の重量との比を制御することにより食肉の品質、特に豚肉の品質を改善する方法に関する。
【0061】
図面
以下の図面では、アスタリスク又は星印(*)は、p値<0.05又は具体的に示されたp値のいずれかを有する有意な結果を表す。
高用量のホルモンは25μg/100g体重(BW)に対応し、低用量は2.5μg/100g体重に対応し、極低用量は0.25μg/100g体重に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1A及び1B 高投薬量のrT3又は3,3'-T2(25μg/100g体重(BW))で処置したWistarラットの成長速度。 図1A及び1Bは、21日間の時間(日)に対するラットの重量(グラム)を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットの重量は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの重量は黒塗り菱形で表す。 図1A:ラットをrT3で処置した。 図1B:ラットを3,3'-T2で処置した。
【図2】図2A及び2B 高投薬量のrT3又は3,3'-T2(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの食物摂取。 図2A、2B及び2Cは、21日間の時間(日)に対するラットの食物摂取(グラム/日)を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットの食物摂取は、白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの食物摂取は黒塗り菱形で表す。 図2A:ラットをrT3で処置した。 図2B:ラットを3,3'-T2で処置した。
【図3】図3A及び3B 高投薬量のrT3又は3,3'-T2(25μg/100g BW)で処置したWistarラットのエネルギー消費。 図3A及び3Bは、時間(分)に対するラットのエネルギー消費(EE)(Kcal/日/kg0.75)を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は、白抜き三角(図3A)、白抜き菱形(図3B)の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り丸で表す。 水平な黒線はラットが暗所に居た期間を示す。 図3A:ラットをrT3で処置した。 図3B:ラットを3,3'-T2で処置した。
【図4】図4A及び4B 高投薬量のrT3又は3,3'-T2(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの呼吸商(RQ)。 図4A及び4Bは時間(分)に対するラットの呼吸商を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き三角(図4A)、白抜き菱形(図4B)の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は黒塗り丸で表す。 水平な黒線はラットが暗所に居た期間を示す。 図4A:ラットをrT3で処置した。 図4B:ラットを3,3'-T2で処置した。
【図5】図5A、5B及び5C 高投薬量のrT3(250μg/100g BW)で処置したWistarラットの脂肪組織、骨格筋及び褐色脂肪組織の重量及び相対重量。 甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図5A:上パネルは、異なる脂肪組織(腹膜後脂肪、精巣上体脂肪、腸間膜脂肪及び皮下脂肪)の重量(g)を示し、下パネルはこれら脂肪組織の相対重量(g/100g BW)を示す。 図5B:左パネルは骨格筋(ヒラメ筋及び足底筋)の重量(mg)を示し、右パネルはこれら筋肉の相対重量(mg/100g BW)を示す。 図5C:左パネルは肩甲骨間の褐色脂肪組織の重量(g)を示し、右パネルはこの組織の相対重量(g/100g BW)を示す。
【図6】図6A、6B及び6C 高投薬量の3,3'-T2(250μg/100g BW)で処置したWistarラットの脂肪組織、骨格筋及び褐色脂肪組織の重量及び相対重量。 甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図6A:上パネルは、異なる脂肪組織(腹膜後脂肪、精巣上体脂肪、腸間膜脂肪及び皮下脂肪)の重量(g)を示し、下パネルはこれら脂肪組織の相対重量(g/100g BW)を示す。 図6B:左パネルは骨格筋(ヒラメ筋及び足底筋)の重量(g)を示し、右パネルはこれら筋肉の相対重量(mg/100g BW)を示す。 図6C:左パネルは肩甲骨間の褐色脂肪組織の重量(g)を示し、右パネルはこの組織の相対重量(g/100g BW)を示す。
【図7−1】図7A、7B、7C及び7D 250μg/kg BW/日のrT3又は3,3'-T2で処置した動物の肝臓ミトコンドリア酸素消費の速度(JO2(nmol O2/分/mgタンパク質)。 測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(1.0mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)、− TMPD/アスコルベート(0.5mM/0.5mM)、及び− TMPD/アスコルベート/DNP(0.5mM/0.5mM/75μM) OK。 JO2は、基質の存在下、1mM ADP(アデノシン二リン酸)の添加後に記録した(状態3)。 オリゴマイシンをミトコンドリアの懸濁物に加えて非リン酸化呼吸数を決定した(状態4)。 甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費は白で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図7A:rT3で処理したラットを用いて状態4で得られた結果。 図7B:3,3'-T2で処理したラットを用いて状態4で得られた結果。
【図7−2】図7C:rT3で処理したラットを用いて状態3で得られた結果。 図7D:3,3'-T2で処理したラットを用いて状態3で得られた結果。
【図8−1】図8A、8B、8C及び8D 250μg/kg BW/日のrT3又は3,3'-T2で処置したWistarラットの筋肉ミトコンドリア酸素消費の速度(JO2 (nmol O2/分/mgタンパク質))。 全ての測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(0.2mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)、− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、及び− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)。 JO2は、基質の存在下、1mM ADPの添加後に記録した(状態3)。 オリゴマイシンをミトコンドリアの懸濁物に加えて非リン酸化呼吸数を決定した(状態4)。 甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費は白で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図8A:rT3で処理したラットを用いて状態4で得られた結果。 図8B:3,3'-T2で処理したラットを用いて状態4で得られた結果。
【図8−2】図8C:rT3で処理したラットを用いて状態3で得られた結果。 図8D:3,3'-T2で処理したラットを用いて状態3で得られた結果。
【図9】図9A及び9B 低投薬量のrT3(25μg/kg BW/日)で処置したWistarラットの肝臓ミトコンドリア酸素消費の速度(JO2 (nmol O2/分/mgタンパク質))。 甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費は白で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。 全ての測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(1.0mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)、− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)、− TMPD/アスコルベート(0.5mM/0.5mM)及び− TMPD/AsC/DNP:TMPD/アスコルベート/DNP(0.5mM/0.5mM/75μM)。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図9A:JO2は、基質の存在下、1mM ADPの添加後に記録した(状態3)。 図9B:JO2は、非リン酸化呼吸数を決定するためのオリゴマイシンの添加後に記録した(状態4)。
【図10−1】図10A、10B、10C、10D及び10E 250μg/kg BW/日のrT3又は3,3'-T2で処置したWistarラットにおけるグルコース、トリグリセリド、コレステロール、FFA(遊離脂肪酸)及びHDL(高比重リポタンパク質)の血漿濃度。 これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。 rT3で処置したラットの結果は白で示し、3,3'-T2で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図10A:グルコース(mmol/l) 図10B:トリグリセリド(TG)(g/l)
【図10−2】図10C:コレステロール(g/l) 図10D:FFA(μmol/l)
【図10−3】図10E:HDL(g/l)
【図11】図11A、11B、11C、11D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)での処置後0日目及び8日目のWistarラットの重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 図11A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図11B:毎日腹腔内(IP)注射 図11C:毎日経口摂取(per os) 図11D:毎日皮下(sc)注射
【図12】図12A、12B、12C、12D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの8日間の処置後の脂肪組織の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 図12A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図12B:毎日腹腔内(IP)注射 図12C:毎日経口摂取(per os) 図12D:毎日皮下(sc)注射
【図13】図13A、13B、13C、13D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの8日間の処置後の褐色脂肪組織の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 図13A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図13B:毎日腹腔内(IP)注射 図13C:毎日経口摂取(per os) 図13D:毎日皮下(sc)注射
【図14】図14A、14B、14C、14D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの8日間の処置後の骨格筋の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 図14A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図14B:毎日腹腔内(IP)注射 図14C:毎日経口摂取(per os) 図14D:毎日皮下(sc)注射
【図15】図15A、15B、15C、15D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットのエネルギー消費。 図15A、15B、15C、15Dは、時間(分)に対するラットのエネルギー消費(EE)(Kcal/日/kg0.75)を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は白抜き丸で示す。 図15A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図15B:毎日腹腔内(IP)注射 図15C:毎日経口摂取(per os) 図15D:毎日皮下(sc)注射
【図16】図16A、16B、16C、16D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの呼吸商(RQ)。 図16A、16B、16C、16Dは時間(分)に対するラットの呼吸商を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は黒塗り四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は白抜き丸で示す。 図16A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図16B:毎日腹腔内(IP)注射 図16C:毎日経口摂取(per os) 図16D:毎日皮下(sc)注射
【図17】図17: 血中rT3投薬量。rT3濃度は、高投薬量のrT3を腹腔内注射(IP、四角)、経口摂取(per os、三角)又は皮下注射(sc、星印)により処置したWistarラットにおいて24時間測定する。基礎rT3レベルはプラシーボで処置した動物において測定する(菱形)。
【図18】図18 0日目及び8、16及び21日間の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)での処置後のZDFラットの血中グルコース濃度。プラシーボで処置した動物のグルコース濃度は黒で表し、低用量のrT3で処置した動物のグルコース濃度は白で表す。星印(*)は有意差を表す。
【図19】図19 0日目及び8、16及び21日間の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)での処置後のZDFラットの血中インスリン濃度。プラシーボで処置した動物のインスリン濃度は黒で表し、低用量のrT3で処置した動物のインスリン濃度は白で表す。星印(*)は有意差を表す。
【図20】図20 X日間後の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)(白)又はプラシーボ(黒)で処置したZDFラットの膵臓重量(グラム)。
【図21】図2121日間プラシーボ(左)又は低用量のrT3(右)で処置したZDFラットの写真。
【図22】図22 0日目及び8、16及び21日間の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)での処置後のZDFラットの体重(g)。rT3で処置したZDFラットの重量は白抜き四角で表し、プラシーボで処置したZDFラットの重量は黒塗り菱形で表す。
【図23】図23 0日目及び8、16及び21日間の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)での処置後のZDFラットの食物摂取(g/日)。rT3で処置したZDFラットの食物摂取は白抜き四角で表し、プラシーボで処置したZDFラットの食物摂取は黒塗り菱形で表す。
【図24】図24 低投薬量rT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットのエネルギー消費。 甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り菱形で表す。
【図25】図25 低投薬量のrT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットの呼吸商(RQ)。甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は黒塗り菱形で表す。
【図26】図26 低投薬量のrT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットの脂肪組織の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図27】図27 低投薬量のrT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットの褐色脂肪組織の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図28】図28 低投薬量のrT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットの骨格筋の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図29】図29 2.5μg/100g BWのrT3で処置したZDFラットにおけるFFA(遊離脂肪酸)血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。rT3で処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。星印(*)は有意差を表す。
【図30】図30 2.5μg/100g BWのrT3で処置したZDFラットにおけるトリグリセリド血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。rT3で処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図31】図31 2.5μg/100g BWのrT3で処置したZDFラットにおけるコレステロール血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。rT3で処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。星印(*)は有意差を表す。
【図32】図32 2.5μg/100g BWのrT3で処置したZDFラットにおけるHDL(高比重リポタンパク質)血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。rT3で処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図33】図33 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおけるOGTTの3時間後のグルコース濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図34】図34 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおけるOGTT(経口グルコース許容試験)の3時間後のインスリン濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図35】図35 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおける血漿グルコース濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図36】図36 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおける血漿インスリン濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図37】図37 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおける膵臓重量。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。星印(*)は有意差を表す。
【図38】図38 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおけるOGTTの3時間後のグルコース濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図39】図39 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおけるOGTT(経口グルコース許容試験)の3時間後のインスリン濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図40】図40 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおける血漿グルコース濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図41】図41 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおける血漿インスリン濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図42】図42 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおける膵臓重量。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図43】図43 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおけるOGTTの3時間後のグルコース濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図44】図44 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおけるOGTT(経口グルコース許容試験)の3時間後のインスリン濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図45】図45 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおける血漿グルコース濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図46】図46 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおける血漿インスリン濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図47】図47 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおける膵臓重量。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図48】図48 高投薬量(25μg/100g体重(BW))又は低投薬量(2.5Mg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの成長速度。高投薬量で処置したラットの重量は白抜き四角の曲線で示し、低投薬量で処置したラットの重量は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの重量は黒塗り菱形で表す。
【図49】図49 高投薬量(25μg/100g体重(BW))又は低投薬量(2.5Mg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの食物摂取。高投薬量で処置したラットの食物摂取は白抜き四角の曲線で示し、低投薬量で処置したラットの食物摂取は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの食物摂取は黒塗り菱形で表す。
【図50】図50 極低投薬量(0.25μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの成長速度。極低投薬量で処置したラットの重量は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの重量は黒塗り菱形で表す。
【図51】図51 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのエネルギー消費。高投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は白抜き四角の曲線で示し、低投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り菱形で表す。
【図52】図52 極低投薬量(0.25μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのエネルギー消費。高投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り菱形で表す。
【図53】図53 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの呼吸商(RQ)。高投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き四角の曲線で示し、低投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は黒塗り菱形で表す。
【図54】図54 極低投薬量(0.25μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの呼吸商。高投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は黒塗り菱形で表す。
【図55】図55 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの脂肪組織の重量。高用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、低用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図56】図56 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの筋肉組織の重量。高用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、低用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図57】図57 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの褐色脂肪組織の重量。高用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、低用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図58】図58A及び58B 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのミトコンドリア酸素消費の速度(JO2 (nmol O2/分/mgタンパク質)。高用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費は白で示し、低用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費はは灰色で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。全ての測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(1.0mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)、− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)、− TMPD/アスコルベート(0.5mM/0.5mM)、及び− TMPD/AsC/DNP:TMPD/アスコルベート/DNP(0.5mM/0.5mM/75μM)。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図58A:JO2は、基質の存在下、1mM ADPの添加後に記録した(状態3)。 図58B:JO2は、非リン酸化呼吸数を決定するためのオリゴマイシンの添加後に記録した(状態4)。
【図59】図59 GPdH酵素の活性。ミトコンドリアのグリセロール3ホスフェートデヒドロゲナーゼの活性は、プラシーボ(黒)、25μg/A 100g rT3(白)又は2.5μg/100g(灰色)から摘出した肝臓由来のミトコンドリアにおいて評価した。
【図60】図60A、60B、60C及び60D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットにおけるトリグリセリド、コレステロール、FFA(遊離脂肪酸)及びHDL(高比重リポタンパク質)の血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日(すわわち、21日間の処置後)にラットの静脈血について行った。 高rT3で処置したラットの結果は白で示し、低rT3で処置したラットは灰色で示し、プラシーボで処置したラットは黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図60A:FFA(μmol/l) 図60B:トリグリセリド(TG)(g/l) 図60C:コレステロール(g/l) 図60D:HDL(g/l)
【図61】図61 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの体重。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図62】図62 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの異なる脂肪組織(腹膜後脂肪、精巣上体脂肪、腸間膜脂肪及び皮下脂肪)の脂肪重量。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図63】図63 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの褐色脂肪組織重量。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図64】図64 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのmGPdH活性。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図65】図65 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのEE。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図66】図66 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのRQ。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図67】図67 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットの体重。PTU-IOPで処置したラットからの結果は白抜き三角で示し、PTU-IOP及びrT3で処置したラットからの結果は白抜き四角で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒塗り四角で示す。
【図68】図68 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットの食物摂取。PTU-IOPで処置したラットからの結果は白抜き三角で示し、PTU-IOP及びrT3で処置したラットからの結果は白抜き四角で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒塗り四角で示す。
【図69】図69 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットのエネルギー消費。PTU-IOPで処置したラットからの結果は白抜き三角で示し、PTU-IOP及びrT3で処置したラットからの結果は白抜き四角で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒塗り四角で示す。
【図70】図70 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットの呼吸商。PTU-IOPで処置したラットからの結果は白抜き三角で示し、PTU-IOP及びrT3で処置したラットからの結果は白抜き四角で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒塗り四角で示す。
【図71】図71 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットのミトコンドリア酸素消費の速度(JO2 (nmol O2/分/mgタンパク質))。PTU+IOPで処置したラットの酸素消費は灰色で示し、PTU+IOP及びrT3で処置したラットは白で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。全ての測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(1.0mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)、− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)、− TMPD/アスコルベート(0.5mM/0.5mM)、及び− TMPD/AsC/DNP:TMPD/アスコルベート/DNP(0.5mM/0.5mM/75μM)。 JO2は、基質の存在下、1mM ADPの添加後に記録した(状態3)。
【図72】図72 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットのmGPdH活性。PTU+IOPで処置したラットは灰色で示し、PTU+IOP及びrT3で処置したラットの活性は白で示し、プラシーボで処置したラットの活性は黒で示す。
【図73】図73 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットの褐色脂肪組織重量。PTU+IOPで処置したラットの褐色脂肪組織の重量は灰色で示し、PTU+IOP及びrT3で処置したラットの褐色脂肪組織の重量は白で示し、プラシーボで処置したラットの褐色脂肪組織の重量は黒で示す。
【図74】図74 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットのT4ホルモンの血漿濃度。PTU+IOPで処置したラットのT4濃度は暗い灰色で示し、PTU+IOP及びrT3で処置したラットのT4濃度は白で示し、プラシーボで処置したラットのT4は灰色で示す。
【図75】図75 8週間の高脂質高スクロース食餌での飼育及び2.5μg/100g BWのrT3で処置後のWistarラットにおけるOGTTの3時間後のグルコース濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図76】図76 8週間の高脂質高スクロース食餌での飼育及び2.5μg/100g BWのrT3で処置後のWistarラットにおけるOGTT(経口グルコース許容試験)の3時間後のインスリン濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図77】図77 8週間の高脂質高スクロース食餌での飼育及び2.5μg/100g BWのrT3で処置後のWistarラットにおける血漿グルコース濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図78】図78 8週間の高脂質高スクロース食餌での飼育及び2.5μg/100g BWのrT3で処置後のWistarラットにおける血漿インスリン濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図79】図79 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおける日中及び夜間の肝脂質生成。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【実施例】
【0063】
実施例
実施例1:肥満及び異脂肪血症の治療のためのrT3ホルモン又はrT3誘導ホルモンの使用
1.材料及び方法
動物の取り扱い
Laboratory of Fundamental and Applied Bioenergeticsの動物室施設で飼育した成体雄性ラット(Wistar系統)又はCharles-River Laboratories,Domaine des oncins,L'ARBRESLE Franceから購入した成体雄性ラット[(遺伝的に肥満の正常血糖(Zucker又はFa/Fa)又は糖尿病(ZDF)]を個々にステンレススチール製吊り下げケージに入れ、22℃、50±10%相対湿度にて12時間:12時間の明:暗環境で維持した。全ての動物を、標準ラット固形飼料(Safe A04,Villemoisson,France)及び水道水を自由摂取させて飼育した。ボディマス(body mass)及び食物摂取を1週間に2/3回記録し、動物の摂食行動の妨害を最小限にするために、同時に新鮮な食物を提供した。
【0064】
ペレット埋め込み
ジアゼパム4mg/kg及びケタミン100mg/kgの同時腹腔内注射により8週齢ラット(300g±10g)を麻酔した。外科手術(10分間)の間体温を維持するため、動物を暖かい毛布の上に置いた。肩甲骨間の剃毛後、0.5cmの小さな皮膚切開により、10ゲージの精密トロカールでの(rT3又は3',3-T2を含有する)小ペレットの皮下移植を可能にする。ペレット(Innovative Research of America(Sarasota,Florida,USA)製)は、動物に活性製品を効果的で連続的に放出する生分解性マトリクスから構成される。
【0065】
60日間にわたって連続的で定常的な薬物送達を提供するために、3,3',5トリヨードチロニン(逆転T3)又は3-3'ジヨードチロニン(3-3'T2)を異なる用量(5、0.5又は0.1mg/ペレット)で使用して埋め込んだ(これは25μg、2.5μg又は0.5μg/日/100g BWを表す)。
【0066】
間接熱量測定
エネルギー消費及び酸化される基質(炭水化物又は脂質)の性質を間接熱量測定により調べた。この原理は、各動物によるCO2放出(VCO2)及びO2消費(VO2)の決定に基づく。O2は呼吸鎖における基質の酸化(水生成を導く)に全体的に関与する一方、CO2放出は(クレブス回路における)基質の脱カルボキシル化に関係すると考えられる。これら測定により、エネルギー消費(EE)及び呼吸商(VO2/VCO2、RQ)を評価することが可能になる。EEは、安静時及び活動時の絶対エネルギー散逸を表す。RQは、酸化的経路に関与する炭水化物 対 脂質の比を示す相対的測定値である。比1.0は独占的な炭水化物酸化を示す一方、比0.7は独占的な脂質酸化を示す。これら2つの極値の間の各値は、各基質の相対的比率を示す(注記:タンパク質酸化は評価しなかった)。例として、RQは、絶食の間に脂質酸化を示す0.7に接近し、絶食後は逆に、食物摂取及び血漿インスリンの上昇に起因して、RQは増加して炭水化物酸化を示す1に近づく。同様に、高炭水化物食餌で飼育した動物は、高脂質食餌で飼育した動物より高いRQを有する。
【0067】
間接熱量測定システム(Panlab,Barcelona,Spain)は、ケージ、ポンプ、フローコントローラ、バルブ及びアナライザーからなる。これは、4つの別々のケージ中のO2及びCO2濃度並びにエアフローをシーケンシャルに測定するためにコンピュータ制御される。このことにより、4つ同時の決定が可能になる。4つの代謝チャンバーの1つにラットを隔離し、周囲O2及びCO2濃度を周期的にモニターするための参照として室中の空気を使用する。
【0068】
所定の間隔で、コンピュータが信号を送り、データ獲得ハードウェア(Metabolism,Panlab,Barcelona,Spain)で差分のCO2及びO2濃度、流量を記憶して、VCO2、VO2、RQ及びEEの算出を可能にする(Weirの式)。
【0069】
身体組成、血液及び組織サンプリング
実験期間の終時に、ミトコンドリアの代謝に対する全身麻酔の周知の効果を回避するために、動物を断頭により犠牲にした。後の血清代謝物及びホルモンの決定のために、血液サンプルを即時に収集し、血漿を凍結させた。肝臓、筋肉及び脂肪沈着を素早く切り取り、秤量した。肝臓中葉を迅速に凍結クランプした。筋肉(足底筋、ヒラメ筋及び腓腹筋)を、液体窒素中で予め冷却したイソペンタン中で凍結させた。腸間膜脂肪は、胃食道括約筋から直腸の末端までの胃腸管の周囲の脂肪組織からなった。膵臓を区別して除くように特に注意を払った。腰部筋肉に沿った各腎臓の背後の別の沈着として腹膜後脂肪体を採取した。精巣上体脂肪は、精巣上体の上部の脂肪組織からなった。皮下沈着測定のために、各動物の右側で、腹部正中線から脊柱まで、右腰部と第1肋骨との間で皮膚の方片を採取した。肩甲骨間の褐色脂肪組織を取り出し、隣接する筋肉及び白色脂肪組織を切り取った。心室、右腎臓及び脾臓も摘出し、秤量し、凍結させた。
【0070】
ミトコンドリアの単離
肝臓の主要部及び各四頭筋の赤色部分をリンスし、単離培地(250mMスクロース、20mM Tris-HCl及び1mM EGTA-Tris、pH7.4)中に切り刻んで入れた。800gで10分間の遠心分離により核及び細胞片を除去した。次いで、8,000gにて10分間の遠心によりミトコンドリアを上清から単離した。ミトコンドリアのペレットを0.5mlの単離緩衝剤中に再懸濁し、氷上に維持した。ミトコンドリアタンパク質はビシンコニン酸法(Pierce,Rockford,Illinois)により測定した。最終のミトコンドリア懸濁物を氷上に維持し、酸素消費速度の測定に使用した。
【0071】
ミトコンドリア酸素消費
インキュベーションチャンバー中2mlのインキュベーション培地(125mM KCl、10mM Pi-Tris、20mM Tris-HCl、0.1mM EGTA、pH7.2)を充填したClarkタイプO2電極を用いて、ミトコンドリア酸素消費(JO2)の速度を30℃で測定した。全ての測定は、種々の基質:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)単独又はスクシネート(5mM)との組合せ、パルミトイルカルニチン(55μM)及びオクタノイルカルニチン(100μM)のいずれかとインキュベートしたミトコンドリア(肝臓及び骨格筋について、1.0又は0.2mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて実施した。各基質について、JO2を基質の存在下、単独(状態2)で及び1mM ADPの添加後(状態3)に記録した。オリゴマイシン(1.25μg/mgタンパク質)をミトコンドリア懸濁物に加えて非リン酸化呼吸数を決定した(状態4)。インキュベーション培地は組み込まれた電磁式スターラー及び撹拌棒で定常的に撹拌した。ミトコンドリアの酸化的リン酸化の効率は、リン酸化による酸化に課せられる制御の程度を測定する状態3/状態4比により評価した(呼吸制御比、RCR)。
【0072】
酸化的リン酸化効率
呼吸基質として5mMグルタメート/2.5mMマレート/5mMスクシネート又はオクタノイル-カルニチン(100μM)を用いたATP/O比を、ヘキソキナーゼ(EC 2.7.1.1)+グルコースに基づくADP再生系を用いるATP合成速度(JATP) 対 呼吸数JO2から決定した。JATP及びJO2は、125mM KCl、1mM EGTA、5mM Tris-Pi、20mM Tris-HCl、0.1%脂肪フリーBSA(pH7.2)を含有する培地中で上記のように測定した。JATPは、20mMグルコース、1mM MgCl2及び125μM ATPの存在下でのグルコース6-ホスフェートの形成から決定した。JO2及びJATPは漸増濃度のヘキソキナーゼの添加により調整した(Nogueiraら,J Bioenerg Biomemb.,34:55-66,2002)。
【0073】
酵素活性
呼吸鎖複合体I、II及びIVの比活性の測定は、分光光度学的に実施した。複合体I及びIIの活性を決定するために合計8〜10μgのミトコンドリアタンパク質が必要であり、4μgを複合体IV用に使用した。酵素活性は、還元又は酸化された基質のnmole/分/mgミトコンドリアタンパク質として表した。
【0074】
複合体I(ロテノン感受性NADH-ユビキノンオキシドレダクターゼ、EC 1.6.99.3)の測定:アッセイは、BSA(3.75mg/ml)を含有する10mM KH2PO4/K2HPO4緩衝剤(pH7.5)中、KCN(2mM)及びアンチマイシンA(7.5μM)の存在下にて、電子受容体としてのデシルユビキノン(100μM)及び供給体としてのNADH(200μM)を用いて実施した。次いで、ロテノン(4μM)の添加前及び後に、NADHの酸化を340nmで測定した。このことにより、複合体Iのロテノン感受性比活性の算出が可能となった。
【0075】
複合体II(スクシネート-ユビキノンレダクターゼ、EC 1.3.99.1)の測定:スクシネート-ユビキノンオキシドレダクターゼ活性は、600nmにてDCPIP(100μM)の還元に起因するUV吸収の減少を測定することにより定量化した。測定は、50mM KH2PO4/K2HPO4(pH7.5)を含有する培地中、デシルユビキノン(100μM)、ロテノン(2μM)及びKCN(2mM)の存在下で行った。
複合体IV(シトクロムcオキシダーゼ、EC 1.9.3.1)の測定:アッセイは、50mM KH2PO4/K2HPO4緩衝剤(pH7.0)中、550nmにてシトクロムc(100μM)の酸化を測定することにより行った。
【0076】
クエン酸シンターゼ活性は、150mM Tris緩衝剤(pH8)中、オキサロアセテートジニトロチオ安息香酸及びアセチル-CoAの存在下で、イオンメルカプチドの生成に起因する412nmのUV吸収を測定することにより決定した(Garaitら,Free Rad Biol Med,2005)。
ミトコンドリアのグリセロール3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(mGPdH)活性は、単離したミトコンドリアの3サイクルの凍結-解凍サイクル後の上清について測定した。40μgのミトコンドリアを、9.3μMのアンチマイシンA、5μMのロテノン及びデシルユビキノン(50μM)を含有するKH2PO4/K2HPO4緩衝剤(50mM、pH7.5)中でインキュベートした。mGPDHによる50μMジクロロ-インドフェノール(DCIP)の還元は37℃にて600nmで分光光学的に測定し、酵素活性はμmol.min-1.mg prot-1として表した。
【0077】
シトクロム
ミトコンドリア呼吸鎖のシトクロム含量は、並行実験において、完全に酸化されたシトクロム(フェリシアン化カリウム) 対 完全に還元されたシトクロム(亜ジチオン酸ナトリウムの少数の結晶)のスペクトルを比較することによって測定した。各シトクロムの吸収における他方のシトクロムの主要な最大吸収及び最小吸収に対する寄与が分かれば、4つの未知数を有する4つの連立方程式のセットを導くことができ、各シトクロムの濃度を算出することができる(Williams,Arch Biochem Biophys.;107:537-43,1964)。
【0078】
肝細胞の単離
20〜24時間絶食したWistarラットをペントバルビタールナトリウム(10mg/100g体重i.p.)で麻酔し、肝細胞を、Groenら(Eur. J. Biochem. 122:87-93,1982)により改変されたBerry及びFriend(J. Cell. Biol. 43:506-520,1969)の方法に従って単離した。簡潔には、門脈にカニューレを挿入し、Ca2+フリーのKrebs-Ringer炭酸水素塩緩衝剤(25ml/分;37℃、pH=7.4、95% O2-5% CO2で連続的に曝気)での2分間の順行性灌流を行い、肝臓から血液を除去した。同じ灌流媒体を用いて背側大動脈を通じての10分間の逆行性灌流(25ml/分)を開始した。その後、0.25mg/mlのコラゲナーゼ(タイプIV、Sigma、St. Louis、MO)を補充した100mlのKrebs-Ringer媒体で再循環灌流を行った(40ml/分で20分間)。次いで、肝臓を切除し、定常曝気(95% O2-5% CO2)下で2分間灌流媒体中で振盪させた。最後に、ナイロンガーゼ(孔サイズ120μm)を通過させて細胞懸濁液を濾過し、1.6mMのCa2+を含有するKrebs-Ringer炭酸水素塩緩衝剤で2回洗浄し、次いで1%のBSAを補充した同じ緩衝剤で3回目の洗浄を行った。
【0079】
肝細胞のペリフュージョン
Groenら(Eur. J. Biochem. 122:87-93,1982)により改変されたvan der Meer及びTager(FEBS Lett. 67:36-40,1976)の方法に従って、肝臓細胞のペリフュージョン(perifusion)を行った。肝細胞(225〜250mg乾燥重量)を37℃の15mlペリフュージョンチャンバー中に配置し、連続的に曝気した(95% O2-5% CO2)、0.2%のBSAを含有するKrebs-Ringer炭酸水素塩溶液(pH=7.4)でペリフュージョンした(5ml/分)。実験は、並列に配置した2つのペリフュージョンチャンバー中で二連で行った。チャンバー出口で、ペリフュージョン液のO2含量をClark電極(Yellow Springs Instruments、Yellow Springs、OH)でモニターして、肝細胞懸濁物のO2取り込みを評価した。40分後、O2取込みが定常状態に到達したら、肝細胞を、0.4mMオクタノエートの存在下又は不在下で、漸増量のグリセロール(0.15、0.30、0.60、1.2、2.4、4.8及び9.6mM)でペリフュージョンした。20分間の各定常状態の終時に、その後のグルコース、ラクテート、ピルベート、アセトアセテート及びβ-ヒドロキシブチレート濃度の測定のために、ペリフュージョン液及び細胞サンプルを2分間隔で収集した。サンプルは4℃で貯蔵し、実験の終了後12時間以内に分析した。加えて、細胞内及び細胞外分画のために、300μlの細胞懸濁液をチャンバーからサンプリングした。この目的には、Zuurendonk及びTager(Biochim. Biophys. Acta 333:393-399,1974)により記載されたジギトニン分画法でミトコンドリア及び細胞質ゾル空間を分離した。簡潔には、細胞懸濁液を、2.2ml Eppendorfチューブにおいて、2mMのジギトニン(Merck,Lyon,France)を含有する等張培地(4℃)中に置いた。15秒後、チューブを10,000gにて15秒間遠心分離して、ミトコンドリアを、その下の800μlのシリコンオイル(Rhodorsil 640 V 100,Rhone-Poulenc)層を通過させ250μl HClO4(10%重量/vol)+25mM EDTA中に沈降させた。上清(700μl)を直ぐに取り出し、HClO4(5%重量/vol)で除タンパク質処理し、中和した。次いで、細胞内代謝物(DHAP及びG3P、分光光度法)及びアデニンヌクレオチド含量(HPLC)の決定のために、細胞内含有物を中和して−20℃で維持した。
【0080】
ウェスタンブロット分析
mGPdH定量化のために、以前(23)に記載されたようにポリアクリルアミドゲル電気泳動及びイムノブロッティングを行った。簡潔には、溶解させた肝細胞を、40mMのTris(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH6.8)、1%のSDS、6%のグリセロール及び1%のβ-メルカプトエタノールを含有する200μlの緩衝剤と混合した。次いで、この混合物を100℃に10分間加熱し、5%の濃縮用ゲル及び12.5%の分離用ゲルを用いて一次元のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-PAGEに12時間供した。電気泳動による分離後、定電圧でPVDFメンブレンにタンパク質を移した。タンパク質を移した後、メンブレンを2時間ブロッキングし、次いでmGPDHに特異的なモノクローナル抗体(J. Weitzel博士の厚意による)と2時間インキュベートし、次いで二次抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリンG(Bio-Rad)、1:10000希釈)に曝露させた。mGPDHは増強化学発光検出法により可視化した(RPN 2106,Amersham)。濃度計でのスキャニングを行い、ブロットのバンドを定量化し、データは、積分光学密度の任意単位として数値的に表した。
【0081】
RNA精製及び逆転写PCR
Tripure RNA単離試薬(Roche Diagnostics)を用いて、組織からトータルRNAを抽出した。260及び280nmでの光学密度を測定することにより濃度及び純度を確かめた。1%アガロースゲル電気泳動(Eurobio)により完全性を検証した。β-アクチンを参照として使用する半定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によりmRNA濃度を測定した。プライマー配列を表1に示す。各標的mRNAについて、最終容量25μL中の100UのM-MLV Reverse Transcriptase(Promega)、5μLのM-MLV RT 5×緩衝剤、20UのRNasinリボヌクレアーゼインヒビター、12ピコモルのデオキシヌクレオシド三リン酸及び15ピコモルの特異的アンチセンスプライマーを用い、0.1μgのトータルRNAからRTを実施した。反応は、70℃にて5分間(RNA及びアンチセンスプライマー)、次いで42℃にて60分間(全ミックス)、続いて70℃にて15分間からなった。冷却後、5μLをPCR反応に使用した。5μLのRT媒体を、6ピコモルのMgCl2、8ピコモルのデオキシヌクレオシド三リン酸、2.5UのREDTad DNAポリメラーゼ(Sigma)、15ピコモルの対応するアンチセンスプライマー及び22.5ピコモルのセンスプライマーを含有する45μLのPCRミックス(5μL 10×REDTaq PCR緩衝剤)に添加した。PCR条件は、94℃にて2分間、続いてUCP3、UCP2及びβ-アクチンについてそれぞれ28サイクル、35サイクル又は18サイクル(1サイクル=94℃にて1分間、60℃にて1分間、72℃にて1分間)であった。PCRを72℃にて10分間で終了した。生成物を、臭化エチジウムで予め染色した2%アガロースゲル上で分析した。相対的バンド強度の定量のために、Camera DC120(Kodak)で写真を撮影し、Kodak Digital Science 1D 2.0(Kodak Scientific Imaging System)を用いて、各サンプルについてβ-アクチンに対する各標的の比を決定した。
【0082】
2.結果
図1(A及びB)に示されるように、コントロール(プラシーボ処置)Wistarラット身体は、21日間で150g(すわわち、約40%の体重増加)の正常な成長速度を示している。rT3(図1A)又は3,3'-T2(図1B)のいずれかで処置した動物は体重増加を示さず、21日後のボディマスは、初期値と有意には異なっていなかった。
このことは、これら若齢成体動物における正常体重増加の非常に強力な防止を示している。
【0083】
図2(A及びB)に示されるように、プラシーボ群の食物摂取は、実験期間にわたって約30gの食物/日で安定であった。両処置動物群は類似の変化を示した。rT3(図1A)又は3,3'-T2(図1B)を含有するペレットが皮下に導入された直後(4日目から7日目まで)の食物摂取の減少、次いでプラシーボ動物の増加と比較してより高い値を示す食物摂取の増加。
それ故、両処置動物群の体重減少は、食物摂取の増加と関連していた。
【0084】
ラットのエネルギー消費(EE)は間接熱量測定(材料及び方法の章を参照)により評価し、値は24時間(=1440分間)にわたって分析した。プラシーボ(図3A及び3B)、rT3(図3A)又は3,3'-T2(図3B)で処置した全ての動物群は、これらげっ歯類の当然の古典的な夜行性の活動及び摂食行動並びに対照的な昼間の不活発という昼夜変化を示した。両処置ラット群は、コントロール値の25〜30に達するエネルギー消費の劇的な増加を示した。
この非常に重要な結果は、代謝消費が2つの処置によって夜間及び昼間の両方で大いに増加することを示している。
【0085】
呼吸商(RQ)は、放出二酸化炭素と消費酸素との間の比VCO2/VO2と定義される。この比が酸化される基質の起源(炭水化物 対 脂質)を示すことは概して受け容れられている。この値は炭水化物が専らエネルギー源であるとき1に等しくなり、脂質が唯一のエネルギー基質であると0.7に等しくなる。
【0086】
EEについて既に示したように、RQもまた昼夜で変化する(図4A及び4B)。RQは、夜間、動物が摂食し、したがってより多くの炭水化物を酸化しているときにはより高くなる。逆に、昼間は、RQはより低くなり、脂質が優勢な基質である絶食状態を示す。rT3(図4A)に関して、RQは、昼間ではプラシーボとほとんど同じであり、夜間においてより高いように見える。このことは、より高い割合の炭水化物又は(より可能性が高いのは)炭水化物からの正味の脂質合成のいずれかを示し得る(1より高いRQ値に至る)。これら動物により表される値は、給餌状態の間の基質酸化及び基質(脂質合成)の合計である。3,3'-T2群(図4B)では、夜間の変化はrT3について記載した変化とほとんど同じであった。このこともまた、給餌状態の間の正味の脂質合成を示している可能性が最も高い。しかし、昼間又は暗くなった直後には、RQはプラシーボのRQより低いようであり、これら絶食動物におけるより高い脂肪酸化を示している。
【0087】
rT3又はプラシーボで処置したラットの身体組成の変化は、絶対値(g)又はトータルボディマスのパーセンテージの両方として提示する。なぜならば、この2つの動物群は3週間後に同じ重量を示さなかったからである(図1Aを参照)。
【0088】
腹膜後、腸間膜及び皮下の脂肪重量は、プラシーボと比較して、rT3群で有意に低かった(p<0.01)が、精巣上体重量は異なっていなかった(図5A)。この差は、データを絶対値で表わそうが相対値で表わそうが非常に実質的であった。興味深いことに、筋肉重量は全く影響を受けなかった(図5B)一方で、褐色脂肪組織(代謝効率及び熱生成に関与することが知られている組織)は、rT3処置動物で有意に増加した(図5C)。
これら結果は、rT3処置後のボディマスの減少が脂肪重量の損失に純粋に起因し、除脂肪ボディマスは影響されないことを明確に示している。
【0089】
類似の結果が3,3'-T2(図6A及び6B)で得られ、脂肪重量(有意に減少)及び除脂肪ボディマス(影響なし)に対する3,3'-T2の効果に関して同じ結論への到達を導いた。興味深いことに、褐色脂肪組織もまた処置によって有意に増加した。
【0090】
肝臓ミトコンドリア呼吸鎖のレベルで、酸化とリン酸化との間の共役の効力に対する両処置(rT3又は3,3'-T2)の効果を評価した(図7A及び7B)。非リン酸化性(すわわち、オリゴマイシンの存在下)のミトコンドリアの呼吸数を、異なる処置動物群(rT3、図7A及び3,3'-T2、図7B)対プラシーボで測定した。両方の場合(rT3及び3,3'-T2)で、呼吸がプラシーボに比較して遥かにより高かった。このことは、処置に起因してより効率性が低い共役を示している。異なる条件グルタメート/マレート、スクシネート-ロテノン、グルタメート/マレート/スクシネート、パルミトイルCoA、オクタノイルCoAは、呼吸鎖に提供される異なる基質を示している。
【0091】
図7C及び7Dは、種々の基質供給でリン酸化条件(すわわち、ADPの存在下)にて達成される肝臓ミトコンドリアの最大呼吸数を表す(上記図7参照):TMPDアスコルベートは、DNPによる非共役状態でないか又は非共役状態である複合体4(シトクロムcオキシダーゼ)を調べる。概略的に、全ての条件で、rT3(図7C)又は3,3'-T2(図7B)のいずれかでの処置は、非常に有意な呼吸数増加に関与した。このことは、処置が全ての基質(脂肪酸を含む)について最大呼吸容量を増加させたことを示している。
【0092】
非常に興味深いことに、筋肉ミトコンドリアで完全に異なる結果が得られた。事実、rT3及び3,3'-T2は共に、非リン酸化状態(状態4、図8A及び8B)及びリン酸化状態(状態3、図8CB及び8D)の両方に実質的に影響しなかった。実際、パルミトイル-及びオクタノイル-CoAを除き、減少した呼吸を導く幾らかの僅かな効果が存在した。
よって、このことは、rT3及び3,3'-T2の両方が肝臓ミトコンドリアに対して強力な効果を示す(酸化的リン酸化効率の減少及び最大呼吸容量の増加を導く)が、薬剤が全ての組織に対して投与された(ペレットからの皮下徐放)という事実にもかかわらず、筋肉ミトコンドリアに対しては効果はほとんど見出せなかったことを示した。
【0093】
図9A及び9Bは、図7A及びCに示されるものと同様なデータを示す。しかし、動物は10倍低いrT3用量で処置した(図7中、250μg/kgの代わりに25μg/kg)。本質的に同様な知見が得られたが、より低い程度であった。しかし、減少した効率及びより高い最大呼吸容量は有意であることが判る。
【0094】
図10は、グルコース(図10A)、トリグリセリド(図10B)、コレステロール(図10C)、遊離脂肪酸(図10D)及びHDL(図10E)(ラットはLDLをほとんど有していない)の血漿濃度に対する2つの処置の効果を示す。両処置は、これら正常動物(非糖尿病動物)において、空腹時グルコースを僅かに増加させた。このことは、これら処置のいずれもが可能性のある血糖降下効果に関与しないことを示している。興味深いことに、トリグリセリド及びコレステロールは、プラシーボと比較して、rT3及び3,3'-T2で有意に低かった。間接熱量測定で得られたデータによって既に示唆されているとおり、血漿脂肪酸は、高率の脂肪分解及び脂肪酸酸化を示す動物で観察されたように、より高かった。
【0095】
結論として、ボディマスで観察された劇的効果は脂肪重量の減少により完全に説明される一方で、除脂肪ボディマス(筋肉重量)は影響されないようである。食物消費の増加にもかかわらず観察されるこの効果は、間接熱量測定により証明されたエネルギー消費の増加に起因する。これら動物の正常食餌は脂質含量(4〜5%)がむしろ乏しいので、脂肪酸化の増加は、脂肪重量の強力な減少によって示されるように脂肪貯蔵の消費によって達成され、恐らくは消費性経路であるデノボ脂質生成(食餌期間に観察されたより高いRQを説明するかもしれない)によっても達成される。エネルギー代謝(間接熱量測定)の全体的増加に関するデータは、肝臓単離ミトコンドリアで得られたデータと非常に良好に一致し、このことは、呼吸鎖及びATP合成のレベルで、有意により高い最大呼吸容量に関連するエネルギー浪費プロセスが恐らく存在していることを示している。最も驚くべきことには、これら効果のいずれもが筋肉ミトコンドリアでは観察されないことである。このことは、浪費プロセスが筋肉重量より肝臓に大きく影響し、脂質酸化に関わることを示している。
【0096】
よって、全体として、rT3及び3,3'-T2は共に脂質酸化及びエネルギー消費を亢進して、脂肪組織のみで重量の顕著な減少を導く。
【0097】
実施例2:肥満治療に対するrT3ホルモンの投与の比較
1.材料及び方法
材料及び方法は実施例1に記載したものである。
動物
Wistarラットをこれら研究で使用した。
投与
毎日の腹腔内注射(IP)(25μg/100g BW)、毎日の皮下注射(SC)(25μg/100g BW)、又はラット食餌に含ませた経口投与(25μg/100g BW)によりrT3ホルモンでWistarラットを処置した。ペレット(25μg/100g BW)を使用して連続及び定常投与を行った。
【0098】
2.結果
ラット体重におけるrT3投与の効果を比較するために、Wistarラットを、8日間、連続及び定常用量のrT3(25μg/100g BW/日)を拡散するペレットにより処置するか、又はrT3の腹腔内若しくは皮下注射(1注射当たり25μg/100g BW)で毎日処置するか、又は経口投与(1摂取あたり25μg/100g BW)により処置した。
【0099】
図11に示すように、連続及び定常投与のrT3のみが8日間の処置後にラット体重(図11A)を減少させ、同じ投薬量のrT3の腹腔内注射(図11B)も皮下注射(図11D)も経口投与(図11C)も動物重量に対する影響を有しない。
【0100】
これらデータを確証するために、個々の脂肪組織重量を4つの異なるrT3投与で処置した動物で測定した。全体重量について前記で観察されたように、連続及び定常rT3投与で処置した動物のみが白色脂肪組織重量の有意な減少を有する(図12A)一方、注射(図12B及び12D)又は経口投与(図12C)は効果を有しない。筋肉重量(図14A〜D)はいずれの投与でも変化せず、褐色脂肪組織重量は、連続及び定常用量のrT3で処置したラットにおいてのみ有意に上昇している(図13A)。
【0101】
処置動物の代謝に対する効果を確証するために、EEを24時間にわたって間接熱量測定により評価した。図15は、連続及び定常用量のrT3で処置したラットのみが代謝消費の上昇を有する(図15A)一方、その他の経路の投与は処置ラットの代謝を改変しない(図15B〜D)ことを示す。同様に、連続及び定常用量のrT3で処置したラットのRQのみが900分後にプラシーボ処置動物とは有意に異なる(図16A)。
したがって、これら全てのデータにより、連続及び定常投与のrT3のみが、白色脂肪組織のみに影響することによって、脂肪酸代謝の増加を誘導することによって、8日間の処置後に、動物のボディマスを有意に減少させることができることが証明される。
【0102】
非連続処置が結果を与えることができない理由を理解するために、注射後、24時間、動物において循環性rT3を測定した。図17のグラフは、腹腔内注射したrT3が迅速に分解し、5時間後には注射用量と比較して5倍減少することを示す。経口投与は、腹腔内注射後に観察される濃度と同様なrT3濃度を血中で得ることが決してできない。皮下投与が最良の投与経路であるようである。なぜならば、rT3濃度が、長時間、血中に注射された濃度と実質的に同じままであるからである。しかし、にもかかわらず、rT3は24時間後にほぼ完全に分解される。
【0103】
実施例3:糖尿病の治療のためのrT3ホルモン又はrT3誘導ホルモンの使用
1.材料及び方法
材料及び方法は実施例1に記載したものである。
動物
ラットは、遺伝的肥満の正常血糖ラット(Zucker又はFa/Fa)、10〜11週齢糖尿病ラット(ZDF)又は遺伝的非過体重糖尿病(2型糖尿病)ラット(Goto-Kakizaki(GK)モデル)、非過体重糖尿病(2型糖尿病)ラットn0STZモデル又は8週間の高脂質高スクロース食餌を与えた正常Wistarラット(インスリン抵抗性の栄養性誘導のモデル)であった。
【0104】
血液採取
一晩(18時間)の絶食期間の後、この研究の当日に、覚醒ラットにおいて尾静脈から血液採取を行う。
【0105】
血液パラメータ
以下の生化学的パラメータを分析した:血糖、インスリン血、HbA1c、TG及びコレステロール。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)及びチロキシン(T4)を、ラット標準(TSH及びT4についてそれぞれ、RPA 554 Amersham bioscience,RIA FT4-immunotech)を用いるラジオイムノアッセイにより測定した。
【0106】
インスリンレベルは市販キット(Linco Research)で決定した。
グルコース及び3-ヒドロキシブチレート(3-HB)は酵素的に測定し、非エステル化脂肪酸(NEFA)は熱量測定アッセイ(Wako Chemicals)により測定した。
トリグリセリド及びコレステロールは、古典的なルーチン自動装置により測定した。
【0107】
2.結果
ZDFモデル:糖尿病高脂肪ラット
ZDF糖尿病ラットは、抗糖尿病治療研究用の良好なモデルである。なぜならば、これら動物は、中程度の肥満及び膵臓変質の組合せに起因して一生の間、重大な高血糖症が進行するからである。現在のところ、高血糖症が確立すると治療は有効でない。
次いで、ZDFラットを低用量のrT3(2.5μg/100g BW/日)で21日間処置し、血糖、インスリン血を8、16及び21日後に測定した。
【0108】
図18は、プラシーボで処置したラットと比較して、低用量のrT3で処置したラットにおける血糖の大幅な減少を示す。この減少は8日後に出現し、21日間にわたって維持される。血糖の減少に相関して、インスリンレベルはrT3で処置したラットで維持される一方、インスリンレベルは、膵臓変質を反映して、実験開始から開始の21日後まで徐々に減少する(図19)。
【0109】
驚くべきことに、rT3で処置したラットにおけるインスリンレベルは膵臓重量の増加と関連する(図20)。
これらデータは、rT3が、恐らくβ-膵臓細胞自己再生に関与する機序により、ZDFラットの導入された糖尿病疾患を逆転させることができることを示している。このように、ZDFラットは血糖を調節する能力を回復する。
【0110】
ZDFはまた、高トリグリセリド血症を有する高脂肪動物でもある。そのため、rT3処置の効果もまた評価した。
図21は、一方でrT3で処置したラットがプラシーボで処置したラットより痩せており、他方で脂肪重量がrT3処置動物において減少していることを示す。
【0111】
事実、図22に示されるように、rT3ホルモンで処置した場合、動物重量は減少する;この重量減少は食欲の喪失には関連していない(図23)。
図24は、rT3で処置したZDFラットのエネルギー消費がプラシーボ処置ZDFラットと比較して上昇していることを示す。更に、RQもまた、rT3で処置したZDFラットにおいて、プラシーボ処置ZDFラットと比較して上昇している(図25)。
【0112】
興味深いことに、rT3-処置動物の全体重量が減少している場合でさえ、ZDFラットの白色脂肪組織は、図26に示されるように、rT3処置によって影響されないようである。しかし、前記で示されるように、EEの増加は、褐色脂肪組織重量の増加と関連している(図27)。
また、筋肉重量はrT3処置によって影響されない(図28)。
【0113】
脂質代謝をより良く理解するために、遊離脂肪酸(FFA、図29)、トリグリセリド(図30)、コレステロール(図31)及び高比重リポタンパク質(HDL、図32)の脂質プロフィールを分析した。
rT3で処置したラットにおいて、ZDF血中のFFAは有意に上昇している(図29)一方で、トリグリセリドは有意に減少している(図30)。これらラットは僅かにコレステロール血症であるが、コレステロールレベルはrT3処置によって影響されない。
【0114】
結論として、ZDFラットに投与した低用量のrT3は二重の効果を有する:
− rT3は、エネルギー消費及びRQの上昇並びに褐色脂肪組織重量の増加と相関して、処置動物の全重量を減少させるが、白色脂肪組織重量を有意には減少させない。エネルギー消費は上昇し(+50%)、RQ値は酸化基質が増加していることを意味している。RQ値のこの増加は、それが全体のグルコース酸化を示しているので、逆説的である。しかし、ラット栄養補給における低量の脂質のために、ラットがグルコースを脂質に変換し(脂質生成)、次いで新たに形成された脂質が分解される(脂肪分解)。これらデータは脂肪酸プロフィールによって裏付けられる。このように、ラットが身体作りのためにエネルギーを燃焼し、蓄えを分解する。このことがラット重量の全体的減少を誘導する。この仮説は、図79に示される結果(rT3で処置したWistarラットにおいて肝脂質生成がほぼ4倍増加している)によって強力に証明される。
【0115】
− rT3は膵臓細胞増殖に対して影響を有する。膵臓細胞増殖は、ZDFラットにおいてインスリンの遊離を可能にし、次いで高グルコース血中濃度を矯正し得る。これは、甲状腺ホルモンが膵臓細胞増殖に関与していることを、初めて示すものである。
【0116】
n0STZモデル:糖尿病ラット
N0STZラットは、中程度のインスリン抵抗性を有する糖尿病性非肥満であり、誕生直後にストレプトゾトシン(この製品は膵臓細胞を殺傷する)の注射を受けている。
これら動物のグルコース抵抗性を、経口グルコース許容試験(OGTT)により試験した。動物は2g/kg BWのグルコースで飼育し、血中のグルコース濃度及びインスリン濃度を測定した。
【0117】
低用量のrT3(2.5g/100g BW)で処置したラットにおいて、OGGTの3時間後、グルコース濃度の曲線下面積(AUC)は、プラシーボで処置したラットと比較して、有意に減少している(図33)。逆に、同じ時点でのインスリン濃度のAUCは、rT3で処置したラットにおいて、プラシーボで処置したラットと比較して大幅に上昇している(図34)。これらデータは、rT3処置が、インスリン血中濃度を上昇させることにより、血中グルコース濃度を減少させることができることを示している。
【0118】
これら結果を確証するために、OGTTの動力学曲線を20分間実施した。次いで、グルコース濃度(図35)及びインスリン濃度(図36)をこの期間に測定した。
図35において、rT3で処置したラットは、OGTT後最初の5分間に、血中グルコース濃度をより迅速に調節する。グルコース濃度のこの制御は、rT3で処置した動物におけるインスリン濃度の高増加と相関している(図36)。プラシーボで処置したn0STZラットでは、インスリン応答がない(図36)。
【0119】
したがって、rT3処置は、グルコース調節機能不全を矯正することができる。OGTTにおいて観察されるインスリンレベルの増加は、rT3処置動物の膵臓重量の増加と関連する(図37)。
次に、rT3処置は膵臓増殖を調節する。
【0120】
GKモデル:糖尿病ラット
GKラットは、中程度のインスリン抵抗性を有する糖尿病性非肥満であり、コントロールラットより少ない膵臓細胞を有する。膵臓細胞はインスリン分泌の効率も低い。
これら動物のグルコース抵抗性を、経口グルコース許容試験(OGTT)により試験した。動物は2g/kg BWのグルコースで飼育し、血中のグルコース濃度及びインスリン濃度を測定した。
【0121】
低用量のrT3(2.5g/100g BW)で処置したラットにおいて、OGGTの3時間後、グルコース濃度の曲線下面積(AUC)は、プラシーボで処置したラットと比較して、有意に減少している(図38)。相関して、同じ時点でのインスリン濃度のAUCは、rT3で処置したラットにおいて、プラシーボで処置したラットと比較して大幅に上昇している(図39)。これらデータは、rT3処置が、インスリン血中濃度を上昇させることにより、血中グルコース濃度を減少させることができることを示している。
【0122】
これら結果を確証するために、OGTTの動力学曲線を20分間実施した。次いで、グルコース濃度(図40)及びインスリン濃度(図41)をこの期間に測定した。
図40において、rT3で処置したラットは、OGTT後最初の5分間に、血中グルコース濃度をより迅速に調節する。グルコース濃度のこの制御は、rT3で処置した動物におけるインスリン濃度の増加と相関している(図41)。プラシーボで処置したGKラットでは、インスリン応答がない(図41)。
【0123】
したがって、rT3処置は、グルコース調節機能不全を矯正することができる。OGTTにおいて観察されるインスリンレベルの増加は、rT3処置動物の膵臓重量の増加と関連する(図42)。
次に、rT3処置は膵臓増殖を調節する。
【0124】
Wistarモデル:非糖尿病ラット
Wistarラットは、インスリン抵抗性を有さない非糖尿病性非肥満であるが、ヒトと同様に、年齢と共に僅かに肥満及びインスリン抵抗性となる傾向にある。しかし、これは、「生理学的」であると考えられている。
これら動物のグルコース抵抗性を、経口グルコース許容試験(OGTT)により試験した。動物は2g/kg BWのグルコースで飼育し、血中のグルコース濃度及びインスリン濃度を測定した。
【0125】
低用量のrT3(2.5g/100g BW)で処置したラットにおいて、OGGTの3時間後、グルコース濃度の曲線下面積(AUC)は、僅かに減少しているが、プラシーボで処置したラットと比較して有意ではない(図43及び45)。対照的に、同じ時点でのインスリン濃度のAUCは、rT3で処置したラットにおいて、プラシーボで処置したラットと比較して有意に低下している(図44及び46)。これらデータは、rT3処置が、インスリン感受性を増大させることができることを示している。興味深いことに、rT3群において、プラシーボと比較して、膵臓重量の中程度であるが有意な増加が認められる。
【0126】
実施例4:肥満治療に対するのrT3ホルモンの用量の比較
1.材料及び方法
材料及び方法は前記の実施例に記載したものである。
【0127】
2.結果
Wistarラットを、高用量(25μg/100g BW)、低用量(2.5μg/100g BW)又は極低用量(0.25μg/100g BW)のrT3で処置した。
図48は、高用量又は低用量のrT3で処置したWistarラットにおいて、プラシーボで処置したラットとの比較で、食欲を改変することなく、体重が減少することを示す(図49)。図50に示した同様のデータは、極低用量のrT3もまた動物の体重を減少させることを示している。
20日間の処置後、極低用量のrT3及び高用量のrT3により同様の結果が得られる。
【0128】
rT3の代謝影響についての前記のデータに関して、高用量、低用量及び極低用量のrT3で処置したWistarラットのエネルギー消費を評価した。
図51に示すように、高用量のrT3は、WistarラットのEEを、低用量(プラシーボで処置したラットのEEと全く同様である)と比較して、有意に上昇させる。極低用量のrT3では低用量と同様の結果が得られる(図52)。
【0129】
RQに関して、高用量及び低用量のrT3で処置した動物は、プラシーボと比較して、RQが増加する(図53)一方で、極低用量のrT3で処置した動物は、プラシーボと比較して、RQが減少する(図54)。
【0130】
したがって、高用量、低用量及び極低用量のrT3の代謝関与は異なるが、全ての用量の甲状腺ホルモンが処置動物のボディマスに対して有意な効果を有する。
結果として、0.25μg/100g BW〜25μg/100g BWの投薬量は、肥満の治療に使用することができる。
【0131】
図55は、高用量又は低用量のrT3での処置の白色脂肪組織重量に対する効果を比較している。低投薬量のrT3は、高用量のrT3での処置より低い効率で脂肪重量を減少させる。同様に、高投薬量のrT3は褐色脂肪組織の高増加を誘導する一方で、低用量は中程度の増加を誘導する(図57)。
次に、種々の投薬量のrT3は筋肉組織重量に影響しない(図56)。
【0132】
図58A及びBは、ミトコンドリアのリン酸化(状態3、図58A)及び非リン酸化(状態4、図58B)呼吸数に対する高(25μg/100mg)及び低(2.5μg/100mg)rT3の効果を比較している。rT3の投与は、状態3及び状態4の両方の呼吸数の用量依存性増加に関連し、試験した基質のほとんど全てがその経路の全体的な効果を示した。
同様に、ミトコンドリアのグリセロール-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼの酵素活性は、両方の処置で用量依存的に有意に減少した。
【0133】
高用量又は低用量のrT3で処置したWistarラットの脂質プロフィールに関して、高投薬量は、低投薬量より良好な効率で、FFAの遊離(図60A)及びトリグリセリドの分解(図60B)を刺激する。
グリセロール(図60C)及びHDL(図60D)について、高及び低投薬量はこれら脂質の減少に対して同じ効果を奏する。
これら全てのデータは、高投薬量、低投薬量及び極低投薬量のrT3が体重の減少に適切であることを証明する。
【0134】
実施例5:肥満治療に対するrT3ホルモンの投与の比較
1.材料及び方法
連続皮下放出(scペレット)の効果は、同じ用量の経口又は腹腔内非連続投与より、有意に優れていることが示された。しかし、皮下又は腹腔内のいずれかに埋め込まれた浸透圧ポンプによるrT3の連続投与を、皮下ペレットにより投与される参照処置と比較することによって、投与部位の役割を更に調べた。Wistarラットをプラシーボ、皮下ペレット又は皮下若しくは腹腔内浸透圧ポンプで21日間処置した。rT3は連続的に投与した(2.5μg/100g)。
【0135】
2.結果
Wistarラットを、3つの異なる投与法による低用量のrT3の連続及び定常投与により試験した:
− 皮下ペレット、
− 皮膚の下に配置した浸透圧ポンプ、及び
− 腹腔内に配置した浸透圧ポンプ。
これら3つの投与の結果を21日後に分析した。
【0136】
図61は、全ての投与法が処置動物のボディマスの有意な減少を誘導することを示している。処置群に有意差がないことが証明できた。
図62は、全ての投与法が白色脂肪組織重量の有意な減少を誘導することを示している。処置群間に幾らかの軽微な差を認めることができた。しかし、全体の効果は全く同様であった。
【0137】
図63は、褐色脂肪組織がペレット及び皮下ポンプによって、腹腔内ポンプポンプより有意に増加しているが、全ての処置が効果的であったことを示している。
図64は、ミトコンドリアのGPdH活性が3つの投与法により上昇し、ペレット投与でより上昇することを示している。再度、全ての処置が効果的であった。
【0138】
図65及び66はそれぞれ、3ヶ月の投与で処置した動物のエネルギー消費及び呼吸商を示している。
全ての方法により、同じ結果、すわわち重量減少に関連した代謝活性の増加が得られる。
【0139】
したがって、連続及び定常用量のrT3の試験した全ての投与法により、肥満の治療に使用するために満足できる結果が得られる。これら結果は、投与速度が効力に関して注射部位(sc 対 ip)より重要であったことを示す。
【0140】
実施例6:連続及び定常rT3処置の作用における内因性甲状腺ホルモンの機能
1.材料及び方法
前記の全ての実施例により、肥満、異脂肪血症及び糖尿病の治療についてのrT3投与の効果が証明された。
処置の作用態様を理解するために、Wistarラットを、甲状腺ホルモンの合成及び脱ヨード化を阻害する薬品PTU及びIOPで処置した。
【0141】
動物(Wistar)を、全ての脱ヨウ素酵素(タイプI、II及びIII)の完全な阻害を誘導するプロピル-チオウラシル(PTU、飲料水中)及びイオパノ酸(IOP、週1回のsc注射)による処置に供した。この処置は、重篤な甲状腺機能低下状態に関与する。加えて、この処置は、脱ヨード化によって全ての甲状腺ホルモンの末梢代謝を損なう。幾つかのラットを、rT3の皮下投与(2.5μg/100g)にも供した。3群はコントロール、PTU+IOP及びPTU+IOP+rT3から構成され、実験期間は3週間であった。
【0142】
2.結果
図67は、PTU+IOP処置が動物重量の大幅な減少を誘導することを示す。更に、rT3の追加は、PTU-IOPにより誘導される減少を増強する。rT3の有り無しで、PTU-IOP処置ラットの食欲は変化がないままであることに留意することが重要である(図68)。
【0143】
次に、PTU及びIOPは甲状腺ホルモンの内因性合成を阻害するので、このデータは、処置に使用したrT3が、投与したホルモン(rT3)の代謝の介入も他の内因性ホルモンの代謝の介入もなしで作用することを示唆している。これら仮説を確証するために、PTU+IOPで処置したか又は処置しなかったラットにおいてT4濃度をアッセイした。図74に示すように、ラットをPTU+IOPで処置すると、T4ホルモンが動物の血漿からなくなる。
【0144】
図69及び70は、EE及びRQがそれぞれ、動物をPTU+IOPで処置したときにはプラシーボと比較して減少するが、rT3を投与したときには上昇することを示す。これらデータは、投与したrT3の内因非依存性を確証する。
図71及び72は、PTU+IOP投与により誘導される重篤な甲状腺機能低下がグルタメート/マレート(GM)、スクシネート(S)及びグルタメート/マレート/スクシネート(GMS)による状態3呼吸数(図71)及びmGPdH活性(図72)の減少に関与したことを示す。rT3(2.5μg/100g)による処置は、PTU+IOPの効果を矯正する(状態3)か、又は刺激する(mGPdH)かのいずれかである。
【0145】
褐色脂肪組織に関して、PTU+IOP処置はエネルギー性脂肪組織の重量を上昇させるが、この重量はまたラットをrT3で処置しても上昇する。
結論として、これら全てのデータは、rT3投与が、内因性甲状腺ホルモンの介入なしで、rT3の更なる脱ヨウ素化なしに、処置動物のボディマス及び代謝活性に対して効果を有することを証明する。
【0146】
実施例7:高脂肪高スクロース食餌
栄養的に誘導したインスリン抵抗性の臨床的に該当する状態は、高脂肪高スクロース食餌(HF)として知られている。したがって、OGTT試験へのグルコース及びインスリン応答に対するrT3の効果を調べた。Wistarラットを、45.5%脂肪(38%ラード及び7.5%ダイズ油)及び34%炭水化物(スクロースとして25%)を含有する食餌で8週間飼育した。OGTTを上記のように行った。
【0147】
図75は、rT3(2.5μg/100g)が曲線下面積(AUC)として表される血中グルコースの有意な低下(図75)又は時間に伴う血漿濃度の変化(図77)に関与したことを示す。並行して、インスリンレベルは、AUC(図76)及び時間に伴う変化(図78)の両方について有意に低下した。
これら結果は、インスリンの抵抗性が不適切な食餌に起因する状況における、インスリン感受性の増大についてのrT3での処置の効果を確証する。
【0148】
実施例8:デノボ肝脂質生成
まとめると、rT3の効果は、遊離脂肪酸を増加させない一方で、ボディマスの減少に関連するエネルギー消費の増加、食物摂取に大きな変化が無いこと、及び血中グルコース及びトリグリセリドレベルの減少を示す。このことは、(単離ミトコンドリアで見出されているように)脂肪酸酸化が増加することを示す。しかし、間接熱量測定によるグルコース 対 脂肪酸酸化の全体的評価は一義的ではない。なぜならば、RQは時に増加し、時に減少するからである。1つの仮説は、げっ歯類固形飼料の低脂肪含量という状況では、脂肪酸が、酸化の前に、先ず炭水化物から合成されなければならないというものである。実際、これは、脂肪酸酸化が、例えば高用量のrT3により、強力に活性化されるとき、特に該当し得る。
【0149】
この点を確証するため、安定なアイソトープを使用することにより内因性トリグリセリド合成の速度を評価した。
図79は、rT3が脂質の内因性(肝臓)合成の強力な刺激に関与することを示す。興味深いことに、この効果は、昼間、すわわち動物が内因性合成の生理学的なゴールである貯蔵ではなく脂質酸化の傾向にある絶食状態で最大である。
これら結果は、rT3が脂肪分解、脂質酸化及び脂質生成の同時活性化(基礎エネルギー消費の相当な増加を説明し得る無益な循環を生じる)に関与し得ることを確証する。
【技術分野】
【0001】
本発明は、甲状腺ホルモンを含んでなる新たな医薬組成物及びその治療的使用に関する。
【背景技術】
【0002】
甲状腺ホルモンは古くから知られている。甲状腺ホルモンファミリーはT4ホルモン及びT4の連続モノ脱ヨード化から生じる誘導ヨードチロニンからなる。T4の脱ヨード化カスケードの経路は、Hulbert A.J.(Biol. Rev.,2000)により記載されている。T4は外環5'-脱ヨード化を経てT3を生じるか、又は内環5'-脱ヨード化を経てrT3を生じる。T3は外環5'-脱ヨード化を経て3,5-T2を生じるか、又は内環5'-脱ヨード化を経て3,3'-T2を生じる。rT3は外環5'-脱ヨード化を経て3,3'-T2を生じるか、又は内環5'-脱ヨード化を経て3',5'-T2を生じる。3-T1は、3,5-T2から内環5'-脱ヨード化を経て又は3,3'-T2から外環5'-脱ヨード化を経て得られる。3'-T1は、3,3'-T2から内環5'-脱ヨード化を経て又は3',5'-T2から外環5'-脱ヨード化を経て得られる。
【0003】
情報として、表1に、甲状腺ホルモンファミリーの幾つかのメンバーの式を示す。
【表1−1】
【表1−2】
【0004】
甲状腺ホルモン、特にT3ホルモンの公知の効果は、主に、甲状腺ホルモンの2つの核レセプターTRα-1及びTRβ-1(異なる効果を有すると考えられている核レセプターTRα及びTRβのファミリーに属する)への結合に起因する。これらレセプターは、特にヨウ素の数及び空間的配置(spatial arrangement)に関して、T3に高度に特異的であると考えられている(Bolgerら,J. Biol. Chem.,1980;Koernerら,J. Biol. Chem.,1975;Dietrichら,J. Med Chem.,1977)。甲状腺核レセプターの発見以来、ほとんどの科学者は、甲状腺ホルモンの転写変化の効果に注目している。
【0005】
T3ホルモンは核レセプターに非常に効率的に結合する一方、T4ホルモンの結合は効率がより低い。T4及びT3から誘導されるホルモンは核レセプターに結合しない(Koernerら,J. Biol. Chem.,1975;Lazar,Endocrine Rev.,1993;Hulbert,Bio. Rev.,2000;Oppenheimer,Biochimie,1999;Yen,Physiol. Rev.,2001)。
【0006】
肥満を治療するためのT3ホルモンの使用は当業者に周知である。しかし、その使用は、T3ホルモンの重篤な副作用、特に心臓への副作用のために、高度に制限されている。甲状腺機能低下症の治療はT3による。T3は、直接使用され得るか、又は極僅かに活性な前駆体であるT4ホルモンの変換によりインビボで産生され得る(Yen,Physiol. Rev.,2001)。T3は真の活性甲状腺ホルモンとして知られている。
【0007】
甲状腺ホルモン、例えばT3により核レセプター経路を経て誘導される効果は、非常に低濃度で観察される生理学的に重要な効果である。これら効果は、T3を甲状腺機能低下症を患っていない被検体に投与したときには、しばしば有害である。これら効果は、核レセプター経路に関係する「甲状腺機能亢進効果」と考えることができる。
【0008】
国際出願WO2005/009433及び対応する科学論文(Lanniら,The FASEB Journal,2005)は、エネルギー代謝に対する3,5-T2の効果を開示している。より詳細には、高脂肪食餌を与え、3,5-T2の腹膜注射で毎日処置した正常ラットは、未処置ラットより、体重増加が少なく、脂肪沈着も少なかった。このため、3,5-T2ホルモンは肥満及び関連する病状の治療用に提案された。
【0009】
rT3ホルモンは、一般に、不活性ホルモンと考えられており、甲状腺ホルモンの不活化経路を代表していると考えられていた(Yen,Physiol. Rev.,2001)。このように、上昇したrT3血漿濃度は低T3症候群でしばしば見出される。最近、rT3の脳効果が、星状神経膠細胞の樹立及び構造化において開示されている(Farwellら,Endocrinology,2006)。
【0010】
先行技術には、甲状腺ホルモンがインスリン及び血糖に対する効果を有し得ることは決して開示されていない。
【0011】
糖尿病は高血糖により特徴付けられる慢性疾患である。
1型糖尿病は、インスリンを分泌する膵臓β細胞の破壊により生じる。1型糖尿病の治療は、特には、インスリンの投与からなる。
【0012】
2型糖尿病は、集団内で1型糖尿病より頻度が高く、一般には肥満に伴う。2型糖尿病は、独立した2つの異常により特徴付けられる:インスリン抵抗性及び血糖に応答したインスリン産生の減少。
2型糖尿病の治療は、特には、インスリンのアゴニスト薬剤又はβ細胞によるインスリン分泌のアゴニストを用いることであり、糖尿病患者の血糖及び体重を減少させることである。
【0013】
肥満は、先進国及び発展途上国における公衆衛生上の主要な関心事の1つである。肥満に関与する機序はあまり理解されていない。肥満に関与する要因は、特に栄養(alimentation)(脂肪食及び甘味食)及び環境条件(身体的活動、社会環境、食物の入手容易性)である。
【0014】
(特に、副作用、患者の快適性(例えば使用頻度及び投与経路)に関して)より効率的でより適切な治療が、慢性疾患、例えば糖尿病、肥満及び異脂肪血症に対して必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の1つの目的は、活性物質として甲状腺ホルモンを含んでなる新たな医薬組成物を提供することである。
本発明の別の目的は、甲状腺機能亢進症を誘導しない代謝障害の治療のための新たな医薬組成物を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、新たな治療クラスの糖尿病治療用薬剤を提供することである。
本発明の別の目的は、糖尿病の治療用を意図した、同時、別々又は逐次の使用のための組合せ製品を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、活性物質として、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン(3',3-T2)、5',3-ジヨードチロニン(5',3-T2)、3'-ヨードチロニン(3'-T)、5'-ヨードチロニン(5'-T)又は3-ヨードチロニン(3-T)、或いは
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンを、医薬的に許容され得るビヒクルと組み合せて含んでなる医薬組成物に関する。
【0018】
rT3を不活性であると示している先行技術の教示に反して、本発明者らは、rT3ホルモン及びその誘導ホルモンを薬剤として使用できることを見出した。
更に、他の甲状腺ホルモン(例えばT3)の効果とは対照的に、本発明によるホルモンの効果には核レセプター経路は関与しないようである。なぜならば、rT3はTHレセプターに対して非常に小さなアフィニティーしか有さないことが知られているからである。
【0019】
rT3ホルモン及びrT3誘導ホルモンは、甲状腺機能低下症の治療に関して不活性であるか、又は甲状腺機能亢進症の誘導剤としての生理学的形態の甲状腺ホルモンである。3,5-T2とは対照的に、これらホルモンは、活性甲状腺ホルモンであるT3を介して得ることはできない。
本発明者らにより、rT3、rT3誘導ホルモン又はrT3前駆体がエネルギー活性を有し、血糖及びインスリン感受性並びに血漿濃度に対する効果を有することが最初に示された。
【0020】
本発明者らは、rT3及びその誘導ホルモンの使用が、甲状腺機能亢進症を誘導することなく有益な代謝効果を得るための生理学的方法であることを提案する。
更に、本発明者らは、rT3が糖尿病被験体の血糖に対してのみ有益な効果を有し、非糖尿病被験体の血糖に対しては血糖低下効果を有しないことを提案する(実施例の章を参照)。
【0021】
本発明によれば、用語「3',5',3-トリヨードチロニン」とは、逆転T3又はrT3をいう。
表現「rT3誘導ホルモン」とは、特に1又は幾つかのヨウ素を除去することによって、天然に存在する方法及び/又は人工的方法を介して、rT3から得ることができる少なくとも1つのヨウ素を有する任意の化合物を意味する。
「天然に存在する方法」とは、特に、rT3誘導ホルモンが、rT3から、1又は幾つかのヨウ素を除去する酵素(例えば、ヨードチロニン脱ヨウ素酵素)により得られることを意味する。所望の誘導ホルモンを得るためには幾つかの生物学的反応が必要となり得る。
【0022】
表現「人工的方法を介して」とは、特に、rT3誘導ホルモンが化学合成、生化学合成又は組換え技術により得られることを意味する。
好適なrT3誘導ホルモンは、ジヨードチロニン及びヨードチロニンである。好適なrT3誘導ホルモンは、3',3-ジヨードチロニン、3',5'-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン又は3-ヨードチロニンである。
【0023】
表現「rT3の前駆体」とは、rT3を与えることができる任意の化合物を意味する。rT3の前駆体は、天然ホルモン、合成又は組換えホルモン又は修飾ホルモンであり得る。
表現「天然ホルモン」とは、生物(例えば、動物又はヒト)中に見出され、該生物から精製及び単離されたホルモンを意味する。
表現「合成又は組換えホルモン」とは、化学若しくは生化学合成又は組換え技術により得られたホルモンを意味する。
表現「修飾ホルモン」とは、官能基を付加するように化学的に修飾されたホルモンを意味する。この官能基は、ホルモンの活性を改変してもよいし、又はホルモンを分解から保護してもよい。
【0024】
本発明の有利な実施形態において、rT3の前駆体はT4ホルモン、いわゆる「チロキシン」である。
rT3前駆体は、rT3形成の促進を可能にする分子との組合せで優先的に使用される。rT3の前駆体及び前記分子の使用は同時、別々又は逐次であることができる。
【0025】
T4ホルモンをrT3前駆体として使用するときには特に、前記rT3形成の促進を可能にする分子は、
− T3ホルモンの代わりに優先的にrT3ホルモンの形成を可能にするチロニン脱ヨウ素酵素、若しくは前記チロニン脱ヨウ素酵素のアゴニスト、又は
− rT3ホルモンの代わりにT3ホルモンの優先的な形成を可能にする脱ヨウ素酵素のアンタゴニスト
である。
【0026】
本発明は、特に、前記活性物質がrT3である上記の医薬組成物に関する。
【0027】
本発明は、特に、約0.01μg/kg/日〜約250μg/kg/日、特に約0.01μg/kg/日〜約25μg/kg/日、特に約0.1μg/kg/日〜約15μg/kg/日の活性物質、更に特には約0.1μg/kg/日〜約5μg/kg/日の活性物質、最も特には約0.1μg/kg/日〜1μg/kg/日の活性物質の放出に適切な形態である上記の医薬組成物に関する。
活性物質の投薬量は投与経路に特に依存し、これは、当業者によって容易に決定される。
【0028】
本発明は、更に、期間の満了時に放出されるべき活性物質を、投薬単位基準で、(70kgのヒトについて上記値の範囲(μg/kg/日又はmg/kg/日)に対応する)約5μg〜約1.5g、特に約75mg〜約750mg含んでなる上記の医薬組成物に関する。
【0029】
例として、70kgのヒトの治療には、投薬量は
− 8日の処置を達成するためには、約5μg〜約150mg、特に約5μg〜約15mg、特に約50μg〜約10mg、特に約50μg〜約3mg、最も特には約50μg〜約500μgの活性物質、
− 30日の処置を達成するためには、約20μg〜約500mg、特に約20μg〜約50mg、特に約200μg〜約30mg、特に約200μg〜約10mg、最も特には約200μg〜約2mgの活性物質、
− 90日の処置を達成するためには、約60μg〜約1.5g、特に約60μg〜約150mg、特に約600μg〜約100mg、特に約600μg〜約30mg、最も特には約600μg〜約6mgの活性物質
である。
【0030】
表現「投薬単位」とは、1薬剤単位中に含まれる活性物質の量を意味する。
本医薬組成物の投与経路及び製剤に依存して、投薬単位中に含まれる活性物質は、迅速に又は或る期間にわたって連続的に放出され得る。本医薬組成物はまた徐放薬剤であり得る。
【0031】
本発明の医薬組成物は、部分用量(partial dose)又は1用量で24時間の間に1回又はそれより多い回数投与され得る。分割投薬、2回又はその他の複数回投薬は、同時に又は24時間の間で異なる時間に行い得る。
有利な実施形態において、本発明の医薬組成物は、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも1週間、より好ましくは少なくとも1ヶ月間、最も好ましくは少なくとも2ヶ月間、特に少なくとも3ヶ月間の間の連続放出を可能にする独特な用量で投与される。
【0032】
本発明は、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンの、
− 高血糖、インスリン抵抗性、β膵臓細胞不全又は関連する病状、
− コレステロール及び/若しくはトリグリセリドの血漿濃度が正常濃度より高い病状又は異脂肪血症、或いは
− 過体重又は脂肪沈着の過剰に関連する病状
の治療用を意図した薬剤の製造のための使用。
【0033】
有利な実施形態において、本発明は、1型及び2型糖尿病、高血糖、インスリン抵抗性、β膵臓細胞不全又は関連する病状の治療用を意図した薬剤の製造のための上記の使用に関する。
本発明者らは、rT3、rT3誘導ホルモン又はrT3前駆体が血糖及びインスリン血漿濃度を減少させることができることを最初に示した。
【0034】
高血糖は、1g/l(又は110mg/dl若しくは5.5mmol/l)より高い、特に1.20g/lより高い空腹時グルコース濃度により特徴付けられる。rT3、rT3誘導ホルモン又はrT3前駆体の使用により血糖を正常濃度まで減少させることが可能になる。
表現「グルコースの正常濃度」とは、4.4mmol/l〜5.5mmol/lのグルコース血漿濃度を意味し、「異常」血中グルコースは空腹時血漿グルコース>5.55mmol/lで定義され、糖尿病は空腹時血漿グルコース>6.1mmol/lで定義される(Meggsら,Diabetes,2003)。
【0035】
血糖は、参照としてグルコースオキシダーゼ法を使用する古典的な血液検査により評価される(Yeni-Komshianら,Diabetes Care,2000,p171-175;Chewら,MJA,2006,p445-449;Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)。
【0036】
rT3、rT3誘導ホルモン又はrT3前駆体の使用はまた、インスリン抵抗性を改善する。
インスリン抵抗性は、8mU/l又は60pmol/lより高いインスリン血漿濃度により特徴付けられる(Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)。
インスリン抵抗性は、正常量のインスリンが脂肪、筋肉及び肝臓細胞からの正常応答を生じるには不十分である状態、すわわちインスリンの生理学的作用に対して抵抗性である状態である。
【0037】
それは、調べた集団中、インスリン感受性の尺度(例えば、オイグリセミッククランプの間のインスリン刺激グルコース摂取)の最も低い四分位数又は空腹時インスリン又は恒常性モデル評価(HOMA)インスリン抵抗性指標の最も高い四分位数として規定される(Albertiら,「Definition,diagnosis and classification of diabetes mellitus and its complications. Part 1: Diagnosis and classification of diabetes mellitus,provisional report of a WHO consultation」,Diabetic Med,1998,p539-553;Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)。
【0038】
上記の活性物質の使用により、インスリン血漿濃度を正常濃度に減少させること、インスリンに対する感受性を増大させること及びグルコース及び脂質の代謝を改善させることが可能になる。
【0039】
表現「インスリンの正常濃度」とは、5〜8mU/l(36〜60pmol/l)のインスリン血漿濃度を意味する。
インスリン濃度は古典的な血液検査により評価される(ヒト抗体を用いるRIAアッセイ;Yeni-Komshianら,Diabetes Care,2000,p171-175;Chewら,MJA,2006,p445-449;Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)。
インスリンに対する感受性はHOMA(恒常性モデル評価)法により評価することができる(Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495、1489頁の図2を参照)。
【0040】
驚くべきことに、上記の活性物質の使用は、膵臓β細胞の生存を改善し、よってインスリン分泌細胞の再生を改善するようである。
前記細胞の再生は、インスリン濃度の測定(ヒト抗体を用いるRIAアッセイ;Yeni-Komshianら,Diabetes Care,2000,p171-175;Chewら,MJA,2006,p445-449;Wallaceら,Diabetes Care,2004,p1487-1495)により評価する。
【0041】
ZDFラットで得られた結果は、rT3での処置がグルコース濃度の減少及び血漿インスリン濃度の増加を誘導したことを示している。
2型糖尿病の遺伝モデルであるGoto-Kakizaki(GK)ラットには、胎齢の早期にβ細胞量(cell mass)の制限が存在し、これは成体動物で維持される。β細胞量の制限は、このモデルで明白な糖尿病を導くシーケンスにおける重大な事象と考えられている。GKモデルでは、β細胞の再生は、非糖尿病Wistarラットと比較して、より低い効率で起こる。GKラットにおけるこの欠損は、変化したβ細胞新生能力に寄与する遺伝的素因及び成体動物に特異的な減少したβ細胞増殖能を導く環境因子(例えば慢性高血糖)の両方の結果である。これら結果は、Movassatら,Diabetologia,1997,p916-925及びPlachotら,Histochem Cell Biol.,2001,p131-139に記載されている(共に、その内容の全体が参照により本明細書中に組み込まれる)。
【0042】
慢性高血糖が膵臓β細胞の破壊、したがってインスリン分泌の減少を誘導したと仮定すれば、回復された正常インスリン濃度はβ細胞が再生されることを意味し得る。
β細胞の機能的な量は、HOMA法によるインスリン分泌レベルに相関付けることができる。動物モデルでは、当業者は膵臓量(pancreas mass)の直接評価を考えることができる。
【0043】
別の実施形態によれば、本発明は、コレステロール及び/又はトリグリセリドの血漿濃度が正常濃度より高い病状、又は異脂肪血症、又は過体重若しくは脂肪沈着の過剰に関連する病状の治療用を意図した薬剤の製造のための上記の使用に関する。
正常濃度より高いコレステロール濃度とは、2.5g/lより高い血漿濃度を意味する。
正常濃度より高いトリグリセリド濃度とは、2g/lより高い血漿濃度を意味する。
【0044】
異脂肪血症は、1.7mmol/lより高いトリグリセリド濃度及び/又は1mmol/l(男性)若しくは1.3mmol/l(女性)より低いHDL-コレステロールレベルによって特徴付けられる(Chew,MJA,2006,p445-449、「Clinical definitions of the metabolic syndrome」と題する表を参照)。
脂肪沈着の過剰は、25kg/m2より高いボディマスインデックス(体重(kg)/伸長2(m2))により特徴付けられ、肥満は30kg/m2より高いボディマスインデックスにより特徴付けられる。
【0045】
本発明は更に、糖尿病、特に1型又は2型糖尿病、β膵臓細胞不全、肥満、過体重又は関連する病状、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、異脂肪血症、アルコール肝炎性及び非アルコール肝炎性皮脂欠乏症、アテローム性動脈硬化症、代謝異常に関連するヘパトパシー、胆嚢疾患、皮下脂肪の沈着、特にセリュライト、又は血管運動神経性鼻炎の中から選択される病状の治療用を意図した薬剤の製造のための上記の使用に関する。
有利な実施形態において、本発明は、前記ホルモンがrT3である上記の使用に関する。
【0046】
本発明は、特に、前記医薬的に許容され得るビヒクルが医薬組成物を製造するために製薬産業で通常用いられている、医薬的に許容され得る固体又は液体の、希釈剤又はカプセル化剤、充填剤又はキャリア剤をいう上記の医薬組成物に関する。
【0047】
本発明は、経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、鼻、腹腔内、舌下又は直腸経路を介する投与に適切である上記の医薬組成物に関する。
経口経路では、薬剤は、経口的に、特に錠剤、コーチング錠、丸剤、シロップ又はエリキシル剤、糖衣剤、トローチ、ロゼンジ、水性若しくは油性懸濁剤、液状溶液、分散剤(dispersible powder)又は顆粒、乳剤、硬若しくは軟カプセル剤の形状で、投与される。
静脈内経路又は全身経路では、薬剤は単回注射又は連続注入により、究極的にはポンプを介して血流中に投与することができる。
【0048】
皮膚経路では、薬剤は皮膚に塗布される。製剤は軟膏、クリーム、ローション、溶液、粉剤又はゲルであり得る。
皮下経路では、薬剤は、皮膚直下の脂肪組織中に直接注射することができるか、又は薬剤は、皮膚の下に挿入されるカプセル中に含ませることができる。
経皮経路では、薬剤は注射することなく血流まで皮膚を通過する。詳細には、薬剤は、皮膚に適用されるパッチ中に含まれる。パッチ製剤に関しては、薬剤は、皮膚透過性を亢進させる化学物質(例えばアルコール)と混合させることができる。
【0049】
剤形としては、即時放出、延長放出、パルス放出、可変放出、制御放出、時限放出、持続放出、遅延放出、長期作用及びそれらの組合せが挙げられる。
剤形としては、限定されないが、錠剤、多層錠、二層錠、咀嚼錠、急速溶解錠、発泡錠、シロップ、懸濁剤、乳剤、カプセル、柔ゼラチンカプセル、硬ゼラチンカプセル、ロゼンジ、咀嚼ロゼンジ、ビーズ、散剤、顆粒、粒子、微粒子、分散性顆粒、カシェ剤、クリーム、局所剤、パッチ、移植物、注射剤(皮下、筋肉内、静脈内及び皮内を含む)、輸液を挙げることができる。
【0050】
本発明の有利な実施形態において、本医薬組成物は(特にパッチによる)経皮用に適切である。
有利な実施形態において、本医薬組成物の投与は、薬剤が(このホルモンの重要な分解をもたらす)肝臓を通過することを部分的に回避する。
本発明の別の有利な実施形態において、本医薬組成物は(特に皮膚の直下に注入されるカプセルによる)皮下投与用に適切である。
【0051】
本発明は、更に、前記医薬的に許容され得るビヒクルが前記活性物質の連続放出、好ましくは定常放出を可能にし、活性物質が、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン(3',3-T2)、5',3-ジヨードチロニン(5',3-T2)、3'-ヨードチロニン(3'-T)、5'-ヨードチロニン(5'-T)若しくは3-ヨードチロニン(3-T)、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される上記の医薬組成物に関する。
【0052】
活性物質の連続放出、好ましくは定常放出により、
− 代謝障害に対する、別の投与態様を介して得られる結果と比較して増加した効果、又は、
− 以前にはポジティブな結果がみられなかった動物モデルの代謝障害に対して新たに観察される効果
を得ることが可能になる。
【0053】
表現「連続放出」とは、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも1ヶ月、最も好ましくは少なくとも2ヶ月、特に3ヶ月にわたる薬剤の連続放出を意味する。また、本発明における連続放出は非連続放出に相当し得る。実際、2回の放出の間で薬剤の濃度が血中で実質的に一定のままであるか又は血中で十分に効率的な量のままであるように、或る放出が別の放出と短時間の時間間隔で分離されていてもよい。この短時間の間隔は、例えば10秒〜3時間、好ましくは1分〜2時間、より好ましくは5分〜1時間である。
【0054】
表現「定常放出」とは、放出される薬剤の量/時間単位が本質的に一定であり、少なくとも24時間、好ましくは少なくとも1ヶ月、最も好ましくは少なくとも2ヶ月、特に3ヶ月にわたる薬剤の連続放出を意味する。
連続及び定常放出は、例えば、パッチ又は皮膚の下に注入されるカプセルを用いることによって達成される。また、ホルモンを連続的に放出し、皮膚の下に配置される電気シリンジ又は電気ポンプもまた使用することができる。シリンジ又はポンプは腹腔内にも配置することができる。
【0055】
また、連続及び定常放出は、薬剤の制御放出(CR)製剤により提供することができる。
制御放出製剤により、血中で実質的に一定のままであるか又は血中で十分に効率的な量のままであるように、経時的な薬剤の緩慢な放出が可能になる。
【0056】
制御放出薬剤は、例えば、活性成分が不溶性物質(例えば、或る種のアクリル樹脂、キチン、PEG(ポリエチレングリコール)、...)又は徐分解性物質のマトリクス中に埋め込まれるように製剤化される。放出されるためには、薬剤はマトリクス中の穴を通って外へ通じる道を見つけなければならない。或る制御放出製剤において、マトリクスは膨潤してゲルを形成し、薬剤はマトリクス中で溶解してマトリクスの外表面に分散しなければならない。
【0057】
別の実施形態では、本発明のrT3、rT3誘導ホルモン及びrT3前駆体は、別の甲状腺ホルモン(例えば、3,5-T2又は3',5-T2)との同時、別々又は逐次の組合せで使用される。
【0058】
本発明はまた、糖尿病の治療用を意図した同時、別々又は逐次使用のための組合せ製品として、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又はrT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3前駆体、例えばT4の中から選択される少なくとも1つのホルモンと、
− 特に抗糖尿病性経口薬剤の中から選択されるインスリンの膵臓分泌を活性化する少なくとも1つの活性物質、又はグルコースの消化吸収の緩徐化を可能にする少なくとも1つの活性物質とを
含んでなる製品に関する。
【0059】
本発明はまた、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンを含んでなる栄養補助物質又は食品組成物に関する。
【0060】
本発明はまた、特に:
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンを含んでなる栄養補助物質又は食品組成物の投与により、
− 通常の食餌で飼育した動物の脂肪組織の重量と比較して、動物の脂肪組織の重量を低下させ、
− 通常の食餌で飼育した動物の赤身(lean tissue)の重量と比較して、赤身の重量を維持又は増加させることによって、
脂肪組織の重量と赤身の重量との比を制御することにより食肉の品質、特に豚肉の品質を改善する方法に関する。
【0061】
図面
以下の図面では、アスタリスク又は星印(*)は、p値<0.05又は具体的に示されたp値のいずれかを有する有意な結果を表す。
高用量のホルモンは25μg/100g体重(BW)に対応し、低用量は2.5μg/100g体重に対応し、極低用量は0.25μg/100g体重に対応する。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【図1】図1A及び1B 高投薬量のrT3又は3,3'-T2(25μg/100g体重(BW))で処置したWistarラットの成長速度。 図1A及び1Bは、21日間の時間(日)に対するラットの重量(グラム)を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットの重量は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの重量は黒塗り菱形で表す。 図1A:ラットをrT3で処置した。 図1B:ラットを3,3'-T2で処置した。
【図2】図2A及び2B 高投薬量のrT3又は3,3'-T2(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの食物摂取。 図2A、2B及び2Cは、21日間の時間(日)に対するラットの食物摂取(グラム/日)を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットの食物摂取は、白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの食物摂取は黒塗り菱形で表す。 図2A:ラットをrT3で処置した。 図2B:ラットを3,3'-T2で処置した。
【図3】図3A及び3B 高投薬量のrT3又は3,3'-T2(25μg/100g BW)で処置したWistarラットのエネルギー消費。 図3A及び3Bは、時間(分)に対するラットのエネルギー消費(EE)(Kcal/日/kg0.75)を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は、白抜き三角(図3A)、白抜き菱形(図3B)の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り丸で表す。 水平な黒線はラットが暗所に居た期間を示す。 図3A:ラットをrT3で処置した。 図3B:ラットを3,3'-T2で処置した。
【図4】図4A及び4B 高投薬量のrT3又は3,3'-T2(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの呼吸商(RQ)。 図4A及び4Bは時間(分)に対するラットの呼吸商を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き三角(図4A)、白抜き菱形(図4B)の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は黒塗り丸で表す。 水平な黒線はラットが暗所に居た期間を示す。 図4A:ラットをrT3で処置した。 図4B:ラットを3,3'-T2で処置した。
【図5】図5A、5B及び5C 高投薬量のrT3(250μg/100g BW)で処置したWistarラットの脂肪組織、骨格筋及び褐色脂肪組織の重量及び相対重量。 甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図5A:上パネルは、異なる脂肪組織(腹膜後脂肪、精巣上体脂肪、腸間膜脂肪及び皮下脂肪)の重量(g)を示し、下パネルはこれら脂肪組織の相対重量(g/100g BW)を示す。 図5B:左パネルは骨格筋(ヒラメ筋及び足底筋)の重量(mg)を示し、右パネルはこれら筋肉の相対重量(mg/100g BW)を示す。 図5C:左パネルは肩甲骨間の褐色脂肪組織の重量(g)を示し、右パネルはこの組織の相対重量(g/100g BW)を示す。
【図6】図6A、6B及び6C 高投薬量の3,3'-T2(250μg/100g BW)で処置したWistarラットの脂肪組織、骨格筋及び褐色脂肪組織の重量及び相対重量。 甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図6A:上パネルは、異なる脂肪組織(腹膜後脂肪、精巣上体脂肪、腸間膜脂肪及び皮下脂肪)の重量(g)を示し、下パネルはこれら脂肪組織の相対重量(g/100g BW)を示す。 図6B:左パネルは骨格筋(ヒラメ筋及び足底筋)の重量(g)を示し、右パネルはこれら筋肉の相対重量(mg/100g BW)を示す。 図6C:左パネルは肩甲骨間の褐色脂肪組織の重量(g)を示し、右パネルはこの組織の相対重量(g/100g BW)を示す。
【図7−1】図7A、7B、7C及び7D 250μg/kg BW/日のrT3又は3,3'-T2で処置した動物の肝臓ミトコンドリア酸素消費の速度(JO2(nmol O2/分/mgタンパク質)。 測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(1.0mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)、− TMPD/アスコルベート(0.5mM/0.5mM)、及び− TMPD/アスコルベート/DNP(0.5mM/0.5mM/75μM) OK。 JO2は、基質の存在下、1mM ADP(アデノシン二リン酸)の添加後に記録した(状態3)。 オリゴマイシンをミトコンドリアの懸濁物に加えて非リン酸化呼吸数を決定した(状態4)。 甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費は白で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図7A:rT3で処理したラットを用いて状態4で得られた結果。 図7B:3,3'-T2で処理したラットを用いて状態4で得られた結果。
【図7−2】図7C:rT3で処理したラットを用いて状態3で得られた結果。 図7D:3,3'-T2で処理したラットを用いて状態3で得られた結果。
【図8−1】図8A、8B、8C及び8D 250μg/kg BW/日のrT3又は3,3'-T2で処置したWistarラットの筋肉ミトコンドリア酸素消費の速度(JO2 (nmol O2/分/mgタンパク質))。 全ての測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(0.2mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)、− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、及び− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)。 JO2は、基質の存在下、1mM ADPの添加後に記録した(状態3)。 オリゴマイシンをミトコンドリアの懸濁物に加えて非リン酸化呼吸数を決定した(状態4)。 甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費は白で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図8A:rT3で処理したラットを用いて状態4で得られた結果。 図8B:3,3'-T2で処理したラットを用いて状態4で得られた結果。
【図8−2】図8C:rT3で処理したラットを用いて状態3で得られた結果。 図8D:3,3'-T2で処理したラットを用いて状態3で得られた結果。
【図9】図9A及び9B 低投薬量のrT3(25μg/kg BW/日)で処置したWistarラットの肝臓ミトコンドリア酸素消費の速度(JO2 (nmol O2/分/mgタンパク質))。 甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費は白で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。 全ての測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(1.0mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)、− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)、− TMPD/アスコルベート(0.5mM/0.5mM)及び− TMPD/AsC/DNP:TMPD/アスコルベート/DNP(0.5mM/0.5mM/75μM)。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図9A:JO2は、基質の存在下、1mM ADPの添加後に記録した(状態3)。 図9B:JO2は、非リン酸化呼吸数を決定するためのオリゴマイシンの添加後に記録した(状態4)。
【図10−1】図10A、10B、10C、10D及び10E 250μg/kg BW/日のrT3又は3,3'-T2で処置したWistarラットにおけるグルコース、トリグリセリド、コレステロール、FFA(遊離脂肪酸)及びHDL(高比重リポタンパク質)の血漿濃度。 これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。 rT3で処置したラットの結果は白で示し、3,3'-T2で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図10A:グルコース(mmol/l) 図10B:トリグリセリド(TG)(g/l)
【図10−2】図10C:コレステロール(g/l) 図10D:FFA(μmol/l)
【図10−3】図10E:HDL(g/l)
【図11】図11A、11B、11C、11D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)での処置後0日目及び8日目のWistarラットの重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 図11A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図11B:毎日腹腔内(IP)注射 図11C:毎日経口摂取(per os) 図11D:毎日皮下(sc)注射
【図12】図12A、12B、12C、12D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの8日間の処置後の脂肪組織の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 図12A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図12B:毎日腹腔内(IP)注射 図12C:毎日経口摂取(per os) 図12D:毎日皮下(sc)注射
【図13】図13A、13B、13C、13D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの8日間の処置後の褐色脂肪組織の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 図13A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図13B:毎日腹腔内(IP)注射 図13C:毎日経口摂取(per os) 図13D:毎日皮下(sc)注射
【図14】図14A、14B、14C、14D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの8日間の処置後の骨格筋の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。 図14A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図14B:毎日腹腔内(IP)注射 図14C:毎日経口摂取(per os) 図14D:毎日皮下(sc)注射
【図15】図15A、15B、15C、15D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットのエネルギー消費。 図15A、15B、15C、15Dは、時間(分)に対するラットのエネルギー消費(EE)(Kcal/日/kg0.75)を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は白抜き丸で示す。 図15A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図15B:毎日腹腔内(IP)注射 図15C:毎日経口摂取(per os) 図15D:毎日皮下(sc)注射
【図16】図16A、16B、16C、16D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置したWistarラットの呼吸商(RQ)。 図16A、16B、16C、16Dは時間(分)に対するラットの呼吸商を表す。甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は黒塗り四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は白抜き丸で示す。 図16A:連続及び定常投与(皮下ペレット) 図16B:毎日腹腔内(IP)注射 図16C:毎日経口摂取(per os) 図16D:毎日皮下(sc)注射
【図17】図17: 血中rT3投薬量。rT3濃度は、高投薬量のrT3を腹腔内注射(IP、四角)、経口摂取(per os、三角)又は皮下注射(sc、星印)により処置したWistarラットにおいて24時間測定する。基礎rT3レベルはプラシーボで処置した動物において測定する(菱形)。
【図18】図18 0日目及び8、16及び21日間の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)での処置後のZDFラットの血中グルコース濃度。プラシーボで処置した動物のグルコース濃度は黒で表し、低用量のrT3で処置した動物のグルコース濃度は白で表す。星印(*)は有意差を表す。
【図19】図19 0日目及び8、16及び21日間の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)での処置後のZDFラットの血中インスリン濃度。プラシーボで処置した動物のインスリン濃度は黒で表し、低用量のrT3で処置した動物のインスリン濃度は白で表す。星印(*)は有意差を表す。
【図20】図20 X日間後の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)(白)又はプラシーボ(黒)で処置したZDFラットの膵臓重量(グラム)。
【図21】図2121日間プラシーボ(左)又は低用量のrT3(右)で処置したZDFラットの写真。
【図22】図22 0日目及び8、16及び21日間の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)での処置後のZDFラットの体重(g)。rT3で処置したZDFラットの重量は白抜き四角で表し、プラシーボで処置したZDFラットの重量は黒塗り菱形で表す。
【図23】図23 0日目及び8、16及び21日間の低用量のrT3(2.5μg/100g BW)での処置後のZDFラットの食物摂取(g/日)。rT3で処置したZDFラットの食物摂取は白抜き四角で表し、プラシーボで処置したZDFラットの食物摂取は黒塗り菱形で表す。
【図24】図24 低投薬量rT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットのエネルギー消費。 甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り菱形で表す。
【図25】図25 低投薬量のrT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットの呼吸商(RQ)。甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は黒塗り菱形で表す。
【図26】図26 低投薬量のrT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットの脂肪組織の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図27】図27 低投薬量のrT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットの褐色脂肪組織の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図28】図28 低投薬量のrT3(2.5μg/100g BW)で処置したZDFラットの骨格筋の重量。甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図29】図29 2.5μg/100g BWのrT3で処置したZDFラットにおけるFFA(遊離脂肪酸)血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。rT3で処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。星印(*)は有意差を表す。
【図30】図30 2.5μg/100g BWのrT3で処置したZDFラットにおけるトリグリセリド血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。rT3で処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図31】図31 2.5μg/100g BWのrT3で処置したZDFラットにおけるコレステロール血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。rT3で処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。星印(*)は有意差を表す。
【図32】図32 2.5μg/100g BWのrT3で処置したZDFラットにおけるHDL(高比重リポタンパク質)血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日にラットの静脈血について行った。rT3で処置したラットの結果は白で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図33】図33 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおけるOGTTの3時間後のグルコース濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図34】図34 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおけるOGTT(経口グルコース許容試験)の3時間後のインスリン濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図35】図35 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおける血漿グルコース濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図36】図36 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおける血漿インスリン濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図37】図37 2.5μg/100g BWのrT3で処置したn0STZラットにおける膵臓重量。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。星印(*)は有意差を表す。
【図38】図38 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおけるOGTTの3時間後のグルコース濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図39】図39 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおけるOGTT(経口グルコース許容試験)の3時間後のインスリン濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図40】図40 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおける血漿グルコース濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図41】図41 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおける血漿インスリン濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図42】図42 2.5μg/100g BWのrT3で処置したGKラットにおける膵臓重量。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図43】図43 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおけるOGTTの3時間後のグルコース濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図44】図44 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおけるOGTT(経口グルコース許容試験)の3時間後のインスリン濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図45】図45 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおける血漿グルコース濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図46】図46 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおける血漿インスリン濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図47】図47 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおける膵臓重量。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図48】図48 高投薬量(25μg/100g体重(BW))又は低投薬量(2.5Mg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの成長速度。高投薬量で処置したラットの重量は白抜き四角の曲線で示し、低投薬量で処置したラットの重量は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの重量は黒塗り菱形で表す。
【図49】図49 高投薬量(25μg/100g体重(BW))又は低投薬量(2.5Mg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの食物摂取。高投薬量で処置したラットの食物摂取は白抜き四角の曲線で示し、低投薬量で処置したラットの食物摂取は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの食物摂取は黒塗り菱形で表す。
【図50】図50 極低投薬量(0.25μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの成長速度。極低投薬量で処置したラットの重量は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの重量は黒塗り菱形で表す。
【図51】図51 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのエネルギー消費。高投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は白抜き四角の曲線で示し、低投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り菱形で表す。
【図52】図52 極低投薬量(0.25μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのエネルギー消費。高投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットのエネルギー消費は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットのエネルギー消費は黒塗り菱形で表す。
【図53】図53 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの呼吸商(RQ)。高投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き四角の曲線で示し、低投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は黒塗り菱形で表す。
【図54】図54 極低投薬量(0.25μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの呼吸商。高投薬量の甲状腺ホルモンで処置したラットの呼吸商は白抜き四角の曲線で示し、プラシーボで処置したラットの呼吸商は黒塗り菱形で表す。
【図55】図55 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの脂肪組織の重量。高用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、低用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図56】図56 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの筋肉組織の重量。高用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、低用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図57】図57 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの褐色脂肪組織の重量。高用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は白で示し、低用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図58】図58A及び58B 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのミトコンドリア酸素消費の速度(JO2 (nmol O2/分/mgタンパク質)。高用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費は白で示し、低用量の甲状腺ホルモンで処置したラットの酸素消費はは灰色で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。全ての測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(1.0mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)、− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)、− TMPD/アスコルベート(0.5mM/0.5mM)、及び− TMPD/AsC/DNP:TMPD/アスコルベート/DNP(0.5mM/0.5mM/75μM)。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図58A:JO2は、基質の存在下、1mM ADPの添加後に記録した(状態3)。 図58B:JO2は、非リン酸化呼吸数を決定するためのオリゴマイシンの添加後に記録した(状態4)。
【図59】図59 GPdH酵素の活性。ミトコンドリアのグリセロール3ホスフェートデヒドロゲナーゼの活性は、プラシーボ(黒)、25μg/A 100g rT3(白)又は2.5μg/100g(灰色)から摘出した肝臓由来のミトコンドリアにおいて評価した。
【図60】図60A、60B、60C及び60D 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)又は低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットにおけるトリグリセリド、コレステロール、FFA(遊離脂肪酸)及びHDL(高比重リポタンパク質)の血漿濃度。これら測定は、犠牲の当日(すわわち、21日間の処置後)にラットの静脈血について行った。 高rT3で処置したラットの結果は白で示し、低rT3で処置したラットは灰色で示し、プラシーボで処置したラットは黒で示す。 アスタリスクはp値<0.01に対応する。 図60A:FFA(μmol/l) 図60B:トリグリセリド(TG)(g/l) 図60C:コレステロール(g/l) 図60D:HDL(g/l)
【図61】図61 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの体重。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図62】図62 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの異なる脂肪組織(腹膜後脂肪、精巣上体脂肪、腸間膜脂肪及び皮下脂肪)の脂肪重量。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図63】図63 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットの褐色脂肪組織重量。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図64】図64 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのmGPdH活性。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図65】図65 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのEE。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図66】図66 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置したWistarラットのRQ。皮下ペレットで処置したラットからの結果は白で示し、皮下ポンプで処置したラットからの結果は明るい灰色で示し、腹腔内ポンプで処置したラットからの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒で示す。
【図67】図67 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットの体重。PTU-IOPで処置したラットからの結果は白抜き三角で示し、PTU-IOP及びrT3で処置したラットからの結果は白抜き四角で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒塗り四角で示す。
【図68】図68 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットの食物摂取。PTU-IOPで処置したラットからの結果は白抜き三角で示し、PTU-IOP及びrT3で処置したラットからの結果は白抜き四角で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒塗り四角で示す。
【図69】図69 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットのエネルギー消費。PTU-IOPで処置したラットからの結果は白抜き三角で示し、PTU-IOP及びrT3で処置したラットからの結果は白抜き四角で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒塗り四角で示す。
【図70】図70 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットの呼吸商。PTU-IOPで処置したラットからの結果は白抜き三角で示し、PTU-IOP及びrT3で処置したラットからの結果は白抜き四角で示し、プラシーボで処置したラットからの結果は黒塗り四角で示す。
【図71】図71 高投薬量のrT3(25μg/100g BW)で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットのミトコンドリア酸素消費の速度(JO2 (nmol O2/分/mgタンパク質))。PTU+IOPで処置したラットの酸素消費は灰色で示し、PTU+IOP及びrT3で処置したラットは白で示し、プラシーボで処置したラットの酸素消費は黒で示す。全ての測定は、以下の種々の物質とインキュベートしたミトコンドリア(1.0mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて行った:− GM:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)、− SR:スクシネート/ロテノン(5mM/5μM)、− GMS:グルタメート/マレート/スクシネート(5mM/2.5mM/5mM)、− Palm:パルミトイルカルニチン(55μM)、− Octa:オクタノイルカルニチン(100μM)、− TMPD/アスコルベート(0.5mM/0.5mM)、及び− TMPD/AsC/DNP:TMPD/アスコルベート/DNP(0.5mM/0.5mM/75μM)。 JO2は、基質の存在下、1mM ADPの添加後に記録した(状態3)。
【図72】図72 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットのmGPdH活性。PTU+IOPで処置したラットは灰色で示し、PTU+IOP及びrT3で処置したラットの活性は白で示し、プラシーボで処置したラットの活性は黒で示す。
【図73】図73 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットの褐色脂肪組織重量。PTU+IOPで処置したラットの褐色脂肪組織の重量は灰色で示し、PTU+IOP及びrT3で処置したラットの褐色脂肪組織の重量は白で示し、プラシーボで処置したラットの褐色脂肪組織の重量は黒で示す。
【図74】図74 低投薬量(2.5μg/100g BW)のrT3で処置し、PTU(プロピルチオウラシル)及びIOP(イオパノ酸)で処置したか又は処置しなかったWistarラットのT4ホルモンの血漿濃度。PTU+IOPで処置したラットのT4濃度は暗い灰色で示し、PTU+IOP及びrT3で処置したラットのT4濃度は白で示し、プラシーボで処置したラットのT4は灰色で示す。
【図75】図75 8週間の高脂質高スクロース食餌での飼育及び2.5μg/100g BWのrT3で処置後のWistarラットにおけるOGTTの3時間後のグルコース濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図76】図76 8週間の高脂質高スクロース食餌での飼育及び2.5μg/100g BWのrT3で処置後のWistarラットにおけるOGTT(経口グルコース許容試験)の3時間後のインスリン濃度の曲線下面積。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【図77】図77 8週間の高脂質高スクロース食餌での飼育及び2.5μg/100g BWのrT3で処置後のWistarラットにおける血漿グルコース濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図78】図78 8週間の高脂質高スクロース食餌での飼育及び2.5μg/100g BWのrT3で処置後のWistarラットにおける血漿インスリン濃度の動力学。ラットは2g/kgのグルコースで飼育した。rT3で処置したラットの結果は白抜き三角で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒塗り菱形で示す。
【図79】図79 2.5μg/100g BWのrT3で処置したWistarラットにおける日中及び夜間の肝脂質生成。rT3で処置したラットの結果は灰色で示し、プラシーボで処置したラットの結果は黒で示す。
【実施例】
【0063】
実施例
実施例1:肥満及び異脂肪血症の治療のためのrT3ホルモン又はrT3誘導ホルモンの使用
1.材料及び方法
動物の取り扱い
Laboratory of Fundamental and Applied Bioenergeticsの動物室施設で飼育した成体雄性ラット(Wistar系統)又はCharles-River Laboratories,Domaine des oncins,L'ARBRESLE Franceから購入した成体雄性ラット[(遺伝的に肥満の正常血糖(Zucker又はFa/Fa)又は糖尿病(ZDF)]を個々にステンレススチール製吊り下げケージに入れ、22℃、50±10%相対湿度にて12時間:12時間の明:暗環境で維持した。全ての動物を、標準ラット固形飼料(Safe A04,Villemoisson,France)及び水道水を自由摂取させて飼育した。ボディマス(body mass)及び食物摂取を1週間に2/3回記録し、動物の摂食行動の妨害を最小限にするために、同時に新鮮な食物を提供した。
【0064】
ペレット埋め込み
ジアゼパム4mg/kg及びケタミン100mg/kgの同時腹腔内注射により8週齢ラット(300g±10g)を麻酔した。外科手術(10分間)の間体温を維持するため、動物を暖かい毛布の上に置いた。肩甲骨間の剃毛後、0.5cmの小さな皮膚切開により、10ゲージの精密トロカールでの(rT3又は3',3-T2を含有する)小ペレットの皮下移植を可能にする。ペレット(Innovative Research of America(Sarasota,Florida,USA)製)は、動物に活性製品を効果的で連続的に放出する生分解性マトリクスから構成される。
【0065】
60日間にわたって連続的で定常的な薬物送達を提供するために、3,3',5トリヨードチロニン(逆転T3)又は3-3'ジヨードチロニン(3-3'T2)を異なる用量(5、0.5又は0.1mg/ペレット)で使用して埋め込んだ(これは25μg、2.5μg又は0.5μg/日/100g BWを表す)。
【0066】
間接熱量測定
エネルギー消費及び酸化される基質(炭水化物又は脂質)の性質を間接熱量測定により調べた。この原理は、各動物によるCO2放出(VCO2)及びO2消費(VO2)の決定に基づく。O2は呼吸鎖における基質の酸化(水生成を導く)に全体的に関与する一方、CO2放出は(クレブス回路における)基質の脱カルボキシル化に関係すると考えられる。これら測定により、エネルギー消費(EE)及び呼吸商(VO2/VCO2、RQ)を評価することが可能になる。EEは、安静時及び活動時の絶対エネルギー散逸を表す。RQは、酸化的経路に関与する炭水化物 対 脂質の比を示す相対的測定値である。比1.0は独占的な炭水化物酸化を示す一方、比0.7は独占的な脂質酸化を示す。これら2つの極値の間の各値は、各基質の相対的比率を示す(注記:タンパク質酸化は評価しなかった)。例として、RQは、絶食の間に脂質酸化を示す0.7に接近し、絶食後は逆に、食物摂取及び血漿インスリンの上昇に起因して、RQは増加して炭水化物酸化を示す1に近づく。同様に、高炭水化物食餌で飼育した動物は、高脂質食餌で飼育した動物より高いRQを有する。
【0067】
間接熱量測定システム(Panlab,Barcelona,Spain)は、ケージ、ポンプ、フローコントローラ、バルブ及びアナライザーからなる。これは、4つの別々のケージ中のO2及びCO2濃度並びにエアフローをシーケンシャルに測定するためにコンピュータ制御される。このことにより、4つ同時の決定が可能になる。4つの代謝チャンバーの1つにラットを隔離し、周囲O2及びCO2濃度を周期的にモニターするための参照として室中の空気を使用する。
【0068】
所定の間隔で、コンピュータが信号を送り、データ獲得ハードウェア(Metabolism,Panlab,Barcelona,Spain)で差分のCO2及びO2濃度、流量を記憶して、VCO2、VO2、RQ及びEEの算出を可能にする(Weirの式)。
【0069】
身体組成、血液及び組織サンプリング
実験期間の終時に、ミトコンドリアの代謝に対する全身麻酔の周知の効果を回避するために、動物を断頭により犠牲にした。後の血清代謝物及びホルモンの決定のために、血液サンプルを即時に収集し、血漿を凍結させた。肝臓、筋肉及び脂肪沈着を素早く切り取り、秤量した。肝臓中葉を迅速に凍結クランプした。筋肉(足底筋、ヒラメ筋及び腓腹筋)を、液体窒素中で予め冷却したイソペンタン中で凍結させた。腸間膜脂肪は、胃食道括約筋から直腸の末端までの胃腸管の周囲の脂肪組織からなった。膵臓を区別して除くように特に注意を払った。腰部筋肉に沿った各腎臓の背後の別の沈着として腹膜後脂肪体を採取した。精巣上体脂肪は、精巣上体の上部の脂肪組織からなった。皮下沈着測定のために、各動物の右側で、腹部正中線から脊柱まで、右腰部と第1肋骨との間で皮膚の方片を採取した。肩甲骨間の褐色脂肪組織を取り出し、隣接する筋肉及び白色脂肪組織を切り取った。心室、右腎臓及び脾臓も摘出し、秤量し、凍結させた。
【0070】
ミトコンドリアの単離
肝臓の主要部及び各四頭筋の赤色部分をリンスし、単離培地(250mMスクロース、20mM Tris-HCl及び1mM EGTA-Tris、pH7.4)中に切り刻んで入れた。800gで10分間の遠心分離により核及び細胞片を除去した。次いで、8,000gにて10分間の遠心によりミトコンドリアを上清から単離した。ミトコンドリアのペレットを0.5mlの単離緩衝剤中に再懸濁し、氷上に維持した。ミトコンドリアタンパク質はビシンコニン酸法(Pierce,Rockford,Illinois)により測定した。最終のミトコンドリア懸濁物を氷上に維持し、酸素消費速度の測定に使用した。
【0071】
ミトコンドリア酸素消費
インキュベーションチャンバー中2mlのインキュベーション培地(125mM KCl、10mM Pi-Tris、20mM Tris-HCl、0.1mM EGTA、pH7.2)を充填したClarkタイプO2電極を用いて、ミトコンドリア酸素消費(JO2)の速度を30℃で測定した。全ての測定は、種々の基質:グルタメート/マレート(5mM/2.5mM)単独又はスクシネート(5mM)との組合せ、パルミトイルカルニチン(55μM)及びオクタノイルカルニチン(100μM)のいずれかとインキュベートしたミトコンドリア(肝臓及び骨格筋について、1.0又は0.2mgミトコンドリアタンパク質/ml)を用いて実施した。各基質について、JO2を基質の存在下、単独(状態2)で及び1mM ADPの添加後(状態3)に記録した。オリゴマイシン(1.25μg/mgタンパク質)をミトコンドリア懸濁物に加えて非リン酸化呼吸数を決定した(状態4)。インキュベーション培地は組み込まれた電磁式スターラー及び撹拌棒で定常的に撹拌した。ミトコンドリアの酸化的リン酸化の効率は、リン酸化による酸化に課せられる制御の程度を測定する状態3/状態4比により評価した(呼吸制御比、RCR)。
【0072】
酸化的リン酸化効率
呼吸基質として5mMグルタメート/2.5mMマレート/5mMスクシネート又はオクタノイル-カルニチン(100μM)を用いたATP/O比を、ヘキソキナーゼ(EC 2.7.1.1)+グルコースに基づくADP再生系を用いるATP合成速度(JATP) 対 呼吸数JO2から決定した。JATP及びJO2は、125mM KCl、1mM EGTA、5mM Tris-Pi、20mM Tris-HCl、0.1%脂肪フリーBSA(pH7.2)を含有する培地中で上記のように測定した。JATPは、20mMグルコース、1mM MgCl2及び125μM ATPの存在下でのグルコース6-ホスフェートの形成から決定した。JO2及びJATPは漸増濃度のヘキソキナーゼの添加により調整した(Nogueiraら,J Bioenerg Biomemb.,34:55-66,2002)。
【0073】
酵素活性
呼吸鎖複合体I、II及びIVの比活性の測定は、分光光度学的に実施した。複合体I及びIIの活性を決定するために合計8〜10μgのミトコンドリアタンパク質が必要であり、4μgを複合体IV用に使用した。酵素活性は、還元又は酸化された基質のnmole/分/mgミトコンドリアタンパク質として表した。
【0074】
複合体I(ロテノン感受性NADH-ユビキノンオキシドレダクターゼ、EC 1.6.99.3)の測定:アッセイは、BSA(3.75mg/ml)を含有する10mM KH2PO4/K2HPO4緩衝剤(pH7.5)中、KCN(2mM)及びアンチマイシンA(7.5μM)の存在下にて、電子受容体としてのデシルユビキノン(100μM)及び供給体としてのNADH(200μM)を用いて実施した。次いで、ロテノン(4μM)の添加前及び後に、NADHの酸化を340nmで測定した。このことにより、複合体Iのロテノン感受性比活性の算出が可能となった。
【0075】
複合体II(スクシネート-ユビキノンレダクターゼ、EC 1.3.99.1)の測定:スクシネート-ユビキノンオキシドレダクターゼ活性は、600nmにてDCPIP(100μM)の還元に起因するUV吸収の減少を測定することにより定量化した。測定は、50mM KH2PO4/K2HPO4(pH7.5)を含有する培地中、デシルユビキノン(100μM)、ロテノン(2μM)及びKCN(2mM)の存在下で行った。
複合体IV(シトクロムcオキシダーゼ、EC 1.9.3.1)の測定:アッセイは、50mM KH2PO4/K2HPO4緩衝剤(pH7.0)中、550nmにてシトクロムc(100μM)の酸化を測定することにより行った。
【0076】
クエン酸シンターゼ活性は、150mM Tris緩衝剤(pH8)中、オキサロアセテートジニトロチオ安息香酸及びアセチル-CoAの存在下で、イオンメルカプチドの生成に起因する412nmのUV吸収を測定することにより決定した(Garaitら,Free Rad Biol Med,2005)。
ミトコンドリアのグリセロール3-ホスフェートデヒドロゲナーゼ(mGPdH)活性は、単離したミトコンドリアの3サイクルの凍結-解凍サイクル後の上清について測定した。40μgのミトコンドリアを、9.3μMのアンチマイシンA、5μMのロテノン及びデシルユビキノン(50μM)を含有するKH2PO4/K2HPO4緩衝剤(50mM、pH7.5)中でインキュベートした。mGPDHによる50μMジクロロ-インドフェノール(DCIP)の還元は37℃にて600nmで分光光学的に測定し、酵素活性はμmol.min-1.mg prot-1として表した。
【0077】
シトクロム
ミトコンドリア呼吸鎖のシトクロム含量は、並行実験において、完全に酸化されたシトクロム(フェリシアン化カリウム) 対 完全に還元されたシトクロム(亜ジチオン酸ナトリウムの少数の結晶)のスペクトルを比較することによって測定した。各シトクロムの吸収における他方のシトクロムの主要な最大吸収及び最小吸収に対する寄与が分かれば、4つの未知数を有する4つの連立方程式のセットを導くことができ、各シトクロムの濃度を算出することができる(Williams,Arch Biochem Biophys.;107:537-43,1964)。
【0078】
肝細胞の単離
20〜24時間絶食したWistarラットをペントバルビタールナトリウム(10mg/100g体重i.p.)で麻酔し、肝細胞を、Groenら(Eur. J. Biochem. 122:87-93,1982)により改変されたBerry及びFriend(J. Cell. Biol. 43:506-520,1969)の方法に従って単離した。簡潔には、門脈にカニューレを挿入し、Ca2+フリーのKrebs-Ringer炭酸水素塩緩衝剤(25ml/分;37℃、pH=7.4、95% O2-5% CO2で連続的に曝気)での2分間の順行性灌流を行い、肝臓から血液を除去した。同じ灌流媒体を用いて背側大動脈を通じての10分間の逆行性灌流(25ml/分)を開始した。その後、0.25mg/mlのコラゲナーゼ(タイプIV、Sigma、St. Louis、MO)を補充した100mlのKrebs-Ringer媒体で再循環灌流を行った(40ml/分で20分間)。次いで、肝臓を切除し、定常曝気(95% O2-5% CO2)下で2分間灌流媒体中で振盪させた。最後に、ナイロンガーゼ(孔サイズ120μm)を通過させて細胞懸濁液を濾過し、1.6mMのCa2+を含有するKrebs-Ringer炭酸水素塩緩衝剤で2回洗浄し、次いで1%のBSAを補充した同じ緩衝剤で3回目の洗浄を行った。
【0079】
肝細胞のペリフュージョン
Groenら(Eur. J. Biochem. 122:87-93,1982)により改変されたvan der Meer及びTager(FEBS Lett. 67:36-40,1976)の方法に従って、肝臓細胞のペリフュージョン(perifusion)を行った。肝細胞(225〜250mg乾燥重量)を37℃の15mlペリフュージョンチャンバー中に配置し、連続的に曝気した(95% O2-5% CO2)、0.2%のBSAを含有するKrebs-Ringer炭酸水素塩溶液(pH=7.4)でペリフュージョンした(5ml/分)。実験は、並列に配置した2つのペリフュージョンチャンバー中で二連で行った。チャンバー出口で、ペリフュージョン液のO2含量をClark電極(Yellow Springs Instruments、Yellow Springs、OH)でモニターして、肝細胞懸濁物のO2取り込みを評価した。40分後、O2取込みが定常状態に到達したら、肝細胞を、0.4mMオクタノエートの存在下又は不在下で、漸増量のグリセロール(0.15、0.30、0.60、1.2、2.4、4.8及び9.6mM)でペリフュージョンした。20分間の各定常状態の終時に、その後のグルコース、ラクテート、ピルベート、アセトアセテート及びβ-ヒドロキシブチレート濃度の測定のために、ペリフュージョン液及び細胞サンプルを2分間隔で収集した。サンプルは4℃で貯蔵し、実験の終了後12時間以内に分析した。加えて、細胞内及び細胞外分画のために、300μlの細胞懸濁液をチャンバーからサンプリングした。この目的には、Zuurendonk及びTager(Biochim. Biophys. Acta 333:393-399,1974)により記載されたジギトニン分画法でミトコンドリア及び細胞質ゾル空間を分離した。簡潔には、細胞懸濁液を、2.2ml Eppendorfチューブにおいて、2mMのジギトニン(Merck,Lyon,France)を含有する等張培地(4℃)中に置いた。15秒後、チューブを10,000gにて15秒間遠心分離して、ミトコンドリアを、その下の800μlのシリコンオイル(Rhodorsil 640 V 100,Rhone-Poulenc)層を通過させ250μl HClO4(10%重量/vol)+25mM EDTA中に沈降させた。上清(700μl)を直ぐに取り出し、HClO4(5%重量/vol)で除タンパク質処理し、中和した。次いで、細胞内代謝物(DHAP及びG3P、分光光度法)及びアデニンヌクレオチド含量(HPLC)の決定のために、細胞内含有物を中和して−20℃で維持した。
【0080】
ウェスタンブロット分析
mGPdH定量化のために、以前(23)に記載されたようにポリアクリルアミドゲル電気泳動及びイムノブロッティングを行った。簡潔には、溶解させた肝細胞を、40mMのTris(ヒドロキシメチル)アミノメタン(pH6.8)、1%のSDS、6%のグリセロール及び1%のβ-メルカプトエタノールを含有する200μlの緩衝剤と混合した。次いで、この混合物を100℃に10分間加熱し、5%の濃縮用ゲル及び12.5%の分離用ゲルを用いて一次元のドデシル硫酸ナトリウム(SDS)-PAGEに12時間供した。電気泳動による分離後、定電圧でPVDFメンブレンにタンパク質を移した。タンパク質を移した後、メンブレンを2時間ブロッキングし、次いでmGPDHに特異的なモノクローナル抗体(J. Weitzel博士の厚意による)と2時間インキュベートし、次いで二次抗体(西洋ワサビペルオキシダーゼにコンジュゲートしたヤギ抗マウス免疫グロブリンG(Bio-Rad)、1:10000希釈)に曝露させた。mGPDHは増強化学発光検出法により可視化した(RPN 2106,Amersham)。濃度計でのスキャニングを行い、ブロットのバンドを定量化し、データは、積分光学密度の任意単位として数値的に表した。
【0081】
RNA精製及び逆転写PCR
Tripure RNA単離試薬(Roche Diagnostics)を用いて、組織からトータルRNAを抽出した。260及び280nmでの光学密度を測定することにより濃度及び純度を確かめた。1%アガロースゲル電気泳動(Eurobio)により完全性を検証した。β-アクチンを参照として使用する半定量逆転写ポリメラーゼ連鎖反応(RT-PCR)によりmRNA濃度を測定した。プライマー配列を表1に示す。各標的mRNAについて、最終容量25μL中の100UのM-MLV Reverse Transcriptase(Promega)、5μLのM-MLV RT 5×緩衝剤、20UのRNasinリボヌクレアーゼインヒビター、12ピコモルのデオキシヌクレオシド三リン酸及び15ピコモルの特異的アンチセンスプライマーを用い、0.1μgのトータルRNAからRTを実施した。反応は、70℃にて5分間(RNA及びアンチセンスプライマー)、次いで42℃にて60分間(全ミックス)、続いて70℃にて15分間からなった。冷却後、5μLをPCR反応に使用した。5μLのRT媒体を、6ピコモルのMgCl2、8ピコモルのデオキシヌクレオシド三リン酸、2.5UのREDTad DNAポリメラーゼ(Sigma)、15ピコモルの対応するアンチセンスプライマー及び22.5ピコモルのセンスプライマーを含有する45μLのPCRミックス(5μL 10×REDTaq PCR緩衝剤)に添加した。PCR条件は、94℃にて2分間、続いてUCP3、UCP2及びβ-アクチンについてそれぞれ28サイクル、35サイクル又は18サイクル(1サイクル=94℃にて1分間、60℃にて1分間、72℃にて1分間)であった。PCRを72℃にて10分間で終了した。生成物を、臭化エチジウムで予め染色した2%アガロースゲル上で分析した。相対的バンド強度の定量のために、Camera DC120(Kodak)で写真を撮影し、Kodak Digital Science 1D 2.0(Kodak Scientific Imaging System)を用いて、各サンプルについてβ-アクチンに対する各標的の比を決定した。
【0082】
2.結果
図1(A及びB)に示されるように、コントロール(プラシーボ処置)Wistarラット身体は、21日間で150g(すわわち、約40%の体重増加)の正常な成長速度を示している。rT3(図1A)又は3,3'-T2(図1B)のいずれかで処置した動物は体重増加を示さず、21日後のボディマスは、初期値と有意には異なっていなかった。
このことは、これら若齢成体動物における正常体重増加の非常に強力な防止を示している。
【0083】
図2(A及びB)に示されるように、プラシーボ群の食物摂取は、実験期間にわたって約30gの食物/日で安定であった。両処置動物群は類似の変化を示した。rT3(図1A)又は3,3'-T2(図1B)を含有するペレットが皮下に導入された直後(4日目から7日目まで)の食物摂取の減少、次いでプラシーボ動物の増加と比較してより高い値を示す食物摂取の増加。
それ故、両処置動物群の体重減少は、食物摂取の増加と関連していた。
【0084】
ラットのエネルギー消費(EE)は間接熱量測定(材料及び方法の章を参照)により評価し、値は24時間(=1440分間)にわたって分析した。プラシーボ(図3A及び3B)、rT3(図3A)又は3,3'-T2(図3B)で処置した全ての動物群は、これらげっ歯類の当然の古典的な夜行性の活動及び摂食行動並びに対照的な昼間の不活発という昼夜変化を示した。両処置ラット群は、コントロール値の25〜30に達するエネルギー消費の劇的な増加を示した。
この非常に重要な結果は、代謝消費が2つの処置によって夜間及び昼間の両方で大いに増加することを示している。
【0085】
呼吸商(RQ)は、放出二酸化炭素と消費酸素との間の比VCO2/VO2と定義される。この比が酸化される基質の起源(炭水化物 対 脂質)を示すことは概して受け容れられている。この値は炭水化物が専らエネルギー源であるとき1に等しくなり、脂質が唯一のエネルギー基質であると0.7に等しくなる。
【0086】
EEについて既に示したように、RQもまた昼夜で変化する(図4A及び4B)。RQは、夜間、動物が摂食し、したがってより多くの炭水化物を酸化しているときにはより高くなる。逆に、昼間は、RQはより低くなり、脂質が優勢な基質である絶食状態を示す。rT3(図4A)に関して、RQは、昼間ではプラシーボとほとんど同じであり、夜間においてより高いように見える。このことは、より高い割合の炭水化物又は(より可能性が高いのは)炭水化物からの正味の脂質合成のいずれかを示し得る(1より高いRQ値に至る)。これら動物により表される値は、給餌状態の間の基質酸化及び基質(脂質合成)の合計である。3,3'-T2群(図4B)では、夜間の変化はrT3について記載した変化とほとんど同じであった。このこともまた、給餌状態の間の正味の脂質合成を示している可能性が最も高い。しかし、昼間又は暗くなった直後には、RQはプラシーボのRQより低いようであり、これら絶食動物におけるより高い脂肪酸化を示している。
【0087】
rT3又はプラシーボで処置したラットの身体組成の変化は、絶対値(g)又はトータルボディマスのパーセンテージの両方として提示する。なぜならば、この2つの動物群は3週間後に同じ重量を示さなかったからである(図1Aを参照)。
【0088】
腹膜後、腸間膜及び皮下の脂肪重量は、プラシーボと比較して、rT3群で有意に低かった(p<0.01)が、精巣上体重量は異なっていなかった(図5A)。この差は、データを絶対値で表わそうが相対値で表わそうが非常に実質的であった。興味深いことに、筋肉重量は全く影響を受けなかった(図5B)一方で、褐色脂肪組織(代謝効率及び熱生成に関与することが知られている組織)は、rT3処置動物で有意に増加した(図5C)。
これら結果は、rT3処置後のボディマスの減少が脂肪重量の損失に純粋に起因し、除脂肪ボディマスは影響されないことを明確に示している。
【0089】
類似の結果が3,3'-T2(図6A及び6B)で得られ、脂肪重量(有意に減少)及び除脂肪ボディマス(影響なし)に対する3,3'-T2の効果に関して同じ結論への到達を導いた。興味深いことに、褐色脂肪組織もまた処置によって有意に増加した。
【0090】
肝臓ミトコンドリア呼吸鎖のレベルで、酸化とリン酸化との間の共役の効力に対する両処置(rT3又は3,3'-T2)の効果を評価した(図7A及び7B)。非リン酸化性(すわわち、オリゴマイシンの存在下)のミトコンドリアの呼吸数を、異なる処置動物群(rT3、図7A及び3,3'-T2、図7B)対プラシーボで測定した。両方の場合(rT3及び3,3'-T2)で、呼吸がプラシーボに比較して遥かにより高かった。このことは、処置に起因してより効率性が低い共役を示している。異なる条件グルタメート/マレート、スクシネート-ロテノン、グルタメート/マレート/スクシネート、パルミトイルCoA、オクタノイルCoAは、呼吸鎖に提供される異なる基質を示している。
【0091】
図7C及び7Dは、種々の基質供給でリン酸化条件(すわわち、ADPの存在下)にて達成される肝臓ミトコンドリアの最大呼吸数を表す(上記図7参照):TMPDアスコルベートは、DNPによる非共役状態でないか又は非共役状態である複合体4(シトクロムcオキシダーゼ)を調べる。概略的に、全ての条件で、rT3(図7C)又は3,3'-T2(図7B)のいずれかでの処置は、非常に有意な呼吸数増加に関与した。このことは、処置が全ての基質(脂肪酸を含む)について最大呼吸容量を増加させたことを示している。
【0092】
非常に興味深いことに、筋肉ミトコンドリアで完全に異なる結果が得られた。事実、rT3及び3,3'-T2は共に、非リン酸化状態(状態4、図8A及び8B)及びリン酸化状態(状態3、図8CB及び8D)の両方に実質的に影響しなかった。実際、パルミトイル-及びオクタノイル-CoAを除き、減少した呼吸を導く幾らかの僅かな効果が存在した。
よって、このことは、rT3及び3,3'-T2の両方が肝臓ミトコンドリアに対して強力な効果を示す(酸化的リン酸化効率の減少及び最大呼吸容量の増加を導く)が、薬剤が全ての組織に対して投与された(ペレットからの皮下徐放)という事実にもかかわらず、筋肉ミトコンドリアに対しては効果はほとんど見出せなかったことを示した。
【0093】
図9A及び9Bは、図7A及びCに示されるものと同様なデータを示す。しかし、動物は10倍低いrT3用量で処置した(図7中、250μg/kgの代わりに25μg/kg)。本質的に同様な知見が得られたが、より低い程度であった。しかし、減少した効率及びより高い最大呼吸容量は有意であることが判る。
【0094】
図10は、グルコース(図10A)、トリグリセリド(図10B)、コレステロール(図10C)、遊離脂肪酸(図10D)及びHDL(図10E)(ラットはLDLをほとんど有していない)の血漿濃度に対する2つの処置の効果を示す。両処置は、これら正常動物(非糖尿病動物)において、空腹時グルコースを僅かに増加させた。このことは、これら処置のいずれもが可能性のある血糖降下効果に関与しないことを示している。興味深いことに、トリグリセリド及びコレステロールは、プラシーボと比較して、rT3及び3,3'-T2で有意に低かった。間接熱量測定で得られたデータによって既に示唆されているとおり、血漿脂肪酸は、高率の脂肪分解及び脂肪酸酸化を示す動物で観察されたように、より高かった。
【0095】
結論として、ボディマスで観察された劇的効果は脂肪重量の減少により完全に説明される一方で、除脂肪ボディマス(筋肉重量)は影響されないようである。食物消費の増加にもかかわらず観察されるこの効果は、間接熱量測定により証明されたエネルギー消費の増加に起因する。これら動物の正常食餌は脂質含量(4〜5%)がむしろ乏しいので、脂肪酸化の増加は、脂肪重量の強力な減少によって示されるように脂肪貯蔵の消費によって達成され、恐らくは消費性経路であるデノボ脂質生成(食餌期間に観察されたより高いRQを説明するかもしれない)によっても達成される。エネルギー代謝(間接熱量測定)の全体的増加に関するデータは、肝臓単離ミトコンドリアで得られたデータと非常に良好に一致し、このことは、呼吸鎖及びATP合成のレベルで、有意により高い最大呼吸容量に関連するエネルギー浪費プロセスが恐らく存在していることを示している。最も驚くべきことには、これら効果のいずれもが筋肉ミトコンドリアでは観察されないことである。このことは、浪費プロセスが筋肉重量より肝臓に大きく影響し、脂質酸化に関わることを示している。
【0096】
よって、全体として、rT3及び3,3'-T2は共に脂質酸化及びエネルギー消費を亢進して、脂肪組織のみで重量の顕著な減少を導く。
【0097】
実施例2:肥満治療に対するrT3ホルモンの投与の比較
1.材料及び方法
材料及び方法は実施例1に記載したものである。
動物
Wistarラットをこれら研究で使用した。
投与
毎日の腹腔内注射(IP)(25μg/100g BW)、毎日の皮下注射(SC)(25μg/100g BW)、又はラット食餌に含ませた経口投与(25μg/100g BW)によりrT3ホルモンでWistarラットを処置した。ペレット(25μg/100g BW)を使用して連続及び定常投与を行った。
【0098】
2.結果
ラット体重におけるrT3投与の効果を比較するために、Wistarラットを、8日間、連続及び定常用量のrT3(25μg/100g BW/日)を拡散するペレットにより処置するか、又はrT3の腹腔内若しくは皮下注射(1注射当たり25μg/100g BW)で毎日処置するか、又は経口投与(1摂取あたり25μg/100g BW)により処置した。
【0099】
図11に示すように、連続及び定常投与のrT3のみが8日間の処置後にラット体重(図11A)を減少させ、同じ投薬量のrT3の腹腔内注射(図11B)も皮下注射(図11D)も経口投与(図11C)も動物重量に対する影響を有しない。
【0100】
これらデータを確証するために、個々の脂肪組織重量を4つの異なるrT3投与で処置した動物で測定した。全体重量について前記で観察されたように、連続及び定常rT3投与で処置した動物のみが白色脂肪組織重量の有意な減少を有する(図12A)一方、注射(図12B及び12D)又は経口投与(図12C)は効果を有しない。筋肉重量(図14A〜D)はいずれの投与でも変化せず、褐色脂肪組織重量は、連続及び定常用量のrT3で処置したラットにおいてのみ有意に上昇している(図13A)。
【0101】
処置動物の代謝に対する効果を確証するために、EEを24時間にわたって間接熱量測定により評価した。図15は、連続及び定常用量のrT3で処置したラットのみが代謝消費の上昇を有する(図15A)一方、その他の経路の投与は処置ラットの代謝を改変しない(図15B〜D)ことを示す。同様に、連続及び定常用量のrT3で処置したラットのRQのみが900分後にプラシーボ処置動物とは有意に異なる(図16A)。
したがって、これら全てのデータにより、連続及び定常投与のrT3のみが、白色脂肪組織のみに影響することによって、脂肪酸代謝の増加を誘導することによって、8日間の処置後に、動物のボディマスを有意に減少させることができることが証明される。
【0102】
非連続処置が結果を与えることができない理由を理解するために、注射後、24時間、動物において循環性rT3を測定した。図17のグラフは、腹腔内注射したrT3が迅速に分解し、5時間後には注射用量と比較して5倍減少することを示す。経口投与は、腹腔内注射後に観察される濃度と同様なrT3濃度を血中で得ることが決してできない。皮下投与が最良の投与経路であるようである。なぜならば、rT3濃度が、長時間、血中に注射された濃度と実質的に同じままであるからである。しかし、にもかかわらず、rT3は24時間後にほぼ完全に分解される。
【0103】
実施例3:糖尿病の治療のためのrT3ホルモン又はrT3誘導ホルモンの使用
1.材料及び方法
材料及び方法は実施例1に記載したものである。
動物
ラットは、遺伝的肥満の正常血糖ラット(Zucker又はFa/Fa)、10〜11週齢糖尿病ラット(ZDF)又は遺伝的非過体重糖尿病(2型糖尿病)ラット(Goto-Kakizaki(GK)モデル)、非過体重糖尿病(2型糖尿病)ラットn0STZモデル又は8週間の高脂質高スクロース食餌を与えた正常Wistarラット(インスリン抵抗性の栄養性誘導のモデル)であった。
【0104】
血液採取
一晩(18時間)の絶食期間の後、この研究の当日に、覚醒ラットにおいて尾静脈から血液採取を行う。
【0105】
血液パラメータ
以下の生化学的パラメータを分析した:血糖、インスリン血、HbA1c、TG及びコレステロール。
甲状腺刺激ホルモン(TSH)及びチロキシン(T4)を、ラット標準(TSH及びT4についてそれぞれ、RPA 554 Amersham bioscience,RIA FT4-immunotech)を用いるラジオイムノアッセイにより測定した。
【0106】
インスリンレベルは市販キット(Linco Research)で決定した。
グルコース及び3-ヒドロキシブチレート(3-HB)は酵素的に測定し、非エステル化脂肪酸(NEFA)は熱量測定アッセイ(Wako Chemicals)により測定した。
トリグリセリド及びコレステロールは、古典的なルーチン自動装置により測定した。
【0107】
2.結果
ZDFモデル:糖尿病高脂肪ラット
ZDF糖尿病ラットは、抗糖尿病治療研究用の良好なモデルである。なぜならば、これら動物は、中程度の肥満及び膵臓変質の組合せに起因して一生の間、重大な高血糖症が進行するからである。現在のところ、高血糖症が確立すると治療は有効でない。
次いで、ZDFラットを低用量のrT3(2.5μg/100g BW/日)で21日間処置し、血糖、インスリン血を8、16及び21日後に測定した。
【0108】
図18は、プラシーボで処置したラットと比較して、低用量のrT3で処置したラットにおける血糖の大幅な減少を示す。この減少は8日後に出現し、21日間にわたって維持される。血糖の減少に相関して、インスリンレベルはrT3で処置したラットで維持される一方、インスリンレベルは、膵臓変質を反映して、実験開始から開始の21日後まで徐々に減少する(図19)。
【0109】
驚くべきことに、rT3で処置したラットにおけるインスリンレベルは膵臓重量の増加と関連する(図20)。
これらデータは、rT3が、恐らくβ-膵臓細胞自己再生に関与する機序により、ZDFラットの導入された糖尿病疾患を逆転させることができることを示している。このように、ZDFラットは血糖を調節する能力を回復する。
【0110】
ZDFはまた、高トリグリセリド血症を有する高脂肪動物でもある。そのため、rT3処置の効果もまた評価した。
図21は、一方でrT3で処置したラットがプラシーボで処置したラットより痩せており、他方で脂肪重量がrT3処置動物において減少していることを示す。
【0111】
事実、図22に示されるように、rT3ホルモンで処置した場合、動物重量は減少する;この重量減少は食欲の喪失には関連していない(図23)。
図24は、rT3で処置したZDFラットのエネルギー消費がプラシーボ処置ZDFラットと比較して上昇していることを示す。更に、RQもまた、rT3で処置したZDFラットにおいて、プラシーボ処置ZDFラットと比較して上昇している(図25)。
【0112】
興味深いことに、rT3-処置動物の全体重量が減少している場合でさえ、ZDFラットの白色脂肪組織は、図26に示されるように、rT3処置によって影響されないようである。しかし、前記で示されるように、EEの増加は、褐色脂肪組織重量の増加と関連している(図27)。
また、筋肉重量はrT3処置によって影響されない(図28)。
【0113】
脂質代謝をより良く理解するために、遊離脂肪酸(FFA、図29)、トリグリセリド(図30)、コレステロール(図31)及び高比重リポタンパク質(HDL、図32)の脂質プロフィールを分析した。
rT3で処置したラットにおいて、ZDF血中のFFAは有意に上昇している(図29)一方で、トリグリセリドは有意に減少している(図30)。これらラットは僅かにコレステロール血症であるが、コレステロールレベルはrT3処置によって影響されない。
【0114】
結論として、ZDFラットに投与した低用量のrT3は二重の効果を有する:
− rT3は、エネルギー消費及びRQの上昇並びに褐色脂肪組織重量の増加と相関して、処置動物の全重量を減少させるが、白色脂肪組織重量を有意には減少させない。エネルギー消費は上昇し(+50%)、RQ値は酸化基質が増加していることを意味している。RQ値のこの増加は、それが全体のグルコース酸化を示しているので、逆説的である。しかし、ラット栄養補給における低量の脂質のために、ラットがグルコースを脂質に変換し(脂質生成)、次いで新たに形成された脂質が分解される(脂肪分解)。これらデータは脂肪酸プロフィールによって裏付けられる。このように、ラットが身体作りのためにエネルギーを燃焼し、蓄えを分解する。このことがラット重量の全体的減少を誘導する。この仮説は、図79に示される結果(rT3で処置したWistarラットにおいて肝脂質生成がほぼ4倍増加している)によって強力に証明される。
【0115】
− rT3は膵臓細胞増殖に対して影響を有する。膵臓細胞増殖は、ZDFラットにおいてインスリンの遊離を可能にし、次いで高グルコース血中濃度を矯正し得る。これは、甲状腺ホルモンが膵臓細胞増殖に関与していることを、初めて示すものである。
【0116】
n0STZモデル:糖尿病ラット
N0STZラットは、中程度のインスリン抵抗性を有する糖尿病性非肥満であり、誕生直後にストレプトゾトシン(この製品は膵臓細胞を殺傷する)の注射を受けている。
これら動物のグルコース抵抗性を、経口グルコース許容試験(OGTT)により試験した。動物は2g/kg BWのグルコースで飼育し、血中のグルコース濃度及びインスリン濃度を測定した。
【0117】
低用量のrT3(2.5g/100g BW)で処置したラットにおいて、OGGTの3時間後、グルコース濃度の曲線下面積(AUC)は、プラシーボで処置したラットと比較して、有意に減少している(図33)。逆に、同じ時点でのインスリン濃度のAUCは、rT3で処置したラットにおいて、プラシーボで処置したラットと比較して大幅に上昇している(図34)。これらデータは、rT3処置が、インスリン血中濃度を上昇させることにより、血中グルコース濃度を減少させることができることを示している。
【0118】
これら結果を確証するために、OGTTの動力学曲線を20分間実施した。次いで、グルコース濃度(図35)及びインスリン濃度(図36)をこの期間に測定した。
図35において、rT3で処置したラットは、OGTT後最初の5分間に、血中グルコース濃度をより迅速に調節する。グルコース濃度のこの制御は、rT3で処置した動物におけるインスリン濃度の高増加と相関している(図36)。プラシーボで処置したn0STZラットでは、インスリン応答がない(図36)。
【0119】
したがって、rT3処置は、グルコース調節機能不全を矯正することができる。OGTTにおいて観察されるインスリンレベルの増加は、rT3処置動物の膵臓重量の増加と関連する(図37)。
次に、rT3処置は膵臓増殖を調節する。
【0120】
GKモデル:糖尿病ラット
GKラットは、中程度のインスリン抵抗性を有する糖尿病性非肥満であり、コントロールラットより少ない膵臓細胞を有する。膵臓細胞はインスリン分泌の効率も低い。
これら動物のグルコース抵抗性を、経口グルコース許容試験(OGTT)により試験した。動物は2g/kg BWのグルコースで飼育し、血中のグルコース濃度及びインスリン濃度を測定した。
【0121】
低用量のrT3(2.5g/100g BW)で処置したラットにおいて、OGGTの3時間後、グルコース濃度の曲線下面積(AUC)は、プラシーボで処置したラットと比較して、有意に減少している(図38)。相関して、同じ時点でのインスリン濃度のAUCは、rT3で処置したラットにおいて、プラシーボで処置したラットと比較して大幅に上昇している(図39)。これらデータは、rT3処置が、インスリン血中濃度を上昇させることにより、血中グルコース濃度を減少させることができることを示している。
【0122】
これら結果を確証するために、OGTTの動力学曲線を20分間実施した。次いで、グルコース濃度(図40)及びインスリン濃度(図41)をこの期間に測定した。
図40において、rT3で処置したラットは、OGTT後最初の5分間に、血中グルコース濃度をより迅速に調節する。グルコース濃度のこの制御は、rT3で処置した動物におけるインスリン濃度の増加と相関している(図41)。プラシーボで処置したGKラットでは、インスリン応答がない(図41)。
【0123】
したがって、rT3処置は、グルコース調節機能不全を矯正することができる。OGTTにおいて観察されるインスリンレベルの増加は、rT3処置動物の膵臓重量の増加と関連する(図42)。
次に、rT3処置は膵臓増殖を調節する。
【0124】
Wistarモデル:非糖尿病ラット
Wistarラットは、インスリン抵抗性を有さない非糖尿病性非肥満であるが、ヒトと同様に、年齢と共に僅かに肥満及びインスリン抵抗性となる傾向にある。しかし、これは、「生理学的」であると考えられている。
これら動物のグルコース抵抗性を、経口グルコース許容試験(OGTT)により試験した。動物は2g/kg BWのグルコースで飼育し、血中のグルコース濃度及びインスリン濃度を測定した。
【0125】
低用量のrT3(2.5g/100g BW)で処置したラットにおいて、OGGTの3時間後、グルコース濃度の曲線下面積(AUC)は、僅かに減少しているが、プラシーボで処置したラットと比較して有意ではない(図43及び45)。対照的に、同じ時点でのインスリン濃度のAUCは、rT3で処置したラットにおいて、プラシーボで処置したラットと比較して有意に低下している(図44及び46)。これらデータは、rT3処置が、インスリン感受性を増大させることができることを示している。興味深いことに、rT3群において、プラシーボと比較して、膵臓重量の中程度であるが有意な増加が認められる。
【0126】
実施例4:肥満治療に対するのrT3ホルモンの用量の比較
1.材料及び方法
材料及び方法は前記の実施例に記載したものである。
【0127】
2.結果
Wistarラットを、高用量(25μg/100g BW)、低用量(2.5μg/100g BW)又は極低用量(0.25μg/100g BW)のrT3で処置した。
図48は、高用量又は低用量のrT3で処置したWistarラットにおいて、プラシーボで処置したラットとの比較で、食欲を改変することなく、体重が減少することを示す(図49)。図50に示した同様のデータは、極低用量のrT3もまた動物の体重を減少させることを示している。
20日間の処置後、極低用量のrT3及び高用量のrT3により同様の結果が得られる。
【0128】
rT3の代謝影響についての前記のデータに関して、高用量、低用量及び極低用量のrT3で処置したWistarラットのエネルギー消費を評価した。
図51に示すように、高用量のrT3は、WistarラットのEEを、低用量(プラシーボで処置したラットのEEと全く同様である)と比較して、有意に上昇させる。極低用量のrT3では低用量と同様の結果が得られる(図52)。
【0129】
RQに関して、高用量及び低用量のrT3で処置した動物は、プラシーボと比較して、RQが増加する(図53)一方で、極低用量のrT3で処置した動物は、プラシーボと比較して、RQが減少する(図54)。
【0130】
したがって、高用量、低用量及び極低用量のrT3の代謝関与は異なるが、全ての用量の甲状腺ホルモンが処置動物のボディマスに対して有意な効果を有する。
結果として、0.25μg/100g BW〜25μg/100g BWの投薬量は、肥満の治療に使用することができる。
【0131】
図55は、高用量又は低用量のrT3での処置の白色脂肪組織重量に対する効果を比較している。低投薬量のrT3は、高用量のrT3での処置より低い効率で脂肪重量を減少させる。同様に、高投薬量のrT3は褐色脂肪組織の高増加を誘導する一方で、低用量は中程度の増加を誘導する(図57)。
次に、種々の投薬量のrT3は筋肉組織重量に影響しない(図56)。
【0132】
図58A及びBは、ミトコンドリアのリン酸化(状態3、図58A)及び非リン酸化(状態4、図58B)呼吸数に対する高(25μg/100mg)及び低(2.5μg/100mg)rT3の効果を比較している。rT3の投与は、状態3及び状態4の両方の呼吸数の用量依存性増加に関連し、試験した基質のほとんど全てがその経路の全体的な効果を示した。
同様に、ミトコンドリアのグリセロール-3-ホスフェートデヒドロゲナーゼの酵素活性は、両方の処置で用量依存的に有意に減少した。
【0133】
高用量又は低用量のrT3で処置したWistarラットの脂質プロフィールに関して、高投薬量は、低投薬量より良好な効率で、FFAの遊離(図60A)及びトリグリセリドの分解(図60B)を刺激する。
グリセロール(図60C)及びHDL(図60D)について、高及び低投薬量はこれら脂質の減少に対して同じ効果を奏する。
これら全てのデータは、高投薬量、低投薬量及び極低投薬量のrT3が体重の減少に適切であることを証明する。
【0134】
実施例5:肥満治療に対するrT3ホルモンの投与の比較
1.材料及び方法
連続皮下放出(scペレット)の効果は、同じ用量の経口又は腹腔内非連続投与より、有意に優れていることが示された。しかし、皮下又は腹腔内のいずれかに埋め込まれた浸透圧ポンプによるrT3の連続投与を、皮下ペレットにより投与される参照処置と比較することによって、投与部位の役割を更に調べた。Wistarラットをプラシーボ、皮下ペレット又は皮下若しくは腹腔内浸透圧ポンプで21日間処置した。rT3は連続的に投与した(2.5μg/100g)。
【0135】
2.結果
Wistarラットを、3つの異なる投与法による低用量のrT3の連続及び定常投与により試験した:
− 皮下ペレット、
− 皮膚の下に配置した浸透圧ポンプ、及び
− 腹腔内に配置した浸透圧ポンプ。
これら3つの投与の結果を21日後に分析した。
【0136】
図61は、全ての投与法が処置動物のボディマスの有意な減少を誘導することを示している。処置群に有意差がないことが証明できた。
図62は、全ての投与法が白色脂肪組織重量の有意な減少を誘導することを示している。処置群間に幾らかの軽微な差を認めることができた。しかし、全体の効果は全く同様であった。
【0137】
図63は、褐色脂肪組織がペレット及び皮下ポンプによって、腹腔内ポンプポンプより有意に増加しているが、全ての処置が効果的であったことを示している。
図64は、ミトコンドリアのGPdH活性が3つの投与法により上昇し、ペレット投与でより上昇することを示している。再度、全ての処置が効果的であった。
【0138】
図65及び66はそれぞれ、3ヶ月の投与で処置した動物のエネルギー消費及び呼吸商を示している。
全ての方法により、同じ結果、すわわち重量減少に関連した代謝活性の増加が得られる。
【0139】
したがって、連続及び定常用量のrT3の試験した全ての投与法により、肥満の治療に使用するために満足できる結果が得られる。これら結果は、投与速度が効力に関して注射部位(sc 対 ip)より重要であったことを示す。
【0140】
実施例6:連続及び定常rT3処置の作用における内因性甲状腺ホルモンの機能
1.材料及び方法
前記の全ての実施例により、肥満、異脂肪血症及び糖尿病の治療についてのrT3投与の効果が証明された。
処置の作用態様を理解するために、Wistarラットを、甲状腺ホルモンの合成及び脱ヨード化を阻害する薬品PTU及びIOPで処置した。
【0141】
動物(Wistar)を、全ての脱ヨウ素酵素(タイプI、II及びIII)の完全な阻害を誘導するプロピル-チオウラシル(PTU、飲料水中)及びイオパノ酸(IOP、週1回のsc注射)による処置に供した。この処置は、重篤な甲状腺機能低下状態に関与する。加えて、この処置は、脱ヨード化によって全ての甲状腺ホルモンの末梢代謝を損なう。幾つかのラットを、rT3の皮下投与(2.5μg/100g)にも供した。3群はコントロール、PTU+IOP及びPTU+IOP+rT3から構成され、実験期間は3週間であった。
【0142】
2.結果
図67は、PTU+IOP処置が動物重量の大幅な減少を誘導することを示す。更に、rT3の追加は、PTU-IOPにより誘導される減少を増強する。rT3の有り無しで、PTU-IOP処置ラットの食欲は変化がないままであることに留意することが重要である(図68)。
【0143】
次に、PTU及びIOPは甲状腺ホルモンの内因性合成を阻害するので、このデータは、処置に使用したrT3が、投与したホルモン(rT3)の代謝の介入も他の内因性ホルモンの代謝の介入もなしで作用することを示唆している。これら仮説を確証するために、PTU+IOPで処置したか又は処置しなかったラットにおいてT4濃度をアッセイした。図74に示すように、ラットをPTU+IOPで処置すると、T4ホルモンが動物の血漿からなくなる。
【0144】
図69及び70は、EE及びRQがそれぞれ、動物をPTU+IOPで処置したときにはプラシーボと比較して減少するが、rT3を投与したときには上昇することを示す。これらデータは、投与したrT3の内因非依存性を確証する。
図71及び72は、PTU+IOP投与により誘導される重篤な甲状腺機能低下がグルタメート/マレート(GM)、スクシネート(S)及びグルタメート/マレート/スクシネート(GMS)による状態3呼吸数(図71)及びmGPdH活性(図72)の減少に関与したことを示す。rT3(2.5μg/100g)による処置は、PTU+IOPの効果を矯正する(状態3)か、又は刺激する(mGPdH)かのいずれかである。
【0145】
褐色脂肪組織に関して、PTU+IOP処置はエネルギー性脂肪組織の重量を上昇させるが、この重量はまたラットをrT3で処置しても上昇する。
結論として、これら全てのデータは、rT3投与が、内因性甲状腺ホルモンの介入なしで、rT3の更なる脱ヨウ素化なしに、処置動物のボディマス及び代謝活性に対して効果を有することを証明する。
【0146】
実施例7:高脂肪高スクロース食餌
栄養的に誘導したインスリン抵抗性の臨床的に該当する状態は、高脂肪高スクロース食餌(HF)として知られている。したがって、OGTT試験へのグルコース及びインスリン応答に対するrT3の効果を調べた。Wistarラットを、45.5%脂肪(38%ラード及び7.5%ダイズ油)及び34%炭水化物(スクロースとして25%)を含有する食餌で8週間飼育した。OGTTを上記のように行った。
【0147】
図75は、rT3(2.5μg/100g)が曲線下面積(AUC)として表される血中グルコースの有意な低下(図75)又は時間に伴う血漿濃度の変化(図77)に関与したことを示す。並行して、インスリンレベルは、AUC(図76)及び時間に伴う変化(図78)の両方について有意に低下した。
これら結果は、インスリンの抵抗性が不適切な食餌に起因する状況における、インスリン感受性の増大についてのrT3での処置の効果を確証する。
【0148】
実施例8:デノボ肝脂質生成
まとめると、rT3の効果は、遊離脂肪酸を増加させない一方で、ボディマスの減少に関連するエネルギー消費の増加、食物摂取に大きな変化が無いこと、及び血中グルコース及びトリグリセリドレベルの減少を示す。このことは、(単離ミトコンドリアで見出されているように)脂肪酸酸化が増加することを示す。しかし、間接熱量測定によるグルコース 対 脂肪酸酸化の全体的評価は一義的ではない。なぜならば、RQは時に増加し、時に減少するからである。1つの仮説は、げっ歯類固形飼料の低脂肪含量という状況では、脂肪酸が、酸化の前に、先ず炭水化物から合成されなければならないというものである。実際、これは、脂肪酸酸化が、例えば高用量のrT3により、強力に活性化されるとき、特に該当し得る。
【0149】
この点を確証するため、安定なアイソトープを使用することにより内因性トリグリセリド合成の速度を評価した。
図79は、rT3が脂質の内因性(肝臓)合成の強力な刺激に関与することを示す。興味深いことに、この効果は、昼間、すわわち動物が内因性合成の生理学的なゴールである貯蔵ではなく脂質酸化の傾向にある絶食状態で最大である。
これら結果は、rT3が脂肪分解、脂質酸化及び脂質生成の同時活性化(基礎エネルギー消費の相当な増加を説明し得る無益な循環を生じる)に関与し得ることを確証する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
活性物質として、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンを、医薬的に許容され得るビヒクルと組み合わせて含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
前記活性物質がrT3である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
約0.01μg/kg/日〜約250μg/kg/日、特に約0.01μg/kg/日〜約25μg/kg/日、特に約0.1μg/kg/日〜約15μg/kg/日の活性物質、更に特には約0.1μg/kg/日〜約5μg/kg/日の活性物質、最も特には約0.1μg/kg/日〜1μg/kg/日の活性物質の放出に適切な形態の請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
投薬単位基準で、約5μg〜約1.5gの活性物質、特に約75mg〜約750mgの活性物質を含んでなる請求項1又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
− 高血糖、インスリン抵抗性、β膵臓細胞不全又は関連する病状、
− コレステロール及び/又はトリグリセリドの血漿濃度が正常濃度より高い病状、異脂肪血症、又は
− 過体重に関連するか又は脂肪沈着の過剰に関連する病状
の治療用を意図した薬剤の製造のための、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンの使用。
【請求項6】
糖尿病、特に1型若しくは2型糖尿病、β膵臓細胞不全、肥満、過体重又は関連する病状、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、異脂肪血症、アルコール肝炎性及び非アルコール肝炎性皮脂欠乏症、アテローム性動脈硬化症、代謝異常に関連するヘパトパシー、胆嚢疾患、皮下脂肪の沈着、特にセリュライト、又は血管運動神経性鼻炎の中から選択される病状の治療用を意図した薬剤の製造のための請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記ホルモンがrT3である請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
前記医薬的に許容され得るビヒクルが医薬組成物を製造するために製薬産業で通常用いられる医薬的に許容され得る固体又は液体の希釈剤又はカプセル化剤、充填剤又はキャリア剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、鼻、腹腔内、舌下又は直腸経路を介する投与に適切な請求項1〜4又は8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬的に許容され得るビヒクルが前記活性物質の連続放出、好ましくは定常放出を可能にする請求項1〜4又は8若しくは9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
糖尿病の治療用を意図した同時、別々又は逐次使用のための組合せ製品として、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又はrT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3前駆体、例えばT4の中から選択される少なくとも1つのホルモンと、
− 特に中から選択されるインスリンの膵臓分泌を活性化する少なくとも1つの活性物質、又はグルコースの消化吸収の緩徐化を可能にする少なくとも1つの活性物質とを
含んでなる製品。
【請求項1】
活性物質として、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンを、医薬的に許容され得るビヒクルと組み合わせて含んでなる医薬組成物。
【請求項2】
前記活性物質がrT3である請求項1に記載の医薬組成物。
【請求項3】
約0.01μg/kg/日〜約250μg/kg/日、特に約0.01μg/kg/日〜約25μg/kg/日、特に約0.1μg/kg/日〜約15μg/kg/日の活性物質、更に特には約0.1μg/kg/日〜約5μg/kg/日の活性物質、最も特には約0.1μg/kg/日〜1μg/kg/日の活性物質の放出に適切な形態の請求項1又は2に記載の医薬組成物。
【請求項4】
投薬単位基準で、約5μg〜約1.5gの活性物質、特に約75mg〜約750mgの活性物質を含んでなる請求項1又は3に記載の医薬組成物。
【請求項5】
− 高血糖、インスリン抵抗性、β膵臓細胞不全又は関連する病状、
− コレステロール及び/又はトリグリセリドの血漿濃度が正常濃度より高い病状、異脂肪血症、又は
− 過体重に関連するか又は脂肪沈着の過剰に関連する病状
の治療用を意図した薬剤の製造のための、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、
− rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又は
− rT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3の前駆体、例えばT4
の中から選択される少なくとも1つのホルモンの使用。
【請求項6】
糖尿病、特に1型若しくは2型糖尿病、β膵臓細胞不全、肥満、過体重又は関連する病状、高コレステロール血症、高トリグリセリド血症、異脂肪血症、アルコール肝炎性及び非アルコール肝炎性皮脂欠乏症、アテローム性動脈硬化症、代謝異常に関連するヘパトパシー、胆嚢疾患、皮下脂肪の沈着、特にセリュライト、又は血管運動神経性鼻炎の中から選択される病状の治療用を意図した薬剤の製造のための請求項5に記載の使用。
【請求項7】
前記ホルモンがrT3である請求項5又は6に記載の使用。
【請求項8】
前記医薬的に許容され得るビヒクルが医薬組成物を製造するために製薬産業で通常用いられる医薬的に許容され得る固体又は液体の希釈剤又はカプセル化剤、充填剤又はキャリア剤である請求項1〜4のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項9】
経口、静脈内、筋肉内、皮下、経皮、鼻、腹腔内、舌下又は直腸経路を介する投与に適切な請求項1〜4又は8のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項10】
前記医薬的に許容され得るビヒクルが前記活性物質の連続放出、好ましくは定常放出を可能にする請求項1〜4又は8若しくは9のいずれか1項に記載の医薬組成物。
【請求項11】
糖尿病の治療用を意図した同時、別々又は逐次使用のための組合せ製品として、
− 3',5',3-トリヨードチロニン(rT3)、rT3誘導ホルモン、例えば3',3-ジヨードチロニン、5',3-ジヨードチロニン、3'-ヨードチロニン、5'-ヨードチロニン若しくは3-ヨードチロニン、又はrT3形成の促進を可能にする分子との組合せでのrT3前駆体、例えばT4の中から選択される少なくとも1つのホルモンと、
− 特に中から選択されるインスリンの膵臓分泌を活性化する少なくとも1つの活性物質、又はグルコースの消化吸収の緩徐化を可能にする少なくとも1つの活性物質とを
含んでなる製品。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−1】
【図7−2】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図10−3】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7−1】
【図7−2】
【図8−1】
【図8−2】
【図9】
【図10−1】
【図10−2】
【図10−3】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図35】
【図36】
【図37】
【図38】
【図39】
【図40】
【図41】
【図42】
【図43】
【図44】
【図45】
【図46】
【図47】
【図48】
【図49】
【図50】
【図51】
【図52】
【図53】
【図54】
【図55】
【図56】
【図57】
【図58】
【図59】
【図60】
【図61】
【図62】
【図63】
【図64】
【図65】
【図66】
【図67】
【図68】
【図69】
【図70】
【図71】
【図72】
【図73】
【図74】
【図75】
【図76】
【図77】
【図78】
【図79】
【公表番号】特表2010−526858(P2010−526858A)
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−507939(P2010−507939)
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056076
【国際公開番号】WO2008/138995
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509316028)ユニヴェルシテ ジョセフ フーリエ (8)
【出願人】(500488225)アンスティテュ ナシオナル ド ラ サント エ ド ラ ルシュルシェ メディカル(アンセルム) (26)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE(INSERM)
【住所又は居所原語表記】101,rue de Tolbiac,F−75654 Paris Cedex 13 France
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年8月5日(2010.8.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年5月16日(2008.5.16)
【国際出願番号】PCT/EP2008/056076
【国際公開番号】WO2008/138995
【国際公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【出願人】(509316028)ユニヴェルシテ ジョセフ フーリエ (8)
【出願人】(500488225)アンスティテュ ナシオナル ド ラ サント エ ド ラ ルシュルシェ メディカル(アンセルム) (26)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT NATIONAL DE LA SANTE ET DE LA RECHERCHE MEDICALE(INSERM)
【住所又は居所原語表記】101,rue de Tolbiac,F−75654 Paris Cedex 13 France
【出願人】(502205846)サントル ナショナル ドゥ ラ ルシェルシュ シアンティフィク (154)
【Fターム(参考)】
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