説明

画像データ処理装置、画像データ処理方法、プログラム、及び記憶媒体

【課題】 低コストでセキュリティを向上させることができる画像データ処理装置を提供する。
【解決手段】 画像データ処理装置100は、ディジタル画像データを格納するためのRAM1003及び大容量のHDD1010を備え、ディジタル画像データに対して符号化処理を行う。該符号化処理により、ディジタル画像データは、ディジタル画像の復元に関して支配的なAC成分と、ディジタル画像の復元が困難なDC成分とに分解され、画像データ処理装置100は、RAM1003内にDC成分を格納すると共に、HDD1010内にAC成分を格納する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像データ処理装置、画像データ処理方法、プログラム、及び記憶媒体に関し、特に、ディジタル画像データを格納する一次記憶装置及び二次記憶装置を備える画像データ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
画像データに対応する画像を記録紙に印刷する複写機やプリンタなどの画像形成装置には、ディジタル画像データを一時的に記憶するための一次記憶装置としてのRAMと、印刷対象であるディジタル画像データを展開するための二次記憶装置としての大容量のハードディスクドライブ(HDD)とを搭載したHDD搭載印刷装置がある(例えば、特許文献1参照)。
【0003】
HDD搭載印刷装置は、HDD内に複数ページのディジタル画像データを蓄積して展開することにより、ソート機能やレイアウト機能を実現したり、複数部にわたって印刷するときに2部目以降の印刷を高速で行ったりすることが可能である。一方、HDD搭載印刷装置において、複数部にわたる印刷の途中で故障や電源の遮断が発生した場合には、HDD内に展開されているディジタル画像データが消去されずに残留する。このような状態にあるときに、第三者は、HDD搭載印刷装置からHDDを入手して、該HDDから残留データを読み出すことが可能である。これにより、残留データに対応する画像上の機密情報が漏洩して、HDD内に記録されているディジタル画像データの機密性(セキュリティ)が低下する。
【0004】
上述したようなセキュリティの低下を回避するために、印刷中にHDD内の画像データが不要となる度に該データをHDDから消去する他のHDD搭載画像形成装置や、HDD内に画像データを記録するときに暗号化することで残留データに対応する画像の再現を困難にするさらに他のHDD搭載画像形成装置が実用化されている。
【特許文献1】特開2001−205869号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記他のHDD搭載画像形成装置では、印刷対象の全ての画像を再現することは困難であるが、HDD内の不要となっていない画像データに対応する画像を再現することができるので、十分にセキュリティが高いとはいえない。また、上記さらに他のHDD搭載画像形成装置では、暗号化処理によってその処理能力が低下すると共に、暗号化処理のための特別なハードウェアやソフトウェアが必要になりコストが高騰する。
【0006】
本発明の目的は、低コストでセキュリティを向上させることができる画像データ処理装置、画像データ処理方法、プログラム、及び記憶媒体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明の画像データ処理装置は、ディジタル画像データを格納する画像データ処理装置において、前記ディジタル画像データを第1の記憶部に格納する第1の記憶手段と、前記ディジタル画像データを第1の部分と第2の部分とに分解する分解手段と、前記ディジタル画像データの第2の部分を第2の記憶部に格納する第2の記憶手段とを備え、前記第1の記憶手段は前記第1の部分を前記第1の記憶部に格納することを特徴とする。
【0008】
上記目的を達成するために、本発明の画像データ処理方法は、ディジタル画像データを格納する画像データ処理方法において、前記ディジタル画像データを第1の記憶部に格納する第1の記憶ステップと、前記ディジタル画像データを第1の部分と第2の部分とに分解する分解ステップと、前記ディジタル画像データの第2の部分を第2の記憶部に格納する第2の記憶ステップとを有し、前記第1の記憶ステップは前記第1の部分を前記第1の記憶部に格納することを特徴とする。
【0009】
上記目的を達成するために、本発明のプログラムは、ディジタル画像データを格納する画像データ処理方法をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、前記ディジタル画像データを第1の記憶部に格納する第1の記憶モジュールと、前記ディジタル画像データを第1の部分と第2の部分とに分解する分解モジュールと、前記ディジタル画像データの第2の部分を第2の記憶部に格納する第2の記憶モジュールとを備え、前記第1の記憶モジュールは前記第1の部分を前記第1の記憶部に格納することを特徴とする。
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の記憶媒体は、上記プログラムを格納することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ディジタル画像データを第1の部分と第2の部分とに分解し、ディジタル画像データの第1の部分を第1の記憶部に格納し、第2の部分を第2の記憶部に格納するので、第1の記憶部とは異なる第2の記憶部内に画像の再現が困難なディジタル画像データを比較的簡単な処理で格納することができ、その結果、低コストを実現することができると共に、第2の記憶部内に格納されたディジタル画像データのセキュリティを向上させることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を参照しながら詳細に説明する。
【0013】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係る画像データ処理装置を備える画像入出力システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【0014】
図1において、画像入出力システム500は、ディジタル画像データを格納する画像データ処理装置としての画像入出力装置100と、画像入出力装置100のホストコンピュータとしてのパーソナルコンピュータ(PC)401,402と、画像入出力装置100及びPC401,402を接続するネットワークとしてのLAN400とを備える。
【0015】
画像入出力装置100は、原稿の画像を読取ってディジタル画像データに変換するリーダ部200と、図2で後述する制御部110及び操作部150と、入力されたディジタル画像データに対応する画像を記録紙に印刷する出力を行うプリンタ部300とを備える。
【0016】
リーダ部200は、原稿用紙を搬送する原稿給紙部250と、搬送された原稿の画像を光学的に読み取るスキャンを行うスキャナ部210とを備える。
【0017】
プリンタ部300は、それぞれ1種類の記録紙が積載された複数のカセットを備え且つ該複数のカセットのうち所定のカセットから記録紙を給送する給紙部310と、ディジタル画像データを可視化したトナー像を記録紙に転写して定着させるマーキング部320と、印刷された記録紙を外部へ搬出する排紙部330と、排紙された複数の記録紙に対して、ステイプル処理やソート処理などの後処理を行うフィニッシャ部340とを備える。
【0018】
制御部110は、リーダ部200及びプリンタ部300と電気的に接続されていると共に、LAN400を介してPC401,402と接続されており、リーダ部200から入力されたディジタル画像データを所定の形式のデータに変換してPC401やPC402へ送信するスキャン機能、リーダ部200から入力されたディジタル画像データを所定の形式のデータに変換してプリンタ部300へ入力してプリンタ部300に印刷させるコピー機能、及びPC401やPC402から受信した所定の形式のデータをディジタル画像データに変換してプリンタ部300へ入力してプリンタ部300に印刷させるプリント機能を有する。
【0019】
また、操作部150は、制御部110に接続され、画像入出力装置100を操作するためのユーザインターフェース(UI)として機能する。
【0020】
図2は、図1における制御部110及び操作部150の構成を詳細に示すブロック図である。
【0021】
図2において、操作部150は、表示画面を備える液晶表示装置(LCD)1102と、LCD1102の表示画面上に表示されるソフトキーを含む操作パネル(PNL)1101とを備え、液晶タッチパネルとして機能する。
【0022】
制御部110は、CPU1001と、制御ソフトウェアが格納されたROM1002と、CPU1001がディジタル画像データを一時的に格納するための主メモリ及びワークエリアなどとして機能するRAM1003と、リーダ部200を制御するスキャナコントローラ(SCN−C)1004と、プリンタ部300を制御するプリンタコントローラ(PRN−C)1005と、操作パネル1101からの入力を制御する操作パネルコントローラ(PNL−C)1006と、LCD1102の表示を制御するLCDコントローラ(LCD−C)1007と、データを記憶可能な大容量の二次記憶装置に接続されたディスク装置コントローラ(DKC)1008と、LAN400に接続されたネットワークインターフェースカード(NIC)1009と、これらを互いに接続するシステムバス1011とを備える。ディスク装置コントローラ1008には、上記二次記憶装置として、例えばハードディスクドライブ(HDD)1010が接続されている。
【0023】
CPU1001は、ROM1002に記憶された制御ソフトウェアを実行し、システムバス1011に接続されている各部を制御して画像入出力装置100を統括的に制御する。例えば、CPU1001は、ROM1002に格納されている所定の符号化プログラムを実行することにより、ディジタル画像データを符号化(圧縮)するための後述する図4の符号化処理を行うと共に、ROM1002に格納されている所定の復号プログラムを実行することにより、符号化されたディジタル画像データを復号するための後述する図5の復号処理を行う。
【0024】
ディスク装置コントローラ1008は、HDD1010へのデータの書き込み、及びHDD1010からのデータの読み込みを制御する。また、NIC1009は、LAN400との接続が確立されたときに、他のネットワーク機器とLAN400を介して双方向のデータ通信を行う。
【0025】
RAM1003では、リーダ部200やPC401,402から入力された、例えば600dpi以上の高精細な画像データが一時的に保存される。RAM1003に一時的に保存された画像データは、その一部又は全体に対して後述する符号化処理が施され、例えばJPEG形式の画像データ(以下、「JPEGデータ」という)としてRAM1003及びHDD1010に保存される。
【0026】
図3は、図2におけるRAM1003に一時的に保存されたJPEGデータを含むJPEGファイルの構造を詳細に示す図である。
【0027】
図3に示すJPEGファイル30は、2バイトのイメージ開始マーカ(SOIセグメント: start of image segment)と、上記符号化処理によって上記画像データを符号化したJPEGデータを含む後述するフレーム31と、2バイトのイメージ終了マーカ(EOIセグメント: end of image segment)とから構成されている。
【0028】
フレーム31は、所定のテーブルなどのデータと、フレーム31のヘッダ部分を構成するフレームヘッダと、第1のスキャンセグメント32aと、データの行数を定義するDNLセグメントと、第1のスキャンセグメント32aと同様に構成された第2のスキャンセグメント32bや最後のスキャンセグメント32nとから構成されている。なお、JPEGファイル30が第1のスキャンセグメント32aを含む場合には、スキャン開始マーカ(SOSセグメント:start of scan segment)がフレームヘッダに記録される。
【0029】
第1のスキャンセグメント32aは、所定のテーブルを指定するためのテーブル指定データなどのデータと、第1のスキャンセグメント32aのヘッダ部分を構成するスキャンヘッダと、後述するインデックスが「0」のエントロピー符号化セグメント(ECS0)33aと、インデックスが「0」から「last-1」までの各2ビットのリスタートマーカ(RST)と、インデックスが「last」のエントロピー符号化セグメント(ECSlast)33bとから構成されている。
【0030】
エントロピー符号化セグメント33aは、インデックスが「1」から「Ri」まで順に配列された最小符号化ユニット(MCU:Minimum Coded Unit)から構成されている。また、エントロピー符号化セグメント33bは、インデックスが「n」から「last」まで順に配列されたMCUから構成されている。各MCUはデータ量が、例えば8ビット×8ビットのJPEGデータである。
【0031】
各MCUは、上記符号化処理により生成される後述するDC成分と、DC成分以外の残りの部分で構成された後述するAC成分とから構成されている。なお、この符号化処理により、DC成分に関しては、前のMCUのDC成分、即ちインデックスの値が「1」小さいMCUのDC成分との差分を示す差分DC値を表現するのに必要なビット数を表すハフマン符号や、実際の差分DC値を表現する付加ビットも生成される。
【0032】
DC成分は、MCUのデータ量(8ビット×8ビット)のうちの最初の数ビット、例えば1ビットに対応する。また、DC成分は、JPEGデータに対応する画像を表現する空間周波数のうち、該画像の大まかな色面を示す低周波成分で構成されているので、ディジタル画像を復元するのに支配的な情報(DC係数)を有し、特に600dpi以上の高精細なディジタル画像を復元する際にはAC成分よりも支配的となる。一方、AC成分は、MCUのデータ量の大部分に対応し、画像の細かい図形や輪郭線を示す高周波成分で構成されているが、これらの高周波成分は、ディジタル画像を復元するのに支配的な情報ではないため、AC成分のみでは、ディジタル画像の再現が困難である。
【0033】
なお、図3に示す構造のJPEGファイル30は、基本DCT(discrete cosine transform:離散コサイン変換)方式、拡張DCT方式、及び可逆(loss-less)方式のいずれのファイルであってもよい。
【0034】
図4は、図2におけるCPU1001によって実行される符号化処理のフローチャートである。
【0035】
本処理は、リーダ部200やPC401,402から入力されRAM1003に一時的に格納された画像データを符号化し、該符号化によって生成された図3に示したようなJPEGファイル30内のJEPGデータの一部をRAM1003に格納すると共に、他の部分をHDD1010に格納するものである。
【0036】
図4において、まず、ステップS401〜S412の処理では、画像データを符号化するための一般的な処理、例えばJFIF(JPEG File Interchange Format)規格による符号化処理を以下のように実行する。
【0037】
まず、ステップS401では、SOIセグメントを図3に示すようにJPEGファイル30(以下、単に「ファイル」という)に記録し、量子化テーブルを定義するDQTマーカ(量子化テーブル定義セグメント)をファイルに記録し(ステップS402)、画像データを複数の成分、即ち上記MCUに分解し(ステップS403)、不完全なMCUを補完する所定の補完処理を行う(ステップS404)。続くステップS405では、離散コサイン変換(DCT)を行うことによって各MCUに対応する画像の空間周波数を取得する。これにより、画像データはDC成分から成るJPEGデータと、AC成分から成るJPEGデータとに分解される。次いで、量子化を行うことによってファイルの圧縮を行う(ステップS406)。その後、ステップS405で取得した空間周波数の分布に基づいてDCT係数の統計をとり(ステップS407)、後述するハフマン符号化処理に用いられるハフマンテーブルを構成し(ステップS408)、構成したハフマンテーブルに関する情報を含むハフマンテーブル定義(DHT)セグメントをファイルに記録し(ステップS409)、次に、SOSセグメントが記録されたフレームヘッダをファイルに記録し(ステップS410)、スキャンヘッダをファイルに記録する(ステップS411)。その後、ハフマン符号化処理を行ってファイルの圧縮を行う(ステップS412)。このとき、エントロピー符号化セグメント33a,33bがファイルに記録される。
【0038】
続いて、RAM1003内のDC成分をRAM1003内の別のファイル、例えばファイル名が「20050101.jpgd」のJPEGファイル(以下、「DCファイル」という)へ書き込む(ステップS413)。このとき、JPEGファイル30には、DC成分に相当する値が記録される。また、RAM1003内のAC成分をHDD1010内の、例えばファイル名が「20050101.jpga」のJPEGファイル(以下、「ACファイル」という)に記録する(ステップS414)。このとき、RAM1003内のAC成分は即時に消去される。
【0039】
続くステップS415では、EOIセグメントを図3に示すようにJPEGファイル30に記録して、本処理を終了する。
【0040】
図4の処理によれば、JPEGファイル30のうち、ディジタル画像の復元に関して支配的なDC成分をRAM1003などの一次記憶装置のDCファイルに格納し、ディジタル画像の再現が困難なAC成分をHDD1010などの二次記憶装置のACファイルに格納する(ステップS413,414)ので、DC成分とAC成分を連続的にRAMなどの一次記憶装置内又はHDDなどの二次記憶装置内の所定のファイルに書き込む従来の画像データに対する一般的な符号化処理に対して、JPEGデータの再構築を困難にすることができ、二次記憶装置内に格納されたJPEGデータのセキュリティを向上させることができる。
【0041】
また、JFIF規格などに基づいた一般的な符号化処理によってJPEGデータがDC成分とAC成分とに分解されることを利用して、分解されたJEPGデータの成分をそれぞれ別の記憶装置に格納するという比較的簡単な処理で画像入出力装置100のセキュリティを向上させることができるので、低コストを実現することができると共に、CPU1001の処理能力の低下を抑制することができる。さらには、HDD1010内にディジタル画像の再現が困難なディジタル画像データ(AC成分)が格納されるので、該ディジタル画像データに対する暗号化処理を行うことを省略して低コストを実現することができる。
【0042】
さらには、RAM1003にはAC成分よりもデータ量の少ないDC成分が格納されるので、RAM1003におけるワークエリアを広くしてCPU1001の処理能力を向上させることができる。
【0043】
なお、図4の処理において、ステップS407及びステップS408の処理を省略化してもよい。
【0044】
なお、上記RAM1003内のDCファイルと上記HDD1010内のACファイルは、それらのファイル名によって関連付けられており、これにより、画像入出力装置100は、後述する図5の復号処理を実行することにより、JPEGファイル30内のJPEGデータを再構築することができる。
【0045】
図5は、図4の処理によって生成されたJPEGデータに対して実行される復号処理のフローチャートである。
【0046】
図5において、まず、ステップS501〜S505の処理では、JPEG方式に準拠したJPEGデータを復号するための復号処理を以下のように実行する。本処理において、復号対象となるデータは、図4の符号化処理により生成されたJPEGデータを含むJPEGファイル30と、上記ステップS412でRAM1003に格納されたファイル名が「20050101.jpgd」のDCファイルと、上記ステップS413でHDD1010に格納されたファイル名が「20050101.jpga」のACファイルとから成る。
【0047】
まず、ステップS501では、RAM1003内のJPEGファイル30のSOIセグメントを検出し、フレーム31のフレームヘッダを取得して、該フレームヘッダに記録されているマーカやセグメントの解釈を行い(ステップS502)、フレームヘッダに記録されているマーカやセグメントがSOSセグメントであるときは(ステップS503でYES)、スキャンヘッダの解釈を行い(ステップS504)、復号器(不図示)のリセットを行う(ステップS505)。なお、フレームヘッダにSOSセグメントとは異なる他のマーカやセグメントが記録されていたときは(ステップS503でNO)、ステップS520において、当該他のマーカやセグメントに関して必要な処理を行い、ステップS503の処理に戻る。
【0048】
続くステップS506〜S509では、ACファイル及びDCファイルを用いてJPEGファイル30の、例えばエントロピー符号化セグメント33aに含まれる全てのMCUを復号する。具体的には、ステップS506において、RAM1003内のDCファイルから、所定のMCUを特定するインデックスと同一のインデックスを有するDC成分のDC係数を取得して、DC成分を復号する(ステップS507)と共に、HDD1010内のACファイルから、同インデックスを有するAC成分を示す値(AC係数)を取得して、AC成分を復号する(ステップS508)ことにより、1つのMCUを復号する。続いて、JPEG方式に準拠した復号処理と同様に、ステップS506〜S508の処理を繰り返すことにより、全てのインデックスに対応するMCUの復号を完了する。
【0049】
そして、全てのインデックスに対応するMCUの復号が完了したときは(ステップS509でYES)、エントロピー符号化セグメント33aの後にインタバルを示すマーカがあるか否かを判別し(ステップS510)、インタバルを示すマーカがないときは、JPEGファイル30のEOIセグメントが検出されたか否かを判別し(ステップS511)、EOIセグメントが検出されるまでステップS503〜S510の処理を繰り返し、検出されたときは、本処理を終了する。
【0050】
また、エントロピー符号化セグメント33aの後にインタバルを示すマーカがあるときは(ステップS510でYES)、ステップS505に戻って復号器をリセットし、ステップS506〜S509において他のエントロピー符号化セグメント、即ちエントロピー符号化セグメント33bの全てのMCUを復号し、EOIセグメントが検出されたときは(ステップS511でYES)、本処理を終了する。
【0051】
図5の処理によれば、RAM1003内のDCファイルからDC成分を復号する(ステップS507)と共に、HDD1010内のACファイルからAC成分を復号する(ステップS508)ことにより、JEPGファイル30の1つのMCUを復号するので、HDD1010内のAC成分からMCUを復号することができないように画像入出力装置100を構成することができ、もって、該HDD1010から残留データが読み出された場合であっても、ディジタル画像データの高いセキュリティを保持することができる。
【0052】
また、図4及び図5の処理は、上述したように、JPEG方式に準拠した一般的な符号化処理/復号処理と実質的に同一の処理と、JPEGデータの分解により生成されたDC成分及びAC成分に対する簡単な記録処理(ステップS413,S414)及びRAM1003に格納されたDC成分に対する簡単な復号処理(ステップS506,S507)とから構成されているので、CPU1001の負荷の増大を抑制することができる。
【0053】
以下、本発明の第2の実施の形態を説明する。
【0054】
本実施の形態に係る画像データ処理装置は、その構成及び要素が上記第1の実施の形態に係る図1及び図2に示す画像入出力装置100と同一である。なお、本実施の形態でも、HDD1010及びRAM1003へ保存されるディジタル画像データはJPEG方式に準拠したフォーマットを有する。
【0055】
上記第1の実施の形態では、ディジタル画像データの復号を困難にするために、JPEGファイル30の各MCUをAC成分とDC成分とに分解し、DC成分をRAM1003に記録すると共にAC成分をHDD1010に記録したのに対して、本実施の形態では、JPEGファイル30の複数のMCUを、第1のMCUの群と、第1のMCUとは異なる第2のMCUの群とに分解し、第1のMCUの群をRAM1003に記録すると共に第2のMCUの群をHDD1010に記録する。
【0056】
図6は、本実施の形態に係る画像形成装置によって実行される符号化処理のフローチャートである。
【0057】
本処理は、RAM1003に格納されているJPEGデータの一部をHDD1010に格納するものである。
【0058】
図6におけるステップS601〜S611の処理、ステップS614の処理、及びステップS616の処理は、それぞれ、図4のステップS401〜S411の処理、ステップS412の処理、及びステップS415の処理と同様であるので、それらの説明を省略する。
【0059】
図6において、ステップS612では、JPEGファイル30の複数のMCUの配列の順序を変更するためのMCU入換乱数テーブルを作成する。なお、作成された乱数テーブルは、RAM1003内の別のファイルに記録され、これにより、HDD1010に乱数テーブルが残留する可能性を確実になくすことができる。続くステップS613では、作成した乱数テーブルを用いてMCUの配列の順序の入れ換えをJPEGファイル30内で行う。これにより、JPEGファイル30の複数のMCUは、RAM1003に記録すべき第1のMCUの群と、HDD1010に記録すべき第2のMCUの群とに分解されることになる。
【0060】
また、ステップS615では、JPEG方式に準拠した一般的な符号化処理として、各MCUを単位データとしてRAM1003及びHDD1010のいずれか一方に記録する。具体的には、順序が入れ換えられた複数のMCUを一般的な符号化処理と同様の順序に従って記録する。これにより、上記第1のMCUの群をRAM1003の別のファイル(以下、「第1のファイル」という)に記録すると共に、JPEGファイル30には、第1のMCUの群に相当する値を残し、一方、上記第2のMCUの群をHDD1010のファイル(以下、「第2のファイル」という)に記録する。
【0061】
図6の処理によれば、図4の処理と同様に、JPEGファイル30の複数のMCUのうち、第1のMCUの群がRAM1003などの一次記憶装置の第1のファイルに記録され、第2のMCUの群がHDD1010などの二次記憶装置の第2のファイルに記録される(ステップS615)ので、図4の処理による効果と同様に、JPEGデータの再構築を困難にすることができ、二次記憶装置内に格納されたJPEGデータのセキュリティを向上させるという効果を奏することができる。
【0062】
また、乱数テーブルを用いるという比較的簡単な処理(ステップS613)で、JPEGファイル30の複数のMCUを第1のMCUの群と第2のMCUの群とに分解することができるので、低コストを実現することができると共に、CPU1001の処理能力の低下を抑制することができる。さらには、HDD1010内に単独ではディジタル画像の再現が困難なディジタル画像データ(第2のMCUの群)が格納されるので、該ディジタル画像データに対する暗号化処理を行うことを省略して低コストを実現することができる。
【0063】
さらには、RAM1003に、第2のMCUの群よりもデータ量の少ない第1のMCUの群を格納した場合には、RAM1003におけるワークエリアを広くしてCPU1001の処理能力を向上させることができる。
【0064】
なお、図6の処理において、ステップS607及びステップS608の処理を省略化してもよい。
【0065】
また、上記RAM1003内の第1のファイルのファイル名は、例えば「20050101.jpgt」であり、上記HDD1010内の第2のファイルのファイル名は、例えば「20050101.jpgr」であり、第1のファイルと第2のファイルとは、それらのファイル名及び上記乱数テーブルを介して互いに関係付けられている。これにより、画像入出力装置100は、後述する図7の復号処理を実行することにより、JPEGファイル30内のJPEGデータを再構築することができる。
【0066】
図7は、図6の処理によって生成されたJPEGデータに対して実行される復号処理のフローチャートである。
【0067】
図7におけるステップS701〜S705の処理、及びステップS709〜S711の処理は、それぞれ、図5のステップS501〜S505の処理、及びS509〜S511の処理と同様であるので、それらの説明を省略する。また、本処理において、復号対象となるデータは、図6の符号化処理によって生成されたJPEGデータを含むJPEGファイル30と、上記ステップS613においてRAM1003に記録された第1のファイル、及びHDD1010に記録された第2のファイルとから成る。
【0068】
図7において、ステップS708では、RAM1003内の第1のMCUの群及びHDD1010内の第2のMCUの群に対して復号処理を行うことにより、全てのMCUを復号する。なお、この復号されたMCUの配列は、図6のステップS613において順序が入れ換えられたMCUの配列と同一である。
【0069】
ステップS712では、RAM1003から図6のステップS613で作成した乱数テーブルを取得し、当該乱数テーブルを用いて、MCUの配列の順序をもとに戻す入れ換えを行うことによりディジタル画像データを復号し、本処理を終了する。
【0070】
図7の処理によれば、図6のステップS613において順序が入れ換えられたMCUの配列と同一の状態で複数のMCUが復号される(ステップS708)ので、RAM1003内及びHDD1010内のいずれか一方のMCUの群からJPEGデータを再構築することができないように画像入出力装置100を構成することができ、もって、乱数テーブルが格納されていないHDD1010から残留データが読み出された場合であっても、ディジタル画像データの高いセキュリティを保持することができる。また、図6の符号化処理で作成した乱数テーブルを用いてMCUの配列の順序をもとに戻す(ステップS712)ので、容易に復号処理を行うことができる。
【0071】
また、図6及び図7の処理は、上述したように、JPEG方式に準拠した一般的な符号化処理/復号処理と実質的に同一の処理と、JPEGデータのMCUをRAM1003に格納すべき第1のMCUの群とHDD1010に格納すべき第2のMCUの群とに分解するための簡単な入れ換え処理(ステップS612,613)及び入れ換えたMCUの配列の順序を戻すための簡単な復号処理(ステップS712)とから構成されているので、CPU1001の負荷の増大を抑制することができる。
【0072】
なお、上記第1及び第2の実施の形態では、HDD1010内にディジタル画像の再現が困難なディジタル画像データ(DC成分や第2のMCUの群)を格納することにより、該ディジタル画像データに対する暗号化処理を行うことを省略したが、さらにそのセキュリティを向上させるために、暗号化処理を行ってもよい。
【0073】
また、本発明の目的は、上述した各実施の形態の機能を実現するソフトウェアのプログラムコードを記録した記憶媒体を、システム或いは装置に供給し、そのシステム或いは装置のコンピュータ(又はCPUやMPU等)が記憶媒体に格納されたプログラムコードを読み出して実行することによっても達成される。
【0074】
この場合、記憶媒体から読み出されたプログラムコード自体が上記各実施の形態の機能を実現することになり、そのプログラムコード及び該プログラムコードを記憶した記憶媒体は本発明を構成することになる。
【0075】
また、プログラムコードを供給するための記憶媒体としては、例えば、フロッピー(登録商標)ディスク、ハードディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、CD−R、CD−RW、DVD−ROM、DVD−RAM、DVD−RW、DVD+RW、磁気テープ、不揮発性のメモリカード、ROM等を用いることができる。又は、プログラムコードをネットワークを介してダウンロードしてもよい。
【0076】
また、コンピュータが読み出したプログラムコードを実行することにより、上記各実施の形態の機能が実現されるだけでなく、そのプログラムコードの指示に基づき、コンピュータ上で稼動しているOS(オペレーティングシステム)等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【0077】
更に、記憶媒体から読み出されたプログラムコードが、コンピュータに挿入された機能拡張ボードやコンピュータに接続された機能拡張ユニットに備わるメモリに書き込まれた後、そのプログラムコードの指示に基づき、その機能拡張ボードや機能拡張ユニットに備わるCPU等が実際の処理の一部又は全部を行い、その処理によって前述した各実施の形態の機能が実現される場合も含まれる。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明の実施の形態に係る画像データ処理装置は、例えば、画像データに対応する画像を形成する画像形成装置に適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0079】
【図1】本発明の第1の実施の形態に係る画像データ処理装置を備える画像入出力システムの構成を概略的に示すブロック図である。
【図2】図1における制御部及び操作部の構成を詳細に示すブロック図である。
【図3】図2におけるRAMに一時的に保存されたJPEGデータを含むJPEGファイルの構造を詳細に示す図である。
【図4】図2におけるCPUによって実行される符号化処理のフローチャートである。
【図5】図4の処理によって生成されたJPEGデータに対して実行される復号処理のフローチャートである。
【図6】本発明の第2の実施の形態に係る画像形成装置によって実行される符号化処理のフローチャートである。
【図7】図6の処理によって生成されたJPEGデータに対して実行される復号処理のフローチャートである。
【符号の説明】
【0080】
30 JEPGファイル
33a,33b エントロピー符号化セグメント(ECS)
100 画像入出力装置
110 制御部
200 リーダ部
300 プリンタ部
500 画像入出力システム
1001 CPU
1003 RAM
1010 ハードディスクドライブ(HDD)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ディジタル画像データを格納する画像データ処理装置において、前記ディジタル画像データを第1の記憶部に格納する第1の記憶手段と、前記ディジタル画像データを第1の部分と第2の部分とに分解する分解手段と、前記ディジタル画像データの第2の部分を第2の記憶部に格納する第2の記憶手段とを備え、前記第1の記憶手段は前記第1の部分を前記第1の記憶部に格納することを特徴とする画像データ処理装置。
【請求項2】
前記分解手段は前記ディジタル画像データを符号化する符号化手段を備えることを特徴とする請求項1記載の画像データ処理装置。
【請求項3】
前記符号化されたディジタル画像データを復号する復号手段と、前記復号されたディジタル画像データに対応する画像を形成する画像形成手段とを備えることを特徴とする請求項2記載の画像データ処理装置。
【請求項4】
前記第1の部分と前記第2の部分とを互いに関連付ける関連情報を作成する関連情報作成手段を備えることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の画像データ処理装置。
【請求項5】
前記ディジタル画像データは前記第1の部分を構成するDC成分と前記第2の部分を構成するAC成分とを含むJPEGデータから成り、前記関連情報は前記DC成分と前記AC成分とを互いに関連付けることを特徴とする請求項4記載の画像データ処理装置。
【請求項6】
前記ディジタル画像データは所定の配列を有する複数の単位データから成り、前記関連情報は前記複数の単位データの配列の順序を入れ換えるための乱数テーブルから成り、前記分解手段は、前記乱数テーブルを用いて前記複数の単位データを前記第1の部分を構成する単位データの群と前記第2の部分を構成する単位データの群とに分解することを特徴とする請求項4記載の画像データ処理装置。
【請求項7】
前記第1の記憶手段は前記乱数テーブルを前記第1の記憶部に格納することを特徴とする請求項6記載の画像データ処理装置。
【請求項8】
ディジタル画像データを格納する画像データ処理方法において、前記ディジタル画像データを第1の記憶部に格納する第1の記憶ステップと、前記ディジタル画像データを第1の部分と第2の部分とに分解する分解ステップと、前記ディジタル画像データの第2の部分を第2の記憶部に格納する第2の記憶ステップとを有し、前記第1の記憶ステップは前記第1の部分を前記第1の記憶部に格納することを特徴とする画像データ処理方法。
【請求項9】
前記分解ステップは前記ディジタル画像データを符号化する符号化ステップを有することを特徴とする請求項8記載の画像データ処理方法。
【請求項10】
前記符号化されたディジタル画像データを復号する復号ステップと、前記復号されたディジタル画像データに対応する画像を形成する画像形成ステップとを有することを特徴とする請求項9記載の画像データ処理方法。
【請求項11】
前記第1の部分と前記第2の部分とを互いに関連付ける関連情報を作成する関連情報作成ステップを有することを特徴とする請求項8乃至10のいずれか1項に記載の画像データ処理方法。
【請求項12】
前記ディジタル画像データは前記第1の部分を構成するDC成分と前記第2の部分を構成するAC成分とを含むJPEGデータから成り、前記関連情報は前記DC成分と前記AC成分とを互いに関連付けることを特徴とする請求項11記載の画像データ処理方法。
【請求項13】
前記ディジタル画像データは所定の配列を有する複数の単位データから成り、前記関連情報は前記複数の単位データの配列の順序を入れ換えるための乱数テーブルから成り、前記分解ステップは、前記乱数テーブルを用いて前記複数の単位データを前記第1の部分を構成する単位データの群と前記第2の部分を構成する単位データの群とに分解することを特徴とする請求項11記載の画像データ処理方法。
【請求項14】
前記第1の記憶ステップは前記乱数テーブルを前記第1の記憶部に格納する格納ステップを含むことを特徴とする請求項12記載の画像データ処理方法。
【請求項15】
ディジタル画像データを格納する画像データ処理方法をコンピュータに実行させるプログラムにおいて、前記ディジタル画像データを第1の記憶部に格納する第1の記憶モジュールと、前記ディジタル画像データを第1の部分と第2の部分とに分解する分解モジュールと、前記ディジタル画像データの第2の部分を第2の記憶部に格納する第2の記憶モジュールとを備え、前記第1の記憶モジュールは前記第1の部分を前記第1の記憶部に格納することを特徴とするプログラム。
【請求項16】
請求項14記載のプログラムを格納することを特徴とするコンピュータ読み取り可能な記憶媒体。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−303716(P2006−303716A)
【公開日】平成18年11月2日(2006.11.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−120066(P2005−120066)
【出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(000001007)キヤノン株式会社 (59,756)
【Fターム(参考)】