画像レーダ信号処理装置
【課題】現地でのGCP測位の手間を省くことができる画像レーダ信号処理装置を得る。
【解決手段】アンテナ1、2の位置が格納されたアンテナ位置情報格納部3Aと、アンテナ1、2で観測して得られた第1、第2の画像が各々格納されたアンテナ1画像格納部3B、アンテナ2画像格納部3Cと、第1、第2の画像に基づき、第1の画像に対する第2の画像のスラントレンジ方向、アジマス方向の全画素のずれ量を求め、スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、アンテナ1の各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、アンテナ2の各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部4と、各アンテナの位置、アンテナ2の各画素の示す観測点の距離、及びアンテナ1の各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部5と、三角測量部5により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部6とを設けた。
【解決手段】アンテナ1、2の位置が格納されたアンテナ位置情報格納部3Aと、アンテナ1、2で観測して得られた第1、第2の画像が各々格納されたアンテナ1画像格納部3B、アンテナ2画像格納部3Cと、第1、第2の画像に基づき、第1の画像に対する第2の画像のスラントレンジ方向、アジマス方向の全画素のずれ量を求め、スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、アンテナ1の各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、アンテナ2の各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部4と、各アンテナの位置、アンテナ2の各画素の示す観測点の距離、及びアンテナ1の各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部5と、三角測量部5により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部6とを設けた。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置が異なる複数のアンテナで撮像したレーダ画像から地表の標高を得る画像レーダ信号処理装置において、従来必要であった地表上の基準点が不要で、複数のレーダ画像での地表上の観測点の表示位置の違いから、地表の標高を三角測量の原理で計測する画像レーダ信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像レーダ装置は、航空機や衛星などの移動するプラットフォームから地表を観測するレーダであり、観測した領域の画像を作成できる(例えば、非特許文献1参照)。作成した画像の各画素は地表の観測点に相当し、画素値は観測点での電波の反射波に相当する。画像レーダによる標高計測では、プラットフォームに2つのアンテナを搭載、もしくは1つのアンテナで異なる軌道を飛んで2回観測することで、観測領域の画像を2枚作成する。これらの画像で地表の標高計測を行うためには、各アンテナの再生画像の各画素が同一の観測対象を表すことと、観測点と各アンテナ間の距離の差がわかることが必要である。この距離差がわかると、三角測量の原理に基づいて式(2)、(3)、(4)から標高を求めることが出来る。各画素が同一の観測点を表す必要があることについては、アンテナの位置が異なるために2つの再生画像の各画素の示す観測点は一致しないので、これらを合わせるレジストレーション処理を行う。この処理では、アンテナ2の画像の任意の一画素と、アンテナ1のそれに相当する観測領域の画素のずれの大きさを推定し、そのずれの大きさに合わせてアンテナ2の画像の画素の割り振りを変更する。次に、アンテナ1と観測点の距離は、アンテナ1よりパルス波を放射してから地表で反射され、アンテナ1で受信されるまでの時間にc/2(cは光速)を乗ずることで求められる。アンテナ2と観測点の距離は、アンテナ1とアンテナ2の受信波の位相差を求め、位相差を距離差に変換し,この距離差と求めたアンテナ1と観測点間の距離の和として求める。位相差から距離差への変換は、距離に比例する位相差(絶対位相差)に定数(波長/2π)を掛けることで行う。ただし、アンテナ1とアンテナ2の受信波の位相差は,絶対位相差を周期2πで折り畳んだ値であるので、この位相差から得られる距離差はあいまいさを持ち、波長の整数倍でしかわからない。このあいまいさを解くためには、少なくとも一観測点について距離差の真値が必要である。このため、従来はGCP(Ground Control Point)と呼ばれる地上の基準点を前もって測位し、GCPとアンテナとの位置関係から距離差の真値を求めていた。そして、この距離差の真値から各観測点の距離差を求め、三角測量により距離差を求めた。
【0003】
【非特許文献1】H.A.Zebker, R.M.Goldstein ”Topographic Mapping from Interferometric Synthetic Aperture Radar Observations”, Proceedings of ISAP '85, pp.647-650.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の相対位相差から絶対位相差に補正する方法では、GCPを用いる必要があるため、必ず観測領域を訪れ、GCPの緯度、経度などを測位する必要がある。しかし、観測領域は立ち入り可能とは限らず、立ち入り可能としても測位には大変な手間が掛かるという問題点があった。また、距離差を求める際に用いていた位相アンラップ処理は、一画素単位で複雑な演算を行うため、多量の計算機のメモリを使用し、計算に長時間を要するという問題点があった。さらに、急峻な地形では、アンラップ処理によって大きい誤差が生じるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、GCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができ、また、従来の方法より計算機のメモリ使用量が少なくて済み、計算時間も短くでき、さらに、急峻な地形の観測でも大きな誤差を生じることがない画像レーダ信号処理装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る画像レーダ信号処理装置は、画像レーダの第1及び第2のアンテナの計測した位置が格納されたアンテナ位置情報格納部と、前記第1のアンテナで観測して得られた第1の画像が格納された第1のアンテナ画像格納部と、前記第1のアンテナと異なる位置の前記第2のアンテナで前記第1のアンテナと同じ領域を観測して得られた第2の画像が格納された第2のアンテナ画像格納部と、前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及び前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像に基づき、前記第1の画像に対する前記第2の画像のスラントレンジ方向及びアジマス方向の全画素のずれ量を求め、前記ずれ量のうち、前記スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部と、前記アンテナ位置情報格納部に格納された第1及び第2のアンテナの位置、前記距離算出部で算出した前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記第1のアンテナ画像格納部に格納された前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部と、前記三角測量部により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部とを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る画像レーダ信号処理装置は、GCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができ、また、従来の方法より計算機のメモリ使用量が少なくて済み、計算時間も短くでき、さらに、急峻な地形の観測でも大きな誤差を生じることがないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置について図1から図3までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0009】
図1において、この実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置は、アンテナ位置情報格納部3Aと、アンテナ1画像格納部(第1のアンテナ画像格納部)3Bと、アンテナ2画像格納部(第2のアンテナ画像格納部)3Cと、距離算出部4と、三角測量部5と、出力格納部6とが設けられている。
【0010】
また、距離算出部4は、全画素ずれ量算出部41と、ずれ量/距離差変換部42と、アンテナ2距離算出部43とが設けられている。
【0011】
アンテナ位置情報格納部3Aは、慣性航法装置やGPS(Global Positioning System)などで計測した観測用のアンテナ1及び2の位置を格納する。アンテナ1画像格納部3Bは、画像レーダのアンテナ1で観測し再生した画像を格納する。アンテナ2画像格納部3Cは、アンテナ1と異なる位置のアンテナ2を用いてアンテナ1と同じ領域を観測し再生した画像を格納する。
【0012】
全画素ずれ量算出部41は、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像と、アンテナ2画像格納部3Cに格納されたアンテナ2の画像を入力とし、これらから算出したアンテナ1の画像に対するアンテナ2の画像の全画素のずれを、画像のビーム方向(スラントレンジ方向)及びプラットフォームの移動する方向(アジマス方向)についてそれぞれ算出して出力する。また、ずれ量/距離差変換部42は、全画素ずれ量算出部41で算出したずれ量のうち、スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換して出力する。さらに、アンテナ2距離算出部43は、アンテナ1の画像から得られる各画素の示す観測点の距離と、ずれ量/距離差変換部42の出力結果である距離差を入力とし、アンテナ2の各画素の距離を算出する。
【0013】
三角測量部5は、アンテナ位置情報格納部3Aに格納されたアンテナの位置情報と、アンテナ2距離算出部43で算出したアンテナ2の各画素の示す観測点の距離と、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像からわかるアンテナ1の各画素の示す観測点の距離を入力とし、各画素の標高を出力する。また、出力格納部6は、三角測量部5の出力結果である各画素の示す観測点の標高分布図を格納する。
【0014】
ここでは各画素の標高を算出することを説明しているが、地形の高さの算出結果は標高に限らない。アンテナなどの高さに関する位置情報を標高以外の座標で与えることで、標高以外の分布図を得ることが出来る。例えば、楕円体高、基準平面を任意に設定した場合の局所座標系などがある。
【0015】
つぎに、この実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【0016】
まず、ステップ101において、全画素ずれ量算出部41は、アンテナ1の画像の各画素が示す観測点に対する、アンテナ2の画像上での同じ観測点の位置のずれの大きさを算出する。この画素のずれの大きさは、最適化手法などにより算出される。このほかに、アンテナとハードウェア内の記録装置との距離から求める方法や、プラットフォームの移動速度から算出する方法などがある。このステップ101の計算の結果、アンテナ1の画像におけるスラントレンジ方向およびアジマス方向を軸とする座標(m,n)の観測点(画素)のずれの大きさが、スラントレンジ方向δs(m,n)、アジマス方向δa(m,n)と求められる。
【0017】
次に、ステップ102では、ずれ量/距離差変換部42は、観測点と各アンテナの距離の差を求める。図3は、観測点のアジマスの位置がnのときのプラットフォームと観測点との幾何的関係を示した図である。このステップ102では、スラントレンジ方向のずれ量から、アンテナ1と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r1(m,n)と、アンテナ2と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r2(m,n)の差Δs(m,n)=r2(m,n)−r1(m,n)を式(1)で算出する。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、dsはスラントレンジ方向の一画素の大きさである。これを全ての画素について行う。
【0020】
さらに、ステップ103では、アンテナ2距離算出部43は、各画素について、アンテナ1の画像からわかる距離r1(m,n)と、ステップ102で求めた距離差Δs(m,n)から式(2)により距離r2(m,n)を求める。
【0021】
【数2】
【0022】
続くステップ104では、三角測量部5は、三角測量により観測点の高さを測る。アンテナ1とアンテナ2の位置はプラットフォームに搭載された慣性航法装置やGPSで計測する。ただし、アンテナの位置計測はこれらに限らない。例えば、レーダ高度計による計測、干渉計による計測などが挙げられる。図3に示すように、アンテナ1及び2の位置と、アンテナ1と観測点の距離r1(m,n)、アンテナ2と観測点の距離r2(m,n)が既知であり、アンテナの指向方向が地表を向いていることから、観測点の標高hは式(3)で算出できる。
【0023】
【数3】
【0024】
ただし、Hはアンテナ1の高さ、角度βは式(4)で求める。
【0025】
【数4】
【0026】
そして、ステップ105では、ステップ104で算出した観測点の標高の分布を出力格納部6へ格納する。
【0027】
以上のように、画素のずれ量δs(m,n)を使うことでGCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができる。また、位相アンラップを行う必要が無いことから、従来の方法より計算機のメモリ使用量が少なくて済み、計算時間が短くて済む。さらに、位相アンラップを行う必要が無いことから、急峻な地形の観測でも大きな誤差を生じることがない。
【0028】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置について図4から図7までを参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【0029】
上記の実施の形態1は、各画素のずれ量を直接距離に変換し、三角測量を行った。この実施の形態2では、ずれ量から絶対位相差を求め、アンラップで得られた相対位相差を絶対位相差に変換する際GCPの代わりに用いる。
【0030】
図4において、この実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置は、アンテナ位置情報格納部3Aと、アンテナ1画像格納部(第1のアンテナ画像格納部)3Bと、アンテナ2画像格納部(第2のアンテナ画像格納部)3Cと、基準画素処理部7と、距離算出部8と、三角測量部5と、出力格納部6とが設けられている。
【0031】
基準画素処理部7は、基準画素選択部71と、基準画素ずれ量算出部72と、基準画素ずれ量/距離差変換部73と、基準画素距離差/絶対位相差変換部74とが設けられている。
【0032】
距離算出部8は、基準画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部81と、位相差分布算出部82と、位相アンラップ処理部83と、相対位相差/絶対位相差変換部84と、絶対位相差/距離差変換部85と、アンテナ2距離算出部86とが設けられている。
【0033】
基準画素選択部71は、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像から処理の基準となる基準画素を一つ選択し、その画素のスラントレンジ及びアジマスの座標(m,n)を基準画素ずれ量算出部72に伝える。また、基準画素ずれ量算出部72は、基準画素の示す観測点について、アンテナ1の画像とアンテナ2の画像における位置のずれを算出する。また、基準画素ずれ量/距離差変換部73は、基準画素ずれ量算出部72で算出したずれ量を距離の差に変換する。さらに、基準画素距離差/絶対位相差変換部74は、基準画素ずれ量/距離差変換部73の出力である距離差を基準画素の絶対位相差に変換する。
【0034】
基準画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部81は、基準画素ずれ量算出部72で算出した基準画素のずれ量を基に、アンテナ2画像格納部3Cに格納されたアンテナ2の画像をリサンプルして出力する。また、位相差分布算出部82は、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像と、基準画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部81の出力であるアンテナ2の画像の位相差の分布を算出し、位相差分布図を作成する。また、位相アンラップ処理部83は、位相差分布算出部82で作成した位相差分布図に位相アンラップ処理を施し、相対位相差分布図を作成する。また、相対位相差/絶対位相差変換部84は、位相アンラップ処理部83で求めた相対位相差分布図を、基準画素距離差/絶対位相差変換部74の出力である基準画素の絶対位相を用いて絶対位相差分布図に変換する。また、絶対位相差/距離差変換部85は、絶対位相差分布図を観測点と各アンテナの距離差に変換する。さらに、アンテナ2距離算出部86は、アンテナ2距離算出部43と同様に、アンテナ1の画像から得られる各画素の示す観測点の距離と、絶対位相差/距離差変換部85の出力結果の距離差を入力とし、アンテナ2の各画素の距離を算出する。
【0035】
つぎに、この実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。図5は、この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【0036】
まず、ステップ201において、基準画素選択部71は、アンテナ1の画像の中から以降の処理で基準とする観測点の画素を選択する。以降ではこの画素を基準画素、その画素が示す観測点を基準観測点と呼ぶ。
【0037】
次に、ステップ202において、基準画素ずれ量算出部72は、基準観測点に対する、アンテナ2の画像上での同じ観測点の位置のずれの大きさを算出する。この基準画素のずれの大きさは最適化手法などにより算出される。その結果、基準画素のずれの大きさが、スラントレンジ方向δs、アジマス方向δaと求められる。
【0038】
次に、ステップ203では、基準画素ずれ量/距離差変換部73は、基準画素のスラントレンジ方向のずれ量から、アンテナ1と基準観測点(画素)の距離r1と、アンテナ2と基準観測点(画素)の距離r2の差Δs=r2−r1を式(5)で算出する。
【0039】
【数5】
【0040】
ここで、dsはスラントレンジ方向の一画素の幅である。
【0041】
続く、ステップ204では、基準画素距離差/絶対位相差変換部74は、この距離差Δsから絶対位相の差を求める。ここで絶対位相とは、アンテナと観測点との距離に比例する値であり、アンテナと位置(m,n)にある観測点の距離がr(m,n)のときの絶対位相φ(m,n)は式(6)となる。
【0042】
【数6】
【0043】
これから、基準観測点をアンテナ1で観測した場合の絶対位相φ1とアンテナ2で観測した場合の絶対位相φ2の差φpは式(7)で求められる。
【0044】
【数7】
【0045】
次に、ステップ205では、基準画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部81は、ステップ202で算出した基準画素のずれ量δs、δaを基にアンテナ2の画像をリサンプルする。これは、図6に示すように、アンテナ2の画像全体において、アンテナ2の画像の各画素の中心に対してスラントレンジが−δs、アジマスが−δaずれた位置の点の値を、アンテナ2の画像の画素値を補間して求め、その値を新たに画素値とする。この操作により、アンテナ1の画像の各画素の示す観測点と、アンテナ2の画像の各画素の示す観測点を一致させる。
【0046】
次に、ステップ206では、位相差分布算出部82は、アンテナ1の画像とリサンプルしたアンテナ2の画像の、同一の観測点を示す画素の位相の差を求めることで位相差分布を算出する。
【0047】
次に、ステップ207は、位相アンラップ処理部83は、位相差分布を位相アンラップ処理して相対位相差を得る。ステップ206で求めた位相差は、図7に示すように、各観測点の絶対位相の差を周期2πで折り返した値である。この折り返しを展開する処理をアンラップ処理と言う。アンラップ処理の方法は、位相差の折り返しが起こった部分の傾きが滑らかにつながるように位相差をつなげ合わせる方法などがある。ただし、位相アンラップ法はこれに限らず、最適化手法を用いる方法やブランチカット法など、複数ある。位相差分布をアンラップ処理した結果は、図7に示すように、絶対位相差の分布全体に一定値のオフセット位相を加えた分布となる。この分布を相対位相差分布と呼ぶ。
【0048】
次に、ステップ208では、相対位相差/絶対位相差変換部84は、ステップ204で得た基準画素の絶対位相差を用いることで、相対位相差の分布の位相オフセットを補正し、絶対位相差の分布を得る。相対位相差の分布φΔr(m,n)を、基準画素の絶対位相差をφpとすると、絶対位相差の分布φΔr(m,n)は式(8)で求められる。
【0049】
【数8】
【0050】
次に、ステップ209では、絶対位相差/距離差変換部85は、絶対位相差の分布から、アンテナ1と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r1(m,n)と、アンテナ2と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r2(m,n)の差Δs(m,n)=r2(m,n)−r1(m,n)を、式(6)に示した絶対位相と距離の関係を基に、式(9)で算出する。
【0051】
【数9】
【0052】
さらに、上記の実施の形態1のステップ103〜105と同じステップ210〜212を経て、算出した観測点の標高の分布を出力格納部6へ格納し、終了する。
【0053】
以上のように、基準画素のずれ量δpを使うことでGCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができる。
【0054】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置について図8から図11までを参照しながら説明する。図8は、この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【0055】
上記の実施の形態2は、アンテナ1の画像とアンテナ2の画像の位相差分布を位相アンラップ処理部83と相対位相差/絶対位相差変換部84に出力して絶対位相差分布を求めた。この実施の形態3では、アンラップ処理と相対位相差/絶対位相差変換の代わりに、損失位相量補正部13で絶対位相差分布を求める。
【0056】
図8において、この実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置は、アンテナ位置情報格納部3Aと、アンテナ1画像格納部(第1のアンテナ画像格納部)3Bと、アンテナ2画像格納部(第2のアンテナ画像格納部)3Cと、損失位相量算出部9と、距離算出部10と、三角測量部5と、出力格納部6とが設けられている。
【0057】
損失位相量算出部9は、全画素ずれ量算出部91と、ずれ量/距離差変換部92と、距離差/絶対位相差変換部93と、損失位相量分布算出部94とが設けられている。
【0058】
距離算出部10は、全画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部11と、位相差分布算出部12と、損失位相量補正部13と、絶対位相差/距離差変換部14と、アンテナ2距離算出部15とが設けられている。
【0059】
全画素ずれ量算出部91は、全画素ずれ量算出部41と同様に、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像と、アンテナ2画像格納部3Cに格納されたアンテナ2の画像を入力とし、これらから算出したアンテナ1の画像に対するアンテナ2の画像の全画素のずれを、画像のビーム方向(スラントレンジ方向)及びプラットフォームの移動する方向(アジマス方向)についてそれぞれ算出し出力する。また、ずれ量/距離差変換部92は、ずれ量/距離差変換部42と同様に、全画素ずれ量算出部91で算出したずれ量のうち、スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、出力する。また、距離差/絶対位相差変換部93は、ずれ量/距離差変換部92の出力である、アンテナ1と観測点の距離とアンテナ2と観測点の距離の差の分布を絶対位相差に変換する。また、損失位相量分布算出部94は、絶対位相差の分布から、位相の折り返しのために絶対位相差が失った位相量(損失位相量)を算出する。
【0060】
全画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部11は、全画素ずれ量算出部91で算出した全ての画素のずれ量と、アンテナ2画像格納部3Cに格納されたアンテナ2の画像を入力とし、アンテナ2の画像をリサンプルして出力する。また、位相差分布算出部12は、位相差分布算出部82と同様に、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像と、全画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部11の出力であるアンテナ2の画像の位相差の分布を算出し、位相差分布図を作成する。また、損失位相量補正部13は、位相差分布算出部12で算出した位相差分布と、損失位相量分布算出部94で算出した位相量を入力とし、絶対位相差を出力する。また、絶対位相差/距離差変換部14は、絶対位相差/距離差変換部85と同様に、絶対位相差分布図からアンテナ2の各画素の距離を算出する。さらに、アンテナ2距離算出部15は、アンテナ2距離算出部43と同様に、アンテナ1の画像から得られる各画素の示す観測点の距離と、絶対位相差/距離差変換部14の出力結果の距離差を入力とし、アンテナ2の各画素の距離を算出する。
【0061】
つぎに、この実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【0062】
まず、ステップ301において、全画素ずれ量算出部91は、アンテナ1の画像の各画素が示す観測点に対する、アンテナ2の画像上での同じ観測点の位置のずれの大きさを算出する。この画素のずれの大きさは、最適化手法などにより算出される。このほかに、アンテナとハードウェア内の記録装置との距離から求める方法や、プラットフォームの移動速度から算出する方法などがある。ステップ301の計算の結果、アンテナ1の画像におけるスラントレンジ方向およびアジマス方向を軸とする座標(m,n)の観測点(画素)のずれの大きさが、スラントレンジ方向δs(m,n)、アジマス方向δa(m,n)と求められる。
【0063】
次に、ステップ302では、ずれ量/距離差変換部92は、観測点と各アンテナの距離の差を求める。このステップ302では、スラントレンジ方向のずれ量から、アンテナ1と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r1(m,n)と、アンテナ2と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r2(m,n)の差Δs(m,n)=r2(m,n)−r1(m,n)を式(1)で算出する。
【0064】
次に、ステップ303では、距離差/絶対位相差変換部93は、ステップ302で得た各画素の距離差をΔs(m,n)とすると、式(9)とは逆に、式(10)により距離差から絶対位相差分布φΔp(m,n)を求める。
【0065】
【数10】
【0066】
次に、ステップ304では、損失位相量分布算出部94は、ステップ303で求めた絶対位相差分布φΔp(m,n)から損失位相量分布を算出する。ここで述べる損失位相量分布とは、図10に示すように、絶対位相差分布と、それを周期2πで折り返した値の差であり、位相の折り返しにより絶対位相差から失われた位相量である。この損失位相量分布φL(m,n)は、絶対位相分布φΔp(m,n)から式(11)で求められる。
【0067】
【数11】
【0068】
ただし、W[φΔp(m,n)]は、φΔp(m,n)を周期2πで折り返した値である。
【0069】
次に、ステップ305では、アンテナ2画像リサンプル部11は、ステップ301で求めた画素毎のずれ量を用いてリサンプルする。これは、図11に示すように、例えば、アンテナ2の画像の座標(m,n)に位置する画素の中心に対して、スラントレンジが−δs(m,n)、アジマスが−δa(m,n)ずれた位置の点の値を、アンテナ2の画像の画素値を補間して求め、その値を新たに画素値とする。これを各画素毎に行い、各画素の画素値を更新する。この操作により、アンテナ1の画像の各画素の示す観測点と、アンテナ2の画像の各画素の示す観測点を一致させる。
【0070】
次に、ステップ306では、位相差分布算出部12は、アンテナ1の画像とリサンプルしたアンテナ2の画像の、同一の観測点を示す画素の位相の差を求めることで位相差分布を算出する。
【0071】
次に、ステップ307では、損失位相量補正部13は、ステップ304で算出した損失位相量分布とステップ306で算出した位相差分布の和をとり、絶対位相差分布を得る。ここで得られる絶対位相差φΔp(m,n)は、ステップ306で得られた、アンテナ1の画像とアンテナ2の画像の位相差分布をψ(m,n)とすると、式(12)で与えられる。
【0072】
【数12】
【0073】
この絶対位相差分布φΔp′(m,n)を用いて、さらに上記の実施の形態1のステップ103〜105と同じステップ309〜311を経て、算出した観測点の標高の分布を出力格納部6へ格納し、終了する。
【0074】
以上のように画素のずれ量δs(m,n)を使うことでGCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができる。また、位相アンラップを行う必要が無いことから、従来の方法より計算機のメモリ使用量が少なくて済み、計算時間が短くて済む。さらに、位相アンラップを行う必要が無いことから、急峻な地形の観測でも大きな誤差を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置においてプラットフォームと観測点との幾何的関係を示した図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作を説明するための図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0076】
3A アンテナ位置情報格納部、3B アンテナ1画像格納部、3C アンテナ2画像格納部、4 距離算出部、5 三角測量部、6 出力格納部、7 基準画素処理部、8 距離算出部、9 損失位相量算出部、10 距離算出部、11 アンテナ2画像リサンプル部、12 位相差分布算出部、13 損失位相量補正部、14 絶対位相差/距離差変換部、15 アンテナ2距離算出部、41 全画素ずれ量算出部、42 ずれ量/距離差変換部、43 アンテナ2距離算出部、71 基準画素選択部、72 基準画素ずれ量算出部、73 基準画素ずれ量/距離差変換部、74 基準画素距離差/絶対位相差変換部、81 アンテナ2画像リサンプル部、82 位相差分布算出部、83 位相アンラップ処理部、84 相対位相差/絶対位相差変換部、85 絶対位相差/距離差変換部、86 距離算出部、91 全画素ずれ量算出部、92 ずれ量/距離差変換部、93 距離差/絶対位相差変換部、94 損失位相量分布算出部。
【技術分野】
【0001】
この発明は、位置が異なる複数のアンテナで撮像したレーダ画像から地表の標高を得る画像レーダ信号処理装置において、従来必要であった地表上の基準点が不要で、複数のレーダ画像での地表上の観測点の表示位置の違いから、地表の標高を三角測量の原理で計測する画像レーダ信号処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
画像レーダ装置は、航空機や衛星などの移動するプラットフォームから地表を観測するレーダであり、観測した領域の画像を作成できる(例えば、非特許文献1参照)。作成した画像の各画素は地表の観測点に相当し、画素値は観測点での電波の反射波に相当する。画像レーダによる標高計測では、プラットフォームに2つのアンテナを搭載、もしくは1つのアンテナで異なる軌道を飛んで2回観測することで、観測領域の画像を2枚作成する。これらの画像で地表の標高計測を行うためには、各アンテナの再生画像の各画素が同一の観測対象を表すことと、観測点と各アンテナ間の距離の差がわかることが必要である。この距離差がわかると、三角測量の原理に基づいて式(2)、(3)、(4)から標高を求めることが出来る。各画素が同一の観測点を表す必要があることについては、アンテナの位置が異なるために2つの再生画像の各画素の示す観測点は一致しないので、これらを合わせるレジストレーション処理を行う。この処理では、アンテナ2の画像の任意の一画素と、アンテナ1のそれに相当する観測領域の画素のずれの大きさを推定し、そのずれの大きさに合わせてアンテナ2の画像の画素の割り振りを変更する。次に、アンテナ1と観測点の距離は、アンテナ1よりパルス波を放射してから地表で反射され、アンテナ1で受信されるまでの時間にc/2(cは光速)を乗ずることで求められる。アンテナ2と観測点の距離は、アンテナ1とアンテナ2の受信波の位相差を求め、位相差を距離差に変換し,この距離差と求めたアンテナ1と観測点間の距離の和として求める。位相差から距離差への変換は、距離に比例する位相差(絶対位相差)に定数(波長/2π)を掛けることで行う。ただし、アンテナ1とアンテナ2の受信波の位相差は,絶対位相差を周期2πで折り畳んだ値であるので、この位相差から得られる距離差はあいまいさを持ち、波長の整数倍でしかわからない。このあいまいさを解くためには、少なくとも一観測点について距離差の真値が必要である。このため、従来はGCP(Ground Control Point)と呼ばれる地上の基準点を前もって測位し、GCPとアンテナとの位置関係から距離差の真値を求めていた。そして、この距離差の真値から各観測点の距離差を求め、三角測量により距離差を求めた。
【0003】
【非特許文献1】H.A.Zebker, R.M.Goldstein ”Topographic Mapping from Interferometric Synthetic Aperture Radar Observations”, Proceedings of ISAP '85, pp.647-650.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来の相対位相差から絶対位相差に補正する方法では、GCPを用いる必要があるため、必ず観測領域を訪れ、GCPの緯度、経度などを測位する必要がある。しかし、観測領域は立ち入り可能とは限らず、立ち入り可能としても測位には大変な手間が掛かるという問題点があった。また、距離差を求める際に用いていた位相アンラップ処理は、一画素単位で複雑な演算を行うため、多量の計算機のメモリを使用し、計算に長時間を要するという問題点があった。さらに、急峻な地形では、アンラップ処理によって大きい誤差が生じるという問題点があった。
【0005】
この発明は、上述のような課題を解決するためになされたもので、その目的は、GCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができ、また、従来の方法より計算機のメモリ使用量が少なくて済み、計算時間も短くでき、さらに、急峻な地形の観測でも大きな誤差を生じることがない画像レーダ信号処理装置を得るものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この発明に係る画像レーダ信号処理装置は、画像レーダの第1及び第2のアンテナの計測した位置が格納されたアンテナ位置情報格納部と、前記第1のアンテナで観測して得られた第1の画像が格納された第1のアンテナ画像格納部と、前記第1のアンテナと異なる位置の前記第2のアンテナで前記第1のアンテナと同じ領域を観測して得られた第2の画像が格納された第2のアンテナ画像格納部と、前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及び前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像に基づき、前記第1の画像に対する前記第2の画像のスラントレンジ方向及びアジマス方向の全画素のずれ量を求め、前記ずれ量のうち、前記スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部と、前記アンテナ位置情報格納部に格納された第1及び第2のアンテナの位置、前記距離算出部で算出した前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記第1のアンテナ画像格納部に格納された前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部と、前記三角測量部により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部とを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
この発明に係る画像レーダ信号処理装置は、GCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができ、また、従来の方法より計算機のメモリ使用量が少なくて済み、計算時間も短くでき、さらに、急峻な地形の観測でも大きな誤差を生じることがないという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
実施の形態1.
この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置について図1から図3までを参照しながら説明する。図1は、この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。なお、以降では、各図中、同一符号は同一又は相当部分を示す。
【0009】
図1において、この実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置は、アンテナ位置情報格納部3Aと、アンテナ1画像格納部(第1のアンテナ画像格納部)3Bと、アンテナ2画像格納部(第2のアンテナ画像格納部)3Cと、距離算出部4と、三角測量部5と、出力格納部6とが設けられている。
【0010】
また、距離算出部4は、全画素ずれ量算出部41と、ずれ量/距離差変換部42と、アンテナ2距離算出部43とが設けられている。
【0011】
アンテナ位置情報格納部3Aは、慣性航法装置やGPS(Global Positioning System)などで計測した観測用のアンテナ1及び2の位置を格納する。アンテナ1画像格納部3Bは、画像レーダのアンテナ1で観測し再生した画像を格納する。アンテナ2画像格納部3Cは、アンテナ1と異なる位置のアンテナ2を用いてアンテナ1と同じ領域を観測し再生した画像を格納する。
【0012】
全画素ずれ量算出部41は、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像と、アンテナ2画像格納部3Cに格納されたアンテナ2の画像を入力とし、これらから算出したアンテナ1の画像に対するアンテナ2の画像の全画素のずれを、画像のビーム方向(スラントレンジ方向)及びプラットフォームの移動する方向(アジマス方向)についてそれぞれ算出して出力する。また、ずれ量/距離差変換部42は、全画素ずれ量算出部41で算出したずれ量のうち、スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換して出力する。さらに、アンテナ2距離算出部43は、アンテナ1の画像から得られる各画素の示す観測点の距離と、ずれ量/距離差変換部42の出力結果である距離差を入力とし、アンテナ2の各画素の距離を算出する。
【0013】
三角測量部5は、アンテナ位置情報格納部3Aに格納されたアンテナの位置情報と、アンテナ2距離算出部43で算出したアンテナ2の各画素の示す観測点の距離と、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像からわかるアンテナ1の各画素の示す観測点の距離を入力とし、各画素の標高を出力する。また、出力格納部6は、三角測量部5の出力結果である各画素の示す観測点の標高分布図を格納する。
【0014】
ここでは各画素の標高を算出することを説明しているが、地形の高さの算出結果は標高に限らない。アンテナなどの高さに関する位置情報を標高以外の座標で与えることで、標高以外の分布図を得ることが出来る。例えば、楕円体高、基準平面を任意に設定した場合の局所座標系などがある。
【0015】
つぎに、この実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。図2は、この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【0016】
まず、ステップ101において、全画素ずれ量算出部41は、アンテナ1の画像の各画素が示す観測点に対する、アンテナ2の画像上での同じ観測点の位置のずれの大きさを算出する。この画素のずれの大きさは、最適化手法などにより算出される。このほかに、アンテナとハードウェア内の記録装置との距離から求める方法や、プラットフォームの移動速度から算出する方法などがある。このステップ101の計算の結果、アンテナ1の画像におけるスラントレンジ方向およびアジマス方向を軸とする座標(m,n)の観測点(画素)のずれの大きさが、スラントレンジ方向δs(m,n)、アジマス方向δa(m,n)と求められる。
【0017】
次に、ステップ102では、ずれ量/距離差変換部42は、観測点と各アンテナの距離の差を求める。図3は、観測点のアジマスの位置がnのときのプラットフォームと観測点との幾何的関係を示した図である。このステップ102では、スラントレンジ方向のずれ量から、アンテナ1と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r1(m,n)と、アンテナ2と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r2(m,n)の差Δs(m,n)=r2(m,n)−r1(m,n)を式(1)で算出する。
【0018】
【数1】
【0019】
ここで、dsはスラントレンジ方向の一画素の大きさである。これを全ての画素について行う。
【0020】
さらに、ステップ103では、アンテナ2距離算出部43は、各画素について、アンテナ1の画像からわかる距離r1(m,n)と、ステップ102で求めた距離差Δs(m,n)から式(2)により距離r2(m,n)を求める。
【0021】
【数2】
【0022】
続くステップ104では、三角測量部5は、三角測量により観測点の高さを測る。アンテナ1とアンテナ2の位置はプラットフォームに搭載された慣性航法装置やGPSで計測する。ただし、アンテナの位置計測はこれらに限らない。例えば、レーダ高度計による計測、干渉計による計測などが挙げられる。図3に示すように、アンテナ1及び2の位置と、アンテナ1と観測点の距離r1(m,n)、アンテナ2と観測点の距離r2(m,n)が既知であり、アンテナの指向方向が地表を向いていることから、観測点の標高hは式(3)で算出できる。
【0023】
【数3】
【0024】
ただし、Hはアンテナ1の高さ、角度βは式(4)で求める。
【0025】
【数4】
【0026】
そして、ステップ105では、ステップ104で算出した観測点の標高の分布を出力格納部6へ格納する。
【0027】
以上のように、画素のずれ量δs(m,n)を使うことでGCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができる。また、位相アンラップを行う必要が無いことから、従来の方法より計算機のメモリ使用量が少なくて済み、計算時間が短くて済む。さらに、位相アンラップを行う必要が無いことから、急峻な地形の観測でも大きな誤差を生じることがない。
【0028】
実施の形態2.
この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置について図4から図7までを参照しながら説明する。図4は、この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【0029】
上記の実施の形態1は、各画素のずれ量を直接距離に変換し、三角測量を行った。この実施の形態2では、ずれ量から絶対位相差を求め、アンラップで得られた相対位相差を絶対位相差に変換する際GCPの代わりに用いる。
【0030】
図4において、この実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置は、アンテナ位置情報格納部3Aと、アンテナ1画像格納部(第1のアンテナ画像格納部)3Bと、アンテナ2画像格納部(第2のアンテナ画像格納部)3Cと、基準画素処理部7と、距離算出部8と、三角測量部5と、出力格納部6とが設けられている。
【0031】
基準画素処理部7は、基準画素選択部71と、基準画素ずれ量算出部72と、基準画素ずれ量/距離差変換部73と、基準画素距離差/絶対位相差変換部74とが設けられている。
【0032】
距離算出部8は、基準画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部81と、位相差分布算出部82と、位相アンラップ処理部83と、相対位相差/絶対位相差変換部84と、絶対位相差/距離差変換部85と、アンテナ2距離算出部86とが設けられている。
【0033】
基準画素選択部71は、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像から処理の基準となる基準画素を一つ選択し、その画素のスラントレンジ及びアジマスの座標(m,n)を基準画素ずれ量算出部72に伝える。また、基準画素ずれ量算出部72は、基準画素の示す観測点について、アンテナ1の画像とアンテナ2の画像における位置のずれを算出する。また、基準画素ずれ量/距離差変換部73は、基準画素ずれ量算出部72で算出したずれ量を距離の差に変換する。さらに、基準画素距離差/絶対位相差変換部74は、基準画素ずれ量/距離差変換部73の出力である距離差を基準画素の絶対位相差に変換する。
【0034】
基準画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部81は、基準画素ずれ量算出部72で算出した基準画素のずれ量を基に、アンテナ2画像格納部3Cに格納されたアンテナ2の画像をリサンプルして出力する。また、位相差分布算出部82は、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像と、基準画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部81の出力であるアンテナ2の画像の位相差の分布を算出し、位相差分布図を作成する。また、位相アンラップ処理部83は、位相差分布算出部82で作成した位相差分布図に位相アンラップ処理を施し、相対位相差分布図を作成する。また、相対位相差/絶対位相差変換部84は、位相アンラップ処理部83で求めた相対位相差分布図を、基準画素距離差/絶対位相差変換部74の出力である基準画素の絶対位相を用いて絶対位相差分布図に変換する。また、絶対位相差/距離差変換部85は、絶対位相差分布図を観測点と各アンテナの距離差に変換する。さらに、アンテナ2距離算出部86は、アンテナ2距離算出部43と同様に、アンテナ1の画像から得られる各画素の示す観測点の距離と、絶対位相差/距離差変換部85の出力結果の距離差を入力とし、アンテナ2の各画素の距離を算出する。
【0035】
つぎに、この実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。図5は、この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【0036】
まず、ステップ201において、基準画素選択部71は、アンテナ1の画像の中から以降の処理で基準とする観測点の画素を選択する。以降ではこの画素を基準画素、その画素が示す観測点を基準観測点と呼ぶ。
【0037】
次に、ステップ202において、基準画素ずれ量算出部72は、基準観測点に対する、アンテナ2の画像上での同じ観測点の位置のずれの大きさを算出する。この基準画素のずれの大きさは最適化手法などにより算出される。その結果、基準画素のずれの大きさが、スラントレンジ方向δs、アジマス方向δaと求められる。
【0038】
次に、ステップ203では、基準画素ずれ量/距離差変換部73は、基準画素のスラントレンジ方向のずれ量から、アンテナ1と基準観測点(画素)の距離r1と、アンテナ2と基準観測点(画素)の距離r2の差Δs=r2−r1を式(5)で算出する。
【0039】
【数5】
【0040】
ここで、dsはスラントレンジ方向の一画素の幅である。
【0041】
続く、ステップ204では、基準画素距離差/絶対位相差変換部74は、この距離差Δsから絶対位相の差を求める。ここで絶対位相とは、アンテナと観測点との距離に比例する値であり、アンテナと位置(m,n)にある観測点の距離がr(m,n)のときの絶対位相φ(m,n)は式(6)となる。
【0042】
【数6】
【0043】
これから、基準観測点をアンテナ1で観測した場合の絶対位相φ1とアンテナ2で観測した場合の絶対位相φ2の差φpは式(7)で求められる。
【0044】
【数7】
【0045】
次に、ステップ205では、基準画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部81は、ステップ202で算出した基準画素のずれ量δs、δaを基にアンテナ2の画像をリサンプルする。これは、図6に示すように、アンテナ2の画像全体において、アンテナ2の画像の各画素の中心に対してスラントレンジが−δs、アジマスが−δaずれた位置の点の値を、アンテナ2の画像の画素値を補間して求め、その値を新たに画素値とする。この操作により、アンテナ1の画像の各画素の示す観測点と、アンテナ2の画像の各画素の示す観測点を一致させる。
【0046】
次に、ステップ206では、位相差分布算出部82は、アンテナ1の画像とリサンプルしたアンテナ2の画像の、同一の観測点を示す画素の位相の差を求めることで位相差分布を算出する。
【0047】
次に、ステップ207は、位相アンラップ処理部83は、位相差分布を位相アンラップ処理して相対位相差を得る。ステップ206で求めた位相差は、図7に示すように、各観測点の絶対位相の差を周期2πで折り返した値である。この折り返しを展開する処理をアンラップ処理と言う。アンラップ処理の方法は、位相差の折り返しが起こった部分の傾きが滑らかにつながるように位相差をつなげ合わせる方法などがある。ただし、位相アンラップ法はこれに限らず、最適化手法を用いる方法やブランチカット法など、複数ある。位相差分布をアンラップ処理した結果は、図7に示すように、絶対位相差の分布全体に一定値のオフセット位相を加えた分布となる。この分布を相対位相差分布と呼ぶ。
【0048】
次に、ステップ208では、相対位相差/絶対位相差変換部84は、ステップ204で得た基準画素の絶対位相差を用いることで、相対位相差の分布の位相オフセットを補正し、絶対位相差の分布を得る。相対位相差の分布φΔr(m,n)を、基準画素の絶対位相差をφpとすると、絶対位相差の分布φΔr(m,n)は式(8)で求められる。
【0049】
【数8】
【0050】
次に、ステップ209では、絶対位相差/距離差変換部85は、絶対位相差の分布から、アンテナ1と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r1(m,n)と、アンテナ2と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r2(m,n)の差Δs(m,n)=r2(m,n)−r1(m,n)を、式(6)に示した絶対位相と距離の関係を基に、式(9)で算出する。
【0051】
【数9】
【0052】
さらに、上記の実施の形態1のステップ103〜105と同じステップ210〜212を経て、算出した観測点の標高の分布を出力格納部6へ格納し、終了する。
【0053】
以上のように、基準画素のずれ量δpを使うことでGCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができる。
【0054】
実施の形態3.
この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置について図8から図11までを参照しながら説明する。図8は、この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【0055】
上記の実施の形態2は、アンテナ1の画像とアンテナ2の画像の位相差分布を位相アンラップ処理部83と相対位相差/絶対位相差変換部84に出力して絶対位相差分布を求めた。この実施の形態3では、アンラップ処理と相対位相差/絶対位相差変換の代わりに、損失位相量補正部13で絶対位相差分布を求める。
【0056】
図8において、この実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置は、アンテナ位置情報格納部3Aと、アンテナ1画像格納部(第1のアンテナ画像格納部)3Bと、アンテナ2画像格納部(第2のアンテナ画像格納部)3Cと、損失位相量算出部9と、距離算出部10と、三角測量部5と、出力格納部6とが設けられている。
【0057】
損失位相量算出部9は、全画素ずれ量算出部91と、ずれ量/距離差変換部92と、距離差/絶対位相差変換部93と、損失位相量分布算出部94とが設けられている。
【0058】
距離算出部10は、全画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部11と、位相差分布算出部12と、損失位相量補正部13と、絶対位相差/距離差変換部14と、アンテナ2距離算出部15とが設けられている。
【0059】
全画素ずれ量算出部91は、全画素ずれ量算出部41と同様に、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像と、アンテナ2画像格納部3Cに格納されたアンテナ2の画像を入力とし、これらから算出したアンテナ1の画像に対するアンテナ2の画像の全画素のずれを、画像のビーム方向(スラントレンジ方向)及びプラットフォームの移動する方向(アジマス方向)についてそれぞれ算出し出力する。また、ずれ量/距離差変換部92は、ずれ量/距離差変換部42と同様に、全画素ずれ量算出部91で算出したずれ量のうち、スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、出力する。また、距離差/絶対位相差変換部93は、ずれ量/距離差変換部92の出力である、アンテナ1と観測点の距離とアンテナ2と観測点の距離の差の分布を絶対位相差に変換する。また、損失位相量分布算出部94は、絶対位相差の分布から、位相の折り返しのために絶対位相差が失った位相量(損失位相量)を算出する。
【0060】
全画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部11は、全画素ずれ量算出部91で算出した全ての画素のずれ量と、アンテナ2画像格納部3Cに格納されたアンテナ2の画像を入力とし、アンテナ2の画像をリサンプルして出力する。また、位相差分布算出部12は、位相差分布算出部82と同様に、アンテナ1画像格納部3Bに格納されたアンテナ1の画像と、全画素を用いたアンテナ2画像リサンプル部11の出力であるアンテナ2の画像の位相差の分布を算出し、位相差分布図を作成する。また、損失位相量補正部13は、位相差分布算出部12で算出した位相差分布と、損失位相量分布算出部94で算出した位相量を入力とし、絶対位相差を出力する。また、絶対位相差/距離差変換部14は、絶対位相差/距離差変換部85と同様に、絶対位相差分布図からアンテナ2の各画素の距離を算出する。さらに、アンテナ2距離算出部15は、アンテナ2距離算出部43と同様に、アンテナ1の画像から得られる各画素の示す観測点の距離と、絶対位相差/距離差変換部14の出力結果の距離差を入力とし、アンテナ2の各画素の距離を算出する。
【0061】
つぎに、この実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作について図面を参照しながら説明する。図9は、この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【0062】
まず、ステップ301において、全画素ずれ量算出部91は、アンテナ1の画像の各画素が示す観測点に対する、アンテナ2の画像上での同じ観測点の位置のずれの大きさを算出する。この画素のずれの大きさは、最適化手法などにより算出される。このほかに、アンテナとハードウェア内の記録装置との距離から求める方法や、プラットフォームの移動速度から算出する方法などがある。ステップ301の計算の結果、アンテナ1の画像におけるスラントレンジ方向およびアジマス方向を軸とする座標(m,n)の観測点(画素)のずれの大きさが、スラントレンジ方向δs(m,n)、アジマス方向δa(m,n)と求められる。
【0063】
次に、ステップ302では、ずれ量/距離差変換部92は、観測点と各アンテナの距離の差を求める。このステップ302では、スラントレンジ方向のずれ量から、アンテナ1と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r1(m,n)と、アンテナ2と位置(m,n)の観測点(画素)の距離r2(m,n)の差Δs(m,n)=r2(m,n)−r1(m,n)を式(1)で算出する。
【0064】
次に、ステップ303では、距離差/絶対位相差変換部93は、ステップ302で得た各画素の距離差をΔs(m,n)とすると、式(9)とは逆に、式(10)により距離差から絶対位相差分布φΔp(m,n)を求める。
【0065】
【数10】
【0066】
次に、ステップ304では、損失位相量分布算出部94は、ステップ303で求めた絶対位相差分布φΔp(m,n)から損失位相量分布を算出する。ここで述べる損失位相量分布とは、図10に示すように、絶対位相差分布と、それを周期2πで折り返した値の差であり、位相の折り返しにより絶対位相差から失われた位相量である。この損失位相量分布φL(m,n)は、絶対位相分布φΔp(m,n)から式(11)で求められる。
【0067】
【数11】
【0068】
ただし、W[φΔp(m,n)]は、φΔp(m,n)を周期2πで折り返した値である。
【0069】
次に、ステップ305では、アンテナ2画像リサンプル部11は、ステップ301で求めた画素毎のずれ量を用いてリサンプルする。これは、図11に示すように、例えば、アンテナ2の画像の座標(m,n)に位置する画素の中心に対して、スラントレンジが−δs(m,n)、アジマスが−δa(m,n)ずれた位置の点の値を、アンテナ2の画像の画素値を補間して求め、その値を新たに画素値とする。これを各画素毎に行い、各画素の画素値を更新する。この操作により、アンテナ1の画像の各画素の示す観測点と、アンテナ2の画像の各画素の示す観測点を一致させる。
【0070】
次に、ステップ306では、位相差分布算出部12は、アンテナ1の画像とリサンプルしたアンテナ2の画像の、同一の観測点を示す画素の位相の差を求めることで位相差分布を算出する。
【0071】
次に、ステップ307では、損失位相量補正部13は、ステップ304で算出した損失位相量分布とステップ306で算出した位相差分布の和をとり、絶対位相差分布を得る。ここで得られる絶対位相差φΔp(m,n)は、ステップ306で得られた、アンテナ1の画像とアンテナ2の画像の位相差分布をψ(m,n)とすると、式(12)で与えられる。
【0072】
【数12】
【0073】
この絶対位相差分布φΔp′(m,n)を用いて、さらに上記の実施の形態1のステップ103〜105と同じステップ309〜311を経て、算出した観測点の標高の分布を出力格納部6へ格納し、終了する。
【0074】
以上のように画素のずれ量δs(m,n)を使うことでGCPを使用しないため、現地でのGCP測位の手間を省くことができる。また、位相アンラップを行う必要が無いことから、従来の方法より計算機のメモリ使用量が少なくて済み、計算時間が短くて済む。さらに、位相アンラップを行う必要が無いことから、急峻な地形の観測でも大きな誤差を生じることがない。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図2】この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図3】この発明の実施の形態1に係る画像レーダ信号処理装置においてプラットフォームと観測点との幾何的関係を示した図である。
【図4】この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図5】この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図6】この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作を説明するための図である。
【図7】この発明の実施の形態2に係る画像レーダ信号処理装置の動作を説明するための図である。
【図8】この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の構成を示すブロック図である。
【図9】この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作を示すフローチャートである。
【図10】この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作を説明するための図である。
【図11】この発明の実施の形態3に係る画像レーダ信号処理装置の動作を説明するための図である。
【符号の説明】
【0076】
3A アンテナ位置情報格納部、3B アンテナ1画像格納部、3C アンテナ2画像格納部、4 距離算出部、5 三角測量部、6 出力格納部、7 基準画素処理部、8 距離算出部、9 損失位相量算出部、10 距離算出部、11 アンテナ2画像リサンプル部、12 位相差分布算出部、13 損失位相量補正部、14 絶対位相差/距離差変換部、15 アンテナ2距離算出部、41 全画素ずれ量算出部、42 ずれ量/距離差変換部、43 アンテナ2距離算出部、71 基準画素選択部、72 基準画素ずれ量算出部、73 基準画素ずれ量/距離差変換部、74 基準画素距離差/絶対位相差変換部、81 アンテナ2画像リサンプル部、82 位相差分布算出部、83 位相アンラップ処理部、84 相対位相差/絶対位相差変換部、85 絶対位相差/距離差変換部、86 距離算出部、91 全画素ずれ量算出部、92 ずれ量/距離差変換部、93 距離差/絶対位相差変換部、94 損失位相量分布算出部。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像レーダの第1及び第2のアンテナの計測した位置が格納されたアンテナ位置情報格納部と、
前記第1のアンテナで観測して得られた第1の画像が格納された第1のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナと異なる位置の前記第2のアンテナで前記第1のアンテナと同じ領域を観測して得られた第2の画像が格納された第2のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及び前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像に基づき、前記第1の画像に対する前記第2の画像のスラントレンジ方向及びアジマス方向の全画素のずれ量を求め、前記ずれ量のうち、前記スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部と、
前記アンテナ位置情報格納部に格納された第1及び第2のアンテナの位置、前記距離算出部で算出した前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記第1のアンテナ画像格納部に格納された前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部と、
前記三角測量部により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部と
を備えたことを特徴とする画像レーダ信号処理装置。
【請求項2】
画像レーダの第1及び第2のアンテナの計測した位置が格納されたアンテナ位置情報格納部と、
前記第1のアンテナで観測して得られた第1の画像が格納された第1のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナと異なる位置の前記第2のアンテナで前記第1のアンテナと同じ領域を観測して得られた第2の画像が格納された第2のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像から処理の基準となる、スラントレンジ及びアジマスの座標を持つ基準画素を一つ選択し、前記基準画素の示す観測点について、前記第1及び第2の画像における位置のずれ量を求め、前記ずれ量を距離差に変換し、前記距離差を前記基準画素の絶対位相差に変換する基準画素処理部と、
前記基準画素のずれ量に基づき前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像をリサンプルし、前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及びリサンプルされた第2の画像の位相差を求め、前記位相差を位相の折り返しを展開する位相アンラップ処理を施して相対位相差を求め、前記基準画素の絶対位相差を用いて前記相対位相差を絶対位相差に変換し、前記絶対位相差を観測点と第1及び第2のアンテナの距離差に変換し、前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部と、
前記アンテナ位置情報格納部に格納された第1及び第2のアンテナの位置、前記距離算出部で算出した前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記第1のアンテナ画像格納部に格納された前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部と、
前記三角測量部により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部と
を備えたことを特徴とする画像レーダ信号処理装置。
【請求項3】
画像レーダの第1及び第2のアンテナの計測した位置が格納されたアンテナ位置情報格納部と、
前記第1のアンテナで観測して得られた第1の画像が格納された第1のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナと異なる位置の前記第2のアンテナで前記第1のアンテナと同じ領域を観測して得られた第2の画像が格納された第2のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及び前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像に基づき、前記第1の画像に対する前記第2の画像のスラントレンジ方向及びアジマス方向の全画素のずれ量を求め、前記ずれ量のうち、前記スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、前記距離差を絶対位相差に変換し、前記絶対位相差から、位相の折り返しのために絶対位相差が失った損失位相量を算出する損失位相量算出部と、
前記全画素のずれ量に基づき前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像をリサンプルし、前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及びリサンプルされた第2の画像の位相差を求め、前記位相差及び前記損失位相量の和をとり絶対位相差を得て、前記絶対位相差を観測点と第1及び第2のアンテナの距離差に変換し、前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部と、
前記アンテナ位置情報格納部に格納された第1及び第2のアンテナの位置、前記距離算出部で算出した前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記第1のアンテナ画像格納部に格納された前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部と、
前記三角測量部により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部と
を備えたことを特徴とする画像レーダ信号処理装置。
【請求項1】
画像レーダの第1及び第2のアンテナの計測した位置が格納されたアンテナ位置情報格納部と、
前記第1のアンテナで観測して得られた第1の画像が格納された第1のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナと異なる位置の前記第2のアンテナで前記第1のアンテナと同じ領域を観測して得られた第2の画像が格納された第2のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及び前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像に基づき、前記第1の画像に対する前記第2の画像のスラントレンジ方向及びアジマス方向の全画素のずれ量を求め、前記ずれ量のうち、前記スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部と、
前記アンテナ位置情報格納部に格納された第1及び第2のアンテナの位置、前記距離算出部で算出した前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記第1のアンテナ画像格納部に格納された前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部と、
前記三角測量部により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部と
を備えたことを特徴とする画像レーダ信号処理装置。
【請求項2】
画像レーダの第1及び第2のアンテナの計測した位置が格納されたアンテナ位置情報格納部と、
前記第1のアンテナで観測して得られた第1の画像が格納された第1のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナと異なる位置の前記第2のアンテナで前記第1のアンテナと同じ領域を観測して得られた第2の画像が格納された第2のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像から処理の基準となる、スラントレンジ及びアジマスの座標を持つ基準画素を一つ選択し、前記基準画素の示す観測点について、前記第1及び第2の画像における位置のずれ量を求め、前記ずれ量を距離差に変換し、前記距離差を前記基準画素の絶対位相差に変換する基準画素処理部と、
前記基準画素のずれ量に基づき前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像をリサンプルし、前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及びリサンプルされた第2の画像の位相差を求め、前記位相差を位相の折り返しを展開する位相アンラップ処理を施して相対位相差を求め、前記基準画素の絶対位相差を用いて前記相対位相差を絶対位相差に変換し、前記絶対位相差を観測点と第1及び第2のアンテナの距離差に変換し、前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部と、
前記アンテナ位置情報格納部に格納された第1及び第2のアンテナの位置、前記距離算出部で算出した前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記第1のアンテナ画像格納部に格納された前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部と、
前記三角測量部により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部と
を備えたことを特徴とする画像レーダ信号処理装置。
【請求項3】
画像レーダの第1及び第2のアンテナの計測した位置が格納されたアンテナ位置情報格納部と、
前記第1のアンテナで観測して得られた第1の画像が格納された第1のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナと異なる位置の前記第2のアンテナで前記第1のアンテナと同じ領域を観測して得られた第2の画像が格納された第2のアンテナ画像格納部と、
前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及び前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像に基づき、前記第1の画像に対する前記第2の画像のスラントレンジ方向及びアジマス方向の全画素のずれ量を求め、前記ずれ量のうち、前記スラントレンジ方向のずれ量を距離差に変換し、前記距離差を絶対位相差に変換し、前記絶対位相差から、位相の折り返しのために絶対位相差が失った損失位相量を算出する損失位相量算出部と、
前記全画素のずれ量に基づき前記第2のアンテナ画像格納部に格納された第2の画像をリサンプルし、前記第1のアンテナ画像格納部に格納された第1の画像、及びリサンプルされた第2の画像の位相差を求め、前記位相差及び前記損失位相量の和をとり絶対位相差を得て、前記絶対位相差を観測点と第1及び第2のアンテナの距離差に変換し、前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記距離差に基づき、前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離を算出する距離算出部と、
前記アンテナ位置情報格納部に格納された第1及び第2のアンテナの位置、前記距離算出部で算出した前記第2のアンテナの各画素の示す観測点の距離、及び前記第1のアンテナ画像格納部に格納された前記第1の画像から得られる第1のアンテナの各画素の示す観測点の距離に基づき、三角測量により各画素の標高を求める三角測量部と、
前記三角測量部により得た画像全体の標高分布を格納する出力格納部と
を備えたことを特徴とする画像レーダ信号処理装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2008−216132(P2008−216132A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−55896(P2007−55896)
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月6日(2007.3.6)
【出願人】(000006013)三菱電機株式会社 (33,312)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]