説明

画像信号処理装置、及び電子内視鏡システム

【課題】狭帯域光画像や蛍光画像など輝度が不足する画像を観察するのに好適な画像信号処理装置を提供すること。
【解決手段】画像信号処理装置を、所定の広帯域光よりも波長域が狭い特定波長の光によって照射された被写体を撮影した撮像装置からの画像信号が入力する画像信号入力手段と、入力した画像信号の出力を複数に分岐する分岐手段と、分岐した各画像信号の出力に対して異なるゲイン増幅を行うゲイン増幅手段と、異なるゲイン増幅が行われた各画像信号を合成して各画像信号に対応する画像が一画面内に並んで配置される合成画像を生成する合成画像生成手段と、から構成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像信号をモニタ表示可能に処理する画像信号処理装置に関連し、詳しくは、一画面内において同一の被写体を輝度の異なる複数枚の画像で表示する画像信号処理装置に関する。また、当該画像信号処理装置を有する電子内視鏡システムに関する。
【背景技術】
【0002】
医療機器分野においては、体腔内に狭帯域光や励起光を照射して体腔内の特定部位の強調画像(狭帯域光画像や蛍光画像)を生成して表示する電子内視鏡システムが知られている。この種の電子内視鏡システムの具体的構成例は、特許文献1に記載されている。特許文献1には、術者による診断を内視鏡画像を通じて支援するため、狭帯域光観察や蛍光観察など互いに異なる二種類の観察モードの画像を一画面に並べて表示する構成が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−20727号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
狭帯域光画像を生成するためには照射光の波長を制限する必要がある。また、蛍光画像を生成するためには特定波長の光(励起光)を光源とする必要がある。このように、狭帯域光観察や蛍光観察では、使用波長が制限されるため、広帯域光である白色光を用いた通常の内視鏡観察と比べて被写体への照射光量が少ない。そのため、狭帯域光画像や蛍光画像は暗く観察し難いという問題点を抱えている。
【0005】
狭帯域光画像や蛍光画像の輝度不足は、ゲインを上げることによって解消することができる。しかし、この場合、ゲインと共にノイズも増加して画質が劣化するため、被写体(特に細部)が却って観察し難くなる虞がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る画像信号処理装置は、所定の広帯域光よりも波長域が狭い特定波長の光によって照射された被写体を撮影した撮像装置からの画像信号が入力する画像信号入力手段と、入力した画像信号の出力を複数に分岐する分岐手段と、分岐した各画像信号の出力に対して異なるゲイン増幅を行うゲイン増幅手段と、異なるゲイン増幅が行われた各画像信号を合成して各画像信号に対応する画像が一画面内に並んで配置される合成画像を生成する合成画像生成手段とを有することを特徴とした装置である。
【0007】
本発明に係る画像信号処理装置によれば、輝度が高く被写体の周囲を視認するのが容易な狭帯域光画像(ゲイン増幅が大きい画像)、ノイズが少なく生体の微細構造を精査するのに適した狭帯域光画像(ゲイン増幅が無い又は小さい画像)など、一画面内において同一の被写体が輝度の異なる複数枚の画像で表示される。術者は、輝度不足が解消された前者の画像を通じて被写体の周囲を観察しつつ、被写体の細部については画質劣化の少ない後者の画像を通じて精査することができる。
【0008】
分岐手段は、入力した画像信号を2つの出力に分岐する構成としてもよい。この場合、ゲイン増幅手段は、例えば、分岐された一方の信号出力についてはゲインを上げ、他方の信号出力についてはゲイン増幅を行わない。
【0009】
合成画像生成手段は、ゲインが上げられた信号出力に対応する第一の画像が、ゲイン増幅手段によるゲイン増幅が行われない信号出力に対応する第二の画像の子画面として表示されるように合成画像の生成を行う構成としてもよい。
【0010】
ゲイン増幅手段は、ゲインが上げられた信号出力に対応する第一の画像内の特定領域の輝度が該特定領域以外の領域の輝度よりも高くなるようにゲイン増幅を行う構成としてもよい。
【0011】
合成画像生成手段は、各画像信号に対応する複数の画像が一画面内の所定の一方向に並んで配置される合成画像、又は複数の画像の各々が互いに一部重なり合う位置に配置される合成画像を生成する構成としてもよい。
【0012】
上記の課題を解決する本発明の一形態に係る電子内視鏡システムは、所定の広帯域光よりも波長域が狭い特定波長の光を照射する光照射手段と、照射された被写体からの反射光を受光して信号に変換する撮像手段と、変換された信号を処理して画像信号を生成する画像信号生成手段と、生成された画像信号の出力を複数に分岐する分岐手段と、分岐した各画像信号の出力に対して異なるゲイン増幅を行うゲイン増幅手段と、異なるゲイン増幅が行われた各画像信号を合成して各画像信号に対応する画像が一画面内に並んで配置される合成画像を生成する合成画像生成手段とを有することを特徴としたシステムである。
【0013】
光照射手段は、広帯域光を照射する光源と、光路に対して挿脱自在に配置され、広帯域光を特定波長の光に制限する狭帯域フィルタとを有した構成としてもよい。光照射手段は、狭帯域フィルタを光路から退避させたときには被写体を広帯域光で照射し、狭帯域フィルタを光路上に挿入したときには被写体を狭帯域光で照射する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、狭帯域光画像や蛍光画像など輝度が不足する画像を観察するのに好適な画像信号処理装置及び電子内視鏡システムが提供される。すなわち、本発明に係る画像信号処理装置は、一画面内において同一の被写体を輝度の異なる複数枚の画像で表示する。具体的には、ゲインの過度の増幅に起因する画質劣化や光量不足(輝度不足)によって視認性が低下して診断に支障が生じるのを避けるため、ノイズが少なく生体の微細構造を精査するのに適した狭帯域光画像(ゲイン増幅が無い又は小さい画像)と、輝度が高く被写体の周囲を視認するのが容易な狭帯域光画像(ゲイン増幅が大きい画像)を一画面に表示させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施形態に係る通常カラー画像観察処理のフローチャートを示す図である。
【図3】本発明の実施形態に係る狭帯域光画像観察処理のフローチャートを示す図である。
【図4】観察モードが狭帯域光観察モードに設定されているときのモニタの表示画面例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態に係る電子内視鏡システムについて説明する。
【0017】
図1は、本実施形態の電子内視鏡システム1の構成を示すブロック図である。図1に示されるように、電子内視鏡システム1は、医療用の撮像システムであり、電子スコープ100、プロセッサ200、モニタ300を有している。電子スコープ100の基端は、プロセッサ200と接続されている。プロセッサ200は、電子スコープ100が出力する画像信号を処理して画像を生成する画像信号処理装置と、自然光の届かない体腔内を電子スコープ100を介して照明する光源装置とを一体に備えた装置である。別の実施形態では、画像信号処理装置と光源装置とを別体で構成してもよい。
【0018】
図1に示されるように、プロセッサ200は、システムコントローラ202、タイミングコントローラ204を有している。システムコントローラ202は、電子内視鏡システム1を構成する各要素を制御する。タイミングコントローラ204は、信号の処理タイミングを調整するクロックパルスを電子内視鏡システム1内の各回路に出力する。
【0019】
ランプ208は、ランプ電源イグナイタ206による始動後、主に可視光領域から不可視である赤外領域に広がる波長域の光を放射する。ランプ208には、キセノンランプ、ハロゲンランプ、水銀ランプ、メタルハライドランプ等の高輝度ランプが適している。ランプ208から放射された照明光は、集光レンズ210によって集光されると共に絞り212を介して適正な光量に制限される。
【0020】
絞り212には、図示省略されたアームやギヤ等の伝達機構を介してモータ214が機械的に連結している。モータ214は例えばDCモータであり、ドライバ216のドライブ制御下で駆動する。絞り212は、モニタ300に表示される映像を適正な明るさにするため、モータ214によって動作して開度が変化して、ランプ208から放射された照明光の光量を開度に応じて制限する。適正とされる映像の明るさの基準は、術者によるフロントパネル218又は電子スコープ100の手元操作部(不図示)に対する輝度調節操作に応じて設定変更される。なお、ドライバ216を制御して輝度調整を行う調光回路は周知の回路であり、本明細書においては省略することとする。
【0021】
フロントパネル218の構成には種々の形態が想定される。フロントパネル218の具体的構成例には、プロセッサ200のフロント面に実装された機能毎のハードウェアキーや、タッチパネル式GUI(Graphical User Interface)、ハードウェアキーとGUIとの組合せ等が想定される。
【0022】
絞り212を通過した照射光は、光学フィルタ213によって特定の狭帯域光(例えばヘモグロビンの吸収に適した波長域に透過ピークを持つ半値幅の狭い光)に分光されて、LCB(Light Carrying Bundle)102の入射端に入射する。光学フィルタ213には、ドライバ216のドライブ制御下で駆動するモータ215が、図示省略されたアームやギヤ等の伝達機構を介して機械的に連結している。モータ215は、術者によるフロントパネル218に対する切替操作又は電子スコープ100の手元操作部に設けられた切替ボタン114の操作に従って光学フィルタ213を光路に挿入し又は光路から退避させる。なお、図1中、図面を簡明化するため、切替ボタン114(及び後述するフリーズボタン116)と他のブロックとの結線は省略している。光学フィルタ213が光路から退避している期間は、絞り212を通過した照射光(すなわち、可視光領域を含む広帯域の光)がLCB102の入射端に直接入射する。モータ214及び215には、例えばガルバノモータやサーボモータ等が想定される。
【0023】
LCB102の入射端に入射した照射光は、LCB102内を全反射を繰り返すことによって伝播する。LCB102内を伝播した照射光は、電子スコープ100の先端に配されたLCB102の射出端から射出する。LCB102の射出端から射出した照射光は、配光レンズ104を介して被写体を照射する。被写体からの反射光は、対物レンズ106を介して固体撮像素子108の受光面上の各画素で光学像を結ぶ。
【0024】
固体撮像素子108は、例えばベイヤ型画素配置を有する単板式カラーCCD(Charge Coupled Device)イメージセンサであり、受光面上の各画素で結像した光学像を光量に応じた電荷として蓄積して、R、G、Bの各色に応じた画像信号に変換する。変換された画像信号は、プリアンプ110による信号増幅後、内視鏡側信号処理回路112に入力する。別の実施形態では、固体撮像素子108は、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)イメージセンサであってもよい。
【0025】
タイミングコントローラ204は、システムコントローラ202によるタイミング制御に従って、内視鏡側信号処理回路112にクロックパルスを供給する。内視鏡側信号処理回路112は、タイミングコントローラ204から供給されるクロックパルスに従って、固体撮像素子108をプロセッサ200側で処理される映像のフレームレートに同期したタイミングで駆動制御する。
【0026】
内視鏡側信号処理回路112に入力した画像信号は、相関二重サンプリング処理によるリセット雑音及びアンプ雑音の除去、AGC(Auto Gain Control)によるゲイン調整、AD変換等の処理後、プロセッサ側信号処理回路220に入力する。
【0027】
プロセッサ側信号処理回路220に入力したデジタル信号列は、第一フレームメモリ220aにフレーム単位でバッファリングされる。バッファリングされたデジタル信号列は、タイミングコントローラ204によって制御されたタイミングで第一フレームメモリ220aから2系統に分岐して出力される。一方の出力は、ゲイン増幅回路220b、第二フレームメモリ220cを介して合成回路220dに入力する。もう一方の出力は、合成回路220dに直接入力する。説明の便宜上、第一フレームメモリ220aを出力後、ゲイン増幅回路220b、第二フレームメモリ220cを介して合成回路220dに入力するデジタル信号列を「ゲイン増幅信号列」と記し、ゲイン増幅回路220b、第二フレームメモリ220cを介さずに合成回路220dに直接入力するデジタル信号列を「ゲイン通常信号列」と記す。
【0028】
ゲイン増幅回路220bは、固体撮像素子108から出力される微弱なアナログ信号を増幅するプリアンプ110や適正レベルへのゲイン調節を行うAGCと異なり、ノイズによる画質劣化を殆ど考慮することなく表示画像の輝度を上げて視認性を向上させることを主目的としたゲイン増幅を行う。第二フレームメモリ220cは、通常時、ゲイン増幅回路220bからの入力をスルー出力する。
【0029】
合成回路220dは、入力したデジタル信号列をNTSC(National Television System Committee)やPAL(Phase Alternating Line)等の所定の規格に準拠した映像信号に変換する。変換された映像信号がモニタ300に順次入力することにより、被写体の画像がモニタ300の表示画面に表示される。
【0030】
モニタ300の表示画面には、被写体の画像が観察モードに応じた形態で表示される。観察モードは、術者によるフロントパネル218又は電子スコープ100の手元操作部に対する観察モード設定操作に従って設定変更される。
【0031】
(通常カラー画像観察処理)
図2は、本発明の実施形態に係る通常カラー画像観察処理のフローチャートを示す。通常カラー画像観察処理は、観察モードが通常観察モードに設定されたときに実行される。通常カラー画像観察処理の実行は、通常観察モード以外の他の観察モードに切り替えられるまで又はプロセッサ200の電源がオフされるまで継続する。説明の便宜上、本明細書中の説明並びに図面において、処理ステップは「S」と省略して記す。
【0032】
<図2のS1(光学フィルタ退避処理)>
モータ215は、ドライバ216によるドライブ制御に従って光学フィルタ213を絞り212とLCB102の入射端との間の光路から退避させる。そのため、被写体には、可視光領域を含む広帯域の光が照射される。固体撮像素子108は、広帯域の光によって照射された被写体からの反射光を受光して画像信号に変換する。画像信号は、プリアンプ110、内視鏡側信号処理回路112、第一フレームメモリ220a、ゲイン増幅回路220bの各回路の処理を経てゲイン増幅信号列、ゲイン通常信号列に変換される。
【0033】
<図2のS2(画像出力処理)>
合成回路220dは、ゲイン増幅信号列の入力を遮断し、ゲイン通常信号列だけを用いて映像信号への変換処理を行う。これにより、ゲイン増幅回路220bによるゲイン増幅が行われていない被写体のカラー画像(動画)がモニタ300の表示画面内の所定領域(内視鏡画像表示用に確保された表示領域)に表示される。
【0034】
また、フリーズボタン116が押された場合、第一フレームメモリ220a内のデジタル信号列がボタン操作直後のフレームに対応する信号列に所定期間(例えば数秒間)固定される。これにより、合成回路220dへの入力が固定される。合成回路220dへの入力が固定されている数秒の間、モニタ300の表示画面内の所定領域には、ゲイン増幅回路220bによるゲイン増幅が行われていない被写体のカラー画像(静止画)が表示される。
【0035】
(狭帯域光画像観察処理)
図3は、本発明の実施形態に係る狭帯域光画像観察処理のフローチャートを示す。本実施形態の狭帯域光画像観察処理は、観察モードが狭帯域光観察モードに設定されたときに実行される。狭帯域光画像観察処理の実行は、狭帯域光観察モード以外の他の観察モードに切り替えられるまで又はプロセッサ200の電源がオフされるまで継続する。図4(a)〜(c)は、観察モードが狭帯域光観察モードに設定されているときのモニタ300の表示画面例を示す図である。なお、説明の便宜上、ゲイン増幅信号列によって構成される画像を「ゲイン増幅画像」と記し、ゲイン通常信号列によって構成される画像を「ゲイン通常画像」と記す。
【0036】
<図3のS11(光学フィルタ挿入処理)>
モータ215は、ドライバ216によるドライブ制御に従って光学フィルタ213を絞り212とLCB102の入射端との間の光路に挿入する。そのため、被写体には、特定の狭帯域光が照射される。固体撮像素子108は、狭帯域光によって照射された被写体からの反射光を受光して画像信号に変換する。画像信号は、プリアンプ110、内視鏡側信号処理回路112、第一フレームメモリ220a、ゲイン増幅回路220bの各回路の処理を経てゲイン増幅信号列、ゲイン通常信号列に変換される。
【0037】
<図3のS12(画像出力処理)>
合成回路220dは、ゲイン増幅画像とゲイン通常画像を一枚の画像に合成処理したうえで映像信号への変換処理を行う。これにより、ゲイン増幅画像(動画)とゲイン通常画像(動画)を合成した内視鏡観察画像がモニタ300の表示画面内の所定領域に表示される。なお、本実施形態では、ゲイン通常画像を主画面(親画面)とし、ゲイン増幅画像を副画面(子画面)とする。合成画像は、主画面として大きく表示されるゲイン通常画像(動画)の右上領域に副画面であるゲイン増幅画像(動画)を重畳したものである(図4(a)参照)。
【0038】
図4(a)の表示画面例によれば、同一性(観察視野及び撮影時刻が同一)を有するノイズの少ない狭帯域光画像(ゲイン通常画像)と輝度の高い狭帯域光画像(ゲイン増幅画像)が一画面に同時に表示される。ゲイン通常画像はノイズが少ないため、生体の微細構造を精査するのに適している。ゲイン増幅画像は、輝度が高く被写体の周囲を視認しやすいため、電子スコープ100の現在の観察位置や挿入すべき方向を術者に把握させるのに適している。術者は、輝度以外は同一性を有する一画面内の二枚の画像を比較観察等することにより、病変部等を発見したり診断したりすることができる。
【0039】
なお、ゲイン通常画像とゲイン増幅画像のレイアウトは、術者によるフロントパネル218又は電子スコープ100の手元操作部に対するレイアウト切替操作に従って変更することができる。図4(c)は、レイアウト切替後のゲイン通常画像とゲイン増幅画像の画面表示の一例を示す。図4(c)の画面表示例において、ゲイン通常画像とゲイン増幅画像は、一画面内に同一の表示サイズで且つモニタ300の表示画面の長辺方向(水平方向)に並んで配置される。
【0040】
また、ゲイン増幅画像は、画像内の特定領域の輝度が他の領域の輝度よりも高くなるようにゲイン増幅されてもよい。ゲイン増幅回路220bは、一般に被写体が観察視野の中央に配置されることから、例えばゲイン増幅画像の中央領域を周辺領域よりも輝度が高くなるようにゲイン増幅する。何れの領域を重点に輝度を上げるかは、術者によるフロントパネル218又は電子スコープ100の手元操作部に対する操作を通じて指定することができる。
【0041】
<図3のS13(フリーズ操作判定処理)>
フリーズボタン116が押された場合(S13:YES)、第二フレームメモリ220cは、ボタン操作直後の一フレーム分のデジタル信号列を取り込んで所定期間(例えば数秒間)固定する。フリーズボタン116が押されていない場合(S13:NO)、第二フレームメモリ220cは、通常通り、ゲイン増幅回路220bからの入力をスルー出力し続ける。
【0042】
<図3のS14(画像出力処理)>
第二フレームメモリ220cによるデジタル信号列の固定により、ゲイン増幅回路220b、第二フレームメモリ220cを介した合成回路220dへの入力(ゲイン増幅信号列)は固定される。一方、第一フレームメモリ220aから合成回路220dへの直接の入力(ゲイン通常信号列)は固定されない。前者の入力が固定されている数秒の間、モニタ300の表示画面内の所定領域には、ゲイン増幅画像(静止画)とゲイン通常画像(動画)を合成した内視鏡観察画像が表示される(図4(b)参照)。
【0043】
<図3のS15(フリーズ解除処理)>
フリーズボタン116が押されてから所定期間経過後(S15:YES)、第二フレームメモリ220cは、デジタル信号列の固定を解除してゲイン増幅回路220bからの入力をスルー出力する。これにより、ゲイン増幅画像、ゲイン通常画像が共に動画となる(図4(a)参照)。
【0044】
静止画は動画と比べて輝度が不足する。ただでさえ輝度が不足する狭帯域光画像が静止画である場合はその輝度不足が大きいため、被写体の周囲を視認するのが難しく、電子スコープ100の現在の観察位置や挿入すべき方向を術者が把握するのが困難であった。しかし、ゲイン増幅画像(静止画)は、ゲイン増幅によって輝度不足が解消されているため、電子スコープ100の現在の観察位置や挿入すべき方向を術者に把握させるのに好適である。
【0045】
以上が本発明の実施形態の説明である。本発明は、上記の構成に限定されるものではなく、本発明の技術的思想の範囲において様々な変形が可能である。例えば、本実施形態では、狭帯域光画像を表示するが、別の実施形態では、狭帯域光画像に代えて蛍光画像を表示する構成としてもよい。
【0046】
本実施形態では、輝度の異なる二枚の狭帯域光画像を一画面に表示するが、別の実施形態では、輝度の異なる三枚以上の狭帯域光画像を一画面に表示する構成としてもよい。例えば、輝度がゲイン増幅画像とゲイン通常画像の中間となるようにゲイン増幅された画像を加えて一画面に三種類の画像を表示する構成としてもよい。
【0047】
本実施形態では、ゲイン通常画像、ゲイン増幅画像をそれぞれ主画面、副画面としているが、別の実施形態では、ゲイン通常画像を副画面とし、ゲイン増幅画像を主画面としてもよい。
【符号の説明】
【0048】
1 電子内視鏡システム
100 電子スコープ
200 プロセッサ
220 プロセッサ側信号処理回路
220a 第一フレームメモリ
220b ゲイン増幅回路
220c 第二フレームメモリ
220d 合成回路
300 モニタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の広帯域光よりも波長域が狭い特定波長の光によって照射された被写体を撮影した撮像装置からの画像信号が入力する画像信号入力手段と、
前記入力した画像信号の出力を複数に分岐する分岐手段と、
分岐した各前記画像信号の出力に対して異なるゲイン増幅を行うゲイン増幅手段と、
異なるゲイン増幅が行われた各前記画像信号を合成して該各画像信号に対応する画像が一画面内に並んで配置される合成画像を生成する合成画像生成手段と、
を有することを特徴とする画像信号処理装置。
【請求項2】
前記分岐手段は、前記入力した画像信号を2つの出力に分岐し、
前記ゲイン増幅手段は、前記分岐された一方の信号出力についてはゲインを上げ、他方の信号出力についてはゲイン増幅を行わないことを特徴とする、請求項1に記載の画像信号処理装置。
【請求項3】
前記合成画像生成手段は、前記ゲインが上げられた信号出力に対応する第一の画像が前記ゲイン増幅手段によるゲイン増幅が行われない信号出力に対応する第二の画像の子画面として表示されるように合成画像の生成を行うことを特徴とする、請求項2に記載の画像信号処理装置。
【請求項4】
前記ゲイン増幅手段は、前記ゲインが上げられた信号出力に対応する第一の画像内の特定領域の輝度が該特定領域以外の領域の輝度よりも高くなるようにゲイン増幅を行うことを特徴とする、請求項2又は請求項3に記載の画像信号処理装置。
【請求項5】
前記合成画像生成手段は、前記各画像信号に対応する複数の画像が前記一画面内の所定の一方向に並んで配置される合成画像、又は該複数の画像の各々が互いに一部重なり合う位置に配置される合成画像を生成することを特徴とする、請求項1から請求項4の何れか一項に記載の画像信号処理装置。
【請求項6】
所定の広帯域光よりも波長域が狭い特定波長の光を照射する光照射手段と、
前記照射された被写体からの反射光を受光して信号に変換する撮像手段と、
前記変換された信号を処理して画像信号を生成する画像信号生成手段と、
前記生成された画像信号の出力を複数に分岐する分岐手段と、
分岐した各前記画像信号の出力に対して異なるゲイン増幅を行うゲイン増幅手段と、
異なるゲイン増幅が行われた各前記画像信号を合成して該各画像信号に対応する画像が一画面内に並んで配置される合成画像を生成する合成画像生成手段と、
を有することを特徴とする電子内視鏡システム。
【請求項7】
前記光照射手段は、
前記広帯域光を照射する光源と、
光路に対して挿脱自在に配置され、前記広帯域光を前記特定波長の光に制限する狭帯域フィルタと、
を有し、
前記狭帯域フィルタを前記光路から退避させたときには前記被写体を前記広帯域光で照射し、該狭帯域フィルタを該光路上に挿入したときには該被写体を該狭帯域光で照射することを特徴とする、請求項6に記載の電子内視鏡システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2012−254240(P2012−254240A)
【公開日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−130047(P2011−130047)
【出願日】平成23年6月10日(2011.6.10)
【出願人】(000113263)HOYA株式会社 (3,820)
【Fターム(参考)】