画像処理装置、画像処理プログラム、記憶媒体及び超音波診断装置
【課題】頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できると共に効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、広く使用されている超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理装置を提供する。
【解決手段】
画像処理装置11は超音波Bモード画像列を取得して、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成し、評価関数の最適化を行う。画像処理装置11は最適化の結果に基づいて次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対して同様に行う。画像処理装置11はモデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する。
【解決手段】
画像処理装置11は超音波Bモード画像列を取得して、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成し、評価関数の最適化を行う。画像処理装置11は最適化の結果に基づいて次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対して同様に行う。画像処理装置11はモデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理プログラム及び記憶媒体に係り、特に、頸動脈の超音波画像の画像処理装置、画像処理プログラム、記憶媒体及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化症は、生活習慣の不摂生が危険因子となる生活習慣病の一つであり、自覚症状がほとんどないまま若年層から進行し、放っておくと脳梗塞、心筋梗塞、狭心症などに発展する可能性がある。動脈硬化症は治癒が困難であるため、早期に動脈硬化の兆候をとらえて患者に生活習慣の改善を促し、病気の進行を遅らせることが重要である。
【0003】
動脈硬化症の検査の中で、超音波エコー検査は、非侵襲に血管を直接観察できることから、現在の臨床診断において必要不可欠な検査として定着しつつある。動脈硬化のための超音波エコー検査では、血管内部に付着したプラークと呼ばれる脂肪分の有無や内膜中膜複合体厚(IMT: intima-media complex thickness)を評価する。しかし、動脈硬化初期段階ではプラークもなく、IMTも薄くて計測が困難であるため、こうした形態学的観察では、初期の兆候をとらえることは難しい。
【0004】
これに対し、動脈硬化は動脈が硬化し弾力性を失うことであるから、心拍動に伴う動脈の動きの良さを評価すればよいという考え方がある。プラーク、IMTなどの形態学的計測とは異なり、動脈の動きの定量的計測を行う場合、計算機の援用が不可欠である。
【0005】
従来、頸動脈超音波エコー検査における計算機診断支援としては、非特許文献1〜4が提案されている。
非特許文献1では、超音波Bモード画像において、頸動脈辺縁にはエコー強度勾配の絶対値の極大値が数多く分布し、辺縁はなめらかな曲線であるという仮定をおいて、平滑化微分により輝度勾配の極大点の候補点を抽出し射影演算子を用いて辺縁を検出している。非特許文献2では、さらに、その改良として、辺縁を多項式で近似した係数とルジャンドル多項式の基底を使い、さらに検出された候補点に辺縁らしさの強弱をつけるためにガウス−マルコフ(Gauss-Markov)推定の誤差項に辺縁らしさの強弱を埋め込み、辺縁の検出を行っている。
【0006】
また、非特許文献3では、超音波Bモード画像において、頸動脈後壁における血管内腔と血管内膜の境界をおおよそ0.1(mm)の精度で推定する手法を提案している。この方法では、超音波の直交復調信号を用いて、表皮からの深さと超音波ビーム位置をモデル化し、モデルと実測値の平均二乗誤差をコスト関数として、これを最小化している。
【0007】
非特許文献4では、Bモード画像上で頸動脈壁の1点を手動で指定したのち、RF信号を用いて指定した頸動脈壁の動きを10μmの精度で追跡する手法を提案し実用化している。非特許文献4では、RF信号を用いているため、一部の超音波診断装置でしか利用できないが、現在のところ最も高い精度を有していると推察される。
【0008】
なお、特許文献1は、弾性係数について記述されている。
【特許文献1】特許第3882084号
【非特許文献1】小矢美晴,溝尻 勲,松井清明,中村隆志:「頸動脈の硬度測定」,電学論C,Vol.123(10):pp.1728-1738, 2003.
【非特許文献2】小矢美晴,溝尻勲:「ガウス−マルコフ(Gauss-Markov)推定を用いた総頚動脈の辺縁検出」,電学論C,Vol.124(10):pp.2051-2056, 2004.
【非特許文献3】ハセガワ・H(Hasegawa H),カナイ・H (Kanai H),コイワ・Y (Koiwa Y) :「ディテクション オブ ルーメン・インティマ インタフェイス オブ ポステリオア ウォール フォー メジャーメント オブ エラスティシティ オブ ザ ヒューマン カロティド アーテァリィ(Detection of Lumen-Intima Interface of Posterior Wall for Measurement of Elasticity of the Human Carotid Artery)」, IEEE Transactions on UFFC, Vol.51(1):pp.93-108, 2004.
【非特許文献4】原田烈光,「エコートラッキング法による動脈硬化指標の計測」,超音波検査技術,Vol.28(3):pp.29-35,2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、非特許文献1〜3の方法は、頸動脈壁の推定法であり、前壁、内腔、後壁を合わせた頸動脈全体の形状、位置を推定するものではない。超音波画像には頸動脈壁と似た筋、腱、静脈壁などが存在し、頸動脈壁そのものの推定では、これらと誤って推定する確率が高い。さらに、これらの手法は、超音波画像静止画を対象とし、動画像に対し頸動脈の動きを追跡することを目的としていない。そのため、動画像に対しては、同じ処理をフレーム数だけ繰り返さなければならず効率的ではない。
【0010】
非特許文献4は、頸動脈の動きの追跡では、精度の観点からRF信号を用いることが有利であるものの、RF信号を出力可能な超音波診断装置は一部の機種に限られていることから、現時点では一般的とはいえず、汎用性に欠ける。
【0011】
本発明の目的は、頸動脈全体の形状をモデル化することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できると共に、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理装置を提供することにある。なお、本明細書において、頸動脈全体とは、頸動脈の前壁、後壁及び両壁間の内腔を含む趣旨である。また、頸動脈を超音波診断装置の探触子21で計測した際に、同探触子21に近い方の壁を前壁といい、遠い方の壁を後壁という。
【0012】
また、本発明の他の目的は、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の他の目的は、上記画像処理装置を備えた超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化する第1モデル化手段と、前記モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する出力手段とを備え、前記第1モデル化手段は、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行うことを特徴とする画像処理装置を要旨とするものである。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1において、複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段と、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、コンピュータを、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化する際に、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行う第1モデル化手段と、前記モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する出力手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラムを要旨とするものである。
【0018】
請求項4の発明は、請求項3において、コンピュータを、複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段と、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段として機能させることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載の画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を要旨とするものである。
請求項6の発明は、請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置に接続され、探触子の超音波送受信により得られたエコー信号を基に生体内の超音波Bモード画像列を生成し、前記画像処理装置に前記超音波Bモード画像列を出力することを特徴とする超音波診断装置を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、頸動脈全体の形状をモデル化することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定できる。また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理装置を提供できる。
【0021】
請求項2の発明によれば、動画の最初のフレームに対しては、初期値データに対する最初のフレームの評価関数を生成する。この初期値データは、被験者の数が多いほど、クラスタ分析された場合、初期値データとしていくつかの異なるモデルが得られる。このため、第2化モデル化手段により、これらの初期値データから評価関数を最適化すれば、一つは真の頸動脈位置に収束することが期待でき、最初のフレームに対して効率的にモデル化を行うことができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを提供できる。
【0023】
請求項4の発明によれば、請求項2に記載の効果を容易に実現できる画像処理プログラムを提供できる。
請求項5の発明によれば、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を提供できる。
【0024】
請求項6の発明によれば、請求項1又は請求項2の効果を備えた超音波診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜10を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の画像処理装置11は、第1モデル化手段、第2モデル化手段、出力手段、記憶手段としてのコンピュータ12、ディスプレイ13、プリンタ14、キーボード15、及び超音波診断装置16を備えている。
【0026】
前記超音波診断装置16は、探触子21、表示部22及び図示しない超音波発生源が備えられている。超音波診断装置16は、探触子21の先端面から生体内にパルス波を送波するとともに頸動脈23からの反射波(エコー信号)を受波する。この超音波診断装置16は、前記探触子21の先端面が長四角形状に形成されており、前記エコー信号に基づいて頸動脈23のBモードで取得された長軸断面形状を含むエコー動画像(すなわち、Bモード画像)を生成する。このエコー動画像は、超音波Bモード画像列に相当する。超音波診断装置16の表示部22には、被検者の頸動脈23が拡張収縮変形する際の動画像が表示される。
【0027】
超音波診断装置16のビデオ出力から前記Bモード画像が出力され、図示しないDVコンバータにより所定の解像度(m×n画素)、所定数のフレーム/秒でビデオキャプチャされた後、IEEE1394信号として、コンピュータ12に入力される。本実施形態では、所定数のフレーム/秒は、30フレーム/秒としているが、この値が限定されるものではないが、頸動脈の心拍動の変化を明確に観測できる値であればよい。
【0028】
また、ディスプレイ13で表示される超音波画像領域の画素数は、水平方向にNx、垂直方向にNyである。本実施形態では、Nx=540(pixel),Ny=420(pixel)としているが、この数値に限定されるものではない。
【0029】
前記超音波診断装置16により取得されたエコー動画像がコンピュータ12に入力されたコンピュータ12が備える記憶装置44に格納される。前記記憶装置44は、例えばハードディスクや半導体記憶装置からなり、前述した前記各種情報の読み出し及び書き込みが可能である。
【0030】
図2に示すように、コンピュータ12はCPU41(中央処理装置)、ROM42、RAM43を備え、記憶媒体としてのROM42に格納された画像処理プログラムを実行する。RAM43は、前記プログラムを実行する際の作業用メモリである。
【0031】
(実施形態の作用)
次に上記のように構成された画像処理装置11において、CPU41が実行する画像処理プログラムの処理を説明するが、このプログラムの説明の前に「頸動脈の同定問題の定式化」及び「頸動脈の位置・形状の推定」について説明する。
【0032】
(頸動脈の同定問題の定式化について)
本実施形態の頸動脈を同定するときの問題について説明する。
本実施形態では、頸動脈壁を単独で検出するのではなく、頸動脈全体の形状をモデル化することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避する。さらに、超音波の動画像から効率的に頸動脈の動きを追跡するためには、動画の第2フレームからは、その直前のフレームでの頸動脈の位置・形状の推定結果を更新する形で適応的に推定してゆく手法が有効である。本実施形態では、超音波Bモード画像を利用することを前提とし、こうした考えの下で頸動脈の位置・形状の推定を行う。
【0033】
ここで、CPU41が取得した超音波Bモード画像列をI(x,y,t),x=1,…,Nx,y=1,…,Ny,t=1,…,Ntとする。
x,y,tは、それぞれ水平方向の画素番号、垂直方向の画素番号、フレーム番号を表す。ただし、画像の左上をx=1,y=1とする。また、Nx,Ny,Ntは、それぞれ水平方向の画素総数、垂直方向の画素総数、フレーム総数を表す。なお、一枚の超音波画像に着目する場合には、単にI(x,y),x=1,…,Nx,y=1,…,Nyと書く。頸動脈の長軸断面を撮影した超音波画像の一例を図4に示す。図4中、中央にほぼ平行に走る上下2本の曲線が、それぞれ頸動脈の前壁と後壁である。血管壁は超音波を強く反射するため、超音波画像では白く表示される。また、頸動脈以外にも、筋、腱、静脈壁など様々な組織の存在が確認される。このような超音波Bモード画像を使用することを前提にして、頸動脈の前壁と後壁の位置をすべてのフレームにわたり同定する。
【0034】
ここで、頸動脈の前壁と後壁の垂直方向の位置yを水平方向画素番号x=1,…,Nxの関数として、それぞれfu(x),fl(x)で表わす。本実施形態においては、超音波画像の横幅40(mm)程度とし、前壁と後壁の位置に関して以下の仮定が成立するものとする。
【0035】
(1) fu(x),fl(x)が平行である。
すなわち、頸動脈の直径をDとすると、適当な関数f(x)を用いて、fu(x)=f(x)-D/2,fl(x)=f(x)+D/2と表わすことができる。
【0036】
(2) fl(x)、fu(x)、すなわちf(x)が2次関数で表現できる。
このような仮定は、総頸動脈から内頸動脈と外頸動脈に分離する膨らみである頸動脈洞にかかっていなく、かつ著しい動脈硬化により頸動脈が変形していなければ、これから説明する頸動脈の位置・形状を推定するのに支障ない程度に成立する。
【0037】
この仮定により、f(x)は2次関数で表現できることから、
【0038】
【数1】
と表わされる。1つのフレームにおける頸動脈の位置・形状は、2次関数の係数a0,a1,a2と頸動脈の直径Dで完全に表現することができる。これらのパラメータをまとめて頸動脈パラメータθ=(a0,a1,a2,D)と表わす。超音波Bモード画像列を扱う場合には、各フレームで頸動脈パラメータθの値は変化するから、頸動脈パラメータをフレーム番号tの関数としてθ(t)により表す。結局、頸動脈前壁と後壁の位置をすべてのフレームにわたり同定する問題は、θ(t),t=1,…,Ntを決定する問題に帰着する。
【0039】
(頸動脈の位置・形状の推定について)
本実施形態では、上記の問題を下記のようにして解決することにより、頸動脈の位置・形状の推定を行う。
【0040】
頸動脈の前壁、および後壁の幅(すなわち、厚み)をともにWとすると、超音波Bモード画像中の頸動脈前壁と後壁を表す画素(x,y)の集合は、それぞれ次式で表わされる。
【0041】
【数2】
【0042】
【数3】
従って、頸動脈壁全体は、
【0043】
【数4】
と表わされる。また、頸動脈内腔を表す画素(x,y)の集合を
【0044】
【数5】
と表す。
【0045】
超音波Bモード画像において、頸動脈壁は強いエコーのため白く、頸動脈内腔はエコーが弱いため黒く描かれる。すなわち、頸動脈壁を表すBでは画素値は大きく、頸動脈内腔を表わすTでは画素値は小さくなる。なお、画素値は、画素の濃淡値のことである。そこで、位置・形状を与える頸動脈パラメータθに対し、それが頸動脈であるらしさを表す以下の式(6)で表わされる評価関数を導入する。
【0046】
【数6】
ただし、α,βは、いずれも正値の定数であり、|・|は、集合・の要素数を表す。式(6)の右辺第一項は、頸動脈壁の想定する位置で画素値が大きい、すなわち白いほど大きな値をとり、右辺第二項は、頸動脈内腔と想定される位置で画素値が小さい、すなわち黒いほど大きな値をとる。
【0047】
右辺第三項において、g(D;Dmin,Dmax)は次式で表わされる関数である。
【0048】
【数7】
Dmin、Dmaxは、それぞれヒト頸動脈直径の考えうる最小値、最大値であり、右辺第三項は、その範囲を外れた場合のペナルティ項を表す。
【0049】
本実施形態では、これまでに収集した超音波Bモード画像のサンプルからDmin=5(mm)、Dmax=12(mm)に設定されている。なお、これらの数値は、限定されるものではなく、サンプル数等に応じて変更してもよい。
【0050】
また、βは、計算において丸め誤差が生じない程度に十分大きな正数を選択すればよい。また、式(6)において、αは、頸動脈壁と頸動脈内腔でのエコーの強さの比、超音波検査装置の画像出力などの仕様に依存するが、本実施形態では、予備実験によりα=2.0が選択されている。
【0051】
なお、式(6)で表わされる評価関数E(θ)は、重み
【0052】
【数8】
を定義すれば、
【0053】
【数9】
と表わすこともできる。
【0054】
ここで、式(9)の右辺第一項は、1つのフレームに描画される頸動脈長軸断面形状に関して既にモデル化されたモデルに対する該フレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルのベクトルの内積に相当するものである。
【0055】
この重み関数w(x,y;θ)の例は図7に示されている。
そして、超音波Bモード画像I(x,y)における頸動脈の位置と形状、すなわち頸動脈パラメータθの値は、式(6)で与えられる評価関数E(θ)を最大にするように決定すればよいことになる。
【0056】
なお、こうしたパラメータの値は解析的には求めることはできないが、最急降下法、ニュートン法、共役勾配法、シンプレックス法などの非線形最適化法を利用して求めることができる。
【0057】
非線形最適化法では、適当に定めた初期値から評価関数を最大にするようにパラメータを更新してゆくが、図4の超音波Bモード画像を見てもわかるとおり、静脈、脂肪、筋の存在や組織の不均一性により頸動脈以外にも至る所にエコーの強い部分が存在する。
【0058】
すなわち、この評価関数には至る所に極大値、つまり局所解が存在する。そのため、異なる複数の初期値から非線形最適化法を適用し、その中で評価関数E(θ)を最大にするものを最終的な推定値として採用するといった初期値試行を行うと好適である。
【0059】
本実施形態では、予め取得されたいくつかの超音波Bモード画像のサンプルが前述の方法でモデル化され、その頸動脈パラメータθがクラスタ分析されて、それらが頸動脈パラメータθの初期値データとしている。なお、本実施形態では、初期値データは、図8に示すようにインデックス(初期値番号:Index)1〜20が付与されて20個が設定されているが、個数は、20個に限定されるものではない。初期値データは、記憶装置44に予め記憶されている。
【0060】
図8に示すように、インデックス1〜4の初期値データは、頸動脈の前壁、後壁が直線状であって、互いに水平状態で平行に配置され、その位置が前後方向(なお、探触子21が当てられた皮膚に近接する方向を前とし、離間する方向を後とする。)に異なる。また、インデックス5〜8の初期値データは、頸動脈の前壁、後壁が直線状で左下に傾いた状態で互いに平行に配置され、その位置が前後方向に異なる。インデックス9〜12の初期値データは、頸動脈の前壁、後壁が略直線状で右下に傾いた状態で互いに平行に配置され、その位置が前後方向に異なる。インデックス13〜16は、頸動脈の前壁、後壁が円弧状で前方へ凸になるように円弧状にされて互いに平行にされ、その位置が前後方向に異なる。インデックス17〜20は、頸動脈の前壁、後壁が円弧状で後方へ凸になるように円弧状にされて互いに平行にされ、その位置が前後方向に異なる。
【0061】
なお、全ての超音波Bモード画像のサンプルに対しては、これらの初期値データから非線形最適化法を適用すると、そのうちの少なくとも一つは真の頸動脈位置に収束することが確認できている。
【0062】
各初期値データから真値に収束したサンプル数の分布を図6に示す。図6において、横軸の数値は、図8のインデックス(Index)に対応している。図8より、インデックス2,5,6,10,14,18が採用される頻度が高く、こうした位置・形状の頸動脈が多いことがわかる。
【0063】
次に、超音波Bモード画像列I(x,y,t),t=1,…,Ntに対する頸動脈パラメータθ(t),t=1,…,Ntの推定においては、連続するフレーム間では大きく頸動脈の位置・形状が変化しない。このことから、上記の初期値試行は動画の第1フレームの超音波画像I(x,y,1)についてのみ行い第2フレーム以降は、直前のフレームでの頸動脈パラメータの推定値を唯一の初期値として非線形最適化法を適用する。この結果、フレームごとの頸動脈の位置と形状θ(t),t=1,…,Ntが得られることになる。
【0064】
(画像処理プログラムの処理)
続いて、画像処理装置11のCPU41が行う画像処理プログラムの処理を図3を参照して説明する。
【0065】
さて、画像処理装置11のCPU41は、取得した超音波Bモード画像列であるエコー動画像の第1フレーム(最初のフレーム)での頸動脈の位置・形状の推定では、前述した初期値試行を行う。すなわち、CPU41は、前述の20通りの頸動脈の位置・形状から、それぞれ学習を開始し、頸動脈形状らしさを表わす評価関数E(θ)を生成して、この評価関数E(θ)を最大にするものを、頸動脈の位置・形状の推定値とする。
【0066】
ここで、動画において、連続するフレームでは、頸動脈の位置・形状はそれほど大きく変動しないことから、CPU41は、直前に推定されたフレームに関する頸動脈の位置・形状から適応的に学習する。例えば、第2フレームでは、第1フレームから、学習を行い、第2フレームにおいて、頸動脈形状らしさを表わす評価関数E(θ)を生成して、同評価関数E(θ)を最大にするものを、頸動脈の位置・形状の推定値とする。このようにして、第2フレーム以降は、直前のフレームから、学習を行い、頸動脈形状らしさを表わす評価関数E(θ)を生成して、この評価関数E(θ)を最大にするものを、そのフレームにおける頸動脈の位置・形状の推定値とする。
【0067】
図3において、a0(t),a1(t),a2(t)は、2次関数で表現された頸動脈の位置・形状の時間変化を表わすパラメータである。また、D(t)は頸動脈直径の時間変化を表わすパラメータである。
【0068】
図5は、超音波Bモード画像について、頸動脈パラメータを推定した一例を示し、同図において、A,Bがそれぞれ2本の二次曲線が推定された頸動脈の前壁と、後壁を示している。
【0069】
次に、CPU41は、動画の全フレームについて、頸動脈の位置・形状の推定が完了すると、この推定結果に基づいて、ディスプレイ13、またはプリンタ14に心拍動に伴う頸動脈直径の変動、すなわち、時間変化を棒グラフや折れ線グラフ化して、表示或いは印刷する。
【0070】
図9は、心拍動に伴う頸動脈直径の変動を、ディスプレイ13に折れ線で表示した例を示している。なお、この例は、20才の男性の頸動脈の直径の変動が示されている。
(動脈硬化検査への応用)
さて、上記のように構成された画像処理装置11は、動脈硬化検査への応用ができる。
【0071】
動脈は、粘弾性材料であるので、外力と変形は非線形的である。このため、変形能を表す動脈硬化の指標として、心拍動に伴う頸動脈の直径変化から動脈の硬さを与える尺度がいくつか提案されている。最も基本的なものとしては、血圧変化量と直径変化率の比として定義される圧力歪み弾性係数
【0072】
【数10】
がある。ここで、Ps,Pdは、それぞれ収縮期血圧(最高血圧)、拡張期血圧(最低血圧)、Ds,Ddは、それぞれ収縮期頸動脈径(最大直径)、拡張期頸動脈径(最小直径)である。血管が硬化すると血圧変化(Ps-Pd)に対して、直径変化率(Ds-Dd)/Ddが小さくなるので、圧力歪み弾性係数Epは大きくなる。
【0073】
提案されている圧力歪み弾性係数Epでは血圧の影響を過大に評価しすぎるため、血圧を対数軸にとり、
【0074】
【数11】
とした尺度も提案されている。これは、修正スティフネスパラメータβ*と呼ばれている。初期に提案されているスティフネスパラメータβでは、血圧100(mHg)での対数血圧変化量と直径変化率の接線の傾き、すなわち、Pd=100,DdをPd=100での血管径、Dsを血圧Psでの血管径として、
【0075】
【数12】
と定義されている。血圧変化(Ps-Pd)が直径変化率(Ds-Dd)/Ddの指数関数で表現できる場合、βとβ*は一致する。さらに、特許文献1では安静時の血圧と直径変化率(ひずみ)を厚肉円筒モデルで記述し、引張試験による弾性係数と等価で、圧力歪み弾性係数Epにおいて血管壁の厚みをdとして補正した弾性係数
【0076】
【数13】
を提案している。従って、これらの提案されている各種の尺度の算出に、画像処理装置11で得られた頸動脈の直径Dを使用することができる。
【0077】
(年齢と頸動脈の直径変化率の関係)
上記のようにして4〜5秒間の頸動脈の長軸断面を撮像した超音波Bモード画像列から推定された頸動脈の直径時間変化の例を図9,図10に示す。図9は20才男性、図10は60才男性の被験者に対する結果である。明らかに、20才男性より60才男性の方が、心拍動に伴う直径変化が小さく、頸動脈の柔らかさが失われていることがわかる。
【0078】
年を取り動脈硬化が進行すると、頸動脈直径の新拍動に伴う変動が小さくなることが、図9、図10で分かる。
また、上記のように動脈の硬さを表す様々な尺度が提案されているが、それらの尺度の中で直径変化に関わる部分は、いずれの尺度も直径変化率
【0079】
【数14】
である。
【0080】
動脈硬化診断への応用可能性を示すため、この直径変化率Drと年齢Yの関係を調査した結果を説明する。
被験者112人に対して、上記の画像処理装置11を使用して、年齢と直径変化率の関係をプロットしたものを図11に示す。図11において2本の曲線は、95%信頼区間を表わす。図11で分かるように、年齢とともに、直径変化率が小さくなり、動脈硬化が進行することが分かる。
【0081】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 本実施形態の画像処理装置11は、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化するCPU41(第1モデル化手段)を備える。また、画像処理装置11は、モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動をディスプレイ13、プリンタ14に出力するCPU41(出力手段)を備える。そして、CPU41は、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数E(θ)を生成して、該評価関数の最適化を行うようにした。また、CPU41は、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行うようにした。
【0082】
この結果、頸動脈全体の形状をモデル化することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できる。併せて、本実施形態では効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理装置とすることができる。
【0083】
(2) また、本実施形態の画像処理装置11は、複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶装置44(記憶手段)を備える。また、画像処理装置11のCPU41は第2モデル化手段として、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数E(θ)を生成して、該評価関数の最適化を行うようにした。そして、CPU41は最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する。この結果、初期値データは、被験者の数が多いほど、クラスタ分析された場合、初期値データとしていくつかの異なるモデルが得られる。このため、CPU41により、これらの初期値データから評価関数E(θ)を最適化すれば、一つは真の頸動脈位置に収束することが期待でき、最初のフレームに対して効率的にモデル化を行うことができる。
【0084】
(3) また、本実施形態では、評価関数E(θ)が、1つのフレームに描画される頸動脈長軸断面形状に関して既にモデル化されたモデルと、該フレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルのベクトルの内積とした。この結果、効率的に、上記(1)の効果を実現できる。
【0085】
(4) 本実施形態の画像処理プログラムは、コンピュータ12を、第1モデル化手段及び出力手段として機能させる。この結果、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを提供できる。
【0086】
(5) 本実施形態の画像処理プログラムは、コンピュータ12を、複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段とするようにした。又、画像処理プログラムは、コンピュータ12を、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行うように第2モデル化手段として機能させる。そして、画像処理プログラムは、コンピュータ12を、最適化の結果に基づいて最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段として機能させる。
【0087】
この結果、初期値データは、被験者の数が多いほど、クラスタ分析された場合、初期値データとしていくつかの異なるモデルが得られる。このため、CPU41により、これらの初期値データから評価関数E(θ)を最適化すれば、一つは真の頸動脈位置に収束することが期待でき、最初のフレームに対して効率的にモデル化を行うことができる。
【0088】
(6) 本実施形態の画像処理プログラムは、評価関数が、1つのフレームに描画される頸動脈長軸断面形状に関して既にモデル化されたモデルと、該フレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルのベクトルの内積であることを特徴とする。この結果、上記(3)の効果を容易に実現できる。
【0089】
(7) また、本実施形態のROM42は、前記画像処理プログラムを記憶した記憶媒体とした。この結果、コンピュータ12がこの画像処理プログラムを実行することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できる。このため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて、上記の各種効果を容易に実現できる。
【0090】
(8) また、本実施形態の超音波診断装置によれば、画像処理装置11を備えているため、上記(1)及び(2)の効果を容易に実現できる超音波診断装置となる。
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
【0091】
○ 前記実施形態では、ROM42を画像処理プログラムを記憶する記憶媒体としたが、記憶装置44を画像処理プログラムを記憶する記憶媒体にしてもよく、或いは、CDや、DVD、USBメモリ等の記憶媒体に画像処理プログラムを格納して、CDやDVD等の記憶媒体を読込みするドライバ装置等にて読込みして実行するようにしてもよい。
【0092】
○ 前記実施形態では、「fl(x)、fu(x)、すなわちf(x)が2次関数で表現できる。」と仮定したが、「f(x)が3次関数で表現できる。」と仮定してもよい。
○ 前記動脈硬化解析結果は、ディスプレイ13またはプリンタ14のいずれか一方のみから出力されているように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の画像処理装置11の概略図。
【図2】同じく、画像処理装置11の概略電気ブロック図。
【図3】画像処理装置11が実行する処理の概念図。
【図4】超音波Bモード画像を表わす説明図。
【図5】超音波Bモード画像において、頸動脈パラメータを推定した一例を示す説明図。
【図6】初期値データから真値に収束したサンプル数の分布を示すグラフ。
【図7】重み関数w(x,y;θ)を示す説明図。
【図8】初期値データの説明図。
【図9】心拍動に伴う20才の男性の頸動脈の直径の変動を折れ線で出力した説明図。
【図10】心拍動に伴う60才の男性の頸動脈の直径の変動を折れ線で出力した説明図。
【図11】年齢と直径変化率の関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0094】
11…画像処理装置、12…コンピュータ(第1モデル化手段、第2モデル化手段、出力手段)、
13…ディスプレイ、14…プリンタ、16…医用超音波装置、
21…探触子、42…ROM(記憶媒体)、
44…記憶装置(記憶手段)。
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像処理装置、画像処理プログラム及び記憶媒体に係り、特に、頸動脈の超音波画像の画像処理装置、画像処理プログラム、記憶媒体及び超音波診断装置に関する。
【背景技術】
【0002】
動脈硬化症は、生活習慣の不摂生が危険因子となる生活習慣病の一つであり、自覚症状がほとんどないまま若年層から進行し、放っておくと脳梗塞、心筋梗塞、狭心症などに発展する可能性がある。動脈硬化症は治癒が困難であるため、早期に動脈硬化の兆候をとらえて患者に生活習慣の改善を促し、病気の進行を遅らせることが重要である。
【0003】
動脈硬化症の検査の中で、超音波エコー検査は、非侵襲に血管を直接観察できることから、現在の臨床診断において必要不可欠な検査として定着しつつある。動脈硬化のための超音波エコー検査では、血管内部に付着したプラークと呼ばれる脂肪分の有無や内膜中膜複合体厚(IMT: intima-media complex thickness)を評価する。しかし、動脈硬化初期段階ではプラークもなく、IMTも薄くて計測が困難であるため、こうした形態学的観察では、初期の兆候をとらえることは難しい。
【0004】
これに対し、動脈硬化は動脈が硬化し弾力性を失うことであるから、心拍動に伴う動脈の動きの良さを評価すればよいという考え方がある。プラーク、IMTなどの形態学的計測とは異なり、動脈の動きの定量的計測を行う場合、計算機の援用が不可欠である。
【0005】
従来、頸動脈超音波エコー検査における計算機診断支援としては、非特許文献1〜4が提案されている。
非特許文献1では、超音波Bモード画像において、頸動脈辺縁にはエコー強度勾配の絶対値の極大値が数多く分布し、辺縁はなめらかな曲線であるという仮定をおいて、平滑化微分により輝度勾配の極大点の候補点を抽出し射影演算子を用いて辺縁を検出している。非特許文献2では、さらに、その改良として、辺縁を多項式で近似した係数とルジャンドル多項式の基底を使い、さらに検出された候補点に辺縁らしさの強弱をつけるためにガウス−マルコフ(Gauss-Markov)推定の誤差項に辺縁らしさの強弱を埋め込み、辺縁の検出を行っている。
【0006】
また、非特許文献3では、超音波Bモード画像において、頸動脈後壁における血管内腔と血管内膜の境界をおおよそ0.1(mm)の精度で推定する手法を提案している。この方法では、超音波の直交復調信号を用いて、表皮からの深さと超音波ビーム位置をモデル化し、モデルと実測値の平均二乗誤差をコスト関数として、これを最小化している。
【0007】
非特許文献4では、Bモード画像上で頸動脈壁の1点を手動で指定したのち、RF信号を用いて指定した頸動脈壁の動きを10μmの精度で追跡する手法を提案し実用化している。非特許文献4では、RF信号を用いているため、一部の超音波診断装置でしか利用できないが、現在のところ最も高い精度を有していると推察される。
【0008】
なお、特許文献1は、弾性係数について記述されている。
【特許文献1】特許第3882084号
【非特許文献1】小矢美晴,溝尻 勲,松井清明,中村隆志:「頸動脈の硬度測定」,電学論C,Vol.123(10):pp.1728-1738, 2003.
【非特許文献2】小矢美晴,溝尻勲:「ガウス−マルコフ(Gauss-Markov)推定を用いた総頚動脈の辺縁検出」,電学論C,Vol.124(10):pp.2051-2056, 2004.
【非特許文献3】ハセガワ・H(Hasegawa H),カナイ・H (Kanai H),コイワ・Y (Koiwa Y) :「ディテクション オブ ルーメン・インティマ インタフェイス オブ ポステリオア ウォール フォー メジャーメント オブ エラスティシティ オブ ザ ヒューマン カロティド アーテァリィ(Detection of Lumen-Intima Interface of Posterior Wall for Measurement of Elasticity of the Human Carotid Artery)」, IEEE Transactions on UFFC, Vol.51(1):pp.93-108, 2004.
【非特許文献4】原田烈光,「エコートラッキング法による動脈硬化指標の計測」,超音波検査技術,Vol.28(3):pp.29-35,2003.
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
ところが、非特許文献1〜3の方法は、頸動脈壁の推定法であり、前壁、内腔、後壁を合わせた頸動脈全体の形状、位置を推定するものではない。超音波画像には頸動脈壁と似た筋、腱、静脈壁などが存在し、頸動脈壁そのものの推定では、これらと誤って推定する確率が高い。さらに、これらの手法は、超音波画像静止画を対象とし、動画像に対し頸動脈の動きを追跡することを目的としていない。そのため、動画像に対しては、同じ処理をフレーム数だけ繰り返さなければならず効率的ではない。
【0010】
非特許文献4は、頸動脈の動きの追跡では、精度の観点からRF信号を用いることが有利であるものの、RF信号を出力可能な超音波診断装置は一部の機種に限られていることから、現時点では一般的とはいえず、汎用性に欠ける。
【0011】
本発明の目的は、頸動脈全体の形状をモデル化することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できると共に、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理装置を提供することにある。なお、本明細書において、頸動脈全体とは、頸動脈の前壁、後壁及び両壁間の内腔を含む趣旨である。また、頸動脈を超音波診断装置の探触子21で計測した際に、同探触子21に近い方の壁を前壁といい、遠い方の壁を後壁という。
【0012】
また、本発明の他の目的は、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを提供することにある。
【0013】
また、本発明の他の目的は、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を提供することにある。
【0014】
さらに、本発明の他の目的は、上記画像処理装置を備えた超音波診断装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の発明は、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化する第1モデル化手段と、前記モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する出力手段とを備え、前記第1モデル化手段は、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行うことを特徴とする画像処理装置を要旨とするものである。
【0016】
請求項2の発明は、請求項1において、複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段と、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段とを備えたことを特徴とする。
【0017】
請求項3の発明は、コンピュータを、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化する際に、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行う第1モデル化手段と、前記モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する出力手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラムを要旨とするものである。
【0018】
請求項4の発明は、請求項3において、コンピュータを、複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段と、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段として機能させることを特徴とする。
【0019】
請求項5の発明は、請求項3または請求項4に記載の画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を要旨とするものである。
請求項6の発明は、請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置に接続され、探触子の超音波送受信により得られたエコー信号を基に生体内の超音波Bモード画像列を生成し、前記画像処理装置に前記超音波Bモード画像列を出力することを特徴とする超音波診断装置を要旨とするものである。
【発明の効果】
【0020】
請求項1の発明によれば、頸動脈全体の形状をモデル化することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定できる。また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理装置を提供できる。
【0021】
請求項2の発明によれば、動画の最初のフレームに対しては、初期値データに対する最初のフレームの評価関数を生成する。この初期値データは、被験者の数が多いほど、クラスタ分析された場合、初期値データとしていくつかの異なるモデルが得られる。このため、第2化モデル化手段により、これらの初期値データから評価関数を最適化すれば、一つは真の頸動脈位置に収束することが期待でき、最初のフレームに対して効率的にモデル化を行うことができる。
【0022】
請求項3の発明によれば、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを提供できる。
【0023】
請求項4の発明によれば、請求項2に記載の効果を容易に実現できる画像処理プログラムを提供できる。
請求項5の発明によれば、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを記憶した記憶媒体を提供できる。
【0024】
請求項6の発明によれば、請求項1又は請求項2の効果を備えた超音波診断装置を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下、本発明を具体化した一実施形態を図1〜10を参照して説明する。
図1に示すように、本実施形態の画像処理装置11は、第1モデル化手段、第2モデル化手段、出力手段、記憶手段としてのコンピュータ12、ディスプレイ13、プリンタ14、キーボード15、及び超音波診断装置16を備えている。
【0026】
前記超音波診断装置16は、探触子21、表示部22及び図示しない超音波発生源が備えられている。超音波診断装置16は、探触子21の先端面から生体内にパルス波を送波するとともに頸動脈23からの反射波(エコー信号)を受波する。この超音波診断装置16は、前記探触子21の先端面が長四角形状に形成されており、前記エコー信号に基づいて頸動脈23のBモードで取得された長軸断面形状を含むエコー動画像(すなわち、Bモード画像)を生成する。このエコー動画像は、超音波Bモード画像列に相当する。超音波診断装置16の表示部22には、被検者の頸動脈23が拡張収縮変形する際の動画像が表示される。
【0027】
超音波診断装置16のビデオ出力から前記Bモード画像が出力され、図示しないDVコンバータにより所定の解像度(m×n画素)、所定数のフレーム/秒でビデオキャプチャされた後、IEEE1394信号として、コンピュータ12に入力される。本実施形態では、所定数のフレーム/秒は、30フレーム/秒としているが、この値が限定されるものではないが、頸動脈の心拍動の変化を明確に観測できる値であればよい。
【0028】
また、ディスプレイ13で表示される超音波画像領域の画素数は、水平方向にNx、垂直方向にNyである。本実施形態では、Nx=540(pixel),Ny=420(pixel)としているが、この数値に限定されるものではない。
【0029】
前記超音波診断装置16により取得されたエコー動画像がコンピュータ12に入力されたコンピュータ12が備える記憶装置44に格納される。前記記憶装置44は、例えばハードディスクや半導体記憶装置からなり、前述した前記各種情報の読み出し及び書き込みが可能である。
【0030】
図2に示すように、コンピュータ12はCPU41(中央処理装置)、ROM42、RAM43を備え、記憶媒体としてのROM42に格納された画像処理プログラムを実行する。RAM43は、前記プログラムを実行する際の作業用メモリである。
【0031】
(実施形態の作用)
次に上記のように構成された画像処理装置11において、CPU41が実行する画像処理プログラムの処理を説明するが、このプログラムの説明の前に「頸動脈の同定問題の定式化」及び「頸動脈の位置・形状の推定」について説明する。
【0032】
(頸動脈の同定問題の定式化について)
本実施形態の頸動脈を同定するときの問題について説明する。
本実施形態では、頸動脈壁を単独で検出するのではなく、頸動脈全体の形状をモデル化することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避する。さらに、超音波の動画像から効率的に頸動脈の動きを追跡するためには、動画の第2フレームからは、その直前のフレームでの頸動脈の位置・形状の推定結果を更新する形で適応的に推定してゆく手法が有効である。本実施形態では、超音波Bモード画像を利用することを前提とし、こうした考えの下で頸動脈の位置・形状の推定を行う。
【0033】
ここで、CPU41が取得した超音波Bモード画像列をI(x,y,t),x=1,…,Nx,y=1,…,Ny,t=1,…,Ntとする。
x,y,tは、それぞれ水平方向の画素番号、垂直方向の画素番号、フレーム番号を表す。ただし、画像の左上をx=1,y=1とする。また、Nx,Ny,Ntは、それぞれ水平方向の画素総数、垂直方向の画素総数、フレーム総数を表す。なお、一枚の超音波画像に着目する場合には、単にI(x,y),x=1,…,Nx,y=1,…,Nyと書く。頸動脈の長軸断面を撮影した超音波画像の一例を図4に示す。図4中、中央にほぼ平行に走る上下2本の曲線が、それぞれ頸動脈の前壁と後壁である。血管壁は超音波を強く反射するため、超音波画像では白く表示される。また、頸動脈以外にも、筋、腱、静脈壁など様々な組織の存在が確認される。このような超音波Bモード画像を使用することを前提にして、頸動脈の前壁と後壁の位置をすべてのフレームにわたり同定する。
【0034】
ここで、頸動脈の前壁と後壁の垂直方向の位置yを水平方向画素番号x=1,…,Nxの関数として、それぞれfu(x),fl(x)で表わす。本実施形態においては、超音波画像の横幅40(mm)程度とし、前壁と後壁の位置に関して以下の仮定が成立するものとする。
【0035】
(1) fu(x),fl(x)が平行である。
すなわち、頸動脈の直径をDとすると、適当な関数f(x)を用いて、fu(x)=f(x)-D/2,fl(x)=f(x)+D/2と表わすことができる。
【0036】
(2) fl(x)、fu(x)、すなわちf(x)が2次関数で表現できる。
このような仮定は、総頸動脈から内頸動脈と外頸動脈に分離する膨らみである頸動脈洞にかかっていなく、かつ著しい動脈硬化により頸動脈が変形していなければ、これから説明する頸動脈の位置・形状を推定するのに支障ない程度に成立する。
【0037】
この仮定により、f(x)は2次関数で表現できることから、
【0038】
【数1】
と表わされる。1つのフレームにおける頸動脈の位置・形状は、2次関数の係数a0,a1,a2と頸動脈の直径Dで完全に表現することができる。これらのパラメータをまとめて頸動脈パラメータθ=(a0,a1,a2,D)と表わす。超音波Bモード画像列を扱う場合には、各フレームで頸動脈パラメータθの値は変化するから、頸動脈パラメータをフレーム番号tの関数としてθ(t)により表す。結局、頸動脈前壁と後壁の位置をすべてのフレームにわたり同定する問題は、θ(t),t=1,…,Ntを決定する問題に帰着する。
【0039】
(頸動脈の位置・形状の推定について)
本実施形態では、上記の問題を下記のようにして解決することにより、頸動脈の位置・形状の推定を行う。
【0040】
頸動脈の前壁、および後壁の幅(すなわち、厚み)をともにWとすると、超音波Bモード画像中の頸動脈前壁と後壁を表す画素(x,y)の集合は、それぞれ次式で表わされる。
【0041】
【数2】
【0042】
【数3】
従って、頸動脈壁全体は、
【0043】
【数4】
と表わされる。また、頸動脈内腔を表す画素(x,y)の集合を
【0044】
【数5】
と表す。
【0045】
超音波Bモード画像において、頸動脈壁は強いエコーのため白く、頸動脈内腔はエコーが弱いため黒く描かれる。すなわち、頸動脈壁を表すBでは画素値は大きく、頸動脈内腔を表わすTでは画素値は小さくなる。なお、画素値は、画素の濃淡値のことである。そこで、位置・形状を与える頸動脈パラメータθに対し、それが頸動脈であるらしさを表す以下の式(6)で表わされる評価関数を導入する。
【0046】
【数6】
ただし、α,βは、いずれも正値の定数であり、|・|は、集合・の要素数を表す。式(6)の右辺第一項は、頸動脈壁の想定する位置で画素値が大きい、すなわち白いほど大きな値をとり、右辺第二項は、頸動脈内腔と想定される位置で画素値が小さい、すなわち黒いほど大きな値をとる。
【0047】
右辺第三項において、g(D;Dmin,Dmax)は次式で表わされる関数である。
【0048】
【数7】
Dmin、Dmaxは、それぞれヒト頸動脈直径の考えうる最小値、最大値であり、右辺第三項は、その範囲を外れた場合のペナルティ項を表す。
【0049】
本実施形態では、これまでに収集した超音波Bモード画像のサンプルからDmin=5(mm)、Dmax=12(mm)に設定されている。なお、これらの数値は、限定されるものではなく、サンプル数等に応じて変更してもよい。
【0050】
また、βは、計算において丸め誤差が生じない程度に十分大きな正数を選択すればよい。また、式(6)において、αは、頸動脈壁と頸動脈内腔でのエコーの強さの比、超音波検査装置の画像出力などの仕様に依存するが、本実施形態では、予備実験によりα=2.0が選択されている。
【0051】
なお、式(6)で表わされる評価関数E(θ)は、重み
【0052】
【数8】
を定義すれば、
【0053】
【数9】
と表わすこともできる。
【0054】
ここで、式(9)の右辺第一項は、1つのフレームに描画される頸動脈長軸断面形状に関して既にモデル化されたモデルに対する該フレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルのベクトルの内積に相当するものである。
【0055】
この重み関数w(x,y;θ)の例は図7に示されている。
そして、超音波Bモード画像I(x,y)における頸動脈の位置と形状、すなわち頸動脈パラメータθの値は、式(6)で与えられる評価関数E(θ)を最大にするように決定すればよいことになる。
【0056】
なお、こうしたパラメータの値は解析的には求めることはできないが、最急降下法、ニュートン法、共役勾配法、シンプレックス法などの非線形最適化法を利用して求めることができる。
【0057】
非線形最適化法では、適当に定めた初期値から評価関数を最大にするようにパラメータを更新してゆくが、図4の超音波Bモード画像を見てもわかるとおり、静脈、脂肪、筋の存在や組織の不均一性により頸動脈以外にも至る所にエコーの強い部分が存在する。
【0058】
すなわち、この評価関数には至る所に極大値、つまり局所解が存在する。そのため、異なる複数の初期値から非線形最適化法を適用し、その中で評価関数E(θ)を最大にするものを最終的な推定値として採用するといった初期値試行を行うと好適である。
【0059】
本実施形態では、予め取得されたいくつかの超音波Bモード画像のサンプルが前述の方法でモデル化され、その頸動脈パラメータθがクラスタ分析されて、それらが頸動脈パラメータθの初期値データとしている。なお、本実施形態では、初期値データは、図8に示すようにインデックス(初期値番号:Index)1〜20が付与されて20個が設定されているが、個数は、20個に限定されるものではない。初期値データは、記憶装置44に予め記憶されている。
【0060】
図8に示すように、インデックス1〜4の初期値データは、頸動脈の前壁、後壁が直線状であって、互いに水平状態で平行に配置され、その位置が前後方向(なお、探触子21が当てられた皮膚に近接する方向を前とし、離間する方向を後とする。)に異なる。また、インデックス5〜8の初期値データは、頸動脈の前壁、後壁が直線状で左下に傾いた状態で互いに平行に配置され、その位置が前後方向に異なる。インデックス9〜12の初期値データは、頸動脈の前壁、後壁が略直線状で右下に傾いた状態で互いに平行に配置され、その位置が前後方向に異なる。インデックス13〜16は、頸動脈の前壁、後壁が円弧状で前方へ凸になるように円弧状にされて互いに平行にされ、その位置が前後方向に異なる。インデックス17〜20は、頸動脈の前壁、後壁が円弧状で後方へ凸になるように円弧状にされて互いに平行にされ、その位置が前後方向に異なる。
【0061】
なお、全ての超音波Bモード画像のサンプルに対しては、これらの初期値データから非線形最適化法を適用すると、そのうちの少なくとも一つは真の頸動脈位置に収束することが確認できている。
【0062】
各初期値データから真値に収束したサンプル数の分布を図6に示す。図6において、横軸の数値は、図8のインデックス(Index)に対応している。図8より、インデックス2,5,6,10,14,18が採用される頻度が高く、こうした位置・形状の頸動脈が多いことがわかる。
【0063】
次に、超音波Bモード画像列I(x,y,t),t=1,…,Ntに対する頸動脈パラメータθ(t),t=1,…,Ntの推定においては、連続するフレーム間では大きく頸動脈の位置・形状が変化しない。このことから、上記の初期値試行は動画の第1フレームの超音波画像I(x,y,1)についてのみ行い第2フレーム以降は、直前のフレームでの頸動脈パラメータの推定値を唯一の初期値として非線形最適化法を適用する。この結果、フレームごとの頸動脈の位置と形状θ(t),t=1,…,Ntが得られることになる。
【0064】
(画像処理プログラムの処理)
続いて、画像処理装置11のCPU41が行う画像処理プログラムの処理を図3を参照して説明する。
【0065】
さて、画像処理装置11のCPU41は、取得した超音波Bモード画像列であるエコー動画像の第1フレーム(最初のフレーム)での頸動脈の位置・形状の推定では、前述した初期値試行を行う。すなわち、CPU41は、前述の20通りの頸動脈の位置・形状から、それぞれ学習を開始し、頸動脈形状らしさを表わす評価関数E(θ)を生成して、この評価関数E(θ)を最大にするものを、頸動脈の位置・形状の推定値とする。
【0066】
ここで、動画において、連続するフレームでは、頸動脈の位置・形状はそれほど大きく変動しないことから、CPU41は、直前に推定されたフレームに関する頸動脈の位置・形状から適応的に学習する。例えば、第2フレームでは、第1フレームから、学習を行い、第2フレームにおいて、頸動脈形状らしさを表わす評価関数E(θ)を生成して、同評価関数E(θ)を最大にするものを、頸動脈の位置・形状の推定値とする。このようにして、第2フレーム以降は、直前のフレームから、学習を行い、頸動脈形状らしさを表わす評価関数E(θ)を生成して、この評価関数E(θ)を最大にするものを、そのフレームにおける頸動脈の位置・形状の推定値とする。
【0067】
図3において、a0(t),a1(t),a2(t)は、2次関数で表現された頸動脈の位置・形状の時間変化を表わすパラメータである。また、D(t)は頸動脈直径の時間変化を表わすパラメータである。
【0068】
図5は、超音波Bモード画像について、頸動脈パラメータを推定した一例を示し、同図において、A,Bがそれぞれ2本の二次曲線が推定された頸動脈の前壁と、後壁を示している。
【0069】
次に、CPU41は、動画の全フレームについて、頸動脈の位置・形状の推定が完了すると、この推定結果に基づいて、ディスプレイ13、またはプリンタ14に心拍動に伴う頸動脈直径の変動、すなわち、時間変化を棒グラフや折れ線グラフ化して、表示或いは印刷する。
【0070】
図9は、心拍動に伴う頸動脈直径の変動を、ディスプレイ13に折れ線で表示した例を示している。なお、この例は、20才の男性の頸動脈の直径の変動が示されている。
(動脈硬化検査への応用)
さて、上記のように構成された画像処理装置11は、動脈硬化検査への応用ができる。
【0071】
動脈は、粘弾性材料であるので、外力と変形は非線形的である。このため、変形能を表す動脈硬化の指標として、心拍動に伴う頸動脈の直径変化から動脈の硬さを与える尺度がいくつか提案されている。最も基本的なものとしては、血圧変化量と直径変化率の比として定義される圧力歪み弾性係数
【0072】
【数10】
がある。ここで、Ps,Pdは、それぞれ収縮期血圧(最高血圧)、拡張期血圧(最低血圧)、Ds,Ddは、それぞれ収縮期頸動脈径(最大直径)、拡張期頸動脈径(最小直径)である。血管が硬化すると血圧変化(Ps-Pd)に対して、直径変化率(Ds-Dd)/Ddが小さくなるので、圧力歪み弾性係数Epは大きくなる。
【0073】
提案されている圧力歪み弾性係数Epでは血圧の影響を過大に評価しすぎるため、血圧を対数軸にとり、
【0074】
【数11】
とした尺度も提案されている。これは、修正スティフネスパラメータβ*と呼ばれている。初期に提案されているスティフネスパラメータβでは、血圧100(mHg)での対数血圧変化量と直径変化率の接線の傾き、すなわち、Pd=100,DdをPd=100での血管径、Dsを血圧Psでの血管径として、
【0075】
【数12】
と定義されている。血圧変化(Ps-Pd)が直径変化率(Ds-Dd)/Ddの指数関数で表現できる場合、βとβ*は一致する。さらに、特許文献1では安静時の血圧と直径変化率(ひずみ)を厚肉円筒モデルで記述し、引張試験による弾性係数と等価で、圧力歪み弾性係数Epにおいて血管壁の厚みをdとして補正した弾性係数
【0076】
【数13】
を提案している。従って、これらの提案されている各種の尺度の算出に、画像処理装置11で得られた頸動脈の直径Dを使用することができる。
【0077】
(年齢と頸動脈の直径変化率の関係)
上記のようにして4〜5秒間の頸動脈の長軸断面を撮像した超音波Bモード画像列から推定された頸動脈の直径時間変化の例を図9,図10に示す。図9は20才男性、図10は60才男性の被験者に対する結果である。明らかに、20才男性より60才男性の方が、心拍動に伴う直径変化が小さく、頸動脈の柔らかさが失われていることがわかる。
【0078】
年を取り動脈硬化が進行すると、頸動脈直径の新拍動に伴う変動が小さくなることが、図9、図10で分かる。
また、上記のように動脈の硬さを表す様々な尺度が提案されているが、それらの尺度の中で直径変化に関わる部分は、いずれの尺度も直径変化率
【0079】
【数14】
である。
【0080】
動脈硬化診断への応用可能性を示すため、この直径変化率Drと年齢Yの関係を調査した結果を説明する。
被験者112人に対して、上記の画像処理装置11を使用して、年齢と直径変化率の関係をプロットしたものを図11に示す。図11において2本の曲線は、95%信頼区間を表わす。図11で分かるように、年齢とともに、直径変化率が小さくなり、動脈硬化が進行することが分かる。
【0081】
本実施形態によって発揮される効果について、以下に記載する。
(1) 本実施形態の画像処理装置11は、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化するCPU41(第1モデル化手段)を備える。また、画像処理装置11は、モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動をディスプレイ13、プリンタ14に出力するCPU41(出力手段)を備える。そして、CPU41は、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数E(θ)を生成して、該評価関数の最適化を行うようにした。また、CPU41は、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行うようにした。
【0082】
この結果、頸動脈全体の形状をモデル化することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できる。併せて、本実施形態では効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理装置とすることができる。
【0083】
(2) また、本実施形態の画像処理装置11は、複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶装置44(記憶手段)を備える。また、画像処理装置11のCPU41は第2モデル化手段として、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数E(θ)を生成して、該評価関数の最適化を行うようにした。そして、CPU41は最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する。この結果、初期値データは、被験者の数が多いほど、クラスタ分析された場合、初期値データとしていくつかの異なるモデルが得られる。このため、CPU41により、これらの初期値データから評価関数E(θ)を最適化すれば、一つは真の頸動脈位置に収束することが期待でき、最初のフレームに対して効率的にモデル化を行うことができる。
【0084】
(3) また、本実施形態では、評価関数E(θ)が、1つのフレームに描画される頸動脈長軸断面形状に関して既にモデル化されたモデルと、該フレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルのベクトルの内積とした。この結果、効率的に、上記(1)の効果を実現できる。
【0085】
(4) 本実施形態の画像処理プログラムは、コンピュータ12を、第1モデル化手段及び出力手段として機能させる。この結果、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できるため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて汎用性が高い画像処理プログラムを提供できる。
【0086】
(5) 本実施形態の画像処理プログラムは、コンピュータ12を、複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段とするようにした。又、画像処理プログラムは、コンピュータ12を、連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行うように第2モデル化手段として機能させる。そして、画像処理プログラムは、コンピュータ12を、最適化の結果に基づいて最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段として機能させる。
【0087】
この結果、初期値データは、被験者の数が多いほど、クラスタ分析された場合、初期値データとしていくつかの異なるモデルが得られる。このため、CPU41により、これらの初期値データから評価関数E(θ)を最適化すれば、一つは真の頸動脈位置に収束することが期待でき、最初のフレームに対して効率的にモデル化を行うことができる。
【0088】
(6) 本実施形態の画像処理プログラムは、評価関数が、1つのフレームに描画される頸動脈長軸断面形状に関して既にモデル化されたモデルと、該フレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルのベクトルの内積であることを特徴とする。この結果、上記(3)の効果を容易に実現できる。
【0089】
(7) また、本実施形態のROM42は、前記画像処理プログラムを記憶した記憶媒体とした。この結果、コンピュータ12がこの画像処理プログラムを実行することにより、頸動脈壁と似た形状を示す筋、腱、静脈を頸動脈壁と誤推定することを回避できるとともに、効率的に頸動脈全体の形状を推定でき、また、超音波Bモード画像列が使用できる。このため、広く使用されている医用の超音波診断装置から画像を取得できて、上記の各種効果を容易に実現できる。
【0090】
(8) また、本実施形態の超音波診断装置によれば、画像処理装置11を備えているため、上記(1)及び(2)の効果を容易に実現できる超音波診断装置となる。
なお、前記実施形態を次のように変更して構成することもできる。
【0091】
○ 前記実施形態では、ROM42を画像処理プログラムを記憶する記憶媒体としたが、記憶装置44を画像処理プログラムを記憶する記憶媒体にしてもよく、或いは、CDや、DVD、USBメモリ等の記憶媒体に画像処理プログラムを格納して、CDやDVD等の記憶媒体を読込みするドライバ装置等にて読込みして実行するようにしてもよい。
【0092】
○ 前記実施形態では、「fl(x)、fu(x)、すなわちf(x)が2次関数で表現できる。」と仮定したが、「f(x)が3次関数で表現できる。」と仮定してもよい。
○ 前記動脈硬化解析結果は、ディスプレイ13またはプリンタ14のいずれか一方のみから出力されているように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0093】
【図1】本発明を具体化した一実施形態の画像処理装置11の概略図。
【図2】同じく、画像処理装置11の概略電気ブロック図。
【図3】画像処理装置11が実行する処理の概念図。
【図4】超音波Bモード画像を表わす説明図。
【図5】超音波Bモード画像において、頸動脈パラメータを推定した一例を示す説明図。
【図6】初期値データから真値に収束したサンプル数の分布を示すグラフ。
【図7】重み関数w(x,y;θ)を示す説明図。
【図8】初期値データの説明図。
【図9】心拍動に伴う20才の男性の頸動脈の直径の変動を折れ線で出力した説明図。
【図10】心拍動に伴う60才の男性の頸動脈の直径の変動を折れ線で出力した説明図。
【図11】年齢と直径変化率の関係を示す説明図。
【符号の説明】
【0094】
11…画像処理装置、12…コンピュータ(第1モデル化手段、第2モデル化手段、出力手段)、
13…ディスプレイ、14…プリンタ、16…医用超音波装置、
21…探触子、42…ROM(記憶媒体)、
44…記憶装置(記憶手段)。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化する第1モデル化手段と、
前記モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する出力手段とを備え、
前記第1モデル化手段は、
既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段と、
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
コンピュータを、
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化する際に、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行う第1モデル化手段と、
前記モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する出力手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項4】
コンピュータを、
複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段と、
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段として機能させることを特徴とする請求項3に記載の画像処理プログラム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の画像処理プログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置に接続され、探触子の超音波送受信により得られたエコー信号を基に生体内の超音波Bモード画像列を生成し、前記画像処理装置に前記超音波Bモード画像列を出力することを特徴とする超音波診断装置。
【請求項1】
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化する第1モデル化手段と、
前記モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する出力手段とを備え、
前記第1モデル化手段は、
既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行うことを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段と、
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段とを備えたことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
コンピュータを、
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得して、各フレームに描画される頸動脈長軸断面形状を、頸動脈の位置と形状を表わす頸動脈パラメータを有するモデルで順次モデル化する際に、既にモデル化されたフレームの次のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記次のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化し、以後に続くフレームに対しては同様に行う第1モデル化手段と、
前記モデル化した結果に基づいて心拍動に伴う頸動脈直径の変動を出力する出力手段として機能させることを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項4】
コンピュータを、
複数の被験者に関する頸動脈長軸断面形状がクラスタ分析されてモデル化された初期値データを記憶する記憶手段と、
連続したフレームからなる超音波Bモード画像列を取得した際に、前記初期値データに対する最初のフレームに描画される頸動脈長軸断面形状のモデルの評価関数を生成して、該評価関数の最適化を行い、最適化の結果に基づいて前記最初のフレームについての頸動脈長軸断面形状の位置・形状を推定してモデル化する第2モデル化手段として機能させることを特徴とする請求項3に記載の画像処理プログラム。
【請求項5】
請求項3または請求項4に記載の画像処理プログラムを記憶した記憶媒体。
【請求項6】
請求項1又は請求項2に記載の画像処理装置に接続され、探触子の超音波送受信により得られたエコー信号を基に生体内の超音波Bモード画像列を生成し、前記画像処理装置に前記超音波Bモード画像列を出力することを特徴とする超音波診断装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2009−66268(P2009−66268A)
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−239198(P2007−239198)
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)【国等の委託研究の成果に係る記載事項】 平成16〜20年度、文部科学省、地域科学技術振興施策、委託研究(知的クラスター創成事業、岐阜・大垣地域ロボティック先端医療クラスター)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年9月14日(2007.9.14)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)【国等の委託研究の成果に係る記載事項】 平成16〜20年度、文部科学省、地域科学技術振興施策、委託研究(知的クラスター創成事業、岐阜・大垣地域ロボティック先端医療クラスター)、産業技術力強化法第19条の適用を受ける特許出願
【出願人】(304019399)国立大学法人岐阜大学 (289)
【Fターム(参考)】
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