説明

画像処理装置、画像処理プログラムおよび撮像装置

【課題】画像に写り込んだゴミ影を効率よく正確に抽出する画像処理装置を提供する。
【解決手段】画像処理装置が、画像情報に基づいて画像内での輝度勾配を算出する輝度勾配算出部と、輝度勾配算出部により算出された輝度勾配に基づいて定められる候補領域の内側における色相を示す第1の色相値と、候補領域の周辺における色相を示す第2の色相値とを算出する色相値算出部と、候補領域の中から、第1の色相値と第2の色相値との差が予め定められた閾値以下の領域を抽出する領域抽出部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像された画像に含まれるゴミ影の領域を抽出する画像処理装置、画像処理プログラムおよび撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
電子カメラなどの撮像装置によって撮像を行なう際、撮像素子の近傍に配置された光学フィルタ等の光学部材における撮像光路上にゴミが付着していると、付着したゴミにより生じた影が撮像画像に写り込む場合がある。特にレンズ交換式の撮像装置では、レンズ交換時などに塵や埃などのゴミがカメラボディ内に侵入して付着する場合がある。例えば特許文献1に示される技術では、このように画像に写り込んだゴミ影を抽出して補正を行なうために、一様面においてゴミ影の写り込んだ基準画像を予め撮像してゴミ位置の座標を算出する。そして、補正対象の撮像画像における基準画像のゴミ位置に対応する位置について、ゴミ影を削除する補正を行なう。また、特許文献1には、補正対象の画像に含まれる各画素の輝度の変化に基づいてゴミ影を抽出する技術が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2004−220553号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1の技術により基準画像に基づいてゴミ影の補正を行なう場合には、基準画像と補正対象の画像との複数画像に対して処理を行うため、複雑な処理の処理負荷に相当する撮像装置の処理性能や処理時間が必要となる。一方、補正対象の画像に含まれる各画素の輝度の変化に基づいてゴミ影を抽出する場合、例えば被写体の色合いによる輝度の変化を誤ってゴミ影として抽出してしまうことがあった。ここで、画像に写り込んだゴミ影を抽出する場合には、より少ない処理負荷で効率良く行なうとともに、ゴミ影の誤検出を低減させることが望ましい。
【0005】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたもので、画像に写り込んだゴミ影を、より少ない処理負荷で正確に抽出する画像処理装置、画像処理プログラムおよび撮像装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述した課題を解決するために、本発明は、画像情報に基づいて画像内での輝度勾配を算出する輝度勾配算出部と、輝度勾配算出部により算出された輝度勾配に基づいて定められる候補領域の内側における色相を示す第1の色相値と、候補領域の周辺における色相を示す第2の色相値とを算出する色相値算出部と、候補領域の中から、第1の色相値と第2の色相値との差が予め定められた閾値以下の領域を抽出する領域抽出部とを備えることを特徴とする画像処理装置である。
【0007】
また、本発明は、上述の輝度勾配算出部が、逆ガンマ補正された画像情報に基づいて輝度勾配を算出することを特徴とする。
【0008】
また、本発明は、上述の領域抽出部が、候補領域の大きさが予め定められた閾値以上であるか否かの判定を行い、判定結果に基づいて領域を抽出することを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、上述の画像処理装置が画像内での明るさの度合いを算出する明るさ算出部を備え、領域抽出部は、候補領域の周辺の領域の明るさ値が予め定められた閾値以上であるか否かの判定と、候補領域の周辺の明るさ値の変化量が予め定められた閾値以下であるか否かの判定と、候補領域の明るさ値と候補領域の周辺の領域の明るさ値との比が予め定められた閾値以下であるか否かの判定との少なくとも一つに基づいて領域を抽出することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、コンピュータに、画像情報に基づいて画像内での輝度勾配を算出するステップと、算出された輝度勾配に基づいて定められる候補領域の内側における色相を示す第1の色相値と、候補領域の周辺における色相を示す第2の色相値とを算出するステップと、候補領域の中から、第1の色相値と第2の色相値との差が予め定められた閾値以下の領域を抽出するステップとを実行させる画像処理プログラムである。
【0011】
また、本発明は、画像を撮像して画像情報を生成する撮像部と、画像情報に基づいて画像内での輝度勾配を算出する輝度勾配算出部と、輝度勾配算出部により算出された輝度勾配に基づいて定められる候補領域の内側における色相を示す第1の色相値と、候補領域の周辺における色相を示す第2の色相値とを算出する色相値算出部と、候補領域の中から、第1の色相値と第2の色相値との差が予め定められた閾値以下の領域を抽出する領域抽出部とを備えることを特徴とする撮像装置である。
【発明の効果】
【0012】
以上説明したように、本発明によれば、画像に写り込んだゴミ影を、より少ない処理負荷で正確に抽出する画像処理装置、画像処理プログラムおよび撮像装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態による撮像装置の構成例を示す図である。
【図2】本発明の一実施形態による撮像装置の構成例を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態による撮像装置の動作例を示すフローチャートである。
【図4】本発明の一実施形態による画像処理装置の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
図1は、本実施形態による撮像装置100の構成を示す図である。撮像装置100は、レンズ交換式の電子カメラであり、複数の光学レンズ群であるレンズ102を有する光学系101を備える。光学系101が設置されるカメラボディ103は、シャッター106、光学フィルタ105などの光学部材や撮像素子104を備えている。撮像素子4は、CCD(Charge Coupled Device)、CMOS(Complementary Metal Oxide Semiconductor)等であり、光学系101を介して露光され自身の結像面に結像された像を電気信号に変換し、変換した電気信号である画像信号を出力する。出力された画像信号は画像データに変換され、カメラボディ103に備えられるモニター108に表示される。モニター108は、例えばLCD(Liquid Crystal Display)などの液晶ディスプレイである。
【0015】
ここで、光学系101はカメラボディ103に対して着脱可能である。この図には、光学フィルタ105に付着したゴミ107を示している。このようなゴミ107は、光学系101を介して入射する光を遮って、撮像素子104に結像される像に影を形成する。これにより、撮像装置100により生成される画像データにはゴミ影が写り込むこととなる。本実施形態における撮像装置100は、画像データに写り込んだこのようなゴミ影を検出して削除する補正を行なう。
【0016】
図2は、本実施形態による撮像装置100の構成を示すブロック図である。撮像装置100は、自身の記憶領域に予め記憶されたプログラムに基づいて各部の動作を制御するマイコンやCPU(Central Processing Unit)を有し、入力部110と、撮像部111と、画像記憶部112と、明るさ算出部113と、輝度勾配算出部114と、色相値算出部115と、領域抽出部116と、ゴミ補正部117と、表示部118とを備えている。
【0017】
入力部110は、ユーザからの操作情報の入力を受け付ける。入力部110は、例えば、押下されることで定められた情報が入力されるボタン等である。あるいは、表示部118等のディスプレイを兼ねるタッチパネルを適用するようにしても良い。
撮像部111は、定められた制御手順により光学系101を駆動させ、撮像素子104から出力される画像信号に基づいて画像データを生成する。ここでは、撮像部111が生成する画像データは、各画素の色をRGB表色系によって表し、ガンマ補正を行なった情報である。ガンマ補正は、画像データにおける色の情報と、当該画像データを出力するディスプレイやプリンタなどの出力装置に応じたガンマ値との関係によって生じる色の誤差を補正する処理である。ここで、撮像素子104から出力される画像信号に基づいて画像データを生成すると、上述のような誤差により、出力される際に画像中の暗部がつぶれたように見える場合がある。このようなガンマ補正により誤差を補正して、撮像素子104から出力された画像信号に忠実な色合いによる画像を表示することが可能である。
【0018】
画像記憶部112には、撮像部111によって生成された画像データが記憶される。
明るさ算出部113は、画像内での明るさの度合いを算出する。ここでは、明るさ算出部113は、画像データに含まれる画素のRGB値に基づいて、明るさの度合いを示す明るさ値である輝度(Y)を画素毎に算出する。ここで、明るさ算出部113は、RGB値に基づいて以下式(1)により輝度を算出する。
【0019】
【数1】

【0020】
上記式(1)により、明るさ算出部113は、画像記憶部112に記憶された画像データに含まれる各画素について輝度を算出し、画像データに対応する輝度平面を生成する。ここでは、明るさ算出部113は、画素の明るさの度合いを示す情報として輝度を算出する例を説明するが、例えば明度などを算出して適用しても良い。
【0021】
輝度勾配算出部114は、画像情報の逆ガンマ補正を行い、逆ガンマ補正された画像情報に基づいて輝度勾配を算出する。上述のように、撮像部111によって生成され画像記憶部112に記憶された画像データはガンマ補正後の情報である。このようなガンマ補正は出力処理のために行われるため、ガンマ補正により補正された値は他の処理にとって誤差となる。そこで、輝度勾配算出部114は、画像データのガンマ補正前の輝度を算出する逆ガンマ補正を行なう。輝度勾配算出部114は、まず、以下式(2)によって、逆ガンマ補正を行なった輝度Y’を算出する。ここで、γは撮像部111によって行なわれたガンマ補正における補正係数であるガンマ値を示す。
【0022】
【数2】

【0023】
また、輝度勾配算出部114は、画像データに含まれる各画素に基づいて上記式(2)によって算出したY’の輝度平面に対して微分フィルタをかけ、画素(f(i、j))毎に横方向(例えば、右)に隣り合う画素との差分(Δf(i、j))と、縦方向(例えば、下)に隣り合う画素との差分(Δf(i、j))とを算出する。輝度勾配算出部114は、算出した差分に基づいて、以下式(3)により、輝度平面における輝度Y’の勾配を示す値である輝度勾配(Ygrad)を算出する。
【0024】
【数3】

【0025】
ここで、輝度勾配算出部114は、輝度平面の画素毎に輝度勾配を算出して輝度勾配平面を生成する。輝度勾配平面における輝度勾配は、被写体やゴミ影の存在により輝度の変化量が多い部分では相対的に高い値を示し、空などの一様平面では相対的に低い値を示す。
【0026】
色相値算出部115は、輝度勾配算出部114により算出された輝度勾配に基づいて定められる候補領域の内側における色相を示す第1の色相値と、候補領域の周辺における色相を示す第2の色相値とを算出する。ここで、領域の周辺とは、例えば定められた領域の画素から周辺の5ピクセル以内の画素などである。ここでは、輝度勾配算出部114によって算出された輝度勾配に基づいて、後述する領域抽出部116が抽出した候補領域を処理対象とする。色相値算出部115は、色相値算出部115は、画像データに含まれる画素のRGB値に基づいて、色相値(Hue)を算出する。ここでは、色相値算出部115は、画像データに含まれる画素のRGB値をHSV表色系に変換することにより、色相値を算出する。HSV表色系は、H(Hue:色相)、S(saturation:彩度)、V(Value:明度)により色を表すモデルである。色相値算出部115は、以下式(4)により色相値(H)を算出する。
【0027】
【数4】

【0028】
ここで、H<0の場合はHに2πを加え、Vmax=0の場合は、S=0、H=不定となる。
領域抽出部116は、処理対象の画像データからゴミ影が写り込んでいる領域を抽出する。ここで、領域抽出部116の記憶領域には、ゴミ影の領域を抽出するために定められた複数の条件が予め記憶されている。領域抽出部116は、定められた条件に基づいてゴミ影が写り込んでいる可能性が高い候補領域を絞り込んでいき、全ての条件を満たす候補領域を、ゴミ影が写り込んだ領域であると判定する。
【0029】
まず、領域抽出部116は、輝度勾配算出部114により算出された輝度勾配に基づいて候補領域を定める。ここでは、領域抽出部116は、輝度勾配算出部114により生成された輝度勾配平面における輝度勾配が閾値以上であることを条件として候補領域を抽出する。例えば、領域抽出部116は、エッジ部分であるか否かを判定する輝度勾配の閾値を予め記憶し、輝度勾配平面におけるそれぞれの画素の輝度勾配の値と閾値とを比較する。領域抽出部116は、輝度勾配が閾値以上であると判定すれば1とし、閾値未満であると判定すれば0として二値画像を生成する。領域抽出部116は、生成した二値画像から、画素の値が1である領域を候補領域として抽出する。領域抽出部116は、抽出した候補領域がゴミ影であるか否かを判定するために予め定められた条件に基づいて、以下の条件判定処理を行う。ここで、領域抽出部116は、隣接しない複数の画素群の領域を候補領域として抽出した場合には、抽出したそれぞれの候補領域について、以下の条件判定処理を行う。
【0030】
まず、領域抽出部116は、条件判定処理として、候補領域の大きさが予め定められた閾値以上であるか否かの判定を行う。ここで、領域抽出部116には、ゴミ影として定められた画素数の下限値と上限値とが予め記憶される。領域抽出部116は、候補領域に含まれる画素の画素数と、ゴミ影として定められた画素数の範囲の下限値とを比較して、下限値未満である場合は、その候補領域はゴミ影でないと判定する。なぜなら、候補領域が小さすぎる場合は、ノイズによりその候補領域の輝度勾配が閾値以上であると判定されたと考えられるためである。一方、候補領域に含まれる画素の画素数と、ゴミ影として定められた画素数の範囲の上限値とを比較して、上限値以上である場合にも、その候補領域はゴミ影でないと判定する。なぜなら、候補領域が大きすぎる場合は、被写体が存在することによりその候補領域の輝度勾配が閾値以上であると判定されたと考えられるためである。
【0031】
また、領域抽出部116は、撮像装置100の撮像光路上に付着したゴミにより形成されるゴミ影は、その画素の輝度に影響を与える一方、色相に変化を与えないという特性を用いて、候補領域がゴミ影であるか否かを判定する。すなわち、領域抽出部116は、候補領域に含まれる画素について明るさ算出部113によって算出された輝度と候補領域周辺における画素の輝度との差が予め定められた閾値以上であり、かつ、候補領域に含まれる画素について色相値算出部115によって算出された色相値と、候補領域周辺における画素について算出された色相値との差が予め定められた閾値以下であることを条件として、抽出した候補領域が条件を満たすか否かを判定する。領域抽出部116は、抽出した候補領域がこの条件を満たす場合、その候補領域がゴミ影であると判定する。抽出した候補領域がこの条件を満たさない場合、その候補領域はゴミ影でないと判定する。ここでは、候補領域における画素の輝度が、候補領域周辺における画素の輝度よりも小さいことをさらに条件とすることができる。候補領域または候補領域周辺の画素について、複数の画素を処理対象とする場合には、それぞれの候補領域に含まれる画素の値の平均値によって比較することができる。
【0032】
また、領域抽出部116は、候補領域の周辺の領域の明るさ値が予め定められた閾値以上であることをさらに条件として条件判定処理を行う。ここでは、領域抽出部116は、候補領域の周辺の領域の輝度と、予め定められた輝度の閾値とを比較して、輝度が閾値以上である場合にその候補領域をゴミ影であると判定し、輝度が閾値未満である場合にその領域をゴミ影でないと判定する。
【0033】
また、領域抽出部116は、抽出した候補領域の周辺の領域の明るさ値の変化量が予め定められた閾値以下であることをさらに条件として条件判定処理を行う。ここでは、領域抽出部116は、輝度勾配算出部114によって生成された輝度勾配平面を参照して、輝度勾配が閾値以下である場合にその候補領域をゴミ影であると判定し、輝度勾配が閾値以下でない場合にその候補領域をゴミ影でないと判定する。
【0034】
また、領域抽出部116は、抽出した候補領域の明るさ値とその周辺の領域の明るさ値との比が予め定められた閾値以下であることをさらに条件として条件判定処理を行う。例えば、領域抽出部116は、明るさ算出部113によって生成された輝度平面を参照して、候補領域の輝度とその周辺の領域の輝度との比を算出し、算出した比が閾値以下である場合にその候補領域をゴミ影であると判定し、算出した比が閾値以下でない場合にその候補領域をゴミ影でないと判定する。
【0035】
また、領域抽出部116は、上述の条件判定処理を行い、候補領域をゴミ影であると判定した場合には、画像データにおける候補領域の中心座標を算出する。また、領域抽出部116は、表示部118に表示された画像データにおいて、算出した中心座標の箇所に、例えば定められた大きさの矩形状の枠を表示させる。ユーザは、表示された枠を視認することにより、ゴミ影として判定された領域を確認することができる。
【0036】
ゴミ補正部117は、領域抽出部116によって抽出されたゴミ影の領域に写り込んだゴミ影を削除するゴミ補正処理を行う。ここで、上述のように、ゴミ影が写り込んだ領域は、周辺の領域と比較して色相に変化がなく、輝度に変化が存在する。そこで、ゴミ補正部117は、例えば、ゴミ影の領域の画素の輝度を、周辺の画素の輝度と同程度になるように増加させることより、ゴミ影の領域のゴミ影を削除する。
表示部118は、画像データを表示するディスプレイであり、図1におけるモニター108である。
【0037】
次に、図3のフローチャートを参照して、撮像装置100が画像データからゴミ影が写り込んだ領域を抽出する動作例を説明する。ここでは、撮像部111によって画像が撮像されて画像データが生成され、画像記憶部112に記憶されている。入力部110が、ユーザからゴミ影の検出を行ないたい画像データの選択の入力を受付けると、選択された画像データが画像記憶部112から読み出され表示部118に表示される。ここで、ユーザから入力される操作情報に応じて、例えば画像再生モードが「ゴミ検出結果表示モード」に変更されると、撮像装置100は、画像データからのゴミ影検出処理を開始する。まず、色相値算出部115は、画像データのHSV変換を行なって色相値(Hue)を算出する(ステップS1)。明るさ算出部113は、画像データのRGB値に基づいて輝度(Y)を算出し、輝度平面を生成する(ステップS2)。輝度勾配算出部114は、画像データの逆ガンマ補正を行い、逆ガンマ補正された輝度(Y’)に基づく輝度勾配平面を生成する(ステップS3)。
【0038】
領域抽出部116は、生成した輝度勾配平面において輝度勾配(Ygrad)が閾値以上である領域を抽出する(ステップS4)。そして、領域抽出部116は、抽出した領域に含まれる画素数が、定められた範囲内であるか否かを判定する(ステップS5)。ここで、領域抽出部116は、抽出した領域に含まれる画素数が定められた範囲内でないと判定すれば(ステップS5:NO)、処理を終了する。一方、領域抽出部116は、抽出した領域に含まれる画素数が定められた範囲内であると判定すれば(ステップS5:YES)、ステップS6に進む。
【0039】
次に、領域抽出部116は、ステップS4において抽出した候補領域内の輝度と、候補領域の周辺領域の輝度との差が定められた閾値以上であり、かつ、候補領域内の色相値と周辺領域の色相値との差が定められた閾値未満であるか否かを判定する(ステップS6)。領域抽出部116は、候補領域内の輝度と、周辺領域の輝度との差が定められた閾値未満であるか、あるいは候補領域内の色相値と周辺領域の色相値との差が定められた閾値以上であると判定すると(ステップS6:NO)、処理を終了する。一方、領域抽出部116が、ステップS4において抽出した候補領域内の輝度と、周辺領域の輝度との差が定められた閾値以上であり、かつ、候補領域内の色相値と周辺領域の色相値との差が定められた閾値未満であると判定すると、ステップS7に進む。
【0040】
そして、領域抽出部116は、ステップS4において抽出した候補領域の周辺の領域の輝度が、定められた閾値以上であるか否かを判定する(ステップS7)。領域抽出部116は、周辺領域の輝度が定められた閾値未満であると判定すると(ステップS7:NO)、処理を終了する。一方、領域抽出部116が、抽出した周辺領域の輝度は、定められた閾値以上であると判定すると(ステップS7:YES)、ステップS8に進む。
【0041】
次に、領域抽出部116は、周辺領域の輝度勾配が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS8)。領域抽出部116が、周辺領域の輝度勾配は閾値以下でないと判定すると(ステップS8:NO)、処理を終了する。一方、領域抽出部116が、周辺領域の輝度勾配は閾値以下であると判定すると(ステップS8:YES)、ステップS9に進む。また、領域抽出部116は、候補領域と周辺領域との輝度比が閾値以下であるか否かを判定する(ステップS9)。領域抽出部116が、候補領域と周辺領域との輝度比は閾値以下でないと判定すると(ステップS9:NO)、処理を終了する。一方、領域抽出部116が、候補領域と周辺領域との輝度比は閾値以下であると判定すると(ステップS9:YES)、ステップS10に進む。領域抽出部116は、候補領域をゴミ影が写り込んでいる領域であると判定し、抽出したゴミ影の領域の座標値を算出して出力する(ステップS10)。
【0042】
そして、領域抽出部116は、表示部118に表示された画像データのうち、算出したゴミ影の領域の座標値を中心として、矩形状の枠を表示させる。ここで、領域抽出部116が複数の領域をゴミ影の領域として抽出した場合には、複数の枠を表示させる。これにより、ユーザは検出されたゴミ影の個数を視認できるため、例えば検出されたゴミ影の個数に応じて光学部材の清掃のタイミングを図ることができる。入力部110にユーザからゴミ補正を行なう要求を示す操作情報が入力されると、ゴミ補正部117は、抽出されたゴミ影の領域のゴミ補正処理を行う。
【0043】
ここで、撮像装置100は、例えば、領域抽出部116によってゴミ領域として表示された矩形状の枠内の画像を拡大して、表示部118に表示させるようにしても良い。これにより、ゴミ影が小さい場合にもユーザにとって視認しやすくなる。また、撮像装置100は、ユーザからの操作情報の入力に応じて、例えばゴミ領域とその周辺のコントラストを強調して表示部118に表示させるようにしても良い。このようにすれば、ゴミ影の領域の画素と周辺の画素との輝度の差が、人間の目によっては確認することが困難である程度に小さく、ゴミ影が薄い場合にも、ユーザにとって視認しやすくなる。
【0044】
なお、本実施形態では、領域抽出部116が候補領域からゴミ影の領域を判定する複数の条件を説明したが、必ずしも上述の全ての条件を満たす領域のみをゴミ影として抽出しなくとも良く、例えばゴミ影を抽出する対象の画像や要求される検出精度などに応じて、任意の条件を適用してゴミ影の抽出処理を行って良い。
【0045】
また、領域抽出部116が、輝度勾配算出部114によって算出された輝度勾配に基づくエッジ部分を候補領域として抽出する際、例えば円形のゴミ影を抽出する場合にはゴミ影のエッジ部分のみが候補領域として抽出され、エッジの内側が候補領域としては認識されず、中心部に穴が形成されたドーナツ状の候補領域が抽出される場合があると考えられる。そこで、領域抽出部116は、輝度勾配に基づいて抽出された候補領域を膨張させた後に収縮させる処理(クロージング)を行い、候補領域の穴を埋める処理を行うようにしても良い。また、候補領域を収縮した後に膨張させる処理(オープニング)を行なって、ノイズ等による小さな連結成分を除去するようにしても良い。
【0046】
ここでは、撮像装置100によってゴミ影の抽出処理と補正処理とを行なう例を説明したが、撮像装置100とは異なるコンピュータ装置がこれらの処理を行う構成としても良い。図4は、このような構成による撮像装置200と画像処理装置300とを示すブロック図である。撮像装置200は、被写体を撮像して画像データを生成する電子カメラである。画像処理装置300は、撮像装置200が生成した画像データについてのゴミ影の抽出処理と補正処理とを行なうコンピュータ装置であり、入力部310と、画像記憶部312と、明るさ算出部313と、輝度勾配算出部314と、色相値算出部315と、領域抽出部316と、ゴミ補正部317と、表示部318とを備えている。
【0047】
画像処理装置300が備える各部は、上述の撮像装置100が備える同名の各部と同様の構成である。ただし、入力部310は、キーボードやマウスなどのデバイスである。画像記憶部312には、撮像装置200によって撮像され生成された画像データが記憶される。表示部318は、液晶ディスプレイなどのデバイスである。
【0048】
なお、本実施形態におけるゴミ影の抽出処理は、画像データを圧縮(例えば、1/4)して、圧縮後の画像データに対して行なうようにしても良い。また、画像データを領域分割(例えば、8×16)して、分割した領域のそれぞれについてゴミ影の抽出処理を行うようにしても良い。これにより、処理対象の画像データ量を減らし、より負荷を低くして処理を行うことができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態によれば、撮像装置内の撮像光路上に付着したゴミにより形成されるゴミ影は、その画像の輝度に影響を与える一方、色相に変化を与えないという特性を用いることで、画像に写り込んだゴミ影を効率よく正確に抽出することが可能となる。
【0050】
なお、画像記憶部112(画像記憶部312)は、ハードディスク装置や光磁気ディスク装置、フラッシュメモリ等の不揮発性のメモリや、CR−ROM等の読み出しのみが可能な記憶媒体、RAM(Random Access Memory)のような揮発性のメモリ、あるいはこれらの組み合わせにより構成されるものとする。
【0051】
なお、明るさ算出部113(明るさ算出部313)、輝度勾配算出部114(輝度勾配算出部314)、色相値算出部115(色相値算出部315)、領域抽出部116(領域抽出部316)、ゴミ補正部117(ゴミ補正部317)は専用のハードウェアにより実現されるものであってもよく、または、メモリおよびCPU(中央演算装置)により構成され、各処理部の機能を実現するためのプログラムをメモリにロードして実行することによりその機能を実現させるものであってもよい。
【0052】
また、各処理部の機能を実現するためのプログラムをコンピュータ読み取り可能な記録媒体に記録して、この記録媒体に記録されたプログラムをコンピュータシステムに読み込ませ、実行することにより、各部により実行される処理を行ってもよい。なお、ここでいう「コンピュータシステム」とは、OSや周辺機器等のハードウェアを含むものとする。
【0053】
また、「コンピュータシステム」は、WWWシステムを利用している場合であれば、ホームページ提供環境(あるいは表示環境)も含むものとする。
また、「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、フレキシブルディスク、光磁気ディスク、ROM、CD−ROM等の可搬媒体、コンピュータシステムに内蔵されるハードディスク等の記憶装置のことをいう。さらに「コンピュータ読み取り可能な記録媒体」とは、インターネット等のネットワークや電話回線等の通信回線を介してプログラムを送信する場合の通信線のように、短時間の間、動的にプログラムを保持するもの、その場合のサーバやクライアントとなるコンピュータシステム内部の揮発性メモリのように、一定時間プログラムを保持しているものも含むものとする。また上記プログラムは、前述した機能の一部を実現するためのものであっても良く、さらに前述した機能をコンピュータシステムにすでに記録されているプログラムとの組み合わせで実現できるものであっても良い。
【符号の説明】
【0054】
100…撮像装置、111…撮像部、114…輝度勾配算出部、115…色相値算出部、116…領域抽出部、300…画像処理装置、313…明るさ算出部、314…輝度勾配算出部、315…色相値算出部、316…領域抽出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
画像情報に基づいて画像内での輝度勾配を算出する輝度勾配算出部と、
前記輝度勾配算出部により算出された前記輝度勾配に基づいて定められる候補領域の内側における色相を示す第1の色相値と、前記候補領域の周辺における色相を示す第2の色相値とを算出する色相値算出部と、
前記候補領域の中から、前記第1の色相値と前記第2の色相値との差が予め定められた閾値以下の領域を抽出する領域抽出部と
を備えることを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記輝度勾配算出部は、逆ガンマ補正された前記画像情報に基づいて前記輝度勾配を算出する
ことを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記領域抽出部は、前記候補領域の大きさが予め定められた閾値以上であるか否かの判定を行い、当該判定結果に基づいて前記領域を抽出する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記画像内での明るさの度合いを算出する明るさ算出部を備え、
前記領域抽出部は、前記候補領域の周辺の領域の明るさ値が予め定められた閾値以上であるか否かの判定と、前記候補領域の周辺の明るさ値の変化量が予め定められた閾値以下であるか否かの判定と、前記候補領域の明るさ値と当該候補領域の周辺の領域の明るさ値との比が予め定められた閾値以下であるか否かの判定との少なくも一つに基づいて前記領域を抽出する
ことを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の画像処理装置。
【請求項5】
コンピュータに、
画像情報に基づいて画像内での輝度勾配を算出するステップと、
算出された前記輝度勾配に基づいて定められる候補領域の内側における色相を示す第1の色相値と、前記候補領域の周辺における色相を示す第2の色相値とを算出するステップと、
前記候補領域の中から、前記第1の色相値と前記第2の色相値との差が予め定められた閾値以下の領域を抽出するステップと
を実行させる画像処理プログラム。
【請求項6】
画像を撮像して画像情報を生成する撮像部と、
前記画像情報に基づいて前記画像内での輝度勾配を算出する輝度勾配算出部と、
前記輝度勾配算出部により算出された前記輝度勾配に基づいて定められる候補領域の内側における色相を示す第1の色相値と、前記候補領域の周辺における色相を示す第2の色相値とを算出する色相値算出部と、
前記候補領域の中から、前記第1の色相値と前記第2の色相値との差が予め定められた閾値以下の領域を抽出する領域抽出部と
を備えることを特徴とする撮像装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2011−29710(P2011−29710A)
【公開日】平成23年2月10日(2011.2.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−170368(P2009−170368)
【出願日】平成21年7月21日(2009.7.21)
【出願人】(000004112)株式会社ニコン (12,601)
【Fターム(参考)】