説明

画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラム、並びに放射線画像撮影システム

【課題】診断をより円滑に進めること。
【解決手段】ビューア端末16はトモシンセシス撮影で得られた複数の画像を扱う。画像検索ウィンドウ65の右または左範囲選択ボタン68a、68bで、照射角が基準角からある照射角に向かう方向、または反対方向のいずれに観察中心を移動させるかを選択させる。検索処理部58は、各範囲選択ボタン68a、68bで選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に視差画像の検索範囲を絞り込み、各範囲選択ボタン68a、68bで選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に視差画像の検索範囲を絞り込む。絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トモシンセシス撮影により得られた複数の画像を扱う画像処理装置、画像処理方法、および画像処理プログラム、並びに放射線画像撮影システムに関する。
【背景技術】
【0002】
被検体の関心領域(ROI)をより詳しく観察するために、放射線源、例えばX線源を移動させながら異なる角度から被検体にX線を照射し、得られた画像を加算して所望の断層面を強調した断層画像を得るトモシンセシス(Tomosynthesis)撮影が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
特許文献1では、関心領域の断層画像を迅速に得るために、トモシンセシス撮影で得られた複数の画像のうち、視差を有する任意の二つの画像(視差画像)を立体観察して関心領域を特定している。
【0004】
一方、X線を用いた画像診断の分野では、X線源を異なる二つの位置に配してX線撮影を行って一組の視差画像を取得し、これらを元にX線画像の立体観察を可能とするいわゆるステレオ撮影が行われている(特許文献2参照)。
【0005】
特許文献2では、X線源とI.I.(イメージ・インテンシファイヤ)を被検体の周囲で回転させつつ、間欠的にX線を照射して、一定のフレーム間隔で複数のX線画像を得ている。立体観察に供する視差画像のフレーム間隔(視差角)を設定するための奥行感指示器を有し、視差角を広げたり狭めたりして、立体視の奥行感を変えることが可能となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2010−131170号公報
【特許文献2】特開平03−123537号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1のようなトモシンセシス撮影を行うシステムでは、上述のように関心領域の特定をし易くするために視差画像を立体観察することがある。しかしながら、トモシンセシス撮影で得られる画像は40枚〜80枚と多く、視差画像の選定の仕方によっては関心領域が観察し難い場合もある。このため、関心領域の特定に最適な視差画像のペアを選定するのに手間取り、結果としてその後の断層画像の取得も遅れてしまい、円滑に診断を進めることができなくなるおそれがある。
【0008】
特許文献2に記載の発明は、視差画像のフレーム間隔(視差角)を設定するための奥行感指示器を有してはいるが、複数枚の画像の視差角を一々変更しながら見ていくのは大変な手間であり、奥行感指示器を特許文献1に記載の発明に適用したとしても、視差画像の選定に掛かる時間を飛躍的に短縮化することはできない。
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みてなされたもので、その目的は、診断をより円滑に進めることにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明の画像処理装置は、異なる照射位置で被検体に放射線が照射されるように、被検体に対する放射線源の照射角を複数変化させながら複数回の撮影を行うことにより得られた複数の画像のデータを処理する画像処理装置において、複数の画像のうち、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の特定の位置を示す観察中心に関して略対称な位置で撮影された二枚の画像を検索する検索手段と、前記検索手段で抽出された二枚の画像を立体観察可能にディスプレイに表示させる表示制御手段と、照射角が基準角からある照射角に向かう方向、または反対方向のいずれに観察中心を移動させるかを選択させる第一操作入力手段とを備え、前記検索手段は、前記第一操作入力手段で選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、前記第一操作入力手段で選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定することを特徴とする。
【0011】
前記検索手段は、前記第一操作入力手段による一回目の選択前は、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の中心を観察中心に設定する。
【0012】
二枚の画像の視差角を変更するための第二操作入力手段を備えることが好ましい。また、前記表示制御手段によりディスプレイに表示されている二枚の画像を、所定照射角分照射位置がずれた二枚の画像に変更するための第三操作入力手段を備えることが好ましい。前記表示制御手段によりディスプレイに表示されている二枚の画像のうちの一方を基準として、他方を視差角が異なる別の画像に変更するための第四操作入力手段を備えていてもよい。
【0013】
前記検索手段で最終的に絞り込まれた二枚の画像に基づいて、複数の画像のデータを加算して被検体の関心領域を強調した断層画像を得ることが好ましい。
【0014】
装置は、画像を観察して医用レポートを作成するためのコンピュータである。病院外の現場に各部を運搬して設置する可搬型の放射線画像撮影システムに接続され、現場にて画像の観察が可能なコンピュータであってもよい。
【0015】
本発明の画像処理方法は、異なる照射位置で被検体に放射線が照射されるように、被検体に対する放射線源の照射角を基準角とある照射角の間で複数変化させながら複数回の撮影を行うことにより得られた複数の画像のデータを処理する画像処理方法において、複数の画像のうち、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の特定の位置を示す観察中心に関して略対称な位置で撮影された二枚の画像を検索手段で検索する検索ステップと、前記検索ステップで抽出された二枚の画像を、表示制御手段により立体観察可能にディスプレイに表示する表示ステップと、照射角が基準角からある照射角に向かう方向、または反対方向のいずれに観察中心を移動させるかを操作入力手段で選択させる操作入力ステップとを備え、前記検索ステップでは、前記操作入力ステップで選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、前記操作入力ステップで選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定することを特徴とする。
【0016】
本発明の画像処理プログラムは、異なる照射位置で被検体に放射線が照射されるように、被検体に対する放射線源の照射角を基準角とある照射角の間で複数変化させながら複数回の撮影を行うことにより得られた複数の画像のデータを処理する機能をコンピュータに実現させるための画像処理プログラムにおいて、複数の画像のうち、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の特定の位置を示す観察中心に関して略対称な位置で撮影された二枚の画像を検索する検索機能と、前記検索機能で抽出された二枚の画像を立体観察可能にディスプレイに表示させる表示制御機能と、照射角が基準角からある照射角に向かう方向、または反対方向のいずれに観察中心を移動させるかを選択させる操作入力機能とを、コンピュータに実現させることを特徴とし、前記検索機能は、前記操作入力機能で選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、前記操作入力機能で選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定する。
【0017】
本発明の放射線画像撮影システムは、被検体に放射線を照射する放射線源と、被検体を透過した放射線を受けて画像を検出する放射線画像検出器と、異なる照射位置で被検体に放射線が照射されるように、被検体に対する放射線源の照射角を基準角とある照射角の間で複数変化させるため、前記放射線源を前記放射線画像検出器に対して移動させる移動機構と、前記放射線画像検出器から出力される複数の画像のデータを処理する画像処理装置とを備えることを特徴とする。
【0018】
前記画像処理装置は、複数の画像のうち、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の特定の位置を示す観察中心に関して略対称な位置で撮影された二枚の画像を検索する検索手段と、前記検索手段で抽出された二枚の画像を立体観察可能にディスプレイに表示させる表示制御手段と、照射角が基準角からある照射角に向かう方向、または反対方向のいずれに観察中心を移動させるかを選択させる操作入力手段とを有し、検索手段は、操作入力手段で選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、操作入力手段で選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、立体観察に供する二枚の画像の検索範囲を、例えば1/2、1/4、1/8、・・・と絞り込んでいくので、視差画像の検索・抽出に掛かる時間を大幅に短縮することができる。従って、診断をより円滑に進めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】X線画像撮影システムの概略構成を示す斜視図である。
【図2】撮影制御装置の電気的構成を示すブロック図である。
【図3】トモシンセシス撮影の処理手順を示す模式図である。
【図4】ビューア端末を構成するコンピュータの概略を示す構成図である。
【図5】ビューア端末のCPUに構築される各機能部を示すブロック図である。
【図6】撮影位置を示す識別子をX線画像のデータに付す具体例を説明するための図である。
【図7】画像検索ウィンドウを示す図である。
【図8】各回の各範囲選択ボタンの選択組み合わせと視差画像を検索する大凡の位置の関係を示す図である。
【図9】状態表示図の推移の例を示す図であり、(A)はデフォルトの状態、(B)〜(D)は一〜三回目の選択後(いずれも右範囲選択ボタンが選択された場合)をそれぞれ示す。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1において、X線画像撮影システム2は、X線を照射するX線源10と、X線源10から照射され被検体Pを透過したX線を検出してX線画像11(のデータ)を出力するカセッテ12と、X線源10を矢印方向に移動させる移動機構13と、X線源10、カセッテ12、および移動機構13による撮影動作を制御する撮影制御装置14とを備える。X線源10、カセッテ12、および移動機構13と、撮影制御装置14とはケーブルで有線接続され、各部には撮影制御装置14から電力が供給される。
【0022】
撮影制御装置14は、操作入力部15から入力された撮影条件(撮影部位、X線源10のX線管17の管電圧、管電流、曝射時間等)に基づいて、X線源10およびカセッテ12にそれぞれの動作タイミングが同期するように動作司令を与える。撮影制御装置14は、操作入力部15から曝射指示の信号を受信すると、カセッテ12に対してその旨を通知することでX線源10とカセッテ12の動作の同期制御を行う。
【0023】
カセッテ12から出力されたX線画像11は、撮影制御装置14を経由してビューア端末16に入力される。ビューア端末16は、パーソナルコンピュータやワークステーションからなり、受信したX線画像11に対して様々な画像処理を施す他、X線画像11の表示やX線画像11の観察結果を示す読影レポートの作成支援等を行う。
【0024】
X線源10は、ドライバ26(高電圧発生器、図2参照)からの高電圧によりX線を発生するX線管17、およびX線管17が発生したX線の照射野を規制するコリメータ(照射野限定器、図示せず)等を有する。
【0025】
カセッテ12は略矩形の形状を有し、図示するように受像面18をX線源10側に向けて被検体Pの下に設置されたり、肩や膝等の撮影部位に応じた位置に適宜位置決めされる。
【0026】
カセッテ12はX線検出部19を内蔵している。X線検出部19は、例えば、薄膜トランジスタ(TFT)とX線検出素子からなる複数の画素が二次元に配列されたマトリクス基板を有するフラットパネルディテクタ(FPD)である。X線検出部19は、TFTがオフのときに入射したX線の量に応じた電荷をX線検出素子で蓄積する。そして、TFTをオンしてX線検出素子に蓄積した電荷を外部に読み出す。読み出した電荷を信号処理部29(図2参照)の積分アンプで電圧信号に変換し、変換した電圧信号を信号処理部29のA/D変換器でA/D変換することで、デジタルなX線画像11が生成される。
【0027】
X線源10は図示しないフックに吊り下げられ、フックを介して円弧状の棒に取り付けられる。棒にはその長手方向に平行してレールが穿たれており、このレールにフックが嵌合する。フックはレールに沿って矢印方向に移動可能である。これらフックおよびレールで移動機構13が構成される。移動機構13はさらに撮影制御装置14からの指令に基づき駆動するステッピングモータ等の駆動源20を内蔵している。駆動源20が駆動すると、フック、ひいてはフックに取り付けられたX線源10がレールに沿って移動し、駆動源20が駆動停止するとX線源10が棒の所望の位置(照射位置)に停止する。撮影制御装置14は、駆動源20に発する駆動電圧パルス(ステッピングモータに印加するパルス)をカウントし、このカウント数を元にX線源10の棒における位置を検出する。
【0028】
撮影制御装置14は駆動源20の駆動を制御し、撮影条件に応じて予め設定された棒の複数の位置(40〜80箇所)にX線源10を移動させる。例えば図1の左端から右端にX線源10を移動させる。そして、X線源10が各位置に到達する毎に、X線源10から被検体Pに向けてX線を照射させ、その都度カセッテ12でX線を検出させる。こうすることで、X線源10の位置を複数変更して異なる角度からX線を照射して検出した複数のX線画像11がカセッテ12から出力される。
【0029】
なお、本例ではX線源10を円弧状の棒のレールに沿って移動させているが、真っ直ぐな棒を用い、曲線軌道ではなく直線軌道に沿ってX線源10を移動させてもよい。直線軌道を採用した場合は、X線源10がカセッテ12に指向するようフックに首ふり機構を設けてもよい。本例のような曲線軌道ではX線源10が自然とカセッテ12に向くため、首ふり機構を設けなくても済む。また、複数のX線源10を用いてもよい。
【0030】
図2において、撮影制御装置14のX線源制御部25は、X線源10の各部の動作を統括的に制御する。X線源制御部25は、ドライバ26を介してX線管17の動作を制御し、指定された撮影条件および動作タイミングにてX線管17を動作させる。
【0031】
カセッテ制御部27は、カセッテ12の各部の動作を統括的に制御する。カセッテ制御部27は、ドライバ28を介してカセッテ12のX線検出部19の動作を制御し、指定された動作タイミングにてX線検出部19を動作させる。また、カセッテ制御部27は、積分アンプやA/D変換器を有する信号処理部29からX線画像11を受け取り、これをビューア端末16に渡す。
【0032】
移動機構制御部30は、ドライバ31を介して移動機構13の駆動源20の動作を制御する。これら各制御部25、27、30は協働して、X線源10の位置を複数変更して異なる角度からX線を照射して複数のX線画像11を得、複数のX線画像11を元に断層画像(再構成画像ともいう)を生成するトモシンセシス撮影を各部に行わせる。
【0033】
図3に模式的に示すように、ビューア端末16は、X線源10の位置を複数変更して異なる角度からX線を照射することでカセッテ12から出力される複数のX線画像11に基づき、被検体Pの断層画像、特に、被検体Pの関心領域ROIにおけるカセッテ12の受像面18に平行な断層画像を生成する。断層画像を生成する方法としては、例えば異なる位置a、b、c、d、eで撮影されて出力されたX線画像11に対して、各画像11のROIの位置を合わせるシフト処理を行い、次いでシフト処理した各画像11を加算処理して、ROIを強調した再構成画像を得る。
【0034】
断層画像を生成する方法には、この他に単純逆投影法やフィルタ逆投影法等があり、これらを採用してもよい。単純逆投影法は、複数の画像に再構成フィルタをかけずにそのまま複数の画像をそれぞれ逆投影した後、加算処理して再構成画像を得る方法である。一方、フィルタ逆投影法は、複数の画像に再構成フィルタを畳み込みフィルタとしてかけてから逆投影した後、加算処理して再構成画像を得る方法と、複数の画像を一旦フーリエ変換して周波数空間のデータに置き換え、該データに再構成フィルタをかけてから逆投影した後、加算処理して再構成画像を得る方法とがある。
【0035】
ビューア端末16は、パーソナルコンピュータ、ワークステーションといったコンピュータをベースに、オペレーティングシステム等の制御プログラムや、クライアントプログラムといったアプリケーションプログラムをインストールして構成される。
【0036】
図4において、ビューア端末16を構成するコンピュータは、CPU40、メモリ41、ストレージデバイス42、通信I/F43、およびコンソール44を備えている。これらはデータバス45を介して相互接続されている。
【0037】
ストレージデバイス42は、例えば、HDD(Hard Disk Drive)である。ストレージデバイス42には、制御プログラムやアプリケーションプログラム(以下、APという)46が格納される。
【0038】
メモリ41は、CPU40が処理を実行するためのワークメモリである。CPU40は、ストレージデバイス42に格納された制御プログラムをメモリ41へロードして、プログラムに従った処理を実行することにより、コンピュータの各部を統括的に制御する。
【0039】
通信I/F43は、撮影制御装置14との伝送制御を行うネットワークインタフェースである。コンソール44は、ディスプレイ47と、キーボードやマウス等の入力デバイス48とからなる。
【0040】
ビューア端末16には、AP46として、読影レポートの作成支援を行うレポート編集用のクライアントプログラムがインストールされている。ビューア端末16は、レポート編集用のクライアントプログラムによって、X線画像11の表示処理と、読影レポートの編集処理とを行う。
【0041】
図5において、ビューア端末16のCPU40は、AP46を起動すると、コンソール制御部55(表示制御手段に相当)、受信部56、格納処理部57、および検索処理部58として機能する。
【0042】
ビューア端末16は、CPU40が設けられた端末本体に、二台のディスプレイ47を接続した構成(図1参照)である。一台のディスプレイ47には、画像の観察用に使用される画像表示ウィンドウが出力される。もう一台のディスプレイ47には、読影レポートの作成に使用される各種レポート編集ウィンドウが出力される。
【0043】
画像表示ウィンドウおよびレポート編集ウィンドウは、GUIによる操作画面を構成する。コンソール制御部55は、入力デバイス48の操作に応じた描画データをストレージデバイス42から読み出し、読み出した描画データに基づいてこれらの操作画面を各ディスプレイ47に出力する。コンソール制御部55は、操作画面を通じて、入力デバイス48からの操作指示の入力を受け付ける。
【0044】
画像表示ウィンドウおよびレポート編集ウィンドウは、連動して起動する。レポート編集ウィンドウから、読影対象の画像の検索キーが入力されると、コンソール制御部55は、検索処理部58を通じて、検索キーに対応するX線画像11をストレージデバイス42から取得する。コンソール制御部55は、取得したX線画像11をディスプレイ47に出力する際に、画像表示ウィンドウを起動する。
【0045】
画像表示ウィンドウには、上記の再構成画像の他、トモシンセシス撮影で得られた複数のX線画像11のうち任意の二つのX線画像11に基づいて生成される立体(3D)画像といった各種の画像が表示される。画像表示ウィンドウには、操作ボタン、リストボックス、アイコン等、GUIを構成する各種の操作ツールが設けられている。こうした操作ツールを通じて、入力デバイス48からの各種の操作指示が入力される。
【0046】
受信部56は、撮影制御装置14からのX線画像11を受け付け、格納処理部57に格納指令を与える。格納処理部57は、格納指令を受けて、受信部56で受信したX線画像11のストレージデバイス42への格納処理を実行する。格納処理部57は、レポート編集ウィンドウを通じて作成された読影レポートのデータの格納処理も行う。
【0047】
格納処理部57は、撮影制御装置14による駆動源20に発する駆動電圧パルスのカウント数に基づき、X線画像11にその撮影位置(照射位置)を示す適当な識別子を付してメモリやストレージデバイスに記憶する。具体的には、図6に示すように、X線源10の各停止位置に対して、図1の左端から順に1、2、3、・・・、N−1、N(Nは撮影条件で決められるトータルの撮影回数)の整数の番号を便宜的に与える。格納処理部57は、X線画像11のファイル名や付帯情報に上記番号を識別子として記録し、この識別子で一連の画像データの撮影位置を区別する。トータルの撮影回数N、および識別子が隣り合うX線画像11の撮影位置の角度θ=Θ/(N−1)のデータも関連付けて記憶される。
【0048】
記号Θは、カセッテ12の受像面18の中心からみたX線源10の全移動範囲(照射範囲)の両端(番号1とNのX線画像11の撮影位置)のなす角度(ある照射角に相当)である。角度Θは全移動範囲の左端を基準の0°(基準角に相当)として表し、例えば移動範囲の左端と中心位置(全移動範囲の半分)のなす角度はΘ/2、移動範囲の左端と移動範囲を四等分した位置のなす角度はΘ/4(全移動範囲の左側四半分)、3Θ/4(全移動範囲の右側四半分)と表す。以下の説明では、上記角度の表記に倣って、移動範囲の左端を0の位置、右端を1の位置とし、移動範囲を2n−1等分した位置をk/2n−1の位置と表記する。但し、nは2以上の自然数、kは1以上の自然数であり、移動範囲の左端の隣の位置はk=1、右端の隣の位置はk=2n−1−1で、左端から右端にいくにつれインクリメントされる。
【0049】
検索処理部58は、入力デバイス48からコンソール制御部55が受けた検索要求に応答して、要求されたX線画像11をストレージデバイス42から検索・抽出する。コンソール制御部55は、抽出したX線画像11をディスプレイ47の画像表示ウィンドウに表示させる。
【0050】
画像表示ウィンドウにて立体画像を表示する場合、検索処理部58は、まず、一セットのトモシンセシス撮影で得られた複数のX線画像11の中から、X線源10の移動範囲の中心位置(棒の中心位置)に関して略対称な位置で得られた二つのX線画像11を検索・抽出し、画像表示ウィンドウに表示させる。以下、この立体観察に供する二つのX線画像11を視差画像という。また、上記のX線源10の移動範囲の中心位置のように、視差画像を検索する位置を観察中心という。
【0051】
視差画像の検索・抽出は、視差角Φに従って検索を行う。視差角Φは、カセッテ12の受像面18の中心からみた各視差画像の撮影位置の角度である。視差角Φには立体観察時の奥行感に関して最適な値が予め定められている。例えば視差角Φが、識別子が隣り合うX線画像11の角度θに設定され、トータルの撮影回数Nが偶数であった場合は、図5に斜線で示すように、棒の中心位置を挟む、識別子がN/2と(N/2)+1のX線画像11が視差画像としてまず抽出される。
【0052】
また、画像表示ウィンドウにて立体画像を表示する場合、コンソール制御部55は、入力デバイス48の操作に応じて、画像表示ウィンドウとともに図7に示す画像検索ウィンドウ65をディスプレイ47に表示させる。
【0053】
図7において、画像検索ウィンドウ65は、第一、第二、第三表示領域66a、66b、66cを有する。各表示領域66a〜66cには、GUIを構成する各種操作ボタンが配されている。
【0054】
第一表示領域66aは、視差画像を二分探索の要領で検索するための領域であり、状態表示図67、右範囲選択ボタン68a、左範囲選択ボタン68b(ともに第一操作入力手段に相当)、およびやり直しボタン69を備えている。
【0055】
状態表示図67は、現在画像表示ウィンドウに表示されている視差画像の大凡の撮影位置、つまり観察中心を示す。下部にカセッテとその上に仰臥する被検体Pのアニメーション70、上部にX線源10の移動範囲のアニメーション71が描画され、これらが移動範囲を2等分する線分72で結ばれている。X線源10の移動範囲のアニメーション71は、各範囲選択ボタン68a、68bで選択された範囲が実線、選択されなかった範囲が破線で示される。また、複数の線分72のうち、現在画像表示ウィンドウに表示されている視差画像の観察中心を示す線分72は実線、その他の線分72は破線で示される。このアニメーション71、線分72の実線、破線の表示は、各範囲選択ボタン68a、68bの操作により切り替わる(図9参照)。
【0056】
図7では、トータルの撮影回数Nが例えば40回、角度Θが160°で、移動範囲のアニメーション71が十六等分されて十七本の線分72が描かれている。そのうちの真ん中の線分72が実線で、アニメーション71は全て実線であるため、X線源10の移動範囲の中心位置に関して略対称な位置で得られた視差画像が表示されたデフォルトの状態であることを示している。
【0057】
右範囲選択ボタン68aは、X線源10の全移動範囲を二等分した1/2の範囲、または各範囲選択ボタン68a、68bで前回選択した移動範囲をさらに二等分した範囲(全移動範囲の1/2の範囲)のうち、図1の右側の範囲を選択する際に操作される。左範囲選択ボタン68bはこの逆である。
【0058】
図8に示すように、X線源10の移動範囲の中心位置に関して略対称な位置で得られた視差画像が表示されたデフォルトの状態(一回目の選択前)から、各範囲選択ボタン68a、68bにポインタ73を合わせてクリックする(一回目の選択)と、検索処理部58は、各範囲選択ボタン68a、68bで選択された1/2の範囲の中心位置に関して略対称な位置で得られた、視差角Φの二つのX線画像11をストレージデバイス42から視差画像として検索・抽出する。この場合の上記中心位置とは、右範囲選択ボタン68aが選択された場合はX線源10の移動範囲の3/4の位置(角度3Θ/4)、左範囲選択ボタン68bが選択された場合は1/4の位置(角度Θ/4)のことであり、これらが新たな観察中心に相当する。
【0059】
二回目の各範囲選択ボタン68a、68bの選択では、一回目に選択した1/2の範囲をさらに二等分した範囲(全移動範囲の1/4の範囲)のいずれかを選択する。検索処理部58は、選択した範囲の中心位置(7/8、5/8、3/8、1/8のいずれかの位置)に関して略対称な位置で得られた視差画像を抽出する。三回目の選択では二回目に選択した1/4の範囲を二等分した1/8の範囲のいずれかを選択し、検索処理部58は選択した範囲の中心位置(15/16、13/16、11/16、9/16、・・・、1/16のいずれかの位置)に関して略対称な位置で得られた視差画像を抽出する。以下、同様にして、n回目(n=2、3、4、・・・)の選択では、n−1回目に選択した範囲(n=1の場合は全移動範囲)を二等分した、全移動範囲の1/2にあたる二つの範囲のいずれかを各範囲選択ボタン68a、68bで選択させる。各範囲選択ボタン68a、68bは、2等分した各範囲の角度が視差角Φよりも小さくなる直前まで選択可能である。
【0060】
図8で一回目の3/4(=6/8)の位置から遷移するのは、右範囲選択ボタン68aが選択された場合の7/8(=(6+1)/8)の位置と左範囲選択ボタン68bが選択された場合の5/8(=(6−1)/8)の位置である。これを定式化すると、n−1回目の選択で視差画像を抽出する中心位置をk/2n+1の位置と表した場合、n回目の選択で視差画像を抽出する中心位置は、(k+1)/2n+1または(k−1)/2n+1の位置と表せる。前者は右範囲選択ボタン68aが選択された場合、後者は左範囲選択ボタン68bが選択された場合である。
【0061】
トータルの撮影回数N=40、視差角Φ=θで、一〜三回目の操作が全て右範囲選択ボタン68aであった場合、画像表示ウィンドウの表示は、1/2の位置に関して対称な識別子(20、21)の画像に基づく立体画像を表示するデフォルトの状態から、3/4の位置に関して対称な識別子(30、31)、7/8の位置に関して対称な識別子(35、36)、15/16の位置に関して略対称な識別子(37、38)の画像というように、3/4、7/8、15/16の位置で抽出した順に切り替わる。また、図9に示すように、状態表示図67のアニメーション71は、全移動範囲が実線のデフォルトの(A)の状態から、一回目選択後の(B)右半分、二回目選択後の(C)右四半分、三回目選択後の(D)右八半分の順に実線の表示が切り替わる。線分72は、真ん中が実線の(A)の状態から、(B)3/4の位置にあたる左から数えて十三本目、(C)7/8の位置にあたる十五本目、(D)15/16にあたる十六本目が順に実線に切り替わる。
【0062】
なお、N=40、Φ=θの場合は、角度15Θ/16(=0.9375Θ)の位置に対称な視差角ΦのX線画像11は存在しないが、角度36Θ/39(≒0.9231Θ)の位置である識別子37、および角度37Θ/39(≒0.9487Θ)の位置である識別子38のX線画像11が視差画像の条件に最も合うため、これらのX線画像11を抽出する。
【0063】
図7に戻って、やり直しボタン69は、各範囲選択ボタン68a、68bの操作を一回前に戻す際に操作される。例えば一回目に右範囲選択ボタン68aを選択した後、所望の立体画像が得られなかった場合は、やり直しボタン69を操作してデフォルトの状態に戻し、改めて左範囲選択ボタン68bを選択する。
【0064】
第二表示領域66bは、視差角Φを変更するための領域であり、入力ボックス74と適用ボタン75を備えている。入力ボックス74には数値がキーボード入力される。入力ボックス74に所望の数値を入力して適用ボタン75を選択すると、入力された数値をデフォルトの視差角Φに乗算した値が新たに視差角Φとして設定される。検索処理部58は、第二表示領域66bで視差角Φが変更された場合は、変更された視差角Φに基づいて画像の検索を行う。
【0065】
第三表示領域66cは、右シフトボタン76a、左シフトボタン76b、数値(整数)がキーボード入力される入力ボックス77、およびプルダウンメニュー78を備えている。プルダウンメニュー78の横の逆三角の印をクリックすると、「視差角一定」、「視差角変更」の選択肢がプルダウン表示される。プルダウンメニュー78で「視差角一定」を選択し、入力ボックス77に所望の数値を入力して各シフトボタン76a、76bを選択すると、現在画像表示ウィンドウに表示されている視差画像が、視差角Φは変えずに入力ボックス77に入力された数値毎右側、または左側にシフトされる。例えば視差画像として識別子(30、31)のX線画像11が表示された状態で、数値1を入力して右シフトボタン76aを選択した場合は、識別子(31、32)のX線画像11が抽出されて表示される。数値2を入力した場合は識別子(28、29)または識別子(32、33)のX線画像11が表示される。
【0066】
一方、プルダウンメニュー78で「視差角変更」を選択し、入力ボックス77に所望の数値を入力して各シフトボタン76a、76bを選択すると、現在画像表示ウィンドウに表示されている視差画像のうち、例えば識別子が若い番号の視差画像を基準として、もう一方の視差画像が数値毎右側、または左側にシフトされる。つまり基準の視差画像ともう一方の視差画像の視差角Φが変更される。例えば視差画像として識別子(30、31)のX線画像11が表示された状態で、数値1を入力して右シフトボタン76aを選択した場合は、識別子(30、32)のX線画像11が抽出されて表示される。数値2を入力した場合は識別子(28、30)または識別子(30、33)のX線画像11が表示される。
【0067】
次に、上記構成による作用を説明する。まず、X線画像撮影システム2を使用する放射線技師は、X線源10とカセッテ12が相対する所定位置に被検体Pを仰臥させる。そして、撮影制御装置14の操作入力部15を介して撮影条件等を入力した後、曝射開始を指示する。曝射開始の指示に応じて、撮影制御装置14により移動機構13の駆動源20が駆動され、予め設定された棒の複数の位置にX線源10が移動される。また、撮影制御装置14の制御の下、X線源10が各位置に到達する毎に、X線源10のX線管17から被検体Pに向けてX線が照射され、且つカセッテ12のX線検出部19でX線が検出される。X線検出部19で検出されたX線は信号処理部29でデジタルのX線画像11に変換され、撮影制御装置14を通してビューア端末16に送信される。
【0068】
ビューア端末16は、受信部56で撮影制御装置14からのX線画像11を受信する。受信されたX線画像11は、格納処理部57により識別子が付されてストレージデバイス42に格納される。ストレージデバイス42に格納されたX線画像11は、画像検索ウィンドウ65の選択操作に基づき検索処理部58で適宜検索・抽出され、抽出されたX線画像11はコンソール制御部55によりディスプレイ47に視差画像として表示される。ビューア端末16の操作者である読影医は、ディスプレイ47に表示された視差画像を立体観察する。
【0069】
画像検索ウィンドウ65の第一表示領域66aを用いた検索では、n−1回目に選択した範囲を二等分した二つの範囲のいずれかが各範囲選択ボタン68a、68bで選択される。そして、検索処理部58により、k/2の位置に関して略対称な位置で得られた、視差角Φの二つのX線画像11が視差画像として検索・抽出される。読影医は、検索処理部58により抽出されてディスプレイ47に表示された視差画像をみて、所望の視差画像が左右いずれの範囲にあるか判断し、この判断に従って各範囲選択ボタン68a、68bのいずれかを選択する。こうした検索により、各回で選択されなかった範囲は検索対象から外され、選択を重ねるにつれ範囲が1/2、1/4、1/8、・・・と大雑把に絞り込まれていく。
【0070】
読影医は、画像検索ウィンドウ65を駆使して診断に最も適当と思われる視差画像を検索する。検索の手順としては、まず第一表示領域66aで検索を行って検索範囲を粗く絞り込み、ある程度絞り込んだら第三表示領域66cで画像をシフトさせて、最終的に用いる視差画像のペアを決定する。また、読影医は必要に応じて第二表示領域66bで視差角の設定を変更する。
【0071】
読影医は、立体観察の結果病変等の関心領域ROIが見つかった場合は、入力デバイス48を介して関心領域ROIを強調した再構成画像の生成を指示する。ビューア端末16のCPU40は、図3を用いて説明したように指示に応じた再構成画像を生成し、コンソール制御部55によりこれをディスプレイ47の画像表示ウィンドウに表示させる。
【0072】
以上説明したように、本発明によれば、各範囲選択ボタン68a、68bで二つの範囲のいずれかを数回選択させて視差画像の検索範囲を絞り込むので、所望の視差画像を抽出するために要する時間が大幅に短縮化する。
【0073】
一セットのトモシンセシス撮影ではX線画像11の撮影枚数が40〜80枚にのぼる。ただ闇雲にこの中から所望の視差画像を抽出するのは、一つ一つの視差画像のペアを確認しなければならず膨大な作業時間が掛かる。対して本発明では二分探索の要領で視差画像の検索を行うことにより作業時間が短縮化されるので、読影医に掛かる負担が軽減され、また、診断も円滑に進めることができる。
【0074】
視差角の設定変更を可能としたので、立体画像の奥行感を読影医の嗜好に合わせて変えることができる。また、視差画像のペアを変更(シフト)可能としたので、より細かな視差画像の選定を行うことができ、第一表示領域66aを用いた検索である程度絞り込んだ後の最終的な視差画像の決定もスムーズに行うことができる。
【0075】
上記実施形態では、ビューア端末16のストレージデバイス42に撮影制御装置14からのX線画像11を格納する例を挙げたが、ビューア端末16とは別の画像データベースサーバ等にX線画像11を格納してもよい。この場合はサーバに格納処理部および検索処理部が構築され、クライアントであるビューア端末16からの検索指令をサーバで受けて、サーバの検索処理部が視差画像の検索・抽出処理を行う。
【0076】
また、X線画像撮影システム2は病院の撮影室に据え置かれるタイプに限らず、X線源10、カセッテ12、移動機構13、撮影制御装置14等を事故、災害等の緊急医療対応が必要な現場や在宅診療を受ける患者の自宅に持ち運んでX線撮影を行うことが可能な可搬型のシステムに適用してもよい。この場合、操作入力部15としてパーソナルコンピュータを用い、これにビューア端末16と同様のAP46をインストールし、ビューア端末16と同じ機能を担わせる。
【0077】
緊急医療対応では救急搬送に一刻を争う急病人を対象とする場合が多く、視差画像の選定に時間を掛けていては患者の生命に関わるおそれがあるが、可搬型のX線画像撮影システムのビューア端末に本発明を適用すれば、視差画像の選定に時間が掛からず、患者を生命の危険に晒す確率が低まるため、特に好適である。
【0078】
上記実施形態では、各範囲選択ボタン68a、68bによる一回目の選択前は、X線源10の移動範囲の中心位置に関して略対称な位置で得られた視差画像を検索して表示しているが、本発明はこれに限定されない。最初に検索・表示する視差画像を、X線源10の移動範囲の中心位置ではなく、読影医が任意に選択した位置としてもよい。この場合も上記実施形態と同様に、各範囲選択ボタン68a、68bで選択された範囲に視差画像の検索範囲を絞り込んでいく。所望の視差画像がどの範囲にあるかの目星がある程度ついている場合は、最初からその範囲に絞り込んで検索することができ、検索処理をさらに高速化することができる。
【0079】
但し、この場合各範囲選択ボタン68a、68bで選択する範囲は、上記実施形態のように全移動範囲の1/2の範囲とはならない。例えば最初に1/5の位置(角度Θ/5)を選択して、一回目に左範囲選択ボタン68bを選択した場合は、各範囲選択ボタン68a、68bで選択する範囲は全移動範囲の1/10の範囲となり、右範囲選択ボタン68aを選択した場合は2/5の範囲となる。
【0080】
要するに、各範囲選択ボタン68a、68bで選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に視差画像の検索範囲を絞り込む。一方、各範囲選択ボタン68a、68bで選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に視差画像の検索範囲を絞り込む。そして、絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定すればよい。上記実施形態でいえば、一回目に右側、二回目に左側を選択した場合は前者の場合が当て嵌まり、3/4の位置から、3/4の位置に最も近い1/2の位置までの範囲が検索範囲となり、新たな観察中心はその検索範囲の中心の5/8の位置となる。一回目、二回目とも右側を選択した場合は後者の場合が当て嵌まり、3/4の位置から右端の1の位置までが検索範囲、7/8の位置が新たな観察中心となる。
【0081】
なお、本発明に係るX線画像撮影システムは、上記実施形態に限らず、本発明の要旨を逸脱しない限り種々の構成を採り得ることはもちろんである。
【0082】
例えば上記実施形態では、撮影制御装置14からの指令を受けてX線検出部19を動作させる態様を説明したが、X線検出部19でX線の照射を自己検出し、撮影制御装置14からの指令を受けることなくX線検出部19を動作させてもよい。
【0083】
X線検出部19は上記実施形態の直接変換方式に限らず、入射したX線をシンチレータによって一旦可視光に変換した後、この可視光をアモルファスシリコン(a−Si)等の固体検出素子を用いて電気信号に変換する間接変換方式を用いてもよい。
【0084】
カセッテ12、移動機構13と撮影制御装置14とを有線接続しているが、これらを無線接続してもよい。無線接続する場合は、カセッテ12、移動機構13に電力供給用のバッテリを搭載する。
【0085】
各制御部27、30や各ドライバ28、31の機能を、撮影制御装置14ではなくカセッテ12、移動機構13に設けてもよい。高電圧発生器であるドライバ26を撮影制御装置14と別体で設けるのも可である。
【0086】
ビューア端末16ではなく、撮影制御装置14で再構成画像を生成してもよい。駆動源20の駆動力を借りずにX線源10を手動で移動させてもよい。カセッテ12にも移動機構を設け、X線源10の移動方向と反対側にカセッテ12を同期移動させてもよい。
【0087】
移動範囲やX線源10と受像面18との距離(SID;Source Image Distance)を調整し得るように、移動機構の棒を伸縮、上下可能に構成してもよい。
【0088】
コリメータの照射開口によるX線源10の最大投射角は約12°程度である場合が多い。コリメータの照射開口のサイズを変えずにX線の照射野を変更したい場合には、棒を上下させてSIDを調整する。なお、最大投射角とは、X線管17の焦点を頂点として照射開口の両端を結ぶ直線を底辺とした場合に形成される二等辺三角形の頂角である。
【0089】
本発明は、X線に限らず、γ線等の他の放射線を使用する撮影システムにも適用することができる。
【符号の説明】
【0090】
2 X線画像撮影システム
10 X線源
11 X線画像
12 カセッテ
13 移動機構
14 撮影制御装置
16 ビューア端末
17 X線管
19 X線検出部
25 X線源制御部
27 カセッテ制御部
30 移動機構制御部
40 CPU
42 ストレージデバイス
46 アプリケーションプログラム(AP)
47 ディスプレイ
48 入力デバイス
55 コンソール制御部
57 格納処理部
58 検索処理部
65 画像検索ウィンドウ
66a〜66c 第一〜第三表示領域
67 状態表示図
68a、68b 右範囲選択ボタン、左範囲選択ボタン
74 入力ボックス
76a、76b 右シフトボタン、左シフトボタン
78 プルダウンメニュー

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる照射位置で被検体に放射線が照射されるように、被検体に対する放射線源の照射角を複数変化させながら複数回の撮影を行うことにより得られた複数の画像のデータを処理する画像処理装置において、
複数の画像のうち、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の特定の位置を示す観察中心に関して略対称な位置で撮影された二枚の画像を検索する検索手段と、
前記検索手段で抽出された二枚の画像を立体観察可能にディスプレイに表示させる表示制御手段と、
照射角が基準角からある照射角に向かう方向、または反対方向のいずれに観察中心を移動させるかを選択させる第一操作入力手段とを備え、
前記検索手段は、前記第一操作入力手段で選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、
前記第一操作入力手段で選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、
絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定することを特徴とする画像処理装置。
【請求項2】
前記検索手段は、前記第一操作入力手段による一回目の選択前は、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の中心を観察中心に設定することを特徴とする請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
二枚の画像の視差角を変更するための第二操作入力手段を備えることを特徴とする請求項1または2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記表示制御手段によりディスプレイに表示されている二枚の画像を、所定照射角分照射位置がずれた二枚の画像に変更するための第三操作入力手段を備えることを特徴とする請求項1ないし3のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記表示制御手段によりディスプレイに表示されている二枚の画像のうちの一方を基準として、他方を視差角が異なる別の画像に変更するための第四操作入力手段を備えることを特徴とする請求項1ないし4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記検索手段で最終的に絞り込まれた二枚の画像に基づいて、複数の画像のデータを加算して被検体の関心領域を強調した断層画像を得ることを特徴とする請求項1ないし5のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項7】
画像を観察して医用レポートを作成するためのコンピュータであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項8】
病院外の現場に各部を運搬して設置する可搬型の放射線画像撮影システムに接続され、現場にて画像の観察が可能なコンピュータであることを特徴とする請求項1ないし6のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
異なる照射位置で被検体に放射線が照射されるように、被検体に対する放射線源の照射角を基準角とある照射角の間で複数変化させながら複数回の撮影を行うことにより得られた複数の画像のデータを処理する画像処理方法において、
複数の画像のうち、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の特定の位置を示す観察中心に関して略対称な位置で撮影された二枚の画像を検索手段で検索する検索ステップと、
前記検索ステップで抽出された二枚の画像を、表示制御手段により立体観察可能にディスプレイに表示する表示ステップと、
照射角が基準角からある照射角に向かう方向、または反対方向のいずれに観察中心を移動させるかを操作入力手段で選択させる操作入力ステップとを備え、
前記検索ステップでは、前記操作入力ステップで選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、
前記操作入力ステップで選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、
絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定することを特徴とする画像処理方法。
【請求項10】
異なる照射位置で被検体に放射線が照射されるように、被検体に対する放射線源の照射角を基準角とある照射角の間で複数変化させながら複数回の撮影を行うことにより得られた複数の画像のデータを処理する機能をコンピュータに実現させるための画像処理プログラムにおいて、
複数の画像のうち、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の特定の位置を示す観察中心に関して略対称な位置で撮影された二枚の画像を検索する検索機能と、
前記検索機能で抽出された二枚の画像を立体観察可能にディスプレイに表示させる表示制御機能と、
照射角が基準角からある照射角に向かう方向、または反対方向のいずれに観察中心を移動させるかを選択させる操作入力機能とを、コンピュータに実現させることを特徴とし、
前記検索機能は、前記操作入力機能で選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、
前記操作入力機能で選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、
絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定することを特徴とする画像処理プログラム。
【請求項11】
被検体に放射線を照射する放射線源と、
被検体を透過した放射線を受けて画像を検出する放射線画像検出器と、
異なる照射位置で被検体に放射線が照射されるように、被検体に対する放射線源の照射角を基準角とある照射角の間で複数変化させるため、前記放射線源を前記放射線画像検出器に対して移動させる移動機構と、
前記放射線画像検出器から出力される複数の画像のデータを処理する画像処理装置とを備え、
前記画像処理装置は、複数の画像のうち、基準角からある照射角までの複数の放射線源の照射位置の特定の位置を示す観察中心に関して略対称な位置で撮影された二枚の画像を検索する検索手段と、
前記検索手段で抽出された二枚の画像を立体観察可能にディスプレイに表示させる表示制御手段と、
照射角が基準角からある照射角に向かう方向、または反対方向のいずれに観察中心を移動させるかを選択させる操作入力手段とを有し、
検索手段は、操作入力手段で選択された方向に前回までに選択された過去の観察中心がある場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された観察中心に最も近い過去の観察中心までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、
操作入力手段で選択された方向に前回までに選択された観察中心がない場合は、今回選択された観察中心から、今回選択された方向の端の照射位置までの範囲に二枚の画像の検索範囲を絞り込み、
絞り込んだ検索範囲の略中心を新たな観察中心に設定することを特徴とする放射線画像撮影システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−70836(P2012−70836A)
【公開日】平成24年4月12日(2012.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−216752(P2010−216752)
【出願日】平成22年9月28日(2010.9.28)
【出願人】(306037311)富士フイルム株式会社 (25,513)
【Fターム(参考)】